JP2006348077A - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 剛性、耐熱性および特に低温での耐衝撃性に優れるポリアミド樹脂組成物を得る。
【解決手段】 ナイロン6(ポリカプロアミド)100質量部に0.1〜20質量部の膨潤性層状珪酸塩のシリケート層が分散されてなるシリケート層含有ポリアミド80〜99質量%および炭酸カルシウム1〜20質量%とからなるポリアミド樹脂組成物。特に炭酸カルシウムが面積平均粒子径0.1〜20μmである。また、特に炭酸カルシウムが重質炭酸カルシウムである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、剛性、耐熱性および特に低温での耐衝撃性に優れたポリアミド樹脂組成物に関するものである。
ポリアミド樹脂中に合成フッ素雲母やモンモリロナイトに代表される膨潤性層状珪酸塩のシリケート層を分散させて得られるポリアミド樹脂組成物(以下、「シリケート層含有ポリアミド」という)は、従来から知られており、例えば、ナイロン6と合成フッ素雲母系(特許文献1参照)やナイロン6とモンモリロナイト系(特許文献2参照)が例示される。しかし、これらの樹脂組成物は、耐熱性や強度、剛性に優れる反面、耐衝撃性の面で十分な性能を発揮しなかった。
このような耐衝撃性を改善する試みは種々提示されており、例えば、シリケート層含有ポリアミドとオレフィン系共重合体からなる耐衝撃性改良材との混合物(特許文献3参照)によれば、該組成物の耐衝撃性を大きく向上させることができる。しかしこの方法では耐衝撃性の向上に反して、シリケート層含有ポリアミドが本来有する優れた耐熱性や剛性が低下してくる傾向にあり、材料物性上好ましくない。一方本出願人は、主としてシリケート層含有ポリアミドそのものの改質からの耐衝撃性向上を試み、例えば、シリケート層含有ポリアミドのマトリクス樹脂の高分子量化(特許文献4参照)、あるいは膨潤性層状珪酸塩の陽イオン交換容量や初期粒子径の最適化(特許文献5参照)を提示してきた。これらの組成物は、結果として耐衝撃性の向上に有効であったものの、射出成形性あるいは耐衝撃性と耐熱性や剛性とのバランス(材料物性のバランス)の点では更なる改善の余地があった。また、該組成物はいずれも耐衝撃性向上を念頭に置いた特殊組成であることも事実であり、シリケート層含有ポリアミドに汎用的かつ低コストに耐衝撃性を付与し、それを改善できる組成が求められていた。
一方広く樹脂組成物という分野においては、特定の形状を有するフィラーを樹脂に配合することにより耐衝撃性が向上する例が知られている。例えば、ポリオレフィンに微細な炭酸カルシウムを充填した場合には、ノッチ付きIZOD衝撃強さがポリオレフィンマトリクス自体の衝撃強さを上回ることがある(非特許文献1参照)。この現象はフィラーの形態、粒子径、分散性を考慮し、フィラーと樹脂マトリクス界面における効果的なひずみエネルギーの吸収から説明されている。しかし上述したシリケート層含有ポリアミドのように、既に超微細フィラー(シリケート層)で補強された樹脂組成物に対するさらなるフィラー配合に伴う改質効果は、従来の技術知見が反映されない場合が多く、耐衝撃性改良以外の目的(例えば、強度や剛性面の向上)も含めて技術的によく理解されていない。
特開平6−248176号公報 特開昭62−74957号公報 特開平2−29457号公報 特開平11-172100号公報 特開2002-249659号公報 フィラー研究会編 「フィラー活用辞典」、1994年5月31日、p.24−28
すなわち本発明は、上記問題点を解決するもので、高強度、高耐熱性、高剛性というシリケート層含有ポリアミドが本来有する性能を保持しつつ、特に低温領域での耐衝撃性が改善されたポリアミド樹脂組成物を提供するものである。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、微細な粒径を有する粒状無機フィラーをシリケート層含有ポリアミドに配合することにより、上記課題が解決され、優れたポリアミド樹脂組成物が得られることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、ナイロン6(ポリカプロアミド)100質量部に0.1〜20質量部の膨潤性層状珪酸塩のシリケート層が分散されてなるシリケート層含有ポリアミド80〜99質量%および炭酸カルシウム1〜20質量%とからなるポリアミド樹脂組成物である。
本発明によれば、剛性、耐熱性および特に低温での耐衝撃性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明におけるナイロン6とは、ポリカプロアミドであり、アミノカプロン酸またはε-カプロラクタムを原料とするアミド結合を主鎖内に有する重合体であり、20モル%以下程度であれば、本発明の効果を損なわない範囲で他のモノマーが共重合されていてもよい。他のモノマーとしては、アミノカルボン酸として、12-アミノドデカン酸、11-アミノウンデカン酸等があり、ラクタム類としてはω-ラウロラクタム、ω-ウンデカノラクタム等があり、ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等があり、またジカルボン酸としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等がある。上記から選ばれたジアミンとジカルボン酸とは一対の塩として用いることもできる。
本発明におけるナイロン6の分子量は特に制限はないが、分子量に相当する指標として、96質量%濃硫酸を溶媒とし、温度25℃、濃度1g/dlの条件で測定した相対粘度が、1.5〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲にあることが望ましい。相対粘度が1.5未満のものは成形品の機械物性に劣る傾向にある一方、5.0を越えるものは成形性が著しく低下する傾向にある。ナイロン6の分子量の調節は、ポリアミドの重合時に行ってもよいし、分子量の異なるナイロン6のブレンドによってもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ナイロン6に膨潤性層状珪酸塩のシリケート層が分散されてなるシリケート層含有ポリアミドをマトリクスとする。シリケート層含有ポリアミドにおける膨潤性層状珪酸塩の配合量は、ナイロン6樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であることが必要であり、0.1〜10質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることが特に好ましい。膨潤性層状珪酸塩の配合量が0.1質量部より少ないものは、それ自体成形品としたときの耐熱性や強度、剛性が不十分のものになる傾向にあり、本発明のポリアミド樹脂組成物の母体としては不適切である。一方、膨潤性層状珪酸塩の配合量が20質量部を越えるものでは、ポリアミド樹脂組成物における耐衝撃性改良効果に乏しくなる傾向がある。
シリケート層含有ポリアミドにおいては、シリケート層は、ナイロン6マトリクス中に分子レベルで分散されたものであることが好ましい。ここでシリケート層とは、膨潤性層状珪酸塩を構成する基本単位であり、膨潤性層状珪酸塩の層構造を崩すこと(以下、「劈開」という)によって得られる板状の無機結晶である。また本発明におけるシリケート層とは、シリケート層の一枚一枚、もしくは平均5層以下の積層構造を意味する。「分子レベルで分散される」とは、膨潤性層状珪酸塩の劈開によって得られるシリケート層がナイロン6樹脂中に分散する際に、それぞれが平均2nm以上の層間距離を保ち、互いに塊を形成することなく存在している状態をいう。かかる状態は、シリケート層含有ポリアミドの試験片について、例えば、透過型電子顕微鏡観察を行うことにより確認することができる。
膨潤性層状珪酸塩は、珪酸塩を主成分とする負に帯電した結晶層(シリケート層)とその層間に介在するイオン交換能を有するカチオンとからなる構造を有するものである。イオン交換能として、後述する方法で求めた陽イオン交換容量(以下「CEC」という)が、50〜200ミリ当量/100gであることが好ましい。CECが50ミリ当量/100g未満では、膨潤能が低いためにシリケート層含有ポリアミドの製造時に十分な劈開が達成されない場合があり、剛性や耐熱性の向上効果に乏しい。一方、CECが200ミリ当量/100gを超えると、ナイロン6マトリクスとシリケート層との相互作用が著しく大きくなり、得られたシリケート層含有ポリアミド自体の靱性が大幅に低下し、炭酸カルシウムを配合してもポリアミド樹脂組成物が脆くなりやすい。
膨潤性層状珪酸塩としては、天然に産出するものでも人工的に合成あるいは変成されたものでもよく、例えばスメクタイト族(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、ソーコナイト等)、バーミキュライト族(バーミキュライト等)、雲母族(フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、レピドライト等)、脆雲母族(マーガライト、クリントナイト、アナンダイト等)、緑泥石族(ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモナイト、ニマイト等)が挙げられるが、本発明においてはNa型あるいはLi型の合成フッ素雲母やモンモリロナイトが特に好適に用いられ、特に合成フッ素雲母は白色度に優れるため、得られる樹脂組成物の外観上好ましい。
合成フッ素雲母は一般的に次式で示される構造式を有するものである:
a(MgLib)Si
(式中で、0≦α≦1, 0≦β≦0.5, 2.5≦X≦3, 10≦Y≦11, 1≦Z≦2, Mはイオン交換性カチオンを表し、具体的にはナトリウムやリチウム等である)
このような合成フッ素雲母の製造法としては、例えば、酸化珪素、酸化マグネシウムおよび各種フッ化物とを混合し、その混合物を電気炉あるいはガス炉中で1400〜1500℃の温度範囲で完全に溶融し、その冷却過程で反応容器内に合成フッ素雲母の結晶を成長させる溶融法が挙げられる。
一方、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションさせて膨潤性を付与し、合成フッ素雲母を得る方法もある(特開平2-149415号公報)。この方法では、所定の配合比で混合したタルクと系フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリを、磁性ルツボ内で700〜1200℃の温度下に短時間加熱処理することによる。生成の確認は、水ひ処理により精製した合成フッ素雲母について、後述の方法でCECの測定を行うことによる。合成フッ素雲母が精製した場合にのみイオン交換性カチオンがシリケート層間に存在するため、CECの測定が可能となる。
本発明に用いるモンモリロナイトは、天然に産出するものを水ひ処理等を用いて精製することにより得ることができ、次式で表される:
Si(Al2−aMg)O10(OH)・nH
(式中で、Mはナトリウム等のカチオンを表し、0.25≦a≦0.6である。また層間のイオン交換性カチオンと結合している水分子の数はカチオン種や湿度等の条件によって様々に変わりうるので、式中ではnHOで表した)
モンモリロナイトにはマグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイト等の同型イオン置換体の存在が知られており、これらを用いることもできる。
本発明においては上記した膨潤性層状珪酸塩の初期粒子径について特に制限はないが、1〜10μm程度であれば、良好に使用することができる。ここで初期粒子径とは後述のシリケート層含有ポリアミドの製造時に用いる、原料としての原料としての膨潤性層状珪酸塩の粒子径であり、シリケート層含有ポリアミドやポリアミド樹脂組成物中のシリケート層の大きさとは異なるものである。この粒子径は、該ポリアミド樹脂組成物の剛性や耐熱性等に少なからず影響を及ぼし、その物性をコントロールする意味で、必要に応じてジェットミル等で粉砕して粒子径をコントロールし、2〜7μm程度とすることが好ましい。なお、合成フッ素雲母をインターカレーション法により合成する場合には、原料であるタルクの粒子径を適切に選択することにより初期粒子径を変更することができ、上記の粉砕法との併用により、より広い範囲で初期粒子径を調節することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、前述のシリケート層含有ポリアミドにさらに所定量の炭酸カルシウムが配合されたものである。炭酸カルシウムの配合により、強度、剛性、耐熱性に優れたシリケート層含有ポリアミドに、さらに、良好な耐衝撃性を付加することができる。
本発明で用いる炭酸カルシウムとしては、天然の結晶質石灰石や大理石等を粉砕して得られる重質炭酸カルシウム、化学的に合成される軽質あるいは膠質炭酸カルシウム等が挙げられる。これらの軽質炭酸カルシウムは紡錘状あるいは棒状であるため形態異方性が大きく、耐衝撃性の向上に寄与しにくい傾向があるため、本発明では、重質炭酸カルシウムまたは膠質炭酸カルシウムが好ましく、特に重質炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムは、いわゆる無定形フィラーに分類されるものであって、繊維状、針状あるいは板状のフィラーとは形態的に異なるものである。炭酸カルシウムは、樹脂との親和性向上のため、例えばステアリン酸、牛脂エステル、界面活性剤、樹脂酸、特殊脂肪酸、チタネート系カップリング剤、ホスフェート系カップリング剤等によって表面改質されていることが好ましい。
本発明において、炭酸カルシウムは、その面積平均粒子径が0.1〜20mmにあることが好ましく、0.1〜10mmであることがより好ましい。面積平均粒子径が0.1mm未満では炭酸カルシウムをシリケート層含有ポリアミドに均一分散させるのが困難になり、耐衝撃性改善の観点からは好ましくない凝集物を形成する傾向が高くなる。一方、面積平均粒子径が20mmより大きくなると、粒子形態による耐衝撃性改善効果に乏しくなり好ましくない。また炭酸カルシウムの粒度分布に関しては特に制限はなく、個数頻度分布曲線で表示した際に単一のピークを有するものでも、複数のピークを持った混合物であってもよい。
炭酸カルシウムをシリケート層含有ポリアミドに混合する際の配合比率は、母材となるシリケート層含有ポリアミド80〜99質量%に対して粒状無機フィラーが1〜20質量%であることが必要であり、1〜10質量%がより好ましく、特に1.5〜5質量%が好ましい。炭酸カルシウムの配合量が1%未満の場合には、ポリアミド樹脂組成物の耐衝撃性改善効果に乏しくなる一方で、20質量%を超えると耐衝撃性改善効果が上限に到達する傾向があり、実質的な効果に乏しくなる。
次に、本発明のポリアミド樹脂組成物を製造する方法について説明する。
本発明におけるポリアミド樹脂組成物は、シリケート層含有ポリアミドに炭酸カルシウムを直接溶融混練する方法、高濃度の炭酸カルシウムを予めポリアミド樹脂あるいはシリケート層含有ポリアミドに溶融混練して得たマスターペレットとシリケート層含有ポリアミドとをペレットブレンドする方法等により製造される。これらポリアミド樹脂組成物の製造には2軸押出機が好適であり、特別な条件は必要としない。また、シリケート層含有ポリアミドの製造時に炭酸カルシウムを配合することによりポリアミド樹脂組成物を製造することもできる。
本発明におけるシリケート層含有ポリアミドを製造するには、膨潤性層状珪酸塩の存在下に前記したモノマーを重合する方法がある。これには公知のポリアミドの重合方法を採用することができ、バッチ式、連続式を問わず溶融重縮合法が好ましい。具体的には、必要な原料をオートクレーブに仕込み、水等の開始剤の存在下で温度250〜280℃、圧力0.5〜2MPa、3〜5時間の範囲内で行えばよい。また重合後のシリケート層含有ポリアミドに残留しているモノマーやオリゴマーを除去するために、熱水による精練を行うことが好ましく、例えば、90〜100℃の熱水中で5時間以上の処理を行う。
シリケート層含有ポリアミドの重合時には酸を添加してもよい。酸を添加することにより、膨潤性層状珪酸塩の劈開が促進され、シリケート層のナイロン6マトリクスへの分散の程度がより良好なものとなる。添加される酸は、有機酸、無機酸いずれでもよく、pKa(25℃、水中での値)が0〜6または負であることが好ましい。具体的には、安息香酸、セバシン酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、過塩素酸、フルオロスルホン酸、フルオロアンチモン酸等が挙げられる。
また、重合に先立って、膨潤性層状珪酸塩とモノマーを、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール等の分散媒中で混合させる工程を設けてもよい。この工程によって、膨潤性層状珪酸塩のモノマー中への分散を促進することができる。温度条件は室温、あるいは必要に応じて室温以上で分散媒の沸点以下としてもよい。混合においては、攪拌効率を上げるために、ホモミキサー、超音波式分散機、高圧分散機等を用いてもよい。
シリケート層含有ポリアミドを得るには、ナイロン6樹脂と膨潤性層状珪酸塩とを溶融混練してもよい。溶融混練を行う際には、膨潤性層状珪酸塩を固体または粉体のまま樹脂と混合してもよいが、水やエチレングリコール等の極性溶媒に分散させて混合してもよい。また樹脂との溶融混練に先だって、膨潤性層状珪酸塩の層間に存在する交換性カチオンをオニウムイオン等の有機カチオンで交換する工程を設けると、混練時に膨潤性層状珪酸塩が劈開しやすくなり、シリケート層をナイロン6マトリクスへ分散させる上で好適である。いずれの場合においても溶融混練時には比較的多量のガスが発生するため、排気装置が適切に設計された溶融混練装置を用いることが望ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物を製造するには、前述のように、シリケート層含有ポリアミドの製造時に炭酸カルシウムを同時に存在させることによる一工程法もある。重合法の場合には、膨潤性層状珪酸塩とモノマーの混合物および炭酸カルシウムを共存させた上で重合すればよい。また溶融混練法の場合には膨潤性層状珪酸塩と炭酸カルシウムの混合物を溶融ナイロン6に供給してもよいし、それぞれ別のサイドフィーダーから供給しもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限り熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、滑剤などが添加されていてもよく、これらは重合あるいは溶融混練による製造の任意の段階で加えられる。これらのうち、熱安定剤、酸化防止剤および劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物やこれらの混合物が挙げられる。また強化材としては、例えばガラス繊維、ワラストナイト、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウム、炭素繊維等が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は優れた強度、剛性、耐熱性を示しながらも軽量であり、かつ前記の材料物性を高いレベルに保持したまま耐衝撃性、特に低温度雰囲気下での特性が改善されたものであり、通常の成形加工法(射出成形、押出成形、吹き込み成形等)で容易に目的の成形品とすることができる。成形品としては、自動車エンジンルーム内の部品、例えばエンジンカバーやタイミングベルトカバー等のカバー類を挙げることができる。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、参考例、実施例ならびに比較例で用いた原料および物性試験の測定方法は次の通りである。
1.原料
(1)合成フッ素雲母(M-1)
ボールミルにより平均粒子径が5μmとなるように粉砕したタルクに対し、平均粒子径が同じく5μmの珪フッ化ナトリウムを全量の15質量%となるように混合した。これを磁性ルツボに入れ、電気炉にて850℃で1時間反応させることによりインターカレーション反応を行った。反応生成物の純度は98%であったが、水ひ処理により精製して使用した。CECの測定をおこなったところ、100mmol/100gであった。このようにイオン交換能を有していることから、膨潤性フッ素雲母系鉱物の生成が確認された。
(2)モンモリロナイト(M-2)
クニミネ工業社製「クニピア-F」を用いた。CECは110mmol/100gであった。
(3)重質炭酸カルシウム
同和カルファイン社製「エース25」を用いた。面積平均粒子径は1.08μmであった。
(4)ガラス繊維
日本電気硝子社製「T289」を用いた。
(5)マイカ
クラレ社製「500-D」を用いた。重量平均フレーク径は10μmであった。
2.測定方法
(1)陽イオン交換容量(CEC)
日本ベントナイト工業会標準試験方法によるベントナイト(粉状)の陽イオン交換容量測定方法(JBAS-106-77)に基づいて求めた。
すなわち、浸出液容器、浸出管および受器を縦方向に連結した装置を用いて、まず初めに、層状珪酸塩をpH=7に調製した1N酢酸アンモニウム水溶液により、その層間のイオン交換性カチオンの全てをNH に交換した。その後、水とエチルアルコールを用いて十分に洗浄してから、前記したNH 型の層状珪酸塩を10質量%の塩化カリウム水溶液中に浸し、試料中のNH をKへと交換し、引き続いて、前記したイオン交換反応に伴い浸出したNH を0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定することにより、原料である膨潤性層状珪酸塩の陽イオン交換容量(mmol/100g)を求めた。
(2)シリケート層の分散状態
後述の曲げ弾性率測定用の試験片から切り出した小片をエポキシ樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフにて超薄切片に切り出し、この試料について、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM-200CX型、加速電圧100kV)により写真撮影を行い、シリケート層の分散性を評価した。
(3)無機灰分率(シリケート層含有ポリアミド中のシリケート層含有率)
乾燥した樹脂ペレットを磁性ルツボに精秤し、500℃に保持した電気炉で15時間焼却処理した後の残渣を無機灰分とした。無機灰分率は次式により求めた。
無機灰分率(質量%)=〔(無機灰分質量)/(全試料の質量)〕×100
(4)シリケート層含有ポリアミドの相対粘度
96質量%濃硫酸中にシリケート層含有ポリアミドの乾燥ペレットが1g/dlとなるよう溶解し、G-3ガラスフィルターにより無機成分を濾別した後測定に供した。測定は25℃の条件下においてウベローデ型粘度計を用いて行った。
(5)ポリアミド樹脂組成物の耐衝撃性
ポリアミド樹脂組成物を図1に示すような成形品とし、デュポン式衝撃試験機にて、この成形品に所定の高さから重錘を落下させて衝撃強度を評価した。このとき成形品に直接衝撃力を付与するストライカ部分は直径30mm、厚さ5mmの円盤とし面衝撃を加えた。種々の重錘と高さの組み合わせの元、−30℃で落下試験を行い、次の式により計算される付与エネルギーG(J)により、評価を行った。この値が大きいほど、耐衝撃性が高い。
G=(成形品が破壊しない最高高さ)×(重力加速度)×(重錘荷重)
(6)試験片の曲げ弾性率
ASTM D-790に基づいて測定した。
(7)試験片の荷重たわみ温度
ASTM D-648に基づいて、荷重1.8MPaで測定した。
(8)膨潤性層状珪酸塩の初期粒子径
レーザー回折散乱法による粒度分布測定(島津製作所製SALD-2000型)を用いて、メタノールを分散媒とし、フローセル中で測定することにより求めた。
(9)フィラーの面積平均粒子径
フィラー粒子の真比重(密度)と比表面積を測定することにより次の計算式から求めた。
面積平均粒子径(μm)=(6×10)/(真比重×比表面積)
なお、真比重はJIS K-5101に基づき、比表面積は流動式比表面積測定装置(Micromeritics社製フローソーブIII2310型)を用いて測定した。
〔参考例1〕シリケート層含有ポリアミド(P-1)の重合
ε-カプロラクタム1.0kgおよび合成フッ素雲母(M-1)250g(全陽イオン交換容量は0.3モルに相当する)を水1kgに混合し、ホモミキサーを用いて1時間撹拌した。引き続いて、予めε-カプロラクタム9.0kgを仕込んでおいた内容積30リットルのオートクレーブに、前記混合液および95質量%リン酸水溶液34.7g(0.3モル)を投入し、撹拌しながら150℃にまで昇温し、その後1時間その温度を維持しつつ攪拌を続けた。引き続いて、260℃に加熱し、圧力1.5MPaまで昇圧した。そして徐々に水蒸気を放出しつつ温度260℃、圧力1.5MPaを2時間維持し、さらに1時間かけて常圧まで放圧し、さらに30分間重合した。
重合が終了した時点で、上記反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断してシリケート層含有ポリアミド(P-1)を得た。
精練、乾燥後のP-1のペレットについて透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、M-1が劈開し、シリケート層がナイロン6マトリクス中に分子レベルで分散されていることが確認された。
なお灰分測定によるP-1中のシリケート層の含有量は2.7質量%であった。また相対粘度は2.7であった。
〔参考例2〕シリケート層含有ポリアミド(P-2)の重合
M-1を400g(全容イオン交換容量は0.4モルに相当する)用い、これに伴って95質量%リン酸水溶液46.3g(0,4モル)に変更した以外は参考例1と同様にしてシリケート層含有ポリアミドを重合した。
精練乾燥後のP-2のペレットについて透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、M-1が劈開し、シリケート層がナイロン6マトリクス中に分子レベルで分散されていることが確認された。
なお灰分測定によるP-2中のシリケート層の含有量は4.3質量%であった。また相対粘度は2.7であった。
〔参考例3〕シリケート層含有ポリアミド(P-3)の重合
M-1の代わりにモンモリロナイト(M-2)を250g(全容イオン交換容量は0.275モルに相当する)を用いた他は参考例1と同様にしてシリケート層含有ポリアミド(P-3)を得た。
精練、乾燥後のP-3のペレットについて透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、M-2が劈開し、シリケート層がナイロン6マトリクス中に分子レベルで分散されていることが確認された。
なお灰分測定によるP-3中のシリケート層の含有量は2.7質量%であった。また相対粘度は2.7であった。
実施例1〜7
表1に示す実施例1〜7の組成のポリアミド樹脂組成物を東芝機械社製TEM-37BS型2軸押出機を用いて溶融混練することにより得た。コンパウンド条件は、シリンダ温度250〜260℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量150kg/hとした。押出し後直後のストランドを水冷し、ペレタイザーにてペレット化し、乾燥の後、射出成形に供した。
表1より、シリケート層含有ポリアミド(P-1〜P-3)のいずれの組成においても炭酸カルシウムを配合することにより、少量配合領域から面衝撃強度に改善効果が認められる。一方で曲げ弾性率に代表される剛性やDTULで示される耐熱性には変化がなく、炭酸カルシウムの配合によって、母材の耐衝撃性のみが向上することが明らかである。
比較例1〜9
表2に示す比較例1〜9の組成のポリアミド樹脂組成物もまた実施例1〜9と同様にして東芝機械社製TEM-37BS型2軸押出機を用いて溶融混練することにより得た。
表2より、シリケート層含有ナイロン6(P-1〜P-3)のいずれの組成においても、炭酸カルシウムの配合量が極めて少ない場合には耐衝撃性改善効果が全くなく、一方多量に配合した場合には耐衝撃性は向上するもののその値は上限値に到達するように認められ、多量配合に実質的な意味はない。また、炭酸カルシウムで認められるような少量配合時の耐衝撃性改善効果は、ガラス繊維やマイカでは認められない。これらのフィラーを多量に配合した場合には剛性や耐熱性には顕著な改善が認められるが、耐衝撃性に関しては効果がないか、逆に低下することもある。
耐衝撃性評価試験の概略図である。

Claims (4)

  1. ナイロン6(ポリカプロアミド)100質量部に0.1〜20質量部の膨潤性層状珪酸塩のシリケート層が分散されてなるシリケート層含有ポリアミド80〜99質量%および炭酸カルシウム1〜20質量%とからなるポリアミド樹脂組成物。
  2. 膨潤性層状珪酸塩が合成フッ素雲母またはモンモリロナイトであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. 炭酸カルシウムが面積平均粒子径0.1〜20μmを有することを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 炭酸カルシウムが、重質炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
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