しかしながら、上述の先行技術においては、いずれも次のような問題点を有していた。
例えば、特許文献1に開示された先行技術においては、各ビームを遅延させるためにカウンタ回路を用いているので、回路規模が大きくなりコストが増大するという問題を有していた。
また、特許文献2に開示された先行技術では、各ビームの位置を合わせるために、クロック信号の位相を制御しているが、このため、D/A変換回路やVCO(電圧制御発信器)が必要となり、同様に回路規模が大きくなりコストが増大するという問題を有していた。また、このようなアナログ回路を使用した場合には、電源電圧の変動や、ノイズによる影響を受けやすいという問題も有していた。
さらに、特許文献3に開示された先行技術においては、各ビーム間の1クロック以内の位置合わせを行うものであり、例えば、数十クロック単位の大まかな補正を行う場合には、不適であるという問題を有していた。
また、特許文献4に開示された先行技術では、各ビームを遅延させるためにカウンタ回路を用いているので、回路規模が大きくなりコストが増大するという問題を有していた。
ところで、近年の画像形成の高解像度化や高速化といった要請に基づき、画像処理装置においては、特許文献5に開示されたようなM×N構造を持ちマルチビーム出力が可能な素子であるVCSEL素子が用いられてきている。そして、このようなVCSEL素子を用いて感光体へ書き込みを行なう画像処理装置では、特許文献1〜4に開示された、通常のシングルビームやデュアルビームを用いて書き込みを行なう画像処理装置と比較して、VCSEL素子の機械的な取り付け精度の良し悪しにより画質への影響度合いが大きく、その取り付け精度がよりシビアとなっている。
これに対して、特許文献5に開示された先行技術においては、M×N構造のVCSEL素子のN列ある発光素子列に関して、1列ごとに一まとめにしてギャップを補正しているため、例えば、VCSEL素子自体が斜めに傾いて取り付けられてしまった場合や、発光素子等の光学系の機差や、組み立て誤差等により、副走査方向の縦線がずれて歪んだ直線になったり、M×Nライン間隔で隙間ができて白筋が生じるといった画質欠陥が発生するといった問題を生じていた。
そこで、本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みて、複数の発光素子を有しマルチビーム出力が可能な面発光レーザを用いて感光体への書き込みを行う画像処理装置において、発光素子ごとに書き込み開始位置の補正を行うことができる画像処理装置を簡易な構成で安価に提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、複数の発光素子を有し主走査方向及び副走査方向にマルチビーム出力が可能な面発光レーザにより感光体へ書き込みを行う書き込み手段と、副走査方向に配設された複数の発光素子列に対して、主走査方向の共通の書き込みズレ量を列単位で補正する列補正手段と、該列補正手段による補正後、個別の発光素子ごとに主走査方向の書き込みズレ量を補正する個別補正手段とを備え、前記列補正手段と個別補正手段とにより、前記複数の発光素子ごとに主走査方向の書き込み開始位置の補正を行うことを特徴とするものである。
このように構成した本発明の画像処理装置は、面発光レーザにより感光体へ書き込みを行う書き込み手段と、主走査方向の共通の書き込みズレ量を列単位で補正する列補正手段と、該列補正手段による補正後、発光素子列内の個別の発光素子ごとに主走査方向の書き込みズレ量を補正する個別補正手段とを備え、列補正手段と個別補正手段とにより、複数の発光素子ごとに主走査方向の書き込み開始位置の補正を行うので、列補正手段により、発光素子列単位で大まかな共通のズレ量の補正を行い、その後、個別補正手段により、発光素子ごとの微細なズレ量の補正を行うことにより、回路構成の最適化・簡素化が可能となると共に、全発光素子に対して微細な補正を行うことができる画像処理装置を簡易な構成で安価に実現することができる。これにより、例えば、面発光レーザの取り付け誤差や、各発光素子の組み立て誤差、製作誤差が発生した場合でも、光学系の機差等の装置ごとの影響を排除し、適切な書き込み開始位置の補正を行うことができる。
また、前記列補正手段は、前記発光素子列を構成する各発光素子のそれぞれの総書き込みズレ量の内、最小値を共通の書き込みズレ量として補正すると共に、前記個別補正手段は、それぞれの発光素子の残余の書き込みズレ量を補正してもよい。
ここで、残余の書き込みズレ量とは、個別の発光素子の総書き込みズレ量から、列方向の共通の書き込みズレ量を差し引いた残余の書き込みズレ量をいうものとする。
このように構成した場合には、発光素子列を構成する各発光素子のそれぞれの総書き込みズレ量の最小値を共通のズレ量として列補正手段により補正すると共に、各発光素子に応じた残余のズレ量を個別補正手段により補正するので、補正手段の構成を簡素化・最適化して、コンパクト化、コストダウンに寄与することができる画像処理装置を実現することができる。
また、前記列補正手段は、画像クロックに基づいて、FIFOメモリによりクロック遅延を発生させることにより列単位の書き込みズレ量を補正すると共に、前記個別補正手段は、前記画像クロックと位相の異なるクロック又は前記画像クロックを逓倍したクロックに基づいて、フリップフロップメモリによりクロック遅延を発生させることにより残余の書き込みズレ量を補正してもよい。
一般に、列補正量に関しては、発光素子の物理的配置等により画像クロックで数十クロック単位の遅延となり、一方、残余の個別補正量に関しては、より細かいクロックにより数クロック単位で補正することが望ましい。
そこで、このように構成した場合には、大まかな補正量(遅延量)に関しては、画像クロックを流用してFIFOメモリにより列遅延量を発生させ、微細な補正量(遅延量)に関しては、画像クロックに対して位相がずれたクロック又は画像クロックに対して逓倍した(高周波な)クロックを用いてフリップフロップメモリにより残余の発光素子ごとの遅延量を発生させるので、各発光素子に対して最終的に精度の高い微細な書き込み補正を実現すると共に、遅延量に応じた適正なメモリを採択して、全体的な回路規模を適正化し、回路構成の簡素化、コンパクト化、コストダウンにより一層寄与することが可能となる。
さらに、前記発光素子ごとの書き込みズレ量に対応した遅延量を設定格納する設定記憶手段を備え、該設定記憶手段には、前記列単位の遅延量及び残余の遅延量が格納されていてもよい。
さらにまた、前記書き込み手段は、画像処理装置本体と取り外し可能に形成されていると共に、前記設定記憶手段は、該書き込み手段に備えられていてもよい。
このように構成した場合には、書き込み手段が、画像処理装置本体と取り外し可能に形成されていると共に、設定記憶手段が、該書き込み手段に備えられているので、書き込み手段を取り外して治具等で調整した際に、調整結果に基づく補正量を記憶手段に直接格納することができ、書き込み手段の調整の自由度が増大すると共に、調整結果に基づいた適正な補正データを書き込み手段ごとに格納保持することができる。
本発明によれば、複数の発光素子を有しマルチビーム出力が可能な面発光レーザを用いて感光体への書き込みを行う画像処理装置において、発光素子ごとに書き込み位置の補正を行い、例えば、面発光レーザの取り付け誤差や、光学系の機差、組み立て誤差等の影響を排除し、副走査方向の直線の歪みや、ライン間の白筋の発生といった画像欠陥を防止する画像処理装置を簡易な構成で安価に実現することができる。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
まず、本発明に係る現像装置を含む画像処理装置の概略構成について、図1を参照して説明する。
図1に示されるように、本発明に係る画像処理装置10は、一様帯電後に像光を照射することにより表面に静電電位の差による潜像が形成される静電潜像担持体である感光体ドラム21を備えており、この周囲に、感光体ドラム21の表面を一様に帯電させる帯電装置22と、感光体ドラム21に像光を照射して表面に潜像を形成する書き込み手段である露光装置23と、感光体ドラム21上の潜像にトナーを選択的に転移させてトナー像を形成する現像装置24と、感光体ドラム21と対向し、被記録媒体28を挟んで感光体ドラム21との間に転写バイアス電界を生成する転写ロール26と、トナー像の転写後に感光体ドラム21に残留するトナーを除去するクリーニング装置29とを備えている。そして、感光体ドラム21と転写ロール26との対向部(ニップ部)の上流側から被記録媒体28を供給するようになっており、下流側には被記録媒体28上に転写された未定着トナー像を加熱溶融し被記録媒体28に圧着する定着装置50が設けられている。ここで、感光体ドラム21は、矢印方向に回転する金属製ドラムの表面に有機感光材料、アモルファスセレン系感光材料、アモルファスシリコン系感光材料等からなる感光体層を形成したものを用いることができる。また、帯電装置22は、例えば、タングステンなどからなる細いワイヤーに高電圧を印加すると共にそれと離間したアルミなどからなるシールド及び感光体ドラム21側に隙間のあるグリッド電極を配置したスコロトロンを用いることができる。
本実施の形態において、書き込み手段である露光装置23は、画像信号に基づいて露光光を発生し、これにより感光体ドラム21の表面に静電潜像を形成する。この静電潜像は、例えば、光の当たった部分の感光体ドラム21の表面電位が低下し、光の当たっていない高電位部分とのコントラストによる電位画像として形成される。また、現像装置24は、ハウジング24a内に着色粒子であるトナー及び磁性キャリアからなる二成分現像剤を収容し、現像剤担持体24bに二成分現像剤を担持させ、この現像剤担持体24bにバイアス電源25からの現像バイアスを印加することで、現像剤担持体24bを静電潜像の高電位部と低電位部との中間電位に保持し、静電潜像の画像部を帯電されたトナーにて現像するようにしたものである。さらに、転写装置26は、例えば感光体ドラム21に接触配置される転写ロールにて構成され、バイアス電源27によって感光体ドラム21上のトナー像が引き付けられる方向の転写バイアスが印加されることで、感光体ドラム21上のトナー像を被記録媒体28に転与させるようにしたものである。また、感光体ドラム21上に残留したトナーは、例えばドクターブレード式のクリーニング装置29によって除去される。さらに、定着装置50は、例えばヒートロール方式であり、加熱ロール51と加圧ロール52とを有し、この加熱ロール51と加庄ロール52との間に被記録媒体28を通過させることによりトナー像を被記録媒体28に定着するようになっている。
なお、本実施の形態においては、感光体ドラム21から直接被記録媒体28へ画像形成を行なう画像処理装置10を例示したが、本発明は、このような構成の画像処理装置に限定されるものではなく、例えば、各色(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)画像を、従来公知の中間転写ベルトに形成し、この中間転写ベルトに形成された各色画像を被記録媒体28に転写する、いわゆる中間転写方式の画像処理装置においても当然に適用可能である。
次に、本発明に係る書き込み手段である露光装置23の構成について、図2を参照して説明する。
図2に示されるように、本実施の形態に係る露光装置23は、略正規分布の光ビームを複数発光するレーザ光源210と、このレーザ光源210から射出した光ビームを略平行光とするコリメータレンズ220と、光ビーム整形用のスリット221と、入射した光ビームを回転多面鏡240の偏向面近傍に副走査方向に収束させるシリンドリカルレンズ222とを備えている。
本実施の形態において、レーザ光源210は、複数の光ビームを射出するために、主走査方向及び副走査方向に二次元配列された光源を有する面発光レーザ(VCSEL素子)を採用している。
また、シリンドリカルレンズ222の光ビーム射出側には、光ビームを所定比率で反射するハーフミラー230が配置されている。ハーフミラー230の反射面の裏面は、主走査方向のみに曲率を持つシリンドリカルレンズ形状となっており、ハーフミラー230を透過した光ビームは、主走査方向はハーフミラー裏面のシリンドリカル面により、副走査方向はシリンドリカルレンズ222により、検出器231上に光スポットとして集光される。ハーフミラー230の反射側には、複数の同一面幅の偏向面(鏡面)を側面部に有する例えば正多角形状をなすと共に、中心軸の回りに図示しない駆動手段により矢印方向に等角速度で回転する回転多面鏡240が配置されている。
そして、回転多面鏡240近傍には、二枚組のレンズからなる走査光学系としてのfθレンズ250が配置されている。fθレンズ250は、回転多面鏡240により反射偏向された光ビームを感光体ドラム21上に光スポットとして主走査方向に結像させると共に、該光スポットを感光体ドラム21上で主走査方向に略等速度で移動させる機能を有する。
fθレンズ250を透過した光ビームは、第1のシリンドリカルミラー252と平面ミラー254とによって光路がコの字状に曲げられ、さらに第2のシリンドリカルミラー256で反射された後、ウインドウ260を透過して下部に配置された感光体ドラム21上に照射される。
本実施の形態において、感光体ドラム21は、光ビームに感応する感光材料がその表面に塗布された細長い円柱状の形状を有しており、主走査方向が、この感光体ドラム21の長手方向に一致するように配置されている。すなわち、回転多面鏡240の回転方向と共に感光体ドラム21上に収束された光スポットは、主走査方向に沿って感光体ドラム21上を移動し、走査線での画像記録が可能となる。また、感光体ドラム21は、その回転軸を中心として図示しない駆動手段によりー定の回転速度で回転し、感光体ドラム21上での走査線を副走査方向に順次移動させる。
一方、走査による画像記録が行われる書き込み位置を設定するために、平面ミラー254により反射された光路上で画像形成に該当する走査範囲外に設置された位置に、光ビームの一部を折り返す平面ミラー290、副走査方向にビームを結像させるシリンドリカルレンズ291、及び同期センサ292が配置されている。そして、不図示のコントローラにより、レーザ光源210の光ビーム出力が、画像情報に基づいて変調制御されるようになっている。具体的には、同期センサ292の出力信号(SOS信号:Start of Scan信号)を基準として所定のタイミングで画像信号(video信号)を出力し、レーザ光源210の各発光素子に対し、時分割で光量制御を開始し、検出器231で受光した光ビームが所定の光量となるように、レーザ光源210により画像信号を光ビームとして出力する。
また、本実施の形態では、レーザ光源210として、縦横8×4の複数の発光素子が2次元配列された面発光レーザを採用し、1列8個の発光素子を4列に配列して、列ごとに同時点灯するようになっている。
ここで、本発明に係る面発光レーザ(VCSEL)の構成について、図3を参照して説明する。
図3に示されるように、本実施の形態におけるレーザ光源210は、8行4列の二次元配列構造を有する面発光レーザであり、主走査方向に4個及び副走査方向に8個の発光素子が配設されている。そして、各発光素子列C0〜C3を構成する各発光素子(L0〜L28,L1〜L29,L2〜L30,L3〜L31)は、互いに主走査方向に重ならないように、副走査方向に僅かずつ互いにずらして配設されている。
このようなVCSEL素子をレーザ光源210として用いることにより、1回の主走査により複数本の主走査ラインを形成することができ、ポリゴンミラー(回転多面鏡240)の回転数の低減や、画像の高解像度化及び高速形成が可能となる。
ところで、レーザ光源210として、このような二次元配列のVCSEL素子を用い、VCSEL素子を構成する全ての発光素子L0〜L31を同時に点灯させた場合には、書き込み開始位置が発光素子列C0〜C3ごとにずれてしまう。
また、このようなVCSEL素子においては、機械的な取り付け精度の画質への影響度合いが大きく、例えば、VCSEL素子を主走査方向に傾いた状態で取り付けてしまった場合や、各発光素子L0〜L31の取り付け精度にバラツキがある場合等には、副走査方向の縦線が歪んだ直線になったり、主走査方向の複数のライン間で隙間ができてしまって白筋のような画質欠陥が生じてしまう。
そこで、本発明に係る画像処理装置10においては、面発光レーザ(VCSEL)を構成する発光素子L0〜L31に対して、発光素子列C0〜C3単位で書き込み位置の補正を行う列補正手段と、列補正手段により補正した後、発光素子L0〜L31ごとに補正を行う個別補正手段とを設け、これら列補正手段と個別補正手段とにより、発光素子L0〜L31ごとに書き込み開始位置の補正を行い、上述のような直線の歪みや、白筋の発生といった画像欠陥を防止するようになっている。
次に、このような本発明に係る補正手段の構成及び動作概要について、図4〜図6を参照して説明する。
まず、本画像処理装置10は、図4に示されるように、所定の補正量が書き込み遅延量として設定記憶された設定記憶手段Mを備え、設定記憶手段Mの所定のアドレスに格納された各発光素子L0〜L31に対応する各遅延量は、CPUによって読み出された後、各遅延量を保持するレジスタRの所定のアドレスに書き込まれる。なお、本実施の形態において、所定の遅延量は、発光素子列C0〜C3単位の補正量である列遅延量c0〜c3と、各発光素子L0〜L31に対応したビーム単位(発光素子単位)の補正量であるビーム遅延量d0〜d31として、設定記憶手段Mに格納されている。また、レジスタRの出力は、補正手段を構成する遅延回路に接続されている。
ここで、所定の遅延量を設定する際には、サンプル画像を形成して発光素子ごとの書き込みズレ量を計測して、手動により設定記憶手段Mに設定してもよいし、従来公知の位置ズレセンサの検出結果に基づき、CPUを介して設定記憶手段Mに設定するように構成してもよい。
また、この設定記憶手段Mは、例えば、装置本体と取り外し可能に構成された書き込み手段(露光装置23)側又は装置本体側のいずれに設けてもよいし、両者に設けて、露光装置の交換・保守等によって、変更された発光素子ごとの遅延量を適宜CPUで読み込むように構成してもよい。
次に、遅延回路は、図5に示されるように、列補正手段を構成する列遅延回路D11〜D14と、この列遅延回路D11〜D14の後段に接続された個別補正手段を構成する個別遅延回路D21〜D24とを備えている。そして、列遅延回路D11〜D14は、FIFOメモリで形成されていると共に、個別遅延回路D21〜D24は、フリップフロップ(以下、FFとも称する)メモリで形成されている。
また、列遅延量c0〜c3は、それぞれ列遅延回路D11〜D14に入力されると共に、ビーム遅延量d0〜d31は、それぞれ個別遅延回路D21〜D24に入力されるようになっている。
さらに、列遅延回路D11〜D14の基準クロックには、画像クロック(例えば、50MHz程度)を流用し、個別遅延回路D21〜D24の基準クロックには、画像クロックと位相の異なるクロック又は画像クロックを逓倍した、より高周波なクロック(例えば、80MHz程度)を用いている。
そして、各発光素子L0〜L31に対応した画像信号は、まず、列遅延回路D11〜D14において、画像クロックに基づき、列遅延量c0〜c3に応じたクロック遅延が生成され、所定の遅延時間(数十クロック程度)経過後、後段の個別遅延回路D21〜D24に出力される。
さらに、個別遅延回路D21〜D24において、画像クロックと位相の異なるクロック又は画像クロックを逓倍したクロックに基づき、ビーム遅延量d0〜d31に応じたクロック遅延が生成され、所定の遅延時間(数クロック程度)経過後、各発光素子L0〜L31から画像信号としてビーム出力され、発光素子L0〜L31ごとに微細な書き込み開始位置の補正が行われるようになっている。
次に、個別補正手段を構成する個別遅延回路D21〜D24の詳細な構成について、図6を参照してさらに説明する。
この個別遅延回路D21〜D24は発光素子L0〜L31ごとに形成されており、図6に示されるように、例えば、セレクタS1〜S3を介して直列に接続された複数のFF素子群(FF1,FF2,FF4)から構成されている。具体的な動作としては、まず、発光素子ごとの画像データ(画像信号)は、1個のFF素子から構成された遅延回路FF1(1クロック遅延)を介して、又は、遅延回路FF1をバイパスしてセレクタS1に入力され、セレクタS1の出力は、2個のFF素子から構成された遅延回路FF2(2クロック遅延)を介して、又は、遅延回路FF2をバイパスしてセレクタS2に入力される。さらに、セレクタS2の出力は、4個のFF素子から構成された遅延回路FF4(4クロック遅延)を介して、又は、遅延回路FF4をバイパスしてセレクタS3に入力され、セレクタS3の出力が発光素子に応じたビーム出力となるように形成されている。すなわち、設定記憶手段Mのデータに基づいたセレクタS1〜S3の選択動作により、所定のビーム遅延量d0〜d31が生成されるようになっている。例えば、3クロック遅延を実現する場合には、セレクタS1及びS2により、FF1,FF2が選択され、セレクタS3によりFF4がバイパスされることにより、3クロック遅延が生成される。
なお、本実施の形態では、既に、大まかな遅延量(数十クロック単位)を列遅延回路D11〜D14で補正しているので、個別遅延回路D21〜D24によるビーム遅延量としては、0〜7クロックの遅延量で十分となるため、FF1,FF2,FF4の3段構成(3ビット構成)でビーム遅延量を生成しているが、遅延量の設定余裕をさらに設けるために、当然に、4段構成、5段構成等にしてもよい。
次に、このように構成した補正手段による画像データの出力タイミングについて、図7を参照して説明する。
図7(a)に示されるように、画像データVDは、主走査方向最下流側に配設された発光素子列C0を基準として隣接する発光素子列C1〜C3ごとに、列遅延回路D11〜D14により、所定の列遅延量c1〜c3による列単位(VD(0)〜VD(3))の遅延補正が行われる。なお、主走査方向最下流側に配設された発光素子列C0の列遅延量c0は、例えば、書き込み手段の主走査方向が図3とは逆となるような場合等に発生する列遅延量である。
ここで、画像データVDの所定の列遅延量c0〜c3は、VCSELの各発光素子の列方向(副走査方向)の物理的配置により定めてもよいし、サンプル画像を形成して、発光素子列ごとの総書き込みズレ量を測定し、この総書き込みズレ量に対応する遅延量の列方向ごとの最小値を列遅延量c0〜c3としてもよい。
なお、遅延量(補正量)が任意に設定可能なFIFOメモリにて大まかな遅延量を設定し、その後、微細な遅延量をFFメモリにて設定することにより、回路規模の最適化を図るという観点からは、FFメモリによる遅延量を最小化するために、発光素子列C0〜C3ごとの総遅延量の最小値を列遅延量c0〜c3として設定することが好ましい。
次に、列遅延回路D11〜D14にて、列単位で遅延補正された画像データVD(0)〜VD(3)は、図7(b)に示されるように、発光素子ごと(ビームごと)のビーム遅延量d0〜d31に基づき、個別遅延回路D21〜D24により遅延補正される。
図7(b)では、3列目の発光素子列C3の画像データVD(3)の発光素子単位でのビーム遅延が例示されており、3列目の発光素子の総遅延量の最小値であるビーム8(発光素子L8)の総遅延量をFIFOメモリによる列遅延量c3として設定し、残余の遅延量をFFメモリによるビーム遅延量として設定している。なお、この場合の3列目の発光素子の総遅延量の最小値は、画像クロック単位で実現可能な遅延量の最小値であり、端数が生じる場合には、この端数を除いた値として設定されている。
これにより、画像データの出力、すなわち、個々の発光素子L0〜L31の書き込み開始位置を個別に補正することが可能となり、VCSEL自体が傾いて取り付けられた場合や、個々の発光素子L0〜L31に取り付け誤差が生じている場合でも、発光素子(ビーム単位)ごとの補正が可能となるので、形成画像のズレ・歪みや白筋の発生といった画像欠陥を簡易な構成で防止することができる。
また、遅延回路D21〜D24に関しては、より詳細な補正を行うために、画像クロックを逓倍したクロックを基準クロックとして用いたが、例えば、位相のずれた複数のクロックを任意に選択できる選択手段を遅延回路D21〜D24の前段に設け、所定の遅延量を実現するために最も好適なクロックを、この選択手段により複数のクロックから選択して基準クロックとして用いるように構成してもよい。
以上のように構成された本発明に係る補正手段においては、大まかな補正(遅延)を列遅延回路D11〜D14により発光素子列C0〜C3単位で行った後、個別遅延回路D21〜D24により個別の発光素子L0〜L31ごとに微細な補正(遅延)を行うので、VCSEL素子が例えば、傾斜して取り付けられた場合や、各発光素子に取り付け誤差や、製作誤差が生じている場合でも、光学系の機差等の装置ごとの影響を排除し、発光素子単位の書き込み開始位置の精度の高い適正な補正を簡易な構成で実現することができる。
また、大まかな補正(数十クロック単位の遅延量)をFIFOメモリで行い、微細な補正(数クロック単位の遅延量)をFFメモリで行うことにより、用途に応じたメモリの最適な活用を図ると共に、メモリ利用の効率化が図れて、回路規模の最適化・簡素化、コストダウンに寄与することができる。
10:画像処理装置、21:感光体ドラム、22:帯電装置、23:露光装置、24:現像装置、24a:ハウジング、24b:現像剤担持体、25:バイアス電源、26:転写ロール、27:バイアス電源、28:被記録媒体、29:クリーニング装置、50:定着装置、51:加熱ロール、52:加圧ロール、210:レーザ光源、220:コリメータレンズ、221:スリット、222:シリンドリカルレンズ、230:ハーフミラー、231:検出器、240:回転多面鏡、250:レンズ、252:シリンドリカルミラー、254:平面ミラー、256:シリンドリカルミラー、260:ウインドウ、290:平面ミラー、291:シリンドリカルレンズ、292:同期センサ、C0-C3:発光素子列、c0-c3:列遅延量、d0-d31:ビーム遅延量、D11-D14:列遅延回路、D21-D24:個別遅延回路、L0-L31:発光素子、S1-S3:セレクタ