JP2006327315A - 車両の駆動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両走行時における車軸の回転変動を抑制し、ひいてはドライバビリティを良好に保つ。
【解決手段】車両10のフロント側には動力源としてのエンジン14が設けられ、リア側には動力源としての電動発電機32が設けられている。車両のリア側において、デフ連結軸34には、電動発電機32と空調用のコンプレッサ33とが動力分配装置31を介して機械的に連結されている。車輪連結軸とコンプレッサ連結軸との間にはこれらを連結又は遮断の状態に切り替える直結クラッチが設けられている。ハイブリッドECU52は、車両走行時においてコンプレッサ33の作動状態の変化、又は直結クラッチの連結/遮断の状態の変化に基づいて電動発電機32の駆動又は発電の状態を制御する。
【選択図】 図1
【解決手段】車両10のフロント側には動力源としてのエンジン14が設けられ、リア側には動力源としての電動発電機32が設けられている。車両のリア側において、デフ連結軸34には、電動発電機32と空調用のコンプレッサ33とが動力分配装置31を介して機械的に連結されている。車輪連結軸とコンプレッサ連結軸との間にはこれらを連結又は遮断の状態に切り替える直結クラッチが設けられている。ハイブリッドECU52は、車両走行時においてコンプレッサ33の作動状態の変化、又は直結クラッチの連結/遮断の状態の変化に基づいて電動発電機32の駆動又は発電の状態を制御する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、車両の駆動制御装置に関するものである。
動力源として電動機(モータ)を備えた車両が実用化されている。例えば特許文献1の車両では、遊星ギア装置からなる動力分配装置を備え、該動力分配装置の第1軸、第2軸及び第3軸にそれぞれエンジン、電動発電機、空調用のコンプレッサを連結するとともに、第2軸(電動発電機軸)と第3軸(コンプレッサ軸)とをクラッチ機構により離合させる構成としている。これにより、空調用のコンプレッサがエンジン及び電動発電機のいずれかによって駆動されるようになっていた。
また一方で、エンジンに独立して電動発電機を設け、動力分配装置(遊星ギア装置)の3つの軸にそれぞれ車軸、電動発電機、空調用のコンプレッサを連結する構成が検討されている。かかる構成によれば、車両走行時に車軸から入力される動力によってコンプレッサの駆動や電動発電機の回生発電が可能となる他、電動発電機を動力源として車軸を回転させたり、電動発電機によってコンプレッサを駆動させたりすることが可能となる。
しかしながら、上記のように動力分配装置(遊星ギア装置)の3つの軸にそれぞれ車軸、電動発電機、空調用のコンプレッサを連結する構成では、コンプレッサの駆動状態を切り替える場合(実際には、コンプレッサに設けたクラッチ機構のON/OFFを切り替える場合)などにおいて、その都度の各軸の回転エネルギ差によって車軸の回転速度が変動する。それに伴い車体に振動が生じ、ドライバビリティが悪化するおそれがあった。
特開2003−2045号公報
本発明は、車両走行時における車軸の回転変動を抑制し、ひいてはドライバビリティを良好に保つことができる車両の駆動制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
本発明において、車両は、前後車輪の一方に設けられた内燃機関と、他方の車輪に設けられた電動発電機とを動力源として走行する。その車両走行の際、第1の動力発生手段の発電機、及び第2の動力発生手段の電動発電機により発生した電力が蓄電手段に蓄電される。
第2の動力発生手段を設けた車輪側において車輪回転を伝達する車輪連結軸(ディファレンシャルギアが設けられる車両ではディファレンシャル連結軸)には、電動発電機と補機装置(例えば、空調用のコンプレッサ)とが動力分配装置を介して機械的に連結されており、さらに動力伝達クラッチ等の切替手段によって、車輪連結軸、電動発電機軸及び補機装置軸のうちいずれか2つが連結又は遮断の状態に切り替えられる。かかる構成によれば、内燃機関による車両走行時には、車輪連結軸から伝達される動力により電動発電機と補機装置が作動し、要求に応じて車室内の空調等が行われる。そして、車両の減速時等になると車輪連結軸からの動力により電動発電機で回生発電が行われる。このとき、車輪連結軸からの動力がトランスミッションを介することなく電動発電機に伝達されるため、回生エネルギを効率良く回収できる。また、車両の走行停止時等には、電動発電機の動力により補機装置が駆動されて空調等が行われる。
上記のとおり車輪連結軸、電動発電機軸及び補機装置軸の3軸が動力分配装置によって連結された構成では、車両走行時において補機装置の作動状態の変化や切替手段の連結/遮断の状態の変化が生じると、それに起因して車軸(車輪連結軸)の回転変動が生じ、結果として車体に振動等が発生する。この点、本発明では、車両走行時において補機装置の作動状態の変化、又は切替手段の連結/遮断の状態の変化に基づいて電動発電機の駆動又は発電の状態を制御するようにしている。すなわち、車輪連結軸、電動発電機軸及び補機装置軸の3軸の回転速度はそれぞれ相関した関係にあり、電動発電機の駆動又は発電の状態を制御することにより、車軸(車輪連結軸)の回転を一定に保持することが可能となる。故に、車両走行時における車軸の回転変動を抑制し、ひいてはドライバビリティを良好に保つことができる。
本発明が適用可能な車両としては、少なくとも、電動発電機、補機装置、動力分配装置及び電力変換手段を有する動力発生手段と、蓄電手段と、切替手段とを備えたものであれば良い。かかる場合にも、車両走行時において補機装置の作動状態の変化、又は切替手段の連結/遮断の状態の変化に基づいて電動発電機の駆動又は発電の状態を制御することで、車軸(車輪連結軸)の回転を一定に保持することが可能となる。故に、車両走行時における車軸の回転変動を抑制し、ひいてはドライバビリティを良好に保つことができる。
補機装置又は切替手段の状態変化時における車軸回転速度の変動を有効に抑制するには、補機装置又は切替手段の状態変化時における補機装置軸の回転変化の方向に合わせて電動発電機の駆動又は発電の状態を制御すると良い。これにより、車軸回転速度を一定に保持することが可能となる。
電動発電機を制御する制御手段として、より具体的には、車両走行時において補機装置が非作動状態から作動状態に変化した時、又は切替手段が遮断状態から連結状態に変化した時、電動発電機を駆動側に制御し、逆に補機装置が作動状態から非作動状態に変化した時、又は切替手段が連結状態から遮断状態に変化した時、電動発電機を発電側に制御すると良い。
つまり、補機装置が非作動状態から作動状態に変化した時、又は切替手段が遮断状態から連結状態に変化した時は、車軸回転速度が減少側に変動しそうになるが、電動発電機を駆動側に制御することにより、車軸回転速度の減少が抑制できる。また、補機装置が作動状態から非作動状態に変化した時、又は切替手段が連結状態から遮断状態に変化した時は、車軸の回転速度が増加側に変動しそうになるが、電動発電機を発電側に制御することにより、車軸回転速度の増加が抑制できる。
ただし、車両走行時において、補機装置軸の回転速度が車軸回転速度よりも大きい場合に切替手段が遮断状態から連結状態に変化した時は、電動発電機を発電側に制御すると良い。また、切替手段が連結状態から遮断状態に変化し、それに伴い補機装置軸の回転速度が車軸回転速度よりも大きくなる場合に、電動発電機を駆動側に制御すると良い。
補機装置又は切替手段の状態変化時には、電動発電機を制御するための制御指令値を以下のように算出すると良い。すなわち、補機装置又は切替手段の状態変化に際しその変化前における電動発電機の実動力を算出するとともに、同変化後における電動発電機の目標動力を算出する。そして、該算出した実動力と目標動力とから電動発電機の制御指令値を算出する。例えば、実動力と目標動力との偏差に基づいて電動発電機の制御指令値を算出する。
このとき、補機装置として空調用のコンプレッサを備えた構成では、都度のコンプレッサ回転速度とコンプレッサ特性とに基づいてコンプレッサ動力を算出するとともに、該コンプレッサ動力に基づいて電動発電機の目標動力を算出すると良い。
前記切替手段を、車輪連結軸と補機装置軸とを連結又は遮断の状態に切り替えるものとし、車両の走行停止中に遮断状態とし、他では要求に応じて連結状態とすると良い。これにより、停車時は電動発電機から補機装置への動力伝達が確実に実現できる。また、車両発進時に、電動発電機から車輪連結軸と補機装置への動力伝達を確実に実施すべく切替手段を連結状態としたり、車両走行時に、車軸の回転状態に応じて、切替手段を遮断状態として電動発電機にて補機装置を作動させるか、同切替手段を連結状態として車輪連結軸から補機装置へ動力伝達するかを選択的に実施したりしても良い。
ここで、動力分配装置として遊星ギア装置を用い、遊星ギア装置により車輪連結軸と電動発電機と補機装置とを機械的に連結することで、これら各要素間の動力分配が簡易に実現できる。故に、システム構成の簡潔化を図ることができる。この場合、車軸の回転を一定に保持するような電動発電機の制御が適正に実施できる。
動力分配装置として遊星ギア装置を用いる場合、リングギア、サンギア、キャリアにそれぞれ組み合わせて車輪連結軸、電動発電機軸、補機装置軸を接続すると良い。但し、接続の組み合わせは任意である。
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、エンジンと電動発電機とを動力源としそれらいずれかの動力により走行する、いわゆるハイブリッド自動車に具体化する事例を説明する。図1は、本実施の形態における車両システムの概略構成を示す図面である。なお図1では、左側が車両前方であり、右側が車両後方である。
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、エンジンと電動発電機とを動力源としそれらいずれかの動力により走行する、いわゆるハイブリッド自動車に具体化する事例を説明する。図1は、本実施の形態における車両システムの概略構成を示す図面である。なお図1では、左側が車両前方であり、右側が車両後方である。
図1において、車両10はその前後に2つの動力発生手段を具備しており、前輪側には第1の動力発生手段としての主動力ブロックD1が搭載され、後輪側には第2の動力発生手段としての副動力ブロックD2が搭載されている。車両10は、これら2つの動力ブロックD1,D2にて発生する動力により走行する。
すなわち、車両10のフロント部分には、主駆動輪として左右2つの前輪11,12が設けられ、それらの前輪11,12に結合された車軸13に主動力ブロックD1が連結されている。主動力ブロックD1は、ガソリンや軽油等の燃料の燃焼により動力を発生する主動力源としてのエンジン14と、AT(自動変速機)等よりなるトランスミッション15とを備えており、エンジン14の出力はトランスミッション15を介して車軸13に伝達され、その結果左右の前輪11,12が回転する。エンジン14の出力軸にはベルト等の連結手段16を介して発電機としてのオルタネータ17が接続されている。
車両10のリア部分には、副駆動輪として左右2つの後輪21,22が設けられ、それら各後輪21,22に連結された車軸23,24の間にディファレンシャルギア25が設けられている。そして、このディファレンシャルギア25に駆動軸34を介して副動力ブロックD2が連結されている。副動力ブロックD2は、遊星ギア装置により構成される動力分配装置31と、副動力源としての電動発電機32と、補機装置としてのエアコン用コンプレッサ33(以下、単にコンプレッサともいう)とを備えている。電動発電機32は駆動軸35を介して動力分配装置31に連結され、コンプレッサ33は駆動軸36を介して動力分配装置31に連結されている。電動発電機32は、例えば交流同期型のモータジェネレータにより構成され、電力の供給により駆動される電動機としての機能(力行機能)と、機械エネルギを電気エネルギに変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えている。電動発電機32には、インバータ等よりなる電力変換ユニット38が接続されている。電力変換ユニット38は電力変換手段に相当し、これにより電力の直流−交流変換が行われる。
なお、動力分配装置(遊星ギア装置)31に連結される3つの駆動軸34〜36について、以下の説明では便宜上、駆動軸34を「デフ連結軸34」、駆動軸35を「MG連結軸35」、駆動軸36を「コンプレッサ連結軸36」とも言うこととする。
電源系の構成としては、定格12Vのバッテリ41と、降圧回路や昇圧回路を構成するDC−DCコンバータ42と、主動力ブロックD1のオルタネータ17並びに副動力ブロックD2の電力変換ユニット38に接続された蓄電手段としての高電圧バッテリ43とを備える。
また、本システムは、各種の電子制御ユニット(ECU)を備えており、各ECUは図示しない各種センサ等の検出値に基づいてアクチュエータ等の駆動を制御する。具体的には、エンジンECU51は、エンジン制御手段を構成するものであり、都度のエンジン運転状態等に基づいて燃料噴射制御や点火時期制御といったエンジン制御を実施する。ハイブリッドECU52は、車両10の全体を統括的に制御する車両制御手段を構成するものであり、電力変換ユニット38(インバータ)に対して制御信号を出力することで電動発電機32の駆動又は発電の状態等を制御する。エアコンECU53は、空調制御手段を構成するものであり、ドライバの要求や車両の走行状態等に基づいてコンプレッサ33を駆動して空調制御を実施する。これら各ECU51〜53は、いずれもCPU、ROM、RAM等よりなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されるものであり、各ECU間で相互に制御データ等の送受信が可能となっている。
本システムには、車両の停止時にエンジン14の運転を自動停止させる、いわゆるアイドルストップ機能が設けられており、エンジンECU51は、車速が0であること、アイドル状態であること等の所定のアイドルストップ条件の成立時において燃料噴射や点火を停止してエンジン14の運転を停止する。
副動力ブロックD2の詳細な構成を図2の模式図を基に説明する。図2において、動力分配装置(遊星ギア装置)31は、互いに同じ軸心回りに回転するサンギア61及びリングギア62と、これらサンギア61及びリングギア62にかみ合って公転しながら自転するピニオンギア63を有するキャリア64とを具備している。そして、サンギア61にデフ連結軸34が接続され、リングギア62にコンプレッサ連結軸36が接続され、キャリア64にMG連結軸35が接続されている。
デフ連結軸34とコンプレッサ連結軸36との間には切替手段としての直結クラッチ65が設けられている。直結クラッチ65は、例えばON/OFF切替式のクラッチであり、ハイブリッドECU52からの指令に基づいてON/OFF(継合又は非継合)が切り替えられる。ただし、切替手段として、ワンウェイクラッチや遠心クラッチ等、他の動力伝達クラッチを用いることも可能である。
直結クラッチ65がON(継合)される場合、デフ連結軸34からの動力はコンプレッサ連結軸36を介してコンプレッサ33に伝達される。その際、動力分配装置31の3軸(デフ連結軸34、MG連結軸35及びコンプレッサ連結軸36)は共に同速回転する。これに対し、直結クラッチ65がOFF(継合遮断)される場合、デフ連結軸34とコンプレッサ連結軸36とは分断された状態となり、動力分配装置31の3軸は遊星ギアの共線特性に基づく回転速度でそれぞれ回転する。
コンプレッサ連結軸36には、エアコンスイッチ(図示略)の状態等に応じてON/OFFされるコンプレッサクラッチ66が設けられている。このコンプレッサクラッチ66は現実にはコンプレッサ33と一体に設けられ、エアコンECU53からコンプレッサ33に出力される指令に基づいてコンプレッサクラッチ66がON/OFFされる。
また、コンプレッサ33には、コンプレッサ回転速度を検出するための回転速度センサ68が設けられており、該回転速度センサ68の検出信号はエアコンECU53に逐次入力される。
上記構成の車両システムでは、車両走行時においてデフ連結軸34から入力される動力により電動発電機32とコンプレッサ33が作動する。これにより、エアコン等の稼働が可能となる。そして、車両の減速時等には、デフ連結軸34からの動力により電動発電機32で回生発電が行われ、電力変換ユニット38を通じてバッテリ充電が行われる。また、車両の走行停止時等には、電動発電機32の動力によりコンプレッサ33の作動が可能となる。また更に、電動発電機32で発生した動力が動力分配装置31を介してディファレンシャルギア25に伝達され、更に左右の後輪21,22に伝達されることで、電動発電機32の動力のみによる車両走行、又はエンジン14の動力と協働した車両走行が可能となる。
本車両10では、上記構成によって、エンジン14又は電動発電機32のいずれかの発生動力により走行する二輪駆動走行(2WD走行)と、エンジン14及び電動発電機32の両方の発生動力により走行する四輪駆動走行(4WD走行)とが可能となっている。
車両10における各種状況下における作動状態を説明する。図3は、車両10の駆動モードの一覧を示す図である。なお、図3中、2WD(EG)の表記はエンジン動力による2WD走行を意味し、2WD(EV)の表記は電動発電機動力による2WD走行を意味する。
図3に示すように、車両10の駆動モードは、(a)停止モード、(b)発進モード、(c)加速・定常・減速モード、(d)後退モードに大別され、さらにその各モードには複数のモードが設定されている。この場合、空調要求や2WD/4WD要求等に応じて直結クラッチ65(切替手段)がON又はOFFされるとともに、電動発電機32が駆動又は回生の状態で制御される。なお、ドライバの加速要求、電源条件、空調条件等によっては、空調要求や2WD/4WD要求が同一であっても直結クラッチ65のON/OFF状態や電動発電機32の駆動/回生の状態が適宜変更されるようになっている(図の※1)。
上記駆動モードの処理の一例を説明する。例えば、発進モードで空調要求有り、かつ2WD(EG)の要求有りとされる場合を考える。かかる場合、空調要求がなされた初期は、直結クラッチ65がOFFされるとともに電動発電機32が駆動状態とされる。これにより、電動発電機32の動力によりコンプレッサ33の回転速度が上昇し、その際冷房能力が最大限に発揮される。またその後、コンプレッサ回転速度が要求回転速度に達すると、直結クラッチ65がONされるとともに電動発電機32の駆動が停止される。これにより、動力分配装置31の3軸が共に同速回転する状態となり、エンジン駆動に伴うデフ連結軸34の回転によってコンプレッサ33の回転が継続される。
車両の減速時や制動時には、電動発電機32において制動エネルギが回生され、電力変換ユニット38を介して高電圧バッテリ43が充電される。このとき、ディファレンシャルギア25からの動力はトランスミッションを介することなく電動発電機32に伝達されるため、回生エネルギを効率良く回収できる。
ところで、車両10の駆動モードは、ドライバの要求や都度の車両運転状態等に応じて随時遷移し、そのモード遷移時にコンプレッサ33(コンプレッサクラッチ66)のON/OFF切替や切替手段としての直結クラッチ65のON/OFF切替が行われる。この場合、モード遷移に伴い車軸回転に変動が生じ、それに起因してドライバビリティの悪化を招くことが懸念される。そこで本実施の形態では、モード遷移時にも車軸回転を安定状態とすべく、都度のモード遷移に応じて電動発電機32の駆動又は発電の状態を制御することとする。
ここでは、図3の加速・定常・減速モードにおいて、
・コンプレッサOFF&切替手段OFFのモードを「第1モード」、
・コンプレッサON&切替手段OFFのモードを「第2モード」、
・コンプレッサOFF&切替手段ONのモードを「第3モード」、
・コンプレッサON&切替手段ONのモードを「第4モード」、
とし、これら第1〜第4のモード間におけるモード遷移について順に説明する。図4〜図9は、各モード間の推移を説明するための共線図であり、各共線図には、車両走行状態にいて、サンギア61に連結されたデフ連結軸34の回転速度(以下、車軸回転速度という)と、キャリア64に連結されたMG連結軸35の回転速度(以下、MG軸回転速度という)と、リングギア62に連結されたコンプレッサ連結軸36の回転速度(以下、コンプレッサ軸回転速度という)の関係を示す。なお図中、ρは遊星ギア装置のプラネタリ比(プラネタリギア比)である。
・コンプレッサOFF&切替手段OFFのモードを「第1モード」、
・コンプレッサON&切替手段OFFのモードを「第2モード」、
・コンプレッサOFF&切替手段ONのモードを「第3モード」、
・コンプレッサON&切替手段ONのモードを「第4モード」、
とし、これら第1〜第4のモード間におけるモード遷移について順に説明する。図4〜図9は、各モード間の推移を説明するための共線図であり、各共線図には、車両走行状態にいて、サンギア61に連結されたデフ連結軸34の回転速度(以下、車軸回転速度という)と、キャリア64に連結されたMG連結軸35の回転速度(以下、MG軸回転速度という)と、リングギア62に連結されたコンプレッサ連結軸36の回転速度(以下、コンプレッサ軸回転速度という)の関係を示す。なお図中、ρは遊星ギア装置のプラネタリ比(プラネタリギア比)である。
(1)第1モード⇔第2モード間のモード遷移
図4には、第1モードから第2モードへの遷移を(a),(b)に示し、その逆の第2モードから第1モードへの遷移を(c),(d)に示す。図4の(a)に示すように、第1モードでは、車両走行に伴い車軸が回転しており、コンプレッサ軸回転速度<MG軸回転速度<車軸回転速度の関係となっている。このとき、コンプレッサ軸回転速度とMG軸回転速度とは遊星ギアのプラネタリ比と各軸のイナーシャ及び負荷に応じて決定される。この状態から図4の(b)に示す第2モードに移行すると、コンプレッサON(コンプレッサ駆動)によってコンプレッサ連結軸36に負荷がかかり、コンプレッサ軸回転速度が低下して車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、コンプレッサ軸回転速度の低下をキャンセルするようにして電動発電機32が駆動側に制御される。これにより、車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
図4には、第1モードから第2モードへの遷移を(a),(b)に示し、その逆の第2モードから第1モードへの遷移を(c),(d)に示す。図4の(a)に示すように、第1モードでは、車両走行に伴い車軸が回転しており、コンプレッサ軸回転速度<MG軸回転速度<車軸回転速度の関係となっている。このとき、コンプレッサ軸回転速度とMG軸回転速度とは遊星ギアのプラネタリ比と各軸のイナーシャ及び負荷に応じて決定される。この状態から図4の(b)に示す第2モードに移行すると、コンプレッサON(コンプレッサ駆動)によってコンプレッサ連結軸36に負荷がかかり、コンプレッサ軸回転速度が低下して車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、コンプレッサ軸回転速度の低下をキャンセルするようにして電動発電機32が駆動側に制御される。これにより、車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
逆に第2モード→第1モードの遷移時には、図4の(c),(d)に示すように、コンプレッサ33がONからOFFに切り替えられることでコンプレッサ連結軸36にかかる負荷がなくなり、コンプレッサ軸回転速度が上昇して車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、コンプレッサ軸回転速度の上昇をキャンセルするようにして電動発電機32が発電側に制御される。これにより、車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが減じられ、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが増大され、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、発電状態とされる。
(2)第1モード⇔第3モード間のモード遷移
図5には、第1モードから第3モードへの遷移を(a),(b)に示し、その逆の第3モードから第1モードへの遷移を(c),(d)に示す。図5の(a)に示す第1モードは、前記図4の(a)と同様であり、この状態から図5の(b)に示す第3モードに移行すると、切替手段としての直結クラッチ65がON(継合)されることに伴い動力分配装置(遊星ギア装置)31の3軸が同速回転となる。それにより、車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が駆動側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
(2)第1モード⇔第3モード間のモード遷移
図5には、第1モードから第3モードへの遷移を(a),(b)に示し、その逆の第3モードから第1モードへの遷移を(c),(d)に示す。図5の(a)に示す第1モードは、前記図4の(a)と同様であり、この状態から図5の(b)に示す第3モードに移行すると、切替手段としての直結クラッチ65がON(継合)されることに伴い動力分配装置(遊星ギア装置)31の3軸が同速回転となる。それにより、車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が駆動側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
逆に第3モード→第1モードの遷移時には、図5の(c),(d)に示すように、切替手段としての直結クラッチ65がOFF(継合遮断)されることで、コンプレッサ軸回転速度<MG軸回転速度<車軸回転速度の関係となる。それにより、車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が発電側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが減じられ、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが増大され、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、発電状態とされる。
(3)第1モード⇔第4モード間のモード遷移
図6には、第1モードから第4モードへの遷移を(a),(b)に示し、その逆の第4モードから第1モードへの遷移を(c),(d)に示す。図6の(a)に示す第1モードは、前記図4の(a)と同様であり、この状態から図6の(b)に示す第4モードに移行すると、動力分配装置(遊星ギア装置)31の3軸が同速回転となるとともに、コンプレッサONによってコンプレッサ連結軸36に負荷がかかる。それにより、車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が駆動側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
図6には、第1モードから第4モードへの遷移を(a),(b)に示し、その逆の第4モードから第1モードへの遷移を(c),(d)に示す。図6の(a)に示す第1モードは、前記図4の(a)と同様であり、この状態から図6の(b)に示す第4モードに移行すると、動力分配装置(遊星ギア装置)31の3軸が同速回転となるとともに、コンプレッサONによってコンプレッサ連結軸36に負荷がかかる。それにより、車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が駆動側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
逆に第4モード→第1モードの遷移時には、図6の(c),(d)に示すように、切替手段としての直結クラッチ65がOFF(継合遮断)されるとともに、コンプレッサOFFとされることで、コンプレッサ軸回転速度<MG軸回転速度<車軸回転速度の関係となる。それにより、車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が発電側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが減じられ、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが増大され、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、発電状態とされる。
(4)第2モード⇔第3モード間のモード遷移
図7には、第2モードから第3モードへの遷移を(a),(b)に示し、その逆の第3モードから第2モードへの遷移を(c),(d)に示す。図7の(a)に示す第2モードでは、コンプレッサ軸回転速度<MG軸回転速度<車軸回転速度の関係となっている。この状態から図7の(b)に示す第3モードに移行すると、動力分配装置(遊星ギア装置)31の3軸が同速回転となる。それにより、車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が駆動側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
図7には、第2モードから第3モードへの遷移を(a),(b)に示し、その逆の第3モードから第2モードへの遷移を(c),(d)に示す。図7の(a)に示す第2モードでは、コンプレッサ軸回転速度<MG軸回転速度<車軸回転速度の関係となっている。この状態から図7の(b)に示す第3モードに移行すると、動力分配装置(遊星ギア装置)31の3軸が同速回転となる。それにより、車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が駆動側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
逆に第3モード→第2モードの遷移時には、図7の(c),(d)に示すように、切替手段としての直結クラッチ65がOFF(継合遮断)されることで、コンプレッサ軸回転速度<MG軸回転速度<車軸回転速度の関係となる。それにより、車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32を発電側に制御することで車軸回転速度を一定に保持する。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが減じられ、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが増大され、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、発電状態とされる。
ただし、第2モードの状態において、車両が低速走行している場合はコンプレッサ軸回転速度>MG軸回転速度>車軸回転速度となることも考えられる。かかる場合、第2モード→第3モードの切替時において、上記図7の(a)とは逆に電動発電機32が発電側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。つまり、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが減じられ、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが増大され、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、発電状態とされる。
また、第3モード→第2モードの切替時には(ただし第2モード切替後にコンプレッサ軸回転速度>MG軸回転速度>車軸回転速度となる場合)、上記図7の(b)とは逆に電動発電機32を駆動側に制御することで車軸回転速度を一定に保持する。つまり、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
(5)第2モード⇔第4モード間のモード遷移
図8には、第2モードから第4モードへの遷移を(a),(b)に示し、その逆の第4モードから第2モードへの遷移を(c),(d)に示す。図8の(a)に示す第2モードでは、コンプレッサ軸回転速度<MG軸回転速度<車軸回転速度の関係となっている。この状態から図8の(b)に示す第4モードに移行すると、動力分配装置(遊星ギア装置)31の3軸が同速回転となる。それにより、車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が駆動側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
図8には、第2モードから第4モードへの遷移を(a),(b)に示し、その逆の第4モードから第2モードへの遷移を(c),(d)に示す。図8の(a)に示す第2モードでは、コンプレッサ軸回転速度<MG軸回転速度<車軸回転速度の関係となっている。この状態から図8の(b)に示す第4モードに移行すると、動力分配装置(遊星ギア装置)31の3軸が同速回転となる。それにより、車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が駆動側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
逆に第4モード→第2モードの遷移時には、図8の(c),(d)に示すように、動力分配装置(遊星ギア装置)31の3軸が同速回転している状態から、コンプレッサ軸回転速度<MG軸回転速度<車軸回転速度となる状態へと移行する。それにより、車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が発電側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが減じられ、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが増大され、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、発電状態とされる。
ただし、第2モードの状態において、車両が低速走行している場合はコンプレッサ軸回転速度>MG軸回転速度>車軸回転速度となることもあり、かかる場合、第2モード→第4モードの切替時に、上記図8の(a)とは逆に電動発電機32が発電側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。つまり、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが減じられ、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが増大され、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、発電状態とされる。
また、第4モード→第2モードの切替時には(ただし第2モード切替後にコンプレッサ軸回転速度>MG軸回転速度>車軸回転速度となる場合)、上記図8の(b)とは逆に電動発電機32を駆動側に制御することで車軸回転速度を一定に保持する。つまり、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
(6)第3モード⇔第4モード間のモード遷移
図9には、第3モードから第4モードへの遷移を(a),(b)に示し、その逆の第4モードから第3モードへの遷移を(c),(d)に示す。図9の(a)に示す第3モードでは、動力分配装置(遊星ギア装置)31の3軸が同速回転となっている。この状態から図9の(b)に示す第4モードに移行すると、コンプレッサ33の駆動開始に伴い車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が駆動側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
図9には、第3モードから第4モードへの遷移を(a),(b)に示し、その逆の第4モードから第3モードへの遷移を(c),(d)に示す。図9の(a)に示す第3モードでは、動力分配装置(遊星ギア装置)31の3軸が同速回転となっている。この状態から図9の(b)に示す第4モードに移行すると、コンプレッサ33の駆動開始に伴い車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が駆動側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが増大され、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが減じられ、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、駆動状態とされる。
逆に第4モード→第3モードの遷移時には、図9の(c),(d)に示すように、コンプレッサ33の駆動停止に伴い車軸回転速度が変動するおそれが生じるが、電動発電機32が発電側に制御されることで車軸回転速度が一定に保持される。かかる場合、電動発電機32が駆動状態にあればその駆動トルクが減じられ、同電動発電機32が発電状態にあればその発電トルクが増大され、同電動発電機32がOFF(停止)状態にあれば、発電状態とされる。
ここで、動力分配装置(遊星ギア装置)31の3軸に入力される各入力トルクについて、サンギア61(デフ連結軸34)への入力トルクをTs、リングギア62(コンプレッサ連結軸36)への入力トルクをTr、キャリア64(MG連結軸35)への入力トルクをTcとすると、定常状態の場合において、これら各トルクは次の(1),(2)式の関係を有する。ただしρは遊星ギア装置のプラネタリ比(プラネタリギア比)である。
Ts=−ρ・Tr=−ρ/(1+ρ)・Tc …(1)
Tr=1/(1+ρ)・Tc …(2)
本実施の形態の場合、サンギア入力トルクTsは車軸トルク、リングギア入力トルクTrはコンプレッサトルク、キャリア入力トルクTcはMGトルクに相当する。上式によれば、例えばリングギア入力トルクTr(コンプレッサトルク)を基に、それに対応するサンギア入力トルクTs(車軸トルク)やキャリア入力トルクTc(MGトルク)を求めることができる。
Ts=−ρ・Tr=−ρ/(1+ρ)・Tc …(1)
Tr=1/(1+ρ)・Tc …(2)
本実施の形態の場合、サンギア入力トルクTsは車軸トルク、リングギア入力トルクTrはコンプレッサトルク、キャリア入力トルクTcはMGトルクに相当する。上式によれば、例えばリングギア入力トルクTr(コンプレッサトルク)を基に、それに対応するサンギア入力トルクTs(車軸トルク)やキャリア入力トルクTc(MGトルク)を求めることができる。
図10は、モード遷移時における電動発電機32のトルク指令値算出処理を示すフローチャートであり、本処理はハイブリッドECU52により所定の時間周期で実行される。
ステップS101では、今現在の電動発電機32のトルク(現MGトルク)を算出する。例えば、ハイブリッドECU52から電力変換ユニット38(インバータ)へ現に出力されている制御信号に基づいて現MGトルクが算出される。次に、ステップS102では、回転速度センサ68の検出信号を基に算出したコンプレッサ回転速度を読み込む。コンプレッサ回転速度は、回転速度センサ68の検出信号に基づいてエアコンECU53にて算出されるようになっており、ハイブリッドECU52ではエアコンECU53から受信した回転速度算出値が読み込まれる。ただしこれに代えて、車輪回転速度を検出する車輪速度センサの検出信号と、電動発電機32の回転速度を検出するMG回転速度センサの検出信号とに基づいて車軸回転速度を算出し、その車軸回転速度をコンプレッサ回転速度とすることも可能である。
その後、ステップS103では、車両10の駆動モードの遷移要求が入ったか否かを判定する。そして、遷移要求有りであることを条件にステップS104に進み、都度の要求に基づいて駆動モードを遷移させる。このとき、コンプレッサクラッチ66のON/OFF切替や直結クラッチ65のON/OFF切替が適宜実施される。
その後、ステップS105では、前記ステップS102で読み込んだコンプレッサ回転速度とコンプレッサ特性とに基づいてコンプレッサトルクを推定し、続くステップS106では、前記(2)式に示す関係を用い、コンプレッサトルクの推定値に基づいて電動発電機32の目標トルク(目標MGトルク)を算出する。ただし、前記(2)式においてリングギア入力トルクTrはコンプレッサトルク、キャリア入力トルクTcはMGトルクである。
最後にステップS107では、現MGトルクと目標MGトルクとの偏差に基づいて電動発電機32のトルク指令値を算出する。そして、このトルク指令値に基づく制御信号がハイブリッドECU52から電力変換ユニット38に出力され、それにより電動発電機32の駆動又は発電の状態が制御される。このとき、モード遷移時から所定時間が経過するまでの期間内で、前記トルク指令値によって電動発電機32の駆動トルク(又は発電トルク)の増減が行われる。
図11は、モード遷移時の車両挙動を説明するためのタイムチャートである。図11では、タイミングt1で直結クラッチ65がOFF→ONに切り替えられてそれに伴いモード遷移が行われる事例について図示している。
さて、直結クラッチ65がOFFからONに切り替えられたタイミングt1において、仮にMGトルクが不変(図示では電動発電機OFF状態のまま)であると、図に一点鎖線で示すように、車軸の回転変動が生じることに伴い車速が低下する。また、車両の前後加速度が発生し、車両の搭乗者は振動を感じる。
これに対し、直結クラッチ65がOFFからONに切り替えられたタイミングt1で、電動発電機32が駆動側に制御されることにより、車軸の回転変動による車速の低下が抑制される。また、車両の前後加速度が発生することはなく、車両の搭乗者が振動を感じることもない。電動発電機32の駆動側へのトルク増加は、例えば図示の如くクラッチ切替から所定時間実施される。
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
車両走行時においてコンプレッサ駆動状態の変化(ON/OFF切替)、又は直結クラッチ65の状態の変化(ON/OFF切替)に基づいて電動発電機32の駆動又は発電の状態を制御するようにしたため、車軸(デフ連結軸)の回転を一定に保持することが可能となる。故に、車両走行時における車軸の回転変動を抑制し、ひいてはドライバビリティを良好に保つことができる。
また本実施の形態の車両システムとして、車両減速等に伴う回生時において、後輪側のデフ連結軸34からの動力が動力分配装置31を介して電動発電機32に伝達されるため、回生エネルギを効率良く回収できる。エンジンに連結したトランスミッションを介して回生エネルギを回収する通常一般のシステムと比して望ましい構成であると言える。また、エンジン14を搭載した車両フロント側とは異なり、車両リア側に電動発電機32とコンプレッサ33を設けたため、エンジン14の周辺構成が簡素化できる。それ故、動力源や補機装置の搭載性が向上する。
デフ連結軸34、MG連結軸35及びコンプレッサ連結軸36を遊星ギア装置よりなる動力分配装置31を用いて機械的に連結したため、これら各要素間の動力分配が簡易に実現できる。故に、システム構成の簡潔化を図ることができる。
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
上記実施の形態では、直結クラッチ65のON/OFF切替などが行われるモード遷移時において電動発電機32の駆動トルク(又は発電トルク)の増減をモード遷移から所定時間だけ実施する構成としたが(図11参照)、これを変更する。例えば、モード遷移に伴い電動発電機32の駆動トルク(又は発電トルク)の増減が行われた後、その増減した駆動トルク(又は発電トルク)を、徐々に(段階的に)元のトルク値に戻すようにしても良い。
上記実施の形態では、図2に示したとおり動力分配装置(遊星ギア装置)31のサンギア61にデフ連結軸34(車輪連結軸)を、リングギア62にコンプレッサ連結軸36を、キャリア64にMG連結軸35をそれぞれ接続したが、その接続の組み合わせを変更しても良い。つまり、サンギア61、リングギア62、キャリア64に対して、任意の組み合わせで車輪連結軸、コンプレッサ連結軸、MG連結軸をそれぞれ接続することが可能である。
上記実施の形態の車両10では、前輪を主駆動輪、後輪を副駆動輪としたが、その前後を逆にしても良い。例えば主動力源たるエンジンを後輪側に設け、副動力源たる電動発電機を前輪側に設ける構成としても良い。
上記実施の形態では、車両が主にエンジン動力により走行する構成としたため、エンジンを主動力源、電動発電機を副動力源としたが、これに限られるものではない。車両の主動力源を電動発電機、副動力源をエンジンとすることも可能である。
本発明が適用可能な車両システムには以下のものが含まれる。
(イ)エンジンを動力源として備える第1の動力発生手段と、電動発電機を動力源として備える第2の動力発生手段とを、車両の前後車輪の同一側に設けた車両システム。
(ロ)動力源としてのエンジンを具備せず、電動発電機を動力源として備える動力発生手段を車両の前後車輪のいずれか一方、又は両方に設けた車両システム(なおこれは、ハイブリッド車両以外に、電気自動車への適用が可能であることを意味する)。
(イ)エンジンを動力源として備える第1の動力発生手段と、電動発電機を動力源として備える第2の動力発生手段とを、車両の前後車輪の同一側に設けた車両システム。
(ロ)動力源としてのエンジンを具備せず、電動発電機を動力源として備える動力発生手段を車両の前後車輪のいずれか一方、又は両方に設けた車両システム(なおこれは、ハイブリッド車両以外に、電気自動車への適用が可能であることを意味する)。
上記いずれにおいても、車輪連結軸に、電動発電機と空調用のコンプレッサとを動力分配装置(遊星ギア装置)を介して機械的に連結する構成とする。そして更に、上記のとおり車両走行時においてコンプレッサ駆動状態の変化(ON/OFF切替)、又は直結クラッチ65の状態の変化(ON/OFF切替)に基づいて電動発電機32の駆動又は発電の状態を制御する。これにより、車軸(デフ連結軸)の回転を一定に保持することが可能となり、車両走行時における車軸の回転変動を抑制し、ひいてはドライバビリティを良好に保つことができる。
補機装置としては、前述した空調用のコンプレッサに限られず、例えばパワーステアリング装置の油圧ポンプを補機装置として使用することも可能である。この場合、動力分配装置の補機装置軸(例えば遊星ギア装置のリングギア軸)にパワステ用油圧ポンプが連結される。
10…車両、11,12…前輪、14…動力源としてのエンジン、17…発電機としてのオルタネータ、21,22…後輪、25…ディファレンシャルギア、31…動力分配装置、32…動力源としての電動発電機、33…補機装置としてのコンプレッサ、34…デフ連結軸、35…MG連結軸、36…コンプレッサ連結軸、38…電力変換手段としての電力変換ユニット、43…蓄電手段としての高電圧バッテリ、51…エンジンECU、52…ハイブリッドECU、61…サンギア、62…リングギア、64…キャリア、65…直結クラッチ、D1…第1の動力発生手段としての主動力ブロック、D2…第2の動力発生手段としての副動力ブロック。
Claims (9)
- 車両の前後車輪の一方に設けられ、動力源としての内燃機関、及び該内燃機関の出力軸の回転により発電する発電機を有する第1の動力発生手段と、
前記前後車輪の他方に設けられ、動力源としての電動発電機、補機装置、動力分配装置、及び前記電動発電機に電気的に接続され直交電力変換を行う電力変換手段を有する第2の動力発生手段と、
前記発電機及び前記電動発電機により発生した電力を蓄電する蓄電手段と、を備え、
前記第2の動力発生手段を設けた車輪側において車輪回転を伝達する車輪連結軸に、前記した電動発電機と補機装置とを動力分配装置を介して機械的に連結するとともに、車輪連結軸、電動発電機軸及び補機装置軸のうちいずれか2つを連結又は遮断の状態に切り替える切替手段を設けた車両に適用され、
車両走行時において前記補機装置の作動状態の変化、又は前記切替手段の連結/遮断の状態の変化に基づいて前記電動発電機の駆動又は発電の状態を制御する制御手段を備えたことを特徴とする車両の駆動制御装置。 - 動力源としての電動発電機、補機装置、動力分配装置、及び前記電動発電機に電気的に接続され直交電力変換を行う電力変換手段を有する動力発生手段と、
前記電動発電機により発生した電力を蓄電する蓄電手段と、を備え、
車輪回転を伝達する車輪連結軸に、前記した電動発電機と補機装置とを動力分配装置を介して機械的に連結するとともに、車輪連結軸、電動発電機軸及び補機装置軸のうちいずれか2つを連結又は遮断の状態に切り替える切替手段を設けた車両に適用され、
車両走行時において前記補機装置の作動状態の変化、又は前記切替手段の連結/遮断の状態の変化に基づいて前記電動発電機の駆動又は発電の状態を制御する制御手段を備えたことを特徴とする車両の駆動制御装置。 - 前記制御手段は、前記補機装置又は前記切替手段の状態変化時における補機装置軸の回転変化の方向に合わせて前記電動発電機の駆動又は発電の状態を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の駆動制御装置。
- 前記制御手段は、車両走行時において前記補機装置が非作動状態から作動状態に変化した時、又は前記切替手段が遮断状態から連結状態に変化した時、前記電動発電機を駆動側に制御し、逆に前記補機装置が作動状態から非作動状態に変化した時、又は前記切替手段が連結状態から遮断状態に変化した時、前記電動発電機を発電側に制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の駆動制御装置。
- 前記制御手段は、前記補機装置又は前記切替手段の状態変化に際しその変化前における前記電動発電機の実動力を算出する手段と、同変化後における前記電動発電機の目標動力を算出する手段と、前記算出した実動力と目標動力とから前記電動発電機を制御するための制御指令値を算出する手段とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両の駆動制御装置。
- 前記補機装置として空調用のコンプレッサを備え、
都度のコンプレッサ回転速度とコンプレッサ特性とに基づいてコンプレッサ動力を算出するとともに、該コンプレッサ動力に基づいて前記電動発電機の目標動力を算出することを特徴とする請求項5に記載の車両の駆動制御装置。 - 車輪連結軸と補機装置軸とを連結又は遮断の状態に切り替えるようにして前記切替手段を設け、該切替手段を、車両の走行停止中に遮断状態とし、他では要求に応じて連結状態とすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の車両の駆動制御装置。
- 前記動力分配装置として、遊星ギア装置を用いたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の車両の駆動制御装置。
- 前記遊星ギア装置を構成するリングギア、サンギア、キャリアにそれぞれ組み合わせて車輪連結軸、電動発電機軸、補機装置軸を接続したことを特徴とする請求項8に記載の車両制御装置。
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