上述したような自然冷媒ヒートポンプシステムでは、CO2圧縮機(コンプレッサー)102の駆動のために電動機103を使用しており、当該ヒートポンプの運転中は電力を消費することになる。この種ヒートポンプシステムの一般家庭用のものでは、電動機103の電力消費量は1.0〜1.5kW程度である。現状では自然冷媒ヒートポンプによる給湯器のランニングコストはガス給湯器に比べて1/5程度と優位性を有しているが、設備コストは4〜5倍程度を要してしまうのが通常であり、ガス給湯器から自然冷媒ヒートポンプ給湯器への代替を目指すには、設備償却を考慮するとさらにランニングコストを下げる必要がある。
また、家庭等の電力は昼間と夜間では価格に大きな差が有り(昼間は24円/kWh,夜間は7円/kWh程度)、このため自然冷媒ヒートポンプは経済的といえども、安価な深夜電力を使用して夜間に貯湯槽に湯を蓄えておく必要がある。かかる貯湯を行うため、貯湯槽容量としては、家族の人数やライフスタイルによるが、350〜450リットル程度のタンクが必要となり、電気温水器の場合と同様に設置スペース面での制約が生じるという問題がある。
以上の通り、自然冷媒ヒートポンプシステム(給湯器)のランニングコストをさらに下げる必要性に加え、貯湯槽容量を小さくしてスペース面の問題を解消する一方で、昼間電力を使用してヒートポンプを運転して貯湯槽容量縮小分を補う運転方式としても十分経済的となるような改良を為す必要性がある。また別観点の問題として、現状の自然冷媒ヒートポンプでは、高圧の超臨界状態とされたCO2を、膨張弁を使用して常圧にして液化させているが、かかる高圧エネルギーが有効利用されていないと言え、このエネルギーを回収して経済性や運用性を改善する必要性がある。
本発明は、これらの必要性に鑑みてなされたものであって、超臨界状態とされた自然冷媒が保有する高圧エネルギーを有効活用し、自然冷媒ヒートポンプを用いた給湯器等のシステムの、ランニングコストの低減を図り得る自然冷媒ヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
本発明の請求項1にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムは、自然冷媒を圧縮機で高温高圧化して熱交換器に送り、該熱交換器を経て低温高圧状態となった自然冷媒を膨張させ、蒸発器で自然冷媒を気化させるサイクルを有する自然冷媒ヒートポンプシステムにおいて、前記自然冷媒を膨張させる機構として、低温高圧状態の自然冷媒が備える圧力エネルギーを回転エネルギーに変換して回転出力を生成する回転出力生成手段を用いたことを特徴とする。
従来のシステム構成においては、膨張弁を使用して自然冷媒たるCO2圧力を常圧まで降下させているが、約10MPaの高圧のCO2超臨界流体を単純に約2MPaまで膨張させているのみで、高圧エネルギーの回収をしていない。そこで本発明では、自然冷媒の降圧機器(膨張機構)として、低温高圧状態の自然冷媒が備える圧力エネルギーを回転エネルギーに変換して回転出力を生成する回転出力生成手段を用いることで高圧エネルギーの回収を行う構成としたものである。前記回転出力生成手段にて生成された回転エネルギーを、当該自然冷媒ヒートポンプシステムの稼動に必要となる駆動機構のエネルギー源として活用することで、システムの効率化を図ることができる。
本発明の請求項2にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムは、自然冷媒を圧縮機で高温高圧化して熱交換器に送り、該熱交換器を経て低温高圧状態となった自然冷媒を膨張させ、蒸発器で自然冷媒を気化させるサイクルを有する自然冷媒ヒートポンプシステムにおいて、前記自然冷媒を膨張させる機構として、ピストン及びシリンダを備える往復式ピストン機関を用いると共に、前記ピストンの往復運動に基づき回転駆動されるクランク軸を具備してなり、該往復式ピストン機関のシリンダへ低温高圧状態の自然冷媒を導入して断熱膨張させることで、前記クランク軸の回転出力を得るよう構成したことを特徴とする。
この構成によれば、自然冷媒を膨張させる機構として、ピストン及びシリンダを備える往復式ピストン機関を使用し、該往復式ピストン機関のシリンダへ低温高圧状態の自然冷媒を導入して断熱膨張させることでクランク軸の回転出力が得られる。すなわち、自然冷媒をシリンダ内で膨張させると同時にピストンの往復運動に基づくクランク軸の回転出力を生成させることで高圧エネルギーの回収を行う構成である。前記クランク軸から発生される回転エネルギーを、当該自然冷媒ヒートポンプシステムの稼動に必要となる駆動機構のエネルギー源として活用することで、システムの効率化を図ることができる。
請求項2の構成において、前記往復式ピストン機関を複数台備え、各往復式ピストン機関のシリンダへそれぞれ自然冷媒が導入されると共に、各ピストンの往復運動が共通のクランク軸に与えられる多気筒構成とされ、各往復式ピストン機関のシリンダへ前記自然冷媒を供給するタイミングを制御する制御弁を具備させる構成とすることができる(請求項3)。
往復式ピストン機関は、一般に吸気、膨張、排気工程が順次行われ、前記膨張工程で専ら動力が発生される。換言すると、吸気、排気工程では高圧圧縮気体(本発明では、自然冷媒)の圧力エネルギーが利用されず動力も発生されない。従って、クランク軸に対して一台の往復式ピストン機関を連結したのみでは、自然冷媒の供給側における圧力変動が大きくなり脈動が生じる傾向がある。そこで、一つのクランク軸に対して複数台の往復式ピストン機関を備える多気筒構成とし、各往復式ピストン機関のシリンダへ自然冷媒を供給するタイミングを制御する制御弁を具備させることで、各往復式ピストン機関の吸気、膨張、排気工程に時間差を設けることが可能となり、これにより動力を安定的にクランク軸へ与えることができるようになる。
請求項2の構成において、前記往復式ピストン機関を複数台備え、第1の往復式ピストン機関のシリンダの排気口が、第2の往復式ピストン機関のシリンダの吸気口に接続されるように複数台の往復式ピストン機関が直列的に接続されると共に、各ピストンの往復運動が共通のクランク軸に与えられる単気筒多段構成とすることができる(請求項4)。この構成によれば、直列的に接続された複数台の往復式ピストン機関の、上流側の往復式ピストン機関(第1の往復式ピストン機関)に比較的高圧の自然冷媒が導入されて断熱膨張仕事をし、続いて下流側の往復式ピストン機関(第2の往復式ピストン機関)に比較的低圧の自然冷媒が導入されて断熱膨張仕事をするというように、高圧自然冷媒が保有する圧力エネルギーが段階的に利用される。自然冷媒は、このような2段階若しくはそれ以上の多段階の過程を経て、高圧から常圧近くまで減圧されることになる。
請求項4に記載の自然冷媒ヒートポンプシステムにおいて、自然冷媒が前記第1の往復式ピストン機関のシリンダの排気口から、第2の往復式ピストン機関のシリンダの吸気口へ至る間において、前記自然冷媒を加熱する加熱手段を設けることが望ましい(請求項5)。この構成によれば、上流側から下流側の往復式ピストン機関へ自然冷媒が導入される際に、自然冷媒が例えば大気と熱交換を行うような加熱手段により加熱される。従って、上流側の往復式ピストン機関における断熱膨張で自然冷媒のガス温度が低下された場合でも、前記加熱手段により昇温された状態で自然冷媒を下流側の往復式ピストン機関へ導入できるようになる。
また、上記請求項1〜5のいずれかに記載の自然冷媒ヒートポンプシステムにおいて、 前記回転出力により駆動されることで電力を発生する発電機を具備させることができる(請求項6)。この構成によれば、クランク軸等の回転出力にて発電機が駆動され、当該発電機により電力が発生される。このようにして発生された電力は、例えば当該自然冷媒ヒートポンプシステムの稼動のために使用される電動機等の駆動電源として活用することができる。
請求項6の構成において、前記発電機が発生した電力を、商用電力の周波数に変換するインバータを具備させることが望ましい(請求項7)。発電機が発生する電力の周波数は、クランク軸等の回転数に依存することになる。この場合、商用電力と同じ周波数の電力が得られないこともあるが、インバータを具備させることで、発電機が発生する電力を50Hz若しくは60Hzの電力に変換することが可能となり、発生される電力の汎用性を高めることができる。
請求項6又は7の構成にあって、前記圧縮機が電動機をその駆動動力源とする場合において、前記発電機により発生された電力を、前記電動機に給電するよう構成することができる(請求項8)。また、前記蒸発器が電動機で駆動される送気ファンを有する場合において、前記発電機により発生された電力を、前記送気ファンの電動機に給電するよう構成することができる(請求項9)。これらの構成によれば、圧縮機や送気ファンを駆動させる電動機の電源を、当該自然冷媒ヒートポンプシステムで回収されたエネルギーにて賄うことができる。
また、請求項6又は7の構成にあって、前記熱交換器から与えられる熱により生成された温水を貯留する貯湯槽を有する場合において、前記貯湯槽内に電気ヒータを配置し、前記発電機により発生された電力を、前記電気ヒータに給電するよう構成することができる(請求項10)。この構成によれば、前記発電機で発生された電力が、貯湯槽内の温水を保温乃至は加熱する電気ヒータの電源として活用されるようになる。なお、電気ヒータは電源周波数がさほど問題にならないことから、インバータ等を用いることなく簡易に電力を活用できるという利点がある。
また、請求項1〜5のいずれかに記載の自然冷媒ヒートポンプシステムにおいて、前記回転出力が、前記圧縮機の駆動動力源、及び/又は前記蒸発器が送気ファンを備える場合における該送気ファンの駆動動力源として、直接的に利用されるよう構成することができる(請求項11)。この構成によれば、往復式ピストン機関等で回収された回転エネルギーが、圧縮機及び/又は送気ファンにおいて、直接的に駆動源として活用される。従って、エネルギー変換効率が高い態様のエネルギーリサイクル系が構築されるようになる。
上記請求項2〜5のいずれかに記載の自然冷媒ヒートポンプシステムにおいて、前記往復式ピストン機関のシリンダには吸気弁と排気弁とが備えられ、前記吸気弁及び排気弁の開閉速度を制御することで前記回転出力の回転数を制御する開閉制御手段を具備する構成とすることが望ましい(請求項12)。この構成によれば、クランク軸の回転数が、シリンダの吸気弁及び排気弁の開閉速度により制御され、ひいてはクランク軸の回転出力を受ける各種機器(発電機、或いは圧縮機や送気ファン)の出力調整が、前記開閉制御手段にて行えるようになる。例えば、発電機が発生する電力の周波数調整も可能となり、インバータ等を用いることなく所望の周波数の電力を発生させることが可能となる。
請求項12の構成にあって、圧縮機の回転軸とクランク軸とを機械的に連結する場合において、前記圧縮機の回転数を検出する回転数検出手段を設け、前記開閉制御手段は、前記回転数検出手段により検出された回転数に前記回転出力の回転数が同期するよう、前記吸気弁及び排気弁の開閉速度を制御することが望ましい(請求項13)。クランク軸の回転出力で圧縮機を直接駆動させるよう構成した場合、圧縮機の回転数とクランク軸の回転数とを一致させないと、例えば圧縮機が往復式ピストン機関を強制駆動する現象が惹起されかねない。そこで、吸気弁及び排気弁の開閉速度を、圧縮機の回転数に応じて制御し、圧縮機の回転軸とクランク軸とを同期回転させることで、機械損失の発生を未然に防止できるようになる。
また、請求項12の構成において、前記吸気弁、若しくは前記吸気弁及び排気弁として、回転式の切替弁を用いることで、前記回転出力の回転数を制御することが望ましい(請求項14)。この構成によれば、シリンダへ導入される自然冷媒の流量制御を、回転式切替弁の弁座の回転数を調整することで行え、弁の上下動による方式よりも素早く動作させることが可能となる。
上記請求項2〜11のいずれかにおいて、往復式ピストン機関のシリンダへ自然冷媒を導入するための第1配管と、前記シリンダをバイパスして自然冷媒を蒸発器に導く第2配管と、前記第1配管及び/又は第2配管に配置される流量制御弁と、前記流量制御弁の動作制御を行い自然冷媒の流量を制御することで前記回転出力の回転数を制御する制御手段とを具備する構成とすることができる(請求項15)。この構成によれば、流量制御弁による自然冷媒の流量制御により、往復式ピストン機関の往復動作を制御することが可能となり、これによりクランク軸の回転数も制御可能となる。
請求項11に記載の自然冷媒ヒートポンプシステムにおいて、前記圧縮機及び/又は前記送気ファンを駆動させる駆動軸と、前記回転出力が生成される回転軸とを所定の制御信号に基づき連結又は開放する連結器と、前記圧縮機及び/又は前記送気ファンの負荷に応じて、前記連結又は開放の制御信号を生成する連結器制御手段とを具備する構成とすることができる(請求項16)。この構成によれば、連結器制御手段により、往復式ピストン機関の駆動力が大きく圧縮機等に有効な駆動力を与えることができる状態のときに連結器にて前記回転軸と駆動軸とを繋ぎ、往復式ピストン機関の駆動力が小さく圧縮機等に却って負荷を与えてしまうときは連結器を解放するという運転制御が行えるようになる。
請求項1〜16のいずれかに記載の自然冷媒ヒートポンプシステムにおいて、膨張された自然冷媒から冷熱を回収する冷熱回収機構を付設することが望ましい(請求項17)。この構成によれば、例えば自然冷媒が蒸発器において低温から常温へ昇温される際に冷熱が回収され、冷熱の利用も可能な自然冷媒ヒートポンプシステムが構築される。
請求項1にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、自然冷媒を膨張させる機構として、低温高圧状態の自然冷媒が備える圧力エネルギーを回転エネルギーに変換して回転出力を生成する回転出力生成手段が用いられるので、前記回転出力を当該自然冷媒ヒートポンプシステムの各部で必要とされる電力の生成や駆動力に用いることで、ヒートポンプシステム全体としての経済性を改善することができる。
請求項2にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、自然冷媒を膨張させる機構として、ピストン及びシリンダを備える往復式ピストン機関が使用され、前記ピストンの往復運動に基づき回転駆動されるクランク軸から回転出力を得るよう構成されているので、前記回転出力を当該自然冷媒ヒートポンプシステムの各部で必要とされる電力の生成や駆動力に用いることで、ヒートポンプシステム全体としての経済性を改善することができる。
請求項3にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、複数台の往復式ピストン機関を用いた多気筒構成とし、各往復式ピストン機関のシリンダへ自然冷媒を供給するタイミングを制御する制御弁を設けることで、動力を安定的にクランク軸へ与えることができ、これにより滑らかな回転出力をクランク軸から得られるようになる。従って、クランク軸からの回転出力を受ける機器の安定的な駆動が担保されるようになる。
請求項4にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、自然冷媒は、直列的に接続された複数台の往復式ピストン機関により、高圧から常圧近くまで段階的に減圧される。つまり、約10MPaの高圧のCO2超臨界流体を一段の往復式ピストン機関で一気に常圧まで低下させるのではなく、複数台の往復式ピストン機関にて多段階を経て減圧させるので、自然冷媒が保有する圧力エネルギーを効率的に利用することができる。
請求項5にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、各段の往復式ピストン機関にて断熱膨張仕事を行って低温化した自然冷媒が加熱手段により加熱され、再度温度上昇された後に次段の往復式ピストン機関で断熱膨張仕事をすることになるので、各段の往復式ピストン機関における仕事量を多くすることができる。ここで、加熱手段として大気、或いは当該自然冷媒ヒートポンプシステムの未利用排熱を利用して熱交換すれば、前記加熱手段の熱源を別途準備する必要がなく、システムの一層の効率化を図ることができる。
請求項6にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、クランク軸等の回転出力を利用して電力が生成される。この電力を、当該自然冷媒ヒートポンプシステムの稼動のために使用される電動機等の駆動電源として活用することで、ヒートポンプシステムとしての電力使用量を減少させることができ、全体としてのCOP、経済性が改善する。また、電気使用量が減少するために、電力料金が高い昼間に運転しても経済性が高くなることから、貯湯槽湯量は風呂給湯に必要な100〜200リットル程度に少なくでき、洗面所や台所で必要とする間歇的な給湯はヒートポンプシステムを昼間運転することにより供給しても経済性が得られるようになるという効果を奏する。
請求項7にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、インバータにより発電機が発生する電力を商用電力に変換して電力の汎用性を高めることができるので、電力の利用用途を拡張することができる。
請求項8にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、発電機により発生される電力が、圧縮機を駆動させる電動機の動作電源として活用されるので、システムの経済性を向上させることができる。
請求項9にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、発電機により発生される電力が、送気ファンを駆動させる電動機の動作電源として活用されるので、システムの経済性を向上させることができる。
請求項10にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、発電機により発生される電力が、貯湯槽内の温水を保温乃至は加熱する電気ヒータの動作電源として活用されるので、システムの経済性を向上させることができる。また、電気ヒータの設置により高温での貯湯が可能となることから、貯湯槽容量のコンパクト化を図ることもできる。
請求項11にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、往復式ピストン機関等で回収された回転エネルギーが、圧縮機及び/又は送気ファンにおいて、直接的に駆動源として活用される。これにより、圧縮機及び/又は送気ファンを駆動させる動力源(電動機等)の負担を軽減でき、経済性を向上させることができる。
請求項12にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、クランク軸の回転数が、シリンダの吸気弁及び排気弁の開閉速度により制御され、これによりクランク軸の回転出力を受ける各種機器の出力調整が行えるので、例えば発電機が発生する電力の周波数調整も可能となり、インバータ等を用いることなく所望の周波数の電力を発生させることが可能となる。従って、インバータ等の機器の使用を不要とでき、システムの簡素化を図ることができる。
請求項13にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、吸気弁及び排気弁の開閉速度を、圧縮機の回転数に応じて制御し、圧縮機の回転軸とクランク軸とを同期回転させることで、機械損失の発生を未然に防止できるので、システムの一層効率的な運転が確保できるようになる。
請求項14にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、回転式の切替弁を用いることで、簡易的に自然冷媒の流量調整が行えるようになる。また、弁の開閉による機械的稼動部が少なくなるため、機械的な信頼性を向上させることができる。
請求項15にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、流量制御弁による自然冷媒の流量制御により、往復式ピストン機関の往復動作を制御し、クランク軸の回転数も制御できる。従って、クランク軸で発電機等を駆動させる場合でもインバータ等の機器の使用を不要とでき、システムの簡素化を図ることができる。
請求項16にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、起動時や低負荷時には連結器を切り離して起動することにより、起動が容易に行えると共に、低負荷時には圧縮機用電動機を駆動させる電動機等の負荷低減が可能になる。
請求項17にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムによれば、冷熱回収機構で回収された冷熱で氷や冷水、冷気などを生成することが可能となり、自然冷媒ヒートポンプシステムの利用性を一層向上させることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能なものである。
(第1実施形態)
図1は本発明にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムS1の構成例を示すブロック図である。このシステムS1は、基本構成として、ヒートポンプユニット1と貯湯ユニット2とを備えている。そしてヒートポンプユニット1は、蒸発器11、この蒸発器11に付設された送気ファン111及びその駆動電動機112、自然冷媒の圧縮機(コンプレッサー)12及びその駆動電動機13、熱交換器14、自然冷媒を断熱膨張させる機構であって自然冷媒の圧力エネルギーで動作される往復式ピストン機関15、開閉弁17、流量制御弁18などを有し、これら機器は循環管路で連結されており、該管路内には自然冷媒、例えばCO2が封入されている。なお、往復式ピストン機関15には、その動作により回転駆動されるクランク軸30が連結され、該クランク軸30には発電機41の発電機回転子の軸が連結されている。また、発電機41にはインバータ42が接続されている。
蒸発器11は、大気中の熱を取り込んで自然冷媒を気化させるためのものであり、例えば自然冷媒を流通可能とした伝熱管を蛇行させ、この蛇行伝熱管に熱交換フィンを多数枚取り付けた構成のものを用いることができる。送気ファン111は電動機112にて回転駆動され、前記蒸発器11に熱交換用の大気を送気するものである。
圧縮機12は、蒸発器11から送られて来る自然冷媒を圧縮して高温高圧化するもので、各種の気体圧縮機が使用でき、二段圧縮ロータリー式の圧縮機等も使用することができる。本実施形態では電動機13にて圧縮機12を駆動させる態様を例示しているが、ガスエンジン方式や、後述の実施形態のように、クランク軸30から直接圧縮機12に回転駆動力が与えられるようにすることもできる。この圧縮機12による自然冷媒の圧縮は、自然冷媒を超臨界状態にまで高温高圧化することを目的とし、自然冷媒としてCO2を使用した場合には、このCO2ガスは圧縮機12で10〜20MPa程度に圧縮されると共に、約130℃の高温に加熱され、超臨界状態とされる。
熱交換器14は、高温高圧の超臨界状態にある自然冷媒が保有する熱を、低温状態にある他の熱吸収媒体に伝熱するための機器である。前記熱吸収媒体は、当該自然冷媒ヒートポンプシステムが例えば給湯用途である場合は水であり、空調用途である場合には空気となる。本実施形態では、給湯用途を例示しており、この場合熱交換器14内には後述する通り水が流通可能とされ、自然冷媒が保有する熱がこの水に与えられることとなる。そしてこの熱の授受により、水は加温される一方で、自然冷媒(CO2)自身は常温近くまで冷却されることになる。
往復式ピストン機関15は、熱交換器14を経て常温近くまで冷却されているが超臨界状態を保ったままのCO2自然冷媒を断熱膨張させる。そして、この断熱膨張の際に発生する圧力をエネルギー源として、クランク軸30に回転エネルギーを与える。すなわち、断熱膨張というヒートポンプサイクルにおける本来的な役目に加え、低温高圧状態のCO2自然冷媒が備える圧力エネルギーを回転エネルギーに変換して回転出力を生成するものである。
図2は、高圧状態の自然冷媒をエネルギー源として利用した単気筒式の往復式ピストン機関15により回転出力を生成する動作を説明するための断面図である。往復式ピストン機関15は、大略的にピストン151とシリンダ152とで構成され、円筒状のシリンダ152内にピストン151が上下動可能に収容されてなる。シリンダ152の上部には、吸気座153と排気座154とが設けられ、前記吸気座153から低温高圧状態のCO2自然冷媒がシリンダ室内Rへ導入され、前記排気座154から断熱膨張仕事を行った後のCO2自然冷媒が排出される。なお、前記吸気座153及び排気座154には、それぞれ吸気弁154及び排気弁156が設置され、これらの弁の開閉操作により吸気及び排気タイミングが制御されるようになっている。前記吸気弁154は、図1に示す開閉弁17に相当するものである。
ピストン151は、図略のピストンリングをその外周に備え、シリンダ152の内周壁と気密状態で摺接する。ピストン151には、シリンダ152の下方向に延びる連接棒31の上端が、ピストンピンにて揺動可能に取り付けられている。該連接棒31は、ピストン151のヘッドに圧力エネルギーが与えられてピストン151がシリンダ152内を上下方向に往復運動すると、これに連動して上下動を行う。
一方、連接棒31の下端には、クランクピン321を介してクランク32が連結されている。そして、前記クランク32には、所定の軸受けで軸支されたクランク軸30が固着されている。このような構成を備えることで、ピストン151が直線的な往復運動を行うと、連接棒31とクランク32との連結点(クランクピン321)が円軌道を描くように運動することになり、クランク軸30が回転駆動されるものである。
以上のように構成された往復式ピストン機関15の動作は次の(a)〜(d)通りとなる。なお、下記(a)〜(d)の動作は、図2の(a)〜(d)に示す状態図に対応させたものである。
(a)ピストン151がシリンダ152の上端に達したとき、吸気弁154が「開」とされ、低温高圧のCO2自然冷媒(高圧ガス)が所定量だけ吸気座15を介してシリンダ室内Rに導入される。
(b)導入されたCO2自然冷媒はシリンダ室内Rで断熱膨張仕事を行い、その際に発生される圧力でピストン151はシリンダ152の最下点まで押圧される。
(c)ピストン151が最下点まで下がると吸気弁154が「閉」とされ、一方排気弁156が「開」とされる。ピストン151は連接棒31から与えられる慣性でシリンダ152内を上方向に押し上げられ、シリンダ室内Rに存在している断熱膨張仕事後の低圧の自然冷媒を、排気座155を介して排気させる。
(d)ピストン151がシリンダ152の上端に達すると、排気弁156が「閉」とされ、再び上記(a)の工程に戻る。
上記のようなピストン151の直線的な往復動作が、連接棒31とクランクにより回転運動に変換され、クランク軸30から回転出力として取り出される。すなわち、CO2自然冷媒がシリンダ室内Rにて断熱膨張されると共に、断熱膨張する際の圧力エネルギーがピストン151のヘッドに与えられ、これがクランク軸30の回転力に変換されるものである。なお、図2(a)〜(d)に示した例は、本発明にかかる往復式ピストン機関15の一例であり、吸気弁154や排気弁156の位置、構造として様々な形態のものを採用することができる。
図1に戻って、前記クランク軸30には、発電機41の回転子の回転軸が連結されている。つまり、発電機41の回転子はクランク軸30の回転出力で回転駆動されて同期高速回転し、これにより発電機41は交流電力を発電するもので、事実上、発電機41は往復式ピストン機関15により駆動されて交流電力を発電する。この交流電力は、発電機41の回転子回転数により様々な周波数となり、そのままでは動力用電源として用いることが一般に困難である。そこで発電機41の出力端にインバータ42が接続されている。インバータ42は、発電機41により発電された交流電力を、60Hz若しくは50Hzの商用周波数電力に変換させるものである。
インバータ42には、その出力を送電する電力ケーブル421が接続されている。この電力ケーブル421は、前記電動機13の給電線路131と電気的に接続されており、インバータ42で周波数変換されて出力された電力Dは、電力ケーブル421及び給電線路131を通して、圧縮機12を駆動する電動機3の動作電源の一部として使用される。勿論、送気ファン111の電動機112にも電力を供給するようにしても良い。なお、後述のように往復式ピストン機関15により回転駆動されるクランク軸30の回転数を制御し、これにより発生電力の周波数を商用周波数(50Hz若しくは60Hz)に制御する場合は、前記インバータ42を省き、発電機41で発生された電力を直接利用することが可能となる。
CO2自然冷媒を循環させる配管は、熱交換器14を経由した後、往復式ピストン機関15(のシリンダ)へ向かう第1配管101と、往復式ピストン機関15を経由させずにバイパスして蒸発器11へ向かう第2配管102(バイパス配管)とに分岐される。開閉弁17は、前記第1配管101に配置され、往復式ピストン機関15へのCO2自然冷媒の吸入若しくは遮断を可能とするもので、例えば上述した図2の吸気弁154のような弁を用いることができる。
流量制御弁18は、CO2自然冷媒の流量を制御するためのもので、前記第2配管102に配置される。すなわち、流量制御弁18の開度を大きくすれば、第2配管102に流れるCO2自然冷媒の流量が多くなり、逆に開度を小さくすれば、第1配管101に流れるCO2自然冷媒の流量が多くなる。従って、この流量制御弁18の開度調整を行うことで、往復式ピストン機関15で発生されるパワー(クランク軸30のトルク)やクランク軸30の回転数を制御することが可能となる。
なお、流量制御弁18に従来の膨張弁の機能を持たせるようにしても良い。この場合、開閉弁17を閉止することにより、当該自然冷媒ヒートポンプシステムS1を従来方式の自然冷媒ヒートポンプシステムと同様に機能させることができる。これにより、例えば、冬季のように冷熱利用の用途がなく、往復式ピストン機関15の出口温度が低くなり過ぎるような場合に、往復式ピストン機関15に流れるCO2自然冷媒の量を少なく、あるいは停止させて、流量制御弁18が備えられた膨張弁の機能によりCO2自然冷媒の圧力を下げて蒸発器11に送るようにすることも可能となる。
一方貯湯ユニット2は、貯湯槽21及び第1乃至第3の配管路22、23、24を備えている。貯湯槽21は給湯すべき温水を貯留するためのものであり、家庭用の場合は100〜500リットル程度の容積を備えるタンクが用いられる。第1の配管路22は貯湯槽21の底部を起点とし、前記熱交換器14内を経由し、貯湯槽21の上層部へ至る閉管路を構成している。すなわち、貯湯槽21底部から吐出される冷水を熱交換器14へ導いて熱交換させ、温水化した後に貯湯槽21の上層部へ還流させる閉管路である。第2の配管路23は、貯湯槽21の上層部にその一端が配置され、熱交換器14を経て加温された温水を各種の給湯設備(図示省略)へ給湯するための管路である。また第3の配管路24は、貯湯槽21の底部にその一端が配置され、給湯設備への給湯により不足した水を貯湯槽21へ補給すべく、上水道設備(図示省略)と連結する管路である。
以上の通り構成された自然冷媒ヒートポンプシステムの動作を、自然冷媒であるCO2のヒートポンプユニット1内における相変位に関連づけて説明する。先ずヒートポンプユニット1の閉管路内に封入されているCO2は、蒸発器11において熱交換作用を受けて気体P1とされ、圧縮機12へ送られる。そして電動機13で駆動されている圧縮機12においてCO2は、10〜20MPa程度に圧縮され、約130℃の高温に加熱されて超臨界状態の流体P2となる。
次いでこの超臨界流体P2となったCO2は、熱交換器14へ送られる。熱交換器14でCO2は、貯湯ユニット2の配管路22を介して貯湯槽21から循環されて来る水W2と熱交換して約60〜90℃程度まで昇温させ、温水W1を生成する。一方、熱を受け渡したCO2自身は常温近くまで冷却される。しかし、この時点でCO2はまだ高圧の超臨界状態であり、低温高圧の流体P3となる(高圧ガスの状態。一部は液化する場合がある)。そして、低温高圧流体P3の状態であるCO2は、第1配管101及び開閉弁17を介して往復式ピストン機関15へ導入されることとなる。
往復式ピストン機関15内(シリンダ内)で低温高圧流体P3の状態であるCO2は断熱膨張され、大部分が液体CO2となり、その一部が気体CO2である二相流体P41となる。この断熱膨張時のエネルギーにより、前述の通りピストン151(図2参照)がシリンダ152内で往復運動し、クランク軸30が回転駆動される。このクランク軸30の回転出力が発電機41の回転子へ伝達され、発電機41では交流電力の発電が行われる。そして該交流電力はインバータ42で商用周波数電力に変換され、電動機13の動作電源として給電される。このような仕事を終え、二相流体P42となったCO2は蒸発器11へ向けて送られる。一方、第2配管102に送られるCO2も、膨張弁の機能を有する流量制御弁18或いは別途設けられた断熱膨張機構により二相流体P42の状態で蒸発器11へ向けて送られることになる。
上記第1配管101及び第2配管102を経て二相流体P41、P42の状態となったCO2は合流し、低温低圧の二相流体P5として蒸発器11へ導入される。そして蒸発器11において大気との熱交換が行われ、CO2は気体P1となって圧縮機12へ再び送られる。以上のようなサイクルが、このヒートポンプユニット1内で繰り返されるものである。
一方貯湯ユニット2側においては、熱交換器14で昇温された約90℃の温水W1は、配管路22を介して貯湯槽21の上層部に送られる。このような高温の温水W1が投入されることで、貯湯槽21内の上層部は約90℃の高温水、下層部は常温に近い混合層を形成することとなる。この貯湯槽21の上層部から必要に応じて、配管路23を介して給湯や風呂用の温水W3が供給される。また、給湯に使用した水量に相当する分の水W0が、配管路24を介して給水される。以上のようなサイクルが、貯湯ユニット21内で繰り返されるものである。
以上の通り構成された自然冷媒ヒートポンプシステムS1にあっては、圧縮機12の駆動源として電動機3を使用しており、電力を必要とするものであるが、その駆動に必要な電力の一部として往復式ピストン機関15で回収した圧力エネルギーから生成した電力を供給するために、当該自然冷媒ヒートポンプシステムS1を稼動させるために必要な外部動力を減少させることができる。また、蒸発器11により大気の熱を取り込んで熱交換の起点としているために、使用する電力量と大気の熱を給湯用エネルギーとして使用でき、COPは従来型の3よりもさらに向上できる経済的なシステムとなる。
このような自然冷媒ヒートポンプシステムS1の経済性について概略的に説明する。往復式ピストン機関15で回転駆動されるクランク軸30に発電機41とインバータ42とを組み付け、断熱膨張エネルギーを電気エネルギーとして回収することにより、ヒートポンプシステムの電力使用量が減少することになる。従来型の一般家庭用のCO2ヒートポンプシステムにおける1ケ月の電気使用量は約180kWhであり、深夜電力換算(7円/kWh)でのランニングコストは約1260円/月となる。仮に、圧縮機12の容量が1.5kW、往復式ピストン機関15の効率が20%であるとすると、発電容量は約300Wとなり、1ケ月の電気使用量は144kWhに減少し、ランニングコストは深夜電力換算で約1008円/月となり、年間3,024円節約される。往復式ピストン機関15、発電機41及びインバータ42のエネルギー回収設備を5年で回収するには、この設備の追加費用が15,000円程度であれば回収は可能となる。また、昼夜間に運転する場合は、電気代の比(昼間23円/夜間7円)より約50,000円程度であれば設備回収は可能となる。
続いて、上記自然冷媒ヒートポンプシステムS1の変形実施形態として、インバータ42を用いることなく、発電機41で発生される電力の周波数を制御することが可能な制御システムにつき説明する。図3は、このような制御システムの構成を示すブロック図である。この制御システムは、図1、図2に示したように往復式ピストン機関15で回転駆動されるクランク軸30が発電機41の回転子に直結され、シリンダ152に吸気弁154と排気弁156とが備えられているハード構成を制御対象とするもので、運転制御部50、開閉制御部51(開閉制御手段)、吸気弁駆動部521、排気弁駆動部522及び電圧検出部(周波数検出部)53を備えている。
運転制御部50は、発電機41により発生させる電力の周波数制御を行うための運転制御信号を生成するもので、発電機41の回転子(クランク軸30)の回転数と発生される電力の周波数との関係を表すデータテーブル等を備え、所望の出力電圧周波数の設定情報(50Hz若しくは60Hz)或いは電圧検出部53から与えられる周波数変動情報に応じて、開閉制御部51に運転制御信号を出力する。なお、出力電圧周波数は、発電機41の極数と回転数とにより一義的に定まることから、かかる運転制御部50を省略するようにしても良い。
開閉制御部51は、吸気弁154及び排気弁156の開閉動作を制御する開閉制御信号を生成する。具体的には開閉制御部51は、クランク軸30の回転数と吸気弁154及び排気弁156の開閉速度との関係を表すデータテーブル等を備え、目標とするクランク軸30の回転数に応じて、吸気弁154及び排気弁156の開閉速度を設定し、これに応じた制御信号を生成して吸気弁駆動部521及び排気弁駆動部522へ出力する。
吸気弁駆動部521は、開閉制御部51から与えられる制御信号に応じて、吸気弁154を開閉駆動する。また排気弁駆動部522は、開閉制御部51から与えられる制御信号に応じて、排気弁154を開閉駆動する。なお、このように吸気弁154及び排気弁154を、個別に吸気弁駆動部521及び排気弁駆動部522により電気的に制御する代わりに、吸気弁154と排気弁154とを共通のカム軸により開閉駆動する機械的な方式を採用するようにしても良い。
電圧検出部53は、発電機41から出力される交流電力を検出し、その周波数情報を抽出する。すなわち、発電機41から出力される交流電力の周波数変動を監視するもので、抽出された周波数情報は、前記運転制御部50へ出力される。
このような制御システムによれば、吸気弁154及び排気弁156の開閉速度が、所定の目標値に応じて開閉制御部51により制御される。ここで、吸気弁154及び排気弁156の開閉速度を比較的早くすると、シリンダ152内へ比較的早いサイクルでCO2自然冷媒が吸気され、また排気が行われることから、ピストン151の往復運動のサイクルが早くなり、これによりクランク軸30の回転速度も速くなる。一方、吸気弁154及び排気弁156の開閉速度を比較的遅くすると、吸気及び排気のサイクルが遅くなってピストン151の往復運動のサイクルも比較的遅くなり、これによりクランク軸30の回転速度も遅くなる。
従って、発電機41の出力電圧の周波数はクランク軸30の回転数に依存することから、吸気弁154及び排気弁156の開閉速度を所定速度に調整することで、例えば商用交流電圧の周波数(50Hz若しくは60Hz)と同一周波数の交流電圧を発電機41から出力させることが可能となる。また、電圧検出部53にて出力電圧の周波数を監視し、運転制御部50へフィードバックすることで、出力電圧の周波数を安定化させることも可能となる。そして、商用交流電圧と同一周波数の交流電圧を発電機41から発生させるよう制御することで、インバータ42を介することなく、発電機41から直接的に圧縮機12の電動機13等へ電力を供給できるようになる。
図4は、制御システムの他の構成を示すブロック図である。この図4に示す制御システムは、第2配管(バイパス配管)102にバイパスさせるCO2自然冷媒の流量を制御することで往復式ピストン機関15の動作制御を行うもので、運転制御部60と、弁制御部61とを備えて構成されている。
運転制御部60は、発電機41により発生させる電力の周波数制御を行うための運転制御信号を生成するもので、開閉弁17の開閉速度及び流量制御弁18の開度と、発電機41或いはクランク軸30の回転数(電力の周波数と同等)との関係を表すデータテーブル等を備え、所望の出力電圧周波数の設定情報(50Hz若しくは60Hz)に応じて、弁制御部61に運転制御信号を出力する。
弁制御部61は、開閉制御部611と流量制御部612とからなる。開閉制御部611は、開閉弁17を所定のタイミングで開閉させる制御信号を生成する。この開閉制御部611は、先に図3に示した開閉制御部51と同様なものとすることができ、開閉弁17に代えて吸気弁制御部521及び排気弁制御部522を制御するように構成することもできる。流量制御部612は、流量制御弁18の開度調整を行うための制御信号を生成する。具体的には、流量制御部612は、クランク軸30の回転数と開閉弁17(或いは吸気弁154及び排気弁156)の開閉動作と流量制御弁18の開度との関係を表すデータベース等を備え、目標とするクランク軸30の回転数に応じて、開閉弁17(或いは吸気弁154及び排気弁156)の開閉速度と流量制御弁18の開度を求める演算を行い、これに応じた制御信号を生成して開閉弁17(或いは吸気弁制御部521及び排気弁制御部522)と流量制御弁18とに信号を出力する。
このような制御システムによれば、流量制御弁18の開度が、所定の目標値に応じて流量制御部612により制御される。ここで、流量制御弁18の開度を比較的小さくするか閉止すると、第1配管101(往復式ピストン機関15)へ流れるCO2自然冷媒の流量が比較的多くなり、シリンダ内へ比較的多くのCO2自然冷媒が吸気され、また排気が行われることから、ピストンの往復運動のサイクルが早くなり、これによりクランク軸30の回転速度も速くなる。一方、流量制御弁18の開度を比較的大きくすると、第1配管101へ流れるCO2自然冷媒の流量が比較的少なくなり、逆にクランク軸30の回転速度が遅くなる。
このように、流量制御弁18の開度調整によって第1配管101へ流れるCO2自然冷媒の流量を制御することで、比較的広い範囲でのクランク軸30の回転数制御を行い、開閉弁17(或いは吸気弁154及び排気弁156)の開閉速度の制御によって比較的狭い範囲での正確な回転数制御を行うことが可能となる。従って、例えば商用交流電圧の周波数(50Hz若しくは60Hz)と同一周波数の交流電圧を発電機41から出力させることが可能となる。これにより、インバータ42を介することなく、発電機41から直接的に圧縮機12の電動機13等へ電力を供給できるようになる。
次に、上記吸気弁154及び排気弁156として、回転式の切替弁を用いることで、クランク軸30の回転速度の制御を行う実施形態につき説明する。図5は、回転式の切替弁54の一例を示す断面図である。この切替弁54は、内管55と外管57とからなる二重管構造とされ、内管55及び外管57の双方とも一定の切欠部56、58が設けられている。なお、内管55の内部空間551には、高圧ガス(この場合、高圧のCO2自然冷媒)が流通可能とされている。
このように構成された切替弁54において、図5(a)に示すように、内管切欠部56と外管切欠部58とが重なっている場合は、高圧ガスは内部空間551から前記内管切欠部56及び外管切欠部58を通過して外部へ、例えばシリンダ室内R(図2参照)へ流れてゆくことになる。一方、図5(b)に示すように、内管55が外管57に対して相対的に回転されることにより、内管切欠部56と外管切欠部58との重なり範囲が少なくなると、内部空間551から流出する高圧ガス流量も減少する。さらに、図5(c)に示すように、内管55がさらに回転されることにより、内管切欠部56と外管切欠部58とが所謂背中合わせで相対するようになると、内部空間551の外部に対する開口部はなくなり、高圧ガスの外部に対する流れは停止されるようになる。なお、内管切欠部56及び外管切欠部58が半円状とされている場合、高圧ガスが閉止状態となるのは図5(c)の状態の一瞬のみであることから、例えば図2(c)、(d)のように吸気弁154が閉止すべき工程に対応することが困難となる。そこで、外管57の開口部面積を小さくする(外管切欠部58を半円状ではなく扇形状とする)ことで、高圧ガス流を閉止する時間を調整することが望ましい。勿論、内管55の開口部面積も小さくする(内管切欠部56を半円状ではなく扇形状とする)ようにしても良い。
かかる切替弁54によれば、内管55を適宜回転させることにより、内部空間551を流通する高圧ガスの外部に対する噴出制御を行うことが可能となる。すなわち、内管55の回転速度を制御することで、高圧ガス(CO2自然冷媒)の往復式ピストン機関15に対する供給量を制御することができ、これによりクランク軸30の回転速度を制御できるようになる。従って、内管55を回転駆動させる駆動部に対して、先に図3及び図4で説明した運転制御部50、60のような制御手段を付設することで、発電機41の回転子回転数を制御可能となり、出力電圧の周波数制御も行えるものである。
図5に示した切替弁54は、内管55に対して1つの内管切欠部56が設けられた一段の弁機構のものであるが、このような弁機構を軸の長手方向に数段設け、多気筒式の往復式ピストン機関に高圧ガスを供給可能な構成とすることもできる。図6は、多段の弁機構を備えた切替弁540の一例を示す断面図、図7は該切替弁540に用いられる内管55の斜視図である。
この切替弁540の内管55には、図7に示すように、その軸方向に第1切欠部561、第2切欠部562、第3切欠部563の3つの独立した切欠部が備えられている例を示している。これら3つの切欠部561〜563は、それぞれ内管55の中心軸に対して60度の開口角を有しており、断面視(図6参照)でこれらの開口が円周方向に並ぶように設けられている。そして、3つの切欠部561〜563の間には、シールリング552が取り付けられ、高圧ガスの漏洩が防止されるようになっている。一方、外管57には、3つの切欠部561〜563と外部とを連通させるような外管切欠部58が備えられている。ここでは外管切欠部58が、中心軸に対して120度の開口角を有している場合を例示している。
このように構成された切替弁540において、図6(a)に示す状態では、3つの切欠部561〜563の全てから高圧ガスの噴出が可能となる。この場合、外管切欠部58と完全に重なっている第2切欠部562からはフルに高圧ガスが吐出され、半分程度重なっている第1切欠部561及び第3切欠部563からは半量程度の高圧ガスが吐出されることになる。次に、内管55が外管57に対して相対的に回転され、図6(b)に示す状態になった場合、第1切欠部561のみからフルに高圧ガスが吐出され、第2切欠部562及び第3切欠部563は外管57により閉止される。さらに、図6(c)に示す状態では、3つの切欠部561〜563の全てが閉止されるようになる。
このような切替弁540によれば、複数設けられた切欠部のそれぞれから高圧ガスを各往復式ピストン機関のシリンダへ供給可能な構成とすることで、後述の第2実施形態に示すような多気筒構成に対応できるようになる。例えば6気筒式の往復式ピストン機関の場合、開口角を60度に設定した切欠部を、角度をずらして6つ内管に設けることで、高圧ガスを常時いずれかのシリンダへ供給可能となる。この場合、シリンダに対する高圧ガス流が停滞する時間はなくなり、ガス流に脈動が発生しないようにすることができる。
図5、図6に示したような切替弁54、540は排気弁にも勿論適用することができる。この場合、図5(a)〜(c)若しくは図6(a)〜(c)に示した工程と逆工程に動作する切替弁54、540が採用される。なお、往復式ピストン機関の構造によっては、ピストンの位置と排気口の位置とによりピストンが排気弁の役割を果たす場合もあり、このような構造では排気弁は必ずしも設ける必要がない。この場合、吸気弁のみに切替弁54、540を設ければ良い。
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムS2の構成を示すブロック図である。このシステムS2も基本構成として、ヒートポンプユニット1と貯湯ユニット2とを備えている点で上述の第1実施形態(図1参照)と同一であるが、往復式ピストン機関が1台ではなく、複数台(2台)備えられている点で相違する。なお、図8において、図1と同一符号が付されている部分は同一部分を示し、これに同一部分については説明を省略乃至は簡略化する(以下に説明する実施形態でも同じ)。
この自然冷媒ヒートポンプシステムS2は、第1配管101を分岐させて第1の往復式ピストン機関15aと第2の往復式ピストン機関15bとがそれぞれ並列的に配置され、これら往復式ピストン機関15a、15bのシリンダへそれぞれ自然冷媒が導入されると共に、各ピストンの往復運動が共通のクランク軸30に与えられる2気筒構成とされている。前記第1、第2往復式ピストン機関15a、15bそれぞれへのCO2自然冷媒の供給タイミングは、第1配管101の分岐部に配置された冷媒切替弁(制御弁)19により行われる。なお、この冷媒切替弁19としては、所定の制御手段で動作制御される各種の流路切替弁を用いることが可能であり、例えば上記図5〜図7に示したような回転式の切替弁54、540が好適に用いられる。
このように構成された自然冷媒ヒートポンプシステムS2によれば、熱交換器14で冷却された低温高圧のCO2自然冷媒は、まず冷媒切替弁19により第1の往復式ピストン機関15a側の配管が選択され、そのシリンダへ導入される。そこでCO2自然冷媒は断熱膨張の仕事をして圧力と温度とが下げられる。しかる後、第1の往復式ピストン機関15aはシリンダ内部の低温低圧のCO2自然冷媒の排気工程に入る。この排気行程と同期して、冷媒切替弁19により第2の往復式ピストン機関15b側の配管が選択され、そのシリンダへ低温高圧のCO2自然冷媒が導入される。そこでCO2自然冷媒は断熱膨張の仕事をして圧力と温度とが下げられる。これに続いて、第2の往復式ピストン機関15bから低温低圧のCO2自然冷媒が排気される排気工程に移行され、これと同期して再び冷媒切替弁19により第1の往復式ピストン機関15a側の配管が選択されるというサイクルが繰り返されるものである。なお、第1、第2往復式ピストン機関15a、15bにおいて断熱膨張の仕事を終え、それぞれ二相流体P411、P412となったCO2自然冷媒は蒸発器11へ向けて送られる。
第1、第2往復式ピストン機関15a、15bが上記の通りに動作されることから、これらに対して共通的に連結されているクランク軸30には、安定的に動力が与えられるようになる。すなわち、一つのクランク軸30に対して2台の往復式ピストン機関15a、15bが連結された2気筒構成とされ、各往復式ピストン機関15a、15bのシリンダへCO2自然冷媒を供給するタイミングを制御する冷媒切替弁19が具備されているので、各往復式ピストン機関15a、15bの吸気、膨張、排気工程に時間差を設けることが可能となり、これにより動力を安定的にクランク軸へ与えることができる。従って、クランク軸30に直結されている発電機41は、安定的に交流電力を発生することが可能となる。
なお、この自然冷媒ヒートポンプシステムS2においては、2台の往復式ピストン機関(2気筒)を使用する場合を例示しているが、これを3気筒以上にすることもできる。また、各気筒を円形に配置する星型構成としても良い。このように多気筒構成にすることにより、往復式ピストン機関入口側や出口側のCO2自然冷媒の脈動を少なくすることができるという利点もある。
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムS3の構成を示すブロック図である。このシステムS3も基本構成として、ヒートポンプユニット1と貯湯ユニット2とを備えている点で上述の第1実施形態と同一であるが、発電機41で発生させた電力を、圧縮機12を駆動させる電動機13の電源として用いるのではなく、貯湯槽21に付設した電気ヒータ43の動作電源として活用する点において相違する。以下、かかる相違点を中心に本実施形態を説明する。
上述した第1実施形態との構成上の相違は、貯湯槽21に高周波電力を電源とする電気ヒータ(例えば誘導加熱方式の電気ヒータ)43を付設し、発電機41と前記電気ヒータ43とを電力ケーブル422で直結した点であり、往復式ピストン機関15の往復運動に伴うクランク軸30の回転により発生された高周波電力をインバータで商用周波数に変換することなく電気ヒータ43に給電し、該電気ヒータ43が発する熱により貯湯槽21の温水(水)を加熱させるようにしたシステムである。
ここで用いる電気ヒータ43としては、上記の誘導加熱方式のヒータの他、抵抗加熱方式、赤外加熱方式のヒータ等も用いることができる。これら電気ヒータ43が、通常の商用周波数の電力を電源としている場合は、前述の実施形態のようにインバータを用いて周波数変換を行うようにすれば良い。また、電気ヒータ43の付設態様としては、貯湯槽21に電気ヒータ43の加熱部分を突出させる、或いは吊り下げる(所謂投げ込み式のヒータの場合)、若しくは貯湯槽21の壁面に電気ヒータ43を沿わせる等の態様を挙げることができる。
以上の通り構成された第3実施形態にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムS3の動作を説明する。自然冷媒であるCO2のヒートポンプユニット1内における相変位は、第1実施形態の場合と同一であるので重複部分の説明を省略するが、本実施形態では熱交換器14における水W2との熱交換温度が約60℃程度の比較的低温度に設定される点で相違する。これは、60℃程度の熱交換温度に設定したときに、CO2ヒートポンプサイクルの効率が最も高くなることに着目したものである。従って、水W2は熱交換器14を経ることで約60℃程度の温水W1とされて貯湯槽21へ供給される。
このような熱交換をして冷却された超臨界状態の流体P3であるCO2自然冷媒は、往復式ピストン機関15のシリンダへ導入される。そして前記シリンダ内でCO2自然冷媒は断熱膨張され、そのときのエネルギーによりピストンが往復運動されてクランク軸30を高速回転させ(或いは吸気弁が開閉制御されることで所定の回転速度に制御され)、発電機41を駆動させて高周波電力(所定の周波数の電力)を発生させる。ここで発生された高周波電力は、電力ケーブル422を通して電気ヒータ43に給電され、電気ヒータ43を発熱させる。
電気ヒータ43の発熱により、貯湯槽21内の温水は加熱されることとなり、前述の通り約60℃に加熱されて温水W1として貯湯槽21へ投入された温水は、約60℃から90℃の高温に昇温される。かかる昇温により、貯湯槽21内の上層部は約90℃の高温水、下層部は常温に近い混合層を形成することとなる。この貯湯槽21の上層部から必要に応じて、配管路23を介して給湯や風呂用の温水W3が供給される。また、給湯に使用した水量に相当する分の水W0が、配管路24を介して給水されるものである。
以上の通り構成された自然冷媒ヒートポンプシステムS3によれば、ヒートポンプユニット1の熱交換器14における熱交換温度を、サイクル効率が良い比較的低温(約60℃)に設定し、低温水から高温水への昇温(約60℃から90℃の昇温)を、往復式ピストン機関15による回収エネルギーで賄うといった運用を行うことができ、運用面での経済性を高くすることができる。
(第4実施形態)
図10は、本発明の第4実施形態にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムS4の構成を示すブロック図である。このシステムS4も基本構成として、ヒートポンプユニット1と貯湯ユニット2とを備えている点で上述の第1実施形態と同一であるが、発電機41を使用せず、クランク軸30の回転出力で圧縮機12を直接的に駆動させるようにした点において相違する。以下、かかる相違点を中心に本実施形態を説明する。
この自然冷媒ヒートポンプシステムS4は、往復式ピストン機関15に連結されているクランク軸30と、圧縮機12の回転駆動軸に直結されたリレー回転軸121とが、クラッチ機構33(連結器)を介して連結されてなり、クランク軸30の回転出力がダイレクトに圧縮機12の回転駆動軸に与えられる構成とされている。なお、かかる構成を採用しても、圧縮機12をクランク軸30の回転出力のみで駆動することはできないことから、圧縮機12には電動機13が付設される。すなわち、往復式ピストン機関15で回収された動力は常に圧縮機12を駆動する動力よりも小さくなることから、圧縮機12を回転駆動させる補助的な動力としてクランク軸30の回転出力が利用されるものである。これにより、電動機13の動力負荷を減少させることができ、その分だけ電力使用量を削減することができる。
クラッチ機構33は、前記リレー回転軸121とクランク軸30とを必要に応じて機械的に連結したり、開放したりするものである。自然冷媒ヒートポンプシステムS4の起動時や低負荷時においては、往復式ピストン機関15から駆動力はほとんど発生されないことから、リレー回転軸121とクランク軸30とが常時連結されていると、逆に往復式ピストン機関15を駆動させるための駆動力が圧縮機12の電動機13に負担されるようになる。この場合、電動機13の負荷が大幅に増加してしまうことになる。このような負荷増大を防止するために、リレー回転軸121とクランク軸30との間にクラッチ機構33が設けられている。このクラッチ機構33は、遠心式、電子式等の各種のものが採用可能であり、その種類は問わない。
さらに、この自然冷媒ヒートポンプシステムS4においては、システムの運転時に圧縮機12をクランク軸30の回転出力で駆動させる関係上、圧縮機12の回転数と往復式ピストン機関15により駆動されるクランク軸30の回転数とを同期させる必要がある。
図11は、上記クラッチ機構33の動作制御、並びに回転数同期制御を行うための制御システムの一例を示すブロック図である。この制御システムは、運転制御部70、クラッチ駆動部71、回転数検出部72、負荷検出部73、吸気弁駆動部741及び排気弁駆動部742を備えている。
クラッチ駆動部71は、運転制御部70から与えられる制御信号に基づきクラッチ機構33を駆動させ、リレー回転軸121とクランク軸30とを連結させたり、或いは両者を開放状態とさせたりする。回転数検出部72は、圧縮機12の回転数を検出する。なお、電動機13の出力軸の回転数を検出するようにしても良い。負荷検出部73は、当該自然冷媒ヒートポンプシステムS4の負荷状態を検出する。吸気弁駆動部741及び排気弁駆動部742は、運転制御部70から与えられる制御信号に応じて、吸気弁154及び排気弁156(図2参照)を開閉駆動する。
運転制御部70は、以上の各構成部の動作制御を行うもので、クラッチ制御部701、開閉制御部702及び同期制御部703を備えている。クラッチ制御部701は、前記負荷検出部73にて検出される自然冷媒ヒートポンプシステムS4の負荷状態に応じて、「クラッチ連結」又は「クラッチ開放」のいずれかの制御信号を生成する。具体的には、自然冷媒ヒートポンプシステムS4の起動時や低負荷時等、往復式ピストン機関15から駆動力が期待できない場合は「クラッチ開放」の制御信号を生成し、負荷が所定値以上となって往復式ピストン機関15から相応の駆動力が得られる状態になったときに「クラッチ連結」の制御信号を生成する。かかる制御信号は、クラッチ駆動部71へ出力される。
開閉制御部702は、吸気弁154及び排気弁156の開閉動作を制御する開閉制御信号を生成する。具体的には開閉制御部702は、クランク軸30の回転数と吸気弁154及び排気弁156の開閉速度との関係を表すデータテーブル等を備え、目標とするクランク軸30の回転数に応じて、吸気弁154及び排気弁156の開閉速度を設定し、これに応じた制御信号を生成して吸気弁駆動部741及び排気弁駆動部742へ出力する。
同期制御部703は、圧縮機12の回転数にクランク軸30の回転数を同期させるために、吸気弁154及び排気弁156の開閉動作を調整する同期制御信号を生成する。具体的には同期制御部703は、前記回転数検出部72で検出される圧縮機の回転数とクランク軸30の回転数とが同期するよう、吸気弁154及び排気弁156の開閉速度を修正する演算を行い、これに応じた同期制御信号を生成して前記吸気弁駆動部741及び排気弁駆動部742に与える。すなわち同期制御部703は、クラッチ連結時に圧縮機12の回転数とクランク軸30の回転数とを一致させるために機能する。
以上の通り構成された図11の制御システムの動作について説明する。図12は当該制御システムの動作を示すフローチャートである。自然冷媒ヒートポンプシステムS4が起動されると(ステップS1)、システムの負荷が所定値以上であるかが負荷検出部73により確認される(ステップS2)。負荷が低レベルにある場合(ステップS2でNO)、電動機13に往復式ピストン機関15を駆動させる駆動負荷を与えてしまうことになるので、クラッチ制御部701はクラッチ機構33を開放状態とする「クラッチ開放」との制御信号を生成し、クラッチ駆動部71に出力する。これにより、クランク軸30とリレー回転軸121とは非連結状態に維持される。
一方、負荷が所定値を超過した場合(ステップS2でYES)、クラッチを連結するに先立ち、吸気弁154及び排気弁156の開閉タイミングを制御して往復式ピストン機関15の回転数を上げる動作が実行される(ステップS3)。すなわち、当初開閉弁17は閉止状態とされ、CO2自然冷媒は流量制御弁18を流れているが、負荷の上昇に伴い開閉弁17を「開」とし、流量制御弁18の流量を絞りながら吸気弁154及び排気弁156の開閉タイミングを制御することで往復式ピストン機関15の回転数を上昇させる。そして、圧縮機12の回転数とクランク軸30の回転数との同期状態が確認され(ステップS4)、両者の回転数が許容値内に一致したならば(ステップS4でYES)、クラッチ制御部701はクラッチ機構33を連結状態とする「クラッチ連結」との制御信号を生成し、クラッチ駆動部71に出力する。これにより、クランク軸30とリレー回転軸121とは連結状態に移行される(ステップS5)。以後、往復式ピストン機関15により駆動されるクランク軸30の回転出力が、圧縮機12の補助動力として活用される。一方、両者の回転数が許容値内に一致しない場合は(ステップS4でNO)、ステップS3に戻って弁の開閉タイミング制御が継続される。
続いて、所定のサンプリング周期毎に、回転数検出部72により圧縮機12の回転数が検出され(ステップS6)、圧縮機12の回転数に応じて吸気弁154及び排気弁156の開閉速度が制御されているか否かが確認される(ステップS7)。もし、圧縮機12の回転数が規定値より低下していたり、電動機13の動力が規定値よりも大きくなっている場合は(ステップS7でNO)、同期制御部703により吸気弁154及び排気弁156の開閉動作を調整する同期制御信号が生成され、吸気弁154及び排気弁156の開閉タイミングが制御される(ステップS8)。その後、ステップS6に戻って、処理が繰り返される。
一方、圧縮機12の回転数が規定値内で、電動機13の動力が増加していない場合は(ステップS7でYES)、続いて負荷検出部73により負荷状況が確認され(ステップS9)、負荷が所定値を超過している場合は(ステップS9でYES)、ステップS6に戻って、処理が繰り返される。これに対して、負荷が所定値を下回っている場合は(ステップS9でNO)、クラッチ制御部701によりクラッチ機構33を開放状態とする制御信号が生成され、クランク軸30とリレー回転軸121とが非連結状態とされる(ステップS10)。そして、システムが停止される場合(ステップS11でYES)、そのまま処理が終了する。また、システムが停止されない場合は(ステップS11でNO)、ステップS2に戻って、処理が繰り返されるものである。
なお、クラッチ機構33を使用せず、クランク軸30とリレー回転軸121とを常時直結状態とする場合は、開閉弁17及び流量制御弁18(図10参照)の動作を制御することで、起動時における電動機13の負荷を軽減することが可能である。この場合、流量制御弁18としては、膨張弁としての機能を有するものを使用する必要がある。
すなわち、自然冷媒ヒートポンプシステムS4の起動時においては、開閉弁17を「閉」とすると共に流量制御弁18を「開」とする制御を行う。これにより、CO2自然冷媒は供給されず往復式ピストン機関15は開放状態とされ、電動機13により空転状態で回転されることとなる。従って、電動機13には大きな負荷が与えられないようになる。このとき、CO2自然冷媒は、流量制御弁18にて断熱膨張される。一方、運転が安定状態に入ると、今度は開閉弁17を「開」とすると共に流量制御弁18を「閉」若しくは流量絞る制御を行う。これによりCO2自然冷媒が往復式ピストン機関15に供給され、クランク軸30に動力が与えられるようになる。従って、クランク軸30から圧縮機12に補助駆動力を与えられるものである。以上のような制御を行うことで、クラッチ機構33を使用せず機構を簡略化し、また電動機13の容量増加をすることなくスムースにシステムを起動させることができる。
また、圧縮機12の回転数とクランク軸30の回転数との同期制御に関し、往復式ピストン機関15として、例えばガスパリン社のCO2モータを使用する場合は、特に同期制御機構を設けずとも、実質的に両者の同期を取ることが可能となる。前記CO2モータは、往復式ピストン機関と同様な構造を備えるが、シリンダ上部に棒状のロッドが取り付けられており、ピストンが上死点に到達すると前記棒状ロッドが、玉形逆支弁構造の入口弁の玉を押し上げて高圧ガスをシリンダ内に流入させ、ピストンが下がると棒状ロッドも下がり、玉形逆支弁の入口弁の玉も下がり高圧ガスの流入が停止される構成である。従って、圧縮機12の回転駆動軸とクランク軸30とを直結させると、前記回転駆動軸の回転に機械的に同期してシリンダの入口弁が開閉されることから、つまりCO2自然冷媒の導入タイミングが機械的に同期制御されることから、電気的な同期制御機構等が不要となるものである。
(第5実施形態)
図13は、本発明の第5実施形態にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムS5の構成を示すブロック図である。このシステムS5は、基本構成は上述の第1実施形態と同一であるが、クランク軸30の回転出力を発電機41の駆動用だけでなく、蒸発器11に対して大気を送風する送気ファン111の直接的な駆動用としても用いた点において相違する。
この自然冷媒ヒートポンプシステムS5は、往復式ピストン機関15により回転駆動されるクランク軸30の一端側を発電機41の回転子に直結する一方で、クランク軸30の他端側を送気ファン111の回転軸113とギア機構34を介して(或いは、第4実施形態で説明したようなクラッチ機構33を介して)連結した構成とされている。
このような自然冷媒ヒートポンプシステムS5によれば、往復式ピストン機関15で得られたクランク軸30の回転出力が、送気ファン111の駆動用に用いられる。また、一般に送気ファン111の駆動には大きなトルクを要しないことから、クランク軸30の回転出力を発電機41の回転子も回転駆動される。これにより、図1に示した当該送気ファン111の駆動用電動機112を省くことが可能となり、また発電機41で発生される電力Dにて圧縮機12を駆動させる電動機13の電力の一部を担うことができる。従って、自然冷媒ヒートポンプシステムS5を動作させるに当たって必要とされる動力を、往復式ピストン機関15で回収されたエネルギーにて大部分を賄わせることが可能となる。
(第6実施形態)
図14は、本発明の第6実施形態にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムS6の構成を示すブロック図である。このシステムS6は、基本構成は上述の第1実施形態と同一であるが、蒸発器11の手前に、往復式ピストン機関15から排出された低温CO2自然冷媒が保有する冷熱を回収する冷熱用熱交換器80及び冷熱蓄熱槽81を設けた点において相違する。
冷熱用熱交換器80は、往復式ピストン機関15のシリンダ内で断熱膨張して排出され、その殆どが液化し、水の氷点以下の低温となっているCO2自然冷媒から低温エネルギーを抽出する役目を果たす。このような冷熱用熱交換器80としては、例えば各種の多管円筒型熱交換器(シェル・アンド・チューブ型熱交換器)を用いることができる。
冷熱蓄熱槽81は、例えば予め冷熱を蓄熱し必要時に放冷する作用をなす潜熱蓄冷材(例えば、水、無機塩、無機水和塩などを蓄冷媒体とするもの)が、所定量槽内に備えられたものを用いることができ、具体的には氷蓄熱槽等が好適に用いられる。
前記冷熱用熱交換器80と冷熱蓄熱槽81との間は、伝熱配管路82にて熱的に接続されている。この伝熱配管路82は、一端側が冷熱用熱交換器80内へ導入されてCO2自然冷媒と熱交換可能に配管され、他端側が前記冷熱蓄熱槽81内へ導入されて槽内の熱交換部において、前記蓄冷材等と熱交換可能に配管された循環配管路である。該伝熱配管路82の循環路の中間部には図略の冷媒循環ポンプが設けられており、伝熱配管路82内に封入されている中間冷媒が冷熱用熱交換器80側から冷熱蓄熱槽81へ向けて循環されるよう構成されている。
この自然冷媒ヒートポンプシステムS6におけるCO2自然冷媒の状態サイクルにおいては、熱交換器14で温熱を供給して低温高圧となったCO2自然冷媒が、往復式ピストン機関15で断熱膨張され、一時的に低温低圧の液体状態(つまり低温エネルギーの保有状態)を呈することになる。このとき、液体状態のCO2は水の氷点以下の低温であることから、冷熱源としては十分なエネルギーを備えている。そこで、冷熱用熱交換器80にてこの冷熱を回収する(伝熱配管路82内に封入されている中間冷媒と熱交換する)ようにし、この低温エネルギーを種々の冷熱用途に用いるべく、冷熱蓄熱槽81へ冷熱を蓄えるようにしたものである。この冷熱は、例えば冷房等に使用することができる。
以上のように構成された自然冷媒ヒートポンプシステムS6によれば、往復式ピストン機関15でクランク軸30を回転駆動することで発電機41から電力エネルギーを回収するだけでなく、断熱膨張により低温低圧化したCO2自然冷媒から冷熱エネルギーをも回収するので、より経済性の高いシステムとすることができる。また、冷熱用熱交換器80にてある程度CO2自然冷媒が昇温されて蒸発器11へ向かうことになるので、蒸発器11の負担を軽減することができる。
(第7実施形態)
図15は、本発明の第7実施形態にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムS7の構成を示すブロック図である。このシステムS7は、基本構成は上述の第1実施形態と同一であるが、2台の往復式ピストン機関15c、15dを直列的に接続した単気筒2段構成とされている点において相違する。なお、図16は、第7実施形態の要部である前記単気筒2段構成を示した断面図である。
この自然冷媒ヒートポンプシステムS7では、第1の往復式ピストン機関15cと第2の往復式ピストン機関15dとの2台が用いられ、図16に示すように、第1の往復式ピストン機関15cのシリンダ152cに設けられている排気口155cと、第2の往復式ピストン機関15dのシリンダ152dに設けられている吸気口153dとが連結管157で接続されている。そして、第1の往復式ピストン機関15cの吸気口153cは第1配管101と接続され、また第2の往復式ピストン機関15dの排気口155dは蒸発器11へ至る配管に接続されている。
第1の往復式ピストン機関15cのピストン151cは連接棒31c及びクランク32cを介してクランク軸30に連結されている。また、第2の往復式ピストン機関15dのピストン151dも、同様に連接棒31c及びクランク32cを介して同じクランク軸30に連結されている。このように、2台の往復式ピストン機関15c、15dが直列的に接続されると共に、各ピストン151c、151dの往復運動が共通のクランク軸30に与えられる単気筒2段構成とされている。なお、直列接続する往復式ピストン機関の台数を増やし、2段以上の単気筒多段構成とすることもできる。
このような自然冷媒ヒートポンプシステムS7によれば、上流側に位置する第1の往復式ピストン機関15cに比較的高圧のCO2自然冷媒が導入されて断熱膨張仕事をし、続いて下流側に位置する第2の往復式ピストン機関15dに比較的低圧のCO2自然冷媒が導入されて断熱膨張仕事をするというように、CO2自然冷媒が保有する圧力エネルギーが段階的に利用される。CO2自然冷媒は、このような2段階の過程を経て、高圧から常圧近くまで減圧されることになる。
以上のように、段階的に高圧のCO2自然冷媒を常圧近くまで減圧させることによる利点は次の通りである。すなわち、一般的な自然冷媒ヒートポンプシステムにおいて熱交換器を経て断熱膨張機構に送られてくるCO2自然冷媒の圧力は、約10MPaと非常に高いものであり、これを一段で一気に常圧まで低下させた場合、その膨張比は100にもなり、本発明のように往復式ピストン機関を断熱膨張機構として用いるとシリンダストロークが非常に長くなるために、効率が悪化してしまう場合がある。例えば、ガソリンエンジンの場合、一般的に圧縮比(膨張比)は10程度である。
従って、往復式ピストン機関を断熱膨張機構として使用する場合は、10MPaのガス圧力を一段(第1の往復式ピストン機関15c)で1MPaまで低下させ、続いてこの1MPaのガス圧力を二段(第2の往復式ピストン機関15d)で0.1MPa(大気圧)まで低下させるのが実用的であるといえる。このことから、第7実施形態にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムS7のように、往復式ピストン機関を単気筒2段構成にして段階的に減圧することで、往復式ピストン機関のシリンダストロークを最適化することができるようになる。
(第8実施形態)
図16は、本発明の第8実施形態にかかる自然冷媒ヒートポンプシステムS8の構成を示すブロック図である。このシステムS8は、基本構成は上述の第7実施形態と同一であるが、2台の往復式ピストン機関15c、15dを直列的に接続する連結管157に、CO2自然冷媒と熱交換する中間熱交換器90(自然冷媒を加熱する加熱手段)を設けた点において相違する。
この自然冷媒ヒートポンプシステムS8には、第1の往復式ピストン機関15cと第2の往復式ピストン機関15dとを連結する連結管157に対し、大気やその他の低温熱源91と連結管157中を通過するCO2自然冷媒とを熱交換させる中間熱交換器90が備えられている。
このような中間熱交換器90を設けることで、第1の往復式ピストン機関15cで一旦断熱膨張仕事を行って低温化したCO2自然冷媒に対し、低温熱源91から熱が与えられる。従って、CO2自然冷媒は、温度が上昇された状態で第2の往復式ピストン機関15dへ導入されるようになる。これによりCO2自然冷媒は、圧力エネルギーが上昇された状態で第2の往復式ピストン機関15dにおいて断熱膨張仕事を行うこととなり、仕事量を増やすことができる。なお、中間熱交換器90において大気と熱交換させた場合、熱交換により冷やされた大気を、冷房用途に用いることも可能である。
以上、本発明のかかる第1〜第8実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、大型の自然冷媒ヒートポンプシステムにおいては、図8に示した往復式ピストン機関の多気筒構成と、図15、図17に示した単気筒複数段方式とを組み合わせるようにすることもできる。また、複数の往復式ピストン機関それぞれにクランク軸を連結し、各々の固有の往復式ピストン機関により発電機等が駆動されるようにしても良い。
また、本発明においては、自然冷媒を膨張させる機構として、低温高圧状態の自然冷媒が備える圧力エネルギーを回転エネルギーに変換して回転出力を生成することが可能な回転出力生成手段であれば、往復式ピストン機関以外の機関を用いることもできる。このような回転出力生成手段としては、例えばロータリー式機関、ルーツ式、リショルム式、スクロール式等の膨張機関をほぼ同じ条件で使用することが可能である。
さらに、自然冷媒に関し、上記実施形態ではCO2自然冷媒を使用する例を示したが、この他に水、空気、アンモニア、ハイドロカーボン等を、自然冷媒として用いることが可能である。