JP2009174016A - エアベアリング用多孔質焼結体の製造方法及びエアベアリング用多孔質焼結体 - Google Patents
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Abstract
【課題】密度が銅又は鋼の約1/3であり、粒子径は約0.1mm程度であるアルミニウム粉又はアルミニウムを主成分とする合金粉末を出発原料とし、通気性が高く、接着剤などの使用によりバックメタルへの接合が可能である軽量エアベアリング用多孔質焼結体を安価に製造できる方法を提供する。
【解決手段】平均直径が0.05〜0.7mmであり、99.5%以上の純度を持つアルミニウム粉末又はシリコンを1〜15質量%含有するアルミニウムシリコン合金粉末に、同径の水素化チタン粉末をアルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)となるように添加及び混合し、この混合粉末を黒鉛型に充填して加圧力2.5〜5MPaで加圧成形し、さらにこれを真空中、焼結温度500〜650°Cで焼結することを特徴とするアルミニウム又はアルミニウムシリコン合金を主成分とするエアベアリング2用多孔質焼結体の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】平均直径が0.05〜0.7mmであり、99.5%以上の純度を持つアルミニウム粉末又はシリコンを1〜15質量%含有するアルミニウムシリコン合金粉末に、同径の水素化チタン粉末をアルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)となるように添加及び混合し、この混合粉末を黒鉛型に充填して加圧力2.5〜5MPaで加圧成形し、さらにこれを真空中、焼結温度500〜650°Cで焼結することを特徴とするアルミニウム又はアルミニウムシリコン合金を主成分とするエアベアリング2用多孔質焼結体の製造方法。
【選択図】図1
Description
この発明は、アルミニウム粉又はアルミニウム合金粉を原料とした焼結による軽量のエアベアリング(空気軸受)用多孔質焼結体の製造方法及びエアベアリング用多孔質焼結体に関する。
従来、エアベアリングは、主として銅粉をベースにしてニッケル、錫、グラファイトなどを加えた混合粉又はステンレス鋼粉を、一度高温で焼結して多孔質の焼結板材を成形した後、その板材をステンレス鋼製のバックメタルに重ね、再度加熱・加圧して両者を接合する方法により製造されていた。
このような焼結体の製品は、材料の融点が高いので、高温で焼結が可能であり、したがって、焼結体の強度を高くできるという利点がある。しかし、一方では、銅の密度が8.9g/cm3、鉄の密度が7.8g/cm3と大きいので、これらを主原料としたエアベアリングは、非常に重いという欠点を有していた。
このような焼結体の製品は、材料の融点が高いので、高温で焼結が可能であり、したがって、焼結体の強度を高くできるという利点がある。しかし、一方では、銅の密度が8.9g/cm3、鉄の密度が7.8g/cm3と大きいので、これらを主原料としたエアベアリングは、非常に重いという欠点を有していた。
このようなことから、アルミニウム又はアルミニウム合金製のエアベアリングの提案もある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかし、市販のアルミニウム粉又はアルミニウム合金粉の原料を出発材料として多孔質の焼結体を製造することは必ずしも容易ではない。上記特許文献では、その製造方法の具体例については、何も触れていない。
市販のアルミニウム粉の粒子径は約0.1mm程度である。このような微細な粒子径を用いて焼結すると、粒子の間隙が減少し通気性が劣るという問題がある。また、市販のアルミニウム粉は表面が酸化膜で覆われているため、低温での焼結が難しい。
したがって、ある程度高温焼結が必要となるが、この場合には粒子同士が不均一に凝着して、粒子の間隙が一層減少し、通気性が劣る結果となる。
また、表面酸化膜の存在は、バックメタルとの接合が難しくなり、接合強度が低下するという問題もある。このようなことから、従来は、粒子径が約0.1mm程度の市販のアルミニウム粉を用いてエアベアリングを、安価に製造することは難しいと考えられていた。
したがって、ある程度高温焼結が必要となるが、この場合には粒子同士が不均一に凝着して、粒子の間隙が一層減少し、通気性が劣る結果となる。
また、表面酸化膜の存在は、バックメタルとの接合が難しくなり、接合強度が低下するという問題もある。このようなことから、従来は、粒子径が約0.1mm程度の市販のアルミニウム粉を用いてエアベアリングを、安価に製造することは難しいと考えられていた。
このため、本願発明者は、メカニカルミリングを行って酸化膜を除去すると共に、放電プラズマ焼結する方法を提案した(特許文献3参照)。この方法は有効である。特に、放電プラズマ焼結法は、焼結困難なアルミニウム粉もエアベアリング用の多孔質焼結体を容易に製造できる。しかし、この放電プラズマ焼結機は、非常に高価であるため、焼結装置に高額の設備投資が必要であり、また連続生産ができないという欠点がある。
特開平8−93764号公報
特開平8−219145号公報
特開2006−348352号公報
本発明は、密度が銅又は鋼の約1/3であり、粒子径は約0.1mm程度であるアルミニウム粉又はアルミニウムを主成分とする合金粉末を出発原料とし、通気性が非常に高く、バックメタルへの接合が可能である軽量エアベアリングを、放電プラズマ焼結機を使用することなく、安価に製造できるエアベアリング用多孔質焼結体の製造方法及びエアベアリング用多孔質焼結体を得ることにある。
本発明は、上記課題を達成するため、次の方法を提供するものである。
1.平均直径が0.05〜0.7mmであり、99.5%以上の純度を持つアルミニウム粉末又はシリコンを1〜15質量%含有するアルミニウムシリコン合金粉末に、同径の水素化チタン粉末をアルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)となるように添加及び混合し、この混合粉末を黒鉛型に充填して加圧力2.5〜5MPaで加圧成形し、さらにこれを真空中、焼結温度500〜650°Cで焼結することを特徴とするアルミニウム又はアルミニウムシリコン合金を主成分とするエアベアリング用多孔質焼結体の製造方法。
2.アルゴンガス雰囲気中でメカニカルミリングを行って平均直径0.3〜0.7mmの焼結用アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末とした後、焼結することを特徴とする上記1記載のエアベアリング用多孔質焼結体の製造方法。
1.平均直径が0.05〜0.7mmであり、99.5%以上の純度を持つアルミニウム粉末又はシリコンを1〜15質量%含有するアルミニウムシリコン合金粉末に、同径の水素化チタン粉末をアルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)となるように添加及び混合し、この混合粉末を黒鉛型に充填して加圧力2.5〜5MPaで加圧成形し、さらにこれを真空中、焼結温度500〜650°Cで焼結することを特徴とするアルミニウム又はアルミニウムシリコン合金を主成分とするエアベアリング用多孔質焼結体の製造方法。
2.アルゴンガス雰囲気中でメカニカルミリングを行って平均直径0.3〜0.7mmの焼結用アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末とした後、焼結することを特徴とする上記1記載のエアベアリング用多孔質焼結体の製造方法。
または、本発明は、次のエアベアリングを提供するものである。
3.アルミニウム合金製バックメタルに接合した主成分が99.5%以上の純度を持つアルミニウム又はシリコンを1〜15質量%含有するアルミニウムシリコン合金からなるエアベアリング用多孔質焼結体であって、当該アルミニウム焼結体又はシリコンを1〜15質量%含有するアルミニウムシリコン合金焼結体に、アルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)のチタンが含有されていることを特徴とするアルミニウム又はアルミニウムシリコン合金を主成分とするエアベアリング用多孔質焼結体。
4.焼結体の密度が2.7g/cm3以下であることを特徴とする上記3記載のエアベアリング用多孔質焼結体。
5.アルミニウムを主成分とする多孔質焼結体のガスの開放流量が、0.5MPaのガス圧をかけたとき3.2L/min以上であり、アルミニウムシリコン合金を主成分とする多孔質焼結体のガスの開放流量が、0.5MPaのガス圧をかけたとき9L/min以上であることを特徴とする上記3又は4記載のエアベアリング用多孔質焼結体。
3.アルミニウム合金製バックメタルに接合した主成分が99.5%以上の純度を持つアルミニウム又はシリコンを1〜15質量%含有するアルミニウムシリコン合金からなるエアベアリング用多孔質焼結体であって、当該アルミニウム焼結体又はシリコンを1〜15質量%含有するアルミニウムシリコン合金焼結体に、アルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)のチタンが含有されていることを特徴とするアルミニウム又はアルミニウムシリコン合金を主成分とするエアベアリング用多孔質焼結体。
4.焼結体の密度が2.7g/cm3以下であることを特徴とする上記3記載のエアベアリング用多孔質焼結体。
5.アルミニウムを主成分とする多孔質焼結体のガスの開放流量が、0.5MPaのガス圧をかけたとき3.2L/min以上であり、アルミニウムシリコン合金を主成分とする多孔質焼結体のガスの開放流量が、0.5MPaのガス圧をかけたとき9L/min以上であることを特徴とする上記3又は4記載のエアベアリング用多孔質焼結体。
本発明は、密度が銅又は鋼の約1/3であり、粒子径は約0.1mm程度であるアルミニウム粉又はアルミニウムを主成分とする合金粉末を出発原料とし、粉末粒子の酸化膜を除去して粒子相互の不規則な凝集を減少させ、これによって低温焼結が可能となり、通気性が非常に高く、バックメタルへの接合が可能である軽量エアベアリング用多孔質焼結体を安価に製造できるという優れた効果を有する。
図1に、エアベアリングの構造と作動原理の概念図を示す。相手面(テーブル)1上にエアベアリング2を置いて作動させた様子を示す。ベースメタル3上には負荷6をかけている。ベースメタル3に結合した焼結層4には、多数の気孔5が形成されており、ベースメタル3に空気7を供給する。これによって、浮上力を受けて相手面1からエアベアリングが浮上する。
本発明のエアベアリングは20〜50mmφの円盤状のものを対象とする。例えば、後述する実施例に示すように、30mmφの円盤状エアベアリングを使用する。この場合、エアベアリングとして要求される性能は、0.5MPaのガス圧をかけたとき、3.2L/min以上のガス流量を保持することである。この開放流量を確保するためには、適度の量と大きさの空隙をアルミニウム又はアルミニウム合金多孔質焼結体中に残しつつ、バックメタルと多孔質焼結体が剥離しない十分な強度を備えることである。
本発明のエアベアリングは20〜50mmφの円盤状のものを対象とする。例えば、後述する実施例に示すように、30mmφの円盤状エアベアリングを使用する。この場合、エアベアリングとして要求される性能は、0.5MPaのガス圧をかけたとき、3.2L/min以上のガス流量を保持することである。この開放流量を確保するためには、適度の量と大きさの空隙をアルミニウム又はアルミニウム合金多孔質焼結体中に残しつつ、バックメタルと多孔質焼結体が剥離しない十分な強度を備えることである。
本発明は、平均直径が0.05〜0.7mmであり、99.5%以上の純度を持つアルミニウム粉末又はシリコンを1〜15質量%含有するアルミニウムシリコン合金粉末を原料粉末として使用するが、重要なことは、同径の水素化チタン(TiH2)粉末をアルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)となるように添加し、これを混合して焼結用原料とすることである。
この混合粉末を加圧力2.5〜5MPaで加圧成形し、さらにこれを真空中、焼結温度500〜650°Cで焼結して、多孔質焼結体を製造する。この多孔質焼結体を、さらにバックメタルに接合してエアベアリングを完成する。
この混合粉末を加圧力2.5〜5MPaで加圧成形し、さらにこれを真空中、焼結温度500〜650°Cで焼結して、多孔質焼結体を製造する。この多孔質焼結体を、さらにバックメタルに接合してエアベアリングを完成する。
アルミニウム粉末の純度は高いほど、焼結性が良好であり、均一な焼結体が得られる。したがって、99.5%以上の純度を持つのが望ましい。
アルミニウム粉末又はアルミニウムシリコン合金粉末の平均直径0.05〜0.7mmを用いることが、本願発明の多孔質焼結体を得るための好適な条件である。平均直径0.05未満では気孔の分布に偏りが生ずるようになり、また0.7mmを超えると孔径の均一性が劣るようになる。したがって、平均直径0.05〜0.7mmとするのが良い。以上は、多数の試験の結果である。
アルミニウム粉末又はアルミニウムシリコン合金粉末の平均直径0.05〜0.7mmを用いることが、本願発明の多孔質焼結体を得るための好適な条件である。平均直径0.05未満では気孔の分布に偏りが生ずるようになり、また0.7mmを超えると孔径の均一性が劣るようになる。したがって、平均直径0.05〜0.7mmとするのが良い。以上は、多数の試験の結果である。
水素化チタン(TiH2)粉末の添加により、焼結の際には、水素が発生し、この水素が前記アルミニウム又はアルミニウム合金の表層に形成されている酸化膜を還元し、剥き出しのアルミニウムとなるので、焼結性が格段に向上する。
水素化チタン(TiH2)粉末がアルミニウム1に対して0.05(質量比)未満では、還元効果が十分でない。また、0.2(質量比)を超える添加は、還元効果が飽和し、無駄となるので、水素化チタン(TiH2)粉末をアルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)とするのが良い。これは、多数の試験の結果である。
以上の結果、当然ではあるが、多孔質のアルミニウム又はアルミニウムシリコン合金焼結体に、アルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)のチタンが含有される(水素の原子量が小さく、焼結体中では水素量は無視できるので、ほぼ添加した水素化チタンの量と同一の組成比となる)。
水素化チタン(TiH2)粉末がアルミニウム1に対して0.05(質量比)未満では、還元効果が十分でない。また、0.2(質量比)を超える添加は、還元効果が飽和し、無駄となるので、水素化チタン(TiH2)粉末をアルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)とするのが良い。これは、多数の試験の結果である。
以上の結果、当然ではあるが、多孔質のアルミニウム又はアルミニウムシリコン合金焼結体に、アルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)のチタンが含有される(水素の原子量が小さく、焼結体中では水素量は無視できるので、ほぼ添加した水素化チタンの量と同一の組成比となる)。
多孔質焼結体中のチタンの存在は、特に通気性の観点から問題となるものではない。特にチタンはアルミニウムと同様に軽量な元素なので、エアベアリングの極端な重量増となることもない。また、チタン自体は耐食性にも優れており、焼結品として問題を発生することはない。以上から、本願発明のエアベアリング用多孔質焼結体は、アルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)のチタンを副成分として含有する。
水素化チタンは、破砕性にも優れているので、微細な形状粉とすることが容易である。さらに、本願発明は、アルゴンガス雰囲気中でメカニカルミリングを行って、酸化膜を除去し、平均直径0.3〜0.7mmの焼結用アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末とした後、焼結することができる。
これらの焼結体には、上記の通りチタンを含有するが、以下の説明においては、「純アルミニウム若しくはアルミニウム合金」又は「純アルミニウムを主成分とする若しくはアルミニウム合金を主成分とする材料」として、説明する。
これらの焼結体には、上記の通りチタンを含有するが、以下の説明においては、「純アルミニウム若しくはアルミニウム合金」又は「純アルミニウムを主成分とする若しくはアルミニウム合金を主成分とする材料」として、説明する。
メカニカルミリング工程により、工程数が増加するが、この工程は必須のものではない。酸化膜の除去という意味では、さらに好ましい条件の一つである。
事前にアルミニウム上の酸化膜を除去すれば、水素化チタンによるアルミニウム又はアルミニウム合金の水素還元を効率的に行うことができ、その分、水素化チタンの量を低減できる効果を有している。
事前にアルミニウム上の酸化膜を除去すれば、水素化チタンによるアルミニウム又はアルミニウム合金の水素還元を効率的に行うことができ、その分、水素化チタンの量を低減できる効果を有している。
以上によって、焼結体の密度が2.7g/cm3以下である多孔質性のエアベアリングを得ることができる。
アルミニウムを主成分とする多孔質焼結体のガスの開放流量については、0.5MPaのガス圧をかけたとき3.2L/min以上を達成することができる。これは焼結条件にもよるが、0.5MPaのガス圧をかけたとき6L/min以上を達成することもできる。
アルミニウムを主成分とする多孔質焼結体のガスの開放流量については、0.5MPaのガス圧をかけたとき3.2L/min以上を達成することができる。これは焼結条件にもよるが、0.5MPaのガス圧をかけたとき6L/min以上を達成することもできる。
アルミニウムシリコン合金を主成分とする多孔質焼結体においては、ガスの開放流量が、0.5MPaのガス圧をかけたとき9L/min以上を達成でき、焼結条件によっては、さらにガスの開放流量が、0.5MPaのガス圧をかけたとき9L/min以上を達成することも可能である。本願発明のエアベアリングは、これらを全て包含するものである。
アルミニウム合金の例としては、AlにSi1〜15質量%を添加したAl−Si合金、特にAl−10質量%Si合金が主に使用されるが、アルミニウムが主要成分であれば、他のアルミニウム合金を使用することも当然可能である。本願発明はそれらを含むものである。
アルミニウムのような軟質の金属をアルゴンガス雰囲気中でメカニカルミリングを行うと、粉末粒子の塑性変形、分断、凝集が繰り返されるため、表面の酸化膜は破壊され、新鮮なアルミ粒子の表面が形成される。
このメカニカルミリングによって、粒子径0.1mm程度の市販の安価なアルミニウム粉末を分断、凝集させて、直径0.01〜0.8mm程度の粒子を生成させることも可能である。これらを、さらに篩い分けして、平均直径が0.05〜0.7mm程度の焼結用アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末を得ることができる。この粉末粒子の径は、後述するように焼結による効率の良い多孔質化のための大きな要因となる。
このメカニカルミリングによって、粒子径0.1mm程度の市販の安価なアルミニウム粉末を分断、凝集させて、直径0.01〜0.8mm程度の粒子を生成させることも可能である。これらを、さらに篩い分けして、平均直径が0.05〜0.7mm程度の焼結用アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末を得ることができる。この粉末粒子の径は、後述するように焼結による効率の良い多孔質化のための大きな要因となる。
次に、このように粒子形状を調整した粉末を、黒鉛型内に充填し、上下をパンチで押え加圧力2.5〜5MPaで成形する。加圧力2.5MPa未満では、十分な焼結体が得られ難くなる。また加圧力5MPを超えると、本願で目的とする十分な多孔質性の焼結体となり難い。したがって、加圧力2.5〜5MPaで成形するのが望ましい。
さらに、これを2〜7×10−3Pa程度の真空中で、加熱して焼結を行う。焼結温度は任意であるが、好ましい焼結温度は500〜650°Cである。焼結温度は、純アルミニウムとアルミニウム合金で、若干異なる。最適な焼結密度を得るために、それを調整することが可能である。以上の焼結条件は、多数の試験の結果である。
焼結の際には、上記にも述べたように、水素化チタンの水素が分離し、アルミニウムの酸化被膜を還元するので、焼結性は著しく向上する。これは、本願発明の大きな利点であり、放電プラズマ焼結法といった高価な焼結方法を使用することなく、より安価な焼結方法で、純アルミニウム又はアルミニウム合金が焼結できるという優れた特徴を持つ。
さらに、これを2〜7×10−3Pa程度の真空中で、加熱して焼結を行う。焼結温度は任意であるが、好ましい焼結温度は500〜650°Cである。焼結温度は、純アルミニウムとアルミニウム合金で、若干異なる。最適な焼結密度を得るために、それを調整することが可能である。以上の焼結条件は、多数の試験の結果である。
焼結の際には、上記にも述べたように、水素化チタンの水素が分離し、アルミニウムの酸化被膜を還元するので、焼結性は著しく向上する。これは、本願発明の大きな利点であり、放電プラズマ焼結法といった高価な焼結方法を使用することなく、より安価な焼結方法で、純アルミニウム又はアルミニウム合金が焼結できるという優れた特徴を持つ。
但し、焼結温度が500°C未満、そして加圧力が2.5MPa未満では、十分な強度をもつ焼結体が得られない。製品とするためには、最終的な表面加工が必要となるが、強度が低いと表面加工の際に剥がれ落ちるという問題があるので、それに必要な焼結温度と加圧力が必要となる。
また、焼結温度が650°C、そして加圧力が5MPaを超えると、アルミニウム又はアルミニウム合金の粒子が凝着し過ぎて密度が上がり、適度な多孔質体が得られず、エアベアリングとしての特性を維持するための通気性が低下することになるので、焼結温度を500〜650°Cとし、加圧力は2.5〜5MPaとするのが望ましい。
また、焼結温度が650°C、そして加圧力が5MPaを超えると、アルミニウム又はアルミニウム合金の粒子が凝着し過ぎて密度が上がり、適度な多孔質体が得られず、エアベアリングとしての特性を維持するための通気性が低下することになるので、焼結温度を500〜650°Cとし、加圧力は2.5〜5MPaとするのが望ましい。
以上によって、焼結体の密度を2.7g/cm3以下にして孔を増加させ、通気性を良好にすることができる。そして、焼結体のガスの開放流量を、0.5MPaのガス圧をかけたとき、目標とする流量を達成することが可能となる。
純アルミニウムのエアベアリングの最高流量は、6.5L/minと少ないが、精密機器への利用では、このような条件でも十分な場合があり、有用である。
純アルミニウムのエアベアリングの最高流量は、6.5L/minと少ないが、精密機器への利用では、このような条件でも十分な場合があり、有用である。
以下に、本発明の実施例及び比較例を説明する。なお、実施例はあくまで、発明の理解を容易にするためであり、この実施例の条件に制限されない。すなわち、本願発明の技術思想に基づく変形、他の態様、他の実施条件は、本願発明に全て含まれるものである。
(実施例1)
純アルミニウム粉末を用いた例を説明する。原料として、平均直径が0.1mmである市販のアルミニウム粉末(純度99.5%)を使用した。この純アルミニウム粉末に、同径の純度99.5%の水素化チタン粉末をアルミニウム粉末1に対して、0.1(質量比)となるように添加し、混合して混合粉を得た。
純アルミニウム粉末を用いた例を説明する。原料として、平均直径が0.1mmである市販のアルミニウム粉末(純度99.5%)を使用した。この純アルミニウム粉末に、同径の純度99.5%の水素化チタン粉末をアルミニウム粉末1に対して、0.1(質量比)となるように添加し、混合して混合粉を得た。
次に、この混合粉を黒鉛型に12gを充填し、上下を黒鉛パンチで押え、加圧して成形した。これを真空中で加熱して焼結してほぼ30mmφの円盤状多孔質体とした。真空度は2〜7×10−3Paとした。焼結には、高周波誘導加熱真空炉を使用した。この真空炉の仕様は、次の通りである。最大出力:5kW、発振周波数:100kHz±10kHz、最高温度:1600°C、到達真空度:2×10−3Pa。
成形圧力5MPa、焼結温度は500〜600°Cの範囲で行った。焼結の際に、昇温後60分間保持し、その後炉中冷却した。昇温後、400°C付近から真空度が徐々に悪くなり、ロータリーポンプの排気音が変わったので、水素化チタン(TiH2)からの水素放出が確認された。
成形圧力5MPa、焼結温度は500〜600°Cの範囲で行った。焼結の際に、昇温後60分間保持し、その後炉中冷却した。昇温後、400°C付近から真空度が徐々に悪くなり、ロータリーポンプの排気音が変わったので、水素化チタン(TiH2)からの水素放出が確認された。
焼結の結果、焼結温度520°C以下では焼結が十分でなく、焼結体を研磨した際に、粒子が脱落するという現象がおきた。しかし、530〜540°Cという温度範囲で焼結が十分に進行し、耐水紙による研磨が可能であった。
仕上げ研磨後の表面外観は、金属光沢を有し、肉眼でも空孔が識別できる状態であり、さらに光学顕微鏡(×100)で、30mmφの円盤状多孔質焼結体が得られたことを確認した。
なお、この最適温度条件は、焼結粉の平均直径及び水素化チタン(TiH2)の添加量によって変化するので、純アルミニウムを原料粉末として使用する場合には、500〜650°Cの範囲で、良好な焼結体が得られる。
仕上げ研磨後の表面外観は、金属光沢を有し、肉眼でも空孔が識別できる状態であり、さらに光学顕微鏡(×100)で、30mmφの円盤状多孔質焼結体が得られたことを確認した。
なお、この最適温度条件は、焼結粉の平均直径及び水素化チタン(TiH2)の添加量によって変化するので、純アルミニウムを原料粉末として使用する場合には、500〜650°Cの範囲で、良好な焼結体が得られる。
次に、焼結が十分行われた材料について、焼結体の表面を、耐水性研磨紙を用いて、#100〜#1200まで研磨し、その後アルミナ懸濁液で仕上げ研磨した。そして、この540°C及び530°Cで焼結した多孔質焼結体をAlベースメタルに、強力セメダインで接合し、これを水槽(ビーカー)に入れてこのベースメタルに穿孔した給気孔より0.5MPaで窒素ガスを通入した。
この結果を、表1に示す。また、水中におけるガスの放出の状況を図2に示す。表1に示すように、540°Cで焼結した焼結体では3.2L/minの流量で、530°Cで焼結した焼結体では6.5L/minの流量となった。530°Cで焼結した焼結体の方が約2倍の流量であった。
このガス流量は、焼結原料の平均粒子径によっても調整でき、粒子径が大きいほどガス流量は大きくなることが確認できた。
図2の(a)は焼結温度540°Cで焼結した場合、(b)は焼結温度530°Cで焼結した場合の、焼結体の水中におけるガス放出の状況を示す図であるが、上記表1に示す様子が確認できる。
以上より、純アルミニウムを原料とする焼結体は、水素化チタンを添加することにより、放電プラズマ焼結法といった高価な焼結方法を使用することなく、より安価な焼結方法でも容易に多孔質焼結体を得ることができることが確認できた。
このガス流量は、焼結原料の平均粒子径によっても調整でき、粒子径が大きいほどガス流量は大きくなることが確認できた。
図2の(a)は焼結温度540°Cで焼結した場合、(b)は焼結温度530°Cで焼結した場合の、焼結体の水中におけるガス放出の状況を示す図であるが、上記表1に示す様子が確認できる。
以上より、純アルミニウムを原料とする焼結体は、水素化チタンを添加することにより、放電プラズマ焼結法といった高価な焼結方法を使用することなく、より安価な焼結方法でも容易に多孔質焼結体を得ることができることが確認できた。
(実施例2)
次に、アルミニウム合金(10質量%シリコン)粉末を用いて焼結した場合について説明する。アルミニウム−10質量%シリコンの合金粉は、同組成の合金棒を作製し、これを削り、削り屑を篩いにかけて、平均直径が0.1mmのアルミニウム合金粉末を得た。
次に、アルミニウム合金(10質量%シリコン)粉末を用いて焼結した場合について説明する。アルミニウム−10質量%シリコンの合金粉は、同組成の合金棒を作製し、これを削り、削り屑を篩いにかけて、平均直径が0.1mmのアルミニウム合金粉末を得た。
次に、このようにして得たアルミニウム−10質量%シリコンの合金粉末に、同径の水素化チタン粉末をアルミニウム1に対して、0.1(質量比)となるように添加し、混合して混合粉を得た。
次に、この混合粉を、黒鉛型に12g充填し、上下を黒鉛パンチで押え、真空中で加熱して焼結した。
焼結には、高周波誘導加熱真空炉を使用した。この真空炉の仕様は、実施例1と同様である(最大出力:5kW、発振周波数:100kHz±10kHz、最高温度:1600°C、到達真空度:2×10−3Pa)。
次に、この混合粉を、黒鉛型に12g充填し、上下を黒鉛パンチで押え、真空中で加熱して焼結した。
焼結には、高周波誘導加熱真空炉を使用した。この真空炉の仕様は、実施例1と同様である(最大出力:5kW、発振周波数:100kHz±10kHz、最高温度:1600°C、到達真空度:2×10−3Pa)。
圧力5MPaで成形し、焼結温度は550〜630°Cの範囲で行った。焼結の際に、昇温後30分間保持し、その後炉中冷却した。昇温後、実施例1と同様に、400°C付近から真空度が徐々に悪くなり、ロータリーポンプの排気音が変わったので、水素化チタン(TiH2)からの水素放出が確認された。
焼結の結果、550〜630°Cという温度範囲で焼結が十分に進行し、耐水紙による研磨が可能であった。仕上げ研磨後の表面外観は、金属光沢を有し、肉眼でも空孔が識別できる状態であり、さらに光学顕微鏡(×100)で、ほぼ30mmφの円盤状多孔質焼結体が得られたことを確認した。
なお、この最適温度条件は、焼結粉の平均直径及び水素化チタン(TiH2)の添加量によって変化するので、アルミニウム合金を原料粉末として使用する場合には、500〜650°Cの範囲で、良好な焼結体が得られる。
なお、この最適温度条件は、焼結粉の平均直径及び水素化チタン(TiH2)の添加量によって変化するので、アルミニウム合金を原料粉末として使用する場合には、500〜650°Cの範囲で、良好な焼結体が得られる。
次に、焼結が十分行われた材料について、焼結体の表面を、耐水性研磨紙を用いて、#100〜#1200まで研磨し、その後アルミナ懸濁液で仕上げ研磨した。そして、前記550°C及び600°Cで焼結した30mmφの円盤状多孔質焼結体を、Alベースメタルに強力セメダインで接合し、これを水槽(ビーカー)に入れてこのベースメタルに穿孔した給気孔より0.5MPaで窒素ガスを通入した。
この結果を、表2に示す。また、水中におけるガスの放出の状況を図3に示す。この表2に示すように、600°Cで焼結した焼結体では18.5L/minの流量で、550°Cで焼結した焼結体では9L/minの流量となった。600°Cで焼結した焼結体の方が約2倍の増加があった。このガス流量は、焼結原料の平均粒子径によっても調整でき、粒子径が大きいほどガス流量は大きくなることが確認できた。
図3の(a)は焼結温度600°Cで焼結した場合、(b)は焼結温度550°Cで焼結した場合の、焼結体の水中におけるガス放出の状況を示す図であるが、上記表2に示す様子が確認できる。
以上より、アルミニニウム合金を原料とする焼結体は、水素化チタンを添加することにより、通常の焼結方法でも容易に多孔質焼結体を得ることができることが確認できた。
なお、上記実施例1及び実施例2については、いずれも平均直径が0.1mmのアルミニウム粉末及びアルミニウム合金粉末を使用したが、アルミニウム粉末及びアルミニウム合金粉末の平均直径が0.05〜0.7mmの範囲であれば、上記と同様の結果を得ることができた。
図3の(a)は焼結温度600°Cで焼結した場合、(b)は焼結温度550°Cで焼結した場合の、焼結体の水中におけるガス放出の状況を示す図であるが、上記表2に示す様子が確認できる。
以上より、アルミニニウム合金を原料とする焼結体は、水素化チタンを添加することにより、通常の焼結方法でも容易に多孔質焼結体を得ることができることが確認できた。
なお、上記実施例1及び実施例2については、いずれも平均直径が0.1mmのアルミニウム粉末及びアルミニウム合金粉末を使用したが、アルミニウム粉末及びアルミニウム合金粉末の平均直径が0.05〜0.7mmの範囲であれば、上記と同様の結果を得ることができた。
本発明のエアベアリング多孔質素材は、密度が銅又は鋼の約1/3であり、粒子径は約0.1mm程度であるアルミニウム粉又はアルミニウムを主成分とする合金粉末を出発原料とし、通気性が非常に高く、焼結と同時にバックメタルへの接合が可能であり、軽量エアベアリングを安価に製造できるので、平面又は曲面加工機、露光装置、位置制御装置、各種軽量軸受装置として利用できる。
1:相手面(テーブル)
2:エアベアリング
3:ベースメタル
4:焼結層
5:気孔
6:負荷
7:空気
2:エアベアリング
3:ベースメタル
4:焼結層
5:気孔
6:負荷
7:空気
Claims (5)
- 平均直径が0.05〜0.7mmであり、99.5%以上の純度を持つアルミニウム粉末又はシリコンを1〜15質量%含有するアルミニウムシリコン合金粉末に、同径の水素化チタン粉末をアルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)となるように添加及び混合し、この混合粉末を黒鉛型に充填して加圧力2.5〜5MPaで加圧成形し、さらにこれを真空中、焼結温度500〜650°Cで焼結することを特徴とするアルミニウム又はアルミニウムシリコン合金を主成分とするエアベアリング用多孔質焼結体の製造方法。
- アルゴンガス雰囲気中でメカニカルミリングを行って平均直径0.3〜0.7mmの焼結用アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末とした後、焼結することを特徴とする請求項1記載のエアベアリング用多孔質焼結体の製造方法。
- アルミニウム合金製バックメタルに接合した主成分が99.5%以上の純度を持つアルミニウム又はシリコンを1〜15質量%含有するアルミニウムシリコン合金からなるエアベアリング用多孔質焼結体であって、当該アルミニウム焼結体又はシリコンを1〜15質量%含有するアルミニウムシリコン合金焼結体に、アルミニウム1に対して0.05〜0.2(質量比)のチタンが含有されていることを特徴とするアルミニウム又はアルミニウムシリコン合金を主成分とするエアベアリング用多孔質焼結体。
- 焼結体の密度が2.7g/cm3以下であることを特徴とする請求項3記載のエアベアリング用多孔質焼結体。
- アルミニウムを主成分とする多孔質焼結体のガスの開放流量が、0.5MPaのガス圧をかけたとき3.2L/min以上であり、アルミニウムシリコン合金を主成分とする多孔質焼結体のガスの開放流量が、0.5MPaのガス圧をかけたとき9L/min以上であることを特徴とする請求項3又は4記載のエアベアリング用多孔質焼結体。
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