JP2006328290A - 粒状重合体の製造方法、イオン交換樹脂の製造方法、及び合成吸着剤の製造方法、並びにアニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、及び合成吸着剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 シード重合法によらず重合を行なうとともに、重合反応の少なくとも一部を100℃以上の温度で行なう。
【選択図】 なし
Description
本発明の球状重合体の製造方法は、粒状の重合体をシード重合法によらず製造する方法であって、重合反応の少なくとも一部を100℃以上の温度で行なうものである。
本発明において製造対象となる重合体の種類は特に制限されないが、後述のイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)の基体や合成吸着剤に用いる観点からは、通常は架橋共重合体である。なお、架橋共重合体の主な形態としてはゲル型と多孔性が挙げられるが、本発明はその何れにも適用可能である。
「シード重合法(シード・フィード(種−供給)法)」とは、予め分散重合法により作製した小粒子径(1μm〜数百μm程度)の大きさの揃ったシード粒子を用い、このシード粒子に動的膨潤法により多量のモノマーを含浸させて大モノマー膨潤粒子とし、これを重合することによって、より大きな粒子径の重合体粒子を製造する手法である。その詳細は、例えば米国特許第4564644号明細書、特開昭61−16902号公報、特表平10−508061号公報等の文献に記載されている。
本発明では、重合反応の少なくとも一部を、通常100℃以上の高温で行なうことを特徴としている。本発明では以下、この100℃以上で行なわれる重合反応を、適宜「高温重合反応」と呼ぶものとする。
高温重合反応は通常100℃以上の温度で行なえばよいが、上述の低重合体成分や遊離重合体成分を確実にガラス転移状態とする観点から、中でも110℃以上、更には115℃以上、特に120℃以上の温度で行なうことが好ましい。具体例を挙げると、ポリスチレンのガラス転移点は、架橋度5%では105℃程度、架橋度10%では108℃程度であるからである。但し、あまりに温度が高過ぎると、重合溶液の温度を上昇させるのに時間を要したり、重合開始剤の選択の幅が小さくなったり、製造設備が高価になったり、重合温度の上昇以上に低溶出の効果が現れなかったり、生成した重合体が変性し、又は分解されるおそれがあるので、温度の上限は通常160℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
従来のように100℃以下の比較的低温で重合反応を行なう場合には、反応器内の上部に原料モノマー(例えばスチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸メチル等)が凝縮するが、凝縮した原料モノマーが重合するまでには至らない。しかしながら、上述の様に100℃以上の高温重合反応を採用した場合には、反応器内の上部鏡面部に原料モノマーのポップコーン状の重合物が生成する。重合環境により大きく異なるが、反応器内の上部の温度は、設定された重合温度に対し10℃〜25℃低い程度であり、スチレン等の重合が進行するには充分高い温度である。
上述の(i)〜(iii)等の付着防止対策により、反応器上部(例えば重合缶内部の鏡面部分)における原料モノマーの付着量は、原料モノマーの使用量に対して1000ppm以下に抑制することができる。
原料としては、重合可能な反応基(例えば、エチレン性不飽和結合等)を有するモノマー化合物(以下適宜「原料モノマー」という。)が用いられる。
原料モノマーの種類は特に制限されないが、例えば以下のものが挙げられる。
スチレン;o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン等のアルキルスチレン;p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン;p−フェニルスチレン等のアリールスチレン;p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等のハロゲノスチレン;クロロメチルスチレン、クロロブチルスチレン、ブロモブチルスチレン等のハロゲノアルキルスチレンなど。
ジビニルベンゼン(中でもm−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン)、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ビスビニルビフェニル、ビスビニルフェニルスルホン、ビスビニルフェニルエタン、ビスビニルフェニルブタン等のスチレン誘導体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等のアクリル系誘導体など。
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等。
メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル等。
アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸フェニル等。
ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン等。
N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等。
ビニルナフタリン類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、アクリルアミド等。
本発明では、後述のイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)の基体や合成吸着剤等の用途に好適な架橋共重合体を製造する観点から、原料モノマーの一部として、重合可能な反応基(例えば、エチレン性不飽和結合等)を2つ以上有する化合物(以下適宜「架橋性モノマー」という。)を用いることが好ましい。
重合反応には通常、重合開始剤を用いる。
具体的な重合開始剤の種類として、例えば以下のものが挙げられる。
高温用重合開始剤としては、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ヘキシルパーベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルクミルパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラーメンタンハイドロパーオキサイドが挙げられる。
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等。
重合反応には、必要に応じて溶媒を用いても良い。溶媒を使用する場合、原料となる各モノマーを溶解させるものであれば、その溶媒の種類は特に制限されないが、通常は各種の有機溶媒が使用される。溶媒の使用量は、全原料モノマーに対する比率として、通常0重量%以上、200重量%以下の範囲である。
反応系には、必要に応じてその他の成分を加えても良い。その他の成分の例としては、多孔化に有効な沈澱剤である線状ポリマー等の高分子化合物が挙げられる。
重合反応の方法は特に限定されるものではなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合等、公知の種々の方法を何れか単独で、或いは二種以上を組み合わせて採用することができる。これらは目的とする重合体の種類や用途に応じて、適宜選択すればよい。
本発明では、重合反応系内の酸素量を、全原料モノマーに対する比率として、通常5ppm以下、中でも3ppm以下、更には1ppm以下と、できるだけ少なくすることが好ましい。なお、米国特許第4192921号明細書、特開昭53−124184号公報等において、酸素ガスを含む窒素を流通させながら重合する方法も提案されている。しかしながら、重合反応(特にラジカル重合反応)において、反応系内に酸素が存在すると、末端ラジカルは酸素と共重合しやすいため、原料モノマーの重合反応に酸素が取り込まれ、過酸化物結合を含むポリマーが生成する。この結果、樹脂の製造工程や洗浄工程の際、あるいは樹脂の使用中に、この過酸化物結合が化学的及び熱的に開裂して、オリゴマーの発生及び溶出を引き起こしたり、この過酸化物結合が分解されてホルムアルデヒドやベンズアルデヒド等の分解物を生じ、その溶出を引き起こしたりする原因ともなる。従って、こうしたオリゴマーや分解物の溶出を抑制するためにも、重合反応系内の酸素量を極めて低く抑え、その状態を維持することは重要である。
上述の様に、重合反応の少なくとも一部は100℃以上の高温で行なう必要があるが、この高温重合反応をより低い温度での重合反応と組み合わせ、複数段に分けて実施しても良い。
カチオン交換樹脂の溶出性を改善する方法として、公知の技術が知られている。しかしながら、処理方法が煩雑であったり、過剰に添加しているため、カチオン交換樹脂が高価になるという課題があった。発明者らは、上述の課題を解決する方法として、原料モノマーに抗酸化性モノマーを混合して共重合を行なうことにより、カチオン交換樹脂からの不純物の溶出が抑制できることを見いだした。
上記の抗酸化モノマー以外に、重合工程の終了後、得られた重合体に抗酸化処理を施してもよい。抗酸化処理を行なってから次工程に供することで、簡単に抗酸化機能が発現され、樹脂からの溶出を低減することが可能となる。
反応終了後、生成した重合体を反応液から分離し、通常は精製を行なう。精製の手法は特に制限されないが、例としては溶媒分画、カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。
本発明の製造方法により得られる重合体の収率は、使用する原料モノマーや重合開始剤の種類、重合条件、多孔化剤の使用割合等によって異なり、特に制限されるものではないが、全原料モノマーに対する重量比で、通常99.0重量%以上、好ましくは99.5重量%以上である。
本発明のイオン交換樹脂は、上述の方法により得られた本発明の重合体に、イオン交換性の官能基(これを適宜「イオン交換基」という。)を導入することにより製造される。
本発明のイオン交換樹脂の基体としては、上述した本発明の重合体を使用する。その種類は特に制限されないが、通常は架橋共重合体が用いられる。
導入するイオン交換基の種類は、目的とするイオン交換樹脂の種類に応じて、適宜選択すれば良い。
基体(本発明の重合体)に対するイオン交換基の導入は、公知の方法に従って行なうことができる。導入対象となる基体(本発明の重合体)や導入するイオン交換基の種類に応じて、適切な方法を選択して実施すれば良い。
本発明のイオン交換樹脂は、使用時における溶出物の発生が少ない。これは、初期溶出試験における溶出液の全有機炭素(total organic carbon:以下適宜「TOC」という。)の値(これを適宜「初期TOC値」という。)を測定することにより評価することができる。初期TOC値の測定は、以下に規定する手法による。
以上説明したように、本発明のイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)は、上述の初期TOC値及び酸化TOC値に明らかなように、溶出物の発生が極めて少ない。よって、製造時や使用前における洗浄の手間を省くことができ、コストの低減や工程の効率化が図られるとともに、イオン交換の対象となる液の着色・毒性・脱塩阻害・臭気等を生じることなく、長期間安定して使用・保存することができる。従って、イオン交換樹脂が必要とされる各種の分野において、好適に使用することができる。
本発明の合成吸着剤は、上述の方法により本発明の重合体を製造する際に、その重合条件を調整することにより、適切な多孔構造を有する多孔性の重合体とすることにより、製造される。
本発明の合成吸着剤としては、上述した本発明の重合体を使用する。その種類としては、架橋共重合体が用いられる。
本発明の合成吸着剤は、使用時における溶出物の発生が少ない。これは、上述の初期TOC値を測定することにより評価することができる。合成吸着剤の初期TOCの算出は、以下の手法により行なう。
以上説明したように、本発明の合成吸着剤は、上述の初期TOC値に明らかなように、溶出物の発生が極めて少ない。よって、製造時や使用前における洗浄の手間を省くことができ、コストの低減や工程の効率化が図られるとともに、吸着の対象となる液の着色・毒性・脱塩阻害・臭気等を生じることなく、長期間安定して使用・保存することができる。従って、吸着が必要とされる各種の分野において、好適に使用することができる。
後に説明する各実施例及び各比較例のアニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂及び合成吸着剤(これらを総称して以下適宜「サンプル」という。)の分析は、以下の手順で行なった。
上述の[II.イオン交換樹脂]の欄に記載の方法により、測定対象となるサンプルの初期TOC値(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂及び合成吸着剤)及び酸化TOC値(カチオン交換樹脂)を測定した。
上述の初期TOC値及び酸化TOC値の測定に用いた各上澄み液について、以下の手法によりホルムアルデヒドの濃度を測定した。これらを各々「初期HCHO濃度」及び「酸化時HCHO濃度」という。
重合反応時に、ラマン分光法によって、反応溶液の1633cm-1(炭素−炭素間二重結合(C=C)由来)のピーク強度A1と1003cm-1(炭素−炭素間単結合(C−C)由来)のピーク強度A2を測定し、これらの強度比(A1/A2)を求め、重合反応の進行度の指標とした。ラマン分光法による測定には、FT−Raman(Perkin Elmer製System2000)を使用した。
測定対象となるサンプルをメスシリンダーで10ml測り取り、布又はビニールスポンジに包み、経口15cmの遠心分離機によって3000rpmで10分間、遠心分離を行ない、付着水分を除いた。その後、素早く秤量ビンに移して密閉し、得られた含水サンプルの重量を測定した。
重量の測定後、50℃、8時間、高温乾燥機中で乾燥した後、デシケーター中で30分間放冷し、得られた乾燥サンプルの重量を測定した。
カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂の交換容量は、以下の手順で測定した。
[実施例・比較例群III:合成吸着剤]における樹脂のトルエン膨潤度(これを適宜「TL膨潤度」という。)は、以下の手順で測定した。
樹脂を50℃で8時間真空乾燥した後、得られた乾燥樹脂5.0gを秤量し、トルエンに浸漬させてスラリー化した。得られたスラリーを40℃に加温して1時間保持した後、メスシリンダーに移し、更に40℃に加温した状態で静置した。5時間後、メスシリンダー中で沈降した樹脂の体積を測定した(これを以下「TL中体積」という。)。
一方、トルエンの代わりに水を用い、上記と同様の手順で、水中での樹脂の体積を測定した(これを以下「水中体積」という。)。
得られた樹脂のTL中体積と水中体積との比率{(TL中体積)/(水中体積)}を求め、これをTL膨潤度とした。
〔実施例I−1〕
・反応器:
重合反応用の反応器として、攪拌翼、圧力計、窒素管、温度計を取り付けたステンレス(以下適宜「SUS」と略する。)製の耐圧性の反応器を使用した。
水相として、2重量%ポリビニルアルコール(poly(vinyl alcohol):以下適宜「PVA」と略す。)水溶液30ml及び0.1重量%メチレンブルー水溶液10mlを含む水溶液2150mlを調製した。得られた水相を攪拌しながら、10μmのSUS製焼結フィルターを通じて窒素ガスを1時間バブリングした。溶存酸素濃度は0.1ppm以下であった。
原料モノマーとして、スチレン(St)497gと、DVB(ダウ・ケミカル社製、純度63%)53gを用いるとともに、重合開始剤として、含水BPO(BPO濃度75重量%)0.75gと、PBZ(t-butyl perbenzoate)0.55g(全モノマー量に対してBPO、PBZともに0.1重量%)を用い、これらを混合して油相(モノマー相)を調製した。得られた油相を攪拌しながら、10μmのSUS製焼結フィルターを通じて窒素ガスを1時間バブリングし、溶存酸素をほぼ完全に除去した。
上述の水相と油相を上述の反応器に入れ、室温で、1kPaで減圧した後、窒素ガスで置換するという脱気操作を3回繰り返すことにより、反応器中の気相を窒素置換し、気相中の酸素をほぼ完全に除去した上で、反応器を密閉した。30℃で30分間、110rpmで攪拌し、懸濁液とした。2時間かけて80℃まで昇温し、80℃で4時間保持した(前段重合)後、2時間かけて120℃まで昇温し、120℃で更に4時間保持する(後段重合)ことにより、二段階に分けて重合反応を行なった。反応の終了後、反応器を50℃以下に冷却し、得られた重合体を反応器から取り出して脱塩水で洗浄し、真空乾燥器で50℃で8時間乾燥した。得られた重合体の収率は99.5%であった。
乾燥後の重合体200gを2Lの3つ口フラスコに入れ、クロロメチルメチルエーテル700gを加え、室温で1時間攪拌した後、無水塩化亜鉛75gを3回に分けて加えた。30分間攪拌した後、40℃まで昇温し、攪拌しながら40℃で8時間保持して反応させた。その後、室温まで冷却し、メタノール300gを室温で4時間かけて滴下した。引き続き脱塩水300gを1時間かけて滴下し、加水分解反応を行なった。反応後、重合体を取り出し、純水で洗浄した。
・重合体の製造:
実施例I−1において、重合開始剤PBZの使用量を0.10重量%から0.20重量%に変更した他は、実施例I−1と同様の手順により、重合体を製造した。得られた重合体の収率は99.5%であった。
得られた重合体に対して、実施例I−1と同様の手順によりトリメチルアミノメチル基(アニオン交換基)を導入することにより、アニオン交換樹脂を有するアニオン交換樹脂(以下適宜「実施例I−2のアニオン交換樹脂」という。)を製造した。
・重合体の製造:
実施例I−1の重合反応の手順において、SUS製の耐圧性の反応器の代わりにガラス製の反応器を使用し、油相(モノマー相)に重合開始剤として75%BPO1.5gを使用し、PBZは使用しないとともに、反応液(水相及び油相の懸濁液)を室温から2時間かけて80℃まで昇温し、80℃で8時間保持することにより、一段で重合反応を行なった他は、実施例I−1と同様の手順により、重合体を製造した。得られた重合体の収率は96%であった。
得られた重合体に対して、実施例I−1と同様の手順によりトリメチルアミノメチル基(アニオン交換基)を導入することにより、アニオン交換樹脂(以下適宜「比較例I−1のアニオン交換樹脂」という。)を製造した。
上記手順により得られた各実施例及び比較例のアニオン交換樹脂について、上述の手法により初期TOC値、交換容量、含水率、初期HCHO値を測定した。結果を下記表1に示す。表1から明らかなように、実施例I−1,I−2のアニオン交換樹脂は、比較例I−1のアニオン交換樹脂と比べて、初期TOC値が低く、溶出物の発生が抑えられていることが分かる。
〔実施例II−1〕
・重合体の製造:
実施例I−1と同様の手順により重合体を製造した。得られた重合体の収率は99.5%であった。
得られた重合体200gを2Lの3つ口フラスコに入れ、ニトロベンゼン400gを加え、室温で0.5時間攪拌した後、80℃まで昇温して更に3時間攪拌し、重合体を膨潤した。一度室温まで冷却した後、98%硫酸1400gを加え、攪拌した。4時間かけて100℃まで昇温し、更に100℃で4時間保持して反応させた。その後、反応液を冷却し、内温が50℃を越えないようにしながら、脱塩水を15時間かけて滴下した。この間、途中3回反応液を抜き出し、硫酸を除去した。その後、ニトロベンゼンと水相を除去し、更に脱塩水を加えて加熱することにより、残留するニトロベンゼンを留去した。得られた樹脂を10BVの脱塩水で洗浄することにより、スルホン酸基を有するカチオン交換樹脂(以下適宜「実施例II−1のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
実施例II−1において、ニトロベンゼンの代わりに1,2−ジクロロエタン(EDC)を用い、反応時間を80℃で4時間とした他は、実施例II−1と同様の手順により、スルホン酸基を有するカチオン交換樹脂(以下適宜「実施例II−2のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
実施例II−1において、以下の抗酸化性モノマーを用いて共重合を行なった他は、実施例II−1と同様の手順により、スルホン酸基を有するカチオン交換樹脂(以下適宜「実施例II−4のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
スチレン、ジビニルベンゼンにt−ブトキシスチレン(東京化成製)を400ppmとなるようにモノマー相を調製した。その後は、実施例II−1と同様に処理を操作を行ない、カチオン交換樹脂を得た。
実施例II−1において、以下のTBC処理を行なった他は、実施例II−2と同様の手順により、スルホン酸基を有するカチオン交換樹脂(以下適宜「実施例II−3のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
重合反応で得られた重合体を水洗後取り出した。重合体200gに対し、0.2gのTBC(t−ブチルカテコール)を含むEDC溶液800mlを加え、室温で1時間攪拌した後、70℃に溶液を加熱し、2時間保持した。重合体のスラリー溶液を室温まで冷却した後、実施例II−2で示されるように、スルホン化反応を行なった。
実施例II−1において、モノマー相にt−ブトキシスチレン(東京化成品)を400ppm加えて重合を行なった他は、実施例II−1と同様の手順により、スルホン酸基を有するカチオン交換樹脂(以下適宜「実施例II−5のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
・重合体の製造:
実施例II−1の重合反応の手順において、SUS製の耐圧性の反応器の代わりにガラス製の反応器を使用し、油相(モノマー相)に重合開始剤として加える75%BPOの量を1.5gにするとともに、反応液(水相及び油相の懸濁液)を室温から2時間かけて80℃まで昇温し、80℃で8時間保持することにより、一段で重合反応を行なった他は、実施例II−1と同様の手順により、重合体を製造した。得られた重合体の収率は95.2%であった。
得られた重合体に対して、実施例II−1と同様の手順によりスルホン酸基(カチオン交換基)を導入することにより、カチオン交換樹脂(以下適宜「比較例II−1のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
実施例II−1の重合反応の手順において、重合開始剤の使用量を、モノマーに対してBPO、PBZともに0.5重量%とした他は、実施例II−1と同様の手順により、重合体を製造した。得られた重合体の収率は95.7%であった。
得られた重合体に対して、実施例II−1と同様の手順によりスルホン酸基(カチオン交換基)を導入することにより、カチオン交換樹脂(以下適宜「比較例II−2のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
比較例II−1の重合反応の手順において、窒素ガスの代わりに計装用空気を40ml/分で重合反応液の上面に通気させるとともに、原料モノマー成分が失われないよう、冷却管に5℃の冷媒を流通させながら重合反応を行なった他は、比較例II−1と同様の手順により重合体を製造した。得られた重合体の収率は92.5%であった。
得られた重合体に対して、実施例II−1と同様の手順によりスルホン酸基(カチオン交換基)を導入することにより、カチオン交換樹脂(以下適宜「比較例II−3のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
比較例II−3の重合反応の手順において、計装用空気を40ml/分で重合反応液中にバブリングした他は、比較例II−3と同様の手順により重合体を製造した。得られた重合体の収率は88.3%であった。
得られた重合体に対して、実施例II−1と同様の手順によりスルホン酸基(カチオン交換基)を導入することにより、カチオン交換樹脂(以下適宜「比較例II−4のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
上記手順により得られた各実施例及び比較例のカチオン交換樹脂について、上述の手法により初期TOC値、酸化TOC値、初期HCOH値、酸化時HCOH値、交換容量、含水率を測定した。結果を下記の表2−1及び表2−2に示す。表2−1及び表2−2から明らかなように、実施例II−1〜II−5のカチオン交換樹脂は、比較例II−1〜II−4のカチオン交換樹脂と比べて、初期TOC値が低い。また、酸化TOC値と初期TOC値との差{(酸化TOC値)−(初期TOC値)}も、実施例II−1〜II−5のカチオン交換樹脂の方が、比較例II−1〜II−4のカチオン交換樹脂に比べて値が低い。更に、初期HCOH値、酸化時HCOH値についても、実施例II−1〜II−5のカチオン交換樹脂の方が比較例II−1〜II−4のカチオン交換樹脂よりも低い。これらの結果から、実施例II−1〜II−5のカチオン交換樹脂の方が比較例II−1〜II−4のカチオン交換樹脂よりも溶出物の発生が抑えられていることが分かる。
〔実施例III−1〕
・反応器:
重合反応用の反応器として、攪拌翼、圧力計、窒素管、温度計を取り付けたSUS製の耐圧性の反応器を使用した。
水相として、0.2重量%のPVA及び5重量ppmのNaNO2(亜硝酸ナトリウム)を含む水溶液1800mlを調製した。得られた水相に対して窒素ガスをバブリングし、溶存酸素をその濃度がほぼ0ppmになるまで除去した。
原料モノマーとして、ポリスチレン(45Kd)32gと、DVB(ダウ・ケミカル社製、純度55%)360gを用いるとともに、重合開始剤として、含水BPO(BPO濃度75%)1.2gと、PHD(di-t-hexylperoxide)0.9gを用い、更に有機溶媒としてトルエン450gを用い、これらを混合して油相(モノマー相)を調製した。得られた油相に窒素ガスを1時間バブリングし、溶存酸素をほぼ完全に除去した。
上述の水相と油相を上述の反応器に入れて攪拌しながら、反応器内を10kPaまで脱気減圧した後、窒素ガスを入れて大気圧まで戻した。この操作を3回繰り返し、反応器内の溶存酸素を徹底的に除去した。30℃で30分間、150rpmで攪拌し、懸濁液とした。2時間かけて80℃まで昇温し、80℃で4時間保持した(前段重合)後、2時間かけて140℃まで昇温し、140℃で更に4時間保持する(後段重合)ことにより、二段に分けて重合反応を行なった。反応器内の圧力は0.55MPaであった。反応終了後、反応器を50℃以下まで冷却し、得られた重合体を反応器から取り出して脱塩水で5回洗浄し、更に1Lのトルエンを加え、室温で2時間攪拌した。この操作を3回繰り返した後、真空乾燥器で50℃で8時間乾燥することにより、重合体(以下適宜「実施例III−1の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は99.5%、ラマン分光分析によるピーク強度比A1/A2は0.32であった。
実施例III−1において、油相(モノマー相)の調製時に75%BPOを使用しないとともに、重合時に反応懸濁液を30℃から140℃まで4時間かけて昇温し、140℃で8時間保持することにより、1段で重合反応を行なった他は、実施例III−1と同様の手順により重合体(以下適宜「実施例III−2の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は100.2%、ラマン分光分析によるピーク強度比A1/A2は0.43であった。
実施例III−1において、重合開始剤としてPHD(di-t-hexylperoxide)の代わりにPBZ(t-butyl perbenzoate)0.9gを用いるとともに、後段重合時に、反応懸濁液を80℃から120℃まで2時間かけて昇温し、120℃で4時間保持することにより、後段重合反応を行なった(後段重合反応時の反応器内の圧力は0.35MPa)他は、実施例III−1と同様の手順により重合体(以下適宜「実施例III−3の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は99.1%、ラマン分光分析によるピーク強度比A1/A2は0.48であった。
実施例III−1において、油相(モノマー相)の調製時に、原料モノマーとしてポリスチレン(45Kd)32gを使用せず、ダウケミカル社製DVB(純度81%)250gを使用すると共に、重合開始剤としてBPOを使用せず、PBDの使用量を0.6gとし、また、重合時に反応懸濁液を30℃から120℃まで4時間かけて昇温し、120℃で8時間保持することにより、1段で重合反応を行なった他は、実施例III−1と同様の手順により重合体(以下適宜「実施例III−4の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は99.2%であった。
実施例III−4において、重合開始剤としてPBDの代わりにPBZ0.9gを使用した他は、実施例III−4と同様の手順により重合体(以下適宜「実施例III−5の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は101.2%であった。
実施例III−1において、油相(モノマー相)の調製時に、75%BPOの使用量を6.0gとし、PBDを使用しないともに、重合時に、反応懸濁液を30℃から80℃まで2時間かけて昇温し、80℃で8時間保持することにより、1段で重合反応を行なった他は、実施例III−1と同様の手順により重合体(以下適宜「実施例III−5の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は94.8%、ラマン分光分析によるピーク強度比A1/A2は0.65であった。
比較例III−1において、ダウ・ケミカル社製DVBの代わりに、新日鐵化学製DVB(純度55%)を用いた他は、比較例III−1と同様の手順により重合体(以下適宜「比較例III−2の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は90.1%、ラマン分光分析によるピーク強度比A1/A2は0.41であった。
上記手順により得られた各実施例及び比較例の合成吸着剤について、上述の手法により初期TOC値、酸化TOC値、初期HCOH値、酸化時HCOH値、含水率、TL膨潤度を測定した。結果を下記の表3−1及び表3−2に示す。表3−1及び表3−2から明らかなように、実施例III−1〜III−4の合成吸着剤は、比較例III−1,III−2の合成吸着剤と比べて、初期TOC値が低い。また、酸化TOC値と初期TOC値との差{(酸化TOC値)−(初期TOC値)}も、実施例III−1〜III−4の合成吸着剤の方が比較例III−1,III−2の合成吸着剤に比べて値が低い。更に、初期HCOH値、酸化時HCOH値についても、実施例III−1〜III−5の合成吸着剤の方が比較例III−1,III−2の合成吸着剤よりも低い。これらの結果から、実施例III−1〜III−4の合成吸着剤は、比較例III−1,III−2の合成吸着剤に比べて、溶出物の発生が抑えられていることが分かる。
Claims (8)
- 粒状の重合体をシード重合法によらず製造する方法であって、
重合反応の少なくとも一部を100℃以上の温度で行なう工程を有する
ことを特徴とする、粒状重合体の製造方法。 - 重合反応系内の酸素量が、モノマーに対する比率の値で5ppm以下である
ことを特徴とする、請求項1記載の粒状重合体の製造方法。 - 請求項1又は請求項2に記載の粒状重合体の製造方法により得られた粒状重合体にイオン交換基を導入する
ことを特徴とする、イオン交換樹脂の製造方法。 - 請求項1又は請求項2に記載の粒状重合体の製造方法により多孔質の粒状重合体からなる合成吸着剤を得る
ことを特徴とする、合成吸着剤の製造方法。 - 水切り状態のアニオン交換樹脂20mlに超純水を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪後、採取した上澄み液について測定される初期全有機炭素値が10ppm以下である
ことを特徴とする、アニオン交換樹脂。 - 水切り状態のカチオン交換樹脂20mlに超純水を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪した後の上澄み液について測定される初期全有機炭素値が25ppm以下である
ことを特徴とする、カチオン交換樹脂。 - 水切り状態のカチオン交換樹脂20mlに0.10%過酸化水素水溶液を加えて全体積を40mlとし、40℃で20時間振盪した後の上澄み液について測定される酸化時全有機炭素値と、水切り状態のカチオン交換樹脂20mlに超純水を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪した後の上澄み液について測定される初期全有機炭素値との差{(酸化時全有機炭素値)−(初期全有機炭素値)}が40ppm以下である
ことを特徴とする、カチオン交換樹脂。 - 水切り状態の合成吸着剤20mlに超純水を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪した後の上澄み液について測定される初期全有機炭素値が0.5ppm以下である
ことを特徴とする、合成吸着剤。
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