JP2006348352A - エアベアリングの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【要約書】
【課題】 密度が銅又は鋼の約1/3であり、粒子径は約0.1mm程度であるアルミニウム粉又はアルミニウムを主成分とする合金粉末を出発原料とし、通気性が高く、焼結と同時にバックメタルへの接合が可能である軽量エアベアリングを安価に製造できる方法を得る。
【解決手段】 平均直径0.2mm未満の原料アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末を、アルゴンガス雰囲気中でメカニカルミリングを行って平均直径0.3〜0.7mmの焼結用アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末とした後、この粉末をアルミニウム合金製バックメタルの上に充填し、さらにこれを真空中で、焼結温度450〜475°C、加圧力2.4〜5MPaで加圧焼結するとともに、バックメタルに接合することを特徴とするエアベアリングの製造方法。
【選択図】図1

Description

この発明は、アルミニウム粉又はアルミニウム合金粉を原料とした焼結による軽量のエアベアリング(空気軸受)の製造方法に関する。
従来、エアベアリングは、主として銅粉をベースにしてニッケル、錫、グラファイトなどを加えた混合粉又はステンレス鋼粉を、一度高温で焼結して多孔質の焼結板材を成形した後、その板材をステンレス鋼製のバックメタルに重ね、再度加熱・加圧して両者を接合する方法により製造されていた。
このような焼結体の製品は、材料の融点が高いので、高温で焼結が可能であり、したがって、焼結体の強度を高くできるという利点がある。しかし、一方では、銅の密度が8.9g/cm、鉄の密度が7.8g/cmと大きいので、これらを主原料としたエアベアリングは、非常に重いという欠点を有していた。
このようなことから、アルミニウム又はアルミニウム合金製のエアベアリングの提案もある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかし、市販のアルミニウム粉又はアルミニウム合金粉の原料を出発材料として多孔質の焼結体を製造することは必ずしも容易ではない。上記特許文献では、その製造方法の具体例については、何も触れていない。
市販のアルミニウム粉の粒子径は約0.1mm程度である。このような微細な粒子径を用いて焼結すると、粒子の間隙が減少し通気性が劣るという問題がある。
また、市販のアルミニウム粉は表面が酸化膜で覆われているため、低温での焼結がし難い。したがって、ある程度高温焼結が必要となるが、この場合には粒子同士が不均一に凝着して、粒子の間隙が一層減少し、通気性が劣る結果となる。
また、表面酸化膜の存在は、バックメタルとの接合が難しくなり、接合強度が低下するという問題もある。このようなことから、従来は、粒子径が約0.1mm程度の市販のアルミニウム粉を用いてエアベアリングを、安価に製造することは難しいと考えられていた。
特開平8−93764号公報 特開平8−219145号公報
本発明は、密度が銅又は鋼の約1/3であり、粒子径は約0.1mm程度であるアルミニウム粉又はアルミニウムを主成分とする合金粉末を出発原料とし、通気性が非常に高く、焼結と同時にバックメタルへの接合が可能である軽量エアベアリングを安価に製造できる方法を得ることにある。
本発明は、上記課題を達成するため、次の方法を提供するものである。
1)平均直径0.2mm未満の原料アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末を、アルゴンガス雰囲気中でメカニカルミリングを行って平均直径0.3〜0.7mmの焼結用アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末とした後、この粉末をアルミニウム合金製バックメタルの上に充填し、さらにこれを真空中で、焼結温度450〜475°C、加圧力2.4〜5MPaで加圧焼結するとともに、バックメタルに接合することを特徴とするエアベアリングの製造方法
2)接合助剤を使用せずに、粉末とバックメタルを直接接合することを特徴とする上記1)記載のエアベアリングの製造方法
3)焼結体の密度が2.7g/cm以下であることを特徴とする上記1)又は2)記載のエアベアリングの製造方法
4)焼結体のガスの開放流量が、無負荷状態において0.5MPaのとき15L/min以上であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載のエアベアリングの製造方法
5)平均直径0.2mm未満の原料アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末を、アルゴンガス雰囲気中でメカニカルミリングを行うことにより、酸化膜を除去し、平均直径0.3mm以上の焼結用アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末に径を増加させることを特徴とする上記1)〜4)のいずれかに記載のエアベアリングの製造方法
6)放電プラズマ焼結により焼結することを特徴とする上記1)〜5)のいずれかに記載のエアベアリングの製造方法
本発明は、密度が銅又は鋼の約1/3であり、粒子径は約0.1mm程度であるアルミニウム粉又はアルミニウムを主成分とする合金粉末を出発原料とし、粉末粒子の酸化膜を除去して粒子相互の不規則な凝集を減少させ、これによって低温焼結が可能となり、通気性が非常に高く、焼結と同時にバックメタルへの接合が可能である軽量エアベアリングを安価に製造できるという優れた効果を有する。
図1に、エアベアリングの構造と作動原理の概念図を示す。床面(テーブル)1上にエアベアリング2を置いて作動させた様子を示す。ベースメタル3上には負荷6をかけている。ベースメタル3に結合した焼結層4には、多数の気孔5が形成されており、ベースメタル3に空気7を供給する。これによって、浮上力8を受けて床面1からエアベアリングが浮上する。
本発明のエアベアリングは20〜50mmφの円盤状のものを対象とする。エアベアリングとして要求される性能は、無負荷状態において0.5MPaのとき、15L/min以上のガス流量を保持することである。この開放流量を確保するためには、適度の量と大きさの空隙をアルミニウム焼結層中に残しつつ、バックメタルと焼結体が剥離しない十分な強度を備えることである。
そのためには、焼結温度、焼結時間、焼結圧力、アルミニウム粒子の径を適正条件に設定する必要がある。
本発明は、平均直径0.2mm未満の原料アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末を出発材料として使用することができる。すなわち、粒子径0.1mm程度の市販の安価なアルミニウム粉末を使用することができる。アルミニウム合金の例としては、AlにSi1〜10重量%を添加したAl−Si合金、特にAl−10重量%Si合金が主に使用されるが、アルミニウムが主要成分であれば、他のアルミニウム合金を使用することも当然可能である。本願発明はそれらを含むものである。
アルミニウムのような軟質の金属をアルゴンガス雰囲気中でメカニカルミリングを行うと、粉末粒子の塑性変形、分断、凝集が繰り返されるため、表面の酸化膜は破壊され、新鮮なアルミ粒子の表面が形成される。
これによって、粒子径0.1mm程度の市販の安価なアルミニウム粉末が、凝集して成長し、直径0.2〜0.8mm程度の粒子が生成する。
これを篩い分けして、平均直径0.3〜0.7mmの焼結用アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末を得る。この粉末粒子の径は、後述するように焼結による効率の良い多孔質化のための大きな要因となる。
次に、このように粒子形状を調整した粉末を、焼結型内に予め配置したアルミニウム合金製バックメタルの上に充填し、上下をパンチで押え、さらにこれを5〜8Pa程度の真空中で、加熱しながら加圧して放電プラズマ焼結を行う。焼結温度は450〜475°Cとし、加圧力は2.4〜5MPaとする。焼結時間は1〜30分程度である。
焼結温度が450°C未満、そして加圧力が2.4MPa未満では、十分な強度をもつ焼結体が得られない。製品とするためには、最終的な表面加工が必要となるが、強度が低いと表面加工の際に剥がれ落ちるという問題があるので、それに必要な焼結温度と加圧力が必要となる。
また、焼結温度が475°C、そして加圧力が5MPaを超えると、アルミニウム又はアルミニウム合金の粒子が凝着し過ぎて密度が上がり、適度な多孔質体が得られず、エアベアリングとしての特性を維持するための通気性が低下することになるので、焼結温度を450〜475°Cとし、加圧力は2.4〜5MPaとするのが望ましい。
上記の450〜475°Cの低温焼結によっても、バックメタルとの接合強度を十分に保持することができる。なお、これらの焼結に際して、接合助剤を使用せずに、粉末とバックメタルを直接接合することが望ましい。接合助剤及びそれに起因する残渣は、本質的に焼結材及びバックメタルとは異質の材料であり、少なからず多孔質化に悪影響を与え、通気性を劣化させる要因となるからである。
以上によって、焼結体の密度を2.7g/cm以下にして孔を増加させ、通気性を良好にすることができる。そして、焼結体のガスの開放流量を、無負荷状態において0.5MPaのとき、目標とする15L/min以上を達成することが可能となる。
以下に、本発明の実施例及び比較例を説明する。なお、実施例はあくまで、発明の理解を容易にするためであり、この実施例の条件に制限されない。すなわち、本願発明の技術思想に基づく変形、他の態様、他の実施条件は、本願発明に全て含まれるものである。
平均直径が0.1mmである市販のアルミニウム粉末(純度99.5%)をアルゴンガス雰囲気中でメカニカルミリングを行うことにより、平均直径0.15〜0.7mmの粒状アルミニウム粒子を製造した。これを篩い分けし、それぞれ粉末粒子の平均直径が0.15mm、0.3mm、0.5mm、0.7mmの粉末を得た。
このようにして得たアルミニウム粉末を、黒鉛型に予め挿入しておいた30mmφの円盤状アルミニウム合金製(例えば、A7075を使用)バックメタル上に4gを充填し、上下を黒鉛パンチで押え、真空中で加圧しながら放電プラズマ焼結により焼結した。
この焼結によりアルミニウム粉末粒子を結合させるとともに、前記バックメタルと接合させた。接合に際しては、従来銅合金エアベアリングで知られているCuP合金等の接合助剤は使用しなかった。
焼結温度は450〜480°Cの範囲、加圧力2.4〜7MPaの範囲まで行った。これらの条件で製造されたエアベアリングは、0.5MPaの圧力で通気したときに焼結体がバックメタルから剥離せず、十分な接合強度を有していた。
このようにして作製したエアベアリングを用いて、バックメタルに穿孔した給気孔より空気を通入し、アルミニウム粒子の焼結層に存在する空隙より空気を流出させエアベアリングとしての各種機能を調べた。
図2に、焼結温度450°C、焼結圧力7MPaで10分間焼結した場合の、開放流量のアルミニウム粒子径の依存性を示す。図2に示すように、粉末粒子の平均直径が0.4mm以上では、焼結体のガスの開放流量が、無負荷状態において0.5MPaのとき15L/min以上であるという目標を達成している。
なお、この図2では、粉末粒子の平均直径が0.3mmでは、焼結体のガスの開放流量が、無負荷状態において0.5MPaのとき15L/min以上であるという目標をやや下回っている。しかし、ガス流量はベースメタルの径に依存し、径が大きくなると径の2乗に比例して吹き出し面積が拡大し、ベースメタルからのガスの流量が増すので、後述する図4に示すように、粉末粒子の平均直径が0.3mmでも、焼結体のガスの開放流量15L/min以上であるという目標を達成することが可能である。以上から、エアベアリングとしての所定の流量を達成するためには、0.3mm〜0.7mmのアルミニウム粉末を用いると良いことが分る。
アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末の平均粒径が0.7mmを超えるとさらに流量が増すが、焼結体の気孔が大きくなり過ぎ、ガスの吹き出しが不均一となる。また製品の外観も粗雑になるため好ましくない。したがって、平均粒径は0.7mm以下とすることが望ましい。
図3に、粉末粒子の平均直径が0.5mmの10wt%Si含有アルミニウム合金粉末を420°Cで焼結して得た30mmφ焼結体の焼結圧力とベアリング流量の関係を示す。なおこの場合、30mmφのベースメタルを使用した。この図3に示すように、焼結圧力5.5MPa以下では、同焼結体のガスの開放流量が、無負荷状態において0.5MPaのとき15L/min以上を達成している。
なお、図には示していないが、ガス流量はベースメタルの径に依存し、径が大きくなると径の2乗に比例して吹き出し面積が拡大し、ベースメタルからのガスの流量が増すので、焼結体及びベースメタルの径が50mmφになると、焼結圧力が7MPaでも、焼結体のガスの開放流量15L/min以上であるという目標を達成することが可能である。
図4に、粉末粒子の平均直径が0.3mmである10wt%Si含有アルミニウム合金粉末を50mmφのベースメタルを使用し、焼結温度変化させ、5MPaで焼結した場合の、焼結温度とベアリング流量の関係を示す。
粉末粒子の平均直径が0.3mmにおいては、焼結温度475°C以下で焼結体のガスの開放流量15L/minを達成している。
焼結温度が475°Cを超えると同焼結体のガスの開放流量が、無負荷状態において0.5MPaのとき15L/minを切って急速に減少し、焼結温度480°Cでは5L/min以下となり、好ましくないことが分る。
このことから、焼結時の焼結温度は、475°C以下の低温での焼結、できれば焼結温度450〜470°Cで焼結することが必要である。なお、この場合、平均直径が0.3mm粉末粒子を使用したが、粒子径0.5〜0.7mmの粉末を使用する場合には、さらにガス流量が増加するので、好ましい焼結体が得られる。
図5に、同10wt%Si含有アルミニウム合金粉末を上記と同様の条件で焼結した場合の、焼結温度と焼結密度の関係を示す。焼結温度が475°Cを超えると同焼結体の密度が、本願発明で目標とする2.7g/cmを超えるので、このことからも、焼結温度は475°C以下の低温での焼結が必要であることが分る。
好ましくは焼結温度450〜470°Cである。なお、この場合も、平均直径が0.3mm粉末粒子を使用しているが、粒子径0.5〜0.7mmの粉末を使用する場合には、さらに密度が低下し好ましい焼結体が得られる。
本発明のエアベアリングは、密度が銅又は鋼の約1/3であり、粒子径は約0.1mm程度であるアルミニウム粉又はアルミニウムを主成分とする合金粉末を出発原料とし、通気性が非常に高く、焼結と同時にバックメタルへの接合が可能である軽量エアベアリングを安価に製造できるので、平面又は曲面加工機、露光装置、位置制御装置、各種軽量軸受装置として利用できる。
エアベアリングの構造と作動原理の概念図である。 焼結温度450°C、焼結圧力7MPaで10分間焼結した場合の、開放流量のアルミニウム粒子径の依存性を示す図である。 10wt%Si含有アルミニウム合金粉末を焼結した場合の、焼結圧力とベアリング流量の関係を示す図である。 10wt%Si含有アルミニウム合金粉末を焼結した場合の、焼結温度とベアリング流量の関係を示す図である。 10wt%Si含有アルミニウム合金粉末を焼結した場合の、焼結温度と焼結密度の関係を示す図である。
符号の説明
1:床面(テーブル)
2:エアベアリング
3:ベースメタル
4:焼結層
5:気孔
6:負荷
7:空気
8:浮上力

Claims (6)

  1. 平均直径0.2mm未満の原料アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末を、アルゴンガス雰囲気中でメカニカルミリングを行って平均直径0.3〜0.7mmの焼結用アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末とした後、この粉末をアルミニウム合金製バックメタルの上に充填し、さらにこれを真空中で、焼結温度450〜475°C、加圧力2.4〜5MPaで加圧焼結するとともに、バックメタルに接合することを特徴とするエアベアリングの製造方法。
  2. 接合助剤を使用せずに、粉末とバックメタルを直接接合することを特徴とする請求項1記載のエアベアリングの製造方法。
  3. 焼結体の密度が2.7g/cm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のエアベアリングの製造方法。
  4. 焼結体のガスの開放流量が、無負荷状態において0.5MPaのとき15L/min以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエアベアリングの製造方法。
  5. 平均直径0.2mm未満の原料アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末を、アルゴンガス雰囲気中でメカニカルミリングを行うことにより、酸化膜を除去し、平均直径0.3mm以上の焼結用アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末に径を増加させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエアベアリングの製造方法。
  6. 放電プラズマ焼結により焼結することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエアベアリングの製造方法。
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