JP2006328734A - 粘着ガラステープ及び建造物の施工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来適用されてきたよりもさらに多くの用途でガラス繊維によって構成されるガラステープを使用できるよう、安価に生産できる高い性能を有するガラステープを提供するものである。
【解決手段】本発明の粘着ガラステープは、少なくとも片面が粘着性樹脂で処理された粘着面になっているガラスストランドを用いたテープであって、ガラスストランドが交差した状態で積層された組布となっているものである。また本発明の建造物の施工方法は、上述の粘着ガラステープを下地材の被補強面に当接施工して補修又は補強を行うものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、建築材料などとして使用されている各種ボード類や構造材の目地処理や補強処理等に使用される粘着ガラステープとその粘着ガラステープを使用する建造物の施工方法に関するものである。
建築材として使用される石膏ボードや珪酸カルシウム製のボード、所謂ケイカル板(ケイカルボードともいう)などの各種材料で構成されたボードを内壁や外壁の下地材として使用した場合、ボードの継目に相当する部分は構造的に脆弱であり、クラック(割れ、ひび)等の欠陥が発生する確率が高い。そして、このようなクラック等の欠陥を長期間に亘り放置すると、この種の欠陥は徐々にボードの表面から裏面にまで拡がり、欠陥を伝って雨水等がボードに侵入して漏水するか、あるいは継目部分の構造強度が経時的に一層弱くなって、ボード自体も劣化しやすくなるため好ましくない。
このような問題を回避するために従来から石膏ボードやケイカル板などの各種ボードの継目部分にはガラステープを貼り付け、セメント系モルタル等で下塗りした後、さらに仕上げ層をセメント系モルタル等で上塗りすることによってクラックの発生を防止している。このガラステープは、その片面が粘着性樹脂で被覆されてボードの継目部分に容易に貼り付けることができるようになっている。
ところでこのようなガラステープは、一般的に特許文献1にあるような安価なEガラス繊維を織ったものが用いられているが、Eガラス繊維は耐アルカリ性が不充分であるため、セメント中のアルカリ性物質によって経時的に浸食され、長期的に観察すると劣化した状態となりやすいという問題がある。このため、Eガラス繊維を用いたガラステープは、施工当初から短期間については問題ないが、長期間に亘って各種ボードの継目部分でクラック発生の抑止効果を期待するのは困難である。
そこで本発明者は、このような問題について研究を重ねた末、特許文献2にあるように、粘着ガラステープの構成材料としてZrO2を14質量%以上含有する耐アルカリガラス繊維よりなり、厚みが0.4mm以下、目間隔が10mm以下の絡み織りによって構成された織布を使用することによって、この問題点をある程度まで解決できることを見いだした。
特開平11−293864号公報 特開2002−302846号公報
しかしこれまで行われた上記特許文献1、2等のような発明だけでは、粘着ガラステープをさらに生産容易なものとし、しかも利用しやすく優れた性能を実現し、使用用途をより一層広範囲に拡げるには充分なものではない。そこで本発明者は、従来適用されてきたよりもさらに多くの用途で粘着ガラステープを使用することができるよう、安価に生産でき、高い性能を有する粘着ガラステープの開発に取り組み、ここにその詳細を提示するものである。
本発明の粘着ガラステープは、少なくとも片面が粘着性樹脂で処理された粘着面になっているガラスストランドを用いたテープであって、ガラスストランドが交差した状態で積層された組布となっていることを特徴とする。
ここで、少なくとも片面が粘着性樹脂で処理された粘着面になっているガラスストランドを用いたテープであって、ガラスストランドが交差した状態で積層された組布となっているとは、複数のガラスストランドが互いに交差状態で配設された構造であって、ガラスストランドの交差点について、ガラスストランドが互いに接着剤で接着された状態にある組布となっていることを表している。
本発明の粘着ガラステープは、ガラスストランド(またはマルチフィラメント)の交差部(交点部といってもよい)の樹脂を融着、接着させた不繊布である組布(連続繊維シートとも呼称される)によって構成されるものであるならば、どのような構成、配設状態を呈する組布であってもよい。すなわち最も単純な2軸の組布であって、たて糸とよこ糸が積層された構造であってもよく、所望の性能を実現することができるなら必要に応じて3軸以上の多軸構造を有する構成となるものでもよい。またガラスストランドの繊維径や使用されるテープの樹脂の種類、何層の構造とするか等についても特に限定されるものではない。また組布の製法についても限定されることはない。
組布を粘着ガラステープの構成材料とすることの利点としては、例えば2軸の組布によって構成される場合に、絡み織りの製繊布に認められるようなフィラメント、すなわち糸の捩れがなく、そのため組布の幅方向(よこ方向)と幅方向に垂直な方向(たて方向)とに引張強度の違いが生じないという点がある。このため粘着ガラステープの施工時にその粘着ガラステープの施工方向によって、施工後の構造強度の違いを生じることがなく、施工方向に影響されない安定した性能を実現することができるので、施工方法に起因する強度のばらつきなどの違いを小さくすることが可能となる。
また本発明の粘着ガラステープに使用する組布は、多軸構成とする場合であっても、各軸のフィラメント径を揃えれば、同一種の番手で組布を構成することもでき、この場合異なるものを予め準備する必要がなく、経費も抑制可能となり、さらに同一種でもって成形されるため絡み織り等と比較してテープの成形速度を高速に設定しても支障のないものとなるので好ましい。
ガラスストランドを互いに接着された状態にするための交差部の接着樹脂としては、単一種あるいは複数種のどのような接着剤を採用したものでもよく、その接着方法は問わない。またガラスストランドを構成するガラス材質についても限定しない。そして、ストランドの番手や、ストランドの長さなどについても特に限定されないものである。すなわち、いずれにせよ所望の性能を実現するものであれば支障はない。
また、本発明の粘着ガラステープは、少なくとも片面が粘着性樹脂で処理された粘着面になっていればよいので、両面が粘着面でも支障ない。また片面とは、必ずしも片面の全面でなくとも、その一部の面が粘着性樹脂で処理されていればよい。さらに粘着樹脂で処理される個所にマスキング等を利用することで選択的な処理を行い、特定の部位のみに粘着樹脂が処理されているような状態とすることも可能であり、粘着樹脂で処理された個所に所定の着色を行うことも可能である。また、本発明の粘着ガラステープは必要に応じて、施工面の彩色に応じ、着色や装飾を付与することも可能であって、そのような処理を施す場合には粘着ガラステープをそのまま外装材の一部として利用するような使用方法も可能である。
また、本発明の粘着ガラステープは、上述に加え組布のガラスストランドがZrO2を14質量%以上含有する耐アルカリ性ガラス繊維のストランドであり、テープの厚さが0.4mm以下、単位面積当たりの質量が200g/m2以下であるならば、所望の機械的な性能を実現できるため好ましい。
ここで組布のガラスストランドがZrO2を14質量%以上含有する耐アルカリ性ガラス繊維のストランドであり、テープの厚さが0.4mm以下、単位面積当たりの質量が200g/m2以下であるとは、ガラスストランドの組布よりなり、少なくともその片面が粘着性樹脂で処理された粘着面である粘着ガラステープであって、組布のガラスストランドが二酸化ジルコニウムを14質量%以上含有する耐アルカリ性ガラス繊維のストランドであって、しかもテープの厚さ寸法の大きさが0.4mm以下、テープの単位平方メートルについての面積当たりの質量値が200g/m2以下であることを表している。
そして、組布を構成するガラス繊維の材質としては、例えば具体的には、酸化物換算の質量%表示で、SiO2 54〜65%、ZrO2 14〜25%、Li2O 0〜5%、Na2O 10〜17%、K2O 0〜8%、RO(但し、Rは、Mg+Ca+Sr+Ba+Znを表す) 0〜10%、TiO2 0〜7%、Al23 0〜2%であることが好適である。すなわちARガラスとしての性能を有するものが好ましい。むろんCガラス繊維等の該当するガラス材質も採用できるのは言うまでもない。
また粘着ガラステープの厚さ寸法が0.4mm以下であるために、例えばボードの接合目地に粘着ガラステープを施工する場合であっても施工個所が必要以上に嵩張らず、そのため施工された個所の外観品位を著しく損なうようなことはない。さらに施工個所が嵩張らない構造となるため、さらに施工個所の外表面に化粧板やセメント等の外表面を覆う構造物、構造材を施工する際の妨げにもなりにくい。
また本発明の粘着ガラステープは、その単位面積当たりの質量が200g/m2以下であるため、軽量化ボード等のように軽量である必要性のある構造物に対しても使用することが可能であって、施工部位に必要以上の大きな荷重負担を強いるものではないため、構造物の形態や用途上、あるいは施工環境等によって軽量な状態での施工を希望される場合であっても好ましいものである。
また本発明の粘着ガラステープは、上述に加え組布を形成するガラスストランドの総番手が400tex以下であるならば、施工個所の施工厚み寸法を薄い状態にすることができるため好ましい。
ここで、組布を形成するガラスストランドの総番手が400tex以下であるとは、ガラスストランドを構成するフィラメントの長さ1000m当たりの質量が400g以下となることを表している。また総番手とは、多軸構成の組布であっても、その多軸構成のストランドの番手を総合した番手を表すものである。そして上述したような観点、すなわちテープ厚を薄厚化することができるという点から、粘着ガラステープを構成するガラス繊維の総番手は、強度が維持できる限り小さい方が好ましく、より好ましくは370tex以下とすることであり、さらに好ましくは350tex以下とすることである。また経時的な強度について注目するなら、より好ましくは20tex以上の総番手とすることであって、さらに好ましくは50tex以上の総番手とすることである。すなわち、好ましい総番手の範囲は20tex〜370tex、さらに好ましい総番手の範囲は50tex〜350texとすることである。
また本発明の粘着ガラステープは、上述に加え目間隔が10mm以下であるならば、ガラスストランドを高密度に配設するものとでき、一層高い強度を有する粘着ガラステープを容易に実現できるので好ましい。
また本発明の粘着ガラステープは、上述に加え粘着性樹脂がアクリル樹脂であるならば、安価であり、耐候性に優れ、強靱さも併せ持つ樹脂を構成成分として有するため、屋外環境などで使用される場合であっても長期的にも高い性能を維持し続けることが可能となるものである。
ここで、粘着性樹脂がアクリル樹脂であるとは、粘着力を具現する樹脂がアクリル酸または、メタクリル酸から誘導される高分子化合物であることを表している。例えばメタクリル酸メチル樹脂成分を有するもの等が好適である。
また本発明で使用する粘着性樹脂としては、アクリル樹脂以外にシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を必要に応じて採用することが可能である。さらに他の補強樹脂や繊維材を適量併用することも可能である。
また本発明の粘着ガラステープは、そのテープ幅が通常40mmから200mmのものが使用されるが、用途や施工部の状態に応じて500mm幅やさらに大きな1000mm幅、1100mm幅、1200mm幅、1500mm幅、1700mm幅、1800mm幅、2000mm幅といった寸法を適宜採用することも可能である。
さらに本発明の粘着ガラステープは、ガラス繊維によって構成された組布を所定の樹脂に含浸させて硬化させることで形成することができ、粘着ガラステープの用途に応じて片面だけでなく両面に粘着性を持たせることも可能である。
このような本発明の粘着ガラステープは種々の施工面に対して適用することができ、例えば特に発泡スチロールボードやセメントボード等に好適であり、用途としてはセメントボード等の構造材以外にも特殊機能を有する各種ボード、プレート類の施工にも適用することができる。例えば吸音板、防水パネル、断熱ボード、電磁波吸収ボード、静電気防止プレートの施工等への適用も可能である。また本発明の粘着ガラステープは曲面や屈曲面等の異形断面を有し、平面ではない被施工部に対しても用途に応じて適用することができる。
さらに本発明の建造物の施工方法は、上述の何れかの粘着ガラステープを下地材の被補強面に当接施工して補強又は補修を行うことを特徴とする。
ここで、上述の何れかの粘着ガラステープを下地材の被補強面に当接施工して補強又は補修を行うとは、上記した本発明の粘着ガラステープを下地材の被補強面上に接触させた状態とすることによって接着して施工することによって当該被補強面の補強あるいは補修を行うことを意味している。接着方法としては、単純に手作業で人力によって行うこともできるし、必要に応じて接着を効率的に行うために使用されるローラー、パテなど、適切な押圧力を印加することのできる補助工具を単独あるいは複数併用することも可能である。また接着時に接着位置を適正な位置に整えるための治具や補助装置等を使用してもよい。
また、本発明の建造物の施工方法では、必要に応じて本発明の粘着ガラステープに加えて別種の補強材を併用することによって、より高い性能を実現することも可能であり、他の補強剤の使用、他の補強工法との併用を妨げるものではない。すなわち、自動式あるいは手動式にエポキシ樹脂を注入する樹脂注入工法やU字状の溝を形成してシーリングを行うUカットシール材充填工法、パテベラなどを使用するシール工法などとの併用も可能である。また本発明の粘着ガラステープは、その厚さ寸法が薄いという性能を利用することによって、恒久的な接着を行うのではなく、複雑な建造物を構成する際の一時的な仮止め工法等として利用することも当然可能である。
本発明の粘着ガラステープをコンクリート構造物の被補強面に施工する場合には、この粘着ガラステープをシート形態で施工することもできるし、ロール状に巻き取った状態で施工面に押圧しつつ施工していくこともできる。またロール形状のものを使う場合には、ロール部を連続的に回転させつつ被施工面上にテープを連続的に接着させていくように駆動する施工装置を使用して施工を行うこともできる。ただし、施工の際には、被施工面をなるべく清浄な状態とすることが好ましく、特に接着力を弱めるような化学成分が表面に付着あるいは塗布された状態となっている場合には接着力が弱くなることを考慮する必要があり、また接着時にテープ接着面に粉塵などを巻き込まない様に注意が必要である。
この組布は巻き取った形態で供給することもできるし、またシート形状で供給することも可能である。シート形状で供給する時には、必要に応じて易離反性のフィルム、あるいは台紙に貼付した状態で供給することも可能である。
(1)以上のように本発明の粘着ガラステープは、少なくとも片面が粘着性樹脂で処理された粘着面になっているガラスストランドを用いたテープであって、ガラスストランドが交差した状態で積層された組布となっているため、粘着ガラステープの幅方向と伸長方向の引張強度を同等のものとすることができ、施工方向によって施工部位の強度差を生じさせるものではないため、施工後に施工方法などに大きく影響されず、粘着ガラステープ施工部にクラック等の欠陥が発生しにくい安定した構造物を構成することができるので好ましい。
(2)また本発明の粘着ガラステープは、組布のガラスストランドがZrO2を14質量%以上含有する耐アルカリ性ガラス繊維のストランドであり、テープの厚さが0.4mm以下、単位面積当たりの質量が200g/m2以下であるならば、施工後の被施工物の重量を重くする、あるいはテープを施工した施工個所に必要以上の荷重負担を強いることなく軽量であって、しかも高い強度を併せ持つ補強材料である。
(3)また本発明の粘着ガラステープは、上述に加え組布を形成するガラスストランドの総番手が400tex以下であるならば、各種ボードの目地部などに接着して使用しても、施工部の厚み寸法を薄い状態とできるので、他の多くの施工工法との併用が容易であって、多様な建造物への適用が可能となるものである。
(4)また本発明の粘着ガラステープは、粘着性樹脂がアクリル樹脂であるならば、ガラス繊維ばかりでなく樹脂も高い耐候性を有するので、長期に亘り初期性能から大きく逸脱しない強度性能を実現することができる。
(5)本発明の建造物の施工方法は、上述の何れかの粘着ガラステープを下地材の被補強面に当接施工して補強又は補修を行うものであるため、迅速かつ効率的な施工が行え、しかも施工後に目地などの耐クラック性が高いものとすることができ、長期間安定した施工物を得ることが可能となるため、高い信頼性を有する建造物とすることが可能となるものである。
以下に本発明の粘着ガラステープと、粘着ガラステープを用いた建造物の施工方法に関して、その具体的な実施の態様について詳細に説明する。
図1に本発明の粘着ガラステープの態様について、写真で実物を例示する。この写真は、粘着ガラステープの一部を部分的に切り出してきたものである。本発明の粘着ガラステープは、この写真からも判るように、たて糸とよこ糸とが互いに交差する構成となっており、交差部を接着剤で接着し、このテープの片面のみに粘着性樹脂が施されているものである。たて糸の番手とよこ糸の番手は、いずれも155texでありガラスストランドの目間隔は5mmである。
そしてこの組布を構成するガラス繊維の材質は、ARガラスであって、ガラス熔融炉によって熔融しブッシングを使用して紡糸し、得られたガラスストランドを組布としたものであり、粘着ガラステープの厚み寸法は0.26mmである。
次いで、本発明の粘着ガラステープについて、その施工後の性能の評価を行うために実施した施工試験などの結果を以下に示す。
表1には、本発明の粘着ガラステープについての実施例として、試料No.1から試料No.3についての粘着ガラステープの性能と評価結果である。
実施例2の粘着ガラステープは以下のような手順で作製した。
まず、所望のARガラスの構成となるように調合した複数の無機原料からなる原料バッチを1500℃以上の高温加熱が可能なガラス熔融炉中に投入し、均質化処理を施した後に白金製ブッシング装置を使用して紡糸し、所望のフィラメント経を有するガラス繊維を得る。ここで得られたガラス繊維は、ARガラスとしての組成を有するものであって、酸化物換算の質量百分率表示でSiO2 61.0%、ZrO2 19.5%、Li2O 1.5%、Na2O 12.3%、K2O 2.6%、CaO 0.5%、TiO2 2.6%の組成を有するものである。
次いで、このガラス繊維について、たて糸とよこ糸としてガラス繊維表面に澱粉、潤滑剤、柔軟剤を適量含有する集束剤を1質量%の付着率となるように調整した条件によって塗布することによって集束剤の塗布されたガラス繊維を得た。
そして、たて糸とよこ糸とをそれぞれ表1に示したような目間隔、すなわち3mmから5mmまでの目間隔となるように、成形条件を整えて組布を形成した。その後、これらの組布に浸漬法によってアクリル樹脂を塗布し、乾燥固化することによってネットを形成した。さらにこのネットの片面について、アクリル系の粘着性樹脂で処理することによって均等にアクリル系粘着性樹脂を塗布し、粘着ガラステープとした。図1の実施例1として示したものと同じ性能を有するものを、試料No.2の組布として実施例2の試験にも使用した。すなわち上述したように試料No.2については、たて糸番手、よこ糸番手をともに155texとしたものであり、目間隔は5mmとなっている。
得られた粘着ガラステープの厚み寸法及び引張強度は、JIS L1096(一般織物試験方法)に従い計測した。また粘着ガラステープの施工試験については、以下の手順で行った。
先ず、縦寸法500mm、横寸法500mm、厚さ寸法20mmのケイカル板を2枚準備し、その継目部分をV字状に加工した後、上記の各試料を幅寸法50mm、長さ寸法500mmの寸法にした粘着ガラステープ1枚を手作業で張り付け、その張り付けた表面上の継目部分に幅寸法175mm、厚さ寸法2mmとなるようにセメントモルタルを塗り、仕上がり表面を目視観察して、セメント表面にテープの網目(ネット)模様が浮き出ていないか評価した。目視観察の結果、表面に網目模様が浮き出ているものを「×」と判定し、浮き出ていないものを「○」、非常に良好なものを「◎」と判定した。その後48時間戸外で静置したものと、長期的な試験として3ヶ月経過後のものとについて、継目部分に微細なクラックが発生していないか、目視観察で評価した。そしてその結果、継目部分にクラックの認められたものを「有」、認められないものを「無」と判定した。
以上の一連の評価によって、実施例2の試料No.1から試料No.3の各試料は、表面にまったく網目模様も浮き出ることがなく、良好な外観品位であって、3ヶ月経過後であっても継目部分にクラックがまったく認められないものであった。また、この実施例の試料No.1から試料No.3の粘着ガラステープは、その引張強度のたて方向とよこ方向の値に大きな違いがなく、粘着ガラステープの施工方向によって引張強度の異なることのない安定した強度特性を有するものであることが判明した。例えば、試料No.2は、たて方向の引張強度が412N/25mmで、よこ方向の引張強度が417N/25mmであって、たて方向の強度とよこ方向の強度とが、ほぼ同等の測定値となった。
表2には、本発明の他の実施例として試料No.4から試料No.6までの評価結果を示す。
表2には、本発明の他の実施例として、実施例3に相当するものであって、いずれも組布を採用したものを例示する。実施例3の試料No.4から試料No.6は、先の実施例2と同様の手順で試料を作製した。ただ、実施例3の試料No.6については、ARガラスに代わり、ガラス組成として酸化物換算の質量百分率表示でSiO2 55.0%、CaO 21.5%、Al23 14.0%、B23 7.5%、Na2O 0.3%、K2O 0.2%、MgO 1.0%、TiO2 0.5%の組成を有するEガラスを使用した。また集束剤については試料No.4、そして試料No.6は、前述同様の手順で塗布し、試料No.5はポリエステル樹脂を含む集束剤を塗布した。
また、実施例3の試料No.4、試料No.5そして試料No.6については、実施例2と同様の手順で表2に示したような目間隔で組布を形成した。さらに組布の形成手順も上述同様である。こうして、先と同様の粘着ガラステープを得、先と同様に一連の評価を実施した。
試料No.4については、目間隔が15mmと大きく、実施例2の各試料よりも引張強度が小さいため、経時的なクラックと考えられるものが3ヶ月の時点でわずかに認められた。しかし、施工試験での外観品位が非常に良好であるため、使用環境等を考慮すれば採用できる品位のものであった。また試料No.5については、400texよりも大きい620texの番手のガラス繊維を使用しているため、粘着ガラステープの厚みが0.5mmと厚くなり、その結果施工試験でセメント表面状態は、試料No.4程良好なものではないが、使用場所さえ選択すれば使用に耐えない程ではなかった。また、試料No.6については、ARガラス繊維の代わりにEガラス繊維を使用したものであるため、経時的なクラックと考えられるものが3ヶ月の時点でわずかに認められるものの、使用環境等を考慮して使用する場合には、採用の余地があった。
以上のように、実施例3である試料No4から実施例3である試料No.6については、最良の選択ではないものの、使用場所や使用条件を吟味すれば採用できる品位のものであることが判明した。
(比較例1)
そして、比較例1についても実施例2、3と同様の手順で試料No.7と試料No.8とを作製した。ただし、ここではガラス繊維の構成は、組布ではなく、織布として絡み織りによるものを採用したものである。そして評価についても実施例と同様の条件で同じ評価を実施した。そして施工評価などの一連の評価を行い、結果を表3にまとめた。
比較例である試料No.7については、ARガラス繊維を使用した絡み織り布による粘着ガラステープであるが、たて方向の引張強度が375N/25mmであるのに対し、よこ方向の引張強度が427N/25mmとなり、粘着ガラステープの施工方法によって引張強度が異なるため、今回の試験期間内ではクラックの発生が認められなかったもののさらに長期的な使用には注意を要することが判明した。また比較例である試料No.8についてはEガラス繊維を使用した絡み織り布による粘着ガラステープであるが、施工試験で48時間では問題が認められなかったものの、長期的な評価として実施した3ヶ月後には、継目部分に明瞭な細かいクラックが多数発生していることが判明した。
さらに比較例である試料No.7と試料No.8については、織り工程を要する織布であるため、製造費用が嵩むと同時に生産効率が低く、同サイズの組布を得るよりも高価なものとなるということも判明した。
以上のように、一連の実施例1〜3と比較例1とを比較することによって、本発明の粘着ガラステープは、安価でしかも高い耐久性を有し、施工後も長期間に亘って安定した強度性能を維持するものであることが明瞭となった。
上記本発明の粘着ガラステープに関する技術は、ガラス繊維以外の炭素繊維等の組布を使用することによっても高い性能を実現することができるものである。
本発明の粘着ガラステープの写真。

Claims (5)

  1. 少なくとも片面が粘着性樹脂で処理された粘着面になっているガラスストランドを用いたテープであって、
    ガラスストランドが交差した状態で積層された組布となっていることを特徴とする粘着ガラステープ。
  2. 組布のガラスストランドがZrO2を14質量%以上含有する耐アルカリ性ガラス繊維のストランドであり、テープの厚さが0.4mm以下、単位面積当たりの質量が200g/m2以下であることを特徴とする請求項1に記載の粘着ガラステープ。
  3. 組布を形成するガラスストランドの総番手が400tex以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粘着ガラステープ。
  4. 粘着性樹脂がアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の粘着ガラステープ。
  5. 請求項1から請求項4の何れかの粘着ガラステープを下地材の被補強面に当接施工して補強又は補修を行うことを特徴とする建造物の施工方法。
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