発明の詳細な説明
発明の分野
本発明は、経上皮的な治療薬の全身性送達のための方法および生成物に関する。具体的には、本発明は、肺の中央部気道に対して投与することにより、新生児Fc受容体(FcRn)結合パートナーを含む、治療薬の全身性送達のための方法および組成物に関する。そのような治療薬には、治療用および診断用IgG抗体並びに治療剤とFcRn結合パートナーとの間で形成される抱合体が含まれる。この方法および組成物は、被検体の疾患、症状、またはその他の状態を検出し、治療しまたは予防する際に、治療薬がそれ自体有用である様な、どのような適応症に対しても有用である。
発明の背景
上皮性バリアを介した高分子の輸送は、受容体-非特異的メカニズムまたは受容体-特異的メカニズムにより発生しうる。受容体-非特異的メカニズムは、傍細胞ふるいわけ現象により象徴され、その効率は、輸送される分子の分子量と逆相関している。免疫グロブリンG(IgG)などの高分子の、傍細胞経路を介した輸送は、IgGの分子量が大きいため(約150 kDa)、非常に効率が悪い。受容体-非特異的輸送には、液相におけるトランスサイトーシスも含まれうる。この方法は、受容体-媒介性輸送よりもかなり効率が悪い。というのも、液相中のほとんどの高分子が、分解のためにリソゾームにふるい分けられてしまうからである。対照的に、非常に効率的な分子輸送を提供することができる受容体-特異的メカニズムは、他の状況では、傍細胞ふるい分けにより効果的に排除する。このような受容体-媒介性メカニズムは、アルブミン、トランスフェリン、および免疫グロブリンなどの同化作用的に高くつく高分子に対する効果的なスカベンジャーメカニズムとして、目的論的に理解される可能性がある。これらの高分子およびその他の高分子は、他の状況では、体内から体外への無限濃度勾配を拡散して行くことを通じて、上皮バリアにおいて失われる。上皮を介した高分子の輸送のための受容体特異的メカニズムは、わずか数種の高分子についてしか存在しない。
体内と外界との境界を画定する表面は、上皮と呼ばれる特殊化した組織により提供される。もっとも単純な形態においては、上皮は、単一種の細胞の単層であり、外部または“内部”表面の被覆を形成する。上皮組織は、内胚葉および外胚葉から生じたものであり、そしてしたがって皮膚、角膜(目)の上皮、並びに胃腸管の“内部”内張表面、泌尿生殖路、および呼吸器系が含まれる。これらの“内部”内張表面は、外界と連絡し、そしてしたがって、体内と外界との境界を形成する。これらの様々な上皮は、構造的特徴またはそれらを区別する付属物を特殊化してきたが、それらは多くを共有してもいる。
様々な上皮の間で共通する2つの特徴は、全体レベルでの巨大な表面積と、細胞レベルでの密着結合との緊密な密着との組み合わせである。これらの2つの特徴は、治療剤の全身性の非-侵襲性送達のための部位として上皮を使用することについて、それぞれ利点となる可能性と不利となる可能性を提示する。例えば、ヒト成人の肺上皮の表面積は、140 m2あると考えられている。したがって、もちろん、治療剤を上皮に送達することができ、その後上皮を介して輸送することができるとの条件で、この巨大な表面は、治療剤を全身性送達するための投与の非常に魅力的な部位を提示する可能性がある。
様々な上皮に特徴的で本発明に特に重要な第3の特徴は、FcRn(新生児Fc受容体)により提供される上皮性バリアを介した輸送についての受容体-特異的メカニズムである。この受容体は、新生児ラットおよびマウスの小腸上皮において最初は同定され、そしてミルクから乳のみラットまたはマウスの血流への母性IgGの輸送を媒介することが示された。このメカニズムにより新生児へ輸送されるIgGは、新生児の免疫学的防御のために必須である。ラットおよびマウスの小腸上皮におけるFcRnの発現は、新生児期の後、停止することが報告された。ヒトにおいて、体液性免疫は、新生児の小腸IgG輸送に依存しない。むしろ、胎盤組織の受容体が、IgG輸送の役割を果たしていると考えられていた。この輸送に関与する受容体が、長年にわたって探し続けられてきた。いくつかのIgG-結合タンパク質が、胎盤から単離された。FcγRIIは、胎盤上皮において検出され、そしてFcγRIIIは合胞体栄養細胞において検出された。しかしながら、これらの受容体は共に、単量体IgGに対して比較的低い親和性を示した。1994に、Simisterと共同研究者たちは、IgGについてのラットおよびマウスFc受容体のヒトホモログをコードするcDNAを、ヒト胎盤から単離したことを報告した(Story CM et al. (1994) J Exp Med 180: 2377-81)。完全なヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列が報告され、そしてそれぞれGenBankアクセッション番号Nos. U12255およびAAA58958として公衆に利用可能である。
げっ歯類小腸FcRnとは異なり、ヒトFcRnは、思いがけなく、成人上皮細胞において発現されることが、見いだされた(U.S.特許Nos. 6,030,613および6,086,875)。具体的には、ヒトFcRnは、肺上皮組織だけではなく、小腸上皮組織(Israel EJ et al. (1997) Immunology 92: 69-74)、腎臓近位尿細管上皮細胞(Kobayashi N et al. (2002) Am J Physiol Renal Physiol 282: F358-65)、および鼻上皮、膣表面、および胆管肢表面を含むその他の粘膜上皮表面で発現することが見いだされた。
Blumbergらに対して発行されたU.S. Pat. No. 6,030,613は、FcRn結合パートナーと抱合体を形成した治療剤を、小腸上皮、粘膜上皮、および肺の上皮に送達するための方法および組成物を開示する。
やはりBlumbergらに対して発行されたU.S. Pat. No. 6,086,875は、FcRn結合パートナーと抱合体を形成した抗原を、肺の上皮を含むFcRn-発現上皮に対して送達することにより、抗原に対する免疫応答を刺激するための方法および組成物を開示する。
治療剤を全身性送達するために治療剤を肺上皮に対して投与するためには、深部肺、すなわち肺の末梢に送達することが必要であると広く考えられている。というのも、その方法が、最大量の利用可能な表面積に接近する方法だからである(Yu J et al. (1997) Crit Rev Therapeutic Drug Carrier Systems 14: 395-453)。さらに、上皮内層、すなわち肺の最深部領域である肺胞は、極めて薄い細胞の単層である。対照的に、肺のより近位の気道の上皮は、比較的厚みがあり、そしてより遠位の気道および肺胞中に蓄積しそれによりガス交換が妨害される様な物質のクリアランスを促進するための繊毛を備えている。したがって、エアロゾル送達系および方法は、深部肺への薬物送達を最大にするという目的のもと、開発された。これは、典型的には、エアロゾル発生装置(例えば、計器用量吸入器(metered dose inhaler;MDI)およびエアロゾル発生装置を使用する際に患者により行われなければならない特別な吸入技術の両方に関連する因子の組み合わせを必要とする。例えば、典型的なMDIは、可能な範囲で最小の液滴または粒子を発生する様に設計されている可能性があり、そしてスペーサー装置あるいはアタッチメントと共に使用して、より大きなより低速度の粒子をエアロゾルから捕捉しそして取り除く様に適合させることができる。ユーザーは、典型的には、吸気の開始、吸気の速度および深さ、呼吸を止めること、などにより、MDIの放出を調整しなければならない可能性がある。これらのすべては、肺の最深部領域まで活性剤を効果的に送達する可能性を上昇させるためである。言うまでもなく、患者の従順さおよび治療効率は、しばしばこれらの技術的要求により危うくされる。
発明の概要
本発明は、その一部は、肺の上皮でのFcRnの発現が、肺の末梢におけるよりも中央部気道においてより大量に行われているという、発明者らによる驚くべき発見に関連する。肺の上皮におけるFcRnのこの密度分布は、実際に、治療剤がFcRn結合パートナーを含むかまたは組み込んでいる場合、深部肺に対してではなく、中央部気道に対して治療剤をエアロゾル投与するために好都合である。エアロゾル化FcRn結合パートナー抱合体を中央部気道に投与することにより、非常に効率よく抱合体を呼吸上皮を介してFcRn-媒介性トランスサイトーシスし、そして治療剤の全身性送達を行うことが可能になることが、本発明にしたがって、見いだされた。肺投与を介する全身性送達するための他の方法および組成物とは異なり、本発明は、全身性送達を達成するために特別な呼吸技術は全く必要とされない、という点で有利である。そのため、深部肺への送達に関して必要なものにより示される技術的な障害は、回避され、そして本発明は、FcRn結合パートナーとの抱合体として、肺の中央部気道に対して治療剤をエアロゾル投与することにより、治療剤を被検体に対して非侵襲性で全身性送達するために有用な効果的なストラテジーを提供する。
被検体に対する抗体の全身性送達は、被検体の中央部気道に対して抗体の投与を試行することにより、本発明にしたがって達成することができることを、ここで見いだした。本発明の方法は、したがって、肺の中央部気道におけるFcRn受容体の発現が優勢であることを利用して、非常に効率的な肺の上皮を介した抗体の細胞通過輸送を媒介し、抗体の全身性送達を達成する。
本発明は、抗体を含む治療薬の全身性送達を達成することが望ましい場所であればどこでも有用である。本発明は、例えば、治療剤を用いて治療可能である被検体の症状を治療しまたは予防するために、特定の治療剤を被検体に対して投与することが望ましい場所であればどこでも有用である。本発明は、具体的には、治療剤の繰り返し投与または慢性的投与が要請される場合はいつでも、特別な呼吸技術を承諾させることが難しい場合、および侵襲的な投与を避けることが望ましい場合にはいつでも、有用であるに違いない。
本発明の一側面にしたがって、治療剤の全身性送達のための方法が提供される。この方法は、中央部肺領域/末梢部肺領域沈着比(C/P比)が少なくとも0.7となるように、有効量の治療剤とFcRn結合パートナーとの抱合体のエアロゾルを肺に対して投与に関する。以下にさらに説明するように、C/P比は、抱合体が中央部気道に意図的に送達されるように選択される。
本発明のこの側面に従う一態様におけるC/P比は、少なくとも1.0である。別の態様においては、C/P比は少なくとも1.5である。別の態様においては、C/P比は少なくとも2.0である。別の態様においては、C/P比は少なくとも3.0である。
本発明のこの側面およびその他の側面に重要なことは、一態様において、被検体の中央部気道に対して投与することには、被検体による周期的な呼吸が関連する。この点で、本発明の方法は、抗体などの高分子の肺投与に関するその他すべての方法において、肺胞投与に対する現在の焦点から顕著に発展していることを示す。例えば、本発明にしたがって有用な呼吸技術では、呼吸を止めること、通常の吸入よりも深い吸入、あるいは特別なタイミングは必要とされない。したがって、この方法は、そのような方策が達成困難である場合、例えば年齢(例えば新生児および幼児)あるいは患者の協調性の点で困難な場合に、特に有用である。
本発明の別の側面にしたがって、治療剤を全身性送達するための方法が提供される。この方法には、治療剤とFcRn結合パートナーとの抱合体の有効量のエアロゾルを肺に対して投与することに関連し、ここでエアロゾル中の粒子は、少なくとも3マイクロメートル(μm)の空気動力学的中央粒子径(mass median aerodynamic diameter;MMAD)を有する。
さらに別の側面にしたがって、本発明は、治療剤とFcRn結合パートナーとの抱合体のエアロゾルを提供し、ここでエアロゾル中の粒子は、少なくとも3μmのMMADを有する。
さらに別の側面にしたがって、本発明はエアロゾル送達系を提供する。この側面にしたがったエアロゾル送達系には、容器、容器に連結されたエアロゾル発生器、および容器中に配置された治療剤とFcRn結合パートナーとの抱合体が含まれ、ここでエアロゾル発生器は、少なくとも3μmのMMADを有する粒子を有する抱合体のエアロゾルを発生するように構築されそして配置されている。
一態様において、この側面は、エアロゾル送達系を製造する方法を提供する。この方法は、容器を用意する工程、容器に連結されたエアロゾル発生器を用意する工程、そして有効量の抱合体を容器中に配置する工程、に関する。
本発明のこの側面に従うある態様において、エアロゾル発生器には、抱合体を含有する溶液と液体連通している振動性エレメントが含まれる。
ある態様において、振動性エレメントは、(a)前部表面;(b)溶液と液体連通している背部表面;および(c)この部材を横切る複数の開口部;を有する部材を含む。特定の態様において、前部表面の開口部は、少なくとも直径が3μmである。この開口部は、背部表面から前部表面に細くなる様にとがらせることができる。
本発明のこの側面に従うある態様において、エアロゾル発生器はネブライザーである、。ある態様において、ネブライザーはジェットネブライザーである。
本発明のこの側面に従うある態様において、エアロゾル発生器は機械的ポンプである。
本発明のこの側面に従うある態様において、容器は加圧容器である。
さらに別の側面にしたがって、本発明はエアロゾル送達系を提供する。この側面にしたがったエアロゾル送達系には、容器、容器に連結されたエアロゾル発生器、および容器中に配置された治療剤とFcRn結合パートナーとの抱合体が含まれ、ここでエアロゾル発生器には少なくとも3μmのMMADの粒子を有する抱合体のエアロゾルを発生させるための手段が含まれる。
一態様において、この側面は、エアロゾル送達系を製造する方法を提供する。この方法は、容器を用意する工程、容器に連結されたエアロゾル発生器を用意する工程、および有効量の抱合体を容器中に配置する工程に関する。
本発明のこの側面に従うある態様において、エアロゾル発生器には、抱合体を含有する溶液と液体連通している振動性エレメントが含まれる。
ある態様において、振動性エレメントは、(a)前部表面;(b)溶液と液体連通している背部表面;および(c)この部材を横切る複数の開口部;を有する部材を含む。特定の態様において、前部表面の開口部は、少なくとも直径3μmである。開口部は、背部表面から前部表面まで、細くなるようにとがらせることができる。
本発明のこの側面に従うある態様において、エアロゾル発生器はネブライザーである。ある態様において、ネブライザーはジェットネブライザーである。
本発明のこの側面に従うある態様において、エアロゾル発生器は機械的ポンプである。
本発明のこの側面に従うある態様において、容器は加圧容器である。
本発明の上述した側面のそれぞれにおいて、いくつかの態様において、粒子のMMADは、3μm〜約8μmである。いくつかの態様において、粒子のMMADは、4μmよりも大きい。特定の態様において、粒子の大部分は呼吸に適していない、すなわち粒子の大部分は少なくとも4.8μmのMMADを有する。呼吸に適していない粒子は、実質的に深部肺における肺胞腔にはいることができないことで特徴づけられる。
本発明の上述した側面のそれぞれにおいて、いくつかの態様において、FcRn結合パートナーは、FcRnに結合するIgGのFcドメインの部分(すなわち、Fc、Fcドメイン、Fcフラグメント、Fcフラグメントホモログ)を模倣するFcRnに対するリガンドを含有する。特定の態様において、FcRn結合パートナーは、非-特異的IgGであるか、またはIgGのFcRn-結合フラグメントである。もっとも典型的には、FcRn結合パートナーは、IgGのFcフラグメント、すなわちFcγに対応する。Fcγは、天然のものであっても、天然FcγよりもFcRnに対してより高い親和性を有するように修飾されていてもよい。そのような修飾には、FcRnとの接触に関与する特定のアミノ酸残基の置換が含まれていてもよい。Fcγは、天然Fcγよりも長い循環中半減期を有する様に修飾されていてもよい。そのような修飾には、FcRn以外のFc受容体と相互作用することに関する特定のアミノ酸残基の置換、糖鎖付加に関与する特定のアミノ酸残基の置換などが含まれていてもよい。
本発明の上述した側面のそれぞれにおいて、いくつかの態様において、治療剤およびFcRn結合パートナーは、共有結合により結合される。
本発明の上述した側面のそれぞれにおいて、いくつかの態様において、治療剤およびFcRn結合パートナーは、リンカーにより結合される、特定の態様において、リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの態様において、リンカーには、基質を特異的に切断する酵素のための、基質の少なくとも一部が含まれる。
本発明の上述した側面のそれぞれにおいて、いくつかの態様において、治療剤は、ポリペプチドである。そのような態様における抱合体は、単離された融合タンパク質であってもよい。特定のこのような態様において、抱合体のポリペプチド治療剤は、リンカーによりFcRn結合パートナーに対して連結していてもよいが、ただし、ポリペプチド治療剤およびFcRn結合パートナーのそれぞれは、少なくともいくつかの生物学的活性を保持している。
特定の態様において、FcRn結合パートナーと抱合体形成したポリペプチドには、抗原-特異的抗体フラグメントが含まれる。特定の態様において、FcRn結合パートナーと抱合体形成したポリペプチドは、抗原-特異的抗体フラグメントである。抗原-特異的抗体フラグメントは、Fab、F(ab')、F(ab')2、Fv、または一本鎖Fvであってもよい。特定の態様において、抗原-特異的抗体フラグメントは、それが特異的に結合する抗原とさらに抱合体形成してもよい。
本発明の上述した側面のそれぞれにおいて、いくつかの態様において、治療剤はサイトカインである。いくつかの態様において、治療剤はサイトカイン受容体またはそのサイトカイン-結合フラグメントである。
本発明の上述した側面のそれぞれにおいて、いくつかの態様において、治療剤は抗原である。抗原は、病原体に特徴的なもの、自己免疫疾患に特徴的なもの、アレルゲンに特徴的なもの、または腫瘍に特徴的なものであってもよい。特定の態様において、抗原は、腫瘍抗原である。
本発明の上述した側面のそれぞれにおいて、いくつかの態様において、治療剤は、オリゴヌクレオチドである。特定の態様において、オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
本発明の上述した側面のそれぞれにおいて、いくつかの態様において、治療剤は、エリスロポエチン(EPO)、成長ホルモン、インターフェロンα(IFN-α)、インターフェロンβ(IFN-β)、または濾胞刺激ホルモン(FSH)である。本発明の上述した側面のそれぞれにおいて、いくつかの態様において、治療剤は、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、TNF-α受容体(例えば、etanercept、ENBREL(登録商標);U.S. Pat. No. 5,605,690、PCT/US93/08666(WO 94/06476)、およびPCT/US90/04001(WO 91/03553)を参照)、リンパ球機能抗原-3(LFA-3)、または毛様体神経細胞栄養因子(CNTF)である、これらの態様および同様の態様のそれぞれおよびすべてにおいて、治療剤は、全体としてあるいはその部分としてのいずれであっても構わないが、生物学的に活性なポリペプチドである。例えば、TNF受容体(TNFR)である治療剤には、TNFR全体、並びにTNF-結合性TNF受容体ポリペプチド、例えば、TNFRの細胞外ドメインが含まれる。
一側面において、本発明は、抗体を被検体に対して、全身性送達する方法を提供する。この方法には、被検体の中央部気道に対して、中央部肺領域/末梢部肺領域沈着比(C/P比)が少なくとも0.7であるエアロゾル中の抗体を、抗体の被検体に対する全身性送達を達成するために有効な量で、投与することに関連する。独立したそして個別の態様において、抗体のC/P比は、少なくとも:0.8;0.9;1.0;1.1;1.2;1.3;1.4;1.5;1.6;1.7;1.8;1.9;2.0;2.1;2.2;2.3;2.4;2.5;2.6;2.7;2.8;2.9;または3.0であってもよい。理論的にはC/P比の上限は存在しないが、典型的な使用に際しては、C/P比は100またはそれ未満であるだろう。本発明のこの側面およびその他の側面にしたがって、一態様において、C/P比は、少なくとも1.0である。一態様において、C/P比は少なくとも1.5である。一態様において、C/P比は少なくとも2.0である。一態様において、C/P比は少なくとも3.0である。さらに別の態様において、C/P比は少なくとも4.0である。また、本発明のこの側面にしたがって、一態様において、全身性送達は、少なくとも0.5μg/mlの抗体のピーク血清濃度である。一態様において、全身性送達は、抗体の治療的有効濃度の少なくとも2倍の抗体のピーク血清濃度である。投与は、1回投与が関与してもよく、または1回よりも多い投与が関与してもよい。
一態様において、抗体は、FcRn結合ドメインを有する。一態様において本発明のこの側面およびその他の側面にしたがって、抗体は、ヒトFcフラグメントを有する。さらに、本発明のこの側面およびすべての側面にしたがった一態様において、抗体は、ヒトIgG1 Fcフラグメント、すなわち、ヒトFcγ1を有する。
また、本発明のこの側面およびその他の側面にしたがって、一態様において、抗体はモノクローナル抗体である。本発明のこの側面および他の側面にしたがったモノクローナル抗体には、従来型の抗体およびいわゆる人工抗体(engineered antibodies)の両方が含まれる。具体的には、人工抗体には、キメラ抗体、ヒト型抗体、および特定のヒト抗体が含まれる。代わりの態様において、本発明のこの側面およびその他の側面にしたがって、抗体は、免疫グロブリンまたはハイパー免疫グロブリンである。
本発明のこの側面およびその他の側面において、抗体は、治療用抗体であっても、あるいは診断用抗体であってもよい。特定の態様に従う治療用抗体は、抗-CD52、抗-CD25、抗-TNF-α、抗-RSV、抗-CD20、抗-HER2、抗-CEAから選択される。このような治療用抗体の具体的な態様には、CAMPATH(登録商標)、SIMULECT(登録商標)、ZENAPAX(登録商標)、REMICADE(登録商標)、HUMIRA(登録商標)、SYNAGIS(登録商標)、RITUXAN(登録商標)、HERCEPTIN(登録商標)、およびCEA-CIDE(登録商標)が含まれる。本発明にしたがって有用なさらなる抗体には、RAPTIVA(登録商標)(efalizumab、XOMA/Genentech)、ZEVALIN(登録商標)(ibritumomab tiuxetan、IDEC)、BEXXAR(tositumomab、Corixa)、pexulizamab、eculizamab、Oncolym、PRO 542、PRO 140、COTARA(登録商標)(Peregrine)、ABX-EGF、およびMDX-010が含まれるが、これらには限定されない。本発明のこの側面およびその他の側面にしたがう治療用抗体は、場合により、放射性核種および毒素から選択される細胞傷害性薬剤と連結されていてもよい。
本発明のこの側面にしたがう一態様において、抗体は、診断用抗体である。本発明のこの側面およびその他の側面にしたがう診断用抗体は、一態様において、診断用画像化抗体、例えば、放射性核種、金属、蛍光色素、色素原、ビオチン、または抗体を検出するために有用なその他の適切なタグ、と連結された抗体であってもよい。
本発明のこの側面およびその他の側面に同様に重要なことに、一態様において、エアロゾルは、大部分は呼吸に適していない粒子からなる。典型的な用途において、このような呼吸に適していない粒子は、少なくとも4.8μmのMMADを有する。理論的には、呼吸に適していない粒子のサイズの上限は存在しないが、典型的な用途においては、呼吸に適していない粒子は、約5μm〜50μmのMMADを有する。一態様において、呼吸に適していない粒子は、約5μm〜20μmのMMADを有する。一態様において、呼吸に適していない粒子は、約5μm〜10μmのMMADを有する。
別の側面において、本発明は、被検体を受動免疫する方法を提供する。本発明のこの側面にしたがう方法には、抗原に対する受動免疫を必要としている被検体の中央部気道に対して、C/P比が少なくとも0.7であるエアロゾル中の抗原-特異的抗体を、被検体において抗原を中和するために有効な量で投与することが関与している。
さらに別の側面において、本発明は、被検体における深部肺疾患を治療する方法を提供する。本発明のこの側面にしたがう方法は、深部肺疾患の治療のための抗体を必要としている被検体の中央部気道に対して、C/P比が少なくとも0.7であるエアロゾル中の抗体を、被検体の深部肺疾患を治療するために有効な量で投与することが関与している。特定の態様において、深部肺疾患は、RSV肺炎、CMV肺炎、原発性肺癌、節外性肺非-ホジキンリンパ腫(extranodal pulmonary non-Hodgkin's lymphoma)、および肺に転移した癌のいずれか1つである。したがって、特定の態様において、抗体は、抗-RSV、抗-CMV、抗-CD52、抗-CD20、抗-HER2、および抗-CEAのいずれか1つである。特定の態様において、抗体は、SYNAGIS(登録商標)、CAMPATH(登録商標)、RITUXAN(登録商標)、HERCEPTIN(登録商標)、およびCEA-CIDE(登録商標)のいずれか1つである。例えば、深部肺疾患がRSV肺炎である場合、抗体はSYNAGIS(登録商標)であってもよい。深部肺疾患がCMV肺炎である場合、抗体はCYTOGAM(登録商標)であってもよい。深部肺疾患が節外性肺非-ホジキンリンパ腫である場合、抗体はCAMPATH(登録商標)またはRITUXAN(登録商標)であってもよい。深部肺疾患が肺に転移した癌である場合、抗体はHERCEPTIN(登録商標)またはCEA-CIDE(登録商標)であってもよい。
別の側面において、本発明は、被検体における肺外疾患を治療する方法を提供する。本発明のこの側面にしたがうこの方法は、肺外疾患の治療のために抗体を必要としている被検体の中央部気道に対して、中央部肺領域/末梢部肺領域沈着比(C/P比)が少なくとも0.7であるエアロゾル中の抗体を、被検体の肺外疾患を治療するために有効な量で投与することが関与する。一態様において、肺外疾患は癌である。肺外疾患が癌である場合、特定の態様において、抗体は、抗-CD52、抗-CD25、抗-CD20、抗-HER2、および抗-CEAから選択される。具体的には、特定の態様において、抗体は、CAMPATH(登録商標)、SIMULECT(登録商標)、ZENAPAX(登録商標)、RITUXAN(登録商標)、HERCEPTIN(登録商標)、およびCEA-CIDE(登録商標)から選択される。
本発明のこの側面にしたがう別の態様において、肺外疾患は、自己免疫疾患である。一態様において、自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎である;別の態様において、自己免疫疾患はクローン病である。肺外疾患が自己免疫疾患である場合、一態様において、抗体は抗-TNF-αである。特定の態様において、抗体は、REMICADE(登録商標)である。別の特定の態様において、抗体はHUMIRA(登録商標)である。
本発明のこの側面にしたがう別の態様において、肺外疾患は、非-肺同種異系移植片拒絶である。肺外疾患が非-肺同種異系移植片拒絶である場合、一態様において、抗体は抗-CD25である。特定の態様において、抗体は、SIMULECT(登録商標)およびZENAPAX(登録商標)から選択される。
本発明の上述した側面のそれぞれにおいて、特定の態様において、中央部気道に対して送達される場合、抱合体または抗体は、実質的に天然で変性されていない形状である。様々な態様において、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の抱合体または抗体が天然で変性されていない形状である。
本発明のこれらの側面およびその他の側面は、以下にさらに詳細に記載される。
本発明の詳細な説明
本発明は、治療剤を肺上皮を介して送達させ、治療剤の全身性送達を達成するために好ましい場合にはいつでも有用である。都合が良いことに、非常に大きな分子量を有するものを含むほぼどのようなサイズの治療薬でも、全身性送達する際に本発明を使用することができる。本発明の特定の特徴的な側面において、治療剤は、FcRn結合パートナーとの抱合体として、中央部気道に対して投与される。中央部気道は、本来、FcRn結合パートナーのFcRn受容体-媒介性経細胞輸送のために特に適している。また、本発明の特定の特徴的な側面において、FcRn結合パートナーを有する抗体を中央部気道に投与する。ここで中央部気道は、本来、IgGおよびその他のFcγ-含有抗体のFcRn受容体-媒介性経細胞輸送に特に適している。したがって、特定の側面における本発明は、IgG抗体および(FcRn結合パートナーと、高分子、ペプチド、オリゴヌクレオチド、低分子、薬剤、および診断剤から選択される薬剤との抱合体)の肺投与および全身性送達のために使用することができる。
注目すべきことに、本発明の方法は、ポリペプチドおよびその他の高分子のエアロゾルの深部肺投与を達成させることに専念している、肺送達における現在の流行とは、大きく異なる。本発明の方法は、実質的に肺の中央部気道に対する肺投与に関する。FcRnが、深部肺ではなく、肺の中央部気道において優先的に発現されていることが、本発明の出願人により見いだされた。したがって、FcRn-受容体-媒介性経細胞輸送を利用することを追求する本発明の方法は、部分的に、FcRn発現がもっとも顕著なこの肺の中央部気道領域に対してFcRn-輸送可能分子を投与することに基づいている。重要なことに、この方法は深部肺投与の必要性をなくし、そしてしたがって、深部肺投与達成することに関連している困難性を克服する。本発明を使用して、治療剤および診断剤の両方を包含する幅広い治療剤を全身性送達することを、単純で非侵襲性の投与方法を使用して、達成することができる。
本明細書中で使用する場合、“中央部気道”は、喉頭の遠位にある誘導気道または移行性気道のことを言い、ガス交換においてはほとんどないし全く役割を果たしていない部分のことをいう。ヒトにおいては、中央部気道には、気管、主気管支、葉気管支、区域気管支、小気管支、細気管支、終末細気管支、および呼吸細気管支が含まれる。したがって、中央部気道は、気管を第ゼロ(0)世代とし、そして肺胞嚢を第23世代とした場合、肺における気道分岐の最初の16〜19世代の主要な原因となる(Wiebel ER (1963) Morphometry of the Human Lung, Berlin: Springer-Verlag, pp. 1-151)。空気と血液の間でのガス交換にとって主要な役割を果たす肺の辺縁とは対照的に、中央部気道は、空気の大量の動きに関与する。一態様において、中央部気道には、気道分岐の最初の16世代が含まれる。一態様において、中央部気道には、気道分岐の最初の16世代が含まれる。一態様において、中央部気道には、気道分岐の最初の17世代が含まれる。一態様において、中央部気道には、気道分岐の最初の18世代が含まれる。一態様において、中央部気道には、気道分岐の最初の19世代が含まれる。全体としては、中央部気道は、肺の全呼吸上皮表面積のわずか約10%をしめるに過ぎない(Qiu Y et al. (1997) In: Inhalation Delivery of Therapeutic Peptides and Proteins, Adjei AL and Gupta PK, eds., Lung Biology in Health and Disease, Vol. 107, Marcel Dekker: New York, pp. 89-131)。
本明細書中で使用する場合、用語“肺の辺縁”および同等のものとしての“深部肺”は、一般的には、中央部気道から遠位の肺の気道のことをいう。以下においてさらに検討するように、深部肺に対して治療剤を投与することは、肺のガス交換メカニズムの完全性を保護するために一緒に機能する多数の物理的バリアおよび生理学的バリアを乗り越えることに関する。
注目すべきことに、上皮細胞の型は、肺の中央部領域と辺縁部領域との間で相違している。中央部気道には、繊毛性円柱状上皮細胞および立方上皮細胞が整列しており、これに対して呼吸領域には、立方上皮細胞が、そしてより遠位には肺胞上皮細胞が整列している。肺胞上皮を横断する距離は、非常に短いものであり、すなわち0.1〜0.2μmであるのに対して、円柱上皮細胞および立方上皮細胞を横断する距離は、数倍長く、例えば円柱上皮の場合には30〜40μmである。
本明細書中で使用する場合“エアロゾル”は、ガス中に分散された微粒子の形状での、液体または固体の懸濁物のことを言う。本明細書中で使用する場合、用語“粒子”は、したがって、例えば液滴などの液体、および粉末などの固体のことを言う。本発明の抱合体を肺に対して全身性送達するための医薬的エアロゾルは、一態様において、鼻を介してではなく、口を介して吸入される。あるいは、本発明の抱合体を肺に対して送達するための医薬的エアロゾルは、一態様において、中央部気道への直接送達を介して、例えば気管内のチューブまたは気管切開チューブを介して、導入される。同様な方法において、抗体を肺に対して全身性送達するための医薬的なエアロゾルは、一態様において、鼻ではなく、口を介して吸入される。あるいは、抗体を肺に対して送達するための医薬的なエアロゾルは、一態様において、中央部気道に直接送達することを介して導入される。別の態様において、抗体を肺に対して全身性送達するための医薬的なエアロゾルは、口ではなく、鼻を介して吸入される。別の態様において、抗体を肺に対して全身性送達するための医薬的なエアロゾルは、口を介して、および鼻を介して吸入される。
一側面において、本発明は、C/P比が少なくとも0.7となるように、治療剤とFcRn結合パートナーとの抱合体のエアロゾルの有効量を肺に対して投与することを含む、治療剤を送達する方法を提供する。
本明細書中で使用する場合、“治療剤”は、被検体の疾患、症状、または状態を治療しまたは予防するために有用な化合物のことを言う。本明細書中で使用する場合、用語“治療する”とは、被検体の疾患、症状、または状態の症候または徴候を改善し、または被検体の疾患、症状、または状態の進行を停止させることを意味する。被検体の特定の疾患、症状、または状態の症候、症候、および進行は、当業者により認識される、いずれか適用可能な臨床的測定または研究室的測定を用いて評価することができる(例えば、Harrison's Principles of Internal Medicine, 14th Ed., Fauci AS et al., eds., McGraw-Hill, New York, 1998に記載されるもの)。本明細書中で使用する場合、用語“被検体”は、哺乳動物のことを意味する;一態様において、被検体はヒトである。特定の疾患、症状、または状態を治療しまたは予防するため、当業者は、そのような目的のために適切な治療剤を認識できるだろう。
本発明のFcRn結合パートナー抱合体を、腫瘍抗原を含む抗原を含む(これには限定されない)様々な治療剤;癌を治療するための化学療法剤;サイトカイン類;成長因子類;DNAおよびRNAを含む核酸分子およびオリゴヌクレオチド類;ホルモン類;排卵促進剤;カルシトニン、カルシトリオールおよびその他の生理活性ステロイド類;抗菌薬、抗ウィルス薬、抗真菌薬、および抗寄生虫薬を含む抗生物質類;細胞増殖刺激薬;脂質類;タンパク質類およびポリペプチド類;糖タンパク質類;糖質類;およびそれらのいずれかの組み合わせ;を全身性送達するために利用することができる。治療剤の具体的な事例は、本明細書中の別の部分に提示される。本発明のFcRn結合パートナーは、微粒子およびリポソームなどの送達ビヒクルの標的化送達のためにさらに利用することができる。
以下にさらに詳細に記載するように、本明細書中で使用する場合、“抱合体”は、共有的相互作用、疎水性相互作用、水素結合相互作用、またはイオン的相互作用を含むいずれかの物理化学的手段(これらには限定されない)により互いに結合する、2またはそれ以上の部分のことを言う。FcRn結合パートナーおよび治療剤のあいだの結合が、そのような性質でありおよびそのような場所にあることで、FcRn結合パートナーがFcRnに結合する能力が破壊されない、ということに注目することは、重要なことである。そのような結合は、当業者に周知であり、そして複数の事例を、以下にさらに詳細に提示する。抱合体はさらに、以下でさらに詳細に検討する融合タンパク質として形成することができる。
抱合体には、治療剤とFcRn結合パートナーとの間の中間部分またはリンカー部分が含まれていてもよく、それにより治療剤とFcRn結合パートナーとは、互いに間接的に結合される。いくつかの態様において、リンカーは、自発的に切断される対象となる。いくつかの態様において、リンカーは、酵素または化学物質などの薬剤により補助的に切断される対象となる。例えば、プロテアーゼ-切断可能ペプチドリンカーは、当該技術分野において周知であり、そしてそれには、トリプシン感受性配列;プラスミン感受性配列;FLAGペプチド;ウシκ-カゼインAのキモシン感受性配列(Walsh MK et al. (1996) J Biotechnol 45: 235-41);カテプシンB切断可能リンカー(Walker MA et al. (2002) Bioorg Med Chem Lett 12: 217-9);サーモリシン(thermolysin)感受性ポリ(エチレングリコール)(PEG)-L-アラニル-L-バリン(Ala-Val)(Suzawa T et al. (2000) J Control Release 69: 27-41);エンテロキナーゼ切断可能リンカー(McKee C et al. (1998) Nat Biotechnol 16: 647-51)が含まれるが、これらには限定されない。プロテアーゼ切断可能ペプチドリンカーは、その他の主要なクラスのプロテアーゼ、例えば、マトリクスメタロプロテアーゼおよびセクレターゼ(シェダーゼ(sheddases))と関連して使用するために設計することができ、そしてそれと関連して使用することができる(Birkedal-Hansen H et al. (1993) Crit Rev Oral Biol Med 4: 197-250;Hooper NM et al. (1997) Biochem J 321 (Pt 2): 265-79)。その他の態様において、リンカーは、自発的切断、タンパク質分解性切断、または化学的切断に対して、耐性であってもよい。このタイプのリンカーの例は、アルギニン-リジン-不含リンカーである(トリプシンに耐性)。リンカーの追加的な例には、ポリグリシン、(Gly)n;ポリアラニン、(Ala)n;ポリ(Gly-Ala)、(Glym-Ala)n;ポリ(Gly-Ser)、(例えば、Glym-Ser)n;およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらには限定されず、ここでmおよびnは、それぞれ独立して1〜6の整数である(Robinson CR et al. (1998) Proc Natl Acad Sci USA 95: 5929-34も参照)。
本明細書中で使用する場合、“FcRn結合パートナー”は、特異的にFcRnにより結合され、そしてFcRnにより活発に輸送される、いずれかの部分のことをいう。本発明のFcRn結合パートナーは、したがって、例えば全IgG、IgGのFcフラグメント(すなわちFcγ)、FcRnに対する完全な結合領域を含むIgGのその他のフラグメント、およびFcγのFcRn-結合部分を模倣しそしてFcRnに対して結合するその他の分子が包含される。
特定の態様において、FcRn結合パートナーには、抗原-特異的抗原-抗体相互作用を介してFcRnに特異的に結合するFcRn-特異的全抗体(すなわち、抗-FcRn抗体)は含まれない。この文脈において理解されるべきことは、抗原-特異的抗原-抗体相互作用は、抗体の高度可変領域中の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、例えば、Fab、F(ab')、F(ab')2、およびFvフラグメント中のCDR、により、特徴づけられる、抗原結合を意味する。加えて、特定の態様において、FcRn結合パートナーには、FcRn-特異的フラグメントおよびFcRn-特異的フラグメントのアナログ、抗原-特異的抗原-抗体相互作用を介してFcRnに特異的に結合する全抗体のアナログは含まれない。したがって、そのような態様のいくつかには、FcRn-特異的Fvフラグメント、一本鎖Fv(scFv)フラグメント、などは含まれない。その他のそのような態様には、FcRn-特異的Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、F(ab')2フラグメント、などは含まれない。
本発明のこの側面およびその他のすべての側面の重要な特徴は、エアロゾル化複合体または抗体を、肺の中央部気道に対して、目的をもって投与することに関する。以下にさらに詳細に説明するように、“C/P比”は、エアロゾル化粒子の肺の中央部気道に対する蓄積の、肺の辺縁に対する蓄積と比較した場合の、相対的分布の測定値である。
本発明の中央部気道送達の特徴に対してさらに導入する手段として、気道内部のエアロゾル粒子蓄積のメカニズムには、慣性式埋伏(inertial impaction)、遮断(interception)、沈殿(sedimentation)、および拡散(diffusion)が含まれると、一般的には考えられている。慣性式埋伏(inertial impaction)は、大型の(高-移動度)の粒子あるいは液滴が、その初期進行方向に進行し、そして空気の進行方向が障害物周辺を通過する場合に、速度流線(velocity streamlines)に従わない場合、生じる。これらの大型の粒子は、障害物に到達し、そして蓄積される。慣性式埋伏は、気管気管支枝の全体で生じるが、特に、流速および粒子サイズがより大きい場合に、最大の気道において生じる。遮断(interception)は、鼻内蓄積および小気道に関連する。粒子が気道壁から粒子径未満に位置する流れの方向に移動する気流に入り込む場合、粒子は遮断される。沈殿(sedimentation)は、重力のもとで生じ、そして相対的に大型で肺胞領域のより小さな気道中に位置する粒子に作用する。拡散(diffusion)は、小型のマイクロメートル以下の粒子の蓄積の原因となる。粒子は、ガス分子による衝撃の影響下で、それらが気道壁に至るまで、ランダムに移動する。
呼吸のメカニズムを含む多数の因子が、肺内での粒子蓄積部位で関与している。一般的には、吸気の期間がより速く、より浅く、そしてより短ければそれだけ、中央部気道中の蓄積にはより好ましい。逆に、吸気の期間がよりゆっくり、より深く、そしてより長ければそれだけ、肺の辺縁における蓄積には好ましい。このように例えば、正常な(すなわち周期的な)呼吸が、中央部気道における蓄積に好都合であり、一方で深く、過常な吸気および息止めが、深部肺における蓄積に好都合である。言い換えれば、低流量、低圧の呼吸が中央部気道における蓄積に好都合であり、そして逆に、高流量、高圧の呼吸が深部肺における沈着に好都合である。したがって、人工呼吸器での呼吸の設定においては、人工呼吸器により調節される流量および圧力のパラメータを、肺の中央部での蓄積または辺縁部での蓄積のいずれかに好都合であるように設定することができる。機械的に調節されたまたは補助された呼吸のためのそのようなパラメータは、体重、原因となる肺疾患またはその他の疾患、吸気された酸素比率(fraction of inspired oxygen;Fi02)、液量状態(fluid volume status)、肺圧縮率、などを含む当該技術分野において周知の多数の臨床的因子、並びに例えば、血液pH、血中の酸素分圧、および血中の二酸化炭素分圧により反映される効果的なガス交換に基づいて、選択される。
気道中の粒子蓄積の部位および程度に影響を与えるその他の因子は、粒子の物理化学的特徴が関連する。粒子の重要な物理化学的な特徴には、それらの空気動力学的直径、質量密度、速度、および電荷が含まれる。これらの因子のいくつかは、本発明の以下の側面において考慮される。
2μm〜10μmの範囲の粒子サイズは、気管気管支領域および肺領域に対して治療剤を送達するために最適であると、広く考えられている(Heyder J et al. (1986) J Aerosol Sci 17: 811-25)。粒子が、息止め技術を用いる場合、および用いない場合のそれぞれの場合において、1.5μm〜2.5μmの直径および2.5μm〜4μmの直径を有する場合、最大の肺胞蓄積が生じることが示された(Byron PR (1986) J Pharm Sci 75: 433-38)。
約3μm以上まで粒子サイズが大きくなるにつれ、蓄積は、肺胞において減少し、そして中央部気道において増加する。約10μmを超えると、蓄積は、喉頭および上部気道において優先的に生じる。
粒子サイズおよび分布は、エアロゾルの蓄積に影響を及ぼす重要なパラメータであると考えられる。エアロゾル粒子は一般的に、形状およびサイズにおいて様々である。エアロゾルの個々の粒子サイズは、顕微鏡的に特徴づけることができ、そして全サイズ分布の中央化傾向を示す平均の主要な粒子サイズの値をその後推定することができる。不規則な形状をした粒子の粒子サイズを同等の球状の寸法により表現することが便利である。空気動力学的直径(Dae)は、粒子が研究されている場合、同一の沈降速度(一般的には空気中)を有する単位密度球形の直径として定義される。この寸法は、粒子の形状、密度、および物理的サイズを包含する。
粒子の集団は、それぞれの粒子サイズ範囲において保持される質量の点から見て、定義することができる。この分布は、空気動力学的中央粒子径(MMAD)で2等分に分割することができる。MMAD周辺でのこの分布は、幾何学的標準偏差(GSD)という点から見て表現することができる。これらのパラメータは、エアロゾル粒子サイズ分布が対数正規であると仮定した場合、使用することができる。
粒子サイズ、すなわち、MMADおよびGSDは、いずれかの適切な技術を使用して測定することができる。広く使用される技術には、1ステージおよび多ステージ慣性衝突、仮想衝突、レーザー粒度測定、光学顕微鏡、および走査電子顕微鏡が含まれる。レビューとしては、以下のものを参照(Lalor CB et al. (1997) In: Inhalation Delivery of Therapeutic Peptides and Proteins, Adjei AL and Gupta PK, eds., New York: Marcel Dekker, pp 235-276)。
少なくとも4.8μmのMMADを有する粒子は、呼吸に適していない、すなわち、それらは、深部肺における肺胞腔に入り込まないと考えられている。これまでは、一般的に、5μm未満のMMADを有する粒子により特徴づけられるエアロゾルを投与することが一般的に好ましいと考えられてきた理由を説明している。対照的に、本発明の特定の態様において、粒子の大部分は、呼吸に適していない。様々な態様において、大部分という言葉は、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、および少なくとも95%であることをいう。
特殊化エアロゾル発生装置は、“単分散の”エアロゾル、すなわち、1.2μm未満のGSDを有する粒子によるエアロゾルを作成することができることが知られている(Fuchs NA et al. (1966) In: Davies CN, ed., Aerosol Science, London: Academic Press, pp. 1-30)。振動性オリフィス単分散エアロゾル発生器(VOAG)は、単分散エアロゾル発生装置の1つの型の例であり、そして較正標準を調製するためにしばしば使用される(Berglund RN et al. (1973) Environ Sci Technol 7: 147)。5〜50μmのサイズであるオリフィス直径を有するオリフィスプレートを介して濃縮物を供給する場合、この発生装置により、GSDが1.05に近づけることを実現できる。単分散エアロゾル発生装置のさらなる型には、スピニングディスクエアロゾル発生装置およびスピニングトップエアロゾル発生装置が含まれる。これらもまた、較正標準を調製するためにしばしば使用される。
当業者は、典型的に、辺縁部肺ゾーン/中央部肺領域の沈着比(P/C比)または同等に、深部肺に対する薬剤の効果的な投与の割合(measure)としての浸透指数に言及する。この用語が示唆するように、P/C比は、肺の中央部気道への蓄積に対する、肺辺縁部へのエアロゾル化粒子の蓄積の相対的分布の割合(measure)である;したがって、C/P比の逆数である。P/C比は、これまで典型的に吸入された薬剤の全身性送達を実現するため、すなわち、深部肺に対する投与を実現するために追求されてきた結果に伴って、直接的に変化する。従来の用途のために追求されてきた典型的なP/C比は、約1.35〜2.2の範囲であるかそれ以上のものである。これらの典型的なP/C比は、約0.74〜0.45の範囲およびそれ以下のC/P比に対応する。
肺の辺縁に対する投与を最大にし、そしてしたがって高いP/C比を要求するこれらのより典型的な用途とは異なり、本発明においては、肺の中央部気道に対する投与に焦点を当てることが好ましい。したがって、中央部気道に対してFcRn結合パートナーを投与することが、肺の辺縁に対して投与することと比較して、有利であるという驚くべき発見にしたがって、本発明においては、相対的に低いP/C比、すなわち高いC/P比を実現することが好ましい。したがって、C/P比は、本発明において追求されている結果、すなわち肺の中央部気道に対する計画された投与の結果により、直接的に変化する。したがって、いくつかの態様には、C/P比が少なくとも0.7である態様が含まれる。これらの態様には、具体的には、少なくとも0.7、0.8、および0.9のC/P比を有するものが含まれる。追加的な態様には、C/P比が少なくとも1.0〜1.4であるものが含まれる。これらの態様には、具体的には、少なくとも1.0、1.1、1.2、1.3、および1.4のC/P比を有するものが含まれる。さらに別の態様には、C/P比が少なくとも1.5〜1.9であるものが含まれる。これらの態様には、具体的には、少なくとも1.5、1.6、1.7、1.8、および1.9のC/P比を有するものが含まれる。さらなる態様には、C/P比が少なくとも2.0〜3.0であるものが含まれる。これらの態様には、具体的には、少なくとも2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、および3.0のC/P比を有するものが含まれる。C/P比の理論的な上限は存在しない。したがって、いくつかの態様には、3.0よりも大きなC/P比を有するものが含まれる。
少なくとも0.7のC/P比を実現するためには、したがって、投与の方法の一部として、正常の呼吸パターンまたは周期的な呼吸パターンを使用することが好ましい。このことは、例えば、周期的な呼吸の間に多数の息をする過程の中で、エアロゾルを吸入することにより実現することができる。人工呼吸器での呼吸の設定において、少なくとも0.7のC/P比を実現するには、したがって、投与の方法の一部として、低流量、低圧補助的換気が好ましい。
C/P比の決定は、いずれかの適切な方法により実現することができるが、典型的には、そのような決定法には、平面イメージガンマシンチグラフィー、三次元的単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、またはポジトロン射出型断層撮影(PET)が含まれる(Newman SP et al. (1998) Respiratory Drug Delivery VI: 9-15;Fleming JS et al. (2000) J Aerosol Med 13: 187-98)。P/C比の典型的な決定法においては、適切なガンマ線放射性放射線核種、例えば、99mTc、113mIn、131I、または81mKr、を薬剤製剤に添加する。被検体に対するエアロゾル投与後、データをガンマカメラを用いて取り込み、そして得られた肺画像を2つ(中央部および辺縁部)または3つ(中央部、中間部、および辺縁部)の画像化領域に分類することにより解析する(Newman SP et al., supra;Agnew JE et al. (1986) Thorax 41: 524-30)。選択された画像化方法に依存して、中央部画像化領域または中央部および中間部をあわせた画像化領域が、中央部気道の典型である。辺縁部画像化領域が、肺の辺縁の典型である。減衰(attenuation)および崩壊(decay)と考慮して、辺縁部画像化領域からのカウントを、中央部画像化領域からのカウントで割る(または適切な場合には、中央部画像化領域からのカウントと中間部画像化領域からのカウントを組み合わせたもので割る)。C/P比の決定に続いて、まさに概要を説明した方法を行うが、この比率は、辺縁部画像化領域からのカウントで割った、中央部画像化領域からのカウント(または適切な場合には、中央部画像化領域からのカウントと中間部画像化領域からのカウントを組み合わせたもの)として計算される。
本発明の別の側面にしたがって、治療剤の全身性送達のための方法が提供される。この側面にしたがった方法には、治療剤とFcRn結合パートナーとの抱合体の有効量のエアロゾルを肺に投与することが関連しており、ここでエアロゾル中の粒子は、少なくとも3μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する。
さらに別の側面にしたがって、本発明は、治療剤とFcRn結合パートナーとの抱合体のエアロゾルを提供し、ここでエアロゾル中の粒子は、少なくとも3μmのMMADを有する。
粒子サイズは均一でなくてもよいため、様々な態様において、少なくとも3μmのDaeを有する粒子が、エアロゾル中の粒子のうちの、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%を構成していてもよい。
すでに言及しているように、少なくとも4.8μmのMMADを有する粒子は、呼吸に適していない。すなわち、そのような粒子は、深部肺の肺胞腔に入り込めないと考えられている。このことは、これまで、一般的に、5μmより小さいMMADを有する粒子により特徴づけられるエアロゾルを投与することが好ましいと考えられてきた理由を説明している。対照的に、本発明の特定の態様において、粒子の大部分は呼吸に適していない。
さらに別の側面において、本発明は、エアロゾル送達系を提供する。この側面にしたがったエアロゾル送達系には、容器、容器に連結されたエアロゾル発生器、および容器内部に配置された治療剤とFcRn結合パートナーとの抱合体が含まれるが、ここで、エアロゾル発生器は、少なくとも3μmのMMADを有する粒子を有する抱合体のエアロゾルを発生させるように構築されそして配置されている。本明細書中で使用する場合、“連結された”は、様々な態様において、直接的な連結または間接的な連結を意味することができる。
一態様において、エアロゾル送達系には、規定された幾何学的配置の複数の開口部を有する開口部プレートを振動させるように構築されそして配置されている振動性エレメントが含まれ、ここで開口部プレートの片面または表面は、抱合体を含有する溶液または懸濁液と液体連通している(たとえば、U.S. Pat. No. 5,758,637、U.S. Pat. No. 5,938,117、U.S. Pat. No. 6,014,970、U.S. Pat. No. 6,085,740、およびU.S. Pat. No. 6,205,999を参照。これらの内容の全体を、参考文献として本明細書中に援用する)。振動性エレメントを活性化して開口部プレートを振動させることにより、溶液または懸濁液中に抱合体を含有する液体を、規定された範囲の液滴(すなわち、粒子)サイズを有する低速度のエアロゾルを作製するために複数の開口部を介して取り出されるようにする。
このタイプのエアロゾル発生器の例は、Aerogen, Inc.(Sunnyvale, California)から商業的に入手可能である。
別の態様において、エアロゾル送達系には、溶液または懸濁液中の抱合体を含有する加圧容器が含まれる。加圧容器は典型的には、計量バルブに連結されたアクチュエータを有し、その結果、アクチュエータを活性化することにより、容器内部の溶液または懸濁液中のあらかじめ決められた量の抱合体を、容器からエアロゾルの形態で分配することを引き起こす。このタイプの加圧容器は、噴射剤駆動性定量吸入器(pMDIまたは単にMDI)として当該技術分野においては周知である。MDIには典型的には、アクチュエータ、計量バルブ、および微粒子状にした薬剤懸濁液または溶液、液化した噴射剤、および界面活性剤(たとえば、オレイン酸、ソルビタントリオレイン酸、レシチン)を収容する加圧容器が含まれる。歴史的にみて、これらのMDIは典型的には、噴射剤として、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、およびジクロロテトラフルオロメタンを含むクロロフルオロカーボン類(CFC)を使用した。エタノールなどのコソルベントは、噴射剤のみが相対的に性質が劣る溶媒である場合に、存在させてもよい。より新しい噴射剤には、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよび1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンが含まれていてもよい。MDIの作動は、典型的には、100〜200 msecにわたって高速度(30 m/秒)で送達すべき、20〜100μLの容量中に50μg〜5 mgの活性薬剤の用量を誘導する。
その他の態様において、エアロゾル送達系には、溶液または懸濁液中の抱合体を含有するレゼルボアと液体連通している、エアージェットネブライザーまたは超音波ネブライザーが含まれる。ネブライザー(エアージェットまたは超音波)は、歩くことができない患者および乳児や子供の急性の治療のために主として使用される。霧化のためのエアージェットネブライザーは、小型の圧縮空気ポンプが利用可能であるため、携帯用であると考えられるが、しかし、相対的に大型で不便なシステムである。超音波ネブライザーは、一般的に圧縮空気の供給源を必要としないため、より携帯性であるという利点を有する。ネブライザーは、非常に小さな液滴を、そして高い質量アウトプットを提供する。噴霧により投与された用量は、MDIにおける用量よりもずっと大きく、そして液体レゼルボアのサイズが限定的であることから、短期間の、1回治療を生じる。
エアージェットネブライザーからエアロゾルを生成するため、圧縮空気をキャピラリーチューブの開口端を超えてオリフィスを介して強制的に流し、低圧の領域を作成する。液体製剤をチューブから取り出し、エアージェットと混合し、そして液滴を形成する。ネブライザー中の整流装置により、より大型な液滴を取り除く。気流中の液滴のサイズは、圧縮空気圧により影響を受ける。中央粒子径は通常、気圧が20〜30 psigの場合に2〜5μmの範囲にある。様々な商業的に入手可能なエアージェットネブライザーが、同様に作動する訳ではない。このことは、液滴サイズ、ネブライザーからの全アウトプット、および患者の決定因子に依存する、噴霧されたエアロゾルの臨床的効率に影響を与えるだろう。
超音波ネブライザーは、刺激を与えると機械的に振動するセラミック圧電性結晶により、液体チャンバー中に焦点を合わせた高周波数超音波(すなわち、100 kHzかそれ以上)を使用して、エアロゾルを作成する(Dennis JH et al. (1992) J Med Eng Tech 16: 63-68;O'Doherty MJ et al. (1992) Am Rev Respir Dis 146: 383-88)。いくつかの事例においては、圧縮器でネブライザーから粒子を吹き出すか、またはエアロゾルを患者により直接吸入させる。超音波ネブライザーは、エアージェットネブライザーよりも大きなアウトプットが可能であり、そしてこの理由のために、エアロゾル薬剤治療にしばしば利用される。周波数に依存して超音波ネブライザーを使用して形成した液滴は、エアージェットネブライザーにより送達される液滴よりも粒子が粗い(すなわち、より高いMMAD)である。液体中に導入されるエネルギーは、温度の上昇を引き起こす可能性があるが、その結果時間が経過するにつれて、蒸発が起こり、そして濃縮物中に変化が生じる。時間の経過と共に生じるこの濃縮物の変化は、ジェットネブライザーでも生じるが、しかしそれは蒸発を介した水の喪失によるものである。
ネブライザー中の溶液製剤または懸濁液製剤の選択は、MDIについての選択と同様である。選択された製剤は、全質量アウトプットおよび粒子サイズに影響を与えるだろう。ネブライザー製剤は、典型的には、コソルベント(エタノール、グリセリン、プロピレングリコール)および溶解度および安定性を向上させるために添加する界面活性剤と共に、水を含有する。一般的に、浸透圧剤は、低浸透圧性溶液または高浸透圧性溶液に由来する気管支収縮を予防するためにも添加する(Witeck TJ et al. (1984) Chest 86: 592-94;Desager KN et al. (1990) Agents Actions 31: 225-28)。
さらに別の態様において、エアロゾル送達系には、粉末形状の抱合体を含有するレゼルボアと液体連通している、乾燥粉末吸入器が含まれる。乾燥粉末吸入器装置は、これらの最近の生産物におけるクロロフルオロカーボン類の国際的管理に応じて、いくつかの症候については、いつかはMDIにとって代わる可能性がある。特に、この装置は、呼吸可能なサイズ範囲で、その充填の画分を送達することのみ可能である。粉末吸入器は通常、わずか約10〜20%の含有される薬剤を呼吸に適した粒子中に分散しうる。典型的な乾燥粉末吸入器装置は、2つの構成要素からなる:吸気気流中に粉末製剤の単位用量を分散させるための吸入装具、およびこれらの用量を分散させるための粉末製剤のレゼルボアである。レゼルボアは、典型的には、2種の異なるタイプであってもよい。大量のレゼルボアにより、約200投与量までの個別の用量送達の際に分散すべき、粉末の正確な定量を可能にする。単位用量レゼルボアは、必要に応じて吸入のための個別の用量を提供する(たとえば、ブリスター包装形状で、またはゼラチンカプセル形状で、提供される)。携帯用の装置は、カプセル/ブリスター包装を壊して開けるか、または原薬粉末を充填するように操作し、その後患者の吸気から分散させるように設計される。気流は、粉末を脱凝集化し、そしてエアロゾル化する。ほとんどの場合、患者の吸気性気流が装置を活性化し、乾燥粉末を分散しそして脱塊状化するためのエネルギーを供給し、そして肺に到達する医薬の量を決定する。
乾燥粉末発生装置は、粉末の物理的特徴および化学的特徴のため、変更の対象である。これらの吸入器は、200μg〜20 mgの範囲の用量を計量するために設計されている。これらの装置中の薬剤粉末の調製は、非常に重要である。これらの吸入器中の粉末は、MDI中への懸濁のためにも必要とされる、効率的なサイズ縮小を必要とする。微粉化粒子は流動し、そして粗い粒子よりもより不均一に分散される。したがって、微粉化薬剤粉末は、不活性キャリアと混合してもよい。このキャリアは、通常、α-ラクトース一水和物である。なぜなら、ラクトースは、様々な粒子サイズ範囲で現れ、そして十分に特性決定されている(Byron PR et al. (1990) Pharm Res 7 (suppl): S81)。キャリア粒子は、賦形剤が気道に入らないようにするため、治療剤よりも大型の粒子サイズを有する。2つの粒子の分離は、マウスピースを介して患者が吸入するときに乱気流が形成される場合、生じうる。吸気のこの乱れは、微粉化粒子を風媒性にするための中間分子凝着力および粒子表面接着力を超えるためのある量のエネルギーを提供しうる。空気中において高濃度の薬剤粒子は、乾燥粉末生成を使用して、容易に得られるが、アウトプットの安定性および凝集しそして荷電した粒子の存在は、一般的な問題である。非常に小さな粒子により、会合のエネルギーを増大させる静電力、ファンデルワールス力、毛細管力、および機械的な力のため、分散は困難である。
本発明で使用するために適した乾燥粉末吸入器エアロゾル発生器の例は、Fisons Corp.(Bedford, Massachusetts)から入手可能なSpinhaler粉末吸入器である。
FcRn分子は、現在では非常によく特徴がわかっている。上述したように、FcRnは、ヒトを含む数種の哺乳動物種に関して単離されている。FcRnは、FcRnα鎖(FcRn重鎖と同じ)およびβ2ミクログロブリンが関連するヘテロ二量体として生じる。ヒトFcRn、ラットFcRn、およびマウスFcRnα鎖の配列は、Story CMら((1994) J Exp Med 180: 2377-81、この全体を、本明細書中に参考文献として援用する)中に見いだすことができる。当業者により認識されるように、FcRnは、クローニングにより、または例えば、非特異的抗体、ポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体を使用する親和性精製により、単離することができる。そのようにして単離されたFcRnを使用して、次いで、以下に記載する様に、FcRn結合パートナーを同定しそして単離することができる。
FcRnに結合するIgGのFc部分の領域は、X-線結晶学に基づいて既述された(たとえば、Burmeister WP et al (1994) Nature 372: 379-83、およびMartin WL et al. (2001) Mol Cell 7: 867-77を参照、これらの全体を、本明細書中に参考文献として援用する)。FcのFcRnとの主要な接触領域は、CH2ドメインとCH3ドメインとの接合部近辺である。可能性のあるIgGの接触は、CH2中の残基248、250〜257、272、285、288、290〜291、307、308〜311および314およびCH3中の残基385〜387、428、および433〜436である。これらの部位は、サブクラスの比較により、または部位特異的変異生成によって、白血球FcγRIおよびFcγRIIへのFcの結合に重要なものであるとして同定されたものとは異なる。以前の研究では、マウスIgG残基253、272、285、310、311、および433〜436がFcRnとの可能性のある接触部位として示された(Shields RL et al. (2001) J Biol Chem 276: 6591-6604)。ヒトIgG1においては、以前の研究で、残基253〜256、288、307、311、312、380、382、および433〜436がFcRnとの可能性のある接触部位として示された(Shields RL et al. (2001) J Biol Chem 276: 6591-6604)。上述したFc-FcRnの接触は、すべて一本鎖Ig重鎖中でのことである。2つのFcRnが、一本鎖Fcホモ二量体に結合することが、以前に示された。結晶学的データにより、そのような複合体においては、それぞれのFcRn分子が、Fcホモ二量体の1つのポリペプチドと主要な接触をしていることが示唆される(Martin WL et al. (1999) Biochemistry 39: 9698-708)。
ヒトFcRnは、ヒトIgGのすべてのサブクラスと結合するが、マウスおよびラットのIgGのほとんどのサブクラスとは結合しない(West AP et al. (2000) Biochemistry 39: 9698-9708;Ober RJ et al. (2001) Int Immunol 13: 1551-59)。このように、特定の態様において、治療すべき被検体の種は、FcRn結合パートナーの由来するIgGの起源となる種に対応する。それぞれの種内における結合親和性の程度は、IgG1=IgG2>IgG3>IgG4(ヒト);IgG1>IgG2b>IgG2a>IgG3(マウス);およびIgG2a>IgG1>IgG2b=IgG2c(ラット)である(Burmeister WP et al (1994) Nature 372: 379-83)。したがって、いずれかのサブクラスに属するヒトIgG(およびそのFcRn接触含有性フラグメント)は、ヒトFcRn結合パートナーとして有用である。
本発明の態様において、全IgG以外のFcRn結合パートナーを使用して、治療剤を肺上皮バリアを通過して輸送することができる。そのような態様において、全IgGよりも高い親和性でFcRnと結合するFcRn結合パートナーを選択することができる。そのようなFcRn結合パートナーは、FcRnを使用して上皮バリアを介して抱合体化した治療剤を活発に輸送することを達成する際に、そして内在性IgGによる輸送メカニズムに関する競合を減少させる際に、有用性を有する。これらのより高い親和性を有するFcRn結合パートナーのFcRn-結合活性を、(a)天然でFcRnを発現するかまたはFcRnまたはFcRnのα鎖を発現するように遺伝子操作した極性化細胞を用いた輸送アッセイ;(b)可溶性FcRnまたはそのフラグメント、または固定化FcRnを使用した、FcRnリガンド:タンパク質結合アッセイ;(c)天然でFcRnを発現するかまたはFcRnまたはFcRnのα鎖を発現するように遺伝子操作した、極性化細胞または非極性化細胞を用いた結合アッセイ;を含む、当業者に既知の標準的なアッセイを使用して測定することができる。
FcRn結合パートナーは、組換え遺伝子操作技術により産生することができる。ヒトFcRn結合パートナーをコードするヌクレオチド配列は、本発明の範囲内のものである。FcRn結合パートナーには、全IgG、IgGのFcフラグメント、およびFcRnに対する完全な結合領域を含むIgGのその他のフラグメントが含まれる。主要な接触部位には、CH2ドメインのアミノ酸残基248、250〜257、272、285、288、290〜291、308〜311および314、およびCH3ドメインのアミノ酸残基385〜387、428、および433〜436が含まれる。したがって、本発明の一態様において、これらのアミノ酸残基をパニングするIgGのFcフラグメントの領域をコードするヌクレオチド配列である。
IgGのFc領域を、部位特異的変異生成などの周知の手順に従って修飾し、FcRnにより結合されうる修飾されたIgGまたは修飾されたそのFcフラグメントまたはその部分を得ることができる。そのような修飾には、FcRn接触部位から離れたところの修飾、ならびにFcRnに対する結合を保存しまたはさらに高める接触部位内部の修飾が含まれる。たとえば、ヒトIgG1 Fc(Fcγ1)における以下の1アミノ酸残基を、FcRnに対するFc結合親和性を顕著に失うことなく置換することができる:P238A、S239A、K246A、K248A、D249A、M252A、T256A、E258A、T260A、D265A、S267A、H268A、E269A、D270A、E272A、L274A、N276A、Y278A、D280A、V282A、E283A、H285A、N286A、T289A、K290A、R292A、E293A、E294A、Q295A、Y296F、N297A、S298A、Y300F、R301A、V303A、V305A、T307A、L309A、Q311A、D312A、N315A、K317A、E318A、K320A、K322A、S324A、K326A、A327Q、P329A、A330Q、P331A、E333A、K334A、T335A、S337A、K338A、K340A、Q342A、R344A、E345A、Q347A、R355A、E356A、M358A、T359A、K360A、K360A、N361A、Q362A、Y373A、S375A、D376A、A378Q、E380A、E382A、S383A、N384A、Q386A、E388A、N389A、N390A、Y391F、K392A、L398A、S400A、D401A、D413A、K414A、R416A、Q418A、Q419A、N421A、V422A、S424A、E430A、N434A、T437A、Q438A、K439A、S440A、S444A、およびK447Aであるが、ここでたとえば、P238Aとは、位置238での野生型プロリンが、アラニンで置換されていることを意味している(Shields RL et al. (2001) J Biol Chem 276: 6591-6604)。上述した多くの変異体(しかしながらすべてではない)が、アラニン変異体である、すなわち、野生型残基が、アラニンにより置換されている。しかしながら、アラニンに加えて、その他のアミノ酸を、上述した特定の位置での野生型アミノ酸に置換することができる。これらの変異は、Fc中に単独で導入することができ、それにより天然のヒトFcγ1とは構造的に異なる、100種以上のFcRn結合パートナーを生じる。さらに、これらの個々の変異の2つ、3つまたはそれ以上の組み合わせを一緒に導入することができ、それによりさらに追加のFcRn結合パートナーを生じる。
上述の変異の特定のものは、FcRn結合パートナー上に新しい官能基を付与することができる。たとえば、一態様においてはN297Aを導入するが、これにより非常に保存されているN-糖鎖付加部位が取り除かれる。この変異の作用は、免疫原性を減少させ、それによりFcRn結合パートナーの循環中半減期をのばすこと、そしてFcRnに対するその親和性について妥協することなく、FcRn結合パートナーをFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、およびFcγRIIIAに本質的に結合することができないようにすることである(Routledge EG et al. (1995) Transplantation 60: 847-53;Friend PJ et al. (1999) Transplantation 68: 1632-37;Shields RL et al. (2001) J Biol Chem 276: 6591-6604)。
上述した変異に由来する新しい官能基のさらなる例として、いくつかの事例において、FcRnに対する親和性を、野生型の親和性以上に増加させることができる。この親和性の増加は、“on”比の増加、“off”比の低下、または“on”比の増加と“off”比の低下の両方を反映する場合がある。考えられる変異は、FcRnに対する親和性の上昇を付与することができ、特定のT256A、T307A、E380A、およびN434Aが含まれる(Shields RL et al. (2001) J Biol Chem 276: 6591-6604)。考えられる組み合わせ変異体は、FcRnに対する親和性の上昇を付与することができ、それには特定のE380A/N434A、T307A/E380A/N434A、およびK288A/N434Aが含まれる(Shields RL et al. (2001) J Biol Chem 276: 6591-6604)。
上述したFcRn結合パートナーに加えて、一態様において、FcRn結合パートナーは、配列:PKNSSMISNTP(SEQ ID NO: 11)を含むポリペプチド、および場合により、さらにHQSLGTQ(SEQ ID NO: 12)、HQNLSDGK(SEQ ID NO: 13)、HQNISDGK(SEQ ID NO: 14)、またはVISSHLGQ(SEQ ID NO: 15)から選択される配列を含むポリペプチドである(Prestaらに対して発行されたU.S. Pat. No. 5,739,277)。配列PKNSSMISNTP(SEQ ID NO: 11)は、FcのCH2ドメイン(SEQ ID NO: 2)中のアミノ酸247〜257に対応する配列PKDTLMISRTP(SEQ ID NO: 16)と比較すべきである。後者の配列は、FcRnとの主要な接触部位であると考えられていることが以前に記載されている9アミノ酸を包含する。
特定のFcRn結合パートナーのいずれかの選択によって本発明が限定されるとは、意図されていない。したがって、記載したFcRn結合パートナーに加えて、その他の結合パートナーを同定しそして単離することができる。FcRnに特異的なそして一旦結合したFcRnにより輸送され得る抗体またはその部分を、十分に確立した技術を使用して、同定しそして単離することができる。さらに、ランダムに生成された分子的に多様なライブラリをスクリーニングすることができ、そしてFcRnにより結合されそして輸送される分子を、従来技術を用いて単離することができる。ポリペプチド(すなわち、ポリアミド)バックボーンに修飾を導入するFcRn結合パートナーは、アミノ酸側鎖基の置換とは区別されるように、本発明により企図される。たとえば、Bartlettらは、ホスホネート含有性、ホスフィネート含有性、およびホスフィンアミド含有性のペプシンおよびペニシロペプシンの偽ペプチド阻害剤を報告した(Bartlett et al. (1990) J Org Chem 55: 6268-74、同様に、U.S. Pat. No. 5,563,121も参照)。それらの阻害剤は、通常はそれらの酵素により切断される切断しやすいアミノ結合の代わりに、リン含有性結合を含む偽ペプチドであった。
FcRn結合パートナーを同定しそして特性決定するためのIn vitroスクリーニング方法は、当業者によく知られている技術に基づく可能性がある。これらには、単離されたFcRnが、直接的にまたは間接的に、“捕捉抗原”としての基質に結合され、そして引き続いて、試験FcRn結合パートナーを含有するサンプルに対して曝露される、酵素免疫測定法(ELISA)が含まれうる;試験FcRn結合パートナーの固定化FcRnに対する結合は、その後、直接的または間接的にアッセイされる。関連する方法において、競合的ELISAまたは直接的放射免疫アッセイ(RIA)を使用して、非標識試験FcRn結合パートナーのFcRnに対する親和性を、標識した標準FcRn結合パートナーのFcRnに対する親和性と比較して、調べることができる。これらの技術は、容易に拡張可能なものであり、そしてしたがって、候補FcRn結合パートナーの大規模そしてハイスループットスクリーニングに適している。
FcRn結合パートナーを同定しそして特性決定するために有用な追加のin vitroスクリーニング方法は、細胞ベースのものであってもよい。これらの方法は、試験FcRn結合パートナーの細胞結合、細胞取り込み、または細胞トランスサイトーシスを測定する。そのような方法は、FcRn結合パートナーを、たとえば、アイソトープ(131I、35S、32p、13C、など)、発色団、蛍光色素、ビオチン、または抗体により認識されるエピトープ(たとえば、FLAGペプチド)により標識することにより、促進することができる。これらのアッセイにおいて使用する細胞は、FcRnを天然に発現するか、または適切な制御配列に対して機能可能に連結されたFcRnをコードする単離された核酸分子を、細胞中に導入した結果、FcRnを発現するかのいずれであってもよい。典型的には、適切な制御配列に機能可能に連結したFcRnをコードする核酸は、宿主細胞を形質転換するかまたはトランスフェクトするために使用されるプラスミドである。一過性および安定的な形質転換およびトランスフェクションのための方法は、当該技術分野において周知であり、そしてそれらには、物理的技術、化学的技術、およびウィルスを用いた技術、たとえば、リン酸カルシウム沈殿法、エレクトロポレーション、バイオリスティック(biolistic)注入、およびその他の技術などが含まれる。
FcRn結合パートナーを同定しそして特性決定するために適したさらにその他のin vitro方法には、フローサイトメトリー(FACS)、電気的移動度シフトアッセイ(EMSA)、表面プラズモン共鳴(生体分子相互反応解析;BIAcore)、チップに基づく表面相互作用解析およびその他の方法が含まれうる。
FcRn結合パートナーが、遺伝子によりコードされたアミノ酸から完全に構成されるペプチドである場合、またはその部分がそのように構成されている場合、ペプチドまたは対応する部分もまた、従来からの組換え遺伝子操作技術を使用して合成することができる。組換え生成のため、FcRn結合パートナーをコードするポリヌクレオチド配列を、適切な発現ビヒクル、すなわち、挿入されたコード配列の転写および翻訳のために必要な要素を含有するベクター中に挿入し、またはRNAウィルスベクターの場合は複製および翻訳のために必要な要素中に挿入する。次いで、発現ビヒクルをトランスフェクトするか、またはペプチドを発現する適切な標的細胞中に導入する。使用する発現システムに依存して、発現されたペプチドをその後、当該技術分野において周知の方法により単離する。組換えタンパク質およびペプチドの生成および単離のための方法は、当該技術分野において周知である(たとえば、Maniatis et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N. Y.;およびAusubel et al., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, New Yorkを参照)。実際、Fc-含有性分子の単離には、特に周知の親和性クロマトグラフィーや、プロテインA、プロテインG、またはそれらの合成類似体を使用する関連する方法が関与する。
産生効率を上昇させるため、酵素的切断により分離されるFcRn結合パートナーの複数のユニットをコードする様に、ポリヌクレオチドを設計することができる。得られたポリペプチドを、ペプチドユニットを回収する目的で、切断することができる(たとえば、適切な酵素を用いて処理することにより)。このことにより、1つのプロモータにより駆動されるペプチドの収量を増加させることができる。適切なウィルス発現システムにおいて使用した場合、mRNAによりコードされるそれぞれのペプチドの翻訳は、転写物中で、内部的に、たとえば、内部リボソーム侵入部位、IRESにより駆動される。したがって、多シストロン性の構築物が、一本鎖で大型の多シストロン性mRNAの転写を駆動し、それが続いて、多数の個々のペプチドの翻訳を駆動する。このアプローチにより、ポリタンパク質の生成および酵素的プロセッシングが排除され、そして1つのプロモータにより駆動されるペプチドの収量を顕著に増加させることができる。
様々な宿主-発現ベクターシステムを使用して、本明細書中で上述したFcRn結合パートナーを発現させることができる。これらには、組換えバクテリオファージDNAまたは適切なコード配列を含有するプラスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌などの微生物;適切なコード配列を含有する組換え酵母または真菌発現ベクターで形質転換した酵母または糸状菌;適切なコード配列を含有する組換えウィルス発現ベクター(たとえば、バキュロウィルス)により感染させた昆虫細胞システム;組換えウィルス発現ベクター(たとえば、カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)またはタバコモザイクウィルス(TMV))により感染された植物細胞システム、または適切なコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(たとえば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞システム;または動物細胞システムが含まれるが、これらのものには限定されない。様々な宿主-発現システムは、当業者により周知であり、そして宿主細胞および発現ベクター要素は、商業的供給源から入手可能である。
発現システムの発現要素は、それらの強度および特異性において様々である。使用された宿主/ベクターシステムに依存して、構成的および誘導可能プロモータを含む、多数の適切な転写要素および翻訳要素のいずれかを、発現ベクター中で使用することができる。たとえば、細菌システム中にクローニングした場合、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモータ)などの誘導可能プロモータを使用することができる;昆虫細胞システム中にクローニングする場合、バキュロウィルス多角体プロモータなどのプロモータを使用することができる;植物細胞システム中にクローニングする場合、植物細胞のゲノム由来のプロモータ(たとえば、熱ショックプロモータ;RUBISCOの小サブユニットのプロモータ;クロロフィルa/b結合タンパク質のためのプロモータ)または植物ウィルス由来のプロモータ(たとえば、CaMVの35S RNAプロモータ;TMVの被覆タンパク質プロモータ)を使用することができる;哺乳動物細胞システムでクローニングする場合、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモータ(たとえば、メタロチオネインプロモータ)に、または哺乳動物ウィルス由来のプロモータ(たとえば、アデノウィルス後期プロモータ;ワクシニアウィルス7.5 Kプロモータ;サイトメガロウィルス(CMV)プロモータ)を使用することができる;多コピーの発現産物を含有する細胞株を作り出す際には、SV40-ベースのベクター、BPV-ベースのベクター、およびEBV-ベースのベクターを、適切な選択可能マーカーと共に使用することができる。
植物発現ベクターが使用される場合、本発明のポリペプチドをコードする配列の発現は、多数のプロモータのいずれかにより駆動することができる。たとえば、CaMVの35S RNAや19S RNAプロモータなどのウィルスプロモータ(Koziel MG et al. (1984) J Mol Appl Genet 2: 549-62)、またはTMVの被覆タンパク質プロモータを使用することができる;あるいは、RUBISCOの小型サブユニットなどの植物プロモータ(Coruzzi G et al. (1984) EMBO J 3: 1671-79;Broglie R et al. (1984) Science 224: 838-43)または熱ショックプロモータ、たとえば、ダイズhsp17.5-Eまたはhsp17.3-B(Gurley WB et al. (1986) Mol Cell Biol 6: 559-65)を、使用することができる。これらの構築物は、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウィルスベクター、直接的DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを使用して、植物細胞中に導入することができる。そのような技術のレビューについては、たとえば、Weissbach & Weissbach, 1988, Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, NY, Section VIII, pp. 421-463;およびGrierson & Corey, 1988, Plant Molecular Biology, 2d Ed., Blackie, London, Ch. 7-9を参照。
FcRn結合パートナーを発現するために使用することができる一つの昆虫発現システムにおいて、Autographa californica核多角体病ウィルス(AcNPV)をベクターとして使用して、外来性遺伝子を発現させる。ウィルスは、Spodoptera frugiperda細胞中で増殖する。コード配列は、ウィルスの非必須領域(たとえば、多角体遺伝子)中にクローニングすることができ、そしてAcNPVプロモータ(たとえば、多角体プロモータ)の調節下に配置することができる。コード配列の挿入がうまくいった結果、多角体遺伝子の不活性化と非-閉塞性組換えウィルス(すなわち、多角体遺伝子によりコードされるタンパク質様被覆を欠損するウィルス)の産生が引き起こされる。次いで、これらの組換えウィルスを使用して、挿入遺伝子が発現されるSpodoptera frugiperda細胞に感染させる(たとえば、U.S. Pat. No. 4,745,051を参照)。この発現システムのさらなる事例は、Current Protocols in Molecular Biology(Vol. 2, Ausubel et al., eds., Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, N. Y.)中に見いだすことができる。
哺乳動物宿主細胞においては、多数のウィルスベースの発現システムを使用することができる。アデノウィルスを発現ベクターとして使用する場合、コード配列を、アデノウィルスの転写/翻訳調節複合体、たとえば、後期プロモータと3つに別れたリーダー配列、にライゲーションすることができる。次いで、このキメラ遺伝子を、in vitroまたはin vivo組換えにより、アデノウィルスゲノム中に挿入することができる。ウィルスゲノムの非-必須領域(たとえば、領域E1またはE3)中への挿入は、結果として実用的で感染宿主中でペプチドを発現することができる組換えウィルスを生じうる(たとえば、Logan J et al. (1984) Proc Natl Acad Sci USA 81: 3655-59を参照)。あるいは、ワクシニア7.5 Kプロモータを使用することができる(たとえば、Mackett M et al. (1982) Proc Natl Acad Sci USA 79: 7415-19;Mackett M et al. (1984) J Virol 49: 857-64;Panicali S et al. (1982) Proc Natl Acad Sci USA 79: 4927-31を参照)。
多数の真核細胞発現プラスミドも同様に、哺乳動物宿主細胞中での使用を目的とする。これらのプラスミドには、典型的には、挿入遺伝子または目的の核酸に機能可能に連結したプロモータまたはプロモータ/エンハンサ要素、挿入遺伝子の下流に位置するポリアデニル化シグナル、選択マーカー、および複製開始点が含まれる。いくつかのこれらのプラスミドは、PCR生成物または制限酵素消化生成物のいずれかとして、特定の部位での核酸挿入物を受容する様に設計される。真核細胞発現プラスミドの例には、pRc/CMV、pcDNA3.1、pcDNA4、pcDNA6、pGene/V5(Invitrogen)、およびpED.dC(Genetics Institute)が含まれる。
FcRn結合パートナーは、いくつかの態様において、抗原と抱合体化される。抗原は、本明細書中で使用する場合、4つのクラスに分類される:(1)病原体に特徴的な抗原;(2)自己免疫疾患に特徴的な抗原;(3)アレルゲンに特徴的な抗原;および(4)癌または腫瘍に特徴的な抗原である。一般的に抗原には、多糖類、糖脂質類、糖タンパク質類、ペプチド類、タンパク質類、細胞表面、細胞質、核、ミトコンドリアなど由来の炭水化物および脂質が含まれる。
病原体に特徴的な抗原には、ウィルス、細菌、寄生虫、または真菌に由来する抗原が含まれる。重要な病原体の例としては、Vibrio cholerae、腸管毒素原性Escherichia coli、ロタウィルス、Clostridium difficile、Shigella species、Salmonella typhi、パラインフルエンザウィルス、インフルエンザウィルス、Streptococcus pneumoniae、Borrelia burgdorferi、HIV、Streptococcus mutans、Plasmodium falciparum、Staphylococcus aureus、狂犬病ウィルス、およびEpstein-Barrウィルスが含まれる。
一般的にウィルスには、以下の科のものが含まれるが、これらには限定されない:ピコルナウィルス科(picornaviridae);カリチウィルス科(caliciviridae);トガウィルス科(togaviridae);フラビウィルス科(flaviviridae);コロナウィルス科(coronaviridae);ラブドウィルス科(rhabdoviridae);フィロウィルス科(filoviridae);パラミクソウィルス科(paramyxoviridae);オルトミクソウィルス科(orthomyxoviridae);ブニヤウィルス科(bunyaviridae);アレナウィルス科(arenaviridae);レオウィルス科(reoviridae);レトロウィルス科(retroviridae);ヘパドナウィルス科(hepadnaviridae);パルボウィルス科(parvoviridae);パポバウィルス科(papovaviridae);アデノウィルス科(adenoviridae);ヘルペスウィルス科(herpesviridae);およびポックスウィルス科(poxviridae)が含まれる。
一般的な細菌には、以下のものが含まれるが、これらには限定されない:P. aeruginosaおよびP. cepaciaを含むPseudomonas spp.;E. coli、E. faecalisを含むEscherichia spp.;Klebsiella spp.;Serratia spp.;Acinetobacter spp.;S. pneumoniae、S. pyogenes、S. bovis、S. agalactiaeを含むStreptococcus spp.;S. aureus、S. epidermidisを含むStaphylococcus spp.;Haemophilus spp.;N. meningitidisを含むNeisseria spp.;Bacteroides spp.;Citrobacter spp.;Branhamella spp.;Salmonella spp.;Shigella spp.;P. mirabilisを含むProteus spp.;Clostridium spp.;Erysipelothrix spp.;Listeria spp.;Pasteurella multocida;Streptobacillus spp.;Spirillum spp.;Fusospirocheta spp.;Treponema pallidum;Borrelia spp.;Actinomycetes;Mycoplasma spp.;Chlamydia spp.;Rickettsia spp.;Spirochaeta;Legionella spp.;M. tuberculosis、M. kansasii、M. intracellulare、M. marinumを含むMycobacteria spp.;Ureaplasma spp.;Streptomyces spp.;およびTrichomonas spp.。
寄生虫には、以下のものが含まれるが、これらには限定されない:Plasmodium falciparum、P. vivax、P. ovale、P. malaria;Toxoplasma gondii;Leishmania mexicana、L. tropica、L. major、L. aethiopica、L. donovani、Trypanosoma cruzi、T. brucei、Schistosoma mansoni、S. haematobium、S. japonium;Trichinella spiralis;Wuchereria bancrofti;Brugia malayi;Entamoeba histolytica;Enterobius vermicularis;Taenia solium、T. saginata、Trichomonas vaginalis、T. hominis、T. tenax;Giardia lamblia;Cryptosporidium parvum;Pneumocystis carinii、Babesia bovis、B. divergens、B. microti、Isospora belli、L. hominis;Dientamoeba fragilis;Onchocerca volvulus;Ascaris lumbricoides;Necator americanis;Ancylostoma duodenale;Strongyloides stercoralis;Capillaria philippinensis;Angiostrongylus cantonensis;Hymenolepis nana;Diphyllobothrium latum;Echinococcus granulosus、E. multilocularis;Paragonimus westermani、P. caliensis;Chlonorchis sinensis;Opisthorchis felineas、G. viverini、Fasciola hepatica、Sarcoptes scabiei、Pediculus humanus;Phthirlus pubis;およびDermatobia hominis。
一般的に真菌には、以下のものが含まれるが、これらには限定されない:Cryptococcus neoformans;Blastomyces dermatitidis;Aiellomyces dermatitidis;Histoplasma capsulatum;Coccidioides immitis;C. albicans、C. tropicalis、C. parapsilosis、C. guilliermondii、およびC. kruseiを含むCandida種;A. fumigatus、A. flavus、およびA. nigerを含むAspergillus種;Rhizopus種;Rhizomucor種;Cunninghammella種;A. saksenaea、A. mucor、およびA. absidiaを含むApophysomyces種;Sporothrix schenckii;Paracoccidioides brasiliensis;Pseudallescheria boydii;Torulopsis glabrata;およびDermatophytes種。
自己免疫疾患に特徴的な抗原は、典型的には、哺乳動物組織の細胞表面、細胞質、核、ミトコンドリアなどに由来しうる。例としては、ブドウ膜炎(たとえば、S抗原)、糖尿病、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、原発性粘液水腫、甲状腺亢進、リウマチ性関節炎、悪性貧血、アジソン氏病、強皮症、自己免疫性萎縮性胃炎、早発閉経、男性不妊症、若年型糖尿病、グッドパスチャー症候群、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、水晶体起因性ブドウ膜炎、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、特発性白血球減少症、原発性胆汁性肝硬変症、シェーグレン症候群、ヴェグナー肉芽腫症、ポリ/皮膚筋炎、および円板状紅斑性狼瘡に特徴的な抗原が含まれる。自己免疫疾患に特徴的な抗原は、被検体自身の免疫系が、自己免疫疾患に特徴的な抗体または特異的T細胞を作成する対象となる抗原のことを言うと、理解されている。多くの事例における自己免疫疾患に特徴的な抗原の特異的な同定は知られておらず、そして実際に本発明の目的のものは知られていない。
アレルゲンが、タンパク質キャリア(Remington's Pharmaceutical Sciences)と共有的に組み合わさった後に、アレルギーを誘導する低分子量アレルゲン性ハプテンであってもよいが、アレルゲンである抗原は、一般的にタンパク質類または糖タンパク質類である。アレルゲンには、花粉、塵埃、カビ、胞子、鱗屑、昆虫、および食料に由来する抗原が含まれる。具体的な事例には、ウルシツタ、アメリカツタウルシおよびウルシ毒などのトキシコデンドロン属の種のウルシオール(ペンタデシルカテコールまたはヘプタデシルカテコール)、およびブタクサおよび関連する植物のセスキテルペノイドラクトン類が含まれる。
腫瘍抗原に特徴的な抗原は、典型的には、腫瘍組織の細胞の細胞表面、細胞質、核、オルガネラなどに由来しうる。例としては、変異オンコジーンによりコードされるタンパク質類を含む、腫瘍タンパク質類に特徴的な抗原;腫瘍に関連するウィルスタンパク質類;および腫瘍ムチンおよび糖脂質類が含まれる。腫瘍には、以下の部位の癌および癌の型:唇、鼻咽頭、咽頭および口腔、食道、胃、小腸、結腸、直腸、肝臓、胆嚢、胆管枝、膵臓、喉頭、肺および気管支、メラノーマ、乳房、子宮頸部、子宮、卵巣、膀胱、腎臓、脳、および神経系のその他の部分、甲状腺、前立腺、精巣、骨、筋肉、ホジキン氏病、非-ホジキン氏リンパ腫、多発性骨髄腫および白血病に由来のものが含まれるが、これらには限定されない。腫瘍に関連するウィルスタンパク質類は、上述したウィルスクラス由来のものである。腫瘍に特徴的な抗原は、腫瘍前駆細胞により通常は発現されるものではないタンパク質であるか、または腫瘍前駆細胞において通常は発現されるが、腫瘍に特徴的な変異を有するタンパク質であってもよい。腫瘍に特徴的な抗原は、活性や細胞内分布が改変された正常タンパク質の変異株であってもよい。上記で特定されたものに加えて、腫瘍抗原を生じる遺伝子の変異は、遺伝子のコード領域、5'または3'非コード領域、またはイントロンであってもよく、そして点変異、フレームシフト、逆位、欠失、付加、重複、染色体再構成、などの結果であってもよい。当業者は、正常な遺伝子構造に対する様々な変異や腫瘍抗原を引き起こす発現をよく知っている。
腫瘍抗原の具体的な例には、B細胞リンパ腫のIgイディオタイプ;メラノーマの変異型サイクリン-依存性キナーゼ4;メラノーマのPmel-17(gp 100);メラノーマのMART-1(Melan-A)(PCT国際公開WO94/21126);メラノーマのp15タンパク質;メラノーマのチロシナーゼ(PCT国際公開WO94/14459);メラノーマ、甲状腺髄様癌、小細胞肺癌、結腸および/または気管支扁平上皮細胞癌のMAGE 1、2および3(PCT/US92/04354);MAGE-Xp(U.S. Pat. No. 5,587,289);膀胱癌、メラノーマ、乳癌、および扁平上皮細胞癌のBAGE(U.S. Pat. No. 5,571,711およびPCT国際公開WO95/00159);GAGE(U.S. Pat. No. 5,610,013およびPCT国際公開WO95/03422);RAGEファミリー(U.S. Pat. No. 5,939, 526);PRAME(以前のDAGE;PCT国際公開WO96/10577);MUM-1/LB-33B(U.S. Pat. No. 5,589,334);NAG(U.S. Pat. No. 5,821,122);FB5(エンドシアリン)(U.S. Pat. No. 6,217,868);PSMA(前立腺-特異的膜抗原;U.S. Pat. No. 5,935,818);メラノーマのgp75;メラノーマの癌胎児抗原;乳癌、膵臓癌、および卵巣癌のムチンなどの炭化水素/脂質;メラノーマのGM2およびGD2ガングリオシド;癌腫の変異型p53などの癌遺伝子;結腸癌の変異型ras;乳癌のHER2/neu癌原遺伝子;および子宮頸部および食道の扁平上皮細胞癌のヒトパピローマウィルスタンパク質類などのウィルス産物などのタンパク質類が含まれる。上述のリストは、代表的なものを意図しているのみであり、限定的なものとして理解すべきものではない。タンパク質性の腫瘍抗原が、HLA分子により全体のタンパク質由来の特異的ペプチド類として提示される可能性があることも、企図している。抗原性ペプチド類を得るためのタンパク質類の代謝性プロセッシングは、当該技術分野において周知である(たとえば、Boonらに発行されたU.S. Pat. No. 5,342,774を参照、この全体を、本明細書中に参考文献として援用する)。したがって、本発明の方法は、抗原性ペプチド類および抗原性ペプチド類を生じるより大きなポリペプチドまたは全タンパク質中のそのようなペプチド類の送達を企図している。抗原性ペプチド類またはタンパク質類の送達は、液性免疫または細胞性免疫を引き起こす可能性がある。
一般的に、被検体は、腫瘍抗原、および/またはそれ由来のペプチドを含む抗原の有効量を、以下に記載の1またはそれ以上の方法により受容することができる。当該技術分野において標準的な免疫プロトコルにしたがって、初期投与に引き続いて、ブースター投与を行うことができる。したがって、腫瘍抗原を含む抗原の送達は、細胞溶解性Tリンパ球の増殖を刺激する。
タンパク質およびペプチド治療剤の場合、FcRn結合パートナーとの共有結合には、一本鎖ポリペプチド鎖中のペプチド結合による結合を含むことを企図している。確立された方法(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY 1989、この全体を、本明細書中に参考文献として援用する)を使用して、このタンパク質またはペプチド治療剤およびFcRn結合パートナーが含まれる融合タンパク質をコードするDNAを加工することができるだろう。このDNAを発現ベクター中に配置し、そして細菌、真核生物、またはその他の適切な宿主細胞中に確立された方法により導入しうる。融合タンパク質は、確立された方法により、細胞からまたは培養液から精製することができる。好都合なことに、精製スキームは、単離されたまたは組換えのプロテインAまたはプロテインGを使用して、FcRn結合パートナー-含有融合タンパク質類を宿主細胞産物から精製することができる。そのような得られた抱合体には、と、タンパク質、ペプチドまたは本明細書中に列挙されるものなどの抗原、アレルゲン、病原体を含む(ただしこれらには限定されない)タンパク質誘導体に対するFcRn結合パートナーの融合物、または成長因子、コロニー刺激因子、増殖阻害因子、シグナル伝達分子、ホルモン、ステロイド、神経伝達物質、または上皮バリアを介して送達される場合に有用である可能性のあるモルフォゲンなどの、潜在的治療目的のあるその他のタンパク質類またはタンパク質誘導体に対するFcRn結合パートナーの融合物が含まれる。
限定的ではなく、例示として、融合タンパク質類中で抱合体を合成するために使用されるタンパク質類には、EPO(U.S. Patent Nos. 4,703,008;5,457,089;5,614,184;5,688,679;5,773,569;5,856,298;5,888,774;5,986,047;6,048,971;6,153,407)、IFN-α(U.S. Patent Nos. 4,678,751;4,801,685;4,820,638;4,921,699;4,973,479;4,975,276;5,098,703;5,310,729;5,869,293;6,300,474)、IFN-β(U.S. Patent Nos. 4,820,638;5,460,811)、FSH(U.S. Patent Nos. 4,923,805;5,338,835;5,639,639;5,639,640;5,767,251;5,856,137)、血小板-由来成長因子(PDGF;U.S. Pat. No. 4,766,073)、血小板-由来内皮細胞増殖因子(PD-ECGF;U.S. Pat. No. 5,227,302)、ヒト下垂体性成長ホルモン(hGH;U.S. Pat. No. 3,853,833)、TGF-β(U.S. Pat. No. 5,168,051)、TGF-α(U.S. Pat. No. 5,633,147)、ケラチノサイト増殖因子(KGF;U.S. Pat. No. 5,731,170)、インスリン様成長因子I(IGF-I;U.S. Pat. No. 4,963,665)、表皮成長因子(EGF;U.S. Pat. No. 5,096,825)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF;U.S. Pat. No. 5,200,327)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF;U.S. Pat. No. 5,171,675)、コロニー刺激因子-1(CSF-1;U.S. Pat. No. 4,847,201)、スチール因子(Steel factor)、カルシトニン、AP-1タンパク質類(U.S. Pat. No. 5,238,839)、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、TNF-α、TNF-α受容体、LFA-3、CNTF、CTLA-4、レプチン(PCT/US95/10479、WO 96/05309)、および脳由来神経栄養性因子(BDNF;U.S. Pat. No. 5,229,500)が含まれうる。上記で引用したこれらの参考文献はすべて、それぞれの全体を参考文献として本明細書中に援用する。
限定的ではなく、例示として、抱合体を合成するために融合タンパク質類中で使用されるペプチド類には、エリスロポエチン模倣物ペプチド類(EPO受容体アゴニストペプチド類;PCT/US01/14310;WO 01/83525;Wrighton NC et al. (1996) Science 273: 458-64;PCT/US99/05842、WO 99/47151)、EPO受容体アンタゴニストペプチド類(PCT/US99/05842、 WO 99/47151;McConnell SJ et al. (1998) Biol Chem 379: 1279-86)およびT20(PCT/US00/35724;WO 01/37896)が含まれうる。
一態様において、本発明の融合タンパク質類は、抱合体のFcRn結合パートナー部分が治療剤部分の下流に生じる、すなわち、FcRn結合パートナー部分が治療剤部分に関してC-末端である様に構築されそして配置される。この配置は、略記様式ではX-Fcとして表現され、ここで“X”は治療剤部分を示し、そしてFcはFcRn結合パートナー部分を示す。この略記表記において、“Fc”は、IgGのFcフラグメントでもよいが、これには限定されない。表記“X-Fc”は、XとFcRn結合パートナー成分とを連結するリンカーを示す、融合タンパク質類を包含すると理解されるべきである。
一態様において、本発明の融合タンパク質類は、抱合体が本明細書中に列挙したポリペプチド治療剤の一つと融合されたヒトIgG1のFcフラグメントからなる様に構築される(ヒンジのN-末端がアミノ酸D-K-T-Hで始まり(SEQ ID NO: 2、図1を参照)、ヒンジおよびCH2ドメインを含み、そしてCH3ドメインのS-P-G-K配列を介して継続される)。一態様において、機能的EPOをコードするヌクレオチド配列は、ヒトIgG1定常部重(CH)鎖のヒンジ、CH2ドメインおよびCH3ドメインをコードするヌクレオチド配列の5'に適切な翻訳読み枠で融合される。この特定の態様は、実施例3にさらに詳細に記載される。
公開された欧州特許出願EP 0 464 533 Aは、EPO-Fc融合タンパク質を開示する。
公開されたPCT出願PCT/US00/19336(WO 01/03737)は、ヒトEPO-Fc融合タンパク質を開示する。
公開されたPCT出願PCT/US98/13930(WO 99/02709)は、EPO-FcおよびFc-EPO融合タンパク質類を開示する。
公開されたPCT出願PCT/EP00/10843(WO 01/36489)は、多数のFc-EPO融合タンパク質類を開示する。
公開されたPCT出願PCT/US00/19336(WO 01/03737)は、ヒトIFN-α-Fc融合タンパク質を開示する。
Changらに発行されたU.S. Pat. No. 5,723,125は、ヒトIFN-α-Fc融合タンパク質を開示し、ここでIFN-αおよびFcドメインは、特定のGly-Serリンカー(Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser;SEQ ID NO: 17)を介して連結される。
公開されたPCT出願PCT/US00/13827(WO 00/69913)は、Fc-IFN-α融合タンパク質を開示する。
公開されたPCT出願PCT/US00/19336(WO 01/03737)は、ヒトIFN-β-Fc融合タンパク質を開示する。
公開されたPCT出願PCT/US99/24200(WO 00/23472)は、ヒトIFN-β-Fc融合タンパク質を開示する。
Changらに発行されたU.S. Pat. No. 5,908,626は、ヒトIFN-β-Fc融合タンパク質を開示し、ここでIFN-βおよびFcドメインは、特定のGly-Serリンカー(Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser;SEQ ID NO: 17)を介して連結される。
Loらに発行されたU.S. Pat. No. 5,726,044および公開されたPCT出願PCT/US00/19816(WO 01/07081)は、Fc-PSMA融合構築物を開示する。
FcRn結合パートナーは、標的化全身性送達のための様々な治療剤と抱合化することができる。本発明は、生物学的に活性な物質の標的化全身性送達を包含する。
本明細書中で使用する場合、用語“生物学的に活性な物質”は、真核細胞および原核細胞、ウィルス、ベクター、タンパク質類、ペプチド類、核酸、多糖類および炭水化物、脂質、糖タンパク質類、およびそれらの組み合わせ、および動物に投与された場合に生物学的作用を発揮する、天然に存在する、合成の、および半合成の有機薬物および無機薬物のことをいう。参照の容易のため、この用語は、バリウムを含む放射線不透過性の化合物ならびに磁性化合物などの検出可能な化合物を含むようにも使用される。生物学的に活性な物質は、水に可溶であっても不溶であってもよい。生物学的に活性な物質の例には、抗-血管形成因子、抗体、成長因子、ホルモン、酵素、およびステロイド、抗-癌薬物および抗生物質などの薬物が含まれる。
診断的態様において、FcRn結合パートナーは、インジウムおよびテクネチウムを含むが、これらには限定されない、薬剤的に許容可能なγ-放射性部分、磁性粒子、バリウムなどの放射線不透過性物質、および蛍光化合物と抱合化されていてもよい。
例として、そして限定的なものではないが、以下の薬物種を、肺上皮バリアを介した全身性送達の目的でFcRn結合パートナーと抱合化してもよい:
抗新生物性化合物。ニトロソウレア類(たとえば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン);メチルヒドラジン類(たとえば、プロカルバジン、ダカルバジン);ステロイドホルモン類(たとえば、グルココルチコイド、エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン、テトラハイドロデゾキシカリコステロン)、サイトカインおよび成長因子;アスパラギナーゼ。
免疫反応性化合物。免疫抑制剤(たとえば、ピリメタミン、トリメトプテリン、ペニシラミン、サイクロスポリン、アザチオプリン);免疫活性剤(たとえばレバミゾール、ジエチルジチオカルバメート、エンケファリン、エンドルフィン)。
抗微生物性化合物。抗生物質類(たとえば、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペニムおよびモノバクタム、β-ラクタマーゼ阻害剤、アミノグリコシド、マクロライド、テトラサイクリン、スペクチノマイシン);抗マラリア薬;抗アメーバ薬;抗原虫薬;抗真菌薬(たとえば、アンフォテリシンB);抗ウィルス薬(たとえば、アシクロバー、イドクスウリジン、リバビリン、トリフルリジン、ビダラビン、ガンシクロバー)。
胃腸薬。ヒスタミンH2受容体アンタゴニスト、プロトンポンプ阻害剤、前運動性薬。
血液作用薬化合物。免疫グロブリン;血液凝固性タンパク質類(たとえば、抗血友病因子、第IX因子複合体);抗凝固剤(たとえば、ジクマロール、ヘパリンNa);フィブロリジン阻害剤、トラネキサム酸。
心臓血管薬。末梢性抗アドレナリン薬、中枢性作用性抗高血圧薬(たとえば、メチルドーパ、メチルドーパHCl);抗高血圧性直接血管拡張薬(たとえば、ジアゾキシド、ヒドララジンHCl);レニン-アンギオテンシン系に作用する薬物;末梢性血管拡張薬、フェントラミン;抗狭心症薬;強心配糖体;イノダイレーター(inodilator);たとえば、アンリノン、ミルリノン、エノキシモン、フェノキシモン、イマゾダン、スルマゾール;抗律動不整薬;カルシウム流入遮断薬;血中脂質に作用する薬物。
神経筋遮断薬。脱分極性薬(たとえば、アトラクリウムベシラート(atracurium besylate)、ヘキサフルオレニウムBr、ヨウ化メトクリン、サクシニルコリンCl、ツボクラリンCl、ベクロニウム(vecuronium)Br);中枢性作用性筋弛緩薬(たとえば、バクロフェン)。
神経伝達物質および神経伝達物質薬。アセチルコリン、アデノシン、アデノシン3リン酸、アミノ酸神経伝達物質類(たとえば、興奮性アミノ酸、GABA、グリシン);生物活動に不可欠なアミン神経伝達物質(たとえば、ドーパミン、エピネフリン、ヒスタミン、ノルエピネフリン、オクトパミン、セロトニン、チラミン);ニューロペプチド類、一酸化窒素、K+チャンネルトキシン。
抗パーキンソン薬。アマンチジン(Amantidine)HCl、メタンスルホン酸ベンズトロピン(たとえば、カルビドパ)。
利尿薬。ジクロロフェナミド(Dichlorphenamide)、メタゾールアミド、ベンドロフルメサイアザイド、ポリチアジド。
抗片頭痛薬。スマトリプタン(Sumatriptan)。
ホルモン類。下垂体性ホルモン(たとえば、絨毛性ゴナドトロピン、コシントロピン、メノトロピン、ソマトトロピン、コルチコトロピン、プロチレリン、チロトロピン、バソプレシン、リプレシン);副腎ホルモン(たとえば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン);膵臓ホルモン(たとえば、グルカゴン、インスリン);副甲状腺ホルモン(たとえば、ジヒドロタキステロール);甲状腺ホルモン(たとえば、カルシトニンエチドロネート2ナトリウム、レボチロキシンNa、リオチロニンNa、リオトリックス、サイログロブリン、酢酸テリパラチド(teriparatide acetate));抗甲状腺薬;エストロゲン様ホルモン;プロゲスチンおよびアンタゴニスト、ホルモン性避妊薬、精巣ホルモン;胃腸ホルモン:コレシストキニン、エンテログリカン、ガラニン、胃抑制ポリペプチド、上皮成長因子-ウロガストロン、胃抑制ポリペプチド、ガストリン-放出ペプチド、ガストリン、ペンタガストリン、テトラガストリン、モチリン、ペプチドYY、セクレチン、血管作用性小腸ペプチド、シンカリド;レプチン。
酵素類。ヒアルロニダーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、PGE-アデノシンデアミナーゼ。
静脈内麻酔薬。ドロペリドール、エトミデート、クエン酸フェンタニール/ドロペリドール、ヘキソバルビタール、ケタミンHCl、メトヘキシタールNa、チアミラールNa、チオペンタールNa。
抗てんかん薬。カルバマゼピン、クロナゼパム、ジバルプロエクス(divalproex)Na、エトスクシミド、メフェニトイン、パラメタジオン、フェニトイン、プリミドン。
ペプチド類およびタンパク質類。FcRn結合パートナーを、ペプチド類またはポリペプチド類、たとえば、アンキリン、アレスチン(arrestins)、細菌性膜タンパク質類、クラスリン、コネクシン、ジストロフィン、エンドセリン受容体、スペクチン、セレクチン、サイトカイン類、ケモカイン類、成長因子類、インスリン、エリスロポエチン(EPO)、腫瘍壊死因子(TNF)、CNTF、ニューロペプチド類、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、TGF-α、TGF-β、インターフェロン(IFN)、およびホルモン類、成長阻害剤(たとえば、ゲニステイン、ステロイドなど);糖タンパク質類(たとえば、ABCトランスポーター、血小板糖タンパク質類、GPIb-IX複合体、GPIIb-IIIa複合体、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、ビトロ値区チン、トロンボモジュリン、CD4、CD55、CD58、CD59、CD44、CD 152(CTLA-4)、リンパ球機能-関連抗原(LFA)類、細胞間接着分子(ICAM)類、血管細胞接着分子(VCAM)類、Thy-1、アンチポーター類、CA-15-3抗原、フィブロネクチン類、ラミニン、ミエリン-結合糖タンパク質、GAP、GAP-43)および受容体の結合性部分および上述のためのカウンター受容体と、抱合化してもよい。本発明のこの態様においては、ポリペプチド治療薬は、FcRn結合パートナーと共有的に抱合化されていても、またはFcRn結合パートナーおよび治療薬が標準的な組換え遺伝子技術を使用して融合タンパク質として発現されていてもよい。
サイトカインおよびサイトカイン受容体。FcRn結合パートナーを介して送達することができるか、または本発明にしたがってFcRn結合パートナーに抱合化することができるサイトカインおよびそれらの受容体の例には:インターロイキン-1(IL-1)、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-1受容体、IL-2受容体、IL-3受容体、IL-4受容体、IL-5受容体、IL-6受容体、IL-7受容体、IL-8受容体、IL-9受容体、IL-10受容体、IL-11受容体、IL-12受容体、IL-13受容体、IL-14受容体、IL-15受容体、IL-16受容体、IL-17受容体、IL-18受容体、リンフォカイン阻害因子(LIF)、M-CSF、PDGF、幹細胞因子、トランスフォーム成長因子β(TGF-β)、TNF、TNFR、リンフォトキシン、Fas、顆粒球コロニー-刺激因子(G-CSF)、GM-CSF、IFN-α、IFN-β、IFN-γが含まれるが、これらには限定されない。
増殖因子およびタンパク質ホルモン。FcRn結合パートナーを介して送達することができるか、または本発明にしたがってFcRn結合パートナーと抱合化することができる、増殖因子およびそれらの受容体の例、およびタンパク質ホルモンとそれらの受容体の例には、EPO、アンジオジェニン、肝細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、ケラチノサイト成長因子、神経成長因子、腫瘍成長因子α、トロンボポエチン(TPO)、甲状腺刺激因子、甲状腺ホルモン放出ホルモン、ニューロトロフィン、上皮成長因子、VEGF、毛様体神経栄養性因子、LDL、ソマトメジン、インスリン成長因子、インスリン様成長因子IおよびIIが含まれるが、これらには限定されない。
ケモカイン類。FcRn結合パートナーを介して送達することができるか、または本発明にしたがってFcRn結合パートナーと抱合化することができる、ケモカイン類およびそれらの受容体の例には、ENA-78、ELC、GRO-α、GRO-β、GRO-γ、HRG、LIF、IP-10、MCP-1、MCP-2、MCP-3、MCP-4、MIP-1α、MIP-1β、MIG、MDC、NT-3、NT-4、SCF、LIF、レプチン、RANTES、リンフォタクチン、エオタキシン(eotaxin)-1、エオタキシン-2、TARC、TECK、WAP-1、WAP-2、GCP-1、GCP-2、α-ケモカイン受容体:CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7、β-ケモカイン容体:CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7が含まれるが、これらには限定されない。
化学療法薬。FcRn結合パートナーは、様々な型のヒトおよびその他の、白血病、リンパ腫、癌腫、肉腫、ミエローマなどを含む癌に有効な、化学療法薬または抗-腫瘍薬、たとえば、ドキソルビシン、マイトマイシン、シスプラチン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、アクチノマイシンD、ネオカルチノスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タキソールに対して、抱合化してもよい。
抗ウィルス薬。FcRn結合パートナーは、逆転写酵素阻害剤およびヌクレオシド類似体、たとえば、ddI、ddC、3TC、ddA、AZT;プロテアーゼ阻害剤(たとえば、Invirase、ABT-538);RNAプロセッシング阻害剤(たとえば、リバビリン);および細胞融合阻害剤(たとえば、T-20(Kilby JM et al. (1998) Nat Med. 4: 1302-7))などの抗ウィルス薬に対して抱合化してもよい。
核酸。FcRn結合パートナーは、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび遺伝子置換核酸などの核酸分子に抱合化してもよい。核酸との抱合体が関与する特定の態様において、核酸とFcRn結合パートナーとのあいだに切断可能なリンカーが含まれ、それにより核酸が細胞内で利用可能なものとなりうる。アンチセンスオリゴヌクレオチドには、たとえば、抗-PKC-α、抗-ICAM-1、抗-H-ras、抗-Raf、抗-TNF-α、抗-VLA-4、抗-クラステリン(すべて、Isis Pharmaceuticals, Inc.由来)および抗-Bcl-2(GENASENSE(登録商標);Genta, Inc.)が含まれるが、これらには限定されない。
FcRn結合パートナーを介して送達することができる既知の治療薬の具体的な例には:
(a)Capoten、Monopril、Pravachol、Avapro、Plavix、Cefzil、Duricef/Ultracef、Azactam、Videx、Zerit、Maxipime、VePesid、Paraplatin、Platinol、Taxol、UFT、Buspar、Serzone、Stadol NS、Estrace、Glucophage(Bristol-Myers Squibb);
(b)Ceclor、Lorabid、Dynabac、Prozac、Darvon、Permax、Zyprexa、Humalog、Axid、Gemzar、Evista(Eli Lilly);
(c)Vasotec/Vaseretic、Mevacor、Zocor、Prinivil/Prinizide、Plendil、Cozaar/Hyzaar、Pepcid、Prilosec、Primaxin、Noroxin、Recombivax HB、Varivax、Timoptic/XE、Trusopt、Proscar、Fosamax、Sinemet、Crixivan、Propecia、Vioxx、Singulair、Maxalt、Ivermectin(Merck & Co.);
(d)Diflucan、Unasyn、Sulperazon、Zithromax、Trovan、Procardia XL、Cardura、Norvasc、Dofetilide、Feldene、Zoloft、Zeldox、Glucotrol XL、Zyrtec、Eletriptan、Viagra、Droloxifene、Aricept、Lipitor(Pfizer);
(e)Vantin、Rescriptor、Vistide、Genotropin、Micronase/Glyn./Glyb.、Fragmin、Total Medrol、Xanax/alprazolam、Sermion、Halcion/triazolam、Freedox、Dostinex、Edronax、Mirapex、Pharmorubicin、Adriamycin、Camptosar、Remisar、Depo-Provera、Caverject、Detrusitol、Estring、Healon、Xalatan、Rogaine(Pharmacia & Upjohn);
(f)Lopid、Accrupil、Dilantin、Cognex、Neurontin、Loestrin、Dilzem、Fempatch、Estrostep、Rezulin、Lipitor、Omnicef、FemHRT、Suramin、Clinafloxacin(Warner Lambert);
が含まれるが、これらには限定されない。
本発明のFcRn結合パートナーにより送達することができる治療剤のさらなる例は、その全体を参考文献として本明細書中に援用する、GoodmanとGilmanのThe Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th ed., McGraw-Hill 1996中に見いだされる。
本発明の一側面において、被検体に対して抗体の全身性送達を行うための方法が提供される。この方法は、被検体の中央部気道に対して、中央部肺領域/末梢部肺領域沈着比(C/P比)が少なくとも0.7であるエアロゾル中の抗体を、被検体に対して抗体の全身性送達を達成するために有効な量で投与することに関連する。抗体の全身性送達は、血清中または投与部位からは離れた組織において、測定可能な量の抗体を達成することに関する。血清または組織中の抗体の存在または量を測定するために適切ないずれかの技術を使用して、全身性送達の確認を行うことができる。
本明細書中で使用する場合、“抗体”は一般に、FcRn受容体に結合することができ、そしてFcRn受容体により、経細胞輸送することができる抗体のことをいう。当該技術分野において周知であるように、抗体は、それらの構造により、いくつかのクラスまたはイソ型の一つ、すなわちIgG、IgA、IgM、IgE、およびIgD、として分類される。これらのクラスの特定のものは、きわめて関連したサブクラス(サブタイプ)、たとえば、ヒトにおいてはIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を有する。FcRn受容体は、IgGクラスの抗体と結合しそして輸送すると考えられている。IgG抗体は一般的に約150 kDaの分子量を有する。一態様において抗体はIgGである。
当該技術分野において周知であるように、天然に生じた場合のIgG抗体は、2本の重鎖ポリペプチドおよび2本の軽鎖ポリペプチドからなる2価の糖タンパク質分子である。それぞれの重鎖には、抗原特異性を決定することに関与している可変ドメイン(VH)、および同じサブクラスの他のIgGと共有している定常ドメイン(CH)が含まれる。次に、CHドメインには、CH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインが含まれる。同時に、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインは、Fcフラグメントを形成する。軽鎖は、カッパ(κ)またはラムダ(λ)軽鎖のいずれかとして分類される。それぞれの軽鎖には、抗体の抗原特異性を規定する役割を果たす可変ドメイン(VL)、および定常ドメイン(CL)が含まれる。同時に、組み合わされたVLドメイン、CLドメイン、およびVHドメイン、CH1ドメインは、抗原-結合性フラグメント(Fabフラグメント)を形成する。IgG抗体を2つのFabフラグメントおよび1つのFcフラグメントにするタンパク質分解性切断は、パパイン消化により達成することができる(たとえば、Abbas AK et al., Cellular and Molecular Immunology, 5th Ed., W. B. Saunders: Philadelphia, 2003, pp 43-64を参照)。
一態様において、抗体には、FcRn結合ドメインが含まれる。本明細書中で使用する場合、“FcRn結合ドメイン”は、FcRn受容体に対して結合する抗体の抗原-非特異的部分のことをいう。本明細書中でさらに記載するように、IgGのFcドメイン中に天然に存在する特定の具体的アミノ酸残基は、抗体-FcRn相互作用に関与することが報告された。
一態様において、抗体には、ヒトFcフラグメントが含まれる。さらに具体的には、一態様において、抗体には、ヒトIgGのFcフラグメントが含まれる。そのような抗体は、以下にさらに詳細に説明するように、完全なヒト抗体、ヒトFcフラグメントを有するキメラ抗体、またはヒト化抗体であってもよい。特定の態様において、抗体には、ヒトIgG1 Fcフラグメント(ヒトFcγ1;たとえば、SEQ ID NO: 2により提示されるもの)が含まれる。
一態様において、抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体およびそれらの作製方法は、当該技術分野において周知であり、KohlerとMilsteinによる1975年の原著に始まる。本明細書中で使用する場合、モノクローナル抗体には、キメラ抗体およびヒト化抗体などの加工された抗体が含まれる。治療、診断、およびその他の用途に有用なモノクローナル抗体の例は、非常にたくさんあるため、列挙することはできない。治療用モノクローナル抗体および診断用モノクローナル抗体には、すでに臨床用途として使用されているもの、ならびに臨床用に開発中のものが含まれる。すでに臨床用途として使用されている治療用モノクローナル抗体の例は、表1に示されるものである。
その他の現在臨床で使用されている治療用抗体は、抗体全体のFabフラグメントであり、それは上記の表には含まれない。
別の態様において、抗体は、免疫グロブリンまたはハイパー免疫グロブリンである。これらは、あらかじめ1または複数の目的とする抗原に暴露した被検体由来のポリクローナル抗体調製物である。処置された被検体が、十分な量の自己の抗体を形成できない場合、または十分に短時間で自己の抗体を形成できない場合、それらを使用して、被検体に抗体供給源を供給することにより、被検体を受動的に免疫することができる。臨床で使用されている治療的免疫グロブリンおよびハイパー免疫グロブリンの例には、表2に示されるものが含まれる。
ヒトFcRnは、ヒトIgGのすべてのサブクラスに結合するが、その他の種由来のIgGのほとんどのサブクラス、たとえば、マウスおよびラットIgGにはそうではない(West AP et al. (2000) Biochemistry 39: 9698-9708;Ober RJ et al. (2001) Int Immunol 13: 1551-59)。このように、特定の態様において、治療すべき被検体の種は、FcRn結合パートナーの由来であってもよいIgGの起源の種に対応する。それぞれの種内における結合親和性の程度は、IgG1=IgG2>IgG3>IgG4(ヒト);IgG1>IgG2b>IgG2a>IgG3(マウス);そしてIgG2a>IgG1>IgG2b=IgG2c(ラット)である(Burmeister WP et al (1994) Nature 372: 379-83)。したがって、いずれかのサブクラスに属するヒトIgG(およびそのFcRn接触-含有フラグメント)は、ヒトFcRn結合パートナーとして有用である、と考えられている。したがって、ヒト被検体に関して、一態様において、抗体は、ヒトIgG1である。あるいは、ヒト被検体に関して、一態様において、抗体は、ヒトIgG2である。さらに別の態様において、抗体は、ヒトIgG3またはヒトIgG4である。
より具体的には、被検体がヒトである特定の態様において、抗体は、完全なヒト抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体であってもよい。重要なことに、抗体のFcRn受容体-結合ドメインは、ヒト起源のものであってもよく、あるいはヒト抗体のFcRn受容体-結合ドメインを模倣したものでもよい。たとえば、完全なヒト抗体には、FcRn受容体に天然に結合するヒトFcドメインが含まれる。キメラ抗体は、少なくともヒト定常重鎖(Fcドメインを含むCH)および非-ヒト抗原-結合ドメイン、たとえば、マウス可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を典型的には含む、モノクローナル抗体の遺伝子的に加工した型である。ヒト化抗体は、ヒト定常重鎖および定常軽鎖、ヒト重鎖および軽鎖可変ドメインフレームワーク、および抗原-接触性残基を規定する最小非-ヒト配列(相補性決定領域、CDR)を典型的には含む、モノクローナル抗体の遺伝子的に加工された型である。上記に示唆されたように、一態様において、抗体は、非-ヒト起源のものであってもよいが、CH2における残基248、250〜257、272、285、288、290〜291、307、308〜311および314、およびCH3における385〜387、428および433〜436に対応するヒトIgG残基が含まれうる。さらに別の態様において、抗体は、非-ヒト起源のものであってもよいが、CH2における残基248、250〜257、272、285、288、290〜291、307、308〜311および314およびCH3における残基385〜-387、428および433〜436のいずれか1つに対応する少なくとも1つのヒトIgG残基を含みうる。
一態様において、被検体の中央部気道に投与すべき抗体は、治療用抗体である。本明細書中で使用する場合、“治療用抗体”は、被検体の疾患または症状を治療するために有用な抗体のことをいう。いずれかの特定の機構により結合されることを意味することなく、治療用抗体は、その標的分子(抗原)に対する結合によりその作用を発揮することができるか、またはそれにより、生物学的作用を中和し、または標的分子の除去を亢進することができ、免疫細胞-媒介性のまたは補体媒介性の、抗原を発現する細胞の傷害を方向付けることにより、作用を発揮することができる。治療用抗体の例には、 抗-CD52、抗-CD25、抗-TNF-α、抗-RSV、抗-CD20、抗-HER2、および抗-CEAが含まれるが、これらには限定されない。具体的には、そのような抗体には、CAMPATH(登録商標)、SIMULECT(登録商標)、ZENAPAX(登録商標)、REMICADE(登録商標)、HUMIRA(登録商標)、SYNAGIS(登録商標)、RITUXAN(登録商標)、HERCEPTIN(登録商標)、およびCEA-CIDE(登録商標)が含まれうる。
呼吸系発疹ウイルス(RSV)は、乳児および子供の重症下気道疾患の代表的な原因である(Feigen et al., eds., 1987, In: Textbook of Pediatric Infectious Diseases, WB Saunders, Philadelphia, pp. 1653-75;New Vaccine Development, Establishing Priorities, Vol. 1,1985, National Academy Press, Washington DC, pp. 397-409;およびRuuskanen O et al. (1993) Curr Probl Pediatr 23: 50-79)。RSV感染の年ごとの流行の特徴は、世界規模で明らかであるが、所定の季節ごとのRSV疾患の発症および重症度は、地域により異なっている(Hall CB (1993) Contemp Pediatr 10: 92-110)。北半球の温帯地域では、それは、通常、秋の終わりに始まり、春の終わりに終了する。初期のRSV感染は、6週〜2歳の子供でもっとも頻繁の発生し、そして院内流行している間に生後4週以内の場合は稀である(Hall CB et al. (1979) New Engl J Med 300: 393-6)。RSV感染のリスクが高い子供には、早期産児(Hall CB et al. (1979) New Engl J Med 300: 393-6)および気管支肺異形成症の子供(Groothuis JR et al. (1988) Pediatrics 82: 199-203)、先天性心臓疾患の子供(MacDonald NE et al. (1982) New Engl J Med 307: 397-400)、先天性または後天性免疫不全症の子供(Ogra PLetal. (1988) Pediatr Infect Dis J 7: 246-9;Pohl C et al. (1992) J Infect Dis 165: 166-9)、および嚢胞性線維症の子供(Abman SH et al. (1988) J Pediatr 113: 826-30)が含まれる。心臓疾患または肺疾患を有し、RSV感染で入院した乳児の死亡率は、3%〜4%である(Navas L et al. (1992) J Pediatr 121: 348-54)。
RSVは、成人ならびに乳児および子供に感染する。健康な成人においては、RSVは、多くの場合上部気道疾患を引き起こす。成人の中に、特に老人の中に、以前に報告されたよりもより頻繁に症候性RSV感染を有する人がいることが、最近明らかになってきた(Evans, A.S., ed., 1989, Viral Infections of Humans. Epidemiology and Control, 3rd ed., Plenum Medical Book, New York, pp. 525-544)。療養施設にいる患者および施設に収容されている年齢の若い成人の間で、いくつかの流行も報告されている(Falsey AR (1991) Infect Control Hosp Epidemiol 12: 602-8;Garvie DG et al. (1980) Br Med J 281: 1253-4)。最終的に、RSVは、免疫が抑制されたヒト、特に骨髄移植のレシピエントにおいて、重度の疾患を引き起こす可能性がある(Hertz MI et al. (1989) Medicine 68: 269-81)。
確定されたRSV疾患に対する治療の選択肢は、限定的である。重度の下部気道のRSV疾患は、しばしば、加湿酸素および呼吸介助の適用を含む、少なからぬ対症療法を必要とする(Fields et al., eds, 1990, Fields Virology, 2d ed., Vol. 1, Raven Press, New York, pp. 1045-72)。感染の治療のために唯一承認されている薬物は、抗ウィルス薬リバビリンである(American Academy of Pediatrics Committee on Infectious Diseases (1993) Pediatrics 92: 501-4)。免疫適格の子供においてRSV疾患の重度の経過を修飾することが、RSV肺炎および細気管支炎の治療に有効であることが示された(Smith DW et al. (1991) New Engl J Med 325: 24-9)。しかしながら、長期間のエアロゾル投与を必要とし、そして病院においてその治療の間に薬物を投与される可能性のある妊婦に対するその潜在的なリスクについての懸念のため、リバビリンは、限定的にしか使用されていない。
RSVのFタンパク質のA抗原部位におけるエピトープに対するヒト化モノクローナル抗体、SYNAGIS(登録商標)(Palivizumab, Medlmmune)は、RSVにより引き起こされる重度の下部気道疾患を予防するために、推奨される毎月用量である15 mg/kg体重の用量で、RSVの流行季節の間(北半球では11月〜4月)ずっと、小児患者に対して筋肉内投与する目的で、現在米国で承認されている。SYNAGIS(登録商標)は、ヒト抗体配列(95%)およびマウス抗体配列(5%)の混成である(Johnson S et al. (1997) J Infect Dis 176: 1215-24;およびU.S. Patent No. 5,824,307、これらの全体の内容を、本明細書中に参考文献として援用する)。ヒト重鎖配列は、ヒトIgG1の定常ドメインとCorのVH遺伝子の可変フレームワーク領域(Press EM et al. (1970) Biochem J 117: 641-60)およびCESS(Takashi N et al. (1984) Proc Natl Acad Sci USA 81: 5194-8)に由来する。ヒト軽鎖配列は、Cκの定常ドメインおよびJκ-4を有するVL遺伝子K104の可変フレームワーク領域に由来する(Bentley DL et al. (1980) Nature 288: 730-3)。マウス配列は、ヒト抗体フレームワーク中にマウス相補性決定領域(CDR)を移植することに関連するプロセスにおいて、マウスモノクローナル抗体、Mab 1129に由来した(Beeler JA et al. (1989) J Virol 63: 2941-50)。
SYNAGIS(登録商標)は、2種の重鎖および2種の軽鎖からなり、そして分子量約148 kDaを有する。SYNAGIS(登録商標)は、RSVに対して、中和阻害活性および融合阻害活性の両方ともを示す。
SYNAGIS(登録商標)は、小児患者におけるRSV感染の予防のためにうまく使用されたが、15 mg/kgのSYNAGIS(登録商標)の複数回筋肉内投与が、予防的効果を達成するために必要とされる。24ヶ月未満の年齢の小児患者においては、SYNAGIS(登録商標)の平均半減期は、20日であることが示され、そして15 mg/kgの毎月筋肉内投与により、平均±標準偏差で、初回投与の後の30日の血清力価では37±21μg/ml、2回目投与の後には57±41μlg/ml、3回目投与の後には68±51μg/ml、および4回目投与の後には72 50 pg/mlという結果が得られることが示された(The Impact-RSV Study Group (1998) Pediatrics 102: 531-7)。RSV感染のコトンラットモデルにおいて、肺RSV複製を100分の1まで減少させるためには、30μg/mlよりも多い血清濃度が必要とされた。しかしながら、複数回筋肉内用量である15 mg/kgの抗体の投与は、患者にとって面倒なことである。
REMICADE(登録商標)(Infliximab, Centocor)は、およそ分子量149 kDaを有するキメラIgG1, κモノクローナル抗体である。これは、ヒト定常領域およびマウス可変領域をからなる。Infliximabは、ヒト腫瘍壊死因子α(TNF-α)に対して、1010M-1の会合定数で特異的に結合する。
メトトレキセートと組み合わせたREMICADE(登録商標)は、症候および症候を緩和させること、構造的ダメージの進行を阻害すること、そしてメトトレキセートに対して不適切な反応をする中程度〜重度の進行中のリウマチ性関節炎を有する患者の身体的機能を改善すること、についての適応がある。REMICADE(登録商標)の推奨される用量は、3 mg/kgを静脈内注入として投与した後、追加で同様の用量を1回目注入の後2および6週間後に投与し、その後8週間ごとに投与する、というものである。REMICADE(登録商標)は、通常は、メトトレキセートと組み合わせて投与される。不完全な応答をする患者に対して、用量を10 mg/kgまでに調整することができるか、または投薬スケジュールを4週間後との頻度まで調整することができる。
REMICADE(登録商標)は、従来の治療に対して不適切に反応した中程度〜重度の進行中のクローン病を有する患者におけるクローン病の症候および症候を緩和することについての適応がある。REMICADE(登録商標)の推奨される用量は、中程度〜重度の進行中のクローン病の治療のためには、5 mg/kgを1回静脈内注入として投与する。瘻管が生じる疾患を有する患者においては、最初に5 mg/kgの用量を投与し、通常はその後、追加的に5 mg/kgの用量を最初の注入の後2および6週後に与える。
Infliximabは、可溶性型および膜貫通型のTNF-αと高い親和性で結合することによりTNF-αの生物学的活性を中和し、そしてTNF-αとその受容体との結合を阻害する(Knight DM et al. (1993) Molec Immunol 30: 1443-53;Scallon BJ et al. (1995) Cytokine 7: 251-9;Siegel SA et al. (1995) Cytokine 7: 15-25)。Infliximabは、TNF-αと同一の受容体を利用する関連するサイトカインであるTNF-β(リンホトキシン-α)を中和しない。TNF-αに起因すると考えられる生物学的活性には、以下のものが含まれる:前-炎症性サイトカイン(例えばインターロイキンIL-1およびIL-6)の誘導、内皮層透過性を増加させそして内皮細胞および白血球による接着分子の発現を増加させることによる白血球遊走の亢進、好中球および好酸球機能活性の活性化、急性相作用物質およびその他の肝臓タンパク質類の誘導、ならびに滑膜細胞および/または軟骨細胞により産生される組織分解性酵素。Infliximabにより結合された膜貫通型TNF-αを発現する細胞は、補体またはエフェクター細胞により、in vitroで溶解することができる(Scallon BJ et al. (1995) Cytokine 7: 251-9)。ヒト線維芽細胞、内皮細胞、好中球(Siegel SA et al. (1995) Cytokine 7: 15-25)、BおよびTリンパ球、および上皮細胞を使用する様々なin vitroバイオアッセイにおいて、Infliximabは、TNF-αの機能的活性を阻害する。抗-TNF-α抗体は、ワタボウシタマリンの大腸炎モデルにおいて疾患活性を減少させ、そしてコラーゲン誘導性関節炎のマウスモデルにおいて滑膜炎および関節びらんを減少させる。Infliximabは、ヒトTNF-αの構成的発現の結果として多発性関節炎を発症させトランスジェニックマウスにおいて疾患が防止され、そして疾患発症後に投与した場合、びらんを起こした関節が治癒することができる。
HUMIRA(登録商標)(Adalimumab, Abbott)は、最近FDAで承認された、ヒトTNF-αに特異的な組換えヒトIgG1モノクローナル抗体である。HUMIRA(登録商標)は、ファージディスプレイ技術を用いて作製され、結果としてヒト由来重鎖および軽鎖可変領域とヒトIgG1,κ定常領域を有する抗体が得られた。HUMIRA(登録商標)は、哺乳動物細胞発現系において組換えDNA技術により産生され、そして特異的ウィルス不活性化および除去工程を含むプロセスにより精製される。これは、1330アミノ酸からなり、そして分子量約148 kDaを有する。
Adalimumabは、TNF-αに特異的に結合し、そしてp55およびp75細胞表面TNF受容体とのTNF-αの相互作用を遮断する。Adalimumabはまた、補体の存在下において、表面TNF-発現細胞in vitroを溶解もする。Adalimumabは、リンホトキシン(TNF- )には、結合もしないし不活性化もしない。TNF-αのレベルの上昇は、リウマチ様関節炎の患者の滑液中で見いだされ、そしてリウマチ様関節炎の特徴である病理学的炎症および関節破壊の両方共に重要な役割を果たしている。
Adalimumabはまた、TNF-αにより誘導されまたは制御される、白血球遊走に関与する接着分子のレベルの変化(1〜2×10-10MのIC50を有するELAM-1、VCAM-1、およびICAM-1)を含む生物学的反応を調節する。
Adalimumabの平均定常状態最低値濃度である約5μg/mlおよび8〜9μg/mlの濃度がそれぞれメトトレキセートが存在する場合および存在しない場合に観察された。。定常状態での血清adalimumab最低値レベルは、20、40および80 mgを1週間おきにおよび毎週、皮下投与した後、用量におよそ比例して増加する。
HUMIRA(登録商標)は、症候および症候を緩和させるため、そして1またはそれ以上の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)に対して不適切な反応を示した、中程度〜重度の進行中のリウマチ様関節炎を有する成人患者において、構造的ダメージの進行を阻害するため、米国において使用する目的で現在承認を受けている。HUMIRA(登録商標)は、単独でまたはメトトレキセートまたはその他のDMARDと組み合わせて使用することができる。
リウマチ様関節炎を有する成人患者に対するHUMIRA(登録商標)の推奨される用量は、皮下注射として1週間おきに投与される40 mgである。メトトレキセート、グルココルチコイド、サリチレート(salicylate)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、またはその他のDMARDは、HUMIRA(登録商標)による治療の間継続していてもよい。付随してメトトレキセートを投与されていない患者の中には、毎週40 mgまでHUMIRA(登録商標)の投与頻度を増加させることから、追加的な利益を導くことができる場合もある。
SIMULECT(登録商標)(Basiliximab, Novartis)は、組換えDNA技術により産生されるキメラ(マウス/ヒト)モノクローナル抗体(IgG1)であり、活性化T-リンパ球の表面上のインターロイキン-2受容体α鎖(IL-2Rα、CD25抗原としても知られる)に特異的に結合しそして遮断する、免疫抑制薬として機能する。アミノ酸配列に基づいて、このタンパク質の計算による分子量は、144 kDaである。これは、IL-2Rαに対して選択的に結合するRFT5抗体をコードするヒト重鎖および軽鎖定常領域遺伝子およびマウス重鎖および軽鎖可変領域遺伝子を含有するプラスミドを発現する様に遺伝子的に加工された樹立されたマウスミエローマ細胞株を培養することから得られる糖タンパク質である。
Basiliximabは、現在のところ、シクロスポリンおよびコルチコステロイドを含む免疫抑制療法の一部として使用される場合に、腎臓移植を受けた患者において、急性器官拒絶を予防することについての適応がある。Basiliximabはまた、固型器官および骨髄同種異系移植を受けた患者において、急性器官拒絶の治療および予防のためにも有用である。さらに、Basiliximabは、CD25を発現する腫瘍、たとえば、T-細胞白血病/リンパ腫を治療するために有用である可能性がある。
Basiliximabは、高い結合親和性で(Ka=1×1010 M-1)高親和性IL-2受容体複合体のα鎖と結合し、そしてIL-2結合を阻害することにより、IL-2受容体アンタゴニストとして機能する。Basiliximabは、活性化T-リンパ球の表面に選択的に発現しているIL-2Rαを特異的に標的化する。SIMULECT(登録商標)のIL-2Rαに対するこの特異的な高親和性の結合は、同種異系拒絶に関与する細胞性免疫応答の重要な経路である、リンパ球のIL-2-媒介性活性化を競合的に阻害する。循環中に存在する場合において、SIMULECT(登録商標)は、抗原チャレンジに対する免疫系の応答を減少させる。
成人腎臓同種異系移植レシピエント患者において、推奨される処方は、それぞれ20 mgの2回投与である。1回目の20 mg用量は、典型的には、移植手術の2時間以内に投与される。推奨される2回目の20 mg用量は、典型的には、移植後4日で投与される。35 kg未満の体重である小児性腎臓同種異系移植レシピエント患者において、推奨される処方は、それぞれ10 mgの2回用量である。35 kgあるいはそれ以上の体重の小児患者においては、推奨される処方は、それぞれ20 mgの2回用量を投与することである。1回目用量は、典型的には、移植手術後2時間以内に投与される。推奨される2回目用量は、典型的には、移植後4日間投与される。
ZENAPAX(登録商標)(Daclizumab, Roche)は、組換えDNA 技術により産生された、活性化リンパ球の表面で発現されるヒト高親和性インターロイキン-2(IL-2)受容体のαサブユニット(p55、α、CD25、またはTacサブユニット)に対して特異的に結合する、免疫抑制性のヒト化IgG1モノクローナル抗体である。Daclizumabは、ヒト抗体配列(90%)およびマウス抗体配列(10%)の混成である。ヒト配列は、ヒトIgG1の定常ドメインおよびEuミエローマ抗体の可変フレームワーク領域に由来する。マウス配列は、マウス抗-Tac抗体の相補性決定領域に由来した。DNA配列から予想された分子量は、144 kDaである。
Basiliximabと同様に、Daclizumabは、現在のところ、腎臓移植を受けた患者における急性器官拒絶を予防することについての適応がある。それは、シクロスポリンおよびコルチコステロイドを含む免疫抑制処方の一部として使用される。同様に、Daclizumabもまた、固型組織および骨髄同種異系移植を受けた患者における急性器官拒絶の治療および予防するために、ならびにCD25を発現する腫瘍、たとえば、T-細胞白血病/リンパ腫の治療のために、有用でもある。
腎臓同種異系移植レシピエントにおいて、Daclizumabについて推奨される用量は、1.0 mg/kgである。臨床試験に基づいて、ZENAPAX(登録商標)治療の標準曲線は5回用量である。1回目用量は通常、移植前わずか24時間前に投与される。残り4回の用量は、通常は14 日の間隔で投与される。
CAMPATH(登録商標)(Alemtuzumab, ILEX/Millennium)は、21〜28 kDa細胞表面糖タンパク質、CD52に対する、組換えDNA-由来ヒト化モノクローナル抗体(Campath-1H)である。CD52は、正常および悪性BおよびTリンパ球、NK細胞、単球、マクロファージの表面、および男性生殖系組織において発現される。Campath-1H抗体は、ヒト可変フレームワーク領域および定常領域、およびマウス(ラット)モノクローナル抗体(Campath-1G)由来の相補性決定領域を有するIgG1,κである。Campath-1H抗体は、およそ150 kDaの分子量を有する。
Alemtuzumabは、アルキル化剤を用いて治療され、そしてフルダラビン治療が失敗した患者において、B-細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)の治療について適応がある。
Alemtuzumabは、本質的にすべてのBおよびTリンパ球、大多数の単球、マクロファージ、およびNK細胞、および顆粒球のサブポピュレーション上に存在する、非-修飾抗原であるCD52に結合する。多数のボランティアから採取されたサンプルの解析により、赤血球または造血幹細胞でのCD52発現は同定されなかった。提案された作用メカニズムは、細胞表面結合による、白血病細胞抗体-依存的な溶解である。Campath-1H Fab結合が、リンパ様組織および単核食細胞系において観察された。いくつかのCD34+細胞を含むある割合の骨髄細胞は、可変レベルのCD52を発現する。有意な結合もまた、皮膚および男性生殖路(精巣上体、精子、精嚢)において観察された。成熟した精子はCD52について染色されたが、しかしながら精子形成細胞または未成熟精子は、染色の事実は示されない。
Campath治療は、毎日2時間のIV注射として投与される3 mgの用量で典型的には開始される。用量は、耐えられる限り、Campathの維持用量が30 mg/dayになるまで増大され、12週間までの期間、1週間当たり3回、隔日に、2時間のIV注射として投与することができる。ほとんどの患者において、30 mgまでの上昇は、3〜7日で達成される。
RITUXAN(登録商標)(Rituximab;IDEC/Genentech)は、正常および悪性Bリンパ球の表面に見いだされるCD20抗原に対する、遺伝子的に加工されたキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。Rituximabは、再発性または難治性の、低悪性度または濾胞状の、CD20陽性、B-細胞非-ホジキンリンパ腫を有する患者の治療についての適応がある。抗体は、マウス軽鎖および重鎖可変領域配列およびヒト定常領域配列を含有するIgG1,κ免疫グロブリンである。Rituximabは、451アミノ酸の2本の重鎖と213アミノ酸の2本の軽鎖(cDNA解析に基づく)からなり、そしておよそ145 kDaの分子量を有する。Rituximabは、CD20抗原に対しておよそ8.0 nMの結合親和性を有する。
Rituximabは、分子量がおよそ35 kDでプレ-Bおよび成熟Bリンパ球に局在する疎水性膜貫通型タンパク質である、抗原CD20(ヒトB-リンパ球拘束性分化抗原、Bp35)に対して特異的に結合する(Valentine MA et al. (1989) J Biol Chem 264: 11282-7;Einfeld DA et al. (1988) EMBO J 7: 711-7)。この抗原は、>90%のB-細胞非-ホジキンリンパ腫(NHL)でも発現されるが(Anderson KC et al. (1984) Blood 63: 1424-33)、しかし造血幹細胞、プロ-B細胞、正常プラズマ細胞、またはその他の正常組織においては見られない(Tedder TF et al. (1985) J Immunol 135: 973-9)。CD20は、細胞周期開始および分化についての活性化プロセスの1または複数の初期の工程を制御し(Tedder TF et al. (1985) J Immunol 135: 973-9)、そしておそらく、カルシウムイオンチャンネルとして機能する(Tedder TF et al. (1990) J Cell Biochem 14D: 195)。CD20は、細胞表面から取り除かれず、そして抗体結合の際に吸収されない(Press OW et al. (1987) Blood 69: 584-91)。遊離のCD20抗原は、循環中には見いだされない(Einfeld DA et al. (1988) EMBO J 7: 711-7)。
RituximabのFabドメインは、Bリンパ球上のCD20抗原と結合し、そしてFcドメインは、免疫エフェクター機能を強化して、in vitroでのB-細胞溶解を媒介する。細胞溶解の可能性のあるメカニズムには、補体依存性細胞傷害(CDC;Reff ME et al. (1994) Blood 83: 435-45)および抗体-依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)が含まれる。抗体は、DHL-4ヒトB-細胞リンパ腫株におけるアポトーシスを誘導することが知られている(Demidem A et al. (1997) Cancer Biother Radiopharm 12: 177-86)。
RITUXAN(登録商標)の推奨される用量は、375 mg/m2であり、1週間に1度、4回投与(第1日、第8日、第15日、および第22日)のIV注射として与えられる。
HERCEPTIN(登録商標)(Trastuzumab;Genentech)は、細胞ベースのアッセイにおいて高親和性で(Kd=5 nM)、ヒト上皮成長因子受容体2タンパク質、HER2の細胞外ドメインに対して選択的に結合する、組換えDNA-由来ヒト化モノクローナル抗体である(Coussens L et al. (1985) Science 230: 1132-9;Slamon DJ et al. (1989) Science 244: 707-12)。単剤としてのTrastuzumabは、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現している転移性乳癌を有し、そしてその転移性疾患に対して1またはそれ以上の化学療法治療を受けている患者の治療についての適応がある。paclitaxelと組み合わせたTrastuzumabは、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現している転移性乳癌を有しそしてその転移性疾患に対して化学療法を受けていない患者の治療についての適応がある。抗体は、HER2に結合するマウス抗体(4D5)の相補性決定領域を伴うヒトフレームワーク領域を含有する、IgG1,κである。
HER2(またはc-erbB2)癌原遺伝子は、185 kDaの膜貫通型受容体タンパク質をコードし、これは構造的に上皮成長因子受容体と関連している(Coussens L et al. (1985) Science 230: 1132-9)。HER2タンパク質過剰発現は、原発性乳癌の25%〜30%で観察される。HER2タンパク質過剰発現は、免疫組織科学に基づく-固定された腫瘍ブロックの評価を用いて決定することができる(Press MF et al. (1993) Cancer Res 53: 4960-70)。
Trastuzumabは、in vitroアッセイにおいてもそして動物内においても、HER2を過剰発現するヒト腫瘍細胞の増殖を阻害することが示された(Hudziak RM et al. (1989) Mol Cell Biol 9: 1165-72;Lewis GD et al. (1993) Cancer Immunol Immunother 37: 255-63;Baselga J et al. (1998) Cancer Res 58: 2825-31)。Trastuzumabは、抗体-依存性細胞傷害(ADCC)の媒介分子である(Hotaling TE et al. (1996) Proc Annu Meet Am Assoc Cancer Res 37: 471;Pegram MD et al. (1997) Proc Am Assoc Cancer Res 38: 602)。In vitroでは、Trastuzumab-媒介性ADCCが、HER2を過剰発現しない癌細胞の場合と比較して、HER2-過剰発現性癌細胞で優先的に生じることが示された。
推奨される初期負荷用量は、90分間の注射として投与される4 mg/kgのTrastuzumabである。推奨される毎週の維持用量は、2 mg/kgのTrastuzumabであり、そして初期負荷用量が十分に耐えられるものである場合には、30分間の注射として投与することができる。
CEA-CIDE(登録商標)(Labetuzumab, Immunomedics)は、癌胎児性抗原(CEA)に対するヒト化モノクローナル抗体であり、この中では、抗体中のすべてのマウス成分の約90%が、ヒト免疫グロブリン構造に置換されている。この抗体は、結腸直腸癌、膵臓癌、および乳癌を含むCEAを発現する様々な癌の治療のために、むき出しの(非標識の)ものとしておよび放射標識抱合体として、臨床的に研究中である。CEA-CIDE(登録商標)非標識ヒト化抗体の主要な用途は、手術不能な転移性固型腫瘍の治療のためである。毎年、140,000人が新たに結腸直腸癌と診断され、そして65,000人が結腸直腸癌で死亡する;180,000人が新たに乳癌になり、そして45,000が乳癌で死亡する;172,000人が新たに肺癌になり、そして160,000人が肺癌で死亡する;25,000人が新たに卵巣癌になり、そして15,000人が卵巣癌で死亡する;そして29,000人が新たに膵臓癌になり、そして28,000人が膵臓癌で死亡する。それは、現在第I相臨床試験の状態である。CEA-CIDE Y-90(登録商標)、イットリウム-90-標識化型のLabetuzumabもまた、手術不能な転移性固型腫瘍の治療をその主要な用途として有する。これも現在、第I相臨床試験の状態である。
別の態様において、抗体は、診断用抗体である。本明細書中で使用する場合、“診断用抗体”は、被検体における疾患または症状と関連した標的を検出しまたは局在化するために有用な抗体のことをいう。診断用抗体は、一態様において、診断用画像化抗体、たとえば、抗体を検出するために有用な、99mTc、113mIn、131I、または81mKrなどの放射性核種、ガドリニウムなどの金属、またはビオチンなどのタグと連結した抗体など、であってもよい。いくつかの態様において、診断用抗体はまた、治療用抗体である。診断の態様において、抗体は、ヨード、インジウム、テクネチウム、およびキセノンの放射性同位体を含むが、これらには限定されない、薬剤的に許容可能な放射性同位体;磁性粒子;磁気共鳴イメージング(MRI)において有用な金属(たとえば、ガドリニウム);バリウムなどの放射線不透過性物質;および蛍光化合物;に連結されていてもよい。
別の側面において、本発明は、被検体を受動的に免疫化するための方法を提供する。本発明のこの側面にしたがうこの方法には、抗原に対する受動免疫を必要としている被検体の中央部気道に対して、エアロゾル中の抗原-特異的抗体を、中央部肺領域/末梢部肺領域沈着比(C/P比)が、少なくとも0.7であるように、被検体において抗原を中和するために有効な量で投与することが含まれる。本明細書中で使用する場合、抗原に対する受動免疫を必要としている被検体は、抗原に曝露されたか、または抗原に曝露されるようになるリスクがある被検体であり、そして抗原に対してその被検体自身の抗体を、抗原に対して被検体を保護するために十分な量または十分に短期間で、形成することができない被検体である。そのような被検体には、たとえば、低γ‐グロブリン血症の被検体、無γグロブリン血症の被検体、免疫抑制治療を受けた被検体またはそこから回復した被検体、骨髄抑制的化学療法または放射線治療を受けた被検体またはそこから回復した被検体、狂犬病ウィルス、サイトメガロウィルス(CMV)、呼吸合包体ウィルス(RSV)、B型肝炎ウィルス(特異的抗原B型肝炎表面抗原を有するHBV、HbsAg)を含む特定のウィルスに曝露されたかまたは曝露されたリスクがあると考えられる被検体、および微生物トキシンなどのその他の物質に曝露されたか曝露されたリスクがあると考えられる被検体、が含まれる。伝統的に、そのような被検体は、適切な免疫グロブリンまたはハイパー免疫グロブリンを筋肉内または静脈内投与することにより、受動免疫される。
抗体は、被検体における抗原を中和するために有効な量で投与される。本明細書中で使用する場合、“中和する”とは、抗体が存在しない場合に通常は生じる抗原の生物学的作用を妨害することをいう。トキシンの中和は、トキシンの毒性作用を遮断する。ウィルスまたはその他の感染性病原体の中和は、ウィルスまたはその他の感染性病原体の感染プロセスを遮断する。
さらに別の側面において、本発明は、被検体における深部肺疾患を治療するための方法を提供する。本発明のこの側面にしたがうこの方法には、深部肺疾患の治療のために抗体を必要としている被検体の中央部気道に対して、中央部肺領域/末梢部肺領域沈着比(C/P比)が少なくとも0.7であるエアロゾル中の抗体を、被検体の深部肺疾患を治療するために有効な量で投与することが関連する。本明細書中で使用する場合、“深部肺疾患”とは、中央部気道から遠位の肺の気道の閉塞または中央部気道から遠位の肺の気道中での体液、細胞、または感染性生物の蓄積が関連する疾患のことをいう。深部肺疾患の治療は、一般的に、抗体を含む多数の適切な治療剤(これには限定されない)のいずれかを使用することに関する。本明細書中で使用する場合、“深部肺疾患の治療のために抗体を必要としている被検体”とは、抗体を用いて治療することについて適応される、深部肺に疾患を有するかまたは発症するリスクを有する被検体のことをいう。本発明のこの側面にしたがうこの方法は、深部肺それ自体に対してではなく、中央部気道に対して抗体を投与することを必要とすることに、注意すべきである。
古典的な深部肺疾患は、肺炎である。従って、一態様において、深部肺疾患は、肺炎、たとえば、RSV肺炎またはCMV肺炎である。深部肺疾患にはまた、特定の悪性疾患、肺の原発性のものまたは肺に対して転移性のもののいずれか、節外性肺非-ホジキンリンパ腫が含まれる。特定の態様において、抗体は、抗-RSV、抗-CMV、抗-CD52、抗-CD20、抗-HER2、および抗-CEAのいずれか一つである。特定の態様において、抗体は、SYNAGIS(登録商標)、CAMPATH(登録商標)、RITUXAN(登録商標)、HERCEPTIN(登録商標)、およびCEA-CIDE(登録商標)のいずれか1つである。
本明細書中で使用する場合、用語“治療する”は、被検体の疾患、症状、または状態の徴候または症候を改善すること;被検体の疾患、症状、または状態の進行を遅くし、停止し、または逆転させること;または被検体の疾患、症状、または状態の発生を予防すること;を意味する。症候、症候、および被検体の特定の疾患、症状、または状態の進行は、当業者により認識されるいずれかの利用可能な臨床的方法または研究室的方法、たとえば、Harrison's Principles of Internal Medicine(14th Ed., Fauci AS et al., eds., McGraw-Hill, New York, 1998)に記載されるもの、により評価することができる。本明細書中で使用する場合、用語“被検体”は、哺乳動物を意味する。特定の疾患、症状、または状態を治療しまたは予防するため、当業者は、その目的のための、適切な治療剤、たとえば、特定の抗体を認識するだろう。
別の側面において、本発明は、被検体における肺外疾患を治療する方法を提供する。本発明のこの側面にしたがうこの方法には、肺外疾患を治療するために抗体を必要としている被検体の中央部気道に対して、中央部肺領域/末梢部肺領域沈着比(C/P比)が少なくとも0.7であるエアロゾル中の抗体を、被検体の肺外疾患を治療するために有効な量で投与することに関連する。本明細書中で使用する場合、“肺外疾患”とは、非-肺組織または器官が関連するいずれかの疾患のことである。非-肺組織または器官には、皮膚、筋肉、骨、滑膜、骨髄、血液、リンパ系、脳、目、心臓、食道、胃、小腸、胆嚢、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、子宮、卵巣、精巣が含まれるが、これらには限定されない。肺外疾患の治療には、一般的に、抗体を含むが、これには限定されない、多数の適切な治療剤のいずれかを使用することが関連する可能性がある。本明細書中で使用する場合、“肺外疾患を治療するための抗体を必要としている被検体”とは、抗体を用いた治療が適応される、たとえば、非-肺組織または器官が関連する、肺外に疾患を有する被検体かまたはそのような疾患を発症するリスクを有する被検体のことをいう。一態様において、被検体は、肺とは別に発生する同一の疾患という側面として、肺が関連する疾患を有するかまたは発症するリスクを有する可能性もある。
一態様において、肺外疾患は癌である。肺外疾患が癌である場合、特定の態様において、抗体は、抗-CD52、抗-CD25、抗-CD20、抗-HER2、および抗-CEAから選択される。具体的には、特定の態様において、抗体は、CAMPATH(登録商標)、SIMULECT(登録商標)、ZENAPAX(登録商標)、RITUXAN(登録商標)、HERCEPTIN(登録商標)、およびCEA-CIDE(登録商標)から選択される。
本発明のこの側面にしたがう別の態様において、肺外疾患は、自己免疫疾患である。自己免疫疾患には、自己免疫疾患に特徴的な抗原に関連して上記に列挙したものが含まれるが、これらには限定されない。一態様において、自己免疫疾患は、リウマチ様関節炎である。別の態様において、自己免疫疾患は、クローン病である。肺外疾患が自己免疫疾患である場合、一態様において、抗体は、抗-TNF-αである。特定の態様において、抗体は、REMICADE(登録商標)である。別の特定の態様において、抗体はHUMIRA(登録商標)である。
本発明のこの側面にしたがう別の態様において、肺外疾患は、肺以外の同種異系移植拒絶である。本明細書中で使用する場合、“肺以外の同種異系移植拒絶”とは、ある個体から別の個体に対して移植された、肺以外の器官または組織の免疫拒絶のことをいう。たとえば、同種異系移植は、腎臓、肝臓またはその部分、心臓、膵臓、膵島、小腸、皮膚、骨髄、神経組織、または四肢またはその部分であってもよい。典型的には、拒絶は、急性拒絶であるが、拒絶が超急性拒絶または慢性拒絶であってもよい。肺外疾患が肺以外の同種異系移植拒絶である場合、一態様において、抗体は、抗-CD25である。特定の態様において、抗体は、SIMULECT(登録商標)およびZENAPAX(登録商標)から選択される。
投与される場合、本発明の抗体および抱合体は、薬剤的に許容可能な調製物中で投与される。そのような調製物は、通常は、薬剤的に許容可能な濃度の塩、緩衝化剤、保存剤、適合性キャリア、アジュバントやサイトカインなどの補足的免疫強化剤、および場合によりその他の治療剤を含有してもよい。このように、抗体または抱合体およびその他の薬剤を含む“カクテル”が企図される。治療剤それ自体を、FcRn結合パートナーと抱合化し、肺上皮バリアを介した治療剤の送達を亢進する。
本発明の抗体および抱合体は、精製された形状で、または薬剤的に許容可能な塩の形状で、投与することができる。薬において使用される場合、塩は、薬剤的に許容可能なものでなければならず、しかし非-薬剤的に許容可能な塩は、その薬剤的に許容可能な塩を調製するために都合よく使用することができ、そして、本発明の範囲から除かれない。そのような薬剤的に許容可能な塩には、以下の酸:塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸から調製されたものが含まれるが、これらには限定されない。同様に、薬剤的に許容可能な塩を、カルボン酸基のナトリウム塩、カリウム塩、またはカルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調製することができる。
適した緩衝化剤には:酢酸および塩(1〜2%w/v);クエン酸および塩(1〜3%w/v);ホウ酸および塩(0.5〜2.5%w/v);炭酸水素ナトリウム(0.5〜1.0%w/v);およびリン酸および塩(0.8〜2%w/v)が含まれる。適した保存剤には、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%w/v);クロルブタノール(0.3〜0.9%w/v);パラベン(0.01〜0.25%w/v)およびチメロサール(0.004〜0.02%w/v)が含まれる。
本明細書中で使用する場合のそして以下により完全に記載する場合の用語“キャリア”は、ヒトまたはその他の哺乳動物に対する投与に適している、1またはそれ以上の固体または液体の充填剤、希釈剤またはカプセル化物質のことを意味する。“キャリア”は、活性成分を投与を容易にするために組み合わせる有機成分または無機成分、天然物または合成物、であってもよい。
薬剤組成物の構成成分は、所望の薬剤効力を実質的に弱める相互作用が存在しないような方法で、本発明の抱合体と混合することができ、および互いに混合することができる。特定の態様において、エアロゾル製剤の構成成分には、溶液製剤用の場合、可溶化活性成分、および場合により抗酸化剤、溶媒ブレンドおよび噴射剤;懸濁製剤用の場合、微粉化活性成分および懸濁化活性成分、および場合により分散剤および噴射剤が含まれる。
用語“アジュバント”は、本発明の抗体または抱合体中に含まれるか、または同時に投与され、そして被検体の免疫応答を非特異的に強化する、いずれかの物質が含まれることを意味する。アジュバントには、アルミニウム化合物、たとえば、ゲル、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、およびFreundの完全アジュバントまたは不完全アジュバント(ここで、抱合体は、パラフィンオイルエマルジョン中の安定化水の水相に含まれる)が含まれるが、これらには限定されない。パラフィンオイルは、別のタイプのオイル、たとえば、スクアレンまたはピーナッツオイルに置換することができる。アジュバント特性を有するその他の物質には、BCG(減弱化Mycobacterium bovis)、リン酸カルシウム、レバミゾール、イソプリノシン(isoprinosine)、ポリアニオン(たとえば、ポリA:U)、ロイチナン(leutinan)、百日咳トキシン、コレラトキシン、リピドA、サポニン類およびペプチド類、たとえば、ムラミールジペプチドが含まれる。希土類塩、たとえば、ランタンおよびセリウムもまた、アジュバントとして使用することができる。アジュバントの量は、被検体および使用される具体的な抗体または抱合体に依存し、そして当業者により、過度な実験を行うことなく容易に決定されうる。
サイトカインなどのその他の補足的免疫強化剤は、本発明の抗体または抱合体を組み合わせて投与することができる。一態様において、サイトカインは、治療を補う目的で、本発明の抗体または抱合体とは別個に、投与される。別の態様において、サイトカインは、FcRn結合パートナーに抱合化されて投与される。企図されるサイトカインは、本発明の抗体またはFcRn結合パートナー抱合体を投与することから得られる有益な作用を亢進する様なものである。特定の態様において、サイトカインは、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IL-1、IL-2、およびTNF-αから選択される。その他の有用なサイトカインおよび関連する分子は、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-18、白血病阻止因子、オンコスタチン-M、毛様神経栄養性因子、成長ホルモン、プロラクチン、CD40リガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、およびTNF-βであると考えられる。本発明に従って有用であると思われる様式でT-細胞活性を修飾することが知られているその他のサイトカインは、コロニー-刺激因子および顆粒球および/または顆粒球-マクロファージコロニー-刺激因子を含む増殖因子(CSF-1、G-CSF、およびGM-CSF)、および血小板由来成長因子、表皮成長因子、インスリン様成長因子、トランスフォーム成長因子および線維芽細胞成長因子である。特定のサイトカインの選択は、好ましい免疫系の特定の修飾に依存する可能性がある。サイトカインの特定の細胞型に対する活性は、当業者に既知である。
本発明で使用される上述したサイトカインの正確な量は、選択された抗体または抱合体、選択された用量および投薬タイミング、投与様式、および被検体の特徴を含む、様々な因子に依存する可能性がある。選択された正確な量は、特に、閾値量が所望の免疫応答を亢進させうるいずれの量であってもよいので、過度な実験を行うことなく、決定することができる。このように、送達様式に依存して、ナノグラム〜ミリグラム量のサイトカインが有用であるが、サイトカインの生理学的レベルが、相応じて低いため、ナノグラム〜マイクログラム量がもっとも有用である可能性がある、と考えられている。
本発明の調製物を、有効量で投与する。“有効量”は、単独でまたはさらなる用量と一緒に、所望するように応答を刺激しうる、抱合体または抗体の量のことをいう。本明細書中で使用する場合、“治療的有効量”は、単独でまたはさらなる用量と一緒に、所望するように治療剤応答を刺激しうる、抱合体または抗体の量のことをいう。様々な態様において、このことは、被検体の疾患、症状または症候、または症候を予防し、緩和しまたは安定化することに関することができる。
本発明に従って作製されたすべての薬剤調製物中の抗体およびFcRn結合パートナー抱合体の量は、医学的に許容可能なその量でもあるその治療的有効量であるべきである。本発明の薬剤組成物中の抗体またはFcRn結合パートナー抱合体の現実の投薬レベルは、患者に対して毒性であることなく、特定の患者についての所望の治療的応答、抗体またはFcRn結合パートナー抱合体の薬剤組成物、および投与様式を達成するために有効な抗体またはFcRn結合パートナー抱合体の量を得るように、変化することができる。
本発明の抗体および抱合体の選択された投薬レベルおよび投与の頻度は、投与手段、投与時期、FcRn結合パートナーを含む1または複数の治療剤の排出速度および代謝速度、治療期間、抗体またはFcRn結合パートナー抱合体と組み合わせて使用されるその他の薬剤、化合物および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態および既往歴(prior medical history)、および医学分野において周知の同様の因子を含む、様々な因子に依存しうる。たとえば、投薬処方は、健康成人と比較して、妊娠女性、ほ乳母親および子供では変化しやすい。選択された正確な量は、特に、閾値量が所望の治療的応答をもたらすいかなる量でもよいため、過度な実験をすることなく決定することができる。このように、ナノグラム〜ミリグラム量が具体的な治療剤および被検体の状態に依存して有用であるが、しかし治療剤の生理学的レベルおよび薬理学的レベルが、相応じて低いため、ナノグラム〜マイクログラム量がもっとも有用である様である、と考えられる。
一般的に、本発明の抱合体の中央部気道肺投与のための用量は、10 ng/kg〜500μg/kg体重の範囲に落ち着くと考えられる。たとえば、0.1〜10μg/kgの用量は、IFN-α-Fcに有用であると考えられ、そして1〜100μg/kgの用量は、EPO-Fcに有用であると考えられる。いくつかの事例において、分割用量では、25 mgより多い用量がもっともよい可能性がある。
一般的に、抗体の中央部気道肺投与のための用量は、100μg/kg〜約40 mg/kg体重の範囲に落ち着くと考えられる。たとえば、500μg/kgの用量は、HUMIRA(登録商標)について有用であると考えられる。いくつかの事例において、分割用量では、25 mgより多い用量がもっともよい可能性がある。
当該技術分野で通常の知識を有する医師は、必要とされる治療的有効量の薬剤組成物を容易に決定することができそして処方することができる。たとえば、医師は、所望の治療的効果を達成するために必要とされたレベル未満のレベルで、本発明の薬剤組成物中に使用されたFcRn結合パートナー抱合体の用量を開始し、そして所望の作用が達成されるまで徐々に用量を増加させることができた。
組成物は、単位用量剤形中に問題なく存在させることができ、そして薬学分野において周知の方法のいずれかにより調製することができる。すべての方法には、抱合体を1またはそれ以上の副成分からなるキャリアと一緒にさせる工程が含まれる。一般的に、組成物は、均等にそして完全に抱合体を液体キャリア、微細に割った固体キャリア、またはその両方と一緒にさせることにより、そしてその後必要に応じて生成物を成形することにより、調製される。
送達システムには、持効性(time-release)、遅延放出型(delayed release)または徐放性(sustained release)送達システムが含まれていてもよい。そのようなシステムにより、本発明の抱合体の繰り返し投与を避けることができ、さらに被検体および医師の利便性を高めることができる。多くのタイプの放出送達システムが利用可能でありそして当業者に既知である。それらには、ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ポリ無水物およびポリカプロラクトン、ワックスコーティング、などのポリマーベースのシステムが含まれる。
吸入による投与のため、本発明の抱合体は、エアロゾルの形状で都合よく送達することができる。上述したように、エアロゾルは、加圧パックまたは吸入器から、適切な噴射剤、たとえば、クロロフルオロカーボン類、ヒドロクロロフルオロカーボン類、ヒドロフルオロカーボン類、およびジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、またはその他の適切な噴射剤を含むヒドロカーボン類を使用して生成することができる。一態様において、エアロゾルは、抱合体を含有する溶液または懸濁液を、適切な電源に接続された圧電性結晶などの振動性エレメントと接触させることにより生成される。特定の態様において、エアロゾルは、実質的に天然の、非-変性型で、抱合体または抗体を含有しそして送達する。加圧エアロゾルの場合には、用量剤形は、一定量を送達するためのバルブを用意することにより、決定することができる。たとえば、吸入器または注入器において使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジを、化合物とラクトースまたはスターチなどの適切な粉末ベースとの粉末混合物を含有するものとして製剤化することができる。
本発明は、非限定的である以下の実施例を参照することにより、さらに理解することができる。
材料:SATA、N-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテート;スルホ-LC-SPDP、スルホスクシンイミジル6-[3'-(2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサノエート;およびスルホ-SMCC、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートは、Pierce(Rockford, IL)から購入した。BALB/cマウスは、Charles River Laboratories(Wilmington, MA)から購入した。
酵素および細胞:すべての制限酵素および修飾酵素は、New England Biolabs(Beverly, MA)またはInVitrogen(GIBCO, Gaithersburg, MD)から購入し、そして製造者のプロトコルに従って使用した。Ventポリメラーゼは、New England Biolabs(Beverly, MA)から入手し、そしてExpandポリメラーゼは、Molecular Biochemicals(Indianapolis, IN)から入手し、そして両方とも、製造者により供給されるマグネシウム入りバッファー中で使用した。シュリンプアルカリホスファターゼ(SAP)は、Roche Molecular Biochemicals(Indianapolis, IN)から購入した。すべてのオリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies, Inc.(Coralville, IA)により合成されそして精製された。DH5αコンピテント細胞は、InVitrogen(GIBCO, Gaithersburg, MD)から購入し、そして製造者のプロトコルに従って使用した。
発現ベクター:哺乳動物発現ベクターpED.dCは、Genetics Institute(Cambridge, MA)から入手した。このベクターは、Kaufman RJら((1991) Nucleic Acids Res 19: 4485-90)に記載されたpED4に由来するものであるが、効率的な転写を目的とした発現ベクター中で共通して使用されるアデノウィルス主要後期プロモータ、およびRNA安定性および取り出しを増大させるためのIgGイントロンを含有する。このベクターはまた、アデノウィルスmRNAリーダー配列、EMCウィルス5'UTR(リボゾームエントリー配列)、SV40ポリAシグナル、およびアデノウィルス安定化要素、を含有し、RNAレベルを増大させ、そして従って標的タンパク質のより多い発現を引き起こす。このベクターは、細菌の増殖のためのcolE1複製開始点も含有し、ならびに細菌のアンピシリン選択のためのp-ラクタマーゼ遺伝子も含有する。最後に、このベクターは、ジシストロニックなメッセージをコードする。最初のシストロンは、標的タンパク質であり、2番目のシストロンはマウスジヒドロ葉酸リダクターゼ(dhfr)遺伝子である。dhfr遺伝子により、dhfr-欠損細胞株におけるジシストロニックなメッセージの選択および増殖が可能になる(Schimke RT (1984) Cell 37: 705-13;Urlaub G et al (1986) Somat Cell Mol Genet 12: 555-566)。
DNA鋳型:ベクターA2E/Xは、H. Ploegh(Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA)のご厚意により提供を受け、wt EPO-Fcは、Wayne Lencer(Harvard Medical School, Boston, MA)のご厚意により提供を受けた。成人腎臓cDNAは、Clontech(Palo Alto, CA)から購入した。pGEM-T Easyベクターは、Promega(Madison, WI)から購入した。
オリゴヌクレオチドプライマー:以下のオリゴヌクレオチド(左から右へ5'から3'で示される)をEPO-Fc発現ベクターの構築において使用した。対応するcDNA分子または鋳型にアニーリングするように設計されたそれぞれのプライマーの部分には下線を引いた。
PCR増幅:ポリメラーゼ連鎖反応を、Idaho Technology RapidCyclerまたはMJ Research PTC-200 Peltier Thermal Cyclerのいずれかで行った。
DNA単離および精製:PCR生成物およびすべての制限酵素消化物を、電気泳動し、そして正しいサイズに対応するDNAバンドをアガロースゲルから切り出した;このように切り出したDNAは、Qiagen DNA精製キット(Valencia, CA)を製造者のプロトコルに従って使用することにより精製する。Life Technologies(Rockville, MD)から入手した1 Kb DNAラダーまたは1 Kb Plus DNAラダーを、DNAフラグメントのサイズを決定するために使用した。溶出DNAの濃度は、アガロースゲルの可視化によりまたはOD260の測定により、推定した。
ライゲーションおよび形質転換:T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)を確立されたプロトコル(Sambrook et. al (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従って使用して、またはRapid DNAライゲーションキット(Roche, Indianapolis, IN)を製造者のプロトコルに従って使用して、ライゲーション反応を行った。ライゲーション生成物を、確立されたプロトコル(Sambrook et. al (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従って、Escherichia coliの系統DH5αの形質転換のために使用した。
DNA配列決定:二本鎖プラスミドDNAの配列を、Dana Farber Molecular Biology Core Facilities(Boston, MA)またはVeritas, Inc.(Rockville, MD)にて行われているジデオキシ配列決定により決定した。配列は、SeqMan(DNAStar, Madison, WI)を用いてまとめ、そしてさらにDNA解析をプログラムのLaserGene Suite(DNAStar, Madison, WI)またはVector NTI(Informax, Gaithersburg, MD)を使用して行った。
発現:Chinese Hamster Ovary(CHO)dhfr-欠損(dhfr-)細胞株に、発現構築物をトランスフェクトした。適切なトランスフェクト細胞株を作製した。EPO-Fc発現レベルを増大させるため、増殖培地中のメトトレキセート濃度を増大させることにより、EPO-Fc遺伝子を増幅させた。
実施例1:ヒト免疫グロブリンGの調製
本発明の化合物、たとえば、抗原または治療剤、と組み合わせて使用するためのヒトIgGまたはヒトIgGフラグメントを調製するため、以下の方法を使用することができる。非-特異的精製ヒトIgGを、Sigma Chemical Co.、Pierce Chemical、HyClone Laboratories、ICN Biomedicals、およびOrganon Teknika-Cappel、などの商業的供給元から購入することができる。
免疫グロブリンGは、血清の硫酸アンモニウム沈殿により単離することもできる。タンパク質沈殿物は、実質的に精製された非-特異的IgGを単離するため、イオン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過クロマトグラフィーにより分画する。非特異的IgGにより、抗体集団または抗体プール中で特徴的である1抗原特異性は存在しないことを意味している。
免疫グロブリンGは、プロテインA-セファロース(Pharmacia)、AvidChrom-プロテインA(Sigma)、またはプロテインG-セファロース(Sigma)などの固体支持体に結合したプロテインAに対する吸着により、血清から精製することができる。その他のIgGの精製方法は、当業者に周知であり、そして非特異的IgGを単離することを目的として使用することができる。
ヒトIgGのFcフラグメントを調製するため、単離または精製されたIgGを、製造者により推奨されるプロトコルに従う固定化パパイン(Pierce)による消化に供する。IgGを消化してFc受容体に結合することができる無傷Fcフラグメントを産生するその他のプロテアーゼ、たとえば、プラスミン(Sigma)または固定化フィシン(Pierce)は、当業者に既知であり、そしてFcフラグメントを調製するために使用することができる。次いで、消化免疫グロブリンを、プロテインA-セファロースまたはプロテインG-セファロースなどの親和性マトリクスと共にインキュベートする。IgGの非-結合性部分は、バッチフォーマットまたはカラムフォーマットにおいて十分に洗浄することにより、親和性マトリクスから溶出する。次いで、IgGのFcフラグメントは、Fc-吸着性結合とは両立しないバッファーの添加により溶出される。Fcフラグメントの精製において有効なその他の方法もまた、使用することができる。
実施例2:化合物のヒト免疫グロブリンFcフラグメントに対する抱合化
化合物をFcRn輸送メカニズムを介して送達するため、そのような化合物を全IgGまたはFcフラグメントに結合させることができる。架橋の化学およびその様な目的のための効果的な試薬は、当該技術分野において周知である。全IgGまたはFcフラグメントと送達すべき化合物とを抱合化するために使用された架橋試薬の性質は、本発明により制限を受けない。いずれかの架橋剤を使用することができるが、ただし、化合物の活性が維持され、そして抱合体のFc部分のFcRnによる結合は、悪い影響を受けない。
Fcと化合物との効果的な一工程架橋の事例は、リン酸ナトリウムバッファー中で、室温にて30分間、過ヨウ素酸ナトリウムによりFcを酸化し、その後4℃にて抱合化する化合物と共に一晩インキュベートする、というものである。室温にて18時間、スルホ-LC-SPDPと共に化合物およびFcフラグメントの両方を誘導化することにより、抱合化を行うことができる。Fcフラグメントと送達すべき所望の化合物とを、実質的に共有結合を形成しうる別の架橋試薬を用いて誘導化することにより、抱合体を調製することもできる。この反応の一例は、Fcフラグメントのスルホ-SMCCによる誘導化であり、そしてFcに対して抱合化すべき化合物は、SATAによりチオール化される。誘導化された構成成分は、架橋剤の不在下で精製され、そして室温にて1時間架橋を行わせるために混合される。アルデヒド、イミド、シアノ、ハロゲン、カルボキシル、活性化カルボキシル、無水物およびマレイミドの官能基を含むその他の架橋試薬は、当業者に既知であり、そして化合物のFcフラグメントに対する抱合化のために使用することもできる。架橋試薬の選択は、もちろん、Fcに対して抱合化を望む化合物の性質に依存する。上記で所望される架橋試薬架橋試薬は、タンパク質-タンパク質抱合化に有効である。抱合化する化合物が炭水化物であるかまたは炭水化物部分を有している場合、ABH、M2C2H、MPBHおよびPDPHなどのヘテロ2機能性架橋試薬が、タンパク質性FcRn-結合分子(Pierce)による抱合化のために有用である。タンパク質類と炭水化物とを抱合化するための別の方法が、Brumeanuら(Genetic Engineering News, October 1,1995, p. 16)により開示される。抱合化すべき化合物が脂質であるかまたはFcRn-結合分子に対する抱合化の部位として便利な脂質部位を有する場合、SPDP、SMPBおよびそれらの誘導体などの架橋リンカーを使用することができる(Pierce)。非共有結合的手段により送達すべきいずれかの分子を抱合化することもできる。非共有結合的抱合化を達成するための1つの便利な様式は、当該技術分野において周知の方法により、モノクローナル抗体などの送達すべき化合物に対する抗体を産生させ、そして正しいFc領域および所望の抗原結合特性を有するモノクローナル抗体を選択することである。
次いで、送達される抗原または治療剤は、モノクローナル抗体キャリアに予め結合させる。上記の架橋試薬のすべてにおいて、架橋試薬を含まない誘導化された化合物を精製することが重要である。同様に、抱合化していない反応物を実質的に含まない最終抱合体を精製することも重要である。精製は、抱合体の構成成分のいずれかの特性に基づいて、親和性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、またはイオン交換クロマトグラフィーにより達成することができる。一方法において、プロテインA-セファロースを用いた最初の親和性精製工程を使用して、FcおよびFc-化合物抱合体を維持し、次にFc抱合体の質量、サイズ、または電荷に基づいて、ゲル濾過クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーを行う。この精製スキームの最初の工程により、本発明の本質的要件であるFcRnに対して、抱合体が結合しうることを保証する。
実施例3:汎用X-Fc発現ベクターの構築
Kbシグナルペプチドにより、Fcγ1と融合した多数の異なる可能性のあるタンパク質類の効率的な産生と分泌が可能になる。従って、汎用X-Fc発現ベクターを、pED.dCの最初のシストロン位置に、13アミノ酸ペプチドリンカー(GSRPGEFAGAAAV;SEQ ID NO: 26)によりFcγ1のヒンジ領域においてアスパラギン酸221(D221、EU番号付け)と融合されるKbシグナルペプチドからなる発現カセットを挿入することにより、構築した。
Kbシグナル配列は、Ventポリメラーゼを使用して、RapidCycler中で、プライマーPKFおよびKXRを使用して、95℃にて15秒の変性の後、6.0の傾きで95℃にて0秒、55℃にて0秒、および72℃にて1分20秒のサイクルを28サイクル行い、その後72℃での伸長反応を3分間行うことにより、A2E/X鋳型から得た。プライマーPKFは、PstI部位を含有し、一方でプライマーKXRはXbaI部位を含有する。この2つの制限酵素部位により、増幅産物の指向性クローニングが容易になる。約90塩基対(bp)のPCR産物を、ゲルで精製し、PstIおよびXbaIにて消化し、再びゲルで精製し、そしてPstI/XbaI-消化しゲルで精製したpED.dCベクター中にサブクローン化した。1つの構築物を代表的クローンとして選択し、そしてpED.dC.Kbと命名した。
Fcγ1配列を、Expandポリメラーゼを使用して、RapidCycler中で、プライマーFCGFおよびFCGMRを用いて、95℃にて15秒の変性の後、6.0の傾きで95℃にて0秒、50℃にて0秒、そして72℃にて1分20秒のサイクルを30サイクル行い、その後72℃での伸長反応を10分間行うことにより、wt EPO-Fc鋳型から得た。約720 bpの生成物を、ゲルで単離し、そしてpGEM-T Easyベクター中にクローニングし、そしてついで配列決定した。その後、正しいコード領域をEcoRI-MfeI消化により切り出し、ゲルで精製し、そしてEcoRI-消化し、ゲルで精製したpED.dC.Kb構築物中にサブクローニングした。Fcγコード領域を正しい方向で含むプラスミドを、SmaIで消化することにより決定し、そしてこの構築物の配列を決定した。この構築物を、pED.dC.XFcと命名した。このプラスミドマップおよびpED.dC.XFcの部分配列を図3に示す。
実施例4:Kbシグナルペプチドを有するEPO-Fc発現ベクターの構築
この実施例においては、成熟ヒトEPO配列を、Kbシグナルペプチド、3-アミノ酸リンカー(GSR)、成熟EPO配列、および8-アミノ酸リンカー(EFAGAAAV、SEQ ID NO: 27)をコードするcDNAを形成するためのカセット中に挿入し、ついでFcγ1配列を挿入した。EPO配列は、プライマーEPO-FおよびEPO-Rを使用して、RapidCycler中で、Ventポリメラーゼを使用して、95℃にて15秒間の変性の後、6.0の傾きで95℃にて0秒、55℃にて0秒、そして72℃にて1分20秒のサイクルを28サイクル行い、72℃での伸長反応を3分間行うことにより、鋳型としての成体腎臓QUICK-クローンcDNA調製物から得た。プライマーEPO-Fは、XbaI部位を含有し、一方、プライマーEPO-RはEcoRI部位を含有する。約514 bpの生成物をゲルで精製し、XbaIとEcoRIとにより消化し、再びゲルで精製し、そしてXbaI/EcoRI-消化し、ゲルで精製したpED.dC.XFcベクター中に指向性にサブクローニングした。形質転換により、20クローンのうち4クローンは、正しい挿入物を有していることをが明らかになった。そのようなクローンの一つは、直接的配列決定により調べたところ、変異を有さないことが見いだされた。この構築物を、pED.dC.EpoFcと命名した。野生型ヒトEPOの核酸およびアミノ酸配列については、図2を参照されたい。このプラスミドマップおよびpED.dC.EpoFcの部分配列は、図4中に示される。
実施例5:EPOシグナルペプチドを有するEPO-Fc発現ベクターの構築
Kbシグナルではなく、内在性EPOシグナルペプチドを使用した場合のEPO-Fcの産生および分泌を評価するため、2つめのEPO-Fc発現プラスミドを作製した。このプラスミド中の分泌カセットは、8-アミノ酸リンカー(EFAGAAAV, SEQ ID NO: 27)と融合させた内在性シグナルペプチドを含むヒトEPO配列に続いてFcγ1配列をコードした。天然のEPO配列は、内在性シグナルペプチドおよび成熟配列の両方ともを含有するが、EPS-FおよびEPS-Rプライマーを使用して、Expandポリメラーゼを使用して、PTC-200中で、94℃にて2分間の変性の後、94℃にて30秒、57℃にて30秒、そして72℃にて45秒のサイクルを32サイクル行い、その後72℃での伸長反応を10分間行うことにより、鋳型としての成体腎臓QUICK-クローンcDNA調製物から得た。プライマーEPS-Fは、開始コドンの上流にSbfI部位を含有し、一方、プライマーEPS-Rは、EPO配列中の内在性SbfI部位の下流にアニーリングする。約603 bpの生成物を、ゲルで単離し、そしてpGEM-T Easyベクター中にサブクローニングした。4つの独立した構築物を完全に配列決定し、そして変異を有さない2つのうちの1つを使用して、さらにサブクローニングした。正しいコード配列をSbfI消化により切り出し、ゲルで精製し、そしてPstI-消化し、SAP-処理し、ゲルで精製したpED.dC.EpoFcプラスミド中にクローニングした。この挿入物を正しい方向で有するプラスミドを、はじめにKpnI消化により決定した。この構築物のXmnIおよびPvuII消化物を、pED.dC.EpoFcと比較し、そして正しい方向であることが確認された。配列を決定し、そして構築物をpED.dC.natEpoFcと命名した。このプラスミドマップおよびpED.dC.natEpoFcの部分配列を図5中に示す。
実施例6:EPO-Fcの生物学的活性のin vivoでの保持
FcRn結合パートナーと目的のタンパク質の融合により作製された抱合体が生物学的活性を保持することができることを示すため、上述した例示のタンパク質を発現させ、そしてエリスロポエチンの生物学的活性を以下の方法でアッセイした。EPO-Fc融合物を含有する哺乳動物発現ベクターを、Chinese hamster ovary(CHO)細胞中にトランスフェクトし、そして当該技術分野において標準的なプロトコルにより発現させた。トランスフェクトCHO細胞または非トランスフェクトCHO細胞の上清を回収し、BALB/cマウスの皮下に注射した。マウスの網状赤血球計数を、当該技術分野において既知の技術により、Coulter FACS分析により得た。結果から、トランスフェクト細胞の上清を注射したマウスが、対照(非トランスフェクト)上清を注射したマウスと比べて、数倍高い網状赤血球計数を有することが示された。EPOが赤血球の産生を刺激することが証明されたので、本明細書中で開示される結果は、生物学的に活性なFcRn結合パートナー抱合体を合成する本発明の能力をサポートしている。
同様に、ベクター中でFcフラグメントを代わりの上述したFcRn結合パートナードメインに置換した融合タンパク質類が、生物学的活性を保持することが期待される。
実施例7:中央部気道への送達の後のEPO-Fcの経上皮的な吸収
免疫組織化学的研究により、FcRnが、カニクイザルおよびヒトの肺胞上皮における場合と比較して、中央部気道において、相対的により高いレベルで発現されることが示された。したがって、FcRnに結合するEPO-Fc融合タンパク質(MW=112 kDa)が、上皮を介して輸送され得るのかどうか、そして肺内のどこでこの吸収が生じるのか、を確認することは興味深かった。ヒトIgG1のFcドメインのアミノ末端で天然ヒトEPOのカルボキシ末端と融合された融合物を含むヒトEPO-Fc融合タンパク質を、CHO細胞中で発現させ、そしてプロテインA親和性クロマトグラフィーを用いて細胞培養培地から精製した。精製したヒトEPO-Fc融合タンパク質は、in vitroにおいて生物学的に活性であった。EPO-Fcは、EPO受容体(EpoR)に対して高い親和性(Kd=0.25 nM vs. 天然huEPOに対して0.2 nM)で結合し、そしてTF-1ヒト赤白血病細胞の増殖を刺激した(ED50=0.07 nM vs. 天然huEPOに対して0.03 nM)。EPO-Fcはまた、Biacoreアッセイで、精製された可溶性huFcRnにも結合した(Kd=14 nM vs. IgG1に対して8 nM)。
EPO-Fcのエアロゾル(PBS、pH 7.4中)を、様々なジェットネブライザーを用いて作製し、そして麻酔をかけたカニクイザルに対して、気管内のチューブを通じて投与した。いくつかの実験において、サルは、自発的に呼吸をしており、一方その他の実験では、呼吸の深度および速度は、Bird Mark 7A呼吸器またはSpanglerボックス装置のいずれかを用いて制御した。循環中網状赤血球の増加を、EPO-Fcの生物学的応答の指標として使用した。血清中のEPO-Fcは、特異的ELISAを使用して定量した。
麻酔をかけ、自発的に呼吸しているカニクイザルにおける初期の研究では、エアロゾル化EPO-Fcに対する生物学的応答を調べた(図6A)。この研究においてすべての動物がEPO-Fcの投与後5〜7日後に循環中網状赤血球が増加する様に応答した。続いて行った研究では、同様の方法での1回用量投与の後、血清中で高濃度のEPO-Fcが得られたことが示された(図6B)。FcRn結合が>90%減少した変異EPO-Fc(Fcドメイン中の3つの必須アミノ酸残基が修飾されたFc:I253A、H310A、およびH435A)は、十分に吸収されなかった。平均血清半減期は、EPO-Fcについて約22 hrであった(EPOGEN(登録商標)(Amgen)について5〜6 hrであることと比較)。EPO-FcおよびmutEPO-Fcの吸収は、浅い呼吸(自発性)、または深い呼吸(強制換気)のいずれかを使用して比較した。強制、深呼吸操作の結果、EPO-Fcの吸収は、浅い自発性呼吸の場合よりもずっと少なかった。その一方、変異EPO-Fcの吸収には変化がなかった。
これらの結果は、ガンマシンチグラフィー(放射性トレーサーとしての99mTc-DTPAの共投与)を使用した実験において確認されそして高められ、20%または75%肺活量のいずれかで強制換気した場合のEPO-Fcの沈着および吸収と比較された(図7)。シンチグラフィー画像により、放射性トレーサーの沈着は、20%肺活量についての気管気道/中央部気道vs. 75%肺活量についての中央部気道/深部肺であることが示された。EPO-Fcの吸収は、20%肺活量を用いて投与した後、より強健であった。さらに、EPO-Fcの吸収は、異なる沈着用量レベルで調べ(すべては20%肺活量操作で行った)、臨床的に関係のあるEPO-Fcについての用量範囲を見いだした。0.01〜0.03 mg/kgの沈着用量は、結果として臨床的有用性を有する薬物動態学的定数であった(図8)。
実施例8:非-ヒト霊長類の中央部気道に対してヒトIFN-α-Fcをエアロゾル投与することによる、IFN-αの全身性送達
ヒトIFN-α-Fc発現構築物を、実施例3のpED.dC.Kb発現ベクターおよびヒトIFN-αのコード領域を用いて作製した。ヒトIFN-αのヌクレオチド配列は、アクセッション番号J00207としてGenBankから公衆に利用可能である。ヒトIFN-α-Fcは、CHO細胞中で発現され、そして上述したEPO-Fcについての方法と類似する方法で単離した。6頭のカニクイザルは、この実験のために3つのグループに分割した。Group Iサルは、実施例7においてEPO-Fc投与について記載された方法と類似する中央部気道エアロゾル投与により、20μg/kgのIFN-α-Fcを投与された。Group IIサルは、同様の方法で中央部気道に対して、20μg/kgのINTRON(登録商標)A(Schering Corporation, Kenilworth, NJ)、組換えヒトIFN-αを投与された。Group IIIサルは、中央部気道エアロゾル投与により、Group Iの1/10のIFN-α-Fc、すなわち、2μg/kgを投与された。血液サンプルは、14日間にわたって定期的に採取し、そしてIFN-αの血清レベルをそれぞれの時間点で適切な特異的ELISAを用いて調べた。同一のELISAにより決定された前処置IFN-αレベルは、引き続いて行われたすべてのIFN-αレベル測定から差し引かれた。さらに、投与されたIFN-α-Fcの生物活性を評価するため、IFN-αの生物活性についての標準的なアッセイが、Group Iの動物から得られた連続的サンプルを使用して行われた。これらのアッセイには、オリゴアデニレート合成酵素(OAS)活性の測定およびネオプテリン濃度の測定が含まれる。結果は、図9〜11に示される。
図9は、Group Iのサル(DD030およびDD039)は、160〜185 ng/mlの範囲のIFN-αピーク血清濃度を達成し、83.7〜109時間の半減期(T1/2)であった。対照的に、同一の投与方法でINTRON(登録商標)Aとして20μg/kgのIFN-αを投与されたGroup IIのサル(DD029およびDD045)は、わずか約13.6 ng/mlのIFN-αピーク血清濃度を達成し、わずか4.8〜5.9 hoursの半減期(T1/2)であった。これらの結果から、中央部気道に投与されたエアロゾル化IFN-α-Fcは、IFN-αの全身性送達に非常に有効であることが示される。さらに、IFN-α-Fcとして投与されたIFN-αの半減期の延長は、IFN-α単独を同様に投与されたものと比較して、薬物動態学が顕著に改善されたFcRn結合パートナー抱合体として、IFN-αが投与され得ることが示された。
図10は、Group Iのサルのわずか1/10ほどのIFN-α-Fcを投与されたGroup IIIのサル(DD055およびDD057)は、同様の薬物動態プロフィールを示したが、比例して低い血清濃度を示した。
図11は、IFN-α-Fcを投与されたGroup IサルについてのIFN-α生物活性アッセイの結果を示す。図11Aは、図9および図10における薬物動態学的データと比較した、OAS活性の増加および持続を、時間の関数として示す。図11Bは、同様に図9および図10における薬物動態学的データと比較した、ネオプテリン濃度の増加および持続を示す。これらのデータは、本発明の方法に従って中央部気道に対してエアロゾル投与した後、IFN-α-Fc中のIFN-αが生物学的活性を維持することを示す。
実施例9:非-ヒト霊長類の中央部気道に対してヒトTNFR-Fcをエアロゾル投与することによる、TNFR-Fcの全身性送達
3頭のカニクイザルのそれぞれに、エアロゾル化ENBREL(登録商標)(etanercept、Immunex Corporation, Seattle, WA)、組換えヒト腫瘍壊死因子受容体(TNFR)-Fcγ1を、本発明の方法に従って中央部気道を介して投与した。ENBREL(登録商標)は、ヒトIgG1のヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインとインフレームで融合したヒトTNFRの細胞外リガンド-結合部分を含む二量体融合タンパク質である。ENBREL(登録商標)は、CHO細胞内で発現され、そして見かけ分子量150 kDaを有する。それぞれのサルについて本実験において推定された蓄積用量は、0.3〜0.5 mg/kgであった。血液サンプルは、10日間にわたり定期的に採取され、そしてTNFR-Fcの血清レベルをそれぞれの時点において、適切な特異的ELISAを使用して決定した。血清ENBREL(登録商標)濃度を測定するため、サンドイッチELISAを、プレートに結合させたTNF-αを捕捉剤として;血清またはENBREL(登録商標)をそれぞれサンプルとしてまたは標準として;そして抗-TNFR抗体をリポーター試薬として;使用して行った。結果は、図12中に示す。
図12は、3頭のカニクイザル(101、102、および103)が、TNFR-Fcの同様のピーク血清濃度、約200 ng/mlを達成した。TNFR-Fcの半減期が延長された。この実験から、ヒトTNFR-Fcを、本発明の方法に従って中央部気道に対してエアロゾル投与することを介して、非-ヒト霊長類に対して効果的に投与することができることが示される。
実施例10:非-ヒト霊長類の中央部気道に対してヒトIFN-β-Fcをエアロゾル投与することによる、IFN-βの全身性送達
ヒトIFN-β-Fc発現構築物は、実施例3のpED.dC.Kb発現ベクターおよびヒトIFN-βのコード領域を使用して作製した。ヒトIFN-βについてのヌクレオチド配列は、アクセッション番号V00535としてGenBankから公衆に利用可能である。ヒトIFN-β-Fcは、CHO細胞中で発現され、そしてEPO-Fcについて上述した方法と類似する方法で単離された。2頭のカニクイザルおよび2頭のアカゲザルのそれぞれに対して、実施例7においてEPO-Fc投与について上述した方法と類似した方法で中央部気道エアロゾル投与することにより、40μg/kgのIFN-β-Fcを投与した。血液サンプルは、2日間にわたって定期的に採取し、そしてIFN-βの血清レベルをそれぞれの時間点で適切な特異的ELISAを使用して決定した。事前処理IFN-βレベルは、同様に同一のELISAにより決定されるが、引き続いて行うすべてのIFN-βレベル決定から差し引かれた。
結果から、中央部気道を介してエアロゾル化ヒトIFN-β-Fcを投与されたカニクイザルおよびアカゲザルの両方とも、顕著で持続的なIFN-βの血清濃度が得られることが示された。本実験においては、カニクイザルでは、アカゲザルで行われた場合よりも高いピークレベルが得られた(アカゲザルについて5.4〜8.4 ng/mlであるのに対して、カニクイザルについて11.0〜24.7 ng/ml)。両群におけるIFN-β-Fcの半減期は、ほぼ同一、すなわち、12.8〜14.2 hoursであった。これらのデータから、2種の非-ヒト霊長類の中央部気道に対して投与されたエアロゾル化IFN-β-Fcは、IFN-βの全身性送達のために有効であることが示される。
実施例11:非-ヒト霊長類の中央部気道に対するヒトFSH-Fcのエアロゾル投与による、FSHの全身性送達
ヒトFSH-Fc発現構築物は、実施例3のpED.dC.Kb発現ベクター、および一本鎖ヒトFSHコード領域を使用して作製した。分子の一本鎖FSH部分には、ヘテロ二量体ホルモンFSHのα鎖およびβ鎖が両方とも含まれ、Sma I制限エンドヌクレアーゼ部位(CCCGGG)により適切な読み枠で連結されている。従って、FSH-Fc構築物は、hFSHβα-Fcとも呼ばれる。ヒトFSHのαおよびβサブユニットについてのヌクレオチド配列は、それぞれアクセッション番号NM000735およびNM 000510としてGenBankから公衆に利用可能である。ヒトFSH-Fcは、CHO細胞中で発現され、そしてEPO-Fcについて上述した方法と同様の方法で単離された。
2頭のカニクイザルは、実施例7においてEPO-Fc投与に関して記載された方法と同様の方法で中央部気道エアロゾル投与することにより、100μg/kgのFSH-Fcをそれぞれ投与された。血液サンプルは、2週間にわたって定期的に採取し、そしてFSHの血清レベルは、それぞれの時間点で適切な特異的ELISAを使用して決定した。事前処理FSHレベルは、同様に同一のELISAにより決定されるが、引き続いて行われるすべてのFSHレベル決定値から差し引かれた。結果から、両方のサルとも、21.6および42.8 ng/mlのピーク血清濃度を有し、そして145〜153 hoursの半減期を有する、顕著なレベルのFSHが得られ留ことが示された。
実施例12:非-ヒト霊長類の中央部気道に対するSYNAGIS(登録商標)のエアロゾル投与による、モノクローナル抗-RSV抗体の全身性送達
この実施例においては、ヒト化モノクローナル抗-RSV抗体SYNAGIS(登録商標)は、本発明の方法に従って中央部気道送達を行った後、カニクイザルに全身的に送達されることが示された。抗体は、解析を容易にするため、ビオチニル化された。
SYNAGIS(登録商標)のビオチニル化は、EZ-リンクスルホ-NHS-LC-ビオチンまたはEZ-リンクスルホ-NHS-LC-LC-ビオチンを用いて、供給者の指示書に若干の修正を加えて行った。EZ-リンクスルホ-NHS-LC-ビオチン(Pierce, Cat#21335)およびEZ-リンクスルホ-NHS-LC-LC-ビオチン(Pierce, Cat#;21338)は、EZ-リンクスルホ-NHS-LC-LC-ビオチンが追加のスペーサーLCを有する点を除き、同一である。SYNAGIS(登録商標)の最初のビオチニル化は、EZ-リンクスルホ-NHS-LC-LC-ビオチンを用いて行った。続いて行ったビオチニル化は、EZ-スルホ-NHS-LC-ビオチンを用いて行った。ビオチニル化SYNAGIS(登録商標)は、FcRn結合、新生仔ラットにおける経口投与後の取り込み、およびサル血清中の検出、という意味では、同様の特性を有することが示された。
SYNAGIS(登録商標)は、マイクロ遠心チューブ中で、DPBS(カルシウムおよびマグネシウム不含)中10 mg/mlまたは2 mg/mlに希釈した。使用直前に、1.0 mM EZ-リンクスルホ-NHS-LC-ビオチンまたはEZ-リンクスルホ-NHS-LC-LC-ビオチンを蒸留水中で作製した。27μlのEZ-リンクスルホ-NHS-LC-ビオチンまたはEZ-リンクスルホ-NHS-LC-LC-ビオチンを、2 mg/mlの抗体溶液(20-倍モル比)に添加した。80μlのEZ-リンクスルホ-NHS-LC-ビオチンまたはEZ-リンクスルホ-NHS-LC-LC-ビオチンを、10 mg/mlの抗体溶液(12倍モル比)に添加した。このチューブをフォイルで覆い、そして室温にて30分間、緩速揺汰器中に静置した。チューブを氷上に静置し、その後PBS中で一晩透析することにより、反応を停止させた。標識したSYNAGIS(登録商標)を、Hi-トラッププロテインAカラムにより精製した。ビオチンのSYNAGIS(登録商標)に対するモル比を、製造者(Pierce)により供給されるHABA方法により決定し、そしてモル比は約1.5であることがわかった。
カニクイザルを麻酔し、そして肺へ直接的にエアロゾルを送達するための気管内チューブを挿管した。エアロゾルを、中央部気道送達のためのAeroneb Proネブライザー(Aerogen、約4.5μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD))、または深部肺送達のためのBirdマイクロネブライザー(Bird、約2.5μmのMMAD)のいずれかを用いて生成した。それぞれのネブライザーを、呼吸パターンを制御するために使用されるBird Mark 7A人工呼吸器と直列で使用した。中央部気道送達のため、人工呼吸癨を、約10〜15 cm H2Oの圧力に設定し、そして動物を1分間当たり25〜30回の呼吸(正常の呼吸速度)で呼吸させた。深部肺送達のため、人工呼吸器を25〜30 cm H2Oの圧力に設定し、そして吸気間に約3秒間の息止めがある、1分間当たり20回の呼吸で動物を呼吸させた。SYNAGIS(登録商標)は、リン酸緩衝塩類溶液中に溶解した。2 mlのエアロゾルをそれぞれのサルに投与し、それぞれの場合に15%が肺に沈着し、そして吸収のために利用可能であった。それぞれのサルにおける沈着した用量は、約0.6 mg/kgであった。
ビオチニル化SYNAGIS(登録商標)に関して血清サンプルを得てそしてアッセイした。結果は、図13中に示される。中央部気道送達群のサルは、約1000 ng/mlのSYNAGIS(登録商標)ピーク血清レベルを示した(図13A)。対照的に、深部肺送達群のサルは、わずか約200〜300 ng/mlのSYNAGIS(登録商標)のピーク血清レベルを示した(図13B)。
同様の実験において、それぞれ1回の7 mg/kgを投与された2頭のカニクイザルは、上述した浅い呼吸法を使用して、ビオチニル化SYNAGIS(登録商標)の用量を沈着させた。SYNAGIS(登録商標)のピーク血清濃度は、4μg/mIと測定された。
本発明は、本発明の個別の側面のここの説明として意図される記載された特定の態様により範囲が限定されるべきではなく、そして機能的に均等な方法および構成成分が、本発明の範囲内に含まれる。
実際に、本発明の様々な修飾が、本明細書中に示したものや記載されたものに加えて、上述した記載および添付する図面から当業者にとって明らかになるだろう。このような修飾は、添付するクレームの範囲内に含まれることが意図される。
本明細書中で引用されるすべての参考文献は、すべての目的で、参考文献としてそれらの全体を本明細書中に援用する。
図1は、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含むヒトIgG1 Fcフラグメント(Fcγ1)のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 1)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO: 2)を示す。アミノ酸配列の下の数字は、EU番号付け変換を使用したアミノ酸指定に対応する。
図2は、野生型ヒトEPOのcDNAオープンリーディングフレームヌクレオチド配列(パネルA;SEQ ID NO: 3)および推定アミノ酸配列(パネルB;SEQ ID NO: 4)を示す。SEQ ID NO: 4中のシグナルペプチドには下線を引いている。
図3は、発現プラスミドpED.dC.XFc(パネルA)およびKbシグナルペプチド/Fcγ1インサート(パネルB)のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 5)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO: 6)についての、プラスミドマップを示す。KbシグナルペプチドおよびFcγ1領域は、配列上部のチルダ(〜)により示される。EcoRI、PstIおよびXbaI制限酵素部位には下線を引いている。
図3は、発現プラスミドpED.dC.XFc(パネルA)およびKbシグナルペプチド/Fcγ1インサート(パネルB)のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 5)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO: 6)についての、プラスミドマップを示す。KbシグナルペプチドおよびFcγ1領域は、配列上部のチルダ(〜)により示される。EcoRI、PstIおよびXbaI制限酵素部位には下線を引いている。
図4は、発現プラスミドpED.dC.EpoFc(パネルA)およびKbシグナルペプチド/EPO/Fcγ1インサート(パネルB)のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 7)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO: 8)についてのプラスミドマップを示す。Kbシグナルペプチド、成熟EPO、およびFcγ1領域は、配列上部のチルダ(〜)により示される。EcoRI、SbfIおよびXbaI制限酵素部位には下線を引いている。
図4は、発現プラスミドpED.dC.EpoFc(パネルA)およびKbシグナルペプチド/EPO/Fcγ1インサート(パネルB)のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 7)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO: 8)についてのプラスミドマップを示す。Kbシグナルペプチド、成熟EPO、およびFcγ1領域は、配列上部のチルダ(〜)により示される。EcoRI、SbfIおよびXbaI制限酵素部位には下線を引いている。
図4は、発現プラスミドpED.dC.EpoFc(パネルA)およびKbシグナルペプチド/EPO/Fcγ1インサート(パネルB)のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 7)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO: 8)についてのプラスミドマップを示す。Kbシグナルペプチド、成熟EPO、およびFcγ1領域は、配列上部のチルダ(〜)により示される。EcoRI、SbfIおよびXbaI制限酵素部位には下線を引いている。
図5は、発現プラスミドpED.dC.natEpoFc(パネルA)および天然EPO/Fcγ1インサート(パネルB)のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 9)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO: 10)についてのプラスミドマップを示す。天然EPOシグナルペプチド、およびFcγ1領域を含む成熟EPOは、配列上部のチルダ(〜)により示される。EcoRI、PstIおよびXbaI制限酵素部位には下線を引いている。
図5は、発現プラスミドpED.dC.natEpoFc(パネルA)および天然EPO/Fcγ1インサート(パネルB)のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 9)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO: 10)についてのプラスミドマップを示す。天然EPOシグナルペプチド、およびFcγ1領域を含む成熟EPOは、配列上部のチルダ(〜)により示される。EcoRI、PstIおよびXbaI制限酵素部位には下線を引いている。
図5は、発現プラスミドpED.dC.natEpoFc(パネルA)および天然EPO/Fcγ1インサート(パネルB)のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 9)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO: 10)についてのプラスミドマップを示す。天然EPOシグナルペプチド、およびFcγ1領域を含む成熟EPOは、配列上部のチルダ(〜)により示される。EcoRI、PstIおよびXbaI制限酵素部位には下線を引いている。
図6は、カニクイザルの中央部気道に対してエアロゾルとして投与されたEPO-Fcに対するin vivo応答を示す、一対のグラフである。パネルAは、9頭の動物それぞれについての最大網状赤血球応答を示す。ネブライザーを使用して、エアロゾル化EPO-Fcを、自発呼吸している動物に対して投与した。パネルBは、浅い呼吸または深い呼吸により吸入した後の、EPO-Fc(天然Fcフラグメント)および変異EPO-Fc(FcRn結合に重要な3アミノ酸の変異を有するFcフラグメント)の最大血清濃度を示す。
図7は、20%肺活量(20%VC、浅い呼吸)および75%肺活量(75%VC、深い呼吸)でエアロゾル投与した後の、カニクイザルにおけるEPO-Fcの最大血清濃度を示すグラフである。
図8は、30μg/kg(丸)および10μg/kg(三角)の用量で20%肺活量でエアロゾル投与をした後の、カニクイザルにおけるEPO-Fcの時間に対する血清濃度を示すグラフである。それぞれの曲線は、1頭の動物由来のデータを示す。
図9は、IFN-α-FcまたはINTRON(登録商標)Aを、20μg/kgの用量で浅い呼吸を使用してエアロゾル投与した後の、カニクイザルにおける、時間に対するIFN-α-FcまたはIFN-α単独の血清濃度を示すグラフである。それぞれの曲線は、1頭の動物由来のデータを示す。
図10は、2μg/kgの用量で浅い呼吸を使用してIFN-α-Fcをエアロゾル投与した後の、カニクイザルにおける、時間に対するIFN-α-Fcの血清濃度を示すグラフである。
図11は、20μg/kgの用量で浅い呼吸を使用してIFN-α-Fcをエアロゾル投与した後の、IFN-α生物活性の2種の一般的な測定値であるオリゴアデニレート合成酵素(OAS)活性(パネルA)およびネオプテリン濃度(パネルB)を示す一対のグラフである。それぞれの曲線は、1頭の動物由来のデータを示す。
図12は、推定蓄積用量0.3〜0.5 mg/kgで浅い呼吸を使用してIFN-α-Fcをエアロゾル投与した後の、カニクイザルにおける、時間に対するENBREL(登録商標)(ヒトTNFR-Fc)の血清濃度を示すグラフである。それぞれの曲線は、1頭の動物由来のデータを示す。
図13は、浅い呼吸(パネルA)または深い呼吸(パネルB)を使用してエアロゾル投与を行った後の、カニクイザルにおける、時間に対するビオチン化SYNAGIS(登録商標)(完全ヒト化モノクローナル抗-RSV抗体)血清濃度を示す一対のグラフである。それぞれの動物は、推定蓄積用量0.6 mg/kgを受け入れた。それぞれの曲線は、1頭の動物由来のデータを示す。