JP2006347837A - 連続繊維強化型複合材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 所定の繊維束からなる繊維織物と、該繊維織物の上記繊維束に対して付着形成されるマトリックスとを備える連続繊維強化型複合材料の製造方法であって、上記マトリックスを形成する工程は、上記マトリックスの原料粉末あるいは/及び上記繊維織物に対して振動を加えることによって上記繊維織物の内部に上記原料粉末を含浸させる含浸工程と、上記含浸工程後の上記繊維織物に対して熱処理を行うことによって上記マトリックスを形成する熱処理工程とを有する。
【選択図】 図2
Description
そこで、近年、所定の繊維束からなる繊維織物等とセラミックスを複合化させることによってセラミックスの長所を生かしつつ靭性が向上されたセラミックス基複合材料が注目されている。
したがって、本発明の連続繊維強化型複合材料の製造方法によれば、特性に優れた連続繊維強化型複合材料を短時間で製造することが可能となる。
図1は、本実施形態のセラミックス基複合材料の製造方法によって製造されたセラミックス基複合材料S1の断面図である。
この図に示すように、セラミックス基複合材料S1は、繊維織物1とSiCマトリックス2(マトリックス)とを備えて構成されている。
繊維織物1は、所定の繊維束をXYZ方向に織った3次元織物である。なお、一般的に、繊維束としては、SiC繊維を数百〜数千本束ねたSiC繊維束が用いられる。そして、この繊維織物にSiCマトリックス2が付着形成されている。
デサイズ工程(ステップS3)は、ステップS2において形成された繊維織物1を構成する繊維束上に被覆された余分なポリマーを除去する工程である。
そして、本実施形態のセラミックス基複合材料の製造方法においては、本含浸工程(ステップS41)は、混合粉末あるいは/及び繊維織物1に対して振動を加えることによって混合粉末を繊維織物1の内部に含浸する方法、若しくは、混合粉末中に繊維織物1を配置した状態で混合粉末を加圧することによって繊維織物の内部に混合粉末を含浸させる方法を用いて行われる。なお、以下の説明において、気体中あるいは真空中において混合粉末あるいは/及び繊維織物1に対して振動を加えることによって混合粉末を繊維織物1の内部に含浸する方法を乾式加振含浸法と称し、液体中において混合粉末あるいは/及び繊維織物1に対して振動を加えることによって混合粉末を繊維織物1の内部に含浸する方法を湿式加振含浸法と称し、混合粉末中に繊維織物1を配置した状態で混合粉末を加圧することによって繊維織物の内部に混合粉末を含浸させる方法を乾式加圧含浸法と称する。
また、MI法によるSiCマトリックスの形成工程と比較してSi粉末とC粉末との反応速度が緩やかであるため、SiCマトリックス2内の残存Siの量を低減させることが可能となる。なお、SiCマトリックス2内の残存Siは、X線回折法によって容易に確認することができる。
したがって、本実施形態のセラミックス基複合材料の製造方法によれば、短時間で製造可能でありかつ特性に優れたセラミックス基複合材料S1を製造することが可能となる。
また、本実施形態のセラミックス基複合材料の製造方法においては、上述の湿式加振含浸法を用いる場合には、C粉末の平均粒径が1〜10μmであることが好ましい。このように湿式加振含浸法の場合に、平均粒径が1〜10μmのC粉末を用いることによって、含浸工程において、高い含浸率を得ることが可能となる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の説明においては、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
この図に示すように、本実施形態のセラミックス基複合材料の製造方法によって製造されたセラミックス基複合材料S2のSiCマトリックス2は、繊維織物1の表層に付着する部分(SiCマトリックスの一部)がCVIマトリックス21によって構成されている。
このようにCVI処理工程(ステップS43)によってSiCマトリックス2の一部21を形成することによって、繊維織物1の表面に緻密なSiCマトリックス21が形成される。よって、含浸工程(ステップS41)において、繊維織物1の形状が崩れ難いものとすることが可能となり、含浸工程(ステップS41)が容易化される。
次に、上記第1実施形態において示したセラミックス基複合材料の製造方法の実施例について説明する。
本実施例においては、まず最初に、(a)スラリー含浸法、(b)乾式加振含浸法、(c)湿式加振含浸法、(d)乾式加圧含浸法の4つの含浸法について比較検討を行った。なお、本比較検討においては、3次元織りSiC繊維成形体(繊維構成 x:y:z=1:1:0.2)を繊維織物1として用意した。なお、この繊維織物の寸法は、約10×10×5mmである。そして、この繊維織物に対して、繊維表面に約200nmの炭素界面層を形成した後、上記第2実施形態において示したCVI処理工程を施すことによってSiCマトリックスを形成したものを試験片として用いた。なお、この試験片におけるSiCマトリックスの気孔率は28.9%(アルキメデス法にて測定)であった。
また、本実施例においては、含浸性の確認のために、粒径が5μm相当の真球状カーボンと、粒径の異なる3種のSiC粉末とを用意した。なお、粒径が5μm相当の真球状カーボンとして、平均粒径が4.5μm±2.0μmで密度が2.2g/cm3のもの(人造黒鉛微粉末「UF−G10」(昭和電工株式会社製))を用いた。また、3種のSiC粉末とは、粒径が1μm相当のもの(微粉研磨材「デンシックウルトラファイン」(昭和電工株式会社製):平均粒径0.48μm)と、粒径が3μm相当のもの(高純度SiC(株式会社高純度科学研究所製):平均粒径2.5μm)と、粒径が40μm相当のもの(研磨材「グリーンデンシック」(昭和電工株式会社製):平均粒径40μm)とであり、密度はどれも3.2g/cm3である。
スラリー含浸法では、真球状カーボンと水あるいはエタノールとを混合してスラリー化したものと、SiC粉末とエタノールあるいはアセトンとを混合してスラリー化したものを用いた。具体的には、液体に粉末を添加して超音波により10分間分散し、さらに10分間攪拌し、その後10分間脱気することによって調整されたスラリーを用いた。なお、全てのスラリーの濃度は、20vol%に調整した。
そして、試験片を各スラリー中に沈め、この周囲を真空引きすることによって試験片内から空気を脱気してスラリーと置換した。その後、試験片を乾燥させて液体のみを蒸発させることによって粉末のみを試験片の内部に残し、重量変化を測定することによって含浸率を計測した。なお、粉末として真球状カーボンを用いたスラリーでは、含浸時間が含浸率に与える影響を見るため、含浸時間を1分と10分との2種類で行った。
乾式加振含浸法では、試験片が完全に埋まる程度の粉末をビーカにとり、これに振動を与えながら試験片を粉末中に埋めた。埋めてから10分後に振動を停止して試験片を取り出して、重量変化を測定することによって含浸率を計測した。なお、振動の付与は振動周波数が50Hzの振動台と振動周波数が38kHzの超音波振動器の2種類について行った。また、粉末として真球状カーボンを用いた場合には、含浸時間が含浸率に与える影響を見るため、含浸時間10分の他に、30分及び60分の場合についても計測した。
以上の結果から、乾式加振含浸法の場合には、少なくともスラリー含浸法と同程度の含浸率を得ることができるとともに、低振動周波数の場合には、スラリー含浸法よりも明らかに高い含浸率を得られることが分かった。また、高振動周波数の場合であっても、1時間以上振動を加えることによって、スラリー含浸法よりも高い含浸率を得られる可能性があることが分かった。
湿式加振含浸法では、粉末とメタノール(液体)をビーカの中に入れ、さらに試験片をビーカに入れ振動を付与した。その後、試験片を取り出して、大気中において105℃で1時間以上乾燥させてから重量変化を測定することによって含浸率を計測した。なお、振動の付与は振動周波数が50Hzの振動台と振動周波数が38kHzの超音波振動器との2種類について10分間行った。また、メタノールに代えてアセトンを用いた場合についても計測した。
以上の結果から、湿式加振含浸法の場合には、低振動周波数の場合であっても、高振動周波数の場合であっても、スラリー含浸法よりも明らかに高い含浸率を得られることが分かった。
乾式加圧含浸法では、天然ラテックス製の薄肉の袋の内部において粉末に試験片が包まれるように配置し、この天然ラテックス製の袋をさらに一回り大きな天然ラテックス製の厚肉の袋に入れた。そして袋の内部を真空引きした。なお、ここまでの状態をバギングと称する。この袋を3分間、静水圧で加圧し、その後重量変化を測定することによって含浸率を計測した。なお、含浸率の計測は、バギング状態のもの、100MPa加圧したもの、300MPa加圧したものについて行った。また、乾式加圧含浸法については、粉末として真球状カーボンを用いた場合のみの含浸率の計測を行った。
以上の結果から、乾式加圧含浸法の場合には、スラリー含浸法よりも明らかに高い含浸率を得られることが分かった。
なお、以上の含浸率は、粉末として真球状カーボンを用いた場合の含浸率であるため、上記実施形態と同様に、粉末としてSi粉末とC粉末(真球状カーボン)との混合粉末を用いた場合における含浸性の確認を行った。また、今回の含浸性の確認は、湿式加振含浸法を用いて行った。具体的には、粒径が75μmのSi粉末と、粒径が5μmのSi粉末と、粒径が1μmのSi粉末とを用いて含浸性の確認を行った。なお、C粉末としては、粒径が5μmの真球状カーボンを用いた。
次に、本実施例においては、Si粉末の種類や粒径とC粉末の種類や粒径とが熱処理工程(ステップS42)における反応性に与える影響について検討した。なお、本実施例においては、粒径が75μmのSi粉末と粒径が5μmの真球状カーボンとの混合粉末を用い、室温から1450℃までにおける重量変化及び発熱・吸熱を測定することによって、熱重量−視差熱分析(TG−DTA)を行った。
Siの融点は、1414℃であるが、Cの存在下では1405±5℃で溶解し、SiC化反応を起こすことが知られている。このことから、1400℃での吸熱とそれに続く発熱は、Siの溶解とSiC化反応が連続して起きていることを示していると考えられる。そして、反応開始の初期では、Siが徐々にカーボンを取り込み融解していくために融解熱を吸収して吸熱のピークが現れ、取り込まれるカーボンが多くなりSiCの生成が進むと、発生する生成熱量が融解熱の吸熱量を上回って発熱のピークが現れるものと考えられる。なお、1400℃以下及び1410℃以上で見られる微小なピークについては、今回の結果からは何の反応であるかを特定することはできない。ただし、Siとカーボンの粉末を混合したものを1400℃以下で焼成した試験においても、X線回折によってSiCが生成されることが確認されているため、今回の試験においても1400℃以下においても局所的にSiC化反応が起こっていると予想される。また、1410℃以上においては、Siと離れて存在していたカーボンが融解してきたSi、またはSiが過剰なSiCと接触することで、徐々に反応が進んでSiC化しているためにピークが現れると推定される。また、重量の増加については、測定エリアに入り込んだ酸素によってSiが酸化したためと予想される。また、1250℃以上での重量の減少は、Siとカーボンの反応が徐々に始まり、酸素または二酸化炭素が脱離するための予想される。
1……繊維織物
2……SiCマトリックス(マトリックス)
Claims (10)
- 所定の繊維束からなる繊維織物と、該繊維織物の前記繊維束に対して付着形成されるマトリックスとを備える連続繊維強化型複合材料の製造方法であって、
前記マトリックスを形成する工程は、
前記マトリックスの原料粉末あるいは/及び前記繊維織物に対して振動を加えることによって前記繊維織物の内部に前記原料粉末を含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程後の前記繊維織物に対して熱処理を行うことによって前記マトリックスを形成する熱処理工程と
を有することを特徴とする連続繊維強化型複合材料の製造方法。 - 前記含浸工程は、液体中で行われることを特徴とする請求項1記載の連続繊維強化型複合材料の製造方法。
- 前記マトリックスの少なくとも一部がセラミックであることを特徴とする請求項1または2記載の連続繊維強化型複合材料の製造方法。
- 前記セラミックがSiCであり、前記マトリックスの原料粉末がSi粉末とC粉末との混合粉末を少なくとも含むことを特徴とする請求項3記載の連続繊維強化型複合材料の製造方法。
- 前記C粉末の平均粒径が1〜10μmであることを特徴とする請求項4記載の連続繊維強化型複合材料の製造方法。
- 所定の繊維束からなる繊維織物と、該繊維織物の前記繊維束に対して付着形成されるマトリックスとを備える連続繊維強化型複合材料の製造方法であって、
前記マトリックスを形成する工程は、
前記マトリックスの原料粉末中に前記繊維織物を配置した状態で前記原料粉末を加圧することによって前記繊維織物の内部に前記原料粉末を含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程後の前記繊維織物に対して熱処理を行うことによって前記マトリックスを形成する熱処理工程と
を有することを特徴とする連続繊維強化型複合材料の製造方法。 - 前記原料粉末に対する加圧力が100MPa以下であることを特徴とする請求項6記載の連続繊維強化型複合材料の製造方法。
- 前記マトリックスの原料粉末がSi粉末とC粉末との混合粉末を少なくとも含む場合に、前記C粉末の形状が球形であることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の連続繊維強化型複合材料の製造方法。
- 前記マトリックスの原料粉末がSi粉末とC粉末との混合粉末を少なくとも含む場合に、前記Si粉末の粒径が75μm以下であることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の連続繊維強化型複合材料の製造方法。
- 前記マトリックスを形成する工程は、前記含浸工程より前に、CVI処理によって前記マトリックスの一部を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項1〜9いずれかに記載の連続繊維強化型複合材料の製造方法。
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