JP2007003493A - 位置検出システム - Google Patents

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Abstract

【課題】複数台の送信装置を互いに同期させずに動作させても受信装置において各送信装置から送波された疎密波を分離できる位置検出システムを提供する。
【解決手段】送信装置1は、天井や壁などの定位置に固定され、疎密波を間欠的に送波する疎密波送波部11と、赤外線を伝送媒体するワイヤレス信号により固有の識別データを送信する識別データ送信部12とを備える。受信装置2は、移動体のような位置検出の検出対象に搭載され、疎密波を受波し疎密波の到来方向の情報を含む受波出力を出力する疎密波受波部21と、識別データを含むワイヤレス信号を受信する識別データ受信部22とを備える。受信装置2では、疎密波受波部22により疎密波を受波する期間を、識別データが受信された後に設定した既定の受波可能時間内に制限する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、媒質の圧力変化を周期的に繰り返す超音波や媒質の圧力変化が単発的であるいわゆる圧力波のような疎密波を利用して検出対象の位置を検出する位置検出システムに関するものである。
従来から、定位置に固定した2台の送信装置(超音波発信装置)から超音波パルス信号を発信し、移動体に装着した受信装置(超音波受信装置)で超音波パルス信号を受信することにより、超音波の伝播時間に基づいて二次元平面における移動体の座標位置を求めるようにした位置検出システムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の構成では、受信装置において各送信装置からの超音波パルス信号を識別するために、超音波パルス信号の周波数を送信装置ごとに異ならせる技術と変調して符号化する技術とが記載されている。また、送信装置が互いに同期して動作することも記載されている。
特開平7−140241号公報
ところで、特許文献1に記載の技術では、各送信装置からの超音波パルス信号を受信装置において分離するには、超音波パルス信号の周波数あるいは符号を異ならせるだけではなく、各送信装置を同期させることによって各送信装置から超音波パルス信号を送波する時刻を異ならせることが必要であるから、送信装置の配置変更や台数の変更をする際にはシステム全体の見直しが必要になる。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、複数台の送信装置を互いに同期させずに動作させても受信装置において各送信装置から送波された疎密波を分離できるようにし、結果的に送信装置の配置設計が容易になる位置検出システムを提供することにある。
請求項1の発明は、定位置に固定され少なくとも疎密波を間欠的に送波する送信装置と、位置検出の検出対象に搭載され送信装置から送波された疎密波を受波することにより送信装置の相対的な方向を検出する受信装置とを備え、送信装置は、疎密波を送波する疎密波送波部と、固有の識別データをワイヤレス信号を用いて送信する識別データ送信部とを備え、受信装置は、疎密波送波部から送波された疎密波を受波するとともに受波した疎密波を電気信号である受波信号に変換する受波素子を複数個配列したアレイセンサからなる疎密波受波部と、疎密波受波部の各受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と各受波素子の配置位置とに基づいて疎密波受波部に対する疎密波の到来方向を求める位置演算部と、識別データ送信部からの識別データを受信する識別データ受信部と、疎密波受波部により疎密波を受波する期間を識別データが受信された後に設定した既定の受波可能時間内に制限する受波時間制限部とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、受信装置において送信装置からの疎密波を受波する時間を、受信装置において識別データを受信した後に設定した既定の受波可能時間内に制限しているから、目的としない疎密波を受波する可能性を低減することができる。たとえば、受信装置が複数台の送信装置から送波された疎密波を受波可能な位置に配置されている場合でも、疎密波を受波する時間を受波可能時間に制限しているから、いずれか1台の送信装置からの疎密波のみを受波する可能性を高めることができる。この構成によって複数台の送信装置からの疎密波を受波する場合を排除できるわけではないが、複数台の送信装置からの疎密波を受波する確率は低減するから、検出対象が移動体である場合や各送信装置から疎密波を送波する時間間隔を異ならせている場合には、送信装置が疎密波を数回送波する間には1台の送信装置からの疎密波のみを受波可能時間に受波する状態が得られる可能性が高くなる。
たとえば、検出対象が送信装置に対して相対的に移動するとともに受信装置における疎密波の受波可能領域に送信装置が出入りするような使用用途では、複数台の送信装置が存在していると各送信装置からの疎密波が衝突することによって、検出対象の位置を個別に検出できない可能性があるが、送信装置から固有の識別データを送信していることにより各送信装置を識別できるとともに、受信装置では各送信装置ごとに疎密波を受波する時間を制限するから、各送信装置からの疎密波の混信を低減でき、各検出対象の位置を個別に検出できる可能性が高くなる。
上述のように、この構成では、複数台の送信装置からの疎密波の混信を回避できるわけではないが、送信装置においては混信ないし衝突の回避のための構成が不要であるから、送信装置の台数や設置場所の変更の際にシステムの設計変更を必要とせず、送信装置の配置設計が容易になる。ここに、疎密波送波部から送波する疎密波としては、超音波の間欠波(超音波のバースト波)を用いるか、単発的な疎密波を用いる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記受波時間制限部が、前記識別データ受信部が識別データを受信した時点から既定の遅延時間後に受波可能時間を開始し、当該遅延時間が検出対象が送信装置に対して許容された最小距離に位置するときに送信装置から受信装置まで疎密波が到達するのに要する時間に設定されていることを特徴とする。
この構成は、識別データを送信するワイヤレス信号が、送信装置から受信装置まで達する時間を実質的に無視できる伝送媒体(赤外線あるいは電波)を用いているときに有効であって、当該識別データを送信した送信装置からの疎密波を受信する可能性のない時間には、当該送信装置からの疎密波を受け付けないことにより、複数台の送信装置からの疎密波の混信を抑制することができる。
請求項3の発明では、請求項1または請求項2の発明において、前記識別データ送信部が前記識別データを一定の時間間隔で間欠的に送信し、前記送信装置が、識別データを送信する時間間隔を設定する指示を受けて発生させた乱数を用いて当該時間間隔を不規則に設定する手段を備えることを特徴とする。
この構成によれば、識別データを送信する時間間隔を乱数により不規則に設定するから、複数台の送信装置が存在している場合でも受信装置において識別データを異なるタイミングで受信できる期間が必ず生じ、結果的に複数台の送信装置ごとに識別データを受信して送信装置の位置を検出することが可能になる。
請求項4の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記疎密波送波部から送波される疎密波の送波パターンを前記識別データ送信部から送信する識別データに対応付ける識別パターン生成部を備え、前記位置演算部が、前記疎密波受波部で受波した疎密波の受波パターンが前記識別データ受信部で受信した識別データに対応しているときに当該疎密波を用いて疎密波の到来方向を求めることを特徴とする。
この構成によれば、疎密波の送波パターンを識別データに対応付け、かつ受信装置では識別データに対応する受波パターンを持つ疎密波から検出対象の方向を求めるから、受信した疎密波がどの送信装置から送波されたかを識別することができる。
請求項5の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記識別データ送信部が、疎密波送波部から送波する疎密波を伝送媒体に用いるとともに前記識別データを固定長のビット列で表し、各ビット値が疎密波を送波する時間間隔に対応付けられていることを特徴とする。
この構成によれば、検出対象の位置を検出するために用いる疎密波を識別データの伝送にも兼用するから、識別データを送受する構成を別途に設ける必要がなく、疎密波の混信を抑制する構成を比較的低コストで実現できる。
本発明の構成によれば、
受信装置において送信装置からの疎密波を受波する時間を、受信装置において識別データを受信した後に設定した既定の受波可能時間内に制限しているから、目的としない疎密波を受波する可能性を低減することができるという利点がある。この構成では、複数台の送信装置からの疎密波の混信を回避できるわけではないが、送信装置においては混信ないし衝突の回避のための構成が不要であるから、送信装置の台数や設置場所の変更の際にシステムの設計変更を必要とせず、送信装置の配置設計が容易になるという利点がある。しかも、アレイセンサを用いた疎密波受波部を用い、アレイセンサに設けた受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と各受波素子の配置位置とに基づいて送信装置からの疎密波の到来方向を検出するから、複数台の送信装置からの疎密波を受波することなく受信装置の位置を特定することが可能である。
(実施形態1)
本実施形態では、位置検出システムとして、図2に示すように、建物内で床面FL上を移動する移動体(たとえば、ショッピングカート)を位置検出の検出対象Obとし、検出対象Obが移動した位置を追跡する動線計測システムを例示する。検出対象Obの位置を追跡するために、床面FLの上方である天井面CLの定位置には疎密波を送波する送信装置1を設置し、検出対象Obには疎密波を受波する受信装置2を搭載する。したがって、既知の位置に送信装置1が配置されることになる。本実施形態では、送信装置1を天井面CLに設置する例を示しているが、壁面に設置してもよい。また、受信装置2において送信装置1の相対位置を計測し、送信装置1に関する既知の座標位置と計測した相対位置とから受信装置2の座標位置を求めるものとする。本実施形態では、疎密波として媒質(空気)の圧力変化が単発的に生じる圧力波を用いる。
送信装置1は、図1に示すように、疎密波を送波する疎密波送波部11と、赤外線を伝送媒体としたワイヤレス信号を送信する識別データ送信部12とを備える。疎密波送波部11および識別データ送信部12は、それぞれドライバ13,14を介して制御部10からの指示を受けて動作する。制御部10はワンチップマイコンからなり、CPU、RAM、ROM、シリアル通信用インターフェイスを包含している。疎密波送波部11からは疎密波を間欠的に送波し、識別データ送信部12は識別データを含んだワイヤレス信号を送信する。識別データは制御部10に設定されており、送信装置1ごとに固有の識別データが設定される。疎密波の送波タイミングおよびワイヤレス信号の送信タイミングは制御部10において制御される。具体的には識別データを含むワイヤレス信号の送信と同時に疎密波を送波しており(実際には、ワイヤレス信号を送信する時刻と疎密波を送波する時刻との間には、ワンチップマイコンの命令処理に要する時間程度の時間遅れはある)、ワイヤレス信号と疎密波とは所定の出力間隔で間欠的に出力される。上述した送信装置1の機能は制御部10を構成しているワンチップマイコンに適宜のプログラムを搭載することにより実現される。
受信装置2は、送信装置1に設けた疎密波送波部11から送波された疎密波を受波する疎密波受波部21を備え、疎密波受波部21は疎密波を受波すると電気信号である受波信号を出力する。つまり、疎密波受波部21は疎密波を受波信号に変換する。また、受信装置2は、送信装置1に設けた識別データ送信部12から送信されたワイヤレス信号を受信する識別データ受信部22も設けられる。識別データ受信部22は、ワイヤレス信号からキャリアを除去して識別データを抽出する。識別データ受信部22で抽出されたパルス列からなる識別データは制御部20に入力され、識別データを送信した送信装置1が制御部20において認識される。制御部20はマイクロコンピュータを主構成要素としており、CPU、RAM、ROM、シリアル通信インターフェイスを包含している。また、出力用のインターフェイスが別に出力部26として付加される。出力部26には、TIA/EIA−232−EやUSBなどの仕様のシリアルインターフェイスのほかSCSIのような仕様のパラレルインターフェイスなどを採用することができ、別に設けた管理装置において受信装置2での検出結果を利用できるようにしてある。管理装置は、検出対象Obに搭載していても、また検出対象Obとは別途に設けるようにしてもよい。たとえば、検出対象Obが自律運転する自走車であれば、管理装置において、受信装置2で求めた位置を検出対象Obに搭載した地図情報に照合して、走行方向を決定すればよい。また、ショッピングカートの移動した位置を追跡する動線計測システムでは、出力部26と管理装置との間に無線伝送路を形成し、受信装置2で求めた位置の履歴を管理装置に蓄積すればよい。
疎密波受波部21は、複数個の受波素子を配列したアレイセンサであって、制御部20では各受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と受波素子の配列位置とに基づいて疎密波の到来方向、すなわち検出対象Obの存在する方向を求める。ここで求める方向は疎密波受波部21に対する相対的な方向であるが、送信装置1の配置は既知であるから、送信装置1の配置を特定する絶対座標系における疎密波の到来方向を求めることができる。
上述したように疎密波の到来方向を求めるには、疎密波を受波した受波素子での受波時刻の時間差を含む情報が必要であるから、疎密波受波部21から出力される受波信号をA/D変換部23をデジタル信号である受波データに変換した後、各受波素子に対応する出力を一時記憶するデータ格納部24に格納する。疎密波受波部21は到来する疎密波を常時受波しているが、A/D変換部23およびデータ格納部24の動作タイミングは、制御部20からの指示によってタイミング制御部25が制御する。タイミング制御部25は、CPLD(Complex Programmable Logic Device)あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成されており、A/D変換部23およびデータ格納部24の動作タイミングを制御するエネーブル信号を生成するほか、データ格納部24の記憶領域を指定するためのアドレスを生成する。
制御部20では、識別データ受信部22からシリアル通信インターフェイスを通して入力される識別データが、あらかじめ登録されている範囲内の識別データであるときには、タイミング制御部25に指示し受波信号に対応する受波データをデータ格納部24に格納するための待機状態になる。この待機状態は、識別データを含むワイヤレス信号を受信した後から設定される受波可能時間内に制限されている。つまり、受波可能時間以外において疎密波受波部21で受波された疎密波は、受波データに変換されずデータ格納部24にも格納されないから、疎密波受波部21では、実質的に受波可能時間内でのみ疎密波を受波することになる。言い換えると、制御部20およびタイミング制御部25は、受波時間制限部として機能する。
受波可能時間は一定時間であって、受波可能時間が開始された後に受波可能時間内で疎密波受波部21が疎密波を受波すると、各受波素子が疎密波を受波した時刻情報を含む形で受波信号に対応する受波データがデータ格納部24に格納される。また、受波可能時間が終了すると、その後に受波した疎密波は無効になる。
データ格納部24に格納された受波データは受波可能時間の終了後に制御部20に読み込まれ、各受波素子での受波時刻の時間差に相当する時間を求めるために、隣接する受波素子に対応する受波データを時間軸方向に既定した時間分だけシフトして加算する。
この処理について簡単に説明する。いま、疎密波受波部21において受波素子40が図3に示すように同一平面上において一次元的に等間隔で配列されているものとする(実際には二次元的に配列されている)。受波素子40が配列された面に対する超音波の波面の角度がθであるとき、疎密波の到来方向もθになる。音速をc、受波素子40の配列ピッチ(中間間の距離)をLとすれば、到来方向がθである疎密波の波面が隣接する受波素子40に到達する際の時間差ΔTは、ΔT=L・sinθ/cである。すなわち、θ=sin−1(ΔT・c/L)であって、時間差ΔTを求めると到来方向θを求めることができる。
以上の関係から、各受波素子40で受波した疎密波に対応する受波信号を到来方向θに対応した時間差ΔT分だけ遅延させると、時間軸方向において受波信号の位置を一致させることができることがわかる。たとえば、隣り合う3個の受波素子40から図4(a)〜(c)のような受波信号が出力され、隣接する受波素子40から出力される受波信号が時間差ΔTを有しているものとする。この場合、隣接する受波素子40から得られる受波信号を、適宜の遅延手段によって互いにΔTだけ遅延させる。つまり、図4(c)の受波信号を2ΔTだけ遅延させ、図4(b)の受波信号をΔTだけ遅延させると、両受波信号は時間軸方向において図4(a)の受波信号の位置に一致する。各受波素子40の出力である受波信号の時間軸方向における位置が一致していれば、これらの受波信号を加算したときに加算結果は大きな振幅になる。言い換えると、加算結果の振幅が大きければ、疎密波の到来方向θは当該遅延時間ΔTに対応しているといえる。
本実施形態では、受信信号を時間軸方向に偏移させるのではなく、受波データを時間軸方向に偏移させる構成を採用しているが、到来方向θを算出する目的においては差異はない。しかして、制御部20ではデータ格納部24に格納された受波データに対して、あらかじめ設定した複数種類の遅延時間を適用して遅延させた後に加算し、加算結果が最大になるときの遅延時間を求める。この遅延時間は時間差ΔTに対応するから、遅延時間にあらかじめ到来方向θを対応付けておくことにより、疎密波の到来方向をただちに求めることができる。遅延時間は、たとえば到来方向を5度刻みで検出することができるように設定される。上述のように受波データを時間軸方向に偏移させた後に加算する処理を遅延加算処理と呼ぶ。遅延加算処理は制御部20に設定したプログラムにより実現される。
以上説明したように、受信装置2では送信装置1からのワイヤレス信号を受信し、制御部20に登録された範囲内の識別データを含むワイヤレス信号であることを確認すると、受波可能時間の制限内で受波信号を待ち受け、受波可能時間内に受波した疎密波のみを用いて疎密波の到来方向を算出する。
ここに、上述したように、ワイヤレス信号の送信と疎密波の受波とのタイミングには既知の一定の時間遅れがあるが、識別データ送信部12からのワイヤレス信号の送信と識別データ受信部22でのワイヤレス信号の受信とは実質的に同時とみなせるから、識別データ受信部22でのワイヤレス信号の受信時刻と、疎密波受波部21での疎密波の受波時刻との時間差は、既知の時間遅れを考慮して計算すると実質的に疎密波が媒質中を伝播する時間とみなすことができる。したがって、ワイヤレス信号を受信してから疎密波を受波するまでの時間によって受信装置2に対する送信装置1の相対的な距離を知ることができる。つまり、送信装置1の方向と距離とを知ることができるから、受信装置2では送信装置1の三次元位置を求めることができる。なお、上述した制御部20の動作はマイクロコンピュータに適宜のプログラムを搭載することにより実現される。
本実施形態の動作例を図5に示す。いま、図2に示すように、検出対象Obである移動体に搭載した受信装置2が、天井面CLの定位置に固定した2台の送信装置1からの疎密波を受波する場合を想定する。両送信装置1を区別するために、ここでは図2の左側の送信装置を1a、右側の送信装置を1bと表記する。両送信装置1a,1bと受信装置2との距離はほぼ等しいものとする。
各送信装置1a,1bは、それぞれ疎密波とワイヤレス信号とを間欠的に出力しているから、たとえば図5(a)のように、送信装置1aから送信されたワイヤレス信号の識別データを受信装置2において時刻t1で検出したとすると、図5(b)のように時刻t1から受波可能時間Tpの時限が開始される。受波可能時間Tpの時限中に受信装置2において疎密波を受波すると、当該疎密波を左側の送信装置1aからの疎密波であると判断して送信装置1aの存在する方向を算出する。つまり、受波可能時間Tpにおいて受波した疎密波の到来方向を、識別データにより示された送信装置1aの存在する方向とみなす。
たとえば図5(a)のように、受波可能時間Tpの時限中である時刻t2において送信されてきたワイヤレス信号を無視し、図5(c)のように、時刻t1から受波可能時間Tpの間に到来する疎密波W1のみを抽出すれば、右側の送信装置1bからの疎密波W2の影響を除去して左側の送信装置1aからの疎密波W1のみを抽出することが可能になる。
なお、送信装置1a,1bの位置関係によっては、受信装置2において、受波可能時間Tpの間に2台の送信装置1a,1bからの疎密波W1,W2を受波することもあるが、その場合には1台の送信装置1aまたは1bだけからの疎密波W1,W2を受波する状態になるまで疎密波W1,W2の到来方向の算出を行わないようにする。
上述したように、ワイヤレス信号を受信することにより得られる識別データをトリガとして、受波可能時間Tpの時限を開始し、受波可能時間Tpの時限中に疎密波W1,W2を受波したときに、当該疎密波W1,W2を識別データに対応する送信装置1a,1bからの疎密波と判断し、疎密波W1,W2の到来方向を送信装置1a,1bの存在する方向として算出するのであって、このような動作により、疎密波W1,W2の混信によって送信装置1a,1bの存在方向を誤認識する可能性を低減することができる。
受波可能時間Tpは、ワイヤレス信号を受信した後ただちに時限する必要はなく、送信装置1と受信装置2との許容された最小距離に相当する遅延時間が既知であるときには、ワイヤレス信号の受信から遅延時間が経過した後に受波可能時間Tpの時限を開始してもよい。つまり、ワイヤレス信号は光を伝送媒体とするから、送信装置1からワイヤレス信号が送信された後に受信装置2で受信されるまでの時間差を無視することができ、一方、疎密波が送信装置1から受信装置2に達するまでの最小時間は、送信装置1と受信装置2との許容された最小距離を疎密波が伝播するように要する時間に相当する。
つまり、受信装置2においてワイヤレス信号を受信した後に、上記最小時間より前に疎密波が到達することはないから、この最小時間を遅延時間とし、ワイヤレス信号の受波から遅延時間だけ遅れて受波可能時間Tpの時限時間を開始するようにしても、疎密波の到来方向を検出することができる。ここに、ワイヤレス信号を受信した時点では識別データを確認できていないが、ワイヤレス信号を受信してから識別データが確認されるまでの確認時間は既知であるから、識別データの確認時点から遅延時間を計時し、その際に既知の確認時間分だけ遅延時間を短く設定すれば、ワイヤレス信号の受信時点から遅延時間を計時したことと等価になる。
受波可能時間Tpの長さは、位置を検出しようとする送信装置1の最長距離によって規定される。つまり、受信装置2によって位置検出を行う最長距離を規定し、疎密波がこの距離を伝播するのに要する時間を、受信装置2がワイヤレス信号を受信してから受波可能時間Tpが終了するまでの時間に設定する。
受波可能時間Tpを上述のように設定すると、受信装置2において受波する可能性のない期間に到来した疎密波は無効であって位置検出に用いられることがなく、送信装置1の位置を誤検出する可能性を低減することができる。
たとえば、図6(a)に示すように、ワイヤレス信号を受信し識別データを時刻t1において確認したとする。ここで、時刻t1の後に2個の疎密波Wx,W1が受信装置2に到来する場合を想定する。図6(b)のように、受波可能時間Tpはワイヤレス信号の受信から遅延時間Tdが経過した後の時刻t2において時限が開始され、その後、目的とする最長距離に相当する時間が経過した時刻t3において時限を終了する。上述した疎密波Wxは時刻t2より前に到来しており、到来した時点が受波可能時間Tpから逸脱しているから無効になり、図6(c)のように疎密波Wxは取り出されない。一方、疎密波W1は時刻t2と時刻t3との間で到来するから、到来した時点が受波可能時間Tpに含まれており位置検出に用いられるのである。
上述した構成例では、ワイヤレス信号および疎密波の送波間隔を一定とし、かつ異なる送信装置1において送波する時間間隔を等しい場合を想定しているが、この場合、複数台の送信装置1においてワイヤレス信号を送信するタイミングが最初に一致してしまうと、その後は、ワイヤレス信号を送信するタイミングがつねに一致し、受信装置2ではどの送信装置1からのワイヤレス信号かを識別できなくなる。
そこで、送信装置1には、ワイヤレス信号(つまり、識別データ)を送信する時間間隔を自動的に設定する機能を設けている。この機能は、時間間隔の設定を要求されたときに起動され、まず乱数を発生させた後に、発生させた乱数を用いて識別データを送信する時間間隔を設定する。時間間隔の設定要求は、送信装置1の電源投入時のみとしてもよいが、押釦スイッチのような適宜の操作部を設け、任意のタイミングで時間間隔の設定要求を行えるようにしてもよい。
この構成を採用することにより、ワイヤレス信号を送信する時間間隔を各送信装置1ごとに異ならせることができる。したがって、送信装置1からワイヤレス信号を一度送信したときに他の送信装置1からのワイヤレス信号と衝突することによって受信装置2において識別データを認識できなかったとしても、ワイヤレス信号を複数回送信している間には他の送信装置1からのワイヤレス信号との衝突を回避できるタイミングでワイヤレス信号を送信することができるようになる。
ところで、送信装置1における疎密波送波部11を構成している送波素子には、圧電素子からなる超音波振動子を用いてもよいが、圧電素子は一般にせん鋭度(Q値)が100を越えるから残響時間が比較的長く、残響時間を考慮すると疎密波を送波する時間間隔が長くなる。つまり、送信装置1を搭載する検出対象が移動体であるときには、移動体の位置を細かく計測することができない。
そこで、疎密波送波部11には、図7に示す構造を有した残響時間の短い送波素子30を用いるのが望ましい。この送波素子30は、単結晶のp形のシリコン基板からなる支持基板31の一表面(図7における上面)側に多孔質シリコン層からなる熱絶縁層32が形成され、熱絶縁層32上に金属薄膜(たとえば、タングステン薄膜)からなる発熱体層33が形成され、さらに、支持基板31の上記一表面側に発熱体層33と電気的に接続された一対の電極パッド34が形成されている。支持基板31の平面形状は長方形状であって、熱絶縁層32、発熱体層33も平面形状はそれぞれ長方形状に形成される。
この送波素子30は熱励起式であって、発熱体層33に温度変化が生じるように発熱体層33に通電し、発熱体層33に接触している媒質の膨張収縮を促すことによって疎密波を発生させる。つまり、発熱体層33の両端の電極パッド34間に通電し発熱体層33に温度変化を生じさせることで、発熱体層33に接触している媒質である空気に温度変化を生じさせる。発熱体層33に接触している空気は、発熱体層33の温度上昇時には膨張し発熱体層33の温度下降時には収縮するから、発熱体層33への通電を制御することによって空気中を伝搬する疎密波を発生させることができるのである。
圧電素子からなる送波素子はせん鋭度(Q値)が大きいものであるから、疎密波を瞬間的に発生させたとしても、圧電素子の駆動を停止した後も図8(b)に示すように、共振によって残響が継続する。これに対して、図7に示した熱励起式の送波素子30は、せん鋭度が小さく、実質的に共振周波数を持たないものである。熱励起式の送波素子30では、上述したように、一対の電極パッド34を介した発熱体層33への通電に伴う発熱体層33の温度変化に伴って疎密波を発生する。
つまり、発熱体層33へ与える駆動電圧ないし駆動電流の波形が正弦波形状であるときには、当該正弦波形の2倍の周波数の疎密波を発生させることができる。したがって、電極パッド34に印加する駆動電圧の波形を、正弦波の半周期に相当する孤立波とすれば、図8(a)に示すような正弦波形の1周期分の疎密波を発生させることができる。しかも、熱励起式の送波素子30は実質的に共振周波数を持たないから残響時間はごく短くなる。また、圧電素子は固有の共振周波数を有するので発生可能な疎密波の周波数範囲が狭いが、熱励起式の送波素子30は実質的に共振周波数を持たないので発生可能な疎密波の周波数範囲が広範囲になる。しかも、駆動電圧もしくは駆動電流の波形を孤立波とすれば、図8(a)に示すように1周期程度の疎密波を発生させることができる。
上述した熱励起式の送波素子30は、支持基板31としてp形のシリコン基板を用いており、熱絶縁層32を多孔度が60〜80%(望ましくは略70%)の多孔質シリコン層により構成している。これは、多孔度が60%未満では断熱効果が小さくなり、多孔度が80%を越えると構造的に脆くなるからである。この熱絶縁層32は、支持基板31として用いるシリコン基板の一部をフッ化水素水溶液とエタノールとの混合液からなる電解液中で陽極酸化処理することにより形成することができる。ここに、陽極酸化処理の条件(たとえば、電流密度、通電時間など)を適宜設定することにより、熱絶縁層32となる多孔質シリコン層の多孔度や厚みそれぞれを所望の値とすることができる。
多孔質シリコン層は、多孔度が高くなるにつれて熱伝導率および熱容量が小さくなることが知られている。たとえば、熱伝導率が148W/(m・K)、熱容量が1.63×106J/(m・K)の単結晶のシリコン基板を陽極酸化し、多孔度が60%の多孔質シリコン層を形成すると、この多孔質シリコン層は、熱伝導率が1W/(m・K)、熱容量が0.7×106J/(m・K)になる。本実施形態では、上述のように多孔度が略70%の多孔質シリコン層により熱絶縁層32を形成してあり、熱絶縁層32の熱伝導率が0.12W/(m・K)、熱容量が0.5×106J/(m・K)になっている。
なお、熱伝導度および熱容量について熱絶縁層32を支持基板31に比べて小さくし、熱伝導度と熱容量との積についても熱絶縁層32を支持基板31に比べて十分に小さくすることにより、発熱体層33の温度変化を空気に効率よく伝達することができ、発熱体層33と空気との間で効率よく熱交換させることができる。しかも、支持基板31が熱絶縁層32からの熱を効率よく受け取るから熱絶縁層32の熱を逃がすことができ発熱体層33からの熱が熱絶縁層32に蓄積されるのを防止することができる。
発熱体層33は、高融点金属の一種であるタングステンにより形成してあり、熱伝導率が174W/(m・K)、熱容量が2.5×106J/(m・K)となっている。発熱体層33の材料はタングステンに限らず、たとえば、タンタル、モリブデン、イリジウムなどを採用してもよい。
上述の熱励起式の送波素子30は、支持基板31の厚さを525μm、熱絶縁層32の厚さを10μm、発熱体層33の厚さを50nm、各電極パッド34の厚さを0.5μmとしてある。ただし、これらの厚さは一例であり、とくに限定する主旨ではない。また、支持基板31の材料としてSiを採用しているが、支持基板31の材料はSiに限らず、たとえば、Ge,SiC,GaP,GaAs,InPなどの陽極酸化処理による多孔質化が可能な他の半導体材料でもよい。
ところで、受信装置2の疎密波受波部21に用いる受波素子40は、疎密波を受波するとともに受波した疎密波を電気信号である受波信号に変換するものであり、疎密波受波部21には1枚の基板(図示せず)に複数個の受波素子40を配列して構成してある。ここでは、受波素子40を2次元的に配列したアレイセンサを構成しているものとする。アレイセンサにおいて、受波素子40の中心間距離(配列ピッチ)は疎密波送波部11から発生させる疎密波の波長程度(たとえば、疎密波の波長の0.5〜5倍程度)に設定することが望ましい。これは、疎密波の波長の0.5倍よりも小さいと疎密波の波面が隣り合う受波素子40にそれぞれ到達する時刻の時間差が小さくなり、時間差の検出が困難になるからである。受波素子40として、圧電素子を用いることが可能であるが、疎密波送波部11と同様に、残響の少ない構成が望ましい。したがって、疎密波の圧力(音圧)を静電容量の変化に変換する静電容量式の受波素子40を用いることが望ましい。
この種の受波素子40は、図9に示す構成のものがある。図示する受波素子40は、マイクロマシンニング技術により形成され、シリコン基板に厚み方向に貫通する窓孔41aを設けることで形成された矩形枠状のフレーム41と、フレーム41の一表面側において窓孔41aを囲む四辺のうちの一辺に固定されるとともに窓孔41aを覆う形に配置されたカンチレバー型の受圧板42とを備える。フレーム41の上記一表面には熱酸化膜45を介してシリコン酸化膜46が積層され、さらにシリコン酸化膜46の表面はシリコン窒化膜47で覆われる。受圧板42の一端部は熱酸化膜45を介してフレーム41に固定され、受圧板42の他端部はシリコン基板の厚み方向においてシリコン酸化膜46に対向する。シリコン酸化膜46における受圧板42の他端部との対向面には金属薄膜(たとえば、クロム膜など)からなる固定電極43aが形成され、受圧板42の他端部において固定電極43aと対向している部位であって固定電極43aとの対向面の背面側には金属薄膜(たとえば、クロム膜など)からなる可動電極43bが形成される。フレーム41の他表面にはシリコン窒化膜48が形成される。ここに、受圧板42は、各シリコン窒化膜47,48とは別工程で形成されるシリコン窒化膜により構成される。
図9に示す静電容量式の受波素子40では、受圧板42に疎密波の圧力(音圧)が作用すると、疎密波の圧力に応じて固定電極43aと可動電極43bとの距離が変化するから、固定電極43aと可動電極43bとの間の静電容量を検出することにより、疎密波の圧力を検出することができる。したがって、固定電極43aと可動電極43bとの間に直流バイアス電圧を印加しておけば、固定電極43aと可動電極43bとの間には疎密波の圧力に応じた電圧変化が生じ、疎密波の音圧を電気信号に変換することができる。この種の静電容量式の受波素子40はせん鋭度が圧電素子よりも小さいから、圧電素子を用いる場合よりも受波できる疎密波の周波数帯域幅を広くとることができる。
なお、受波素子40は図9の構造に限定されるものではなく、たとえば、シリコン基板などをマイクロマシンニング技術などにより加工して形成され疎密波の圧力を受けるダイヤフラム部からなる可動電極と、ダイヤフラム部に対向する背板部からなる固定電極との間の静電容量を検出する構成を採用してもよい。この構成では、疎密波の圧力が作用していない状態でのダイヤフラム部と背板部とのギャップ長を規定する絶縁膜からなるスペーサ部を設け、背板部には複数の排気孔を貫設する。
図7に示した熱励起式の送波素子30のせん鋭度(Q値)は1程度であり、図9に示した静電容量式の受波素子40のせん鋭度は3〜4程度であって、圧電素子に比較するとせん鋭度が大幅に小さい。したがって、送波素子および受波素子に圧電素子を用いる場合に比較すると、疎密波送波部11から送波される疎密波に含まれる残響成分の割合が少なくなり、疎密波受波部21から出力される受波信号に含まれる残響成分の割合が少なくなる。つまり、送波時には疎密波の送波間隔を短くすることができ、受波時には短い時間間隔で疎密波を受波しても疎密波に対応する受波信号が重複しないように分離することができる。なお、送波素子30および受波素子40のせん鋭度(Q値)はいずれも10以下が望ましく、さらに望ましくは5以下とする。
(実施形態2)
本実施形態は、図10に示すように、送信装置1において疎密波送波部11から送波する疎密波に送波パターンを付与する識別パターン生成部15を付加したものである。識別パターン生成部15は、疎密波の発生タイミングと発生個数との少なくとも一方によって疎密波に送波パターンを与えるものである。たとえば、識別データを1回送信すると、疎密波を複数個送波し、その個数によって疎密波の送波パターンを変化させる。あるいはまた、識別データを1回送信したときに、複数個の疎密波を送波するとともに疎密波を送波する時間間隔を変化させることにより疎密波の送波パターンを変化させる。
いま、ワイヤレス信号により送信する識別データを数値であるものとし、識別データが偶数値であるときには2個の疎密波を続けて発生させ、奇数値であるときには3個の疎密波を続けて発生させるようにすれば、受信装置2では到来した疎密波が受信した識別データに対応するものか否かを判別しやすくなる。この例では疎密波では2種類を区別しているだけであるから、識別データと疎密波とを一対一に対応付けるものではないが、対応付けを行わない場合に比較すると、受信した疎密波から求めた方向が識別データを送信した送信装置1と異なっている可能性を低減することができる。
本実施形態の構成では、受信装置2においても疎密波の受波パターンと識別データとの対応付けが必要であることはいうまでもなく、位置演算部として用いられている制御部20において、データ格納部24に格納されている受波データの受波パターンが、識別データ受信部22から入力された識別データに対応するか否かを判断し、対応していない場合には当該受波データは破棄する。この処理によって、識別データに対応しない受波データを位置検出に用いることが防止される。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
(実施形態3)
本実施形態は、図11に示すように、実施形態1の構成から赤外線を伝送媒体とする識別データの伝送路を省略したものである。本実施形態では、赤外線を用いる代わりに識別データを疎密波により伝送する構成を採用している。つまり、受信装置2では、疎密波送波部11から送波される疎密波を用いて送信装置1の位置検出を行うほか、疎密波に含まれる識別データを抽出することにより送信装置1を特定する。したがって、疎密波送信部11が識別データ送信部12と兼用され、また疎密波受波部21が識別データ受信部22と兼用されているものである。
本実施形態では、疎密波により識別データを送信するために、実施形態2と同様に、識別パターン生成部15を設けている。識別パターン生成部15では、一定の複数個の疎密波で識別データを生成するとともに、疎密波を送波する時間間隔でビット値を表す。ここでは、識別データを8ビットで表し1ビットのスタートビットを付加した9ビットのデータを疎密波で表すものとする。つまり、ビット値は疎密波を送波する時間間隔で表しているから、一度に10個の疎密波を送波することになる。
いま、適宜の単位時間をTとし、ビット値の「1」を疎密波の時間間隔が6T以上8T以下である適宜の時間間隔に対応付け、ビット値の「0」を疎密波の時間間隔が10T以上12T以下である適宜の時間間隔に対応付けるものとする。一例として、7Tを「1」、11Tを「0」に対応付ける場合を想定する。また、スタートビットは「1」であるものとする。
2台の送信装置1が存在し、一方の識別データが「01010101」であり、他方の識別データが「11111111」であって、両送信装置1から疎密波の送波が同時に開始されたとすると、各送信装置1から送波された疎密波を受信装置2で独立して受波するとすれば図12(a)(b)のような受波データが得られる。したがって、受信装置2では実際には図12(c)のような受波データが得られる。図から明らかなように、受信装置2において受波する疎密波の時間間隔は6Tよりも短くなっている。また、受信装置2では10個の疎密波を単位として識別データを判断するのに対して、10個目の疎密波の後にも6Tよりも短い時間間隔で疎密波を受信している。
また、2台の送信装置1が存在し、一方の識別データが「01010101」であるのに対して他方の識別データが「00000000」であり、両送信装置1から疎密波の送波が同時に開始されたとすると、各送信装置1から送波された疎密波を受信装置2で独立して受波するとすればそれぞれ図13(a)(b)のような受波データが得られる。すなわち、受信装置2では実際には図13(c)のような受波データが得られる。この場合、受信装置2で受波する疎密波の時間間隔は10個目までの間に7Tよりも短い時間間隔のものが含まれ、また10個目の疎密波の後に11Tよりも短い時間間隔で疎密波を受信している。
別の例として2台の送信装置1の一方から送信する識別データが「01010101」であり、他方から送信する識別データが「10101010」であって、上記他方が7Tだけ先行して疎密波の送波を開始する場合を想定すると、各送信装置1から送波された疎密波を受信装置2でそれぞれ独立して受波すれば図14(a)(b)のような受波データが得られる。したがって、受信装置2で受波する疎密波は、実際には図14(c)のようになり10個目までの疎密波は先行して送波を開始した送信装置1からの疎密波と一致する。ただし、受信装置2で得られる受波データには11個目の疎密波が検出され、しかも10個目と11個目との疎密波の時間間隔は11T以下になる。
図12、図13、図14の結果から、(1)10個目までの疎密波の時間間隔が6Tよりも短い、(2)10個目の疎密波の後に11T以内に疎密波が得られる、という2条件の少なくとも一方が満たされる場合には混信が生じているものと判断し、受波した疎密波を無効にする。また、混信が検出されたときには、疎密波を受波しない期間が12T以上になるまでは受波した疎密波を無視する。疎密波を用いて識別データを送信するのに要する時間は、最長で95T(「00000000」の場合)であるから、T=10μsとすれば高々1msで1個の識別データを伝送することができる。
本実施形態では、複数台の送信装置1を用い、各送信装置1が識別データを送信する周期を50+50R(ms)に設定すれば(Rは0〜1で一様に分布する乱数)、1台の受信装置2が監視する領域内において10台程度の送信装置1が同時に存在可能となる。
また、疎密波によって識別データを送信しているが、位置検出は識別データの送信後に設定した受波可能時間において送受される。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
なお、本実施形態の構成では、識別データを疎密波によって送信しているから、識別データを送信している疎密波を用いて位置検出を行うことも可能である。この場合には、ひとまとまりである10個の疎密波のうちの少なくとも1個の疎密波を用いれば位置検出を行うことができるが、複数の疎密波によって求めた位置の平均値などを求めるようにすれば、検出結果の信頼性を高めることができる。また、混信が検出された場合に当該検出結果を破棄するのはいうまでもない。
実施形態1を示すブロック図である。 同上の使用例を示す概略構成図である。 同上の動作説明図である。 同上の動作説明図である。 同上の動作説明図である。 同上の他の動作例の動作説明図である。 同上に用いる送波素子の一例を示す断面図である。 同上の動作説明図である。 同上に用いる受波素子の一例を示し、(a)は一部破断した斜視図、(b)は断面図である。 実施形態2に用いる送信装置を示すブロック図である。 実施形態3を示すブロック図である。 同上の動作説明図である。 同上の動作説明図である。 同上の動作説明図である。
符号の説明
1 送信装置
2 受信装置
10 制御部
11 疎密波送波部
12 識別データ送信部
15 識別パターン生成部
20 制御部(位置演算部、受波時間制限部))
21 疎密波受波部
22 識別データ受信部
23 A/D変換器
24 データ格納部
25 タイミング制御部(受波時間制限部)
40 受波素子
Ob 検出対象

Claims (5)

  1. 定位置に固定され少なくとも疎密波を間欠的に送波する送信装置と、位置検出の検出対象に搭載され送信装置から送波された疎密波を受波することにより送信装置の相対的な方向を検出する受信装置とを備え、送信装置は、疎密波を送波する疎密波送波部と、固有の識別データをワイヤレス信号を用いて送信する識別データ送信部とを備え、受信装置は、疎密波送波部から送波された疎密波を受波するとともに受波した疎密波を電気信号である受波信号に変換する受波素子を複数個配列したアレイセンサからなる疎密波受波部と、疎密波受波部の各受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と各受波素子の配置位置とに基づいて疎密波受波部に対する疎密波の到来方向を求める位置演算部と、識別データ送信部からの識別データを受信する識別データ受信部と、疎密波受波部により疎密波を受波する期間を識別データが受信された後に設定した既定の受波可能時間内に制限する受波時間制限部とを備えることを特徴とする位置検出システム。
  2. 前記受波時間制限部は、前記識別データ受信部が識別データを受信した時点から既定の遅延時間後に受波可能時間を開始し、当該遅延時間は検出対象が送信装置に対して許容された最小距離に位置するときに送信装置から受信装置まで疎密波が到達するのに要する時間に設定されていることを特徴とする請求項1記載の位置検出システム。
  3. 前記識別データ送信部は前記識別データを一定の時間間隔で間欠的に送信し、前記送信装置は、識別データを送信する時間間隔を設定する指示を受けて発生させた乱数を用いて当該時間間隔を不規則に設定する手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の位置検出システム。
  4. 前記疎密波送波部から送波される疎密波の送波パターンを前記識別データ送信部から送信する識別データに対応付ける識別パターン生成部を備え、前記位置演算部は、前記疎密波受波部で受波した疎密波の受波パターンが前記識別データ受信部で受信した識別データに対応しているときに当該疎密波を用いて疎密波の到来方向を求めることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の位置検出システム。
  5. 前記識別データ送信部は、疎密波送波部から送波する疎密波を伝送媒体に用いるとともに前記識別データを固定長のビット列で表し、各ビット値は疎密波を送波する時間間隔に対応付けていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の位置検出システム。
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