JP2006351843A - 真空処理装置及びトンネル接合素子の製造方法 - Google Patents

真空処理装置及びトンネル接合素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 膜厚の安定化、ラジカルの濃度分布の均一化、及びプラズマダメージを抑制できる真空処理装置を提供する。また、当該真空処理装置を利用して、高品位のトンネル接合膜を有するトンネル接合素子の製造方法を提供する。
【解決手段】 真空チャンバ2と、プラズマから取り出されたラジカルを被処理基板7に曝すラジカル源3とを備える真空処理装置1であって、ラジカル源3は、被処理基板7との間に貫通孔を有する板体35を備え、ラジカル源3の外側には、高周波電流が流れる少なくとも一つの高周波アンテナ33と、当該高周波アンテナに流れる高周波電流と略直交する方向の磁場を発生すると共に、高周波アンテナに沿って設けられた少なくとも一つの磁場生成手段34とが設けられ、ラジカル源3における壁部30の内側の略全面は酸化物誘電体31,32からなることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、真空処理装置及びトンネル接合素子の製造方法に関し、特にトンネル接合磁気抵抗(Tunneling Magnetro-Resistive、以下TMRと称する)効果や、極薄い酸化膜での鏡面反射効果を用いた磁気ヘッド、或いは、MRAM(Magnetic Random Access Memory)等の電子・半導体デバイス製造プロセスに用いられる真空処理装置及びトンネル接合素子の製造方法に関するものである。
従来、TMRを利用したトンネル接合素子においては、極薄いアルミナ酸化膜を用いることが知られている。このような極薄酸化膜を形成する方法としては、予め基板表面上に堆積した極薄いアルミニウム金属膜を酸素ガス中に放置する方法(自然酸化法)や、酸素プラズマに曝したりする方法(プラズマ酸化法)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このうち、自然酸化法は、良質な酸化膜を形成することはできるが、反応速度が遅いために処理に時間を要してしまうという欠点を有している。また、プラズマ酸化法は、処理時間が短いものの、プラズマにより酸化膜がダメージを受け易くなるという欠点を有している。
このような欠点を解消する方法として、処理時間が比較的短く、酸化膜へのダメージを低減できる、ラジカル酸化法が量産技術として有望視されている。ラジカル酸化法においては、紫外線等を用いて酸素ラジカルを生成する方法があるが、高周波プラズマやマイクロ波プラズマを用いる方法が量産性に優れるという利点を有している。
特開平9−289193号公報
次に、図8を参照し、ラジカル酸化処理を行う真空処理装置について説明する。
真空処理装置201は、ラジカル源203、高周波電源に接続された高周波アンテナ204、誘電体部材で構成されたラジカル源203の壁部205、ステンレス製のチャンバ206、及び、小さな円形等の穴を蜂の巣状に設けたステンレス製円板のマルチアパーチャ207によって構成されている。また、マルチアパーチャ207に対向する位置には、ラジカル酸化処理が施される被処理基板208が配置され、当該被処理基板208の表面には極めて薄い金属膜がコーティングされている。また、ラジカル源203の壁部205の構成材料としては、高周波アンテナ204やマイクロ波導波管に対向する部分に石英やアルミナ等の誘電体部材が用いられ、他の部分はステンレスやアルミニウム等の金属部材が用いられるのが一般的である。
このような真空処理装置201においては、誘導結合プラズマを利用して酸素ラジカルを生成し、被処理基板208の金属膜を酸化させて、極薄の酸化膜を形成することが可能となっている。
ところで、このような真空処理装置201においては、ラジカル源203内に酸素プラズマが生成される際に、プラズマに曝されている壁部205のステンレスやアルミニウム等の金属部材表面が酸化することでプラズマ中の酸素が消費されてしまい、マルチアパーチャ207を通じて取り出される酸素ラジカル濃度が少なくなる。また、真空処理装置201の稼働時間が経過するに連れて、壁部205における金属部材表面の酸化膜の膜厚が厚くなり、金属部材表面に消費される酸素量が減少し、マルチアパーチャ207を通じて取り出される酸素ラジカル濃度が増加する。その結果、真空処理装置201の稼働時間が少ない場合では所定のプロセス条件によって被処理基板208に形成される酸化膜の膜厚が薄くなり、その稼働時間が経過するに連れて同一のプロセス条件によって被処理基板208に形成される酸化膜の膜厚が厚くなる。即ち、真空処理装置201における稼働時間の経時変化に起因し、複数の被処理基板208に対して酸化膜を安定した膜厚で酸化膜を形成できないという問題がある。
また、上記の真空処理装置201においては、誘導結合プラズマを用いているので、その特性に起因して高周波電場がラジカル源203内に広がり、プラズマ中の荷電粒子(酸素イオンと電子)がラジカル源203内に広がってしまう。また、マルチアパーチャ207によってプラズマの閉じ込め効果を狙っているものの、荷電粒子がラジカル源203内に閉じ込まれずにマルチアパーチャ207から漏れてしまい、被処理基板208に到達してしまう。従って、被処理基板208は、プラズマによるダメージを受け易くなるという問題がある。
また、ラジカル源203内において、被処理基板208の中央部に対応する位置のプラズマ濃度が高く、その周辺部に対応する位置のプラズマ濃度が低いという濃度分布が生じる。従って、荷電粒子と共に生成される酸素ラジカルの濃度も同様の濃度分布となり、この結果、被処理基板208上の酸化膜は不均一な膜厚分布で形成されてしまうという問題もある。
一方、トンネル接合素子は、上記の真空処理装置201によって製造される。具体的には、トンネル接合素子を構成するトンネル接合膜は極薄の酸化膜からなるものであり、当該酸化膜を形成するには、酸素ラジカルを利用した製造方法が適している。
ところが、被処理基板208からトンネル接合素子を量産的に製造するには、真空処理装置201のメンテナンスサイクルを長く維持しつつ、複数の被処理基板208の各々からトンネル接合素子を複数取りする必要がある。また、トンネル接合素子は、酸化膜の膜厚に対してトンネル電流が指数関数的に変化するという特性を有しているため、量産的に製造されるトンネル接合素子の回路抵抗のバラツキを抑制するには、酸化膜の膜厚均一化を実現することが重要な課題となる。
しかしながら、上記のように、真空処理装置201における稼働時間の経時変化に起因して複数の被処理基板208に形成される酸化膜を安定した膜厚で形成できないことや、1枚の被処理基板208における酸化膜の膜厚分布が不均一になることに起因して、量産的に形成されるトンネル接合素子の酸化膜が不均一になり、回路抵抗のバラツキが生じてしまうという問題がある。
更に、誘導結合プラズマによるダメージを回避できないという問題もあり、トンネル接合素子の酸化膜を良好に形成できないという問題もある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ラジカル濃度の経時変化を最小限にして安定な膜厚を得ることができ、ラジカルの濃度分布の均一化を実現でき、更には、プラズマダメージを抑制できる真空処理装置を提供することを目的とする。
また、複数の被処理基板における酸化膜の膜厚均一化、及び1枚の被処理基板における酸化膜厚分布の均一化を実現し、回路抵抗のバラツキが抑制され、良好なトンネル接合膜を有するトンネル接合素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題点を解決すべく、以下の手段を有する本発明を想到した。
即ち、本発明の真空処理装置は、真空チャンバと、プラズマから取り出されたラジカルを被処理基板に曝すラジカル源とを備える真空処理装置であって、前記ラジカル源は、前記被処理基板との間に貫通孔を有する板体を備え、前記ラジカル源の外側には、高周波電流が流れる少なくとも一つの高周波アンテナと、当該高周波アンテナに流れる高周波電流と略直交する方向の磁場を発生すると共に、前記高周波アンテナに沿って設けられた少なくとも一つの磁場生成手段とが設けられ、前記ラジカル源における壁部の内側の略全面は酸化物誘電体からなることを特徴としている。
このような構成においては、高周波アンテナに高周波電流が流れることにより、ラジカル源内にプラズマが生じる。この際、プラズマは、主として磁場生成手段によってラジカル源内に閉じ込まれる。従って、ラジカル源内にISM(Inductive Super Magnetron)によるプラズマを生じさせることが可能となる。また、本発明においては、ISMのみによってプラズマを閉じ込めるだけでなく、板体によってプラズマはラジカル源内に閉じ込まれる。また、板体には貫通孔が設けられているので、当該貫通孔からラジカルが取り出され、被処理基板はラジカルに曝される。
また、ラジカル源における壁部の内側の略全面は、酸化物誘電体からなるので、ラジカル源内のプラズマが酸化物誘電体に接触しても、壁部によってプラズマが消費されることが殆どないため、ラジカル濃度の減少が抑制される。
従って、本発明によれば、ISMによるプラズマの閉じ込め効果と、ラジカル濃度の減少を抑制する効果とを相乗的に得ることができる。更に、ISM高周波アンテナ及び磁場生成手段の位置や形状を調整し、プラズマ発生位置を最適化することや、板体の貫通孔の個数やその位置を最適化することによって、被処理基板に曝されるラジカル濃度の均一化を実現でき、被処理基板に形成される層膜(例えば、酸化膜)の膜厚を均一にすることができる。また、プラズマによるダメージも抑制できる。
また、真空処理装置における稼働時間の経過に伴うラジカル濃度の変動を抑制することができるので、長時間安定なラジカル濃度を得ることができる。従って、経時的に処理される複数の被処理基板に対して安定した膜厚で酸化膜等の層膜を形成することができる。
なお、本発明において、「壁部の内側の略全面」とは、壁部によるプラズマの消費が無視できる程度に、壁部の内側に酸化物誘電体が形成されていることを意味する。或いは、実質的に壁部の内側が酸化物誘電体からなることを意味する。
また、本発明の真空処理装置においては、前記壁部は、前記酸化物誘電体のバルク材からなることを特徴としている。
このようにすれば、ラジカル源内に生じるプラズマは、酸化物誘電体のバルク材からなる壁部に接触することとなる。この場合においても、プラズマが酸化物誘電体に接触して消費されることが殆どない。従って、ラジカル濃度の減少を抑制できる。
また、本発明の真空処理装置においては、前記ラジカル源の壁部のうち、上壁部の外側に前記高周波アンテナ及び前記磁場生成手段が設けられていることを特徴としている。
このようにすれば、上壁部の内側にプラズマを生じさせ、閉じ込めることができるので、上記と同様の効果が得られる。
また、本発明の真空処理装置においては、前記板体は、表面に酸化物誘電体が設けられた金属部材からなり、当該金属部材は、前記真空チャンバと同電位とされていることを特徴としている。
このようにすれば、板体をフローティングにした場合に比べ、プラズマにセルフバイアスがかからなくなり、貫通孔を通してのイオン引き出し作用が抑制されるので、ラジカル源からプラズマが漏れるのを更に抑制することができ、上記と同様の効果が得られる。
また、本発明のトンネル接合素子の製造方法は、トンネル接合膜を有するトンネル接合素子の製造方法であって、先に記載の真空処理装置を用いることにより、前記トンネル接合膜を形成することを特徴としている。
このようにすれば、真空処理装置における稼働時間の経時変化に起因することなく、処理される複数の被処理基板上にトンネル接合膜を安定した膜厚で形成することができる。また、1枚の被処理基板におけるトンネル接合膜の膜厚分布を均一にすることができる。これによって、回路抵抗のバラツキを抑制することができる。また、ISMによりラジカル源内にプラズマが閉じこまれるので、プラズマによるダメージを抑制することができ、高品位のトンネル接合膜を良好に形成できる。
以下、本発明の真空処理装置、及びトンネル接合素子の製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
(真空処理装置の第1実施形態)
まず、本発明の真空処理装置の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る真空処理装置を示す模式構成図である。図2は、真空処理装置におけるラジカル源の上面図である。図3は、真空処理装置のマルチアパーチャの一部を示す平面図である。
図1に示すように、真空処理装置1は、真空チャンバ2、ラジカル源3、電力供給部4、真空排気部5、及びテーブル6を主な構成要素として具備している。
次に、各構成要素について詳述する。
真空チャンバ2は、アルミニウムやステンレス等の金属容器であって、その内壁が誘電体膜によって覆われている。なお、当該真空チャンバ2がアルミニウムの金属容器からなる場合には、陽極酸化処理によってアルマイト膜が形成されている。
(ラジカル源)
ラジカル源3は、上壁部31と側壁部32からなる壁部30と、プラズマ生成用の高周波アンテナ33と、永久磁石(磁場生成手段)34と、テーブル6の側に設けられたマルチアパーチャ(板体)35とによって構成されている。
ここで、上壁部31及び側壁部32は、溶融石英(SiO)等の酸化物誘電体のバルク材からなるものである。また、酸化物誘電体としては、溶融石英以外にも、アルミナ(Al)を採用することができる。
また、高周波アンテナ33は、その一端に電力供給部4が接続されており、他端は接地されている。本実施形態では、一重のコイルによって高周波アンテナ33が構成されているが、多重のコイルによって構成されたものであってもよい。
また、永久磁石34は、高周波アンテナ33と上壁部31との間において、高周波アンテナ33と重なって配設されている。また、図2に示すように、永久磁石34は、高周波アンテナ33に沿って等間隔に配置され、電力供給部4から高周波アンテナ33に流れる高周波電流方向Iと実質的に直交する磁場Bを生じさせるようになっている。また、永久磁石34は、図1中の符号Hで示すような磁束線をラジカル源3の内部に形成し、磁場向配を大きく取ることが可能であり、誘導電場の働きで当該磁束線に沿ってプラズマを高密度に生じさせるようになっている。なお、永久磁石34によって発生される磁場は高周波アンテナ33に流れる高周波電流と正確に直交する方向である必要はなく直交方向に対して±30°以内の方向をもつようにすればよい。
また、マルチアパーチャ35は、表面にアルマイト処理ないしはアルミナ溶射処理が施されたアルミニウム製の金属板であり、図3に示すように蜂の巣状に多数設けられた円形の貫通孔35aを有している。また、マルチアパーチャ35の一部は、アルマイト処理或いはアルミナ溶射処理が施されておらず、金属板の露出部が形成されている。そして、当該露出部は、取り付けネジ等を通じて真空チャンバ2に導通しており、高周波電場がラジカル源3から漏れないようになっている。なお、本実施形態においては、貫通孔35aの形状を円形としているが、楕円状や矩形状のスリットであってもよく、これらスリットを放射状に設けた構成であってもよい。
また、ラジカル源3には、不図示のガス供給源が接続されている。これにより、ガス供給源から供給される任意のガスが、ラジカル源3内によってプラズマ化されるようになっている。本実施形態においては、酸素ガスがラジカル源3内に供給される。
このように構成されたラジカル源3は、所謂ISMを利用するものであり、その内部に生じるプラズマを閉じ込めて、マルチアパーチャ35の貫通孔35aからラジカルを取り出すようになっている。
また、電力供給部4は、マッチング回路41と高周波電源42とによって構成されており、マッチング回路41を介在させて高周波電源42の高周波電力を高周波アンテナ33に供給するようになっている。
また、真空排気部5は、真空ポンプ51と圧力調整バルブ52とからなり、真空チャンバ2内に供給されるガスを排気すると共に、真空チャンバ2内の圧力を所望に調整可能となっている。
また、テーブル6は、その上面に被処理基板7を保持するものである。当該被処理基板7は、その表面には酸化処理が施される極めて薄い金属膜がコーティングされている。また、被処理基板7は、テーブル6によって、ラジカル源3のマルチアパーチャ35に対向配置されており、ラジカル源3から取り出されたラジカルに曝されるようになっている。
次に、真空処理装置1によるラジカル酸化処理方法の一例について説明する。
まず、酸素ガス或いは酸素ガスとアルゴンガスの混合ガスをラジカル源3内に導入し、当該ラジカル源3内の圧力を10−1〜10−3Torr程度に調整する。この状態で、高周波アンテナ33に高周波電力を投入し、ラジカル源3内に酸素プラズマを発生させる。酸素プラズマは、主として永久磁石34の磁束線Hに伴わせて閉じ込められ、具体的には、上壁部31の内側において閉じ込められる。また、永久磁石34による閉じ込め効果だけでなく、マルチアパーチャ35によってもプラズマ中の荷電粒子がラジカル源3内に閉じ込められ、電気的に中性な酸素ラジカル及び中性酸素分子のみがマルチアパーチャ35の貫通孔35aを通過する。そして、マルチアパーチャ35に対向配置された被処理基板7の表面の金属膜が酸化され、極薄の金属酸化物膜が得られる。
次に、図4を参照し、真空処理装置の稼働時間(複数の被処理基板を処理するのに要する時間)と、所定のプロセス条件によって被処理基板に形成される酸化膜の膜厚の関係について説明する。また、図4においては、ラジカル源3の壁部30の構成材料を異ならせて酸化膜を形成した際の膜厚を比較した比較図である。
ここでは、酸化膜の均一性を評価するために、ベアのSi基板を用い、その表面を酸素ラジカルで酸化して得られたSiO膜の膜厚をエリプソメータで測定している。
図4において、横軸は真空処理装置の稼働時間(Time)を意味し、縦軸は酸化膜の膜厚の比較値(Normarized SiO2 Thickness)を意味している。
ここで、白丸に順ずる曲線は、基準条件を示しており、ラジカル源3の壁部30の全てが溶融石英のバルク材であるラジカル源の構成において、被処理基板7に形成された酸化膜の膜厚を意味している。
また、白四角に順ずる曲線は、比較条件Aにおける測定結果を示しており、上壁部31が陽極酸化アルミナ被覆ライナーであるラジカル源の構成において、被処理基板7に形成された酸化膜の膜厚を意味している。また、陽極酸化アルミナ被覆ライナーは、アルミニウム板を約1μmの陽極酸化膜が形成されたものである。
また、黒丸に順ずる曲線は、比較条件Bにおける測定結果を示しており、上壁部31がステンレスライナーであるラジカル源の構成において、被処理基板7に形成された酸化膜の膜厚を意味している。
図4から明らかなように、装置稼働時間が少ない場合において、比較条件Bの酸化膜が最も薄くなってしまうことが分かる。また、比較条件Aの膜厚は、比較条件Bよりも厚くなるものの、基準条件と比較して膜厚が薄いことが分かる。
また、装置稼働時間が増加するに応じて、比較条件A,B共に膜厚が厚くなり、稼働時間40hrを超えた辺りから比較条件Aの膜厚は一定となる。
このように、基準条件(壁部30全面に溶融石英のバルク材を用いる場合)においては、真空処理装置1の稼働時間が増加しても、酸化膜の経時変化が極めて小さくできることがわかる。比較条件A(側壁部32に陽極酸化アルミナ被覆ライナーを用いる場合)では、酸化膜の経時変化をある程度小さくすることが可能となるが、基準条件と比較すると不十分である。これは、陽極酸化アルミナ被覆ライナーの場合、陽極酸化膜には膜表面に無数の小さな空孔があり、そのトレンチ内表面(内壁・底部)に薄いアルミナ酸化膜が形成されている構造になっているため、アルミナ酸化膜にクラックがあるとそこからアルミニウム原子が表面に拡散してプラズマ中の酸素と反応し、酸化物を形成するためである。
他方、基準条件における溶融石英壁では酸化がそれ以上進まないので、容器壁に消費される酸素がないため、酸素ラジカル濃度の経時変化が殆どない。
次に、図5を参照し、本実施形態の真空処理装置1によって被処理基板7に形成される酸化膜の均一性について説明する。また、図5(a)は、従来の誘導結合ラジカル源を備える真空処理装置によって形成された酸化膜の均一性を示す図であり、図5(b)は、本実施形態のISMラジカル源を備える真空処理装置1によって形成された酸化膜の均一性を示す図である。
ここでは、酸化膜の均一性を評価するために、ベアのSi基板を用い、その表面を酸素ラジカルで酸化して得られたSiO膜の膜厚をエリプソメータで測定している。
図5において、横軸は被処理基板7の位置(position)を意味し、縦軸は酸化膜の膜厚の比較値(Normarized SiO2 Thickness)を意味している。
図5(a)に示すように、誘導結合ラジカル源の場合では、被処理基板7の中央部(positionが0mm近傍)から周辺部(positionが±100mm近傍)に向けて膜厚が薄いことが分かる。また、その均一性(uniformity)は、±10.1%となっている。
図5(b)に示すように、ISMラジカル源の場合では、被処理基板7の中央部(positionが0mm近傍)から周辺部(positionが±100mm近傍)に向けて膜厚が略均一になっていることが分かる。また、その均一性(uniformity)は、±4.1%となっている。
図5(a),(b)を比較して明らかなように、ISMラジカル源は、誘導結合ラジカル源と比較して膜厚の均一性の面で優れていることが明らかである。
これは、ISMラジカル源3において生成されるプラズマは、永久磁石34によってラジカル源3の側壁部32の方向に拡張されるので、プラズマの均一性が良好となる。その結果、荷電粒子と共に生成される酸素ラジカルの濃度も同じような濃度分布となり、最終的に被処理基板7上には良好な均一性の膜厚で酸化膜が形成されるためである。一方、誘導結合ラジカル源は、永久磁石34のような磁場生成手段を有していないため、本実施形態のような膜厚均一性を得ることができない。
上述したように、本実施形態の真空処理装置1においては、ラジカル源3内にISMによるプラズマを生じさせると共に、当該ISMプラズマに含まれるラジカルを利用して被処理基板7に酸化膜を形成することができる。特に、ラジカル源3内において、磁場の作用によってISMプラズマは閉じ込まれるので、マルチアパーチャ35からプラズマが漏れることがなく、ラジカルのみを取り出すことができる。従って、ISMによるプラズマの閉じ込め効果と、ラジカル濃度の減少を抑制する効果とを相乗的に得ることができる。これによって、被処理基板7に曝されるラジカル濃度の均一化を実現でき、被処理基板7に形成される酸化膜の膜厚を均一にすることができる。また、プラズマによるダメージも抑制できる。
また、真空処理装置1における稼働時間の経過に伴うラジカル濃度の変動を抑制することができるので、長時間安定なラジカル濃度を得ることができる。従って、経時的に処理される複数の被処理基板7に対して安定した膜厚で酸化膜を形成することができる。
また、酸化物誘電体からなる壁部30は、溶融石英のバルク材からなるので、真空処理装置1における稼働時間の経過に伴うラジカル濃度の変動を抑制することができる。
また、上壁部31の外側に高周波アンテナ33及び永久磁石34を備えているので、ラジカル源3の中でも上壁部31の内側にプラズマを生じさせ、閉じ込めることができる。また、マルチアパーチャ35は、真空チャンバ2と同電位となっているので、ラジカル源3からプラズマが漏れるのを抑制することができる。
なお、本実施形態においては、側壁部32として溶融石英のバルク材を採用しているが、これを限定するものではない。例えば、側壁部32として、その内側に酸化物誘電体バルク材のライナーが形成された金属部材を採用してもよい。この構成においても、酸化物誘電体の側壁部32において、酸素プラズマが消費されないので、酸素ラジカル濃度の経時変化が殆どない。
また、本実施形態においては、マルチアパーチャ35を表面に酸化物誘電体が設けられた金属部材としたが、酸化物誘電体のバルク材を用いてもよい。但し、この場合はプラズマの洩れを防ぐため、貫通孔35aの穴径を0.5mmφ程度と小さくする必要がある。
また、本実施形態においては、酸素ガスのプラズマから酸素ラジカルを取り出して被処理基板7に酸化膜を形成しているが、酸素ガス以外にも、窒素ガスを用いてもよく、また、塩素、フッ素等のハロゲン系ガスを用いてもよい。
(トンネル接合素子の製造方法)
次に、本発明の真空処理装置を利用したトンネル接合素子の製造方法について、図面を参照して説明する。
図6は、本発明の製造方法によって製造されるトンネル接合素子の側面断面図である。図7は、トンネル接合素子を用いたMRAMの概略構成図である。
(トンネル接合素子の構造)
図6に示すように、トンネル接合素子110は、PtMnやIrMn等からなる反強磁性層(不図示)、NiFeやCoFe等からなる強磁性層(固定層)114、Al(アルミナ)等からなるトンネルバリア層(トンネル接合膜)115、およびNiFeやCoFe等からなる強磁性層(フリー層)116を主として構成されている。実際には、上記以外の機能層も積層されて、15層程度の多層構造になっている。また、フリー層の膜厚を固定層の膜厚より薄く形成すれば、膜厚差を利用した保磁力差型のトンネル接合素子を形成することができる。
(MRAMの構造)
図7は、トンネル接合素子を用いたMRAMの概略構成図である。MRAM100は、MOSFET111およびトンネル接合素子110を、素子基板(被処理基板)105上にマトリクス状に整列配置して構成されている。上述したトンネル接合素子110の上端部はビット線102に接続され、その下端部はMOSFET111のソース電極またはドレイン電極に接続されている。また、MOSFET111のゲート電極は、読み出し用ワード線104に接続されている。一方、トンネル接合素子110の下方には、書き換え用ワード線106が配置されている。
図6に示すトンネル接合素子110では、固定層114の磁化方向は一定に保持され、フリー層116の磁化方向は反転しうるようになっている。これら固定層114およびフリー層116の磁化方向が平行か反平行かによって、トンネル接合素子110の抵抗値が異なるので、トンネル接合素子110の厚さ方向に電圧を印加した場合に、トンネルバリア層115を流れる電流の大きさが異なることになる(TMR効果)。そこで、読み出し用ワード線104によりMOSFET111をONにして、その電流値を測定することにより、「1」または「0」を読み出すことができるようになっている。また、書き換え用ワード線104に電流を供給して、その周囲に磁場を発生させれば、フリー層116の磁化方向を反転させることができる。これにより、「1」または「0」を書き換えることができるようになっている。
なお、固定層114およびフリー層116の磁化方向の組み合わせによるトンネル接合素子110の抵抗値の差は、一般的に非常に小さくなる。この抵抗値の微差を検出するには、アルミナ等の電気絶縁性材料からなるトンネルバリア層115の抵抗値を極力小さくする必要がある。そのため、トンネルバリア層115の膜厚は、酸化前の金属アルミニウムの膜厚で8〜12オングストロームと非常に薄く形成されている。
このようなトンネルバリア層115は、既述の実施形態に述べた真空処理装置1によって形成される。
まず、素子基板105上にNiFeやCoFe等からなる強磁性層114を形成し、当該強磁性層114上にアルミニウムを極薄の膜厚で形成する。その後、素子基板105を真空処理装置1に搬送し、テーブル6上に載置する。その後、ラジカル源3内に酸素ガスを供給すると共に、真空チャンバ2内の圧力が所定に設定される。そして、高周波アンテナ33に高周波電流が流れることにより、ラジカル源3内に酸素プラズマが生成される。また、当該プラズマは、永久磁石34によって閉じ込められる。また、永久磁石34による閉じ込め効果だけでなく、マルチアパーチャ35によってもプラズマ中の荷電粒子がラジカル源3内に閉じ込められ、電気的に中性な酸素ラジカル及び中性酸素分子のみがマルチアパーチャ35の貫通孔35aを通過する。そして、マルチアパーチャ35に対向配置された素子基板105の表面のアルミニウム薄膜が酸化され、極薄のトンネルバリア層115が得られる。
上述したように、本実施形態のトンネル接合素子の製造方法においては、真空処理装置1を用いてトンネルバリア層115を形成しているので、回路抵抗のバラツキが抑制されたトンネルバリア層115を製造することができる。
具体的には、真空処理装置1における稼働時間の経時変化に起因することなく、処理される複数の素子基板105上にトンネルバリア層115を安定した膜厚で形成することができる。また、1枚の素子基板105におけるトンネルバリア層115の膜厚分布を均一にすることができる。これによって、回路抵抗のバラツキを抑制することができる。また、ISMによりラジカル源3内にプラズマが閉じこまれるので、プラズマによるダメージを抑制することができ、高品位のトンネルバリア層115を良好に形成できる。
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
すなわち、各実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
本発明の第1実施形態に係る真空処理装置を示す模式構成図である。 本発明の第1実施形態に係る真空処理装置におけるラジカル源の上面図である。 本発明の第1実施形態に係る真空処理装置におけるマルチアパーチャの一部を示す平面図である。 真空処理装置の稼働時間と、所定のプロセス条件によって被処理基板に形成される酸化膜の膜厚の関係について説明する図である。 真空処理装置によって被処理基板に形成される酸化膜の均一性について説明する図である。 本発明の製造方法によって製造されるトンネル接合素子の側面断面図である。 本発明の製造方法によって製造されるトンネル接合素子を用いたMRAMの概略構成図である。 従来の真空処理装置を示す模式構成図である。
符号の説明
1…真空処理装置、2…真空チャンバ、3…ラジカル源、7…被処理基板、30…壁部(酸化物誘電体)、31…上壁部(酸化物誘電体)、32…側壁部(酸化物誘電体)、33…高周波アンテナ、34…永久磁石(磁場生成手段)、35…マルチアパーチャ(板体)、35a…貫通孔、110…トンネル接合素子、115…トンネルバリア層(トンネル接合膜)、I…高周波電流、B…磁場。

Claims (5)

  1. 真空チャンバと、プラズマから取り出されたラジカルを被処理基板に曝すラジカル源と、を備える真空処理装置であって、
    前記ラジカル源は、前記被処理基板との間に貫通孔を有する板体を備え、
    前記ラジカル源の外側には、
    高周波電流が流れる少なくとも一つの高周波アンテナと、
    当該高周波アンテナに流れる高周波電流と略直交する方向の磁場を発生すると共に、前記高周波アンテナに沿って設けられた少なくとも一つの磁場生成手段と、
    が設けられ、
    前記ラジカル源における壁部の内側の略全面は酸化物誘電体からなること、
    を特徴とする真空処理装置。
  2. 前記壁部は、前記酸化物誘電体のバルク材からなること、
    を特徴とする請求項1に記載の真空処理装置。
  3. 前記ラジカル源の壁部のうち、上壁部の外側に前記高周波アンテナ及び前記磁場生成手段が設けられていること、
    を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の真空処理装置。
  4. 前記板体は、表面に酸化物誘電体が設けられた金属部材からなり、
    当該金属部材は、前記真空チャンバと同電位とされていること、
    を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の真空処理装置。
  5. トンネル接合膜を有するトンネル接合素子の製造方法であって、
    請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の真空処理装置を用いることにより、前記トンネル接合膜を形成すること、
    を特徴とするトンネル接合素子の製造方法。




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