JP2006348161A - 反射防止膜用塗布組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】様々な添加剤を含むコーティング被膜上であっても十分な反射防止性能を付与すること。
【解決手段】本発明の反射防止用塗布組成物は、少なくとも鎖状シリカ、加水分解基含有シラン、及び水を含むシリカ混合物を加水分解及び脱水縮合させて得られるシリカ反応物を含有する反射防止膜用塗布組成物であって、前記シリカ混合物における前記鎖状シリカの含有率が1質量%以上であり、水の含有率が30質量%以上であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、反射防止膜用の塗布組成物に関する。
光学部品、眼鏡、ディスプレイ装置などを被覆する反射防止膜は、単層又は複数層からなるものが知られているが、単層及び2層からなるものは、残存反射率が大きくなってしまうため、屈折率の異なる3層以上を重層したものが好ましいと考えられてきた。しかしながら、3層以上を積層させることは、公知の真空蒸着法、ディップコーティング法などいずれの方法でも、単層に比べ工程が煩雑であるとともに生産性が低いという欠点があった。
その後、単層であっても下記の条件を満足すれば反射率の低減が可能であることが見出され、下記条件を満足する単層膜の開発が検討されてきた。すなわち、基体の屈折率をnsとし、単層膜の屈折率をnとした場合の反射率Rが、ns>nのときに極小値として(ns-n22/(ns+n22をとることを利用し、この反射率Rが、n2=nsとなるように単層膜の屈折率nを(ns1/2に近づけて反射率を低減させる技術の開発がなされてきた。このような単層膜の目標屈折率を達成するものとして、鎖状シリカ及びアルカリ土類金属塩を含む反射防止用塗布組成物が開示されている(特許文献1,2参照)。
反射防止用塗布組成物には、様々なコーティングが施された、広範な基体上に塗布して反射防止性能を付与することが求められる。例えば、鎖状シリカ及びアルカリ土類金属塩を含む反射防止用塗布組成物を、種々のコーティング被膜上に塗布したところ、ある種の添加物、例えば沸点の低い化合物や、塗膜表面にブリードアウトしやすい低分子量の化合物を含むある種の添加剤、例えばシランカップリング剤など、を含むコーティング被膜上に塗布した場合にも、実用上十分な反射防止性能が発揮されることが望まれている。
特開2004−191741号公報 国際公開第2004/73972号パンフレット
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、様々な添加剤を含むコーティング被膜上であっても十分な反射防止性能を付与することが可能な反射防止膜用塗布組成物を提供することを目的とする。
本発明の反射防止膜用塗布組成物は、少なくとも鎖状シリカ、加水分解基含有シラン、及び水を含むシリカ混合物を加水分解及び脱水縮合させて得られるシリカ反応物を含有する反射防止膜用塗布組成物であって、前記シリカ混合物における前記鎖状シリカの含有率が1質量%以上であり、水の含有率が30質量%以上であることを特徴とする。
本発明の反射防止膜用塗布組成物においては、前記シリカ混合物における前記鎖状シリカの含有率が5質量%以上であることが好ましい。
本発明の反射防止膜用塗布組成物においては、前記シリカ混合物における前記鎖状シリカの含有率が13質量%以上であり、前記水の含有率が80質量%以上であることが好ましい。
本発明の反射防止膜用塗布組成物においては、前記鎖状シリカ中のケイ素原子に対して、前記加水分解基含有シランに含まれるケイ素原子のモル比が0.005以上1以下であることが好ましい。
本発明の反射防止膜は、上記反射防止膜用組成物を準備する工程と、前記反射防止膜用塗布組成物を用いて基体上に層形成する工程とから得られることを特徴とする。
本発明の反射防止膜は、基体上に形成された反射防止膜であって、前記反射防止膜は、3000nmあたり少なくとも1個の孔を有することを特徴とする。
本発明の反射防止膜用塗布組成物は、少なくとも鎖状シリカ、加水分解基含有シラン、及び水を含むシリカ混合物を加水分解及び脱水縮合させて得られるシリカ反応物を含有する反射防止膜用塗布組成物であって、前記シリカ混合物における前記鎖状シリカの含有率が1質量%以上であり、水の含有率が30質量%以上であるので、空隙が多く、高い反射防止性能を発揮させる反射防止膜を得ることができる。この反射防止膜は、様々な添加剤を含むコーティング被膜上であっても十分な反射防止性能を付与することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の反射防止膜用塗布組成物は、少なくとも鎖状シリカ、加水分解基含有シラン、及び水を含むシリカ混合物を加水分解及び脱水縮合させて得られるシリカ反応物を含有する。本発明の鎖状シリカは、シリカ微粒子がシロキサン結合などの化学結合により連続して鎖状となったものをいい、直線状に伸びた形状であっても、二次元的、もしくは三次元的に湾曲した形状であっても構わない。
本発明において、鎖状シリカは、例えば約10〜25nmの平均粒子径を有するシリカ微粒子が、約30〜200nmの平均長さを有するまで連続したものであることが好ましい。ここで平均粒子径とは、通常窒素吸着法(BET法)により測定された比表面積(m)から、平均粒子径=(2720/比表面積)の式によって与えられた値である。また、鎖状シリカの平均粒子径は、空隙の総体積を大きくする、つまり膜の屈折率の値を小さくするという観点から、約10nm以上であることが好ましい。また、鎖状シリカの平均粒子径は、膜表面の算術平均粗さ(Ra)を小さくしてヘイズを抑制し、高解像度を得るという観点から、平均粒子径が約25nm以下であることが好ましい。
また、鎖状シリカの平均長さとは、動的光散乱法による測定値である。平均長さは、空隙の総体積を大きくする、つまり膜の屈折率の値を小さくするという観点から、約30nm以上であることが好ましい。また、膜表面の算術平均粗さ(Ra)を小さくしてヘイズを抑制し、高解像度を得るという観点から、平均長さが約200nm以下であることが好ましい。
上記鎖状シリカの例としては、例えば日産化学工業社製の「スノーテックス−OUP」、及び同社製「スノーテックス−UP」などが挙げられる。この鎖状シリカは、三次元的に湾曲した形状を有する。
シリカ混合物における鎖状シリカの含有率は、様々な添加剤を含むコーティング被膜上に十分な反射防止性能を付与する観点から、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは13質量%以上である。比較的に高いシリカ濃度であれば、溶液中で鎖状シリカ粒子同士の凝集が起こり、成膜されたときに十分にポーラスな膜を形成でき、下地のコーティング被膜から各種添加剤が拡散したときにトラップし、低屈折率を維持できる。
本発明に係る反射防止膜用塗布組成物を得るために用いられる加水分解基含有シランは、加水分解基を含有するシラン化合物をいう。加水分解基とは、加水分解により水酸基が生じる基であればよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、エノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
本発明における加水分解基含有シランとして、下記一般式(1)で表される加水分解基含有シラン、下記一般式(2)で表される加水分解基含有シランを用いることができる。
SiX4−n (1)
(式中、Rは水素又は炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を表す。またこれらの置換基上にさらにハロゲン基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基等の官能基を有していても良い。Xは加水分解基を表す。nは0〜3の整数である。)
Si−R −SiX (2)
(式中、Xは加水分解基を表し、Rは炭素数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基を表す。また、nは0又は1である)
加水分解基含有シランとして具体的に用いられるものは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(i−ブトキシ)シラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリフルオロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、テトラキス(メチルエチルケトキシム)シラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシランなどである。
また、例えば日本国コルコート社製のメチルシリケート51、エチルシリケート40、エチルシリケート48などに代表される、下記一般式(3)にて表される加水分解基含有シランも好適に用いることができる。
−(O−Si(OR−OR (3)
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。nは2〜8の整数である。)
上記加水分解基含有シランは、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。上記加水分解基含有シランの中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好適に用いられる。
これらの加水分解基含有シランは、加水分解反応により加水分解基の一部又は全部が反射防止膜用塗布組成物中でシラノール基に変換する。そのため、上記の加水分解基含有シランの一部又は全部の代わりに、シラノール基を含有するシランを用いても良い。
このようなシランとしては、ケイ酸、トリメチルシラノール、トリフェニルシラノール、ジメチルシランジオール、ジフェニルシランジオールなどのシラン、あるいは末端や側鎖にヒドロキシル基を有するポリシロキサンなどを用いることができる。また、オルトケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸カリウム、オルトケイ酸リチウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、メタケイ酸リチウム、オルトケイ酸テトラメチルアンモニウム、オルトケイ酸テトラプロピルアンモニウム、メタケイ酸テトラメチルアンモニウム、メタケイ酸テトラプロピルアンモニウムなどのケイ酸塩や、これらを酸やイオン交換樹脂に接触させることにより得られる活性シリカなどのシランなども用いることができる。
上記加水分解基含有シランは、その効果を十分に発現させるためには、鎖状シリカ中のケイ素原子に対して、加水分解基含有シランに含まれるケイ素原子のモル比が0.005以上であることが好ましい。また、屈折率を低くするという観点から、1以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.01以上0.5以下である。
本発明に係る反射防止膜用塗布組成物を得るために用いられるシリカ混合物は水を含んでおり、水の含有率は30質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。水の含有率が30質量%以上であれば、反射防止膜用塗布組成物を用いて最終的に成膜した段階で反射率の低い良好な反射防止膜を得ることができる。これは、低反射率を有する膜を形成するためには、鎖状シリカ間の凝集サイズの制御が重要であり、前記条件にて加水分解及び脱水縮合を行うことで、鎖状シリカ粒子が沈降までには至らずに制御されて成長するからであると考えられるからである。
本発明の反射防止膜用塗布組成物はアルカリ土類金属塩を含有していてもよい。アルカリ土類金属塩が含まれる場合、加水分解及び脱水縮合に要する時間を短くできる場合や下層との接着性を向上させることができる。
アルカリ土類金属塩としては、例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの塩化物、硝酸塩、硫酸塩、蟻酸塩、酢酸塩などの無機酸塩及び有機酸塩が好ましい。中でもマグネシウム、カルシウムの無機酸塩及び有機酸塩が特に好ましい。アルカリ土類金属塩は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
アルカリ土類金属塩の添加量は、鎖状シリカに含まれる全ケイ素原子に対してモル比で0.0001〜0.1の範囲が好ましく、より好ましくは0.0001〜0.05である。
ここで、アルカリ土類金属塩に用いる溶媒は、アルカリ土類金属塩が溶解可能であれば特に限定されない。具体的には水、炭素数1〜6の一価アルコールなどを挙げることができる。
本発明に係る反射防止膜用塗布組成物を得るために用いられるシリカ混合物は、本発明の目的を損なわない範囲で、鎖状以外のシリカ微粒子や有機溶剤含んでも良い。鎖状以外のシリカ微粒子としては、反射防止膜の高い光透過性及びヘイズが低いという特性を考慮すると、粒径が100nm以下のものが好ましい。また、このような鎖状以外のシリカ微粒子は、反射防止膜の反射率が低い点及び膜強度を低下させないという点を考慮すると、鎖状シリカに対して質量比で0以上3.0以下の範囲で含むことが好ましい。
シリカ混合物に含有しても良い有機溶剤としては、具体的には、炭素数1〜6の一価アルコール、炭素数1〜6の二価アルコール、グリセリンなどのアルコール類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジ(n−プロピル)エーテル、ジイソプロピルエーテル、ジグライム、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチル(n−ブチル)ケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチロニトリル、イソブチロニトリルなどのニトリル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどが好適に用いられる。より好ましい分散媒は、炭素数1〜6の一価アルコール類又はエチレングリコールモノメチルエーテルやプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルカノールエーテル類である。
本発明に係る反射防止膜用塗布組成物におけるシリカ反応物は、シリカ混合物を加水分解及び脱水縮合して得られる。上記シリカ混合物の加水分解及び脱水縮合は、反応温度20〜100℃、好ましくは30〜80℃、より好ましくは40〜70℃にて実施され、反応時間としては、反応温度が20℃の場合は最低1時間、反応温度が70℃の場合は最低20分である。
加水分解及び脱水縮合は、触媒により促進してもよい。触媒としては酸性触媒、アルカリ性触媒、有機スズ化合物などが挙げられる。特に酸性触媒が好ましく、例えば硝酸、塩酸などの鉱酸やシュウ酸、酢酸などの有機酸が挙げられる。
加水分解及び脱水縮合により得られた化合物は、鎖状シリカの濃度が5質量%以下になるように希釈して保存すると、ポットライフが長くなるので好ましい。このとき、希釈に用いられる溶媒として好ましいものは、前記のシリカ混合物に含有しても良い有機溶剤である。より好ましい溶媒は、炭素数1〜6の一価アルコール類又はエチレングリコールモノメチルエーテルやプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルカノールエーテル類であり、特に好ましいものはエタノールである。
本発明の反射防止膜用塗布組成物は、前記のシリカ反応物を含有してなり、塗布成膜時の膜厚調整などの目的に応じて、水及び/又は前記のシリカ混合物に含有しても良い有機溶剤により調製される。本発明の反射防止膜用塗布組成物を調製する場合の希釈において用いるより好ましい溶媒は、炭素数1〜6の一価アルコール類又はエチレングリコールモノメチルエーテルやプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルカノールエーテル類;メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチル(n−ブチル)ケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類である。また、これらの溶媒の混合物も用いることができる。
なお、本発明の反射防止膜用塗布組成物において、鎖状シリカの濃度は、厚膜化が容易であることから0.01質量%以上、塗布組成物の粘度、成膜性の観点から、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.05質量%以上5質量%以下の範囲である。
本発明の反射防止膜用塗布組成物は、光透過性光学基材として用いる光学フィルムに塗布することで反射防止膜として機能する。
そこで、以下に本発明の反射防止膜用塗布組成物を、基体である光学フィルムに用いた場合の成膜条件について詳説する。
本発明の反射防止膜用塗布組成物を塗布する光学フィルムとしては、透明なフィルムが好ましく、例えば、耐熱性200℃以下のトリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースアセテート系フィルム;延伸したポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系フィルム;ポリカーボネート系フィルム;ノルボネン系フィルム;ポリアリレート系フィルム;ポリスルフォン系フィルムを用いることができ、耐熱性150℃以下のセルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、ポリカーボネートフィルム、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることができる。
また、本発明の反射防止膜用塗布組成物を塗布する基体として、上記のフィルムよりも厚膜のアクリルシートやポリカーボネートシートを用いることもできる。
本発明の反射防止膜を得るには、まず、本発明の反射防止膜用塗布組成物を調製し、この反射防止膜用塗布組成物を上記光学フィルム上に塗布し、塗布膜を形成する。
本発明では塗布組成物の塗布は、ディッピング、スピンコーター、ナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアロールコーター、スライドコーター、カーテンコーター、スプレイコーター、ダイコーターなどの公知の塗布法を用いて実施することができる。これらのうち連続塗布が可能なナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアロールコーター、スライドコーター、カーテンコーター、スプレイコーター、ダイコーターが好ましく用いられる。
塗布膜は、その後光学フィルムの熱変形温度より低い温度で加熱処理して硬化させる。硬化を行う温度は、上記光学フィルムの耐熱性により変更することができるが、多孔性、密着性の観点から60℃以上、熱による変形という観点から、150℃以下が好ましい。より好ましくは70〜130℃、最も好ましくは80〜120℃である。また、硬化時間は、1時間以内、好ましくは10分以内、より好ましくは2分以内である。
反射防止膜の膜厚は、特に制限されるものではなく、例えば単層の反射防止膜用の場合、反射防止効果の観点から50〜1,000nmの範囲内が好ましく、より好ましくは50〜500nmの範囲内、最も好ましくは60〜200nmの範囲内である。
本発明で得られる反射防止膜はポーラスな膜であり、孔の数はおよそ3000nmあたり少なくとも1個存在することが好ましい。好ましくは孔の数は、およそ3000nmあたり少なくとも1.1個、より好ましくはおよそ3000nmあたり少なくとも1.2個である。孔の判定は、走査電子顕微鏡像において粒子が存在していない黒く見える部分である。鎖状シリカの含有率が1質量%以上、水の含有率が30質量%以上であるシリカ混合物から得られた本発明の反射防止膜は相対的に孔が多く、ポーラスな膜であると考えられ、そのために上述した効果を発揮する。
なお、上記光学フィルムは、耐傷性を付与するために、反射防止膜と光学フィルム基材の間にハードコート層を設けることが好ましい。ハードコート層は、多官能モノマーなどと重合開始剤を含む塗布液を光学フィルム上に塗布し、多官能モノマーなどを重合させることにより形成できる。ハードコート剤としては、市販のシリコーン系ハードコート剤やアクリル系ハードコート剤を用いることができる。ハードコート剤には、表面の改質などを目的として、シランカップリング剤など、各種の添加物が加えられていてもよい。
上記の方法によって得られる反射防止膜は、例えば、メガネレンズ、ゴーグル、コンタクトレンズなどのメガネ分野;車の窓、インパネメーター、ナビゲーションシステム等の自動車分野;窓ガラスなどの住宅・建築分野;ハウスの光透過性フィルムやシートなどの農芸分野;太陽電池、光電池、レーザーなどのエネルギー分野;TVブラウン管、ノートパソコン、電子手帳、タッチパネル、液晶テレビ、液晶ディスプレイ、車載用テレビ、液晶ビデオ、プロジェクションテレビ、光ファイバー、光ディスクなどの電子情報機器分野;照明グローブ、蛍光灯、鏡、時計などの家庭用品分野;ショーケース、額、半導体リソグラフィー、コピー機器などの業務用分野;液晶ゲーム機器、パチンコ台ガラス、ゲーム機などの娯楽分野などにおいて、映り込みの防止及び/又は光透過性の向上を必要としている光透過性光学基材、特に耐熱性の低い光学フィルム等の表面塗装に用いることが可能である。
本発明の塗布組成物が、ある種の添加剤を含むハードコート上に塗布した場合でも、十分な反射防止性能を付与できる理由は明らかではないが、鎖状シリカの含有率が1質量%以上であり、水の含有率が30質量%以上であるシリカ混合物を加水分解及び脱水縮合させて得られるシリカ反応物を含有する反射防止膜用塗布組成物は、溶液中で鎖状シリカ粒子同士が凝集した構造をとっているために、成膜された時に従来のものよりもポーラスな膜を形成するため、下地のコーティング被膜から各種添加剤が拡散してきても、低屈折率を維持できるためであると考えられる。
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)として、片面に易接着処理を施された厚さ125μmのPETフィルム(東洋紡績製、商品名:コスモシャイン(登録商標)A4100、耐熱温度約150℃、屈折率1.55相当、鉛筆硬度HB)を用いる。
(3000nmあたりの孔の数の測定)
孔の数の測定は、反射防止膜の表面について走査電子顕微鏡像を撮影し、得られた像の中で粒子が存在していない、黒く見える孔の部分を目視で数えることにより行った。なお、走査型電子顕微鏡像は、反射防止膜表面を厚さ2nm程度のオスミウム膜で被覆し、走査電子顕微鏡S-900(日立社製、商品名)で加圧電圧1.2kVde撮影することにより得た。また、孔の数を測定する面積は1050nm×1050nmとし、この面積内の孔数を3000nmあたりの孔の数に変換した。
(絶対反射率の測定)
FE−3000型反射分光計(大塚電子社製)を用いて、波長250〜800nmの範囲での反射スペクトルを測定した。該波長範囲における反射率が最小の波長を反射率最小波長λbtmとし、その反射率を最低反射率Rminと定めた。
(実施例1)
アクリル系紫外線硬化型樹脂(ライトアクリレートDPE−6A、共栄社化学社製、固形分100質量%)2.5gにエタノール2.5gを加え、室温で攪拌下、イルガキュア(登録商標)184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.125gと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS710、チッソ社製)を加え、ハードコート層用塗布組成物Aを得た。
上記PETフィルムの易接着面に、ハードコート層用塗布組成物Aをバーコーター(米国R.D.Specialities,Inc.製の#10ロッドを装着)で塗布し、紫外線硬化装置(ウシオ電機社製、商品名:UVC−2519/1MNSC7−MS01)を用いて出力120W、コンベア速度2m/分、光源距離10mmにて紫外線照射(積算光量620mJ/cm)を行うことによって厚さ5μmのハードコート層を形成した。
平均直径が約15nmで平均長さが約170nmの、鎖状シリカの水分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日産化学工業社製、シリカ固形分濃度15質量%)20gを室温で攪拌下、テトラエトキシシランを1.0g、10%CaCl・2HO水溶液を0.55g、1N硝酸水溶液を0.15g加えた。鎖状シリカの分散液の濃度は15%であり、鎖状シリカ中のケイ素原子に対する加水分解基含有シラン化合物のモル数は0.1であった。溶液のpHは2であった。その後、本混合物を70℃の湯浴上で1.5時間攪拌し、混合物を加水分解及び脱水縮合して化合物Bを得た。次いで、化合物Bにエタノールを38.3g添加した後、90gのイソプロパノールを添加して、反射防止層用塗布液Bを得た。
この塗布液Bを、前記ハードコート層の上に、バーコーター(米国R.D.Specialities,Inc.製の#4ロッドを装着)で塗布し、続いて熱風循環乾燥機にて、120℃、2分間の乾燥を行って反射防止層を形成して、積層体Bを得た。この積層体Bのλbtmは500nm、Rminは0.1%と優れていた。また、この反射防止層は3000nmあたり約1.2個の孔を有していた。
(実施例2)
10%のCaCl・2HO水溶液の添加量を0.33g、70℃の湯浴上での攪拌時間を4時間にして、混合物を加水分解及び脱水縮合したこと以外は実施例1と同様にして積層体Cを得た。この積層体Cのλbtmは500nm、Rminは0.1%と優れていた。また、この反射防止層は3000nmあたり約1.2個の孔を有していた。
(実施例3)
1N硝酸水溶液を加えないこと以外は実施例1と同様にして(溶液のpHは3であった)、積層体Dを得た。積層体Dのλbtmは500nm、Rminは0.1%と優れていた。また、この反射防止層は3000nmあたり約1.2個の孔を有していた。
(実施例4)
1N硝酸水溶液とCaCl・2HO水溶液を加えないこと以外は実施例1同様にして、積層体Eを得た。積層体Eのλbtmは500nm、Rminは0.1%と優れていた。また、この反射防止層は3000nmあたり約1.2個の孔を有していた。
(実施例5)
実施例1にて得られた化合物Bにエタノールを38.3g添加した後、2ヶ月間室温で静置し、その後実施例1と同様にして、積層体Fを得た。この積層体Fのλbtmは500nm、Rminは0.1%と優れていた。また、この反射防止層は3000nmあたり約1.2個の孔を有していた。
(実施例6)
鎖状シリカ水分散液20gに30gのエタノールを添加した後に、テトラエトキシシラン1.0gを加え、シリカ混合物中の鎖状シリカ濃度を6%(水含有率34%)としたこと以外は実施例1と同様にして、積層体Gを得た。この積層体Gのλbtmは500nm、Rminは0.2%と優れていた。また、この反射防止層は3000nmあたり約1.2個の孔を有していた。
(実施例7)
鎖状シリカの水分散液に水を添加して、シリカ混合物中の鎖状シリカの濃度を1質量%とし、加水分解及び脱水縮合して、これをプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈して、反射防止膜用塗布組成物(塗布液中の鎖状シリカ濃度は0.5質量%)を得て、この反射防止膜用塗布組成物を#16ロッドを用いて塗布すること以外は実施例1と同様にして積層体Hを得た。この積層体Hのλbtmは500nm、Rminは0.2%と優れていた。また、この反射防止層は3000nmあたり約1.2個の孔を有していた。
(比較例1)
塗布液Bを、鎖状シリカの水分散液(商品名:スノーテックスOUP、日産化学工業社製、シリカ固形分濃度15重量%)4gと、エタノール36gを室温で混合し、シリカ固形分濃度1.5重量%の鎖状シリカ水/エタノール分散液とした。鎖状シリカ中のケイ素原子に対する加水分解基含有シラン化合物のモル数は0.1であった。その後、テトラエトキシシラン0.2gを攪拌下に室温で添加、さらに1.64重量%硝酸水溶液0.1gを攪拌下に室温で添加後、室温で1時間攪拌することで、混合物を加水分解及び脱水縮合して得られた塗布液Kとし、バーコーター(米国R.D.Specialities,Inc.製の#6ロッドを装着)で塗布したこと以外は実施例1と同様にして、積層体Iを得た。鎖状シリカの分散液の濃度は1.5%であった。この積層体Iのλbtmは500nm、Rminは0.4%と高めであった。
(比較例2)
鎖状シリカの水分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日産化学工業社製、シリカ固形分濃度15質量%)6.67gを室温で攪拌下、エタノールを18.3g、テトラエトキシシランを0.347g、10%CaCl・2HO水溶液を0.368g、1N硝酸水溶液を0.05g加えた。鎖状シリカの分散液の濃度は4%であり、鎖状シリカ中のケイ素原子に対する加水分解基含有シラン化合物のモル数は0.1であった。その後、本混合物を60℃の湯浴上で6時間攪拌することで、混合物を加水分解及び脱水縮合し、化合物Lを得た。そして、この化合物Lに30gのイソプロパノールを添加し、塗布液Mを得た。塗布液Mを用いて実施例1と同様にして、積層体Jを得た。この積層体Jのλbtmは500nm、Rminは0.4%と高めであった。
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態における材料、数値などは例示であり、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。

Claims (6)

  1. 少なくとも鎖状シリカ、加水分解基含有シラン、及び水を含むシリカ混合物を加水分解及び脱水縮合させて得られるシリカ反応物を含有する反射防止膜用塗布組成物であって、前記シリカ混合物における前記鎖状シリカの含有率が1質量%以上であり、水の含有率が30質量%以上であることを特徴とする反射防止膜用塗布組成物。
  2. 前記シリカ混合物における前記鎖状シリカの含有率が5質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜用塗布組成物。
  3. 前記シリカ混合物における前記鎖状シリカの含有率が13質量%以上であり、前記水の含有率が80質量%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の反射防止膜用塗布組成物。
  4. 前記鎖状シリカ中のケイ素原子に対して、前記加水分解基含有シランに含まれるケイ素原子のモル比が0.005以上1以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の反射防止膜用塗布組成物。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載の反射防止膜用組成物を準備する工程と、前記反射防止膜用塗布組成物を用いて基体上に層形成する工程とから得られることを特徴とする反射防止膜。
  6. 基体上に形成された反射防止膜であって、前記反射防止膜は、3000nmあたり少なくとも1個の孔を有することを特徴とする反射防止膜。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011530401A (ja) * 2008-08-07 2011-12-22 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 親水性/透過率を高めるための針状シリカコーティング

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