JP2007003412A - 生物学的測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 簡便かつ高感度な生物学的測定方法を提供する。
【解決手段】 被検物質を含む測定試料に対して、被検物質と特異的に結合する第一の物質が結合又は吸着した担体粒子(A)、及び、被検物質と特異的に結合する第二の物質が結合又は吸着した磁性体含有粒子(B)を加えて担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を形成させ、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体の磁性量を測定することにより前記被検物質の定量を行う生物学的測定方法であって、前記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径は、前記担体粒子(A)の平均粒子径よりも小さいものであり、前記担体粒子(A)の粒子径と前記磁性体含有粒子(B)の粒子径との差を利用して、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の前記磁性体含有粒子(B)とを分離し、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集する工程を有する生物学的測定方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、簡便かつ高感度な生物学的測定方法に関する。
抗原−抗体反応、リガンド−レセプター反応、糖−レクチン反応等の生物学的測定方法は、極めて特異性が高い反応であり、このような生物学的反応を利用した測定は、薬物、細菌、疾病等の検査等の医療分野を中心に食品、工業製品、環境試料中の微量物質検出等に広く応用されつつある。なかでも、抗原−抗体反応を利用した生物学的測定方法は、極めて広い分野において利用されている。
生物学的測定方法の最大の利点は、生体の高度な物質間相互作用を利用して、これまで物理化学的な方法ではなし得なかった選択性を有する目的物質の検出、定量等ができることにあり、医療、食品、飲料水、下水、環境試料等の様々な試料中の低分子化合物から生体高分子まで広範囲な物質を検出できる可能性を有している。
近年、このような生物学的反応を利用した自動測定装置が数多く提案されている。例えば、現在最も広く利用されている方法の一つは、酵素結合抗体法(Enzyme−linked Immunosorbent assay)を利用して、被測定物質の検出を自動化するものである。酵素結合抗体法では、通常、固相として96穴ミクロプレート上に抗原又は抗体質を固定し、固定した抗原又は抗体と特異的に結合する酵素標識物質を試料に加えて反応させた後、プレート上の酵素活性から試料中の未知物質の有無や未知濃度を決定する方法である。現在では、酵素標識のみならず蛍光や放射性等の標識も利用されている。この方法は簡便で多検体を一度に分析できる簡便性に優れる。
更に近年では、より簡便かつ迅速であることから、免疫クロマト法が多用されるようになってきている。免疫クロマト法では、通常、少なくとも2種類の抗体を利用したサンドイッチ法が採用されている。即ち、標識された抗体を含む試薬と測定試料とを反応させ、被検物質と標識抗体とを結合し、これをもう一つの抗体が固定化されたクロマト担体に流すことにより、クロマト担体中に標識された抗体が結合した被検物質を捕捉するというものである。このようなサンドイッチ法を採用した免疫クロマト法としては、種々の変法が提案されており、例えば、特許文献1〜5に開示されている。
サンドイッチ法を採用した免疫クロマト法では、標識された抗体が結合した被検物質と、未反応の標識された抗体とをクロマト法を用いて分離している。しかしながら、この方法では、クロマト担体に固定できる抗体の量自体に限界があることから、一度に測定可能な測定試料の量に限界があるという問題があった。また、担体に結合した抗体量が少ない場合には、測定試料中の被検物質とが接触できる機会が少なくなり、測定感度も減少してしまうという問題もあった。
このような免疫クロマト法の問題は、その他の生物学的反応を利用した種々の測定法にも共通するものであった。
特開昭63−159761号公報 特開平2−49161号公報 特表平8−508569号公報 特開平10−73592号公報 特開平10−90267号公報
本発明は、上記現状に鑑み、簡便かつ高感度な生物学的測定方法を提供することを目的とする。
被検物質を含む測定試料に対して、被検物質と特異的に結合する第一の物質が結合又は吸着した担体粒子(A)、及び、被検物質と特異的に結合する第二の物質が結合又は吸着した磁性体含有粒子(B)を加えて担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を形成させ、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体の磁性量を測定することにより前記被検物質の定量を行う生物学的測定方法であって、前記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径は、前記担体粒子(A)の平均粒子径よりも小さいものであり、前記担体粒子(A)の粒子径と前記磁性体含有粒子(B)の粒子径との差を利用して、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の前記磁性体含有粒子(B)とを分離し、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集する工程を有する生物学的測定方法である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の生物学的測定方法は、被検物質を含む測定試料に対して、被検物質と特異的に結合する第一の物質が結合又は吸着した担体粒子(A)、及び、被検物質と特異的に結合する第二の物質が結合又は吸着した磁性体含有粒子(B)を加えて担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を形成させ、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体の磁性量を測定することにより被検物質の定量を行う方法である。
本発明の生物学的測定方法の測定対象となる被検物質としては、生物学的な反応をし得るものであれば特に限定されず、例えば、各種疾病や健康状態等の診断マーカー;農薬や環境ホルモン類等の環境関連物質;食品検査を目的とした化学物質等が挙げられる。なかでも、絨毛性ゴナドトロピン、C反応性タンパク質、黄体形成ホルモン、成長ホルモン、ガン胎児性抗原、αフェトプロテイン、濾胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)等の哺乳動物由来のペプチド又はタンパク質;サルモネラ菌、大腸菌、赤痢菌、結核菌等の微生物由来のタンパク質又は微生物菌体自体;HIVウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス等のウイルス由来のタンパク質又はウイルス粒子自体等の、いわゆる抗原となる物質の検出に本発明の生物学的測定方法は好適に用いることができる。
本発明の生物学的測定方法の対象となる上記被検物質を含む測定試料としては特に限定されず、例えば、尿、血液、血漿、血清、唾液、乳、汗等の体液及びそれらの分画物等の生体由来の試料;井戸水、地下水、水道水、果汁等の天然由来の試料;土壌、汚泥等を水系媒体で抽出した抽出液;食料品、野菜、肉、卵等の粉砕物を水系媒体に懸濁した試料等が挙げられる。
上記担体粒子(A)を構成する被検物質と特異的に結合する第一の物質としては、目的とする被検物質と生物学的に特異的に結合する物質であれば特に限定されず、例えば、被検物質が抗原である場合にはこれに対する抗体等が挙げられる。
上記抗体としては、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよく、キメラ抗体、Fab抗体、(Fab)抗体等の形態であってもよい。
上記担体粒子(A)を構成する担体粒子としては特に限定されず、例えば、ガラスビーズ、有機高分子ビーズ、有機高分子ラテックス等を用いることができる。
上記担体粒子に上記被検物質と特異的に結合する第一の物質を結合又は吸着させる方法としては特に限定されず、例えば、物理吸着法や担体粒子が官能基を有する場合には、該官能基を介して上記被検物質と特異的に結合する物質を共有結合する方法等が挙げられる。
上記磁性体含有粒子(B)を構成する被検物質と特異的に結合する第二の物質としては、上記被検物質と特異的に結合する第一の物質とは被検物質のエピトープが異なるものであり、かつ、目的とする被検物質と生物学的に特異的に結合する物質であれば特に限定されず、例えば、被検物質が抗原である場合にはこれに対する抗体等が挙げられる。
上記抗体としては、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよく、キメラ抗体、Fab抗体、(Fab)抗体等の形態であってもよい。
上記磁性体含有粒子(B)を構成する磁性体含有粒子は、本発明の生物学的測定方法において標識物質として機能するものである。
上記磁性体含有粒子(B)を構成する磁性体含有粒子としては特に限定されず、例えば、スチレン系共重合体等の有機高分子物質をマトリックスとして、四三酸化鉄(Fe)、γ−重三二酸化鉄(γ−Fe)等の各種フェライト類;鉄、マンガン、コバルト等の金属又はこれらの合金等の超常磁性を有する磁性体が分散したもの等が挙げられる。
上記磁性体含有粒子に上記被検物質と特異的に結合する第二の物質を結合又は吸着させる方法としては特に限定されず、例えば、物理吸着法や担体粒子が官能基を有する場合には、該官能基を介して上記被検物質と特異的に結合する物質を共有結合する方法等が挙げられる。
上記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径は、上記担体粒子(A)の平均粒子径よりも小さいものである。本発明の生物学的測定方法では、担体粒子(A)と磁性体含有粒子(B)との平均粒子径の差異を利用して、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の磁性体含有粒子(B)とを分離し、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集する。
上記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径は、担体粒子(A)の平均粒子径の10%以下であることが好ましい。両者の平均粒子径の相違がこれよりも小さい場合には、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の磁性体含有粒子(B)とを分離して担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集することが困難となり、測定精度が低下することがある。
上記担体粒子(A)の平均粒子径の好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は1mmである。0.5μm未満であると、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の磁性体含有粒子(B)とを分離して担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集することが困難となることがあり、1mmを超えると、担体粒子の表面積が小さくなり、所望する感度が得られない場合がある。より好ましい下限は1μm、より好ましい上限は0.1mmである。
上記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径の好ましい下限は0.03μm、好ましい上限は0.5μmである。0.03μm未満であると、自己凝集しやすくなり水系媒体中に分散させるのが困難となることがあり、0.5μmを超えると、水系媒体中で沈降するなど分散性が悪くなることがある。より好ましい下限は0.05μm、より好ましい上限は0.4μmである。
上記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径のCV値は、50%以下であることが好ましい。50%を超えると、定量的な測定を行う場合に誤差を生じることがある。
上記被検物質を含む測定試料に対して、上記担体粒子(A)及び上記磁性体含有粒子(B)を加えれば、上記担体粒子(A)に結合又は吸着した被検物質と特異的に結合する第一の物質が上記被検物質に結合し、一方、上記磁性体含有粒子(B)に結合又は吸着した被検物質と特異的に結合する第二の物質が上記被検物質に結合し、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体が形成される。得られた担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体の磁性量を測定することにより被検物質の定量を行うことができる。
本発明の生物学的測定方法は、担体粒子(A)の粒子径と磁性体含有粒子(B)の粒子径との差を利用して、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の前記磁性体含有粒子(B)とを分離し、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集する工程を有する。担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の前記磁性体含有粒子(B)とを分離することは、被検物質の定量に不可欠の工程である。また、本発明の生物学的測定方法においては、更に、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集することにより、更に、検出感度を高めることができる。
この工程について詳しく説明する。
上記担体粒子(A)の粒子径と磁性体含有粒子(B)の粒子径との差を利用して、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の磁性体含有粒子(B)とを分離し、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集する工程としては、具体的には例えば、担体粒子(A)の平均粒子径よりも小さく、かつ、磁性体含有粒子(B)の平均粒子径よりも大きい孔径のフィルタを用いて、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の前記磁性体含有粒子(B)とを分離し、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体をフィルタ上に捕集する方法(以下、フィルタ法ともいう);磁性体含有粒子(B)の平均粒子径よりも小さく、かつ、磁性体含有粒子(B)の平均粒子径よりも大きい断面積を有する流路チャネル分離部を用いて、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の磁性体含有粒子(B)とを分離し、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を流路チャネル分離部に捕集する方法(以下、流路チャネル法ともいう)の2つの態様が挙げられる。
図1に上記フィルタ法又は流路チャネル法による担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の磁性体含有粒子(B)との分離、及び、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体の捕集の原理を説明する模式図を示した。
図1において、フィルタ又は流路チャネル分離部5の上流においては、測定試料中には、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体4、未反応の担体粒子(A)2、未反応の磁性体含有粒子(B)3が混ざりあった状態にある。平均粒子径から、フィルタ又は流路チャネル分離部5を通過できるのは、未反応の磁性体含有粒子(B)3のみであり、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体4と未反応の担体粒子(A)2とは、フィルタ又は流路チャネル分離部5に捕集される。
なお、この方法では担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体4と未反応の担体粒子(A)2とは分離されないが、本発明の生物学的測定法では、磁性量を測定することにより被検物質の定量を行うことから、磁性を全く帯びない担体粒子(A)が存在しても測定結果には何らの影響も及ぼさない。
上記フィルタの孔径は、担体粒子(A)の平均粒子径よりも小さく、かつ、磁性体含有粒子(B)の平均粒子径よりも大きいものであれば特に限定されないが、好ましい下限は上記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径の2倍、好ましい上限は上記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径の10倍である。2倍未満であると、磁性体含有粒子(B)の一部が通過できないことがあり、10倍を超えると、担体粒子(A)の一部が通過してしまうことがある。
上記フィルタの形状としては特に限定されないが、例えば、シート状であることが好ましい。
上記フィルタとしては、水性媒体からなる測定試料が透過可能であるものであれば特に限定されず、例えば、多孔質膜等を用いることができる。
上記多孔質膜としては特に限定されず、例えば、セルロース、ニトロセルロース、ガラス繊維、ろ紙、スチロール樹脂、ビニル系樹脂等からなるものが挙げられる。また、上記多孔質膜の水性媒体に対する親和性が低い場合には、界面活性剤を用いる等の従来公知の親水化処理を施してもよい。
上記フィルタが多孔質膜からなる場合において、連続した同一の多孔質膜を用いてもよいし、異なる材料を併用してもよい。
上記流路チャネル分離部とは、支持体に流路チャネル(微細な溝)を形成したマイクロチップデバイスに形成された部位を意味する。このようなマイクロチップデバイスを用いる場合、測定試料は微量で行うことができ、また、短時間の測定も可能となる。
上記流路チャネル分離部の断面積は、担体粒子(A)の平均粒子径よりも小さく、かつ、磁性体含有粒子(B)の平均粒子径よりも大きいものであれば特に限定されないが、好ましい下限は上記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径の2倍、好ましい上限は上記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径の10倍である。2倍未満であると、磁性体含有粒子(B)の一部が通過できないことがあり、10倍を超えると、担体粒子(A)の一部が通過してしまうことがある。
上記流路チャネル分離部は、具体的には例えば、マイクロチップデバイスの流路チャネルに突起物等により断面積が狭くなる構造や多孔質構造を形成することにより形成することができる。
上記マイクロチップデバイスを構成する支持体は、計測工程で磁性量を計測することから、非磁性材料であることが好ましい。このような非磁性材料としては特に限定されず、例えば、ガラス、セラミックス、シリコン、ポリオレフィンやポリメチルメタクリレートなどの有機高分子材料等が挙げられる。
上記流路チャネルは、公知のエッチングや微細機械加工等により形成することができる。
本発明の生物学的測定法のより具体的な実施態様について更に説明する。
第1の実施態様は、被検物質を含む測定試料に対して、被検物質と特異的に結合する第一の物質が結合又は吸着した担体粒子(A)、及び、被検物質と特異的に結合する第二の物質が結合又は吸着した磁性体含有粒子(B)を加えて、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を形成させる反応工程と、担体粒子(A)の粒子径と磁性体含有粒子(B)の粒子径との差を利用して、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の磁性体含有粒子(B)とを分離し、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集する分離捕集工程と、捕集された担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体の磁性量を測定する測定工程とを有する。
第1の実施態様では、まず、最初の反応工程において担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を形成させ、次いで、分離捕集工程において未反応の磁性体含有粒子を分離し、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集し、最後の測定工程において捕集された担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体の磁性量を測定する。
第2の実施態様は、被検物質を含む測定試料に対して、被検物質と特異的に結合する第一の物質が結合又は吸着した担体粒子(A)を加えて、担体粒子(A)−被検物質複合体を形成させる第一反応工程と、担体粒子(A)−被検物質複合体を捕集する捕集工程と、捕集された担体粒子(A)−被検物質複合体に被検物質と特異的に結合する第二の物質が結合又は吸着した磁性体含有粒子(B)を加えて、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を形成させると同時に、担体粒子(A)の粒子径と磁性体含有粒子(B)の粒子径との差を利用して、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の磁性体含有粒子(B)とを分離する第二反応−分離工程と、捕集された担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体の磁性量を測定する測定工程とを有する。
第2の実施態様では、まず、最初の第一反応工程において担体粒子(A)−被検物質複合体を形成させる。次いで、捕集工程において上述のフィルタや流路チャネル分離部を利用して担体粒子(A)−被検物質複合体を捕集する。ここに磁性体含有粒子(B)を流せば、その一部は担体粒子(A)−被検物質複合体と反応して担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を形成するが、未反応の磁性体含有粒子(B)は、フィルタや流路チャネル分離部を流れ去る。最後の測定工程において捕集された担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体の磁性量を測定する。
このように、被検物質と担体粒子(A)、磁性体含有粒子(B)との反応の順番は、測定方法にあわせて適宜選択し得る。
本発明の生物学的測定方法は、必要に応じて、測定試料や担体粒子(A)、磁性体含有粒子(B)の導入速度や導入量等を制御する目的で、試料導入量調整工程を有していてもよい。具体的には、例えば、反応工程等後の測定試料をガラス繊維、ろ紙、セルロース等からなる試料導入材料を通過させること等が挙げられる。
本発明の生物学的測定方法は、必要に応じて、反応工程等後に、測定試料を濃縮する目的で、濃縮工程を有していてもよい。濃縮した試料を用いることにより、更に測定感度を向上させることができる。
上記濃縮の方法としては特に限定されず、例えば、上記磁性体含有粒子(B)や、これを含む複合体は、磁性を帯びることから、反応させた溶液を収容する容器の外部より磁場印加手段を適用すれば、容器の内壁に吸着することができる。測定試料の溶媒(上清)の大部分を除去し、磁場を取り除いた後、微少量の分散媒(例えば、バッファー)等により容器の内壁を洗浄すれば、これらの粒子を回収して高度に濃縮することができる。
本発明の生物学的測定方法は、必要に応じて、上記捕集工程後に、過剰の試料を迅速に吸収する目的で吸水工程を有していてもよい。具体的には、例えば、上記フィルタを用いる場合は、その後方に、ガラス繊維、ろ紙やセルロース等の優れた吸水力及び給水容量を有する吸水物質を設置すること等が挙げられる。
本発明の生物学的測定方法は、必要に応じて、上記捕集工程後に、未反応の磁性体含有粒子(B)をより完全に除去する目的で、過剰の緩衝液等による洗浄工程を有していてもよい。
本発明の生物学的測定方法は、上記構成からなることにより、極めて容易に被検物質に反応した標識物質と未反応の標識物質とを分離し、かつ、被検物質に反応した標識物質のみを捕集することができ、磁性量を標識として定性的又は定量的な分析を行うことができる。
本発明によれば、簡便かつ高感度な生物学的測定方法を提供することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
(抗β−hCGモノクローナル抗体結合担体粒子の作製)
担体粒子(ポリスチレン系、平均粒子径50μm、積水化学社製)10mgに20mMリン酸緩衝液(pH7.5)10mLを加え、3000RPMにて20分間遠心分離を行った。得られた沈渣に、20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に抗β−hCGモノクローナル抗体を0.1mg/mLの濃度になるように溶解した溶液を1mL加え、充分に混和して、室温にて1時間撹拌した。
未反応の抗β−hCGモノクローナル抗体を除去するため、3000RPMにて20分間遠心分離を行い、沈渣を20mMリン酸緩衝液(pH7.5)3mLに懸濁させ、再度遠心分離を行った。その沈渣を20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に牛血清アルブミンを1%(w/v)の濃度になるように溶解した溶液3mLに懸濁させ、室温で1時間撹拌し、ブロッキング処理を行った。その後、3000RPMにて20分間遠心分離を行い、沈渣を20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に牛血清アルブミンを1%(w/v)の濃度になるように溶解し、更にアジ化ナトリウムを0.01%(w/v)の濃度になるように溶解した溶液2mLに懸濁させて、抗β−hCGモノクローナル抗体結合担体粒子の懸濁液を調製し、使用までこれを冷蔵保存した。
(抗α−hCGモノクローナル抗体結合磁性体含有粒子の作製)
磁性体含有粒子(ポリスチレン系、磁性体含有量60%、平均粒子径0.3μm、積水化学社製)10mgに20mMリン酸緩衝液(pH7.5)10mLを加え、15000RPMにて20分間遠心分離を行った。得られた沈渣に、20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に抗α−hCGモノクローナル抗体を0.2mg/mLの濃度になるように溶解した溶液を2mL加え、充分に混和して、室温にて1時間撹拌した。
未反応の抗α−hCGモノクローナル抗体を除去するため、15000RPMにて20分間遠心分離を行い、沈渣を20mMリン酸緩衝液(pH7.5)3mLに懸濁させ、再度遠心分離を行った。その沈渣を20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に牛血清アルブミンを1%(w/v)の濃度になるように溶解した溶液3mLに懸濁させ、室温で1時間撹拌し、ブロッキング処理を行った。その後、15000RPMにて20分間遠心分離を行い、沈渣を20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に牛血清アルブミンを1%(w/v)の濃度になるように溶解し、更にアジ化ナトリウムを0.01%(w/v)の濃度になるように溶解した溶液2mLに懸濁させて、抗α−hCGモノクローナル抗体結合磁性体含有粒子の懸濁液を調製し、使用までこれを冷蔵保存した。
(実施例1)
フィルタとしてグラスファイバーフィルタ(AP25、孔径1.5μm、直径90mm、日本ミリポア社製)を吸水用ろ紙(日本ミリポア株式会社製)の上に重ねてフィルタ試験片とした。
20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に抗β−hCGモノクローナル抗体結合担体粒子を1%(w/v)、及び、抗α−hCGモノクローナル抗体結合磁性体含有粒子を0.1%(w/v)の濃度になるように分散し、牛血清アルブミンを1%(w/v)、トリトン−Xを0.01%(w/v)の濃度になるように溶解し、更にアジ化ナトリウムを0.01%(w/v)の濃度になるように溶解した溶液を作製し、得られた溶液100μLを96ウェルマイクロプレート(ナルジェヌンクインターナショナル社製)の各ウェルに添加した。
測定試料として、牛血清アルブミン1%(w/v)、トリトン−100 0.01%(w/v)、及び、hCG濃度が0mIU/mL、10mIU/mL、50mIU/mL、100mIU/mLになるように生理食塩水に溶解した試験液を調製し、各々100μLを溶液が添加されたウェルに添加混合した。
混合10分後、フィルタ試験片の滴下部位にキャピラリーを用いて100μL滴下した。続いて、滴下部位に、牛血清アルブミンを1%(w/v)、トリトン−Xを0.01%(w/v)の濃度の20mMリン酸緩衝液(pH7.5)を100μL滴下した後、フィルタ試験片のグラスファイバーを取り出し、滴下部位の磁性量を、市販のGMRセンサ(差動磁界センサ、NVE社製)を用いて測定した。
(実施例2)
石英ガラス基板内に、深さ100μm、幅200μmの流路チャネル、その流路の先に、深さ5μmの微細な流路チャネル分離部を設けたマイクロチップデバイスを用いた。
20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に抗β−hCGモノクローナル抗体結合担体粒子を1%(w/v)、及び、抗α−hCGモノクローナル抗体結合磁性体含有粒子を0.1%(w/v)の濃度になるように分散し、牛血清アルブミンを1%(w/v)、トリトン−Xを0.01%(w/v)の濃度になるように溶解し、更にアジ化ナトリウムを0.01%(w/v)の濃度になるように溶解した溶液を作製し、得られた溶液100μLを96ウェルマイクロプレート(ナルジェヌンクインターナショナル社製)の各ウェルに添加した。
測定試料として、牛血清アルブミン1%(w/v)、トリトン−100 0.01%(w/v)、及び、hCG濃度が0mIU/mL、10mIU/mL、50mIU/mL、100mIU/mLになるように生理食塩水に溶解した試験液を調製し、各々100μLを溶液が添加されたウェルに添加混合した。
混合1分後、流路チャネル流入部から反応液200μLを送液した。続いて、流路チャネル流入部から牛血清アルブミンを1%(w/v)、トリトン−Xを0.01%(w/v)の濃度の20mMリン酸緩衝液(pH7.5)を200μL送液した後、流路チャネル分離部の磁性量を、市販のGMRセンサ(差動磁界センサ、NVE社製)を用いて測定した。
結果を表1に示した。
Figure 2007003412
表1より、実施例1、2の方法は、低濃度のhCGが検出可能であり、かつ、検出された磁性量はhCG濃度に依存していることが確認された。
(実施例3)
フィルタとしてグラスファイバーフィルタ(AP25、孔径1.5μm、直径90mm、日本ミリポア社製)を吸水用ろ紙(日本ミリポア株式会社製)の上に重ねてフィルタ試験片とした。
20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に抗β−hCGモノクローナル抗体結合担体粒子を1%(w/v)の濃度になるように分散し、牛血清アルブミンを1%(w/v)、トリトン−Xを0.01%(w/v)の濃度になるように溶解し、更にアジ化ナトリウムを0.01%(w/v)の濃度になるように溶解した溶液を作製し、該溶液100μLを96ウェルマイクロプレート(ナルジェヌンクインターナショナル社製)の各ウェルに添加した。
別に、牛血清アルブミンを1%(w/v)、トリトン−X100を0.01%(w/v)の濃度の20mMリン酸緩衝液(pH7.5)を100μL滴下した後、抗α−hCGモノクローナル抗体結合磁性体含有粒子を0.1%(w/v)の濃度になるように溶解し、更にアジ化ナトリウムを0.01%(w/v)の濃度になるように溶解した抗α−hCGモノクローナル抗体結合磁性体含有粒子溶液を調製した。
測定試料として、牛血清アルブミン1%(w/v)、トリトン−100 0.01%(w/v)、及び、hCG濃度が0mIU/mL、10mIU/mL、50mIU/mL、100mIU/mLになるように生理食塩水に溶解した試験液を調製し、各々100μLを溶液が添加されたウェルに添加混合した。
混合10分後、フィルタ試験片の滴下部位にキャピラリーを用いて100μL滴下した。次いで、滴下部位に抗α−hCGモノクローナル抗体結合磁性体含有粒子溶液50μLを滴下した。滴下10分後に、滴下部位に、牛血清アルブミンを1%(w/v)、トリトン−Xを0.01%(w/v)の濃度の20mMリン酸緩衝液(pH7.5)を100μL滴下した。
フィルタ試験片のグラスファイバーを取り出し、滴下部位の磁性量を、市販のGMRセンサ(差動磁界センサ、NVE社製)を用いて測定した。
(実施例4)
石英ガラス基板内に、深さ100μm、幅200μmの流路チャネル、その流路の先に、深さ5μmの微細な流路チャネル分離部を設けたマイクロチップデバイスを用いた。
20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に抗β−hCGモノクローナル抗体結合担体粒子を1%(w/v)の濃度になるように分散し、牛血清アルブミンを1%(w/v)、トリトン−Xを0.01%(w/v)の濃度になるように溶解し、更にアジ化ナトリウムを0.01%(w/v)の濃度になるように溶解した溶液を作製し、該溶液100μLを96ウェルマイクロプレート(ナルジェヌンクインターナショナル社製)の各ウェルに添加した。
別に、牛血清アルブミンを1%(w/v)、トリトン−X100を0.01%(w/v)の濃度の20mMリン酸緩衝液(pH7.5)を100μL滴下した後、抗α−hCGモノクローナル抗体結合磁性体含有粒子を0.1%(w/v)の濃度になるように溶解し、更にアジ化ナトリウムを0.01%(w/v)の濃度になるように溶解した抗α−hCGモノクローナル抗体結合磁性体含有粒子溶液を調製した。
測定試料として、牛血清アルブミン1%(w/v)、トリトン−100 0.01%(w/v)、及び、hCG濃度が0mIU/mL、10mIU/mL、50mIU/mL、100mIU/mLになるように生理食塩水に溶解した試験液を調製し、各々100μLを溶液が添加されたウェルに添加混合した。
混合1分後、流路チャネル流入部から反応液200μLを送液した。続いて、流路チャネル流入部から抗α−hCGモノクローナル抗体結合磁性体含有粒子溶液50μLを送液した。続いて、流路チャネル流入部から牛血清アルブミンを1%(w/v)、トリトン−Xを0.01%(w/v)の濃度の20mMリン酸緩衝液(pH7.5)を100μL送液した。
流路チャネル分離部の磁性量を、市販のGMRセンサ(差動磁界センサ、NVE社製)を用いて測定した。
結果を表2に示した。
Figure 2007003412
表2より、実施例3、4の方法は、低濃度のhCGが検出可能であり、かつ、検出された磁性量はhCG濃度に依存していることが確認された。
本発明によれば、簡便かつ高感度な生物学的測定方法を提供することができる。
フィルタ法又は流路チャネル法による担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の磁性体含有粒子(B)との分離、及び、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体の捕集の原理を説明する模式図である
符号の説明
1 被検物質
2 被検物質と特異的に結合する第一の物質が結合又は吸着した担体粒子(A)
3 被検物質と特異的に結合する第二の物質が結合又は吸着した磁性体含有粒子(B)
4 担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体
5 フィルタ又は流路チャネル分離部

Claims (5)

  1. 被検物質を含む測定試料に対して、被検物質と特異的に結合する第一の物質が結合又は吸着した担体粒子(A)、及び、被検物質と特異的に結合する第二の物質が結合又は吸着した磁性体含有粒子(B)を加えて担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を形成させ、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体の磁性量を測定することにより前記被検物質の定量を行う生物学的測定方法であって、
    前記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径は、前記担体粒子(A)の平均粒子径よりも小さいものであり、
    前記担体粒子(A)の粒子径と前記磁性体含有粒子(B)の粒子径との差を利用して、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の前記磁性体含有粒子(B)とを分離し、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集する工程を有する
    ことを特徴とする生物学的測定方法。
  2. 磁性体含有粒子(B)の平均粒子径は、担体粒子(A)の平均粒子径の10%以下であることを特徴とする請求項1記載の生物学的測定方法。
  3. 磁性体含有粒子(B)は、平均粒子径が0.03〜0.5μmであることを特徴とする請求項2記載の生物学的測定方法。
  4. 担体粒子(A)の粒子径と磁性体含有粒子(B)の粒子径との差を利用して、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の磁性体含有粒子(B)とを分離し、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集する工程は、前記担体粒子(A)の平均粒子径よりも小さく、かつ、前記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径よりも大きい孔径のフィルタを用いて、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の前記磁性体含有粒子(B)とを分離し、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を前記フィルタ上に捕集するものであることを特徴とする請求項2又は3記載の生物学的測定方法。
  5. 担体粒子(A)の粒子径と磁性体含有粒子(B)の粒子径との差を利用して、担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の磁性体含有粒子(B)とを分離し、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を捕集する工程は、前記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径よりも小さく、かつ、前記磁性体含有粒子(B)の平均粒子径よりも大きい断面積を有する流路チャネル分離部を用いて、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体と未反応の前記磁性体含有粒子(B)とを分離し、前記担体粒子(A)−被検物質−磁性体含有粒子(B)複合体を前記流路チャネル分離部に捕集するものであることを特徴とする請求項2又は3記載の生物学的測定方法。
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