JP2006328290A - 粒状重合体の製造方法、イオン交換樹脂の製造方法、及び合成吸着剤の製造方法、並びにアニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、及び合成吸着剤 - Google Patents

粒状重合体の製造方法、イオン交換樹脂の製造方法、及び合成吸着剤の製造方法、並びにアニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、及び合成吸着剤 Download PDF

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Abstract

【課題】 イオン交換樹脂や合成吸着剤に用いる粒状重合体を製造する方法であって、不純物の残存や分解物の発生を抑制する。
【解決手段】 シード重合法によらず重合を行なうとともに、重合反応の少なくとも一部を100℃以上の温度で行なう。
【選択図】 なし

Description

本発明は、イオン交換樹脂や合成吸着剤等に用いられる粒状重合体の製造方法と、それを利用したイオン交換樹脂及び合成吸着剤の製造方法、並びにアニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂及び合成吸着剤に関する。
従来、架橋共重合体を基体としたイオン交換樹脂や、多孔質の架橋共重合体からなる合成吸着剤は、その使用時に有機物等の溶出が発生するという課題があった。こうした樹脂からの溶出物は、分離や精製の対象となる被処理液の着色・毒性化、樹脂の表面の汚染による脱塩阻害・臭気発生・処理量低下、樹脂の分解による水分の増加等を招く原因となる。よって、このような樹脂からの溶出物を生じる虞の少ないイオン交換樹脂や合成吸着剤が望まれていた。
樹脂からの溶出物が発生する原因としては、まず、架橋共重合体の製造時に残存する不純物、例えば、未重合の単量体成分(モノマー)、重合不十分の低重合体成分(ダイマー、トリマー、オリゴマー)、遊離重合体成分(線状ポリマー、ポリマー微粒子)、重合反応による副生物等の存在が挙げられる。例えば、スチレン系樹脂の場合、未重合の単量体成分としてスチレンモノマー、ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン等が、重合不十分の低重合体成分としてスチレンダイマー、スチレントリマー、スチレンオリゴマー等が、遊離重合体成分として線状ポリスチレン、ポリスチレン微粒子等が、重合反応による副生物としてホルムアルデヒドやベンズアルデヒド等が、それぞれ不純物として残留する。このような不純物の残存を防ぐための有効な手段は知られておらず、従来はこのような不純物を除去するために、イオン交換樹脂や合成吸着剤の製造後や使用前に、蒸留水等でこれを洗浄する工程が必要となり、コストの高騰や工程の煩雑化を招いていた。
また、溶出物発生の別の原因として、架橋共重合体がその使用時や保存時に、時間の経過に伴い酸化等によって分解され、分解物を生じることが挙げられる。このような分解物の発生を防ぐために、坑酸化能を付与する置換基を導入する技術が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)が、その効果は十分ではなかった。
欧州特許出願公開第1078940号明細書 特開平2−115046号公報 特開平10−137736号公報
以上の背景から、架橋共重合体を用いたイオン交換樹脂や合成吸着剤について、不純物の残存や分解物の発生を防ぎ、使用時における溶出物の発生を抑制するための技術が望まれていた。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、その目的は、不純物の残存や分解物の発生を抑制することが可能な粒状重合体の製造方法と、それを用いたイオン交換樹脂及び合成吸着剤の製造方法を提供すること、並びに、樹脂からの溶出物の発生が少ないアニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂及び合成吸着剤を提供することである。
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、イオン交換樹脂や合成吸着剤に用いる粒状重合体の製造時に、重合反応の少なくとも一部を100℃以上の温度で行なうことにより、得られる粒状重合体における不純物の残存や酸化等による分解物の発生が抑制されることを見出した。更に、この製造方法を利用することにより、溶出物の発生が少ないイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)や合成吸着剤を製造することが可能となり、上記課題が効果的に解決されることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は、粒状の重合体をシード重合法によらず製造する方法であって、重合反応の少なくとも一部を100℃以上の温度で行なう工程を有することを特徴とする、粒状重合体の製造方法に存する(請求項1)。
ここで、重合反応系内の酸素量が、モノマーに対する比率の値で5ppm以下であることが好ましい(請求項2)。
また、本発明の別の要旨は、粒状重合体の製造方法により得られた粒状重合体にイオン交換基を導入することを特徴とする、イオン交換樹脂の製造方法に存する(請求項3)。
また、本発明の別の要旨は、上述の粒状重合体の製造方法により、多孔質の粒状重合体からなる合成吸着剤を得ることを特徴とする、合成吸着剤の製造方法に存する(請求項4)。
また、本発明の別の要旨は、水切り状態のアニオン交換樹脂20mlに超純水を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪後、採取した上澄み液について測定される初期全有機炭素値が10ppm以下であることを特徴とする、アニオン交換樹脂に存する(請求項5)。
また、本発明の別の要旨は、水切り状態のカチオン交換樹脂20mlに超純水を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪した後の上澄み液について測定される初期全有機炭素値が25ppm以下であることを特徴とする、カチオン交換樹脂に存する(請求項6)。
また、本発明の別の要旨は、水切り状態のカチオン交換樹脂20mlに0.10%過酸化水素水溶液を加えて全体積を40mlとし、40℃で20時間振盪した後の上澄み液について測定される酸化時全有機炭素値と、水切り状態のカチオン交換樹脂20mlに超純水を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪した後の上澄み液について測定される初期全有機炭素値との差{(酸化時全有機炭素値)−(初期全有機炭素値)}が40ppm以下であることを特徴とする、カチオン交換樹脂に存する(請求項7)。
また、本発明の別の要旨は、水切り状態の合成吸着剤20mlに超純水を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪した後の上澄み液について測定される初期全有機炭素値が0.5ppm以下であることを特徴とする、合成吸着剤に存する(請求項8)。
本発明によれば、粒状重合体における不純物の残存や分解物の発生を抑制することができ、樹脂からの溶出物の発生が少ないイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)や合成吸着剤が実現される。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
[I.球状重合体の製造方法]
本発明の球状重合体の製造方法は、粒状の重合体をシード重合法によらず製造する方法であって、重合反応の少なくとも一部を100℃以上の温度で行なうものである。
〔重合体について〕
本発明において製造対象となる重合体の種類は特に制限されないが、後述のイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)の基体や合成吸着剤に用いる観点からは、通常は架橋共重合体である。なお、架橋共重合体の主な形態としてはゲル型と多孔性が挙げられるが、本発明はその何れにも適用可能である。
また、本発明において製造対象となる重合体の形状は、通常は粒子の形状(粒状)である。具体的な形状としては球状、略球状、多面体状、凝集体状など様々な形状が挙げられるが、特に制限されるものではない。
以下、本発明の製造方法により製造される重合体を適宜「本発明の重合体」と略称するものとする。
〔シード重合法について〕
「シード重合法(シード・フィード(種−供給)法)」とは、予め分散重合法により作製した小粒子径(1μm〜数百μm程度)の大きさの揃ったシード粒子を用い、このシード粒子に動的膨潤法により多量のモノマーを含浸させて大モノマー膨潤粒子とし、これを重合することによって、より大きな粒子径の重合体粒子を製造する手法である。その詳細は、例えば米国特許第4564644号明細書、特開昭61−16902号公報、特表平10−508061号公報等の文献に記載されている。
本発明において「シード重合法によらず」とは、上述のように予め作製したシード粒子を用いてこれにモノマーを含浸させるという手法を採らず、原料モノマーから直接、最終的な重合体を製造することを指す。
シード重合法は、所望の粒子径の重合体粒子を多数製造する上で効率的な手法であると言われるが、予めシード粒子を作製しておく必要があることを考えると、その製造工程は却って複雑であり、必ずしも効率的ではない。また、得られた重合体粒子には不純物の残存や分解物の発生が比較的生じ易い。これはシード粒子由来のポリマー鎖とこれに含浸されたモノマー由来のポリマー鎖とが十分に架橋していないことが主な原因であると考えられる。こうした理由から、本発明ではこのシード重合法を採用しない。
具体的に説明すると、一般にシード重合法では複数回の重合工程を経ている。この結果、得られる架橋共重合体は三次元網目構造に絡まり合った構造体を形成する。これをIPN構造と称している。この構造体にスチレン等の線状ポリマーが含まれる場合、分子量が高くなると絡み合い構造に抑制され、粒子外に拡散しにくくなる。一般に、絡合転換分子量が1万以上を超えると、溶出速度が極めて小さくなる。よって、樹脂からの溶出を極小化する場合、このシード重合法による重合方法を避けなければならない。
〔高温重合反応について〕
本発明では、重合反応の少なくとも一部を、通常100℃以上の高温で行なうことを特徴としている。本発明では以下、この100℃以上で行なわれる重合反応を、適宜「高温重合反応」と呼ぶものとする。
従来は、重合反応を100℃未満の比較的低温で行ない、敢えて重合反応を完結させないようにすることにより、得られる重合体のポリマー鎖の構造に柔軟性が生じ、重合体の強度が向上して分解等が抑えられるものと考えられていた。こうした背景から、従来の技術では、比較的高温で重合を行なう場合(例えば、米国特許第4564644号明細書、米国特許第4283499号明細書等の文献に記載の技術)であっても、その重合温度は100℃未満であった。
なお、特開平8−81513号公報の[実施例1]には、所定の原料を攪拌下で90℃に加熱した後、更に120℃で加熱することにより、球状の架橋共重合体を得ることが開示されている。しかしながら、該公報記載の方法は、耐圧仕様の特別な容器で共重合を行なうというものではなく、反応器内部における実際の重合温度は90℃程度である。
しかし、本発明者は検討の結果、敢えて100℃以上の高温重合反応を行なうことによって、得られる重合体の不純物の残存や分解物の発生が却って抑制されるという、驚くべき知見を得た。その理由は明らかではないが、以下のように推測される。
即ち、従来のように重合時の温度を100℃未満の比較的低温に抑えた状態で重合を行なうと、重合反応が十分に進行・完結しないため、未重合の単量体成分(モノマー)、重合不十分の低重合体成分(ダイマー、トリマー、オリゴマー)、遊離重合体成分(線状ポリマー、ポリマー微粒子等)、重合反応による副生物などの不純物が残存してしまう。例えば、本発明者らの検討によれば、従来の温度条件による重合反応でスチレン系樹脂を製造した場合、架橋度により大きく異なるが、一般的なイオン交換樹脂の架橋度である5%〜10%の範囲では、スチレンモノマーが0.2%〜5%程度、エチルビニルベンゼンが0.1%〜1%程度、線状ポリスチレンやポリスチレン微粒子等の遊離ポリスチレンが0.05%〜1%程度、残存することが明らかになっている。これらの重合体中に残存する不純物が、イオン交換樹脂や合成吸着剤の使用時における溶出物発生の原因となっているものと考えられる。
これに対して、本発明では、上述の低重合体成分や遊離重合体成分(中でも、通常3量体以上、更には5量体以上、また、通常25量体以下、更には10量体以下の比較的残留し易い成分)のガラス転移点(Tg)が、その構造や架橋度によっても異なるが、スチレン系モノマーを使用した場合、約100℃又はそれ以上であることに着目し、反応時の温度をこのガラス転移点(Tg)付近の温度、即ち100℃以上として重合を行なう。これによって、重合中に生じる低重合体成分や遊離重合体成分がガラス転移状態又はこれに近い状態となって重合反応に組み込まれ易くなり、残存する低重合体成分や遊離重合体成分の量が減少するものと考えられる。また、重合によって生じるポリマー鎖の構造がより堅牢で緻密なものになるため、残存した低重合体成分や遊離重合体成分がこのポリマー鎖の構造内に閉じ込められて、その後に溶出してくる可能性が減るものと考えられる。
具体的に説明すると、高温重合の結果、架橋剤に残存する二重結合(例えば、ジビニルベンゼン(以下適宜「DVB」と略する。)由来の二番目の二重結合)の利用率が高くなる。これにより、残留するはずだった末端に活性ラジカル基を有する低重合体成分や遊離重合体成分が、残存二重結合とラジカル重合する結果、低重合体成分や遊離重合体成分が激減する。併せて、残存二重結合によるラジカル重合の結果、有効架橋度が1割増加し、原単価の高いDVB等の架橋剤の使用割合を少なくすることができるばかりでなく、樹脂の押し潰し(シャチロン)強度が向上する。
シード重合法については、後段重合(大モノマー膨潤粒子の重合)を100℃以上の高温で行なうことが、例えば、米国特許第523115号明細書、米国特許第6251996号明細書等の文献に記載されている。しかし、上述したように溶出物を低減することができないという理由から、本発明ではこのシード重合法を採用していない。
〔高温重合反応の条件〕
高温重合反応は通常100℃以上の温度で行なえばよいが、上述の低重合体成分や遊離重合体成分を確実にガラス転移状態とする観点から、中でも110℃以上、更には115℃以上、特に120℃以上の温度で行なうことが好ましい。具体例を挙げると、ポリスチレンのガラス転移点は、架橋度5%では105℃程度、架橋度10%では108℃程度であるからである。但し、あまりに温度が高過ぎると、重合溶液の温度を上昇させるのに時間を要したり、重合開始剤の選択の幅が小さくなったり、製造設備が高価になったり、重合温度の上昇以上に低溶出の効果が現れなかったり、生成した重合体が変性し、又は分解されるおそれがあるので、温度の上限は通常160℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
高温重合反応の時間(温度が100℃以上である時間)は、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、また、通常20時間以下、好ましくは10時間以下、更に好ましくは6時間以下の範囲である。高温重合反応の時間が短すぎると十分な効果が得られない一方で、長すぎると、残留する重合開始剤が少ないため効果が十分発揮できなかったり、生成した重合体が変性し、又は分解されるおそれがある。
高温重合反応は連続的に行なっても良く、途中に100℃以下の温度となる期間を挟んで数回に分けて断続的に行なっても良い。その場合、100℃以上である時間が通算で上記の範囲内であればよい。但し、上述の効果を十分に得る観点からは、高温重合反応を連続的に行なうことが好ましい。
〔反応器への付着防止対策〕
従来のように100℃以下の比較的低温で重合反応を行なう場合には、反応器内の上部に原料モノマー(例えばスチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸メチル等)が凝縮するが、凝縮した原料モノマーが重合するまでには至らない。しかしながら、上述の様に100℃以上の高温重合反応を採用した場合には、反応器内の上部鏡面部に原料モノマーのポップコーン状の重合物が生成する。重合環境により大きく異なるが、反応器内の上部の温度は、設定された重合温度に対し10℃〜25℃低い程度であり、スチレン等の重合が進行するには充分高い温度である。
このような高温重合反応の際におけるスチレン等の原料モノマーの付着を防止する対策としては、例えば以下の(i)〜(iii)等が挙げられる。
(i)高温重合反応を行なう前に、原料モノマーの転換率(conversion rate)を少なくとも70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上にしてから、100℃以上に昇温して高温重合反応を行なうことが好ましい。
(ii)反応器内の上部を冷却するのも好ましい。具体的には、反応器内の上部の温度を100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下になるようにする。冷却の手法は特に制限されないが、例としては冷却水、好ましくは脱塩水を散水する手法、反応器上部に冷却媒体(例えば、水、脱塩水、空気、窒素等)を循環させる手法、反応器上部を冷却用フィン等により空冷する手法などが挙げられる。これらの手法に応じて適宜、適切な構成の反応器を選択して用いればよい。
(iii)反応器の内壁に重合禁止剤を含む塗布剤をコーティングしておくのも好ましい。
上述の(i)〜(iii)等の付着防止対策により、反応器上部(例えば重合缶内部の鏡面部分)における原料モノマーの付着量は、原料モノマーの使用量に対して1000ppm以下に抑制することができる。
但し、上述の(i)〜(iii)等の付着防止対策が必要となるのは、ゲル型の架橋共重合体を製造する場合や、線状高分子を共存させて重合することによりポーラス型の架橋共重合体を製造する場合等である。有機溶媒の存在下で重合するポーラス型の架橋共重合体を製造する場合には、上述の原料モノマーの凝縮の課題は生じないため、上述の上述の(i)〜(iii)等の付着防止対策を講じる必要はない。なぜなら、重合系に共存する有機溶媒が、反応器上部で凝縮したスチレン等の原料モノマーを溶解し、油相(モノマー相)に再分配したり、これらの原料モノマーを希釈し、原料モノマー濃度を低下させるので、重合が生じ難くなるためと考えられる。
有機溶媒の使用量は、有機溶媒の種類や重合条件により異なるが、例えばトルエンの場合、少なくとも原料モノマーの量に対し通常5重量%以上、好ましくは20重量%以上の量が反応系中に存在していれば、反応器の内壁での原料モノマーの付着を防止することが可能である。一方、反応系中における有機溶媒の量が多すぎると、反応器当たりの製出量が低下し、生産性が悪くなる、膨潤性の樹脂になる、重合収率が低下する、溶出が多くなる等の課題が生じる。
反応器の内壁での原料モノマーの付着防止に適切な有機溶媒としては、原料モノマーに対し溶解性を示し、沸点が300℃以下の溶媒であって、重合を遅延させたり阻害したりしない溶媒や、多孔化を発達させない溶媒が望ましい。特に、水と共沸し気相での蒸気圧が高くなる溶媒が好ましい。具体例としては、ヘキサン、オクタン等の炭化水素類、トルエン、キシレン、NB(ニトロベンゼン)等の芳香族類、アセトン、MIBK(メチルイソブチルケトン)等のケトン類、アルコール類、THF(テトラヒドロフラン)、ジオキサン、セルソルブ等のエーテル類等が挙げられる。
なお、ゲル型架橋共重合体を製造する場合でも、重合反応の後半に有機溶媒を油相(モノマー相)に対して通常5重量%以上、好ましくは20重量%以上の割合で加えることにより、原料モノマーの付着防止を図ることも可能である。
有機溶媒としては、比較的蒸気圧が高く、原料モノマーに対して溶解度が高く、重合反応に影響を与えにくいものが好ましい。例えば、トルエン、ヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、THF等の有機溶媒が好ましい。
以下、本発明の球状重合体の製造方法の詳細について、順を追って説明する。
〔原料モノマー〕
原料としては、重合可能な反応基(例えば、エチレン性不飽和結合等)を有するモノマー化合物(以下適宜「原料モノマー」という。)が用いられる。
原料モノマーの種類は特に制限されないが、例えば以下のものが挙げられる。
・スチレン及びその誘導体:
スチレン;o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン等のアルキルスチレン;p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン;p−フェニルスチレン等のアリールスチレン;p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等のハロゲノスチレン;クロロメチルスチレン、クロロブチルスチレン、ブロモブチルスチレン等のハロゲノアルキルスチレンなど。
・ポリビニル芳香族化合物:
ジビニルベンゼン(中でもm−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン)、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ビスビニルビフェニル、ビスビニルフェニルスルホン、ビスビニルフェニルエタン、ビスビニルフェニルブタン等のスチレン誘導体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等のアクリル系誘導体など。
・有機酸ビニルエステル類:
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等。
・メタクリル酸及びその誘導体:
メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル等。
・アクリル酸及びその誘導体:
アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸フェニル等。
・ビニルケトン類:
ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン等。
・N−ビニル化合物:
N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等。
・その他:
ビニルナフタリン類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、アクリルアミド等。
中でも、原料モノマーとしては、スチレン及びその誘導体が好ましく、スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、アリールスチレン、ハロゲノスチレンがより好ましく、スチレンが特に好ましい。
なお、これらの原料モノマーは、何れか一種を単独で用いても良く、必要に応じて二種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
〔架橋性モノマー〕
本発明では、後述のイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)の基体や合成吸着剤等の用途に好適な架橋共重合体を製造する観点から、原料モノマーの一部として、重合可能な反応基(例えば、エチレン性不飽和結合等)を2つ以上有する化合物(以下適宜「架橋性モノマー」という。)を用いることが好ましい。
架橋性モノマーの種類は特に制限されないが、例としては、上述の各種のポリビニル系モノマー等が挙げられる。
これらの架橋性モノマーは、何れか一種を単独で用いても良く、必要に応じて二種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
中でも、架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼンが好ましい。
架橋性モノマーの使用量は、目的とする重合体の種類及び用途によっても異なるが、全原料モノマーに対する比率(架橋度)として、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、また、通常81重量%以下、好ましくは63重量%以下の範囲である。
具体的に、合成吸着剤では架橋度が比較的高く、通常30重量%以上、中でも55重量%以上の範囲であり、場合によっては架橋度81%のDVBそのものを用いて製品を製造する場合もある。
一方、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂の場合には、標準的な架橋度は通常2重量%以上、中でも4重量%以上、また、通常20重量%以下、中でも10重量%以下の範囲である。
〔重合開始剤〕
重合反応には通常、重合開始剤を用いる。
重合開始剤としては、上述の高温重合反応を有効に作用させるため、通常は100℃以上でラジカルが発生できる重合開始剤を少なくとも使用する。なお、分子内に複数の半減期温度を有する重合開始剤を使用したり、半減期温度の異なる二種以上の重合開始剤を併用することも可能である。
具体的な重合開始剤の種類として、例えば以下のものが挙げられる。
・過酸化物系重合開始剤:
高温用重合開始剤としては、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ヘキシルパーベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルクミルパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラーメンタンハイドロパーオキサイドが挙げられる。
また、低温用重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide:以下適宜「BPO」と略する。)、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジー2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート等が挙げられる。
・アゾ系重合開始剤:
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等。
中でも、重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤が好ましく、過酸化ベンゾイル(BPO)が特に好ましい。
重合開始剤の使用量は、使用するモノマーや重合開始剤の種類によっても異なるが、全原料モノマーに対する比率として、通常0.05重量%以上、好ましくは0.07重量%以上、また、通常0.3重量%以下、好ましくは0.2重量%以下の範囲である。重合開始剤の使用量が少なすぎると、重合が未熟に終わり、結果として残存する低重合体成分や遊離重合体成分が多くなってしまうばかりでなく、重合に長時間を要するという課題がある。一方、重合開始剤の使用量が多すぎると、原料モノマーの転換率は高くなるが、残留する低重合体成分や遊離重合体成分の平均分子量が小さくなり、溶出物の発生が多くなってしまう傾向がある。その理由としては、多量に発生した開始剤のラジカルにより、低重合体成分や遊離重合体成分の末端ラジカルが失活し、停止反応が起こってしまうこと、架橋性モノマーの残存二重結合が、多量に発生した開始剤によるラジカルで消費されてしまい、有効架橋度が低くなってしまうこと、重合開始剤が重合体の水素を引き抜き、ラジカル発生の原因になること等が挙げられる。
なお、後述のように重合反応を前段と後段重合の二段階に分け、後段のみで100℃以上の高温重合反応を行なう場合には、前段における重合開始剤の濃度と後段における重合開始剤の濃度とは同一である必要はない。一般的に、後段における高温用重合開始剤の濃度は、前段における高温用重合開始剤の濃度に比べて低い方が好ましい。具体的に、後段における高温重合開始剤の全原料モノマーに対する濃度は、通常0.02重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、また、通常0.2重量%以下、好ましくは0.15重量%以下の範囲である。
〔溶媒〕
重合反応には、必要に応じて溶媒を用いても良い。溶媒を使用する場合、原料となる各モノマーを溶解させるものであれば、その溶媒の種類は特に制限されないが、通常は各種の有機溶媒が使用される。溶媒の使用量は、全原料モノマーに対する比率として、通常0重量%以上、200重量%以下の範囲である。
なお、有機溶媒の有無、種類、使用量等によって、得られる架橋共重合体の形態(ゲル型か多孔性か)やその物理構造が異なる。よって、目的とする架橋共重合体の種類や用途に応じて、有機溶媒の有無及び種類を調整することが好ましい。
具体的には、有機溶媒を使用せずに重合反応を行なうと、ゲル型の架橋共重合体が得られ、有機溶媒を使用して重合反応を行なうと、有機溶媒が沈殿剤(多孔化剤)として機能することにより、多孔性の架橋共重合体が得られる。また、使用するモノマーに対する貧溶媒(例えば、主原料モノマーがスチレンの場合であれば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、イソオクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)、2−エチルヘキサノール、tert−アミルアルコール、デカノール、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等の有機溶媒、又はこれらのうち複数の混合溶媒等)を使用すると、非膨潤性の多孔性架橋共重合体が得られ、生成する重合体に対する良溶媒(例えば、得られる重合体が芳香族系の場合であれば、ジクロロエタン、1,4−ジオキサン等の有機溶媒)を使用すると、膨潤性のゲル様、半多孔性架橋共重合体が得られる。
〔他の成分〕
反応系には、必要に応じてその他の成分を加えても良い。その他の成分の例としては、多孔化に有効な沈澱剤である線状ポリマー等の高分子化合物が挙げられる。
線状ポリマーの具体例としては、ポリスチレン(重量平均分子量(Mw)が通常1000以上、好ましくは1万以上、また、通常100万以下、好ましくは10万以下の範囲)、ポリパラメチルスチレン、ポリパラクロロスチレン等が挙げられる。
なお、上述の有機溶媒や高分子化合物等の沈殿剤(多孔化剤)を加えた重合系では、沈殿剤による重合開始剤の希釈や重合開始剤分子同士の衝突頻度の低下が生じるので、通常はゲル型の架橋共重合体を製造する場合よりも多くの重合開始剤を使用する。但し、このような場合でも、上述の高温重合反応を行なう際には、重合開始剤の使用量を、全原料モノマーに対する割合で、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、また、通常0.5重量%以下の範囲と、比較的少なくすることができる。これは、高温で重合することにより、ラジカル重合における再結合反応や残存二重結合への反応が促進されるためである。これにより、重合開始剤の使用量が比較的少なくても、重合の完結度は高くなり、残留する低重合体成分や遊離重合体成分の分子量は高くなり、その濃度は低くなるため、結果として樹脂からの溶出物の発生を防ぐことができる。
〔重合反応の方式〕
重合反応の方法は特に限定されるものではなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合等、公知の種々の方法を何れか単独で、或いは二種以上を組み合わせて採用することができる。これらは目的とする重合体の種類や用途に応じて、適宜選択すればよい。
特に、得られる重合体を後述のようにイオン交換樹脂又は合成吸着剤として使用する場合には、重合体の形状を粒状、中でも球状又は略球状とすることが好ましいが、この様な粒状(球状又は略球状)の重合体を製造するためには、油中水型又は水中油型の懸濁重合を行なうのが有効である。
油中水型又は水中油型の懸濁重合を行なう場合、水相及び油相を反応器中に入れ、これを攪拌等の手段により懸濁状態にしながら重合反応を行なう。分散相と連続相との浴比は、(分散相の体積):(連続相の体積)の比の値で、通常1:1以上、好ましくは1:1.5以上、また、通常1:10以下、好ましくは1:6以下、更に好ましくは1:4以下の範囲とすることが好ましい。
水相の成分としては通常、水が用いられる。一方、油相は主に原料モノマーと、必要に応じて用いられる有機溶媒によって構成されることになる。また、重合開始剤は、例えばベンゾイルパーオキサイドやアゾビスイソブチロニトリル等の過酸化物のような非水溶性の重合開始剤の場合、油相中に存在することになり、例えば過硫酸塩、過酸化水素、ハイドロパーオキサイドのような水溶性重合開始剤の場合、水相中に存在することになる。
なお、油相の各種の物性(粘度、比重、界面張力等)は、その構成や組成により大きく異なる。このため、油相の比重を通常0.8以上、1.4以下に調整するのが好ましく、また、油相の粘度を通常0.1cps(センチポアズ)以上、200cps以下に調整するのが好ましい。また、水相中に油相の液滴を浮遊させる場合は、水相の比重と油相の比重との差{(水相の比重)−(油相の比重)}が通常0以上、0.5以下であることが好ましい。
水相を連続相とする場合、その水相は、原料モノマー等からなる油相と混和せず、且つ、油相を液滴としてその中に分散させ得るのに適当な不活性液体である必要がある。通常、水相には懸濁剤が含まれる。常法的に使用可能な懸濁剤は、使用する水相成分の種類、組成、及び量に依存する。ここで使用する懸濁剤は、特に限定されるものではなく、通常の懸濁重合に使用する懸濁剤を適宜選択して使用することが可能である。代表的な例としては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、でんぷん、ポリアクリルアミド、ポリ(ジメチルジアリル)アンモニウムクロリド、水不活性無機化合物、例えばケイ酸マグネシウム、並びにセルロースエーテル類、例えばカルボキシメチル−メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらの懸濁剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせで用いてもよい。ただし、発生した油相液滴を合着、破砕することなく粒径の均一性を保持するためには、油相の物性との相関により、水相成分の種類及び懸濁剤の濃度を決定する。油相液滴の粒径の均一性を保持する際、懸濁剤は、水相の全重量に対して通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、また、通常5重量%以下、好ましくは1.5重量%以下の範囲である。
〔重合雰囲気〕
本発明では、重合反応系内の酸素量を、全原料モノマーに対する比率として、通常5ppm以下、中でも3ppm以下、更には1ppm以下と、できるだけ少なくすることが好ましい。なお、米国特許第4192921号明細書、特開昭53−124184号公報等において、酸素ガスを含む窒素を流通させながら重合する方法も提案されている。しかしながら、重合反応(特にラジカル重合反応)において、反応系内に酸素が存在すると、末端ラジカルは酸素と共重合しやすいため、原料モノマーの重合反応に酸素が取り込まれ、過酸化物結合を含むポリマーが生成する。この結果、樹脂の製造工程や洗浄工程の際、あるいは樹脂の使用中に、この過酸化物結合が化学的及び熱的に開裂して、オリゴマーの発生及び溶出を引き起こしたり、この過酸化物結合が分解されてホルムアルデヒドやベンズアルデヒド等の分解物を生じ、その溶出を引き起こしたりする原因ともなる。従って、こうしたオリゴマーや分解物の溶出を抑制するためにも、重合反応系内の酸素量を極めて低く抑え、その状態を維持することは重要である。
反応系内の酸素量を低減するためには、反応器内の気相を不活性ガスで十分に置換してから反応を行なうのが好ましい。脱気方法としては、不活性ガスをバブリングする方法、減圧脱気を繰り返す方法、加圧及び/又は加温して液相や気相中の溶存酸素を不活性ガスに置換する方法など、一般的に知られている方法で置換することができる。不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガス等が挙げられるが、窒素ガスが好ましい。
〔重合の段数〕
上述の様に、重合反応の少なくとも一部は100℃以上の高温で行なう必要があるが、この高温重合反応をより低い温度での重合反応と組み合わせ、複数段に分けて実施しても良い。
例えば、上述したように、反応系中に有機溶媒が存在しない場合(例えば、ゲル型の重合体を製造する場合等)には、原料モノマーの転換率(conversion rate)がまだ低い段階で100℃以上の高温にすると、原料モノマーが水とともに蒸気となって反応器中に充満し、その一部が反応器の蓋部で重合してしまい、これが凝集体となって付着するという課題が生じる。よって、まず100℃未満の比較低温で重合反応を行ない(これを適宜「前段重合」という。)、モノマーの転換率を有る程度高めた状態にした上で、100℃以上の高温重合反応を行なう(これを適宜「後段重合」という。)ことが好ましい。
この場合、前段重合の温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下の範囲が好ましい。前段重合の温度が低すぎると、重合性単量体の転換率が低く、後段重合の際の付着物量が増加するという理由から好ましくない。また、前段重合の温度が高すぎると、付着物量が増加する、スチレン特有の熱重合による二量体構造物、三量体構造物が副生する等の理由から好ましくない。
前段重合の時間は、重合開始剤の半減期温度や使用量、モノマーの重合性、樹脂の架橋度等によって異なるが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、更に好ましくは4時間以上、また、通常24時間以下、好ましくは12時間以下、更に好ましくは8時間以下の範囲である。前段重合の時間が短すぎると、重合が完結できない、残留する低重合体成分や遊離重合体成分等の量が低減できない等の理由から好ましくない。また、前段重合の時間が長すぎると、生産性が低下するという理由から好ましくない。
一方、やはり上述の様に、反応系中に有機溶媒が存在する場合(例えば、多孔性の重合体を製造する場合等)には、反応器の蓋部に凝集体が付着するという上述の課題が生じるおそれは少ないため、重合反応は一段で行なって構わない。
〔抗酸化性モノマー〕
カチオン交換樹脂の溶出性を改善する方法として、公知の技術が知られている。しかしながら、処理方法が煩雑であったり、過剰に添加しているため、カチオン交換樹脂が高価になるという課題があった。発明者らは、上述の課題を解決する方法として、原料モノマーに抗酸化性モノマーを混合して共重合を行なうことにより、カチオン交換樹脂からの不純物の溶出が抑制できることを見いだした。
抗酸化性モノマーの種類としては、t−ブトキシスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン等が挙げられる。これらの抗酸化性モノマーは、重合過程では保護基として機能するが、スルホン化の過程で保護基が加水分解され、スルホン化されたフェノール誘導体となると予想される。このフェノール誘導体は、重合体やスルホン化した製品では、フェノールの存在を検出できなくなる。
抗酸化性モノマーの使用量は、原料モノマーに対する重量比の値で、通常10ppm以上、また、通常500ppm以下、好ましくは300ppm以下の範囲である。
抗酸化性モノマーの詳細については、例えば、特開平2−115046号公報、特開2001−98020号公報、特開平11−114430号公報、特開平5−86132号公報等に記載されている。
〔抗酸化処理〕
上記の抗酸化モノマー以外に、重合工程の終了後、得られた重合体に抗酸化処理を施してもよい。抗酸化処理を行なってから次工程に供することで、簡単に抗酸化機能が発現され、樹脂からの溶出を低減することが可能となる。
抗酸化処理は、通常は、重合体を酸化防止剤と接触させることにより行なわれる。酸化防止剤としては、例えば、t−ブチルカテコール、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、没食子酸、カテコール、ハイドロキノン、クレゾール誘導体、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族アミン誘導体が挙げられる。
これらの酸化防止剤を水又は有機溶媒に溶解し、重合体と接触させる。接触時には、必要に応じて加熱してもよい。
〔重合後の処理〕
反応終了後、生成した重合体を反応液から分離し、通常は精製を行なう。精製の手法は特に制限されないが、例としては溶媒分画、カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。
得られた重合体を、目的とする所望の形状に応じて、粉末状等の形状に成形してもよい。その場合、得られた重合体を粉砕機、ボールミル等により粉砕することも可能である。
〔その他〕
本発明の製造方法により得られる重合体の収率は、使用する原料モノマーや重合開始剤の種類、重合条件、多孔化剤の使用割合等によって異なり、特に制限されるものではないが、全原料モノマーに対する重量比で、通常99.0重量%以上、好ましくは99.5重量%以上である。
また、残留する原料モノマーの濃度は、全原料モノマーに対する重量比で通常300ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下の範囲である。
また、残留する低重合体成分・遊離重合体成分の濃度は、全原料モノマーに対する重量比で通常300ppm以下、好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下の範囲である。
また、本発明の製造方法により得られる重合体の粒径は、使用する原料モノマーや重合開始剤の種類、重合条件等によって異なり、目的に応じて適切に調節すればよいが、通常1μm以上、好ましくは10μm以上、更に好ましくは100μm以上、また、通常2mm以下、好ましくは1mm以下の範囲である。
また、本発明の製造方法により得られる重合体の含水率は、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下である。含水率が高過ぎると、その粒径を維持することが困難となる。一方、その下限は通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上である。
なお、重合体の含水率は、例えば後述の[実施例]の欄に記載の方法により測定することができる。また、ヒーターと天秤が一体となった水分測定器を用いて測定を行なってもよいが、このような装置を使用する場合には、事前に標準法で測定した水分と一致する値が得られる条件を設定する必要がある。
本発明の製造方法により得られる重合体は、上述の様に不純物の残存や酸化等による分解物の発生が抑制され、溶出物の発生が少ないという特徴を有する。よって、その材料、構造、サイズ等を制御することにより、イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、キレート交換樹脂等)の基体や、合成吸着剤、蛋白分離剤等として、好適に使用することが可能である。
[II.イオン交換樹脂]
本発明のイオン交換樹脂は、上述の方法により得られた本発明の重合体に、イオン交換性の官能基(これを適宜「イオン交換基」という。)を導入することにより製造される。
〔基体となる重合体〕
本発明のイオン交換樹脂の基体としては、上述した本発明の重合体を使用する。その種類は特に制限されないが、通常は架橋共重合体が用いられる。
架橋共重合体の種類は特に制限されず、目的とするイオン交換樹脂の種類や用途に応じて選択すれば良いが、通常は芳香族系(スチレン系)又はアクリル酸系若しくはメタクリル酸系の架橋共重合体であることが好ましく、芳香族系(スチレン系)の架橋共重合体であることがより好ましい。中でも、スチレンとジビニルベンゼンとの架橋共重合体であることが特に好ましい。
また、架橋共重合体の構造も特に制限されず、目的とするイオン交換樹脂の種類や用途に応じて、ゲル型架橋共重合体か多孔性(ポーラス型、ハイポーラス型)架橋共重合体かを適宜選択すれば良い。多孔性架橋共重合体の場合、その孔径等の細孔特性も目的に応じて適宜調整すればよい。
架橋共重合体の粒径も特に制限されず、目的とするイオン交換樹脂の種類や用途に応じて適宜調整すれば良いが、通常1μm以上、好ましくは50μm以上、また、通常2mm以下、好ましくは1.5mm以下の範囲である。
なお、本発明の重合体は何れか一種を単独で使用しても良く、二種以上を任意の組み合わせで使用してもよい。また、本発明の重合体と他の重合体とを併用しても良い。
〔イオン交換基の種類〕
導入するイオン交換基の種類は、目的とするイオン交換樹脂の種類に応じて、適宜選択すれば良い。
強酸性カチオン(陽イオン)交換樹脂の場合、イオン交換基(カチオン交換基)としては、スルホン酸基(−SO3H)等が挙げられる。中でも、スルホン酸基が好ましい。
弱酸性カチオン(陽イオン)交換樹脂の場合、イオン交換基(カチオン交換基)としては、カルボン酸基(−CO2H)、リン酸基等が挙げられる。
強塩基性アニオン(陰イオン)交換樹脂の場合、イオン交換基(アニオン交換基)としては、4級アンモニウム基(−N+3)等が挙げられる(Rは任意の置換基を表わす。)。4級アンモニウム基の具体例としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、ジメチルエタノールアンモニウム基、ジメチルプロパノールアンモニウム基、ピリジニウム基等が挙げられる。
弱塩基性アニオン(陰イオン)交換樹脂の場合、イオン交換基(アニオン交換基)としては、1〜3級アンモニウム基(−N+n3-n)等が挙げられる(Rは任意の置換基を表わし、nは1以上3以下の整数を表わす。)。1〜3級アンモニウム基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジエチレントリアミノ基、ポリエチレンイミン基等が挙げられる。
なお、以上のイオン交換基は何れか一種を単独で導入しても良く、二種以上を任意の組み合わせで同一の重合体に導入してもよい。
〔イオン交換基の導入方法〕
基体(本発明の重合体)に対するイオン交換基の導入は、公知の方法に従って行なうことができる。導入対象となる基体(本発明の重合体)や導入するイオン交換基の種類に応じて、適切な方法を選択して実施すれば良い。
例えば、強酸性カチオン交換基としてスルホン酸基を導入する場合、特開平5−132565号公報、特表平10−508061号公報等に記載の手法が用いられる。
また、弱酸性カチオン交換基としてカルボン酸基を導入する場合、特開2003−53198号公報、特開平6−41236号公報等に記載の手法が用いられる。
また、強塩基性アニオン交換基として4級アンモニウム基を導入する場合、特開2003−73420号公報、特開平5−239236号公報、特開2002−119872号公報等に記載の手法が用いられる。
また、弱塩基性アニオン交換基として1〜3級アンモニウム基を導入する場合、特開2001−106725号公報等に記載の手法が用いられる。
〔イオン交換樹脂の性質〕
本発明のイオン交換樹脂は、使用時における溶出物の発生が少ない。これは、初期溶出試験における溶出液の全有機炭素(total organic carbon:以下適宜「TOC」という。)の値(これを適宜「初期TOC値」という。)を測定することにより評価することができる。初期TOC値の測定は、以下に規定する手法による。
即ち、測定対象となる樹脂(アニオン交換樹脂又はカチオン交換樹脂)を水湿潤状態(イオン形は、カチオン交換樹脂の場合にはNa形、アニオン交換樹脂の場合にはCl形)とした上で、遠心分離等の手法で水切りする。得られた水切り状態の樹脂20mlを200ml三角フラスコ等の適当な計量容器に計り取り、これに超純水(原水のTOCは10ppb以下)を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪後、上澄み液を採取してそのTOCの値を測定し、これを初期TOC値とする。
なお、TOCの測定は、全有機炭素分析計(例えば、島津製作所製TOC−5000A)を用いて測定することができる。得られた初期TOC値は、樹脂1L当たりの溶出量に換算する。
本発明のイオン交換樹脂がアニオン交換樹脂の場合、この初期TOC値は、通常10ppm以下、好ましくは8ppm以下、更に好ましくは5ppm以下の範囲である。
一方、本発明のイオン交換樹脂がカチオン交換樹脂の場合、この初期TOCの値は、通常25ppm以下、好ましくは20ppm以下、更に好ましくは15ppm以下の範囲である。
また、カチオン交換樹脂の場合、酸化条件下における溶出液のTOCの値(これを適宜「酸化TOC値」とする。)と初期TOC値との差{(酸化TOC値)−(初期TOC値)}により評価することも可能である。酸化TOC値の算出は、以下に規定する手法による。
即ち、測定対象となる樹脂(アニオン交換樹脂又はカチオン交換樹脂)を水湿潤状態とした上で、遠心分離等の手法で水切りする。得られた水切り状態の樹脂20mlに、0.10%過酸化水素水溶液を加えて全体積を40mlとし、これを40℃で20時間振盪後、上澄み液を採取してその全有機炭素の値を測定し、これを酸化TOC値とする。
本発明のカチオン交換樹脂の場合、この酸化TOC値と初期TOC値との差{(酸化TOC値)−(初期TOC値)}は、通常40ppm以下、好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下の範囲である。
〔その他〕
以上説明したように、本発明のイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)は、上述の初期TOC値及び酸化TOC値に明らかなように、溶出物の発生が極めて少ない。よって、製造時や使用前における洗浄の手間を省くことができ、コストの低減や工程の効率化が図られるとともに、イオン交換の対象となる液の着色・毒性・脱塩阻害・臭気等を生じることなく、長期間安定して使用・保存することができる。従って、イオン交換樹脂が必要とされる各種の分野において、好適に使用することができる。
具体的に、本発明のイオン交換樹脂は、ボイラー用、原子力発電所用、飲料用水脱塩水、糖液脱色用、固体酸、固体塩基触媒用樹脂、アミノ酸精製用、医薬品精製用、軟水用樹脂、金属イオン回収用、薬液の精製、ガス吸着剤、溶媒の脱水等の用途に使用することが可能である。
なお、本発明のイオン交換樹脂は、一種を単独で用いることもでき、二種以上を任意の組み合わせで用いることもできる。特に、カチオン交換樹脂(強酸性カチオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂)とアニオン交換樹脂(強塩基性アニオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂)とを同一のカラムに入れて混床として、又は別のカラムに入れて組み合わせて用いても良い。また、別のイオン交換樹脂と組み合わせることも勿論可能である。
[III.合成吸着剤]
本発明の合成吸着剤は、上述の方法により本発明の重合体を製造する際に、その重合条件を調整することにより、適切な多孔構造を有する多孔性の重合体とすることにより、製造される。
〔合成吸着剤となる重合体〕
本発明の合成吸着剤としては、上述した本発明の重合体を使用する。その種類としては、架橋共重合体が用いられる。
架橋共重合体の種類は特に制限されず、目的とする合成吸着剤の用途に応じて選択すれば良いが、通常は芳香族系(スチレン系)又はアクリル酸系若しくはメタクリル酸系の架橋共重合体であることが好ましく、芳香族系(スチレン系)の架橋共重合体であることがより好ましい。中でも、スチレンとジビニルベンゼンとの架橋共重合体であることが特に好ましい。
架橋共重合体の構造としては、多孔性(ポーラス型、ハイポーラス型)の架橋共重合体が用いられる。その細孔径等の細孔特性は、目的とする合成吸着剤の用途、特に吸着対象物のサイズに応じて適宜調整すればよい。一般的に、医薬品等の低分子量物質等の吸着を目的とする場合、その細孔半径は通常2nm以上、好ましくは3nm以上、また、通常50nm以下、好ましくは30nm以下の範囲である。また、ペプチドやたんぱく質等の吸着を目的とする場合、その細孔径は通常2nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下の範囲である。
架橋共重合体の粒径も特に制限されず、目的とする合成吸着剤の用途に応じて適宜調整すれば良いが、通常1μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常2mm以下、好ましくは1mm以下の範囲である。
なお、本発明の重合体は何れか一種を単独で使用しても良く、二種以上を任意の組み合わせで使用してもよい。また、本発明の重合体と他の重合体とを併用しても良い。
〔合成吸着剤の性質〕
本発明の合成吸着剤は、使用時における溶出物の発生が少ない。これは、上述の初期TOC値を測定することにより評価することができる。合成吸着剤の初期TOCの算出は、以下の手法により行なう。
即ち、測定対象となる合成吸着剤を水湿潤状態とした上で、遠心分離等の手法で水切りする。得られた水切り状態の合成吸着剤20mlを200ml三角フラスコ等の適当な計量容器に計り取り、これに超純水(原水のTOCは10ppb以下)を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪後、上澄み液を採取してそのTOCの値を測定し、これを初期TOC値とする。
具体的に、本発明の合成吸着剤の初期TOC値は、通常0.5ppm以下、好ましくは0.2ppm以下、更に好ましくは0.1ppm以下の範囲である。
〔その他〕
以上説明したように、本発明の合成吸着剤は、上述の初期TOC値に明らかなように、溶出物の発生が極めて少ない。よって、製造時や使用前における洗浄の手間を省くことができ、コストの低減や工程の効率化が図られるとともに、吸着の対象となる液の着色・毒性・脱塩阻害・臭気等を生じることなく、長期間安定して使用・保存することができる。従って、吸着が必要とされる各種の分野において、好適に使用することができる。
具体的に、本発明の合成吸着剤は、合成医薬品、漢方薬、ペプチド、蛋白質、ポリフェノール誘導体の吸着・精製、果汁の吸着、精製、ガス吸着剤等の用途に使用することが可能である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[分析方法]
後に説明する各実施例及び各比較例のアニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂及び合成吸着剤(これらを総称して以下適宜「サンプル」という。)の分析は、以下の手順で行なった。
〔TOC値〕
上述の[II.イオン交換樹脂]の欄に記載の方法により、測定対象となるサンプルの初期TOC値(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂及び合成吸着剤)及び酸化TOC値(カチオン交換樹脂)を測定した。
なお、TOC値の測定には、全有機炭素分析計(島津製作所製TOC−5000A)を使用した。
〔ホルムアルデヒド濃度〕
上述の初期TOC値及び酸化TOC値の測定に用いた各上澄み液について、以下の手法によりホルムアルデヒドの濃度を測定した。これらを各々「初期HCHO濃度」及び「酸化時HCHO濃度」という。
30重量%のKOH(水酸化カリウム)水溶液に、0.5重量%の4−アミノ−3−ヒドラジノ−5−メルカプト−1,3,6−s−テトラジン水溶液を加え、室温で30分間静置した。その溶液に0.75重量%のKIO4(過ヨウ素酸カリウム)水溶液を加えて混合した。得られた溶液を厚さ10mmの石英セルに入れ、可視光分光光度計により波長550nmでの吸光度を測定し、検量線からホルムアルデヒドの含有率を測定した。
〔残存二重結合〕
重合反応時に、ラマン分光法によって、反応溶液の1633cm-1(炭素−炭素間二重結合(C=C)由来)のピーク強度A1と1003cm-1(炭素−炭素間単結合(C−C)由来)のピーク強度A2を測定し、これらの強度比(A1/A2)を求め、重合反応の進行度の指標とした。ラマン分光法による測定には、FT−Raman(Perkin Elmer製System2000)を使用した。
〔含水率〕
測定対象となるサンプルをメスシリンダーで10ml測り取り、布又はビニールスポンジに包み、経口15cmの遠心分離機によって3000rpmで10分間、遠心分離を行ない、付着水分を除いた。その後、素早く秤量ビンに移して密閉し、得られた含水サンプルの重量を測定した。
重量の測定後、50℃、8時間、高温乾燥機中で乾燥した後、デシケーター中で30分間放冷し、得られた乾燥サンプルの重量を測定した。
得られた含水サンプルの重量及び乾燥サンプルの重量から、下式によりサンプルの含水率を算出した。
Figure 2006328290
〔交換容量〕
カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂の交換容量は、以下の手順で測定した。
カチオン交換樹脂10.0mlをガラスカラムに充填し、2N HCl 500mlを通液し、樹脂を再生した。次に、脱塩水250mlを通液し、樹脂を水洗した。この樹脂に5%NaCl水溶液を250ml通液し、溶離液を回収した。得られた溶離液を1N NaOHで滴定し、交換容量を算出した。
アニオン交換樹脂については、2N HClの代わりに2N NaOHを用いて樹脂を再生し、1N NaOHの代わりに1N HClを用いて滴定を行なった他は、カチオン交換樹脂の場合と同様の手順で交換容量を求めた。
〔TL膨潤度〕
[実施例・比較例群III:合成吸着剤]における樹脂のトルエン膨潤度(これを適宜「TL膨潤度」という。)は、以下の手順で測定した。
樹脂を50℃で8時間真空乾燥した後、得られた乾燥樹脂5.0gを秤量し、トルエンに浸漬させてスラリー化した。得られたスラリーを40℃に加温して1時間保持した後、メスシリンダーに移し、更に40℃に加温した状態で静置した。5時間後、メスシリンダー中で沈降した樹脂の体積を測定した(これを以下「TL中体積」という。)。
一方、トルエンの代わりに水を用い、上記と同様の手順で、水中での樹脂の体積を測定した(これを以下「水中体積」という。)。
得られた樹脂のTL中体積と水中体積との比率{(TL中体積)/(水中体積)}を求め、これをTL膨潤度とした。
[実施例・比較例群I:アニオン交換樹脂]
〔実施例I−1〕
・反応器:
重合反応用の反応器として、攪拌翼、圧力計、窒素管、温度計を取り付けたステンレス(以下適宜「SUS」と略する。)製の耐圧性の反応器を使用した。
・水相:
水相として、2重量%ポリビニルアルコール(poly(vinyl alcohol):以下適宜「PVA」と略す。)水溶液30ml及び0.1重量%メチレンブルー水溶液10mlを含む水溶液2150mlを調製した。得られた水相を攪拌しながら、10μmのSUS製焼結フィルターを通じて窒素ガスを1時間バブリングした。溶存酸素濃度は0.1ppm以下であった。
・油相(モノマー相):
原料モノマーとして、スチレン(St)497gと、DVB(ダウ・ケミカル社製、純度63%)53gを用いるとともに、重合開始剤として、含水BPO(BPO濃度75重量%)0.75gと、PBZ(t-butyl perbenzoate)0.55g(全モノマー量に対してBPO、PBZともに0.1重量%)を用い、これらを混合して油相(モノマー相)を調製した。得られた油相を攪拌しながら、10μmのSUS製焼結フィルターを通じて窒素ガスを1時間バブリングし、溶存酸素をほぼ完全に除去した。
・重合反応:
上述の水相と油相を上述の反応器に入れ、室温で、1kPaで減圧した後、窒素ガスで置換するという脱気操作を3回繰り返すことにより、反応器中の気相を窒素置換し、気相中の酸素をほぼ完全に除去した上で、反応器を密閉した。30℃で30分間、110rpmで攪拌し、懸濁液とした。2時間かけて80℃まで昇温し、80℃で4時間保持した(前段重合)後、2時間かけて120℃まで昇温し、120℃で更に4時間保持する(後段重合)ことにより、二段階に分けて重合反応を行なった。反応の終了後、反応器を50℃以下に冷却し、得られた重合体を反応器から取り出して脱塩水で洗浄し、真空乾燥器で50℃で8時間乾燥した。得られた重合体の収率は99.5%であった。
・アニオン交換基の導入:
乾燥後の重合体200gを2Lの3つ口フラスコに入れ、クロロメチルメチルエーテル700gを加え、室温で1時間攪拌した後、無水塩化亜鉛75gを3回に分けて加えた。30分間攪拌した後、40℃まで昇温し、攪拌しながら40℃で8時間保持して反応させた。その後、室温まで冷却し、メタノール300gを室温で4時間かけて滴下した。引き続き脱塩水300gを1時間かけて滴下し、加水分解反応を行なった。反応後、重合体を取り出し、純水で洗浄した。
得られたクロロメチル化重合体50gを1Lの3つ口フラスコに入れ、トルエン200gを加え、40℃に昇温後、40℃で保持しながら30重量%トリメチルアミン水溶液110gを5時間かけて滴下し、反応させた。その後、反応溶液を抜き出して純水を加え、フラスコを100℃に加熱し、残留するトルエンを除去して、トリメチルアンモニウム基を有するアニオン交換樹脂(以下適宜「実施例I−1のアニオン交換樹脂」という。)を製造した。
〔実施例I−2〕
・重合体の製造:
実施例I−1において、重合開始剤PBZの使用量を0.10重量%から0.20重量%に変更した他は、実施例I−1と同様の手順により、重合体を製造した。得られた重合体の収率は99.5%であった。
・アニオン交換基の導入:
得られた重合体に対して、実施例I−1と同様の手順によりトリメチルアミノメチル基(アニオン交換基)を導入することにより、アニオン交換樹脂を有するアニオン交換樹脂(以下適宜「実施例I−2のアニオン交換樹脂」という。)を製造した。
〔比較例I−1〕
・重合体の製造:
実施例I−1の重合反応の手順において、SUS製の耐圧性の反応器の代わりにガラス製の反応器を使用し、油相(モノマー相)に重合開始剤として75%BPO1.5gを使用し、PBZは使用しないとともに、反応液(水相及び油相の懸濁液)を室温から2時間かけて80℃まで昇温し、80℃で8時間保持することにより、一段で重合反応を行なった他は、実施例I−1と同様の手順により、重合体を製造した。得られた重合体の収率は96%であった。
・アニオン交換基の導入:
得られた重合体に対して、実施例I−1と同様の手順によりトリメチルアミノメチル基(アニオン交換基)を導入することにより、アニオン交換樹脂(以下適宜「比較例I−1のアニオン交換樹脂」という。)を製造した。
〔評価〕
上記手順により得られた各実施例及び比較例のアニオン交換樹脂について、上述の手法により初期TOC値、交換容量、含水率、初期HCHO値を測定した。結果を下記表1に示す。表1から明らかなように、実施例I−1,I−2のアニオン交換樹脂は、比較例I−1のアニオン交換樹脂と比べて、初期TOC値が低く、溶出物の発生が抑えられていることが分かる。
Figure 2006328290
[実施例・比較例群II:カチオン交換樹脂]
〔実施例II−1〕
・重合体の製造:
実施例I−1と同様の手順により重合体を製造した。得られた重合体の収率は99.5%であった。
・カチオン交換基の導入:
得られた重合体200gを2Lの3つ口フラスコに入れ、ニトロベンゼン400gを加え、室温で0.5時間攪拌した後、80℃まで昇温して更に3時間攪拌し、重合体を膨潤した。一度室温まで冷却した後、98%硫酸1400gを加え、攪拌した。4時間かけて100℃まで昇温し、更に100℃で4時間保持して反応させた。その後、反応液を冷却し、内温が50℃を越えないようにしながら、脱塩水を15時間かけて滴下した。この間、途中3回反応液を抜き出し、硫酸を除去した。その後、ニトロベンゼンと水相を除去し、更に脱塩水を加えて加熱することにより、残留するニトロベンゼンを留去した。得られた樹脂を10BVの脱塩水で洗浄することにより、スルホン酸基を有するカチオン交換樹脂(以下適宜「実施例II−1のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
〔実施例II−2〕
実施例II−1において、ニトロベンゼンの代わりに1,2−ジクロロエタン(EDC)を用い、反応時間を80℃で4時間とした他は、実施例II−1と同様の手順により、スルホン酸基を有するカチオン交換樹脂(以下適宜「実施例II−2のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
〔実施例II−3〕
実施例II−1において、以下の抗酸化性モノマーを用いて共重合を行なった他は、実施例II−1と同様の手順により、スルホン酸基を有するカチオン交換樹脂(以下適宜「実施例II−4のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
・抗酸化性モノマー:
スチレン、ジビニルベンゼンにt−ブトキシスチレン(東京化成製)を400ppmとなるようにモノマー相を調製した。その後は、実施例II−1と同様に処理を操作を行ない、カチオン交換樹脂を得た。
〔実施例II−4〕
実施例II−1において、以下のTBC処理を行なった他は、実施例II−2と同様の手順により、スルホン酸基を有するカチオン交換樹脂(以下適宜「実施例II−3のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
・TBC処理:
重合反応で得られた重合体を水洗後取り出した。重合体200gに対し、0.2gのTBC(t−ブチルカテコール)を含むEDC溶液800mlを加え、室温で1時間攪拌した後、70℃に溶液を加熱し、2時間保持した。重合体のスラリー溶液を室温まで冷却した後、実施例II−2で示されるように、スルホン化反応を行なった。
〔実施例II−5〕
実施例II−1において、モノマー相にt−ブトキシスチレン(東京化成品)を400ppm加えて重合を行なった他は、実施例II−1と同様の手順により、スルホン酸基を有するカチオン交換樹脂(以下適宜「実施例II−5のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
〔比較例II−1〕
・重合体の製造:
実施例II−1の重合反応の手順において、SUS製の耐圧性の反応器の代わりにガラス製の反応器を使用し、油相(モノマー相)に重合開始剤として加える75%BPOの量を1.5gにするとともに、反応液(水相及び油相の懸濁液)を室温から2時間かけて80℃まで昇温し、80℃で8時間保持することにより、一段で重合反応を行なった他は、実施例II−1と同様の手順により、重合体を製造した。得られた重合体の収率は95.2%であった。
・カチオン交換基の導入:
得られた重合体に対して、実施例II−1と同様の手順によりスルホン酸基(カチオン交換基)を導入することにより、カチオン交換樹脂(以下適宜「比較例II−1のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
〔比較例II−2〕
実施例II−1の重合反応の手順において、重合開始剤の使用量を、モノマーに対してBPO、PBZともに0.5重量%とした他は、実施例II−1と同様の手順により、重合体を製造した。得られた重合体の収率は95.7%であった。
・カチオン交換基の導入:
得られた重合体に対して、実施例II−1と同様の手順によりスルホン酸基(カチオン交換基)を導入することにより、カチオン交換樹脂(以下適宜「比較例II−2のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
〔比較例II−3〕
比較例II−1の重合反応の手順において、窒素ガスの代わりに計装用空気を40ml/分で重合反応液の上面に通気させるとともに、原料モノマー成分が失われないよう、冷却管に5℃の冷媒を流通させながら重合反応を行なった他は、比較例II−1と同様の手順により重合体を製造した。得られた重合体の収率は92.5%であった。
・カチオン交換基の導入:
得られた重合体に対して、実施例II−1と同様の手順によりスルホン酸基(カチオン交換基)を導入することにより、カチオン交換樹脂(以下適宜「比較例II−3のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
〔比較例II−4〕
比較例II−3の重合反応の手順において、計装用空気を40ml/分で重合反応液中にバブリングした他は、比較例II−3と同様の手順により重合体を製造した。得られた重合体の収率は88.3%であった。
・カチオン交換基の導入:
得られた重合体に対して、実施例II−1と同様の手順によりスルホン酸基(カチオン交換基)を導入することにより、カチオン交換樹脂(以下適宜「比較例II−4のカチオン交換樹脂」という。)を製造した。
〔評価〕
上記手順により得られた各実施例及び比較例のカチオン交換樹脂について、上述の手法により初期TOC値、酸化TOC値、初期HCOH値、酸化時HCOH値、交換容量、含水率を測定した。結果を下記の表2−1及び表2−2に示す。表2−1及び表2−2から明らかなように、実施例II−1〜II−5のカチオン交換樹脂は、比較例II−1〜II−4のカチオン交換樹脂と比べて、初期TOC値が低い。また、酸化TOC値と初期TOC値との差{(酸化TOC値)−(初期TOC値)}も、実施例II−1〜II−5のカチオン交換樹脂の方が、比較例II−1〜II−4のカチオン交換樹脂に比べて値が低い。更に、初期HCOH値、酸化時HCOH値についても、実施例II−1〜II−5のカチオン交換樹脂の方が比較例II−1〜II−4のカチオン交換樹脂よりも低い。これらの結果から、実施例II−1〜II−5のカチオン交換樹脂の方が比較例II−1〜II−4のカチオン交換樹脂よりも溶出物の発生が抑えられていることが分かる。
Figure 2006328290
Figure 2006328290
[実施例・比較例群III:合成吸着剤]
〔実施例III−1〕
・反応器:
重合反応用の反応器として、攪拌翼、圧力計、窒素管、温度計を取り付けたSUS製の耐圧性の反応器を使用した。
・水相:
水相として、0.2重量%のPVA及び5重量ppmのNaNO2(亜硝酸ナトリウム)を含む水溶液1800mlを調製した。得られた水相に対して窒素ガスをバブリングし、溶存酸素をその濃度がほぼ0ppmになるまで除去した。
・油相(モノマー相):
原料モノマーとして、ポリスチレン(45Kd)32gと、DVB(ダウ・ケミカル社製、純度55%)360gを用いるとともに、重合開始剤として、含水BPO(BPO濃度75%)1.2gと、PHD(di-t-hexylperoxide)0.9gを用い、更に有機溶媒としてトルエン450gを用い、これらを混合して油相(モノマー相)を調製した。得られた油相に窒素ガスを1時間バブリングし、溶存酸素をほぼ完全に除去した。
・重合反応:
上述の水相と油相を上述の反応器に入れて攪拌しながら、反応器内を10kPaまで脱気減圧した後、窒素ガスを入れて大気圧まで戻した。この操作を3回繰り返し、反応器内の溶存酸素を徹底的に除去した。30℃で30分間、150rpmで攪拌し、懸濁液とした。2時間かけて80℃まで昇温し、80℃で4時間保持した(前段重合)後、2時間かけて140℃まで昇温し、140℃で更に4時間保持する(後段重合)ことにより、二段に分けて重合反応を行なった。反応器内の圧力は0.55MPaであった。反応終了後、反応器を50℃以下まで冷却し、得られた重合体を反応器から取り出して脱塩水で5回洗浄し、更に1Lのトルエンを加え、室温で2時間攪拌した。この操作を3回繰り返した後、真空乾燥器で50℃で8時間乾燥することにより、重合体(以下適宜「実施例III−1の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は99.5%、ラマン分光分析によるピーク強度比A1/A2は0.32であった。
〔実施例III−2〕
実施例III−1において、油相(モノマー相)の調製時に75%BPOを使用しないとともに、重合時に反応懸濁液を30℃から140℃まで4時間かけて昇温し、140℃で8時間保持することにより、1段で重合反応を行なった他は、実施例III−1と同様の手順により重合体(以下適宜「実施例III−2の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は100.2%、ラマン分光分析によるピーク強度比A1/A2は0.43であった。
〔実施例III−3〕
実施例III−1において、重合開始剤としてPHD(di-t-hexylperoxide)の代わりにPBZ(t-butyl perbenzoate)0.9gを用いるとともに、後段重合時に、反応懸濁液を80℃から120℃まで2時間かけて昇温し、120℃で4時間保持することにより、後段重合反応を行なった(後段重合反応時の反応器内の圧力は0.35MPa)他は、実施例III−1と同様の手順により重合体(以下適宜「実施例III−3の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は99.1%、ラマン分光分析によるピーク強度比A1/A2は0.48であった。
〔実施例III−4〕
実施例III−1において、油相(モノマー相)の調製時に、原料モノマーとしてポリスチレン(45Kd)32gを使用せず、ダウケミカル社製DVB(純度81%)250gを使用すると共に、重合開始剤としてBPOを使用せず、PBDの使用量を0.6gとし、また、重合時に反応懸濁液を30℃から120℃まで4時間かけて昇温し、120℃で8時間保持することにより、1段で重合反応を行なった他は、実施例III−1と同様の手順により重合体(以下適宜「実施例III−4の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は99.2%であった。
〔実施例III−5〕
実施例III−4において、重合開始剤としてPBDの代わりにPBZ0.9gを使用した他は、実施例III−4と同様の手順により重合体(以下適宜「実施例III−5の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は101.2%であった。
〔比較例III−1〕
実施例III−1において、油相(モノマー相)の調製時に、75%BPOの使用量を6.0gとし、PBDを使用しないともに、重合時に、反応懸濁液を30℃から80℃まで2時間かけて昇温し、80℃で8時間保持することにより、1段で重合反応を行なった他は、実施例III−1と同様の手順により重合体(以下適宜「実施例III−5の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は94.8%、ラマン分光分析によるピーク強度比A1/A2は0.65であった。
〔比較例III−2〕
比較例III−1において、ダウ・ケミカル社製DVBの代わりに、新日鐵化学製DVB(純度55%)を用いた他は、比較例III−1と同様の手順により重合体(以下適宜「比較例III−2の合成吸着剤」という。)を製造した。得られた重合体の収率は90.1%、ラマン分光分析によるピーク強度比A1/A2は0.41であった。
〔評価〕
上記手順により得られた各実施例及び比較例の合成吸着剤について、上述の手法により初期TOC値、酸化TOC値、初期HCOH値、酸化時HCOH値、含水率、TL膨潤度を測定した。結果を下記の表3−1及び表3−2に示す。表3−1及び表3−2から明らかなように、実施例III−1〜III−4の合成吸着剤は、比較例III−1,III−2の合成吸着剤と比べて、初期TOC値が低い。また、酸化TOC値と初期TOC値との差{(酸化TOC値)−(初期TOC値)}も、実施例III−1〜III−4の合成吸着剤の方が比較例III−1,III−2の合成吸着剤に比べて値が低い。更に、初期HCOH値、酸化時HCOH値についても、実施例III−1〜III−5の合成吸着剤の方が比較例III−1,III−2の合成吸着剤よりも低い。これらの結果から、実施例III−1〜III−4の合成吸着剤は、比較例III−1,III−2の合成吸着剤に比べて、溶出物の発生が抑えられていることが分かる。
また、比較例II−2やII−3から、重合系内に酸素が存在すると、初期溶出や酸化条件下でもホルマリンの含有率が高くなることがわかる。それに比べ、実施例では、ホルマリンの含有率が極めて低く抑えられていることがわかる。
また、高温重合反応を実施すると、80℃で重合するよりも重合収率が高くなることがわかる。実施例III−2、III−5では、添加したポリスチレンが三次元架橋構造のため絡み合い構造を形成し抽出されていないため、見かけ上の重合収率が100%を超えているものと考えられる。
また、実施例III−1〜III−4の合成吸着剤は、比較例III−1,III−2の合成吸着剤と比べて、TL膨潤度の値が小さい。ここから、高温重合反応を行なうと、膨潤や収縮が小さく、合成吸着剤として優れた樹脂が得られることが分かる。
Figure 2006328290
Figure 2006328290
本発明の製造方法によって得られる重合体は、上述の様に不純物の残存や酸化等による分解物の発生が抑制され、溶出物の発生が少ないという特徴を有する。よって、その材料、構造、サイズ等を制御することにより、イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、キレート交換樹脂等)や、合成吸着剤、蛋白分離剤等として、好適に使用することが可能である。

Claims (8)

  1. 粒状の重合体をシード重合法によらず製造する方法であって、
    重合反応の少なくとも一部を100℃以上の温度で行なう工程を有する
    ことを特徴とする、粒状重合体の製造方法。
  2. 重合反応系内の酸素量が、モノマーに対する比率の値で5ppm以下である
    ことを特徴とする、請求項1記載の粒状重合体の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の粒状重合体の製造方法により得られた粒状重合体にイオン交換基を導入する
    ことを特徴とする、イオン交換樹脂の製造方法。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の粒状重合体の製造方法により多孔質の粒状重合体からなる合成吸着剤を得る
    ことを特徴とする、合成吸着剤の製造方法。
  5. 水切り状態のアニオン交換樹脂20mlに超純水を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪後、採取した上澄み液について測定される初期全有機炭素値が10ppm以下である
    ことを特徴とする、アニオン交換樹脂。
  6. 水切り状態のカチオン交換樹脂20mlに超純水を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪した後の上澄み液について測定される初期全有機炭素値が25ppm以下である
    ことを特徴とする、カチオン交換樹脂。
  7. 水切り状態のカチオン交換樹脂20mlに0.10%過酸化水素水溶液を加えて全体積を40mlとし、40℃で20時間振盪した後の上澄み液について測定される酸化時全有機炭素値と、水切り状態のカチオン交換樹脂20mlに超純水を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪した後の上澄み液について測定される初期全有機炭素値との差{(酸化時全有機炭素値)−(初期全有機炭素値)}が40ppm以下である
    ことを特徴とする、カチオン交換樹脂。
  8. 水切り状態の合成吸着剤20mlに超純水を加えて全体積を60mlとし、40℃で20時間振盪した後の上澄み液について測定される初期全有機炭素値が0.5ppm以下である
    ことを特徴とする、合成吸着剤。
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