JP2007002437A - 浚渫土砂の輸送システム - Google Patents

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Abstract

【課題】 ダム等の大容量貯水池の水底に堆積する多量の土砂を、比較的少ないエネルギとコストで、しかも自然環境への影響を回避しつつ能率よく海等に排出可能とする。
【解決手段】 輸送路Lが、大容量貯水池Dの浚渫土砂をサイフォン作用で水と共に吸い出すサイフォン管Sと、このサイフォン管Sで吸い出された浚渫土砂及び水を含む流動体を海又はその近くの河川まで重力を利用して自然流下させる自然流下経路Pとを備え、自然流下経路Pは、複数条のパイプラインPpと、その相隣なるパイプラインPp間に介在する中継枡Pmと、最下流のパイプラインの下流端に連ねて設けられ、該パイプラインを流下してきた流動体より水を分離して海又はその近くの河川に放流可能であると共に、残余の浚渫土砂を一時的に貯留して回収可能とした水/土砂分離処理手段SEとを有し、輸送路Lには、そこを流れる前記流動体の流動エネルギを電気エネルギに変換する動力変換手段Gが設けられる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、海から離れた高所に在って河川の水が流れ込むダム等の大容量貯水池の浚渫土砂を、該貯水池から海又はその近くの河川まで輸送するための浚渫土砂の輸送システムに関する。
尚、本明細書において「浚渫土砂」とは、ダム等の大容量貯水池の底部の堆積土砂を吸引又は浚渫したときに生じる土砂、泥土、ヘドロ等、又はそれらの混合物を含む。また、本発明において「大容量貯水池」とは、ダムの他、河川上流側からの土砂の堆積による有効深度の低下が問題となる種々の大容量貯水池(例えば湖、遊水池等)が含まれ、人工物及び自然物の如何を問わない。
水力発電や灌漑等に利用される既存のダムが抱える今日的な重要課題として、その上流側から流れてきた土砂が長年に亘りダムの水底に多量に堆積し、その有効深度を浅くしてしまうことによりダムの発電能力が低下したり或いは貯水量が減少する、ということが挙げられている。
そこで、このような問題に対処するために、例えば、ダム水底の堆積土砂を浚渫してダム外に運び出すことが既に試みられており、またその浚渫に当たり、ダムの水底の堆積土砂をサイフォン管で吸い上げ、ダム周辺の回収場所まで輸送するようにした技術が既に提案されている(下記の特許文献1を参照)
特開平11−46515号公報
しかしながら、山中に設けられ道路事情が余り良くないダムの近辺から、ダンプ車両等で多量の浚渫土砂を外部に搬出する作業には多大の手間とエネルギ(従ってコスト)を要するものであり、特にこの問題は、ダムの堆積土砂を、これが本来(ダムが無ければ)流れるべき海までダンプ輸送しようとする場合には顕著となり、更に交通渋滞等の原因ともなる。
なお、このような問題を回避しつつダムの浚渫土砂を海まで運ぶために、例えばその浚渫土砂をダムの直下流の河川に直接放出することも考えられるが、その場合には、下流河川の水質汚濁を生じ、河川の生態系にも影響を及ぼす虞れがある。
そこでダムと海又はその近くの河川との間をパイプラインで接続して、ダムの水底に堆積する多量の土砂を海又はその近くの河川まで重力を利用して(従って少ないエネルギとコストで)パイプライン輸送することが考えられるが、その輸送の際にパイプライン内を流れる流動体のエネルギを一部でも回収することができれば、システム全体のエネルギ効率を高める上で更に有利となり、特にその回収エネルギを、輸送システムにおいて使用される種々の補助的な電動機器の動力として利用可能となれば、省エネ効果が大となる。また、このようなパイプラインを用いた重力輸送システムでは、多量の土砂をパイプライン内でスムーズに流動させるために、ダムから多量の水を土砂と一緒に海又はその近くまで流す必要があるが、土砂を海又はその近くまで輸送した後において、この多量の水をそのまま無駄に海や川に捨てたのでは、水資源の節約を図る上で好ましいものではない。
本発明は、上記に鑑み提案されたものであって、ダム等の大容量貯水池の水底に堆積する多量の土砂を少ないエネルギとコストで、しかも自然環境に極力影響が出ないよう配慮しながら、能率よく海又はその近くの河川までパイプライン輸送できるようにし、更にそのパイプライン輸送中の流動体のエネルギを一部回収可能として省エネを図り、更にまたパイプラインを流下する流動体中の水の一部を、エネルギを無駄に消費することなく大容量貯水池や他の貯水池に戻せるようにした、新規な浚渫土砂の輸送システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、海から離れた高所に在って河川の水が流れ込む大容量貯水池の浚渫土砂を該貯水池から海又はその近くの河川まで輸送する輸送路を備え、この輸送路が、大容量貯水池の浚渫土砂をサイフォン作用で水と共に吸い出すサイフォン管と、このサイフォン管の下流端に連なり、同管で吸い出された浚渫土砂及び水を含む流動体を海又はその近くの河川まで重力を利用して自然流下させる自然流下経路とを少なくとも含む浚渫土砂の輸送システムであって、前記自然流下経路は、相互に縦列配置される複数条のパイプラインと、その相隣なるパイプライン間に介在していて、上流側のパイプラインから流下してきた流動体を一時的に貯留し下流側のパイプラインに放流可能な中継枡と、最下流のパイプラインの下流端に連ねて設けられ、該パイプラインを流下してきた流動体より水を分離して海又はその近くの河川に放流可能であると共に、残余の浚渫土砂を一時的に貯留してその少なくとも一部を回収可能とした水/土砂分離処理手段とを有しており、前記輸送路には、そこを流れる前記流動体の流動エネルギを電気エネルギに変換し得る動力変換手段が設けられることを特徴とする。
また請求項2の発明は、請求項1の上記構成に加えて、前記動力変換手段には、それが変換した電気エネルギを少なくとも用いて駆動され前記輸送システム中で使用される電動機器が接続されることを特徴とする。
また請求項3の発明は、請求項1又は2の上記構成に加えて、前記水/土砂分離処理手段と前記大容量貯水池又は所定の戻し水用貯水池との間には、その間を接続する還流路が前記自然流下経路から独立して設けられ、この還流路には、前記水/土砂分離処理手段で流動体より分離された水を前記大容量貯水池又は戻し水用貯水池まで汲み上げるべく、前記動力変換手段で変換された電気エネルギで駆動される少なくとも1つの汲み上げ用電動ポンプが設けられることを特徴としており、また請求項4の発明は、請求項3の上記構成に加えて、前記還流路が、互いに縦列配置されて前記水/土砂分離処理手段と前記大容量貯水池又は戻し水用貯水池との間を接続する複数の戻り配管と、その相隣なる戻り配管間に介在していて、下流側の戻り配管から上昇流動してきた戻し水を一時的に貯留可能な複数の戻り用中継槽とを備え、前記複数の戻り配管には、個々の戻り配管の上流端から下流端まで戻り水を上昇流動させるべく、その各々の戻り配管毎に前記汲み上げ用電動ポンプが設けられることを特徴とする。
また請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかの構成に加えて、前記サイフォン管及び自然流下経路の少なくとも一方には、その流路を開度調節可能に開閉する少なくとも1つの開閉弁が設けられることを特徴とする。
また請求項6の発明は、請求項1〜5の何れかの構成に加えて、前記水/土砂分離処理手段が、前記最下流のパイプラインを経て流下してきた流動体を受容して該流動体中の浚渫土砂を沈殿させる複数の沈殿槽が、その各々の沈殿槽内の流動体中の上澄み水を順次下流の沈殿槽にオーバフローさせ得るように配列して構成され、その最下流の沈殿槽からオーバフローした上澄み水を海又はその近くの河川に放流するようにしたことを特徴としている。
さらに請求項7の発明は、請求項1〜6の何れかの構成に加えて、各中継枡が、上流側のパイプラインが接続される入口部と、下流側のパイプラインが接続される出口部とを備えており、それら入口部及び出口部にそれぞれ開閉弁が設けられることを特徴とする。
さらに請求項8の発明は、請求項1〜7の何れかの構成に加えて、少なくとも1つの中継枡を迂回して、その入口部よりも上流側のパイプラインとその出口部よりも下流側のパイプラインとの間を接続するバイパス路を備え、そのバイパス路には、これを随時に遮断し得る開閉弁が設けられることを特徴とする。
さらに請求項9の発明は、請求項1〜8の何れかの構成に加えて、前記サイフォン管内、少なくとも1つの中継枡内または少なくとも1部の前記パイプライン内に無数の微細気泡を供給するためのマイクロバブル供給手段を備えることをことを特徴とする。
以上のように本発明によれば、海から離れた高所に在る大容量貯水池の浚渫土砂を、サイフォン管のサイフォン作用で水と共に吸い出し、次いで自然流下通路を経由して海又はその近くの河川まで自然流下させるようにしたので、重力を利用して大容量貯水池の浚渫土砂を海又はその近くの河川まで無理なく且つ緩やかに輸送することができ、その輸送のためのエネルギ節減とコスト低減を図ることができ、また途中の河川水域を浚渫土砂で汚濁したり生態系に影響を与える心配がなく、更にダンプ車両による輸送の場合のように交通渋滞等の不具合を招く虞れもない。また上記自然流下経路が、相互に縦列配置される複数条のパイプラインと、その相隣なるパイプライン間に介在していて、上流側のパイプラインから流下してきた流動体を一時的に貯留し下流側に放流可能な中継枡とを有するので、個々のパイプラインの内圧を軽減できてその耐久性を高めることができ、またパイプラインに対するメンテナンスも、中継枡で区切られたパイプライン単位で行えるため、そのメンテナンス作業が比較的容易となる。また最下流のパイプラインの下流端に連ねて配設される水/土砂分離処理手段によって、自然流下経路を経て流下してきた流動体より比較的清浄な水だけを海又はその近くの河川に放流可能であり、しかもその水/土砂分離処理手段に残余の浚渫土砂を一時的に貯留してその少なくとも一部を回収できることから、浚渫土砂の全部が海又はその近くの河川にそのまま放出される場合と比べて、海又はその近くの河川の水質汚濁や生態系への影響を極力抑えることができる。その上、輸送路には、そこを流れる流動体の流動エネルギを電気エネルギに変換し得る動力変換手段が設けられるので、重力を利用して大容量貯水池の浚渫土砂を海又はその近くの河川まで自然流下させる過程で、その流動エネルギを電気エネルギに変換して、これを効率よく利用することができる。
また特に請求項2の発明によれば、前記動力変換手段が変換した電気エネルギが、輸送システム中で使用される電動機器(例えばサイフォン管内にサイフォン作用開始のための呼び水を供給する電動ポンプ、サイフォン管のサイフォン作用を助勢する電動ポンプ、パイプライン等の内部に無数の微細気泡を供給するための電動式のマイクロバブル供給手段、他の大容量貯水池からその近くの中継枡まで浚渫土砂を吸引圧送し得る電動ポンプ等)の動力として有効利用できて、システム全体のエネルギ節減が図られる。しかも動力変換手段と上記電動機器とを比較的近くに配置可能であることから、その間の電気配線を簡素化してコスト節減が図られる。
また特に請求項3の発明によれば、水/土砂分離処理手段と大容量貯水池又は所定の戻し水用貯水池との間には、その間を接続する還流路が自然流下経路から独立して設けられ、この還流路には、水/土砂分離処理手段で流動体より分離された水を大容量貯水池又は戻し水用貯水池まで戻し水として汲み上げるべく、前記動力変換手段で変換された電気エネルギで駆動される少なくとも1つの汲み上げ用電動ポンプが設けられるので、水/土砂分離処理手段で流動体より分離された水の一部を、ただ海や河川に捨てるのではなく、大容量貯水池又は戻し水用貯水池までエネルギ節減を図りつつ強制的に戻すことができ、従って、この戻し水を灌漑等に有効利用できて水資源の節約に寄与することができる。
また特に請求項4の発明によれば、前記還流路が、互いに縦列配置されて水/土砂分離処理手段と大容量貯水池又は戻し水用貯水池との間を接続する複数の戻り配管と、その相隣なる戻り配管間に介在していて、下流側の戻り配管から上昇流動してきた戻し水を一時的に貯留可能な複数の戻り用中継槽とを備え、複数の戻り配管には、個々の戻り配管の上流端から下流端まで戻り水を上昇流動させるべく、その各々の戻り配管毎に前記汲み上げ用電動ポンプが設けられるので、水/土砂分離処理手段と、これから水を戻すべき大容量貯水池又は戻し水用貯水池との間の高低差が大きくても、比較的小容量の汲み上げ用電動ポンプで無理なく戻し水を圧送可能であり、電動ポンプのコスト節減と耐久性向上が図られる。
また特に請求項5の発明によれば、前記輸送路を構成するサイフォン管及び自然流下経路の少なくとも一方には、その流路を開度調節可能に開閉する少なくとも1つの開閉弁が設けられるので、該開閉弁の開度調節により、一連の輸送システムの起動や停止、運転に当たり、ウォータハンマー現象、流速のオーバースピード、キャビテーション等の不都合を回避しながらシステムの適切な制御が可能となり、システム各部の耐久性向上が図られる。
また特に請求項6の発明によれば、前記水/土砂分離処理手段は、最下流のパイプラインを経て流下してきた流動体を受容して該流動体中の浚渫土砂を沈殿させる複数の沈殿槽が、その各々の沈殿槽内の流動体中の上澄み水を順次下流の沈殿槽にオーバフローさせ得るように配列して構成され、その最下流の沈殿槽からオーバフローした上澄み水を海又はその近くの河川に放流するようにしたので、その放流水の清浄度を高めることができて、海又はその近くの河川の水質汚濁や生態系への影響が一層効果的に抑えられる。
また特に請求項7の発明によれば、各中継枡が、上流側のパイプラインが接続される入口部と、下流側のパイプラインが接続される出口部とを備えており、それら入口部及び出口部にそれぞれ開閉弁が設けられるので、それら開閉弁の適宜開閉により、前述のパイプラインのメンテナンス作業を一層能率よく的確に行うことが可能となり、また個々のパイプラインを流れる流動体の流速調整や緊急時等の流動停止も比較的容易となる。
さらに請求項8の発明によれば、少なくとも1つの中継枡を迂回して、その入口部よりも上流側のパイプラインとその出口部よりも下流側のパイプラインとの間を接続するバイパス路を備え、そのバイパス路には、これを随時に遮断し得る開閉弁が設けられるので、一部の中継枡が土砂で埋まる等して使用不能となった場合等には、その中継枡の入口及び出口を塞ぐと共に、対応するバイパス路の開閉弁を開くことにより、上流からの流動体を該使用不能の中継枡をバイパスして下流側に流すことができ、従って、システムの運転を引き続き支障なく行うことができる。
また特に請求項9の発明によれば、サイフォン管内、少なくとも1つの中継枡内または少なくとも1部のパイプライン内に無数の微細気泡を供給するための電動式のマイクロバブル供給手段を備えるので、その無数の微細気泡の流動体中への混入分散効果により、流動体と、サイフォン管又はパイプライン内面との間の摩擦抵抗を効果的に低減できる上、流動体の密度を軽減できるようになって、流動体をスムーズに流動させることが可能となる。また上記流動体中の好気性微生物と微細気泡の酸素とを十分に接触させることができて、その微生物を活性化させることができるため、海又は河口近くに達した流動体の臭気・濁度が向上し、溶存酸素量も増えて、環境対策上、有利である。
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
添付図面において、図1〜図8は、本発明の第1実施例を示すものであって、図1は、浚渫土砂輸送システムの概要を示す全体概略縦断面図、図2は図1の2矢視部拡大図、図3は図1の3矢視部拡大図、図4は図3の4−4線拡大断面図、図5は、水/土砂分離処理手段の要部縦断面図(図1の5矢視部拡大図)、図6は図5の6矢視平面図である。また図7は、本発明の第2実施例を示す要部拡大縦断面図である。
先ず、第1実施例について説明する。図1において、浚渫土砂輸送システムは、海Oから離れた高所に在って河川Rの水が流れ込む大容量貯水池としてのダムDで行われた浚渫作業により生じた浚渫土砂1を、該ダムDから海O又はその近くの河川Rまで重力を利用して輸送するために用いられる。
この輸送システムは、ダムDの浚渫土砂1をサイフォン作用で水と共に吸い出すサイフォン管Sと、このサイフォン管Sの下流端に連なり、同管Sで吸い出された浚渫土砂1及び水を含む流動体を海O又はその近くの河川Rまで重力を利用して自然流下させる自然流下経路Pと、この自然流下経路Pを経て流下してきた前記流動体より水を分離して海O又はその近くの河川Rに放流可能であると共に残余の浚渫土砂1を一時的に貯留してその少なくとも一部を回収可能な水/土砂分離処理手段SEとを備える。
前記サイフォン管Sは、図示例ではダムDの貯留水面上を任意に移動可能な浚渫作業船Bに設けられて吸込口Ueが水中で昇降可能な可動吸込管Uと、この可動吸込管Uの下流端に一端が連なり且つその他端がダムDの直下流側で且つダムDよりも低位置に設けた中継枡Pm0までダムDの堰を越えて下方に長く延びる搬送管Aとを備えており、前記可動吸込管U及び搬送管Aが互いに協働してサイフォン管Sを構成する。
而して可動吸込管Uの吸込口UeをダムDの水底の堆積土砂1又はその近傍に臨ませ、浚渫作業船Bに設置されてサイフォン管Sに接続した給水ポンプRyに呼び水機能を発揮させてサイフォン管Sのサイフォン作用を開始させる。これにより、サイフォン管Sは、その吸込口Ueよりダム水底の堆積土砂1を水と共に吸い上げ、その管内を通して中継枡Pm0まで徐々に且つ連続的に流動させることができる。
またサイフォン管Sの途中には、その管を随時に遮断して前記サイフォン作用を一時的に中断し得る開閉弁V1と、そのサイフォン管S内に空気を混入させて該管Sのサイフォン作用による吸込力の調整を行なうための混気手段(図示せず)とが設けられる。また浚渫作業船Bには、可動吸込管Uの吸込口Ueを任意の高さに昇降駆動し得る駆動手段2が設けられており、また該作業船Bを自力走行させるための推進手段(図示せず)も設けられる。
前記中継枡Pm0は、ダムDの直下流側に在ってサイフォン管Sからサイフォン作用で自然流下してきた浚渫土砂1及び水を含む流動体を一時的に貯留し下流側に徐々に放流可能としたものであって、その構造は、後述する自然流下経路Pにおいて設けられる中継枡Pmと基本的に同じである。即ち、容量の大きい水槽状に形成された枡ユニットケース3が地面に定置されており、その枡ユニットケース3の内部は、隔壁3mにより2室に区画され、その一方の室が中継枡Pm0となり、また他方の室が後述する戻り水用中継槽Kmとなる。
前記中継枡Pm0の、比較的高位置に開口した入口部3iには、サイフォン管S(図示例では搬送管A)の下流端が接続され、またその中継枡Pm0の比較的低位置に開口した出口部3oには、自然流下経路Pにおいて最上流に位置するパイプラインPpの上流端が接続される。またその中継枡Pm0の入口部3i及び出口部3oには、その各々を個別に開閉可能とすべく開閉弁Vi,Veがそれぞれ設けられる。
前記自然流下経路Pは、相互に縦列配置される複数条のパイプラインPp…と、その相隣なるパイプラインPp,Pp間に介在していて、上流側のパイプラインPpから流下してきた浚渫土砂1及び水を含む流動体を一時的に貯留し下流側のパイプラインPpに徐々に放流可能な中継枡Pmとを備える。その中継枡Pmは、前記自然流下経路Pの全長と、その自然流下経路Pの上,下流端間の高低差等を踏まえて、各パイプラインPpにおける流動体のスムーズな自然流下を確保すべく適当な距離をおいて且つ適当な高低差を以って複数設置されるが、下流側の中継枡Pmになるほど、低位置に置かれることは勿論である。また各パイプラインPpは、基本的には下り傾斜又は水平に配置されるが、途中の地形等によっては一部が上り傾斜であってもよい。
相隣なる2つの中継枡Pm間を接続する1条のパイプラインPpは、相互に縦列配置される多数条のパイプライン要素4…を直列に接続して構成されており、その少なくとも一部のパイプライン要素4は、パイプラインPpの長さ方向に互いに間隔をおいて地面に立設固定したコンクリート製の支持枠5に支持される。
また各々の中継枡Pmは、前記したサイフォン管S下流端の前記中継枡Pm0と基本的に同じ構造であって、枡ユニットケース3内部の、隔壁3mにより区画された2室の一方が中継枡Pmとなり、他方が後述する戻り水用中継槽Kmとなる。前記中継枡Pmの入口部3iには上流側のパイプラインPpの下流端が接続され、またその出口部3eには下流側のパイプラインPpの上流端が接続される。そして、それら入口部3i及び出口部3eには開閉弁Vi,Veが各々設けられる。
パイプラインPpには各中継枡Pmを迂回するバイパス路Pbが接続される。即ち、そのバイパス路Pbは、各中継枡Pmの入口部3iよりも上流側のパイプラインPpとその出口部3eよりも下流側のパイプラインPpとの間を接続するように配設され、そのバイパス路Pbの途中には、該バイパス路Pbを随時に遮断し得る開閉弁Vbが設けられる。従って、浚渫土砂の輸送時に中継枡Pmが万一、土砂で埋まる等して使用不能となった場合等には、その中継枡Pmの入口3i及び出口3eを開閉弁Vi,Veで閉じると共に、対応するバイパス路Pbの開閉弁Vbを開くことにより、上流からの流動体を、使用不能の中継枡Pmをバイパスして下流側に流すことができるため、輸送システムの運転を引き続き支障なく行うことができ、その間に使用不能状態の中継枡Pmの復旧作業を並行して行うことが可能である。
少なくとも一部の中継枡(図示例では上流端の中継枡Pm0)及び中流の少なくとも一部のパイプラインPpには、パイプラインPpの内部に直径が100μm以下の非常に小さな無数の微細気泡(空気)を供給するためのマイクロバブル供給手段Mが付設される。このマイクロバブル供給手段Mは、中継枡Pm0内またはパイプラインPp内より水を吸い込んで加圧するポンプ6と、そのポンプ6で加圧された水の中に微細気泡を十分に分散、混合させた混相流を発生させる混相流発生装置7と、その混相流発生装置7で発生した混相流を下流側のパイプラインPpに合流させて、そのパイプラインPpを流れる前記流動体に微細気泡を混合させる配管8とを備える。尚、このような微細気泡を水中に大量に混合させる混相流発生装置は、従来公知であって既に工業的にも量産されている(例えば特開2000-447号公報、特開平7-265057号公報等を参照)。
上記微細気泡は、いわゆる「マイクロバブル」と呼ばれるものであって、単にマクロサイズの気泡が小さくなったというだけではなく、そのサイズ効果により様々な物理化学特性を発揮する。例えば、この微細気泡は水中で恰も静止している如く非常に緩やかに上昇し、また水中で気泡相互が優れた均一性、分散性を発揮し、更に水中への気体吸収効率が高く、酸素溶存量を迅速に上昇させることができる等の特徴がある。そして、このような無数の微細気泡を、パイプラインPp中の浚渫土砂と水を含む流動体中に混合、分散させると、その流動体とパイプラインPp内面との間の摩擦抵抗を効果的に低減できてパイプラインPpの耐久性が向上し、その上、流動体の密度を軽減できるようになって、比較的小さな高低差であっても流動体をスムーズに流下させることが可能となる。また上記流動体中の好気性微生物と微細気泡の酸素とを十分に接触させることができて、その微生物を活性化させることができるため、海Oの近くまで到達したときの流動体の臭気・濁度が向上し、溶存酸素量も増えることから、海Oへ放流される水の水質も良好となり、環境対策上、有利である。
上記マイクロバブル供給手段Mは、これを浚渫作業船B上や、他の中継枡Pmに付設してもよく、これにより、サイフォン管S内や他の中継枡Pm近傍のパイプラインPp内を流れる浚渫土砂1及び水を含む流動体にも上記微細気泡を分散、混合させることができるようになる。
サイフォン管Sに介装される前記開閉弁V1は、その開度を任意に微調節可能に構成されるものであり、その開度調節により、一連の輸送システムの起動や停止、運転に当たり、ウォータハンマー現象、流速のオーバースピード、キャビテーション等の不都合を回避しながらシステムの適切な制御が可能となり、システム各部の耐久性向上が図られる。尚、この開閉弁V1と同様の構造・機能を有する複数の開閉弁V2〜VnがパイプラインPpの適所に相互に間隔をおいて介装されており、そのうち最下流端にある開閉弁Vnだけを図5,図6に示し、他の開閉弁の図示は省略する。
次に図5,図6を併せて参照して、前記水/土砂分離処理手段SEの構造を説明する。この水/土砂分離処理手段SEは、自然流下経路Pの最下流のパイプラインPpの下流端に連ねて配設されるものであり、図示例では、河口Reの河川敷10に配設される。
この水/土砂分離処理手段SEは、前記自然流下経路Pを経て流下してきた浚渫土砂1及び水を含む流動体を受容して該流動体中の浚渫土砂1を沈殿させる複数の沈殿槽A1〜A3が、その各々の沈殿槽A1〜A3内の流動体中の上澄み水を順次下流の沈殿槽にオーバフローさせ得るように配列して構成され、その最下流の沈殿槽A3からオーバフローした上澄み水を海Oを直接放流するようにしている。
前記複数の沈殿槽A1〜A3は、その各々の上面が開放された比較的浅い水槽状に構成されていて、河口Re近くの河川敷10にその上流側から下流側に順次、直列状態で配設される。沈殿槽A1〜A3の各海側に設けられる堰11〜13は、下流側のもの程、低くなるように形成され、各沈殿槽A1〜A3には、下流側のものほど粒径の細かい浚渫土砂が沈殿するようになる。
前記輸送路Lの適所、例えばサイフォン管Sの途中、パイプラインPpにおける少なくとも一部の中継枡Pmの直上流部、パイプラインPpにおける水/土砂分離処理手段SEの直上流部には、そこを流れる前記流動体の流動エネルギを電気エネルギに変換可能な動力変換手段としての水力発電装置Gが設けられる。その各水力発電装置Gは、図示例ではサイフォン管S内またはパイプラインPp内に回転自在に設けられて、そこを流れる流動体の流動エネルギを回転エネルギに変換する羽根車Gaと、サイフォン管SまたはパイプラインPpの外側に配設された発電機Gbと、その発電機Gbに羽根車Gaの回転運動を伝達する伝動機構Gcとを備えており、羽根車Gaの回転エネルギが発電機Gbで電気エネルギに変換される。
その水力発電装置Gは、これが発電した電気エネルギを最寄りの電動機器に供給すべく該電動機器に接続される。例えば、図2に示されるサイフォン管Sに設けられた水力発電装置Gは、浚渫作業船B内の電動機器(サイフォン管Sにサイフォン作用を開始させるための呼び水用給水ポンプRy、可動吸込管Uを昇降駆動するための図示しない昇降用電動モータ、サイフォン管Sのサイフォン作用を助勢するための図示しない電動ポンプ等)や、ダムD直下の中継枡Pm0に付設されるマイクロバブル供給手段Mの電動ポンプ6等、ダムD直下の中継槽Km内に設けられる汲み上げ用電動ポンプKx等に接続されて、これら電動機器を駆動する。また図3に示されるパイプラインPpに設けられた水力発電装置Gは、その近くの中継槽Km内に設けられる汲み上げ用電動ポンプKxや、その近くのパイプラインPpに付設されるマイクロバブル供給手段Mの電動ポンプ6等に接続されて、これら電動機器を駆動する。
また、前記水/土砂分離処理手段SEとダムDとの間には、その間を接続する還流路Kが前記自然流下経路Pから独立して設けられる。この還流路Kには、水/土砂分離処理手段SEで流動体より分離された水をダムDまで汲み上げるべく、前記動力変換手段としての水力発電装置Gで変換された電気エネルギで駆動される少なくとも1つの汲み上げ用電動ポンプKxが設けられる。
前記還流路Kは、パイプラインPpに略沿うように互いに縦列配置されて水/土砂分離処理手段SEとダムDとの間を接続する複数の戻り配管Kpと、その相隣なる戻り配管Kp間に介在していて、下流側の戻り配管Kpから上昇流動してきた戻し水を一時的に貯留可能な複数の戻り用中継槽Kmとを備えており、前記複数の戻り配管Kpには、個々の戻り配管Kpの上流端から下流端まで戻り水を上昇流動させるべく、その各々の戻り配管Kp毎に前記汲み上げ用電動ポンプKxが設けられる。
而して、最上流の(従って最も低位置にある)戻り配管Kpの上流端は、水/土砂分離処理手段SEにおいて最も清浄な水を分離可能な最下流の沈殿槽A3内に開口しており、その開口部には、該最下流の沈殿槽A3内の水を吸い込んで該戻り配管Kp内を強制的に上昇流動させる汲み上げ用電動ポンプKxが設けられる。また、中間の戻り配管Kpの上流端は、対応する戻り用中継槽Km内に開口しており、その開口部には、該中継槽Km内の水を吸い込んで更に上側の戻り配管Kp内を強制的に上昇流動させて上側の中継槽Km内(又はダムD内)に向かわせる汲み上げ用電動ポンプKxが設けられる。そして最下流の(従って最も高位置にある)戻り配管Kpの下流端は、ダムD内に開口している。
各中継槽Kmは、前述のように輸送路Lに介設される各中継枡Pm0,Pmにそれぞれ隔壁3mを挟んで隣接して共通の枡ユニットケース3内に設けられており、これにより、中継設備の小型、簡素化が図られる。
次に本実施例の作用を説明する。ダムDの水底の浚渫に当たっては、浚渫作業船BをダムDの周辺で組立てダムDの水面に浮かせる。次いでその浚渫作業船Bより可動吸込管Uの先部側を下降させ、その先端の吸込口Ueを水底の土砂堆積層に臨ませる。この状態で、サイフォン管Sに接続した図示しない吸水ポンプによる呼び水作用により、サイフォン管Sのサイフォン作用を開始させる。
そのサイフォン作用が一旦開始されると、吸水ポンプを停止させてもサイフォン作用は引き続き継続され、そのサイフォン作用により、ダムDの水底の堆積土砂1を水と共に吸い上げてダムDの直下流の中継枡Pm0内に徐々に且つ連続的に排出する。このような浚渫作業の進捗に伴い、浚渫作業船Bの位置を少しずつ移動させていき、かくして、少ないエネルギとコストでダムDの水底の堆積土砂1をその水底の略全域に亘って能率よく浚渫可能となる。
サイフォン管Sを経て最初の中継枡Pm0内に流下してきた浚渫土砂1及び水を含む流動体は、中継枡Pm0内で浚渫土砂1の一部が沈殿、堆積し、その残余の浚渫土砂1と水を含む流動体は、出口部3eより本発明の自然流下経路P(最上流のパイプラインPp)に放流され、その自然流下経路Pを重力により徐々に且つ連続的に自然流下する。
そして、浚渫土砂1及び水を含む流動体が前記自然流下経路Pを自然流下する間において、上流側のパイプラインPpを流下して次の中継枡Pm内に達した流動体は、その中継枡Pm0内で浚渫土砂1の一部が沈殿、堆積し、その残余の浚渫土砂1と水を含む流動体は、出口部3eより下流側のパイプラインPpに放流され、そのパイプラインPp内を重力により自然流下する。この場合において、各々の中継枡Pm0,Pmの入口側の開閉弁Viの開度調節により、中継枡Pm0,Pm内への流動体の流入量調整が可能であり、また同中継枡Pm0,Pmの出口側の開閉弁Veの開度調節により、下流側のパイプラインPpへの流動体の流出量調整が可能である。尚、輸送路Lの各所に設けられた前記開閉弁V1〜Vnの開度調節によっても、輸送路L内を流れる前記流動体の流速調整が可能である。
而して浚渫土砂1及び水を含む流動体は、各中継枡Pmにおいて上記の過程を繰り返して下流側に徐々に移動し、遂には河口Re近くの河川敷10にある水/土砂分離処理手段SEに達する。この水/土砂分離処理手段SEにおいては、河川敷10に川の流れ方向に沿って直列配置された複数の沈殿槽A1〜A3で、前記流動体が順次受容されて該流動体中の浚渫土砂1を順次沈殿させ、その各々の沈殿槽A1〜A3内の流動体中の上澄み水は順次下流の沈殿槽にオーバフローし、最後は最下流の沈殿槽A3からオーバフローした上澄み水が海Oに直接放流される。この場合、各沈殿槽A1〜A3には、下流側のものほど粒径の細かい浚渫土砂が沈殿、堆積するようになるので、その各沈殿槽A1〜A3に貯め置いた浚渫土砂1を外部より難なく採取することができて、それを、その粒径サイズに応じて建設資材、農業用資材その他の用途に有効に利用できる。このように浚渫土砂1の一部又は全部を各沈殿槽A1〜A3に集めて回収することにより、海Oには浚渫土砂1の殆どない又は全然ない比較的奇麗な水だけを放流できるため、水域の汚染防止に効果的である。
ところで浚渫土砂1の途中回収は、必要に応じて、水/土砂分離処理手段SEよりも上流側の少なくとも一部の中継枡Pm0,Pm…においても行うことが可能である。
即ち、その各中継枡Pm0,Pm内に沈殿、堆積した浚渫土砂1は、その一部を上面開放の各中継枡Pm0,Pmより容易に採取、回収できて、それを建設用資材、農業用資材その他の用途に再利用できるため、その各中継枡Pm0,Pmより下流側のパイプラインPpには浚渫土砂1の含有量を減らした比較的奇麗な、浚渫土砂及び水を含む流動体を放流可能となり、従って、最下流での前記水/土砂分離処理手段SEによる浚渫土砂1の分離回収効果とも相俟って、海Oに放流する水の浄化を十分に行うことができ、放流水域の汚染防止に一層効果的となる。このように少なくとも1つの中継枡Pm0,Pm内に沈殿、堆積した浚渫土砂1の少なくとも一部を回収して、下流側のパイプラインPpに流れないようにすれば、中継枡Pm0,Pmの近隣の地域で浚渫土砂1を建設資材、農業用資材等として再利用する場合に好都合であり、またその再利用分だけ浚渫土砂1の海側への流動分を減少させることができる。
また本実施例では、輸送路Lに、そこを流れる流動体の流動エネルギを電気エネルギに変換する動力変換手段としての水力発電装置Gが設けられており、重力を利用してダムDの浚渫土砂を海O又はその近くの河川Rまで自然流下させる過程で、その流動エネルギを電気エネルギに変換して、これを、輸送システム中で使用される前述のような各種の電動機器の動力として効率よく利用することができ、しかもその水力発電装置Gと輸送システム中の上記電動機器とを比較的近くに配置可能であることから、その間の電気配線を簡素化してコスト節減を図ることができる。
また特に水/土砂分離処理手段SEとダムDとの間には、その間を接続する還流路Kが自然流下経路Pから独立して設けられ、この還流路Kには、水/土砂分離処理手段SEで流動体より分離された水をダムDまで戻し水として汲み上げる汲み上げ用電動ポンプKxが設けられるので、水/土砂分離処理手段SEで流動体より分離された水の一部を、ただ海や河川に捨てるのではなく、ダムDまでエネルギ節減を図りつつ強制的に戻すことができる。
しかもこの還流路Kは、互いに縦列配置されて水/土砂分離処理手段SEとダムDとの間を接続する複数の戻り配管Kpと、その相隣なる戻り配管Kp間に介在していて、下流側の戻り配管Kpから上昇流動してきた戻し水を一時的に貯留可能な複数の戻り用中継槽Kmとを備えていて、個々の戻り配管Kp毎に前記汲み上げ用電動ポンプKxが設けられる。そのため、水/土砂分離処理手段SEと、これから水を戻すべきダムDとの間の高低差や距離が大きくても、単一の汲み上げ用電動ポンプKxで水/土砂分離処理手段SEからダムDまで水を一気に汲み上げる必要はなく、即ち、個々の汲み上げ用電動ポンプKxで、水/土砂分離処理手段SEから直ぐ上側の中継槽Kmまで、或いは中継槽Kmから直ぐ上側の中継槽Kmまで、或いはダムD直下の中継槽KmからダムDまでの比較的短く且つ高低差が小さい区間で水を汲み上げるだけで足りる。これにより、比較的小容量の汲み上げ用電動ポンプKxを使用しても、ダムDまで無理なく戻し水を圧送可能であり、電動ポンプKxのコスト節減と耐久性向上が図られる。
以上、本実施例によれば、海Oから離れた高所に在るダムDの浚渫土砂1を、サイフォン管Sのサイフォン作用で水と共に吸い出し、次いで自然流下通路Pを経由して海Oまで自然流下させるので、重力を利用してダムDの浚渫土砂を海Oまで無理なく且つ緩やかに輸送することができ、その輸送のためのエネルギ節減とコスト低減を図ることができ、また途中の河川水域を浚渫土砂で汚濁したり生態系に影響を与える心配がなく、更にダンプ車両による輸送の場合のように交通渋滞、空気汚染、振動騒音等の不具合を招く虞れもない。また上記自然流下経路Pは、相互に縦列配置した複数条のパイプラインPpの相隣なるもの同士を中継枡Pmで接続して構成されるので、中継枡の無い場合と比べてパイプラインPpの内圧を十分に軽減できてその耐久性が高められ、またパイプラインPpに対するメンテナンスも、中継枡Pmで区切られたパイプラインPp単位で行えるため、そのメンテナンス作業が比較的容易となる。
また上記自然流下経路Pの下流端に連なる水/土砂分離処理手段SEは、これを構成する複数の沈殿槽A1〜A3が各々上面を開放した状態で、河口Re近くの河川敷10にその上流側から下流側に順次、直列状態で配設されるため、その河川敷10の広いスペースを利用して、比較的大きな沈殿槽A1〜A3を何段にも配置でき、それだけ水の清浄化機能を高めることができる。また洪水等で河口Reの河川敷10が水没した場合には、その川の濁流で各沈殿槽A1〜A3内の堆積土砂は海Oに押し流されるが、濁流と一緒に流されることから水域汚濁の心配はない。
また水/土砂分離処理手段SEで流動体より分離された水の一部は、ただ海や河川に捨てられるのではなく、汲み上げ用電動ポンプKxにより汲み上げて還流路Kを経てダムDまで戻され、その際に汲み上げ用電動ポンプKxの動力として、水力発電装置Gで上記流動体の流動エネルギを電気エネルギに変換したものが無駄なく利用される。そのため、ダムDから海に向かう浚渫土砂の流動排出に大量に利用された水の一部を、エネルギ節減を図りつつ再びダムDに戻すことができ、この戻し水を灌漑や利水等に有効利用できて水資源の節約が図られる。
また図7には、本発明の第2実施例の要部が示される。この実施例では、少なくとも一部の中継枡Pm内に、その近隣にある他の大容量貯水池としてのダムD′よりサイフォン管S′で吸い出した水及び浚渫土砂を含む流動体を供給している。そのために、上記ダムD′の直下流近くにある枡ユニットケース3における中継枡Pmには、上記ダムD′の浚渫土砂1′をサイフォン管S′を経て流入させる第2の入口部3i′が増設され、またその第2の入口部3i′にも開閉弁Vi′が設けられる。この第2実施例のその他の構造は、第1実施例と基本的に同じであり、各構成要素には、第1実施例中の対応するものの参照符号を付すに留め、説明は省略する。
而して、この第2実施例では、先の第1実施例と同等の作用効果を達成できる上、他のダムD′からの浚渫土砂1及び水を含む流動体を中継枡Pmに受け入れることができる。そして、その両方のダムD、D′からの浚渫土砂1,1′を中継枡Pmにおいて容易に合流させ、その下流側のパイプラインPpを利用して共に海O側に自然流下させることができる。尚、この第2実施例では、図示を簡略化するために、サイフォン管S′の構造を簡略的に示したが、この第2実施例の他のダムD′においても、ダムDでの浚渫に用いた浚渫作業船Bを用いて、ダムDにおける浚渫と同様の大掛かりな浚渫作業を行うようにしてもよい。また第2実施例において、上記他のダムD′の浚渫作業に当たっては、サイフォン管S′を用いないで、吸上ポンプRxで強制的に吸い上げた水及び浚渫土砂1′を中継枡Pm内に供給するようにしてもよく、この場合、その吸上ポンプRxの動力として、前記した水力発電装置Gで変換された電気エネルギを利用するようにしてもよい。
このように少なくとも一部の中継枡Pm内に、その近隣にある他の大容量貯水池D′より吸い出した水及び浚渫土砂を含む流動体を供給するようにすれば、複数の大容量貯水池D,D′からの浚渫土砂を中継枡Pmにおいて容易に合流させ、その下流側のパイプラインPpを利用して海側に自然流下させることができる。
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は前記実施例に限定されるものでなく、種々の設計変更を行うことができる。
例えば、前記実施例では、水/土砂分離処理手段SEが最下流の沈殿槽A3からオーバフローした上澄み水を海Oに直接放流するようにしたものを示したが、本発明では、その上澄み水を海Oの近くの河川R、例えば河口Reに放流するようにしてもよい。
また、前記実施例では、水/土砂分離処理手段SEを河口Re近くの河川敷10に設けたものを示したが、本発明では必ずしも河川敷に設ける必要はなく、少なくとも海O又はその近くの河川Rに直接放流できる場所であればよい。
また、前記実施例では、マイクロバブル供給手段Mがサイフォン管S内またはパイプラインPp内にマイクロバブルを混入しているが、本発明では、中継枡Pm0,Pm内にマイクロバブルを混入してもよい。
また、前記実施例では、サイフォン管S内にダム水底の堆積土砂を浚渫土砂として直接吸い込むようにしたものを示したが、本発明では、ダム水底の堆積土砂が比較的固くサイフォン管Sの吸込作用だけでは堆積土砂の吸い出しができない場合には、図示しない電動ポンプで加圧された水の噴射で堆積土砂を掘削しつつ、その掘削した土砂を浚渫土砂としてサイフォン管Sに吸い込むようにしてもよい。尚、この場合の電動ポンプの動力として、水力発電装置Gで変換された電気エネルギを利用可能である。
また、前記実施例では、前記開閉弁V1〜Vn,Vb,Vi,Veを手動で開閉操作するようにしたものを示したが、本発明では、これら開閉弁を遠隔操作で開閉操作するようにしてもよい。
また、前記実施例では、輸送路Lにおける中継枡Pm0,Pmと、還流路Kにおける中継槽Kmとを共通の枡ユニットケース3内に隔壁3mを挟んで隣接配置したものを示したが、これら中継枡Pm0,Pmと、中継槽Kmとを別個独立のケースに別々に設けてもよく、また相互に離れた場所に設置するようにしてもよい。
また、前記実施例では、還流路Kの下流端がダムDに開口していて、戻し水をダムD内に戻すようにしたものを示したが、本発明では、還流路Kの下流端を、ダムDと海Oとの中間に位置する他の戻し水用貯水池(例えば人口池、天然池、湖等)に開口して、そこに汲み上げ用電動ポンプKxで戻し水を汲み上げるようにしてもよい。この場合、その戻し水用貯水池内の水を灌漑等に利用可能である。
また、前記実施例では、動力変換手段としての水力発電装置Gが変換した電気エネルギを、本発明の浚渫土砂輸送システム内に設けた種々の電動機器の動力として利用できるようにしたものを示したが、本発明(請求項1)では、上記電気エネルギを外部に取出可能として、浚渫土砂輸送システム外にある種々の電気機器の電源として利用できるようにしてもよい。
また、前記実施例では、作業員が水/土砂分離処理手段SEや中継槽Km内の貯溜水面の状態を直接監視して、その状態に応じて汲み上げ用電動ポンプKxの運転制御を行うようにしているが、本発明では、水/土砂分離処理手段SE内や中継槽Km内に水位センサを設置して、その水位センサの検出信号(即ち水位変化)に応じて汲み上げ用電動ポンプKxの運転制御を遠隔制御し、或いは自動制御するようにしてもよい。さらに上記水位センサの他、浚渫土砂輸送システム内における輸送路L及び還流路Kの各所に流動状態(流速、流量等)を監視する種々のセンサ類を設けると共に、同システム内の少なくとも一部のバルブ、少なくとも一部の電動機器の作動状態をモニターするモニター手段を設け、それらセンサ類及びモニター手段からの検出信号に基づいて、少なくとも一部のバルブ及び少なくとも一部の電動機器の作動を、コンピュータ等を利用して集中的且つ自動的に制御できるようにしてもよい。
本発明の第1実施例を示す浚渫土砂輸送システムの概要を示す全体概略縦断面図 図1の2矢視部拡大図 図1の3矢視部拡大図 図3の4−4線拡大断面図 水/土砂分離処理手段の要部縦断面図(図1の5矢視部拡大図) 図5の6矢視平面図 本発明の第2実施例を示す要部拡大縦断面図
符号の説明
A1〜A3・・沈殿槽
D・・・・ダム(大容量貯水池)
K・・・・還流路
Km・・・中継槽
Kp・・・戻り配管
Kx・・・汲み上げ用電動ポンプ(電動機器)
M・・・・マイクロバブル供給手段(電動機器)
O・・・・海
P・・・・自然流下経路
Pb・・・バイパス路
Pp・・・パイプライン
Pm・・・中継枡
R・・・・河川
Re・・・河口
Rx・・・吸上ポンプ(電動機器)
Ry・・・呼び水用給水ポンプ(電動機器)
S・・・・サイフォン管
SE・・・水/土砂分離処理手段
Vb,Vi,Ve,V1〜Vn・・開閉弁
1・・・・浚渫土砂
3i・・・入口部
3e・・・出口部

Claims (9)

  1. 海(O)から離れた高所に在って河川(R)の水が流れ込む大容量貯水池(D)の浚渫土砂(1)を該貯水池(D)から海(O)又はその近くの河川(R)まで輸送する輸送路(L)を備え、
    この輸送路(L)が、大容量貯水池(D)の浚渫土砂(1)をサイフォン作用で水と共に吸い出すサイフォン管(S)と、
    このサイフォン管(S)の下流端に連なり、同管(S)で吸い出された浚渫土砂(1)及び水を含む流動体を海(O)又はその近くの河川(R)まで重力を利用して自然流下させる自然流下経路(P)とを少なくとも含む浚渫土砂の輸送システムであって、
    前記自然流下経路(P)は、相互に縦列配置される複数条のパイプライン(Pp)と、その相隣なるパイプライン(Pp)間に介在していて、上流側のパイプライン(Pp)から流下してきた流動体を一時的に貯留し下流側のパイプライン(Pp)に放流可能な中継枡(Pm)と、最下流のパイプライン(Pp)の下流端に連ねて設けられ、該パイプライン(Pp)を流下してきた流動体より水を分離して海(O)又はその近くの河川(R)に放流可能であると共に、残余の浚渫土砂(1)を一時的に貯留してその少なくとも一部を回収可能とした水/土砂分離処理手段(SE)とを有しており、
    前記輸送路(L)には、そこを流れる前記流動体の流動エネルギを電気エネルギに変換し得る動力変換手段(G)が設けられることを特徴とする、浚渫土砂の輸送システム。
  2. 前記動力変換手段(G)には、それが変換した電気エネルギを少なくとも用いて駆動され前記輸送システム中で使用される電動機器(Ry,M,Rx)が接続されることを特徴とする、請求項1に記載の浚渫土砂の輸送システム。
  3. 前記水/土砂分離処理手段(SE)と前記大容量貯水池(D)又は所定の戻し水用貯水池との間には、その間を接続する還流路(K)が前記自然流下経路(P)から独立して設けられ、
    この還流路(K)には、前記水/土砂分離処理手段(SE)で流動体より分離された水を前記大容量貯水池(D)又は戻し水用貯水池まで汲み上げるべく、前記動力変換手段(G)で変換された電気エネルギで駆動される少なくとも1つの汲み上げ用電動ポンプ(Kx)が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の浚渫土砂の輸送システム。
  4. 前記還流路(K)は、互いに縦列配置されて前記水/土砂分離処理手段(SE)と前記大容量貯水池(D)又は戻し水用貯水池との間を接続する複数の戻り配管(Kp)と、その相隣なる戻り配管(Kp)間に介在していて、下流側の戻り配管(Kp)から上昇流動してきた戻し水を一時的に貯留可能な複数の戻り用中継槽(Km)とを備え、
    前記複数の戻り配管(Kp)には、個々の戻り配管(Kp)の上流端から下流端まで戻り水を上昇流動させるべく、その各々の戻り配管(Kp)毎に前記汲み上げ用電動ポンプ(Kx)が設けられることを特徴とする、請求項3に記載の浚渫土砂の輸送システム。
  5. 前記サイフォン管(S)及び自然流下経路(P)の少なくとも一方には、その流路を開度調節可能に開閉する少なくとも1つの開閉弁(V1〜Vn)が設けられることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の浚渫土砂の輸送システム。
  6. 前記水/土砂分離処理手段(SE)は、前記最下流のパイプライン(Pp)を経て流下してきた流動体を受容して該流動体中の浚渫土砂(1)を沈殿させる複数の沈殿槽(A1〜A3)が、その各々の沈殿槽(A1〜A3)内の流動体中の上澄み水を順次下流の沈殿槽にオーバフローさせ得るように配列して構成され、
    最下流の沈殿槽(A3)からオーバフローした上澄み水を海(O)又はその近くの河川(R)に放流するようにしたことを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の浚渫土砂の輸送システム。
  7. 各中継枡(Pm)は、上流側のパイプライン(Pp)が接続される入口部(3i)と、下流側のパイプライン(Pp)が接続される出口部(3e)とを備えており、それら入口部(3i)及び出口部(3e)にそれぞれ開閉弁(Vi,Ve)が設けられることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の浚渫土砂の輸送システム。
  8. 少なくとも1つの中継枡(Pm)を迂回して、その入口部(3i)よりも上流側のパイプライン(Pp)とその出口部(3e)よりも下流側のパイプライン(Pp)との間を接続するバイパス路(Pb)を備え、そのバイパス路(Pb)には、これを随時に遮断し得る開閉弁(Vb)が設けられることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の浚渫土砂の輸送システム。
  9. 前記サイフォン管(S)内、少なくとも1つの中継枡(Pm)内または少なくとも1部の前記パイプライン(Pp)内に無数の微細気泡を供給するためのマイクロバブル供給手段(M)を備えることをことを特徴とする、請求項1〜8の何れかに記載の浚渫土砂の輸送システム。
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