JP2006349903A - 表示素子、表示方法、及び表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高解像度であり、フルカラー表示が可能な表示素子を提供することにある。
【解決手段】 表示素子が、少なくとも透光性を有する表示基板と、前記表示基板に間隙をもって対向する背面基板と、前記表示基板に設けられた第1の透明電極と、前記背面基板に設けられた第2の電極と、前記表示基板と前記背面基板との間の間隙を保持する間隙部材と、前記間隙部材に設けられた第3の電極と、前記第1の電極及び前記第2の電極または前記第3の電極に印加された電圧により形成された電界に応じて調光セル本体内を移動可能に封入され、分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子と、を有する調光セルを備える。
【選択図】 なし

Description

本発明は、表示素子、表示方法、及び表示装置に係り、特に、印加された電界に応じて移動する粒子を備えた表示素子、表示方法、及び表示装置に関する。
高度情報化社会の進展にともない電子ペーパーシステム、カラー表示システム、大面積表示システムへのニーズが増大している。これらを実現する技術としてCRT、液晶、EL、LED、プラズマなどの表示技術が開発されてきた。また、低消費電力で人間の目に違和感の少ない反射型表示システムの開発も検討されており、反射型液晶技術などが有力となっている。
一方、次世代電子ペーパーに対するニーズは大きいが、それを実現する有望な技術が確立されていないのが現状である。適用可能な候補方式としては、電気泳動方式、液晶方式、及び有機EL方式等が知られている。
電子ペーパーとして用いるには、薄型且つ軽量である事が必要であるが、液晶方式は、フィルター方式であるため、媒体の厚さと重さを薄く軽くすることが困難であり、有機EL方式は、自己発光性の為、メモリー性がなく用途の幅が制限されるという問題があった。
電気泳動方式を用いた方法としては、一対の電極間に分散媒及び電気泳動粒子を封入したマイクロカプセルを配送する方法(例えば、特許文献1参照。)や、磁性流体を内包したマイクロカプセルを使用した磁気泳動方式(例えば、特許文献2参照。)等が知られている。また、単一のマイクロカプセル中に複数の着色粒子を混合状態で配設し、この粒子を選択的に駆動する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、いずれの方法もマイクロカプセルを使用するため、微細なドット表示やフルカラー表示が困難であった。また、特許文献1では、同時表示できる色数としては2色であり多色表示は困難であった。また、特許文献3は、粒子を選択的に駆動することは原理的に困難であった。
また、所定間隙を開けて配置された一対の基板の面に沿って分割された複数の区画にほぼ等しい量ずつ帯電泳動粒子を配置し、分散媒を青色、帯電泳動粒子を黒色とする技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、特許文献4の技術によれば、従来のマイクロカプセルを使用する方式に比べて表示品質を向上させることはできるが、この構成においては、フルカラー化が困難であり、また、積層にしようとすると各層の粒子と組合せた減法混色法による色再現ができないため、並列にせざるを得ず、装置が複雑となる。
また、複数の色を表現するセルまたはマイクロカプセルを並列的に配設してカラー表示を行う方法が開示されているが(例えば、特許文献5参照。)、並列的に配設するため高解像度が得られにくく、また十分なコントラストが得られない。
また、光透過性を有する粒子/媒体を含む電気泳動部を縦方向に2層以上積層する方法が開示されている(例えば、特許文献6参照。)が、粒子を着色するためには染料を用いており、十分な着色濃度を得られない。
更に、電気泳動した微粒子を収容する複数の収容部を設ける方法が開示されているが(例えば、特許文献7参照。)、カラー表示をする場合、色の異なる粒子を並列的に配設しなければならないため、色再現性がなく、高コントラストが得られない。
さらに、重畳する位置に配置される2つの表示電極と、2つのコレクト電極と2種類の透光性の着色粒子とを含むセルを積層配置、または並列配置する方法が開示されているが(例えば、特許文献8参照。)、染料によって着色された比較的大きい粒子を使用しているため、充分な着色濃度が得られず、また着色剤の安定性が問題であった。
以上のとおり、電気泳動方式においても、高解像度、高反射率、カラー化の両立が問題であり、この解決方法が求められているのが実情であった。
特開昭64−86116号公報 特開平4−199085号公報 米国特許第6017584号明細書 特開2000−322004号公報 特開2000−35598号公報 特開2002−333643号公報 特開2002−162649号公報 特開2004−20818号公報
本発明は、上記事実を考慮して成されたものであり、高解像度且つフルカラー表示が可能な表示素子、表示方法、及び表示装置を提供することを目的とする。
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、下記構成の調光セル内に、分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子を備えることにより、上記課題を解決しうる表示素子、表示方法、及び表示装置を提供できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
上記目的を達成するための請求項1に記載の表示素子は、少なくとも透光性を有する表示基板と、前記表示基板に間隙をもって対向する背面基板と、前記表示基板に設けられた第1の透明電極と、前記背面基板に設けられた第2の電極と、前記表示基板と前記背面基板との間の間隙を保持する間隙部材と、前記間隙部材に設けられた第3の電極と、前記第1の透明電極及び前記第2の電極、または前記第3の電極に印加された電圧により形成された電界に応じて調光セル本体内を移動可能に封入され、分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子と、を有する調光セルを備えたことを特徴としている。
請求項1に記載の表示素子は、調光セルを備えている。調光セルは、少なくとも透光性を有する表示基板と、表示基板と間隙ともって対向する背面基板と、表示基板と背面基板との間の間隙を保持する間隙部材と、の間に、電荷移動性微粒子が封入されている。表示基板には、第1の透明電極が設けられ、背面基板には、第2の電極が設けられ、間隙部材には、第3の電極が設けられている。第1の透明電極と、第2の電極とは、表示基板と背面基板との間の電荷移動性微粒子に電界を与えるためのものである。電荷移動性微粒子は、分散状態で発色性を呈し、第1の透明電極と第2の電極への電圧の印加、または第3の電極への電圧の印加によって、調光セル内を表示基板、背面基板、及び間隙部材の何れかの側へと移動する。詳細には、電荷移動性微粒子は、第1の透明電極と第2の電極へ電圧が印加されると、与えられた電界に応じて表示基板側及び背面基板側の何れか一方に移動し、分散状態に呈する色とは異なる色を呈する。また、第3の電極に電圧が印加されると、電荷移動性微粒子は、間隙部材側へと移動するため、表示基板側からは背面基板の色が観察される。
このように、下記構成の調光セル内に、分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子を備え、電圧を印加しない状態では分散状態にある電荷移動性微粒子を、第1の透明電極及び第2の電極、または第3の電極へ電圧が印加されることによって表示基板側、背面基板側、または間隙部材側に移動させることによって、電荷移動性微粒子の状態に応じた色を調光セルに提示することができ、高解像度且つフルカラー表示が可能な表示素子を提供することができる。
請求項2に記載の表示素子では、前記調光セルは、前記表示基板及び前記背面基板の何れか一方に前記電荷移動性微粒子を移動させる第1の状態、前記間隙部材に前記電荷移動性微粒子を移動させる第2の状態、及び前記調光セル内に前記電荷移動性微粒子を分散させる第3の状態の何れかの状態となるように、前記第1の透明電極及び前記第2の電極、または前記第3の電極に電圧が印加されることにより異なる色を呈することができる。
このため、高解像度且つフルカラー表示が可能な表示素子を提供することができる。
なお、請求項3に記載の表示素子は、請求項1または請求項2に記載の表示素子において、前記第3の電極は、透明電極としてもよい。
第3の電極を透明電極とすることによって、第3の電極による表示素子の視認性低下を抑制することができる。
また、請求項4に記載の表示素子は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の表示素子において、前記第2の電極は、透明電極とすることによって、第2の電極による表示素子の視認性の低下を抑制することができる。
請求項5に記載の表示素子は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の表示素子において、前記調光セルを複数備えるようにしてもよい。
請求項6に記載の表示素子は、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の表示素子において、分散状態で互いに異なる色の発色性を呈する電荷移動性微粒子を含む複数の前記調光セルが該調光セルの厚み方向に直交する方向に配列された配列単位調光セルを備えることができる。
配列単位調光セルを備えることにより、例えば、表示素子に表示する画像の画素単位や複数の画素を1単位として、これらの単位に対応するように配列単位調光セルを備えるようにすれば、高解像度且つフルカラー表示が可能な表示素子を提供することができる。
請求項7に記載の表示素子は、請求項6に記載の表示素子において、前記配列単位調光セルが、該配列単位調光セルの厚み方向に直交する方向に配列されるようにしてもよい。
このように、配列単位調光セルを、配列単位調光セルの厚み方向に直交する方向に配列し、表示素子に表示する画像の画素単位や複数の画素を1単位として、これらの単位に対応するように配列単位調光セルを備えるようにすれば、高解像度且つフルカラー表示が可能な表示素子を提供することができる。
請求項8に記載の表示素子は、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の表示素子において、分散状態で互いに異なる色の発色性を呈する電荷移動性微粒子を含む複数の前記調光セルが該調光セルの厚み方向に積層された積層単位調光セルを備えることができる。
このように、積層単位調光セルを備えるようにすれば、表示素子に表示する画像の画素単位や複数の画素を1単位として、これらの単位に対応する積層単位調光セルによって、高解像度且つフルカラー表示が可能な表示素子を提供することができる。
請求項9に記載の表示素子は、請求項8に記載の表示素子において、前記積層単位調光セルが、該積層単位調光セルの厚み方向に直交する方向に配列されるようにしてもよい。
請求項10に記載の表示素子は、請求項8または請求項9に記載の表示素子において、前記積層単位調光セルに含まれる複数の調光セルの内、最下層の調光セルの上層側に積層された調光セルは、少なくとも透光性を有する背面基板を有するようにすればよい。
請求項11に記載の表示素子では、請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の表示素子において、前記調光セルは、分散状態で緑色の光を反射する電荷移動性微粒子、分散状態で赤色の光を反射する電荷移動性微粒子、及び分散状態で青色の光を反射する電荷移動性微粒子の何れかの電荷移動性微粒子を有するようにすれば、高解像度且つフルカラー表示が可能な表示素子を提供することができる。
請求項12に記載の表示素子は、請求項1乃至請求項11に記載の表示素子において、前記背面基板は、少なくとも該背面基板を含む前記調光セル内に封入された電荷移動性微粒子が分散状態で発色する色とは異なる色に予め着色された着色基板とすることができる。このため、解像度且つフルカラー表示が可能な表示素子を提供することができる。
請求項13に記載の表示素子は、請求項1から請求項12の何れか1項に記載の表示素子において、前記電荷移動性微粒子が高分子樹脂中に分散されていることを特徴とする。
請求項14に記載の表示素子は、請求項1から請求項13の何れか1項に記載の表示素子において、前記電荷移動性微粒子がプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子であることを特徴とする。
請求項15に記載の表示素子は、請求項14に記載の表示素子において、前記金属コロイド粒子が金又は銀であることを特徴とする。
請求項16に記載の表示素子は、請求項1から請求項15の何れか1項に記載の表示素子において、前記電荷移動性微粒子の体積平均粒径が1〜100nmの範囲内であることを特徴とする。
請求項17に記載の表示素子は、請求項1から請求項17の何れか1項に記載の表示素子において、前記電荷移動性微粒子の体積平均粒径が2〜50nmの範囲内である。
なお、下記表示方法を実行によって、高解像度且つフルカラー表示が可能な表示方法を提供することができる。詳細には、請求項18に記載の表示素子は、請求項1から請求項17の何れか1項に記載の表示素子を用いた表示方法であって、電圧印加手段が、前記第1の透明電極及び前記第2の電極に電圧を印加することによって前記表示基板及び前記背面基板の何れか一方に前記電荷移動性微粒子を移動させて前記調光セルを黒色に発色させ、前記第3の電極に電圧を印加することによって前記間隙部材に前記電荷移動性微粒子を移動させて前記調光セルを前記背面基板の色に発色させ、前記第1の透明電極、前記第2の電極、及び前記第3の電極への電圧印加を禁止することによって前記調光セル内に前記電荷移動性微粒子を分散させて、前記調光セルを該電荷移動性微粒子の分散状態に応じた色に発色させる。
請求項19に記載の表示装置は、請求項1乃至請求項17の何れか1項に記載の表示素子と、前記各調光セルに備えられた第1の透明電極、第2の電極、及び第3の電極各々に独立して電圧を印加するための電圧印加手段と、を備えたことによって、高解像度且つフルカラー表示が可能な表示装置を提供することができる。
本発明に係る表示素子、表示方法、及び表示装置によれば、少なくとも透光性を有する表示基板と、表示基板に間隙をもって対向する背面基板と、表示基板に設けられた第1の透明電極と、背面基板に設けられた第2の電極と、表示基板と前記背面基板との間の間隙を保持する間隙部材と、間隙部材に設けられた第3の電極と、第1の透明電極及び第2の電極、または第3の電極に印加された電圧により形成された電界に応じて調光セル本体内を移動可能に封入され、分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子と、を有する調光セルを備えたので、高解像度且つフルカラー表示が可能な表示素子及び表示方法を提供することができる、という効果が得られる。
本発明の表示素子は、少なくとも透光性を有する表示基板と、前記表示基板に間隙をもって対向する背面基板と、前記表示基板に設けられた第1の透明電極と、前記背面基板に設けられた第2の電極と、前記表示基板と前記背面基板との間の間隙を保持する間隙部材と、前記間隙部材に設けられた第3の電極と、前記第1の電極及び前記第2の電極または前記第3の電極に印加された電圧により形成された電界に応じて調光セル本体内を移動可能に封入され、分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子と、を有する調光セルを備えることによって、高解像度でフルカラー表示が可能な表示素子を提供することができる。
また、上記表示素子を備えることによって、高解像度でフルカラー表示が可能な表示装置を提供することができる。
以下、一部図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<表示装置>
図1に示すように、本発明の表示装置50は、表示素子12及び電圧印加部14を備えている。表示素子12は、画像を表示するためのものであり、電圧印加部14に電気的に接続された調光セル10を備えている。電圧印加部14は、調光セル10を駆動し、画像情報に応じて調光セル10に選択的に電圧を印加する。
調光セル10は、視認方向側Xに設けられた透明な表示基板16、表示基板16と微少間隙をもって対向する背面基板18、これらの基板間を所定間隔に保持するための間隙部材20、及びこれらの表示基板16、背面基板18、及び間隙部材20内に封入された電荷移動性微粒子32及び分散媒34を含む分散液36が封入されている。
背面基板18は、支持基板22上に、酸化チタン微粒子を混合して白色化したPET薄膜24が積層されて構成されている。なお、本実施の形態では、背面基板18は白色に着色されている場合を説明するが、表示基板12の用途や封入する電荷移動性微粒子32に応じて、異なる色に着色するようにしてもよいし、また、PET薄膜が形成されてなくても良い。
表示基板16及び支持基板22としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコーン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板、金属基板、セラミック基板等の無機基板などが好ましく用いられ、少なくとも基板の一方が光透過性であることが好ましい。また、透過型の光学素子として用いる場合には、少なくとも50%以上の光透過率を有する基板が好ましく用いられる。
表示基板16及び背面基板18の、厚み方向の長さ(厚み)及び厚み方向に直交する方向の長さ(幅)は、特に限定されるものではないが、一般的には厚み及びセル1つの幅は小さい方が、表示素子の軽量化、可撓性、解像度の観点より有効であり、通常厚みは50μm〜1mm、幅は10μm〜1mmであることが好ましい。
表示基板16には、ライン状の透明電極(以下、第1の透明電極という)28が積層されている。また、背面基板18上には、ライン状の透明電極(以下、第2の電極という)26が形成されている。
第1の電極28及び第2の電極26としては、酸化錫−酸化インジウム(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛などに代表される金属酸化物層が形成されたものが好ましく用いられる。また、反射型光学素子として用いる場合には、第1の電極28及び第2の電極26の内、視認される方向(X方向)から見て遠い方に位置する第2の電極26として用いられる材料としては、上記金属酸化物層の他に、導電性高分子や、カーボン、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、プラチナなどに代表される金属層を用いることができる。
第1の電極28及び第2の電極26としては、上記材料を単独あるいは複数種の材料を積層して用いることもできる。また、第1の電極28及び第2の電極26を、共に透明電極とした場合には、透過型の表示素子として利用することができる。
第2の電極26は、支持基板22上にITO導電膜をスパッタリング法により成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチング法によりライン状にパターニングした。なお、第2の電極26のライン幅及びライン厚は、表示素子によって様々な値とすることができ、特に限定されるものではないが、ライン幅は、10μm〜1mm程度が好ましく、ライン厚は、10nm〜5μm程度が好ましい。
同様に、第1の電極28は、第2の電極26と同様に、表示基板16上にITO導電膜をスパッタリング法により成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチング法によりライン状にパターニングした。なお、第1の電極28のライン幅及びライン厚は、表示素子によって様々な値とすることができ、特に限定されるものではないが、ライン幅は、10μm〜1mm程度が好ましく、ライン厚は、10nm〜5μm程度が好ましい。
なお、第1の電極28と第2の電極26は、調光セル10が形成されたときに、各々のラインが直交するように配置される。また、調光セル10に設けられた一対の間隙部材20各々に設けられた第3の電極30は、互いに対向するように配設される。
間隙部材20は、表示基板16の透明性を損なわないように形成される。本実施の形態では、間隙部材20は、背面基板18上に、光感光性ポリイミドワニスを用いて間隙部材20のための層を塗布した後、露光、及びウェットエッチングにより、ラインパターンニングされたITO膜(第2の電極26)の両端に形成されている。間隙部材20の対向面には、第3の電極30が形成される。
間隙部材20の厚さ方向の長さ(調光セル10の積層方向(厚み方向)の長さ)は、特に限定されるものではないが、2μm〜1mm程度であることが好ましい。
また、間隙部材20の幅方向の長さ(調光セル10の積層方向に直交する方向の長さ)は、特に限定されるものではないが、一般的には幅方向の長さは小さい方が表示素子12の解像度の観点より有効であり、通常、1μm〜1mm程度であることが好ましい。
第3の電極30は、上記第1の電極28及び第2の電極26と略同様に、酸化錫−酸化インジウム(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛などに代表される金属酸化物層が形成されたものや、上記金属酸化物層の他に、導電性高分子や、カーボン、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、プラチナなどに代表される金属層を用いることができる。
なお、間隙部材20は、表示基板16と背面基板18との間を、表示基板16上に形成された第1の電極28と、背面基板18上に形成された第2の電極26とが交差する交点部に対応する領域を複数含むように設けられている。
間隙部材20の材料としては、特に限定されず、公知の感光性樹脂を用いるようにしてもよい。また、第3の電極30として、隔壁の機能を有するような材料を間隙部材20として用いた場合には、第3の電極30の構成材料と同一であってもよい。
なお、間隙部材20は、背面基板18に熱硬化性エポキシ樹脂をスクリーン印刷によって所望のパターン形状に塗布し、これを加熱硬化させ、さらに必要な高さになるまでこの工程を繰り返すことによって形成してもよい。また、間隙部材20は、射出圧縮成形やエンボス加工、熱プレス加工などによって所望の表面形状に形成した熱可塑性フィルムを背面基板18に接着することで形成することもできる。また、エンボス加工や熱プレル加工によれば、間隙部材20を背面基板18と一体成形とすることも可能である。もちろん、透明性を損なわなければ、表示基板16に間隙部材を形成してもよいし、表示基板16と一体成形してもよい。
本実施の形態では、第3の電極30が互いに対向する方向に積層された一対の間隙部材20が形成された背面基板18上に、表示基板16の第1の電極28が形成された側を間隙部材20側にして、表示基板16と間隙部材20との接合面に接着剤を塗布した。
次に、表示基板16、背面基板18、及び間隙部材20内に、詳細を後述する電荷移動性微粒子32及び分散媒34を含む分散液36を充填した後に、表示基板16に、上記接合面に塗布した接着剤の性質に応じた処理(熱融着性の接着剤であれば熱を加える処理)を行い間隙部材20と表示基板16とを接着することにより、調光セル10を形成した。
なお、接着剤としては、熱融着性の接着剤、熱硬化性樹脂、紫外光硬化性樹脂等を使用することができるが、間隙部材20及び表示基板16及び背面基板18の材料に影響を与えない材料が選択されればよい。
なお、表示基板16が、本発明の表示基板に相当し、背面基板18が、本発明の表示素子の背面基板に相当し、間隙部材20が、本発明の間隙部材に相当する。また、第1の電極28が、本発明の表示素子の第1の電極に相当し、第2の電極26が、本発明の第2の電極に相当し、第3の電極30が、本発明の第3の電極に相当する。このとき、第1の電極28と第2の電極26は、第3の電極30と接触していては選択的に電圧を印加することができないので、接触しないように形成しなければならない。
(電荷移動性微粒子)
本発明の調光セル10は、分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子を有する構成である。その他、必要に応じて絶縁性液体、高分子樹脂、高分子量顔料分散剤等を添加することができる。
上記「分散状態で発色性を呈する」とは、電荷移動性微粒子が媒体に分散されている状態で目視により観測できる色相を呈することをいう。
色相は、前記電荷移動性微粒子、特に金属コロイド粒子の金属及びその形状や粒径(体積平均粒径)等を変化させることにより多彩とすることができる。
金コロイド等の金属コロイドによる発色は、電子のプラズマ振動に起因し、プラズモン吸収と呼ばれる発色機構によるものである。このプラズモン吸収による発色は、金属中の自由電子が光電場により揺さぶられ、粒子表面に電荷が現れ、非線形分極が生じるためであるとされている。この金属コロイドによる発色は、彩度や光線透過率が高く、耐久性等に優れている。このような金属コロイドによる発色は、粒径が数nm〜数十nm程度の、いわゆるナノ粒子において見られるものであり、着色材としては、粒径分布が狭いコロイドであることが有利である。
−電荷移動性微粒子−
電荷移動性微粒子としては、分散状態で発色性を呈し、かつ、電界(電圧)を印加することにより移動性を有する微粒子であることが必要であり、それ以外については特に限定されるものではないが、中でも、着色性、安定性の観点からプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子であることが好ましい。以下、金属コロイド粒子を例に記載するがこれに限定されるものではない。
金属コロイド粒子の金属としては、貴金属又は銅等(以下、合わせて「金属」という。)が挙げられ、前記貴金属としては特に限定されず、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。前記金属の中でも、金、銀、白金が好ましい。
金属コロイド粒子は、金属イオンを還元して金属原子、金属クラスターを経てナノ粒子に調製する化学的方法や、バルク金属を不活性ガス中で蒸発させて微粒子となった金属をコールドトラップなどで捕捉し、ポリマー薄膜上に真空蒸着させて金属薄膜を形成した後に加熱して金属薄膜を壊し、固相状態でポリマー中に金属微粒子を分散させる物理的方法が知られている。化学的方法は、特殊な装置を使わなくても良く、本発明の金属コロイド粒子調製に有利であるため、一般例を後述するが、これらに限定されるものではない。
前記金属コロイド粒子は、前記金属の化合物から形成される。該金属の化合物としては、前記金属を含むものであれば特に限定されず、例えば、塩化金酸、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)等を挙げることができる。
金属コロイド粒子は、上記金属の化合物を溶媒に溶解した後、金属に還元して分散剤で保護された金属コロイド粒子の分散液として得ることができるが、この分散液の溶媒を除去して固体ゾルの形態で得ることもできる。これら以外のいずれの形態であってもよい。
金属の化合物を溶解する際、後述の高分子量顔料分散剤を用いることも可能である。高分子顔料分散剤を用いることにより前記分散剤で保護された安定な金属コロイド粒子として得ることができる。
本発明において金属コロイド粒子を用いる場合、前記で得られた金属コロイド粒子の分散液として用いても、また、前記の溶媒を除去した固体ゾルを溶媒に再分散させて使用することもでき、本発明においては特に限定されるものではない。
前記金属コロイド粒子の分散液として用いる場合、前記調製時の溶媒としては、後述の絶縁性液体であることが好ましい。また、前記固体ゾルを再分散して用いる場合、固体ゾル調製時の溶媒としては、いずれの溶媒を用いることができ、特に限定されるものではない。再分散する際の溶媒としては、後述の絶縁性液体であることが好ましい。
電荷移動性微粒子の体積平均粒径としては、1〜100nmであることが好ましく、5〜50nmであることが特に好ましい。
電荷移動性微粒子の体積平均粒径が、上記範囲外(100nmより大きい場合、或いは、1nmより小さい場合)では、プラズモン吸収による発色が得られにくくなり、良好な色強度が得られない、という問題がある。1〜100nmの範囲内とすることにより、実用的で色の強さが良好な点で有意である。特に、2〜50nmの範囲にあると、沈降を防ぎ、色の強さをより向上させることができる。そのため、視野角依存性をより低くし、コントラストをより向上させることができる。
また、金属コロイド粒子は、その金属の種類や形状、体積平均粒径により、様々な色に発色させることができる。そのため、金属の種類や、形状、体積平均粒径を制御した前記電荷移動性微粒子を用いることにより、RGB発色、またはYMC発色を含む様々な色相を得ることができ、本発明の表示素子をカラー表示素子とすることができる。更に、金属及び得られる金属コロイド粒子の形状や粒径制御によりフルカラー方式の表示素子とすることができる。
RGB方式の場合のR、G、Bそれぞれの色を呈するための金属コロイド粒子の体積平均粒径としては、用いる金属や、粒子の調製条件、形状等に依存するため、特に限定することができないが、例えば、金コロイド粒子の場合、体積平均粒径は大きくなるに従って、R発色、G発色、B発色を呈する傾向にある。
本発明における体積平均粒径の測定方法としては、粒子群にレーザ光を照射し、そこから発せられる回折、散乱光の強度分布パターンから平均粒径を測定する、レーザ回折散乱法を採用する。
調光セル中の全質量に対する電荷移動性微粒子の含有量(質量%)としては、所望の色相が得られる濃度であれば特に限定されるものではなく、調光セルの厚さ(すなわち、表示基板16と背面基板18との間隔)により含有量を調整することが、表示素子12としては有効である。即ち、所望の色相を得るために、調光セルが厚い場合には含有量は少なく、調光セルが薄い場合には含有量を多くすることができる。一般的には、0.01〜50質量%である。
前記金属コロイド粒子の調製は、例えば、文献「金属ナノ粒子の合成・調製、コントロール技術と応用展開」(技術情報協会出版、2004年)に記載されている一般的な調製方法にて金属コロイド粒子を調製することができる。以下に、その一例を説明するが、これに限定されるものではない。
−固体ゾル−
以下に、前記金属コロイド粒子の調製における金属の固体ゾルの一例について説明する。
本発明における金属の固体ゾルにおいて、着色性の観点から、上記金属のコロイド粒子は、後述の高分子量顔料分散剤1kgあたり、50mmol以上含有されることが好ましい。上記金属のコロイド粒子が50mmol未満であると、着色性が不充分となる。より好ましくは、100mmol以上である。
本発明における金属の固体ゾルにおいて、金属のコロイド粒子は、体積平均粒径が1〜100nmであることが好ましい。1nm未満であると、着色力が低く、100nmを超えると、彩度が低くなる。また、本発明における金属の固体ゾルは、狭い粒度分布を示すものであることが好ましい。粒度分布が広いものであると、彩度が低くなるので好ましくない。
本発明における金属の固体ゾルは、彩度が高く、金属のコロイド粒子を高い濃度で含有しているので、着色性が良好である。また、本発明における金属の固体ゾルは、樹脂等の高分子樹脂(バインダー)との相溶性が良好であり、このような高分子樹脂(バインダー)に添加しても安定で凝集せず、充分な着色性を有している。必要に応じてその他の添加物を添加することもできる。更に、適当な溶媒に溶解して、ヒドロゾルやオルガノゾルとした形態も用いることができる。
−固体ゾルの製造方法−
前記金属の固体ゾルの製造方法の一例を以下に述べるがこれに限定されるものではない。すなわち、金属の化合物を溶媒に溶解し、高分子量顔料分散剤を加えた後、金属に還元して上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子を形成し、その後、上記溶媒を除去することにより固体ゾルとするものである。
前記製造方法において、上記金属の化合物は、溶媒に溶解して使用される。溶媒としては上記金属の化合物を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、水、アセトン、メタノール、エチレングリコール等の水可溶性有機溶媒等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、水及び水可溶性有機溶媒を併用することが好ましい。
上記溶媒が水及び水可溶性有機溶媒からなる混合溶媒である場合、まず、上記金属の化合物を水に溶解した後、水可溶性有機溶媒を添加して溶液とすることが好ましい。このとき、上記金属の化合物は、50mM以上となるように水に溶解されることが好ましい。50mM未満であると、金属のコロイド粒子を高い割合で含有した固体ゾルを得ることができない。より好ましくは、100mM以上である。
金属として銀を使用する場合、上記水溶液は、pH7以下であることが好ましい。pHが7を超えると、例えば、上記銀の化合物として硝酸銀を用いる場合、銀イオンを還元する際に酸化銀等の副生成物が生成し、溶液が白濁するので好ましくない。上記水溶液のpHが7を超える場合には、例えば、0.1N程度の硝酸等を添加して、pHを7以下に調整することが好ましい。
上記水可溶性有機溶媒は、上記金属の化合物を溶解する水に対して、体積比が1.0以上となるように添加することが好ましい。1.0未満であると、水不溶性の高分子量顔料分散剤が溶解しない。より好ましくは、5.0以上である。
本発明における金属コロイド粒子の調製においては、上記金属の化合物の溶液に高分子量顔料分散剤を添加することも有効である。上記高分子量顔料分散剤は、上記溶媒が水及び水可溶性有機溶媒からなる混合溶媒である場合には、水不溶性のものであることが好ましい。水溶解性であると、水可溶性有機溶媒を除去して固体ゾルを得る際に、コロイド粒子を析出させるのが困難となる。上記水不溶性の高分子量顔料分散剤としては、例えば、ディスパービック161、ディスパービック166(ビックケミー社製)、ソルスパース24000、ソルスパース28000(ゼネカ社製)等を挙げることができる。
上記高分子量顔料分散剤の添加量は、上記金属100質量部に対して20〜1000質量部が好ましい。20質量部未満であると、上記金属のコロイド粒子の分散性が不充分であり、1000質量部を超えると、塗料や樹脂成型物に配合した際に、バインダー樹脂に対する高分子量顔料分散剤の混入量が多くなり、物性等に不具合を生じやすくなる。より好ましくは、50〜650質量部である。
本発明における金属コロイド粒子の調製においては、上記金属の化合物の溶液に上記高分子量顔料分散剤を添加した後、金属のイオンを還元する。上記還元の方法としては特に限定されず、例えば、化合物を添加して化学的に還元する方法、高圧水銀灯を用いた光照射により還元する方法等を挙げることができる。
上記化合物としては特に限定されず、例えば、従来から還元剤として使用されている水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩;ヒドラジン化合物;クエン酸又はその塩、コハク酸又はその塩等を使用することができる。また、本発明においては、上記還元剤のほかに、アミンを使用することができる。
上記アミンは、上記金属の化合物の溶液にアミンを添加して攪拌、混合することによって、金属イオン等が常温付近で金属に還元される。上記アミンを使用することにより、危険性や有害性の高い還元剤を使用する必要がなく、加熱や特別な光照射装置を使用することなしに、5〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度の反応温度で、金属の化合物を還元することができる。
上記アミンとしては特に限定されず、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N'−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン; ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等を挙げることができる。また、上記アミンとして、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンも挙げることができる。これらのうち、アルカノールアミンが好ましい。
上記アミンの添加量は、上記金属の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成したコロイド粒子の対凝集安定性が低下する。より好ましくは、2〜8molである。
また、上記還元剤として上記水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、常温で還元することができるので、加熱や特別な光照射装置を使用する必要がない。
上記水素化ホウ素ナトリウムの添加量は、上記金属の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成したコロイド粒子の対凝集安定性が低下する。より好ましくは、1.5〜10molである。
上記還元剤としてクエン酸又はその塩を使用する場合、アルコールの存在下で加熱還流することによって金属イオン等を還元することができる。上記クエン酸又はその塩としては、クエン酸ナトリウムを使用することが好ましい。
上記クエン酸又はその塩の添加量は、上記金属の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成したコロイド粒子の対凝集安定性が低下する。より好ましくは、1.5〜10molである。
本発明における金属コロイド粒子の調製においては、上記金属のイオンを還元した後、上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子を沈殿させてから上記溶媒を除去する。上記溶媒として水及び水可溶性有機溶媒を使用する場合には、使用する高分子量顔料分散剤の性質に応じて以下の方法に従って上記溶媒を除去することができる。
上記高分子量顔料分散剤が水不溶性のものである場合、まず、上記水可溶性有機溶媒を蒸発等により除去して、上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子を沈殿させた後、水を除去することが好ましい。上記高分子量顔料分散剤が水不溶性のものであるので、上記水可溶性有機溶媒を除去することにより、上記高分子量顔料分散剤により保護された金属のコロイド粒子が沈殿する。
この場合において、上記水可溶性有機溶媒は、蒸発速度が水より大きいものであることが好ましい。蒸発速度が水より小さいものであると、上記高分子量顔料分散剤として水不溶性のものを使用した場合、溶媒を除去して固体ゾルとする際に、上記水可溶性有機溶媒を先に取り除くことができず、金属のコロイド粒子を沈殿させることができない。
上記高分子量顔料分散剤が溶剤型のものである場合、該高分子量顔料分散剤を溶解しない非極性有機溶媒を過剰量添加して上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子を沈殿させた後、デカンテーション等により溶媒を除去することもできる。
上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子は、上記溶媒を除去した後、上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子をイオン交換水で洗浄しても良い。上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子が過剰量の上記非極性溶媒により沈殿された場合は、上記非極性有機溶媒で洗浄することができる。
本発明における金属の固体ゾルの製造方法において、得られる金属の固体ゾルは、コロイド平均粒径が1〜100nmであり、粒度分布が狭いので、濃色かつ彩度の高いものとなる。
本発明における金属の固体ゾルの製造方法は、上記金属の化合物を溶媒に溶解して溶液とし、上記高分子量顔料分散剤を加えた後、金属に還元し、その後、溶媒を除去するといった少ない工程で簡便に行うことができ、しかも、彩度が高く、従来の金属の固体ゾルと比較して、金属のコロイド粒子を高い濃度で含有する金属の固体ゾルを製造することができる。特に、アルカノールアミンを使用することにより、20〜80℃程度の温和な条件で簡便に製造することができる。
以上の方法によって金属コロイド粒子を調製することができるが、本発明における金属コロイド粒子は、分散状態で発色性を呈する粒子であれば、市販の金属コロイド粒子を用いることができる。
さらに、前記金属コロイド粒子は、具体的には、下記の方法(1)〜(4)を用いることにより調製できるが、これに限定されるものではない。
−金属コロイド粒子の分散液の調製方法−
本発明における前記金属コロイド粒子の分散液の調製方法としては、水系、非極性溶媒系のいずれの形態でも調製することができる。例えば、金及び銀を用いた金属コロイド粒子の分散液は、以下の調製方法により調製することができるが、これに限定されるものではない。
(1)金属化合物(例えば、テトラクロロ金(III)酸・4水和物)を絶縁性液体(例えば、水)に溶解後、金属(例えば、金)に対して1.5倍質量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース20000)を含んだ水溶液を混合、攪拌する。
この混合液に脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミノエタノール)を加えて金イオンの還元反応を開始した後、濾過、濃縮を行い、金コロイド粒子溶液を得る。
(2)金属化合物(例えば、テトラクロロ金(III)酸・4水和物)を水に溶解後、金属(例えば、金)に対して1.5倍質量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース24000を非極性有機溶媒(例えば、アセトン)に溶解させた溶液を混合、攪拌する。
この混合液に脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミノエタノール)を加えて金イオンの還元反応を開始した後、前記非極性溶媒を蒸発させ、金コロイド粒子と高分子量顔料分散剤からなる固体ゾルを得る。その後、デカンテーションにより固体ゾルを水で洗浄し、非極性有機溶媒(例えば、エタノール)を加えて金コロイド粒子溶液を得る。
(3)金属化合物(例えば、硝酸銀(I))を水に溶解後、金属(例えば、銀)に対して
1.5倍質量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース20000 )を含んだ水溶液を混合、攪拌する。この混合液に脂肪族アミン(例えばジメチルアミノエタノール)を加えて銀イオンの還元反応を開始した後、濾過、濃縮を行い、水系銀コロイド粒子溶液を得る。
(4) 金属化合物(例えば、硝酸銀(I))を水に溶解後、金属(例えば、銀)に対し
て1.5倍質量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース24000)を非極性有機溶媒(例えば、アセトン)に溶解させた溶液を混合、攪拌する。この混合液に脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミノエタノール)を加えて銀イオンの還元反応を開始した後、非極性溶媒を蒸発させ、銀コロイド粒子と高分子量顔料分散剤からなる固体ゾルを得る。その後、デカンテーションにより固体ゾルを水で洗浄し、非極性有機溶媒(例えば、トルエン)を加えて溶媒系銀コロイド粒子溶液を得る。
尚、前記金属コロイド粒子及びその溶液等については、特開平11−76800号公報に記載のものを好適に用いることができる。
−絶縁性液体−
本発明における前記金属コロイド粒子の分散媒としては、絶縁性液体であることが好ましい。
絶縁性液体として具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、シリコーンオイル、ジククロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、高純度石油、エチレングリコール、アルコール類、エーテル類、エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ベンジン、ジイソプロピルナフタレン、オリーブ油、イソプロパノール、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモテトラフルオロエタンなどや、それらの混合物が好適に使用できる。
また、下記体積抵抗値となるよう不純物を除去することで、水(所謂、純水)も好適に使用することができる。該体積抵抗値としては、103Ωcm以上であることが好ましく、より好ましくは107Ωcm〜1019Ωcmであり、さらに好ましくは1010〜1019Ωcmである。このような体積抵抗値とすることで、より効果的に、電極反応に起因する液体の電気分解による気泡の発生が抑制され、通電毎に粒子の電気泳動特性が損なわれることがなく、優れた繰り返し安定性を付与することができる。
なお、絶縁性液体には、必要に応じて、酸、アルカリ、塩、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加することができるが、上記で示した特定の体積抵抗値の範囲となるように添加することが好ましい。
−高分子樹脂−
本発明における電荷移動性微粒子(金属コロイド粒子)は、高分子樹脂に分散されていることも好ましい。該高分子樹脂としては、高分子ゲル、ネットワークポリマー等であることも好ましい。
該高分子樹脂としては、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、イソリケナン、インスリン、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カードラン、カゼイン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カロース、寒天、キチン、キトサン、絹フィブロイン、クアーガム、クインスシード、クラウンゴール多糖、グリコーゲン、グルコマンナン、ケラタン硫酸、ケラチン蛋白質、コラーゲン、酢酸セルロース、ジェランガム、シゾフィラン、ゼラチン、ゾウゲヤシマンナン、ツニシン、デキストラン、デルマタン硫酸、デンプン、トラガカントゴム、ニゲラン、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プスツラン、フノラン、分解キシログルカン、ペクチン、ポルフィラン、メチルセルロース、メチルデンプン、ラミナラン、リケナン、レンチナン、ローカストビーンガム等の天然高分子由来の高分子ゲルが挙げられる他、合成高分子の場合にはほとんどすべての高分子ゲルが挙げられる。
更に、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、及びアミドの官能基を繰り返し単位中に含む高分子等が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミドやその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシドやこれら高分子を含む共重合体を挙げることができる。これら中でも、製造安定性、電気泳動特性等の観点から、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド等が好ましく用いられる。これらの高分子樹脂は、絶縁性液体と共に用いることが好ましい。
−高分子量顔料分散剤−
上記高分子量顔料分散剤としては特に限定されないが、以下に説明するものを好適に使用することができる。すなわち;
(1)顔料親和基を主鎖及び/又は複数の側鎖に有し、かつ、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を有する櫛形構造の高分子(2)主鎖中に顔料親和基からなる複数の顔料親和部分を有する高分子(3)主鎖の片末端に顔料親和基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子
ここで、顔料親和基とは、顔料の表面に対して強い吸着力を有する官能基をいい、例えば、オルガノゾルにおいては、第3級アミノ基、第4級アンモニウム、塩基性窒素原子を有する複素環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基;ヒドロゾルにおいては、フェニル基、ラウリル基、ステアリル基、ドデシル基、オレイル基等を挙げることができる。本発明において、顔料親和基は、金属に対して強い親和力を示す。高分子量顔料分散剤は、顔料親和基を有することにより、金属の保護コロイドとして充分な性能を発揮することができる。
櫛形構造の高分子(1)は、顔料親和基を有する複数の側鎖とともに、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を主鎖に結合した構造のものであり、これらの側鎖があたかも櫛の歯のように主鎖に結合されているものである。本明細書中、上述の構造を櫛形構造と称する。上記櫛形構造の高分子(1)において、顔料親和基は、側鎖末端に限らず、側鎖の途中や主鎖中に複数存在していてもよい。なお、溶媒和部分は、溶媒に親和性を有する部分であって、親水性又は疎水性の構造をいう。溶媒和部分は、例えば、水溶性の重合鎖、親油性の重合鎖等から構成されている。
櫛形構造の高分子(1)としては特に限定されず、例えば、特開平5−177123号公報に開示されている1個以上のポリ(カルボニル−C3 〜C6 −アルキレンオキシ)鎖を有し、これらの各鎖が3〜80個のカルボニル−C3 〜C6 −アルキレンオキシ基を有しかつアミド又は塩架橋基によってポリ(エチレンイミン)に結合されている構造のポリ(エチレンイミン)又はその酸塩からなるもの;特開昭54−37082号公報に開示されているポリ(低級アルキレン)イミンと、遊離のカルボン酸基を有するポリエステルとの反応生成物よりなり、各ポリ(低級アルキレン)イミン連鎖に少なくとも2つのポリエステル連鎖が結合されたもの;特公平7−24746号公報に開示されている末端にエポキシ基を有する高分子量のエポキシ化合物に、アミン化合物と数平均分子量300〜7000のカルボキシル基含有プレポリマーとを同時に又は任意順に反応させて得られる顔料分散剤等を挙げることができる。
櫛形構造の高分子(1)は、顔料親和基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなく、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、25〜1500個である。
櫛形構造の高分子(1)は、溶媒和部分を構成する側鎖が1分子中に2〜1000存在するものが好ましい。2未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、5〜500である。
櫛形構造の高分子(1)は、数平均分子量が2000〜1000000であることが好ましい。2000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、4000〜500000である。
主鎖中に顔料親和基からなる複数の顔料親和部分を有する共重合体(2)は、複数の顔料親和基が主鎖にそって配置されているものであり、顔料親和基は、例えば、主鎖にペンダントしているものである。本明細書中、顔料親和部分は、顔料親和基が1つ又は複数存在して、顔料表面に吸着するアンカーとして機能する部分をいう。
共重合体(2)としては、例えば、特開平4−210220号公報に開示されているポリイソシアネートと、モノヒドロキシ化合物及びモノヒドロキシモノカルボン酸又はモノアミノモノカルボン酸化合物の混合物、並びに、少なくとも1つの塩基性環窒素とイソシアネート反応性基とを有する化合物との反応物;特開昭60−16631号公報、特開平2−612号公報、特開昭63−241018号公報に開示されているポリウレタン/ポリウレアよりなる主鎖に複数の第3級アミノ基又は塩基性環式窒素原子を有する基がペンダントした高分子;特開平1−279919号公報に開示されている水溶性ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する立体安定化単位、構造単位及びアミノ基含有単位からなる共重合体であって、アミン基含有単量単位が第3級アミノ基若しくはその酸付加塩の基又は第4級アンモニウムの基を含有しており、該共重合体1g当たり0.025〜0.5ミリ当量のアミノ基を含有する共重合体;特開平6−100642号公報に開示されている付加重合体からなる主鎖と、少なくとも1個のC1〜C4アルコキシポリエチレン又はポリエチレン−コプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる安定化剤単位とからなり,かつ、2500〜20000の質量平均分子量を有する両親媒性共重合体であって、主鎖は、30質量%までの非官能性構造単位と、合計で70質量%までの安定化剤単位及び官能性単位を含有しており、官能性単位は、置換されているか又は置換されていないスチレン含有単位、ヒドロキシル基含有単位及びカルボキシル基含有単位であり、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とスチレン基及びヒドロキシル基とプロピレンオキシ基又はエチレンオキシ基との比率が、それぞれ、1:0.10〜26.1;1:0.28〜25.0;1:0.80〜66.1である両親媒性高分子等を挙げることができる。
共重合体(2)は、顔料親和基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなく、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、25〜1500個である。
共重合体(2)は、数平均分子量が2000〜1000000であることが好ましい。2000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、4000〜500000である。
主鎖の片末端に顔料親和基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子(3)は、主鎖の片末端のみに1つ又は複数の顔料親和基からなる顔料親和部分を有しているが、顔料表面に対して充分な親和性を有するものである。
直鎖状の高分子(3)としては特に限定されず、例えば、特開昭46−7294号公報に開示されている一方が塩基性であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4656226号明細書に開示されているAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子;米国特許第4032698号明細書に開示されている片末端が塩基性官能基であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4070388号明細書に開示されている片末端が酸性官能基であるA−Bブロック型高分子;特開平1−204914号公報に開示されている米国特許第4656226号明細書に記載のAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子の耐候黄変性を改良したもの等を挙げることができる。
直鎖状の高分子(3)は、顔料親和基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなく、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、5〜1500個である。
直鎖状の高分子(3)は、数平均分子量が1000〜1000000であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、2000〜500000である。
高分子量顔料分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。市販品としては、例えば、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000(ゼネカ社製);ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190(ビックケミー社製);EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49(EFKAケミカル社製);ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453(EFKAケミカル社製);アジスパーPB711、アジスパーPA111、アジスパーPB811、アジスパーPW911(味の素社製);フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンTG−730W、フローレンG−700、フローレンTG−720W(共栄社化学社製)等を挙げることができる。
高分子量顔料分散剤は、顔料親和基が側鎖に存在し、溶媒和部分を構成する側鎖を有するグラフト構造のもの〔櫛形構造の高分子(1)〕;主鎖に、顔料親和基を有するもの〔共重合体(2)及び直鎖状の高分子(3)〕であるので、コロイド粒子の分散性が良好であり、金属のコロイド粒子に対する保護コロイドとして好適である。高分子量顔料分散剤を使用することにより、金属のコロイド粒子を高い濃度で含有する金属のコロイド粒子分散体を得ることができる。
本発明において、高分子量顔料分散剤は、軟化温度が、30℃以上であることが好ましい。30℃未満であると、得られる金属の固体ゾルが貯蔵中にブロッキングしてしまう。より好ましくは、40℃以上である。
高分子量顔料分散剤の含有量は、金属100質量部に対して20〜1000質量部が好ましい。20質量部未満であると、上記金属のコロイド粒子の分散性が不充分であり、1000質量部を超えると、塗料や樹脂成型物に配合した際に、バインダー樹脂に対する高分子量顔料分散剤の混入量が多くなり、物性等に不具合が生じやすくなる。より好ましくは、50〜650質量部である。
本発明における調光セル10の大きさとしては、表示素子12の解像度と密接な関係にあり、セルが小さいほど高解像度な表示素子12を作製することができ、通常、層厚方向に直交する方向の長さは、10μm〜1mm程度である。
次に、本発明の表示素子12の作用について説明する。
図2(A)に示すように、第1の電極28、第2の電極26、及び第3の電極30各々に電圧が印加されていないときには、調光セル10内の電荷移動性微粒子としての金属コロイド粒子は、調光セル10内に一様に分散されている。例えば、調光セル10内の媒体に一様に分散されている状態において赤色発色を呈する金属コロイド粒子がこの調光セル10内に充填されている場合には、この調光セル10は、図2(A)のように金属コロイド粒子が分散されている状態において、赤色に発色する。
なお、調光セル10内の媒体に一様に分散されている状態において、緑色発色を呈する金属コロイド粒子がこの調光セル10内に充填されている場合には、この調光セル10は、図2(A)のように金属コロイド粒子が分散されている状態において、緑色に発色する。
同様に、調光セル10内の媒体に一様に分散されている状態において、青色発色を呈する金属コロイド粒子がこの調光セル10内に充填されている場合には、この調光セル10は、図2(A)のように金属コロイド粒子が分散されている状態において、青色に発色する。
なお、調光セル10内の媒体内に金属コロイド粒子が分散されている状態において、赤色、青色、緑色に発色する金属コロイド粒子の体積平均粒径は、用いる金属や、粒子の調製条件、形状等に依存するため、特に限定することができないが、例えば、金コロイド粒子の場合は、それぞれ、15nm、30nm、50nm程度である。
上記のような電荷移動性微粒子32が充填された調光セル10を有する表示素子12の動作について、図2を参照して説明する。
本発明の表示素子12においては、第1の電極28、第2の電極26、及び第3の電極30各々に電圧印加部14から電圧が印加されないときには、調光セル10内の電荷移動性微粒子は、図2(A)に示すように、調光セル10内に充填された媒体内に一様に分散して、分散状態の電荷移動性微粒子32の色が調光セル10の色として、視認方向側(X方向)から観察される。
例えば、電荷移動性微粒子32の分散状態に呈する色が赤色である場合には、電荷移動性微粒子32が分散状態にあるときに、調光セル10の色は、赤色として観察され、電荷移動性微粒子32の分散状態に呈する色が緑色である場合には、調光セル10の色は、緑色として観察され、電荷移動性微粒子32の分散状態に呈する色が青色である場合には、調光セル10の色は、青色として観察される。
電圧印加部14から、調光セル10に対向するように設けられた一対の第3の電極30の内の一方に、例えばプラスの電圧を印加し、他方にマイナスの電圧を印加すると、一対の対向する第3の電極30間に電界が形成され、図2(B)に示すように、調光セル10内のマイナスに帯電している電荷移動性微粒子32は、プラス電極(プラスの電圧が印加された第3の電極30)側へ移動する。このように、調光セル10内の電荷移動性微粒子32が一対の対向する間隙部材20の何れか一方へと移動すると、透明な表示基板16、透明な第1の電極、及び透明な第2の電極26を介して、背面基板18の色が現れる。この場合には、背面基板18の色が調光セル10の色として視認方向側(X方向)から観察される。
すなわち、調光セル10を構成する第3の電極30に電圧を印加することにより、間隙部材20の表面に調光セル10内の電荷移動性微粒子32を移動させると、背面基板18の色が調光セル10の色として観察される。例えば、このような状態において、背面基板18の色が白色である場合には、調光セル10の色は白色として観察される。
電圧印加部14から、調光セル10の表示基板16に設けられた第1の電極28、及び背面基板18に設けられた第2の電極26の内、第1の電極28にプラスの電圧を印加し、第2の電極26にマイナスの電圧を印加すると、表示基板16と背面基板18間に電界が形成され、図2(C)に示すように、調光セル10内のマイナスに帯電している電荷移動性微粒子32は、プラス電極である第1の電極28側に移動する。
このため、表示基板16側に、調光セル10内に充填されている電荷移動性微粒子32が移動されるので、表示基板16に電荷移動性微粒子32が凝集されることから、調光セル10の色として、黒色が視認方向側(X方向)から観測される。
なお、上記実施の形態では、表示素子12は、単一の調光セル10を備える場合を説明したが、複数の調光セル10を備えるようにしてもよい。
具体的には、図3に示すように、表示素子12として、表示素子13に表示する画像の画素単位毎に、分散状態で互いに異なる色(例えば、青、緑、及び赤)を呈する電荷移動性微粒子32を含む複数の調光セル10を一単位(以下配列単位調光セルという)11として、この配列単位調光セル11に含まれる複数の調光セル10を、調光セル10の積層方向に直交する方向に連続して設けるようにしてもよい。そして、この配列単位調光セル11を、表示したときの画像の各画素に対応するように、表示する画像に応じて、電圧印加部14によって電圧印加を制御するようにすればよい。
なお、各配列単位調光セル11は、分散状態で赤色を呈する電荷移動性微粒子32Rが充填された調光セル10R、分散状態で緑色を呈する電荷移動性微粒子32Gが充填された調光セル10G、及び分散状態で青色を呈する電荷移動性微粒子32Bが充填された調光セル10Bを含んで構成されるようにすればよい。
なお、図3において、上記図1で説明した調光セル10と同一部分については、同一の番号を付与して詳細な説明を省略する。また、図3では、電圧印加部14の図示を省略しているが、図1の調光セル10と同様に、第1の電極28、第2の電極26、及び第3の電極30各々と電気的に接続されているものとする。
図3(A)に示すように、配列単位調光セル11を表示素子13に表示する画像の各画素に対応して設けた場合に、表示する画像に応じて例えば、特定の画素に対応する配列単位調光セル11の色が白色の場合には、対応する配列単位調光セル11に含まれる調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々に含まれる電荷移動性微粒子32R、電荷移動性微粒子32G、及び電荷移動性微粒子32Bの全てが各調光セル内で分散状態となるように、電圧を印加しないようにすればよい。
このようにすれば、調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々に含まれる電荷移動性微粒子32R、電荷移動性微粒子32G、及び電荷移動性微粒子32B全てが各調光セル内で分散状態となり、加色混合により視認方向側X方向から白色が観測される。
或いは、全ての各調光セル10に対向するように設けられた一対の第3の電極30の内の一方に、例えばプラスの電圧を印加し、他方にマイナスの電圧を印加すると、一対の対向する第3の電極30間に電界が形成され、調光セル10内のマイナスに帯電している電荷移動性微粒子32は、プラス電極(プラスの電圧が印加された第3の電極30)側へ移動する。このように、調光セル10内の電荷移動性微粒子32が一対の対向する間隙部材20の何れか一方へと移動すると、透明な表示基板16、透明な第1の電極、及び透明な第2の電極26を介して、背面基板18の色、即ち白色が現れ、視認方向側(X方向)から白色が観察される。
また、表示する画像に応じて例えば、特定の画素に対応する配列単位調光セル11の色が黒色の場合には、対応する配列単位調光セル11に含まれる調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々に含まれる電荷移動性微粒子32R、電荷移動性微粒子32G、及び電荷移動性微粒子32Bの全てが、表示基板16側に移動されるようにすればよい。具体的には、調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々の第1の電極28にプラスの電圧を印加し、第2の電極26にマイナスの電圧を印加すればよい。
このようにすれば、調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々に含まれる電荷移動性微粒子32R、電荷移動性微粒子32G、及び電荷移動性微粒子32Bの各々が、図3(B)に示すように、全て表示基板16側に移動して凝集されることから、視認方向Xからは、配列単位調光セル11の色として、黒色が観測される。
また、表示する画像に応じて例えば、特定の画素に対応する配列単位調光セル11の色が緑色の場合には、対応する配列単位調光セル11に含まれる調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々に含まれる電荷移動性微粒子32R、電荷移動性微粒子32G、及び電荷移動性微粒子32Bの内、分散状態で緑色を呈する電荷移動性微粒子32Gのみが調光セル内で分散状態となるようにすればよい。
具体的には、図3(C)に示すように、調光セル10Gの各電極(第1の電極28、第2の電極26、及び第3の電極30)には電圧を印加せず、調光セル10R及び調光セル10B内に含まれる電荷移動性微粒子32R及び電荷移動性微粒子32B各々が、各調光セル内で間隙部材20に設けられた第3の電極30に移動するように、調光セル10R及び調光セル10B各々の第3の電極30に電圧を印加するようにすればよい。
このようにすれば、調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々に含まれる電荷移動性微粒子32R、電荷移動性微粒子32G、及び電荷移動性微粒子32Bの内、調光セル10G内に含まれる電荷移動性微粒子32Gのみが調光セル内で分散状態となり、且つ、調光セル10R及び調光セル10Bについては、背面基板18の色のみが観察されるため、各調光セルの背面基板18の色が予め白色となるように構成することにより、配列単位調光セル11の色として、視認方向側X方向から緑色が観測される。
また、図4に示すように、表示素子12として、表示素子15に表示する画像の画素単位毎に、分散状態で互いに異なる色(例えば、青、緑、及び赤)を呈する電荷移動性微粒子32を含む複数の調光セル10を1単位(以下、積層単位調光セルという)17とし、この積層単位調光セル17内に含まれる複数の調光セル10を、層厚方向に積層させるようにしてもよい。更に、この積層単位調光セル17を、層厚方向に直交する方向に連続して設け、各積層単位調光セル17を表示したときの画像の各画素に対応するように、表示する画像に応じて、電圧印加部14による電圧印加を制御するようにすればよい。
なお、調光セル10が層厚方向に積層される場合には、最下層の調光セル10の背面基板18のみ着色した着色基板とし(例えば、白色基板)、この最下層の調光セル10の上に積層される調光セル10については、表示基板12と同様に背面基板18についても少なくとも透光性を有する透明基板とするようにすればよい。
また、10Bにおける背面基板18は10Gにおける表示基板16と、10Gにおける背面基板18は10Rにおける表示基板16と、共有することもできる。表示素子としての厚さや軽量化を考慮すると、共有する方が好ましい。
なお、各積層単位調光セル17には、分散状態で赤色を呈する電荷移動性微粒子32Rが充填された調光セル10R、分散状態で緑色を呈する電荷移動性微粒子32Gが充填された調光セル10G、及び分散状態で青色を呈する電荷移動性微粒子32Bが充填された調光セル10Bが積層されて構成されるようにすればよい。
なお、図4において、上記図1で説明した調光セル10と同一部分については、同一の番号を付与して詳細な説明を省略する。また、図4では、電圧印加部14の図示を省略しているが、図1の調光セル10と同様に、第1の電極28、第2の電極26、及び第3の電極30各々と電気的に接続されているものとする。
積層単位調光セル17を表示素子12に表示する画像の各画素に対応して設けた場合に、表示する画像に応じて例えば、特定の画素に対応する積層単位調光セル17の色が白色の場合には、対応する積層単位調光セル17に含まれる調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々に含まれる電荷移動性微粒子32R、電荷移動性微粒子32G、及び電荷移動性微粒子32Bの全てが各調光セル内で分散状態となるように、電圧を印加しないようにすればよい。
このようにすれば、調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々に含まれる電荷移動性微粒子32R、電荷移動性微粒子32G、及び電荷移動性微粒子32B全てが各調光セル内で分散状態となり、加色混合により視認方向側X方向から白色が観測される。
或いは、全ての各調光セル10に対向するように設けられた一対の第3の電極30の内の一方に、例えばプラスの電圧を印加し、他方にマイナスの電圧を印加すると、一対の対向する第3の電極30間に電界が形成され、調光セル10内のマイナスに帯電している電荷移動性微粒子32は、プラス電極(プラスの電圧が印加された第3の電極30)側へ移動する。このように、調光セル10内の電荷移動性微粒子32が一対の対向する間隙部材20の何れか一方へと移動すると、透明な表示基板16、透明な第1の電極、及び透明な第2の電極26を介して、背面基板18の色、即ち白色が現れ、視認方向側(X方向)から白色が観察される。
同様に、表示する画像に応じて例えば、特定の画素に対応する積層単位調光セル17の色が黒色の場合には、対応する積層単位調光セル17に含まれる調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々に含まれる電荷移動性微粒子32R、電荷移動性微粒子32G、及び電荷移動性微粒子32Bの全てが、表示基板16側に移動されるようにすればよい。
具体的には、調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々の第1の電極28にプラスの電圧を印加し、第2の電極26にマイナスの電圧を印加すればよい。
このようにすれば、調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々に含まれる電荷移動性微粒子32R、電荷移動性微粒子32G、及び電荷移動性微粒子32Bの各々が、全て表示基板16側に移動して凝集されることから、視認方向Xからは、積層単位調光セル17の色として、黒色が観測される。
また、表示する画像に応じて例えば、特定の画素に対応する積層単位調光セル17の色が緑色の場合には、対応する積層単位調光セル17に含まれる調光セル10R、調光セル10G、及び調光セル10B各々に含まれる電荷移動性微粒子32R、電荷移動性微粒子32G、及び電荷移動性微粒子32Bの内、分散状態で緑色を呈する電荷移動性微粒子32Gのみが調光セル内で分散状態となるようにすればよい。
具体的には、図4に示すように、調光セル10Gの各電極(第1の電極28、第2の電極26、及び第3の電極30)には電圧を印加せず、調光セル10R及び調光セル10B内に含まれる電荷移動性微粒子32R及び電荷移動性微粒子32B各々が、各調光セル内で間隙部材20に設けられた第3の電極30に移動するように、調光セル10R及び調光セル10B各々の第3の電極30に電圧を印加するようにすればよい。
このように、表示したときの表示画像の各画素に対応して設けられた配列単位調光セル11、または積層単位調光セル17に含まれる各調光セルへの電圧印加を、各配列単位調光セル11または各積層単位調光セル17毎に独立して各々調整することにより、高解像度で且つフルカラーの表示が観察される。
なお、本発明の表示素子12、表示素子13、及び表示素子15は、その用途に応じて、基板には、配線、薄膜トランジスタ、金属・絶縁層・金属構造を持つダイオード、バリアブルコンデンサ、強誘電体等の駆動用スイッチング素子を形成してもよい。
以上説明したように、本発明の表示素子12によれば、透光性を有する表示基板16と、この表示基板16に間隙をもって対向する背面基板18と、表示基板16に設けられた第1の電極28と、背面基板18に設けられた第2の電極26と、表示基板16と背面基板18との間の間隙を保持する間隙部材20と、この間隙部材に設けられた第3の電極30と、第1の電極28及び第2の電極26または第3の電極30に印加された電圧により形成された電界に応じて調光セル10内を移動可能に封入され、分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子32と、を有する調光セル10を備えた。
このように、従来使用されている顔料、及び染料等に比べて着色力が大きく、色純度及び鮮明性において遊離であり、且つナノメートルサイズであるため媒体中の分散性が良好な電荷移動性微粒子を用い、この電荷移動性微粒子を、表示基板16に設けられた第1の電極28と、背面基板18に設けられた第2の電極26と、表示基板16と背面基板18との間の間隙を保持する間隙部材20と、この間隙部材に設けられた第3の電極30と、第1の電極28及び第2の電極26または第3の電極30に印加された電圧により形成された電界に応じて調光セル10内を移動可能に封入したので、電荷移動性微粒子の金属コロイド粒子のプラズモン発色を用いて、高解像度且つフルカラー表示が可能な表示素子を提供することができる。
なお、上記では、第1の電極28、第2の電極26、及び第3の電極30は、各々表示基板16、背面基板18、及び間隙部材20各々に積層されて構成される場合を説明したが、一体的に設けられていてもよい。
なお、調光セル10内に封入されている電荷移動性微粒子を、調光セル10内で移動させるときに印加する電圧は、電圧の印加により表示基板16と背面基板18間、及び間隙部材20間に発生する電位差によって、電荷移動性微粒子が移動できる程度の電圧であればよい。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
本発明の表示素子の一例を、図1を参考に説明する。
まず、厚さ0.7mm(コーニング社製♯1737)支持基板22に、酸化チタン微粒子を混合して白色化したポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜24を形成することにより形成された背面基板18上に、第1の電極26としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチング法によりライン状にパターンニングした(線幅:300μm)。
続いて、光感光性ポリイミドワニスを用いて間隙部材20の為の層を塗布したのち、露光、及びウェットエッチングを行うことにより高さ(調光セルの積層方向の長さ)50μm、幅(調光セルの積層方向に直交する方向の長さ)20μmの間隙部材20を、ラインパターニングされたITO膜の両端に形成した。
その後、スパッタリング法を用いて間隙部材20の対向面にアルミニウムを形成し、第3電極30とした。
間隙部材20と表示基板16との接合面に熱融着性の接着層を形成した後、間隙部材20と表示基板16と背面基板18との内部に電荷移動性微粒子32として金コロイド粒子(ファインスフェアゴールド、日本ペイント(株)製、体積平均粒径20nm)を含む分散媒34としての水を充填した後、前記と同様にITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチング法によりライン状にパターンニングされたPETよりなる表示基板16に熱をかけて張り合わせて調光セル10(表示素子12)を作製した(図1参照)。
この場合、粒子(金コロイド粒子)32は分散状態で赤色を示しているため、調光セル10の視認方向(X方向)から観たとき、調光セル10は赤色として観察される。
このようにして作製した調光セル10を備えた表示素子12を用いて、対向する一対の第3の電極30の一方がプラス、他方がマイナスとなるように、一対の第3の電極30に40Vの電圧をかけたところ、調光セル10内に分散されている電荷移動性微粒子32としての金属コロイド粒子は、マイナスに帯電していたため、電圧印加により、電荷移動性微粒子32としての金属コロイド粒子のプラス側電極への移動が観察された。
これにより、調光セル10の色として、背面基板18の色である白色が観察された。
また、表示基板16に設けられた第1の電極28がプラス、背面基板18に設けられた第2の電極26がマイナスとなるように、第1の電極28及び第2の電極26に35Vの電圧を印加したところ、調光セル10内の電荷移動性微粒子32としての金属コロイド粒子はマイナスに帯電しているため、表示基板16に設けられた第1の電極28側への移動が観察された。
これにより、調光セル10内の電荷移動性微粒子32としての金属コロイド粒子が表示基板16側に凝集されるように移動するので、調光セル10の色として、黒色が観察された。
(実施例2)
本発明の表示素子の一例を図3を参考に説明する。
まず、厚さ0.7mm(コーニング社製♯1737)ガラス基板22に、酸化チタン微粒子を混合して白色化したポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜24を形成することにより形成された背面基板18上に、第2の電極26としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチング法によりライン状にパターンニングした(線幅:300μm、スペース幅25μm)。
続いて、光感光性ポリイミドワニスを用いて間隙部材20の為の層を塗布したのち、露光、及びウェットエッチングを行うことにより高さ(調光セルの積層方向の長さ)50μm、幅(調光セルの積層方向に直交する方向の長さ)20μmの間隙部材20を、ITO膜のスペース部分に形成した。
その後、スパッタリング法を用いて間隙部材20の対向面にアルミニウムを形成し、第3電極30とした。
間隙部材20と表示基板16との接合面に熱融着性の接着層を形成した後、間隙部材20と背面基板18とでできた凹部に電荷移動性微粒子32として金コロイド粒子(赤色)(日本ペイント製ファインスフェアーゴールド、体積平均粒子径20nm)、金コロイド粒子11(緑色、体積平均粒子径30nm)、金コロイド粒子12(青色、体積平均粒子径50nm)を含む水を図3のように充填した。その後、先と同様にして作製したITO膜(線幅:300μm、スペース幅25μm)付きガラス基板に熱をかけて張り合わせて、RGBの3色が並列に並んだ調光層を作製した。
このようにして作製した調光セル10を備えた表示素子13を用いて、調光セル10R、10Bのそれぞれのセルで対向する一対の第3の電極30の一方がプラス、他方がマイナスとなるように、一対の第3の電極30に40Vの電圧をかけたところ、調光セル10R、10B内に分散されている電荷移動性微粒子32としての金属コロイド粒子は、マイナスに帯電していたため、電圧印加により、電荷移動性微粒子32としての金属コロイド粒子のプラス側電極への移動が観察された。
これにより、表示素子13の色として、金コロイド粒子が分散された状態の調光セル10Gの色である緑色が観察された。
また、3つの調光セルの表示基板16に設けられた第1の電極28がプラス、背面基板18に設けられた第2の電極26がマイナスとなるように、第1の電極28及び第2の電極26に30Vの電圧を印加したところ、調光セル10内の電荷移動性微粒子32としての金属コロイド粒子はマイナスに帯電しているため、表示基板16に設けられた第1の電極28側への移動が観察された。
これにより、ずべての調光セル10内の電荷移動性微粒子32としての金属コロイド粒子が表示基板16側に凝集されるように移動するので、表示素子15の色として、黒色が観察された。
(実施例3)
本発明の表示素子の一例を図4を参考に説明する。
まず、厚さ0.7mm(コーニング社製♯1737)ガラス基板22に、酸化チタン微粒子を混合して白色化したポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜24を形成することにより形成された背面基板18上に、第2の電極26としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチング法によりライン状にパターンニングした(線幅:300μm)。
続いて、光感光性ポリイミドワニスを用いて間隙部材20の為の層を塗布したのち、露光、及びウェットエッチングを行うことにより高さ(調光セルの積層方向の長さ)50μm、幅(調光セルの積層方向に直交する方向の長さ)20μmの間隙部材20を、ラインパターニングされたITO膜の両端に形成した。
その後、スパッタリング法を用いて間隙部材20の対向面にアルミニウムを形成し、調光セル10R用第3電極30とした。
間隙部材20と表示基板16との接合面に熱融着性の接着層を形成した後、間隙部材20と背面基板18とでできた凹部に電荷移動性微粒子32として金コロイド粒子(赤色)(ファインスフェアゴールド、日本ペイント(株)製、体積平均粒径20nm)を含む分散媒34としての水を充填した(調光セル10R)。
一方、厚さ0.7mm(コーニング社製♯1737)ガラス基板の両面に、先と同様に、ITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチング法によりライン状にパターンニングし(線幅:300μm)、更に、その片面に、光感光性ポリイミドワニスを用いて間隙部材20の為の層を塗布したのち、露光、及びウェットエッチングを行うことにより高さ(調光セルの積層方向の長さ)50μm、幅(調光セルの積層方向に直交する方向の長さ)20μmの間隙部材20を、ラインパターニングされたITO膜の両端に形成した。
その後、スパッタリング法を用いて間隙部材20の対向面にアルミニウムを形成し、調光セル10G用第3電極30とした。このようにして作製した10G用調光セルを前記調光セル10R上に熱をかけながら張り合わせて、調光セル10Rと10Gが積層されたセルを作製した。
その後、調光セル10Gの間隙部材20と表示基板16との接合面に熱融着性の接着層を形成した後、調光セル10Gに、金コロイド粒子(緑色)(ファインスフェアゴールド、日本ペイント(株)製、体積平均粒径33nm)を含む分散媒34としての水を充填した(調光セル10G)。
更に、別の厚さ0.7mm(コーニング社製♯1737)ガラス基板上に、前記調光セル10Gの作製における「ガラス基板両面へのITOの形成工程から金コロイド粒子を含む水を充填する工程」において、金コロイド粒子(緑色)を用いる代わりに金コロイド粒子(青色、体積平均粒子径55nm)を用いた以外は、同様の操作を行って、前記緑色調光単位セル10G上に、青色調光セル10Bを作製した。
その後、先と同様にしてパターンニングされたITOを形成した厚さ0.7mm(コーニング社製♯1737)ガラス基板を ITO形成面が調光セル10B側にくるように、熱をかけながら張り合わせて表示素子15とした。
このようにして作製した表示素子15を用いて、調光セル10B、及び10Rのそれぞれのセルにおいて、対向する一対の第3の電極30の一方がプラス、他方がマイナスとなるように、一対の第3の電極30に40Vの電圧をかけたところ、調光セル10B,及び10R内に分散されている電荷移動性微粒子32としての金属コロイド粒子は、マイナスに帯電していたため、電圧印加により、電荷移動性微粒子32としての金属コロイド粒子のプラス側電極への移動が観察された。
これにより、表示素子15の色として、金コロイド粒子が分散された状態の調光セル10Gの色である緑色が観察された。
また、表示素子15に設けられた第1の電極28がプラス、背面基板18に設けられた第2の電極26がマイナスとなるように、第1の電極28及び第2の電極26に35Vの電圧を印加したところ、3つの調光セル10内の電荷移動性微粒子32としての金属コロイド粒子はマイナスに帯電しているため、それぞれのセルの表示基板16に設けられた第1の電極28側への移動が観察された。これにより、調光セル10内の電荷移動性微粒子32としての金属コロイド粒子がそれぞれのセルの表示基板16側に凝集されるように移動するので、表示素子15の色として、黒色が観察された。
本実施の形態に係る表示素子の概略構成を示す模式図である。 表示素子へ電圧が印加されたときの調光セル内の電荷移動性微粒子の状態を示す模試図であり、(A)は、調光セル内に電荷移動性微粒子が分散されている状態を示し、(B)は、電荷移動性微粒子が間隙部材の表面に移動した状態を示し、(C)は、電荷移動性微粒子が表示基板側に移動して凝集した状態を示している。 調光セルが、調光セルの層厚方向に直交する方向へ連続して配列された表示素子を示す模式図であり、(A)は、各調光セル内の電荷移動性微粒子が分散されている状態を示し、(B)は、全ての調光セル内の電荷移動性微粒子が表示基板側に移動されている状態を示し、(C)は、分散状態で緑色を呈する電荷移動性微粒子が封入されている調光セルの電荷移動性微粒子のみが分散状態にある場合を示している。 調光セルが、調光セルの層厚方向に積層された表示素子を示す模式図である。
符号の説明
10、10R、10G、10B 調光セル
12、13、15 表示素子
14 電圧印加部
16 表示基板
18 背面基板
20 間隙部材
26 第2の電極
28 第1の電極
30 第3の電極
32、32R、32G、32B 電荷移動性微粒子

Claims (19)

  1. 少なくとも透光性を有する表示基板と、
    前記表示基板に間隙をもって対向する背面基板と、
    前記表示基板に設けられた第1の透明電極と、
    前記背面基板に設けられた第2の電極と、
    前記表示基板と前記背面基板との間の間隙を保持する間隙部材と、
    前記間隙部材に設けられた第3の電極と、
    前記第1の透明電極及び前記第2の電極、または前記第3の電極に印加された電圧により形成された電界に応じて調光セル本体内を移動可能に封入され、分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子と、
    を有する調光セルを備えた表示素子。
  2. 前記調光セルは、前記表示基板及び前記背面基板の何れか一方に前記電荷移動性微粒子を移動させる第1の状態、前記間隙部材に前記電荷移動性微粒子を移動させる第2の状態、及び前記調光セル内に前記電荷移動性微粒子を分散させる第3の状態の何れかの状態となるように、前記第1の透明電極及び前記第2の電極、または前記第3の電極に電圧が印加されることにより異なる色を呈する請求項1に記載の表示素子。
  3. 前記第3の電極は、透明電極である請求項1または請求項2に記載の表示素子。
  4. 前記第2の電極は、透明電極である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の表示素子。
  5. 前記調光セルを複数備えた請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の表示素子。
  6. 分散状態で互いに異なる色の発色性を呈する電荷移動性微粒子を含む複数の前記調光セルが該調光セルの厚み方向に直交する方向に配列された配列単位調光セルを備えた請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の表示素子。
  7. 前記配列単位調光セルが、該配列単位調光セルの厚み方向に直交する方向に配列された請求項6に記載の表示素子。
  8. 分散状態で互いに異なる色の発色性を呈する電荷移動性微粒子を含む複数の前記調光セルが該調光セルの厚み方向に積層された積層単位調光セルを備えた請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の表示素子。
  9. 前記積層単位調光セルが、該積層単位調光セルの厚み方向に直交する方向に配列された請求項8に記載の表示素子。
  10. 前記積層単位調光セルに含まれる複数の調光セルの内、最下層の調光セルの上層側に積層された調光セルは、少なくとも透光性を有する背面基板を有する請求項8または請求項9に記載の表示素子。
  11. 前記調光セルは、分散状態で緑色の光を反射する電荷移動性微粒子、分散状態で赤色の光を反射する電荷移動性微粒子、及び分散状態で青色の光を反射する電荷移動性微粒子の何れかの電荷移動性微粒子を有する請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の表示素子。
  12. 前記背面基板は、少なくとも該背面基板を含む前記調光セル内に封入された電荷移動性微粒子が分散状態で発色する色とは異なる色に予め着色された着色基板である請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の表示素子。
  13. 前記電荷移動性微粒子が高分子樹脂中に分散されていることを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の表示素子。
  14. 前記電荷移動性微粒子がプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子であることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の表示素子。
  15. 前記金属コロイド粒子が金又は銀であることを特徴とする請求項14に記載の表示素子。
  16. 前記電荷移動性微粒子の体積平均粒径が1〜100nmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項15の何れか1項に記載の表示素子。
  17. 前記電荷移動性微粒子の体積平均粒径が2〜50nmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項16の何れか1項に記載の表示素子。
  18. 請求項1乃至請求項17の何れか1項に記載の表示素子を用いた表示方法であって、
    電圧印加手段が、前記第1の透明電極及び前記第2の電極に電圧を印加することによって前記表示基板及び前記背面基板の何れか一方に前記電荷移動性微粒子を移動させて前記調光セルを黒色に発色させ、
    前記第3の電極に電圧を印加することによって前記間隙部材に前記電荷移動性微粒子を移動させて前記調光セルを前記背面基板の色に発色させ、
    前記第1の透明電極、前記第2の電極、及び前記第3の電極への電圧印加を禁止することによって前記調光セル内に前記電荷移動性微粒子を分散させて、前記調光セルを該電荷移動性微粒子の分散状態に応じた色に発色させる、
    表示方法。
  19. 請求項1乃至請求項17の何れか1項に記載の表示素子と、
    前記各調光セルに備えられた第1の透明電極、第2の電極、及び第3の電極各々に独立して電圧を印加するための電圧印加手段と、
    を備えた表示装置。
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