JP2006523086A - 発癌性形態のrasに対する細胞内発現抗体 - Google Patents

発癌性形態のrasに対する細胞内発現抗体 Download PDF

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Abstract

本発明は、細胞内環境内で機能する抗体に関する。特に、本発明は、発癌性形態のRASに結合することを本発明者らが示した特定の抗体に関する。このような抗体の使用についても記載する。

Description

本発明は細胞内環境内で機能する抗体に関する。特に、本発明は細胞内環境内で可溶であり、かつ抗原に特異的に結合することが可能な抗体を生成する方法に関する。
細胞内抗体、すなわち、細胞内発現抗体(intrabody)は、高等生物の細胞中での抗原認識において機能することが実証された(Cattaneo, A. & Biocca, S. (1997) Intracellular Antibodies: Development and Applications. Landes and Springer-Verlagの総説)。この相互作用は、細胞質、核または分泌経路においてうまく阻害される細胞タンパク質の機能に影響を及ぼし得る。この効力は、植物バイオテクノロジーにおけるウイルス耐性によって実証され(Tavladoraki, P.等. (1993) Nature 366: 469〜472)、HIVウイルスタンパク質(Mhashilkar, A.M.等 (1995) EMBO J 14: 1542〜51;Duan, L. & Pomerantz, R.J. (1994) Nucleic Acids Res 22: 5433〜8;Maciejewski, J.P.等 (1995) Nat Med 1: 667〜73;Levy-Mintz, P.等 (1996) J. Virol. 70: 8821〜8832)および癌遺伝子産物(Biocca, S., Pierandrei-Amaldi, P. & Cattaneo, A. (1993) Biochem Biophys Res Commun 197: 422〜7;Biocca, S., Pierandrei-Amaldi, P., Campioni, N. & Cattaneo, A. (1994) Biotechnology (N Y) 12: 396〜9;Cochet, O.等 (1998) Cancer Res 58: 1170〜6)に結合する細胞内抗体についていくつかの応用例が報告された。後者は、癌遺伝子の強制的な発現が腫瘍細胞における染色体転座後に起こることが多いので、重要な領域である(Rabbitts, T.H. (1994) Nature 372: 143〜149)。したがって、これらのタンパク質は、細胞内抗体と結合することによって不活性化することができる重要な細胞内治療標的である(Rabbitts, T.H. (1998) New Eng. J. Med 338: 192〜194)。最後に、全ゲノム配列を決定しようとする国際的な努力によって、何も知られていないタンパク質をコードする膨大な数の遺伝子配列候補が得られる。機能ゲノミクスは、この極めて多量のタンパク質の機能を確認する手法であり、細胞内抗体の使用は、細胞内の抗体に結合することによってタンパク質の機能を直接ノックアウトする概念的に簡単な手法としてこの試みにおける重要なツールになる見込みがある。
したがって、細胞中で機能する抗体を誘導する簡単な手法は、それらの抗体の使用が多数のタンパク質標的に対して何らかの影響を有する場合に必要になる。通常の状況においては、免疫グロブリンは、小胞体中で生合成され、抗体として分泌される。しかし、抗体が細胞質(酸化還元条件が小胞体中の酸化還元条件とは異なる)中で発現されるときには、折りたたみおよび安定性の問題が起こり、発現レベルが低く、抗体ドメインの半減期が限られる。これらの諸問題は、折りたたみタンパク質の安定性に重要であるVHドメインおよびVLドメインの鎖内ジスルフィド結合の形成を妨げる(Biocca, S., Ruberti, F., Tafani, M., Pierandrei-Amaldi, P. & Cattaneo, A. (1995) Biotechnology (N Y) 13: 1110〜5;Martineau, P., Jones, P. & Winter, G. (1998) J Mol Biol 280: 117〜127)細胞質の還元性環境に起因する可能性が最も高い(Hwang, C., Sinskey, A.J. & Lodish, H.F. (1992) Science 257: 1496〜502)。しかし、一部のscFvは、この結合がなくても問題ないことが判明し(Proba, K., Honegger, A. & Pluckthun, A. (1997) J Mol Biol 265: 161〜72;Proba, K., Worn, A., Honegger, A. & Pluckthun, A. (1998) J Mol Biol 275: 245〜53)、これはおそらく抗体可変領域の特定の1次配列によるものと思われる。上記細胞質条件に耐える抗体についての規則または一貫した予測は、本発明までなされていない。さらに別の問題は、細胞内抗体に対する発現形式をどう設計するかであり、VHセグメントとVLセグメント(すなわち、抗体結合部位)がVHのC末端とVのN末端においてポリペプチドリンカーによって連結されたscFvを使用することに多大な努力が費やされた(Bird, R.E.等 (1988) Science 242: 423〜6)。これは、最も成功した細胞内発現形態であるが、完全抗体から(例えば、モノクローナル抗体から)scFvに変換するときに親和性が低下する欠点がある。したがって、すべてのモノクローナル抗体をscFvにすることができるわけではなく、すべてのモノクローナル抗体が細胞中で機能を維持できるわけではない。結局、異なるscFvフラグメントは、この細胞環境において発現されるときには、別個の可溶性や凝集性を有する。
抗体は、標的抗原の認識および診断、治療学などの医療のためのin vitroツールとして生物科学において広範に使用されている。最近、遺伝子クローニング技術によって、抗体をコードする遺伝子を操作し、細胞内で発現させることが可能になった(CattaneoおよびBiocca、1999a)。特異的な高い親和結合特性を有する細胞内抗体(ICAb)は、標的タンパク質またはタンパク質相互作用が標的細胞内にのみ存在するヒトの疾患の治療に適用できる可能性が高い。ICAbの発現に適切な形態は、単鎖可変フラグメントまたはscFv(Biocca等、1994;Cohen、2002;Marasco等、1993)としても知られる単鎖抗体であり、これは重鎖可変ドメイン、軽鎖可変ドメイン、およびそれらを融合する柔軟なリンカーペプチドからなる(Bird等、1988;Huston等、1988)。
ICAbとして機能的scFvを応用することが進められ、いくつかの分野で実施されている。腫瘍特異的細胞内タンパク質を有効に産生する染色体転座または体細胞突然変異が起こる癌細胞にそれらを使用できる可能性がある(Rabbitts、1994;RabbittsおよびStocks、2002)。タンパク質産物は、細胞表面に現れるのではなく、細胞内にあるので、従来の抗体治療を使用することはできない。scFv形式は、細胞内での使用に適切である。というのは、そのサイズが最適であり、VHセグメントおよびVLセグメントが単一巨大分子上に存在し、したがってこの2本の鎖を1本にするのに鎖間ジスルフィド結合を必要としないのでベクターからの発現が容易であるためである。このような抗体フラグメントのいくつかは、タンパク質をin vivoで標的にするのに有効であることが実証されたが(Biocca等、1993;RondonおよびMarasco、1997;Tavladoraki等、1993)、正確な折りたたみに問題が多く、その結果、機能が失われ、発現が低下し、半減期が短縮するので、細胞内の還元性環境において有効に働く抗体は依然としてほとんどない(CattaneoおよびBiocca、1999b)。実際、ハイブリドーマに由来するscFvの大部分は、十分な高親和性および抗原特異性を有するにもかかわらず、in vivoで有効に機能しないことが一般に見出されている。また、ドメイン内ジスルフィド結合は、真核生物細胞の細胞質内で発現されるscFvにおいては結合を形成しない(Biocca等、1995)が、一部のscFvは、この結合がなくても問題のないことが判明している(Proba等、1998;WornおよびPluckthun、1998a)。現時点においては、安定な可溶性細胞内抗体に対する要件の一般的な規則または予測はない。
この問題を解決するためにいくつかの手法が採用された。これらの手法としては、scFvを安定化するためのジスルフィド結合の必要性を、固有の高い安定性に置き換えるランダム突然変異を利用するVHドメインおよびVLドメインの配列改変(Proba等、1998;WornおよびPluckthun、1998b)、またはin vivoで有効であることが経験的に証明されているフレームワークの使用(Tse等、2002;Visintin等、2002)などが挙げられる。
しかし、出願時においては、細胞内環境内で可溶化することを可能にし、その間1以上の抗原/リガンドと特異的に相互作用する能力を維持している細胞内抗体の特性を明らかにする必要性が当分野では依然として残っている。このような抗体は、予防および/または治療にわたる広い応用分野がある。
本発明者らは、最近、細胞内抗体捕捉(IAC)技術(Visintin等、1999)(国際公開第00/54057号)として記述されている、酵母および哺乳動物細胞内での細胞内抗体の機能に主に依存する細胞内抗体単離選択方法を開発した。本発明者らはそのような抗体をモデルとして使用して、IAC法から誘導されるコンセンサス骨格(consensus scaffold)を評価し、PCT/GB02/003512に記載している。
本発明者らは数種の抗RASscFV分子を単離している。驚くべきことに、本発明者らはin vivoでこれらの分子の一部により示される乏しい可溶性および安定性を、特定のフレームワーク領域アミノ酸を他の特定のアミノ酸に突然変異させることによって改善することができることを見出した。さらに本発明者らは、例えば図3に示されるI21などの一部の抗体は細胞内環境内では可溶性であるがこれらの特定のリガンドについては低い親和性を示し、他方で他の抗体は高い抗原結合親和性を示すが低い細胞内可溶性を示すことを見出した。本発明者らは、このような環境内で可溶性でありかつ1以上のリガンド/抗原と特異的に相互作用する能力を与えるいくつかの細胞内抗体の構造的特性を決定することがこれらの研究からできた。
重要なことは、本発明者らがドメイン内重鎖可変ドメインジスルフィド結合の存在が、細胞内環境内で可溶性でありかつ1以上のリガンドと特異的に相互作用すべき本発明の抗体に必要ないことも見出したことである。さらに、本明細書に開示される単一ドメイン型のみを含みかつ特定の明確な特性を保持する抗体は可溶性であり、かつこのような環境内で1以上のリガンドと特異的に相互作用することができる。
したがって、第1の態様では、本発明は、細胞内での使用に適切な抗体を生成する方法であって、以下の工程:
(a)細胞内環境内で1以上の抗原と特異的に結合する能力について2以上の抗体を試験すること、およびこのような環境内で1以上の抗原と特異的に結合することが可能な抗体を選択すること、
(b)細胞内環境内で可溶性である能力について2以上の抗体を試験すること、およびこのような環境内で可溶性である抗体を選択すること;ならびに
(c)工程(b)で選択される抗体のフレームワーク領域および、工程(a)で選択される抗体由来のCDR配列から抗体を生成することを含む上記方法を提供する。
本明細書中で定義されるように、「細胞内での使用に適切な」という用語は、上述した抗体が細胞内可溶性であり、かつ抗原結合部位を含むCDRを介して特異的に1以上の抗原と相互作用することが可能であることを意味する。例えばDabのような重鎖可変ドメインのみの抗体の場合、問題とするCDRは重鎖可変ドメインCDRである。重鎖と軽鎖とからなる抗体の場合、抗原結合部位を含むCDRは可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインのCDRである。
上述の方法に従って生成される抗体は、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方、あるいは単一ドメイン型のみ(単一ドメイン型抗体)を含んでいてもよい。当業者であればこのリストが網羅的であることを意図するものではないことを理解するだろう。
本明細書中で言及される「単一可変ドメイン型抗体」という用語は、本明細書中で定義されるように1以上の重鎖可変ドメインまたは1以上の軽鎖可変ドメインのいずれかを含むが、重鎖および軽鎖可変ドメインの両方は含まない抗体を意味する。本発明による単一可変ドメイン型抗体がDabであるのが有利である。本明細書中に定義されるように「Dab」は、任意に「バルキング基(bulking group)」に結合する単一可変重鎖ドメインまたは単一可変軽鎖ドメインである。本明細書で定義される「バルキング基」は1以上の抗体定常領域ドメインを含んでもよい。あるいは、「バルキング基」は非免疫グロブリン起源の成分を含んでもよい。これらは細胞毒、蛍光または他の形態の標識を含むことができる。疑問を解消するため、本明細書に定義されるDabは軽鎖または重鎖可変ドメインを単独で、すなわちバルキング基の不在下で含んでもよい。当業者であればこのリストが網羅的であることを意図するものではないことが理解されよう。
上述した方法を使用して生成される抗体がCon (配列番号1 (VH),および配列番号11 (VL)); I21 (配列番号4 (VH)および14 (VL));ならびに I21R33 (配列番号7 (VH)および17 (VL))からなる群から選択されるフレームワーク領域アミノ酸配列の1以上を含むことが有利であろう。または22位および92位のアミノ酸がシステイン残基でないこれらいずれかの重鎖可変ドメイン配列が有利である。
驚くべきことに、本発明者らは重鎖可変ドメインのドメイン内ジスルフィド架橋の形成が細胞内環境内でともに可溶性である抗体を取得するのに必要でないことを見出した。さらに、本発明者らは重鎖可変ドメインのみおよび/または軽鎖可変ドメインのみを含む抗体が、このような環境内で可溶性を示すことができることを見出した。
これらの知見を用いることにより、本発明者らは、細胞内環境内で可溶性である一方で、このような環境内で1以上の抗原と特異的に相互作用することも可能な抗体のデノボ合成方法を発明することができた。
したがって、別の態様で、本発明は細胞内での使用に適切な抗体を生成する方法であって、以下のリスト:図3にI21として記載されかつ配列番号4と示される重鎖フレームワーク領域、配列番号1と示されかつConとして記載されるコンセンサス配列の重鎖フレームワーク領域、図3にI21R33として記載されかつ配列番号7と示される重鎖フレームワーク領域、図3にI21として記載されかつ配列番号14と示される軽鎖フレームワーク領域、配列番号11と示されかつConとして記載されるコンセンサス配列の軽鎖フレームワーク領域、図3にI21R33として記載されかつ配列番号17と示される軽鎖フレームワーク領域;または(Kabatによる)22位および92位のアミノ酸残基がシステイン残基ではないこれらの重鎖フレームワーク配列のいずれかよりなる群から選択されるフレームワーク配列(またはこれらをコードする核酸)のいずれかを少なくとも用いて抗体を合成する工程を含む、上記方法を提供する。
本発明の上述の態様によれば、「抗体を合成する」という用語は、上記配列を含む抗体全体/完全な抗体の選択、ならびに/あるいは上述の配列およびそれらの後続の構築物(assembly)を含む抗体フラグメントの選択をその範囲に含む。
さらに「抗体を合成する」という用語は、上述される多様な配列またはそのフラグメントをコードする核酸を構築または合成する工程を含む上述される抗体の合成をその範囲に含む。核酸の合成はPCRに基づく手法を含んでもよい。当業者は上述の配列をコードする核酸の合成に適した他の方法に気付くであろう。
本発明のこの態様に従って生成される抗体はDabまたはscFVであるのが有利である。本発明のこの態様の別の実施形態では、この方法は細胞内での使用に適した重鎖および軽鎖の両方を含む抗体を生成するためのものである。上述の方法を用いて生成される抗体が突然変異型RASと特異的に相互作用することができるのが有利である。このような場合、この方法は図3に示される問題とするフレームワーク領域と図3に示される対応するCDR配列とを結合する工程をさらに含む。この方法がI21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33 (VHC22S;C92S)と示される群から選択されるこれらの配列の1以上から抗体を合成することを含むのが好ましい。
当業者であれば、本発明の上述の態様による抗体を生成し、続いて突然変異によってフレームワークおよび/または1以上のCDR配列を改変して生じる抗体のin vivoでの可溶性および/または特異的抗原結合親和性を調節することもできることは理解されるだろう。この改変が置換突然変異誘発を含むことが有利である。突然変異誘発を実施する方法として標準的な実験室技術を含み、これは当業者に周知であろう。
驚くべきことに、本発明者らは、抗体のin vivoでの可溶性を、少なくとも抗体の重鎖可変ドメインを含む可変ドメインフレームワークアミノ酸の1以上を本発明者らがこのような環境内で可溶性であると同定した抗体によって示される可変ドメインフレームワークアミノ酸に突然変異させることによって改善することができることも見出した。特に、本発明者らは、scFv33とscFvI21との間で異なるscFv33(図3に示される)の13アミノ酸残基の、これらの位置でscFvI21によって示されるアミノ酸への突然変異が、細胞内不溶性分子から細胞内可溶性分子への転換をもたらすことを見出した。
従って、別の態様で、本発明は重鎖のVHIIIサブグループに含まれる重鎖可変ドメインを含む抗体分子を、細胞内での使用に適切な抗体分子へと転換する方法であって、抗体重鎖可変ドメインの少なくとも1つを含むフレームワークアミノ酸(またはこれらをコードする核酸)の1以上を、以下の:VH1位、グルタミン;VH5位リシン;VH7位、セリン;VH74位、セリン;VH77位、トレオニン;VH84位、VHアラニン;VH22位、システイン以外のいずれかのアミノ酸;VH92位、システイン以外の他のいずれかのアミノ酸からなる群に(Kabat番号方式に従って)示されるフレームワークアミノ酸に突然変異させる工程を含む、上記方法を提供する。
本発明による抗体が本明細書に定義されるscFvまたはDabであるのが有利である。Dabが重鎖可変ドメインDabであるのが好ましい。
さらに別の態様では、本発明は軽鎖のVK1サブグループに含まれる軽鎖可変ドメインを含む抗体分子を細胞内での使用に適切な抗体分子へと転換する方法であって、抗体軽鎖可変ドメインの少なくとも1つを含むフレームワークアミノ酸(またはこれらをコードする核酸)の1以上を、以下の:VL0位、トレオニン;VL4位、グルタミンからなる群に(Kabat番号方式に従って)示されるフレームワークアミノ酸に突然変異させる工程を含む、上記方法を提供する。
本発明による抗体が本明細書に定義されるscFvまたはDabであるのが有利である。Dabが重鎖可変ドメインDabであるのが好ましい。
特に、本発明者らは図3に示される配列I21、I21R33およびI21R33(VHC22S;C92S)によって記載される細胞内抗体が細胞内での使用に適切であることを見出した。
従って、更なる別の態様では、本発明は、抗体分子を細胞内での使用に適切な抗体分子へと転換する方法であって、生じるフレームワークアミノ酸配列が図3に示される以下の:配列番号1 (VH-Con), 配列番号4 (VH-I21), 配列番号7 (VH-I21R33)17、または(Kabatによる)22位および92位のアミノ酸残基がシステイン残基でないこれらの重鎖フレームワーク配列のいずれかからなる群から選択される任意の配列を含むように少なくとも抗体重鎖可変ドメインを含むフレームワークアミノ酸(またはそれをコードする核酸)の1以上を突然変異する工程を含む、上記方法を提供する。
本発明の上述の態様の好適な実施形態では、この方法は、以下の工程:(a)生じるフレームワークアミノ酸が図3に示される以下の:配列番号1(VH-Con)、配列番号4(VH-I21)、配列番号7(VH-I21R33)または(Kabatによる)22位および92位のアミノ酸残基がシステイン残基でないこれらの重鎖フレームワーク配列のいずれかからなる群から選択される任意の配列を含むように抗体重鎖可変ドメイン(またはそれをコードする核酸)を突然変異すること;および(b)生じる抗体フレームワークアミノ酸配列が図3に示される以下の:配列番号11(VL-Con)、配列番号14(VL-I21)、配列番号17(VL-I21R33)からなる群から選択される任意の配列を含むように抗体軽鎖可変ドメインをさらに突然変異することを含む。
本発明の上述の態様によれば、突然変異工程を当業者に周知の方法を用いて核酸レベルで実施することが有利である。
本発明の上述の態様に従って生成される細胞内結合性抗体は単一可変ドメイン型抗体(単一可変ドメイン抗体)であってもよく、またはこれらが2以上の可変ドメイン型を含んでもよい。
本明細書中で引用される「単一可変ドメイン型抗体」という用語は、本明細書で定義されているように、1以上の重鎖可変ドメインまたは1以上の軽鎖ドメインのいずれかを含むが、重鎖および軽鎖可変ドメインの両方は含まない抗体を意味する。本発明による単一可変ドメイン型抗体がDabであるのが有利である。本明細書に定義されているように「Dab」は、場合により「バルキング基」と結合する単一可変重鎖ドメインまたは単一可変軽鎖ドメインである。本明細書に定義されているように「バルキング基」は1以上の抗体定常領域ドメインを含んでもよい。あるいは、「バルキング基」は非免疫グロブリン起源の成分を含んでもよい。これらは細胞毒、蛍光または他の形態の標識を含むことができる。当業者であればこのリストが網羅的であることを意図するものではないことが理解されよう。本発明による「Dab」が本明細書に定義されるようなバルキング基と結合する単一重鎖可変ドメインを含むのが最も有利である。疑問を解消するため、本明細書に定義されるDabは軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメインを単独で、すなわちバルキング基の不在下で含んでもよい。
本発明の方法によれば、抗体は軽鎖および重鎖可変ドメインの両方を含んでもよく、あるいは軽鎖または重鎖可変ドメインのいずれかを含むが両方は含まないものであってもよい。
さらに別の態様では、本発明は本発明の任意の方法を用いて取得される抗体分子を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、図3に示される:VHI21(配列番号4)、VHI21R33(配列番号7)、または22位および92位のアミノ酸の1以上がシステインではないいずれかの配列;VLI21(配列番号14)およびVLI21R33(配列番号17)、からなる群から選択されるフレームワーク領域配列の任意の1以上から作製されるライブラリーを提供する。
本発明者らは本発明による抗体は治療上の価値が大きいと考えている。
したがって、別の態様では、本発明は本発明による抗体の1以上と製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む組成物を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、1以上の疾患の予防および/または治療用の医薬製造における本発明の1以上の抗体の使用を提供する。
最後の態様では、本発明は細胞内環境内で1以上の抗原と特異的に相互作用するための医薬製造における本発明の1以上の抗体の使用を提供する。
定義
免疫グロブリン分子は、本発明によれば、標的に結合することができる任意の部分を意味する。特に、これらは、免疫グロブリンスーパーファミリー、すなわち、2個のベータシートと通常は保存的ジスルフィド結合とを含む、抗体分子に特徴的な免疫グロブリン折りたたみを含むポリペプチドファミリーのメンバーを含む。免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーは、免疫系(例えば、抗体、T細胞受容体分子など)における広範な役割、細胞接着(例えば、ICAM分子)および細胞内シグナル伝達(例えば、PDGF受容体などの受容体分子)における関与を含めて、in vivoでの細胞および非細胞相互作用の多数の局面に関与している。本発明は抗体、特にscFvまたはDabに関する。
本明細書において使用される抗体は、選択標的に結合可能な完全抗体または抗体フラグメントであり、Fv、ScFv、Fab’およびF(ab’)、Dab、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体およびヒト化抗体を含めた遺伝子操作抗体、ならびにファージディスプレイまたは別の技術を用いて産生された人工的に選択された抗体を含む。Fv、ScFvなどの小さなフラグメントは、サイズが小さく、その結果組織分布に優れているので、診断用途および治療用途に対して有利な諸特性を有する。前記抗体は、DabまたはscFvであることが好ましい。
本明細書で定義するように、「Dab」は、「バルキング基」に場合によっては結合していてもよい単一可変重鎖ドメインまたは単一可変軽鎖ドメインである。本明細書で定義される「バルキング基」は、1個または複数の抗体定常領域ドメインを含むことができる。あるいは、「バルキング基」は、非免疫グロブリン起源の成分を含むことができる。これらは、細胞毒、蛍光または他の形態の標識を含むことができる。疑問を解消するために、本明細書で定義されるDabは軽鎖または重鎖可変ドメインを単独で、すなわちバルキング基の不在下で含んでもよい。当業者であれば、このリストが網羅的なものではないことが理解されよう。
重鎖可変ドメインとは、その分子の抗原結合部位の一部を形成する免疫グロブリン分子の重鎖の一部である。VHIIIサブグループは、重鎖可変領域(VHIII)の特定のサブグループである。一般に、このグループに属する可変鎖アミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子は、Kabatデータベース中のVHIIIコンセンサス配列によって記述することができるVHアミノ酸配列を有する。
軽鎖可変ドメインとは、その分子の抗原結合部位の一部を形成する免疫グロブリン分子の軽鎖の一部である。免疫グロブリン分子のVkIサブグループは、可変軽鎖の特定のサブグループである。一般に、このグループに属する可変鎖アミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子は、Kabatデータベース中のVIコンセンサス配列によって記述することができるVHアミノ酸配列を有する。
免疫グロブリン重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域。免疫グロブリン分子の可変ドメインは、免疫グロブリン折りたたみの存在によって特徴付けられる特定の3次元コンホメーションを有する。可変ドメイン中のあるアミノ酸残基によって、この特徴的な免疫グロブリンドメインコア構造が維持される。これらの残基は、フレームワーク残基として知られ、極めて保存的である傾向にある。
免疫グロブリン分子重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのCDR(相補性決定領域)は、フレームワーク領域残基ではない、可変領域の超可変ループ内に含まれるアミノ酸残基である。これらの超可変ループは、免疫グロブリンとリガンドとの相互作用に直接関係する。これらのループ内の残基は、フレームワーク領域内の残基よりも保存性の程度が小さいことを示す傾向にある。
細胞内とは細胞の内部を意味し、本発明は、(核を含む)細胞内で選択的にリガンド/標的に結合する免疫グロブリンを対象とする。細胞はいかなる細胞でもよく、原核生物細胞でも真核生物細胞でもよく、細菌細胞、酵母細胞および高等真核生物細胞からなる群から選択されることが好ましい。最も好ましい細胞は、酵母細胞および哺乳動物細胞である。したがって、本明細書において使用する「細胞内」免疫グロブリンおよび標的またはリガンドは、細胞内に存在する免疫グロブリンおよび標的/リガンドである。また、「細胞内」という用語は、細胞内環境に似た、または細胞内環境を模倣した環境を意味する。したがって、「細胞内」は、細胞内ではないが、in vitroである環境を意味する場合もある。例えば、本発明による方法は、商業的に得られうる、または自然の系から誘導されうるin vitroでの転写系および/または翻訳系において実施することができる。
本発明におけるV鎖およびV鎖のコンセンサス配列とは、細胞内環境内でリガンドに選択的に結合することができる免疫グロブリン分子由来のV鎖およびV鎖のコンセンサス配列を意味する。細胞内で結合することができる免疫グロブリンの配列が比較されたときに、任意の1つの所与の位置において最も一般的である残基が、その位置のコンセンサス残基として選択される。コンセンサス配列は、各位置におけるすべての細胞内結合免疫グロブリンに対する残基を比較し、次いで、データを照合することによって得られる。この場合、18種類の免疫グロブリンの配列が比較された。
本発明における特異的(抗体)結合とは、抗体とリガンドとの相互作用が選択的である、すなわち、いくつかの分子が抗体に対して提示された場合に、提示された分子の1種類または数種類にしか抗体が結合しないことを意味する。抗体−リガンド相互作用は高親和性であることが有利であろう。免疫グロブリンとリガンドとの相互作用は、水素結合、ファン・デル・ワールス力などの非共有結合性相互作用によって媒介されるだろう。
「細胞内での使用に適切な」という用語は、それらの(細胞内での使用に適した)抗体が細胞内で可溶性であり、かつ抗原結合部位を含むCDRを介して1以上の抗原と特異的に相互作用することが可能であることを意味する。重鎖可変ドメインのみの抗体、例えばDabの場合、問題とするCDRは重鎖可変ドメインCDRである。重鎖と軽鎖からなる抗体の場合、抗原結合部位を含むCDRは可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインのCDRである。
「細胞内で機能する抗体」という用語は、可変ドメインのCDRがそれらの1個または複数の抗原と細胞内環境内で特異的に相互作用することができるように、抗体が十分な細胞内可溶性を有することを意味する。したがって、本明細書で定義される「細胞内で機能する抗体」は「細胞内での使用に適切な」という用語と同義である。
本発明におけるレパートリーとは、結合特異性の多重度を付与するために、1種類または複数のテンプレート分子の無作為、半無作為または統制された核酸レベルでの変化によって生成される1組の分子を指す。この場合、テンプレート分子は、本明細書に記載する1個もしくは複数のVHおよび/またはVLドメイン配列である。レパートリーを生成する方法は、当分野ではよく知られている。
本発明による「ライブラリー」という用語は、ポリペプチドまたは核酸の混合物を指す。ライブラリーは構成メンバーからなる。ライブラリー構成メンバー間での配列の相違は、ライブラリー中に存在する多様性をもたらす。ライブラリーはポリペプチドまたは核酸の単純な混合物の形態を採ってもよく、または核酸のライブラリーによって形質転換した生物または細胞、例えば細菌、ウイルス、動物もしくは植物細胞などの形態であってもよい。典型的に、個々の生物または細胞のそれぞれはライブラリーの構成メンバーを1つだけ含んでいる。特定の用途では、個々の生物および細胞のそれぞれはライブラリーの2以上の構成メンバーを含むこともできる。核酸が発現ベクター中に組み込まれることで、該核酸にコードされるポリペプチドの発現が可能になるのが有利である。したがって好適な態様では、ライブラリーは宿主生物の集団の形態を採り、各生物が核酸形態におけるライブラリーの単一の構成メンバーを含有する発現ベクターの1以上のコピーを含み、該核酸が発現してこれに対応するポリペプチド構成メンバーを産生することもできる。このライブラリーが免疫グロブリン分子のレパートリーをコードするのが好ましい。「レパートリー」とは、結合特異性の多重度を付与するために、1以上のテンプレート分子の無作為、半無作為または統制された核酸レベルでの変化によって生じる1組の分子を指す。この場合、テンプレート分子は本明細書に記載される1以上のVHおよび/またはVLアミノ酸配列である。レパートリーを生成する方法は当業界でよく知られている。
図面の詳細な説明
図1.抗RAS scFvの細胞内抗体捕捉
3種類の異なるファージライブラリー(de Wildt等、2000;Sheets等、1998)(全多様度7.0×10)から得られる2.7×1013個のクローンを、精製HaRASG12V抗原を用いてin vitroでスクリーニングした。1.18×10個のファージを回収し、ファージミドDNAを調製し、scFvフラグメントを酵母ベクターpVP16にクローニングし、4.13×10個のクローンのサブライブラリーを作製した。8.45×10個の酵母クローンを、LexA−RASG12Vベイト(bait)を発現する酵母L40系統中でスクリーニングした。428個のコロニーは、ヒスチジン選択プレート上で増殖し、β−galフィルターアッセイから判断してlacZ遺伝子を強力に活性化した。すべてのプレイ(prey)プラスミドを、ヒスチジン非依存性およびβ−gal陽性酵母コロニーから単離し、制限酵素、BstN1、Msp1、Mbo1、RsaIまたはHinf1で消化して、異なるscFvクローンを特定することによってフィンガープリントをとった。続いて、DNAフィンガープリントパターンが異なる57個のscFvクローンを、LexA−RASG12Vベイトおよび(異なるライブラリーに由来し単離された)3種類のscFvを用いて酵母中で再試験した。これらの3種類の抗RAS scFvのうち、哺乳動物のレポーターアッセイにおいて検出可能な程度に結合したわずか2個のRASタンパク質。
図2.哺乳動物細胞における抗RAS scFvとRASタンパク質との相互作用
A.ルシフェラーゼアッセイ;COS7細胞に、様々なscFv−VP16活性化ドメイン融合体およびGAL4−DBDベイトプラスミドpM1−HRASG12V(塗りつぶしボックス)またはpM1−lacZ(白抜きボックス)を、ホタルルシフェラーゼレポータープラスミドpG5−Lucおよび内部ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼコントロールプラスミドpRL−CMVとともに一過的に同時トランスフェクトした。抗RAS scFv33、J48およびI21または抗−gal scFvR4を発現するscFv−VP16プレイベクターを使用した(Martineau等、1998)。ルシフェラーゼ活性を、Dual Luciferase Assay System(Promega)および照度計を用いてトランスフェクションから48時間後に測定した。各アッセイのルシフェラーゼ活性を、(トランスフェクション効率用内部標準として用いた)ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して規格化した。ルシフェラーゼ誘導レベル倍率を、ベースラインとしてとられた非関連ベイトを用いた各scFv−VP16の活性とともに示す。
B.In situ免疫蛍光試験;COS7細胞に、pEF−myc−nuc−scFv J48(抗RAS scFv)またはscFvR4(抗β−gal scFv)およびRAS抗原を発現するpHM6−RASベクターを一過的に同時トランスフェクトした。48時間後に、細胞を固定し、(mycタグ付けscFvを検出する)9E10モノクローナル抗体およびウサギ抗HAタグポリクローナル血清、続いて、それぞれ二次フルオレセイン複合抗マウスおよびCy3複合抗ウサギ抗体で染色した。染色パターンを、BioRadiance共焦点顕微鏡を用いて検査した。RASとともに同時発現されたscFv J48について、抗原およびICAb蛍光のコロケーションが見られた。
緑色(フルオレセイン)=scFvの蛍光;赤色(Cy3)=抗原の蛍光
図3.抗RAS細胞内scFvの配列
ヌクレオチド配列を得て、(単一文字コードとして示される)誘導タンパク質翻訳をアライメントさせた。フレームワーク(FR)中のダッシュは、(IAC法(Tse等、2002)によって単離された抗BCRおよび抗ABL scFvから誘導される)コンセンサス(CON)配列を用いたアイデンティティである。数字は、Lefranc等(LefrancおよびLefranc、2001)(第1カラムの数字、IMGTとして表示)およびKabat等(Kabat等、1991)(第2カラム、Kabat)の系による残基の参照位置を示す。可変ドメインの重鎖(VH)と軽鎖(VL)との間のリンカーの15個の残基(GGGGS)は示されていない。相補性決定領域(CDR)は、灰色の背景で強調表示されており、フレームワーク領域(FR)から区別されている。3種類の抗RAS細胞内scFvは、33、J48およびI21として設計されている。すべての抗RAS scFvは、Kabatデータベース(Kabat等、1991)から得られる、中ほどに示す重鎖のVH3サブグループおよび軽鎖のV 1サブグループ(設計VH3またはV I)、またはLefrancデータベース(LefrancおよびLefranc、2001)から得られるIGVH3およびIGVK1に属する。突然変異抗RAS scFvは、I21K33、I21R33、I21R33VHI21VL、con33およびI21R33VH(C22SC92S)として設計されて示されている。I21K33は、I21フレームワーク中のscFv33の6つのCDRを含み、I21R33は突然変異Lys94Arg以外は同一であり、I21R33VH21VLは、I21のVLドメインに融合するI21R33のVHドメインを含み、con33は、正準のコンセンサスフレームワーク(Tse等、2002)中にscFv33の全6個のCDRを有し、I21R33VH(C22S;C92S)は、VHドメインの突然変異CYS22SERおよびCYS92SERを有するクローンI21R33の突然変異体である。コンセンサス領域とI21Rフレームワーク領域との間では、わずかに4個のアミノ酸(H1、H5、L0およびL3の位置)が異なる。
図4.抗RAS scFvのペリプラズムでの発現および精製
N末端にpelBリーダー配列を有し、C末端にHis6タグおよびmycタグを有するscFvは、100μg/mlアンピシリンおよび0.1%グルコースを含む2 X TY培地1リットル中で、1mM IPTGを用いて30℃で2時間、大腸菌HB2151中のpHEN2−scFvベクターからペリプラズムで発現された。誘導後、細胞を回収し、氷冷1 X TES緩衝剤(0.2M Tris−HCl(pH7.5)、0.5mM EDTA、0.5Mスクロース)4mlで抽出し、さらに1:5 TES緩衝剤6mlを添加した。細胞抽出物の上清を可溶性ペリプラズム画分として使用した。hisタグ付けscFvを、固定化Ni2+イオンクロマトグラフィーによって精製し、15%SDS−PAGEによって分画し、タンパク質をクーマシーブルーによって染色した。精製抗RAS scFv33およびJ48のおおよその収量は、培養物1リットル当たり100μg未満であり、scFvI21R33、I21R−33VHI21LおよびI21は3mg/リットルを超え、con33は1mg/リットルであった。
E=完全ペリプラズム抽出物およびP=精製scFv;M=Mwマーカー
図5.抗RAS scFvの特異的抗原結合および競合ELISA
精製HRASG12V−GppNp(4μg/ml、約200nM;塗りつぶしボックス)またはウシ血清アルブミン(BSA、30mg/ml、約450μM;灰色ボックス)をELISAプレートに室温で1.5時間塗布した。両セットのウェルに、3%BSAのPBS溶液をブロッキング用に添加し、続いて精製scFv(450ng/ウェル)を添加し、終夜4℃でインキュベートした。PBS−0.1%Tween 20で洗浄後に、結合したscFvをHRP複合抗ポリヒスチジン抗体(HIS−1、Sigma)を用いて検出し、シグナルをEmaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて定量した。(図中で+として示す)競合アッセイの場合には、scFvを、ELISAウェルに添加する前に、HRASG12V−GppNp(8μg/ml;約400nM)を用いて室温で30分間プレインキュベートした。
図6.BIAcoreを用いた抗RAS scFvの親和性測定
BIAcore 2000を用いてバイオセンサー測定を実施した。細菌培養物から得られた精製scFvを使用した。
A.抗RAS scFvとHRASG12V−GppNp抗原(固定化1500 RU)との結合を示すセンソグラム(Sensogram)。40μlの注射量および20μl/分の流量を使用した。精製scFv(10〜2000nM)を、固定化HRASG12V−GppNpを含む、または抗原を含まない、チップの2つのチャネルに添加した。各測定のセンソグラムを、抗原を含まないチャネルの共鳴によって正規化した。
B.表に、会合速度(Kon)および解離速度(Koff)の値、ならびにBIAevaluation 2.1ソフトウエアによる平衡解離定数(Kd)の計算値を要約する。
図7.COS7細胞における発現scFvの可溶性に対するフレームワーク残基の影響
COS7細胞に、示したpEF−myc−cyto−scFv発現クローンを一過的にトランスフェクトした。材料および方法に記載したように、可溶性タンパク質および不溶性タンパク質を抽出し、15%SDS−PAGE上で分画した。電気泳動後に、タンパク質をメンブレンに移し、抗mycタグモノクローナル抗体9E10とともにインキュベートした。泳動分子量マーカー(kDa単位)を左側に示す。右側の矢印は、scFvフラグメントのバンドである。
図8.フレームワーク配列の突然変異による抗RAS ICAbとRAS抗原との細胞内相互作用の改善
哺乳動物のツーハイブリッド抗体−抗原相互作用アッセイをCOS7細胞中で実施した。
A.COS7にpEFBOSVP16−scFvベクターおよびpM1−RASG12V、ならびにルシフェラーゼレポータークローンをトランスフェクトし、ルシフェラーゼレベルを方法に記載したように求めた。上図は、scFv−VP16結合RAS抗原ベイトのルシフェラーゼシグナルの正規化誘導倍率である(ゼロは、scFvを含まないプレイプラスミドから得られたシグナルである)。下図は、scFv−VP16融合タンパク質の発現後のCOS7細胞抽出物のウェスタンブロットである。ScFv−VP16融合タンパク質を、抗VP16(Santa Cruz Biotechnology、14−5)モノクローナル抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)複合抗マウスIgG抗体を用いたウェスタンブロットによって検出した。
対照として用いたICAb scFvは、抗−gal R4(Martineau等、1998)であった。scFv33突然変異体は、(Kabat等(Kabat等、1991)を用い、括弧内の数字はLefranc等による番号付けである(LefrancおよびLefranc、2001))(図3参照)。
VH(A74S+S77T):VHのAla74(83)SerおよびSer77(86)Thr置換
VH(D84A):VHのAsp84(96)Ala置換
VH(R94K):VHのArg94(106)Lys置換
VL(0T+V3Q):リンカーとVLドメインの間のThr付加+VLのVal3(3)Gln置換
VL(F10S):VLのPhe10(10)Ser置換
VL(I84T):VLのIle84(100)Thr置換
VH(Q1E+V5L+A7S+S28T)+VL(G100Q+V104L):VHのGln1(1)Glu、Val5(5)Leu、Ala7(7)Ser、Ser28(29)Thr置換+VLのGly100GlnおよびVal104Leu
B.コンセンサス配列骨格に変換するフレームワーク突然変異を含むscFvを用いたCOS7細胞ツーハイブリッド抗体−抗原相互作用アッセイ。示した様々なscFv−VP16プレイ構築体を、COS7細胞中のGAL4−RASG12Vベイトプラスミドで一過的にトランスフェクトし、ルシフェラーゼ活性をトランスフェクションの48時間後に測定した。ルシフェラーゼ活性レベル倍率を、scFvなし(scFvを含まないプレイプラスミド)の活性をベースラインとしてヒストグラムで示す。COS7細胞の可溶性画分におけるscFv−VP16の発現レベルを下図に示す。抗VP16(14−5)抗体およびHRP複合抗マウスIgG抗体を用いたウェスタンブロットによってバンドを可視化した。
図9.抗RAS scFvによるRAS依存性NIH3T3細胞形質転換活性の阻害
突然変異HRAS G12V cDNAを哺乳動物発現ベクターpZIPneoSV(X)にサブクローン化し、抗RAS scFvを、scFvのC末端に原形質膜ターゲティングシグナルおよびscFvのN末端にFLAGタグを有するpEF−FLAG−Membベクターにサブクローン化した。pZIPneoSV(X)−RASG12V 100ngおよびpEF−FLAG−Memb−scFv 2μgをNIH3T3細胞クローンD4に同時トランスフェクトした。2日後に、細胞を10cmプレートに移し、5%ドナー子ウシ血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むDME培地中で14日間増殖させた。最後に、プレートをクリスタルバイオレットで染色し、形質転換細胞の増殖巣を数えた。
(A)染色プレートの代表的な写真。左上図の空ベクターは、陰性対照として、RASG12Vを含まないpZIPneoSV(X)とscFvを含まないpEF−FLAG−Membの同時トランスフェクションを示す。増殖巣形成は認められなかった。右上図に、陽性対照として、RASG12V pEF−FLAG−Membを含み、scFvを含まないpZIPneoSV(X)を示す。それ以外のプレートにおいては、RASG12V ベクターを、pEF−memb−scFvI21またはpEF−memb−scFvI21R33とともに同時トランスフェクトした。
(B)形質転換増殖巣の相対百分率を、100に設定された、pZIPneoSV(X)/HRASG12VおよびpEF−memb空ベクターによって誘発される増殖巣形成に対して規格化されたいくつかの増殖巣として求めた。示した結果は、各トランスフェクションを2重で実施した1つの実験のものである。2回の追加実験では、類似の結果が得られた。
一般技術
特に規定しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術および生化学における)当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。標準技術は、分子、遺伝子および生化学方法(一般には、参照により本明細書に援用するSambrook等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.およびAusubel等.、Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed、John Wiley & Sons, Incを参照されたい)および化学方法に使用される。また、標準免疫学的技術については、Harlow & Lane.、A Laboratory Manual Cold Spring Harbor、N.Yを参照されたい。
抗体のデノボ合成
本発明者らは、可変重鎖フレームワーク残基および可変軽鎖フレームワーク残基を含む抗体のin vivoでの可溶性を決定する可変重鎖フレームワーク残基および可変軽鎖フレームワーク残基を特定した。
したがって、本発明は細胞内での使用に適切な抗体の生成方法であって、
(a)細胞内環境内で1以上の抗原と特異的に結合する能力について2以上の抗体を試験すること、およびこのような環境内で1以上の抗原と特異的に結合することが可能な抗体を選択すること、
(b)細胞内環境内で可溶性である能力について2以上の抗体を試験すること、およびこのような環境内で可溶性である抗体を選択すること;ならびに
(c)工程(b)で選択される抗体のフレームワーク領域および、工程(a)で選択される抗体由来のCDR配列から抗体を生成すること、を含む上記方法を提供する。
本発明者らは、図3においてI21として示され、配列番号4および14で示されたフレームワーク領域と、図3において配列番号1および11ならびに図3において配列番号7および17で示されたコンセンサスのフレームワーク領域とが、それらを含む抗体に、細胞内環境内で機能するのに必要な可溶性を付与することを示している。
また、Kabatによる22位および92位の1個または複数においてシステイン残基を含まない上記配列(VHの場合)を使用して、それらを含む抗体に、細胞内環境内で機能するのに必要な可溶性を付与することもできる。特に、その一方または両方の位置におけるシステインがセリンによって置換されたアミノ酸配列を使用して、それらを含む抗体に、細胞内環境内で機能するのに必要なコンホメーションの安定性および可溶性を付与することもできる。
また、実験によって、scFv分子J48および33上に存在し、図3において配列番号2および12(J48)ならびに配列番号3および13(33)で示されたCDRが、それぞれ、細胞内で安定なそれらを含む抗体に、突然変異体RASに特異的に結合する能力を付与することが判明した。
したがって、上記フレームワーク配列と上記CDR配列の任意の組み合わせは、組み合わせたときに、細胞内環境内で突然変異体RASに特異的に結合することができる新規Dabまたは軽鎖および重鎖抗体を産生するのに使用することができる。
したがって、タンパク質抗原を用いた予備的なin vitroでのファージ抗体スクリーニングに頼らずに、コンセンサスICAb骨格に基づき、酵母細胞アッセイにおいて直接一次スクリーニングが可能な十分な多様性を有するICAbライブラリーを構築することができると当然予想される。これによって、例えば、in vitroで発現してタンパク質を与えるのに抗原が不要であり、IAC選択のための酵母ベイト発現に対する要件は、単にDNA配列だけであるという極めて明確な技術的利点が提供される。これによって、任意の生物のゲノム配列分析、例えば、ヒトゲノム配列決定プログラムから予測される任意のタンパク質に結合するICAbを選択するために、IAC技術を用いる可能性が開かれる。
極めて重要な問題は、有効な細胞内抗体を含むのに必要なライブラリー多様度であり、したがって酵母において十分な抗体多様性を得ることができ、スクリーニングすることができるかどうかである。現行のIACを成功させるには、極めて多様なライブラリーのin vitroでのファージAbスクリーニングから始める必要がある。しかし、そのようなファージ抗体は、(還元性環境における可溶性および折りたたみ問題のために)改変なしでは必ずしも細胞内抗体として働かず、これは、細胞内抗体ライブラリーとしてのこれらのファージscFvライブラリーの有効な多様性が、予想されるよりも少ない可能性があることを意味している。固定されたコンセンサスフレームワーク上の無作為化CDRを用いた特別設計のヒト細胞内抗体ライブラリーの構築は、有効なICAb多様性を増加させるはずである。これによって、十分に有効な多様性を維持し、細胞内抗体のスクリーニングを加速させつつ、予備的なファージパンニングステップを必要とせずに、ライブラリーをICAbについてスクリーニングすることが可能になる。
抗体を単離するIAC方法
IAC手法は、他のスクリーニング方法と比較していくつかの利点を有する。IAC手法は、scFvの細胞質の直接選択として働く酵母ツーハイブリッドin vivoアッセイに基づいている。また、IAC手法は、理論的に、天然型の抗原のターゲティングが可能であるので、転写後修飾タンパク質または特にタンパク質複合体を含めて、細胞質で発現される任意の抗原に対して抗体フラグメント(本明細書の実験ではscFv)を選択することができる。さらに、スクリーニングプロセスには、哺乳動物細胞における細胞内scFv候補の検証が必要であると考えられる。これらの異なるベイト系およびレポーター系を使用することによって、偽陽性scFvが排除される。また、哺乳動物の抗原−抗体相互作用アッセイは、酵母中での30℃、またはin vitroファージスクリーニングの室温(または4℃)に対して、37℃で実施される。酵母から哺乳動物細胞へのこのステップによって、より耐熱性の高い細胞内scFvを選択することができる。単離には哺乳動物アッセイが含まれるので、標的抗原と内因性2量体分子との競合結合に適切なより高い親和性相互作用を選択することができる。
この研究においては、本発明者らは、発癌性タンパク質RASに対してIAC技術を適用し、細胞質中のこの抗原に結合する特異的抗RAS scFvを単離した。配列分析によって、すべての抗RAS scFvが、Kabatデータベース(Kabat等、1991)によって定義されるVH3およびVκ1サブグループ、またはIMGTデータベース(LefrancおよびLefranc、2001)によって定義されるIGHV3およびIGK1サブグループに属することが示された。抗原BCRまたはABL(Tse等、2002)およびTAU(Visintin等、2002)に結合する大部分の選択されたICAb scFvも同じサブグループに属し、VHおよびVLフレームワークのこれらのサブグループが細胞内で機能することができるということを支持している。この観察によって、コンセンサスフレームワーク骨格を定義することができた(Tse等、2002)。
治療ツールまたは生物科学研究ツールとしての細胞内抗体の最も重要な要件は、これらの抗体(または抗体フラグメント)が高い安定性、良好な発現レベルを示し、哺乳動物細胞のあらゆる区画内で機能することである。これらは、厳しい制約であり、ハイブリドーマに由来するscFvフラグメントのほとんどは、in vitroでの親和性が良好であっても、改変なしでは還元性環境下で安定ではない。本明細書および既報(Tse等、2002;Visintin等、2002)に記載された細胞内抗体捕捉(IAC)技術は、機能的scFvを直接単離するためのin vivoでの遺伝学的スクリーニングに基づくこれらの難点を克服するものである。
Dabライブラリーのスクリーニング
IAC法は単一の可変ドメインのみの抗体(Dab)の選択に等しく適用することができる。適切な方法の簡単な説明を下記に提供する。
合成DabライブラリーのスクリーニングはREF(Laboratory of Molecular Biology ウェブサイトhttp://mrc-lmb.cam.ac.uk内のリンクも参照のこと)に記載されるように細胞内抗体捕捉(IAC)技術のプロトコル(ファージのパンニング工程を除く)に従って行うこともできる。概説すると、500μgのpBTM抗原および1mgのpVP16-Dabライブラリー1もしくはpVP16-Dabライブラリー2をサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に同時トランスフェクトする。陽性クローンを栄養要求性マーカー、Trp、LeuおよびHisを用いることによって選択する。陽性コロニーをHisプロトトロピー(prototropy)について選択し、フィルターアッセイによるβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)活性によって確認する。選択した個々のクローンについて、偽陽性クローンを排除し、真陽性クローンを関連するベイトベクターおよび無関係のベイトベクターを用いて、His非依存性増殖およびβ−gal活性化を再試験することによって確認する。
IACを用いて選択した一部の細胞内抗体が高細胞内可溶性を示し、その他が低細胞内可溶性を示す
例えば、抗RAS scFVについてのIACスクリーニングを用いる場合、あるscFV(I21)は細菌ペリプラズムで高収量を、哺乳動物細胞では高可溶性であるが相互作用の乏しい親和性を示すが、他のscFV(scFV33およびJ48)は高親和性を有するが比較的低度の可溶性発現タンパク質の収量を有する。しかし、I21 scFVフレームワーク配列は、VHおよびVL領域の両方で、図3に示されるコンセンサスフレームワーク(Tseら, 2002)に近似して適合している。したがってこれらの結果は、図3中の配列番号1と11に合致するコンセンサスフレームワークおよび図3に示される配列番号4と14として識別するI21フレームワーク配列、ならびに配列番号7および17と命名された図3中のI21R33として識別するコンセンサスフレームワークにより、あつらえの細胞内抗体を形成するための理想的なフレームワーク配列が作製されることを示している。
抗体分子の細胞内可溶性を測定する方法
本発明による抗体の細胞内可溶性を測定する方法は当業者によく知られているだろう。適切な方法として、例えばウエスタンブロット分析を用いた細胞内タンパク質発現レベルの分析がある。適切なプロトコルを下記に概説する。当業者は他の適切な方法を知っているであろう。
哺乳動物細胞中でのscFVの発現レベルおよび可溶性を評価するため、scFVまたはscFV-VP16融合タンパク質をCOS7細胞中で発現させた。scFv発現のため、scFvDNA断片をpEF-myc-cyto発現ベクター(Invitrogen)のNcoI/Notl部位にクローニングした。トランスフェクションの前日にウェル当たり約2x105個のCOS7細胞を6ウェルの培養プレート(Nunc)に播いた。1μgのpEF-myc-cyto-scFvまたはpEF-BOS-scFv-VP16を8μgのLipofectAMINEを用いて一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞をPBSで1回洗浄し、氷冷抽出緩衝剤(10mM HEPES、pH7.6、250mM NaCl、5mM EDTA、0.5%NP−40、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlペプスタチンA、0.1mg/mlアプロチニン、1mMフェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF))に30分間溶解し、4℃、13,000rpmで10分間遠心分離した。ペレット(「不溶性」分画)および上清(「可溶性」分画)をSDS-PAGEで分析し、続いて抗myc(9E10)モノクローナル抗体(scFvの検出用)または抗VP16(14−5、Santa-Cruz)モノクローナル抗体(scFv-VP16AD融合体用)を一次抗体として、そしてHRP複合ウサギ抗マウスIgG抗体(APB)を二次抗体として用いたウエスタンブロットによって分析した。ブロットを高感度化学発光(ECL)検出キット(ABP)によって可視化した。
本発明の方法によって取得した抗体
配列分析によって、すべての抗RAS scFvが、Kabatデータベース(Kabat等、1991)によって定義されるVH3およびVκ1サブグループ、またはIMGTデータベース(LefrancおよびLefranc、2001)によって定義されるIGHV3およびIGK1サブグループに属することが示される。抗原BCRまたはABL(Tse等、2002)およびTAU(Visintin等、2002)に結合する大部分の選択されたICAb scFvも同じサブグループに属し、VHおよびVκフレームワークのこれらのサブグループが細胞内で機能することができるということを支持している。この観察によって、コンセンサスフレームワーク骨格を定義することができた(Tse等、2002)。この抗RAS scFvのスクリーニングにおいては、1種類のscFv(I21)は、細菌ペリプラズムにおいて高い収率、哺乳動物細胞中での高い可溶性を示すが、哺乳動物細胞における相互作用の親和性に乏しく、他のscFv(scFv33およびJ48)は高親和性であるが、可溶性発現タンパク質の収率が比較的低い。しかし、I21 scFv フレームワーク配列は、VH領域とVL領域の両方においてコンセンサスフレームワーク(Tse等、2002)と厳密に一致し、このコンセンサスの有用性を支持するものとして、本発明者らは、コンセンサスフレームワーク(con33)またはI21フレームワーク(I21R33)へのscFv33の突然変異によって、可溶性および結合性を含めて、この機能が改善されることを見出した。最後に、scFv33がI21Rコンセンサスフレームワークに突然変異し、scFv33 CDR配列を保持するときには、ICAbは、NIH3T3細胞の発癌性RASG12V形質転換を阻害する決定的な生物学的機能を果たすことができた。これは、おそらく、ICAbとRAS標的抗原との相互作用のためである(図2参照)。これは、哺乳動物細胞用の有効なICAbを産生する本発明者らの手法の汎用性を示している。
重鎖および軽鎖の両方を含む細胞内可溶性抗体のドメイン内ジスルフィド架橋形成のための要件
本発明者らは、抗体が細胞内可溶性であるためにドメイン内ジスルフィド形成は必要ないことを見出した。すなわち、Kabat命名法による22位および92位に通常存在する少なくとも1個のシステイン残基がもはや存在しないか、または別の残基、例えばセリンに突然変異した軽鎖および重鎖の両方を含む抗体分子は、細胞内環境内で突然変異RASに特異的に結合することができる。
本発明による抗体が軽鎖および重鎖を含み、抗体のフレームワーク領域が配列番号10および配列番号20に代表されるものであるか、または抗体のフレームワーク領域が(Kabatの番号付けによる)残基22と92の1以上がシステイン残基でないことを除いて配列番号10と配列番号20に代表されるものと同一であるのが有利である。
(a)本発明による単一ドメイン型抗体
本発明者らは、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのいずれかを含むがその両方は含まない抗体(本明細書で単一のドメイン型のみの抗体と称する)が、細胞内環境内で可溶性であるが、このような環境内で依然として1以上のリガンドと特異的に相互作用することができることを見出した。
したがって、重鎖可変ドメインを含むが、軽鎖可変ドメインを含まない抗体であって、該重鎖可変ドメインのフレームワーク領域配列が図3に示されかつI21(配列番号4)およびI21R33(配列番号7)と命名された群から選択される上記抗体は、このような環境内で可溶性である。
本発明の上述の態様に従って、単一の可変ドメインのみの抗体は、単一の重鎖可変ドメイン(重可変ドメインDab)を含むものであるのが好ましい。
さらに、本発明者らは、軽鎖可変ドメインを含むが、重鎖可変ドメインを含まない抗体であって、該軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域配列が図3に示されかつI21(配列番号14)およびI21R33(配列番号17)と命名された群から選択される上記抗体が、このような環境内で可溶性であり、かつこのような環境内でこれらの1以上のリガンドと特異的に相互作用することができることを見出した。
単一ドメイン抗体はいかなる適切な技術によって調製してもよい。単一ドメイン抗体の調製は、Wardら, (1989) Nature 341: 544-546および欧州特許出願0 368 684 (Medical Research Council)に詳細に記載されている。
本発明による重鎖可変ドメインのみを含む抗体のドメイン内ジスルフィド架橋形成のための要件
本発明者らは、ドメインにおいてKabat命名法による22位および92位に通常存在するシステイン残基の少なくとも1個がもはや存在せず、または別の残基、例えば、セリンに突然変異した、1個または複数の重鎖可変ドメインのみを含む本発明による抗体分子が、細胞内環境内で突然変異体RASに特異的に結合することができることを見出した。
本発明の上記態様によれば、単一可変ドメイン抗体は、単一重鎖可変ドメインを含むもの(単一重鎖ドメイン抗体)であることが好ましい。
本発明による抗体の細胞への送達
本発明による抗体を細胞内環境に導入するためには、抗体をコードする核酸を細胞にトランスフェクトすることが有利である。
抗体をコードする核酸をベクターに組み込んで発現させることができる。本明細書において使用する、ベクター(またはプラスミド)とは、異種DNAを細胞に導入してそれを発現させるのに使用される独立した要素である。このようなビヒクルの選択および使用は、当業者には周知である。多数のベクターが利用可能であり、適切なベクターは、ベクターの使用目的、ベクターに挿入する核酸のサイズ、およびそのベクターで形質転換させる宿主細胞に応じて選択される。各ベクターは、その機能、およびそれが適合する宿主細胞に応じて様々な成分を含む。このベクター成分としては、一般に、以下、すなわち、複製開始点、1個または複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、転写終結配列およびシグナル配列の1個または複数が挙げられるが、これらだけに限定されない。
また、本発明による抗体をコードする核酸は、一般操作および核酸増幅目的でクローニングベクターに組み込むことができる。
発現ベクターもクローニングベクターも、一般に、選択された1個または複数の宿主細胞中でベクターを複製することができる核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターにおいては、この配列は、宿主の染色体DNAとは無関係にベクターを複製することができるものであり、複製開始点または自己複製配列を含む。このような配列は、様々な細菌、酵母およびウィルスで周知である。プラスミドpBR322由来の複製開始点はほとんどのグラム陰性細菌に適切であり、2mプラスミド開始点は酵母に適切であり、様々なウィルス開始点(例えば、SV 40、ポリオーマ、アデノウイルス)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製開始点成分は、これらがCOS細胞など高レベルのDNA複製に適格な哺乳動物細胞において使用されない限り、哺乳動物の発現ベクターには不要である。
ほとんどの発現ベクターはシャトルベクターであり、すなわち、少なくとも1個の生物クラスにおいて複製可能であるが、別の生物クラスにトランスフェクトしても発現させることができる。例えば、あるベクターは大腸菌中でクローン化され、次いで、宿主細胞染色体とは無関係に複製することができないにしても、同じベクターが酵母または哺乳動物細胞にトランスフェクトされる。DNAは、宿主ゲノムに挿入することによって複製することもできる。しかし、ゲノムDNAの回収は、核酸を切除するのに制限酵素消化が必要になるので、外部で複製したベクターの回収よりも複雑である。DNAはPCRによって増幅することができ、複製成分なしで宿主細胞に直接トランスフェクトすることができる。
発現およびクローニングベクターは、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含むことができることが有利である。この遺伝子は、選択培地中で増殖する形質転換宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されていない宿主細胞は、この培地中で生存しないだろう。一般の選択遺伝子は、抗生物質および他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートもしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与し、栄養要求の欠乏を補完し、または複合培地から利用不可能な極めて重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
酵母に適切な選択遺伝子マーカーに関しては、マーカー遺伝子の形質発現のために形質転換体の選択を容易にするあらゆるマーカー遺伝子を使用することができる。酵母の適切なマーカーは、例えば、抗生物質G418、ハイグロマイシンもしくはブレオマイシンに対する耐性を付与するマーカーであり、または栄養要求性酵母突然変異体におけるプロトトロピーを提供し、例えば、URA3、LEU2、LYS2、TRP1またはHIS3遺伝子である。
ベクターの複製は大腸菌中で都合良く行われるので、大腸菌遺伝マーカーおよび大腸菌複製開始点が含まれることが有利である。これらは、pBR322、Bluescript(著作権)ベクターまたはpUCプラスミド、例えば、pUC18またはpUC19など、大腸菌複製開始点と、アンピシリンなどの抗生物質に対する耐性を付与する大腸菌遺伝マーカーとの両方を含む大腸菌プラスミドから得ることができる。
哺乳動物細胞に適切な選択マーカーは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR、メトトレキセート耐性)、チミジンキナーゼなどの所望の核酸、またはG418またはハイグロマイシンに対する耐性を付与する遺伝子を発現する細胞を特定することができるマーカーである。哺乳動物細胞形質転換体は、マーカーを有し発現する形質転換体のみが順応して残存する選択圧下に置かれる。DHFRまたはグルタミン合成酵素(GS)マーカーの場合には、選択圧を次第に増加させる条件下で形質転換体を培養することによって選択圧を強いることができ、それによって(その染色体組込み部位において)選択遺伝子と連結核酸の両方が増幅される。増幅は、増殖に極めて重要なタンパク質の産生を大いに必要とする遺伝子が、所望のタンパク質をコードすることができる密接に関連した遺伝子とともに、組換え細胞の染色体内で縦一列に反復されるプロセスである。多量の所望のタンパク質が、通常、こうして増幅されたDNAから合成される。
発現ベクターおよびクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、所望の核酸に機能的に連結されるプロモーターを含む。このようなプロモーターは、誘導性でも構成的でもよい。プロモーターは、出所のDNAからプロモーターを取り出し、単離したプロモーター配列をベクターに挿入することによって、核酸に機能的に連結される。天然プロモーター配列と多数の異種プロモーターの両方を、抗体をコードする核酸の直接増幅および/または発現に使用することができる。「機能的に連結される」という用語は、記述した成分が意図したように機能できる関係にある近位を指す。コード配列に「機能的に連結され」た制御配列は、制御配列に適合した条件下でコード配列が発現されるように連結される。
原核生物宿主との使用に適切なプロモーターとしては、例えば、ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。これらのヌクレオチド配列は公表されており、それによって、当業者は、リンカーまたはアダプターを用いてそれらを所望の核酸に機能的に連結させて、必要な制限部位を提供することができる。細菌系に使用されるプロモーターは、一般に、核酸に機能的に連結されたShine−Delgarno配列も含むだろう。
好ましい発現ベクターは、細菌中で機能することができるphagex、T7などのバクテリオファージのプロモーターを含む細菌発現ベクターである。最も広く用いられている発現系の1つにおいては、融合タンパク質をコードする核酸を、T7 RNAポリメラーゼによってベクターから転写することができる(Studier等、Methods in Enzymol. 185;60〜89、1990)。pETベクターとともに使用される大腸菌BL21(DE3)宿主系統においては、T7 RNAポリメラーゼは、宿主細菌中で溶原菌DE3から産生され、その発現は、IPTG誘導性lac UV5プロモーターの制御下にある。この系は、多数のタンパク質の過剰産生にうまく使用されてきた。あるいは、ポリメラーゼ遺伝子は、市販されているCE6ファージ(Novagen、Madison、USA)などのint−ファージによる感染によって、ラムダファージ上に導入することができる。他のベクターとしては、PLEX(Invitrogen、NL)などのラムダPLプロモーターを含むベクター、pTrcHisXpressTm(Invitrogen)、またはpTrc99(Pharmacia Biotech、SE)などのtrcプロモーターを含むベクター、またはpKK223−3(Pharmacia Biotech)、もしくはPMAL(new England Biolabs、MA、USA)などのtacプロモーターを含むベクターなどが挙げられる。
酵母宿主とともに使用される適切なプロモーター配列は、調節性でも構成的でもよく、好ましくは、高度に発現される酵母遺伝子、特に、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)遺伝子から誘導される。すなわち、TRP1遺伝子、ADHIまたはADHII遺伝子、酸性ホスファターゼ(PH05)遺伝子のプロモーター、a−もしくはα−因子をコードする酵母接合フェロモン遺伝子のプロモーター、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼまたはグルコキナーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエGAL 4遺伝子、S.ポンベnmt 1遺伝子のプロモーターなどの糖分解酵素をコードする遺伝子由来のプロモーター、またはTATA結合タンパク質(TBP)遺伝子由来のプロモーターを使用することができる。また、1種類の酵母遺伝子の上流活性化配列(UAS)と、別の酵母遺伝子の機能的TATAボックスを含む下流プロモーターエレメントとを含むハイブリッドプロモーター、例えば、酵母PH05遺伝子のUASと、酵母GAP遺伝子の機能的TATAボックスを含む下流プロモーターエレメントとを含むハイブリッドプロモーター(PH05−GAPハイブリッドプロモーター)を使用することができる。適切な構成的PHO5プロモーターは、例えば、PH05遺伝子のヌクレオチド−173から始まりヌクレオチド−9で終わるPH05(−173)プロモーターエレメントなどの上流調節性要素(upstream regulatory element)(UAS)を欠く短縮型酸性ホスファターゼPH05プロモーターである。
哺乳動物宿主中のベクターからの遺伝子転写は、ポリオーマウィルス、アデノウイルス、鶏痘ウィルス、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルス、シミアンウィルス40(SV40)などのウィルスのゲノム、アクチンプロモーターなどの異種哺乳動物のプロモーター、または極めて強いプロモーター、例えば、リボソームタンパク質プロモーター、および免疫グロブリン配列に通常付随するプロモーターから誘導されるプロモーターによって制御することができる。
高等真核生物による核酸の転写は、エンハンサー配列をベクター中に挿入することによって増加させることができる。エンハンサーは、向きや位置に比較的無関係である。多数のエンハンサー配列が、哺乳動物の遺伝子から知られている(例えば、エラスターゼおよびグロビン)。しかし、一般には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが使用されるだろう。例としては、複製開始点の後半のSV40エンハンサー(100〜270bp)およびCMV初期プロモータエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、スプライスして、所望の核酸の5’位または3’位でベクターに入れることができるが、プロモーターから5’部位に位置することが好ましい。
真核生物発現ベクターは、遺伝子座制御領域(LCR)を含むことが有利でありうる。LCRは、特に、遺伝子が、ベクターの染色体組込みが起こる恒久的にトランスフェクトされた真核細胞系において発現される場合に重要である宿主細胞クロマチンに組み込まれた導入遺伝子の組込み部位に無関係な高レベルの発現を指令することができる。
真核生物発現ベクターは、転写終結およびmRNAの安定化に必要な配列も含むだろう。このような配列は、真核生物またはウィルスのDNAまたはcDNAの5’および3’非翻訳領域から一般に入手可能である。これらの領域は、免疫グロブリンまたは標的をコードするmRNAの非翻訳部分中のポリアデニル化された断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
哺乳動物細胞中で核酸の一過的発現をもたらす発現ベクターは、本発明の実施に特に有用である。一過的発現は、通常、宿主細胞が発現ベクターの多数のコピーを蓄積し、次に、所望の遺伝子産物を高レベルで合成するように、宿主細胞において効率的に複製することができる発現ベクターを使用することを含む。
本発明によるベクターの構築には従来の連結技術を使用することができる。単離プラスミドまたはDNA断片は、切断され、調整され、必要なプラスミドを産生するのに望ましい形で再度連結される。必要であれば、構築されたプラスミドにおける正確な配列を確認する分析が、既知の方法で実施される。発現ベクターを構築し、転写物をin vitroで調製し、DNAを宿主細胞に導入し、遺伝子産物の発現および機能を評価する分析を実施するのに適切な方法は、当業者に既知である。遺伝子の有無、増幅および/または発現は、例えば、従来のサザンブロット法、mRNAの転写を定量するノーザンブロット法、ドットブロッティング(DNAまたはRNA分析)、あるいはin situハイブリダイゼーションによって、本明細書の配列に基づくことができる適切に標識されたプローブを用いて、試料中で直接測定することができる。当業者は、必要であれば、これらの方法を改良する仕方を容易に考えることができる。
抗体は、細胞膜と融合することができるリポソームなどの小胞を用いた微量注入または送達によって、細胞に直接導入することができる。ウィルス融合誘導ペプチドは、細胞の細胞質への膜融合および送達を促進するために使用することが有利である。
免疫グロブリンは、転移(translocation)活性をもたらすようなタンパク質由来のドメインまたは配列に融合または結合することが好ましい。好ましい転移ドメインおよび配列としては、HIV−1−トランス活性化タンパク質(Tat)、ショウジョウバエアンテナペディア(Drosophila Antennapedia)ホメオドメインタンパク質、単純ヘルペス−1ウィルスVP22タンパク質に由来するドメインおよび配列などが挙げられる。この手段によって、免疫グロブリンは、細胞の近傍に導入されたときに、細胞またはその核に入ることができる。
外因的に添加されたHIV−1−トランス活性化タンパク質(Tat)は、原形質膜を通って転移し、核に到達してウイルスゲノムをトランス活性化する。転移活性は、HIV−Tatのアミノ酸37〜72(Fawell等.、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91、664〜668)、37〜62(Anderson等.、1993、Biochem. Biophys. Res. Commun. 194、876〜884)および(基本配列RKKRRQRRRを有する)49〜58において明らかにされている。Vives等 (1997)、J Biol Chem 272、16010〜7は、転移、核の局在化および細胞遺伝子のトランス活性化に重要と考えられるアミノ酸48〜60(CGRKKRRQRRRPPQC)からなる配列を特定した。ガラクトシダーゼおよびHIV−TATタンパク質形質導入ドメインからなる融合タンパク質の腹腔内注射によって、生物活性融合タンパク質がマウスの全組織に送達される(Schwarze等、1999、Science 285、1569〜72)。
ショウジョウバエアンテナペディアホメオドメインタンパク質の第3ヘリックスも、類似の諸特性を有することが判明した(Prochiantz, A.、1999、Ann N Y Acad Sci、886、172〜9の総説)。アンテナペディアにおいて転移をもたらすドメインは、配列RQIKIWFQNRRMKWKKを有する塩基性アミノ酸が豊富な16アミノ酸長ペプチドに局在化している(Derossi等、1994、J Biol Chem、269、10444〜50)。このペプチドは、生物活性物質を培養細胞の細胞質および核に指向するのに使用された(Theodore等、1995、J. Neurosci 15、7158〜7167)。アンテナペディアホメオドメインの第3ヘリックスの細胞内在化は、受容体に無関係であると考えられ、転移プロセスには、膜リン脂質との直接の相互作用が関与することが示唆された(Derossi等、1996、J Biol Chem、271、18188〜93)。
単純ヘルペスウイルスのVP22外被タンパク質は細胞間の輸送が可能であり、細胞の亜集団において発現されるVP22タンパク質は、集団中の他の細胞に伝播する(ElliotおよびO'Hare、1997、Cell 88、223〜33)。GFP(ElliottおよびO'Hare、1999、Gene Ther 6、149〜51)、チミジンキナーゼタンパク質(Dilber等、1999、Gene Ther 6、12〜21)またはp53(Phelan等、1998、Nat Biotechnol 16、440〜3)とVP22からなる融合タンパク質は、このようにして細胞にターゲティングする。
核および/または原形質膜を通して転移することができるタンパク質の特定のドメインまたは配列を、突然変異誘発または欠失研究によって特定することができる。あるいは、候補配列を有する合成ペプチドまたは発現ペプチドをレポーターに連結させて、転移を分析することができる。例えば、合成ペプチドは、フルオレセインに結合することができ、蛍光顕微鏡を用いてVives等(1997)、J Biol Chem 272、16010〜7に記載の方法によって転移をモニターすることができる。あるいは、緑色蛍光タンパク質をレポーターとして使用することができる(Phelan等、1998、Nat Biotechnol 16、440〜3)。
上述したドメインもしくは配列、または転移活性を有することが明らかにされたドメインもしくは配列のいずれかを使用して、免疫グロブリンを細胞の細胞質または核に指向することができる。ペネトラチンとしても知られる上記アンテナペディアペプチドは、HIV Tatと同様に好ましい。転移ペプチドは、本発明による単一ドメイン免疫グロブリンのN末端またはC末端に融合することができる。N末端融合が好ましい。
TLMペプチドも細胞への抗体の送達に役立つ。TLMペプチドは、HBVのPre−S2ポリペプチドから誘導される。Oess S、Hildt E Gene Ther 2000 May 7:750〜8を参照されたい。抗DNA抗体技術も役立つ。抗DNA抗体ペプチド技術は、Alexandre Avrameas等、PNAS val 95、pp 5601〜5606、May 1998;Therese Ternynck等、Journal of Autoimmunity (1998) 11、511〜521;およびBioconjugate Chemistry (1999)、vol 10 Number 1、pp 87〜93に記載されている。
本発明によるライブラリー
本発明の別の態様では、図3に示される以下の:VH I21 (配列番号4)、VHI21R33 (配列番号7)、または22位および92位の1以上のアミノ酸がシステインではないこれらの配列のいずれか;VLI21 (配列番号14)およびVLI21R33 (配列番号17)からなる群から選択されるフレームワーク領域配列の任意の1以上から形成されるライブラリーを提供する。
多様なペプチド配列を繊維状バクテリオファージ(ScottおよびSmith (1990 前掲))の表面に提示するシステムは、標的抗原に結合する特異的抗体フラグメントのin vitroでの選択および増幅のための抗体フラグメント(およびこれらをコードするヌクレオチド配列)のライブラリーを作製するのに有利であることが証明されている。VHおよびVL領域をコードするヌクレオチド配列は大腸菌(E.coli)のペリプラズム領域にこれらを指向するリーダーシグナルをコードする遺伝子断片と連結され、その結果として生じる抗体フラグメントはバクテリオファージの表面に典型的にはバクテリオファージコートタンパク質(例えば、pIIIまたはpVIII)との融合体として提示される。あるいは、抗体フラグメントはλファージキャップシド外部に提示される(ファージボディ(phagebodies))。ファージを基礎とする提示システムの利点は、これらは生物系であるため、選択されるライブラリーの構成メンバーを選択されるライブラリー構成メンバーを含むファージを細菌細胞中で増殖させることにより、簡単に増幅することができる点である。さらに、ポリペプチドライブラリーの構成メンバーをコードするヌクレオチド配列はファージまたはファージミドベクターに含まれるので、配列決定、発現および一連の遺伝子操作が比較簡単である。
バクテリオファージ抗体提示ライブラリーおよびλファージ発現ライブラリーの構築方法は当業界で周知である(McCaffertyら. (1990) 前掲; Kangら. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88: 4363; Clacksonら. (1991) Nature, 352: 624; Lowman et al. (1991) Biochemistry, 30: 10832; Burtonら. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 88: 10134; Hoogenboomら. (1991) Nucleic Acids Res., 19: 4133; Changら. (1991) J. Immunol., 147: 3610; Breitlingら. (1991) Gene, 104: 147; Marksら. (1991) 前掲; Barbasら. (1992)前掲; HawkinsおよびWinter (1992) J. Immunol., 22: 867; Marksら, 1992, J. Biol. Chem., 267: 16007; Lernerら. (1992) Science, 258: 1313,参照により本明細書に組み入れる)。
別のライブラリー選択技術として、バクテリオファージλ発現システムが挙げられ、これはバクテリオファージのプラークとして、または溶原ファージのコロニーとして直接スクリーニングされ得る。これらはいずれも既に記載されており(Huseら. (1989) Science, 246: 1275; CatonおよびKoprowski (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87; Mullinaxら. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87: 8095; Perssonら. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88: 2432)、本発明において使用されるものである。このような発現システムを用いてライブラリーの最大106種の異なる構成メンバーをスクリーニングすることができるが、実際にはこれらは膨大な構成メンバー(106を超える構成メンバー)のスクリーニングに適していない。他のスクリーニングシステムは、例えばライブラリー構成メンバーの直接的な化学合成を当てにするものである。一つの初期的手法として、WO84/03564に記載されるような、ピンとロッドの配置上でのペプチド合成が挙げられる。各ビーズが個々のライブラリー構成メンバーであるペプチドライブラリーを形成する、ビーズ上でのペプチド合成を含む類似した手法が、米国特許第4,631,211号に記載され、関連した手法がWO92/00091に記載されている。ビーズを基礎とする手法の有意な改善として、各ビーズをオリゴヌクレオチドなどの固有の識別タグで標識して、各ライブラリー構成メンバーのアミノ酸配列の同定を容易にすることを含む。これらの改善されたビーズを基礎とする手法はWO93/06121に記載されている。
別の化学合成法は、各別個のライブラリー構成メンバー(例えば、固有のペプチド配列)がアレイ中の予め規定された位置に離散的に配置されている表面上でのペプチド(またはペプチドミメティック(peptidomimetics))アレイの合成に関する。各ライブラリー構成メンバーの素性は、アレイにおける構成メンバーの空間的位置によって決定される。予め決められた分子(例えばレセプター)と反応性ライブラリー構成メンバーとの間の結合相互作用が生じるアレイ中の位置を決定して、それにより空間的位置に基づいて反応性ライブラリー構成メンバーの配列が同定される。これらの方法は、米国特許第5,143,854号; WO90/15070 および WO92/10092; Fodorら. (1991) Science, 251: 767; DowerおよびFodor (1991) Ann. Rep. Med. Chem., 26: 271に記載されている。
ポリペプチドまたはヌクレオチドのライブラリーを作製する別のシステムは、ライブラリー構成メンバーのin vitro合成のための無細胞酵素機器(cell-free enzymatic machinery)の使用に関する。一つの方法では、RNA分子を、標的リガンドに対する選択とPCR増幅を交互にまわすことによって選択する(Tuerk および Gold (1990) Science, 249: 505; Ellington および Szostak (1990) Nature, 346: 818)。同様の技術を使用して予め規定されたヒト転写因子に結合するDNA配列を同定することもできる(ThiesenおよびBach (1990) Nucleic Acids Res., 18: 3203; BeaudryおよびJoyce (1992) Science, 257: 635; WO92/05258およびWO92/14843)。同様の方法において、豊富なライブラリーを作製する方法として、in vitroでの翻訳によりポリペプチドを合成することができる。一般的に固定化ポリソーム複合体を含むこれらの方法は、WO88/08453、WO90/05785、WO90/07003、WO91/02076、WO91/05058、およびWO92/02536にさらに記載されている。WO95/22625およびWO95/11922 (Affymax)に開示されるようなファージを基礎としない別の提示システムは、ポリソームを使用して選択用のポリペプチドを提示する。これらのおよび全ての先行文献も参照により本明細書に組み入れる。
本明細書に記載されるコンセンサス配列からのライブラリー作製における特に重要な利点は、これらの作製によりファージscFvライブラリーの使用を除き、かつ細胞内抗体捕捉技術の使用について要求される必要なライブラリーの大きさを縮小することができる点である。
本発明による抗体の使用
本発明による抗体分子、好ましくはscFv分子は、in vivoでの治療用途および予防用途、in vitroおよびin vivoでの診断用途、in vitroでのアッセイ用途および試薬用途、機能ゲノミクス用途などに使用することができる。
本発明による抗体および組成物を治療および予防に使用するには、ヒトなどのレシピエント哺乳動物に上記のものを投与することが含まれる。それらは、哺乳動物の細胞内環境へ投与することを含むことが好ましい。
少なくとも90〜95%均一である実質的に純粋な抗体は哺乳動物への投与に好ましく、98〜99%以上の均一性が医薬品用途、特に、哺乳動物がヒトであるときには最も好ましい。抗体分子は、所望されるように部分的または均一に精製した後に、診断または(体外を含めて)治療に、あるいは当業者に既知の方法を用いてアッセイ手順を開発し実施するのに使用することができる。
本願においては、「予防」という用語は、疾患の誘発前に防御組成物を投与することを含む。「抑制」とは、誘発事象後、疾患が臨床的に現れるまでに、組成物を投与することを意味する。「治療」には、疾患の症状が現れた後に防御組成物を投与することを含む。
選択された本発明の抗体の、疾患予防または治療における有効性をスクリーニングするのに使用することができる動物モデル系が利用可能である。適切なモデルは当業者に既知であろう。
一般に、選択された本発明の抗体は、薬理学的に適切な担体とともに、精製された形で利用されるだろう。一般に、これらの担体としては、水溶液またはアルコール/水溶液、乳濁液、懸濁液、生理食塩水および/または緩衝媒質を含むものなどが挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウムおよび乳酸リンゲルなどが挙げられる。適切な生理的に許容されるアジュバントは、ポリペプチド複合体の懸濁液を保つのに必要な場合には、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギナートなどの増粘剤から選択することができる。
静脈内ビヒクルとしては、リンゲルデキストロースを主成分とするものなどの、体液および栄養素補充物、電解質補充物などが挙げられる。保存剤、および抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、不活性ガスなどの他の添加剤も存在させることができる(Mack (1982) Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版)。
選択された本発明の抗体は、分離投与組成物として、または他の薬剤とともに使用することができる。これらには、シクロスポリン、メトトレキセート、アドリアマイシンまたはシスプラチン、免疫毒素などの様々な免疫療法薬剤が含まれる。医薬組成物としては、本発明の抗体またはさらには本発明による抗体の組合せ物とさえ組み合わされた様々な細胞障害性薬剤または他の薬剤の「カクテル」などが挙げられる。
本発明による医薬組成物の投与経路は、当業者に一般に知られた経路のいずれかとすることができる。免疫療法を含めて、ただしこれだけに限定されない療法の場合には、選択された本発明の抗体を標準技術に従って患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、肺経路を含めて、または、適切には、カテーテルによる直接注入を含めて、任意の適切な方法によることができる。投与量および投与頻度は、患者の年齢、性別および状態、他の薬物の同時投与、禁忌(counterindication)、ならびに臨床家が考慮すべき他のパラメータによって決まるだろう。
選択された本発明の抗体は、凍結乾燥して保存し、使用前に適切な担体で再構成することができる。既知の凍結乾燥および再構成技術を使用することができる。凍結乾燥および再構成によって機能活性の低下度が変わる可能性があり、それを補償するために使用レベルを上方に調整しなければならないことがあることを当業者には理解されるだろう。
選択された本発明の抗体またはそのカクテルを含む組成物を、予防処置および/または治療処置のために投与することができる。ある治療上の適用例においては、選択された細胞の集団の少なくともある程度の阻害、抑制、モジュレーション、死滅または他の何らかの測定可能なパラメータを達成するのに十分な量を「治療有効量」と定義する。この投与量を得るのに必要な量は、疾患の重篤度、および患者自身の免疫系の全般的な状態に依存するが、一般に、体重1キログラム当たり選択免疫グロブリン0.005〜5.0mgであり、0.05〜2.0mg/kg/回の用量がより一般的に使用される。予防的に適用する場合には、選択免疫グロブリン分子またはそのカクテルを含む組成物を、類似の用量、またはわずかに少ない用量で投与することもできる。
1種類または複数の選択された本発明による抗体分子を含む組成物を、哺乳動物における選択標的細胞集団の改変、不活性化、死滅または排除に役立つ予防設定および治療設定に利用することができる。また、本明細書に記載するポリペプチドの選択されたレパートリーは、細胞の不均一な集団から標的細胞集団を、選択的に死滅させ、枯渇させ、または有効に排除するために、体外またはin vitroで使用することができる。哺乳動物から得られる血液を、選択された抗体、細胞表面受容体またはその結合タンパク質と体外で混合し、それによって望ましくない細胞を死滅させ、または血液から除去して、標準技術に従って哺乳動物に戻すことができる。
本発明を、以下の実施例において例示のためだけにさらに説明する。
実施例
材料と方法
Ras抗原
組換え発癌性HRAS(G12V;残基1〜166)を、pET11a(Novagen)に基づく発現プラスミドを含む細菌細胞中で発現させ、(Pacold等、2000)に記載されたイオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過によって精製した。活性型RAS抗原を調製するために、精製HRASG12Vタンパク質3mgに、GTPの非加水分解性アナログである5’−グアニリルイミド2リン酸(GppNp、Sigma)2mMを、アルカリホスファターゼ手順(Herrmann等、1996)によって添加した。このGppNp結合HRASG12Vを抗原として全体を通して使用した。
in vitroscFvファージライブラリースクリーニングおよび特異的scFv−VP16酵母ライブラリーの調製
3種類の異なるscFvライブラリー(de Wildt等、2000;Sheets等、1998)のIACスクリーニングを、(Tse等、2000;Tse等、2002)に記載されたものにわずかな改変を加えて実施した(Laboratory of Molecular Biologyウェブサイトhttp://mrc-lmb.cam.ac.uk内のリンクも参照されたい)。概要を述べると、第1のパンニングステップを使用したファージAbライブラリースクリーニングを、イムノチューブに結合した50μg/ml HRASG12V抗原の1mM MgCl含有PBS溶液中で実施した。抗RAS結合ファージを回収し、大腸菌TG1中で増幅させた。scFv DNA断片をpVP16酵母ベクター中にサブクローニングし、4.13×10個のクローンを酵母スクリーニングに使用した。末端切断HRASG12V cDNAをpBTM116ベクターのEcoR1−BamH1部位にクローン化してRASベイトを調製した。pBTM116−RASG12Vベイトベクター(tryp+)を、酢酸リチウム/ポリエチレングリコール法(Tse等、2000)を用いてサッカロミセス・セレビシエL40にトランスフェクトし、Trp−プレート上で増殖したコロニーを選択した。LexA−RAS融合タンパク質の発現を、抗pan RAS(Ab−3、Oncogene Research Product)を用いたウェスタンブロットによって確認した。ライブラリースクリーニングの場合には、酵母scFv−VP16ライブラリーDNA 100μgを、抗原を安定に発現するL40クローンに形質転換した。陽性コロニーをHisプロトトロピーのために選択し、フィルターアッセイによるβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)活性によって確認した。単離した個々のクローンについて、偽陽性クローンを除去し、His非依存性増殖およびβ−gal活性化を再試験することによって真陽性クローンを確認した。
in vitroアッセイ用scFvの精製
scFvのペリプラズム細菌発現は(Tse等、2000)に記載されていた。scFvをpHEN2ベクター(マップについてはwww.mrc-cpe.cam.ac.ukを参照されたい)にクローン化し、大腸菌HB2151細胞の1リットル培養物中で1mM ITPGを用いて30℃で2時間発現させた。細胞を収集し、ペリプラズムタンパク質をTES緩衝剤(Tris−HCl(pH7.5)、EDTA、スクロース)で抽出した。ペリプラズムタンパク質を、10mMイミダゾールを含有するPBS 2.5リットルで終夜透析した。ペリプラズムscFvの固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィーを、Ni−NTAアガロース(QIAGEN)4mlを用いて4℃で1時間実施した。アガロースを、20mMイミダゾールを含むPBS 20mlで4回洗浄した。ポリヒスチジンタグ付けscFvを250mMイミダゾールのPBS溶液4mlで溶出させた。溶出物を、10%グリセリンを含む20mM Tris−HCl(pH7.5)2.5リットルで4℃で終夜透析した。精製scFvを、Centricon濃縮機(YM−10、Amicon)を用いて1〜5mg/mlに濃縮し、その一定分量を−70℃で保存した。精製scFvのタンパク質濃度をBio−Radタンパク質アッセイキット(Bio−Rad)によって測定した。
ELISAアッセイ
ELISAプレートウェルに、精製HRASG12V−GppNp抗原100μl(4μg/ml、約200nM)のPBS溶液を終夜4℃で塗布した。3%ウシ血清アルブミン(BSA)−PBSを用いて室温で2時間ウェルをブロックした。それぞれの精製scFv(約450ng)を1%BSA−PBSで90μlに希釈し、37℃で1時間結合させた。0.1%Tween−20を含有するPBS(PBST)で3回洗浄した後に、1%BSA−PBSで1:2000に希釈された西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗ポリヒスチジン(HIS−1、Sigma)モノクローナル抗体を、37℃で1時間結合させた。PBSTで6回洗浄した後に、3,3’,5,5−テトラメチルベンジジン(TMB)液体基質系を用いて製造者の指示に従って、HRP活性を可視化した。0.5Mヒドロスルフェートを用いて反応を停止し、マイクロタイタープレートリーダー(450〜650nmフィルター)を用いてデータを収集した。抗原に対するscFvの特異性を検証するために、競合ELISAアッセイも実施した。抗原被覆ELISAウェルに混合物を添加する前に、scFvをHRASG12V−GppNp抗原(8μg/ml)とともに室温で30分間プレインキュベートした。すべての測定を2重で実施した。
表面プラズモン共鳴分析
BIAcore 2000(Pharmacia Biosensor)を使用して、scFvと抗原との結合動力学を測定した。抗原をCM5センサーチップに固定化するために、EDC/NHS(N−エチル−N−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩/N−ヒドロキシコハク酸イミド)混合物40μlを流量10μl/分で流して、センサーチップを始めに活性化した。10mM 酢酸ナトリウム中の精製HRASG12V−GppNp 100μg/ml、pH3.5を注入し、約1500RUまで固定化した。固定化後、エタノールアミン−HCl 40μlでチップを不活性化した。精製scFv(10〜500nM)を、流量20μl/分で25℃で(流出緩衝剤HBS−EP(0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%v/vポリソルベート20)+2mM MgCl)固定化HRASG12V−GppNpを含むチップまたは抗原を含まないチップの2つのチャネルに充填し、scFvの結合親和性を求めた。各測定を2重で実施した。scFvを結合させた後の抗原が固定化されたセンサーチップ表面を、出発ベースラインが得られるまで10mM HClですすいで再生させた。動力学速度定数konおよびkoffを、製造者によって提供されたBIAevaluation 2.1ソフトウエアによって評価した。Kd値をkoffおよびkon速度定数から計算した(Kd=koff/kon)。
哺乳動物のin vivo抗原−抗体相互作用アッセイ
scFvを、pEF−BOS−VP16発現ベクターのSfi1およびNot1部位にクローン化した(原稿準備中)。HRASG12V cDNA(コドン1〜166)をpM1ベクターのEcoR1/BamH1部位にサブクローニングすることによって、Gal4 DBDとインフレームであるRASG12Vを発現するHRAS発現プラスミド(pM1−RASG12V)を作製した(Sadowski等、1992)。陽性対照または陰性対照として使用したベイトpM1/β−galおよびプレイpEF−BOS−VP16/R4(抗β−gal scFv)は、(TseおよびRabbitts、2000)に記載されている。COS7細胞に、pG5−Lucレポータープラスミド 500ng(de Wet等、1987)、pRL−CMV 50ng(Promega)、pEF−BOS−VP16/scFv 500ngおよびpM1/抗原ベイト500ngを、LipofectAMINE(商標)トランスフェクション試薬8μl(Invitrogen、製造者の指示に従って)とともに一過的に同時トランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に、細胞をPBSで1回洗浄し、1X受動溶解緩衝剤(passive lysis buffer)500μl(Promega)に室温で15分間緩やかに振盪させながら溶解させた。細胞可溶化物20μlを、Dual−Luciferase Reporter Assay System(Promega)を用いて照度計で分析した。トランスフェクション効率をウミシイタケルシフェラーゼ活性で正規化した。ルシフェラーゼ活性倍率を、ベクターのみを含む試料の正規化ホタルルシフェラーゼ活性を割り算して計算した。データは2重で実施された2つの実験のものである。
免疫蛍光アッセイ
scFv DNA断片を、発現scFvのN末端の核局在化シグナル(nls)およびC末端のmycタグとともに、pEF−nuc−myc(Invitrogen)のNcoI−NotI部位にクローン化した。RAS抗原を発現させるために、完全長RASG12V cDNAを、pHM6ベクター(Boehringer Mannheim)のKpn1−EcoR1部位にクローン化して、N末端のHAタグおよびC末端のHis6タグを有するRASをコードした。トランスフェクション前日に、1.2×10個のCOS7細胞をLab−Tek II Camberスライド(Nalge Nunc International)上に播いた。プラスミドをLipofectamineを用いて同時トランスフェクトし、トランスフェクションから48時間後に、細胞をPBSで2回洗浄し、0.5%Triton XのPBS溶液で透過し、4%パラホルムアルデヒドのPBS溶液で固定した。ともに1:100に希釈した抗c−mycマウスモノクローナル抗体(Santa Cruz;9E10)および抗HAウサギポリクローナル血清(Santa Cruz;sc−805)で細胞を染色した。二次抗体のフルオレセイン連結ヒツジ抗マウス抗体およびCy3連結ヤギ抗ウサギ抗体(Amersham Pharmacia Biotech(APB))を1:200に希釈して染色に使用した。PBSで数回洗浄した後に、スライドにカバーガラスを載せ、Bio−Radiance共焦点顕微鏡(Bio−Rad)を用いて染色パターンを検討した。
ウェスタンブロット分析
哺乳動物細胞におけるscFvの発現レベルおよび可溶性を評価するために、scFvまたはscFv−VP16融合タンパク質をCOS7細胞中で発現させた。scFv発現の場合には、scFv DNA断片をpEF−myc−cyto発現ベクター(Invitrogen)のNco1/Not1部位にクローン化した。トランスフェクション前日に、COS7細胞を6ウェルの培養プレート(Nunc)に約2×10個/ウェルで播いた。pEF−myc−cyto−scFvまたはpEF−BOS−scFv−VP16 1μgを、LipofectAMINE 8μlを用いて一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に、細胞をPBSで1回洗浄し、氷冷抽出緩衝剤(10mM HEPES、pH7.6、250mM NaCl、5mM EDTA、0.5%NP−40、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlペプスタチンA、0.1mg/mlアプロチニン、1mMフェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF))に30分間溶解し、4℃、13,000rpmで10分間遠心分離した。SDS−PAGE、続いて(scFv検出用)抗myc(9E10)モノクローナル抗体または(scFv−VP16AD融合体用)抗VP16(14−5、Santa−Cruz)モノクローナル抗体を一次抗体、HRP結合ウサギ抗マウスIgG抗体(APB)を二次抗体として用いたウェスタンブロットによって、ペレット(「不溶性」画分)および上清(「可溶性」画分)を分析した。ブロットを、高感度化学発光(ECL)検出キット(ABP)によって可視化した。
抗RAS scFv用フレームワーク残基の突然変異
抗RAS scFv33を含むpEF−BOS−VP16を最初のテンプレートに使用し、全体を通してPfu DNAポリメラーゼを使用した。一次テンプレートとしてscFv33の逐次部位特異的突然変異誘発を用い、フットプリント突然変異誘発を用いて、抗RAS scFvI21のFRおよび抗RAS scFv33のCDRを含む構築体I21R33(図3に示す配列)を構築した。I21R33(VHC22S;C92S)、con33およびI21R33VHI21VL(図3)も、適切なオリゴヌクレオチドを用いてフットプリント突然変異誘発によるI21R33の突然変異によって構築した。すべてのscFv構築体をSfi1またはNco1およびNot1で消化し、(in vivo抗原抗体相互作用アッセイ用)pEF−BOS−VP16および(哺乳動物細胞におけるscFv発現用)pEF−myc−cytoベクターにサブクローン化した。すべての突然変異scFv構築体をDNA配列決定によって確認した。
NIH3T3細胞における形質転換アッセイ
RASタンパク質は、細胞の原形質膜に局在化する。したがって、scFvを細胞膜に局在化させるために、本発明者らはpEF−Membベクター(Invitrogen)を使用した。HRASのカルボキシ末端の20個のアミノ酸残基をpEF−myc−cytoベクターのNot1−Xba1部位に導入することによって、scFv発現プラスミドを構築した。この発現ベクターはまた、FLAGタグペプチド(MDYKDDDDK)および別のSfi1クローニング部位をpEF−FLAG−Membと呼ばれるpEF−Membベクターの平滑末端Sfi1部位に導入した。scFvをpEF−FLAG−MembのSfi1−Not1にサブクローニングした。RASG12Vの発現の場合には、HRASG12V突然変異cDNAを発現ベクターpZIPneoSV(X)REFにサブクローニングした。少ない継代のNIH3T3細胞クローンD4(Chris Marshall博士提供)を、トランスフェクション前日に、6ウェルのプレートに2×10個細胞/ウェルで播いた。トランスフェクションには、LipofectAMINE(商標)12μlを使用して、各pEF−FLAG−Memb−scFv 2μg+pZIPneoSV(X)−HRASG12Vベクター100ngを使用した。2日後に、細胞を10cmプレートに移し、5%ドナー子ウシ血清(Invitrogen)、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むDME培地中で2週間増殖させた。最後に、プレートをクリスタルバイオレットで染色し、増殖巣を数えた。
RASタンパク質をin vivoで認識する特異的細胞内抗体フラグメントの単離
本発明者らは、細胞内抗体捕捉技術(Visintin等、1999)を抗RAS ICAbの単離に応用した。逐次ステップは、特異的細胞内抗体を単離するために、精製RASタンパク質を用いた初期in vitroファージscFvライブラリーパンニングおよびin vivo抗原−抗体ツーハイブリッド相互作用スクリーニングを含む。in vitroファージAbスクリーニングの場合には、5’−グアニリルイミド2リン酸(GppNp、Sigma、GTPの非加水分解性アナログ)に結合した精製カルボキシル末端切断型ヒトHa−RASG12Vを抗原として使用した。1ラウンドのin vitroパンニング後に、約1.18×10個の抗原結合ファージを2.7X1013個の初期ファージから回収した(図1)。サブライブラリーをファージミドDNAとして調製し、酵母VP16転写活性化ドメインベクターにクローン化して、抗RAS scFv−VP16−ADライブラリー(約4×10個のクローン)を作製した。この酵母サブライブラリーを、RAS−G12Vに融合したLexA−DBDを含む融合タンパク質ベイトを発現する酵母菌株(hisおよび−galレポーター遺伝子を有するL40)にトランスフェクトした。合計約8.45×10個の酵母コロニーをスクリーニングした(図1)。428個のコロニーはヒスチジンの非存在下で増殖し、これらのクローンもβ−galを活性化させた。scFv−VP16−ADプラスミドをヒスチジン非依存性のβ−gal陽性クローンから単離し、それらのDNA制限パターンによって分類した。90%を超えるこれらのscFv−VP16−ADプラスミドが同一のDNAフィンガープリントパターンを有し、20個は配列が決定され、同一のDNA配列を有することが判明した。異なるDNAフィンガープリントパターンを有するscFvに、新しい酵母中のpBTM/RASG12Vベイトを同時形質転換し、ヒスチジン非依存性増殖およびβ−gal活性化について分析した。33、J48およびI21で示された3種類の抗RAS scFvをこうして特定した(図1)。酵母中のRASに対するこれらのscFvの結合特異性を、(空pBTM116ベクターから作製された)LexA DBDおよび非関連抗原(β−ガラクトシダーゼ)との相互作用の欠如によってさらに検証した(データ示さず)。
抗RAS ICAbの効力を、哺乳動物細胞レポーターアッセイおよびin vivo抗原コロケーションアッセイによって確認した(図2)。使用した哺乳動物細胞アッセイは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子からのルシフェラーゼ産生であった。3種類のscFvを、伸長因子−1aプロモーター(MizushimaおよびNagata、1990)およびVP16転写活性化ドメイン(AD)を有する哺乳動物発現ベクターpEF−BOS−VP16にシャトル(shuttle)させた。scFvを、そのN末端側で、VP16セグメントとともにインフレームにクローン化した(Triezenberg等、1988)。RASG12V抗原を、抗原(pM−RASG12V)とのN末端融合体としてGAL4−DBDを含むpMベクター(Sadowski等、1992)にクローン化した。pEFBOSVP16−scFvおよびpM−RASG12Vを、ルシフェラーゼレポータープラスミドとともにCOS7細胞に同時トランスフェクトした。scFv33またはJ48 ICAb−VP16融合体がベイト抗原RASG12Vとともに発現されると10倍を超える活性化が認められたが(図2A)、非関連抗原β−ガラクトシダーゼでは認められなかった。しかし、酵母抗RASICAb I21がRASG12Vベイトと同時発現されたときには、活性化が認められなかった(図2A)。他の哺乳動物細胞系、すなわち、HelaおよびCHO細胞においても類似の結果が得られた。酵母とは反対に、この哺乳動物細胞アッセイにおいてICAb I21が抗原と検出可能な程度に相互作用しなかったのは、単に、不十分な親和性しか持たなかった、または酵母アッセイよりも哺乳動物のアッセイが相対的に鈍感であることを反映しているのかもしれないし、おそらくはトランスフェクション効率、内因性転写因子に接近する必要があるレポーター遺伝子活性化、および/または抗原もしくは抗体の発現レベルなどの要因のためかもしれない。
lexA−DBDを発現する酵母系およびGal4−DBDを発現する哺乳動物系におけるscFv33およびJ48の観察された相互作用は、scFvが、ベイトにおけるRASとDBDの融合による人工的なものではなく、RAS抗原本来のエピトープと相互作用することの良好な指標になる。これの別の証拠は、本来のRAS抗原が、核局在化シグナル(nls)が付加するscFvとともに発現されるコロケーションアッセイから得られた。COS7細胞に、HAエピトープタグを有するRAS発現ベクターとmycエピトープタグを有するscFvをコードするscFv発現ベクターとを同時トランスフェクトした。52時間後に、RAS抗原が抗HAタグAbによって検出され、scFvが抗mycタグAbによって検出された(図2B)。RAS抗原が単独で、または非関連ICAb(scFvR4(Martineau等、1998))とともに発現されたときには、抗原が細胞質中で検出され、抗体が核中で検出されたのに対し(図2B、下図)、抗原が、nlsを有する抗RAS ICAb 33とともに同時発現された場合には、RAS抗原およびscFvの核中でのコロケーションが認められた。これらは、抗RAS ICAb 33が十分な発現、およびRAS抗原にin vivoで結合する親和性を有し、細胞内での再配置をもたらすことを意味する(抗RAS scFv J48を用いても類似の結果が得られた。データ示さず)。
抗RAS scFvの配列および細菌発現
抗RAS scFv(33、J48およびI21)の配列を決定し、誘導タンパク質配列をアライメントした(図3)。全3種類のscFvは、JH5に連結されたVH3サブグループおよびV 1サブグループに属する。Sheets等のライブラリー(Sheets等、1998)からのみ単離された抗BCRおよび抗ABL scFv(Tse等、2002)についての本発明者らの以前のデータも、VH3およびV 1サブグループに属する。本発明者らの以前の研究において、本発明者らは、抗BCRと抗ABL scFvを比較することによって誘導されたコンセンサスフレームワークを定義することができ(Tse等、2002)、類似の研究が抗TAU ICAbsを用いてなされた(Visintin等、2002)。本発明者らは、VH3およびV 1からなるフレームワークが、細胞内のscFv機能、およびその上に他のICAbを設計するコンセンサスセット基本配列に極めて適していると結論した。本明細書の抗RAS ICAbは、この概念を改善するのに役立つ。
3種類の抗RAS scFvの発現レベルが、細菌ペリプラズム発現によって最初に検討された。これらのscFvを、scFvの5’にPelBリーダー配列を有するpHEN2にサブクローニングし、可溶性scFvタンパク質をペリプラズムで発現させた(マップについては、www.mrc-cpe.cam.ac.uk参照)。ペリプラズムscFv抽出物を固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって精製し、タンパク質調製物をSDS−PAGEによって分離させた(図4)。scFvI21は、ペリプラズムに30℃で分泌されると主に可溶性画分中に蓄積し、ペリプラズム発現収量は約3mg/リットル培養物であった。他方の抗RAS scFv(33およびJ48)の発現は0.1mg/リットル未満であった。抗RAS scFv配列とコンセンサスICAb配列(図3)の比較から、33およびJ48のVHフレームワーク残基中に4つの違いのみが明らかになり、その1つはVH FR1の7位である。この残基は、この領域のコンホメーションに影響を及ぼす3個のうちの1個であり(Jung等、2001)、したがって、ICAb 33およびJ48可溶性に影響を及ぼす可能性がある。I21は、VH FR1 6、7および10位のコンセンサスに一致する。
抗RAS scFvの生化学的および生物物理学的特徴付け
本発明者らの研究において単離されたICAbの諸特性も、2種類のin vitroアッセイによって明らかになった。scFvとRAS抗原との相互作用を、細菌中で生成された精製scFvを用いて、ELISAおよびバイオセンサーアッセイによって検討した。RASG12V−GppNpを抗原としてELISAプレート上に塗布し、精製scFvに暴露し、結合したscFvをHRP結合抗Hisタグ抗体を用いて検出した(図5)。全3種類の抗RAS scFvは、BSAよりもRAS抗原に対してかなりのシグナルを発生し、相互作用特異性の尺度としてRASG12V抗原とともにプレインキュベーションするとシグナルが抑制された。これらの結果によれば、これらの抗RAS scFvが天然型のRASG12V−GppNpとのみ相互作用し得ることがさらに示唆される。
結合抗RAS scFvの抗原に対する親和性を、BIAcoreにおける結合動力学によって測定した(図6)。scFv33およびJ48のKdは、1.39±1.31nM、3.63±0.15nMと求められた(図6B)。これらのscFvの親和性の差異は、VHドメイン中のCDR1配列の差異を示している可能性がある。scFvI21のKdは2.16±0.25μMであり、scFv33またはJ48よりも3桁低い。scFvI21のマイクロモルの範囲のこの低い親和性は、酵母in vivo抗原−抗体相互作用アッセイにおけるその弱いβ−galレポーター遺伝子活性化、および哺乳動物細胞アッセイにおける検出可能な結合の欠如と一致する。
scFvフレームワーク配列の改変による抗RAS scFvの機能改善
細菌細胞および哺乳動物細胞において発現されたときには、scFvの安定性と収率に優れた定量相関があり、scFvI21は、細菌(図4)および哺乳動物細胞質(図7)において他の2種類の抗RAS scFvよりも高い発現収率を示す。COS7発現において試験されたすべてのscFvは、かなりの量の「不溶性」scFvを示したが(図7B)、最適発現レベルはscFvI21で明らかであった(図7A)。抗RAS scFv33の可溶性および安定性がin vivoおよびin vitroで改善されるかどうかを、scFv33とscFvI21との13アミノ酸差異の一部または全部を含むようにscFv33のフレームワークを突然変異させることによって評価した(図3)。scFv33のVH FR領域を突然変異させてI21と同じにすると(FR3末端にlysではなくargを含むが)、優れたin vivoでの可溶性が認められた(図7A、I21R−33)。また、鎖内ジスルフィド結合に必要な両方のCys残基をSerに突然変異させても(図7、scFv I21R−33(VHC22S;C92S)、可溶性発現レベルに対するほんの小さな効果しか得られなかった。
scFvの様々な突然変異体のin vivoでの相互作用を、COS7細胞中でルシフェラーゼレポーターアッセイによって評価した(図8)。図8Aに、scFv33フレームワークの様々な改変形態の発現およびルシフェラーゼレポーターデータを、scFv33自体またはscFvR4(抗β−galの陰性対照、(Martineau等、1998))、および有意なルシフェラーゼ活性をもたらさないscFvI21のレベルと比較して示す。このscFv−VP16の発現は、本来のscFv 33よりも増加したが(図8A)、1つの注目すべきscFv33の突然変異体は、レポーター応答を完全に排除した(図8A)Arg94Lys(Kabat等による番号付けによる(Kabat等.、1991)、IMGT、Lefranc等による106位(LefrancおよびLefranc、2001))である。94位のアルギニン残基は、抗原結合部位(重鎖のCDR3)に極めて近く、RAS抗原との相互作用に直接関与し得る。あるいは、この位置の残基は、CDR3ループによってその正に帯電した側鎖を介してH101位のアスパラギン酸のカルボキシル基と表面架橋を形成することができ(Morea等、1998)、(ArgからLysへの)置換は、CDR3の重要なコンホメーションに影響を及ぼす可能性がある。他の突然変異体scFv33は、一般に、ルシフェラーゼレポーターアッセイから判断して、RAS抗原との結合能力を維持した(図8A)。興味深いことに、3種類の突然変異体、VH(A74S+S77T)、VL(I84T)およびVH(Q1E+V5L+A7S+S28T)+VL(G100Q+L104V)は、レポーター遺伝子活性が1.5〜2.5倍増加し、可溶性画分中のscFv−VP16が増加した。
H94位のアルギニンが維持されたことを除いて、scFvI21のフレームワークへのscFv33の突然変異が実施された(I21R33)。scFv33がICAbコンセンサスフレームワークに変換されたもの(con33)と、VHフレームワークのみの突然変異が実施されたもの(I21R−33VHI21VL、図3)の2種類のさらに別のscFv33変異体が構築された。哺乳動物レポーターアッセイにおいては、レポーター遺伝子活性の2〜3倍の増加がI21R33およびcon 33で認められたが、本来のscFv33よりも可溶性が劇的に改善された(図8B)。これらのデータによれば、コンセンサスフレームワーク、すなわちI21フレームワークは、細胞内抗体発現の最も適切な骨格であり、これらのフレームワークを用いてさらにICAb機能を改善することができる。
VHドメインにおいて保存的システイン残基を欠く抗RAS scFvの活性
還元性環境において、scFvはジスルフィド結合をほとんど形成することができないが、突然変異抗RAS scFv I21R33は、COS7細胞においてRAS抗原と特異的に相互作用する。(Biocca等、1995;Tavladoraki等、1993)。おそらくは、抗βガラクトシダーゼscFvR4などの、過剰発現されたscFvの小集団が、細胞質中でジスルフィド結合を形成し、抗原とin vivoで相互作用し、その一部が細菌の細胞質中でジスルフィド結合していると考えられる(Martineau等、1998)。したがって、scFvが抗原と高親和性を有する場合には、本発明者らの抗原−抗体相互作用アッセイによって、小集団をin vivoで検出することができる。しかし、in vitroでの研究によれば、ジスルフィドがないが正確に折りたたまれるscFvを作製できることが示された(Proba等、1998;WornおよびPluckthun、1998a)。したがって、鎖内S−S結合に対する要件を試験するために、22位および92位(Kabatの番号付け、またはIMGTによる番号付けで23および104)のシステイン残基を欠く突然変異体scFvをコードする発現ベクターを構築した。I21R33配列に基づくこのscFvは、2個のcysコドンを有し、セリンに突然変異した(クローンI21R33(VHC22S;C92S)。このタンパク質をコードするベクターを本発明者らの哺乳動物レポーターアッセイで試験した(図8B)。scFvタンパク質は高レベルで発現され、I21R33およびI21のそれらとほぼ匹敵し、ルシフェラーゼレポーターを活性化する能力は12R33 scFvに類似していた。これらの結果によれば、抗RAS scFv I21R33は、鎖内ジスルフィド結合なく十分に折りたたまれ、細胞内でこの状態で機能することができる。
腫瘍形成性形質転換を遮断するICAbから抗RAS試薬への変換
上述の実験において、本発明者らは、VHおよびVLフレームワーク領域を正準のIACコンセンサスと等価にするVHおよびVLフレームワーク領域の突然変異分析によって、抗RAS ICAbの有効性を改善しようとした(Tse等、2002)。抗RAS配列がNIH3T3細胞の発癌性RAS形質転換を阻害するかどうかを評価することによって、本発明者らの所定のコンセンサスフレームワークの有用性をさらに試験した。本発明者らは、RASをベイトとして使用した酵母スクリーニングから単離され(図1)、哺乳動物細胞において十分発現されるにもかかわらず(図7)有効な活性をもたないscFv I21クローンを出発点とすることによって、これを評価した。scFv33からI21R33への突然変異誘発性(すなわち、scFv33のVH CDRおよびVL CDRを有するI21フレームワーク)によって、ルシフェラーゼレポーターを活性化することができる十分に発現されたタンパク質が得られる(図8B)。本発明者らは、活性化HRAS(RASG12V)のみを発現するプラスミドをNIH3T3細胞にトランスフェクトして、多層増殖可能であり、紡錘状細胞の渦巻き形をした形質転換増殖巣(非接触阻害コロニー)を生成させる競合形質転換アッセイにこのタンパク質を使用した(図9A、RASG12V+空scFvベクター)。NIH3T3細胞に、RASG12VベクターとscFvI21を発現するベクターを同時トランスフェクトすると、RAS依存性ルシフェラーゼレポーターアッセイで認められた活性化の欠如に一致して、対照との差異は本質的に認められなかった(図9AおよびB)。一方、RASG12Vが突然変異I21クローンのscFvI21R33とともに発現されると、おそらくscFvとRASG12V発現タンパク質とが相互作用し、その機能が阻害されるために、形質転換増殖巣の数は30%に減少した。したがって、コンセンサス骨格は、本発明者らの実験において機能的scFvを生成する基礎となる。
上記明細書に述べたすべての刊行物を参照により本明細書に援用する。本発明に記載の方法およびシステムの様々な改変形態および変更形態が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明を具体的な好ましい実施形態と関連して説明したが、特許請求する本発明をそのような具体的実施形態に不当に限定すべきでないことを理解すべきである。実際、生化学、分子生物学およびバイオテクノロジーまたは関連分野の当業者に明白である本発明の記載された実施形態の様々な変形形態が添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
参考文献
Figure 2006523086
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抗RAS scFvの細胞内抗体捕捉を示す図である。 哺乳動物細胞における抗RAS scFvとRASタンパク質との相互作用を示す図である。Aはルシフェラーゼアッセイ、Bはin situ免疫蛍光試験の結果をそれぞれ示す。 抗RAS細胞内scFvの配列を示す図である。 抗RAS細胞内scFvの配列を示す図である。 抗RAS scFvのペリプラズムでの発現および精製を示す図である。 抗RAS scFvの特異的抗原結合および競合ELISAを示す図である。 BIAcoreを用いた抗RAS scFvの親和性測定を示す図である。Aは抗RAS scFvとHRASG12V−GppNp抗原(固定化1500 RU)との結合を示すセンソグラム(Sensogram)を示し、Bに、会合速度(Kon)および解離速度(Koff)の値、ならびにBIAevaluation 2.1ソフトウエアによる平衡解離定数(Kd)の計算値を要約する。 COS7細胞における発現scFvの可溶性に対するフレームワーク残基の影響を示す図である。 フレームワーク配列の突然変異による抗RAS ICAbとRAS抗原との細胞内相互作用の改善を示す図である。Aは、COS7にpEFBOSVP16−scFvベクターおよびpM1−RASG12V、ならびにルシフェラーゼレポータークローンをトランスフェクトし、ルシフェラーゼレベルを求めた結果を示している。Bは、コンセンサス配列骨格に変換するフレームワーク突然変異を含むscFvを用いたCOS7細胞ツーハイブリッド抗体−抗原相互作用アッセイを示す。 抗RAS scFvによるRAS依存性NIH3T3細胞形質転換活性の阻害を示す図である。Aは、染色プレートの代表的な写真であり、Bは、形質転換増殖巣の相対的百分率を示す。

Claims (13)

  1. 細胞内での使用に適切な抗体を生成する方法であって、
    (a)細胞内環境内で1以上の抗原と特異的に結合する能力について2以上の抗体を試験すること、およびこのような環境内で1以上の抗原と特異的に結合することが可能な抗体を選択すること、
    (b)細胞内環境内で可溶性である能力について2以上の抗体を試験すること、およびこのような環境内で可溶性である抗体を選択すること;ならびに
    (c)工程(b)で選択された抗体のフレームワーク領域および、工程(a)で選択される抗体由来のCDR配列から抗体を生成することを含む上記方法。
  2. 細胞内での使用に適切な抗体を生成する方法であって、以下からなるリスト:図3にI21として記載されかつ配列番号4で表される重鎖フレームワーク領域、配列番号1で表されかつConとして記載されるコンセンサス配列の重鎖フレームワーク領域、図3にI21R33として記載されかつ配列番号7で表される重鎖フレームワーク領域、図3にI21として記載されかつ配列番号14で表される軽鎖フレームワーク領域、配列番号11で表されかつConとして記載されるコンセンサス配列の軽鎖フレームワーク領域、図3にI21R33として記載されかつ配列番号17で表される軽鎖フレームワーク領域、または(Kabatによる)22位と92位のアミノ酸残基がシステイン残基ではないこれらの重鎖フレームワーク配列のいずれか、から選択されるフレームワーク配列(またはこれらをコードする核酸)のいずれかを少なくとも用いて抗体を合成する工程を含む、上記方法。
  3. 細胞内での使用に適切な抗体分子の合成方法であって、VHIIIサブグループに含まれ、かつ(Kabat番号付けによる)以下の:VH1位、グルタミン;VH5位リシン;VH7位、セリン;VH74位、セリン;VH77位、トレオニン;VH84位、VHアラニン;VH22位、システイン以外のいずれかのアミノ酸;VH92位、システイン以外の他のいずれかのアミノ酸、からなる群から選択される1以上のアミノ酸を示された位置で含む重鎖可変ドメイン(またはそれをコードする核酸)から抗体を合成する工程、および/またはVK1サブグループに含まれ、かつ(Kabat番号付けによる)以下の:VL0位、トレオニン;VL4位、グルタミン、からなる群から選択される1以上のアミノ酸を示された位置で含む軽鎖可変ドメインから抗体を合成する工程を含む、上記方法。
  4. 重鎖のVHIIIサブグループに含まれる重鎖可変ドメインを含む抗体分子を細胞内での使用に適切な抗体分子へ変換する方法であって、抗体重鎖可変ドメインの少なくとも1つを含む1以上のフレームワークアミノ酸(またはそれをコードする核酸)を、以下の:VH1位、グルタミン;VH5位リシン;VH7位、セリン;VH74位、セリン;VH77位、トレオニン;VH84位、VHアラニン;VH22位、システイン以外のいずれかのアミノ酸;VH92位、システイン以外の他のいずれかのアミノ酸、からなる群に(Kabat番号付けにより)示されるアミノ酸に突然変異させる工程を含む、上記方法。
  5. 軽鎖のVK1サブグループに含まれる軽鎖可変ドメインを含む抗体分子を細胞内での使用に適切な抗体分子へ変換する方法であって、抗体軽鎖可変ドメインの少なくとも1つを含む1以上のフレームワークアミノ酸(またはそれをコードする核酸)を、以下の:VL0位、トレオニン;VL4位、グルタミン、からなる群に(Kabat番号付けにより)示されるアミノ酸へ突然変異させる工程を含む、上記方法。
  6. 抗体分子を細胞内での使用に適切なものへ変換する方法であって、生じるフレームワークアミノ酸配列が図3に示される以下の:配列番号1(VH-Con)、配列番号4(VH-I21)、配列番号7(VH-I21R33)17;または(Kabatによる)22位と92位のアミノ酸残基がシステイン残基でないこれらの重鎖フレームワーク配列のいずれか、からなる群から選択されるこれらの配列のいずれかを含むように、少なくとも抗体重鎖可変ドメインを含む1以上のフレームワークアミノ酸(またはそれをコードする核酸)を突然変異させる工程を含む、上記方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により取得される抗体分子。
  8. 抗体分子がDabである請求項7に記載の抗体分子。
  9. 重鎖および軽鎖可変ドメインの両方を含む請求項7に記載の抗体分子。
  10. VHI21(配列番号4)、VHI21R33(配列番号7)、または22位および92位のアミノ酸の1以上がシステインではないこれらいずれかの配列;VLI21(配列番号14)およびVLI21R33(配列番号17)、からなる図3に示される群から選択されるフレームワーク領域配列のいずれか1以上から作製されるライブラリー。
  11. 請求項7〜9のいずれか1項に記載の1以上の抗体と、製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む組成物。
  12. 1以上の疾患の予防および/または治療のための医薬製造における請求項7〜9のいずれか1項に記載の1以上の抗体の使用。
  13. 細胞内環境内で1以上の抗原と特異的に結合する請求項7〜9のいずれか1項に記載の抗体の使用。
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