JP2006348377A - 外観に優れた表面処理鋼板の製造方法およびその装置 - Google Patents

外観に優れた表面処理鋼板の製造方法およびその装置 Download PDF

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Abstract

【課題】外観に優れた電気めっき鋼板または化成処理鋼板の製造方法およびその装置を提供すること。
【解決手段】冷延鋼板にアルカリ洗浄と酸洗のいずれか一方または双方の洗浄処理と、前記洗浄処理で付着した洗浄液を鋼板表面から除去するリンス洗浄処理と、リンス洗浄処理で付着したリンス洗浄液を鋼板表面から除去する液切り処理とを行う連続焼鈍ラインの前処理工程と、前処理された冷延鋼板を連続焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍された鋼板に電気めっきと化成処理のいずれか一方または双方の表面処理を行う表面処理工程とを備えた表面処理鋼板の製造方法において、前記焼鈍工程と表面処理工程の間に、表面処理前の鋼板からサンプルを採取し、サンプルに電解脱脂処理と電解酸洗処理を順次行い、サンプル表面に所定の模様が発現するか否かにより鋼板表面の清浄性を評価する清浄性評価工程を更に備えたことを特徴とする外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
【選択図】 図2

Description

この発明は、表面処理鋼板の製造方法およびその装置、特に外観ならびに製品歩留まりに優れた電気めっき鋼板または化成処理鋼板の製造方法およびその装置に関する。
さらには、均質かつ美麗な外観品質の前提となる表面処理前の鋼板の表面清浄性を、容易かつ正確に評価することができる鋼板表面の清浄性確認装置に関する。
近年における表面処理鋼板には、防錆性に加えて、プレス成形性や溶接性、塗装性など様々な性能が求められている。しかし、光沢度や色調にむらのない均質かつ美麗な外観品質が求められることは現在も変わるところはなく、ユーザからの要求は以前にも増して厳しいものとなっている。
一般に、表面処理鋼板の外観品質は、焼鈍処理された冷延鋼板(原板)の表面状態が大きく影響する。このため、表面処理設備の前段設備である連続焼鈍ラインの前処理工程においては、アルカリ洗浄処理、リンス洗浄処理、および液切り処理を施すことにより、均質かつ美麗な外観品質の前提となる鋼板の表面清浄性を確保している。また、必要に応じて、アルカリ洗浄処理とリンス洗浄処理の間で、鋼板表面に存在する酸化膜(スケール)を除去する酸洗処理が施される場合もある。
ここで、アルカリ洗浄処理とは、焼鈍前の冷延鋼板の表面から防錆油や調質圧延油等の油脂分を除去する処理をいい、一般には冷延鋼板を脱脂処理槽に浸漬して洗浄される。また、リンス洗浄処理とは、アルカリ洗浄した冷延鋼板の表面からアルカリ洗浄処理で使用した洗浄液を除去する処理をいい、通常アルカリ洗浄した冷延鋼板を洗浄槽(リンス槽)に浸漬して洗浄されるが、スプレー洗浄される場合もある。さらに、液切り処理とは、リンス洗浄した冷延鋼板の表面からリンス洗浄処理で使用したリンス洗浄液を除去する処理をいい、例えば、リンス洗浄した冷延鋼板を一対のリンガーロールの間に挟みこんで、鋼板表面に付着したリンス洗浄液を搾り取っている。
しかし、溶融めっき等のように鋼板表面に被覆される皮膜が厚い場合には、このような前処理を行うことにより鋼板表面の清浄性を十分に確保できるが、電気めっきや化成処理の場合には、鋼板表面に被覆される皮膜が非常に薄いことから、その外観品質は原板の表面状態の影響を特に敏感に受けやすく、他の表面処理と比較して外観不良が生じやすい。
その1つの形態として、リンス洗浄液の僅かな汚染や不十分な液切りが原因となって、表面処理した鋼板の表面に筋状ないし帯状の模様(以下、液残り模様と称する。)が発現する外観不良が知られている(例えば、特許文献1参照)。当該液残り模様を図1(a)に示すが、これは、アルカリ洗浄または酸洗処理した鋼板を浸漬洗浄するリンス洗浄液が汚れていたり、このリンス洗浄液の液切りが不十分であると、リンス洗浄液に含まれる特定の成分が鋼板表面に付着することになり、この状態で焼鈍を行うと、水分が蒸発するとともに付着した特定成分が鋼板表面上に不均一に焼き付き、さらに酸洗、電気めっき等の表面処理を行うと、特定の成分が焼き付いた部位とそうでない部位とでめっき等の付着むらが生じて、これが筋状ないし帯状の模様、すなわち液残り模様となって現れ、鋼板の外観品質を大きく損なう現象である。適正な洗浄が行なわれた場合には、図1(b)に示すとおり、液残り模様は発現しない。
この液残り模様における第一の特徴は、前記した特定成分が焼鈍後の鋼板表面に焼き付いているか否かを、目視によっては容易に判別できないことである。このため、特定成分が焼鈍後の鋼板表面に焼き付いているにも拘わらず、後工程である酸洗・電気めっきライン等を通板させてしまうため、当該処理後に液残り模様が発現し、表面処理に要した作業自体が無駄となり、製品歩留まりが低下した。また、液残り模様が発現して初めて前処理工程における洗浄不良等に気付くため、原板のみならず焼鈍に要した作業自体までもが無駄となり、製品歩留まりが低下したのである。
そしてこの第二の特徴は、いったん焼鈍によって前記特定成分が鋼板表面に焼き付いてしまうと、容易には除去できないことである。たとえ酸洗によって除去できたとしても、特定成分が焼き付かなった部位は過酸洗になって表面が荒れた状態となるから、特定成分が焼き付いてこれを除去した部位と焼き付かなかった部位とでめっき等の付着むらが生じ、結局は液残り模様が発現してしまうのである。
なお、鋼板に液残り模様が発現するメカニズムについては、現在のところはっきりと解明されていないが、本発明者は独自の調査研究によって、以下のとおり推定している。
液残り模様が発現する条件は、(1)一定量の硫酸イオンが鋼板上に付着・乾燥すること、(2)この鋼板を加熱処理すること、(3)最後に酸洗すること、の3つであり、条件が一つでも欠けると発現しないことを実験で確認している。従って液残り模様のメカニズムは、硫酸イオン濃度の高いリンス洗浄水が鋼板に付着した後、鋼板が焼鈍炉内で加熱される際に鋼板表面にFe−S系の複合酸化物が生成され、焼き付いた状態となる。この複合酸化物は、直接肉眼で確認できないものの、酸で除去されにくい物質であるため、鋼板表面にこれが生成された部分とされていない部分では、酸洗処理時にムラが生じ、模様が発現していると推定している。
以上述べたことから明らかなとおり、当該液残り模様の発生とこれによる製品歩留まりの低下を防ぐためには、いかに焼鈍前の鋼板の表面清浄性を確保出来るかにかかっていた。
そうすると、液残り模様の発現要因の一つはリンス洗浄液に含まれる有害成分、特に硫酸イオンであるから、当該発現要因自体を解消して当該問題を抜本的に解決しようとするのが極めて自然な考え方である。
その一つがリンス洗浄液に純水を使用する方法である。純水は有害な硫酸イオンの濃度が極めて低く、また、液切りが不十分であっても鋼板表面に付着する硫酸イオンは微量となることから、純水の使用によって当該問題を完全に解決できるはずである。
しかしながら、リンス洗浄処理工程においては大量のリンス洗浄液を必要とし、しかも純水は高価であることからコスト的に見合わず、実際には製造現場で大量に使用できないのである。
このため、多くの製造現場では、従来からコスト的に有利な工業用水を使用することによって対応してきたし、現在もなお当該方法で対応している。
しかし、工業用水は、基本的には貯水池や河川から引いてくる水であるため、その水質は、気象条件等の外的環境によって大きく変動する。例えば、梅雨の時期には工業用水中の硫酸イオン濃度は低いが、晴れの日が続く夏場になると硫酸イオン濃度が上昇してしまうのである。
したがって、工業用水を大量に使用してリンス洗浄液の汚染を防止する方法は、硫酸イオン濃度が低く、かつ、液切りも適正に実施されれば一定の効果を発揮できるが、気象条件等の外的環境によって水質が大きく変動するので、使用水量の決定にあっては熟練作業者の経験やノウハウに頼らざるを得ない実情があった。また、コスト的に有利な工業用水とはいっても使用水量は極力抑えたいところ、上記の通りであるから、製品品質を重視するあまり過剰な洗浄をすることも珍しくなく、必ずしもコスト的に有利な方法とは言えない側面があった。
さらに工業用水を使用する上での最大の課題は、工業用水には有害成分の一つである硫酸イオンが含まれているため、純水を使用する場合と異なり、たとえ大量に使用したとしても液残り模様の発現を防げない場合があるということである。
さらには、たとえ硫酸イオン濃度が低かったとしても、その後に行われる液切りが不十分であると液残り模様が発現するという問題もある。すなわち、例えば特許文献1においては、鋼板表面に付着した洗浄液をリンガーロールで液切りを行い、次に水蒸気を鋼板表面に吹き付けて洗浄し、さらに後段に配置されたリンガーロールで再び液切りを行う方法が開示されているが、リンガーロールは一般的にゴム製であるため、鋼板の鋭利な端部で筋状のキズが付きやすく、キズの程度が進行(悪化)すると、液残り模様の発現要因の一つとなってしまうのである。
具体的には、一対のロールを鋼板表面に圧着させて鋼板表面に付着したリンス洗浄液を搾り取るリンガーロールにキズが生じると、当該キズが生じた部分にはリンス洗浄液が集中し、リンガーロールを通過した鋼板表面にはリンス洗浄液が筋状ないし帯状となって残留する。したがって、この状態で焼鈍を行うと水分が蒸発するとともに付着した有害成分が鋼板表面上に筋状ないし帯状となって焼き付き、この上に電気めっき等の表面処理を行うと、これが筋状ないし帯状の模様、すなわち液残り模様となって現れ、鋼板の外観品質を大きく損なうことになるのである。これが、たとえリンス洗浄液に含まれる硫酸イオン濃度が低かったとしても、リンガーロールの損傷等により液切りが不十分になると液残り模様が発現するメカニズムである。
そこで、別のアプローチの仕方として、鋼板表面に付着した有害成分の付着量を成分分析装置によって測定し、付着量が規定値以下であることを確認(管理)してから、焼鈍および表面処理を施す方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、化学分析装置やX線分光分析装置等によって得られるデータは、鋼板表面上のある1点、すなわち計測点におけるポイント的なデータでしかないため、前記付着物の分布や形態を正確に把握できない。このため、たとえ付着量が規定値以下であっても、表面処理後に液残り模様が発現する場合があった。
すなわち、表面処理鋼板に求められる美観としては、表面処理された鋼板の表面全体を平面(2次元)的かつ連続的に観察して、鋼板表面が均一に処理されているか否か、一様に処理されているか否か、あるいは光沢度や色調にむらが生じていないか等の観点から評価されるものであるところ、当該方法によっては前記付着物の分布や形態を平面的に捉えることができず、例えば、硫酸成分が筋状ないし帯状となって鋼板表面に付着していても、どのような範囲で分布しているのか、分布に偏りがあるのか等を把握できないのである。このため、付着量が規定値以下であることを確認してから焼鈍および表面処理したところで、筋状ないし帯状の模様となって現れる液残り模様を完全には防げなかった。
また、前記付着物の分布や形態の平面(2次元)的な把握を可能とすべく、計測点を増加させる改善策も考えられるが、前記した成分分析装置は、一般に計測できる単位面積が狭く、しかも得られる付着量のデータは当該単位面積における平均値でしかないので、依然として鋼板表面における前記付着物の分布等を正確には把握できなかった。
また、特許文献1に記載の方法以外としては、同じく焼鈍前の鋼板からサンプル板を採取し、当該サンプル板に焼鈍および電気めっき等の表面処理を施して、当該サンプル板に液残り模様が発現しないことを確認してから、表面処理を行うべき鋼板に焼鈍および表面処理を施す方法も考えられなくはない。
この方法によれば、硫酸成分が筋状ないし帯状となって鋼板表面に付着していれば、サンプル板表面には液残り模様が発現し、これを目視によって容易に確認できるので、特許文献1に記載の方法よりも確実に液残り模様の発現を予測できる。すなわち、サンプル板表面に液残り模様が発現しなければ、安心して焼鈍ならびに表面処理を行うことができる一方、サンプル板表面に液残り模様が発現した場合には、前処理工程における洗浄不備に迅速に対応できる。
しかしながら、サンプル板用の焼鈍設備および表面処理設備を新たに設ける必要があり、設備的にもコスト的にも現実的な手法ではないのである。
特開平10−317180号公報
すなわち、液残り模様の発現を抜本的に解決するためには、いかにリンス洗浄液に含まれる有害成分を減少させるかにかかっているところ、純水の使用はコスト的に難しいので、有害成分の一つである硫酸イオンを含み、しかもその濃度が気象条件等の外的環境によって大きく変動してしまう工業用水を使用せざるを得ないのである。
また、たとえ気象条件等の外的環境に恵まれて硫酸イオン濃度が低い状態にあったとしても、リンガーロールの損傷や磨耗等によって液切りが適正に行われないと、液残り模様が発現してしまう場合もある。そして、ゴム製のリンガーロールは鋼板の鋭利な端部でキズが付き易いので、なおさら液残り模様が発現しやすくなる。
一方、工業用水や容易にキズが付いてしまうゴム製のリンガーロールを使用せざるを得ないとはいっても、少なくとも表面処理後に液残り模様が発現することの確証を得る手段が存在したならば、使用水量を増加させたり、硫酸イオン濃度を強制的に低下させたり、あるいはリンガーロールを交換する等の対応もできたところ、設備的にもコスト的にも現実的といえる手段が存在しなかったために、表面処理後の鋼板表面に液残り模様が発現するまで前記対応が遅れ、その結果として、原板のみならず表面処理等に要した作業自体までもが無駄となったのである。
さらには、純水を使わず工業用水のみの洗浄であっても条件が揃うときには液残り模様の発現防止に一定の効果を発揮することから、少なくとも表面処理後に液残り模様が発現しないことの確証を得る手段が存在したならば、安心してリンス洗浄処理や表面処理等を行うこともできたところ、設備的にもコスト的にも現実的といえる手段が存在しなかったために、過剰な洗浄等に頼らざるを得なかったのである。
本発明の解決すべき課題は、このような背景のもと工業用水をリンス洗浄液として使用しながらも、液残り模様の発現を防止して、外観ならびに製品歩留まりに優れた電気めっき鋼板または化成処理鋼板を製造できる方法およびその装置を提供することである。
さらには、かつて設備的にもコスト的にも現実的といえる手段が存在しなかった、液残り模様が発現するか否かを目視によって容易に確認できる鋼板表面の清浄性確認装置を提供することである。
本発明者は、硫酸イオンを含み、しかもその濃度が気象条件等の外的環境によって大きく変動する工業用水を使用せざるを得ないという制約の下、いかにして液残り模様の発現を防ぐことができるかについて種々の実験的検討をしたところ、以下の知見を得た。
(A)工業用水は有害成分である硫酸イオンを含み、しかも気象条件等の外的環境によってその濃度が大きく変動するが、硫酸イオン濃度が低い場合には、液残り模様の発現防止に一定の効果を奏すること。特に硫酸イオン濃度が10ppm以下のときに、所定の効果を発揮すること。
(B)ただし、工業用水中の硫酸イオン濃度が低い場合であっても、リンガーロールの損傷等によって液切りが不十分になると液残り模様が発現する場合があるので、なんらかの新たな手段を開発することにより鋼板表面の清浄性を確認する必要があること。換言すると、硫酸イオン濃度の上昇やリンガーロールの損傷等を感知できるようにすべきこと。
以上から本発明者は、工業用水をリンス洗浄液として使用する場合であっても、液切りを十分に行い、かつ焼鈍炉内で鋼板表面に焼き付いた硫酸イオンの分布や形態を目視によって容易に確認することができれば、液残り模様の発現を防止できるという知見に到った。そこで本発明者は、当該新たな手段を開発すべく、数多くの理論検討および実験検討を行った結果、新たに以下の知見を得た。
(C)表面に硫酸イオンが筋状ないし帯状に焼き付いている焼鈍板、換言すると、このまま表面処理を行えば液残り模様が発現する焼鈍板に対して、所定の条件で電解脱脂処理と電解酸洗処理を順次行うと、焼鈍板の表面には液残り模様と極めて類似する模様(以下、擬似模様と称する。)が発現すること。すなわち、当該新たな手段を用いることにより、焼鈍後表面処理前の段階において、液残り模様の発現有無の予測ならびに硫酸イオン濃度の上昇またはリンガーロールの損傷等を感知できること。
上記の知見に基づき、本発明者は、工業用水をリンス洗浄液として使用しながらも、液残り模様の発現を防止して、外観ならびに製品歩留まりに優れた電気めっき鋼板または化成処理鋼板を製造できる方法およびその装置、ならびに、かつては設備的にもコスト的にも現実的といえる手段が存在しなかった、液残り模様が発現するか否かを目視によって容易に確認できる鋼板表面の清浄性確認装置に想到した。その要旨とするところは以下の通りである。
(1)冷延鋼板にアルカリ洗浄と酸洗のいずれか一方または双方の洗浄処理と、前記洗浄処理で付着した洗浄液を鋼板表面から除去するリンス洗浄処理と、リンス洗浄処理で付着したリンス洗浄液を鋼板表面から除去する液切り処理とを行う連続焼鈍ラインの前処理工程と、前処理された冷延鋼板を連続焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍された鋼板に電気めっきと化成処理のいずれか一方または双方の表面処理を行う表面処理工程とを備えた表面処理鋼板の製造方法において、前記焼鈍工程と表面処理工程の間に、表面処理前の鋼板からサンプルを採取し、サンプルに電解脱脂処理と電解酸洗処理を順次行い、サンプル表面に所定の模様が発現するか否かにより鋼板表面の清浄性を評価する清浄性評価工程を更に備えたことを特徴とする外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
(2)前記清浄性評価工程において所定の模様が発現した場合には、連続焼鈍ラインの前処理工程におけるリンス洗浄能力と液切り能力のいずれか一方または双方を強化することを特徴とする前記(1)に記載の外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
(3)前記リンス洗浄能力の強化が、硫酸イオン濃度が10ppm以下のリンス洗浄液を用いてリンス洗浄することを特徴とする前記(2)に記載の外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
(4)前記電解脱脂処理と電解酸洗処理を30〜240C/dmのクーロン量で行うことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
(5)前記電解脱脂処理と電解酸洗処理を10〜35℃の温度で行うことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
(6)前記電解脱脂処理を、NaOH濃度が5〜50g/Lの電解脱脂液を用いて行うことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
(7)前記電解酸洗処理を、HSO濃度が30〜50g/Lの電解酸洗液を用いて行うことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
(8)電気めっき前または化成処理前の鋼板の表面清浄性を目視で確認するための装置であって、鋼板から採取したサンプルを電解脱脂する電解脱脂処理槽と、サンプルを電解酸洗する電解酸洗処理槽と、前記電解脱脂処理槽に収容された電解脱脂液または前記電解酸洗処理槽に収容された電解酸洗液に浸漬されたサンプルと各処理槽が各々具備する電極との間に直流電圧を印加する電源を備えたことを特徴とする鋼板表面の清浄性確認装置。
(9)さらに、前記サンプルを前記電解脱脂液または電解酸洗液の液面に対して垂直に保持する手段と、保持したサンプルを水平方向に移動する手段と、保持したサンプルを昇降する手段を備えたことを特徴とする前記(8)に記載の鋼板表面の清浄性確認装置。
(10)前記電解脱脂処理槽と電解酸洗処理槽における電解処理を30〜240C/dmのクーロン量で行うことを特徴とする前記(8)または(9)に記載の鋼板表面の清浄性確認装置。
(11)前記電解脱脂液と電解酸洗液の温度が10〜35℃であることを特徴とする前記(8)〜(10)のいずれか1項に記載の鋼板表面の清浄性確認装置。
(12)前記電解脱脂液のNaOH濃度が5〜50g/Lであることを特徴とする前記(8)〜(11)のいずれか1項に記載の鋼板表面の清浄性確認装置。
(13)前記電解酸洗液のHSO濃度が30〜50g/Lであることを特徴とする前記(8)〜(11)のいずれか1項に記載の鋼板表面の清浄性確認装置。
(14)前記(8)〜(13)のいずれか1項に記載の鋼板表面の清浄性確認装置を、連続焼鈍ラインの出側に配置したことを特徴とする外観に優れた表面処理鋼板の製造装置。
焼鈍工程と表面処理工程との間に新たに鋼板表面の清浄性評価工程を設けた本発明に係る表面処理鋼板の製造方法およびその装置によれば、たとえ工業用水やリンガーロールを使用しても、焼鈍後表面処理前の段階において確実かつ容易に、液残り模様が発現するか否かを予測できるので、外観ならびに製品歩留まりに優れた電気めっき鋼板または化成処理鋼板を安定して製造できる。
具体的には、焼鈍後表面処理前の段階において液残り模様が発現するとの結果を得た場合には、表面処理作業を速やかに中止でき、従来技術では実施せざるを得なかった無駄な作業を未然に防ぐことができる。また、上工程であるリンス洗浄処理で使用する工業用水を増加させたり、リンガーロールを交換する等の再発を防止するための対応を迅速に採ることができることから、表面処理鋼板の外観品質ならびに製品歩留まりの改善を図ることができる。
一方、液残り模様が発現しないとの結果を得た場合には、次工程である表面処理を安心して行うことができ、液残り模様の発現しない外観に優れた表面処理鋼板を安定して得ることができる。また、当該模様が発現しないとの結果は、リンス洗浄処理工程における洗浄処理能力が正常であることを裏付けるものとなるから、熟練作業者の経験やノウハウに頼ることなく、経験の浅い作業者であっても適正な洗浄条件で操業することができ、操業の安定化ならびにリンス洗浄水のコスト削減を図ることができる。
これは、連続焼鈍ラインおよび電気めっきまたは化成処理ラインの長時間安定操業、ひいては近年ユーザからの要求がますます高まっている均質かつ美麗な外観品質に資するものであり、また、美麗な表面性状を有する表面処理鋼板を安定して製造できるので、製造品質に与える影響ならびに経済的効果は極めて大きく、鉄鋼業界のみならず、その産業上利用性は極めて甚大である。
以下、図2〜図4を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図2は、本発明に係る表面処理鋼板の製造方法の1態様を示すフローチャートであり、連続焼鈍ラインの前処理工程、焼鈍工程、そして本発明の最大の特徴である清浄性評価工程、および表面処理工程とから構成される。
連続焼鈍ラインの前処理工程は、防錆油や調質圧延油等の油脂分を鋼板表面から除去するアルカリ洗浄処理と、鋼板表面に存在する無機系の汚れ、例えば、錆、酸化皮膜(スケール)、スマット等を除去する酸洗処理と、これらの洗浄処理で使用した洗浄液を鋼板表面から除去するリンス洗浄処理、さらにはリンス洗浄処理で付着したリンス洗浄液を鋼板表面から除去する液切り処理とから構成される。
なお、図2に示すように、本発明に係る表面処理鋼板の製造方法においては、酸洗処理を含まない場合も含む。
アルカリ洗浄処理で使用する洗浄液のアルカリ塩としては、特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、シアン化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム等のいずれか一つまたはこれらの混合物を用いることができる。
なお、必要に応じて、アルカリ洗浄液にアニオン界面活性剤やノニオン界面活性剤を添加することにより洗浄力を向上させることができる。
また、洗浄方法についても特に限定されるものではなく、浸漬洗浄、ブラシ洗浄、電解洗浄、スプレー洗浄等のいずれか一つまたはこれらを組み合わせて用いることができる。
酸洗処理で使用する洗浄液としても、特に限定されるものではなく、塩酸、硫酸、硝酸等のいずれか一つまたはこれらの混合物を用いることができる。
なお、必要に応じて酸洗抑制剤(インヒビタ)を添加することにより、鋼板表面の肌荒れを防ぎ、比較的均一な脱錆、脱スケールを行うことができる。また、酸洗促進剤を添加することにより、鋼板表面のぬれ性を向上させることができる。
洗浄方法についても特に限定されるものではなく、浸漬洗浄、電解洗浄、機械的方法等のいずれか一つまたはこれらを組み合わせて用いることができる。
リンス洗浄処理で使用するリンス洗浄液としては、前記したように純水はもちろんのこと、工業用水やイオン交換水等を用いることができる。
そして、当然のことながら液残り模様の発現を抑止するには、リンス洗浄液の硫酸イオン濃度を低減させることが有効であり、望ましくは、硫酸イオン濃度を10ppm以下にすることが好ましい。
これは、本発明者が数々の実験および解析を行った結果、初めて明らかにした知見であり、その内容は以下のとおりである。
前記したように液残り模様の発現要因は、リンス洗浄液に含まれる硫酸イオンとリンガーロールの損傷等による液切り不全であるが、本発明者は、液切りが適正に行われるとした場合の、液残り模様が発現しない硫酸イオン濃度の限界値を調査すべく、以下の実験を行った。なお、図3は当該調査方法を示す模式図である。
まず、板サイズがt0.2mm×W900mmの冷延鋼板に対し、以下の条件で電解脱脂および電解酸洗を施し、純水を用いてこれらの処理で用いた洗浄液を完全に除去した。
[電解脱脂条件]
NaOH:20g/L、液温度:55℃、電流密度:20A/dm、1.3秒通電
[電解酸洗条件]
SO:20g/L、液温度:25℃、電流密度:20A/dm、1.3秒通電
その後、前記鋼板に対し、硫酸イオン濃度が5、10、25、50ppmのリンス洗浄液を図3に示すように片面あたり5g/m付着させ、その後、5%H残N、露点:−40℃の雰囲気中で30秒で板温度650℃に昇温し、その後30秒間650℃で保持した。次いで、80℃まで冷却し、脱炉した。
その後、脱炉した焼鈍板に対し、以下のめっき条件で3g/LのSnめっきを片面に施し、液残り模様が発現するか否かを観察した。
[めっき条件]
Snイオン濃度:20g/L、液温度:50℃、電流密度:5A/dm、11秒通電
その結果、硫酸イオン濃度が10ppm以下の鋼板については外観品質に問題は生じなかったが、硫酸イオン濃度が25ppmと50ppmのリンス洗浄液を使用した鋼板については液残り模様が発現し、表面処理鋼板の外観品質が大きく損なわれた。
また、前記焼鈍板に対し、電気亜鉛めっきラインで亜鉛めっきを5g/m片面に施した場合やティンフリースチールラインでクロムめっきを100mg/m片面に施した場合についても同様の実験をしたところ、硫酸イオン濃度が10ppm以下の鋼板については外観品質に問題は生じなかったが、硫酸イオン濃度が25ppmと50ppmのリンス洗浄液を使用した鋼板については液残り模様が発現し、表面処理鋼板の外観品質が大きく損なわれた。
同様に、前記焼鈍板に対し、りん酸処理を8mg/m片面に施した場合やクロメート処理を8mg/m片面に施した場合についても同様の実験をしたところ、Snめっき等を施した場合と同様の結果となった。
したがって、リンス洗浄処理で使用するリンス洗浄液としては、硫酸イオン濃度を10ppm以下にすることが好ましい。
なお、硫酸イオン濃度を低下させる方法としては、特に限定されるものではないが、連続焼鈍ラインの前処理工程のリンスタンク出側に2対以上のリンガーロールを設置し、最終リンガーロールの下段において鋼板に、板巾方向にノズルで純水をスプレーすることで、鋼板に付着したリンス洗浄液の硫酸イオン濃度を低下することができる。
液切り処理としても特に限定されるものではなく、一般的に用いられるゴム製のリンガーロールで液切りを行ってもよいし、前記したようにリンガーロールの設置台数を増加させることにより液切り強化を図ることも可能である。
また、前記したようにリンガーロールの上段下段に関わらず、純水等のスプレー洗浄を行うことによりリンス洗浄能力を補助的に強化することができる。
焼鈍炉あるいは焼鈍条件についても特に限定されるものではなく、一般的な冷延鋼板あるいは表面処理鋼板の製造工程で用いられる連続焼鈍ラインを用いることができる。
次に、本発明に係る表面処理鋼板の製造方法の最大の特徴である清浄性評価工程について説明する。
本工程においては、焼鈍後表面処理前の鋼板からサンプルを採取し、当該サンプルに電解脱脂処理と電解酸洗処理を順次行い、サンプル表面に液残り模様と極めて類似する模様、すなわち疑似模様が発現するか否かを確認する。
これも、本発明者が数々の実験および解析を行った結果、表面に硫酸イオンが筋状ないし帯状に焼き付いている焼鈍板、換言すると、このまま表面処理を行えば液残り模様が発現する焼鈍板に対して、以下の条件で電解脱脂処理と電解酸洗処理を順次行うと、焼鈍板の表面には疑似模様が発現することを初めて知見したことに基づくものである。
なお、表1〜3は当該実験結果を示したものであるが、これは、リンガーロール出側において、長手方向から見た場合に左右対称になるように、故意に硫酸イオン濃度が0〜50ppmのリンス洗浄液をスプレー散布し、焼鈍炉の出側でコイルを長手方向に2分割し、片方のコイル(以下、本コイルと称する。)に対しては電気Snめっきラインでめっきを施し、もう片方のコイル(以下、評価コイルと称する。)に対しては、表1〜3に示す条件で電解脱脂処理および電解酸洗処理を行い、その後、双方のコイルを分割前の形になるように並べて比較観察した場合に、左右対称に液残り模様と擬似模様が発現するか否かについて実験したものである。
なお、前処理工程における電解脱脂条件・電解酸洗条件、および純水を用いてこれらの処理で用いた洗浄液を完全に除去したこと、さらに、本コイルに対する焼鈍条件・Snめっき条件は、前記した液残り模様が発現しない硫酸イオン濃度の限界値調査で用いた条件と同一である。
さらに、当該実験の後、電気亜鉛めっきライン、ティンフリースチールライン、りん酸処理ライン、およびクロメート処理ラインを用いて、同様の実験をしたところ、電気Snめっきラインと同様の結果になったので、表1〜3で代用する。
ただし、前記した液残り模様が発現しない硫酸イオン濃度の限界値調査においては、液残り模様の発現要因の一つである液切り不全を調査目的のため実験条件から外したが、本実験においては、液切り不全の影響を調査するため、鋼板を長手方向から見た場合に左右対称に筋がつくように、リンガーロールに対して故意にキズを設けている。
電解脱脂処理と電解酸洗処理は、30〜240C/dmのクーロン量(電流密度×電解時間)で行うことが望ましい。
表1の実験結果に示すように、30C/dm未満では脱脂・酸洗能力が低く、本コイルでは液残り模様が発現するのに評価コイルでは疑似模様が発現しない。240C/dmを超えると過酸洗となり、発現した疑似模様までも酸洗することになり目視で確認することができない。
なお、電解脱脂処理と電解酸洗処理は、同一のクーロン量で行うことが望ましい。脱脂と酸洗の電解条件を変えると制御が複雑になり、また、電解用電源が2セット必要となり装置規模が大きくなる。
Figure 2006348377
電解脱脂処理と電解酸洗処理は、10〜35℃で行うことが望ましい。すなわち、電解脱脂液と電解酸洗液は10〜35℃であることが望ましい。
表1の実験結果に示すように、10℃未満では脱脂・酸洗能力が低く、本コイルでは液残り模様が発現するのに評価コイルでは疑似模様が発現しない。35℃を超えても疑似模様は発現するが、昇温装置が必要となりコストに見合わない。
電解脱脂処理については、NaOH濃度が5〜50g/Lの電解脱脂液を用いることが望ましい。
表2の実験結果に示すように、5g/L未満では脱脂能力が低く、本コイルでは液残り模様が発現するのに評価コイルでは疑似模様が発現しない。50g/Lを超えると発泡が激しくなり、泡がサンプル表面に付着して、本コイルでは液残り模様が発現しないにも拘らず評価コイルでは疑似模様が発現してしまう。
Figure 2006348377
電解酸洗処理については、HSO濃度が30〜50g/Lの電解酸洗液を用いることが望ましい。
表3の実験結果に示すように、30g/L未満では酸洗能力が低く、本コイルでは液残り模様が発現するのに評価コイルでは疑似模様が発現しない。50g/Lを超えると過酸洗となり、発現した疑似模様までも酸洗することになり目視で確認することができない。
Figure 2006348377
図4は、本発明に係る鋼板表面の清浄性確認装置2の模式図であり、電気めっき前または化成処理前の鋼板から採取したサンプル1を電解脱脂する電解脱脂処理槽3と、電解脱脂液を洗浄する水洗槽4、サンプルを電解酸洗する電解酸洗処理槽5、および電解酸洗液を洗浄する水洗槽6を備える。
また、当該清浄性確認装置は電源8を備えているので、前記電解脱脂処理槽3に収容された電解脱脂液に浸漬されたサンプル1と電解脱脂処理槽3が具備する電極7との間に直流電圧を印加することができ、これにより鋼板表面の清浄性を確認するための電解脱脂処理を容易に行うことができる。同様に、前記電解酸洗処理槽5に収容された電解酸洗液に浸漬されたサンプル1と電解酸洗処理槽5が具備する電極7との間に直流電圧を印加することができ、これにより鋼板表面の清浄性を確認するための電解酸洗処理を容易に行うことができる。
清浄性確認装置2は、前記サンプルを前記電解脱脂液または電解酸洗液の液面に対して垂直に保持する手段と、保持したサンプルを水平方向に移動する手段と、保持したサンプルを昇降する手段を備えることが望ましい。これにより、何人が当該装置を使用しても、再現性よく鋼板表面の清浄性を確認することができる。
すなわち、本発明に係る鋼板表面の清浄性確認装置2によれば、たとえ使用する工業用水やリンガーロールの状態が不明であっても、焼鈍後表面処理前の段階において確実かつ容易に、液残り模様が発現するか否かを予測できるので、外観ならびに製品歩留まりに優れた電気めっき鋼板または化成処理鋼板を安定して製造することができる。
したがって、当該清浄性確認装置は、図2に示すように、連続焼鈍ラインの出側に配置することが望ましい。これにより、表面処理鋼板の外観品質に最も重大な影響を与える鋼板表面の清浄性を事前に確認してから電気めっき等の表面処理を行うことができるので、めっき不良等を完全に防止することができる。
また、疑似模様が発現した場合には、表面処理作業を速やかに中止でき、従来技術では実施せざるを得なかった無駄な作業を防げるとともに、連続焼鈍ラインの前処理工程におけるリンス洗浄能力と液切り能力のいずれか一方または双方を強化する等の再発を防止するための対応を迅速に採ることができ、表面処理鋼板の外観品質ならびに製品歩留まりの改善を図ることができる。
なお、リンス洗浄能力の強化としては、リンス洗浄処理で使用する工業用水を増加させたり、リンス洗浄液の硫酸イオン濃度を10ppm以下に低下させる等の措置、リンス洗浄液の交換、リンス洗浄槽の増加、あるいは純水等のスプレー洗浄、ブラシ洗浄といった補助的洗浄を追加する等の措置をとることができる。
また、液切り能力の強化としては、リンガーロールの補修・交換、設置台数の増加、押付圧力の調整、あるいは吸液リンガーロールの追加等の措置をとることができる。
一方、疑似模様が発現しない場合には、次工程である表面処理を安心して行うことができ、液残り模様の発現しない外観に優れた表面処理鋼板を安定して得ることができる。また、疑似模様が発現しないとの結果は、リンス洗浄処理工程における洗浄処理能力が正常であることを裏付けるものとなるから、熟練作業者の経験やノウハウに頼ることなく、経験の浅い作業者であっても適正な洗浄条件で操業することができ、操業の安定化ならびにリンス洗浄水のコスト削減を図ることができる。
最後に、表面処理工程について説明するが、当該工程における表面処理は、焼鈍板に電気めっきと化成処理のいずれか一方または双方の表面処理を行うものであれば足り、一般的な電気Snめっきライン、電気亜鉛めっきライン、ティンフリースチールライン、りん酸処理ライン、およびクロメート処理ラインを用いることができるし、その表面処理条件も前記した液残り模様が発現しない硫酸イオン濃度の限界値調査において用いた条件等を実施できるものであれば足りる。
(a)は不適正な条件で洗浄後、焼鈍・酸洗を行なって液残り模様が発現した場合の図であり、(b)は適正な条件で洗浄後、焼鈍・酸洗を行なって液残り模様が発現しなかった場合の図である。 本発明に係る表面処理鋼板の製造方法の1態様を示すフローチャートである。 液残り模様が発現しない硫酸イオン濃度の限界値調査方法を示す模式図である。 本発明に係る鋼板表面の清浄性確認装置の模式図である。
符号の説明
1 サンプル 2 清浄性確認装置
3 電解脱脂処理槽 4 電解脱脂液を洗浄する水洗槽
5 電解酸洗処理槽 6 電解酸洗液を洗浄する水洗槽
7 電極 8 電源
9 サンプル側配線 10 処理槽側電極配線

Claims (14)

  1. 冷延鋼板にアルカリ洗浄と酸洗のいずれか一方または双方の洗浄処理と、前記洗浄処理で付着した洗浄液を鋼板表面から除去するリンス洗浄処理と、リンス洗浄処理で付着したリンス洗浄液を鋼板表面から除去する液切り処理とを行う連続焼鈍ラインの前処理工程と、
    前処理された冷延鋼板を連続焼鈍する焼鈍工程と、
    焼鈍された鋼板に電気めっきと化成処理のいずれか一方または双方の表面処理を行う表面処理工程
    とを備えた表面処理鋼板の製造方法において、
    前記焼鈍工程と表面処理工程の間に、
    表面処理前の鋼板からサンプルを採取し、サンプルに電解脱脂処理と電解酸洗処理を順次行い、サンプル表面に所定の模様が発現するか否かにより鋼板表面の清浄性を評価する清浄性評価工程を更に備えたことを特徴とする外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  2. 前記清浄性評価工程において所定の模様が発現した場合には、連続焼鈍ラインの前処理工程におけるリンス洗浄能力と液切り能力のいずれか一方または双方を強化することを特徴とする請求項1に記載の外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  3. 前記リンス洗浄能力の強化が、硫酸イオン濃度が10ppm以下のリンス洗浄液を用いてリンス洗浄することを特徴とする請求項2に記載の外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  4. 前記電解脱脂処理と電解酸洗処理を30〜240C/dmのクーロン量で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  5. 前記電解脱脂処理と電解酸洗処理を10〜35℃の温度で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  6. 前記電解脱脂処理を、NaOH濃度が5〜50g/Lの電解脱脂液を用いて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  7. 前記電解酸洗処理を、HSO濃度が30〜50g/Lの電解酸洗液を用いて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の外観に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  8. 電気めっき前または化成処理前の鋼板の表面清浄性を目視で確認するための装置であって、鋼板から採取したサンプルを電解脱脂する電解脱脂処理槽と、サンプルを電解酸洗する電解酸洗処理槽と、前記電解脱脂処理槽に収容された電解脱脂液または前記電解酸洗処理槽に収容された電解酸洗液に浸漬されたサンプルと各処理槽が各々具備する電極との間に直流電圧を印加する電源を備えたことを特徴とする鋼板表面の清浄性確認装置。
  9. さらに、前記サンプルを前記電解脱脂液または電解酸洗液の液面に対して垂直に保持する手段と、保持したサンプルを水平方向に移動する手段と、保持したサンプルを昇降する手段を備えたことを特徴とする請求項8に記載の鋼板表面の清浄性確認装置。
  10. 前記電解脱脂処理槽と電解酸洗処理槽における電解処理を30〜240C/dmのクーロン量で行うことを特徴とする請求項8または9に記載の鋼板表面の清浄性確認装置。
  11. 前記電解脱脂液と電解酸洗液の温度が10〜35℃であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の鋼板表面の清浄性確認装置。
  12. 前記電解脱脂液のNaOH濃度が5〜50g/Lであることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の鋼板表面の清浄性確認装置。
  13. 前記電解酸洗液のHSO濃度が30〜50g/Lであることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の鋼板表面の清浄性確認装置。
  14. 請求項8〜13のいずれか1項に記載の鋼板表面の清浄性確認装置を、連続焼鈍ラインの出側に配置したことを特徴とする外観に優れた表面処理鋼板の製造装置。
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