JP2006351627A - 永久磁石の多極着磁装置 - Google Patents

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照夫 清宮
Masutaro Suzuki
増太郎 鈴木
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Abstract

【課題】 極小径・多極といった着磁ピッチの狭いリング状永久磁石でも、着磁不足が生じず、着磁品質を高めることができ、低コストで強力な着磁作業を行えるようにする。
【解決手段】 強磁性体からなる多数のヨーク片32と界磁用永久磁石30とが、中央に被着磁物を挿入・抜出可能な筒状の被着磁物収容穴22が形成されるように交互に円周状に配列され、その円周状の配列構造を中心軸に対して垂直な断面で見たときに、各界磁用永久磁石は周方向に且つ隣り合う界磁用永久磁石の対向面が互いに同一磁極となる向きに磁化されており、それによって隣り合う界磁用永久磁石による磁束が間に位置する共通のヨーク片を通り、各ヨーク片の内周側端面に交互に発生するS極とN極による着磁磁界によって、被着磁物収容穴内の被着磁物が多極着磁される。
【選択図】 図2

Description

本発明は、永久磁石に多極着磁を施す装置に関し、更に詳しく述べると、中央に被着磁物収容穴が形成されるように、多数のヨーク片と界磁用永久磁石が円周状に配列され、各界磁用永久磁石は周方向に磁化されており、且つ隣り合う界磁用永久磁石の対向面が互いに同一磁極となるように配置されている構造の永久磁石の多極着磁装置に関するものである。この技術は、特に限定されるものではないが、例えば極小径ステッピングモータのロータに用いるリング状永久磁石の多極着磁などに有効である。
ラジアルギャップ方式の永久磁石ステッピングモータなどに組み込むリング状永久磁石ロータを多極着磁するには、一般にコイル通電方式の着磁装置が用いられている。この種の着磁装置は、例えば磁気ヨークに、被着磁物であるリング状永久磁石を挿入・抜出可能な被着磁物収容穴を設けると共に、該被着磁物収容穴の内壁面に軸方向に延びる溝を多数形成し、該溝内に絶縁被覆導線を埋設して、隣り合う絶縁被覆導線がつづら折れ状に連続してコイルを形成する構造である。被着磁物を被着磁物収容穴に挿入し、コンデンサに蓄えた電荷を瞬時に放出することで、コイルにパルス電流を流し、それによって発生する磁界により着磁を行っている。
周知のように、近年の電子機器の著しい小型化に対応して、それに使用するステッピングモータなども小型化・小径化が進んでいる。ロータとして用いるリング状永久磁石を多極着磁する際、上記のようなコイル通電方式の着磁装置を用いてパルス状の大きな電流を流すが、リング状永久磁石の小径化に伴い、着磁ピッチ(着磁極間距離)が狭くなり、配設するコイルの導線径が細くなって、導線に流せる電流値が制限されるため、十分な着磁特性が得られない問題が生じてきた。
このような問題を解決できる一つの手法として、複数の永久磁石を放射状に配置することによって中心部に複数の反転磁極を形成し、その中心部に被着磁物を配置することにより4極以上の多極着磁を行う方法が提案されている(特許文献1参照)。確かに、このような永久磁石方式の着磁装置の使用によって、被着磁物の磁極ピッチの狭小化に際して問題となる着磁不足は、ある程度改善できる。
しかし、最近のステッピングモータの小型化(小径化)・高性能化に対する要望は極めて大きい。例えば携帯映像機器のオートフォーカス機構などでは、高精細な画像を得るためにレンズアクチュエータを高精度で制御できる狭ピッチ多極着磁されたステッピングモータが重要な電子部品となっている。ここでは、ロータを構成するリング状永久磁石としては、例えば直径3mm以下、着磁極数が10極以上の狭ピッチ構造に対して、飽和着磁レベルの着磁特性というような要求がある。このような着磁構造に対しては、上記のような従来の着磁装置では着磁不足が生じる。
特開2001−268860号公報
本発明が解決しようとする課題は、極小径・多極といった着磁ピッチの狭いリング状永久磁石でも、着磁不足が生じず、着磁品質を高めることができ、低コストで強力な着磁作業を行える簡素な且つ小型の装置を提供することである。
本発明は、強磁性体からなる多数のヨーク片とそれと同数の界磁用永久磁石とが、中央に被着磁物を挿入・抜出可能な筒状の被着磁物収容穴が形成されるように交互に円周状に配列され、その円周状の配列構造を中心軸に対して垂直な断面で見たときに、各界磁用永久磁石は周方向に且つ隣り合う界磁用永久磁石の対向面が互いに同一磁極となる向きに磁化されており、それによって隣り合う界磁用永久磁石による磁束が間に位置する共通のヨーク片を通るようにし、各ヨーク片の内周側端面に交互に発生するS極とN極による着磁磁界によって、被着磁物収容穴内に挿入された被着磁物が多極着磁されるようにした永久磁石の多極着磁装置である。このように本発明では、界磁用永久磁石は、径方向に磁化されているのではなく、従って界磁用永久磁石の端部が着磁磁極となっているのではなく、周方向に磁化され、強磁性体のヨーク片を利用して磁束を集中させ、それによって被着磁物収容穴の内壁面となるヨーク片の内周側の端面を着磁磁極としており、その点に特徴がある。
本発明において、ヨーク片と界磁用永久磁石は、例えば、それぞれ放射状に延び、それらのいずれか一方もしくは両方は、円周状の配列構造を中心軸に対して垂直な断面で見たときに、内周側が狭く外周側が広がった台形状をなし、周方向で互いに密接するように配置する。特に、ヨーク片が平板状で、界磁用永久磁石が、中心軸に対して垂直な断面で見たときに内側が狭く外側が広がったほぼ台形状をなしている形状が好ましい。
本発明の多極着磁装置では、円周状に配列されている各界磁用永久磁石は、周方向に磁化され、その間に介在するヨーク片を利用して磁束を集中させ、被着磁物収容穴の内壁面のヨーク片先端部分が着磁磁極となるように構成されているので、極小径・多極といった着磁ピッチの狭いリング状永久磁石でも、着磁不足が生じ難く、着磁品質を高めることができ、低コストで強力な着磁が行える。
特にヨーク片を断面四角形状とし、界磁用永久磁石を断面台形状とすると、十分大きな磁石体積を確保しつつ被着磁物収容穴の内壁面のヨーク片先端部分を小さくできるため、着磁ピッチの狭小化に対応し易く、例えば直径3mm以下の極小径、10極以上の多極のリング状永久磁石の着磁に有効であるし、装置の簡素化や長寿命化を図ることができ、通電不要などにより運転コストを低減化できる利点も生じる。
図1は、本発明に係る多極着磁装置の一実施例を示す全体構成図であり、図2はその水平(x−x)断面図である。この多極着磁装置10は、全体が筒型をなし内周面が着磁面となっている構造である。被着磁物(リング状の永久磁石)12を保持する棒状の保持部材14が、多極着磁装置10を貫通して軸方向に相対的に移動可能に設置される。ここでは、多極着磁装置10が固定され、保持部材14が上下駆動機構16で上下方向に駆動されることで被着磁物12が移動するように構成されている。一般に、保持部材の方が軽量であるため、迅速に移動させ易いからである。勿論、保持部材を固定し、多極着磁装置を駆動機構で移動させるようにしてもよい。上下駆動機構16の動作(例えば、被着磁物の位置や停止時間など)は、制御部(図示せず)で制御される。
リング状の被着磁物12を保持する棒状の保持部材14は、下支え18と上押さえ20の組み合わせからなり、上下から被着磁物12を挾持する構造である。勿論、下支えのみでも保持は可能である。保持部材14が上下動することで、被着磁物12を被着磁物収容穴22内に挿入させたり、被着磁物収容穴22から取り出すことができる。
多極着磁装置10は、界磁用永久磁石30により発生する磁界を着磁磁界として被着磁物12に印加する永久磁石方式である。被着磁物12はリング状の永久磁石であり、図示の例は、それを10極着磁する構造である。多極着磁装置10は、中央に被着磁物を挿入・抜出可能な円筒状の被着磁物収容穴22が形成されるように、強磁性体からなる10枚のヨーク片32と10枚の界磁用永久磁石30が、それぞれ放射状に延びしかも円周状に等角度で配列されるように互いに密接した状態で交互に配列されている。ここでは、円周状の配列構造を中心軸に垂直な断面(x−x断面)で見て、各ヨーク片32は断面四角形の平板状をなしている。それに対して各界磁用永久磁石30は断面台形(内側が狭く外側が広がった形状)の板状をなし、該界磁用永久磁石30は厚み方向(台形の短辺あるいは長辺に平行な方向)に磁化されている。
それら界磁用永久磁石30が円周状に配置されていることから、全体として見ると、各界磁用永久磁石30は周方向に磁化されている状態となる。このとき、隣り合う界磁用永久磁石30は、それらの対向面が互いに同一磁極となるように配列され、接着剤などで結合一体化される。このような構造にすると、界磁用永久磁石30の体積を大きくできるばかりでなく、外周側を通る磁束を低減できるため、内周側を通る磁束が増大する。これによって、界磁用永久磁石30による磁束は、隣り合う界磁用永久磁石の間に位置する共通のヨーク片32を通って被着磁物収容穴22の内壁面に至り、被着磁物収容穴22の内壁面のヨーク片部分に着磁磁極が集中することになり、しかもS極とN極が交互に現れ、被着磁物12である永久磁石に対して効率よく着磁磁界を印加することができる。
被着磁物収容穴22内に挿入された被着磁物12は、ヨーク片32の内周側端面に現れている磁極による着磁磁界によって多極着磁される。図3に、製品40であるリング状永久磁石に施される多極着磁の状況を示す。
図4は、磁界解析シミュレーションにより被着磁物収容穴内での磁束密度を求めた結果であり、外径φが1.0mmの永久磁石を10極着磁する場合を示している。ここで横軸は永久磁石収容穴の内周面から中心に向かう距離G(mm)を表しており、縦軸はその測定位置での磁束密度B(mT)を表している。図4中、「本発明」とは、図2に示すように磁化方向が周方向の場合であり、「比較例」とは、磁化方向が径方向の場合である。なお、界磁用永久磁石にはSmCo磁石を、ヨーク材料としてはSUS材を使用した。図4から、本発明によって被着磁物に高い着磁磁界を印加することができ、より強力に着磁された永久磁石が得られることが分かる。
図5は、本発明に係る多極着磁装置の他の実施例を示す平面図である。この実施例は、円周状の配列構造を中心軸に垂直な断面で見たときに、各ヨーク片32は断面台形(内側が狭く外側が広がった形状)の板状をなし、それに対して各界磁用永久磁石30は断面四角形の板状をなしている。このような構造にすると、界磁用永久磁石30が平板構造となるので、製作しやすい利点が生じる。
図6は、本発明に係る多極着磁装置の更に他の実施例を示す平面図である。この実施例は、外周側を保持部材42で囲んだ例である。内側は、図2に示されているヨーク片32と界磁用永久磁石30の交互配列構造と同じである。このように保持部材42を配置することによって、保持部材42を利用してヨーク片32の位置決めを行ったり、接着や樹脂充填など結合、あるいは多極着磁装置の取り付けなどの補助的機能を持たせることもできる。
なお、本発明の多極着磁装置は、単独でも使用できるが、加熱装置と組み合わせ、被着磁物である永久磁石を、加熱装置によりそのキュリー点以上の温度まで加熱し、次いで多極着磁装置により着磁磁界を印加し、前記被着磁物を、そのキュリー点以上の温度からキュリー点未満の温度まで降温させつつ、その間、前記多極着磁装置により被着磁物に着磁磁界を印加し続けることにより永久磁石を効率よく均一に多極着磁する方法にも適用できる。この方法の採用によれば、より一層強力な高性能の永久磁石が得られる。また、多極着磁の磁極数は、必要とする製品の仕様に基づき、より多く(十数極以上)にすることも可能である。
本発明に係る多極着磁装置の一実施例を示す全体構成図。 その水平(x−x)断面図。 リング状永久磁石に施されている多極着磁の状況を示す説明図。 磁界解析シミュレーションの結果を示す説明図。 本発明に係る多極着磁装置の他の実施例を示す水平断面図。 本発明に係る多極着磁装置の更に他の実施例を示す水平断面図。
符号の説明
10 多極着磁装置
12 被着磁物
22 被着磁物収容穴
30 界磁用永久磁石
32 ヨーク片

Claims (2)

  1. 強磁性体からなる多数のヨーク片とそれと同数の界磁用永久磁石とが、中央に被着磁物を挿入・抜出可能な筒状の被着磁物収容穴が形成されるように交互に円周状に配列され、その円周状の配列構造を中心軸に対して垂直な断面で見たときに、各界磁用永久磁石は周方向に且つ隣り合う界磁用永久磁石の対向面が互いに同一磁極となる向きに磁化されており、それによって隣り合う界磁用永久磁石による磁束が間に位置する共通のヨーク片を通るようにし、各ヨーク片の内周側端面に交互に発生するS極とN極による着磁磁界によって、被着磁物収容穴内に挿入された被着磁物が多極着磁されるようにしたことを特徴とする永久磁石の多極着磁装置。
  2. ヨーク片と界磁用永久磁石とは、それぞれ放射状に延び、それらのいずれか一方もしくは両方は、円周状の配列構造を中心軸に対して垂直な断面で見たときに、内周側が狭く外周側が広がった台形状をなし、周方向で互いに密接するように配置されている請求項1記載の永久磁石の多極着磁装置。
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