JP2006324243A - 電源供給及び/または信号伝送用のハンドリングケーブル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱軟可塑性ポリウレタン樹脂と、少なくとも二つのイソシアネート基を有する網目状化試剤とよりなる配合物により、自動的に網目状化(レティキュレーション)に形成された、少なくとも一つのシース(被覆)を有することを特徴とするハンドリングケーブルを提供する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、好ましくは、コイル状のケーブル分野に利用される。
コイル状(コイラーズ)とは、その名前が指し示すように、該ケーブルがそれぞれ接続されている機器の移動に伴って、巻き上げられたり巻き戻されたりする形状に作られているものをいう。
上記カテゴリ−に属するハンドリングケーブル、他の用語でいう、フレキシブルケーブルは、該機器が移動しようとする点(一定の移動量を伝えるポイント)に柔軟性をもって追従する。
該ケーブルは、電力の供給、及び/または、信号(発生源が電気または光の何れであろうとも)の伝送機能を確実にするために、通常は、複数の導体(マルチコンダクター)で構成される。
もちろん、該シースを構成する物質は、ケーブルが使用される最終条件に耐える熱的機械的(サーモメカニカル)特性を有していなければならない。
前記モバイル機器がいかに動こうとも、それと共に、付随しているケーブルが効率よく随行する柔軟性が必要である。
ケーブルの柔軟性を維持するためには、第一に、シース(被覆)物質が十分な柔軟性(フレキシビリティ)を持たなければならない。
一つまたは、それ以上のコイラーを組み合わせて使用するより特殊な場合には、ハンドリングケーブルの巻き上げ、巻き戻しを確実にすることが、特に重要である。
上記は、前記ケーブルがガイドフィール又は他のリターンプーリーの周りに、一定に巻き上げられ、あるいは巻き戻されようとする瞬間に、まさに問題となる。
前記シース物質は、最終的には、ハンドリングケーブルが接続されているモバイル機器の作動中、該ケーブルが必然的に受けざるを得ない強い牽引力に耐え得る、非常に良い、機械的特性を備えていなければならない。
コイル状ケーブルの場合、特に、このような特性が必須なことは言うまでもない。
この熱硬化性物質は、通常の使用条件下では、実際、非常に優れた熱変形特性と、良好なフレキシビリティを備えている。
それにも拘わらず、前記網目状化(レテキュレート)された合成ゴムは、ハンドリングケーブルの適用分野、例えば、より牽引力が働く状況下では、剥離その他の機械的現象に対する抵抗力が弱い、という明確な欠点があった。
また、前記物質は、生産コストも極めて高いことも欠点である。
種々の公知の硫化技術は、実際は、コスト面で好ましくなく、また産業上の柔軟性に欠け、大掛かりな装置を必要とする。
この熱可塑性樹脂は、例外的に剥離に強く、また牽引力とフレキシビリティの両方の見地から優れた機械的特性を持つという、長所が知られている。
しかし、この型の物質は、全て、熱降伏点(yielding hot)という欠点を持っている。すなわち、あるスレッシュホールド値より過度な温度や、機械的な圧迫がかけられた瞬間から、漸進的および不可逆な変形が起きるという欠点がある。
たとえば、電力供給用ハンドリングケーブルでは、通常100℃に達することは珍しくない。それはともかく、前記クリープの発生は、前記シース物質の機械的特性を著しく劣化させる原因となり、同時に、特性上の健全性が失われ、しいては、ハンドリングケーブルの寿命が尽きてしまうことになる。
さらに、機械的圧迫力下での温度抵抗性を、実質的に改良することにより、従来の欠点を取り除き、併せて、生産コストの安い、ハンドリングケーブルを提供することにある。
すなわち、本発明のハンドリングケーブルは、熱軟可塑性ポリウレタンと、少なくとも二つのイソシアネート基を有する網目状化(レティキュレーション)試剤とより構成される組成物の自動網目状化(オートレティキュレーション)作用により形成された少なくとも一つのシース(被覆)を有することを特徴としている。
すなわち、導体エレメントへの最初のコーティング、絶縁されたケーブルの上位層、数本の絶縁ケーブルを束ねて包む層など、様々な概念を含んでいる。
さらに、オートレティキュレーションという用語の意味は、簡易的に、シース物質の「網目状化」(ちりめんじわ)形成が、環境温度下で、さらには、後処理でなく、空気中の環境湿度下で、自動的に起きることをいう。
すなわち、前記シース物質は、熱可塑性樹脂の優れた耐剥離性、フレキシビリティ、耐摩耗性等を結合した利点を有し、さらに熱と機械的圧迫力下での網目状化(レティキュレート)物質の非常に優れた寸法的安定性を併せ持つという、特徴がある。
自動網目状化(オートレティキュレーション)のさらなる大きな特徴は、従来の高コストの硫化プロセスを省けるという点であり、このことにより、本発明の目的である、ハンドリングケーブルの販売価格を安くできるという顕著な効果が得られる。
表1
------------------------------------------------------------------
サンプル 熱可塑性ポリウレタン 網目状化試剤
------------------------------------------------------------------
1 Estane 58888Nat021 なし
2 Estane 58888Nat021 4pcr MDI
3 Estane 58888Nat021 6pcr MDI
4 Estane 58888Nat021 8pcr MDI
5 Estane 58888Nat021 4pcr t−IPDI
6 Estane 58888Nat021 8pcr t−IPDI
--------------------------------------------------------------------
実施例は、ハンドリングケーブルの製造に適している、熱可塑性ポリウレタン樹脂をベースとする6つのシース物質に関するものである。
サンプルとして、各々のパフォーマンスを比較する観点から、6つの異なった配合物が提供されている。
上記比較サンプルは、熱可塑性ポリウレタンという点では、6つのサンプルとも共通である。
すなわち、上記ポリウレタンは、Nveon社から、「Estane58888Nat021」という商品名で販売されているポリマーである。
以下に記す種々の表で述べられている「量」は、熱可塑性ポリウレタンの100パーツ/重量に対するパーツ/重量という伝統的な単位(PCR)で表現されていることに注意して貰いたい。
サンプル1は、熱可塑性ポリウレタンのみで構成されているが、これは極端なケースであることを最初に明記しておきたい。
換言すれば、サンプル1の網目状化(レティキュレーション)試剤の抵抗力はゼロである。
サンプル2〜4は、網目状化(レティキュレーション)試剤として、最近では略語でMDIと記述される、メタンジフェニールジイソシアネートが使われており、他のサンプルとは異なった結果が観察される。
サンプル5および6は、配合物に混ぜる網目状化(レティキュレーション)試剤として、通常t−IPDIという略語で識別されている、イソフェロンジイソシアネートのトリマー(3量体)が使われている点に特徴がある。
サンプル1は、排他的に熱可塑性ポリウレタン(網目状化は形成されない)から構成されているので、単純に成形され、所望の形に形成される。
サンプル2〜6は、網目状化(レティキュレーション)物質に対応している。
それらは、同じ実験方法、すなわち、ツリー上にグラフト共重合体が構成される方法、によって準備され、その後、成型される。
標準の熱可塑性ポリウレタンとイソシアネートタイプの網目状化試剤が、最初に、デュアルスクリューの押し出し機にフュードホッパーから導入され、次いで、200℃に近い温度で混合される。
熱可塑性ポリウレタンのグラフト重合された細粒は、乾燥され、その後6ヶ月以上、機密のコンテナに貯蔵される。
ここでは、先の工程でグラフト重合された熱可塑性ポリウレタンが、簡易型シングルスクリュー押し出し機で、略標準の熱可塑性ポリウレタンに成型される。
網目状化(レティキュレーション)が自動形成されるには、さらに、環境温度および環境湿度下で、4〜7日以上の日数を要する。
経時不溶解率の変化は、網目状化(リティキュレーション)反応の速度を示す良い指標である。
物質の網目状化が多ければ多いほど、上記不溶解率は100%近くまで向上していることが考察される。
サンプル2,4,5の具体例に見られるように、種々の熱可塑性ポリウレタンが比較された。
前記物質の網目状化過程での、一定時間毎の不溶解率を決定するために、一連の測定が、各々のサンプルについてなされた。
具体的には、考察される物質の1グラム(MI)を、100グラムのテトラハイドロフラン(THF)が含まれているエルレンマイヤーフラスコに入れ、それを、24時間以上、磁気振動により、67℃で還流する。
その後、前記フラスコの中身を、メッシュサイズ120μm×120μmの金属製グリルで熱ろ過する。
得られた固形残留物を、次いで、窯(キルン)に入れ、80℃で24時間乾燥し、その後、計量(M2)する。
パーセントで表される不溶解の割合は、量の割合(M2×100/M1)により計算される。結局、サンプル1の不溶解率はゼロである。
この比較サンプルは、非重合ポリマー組成物に対応しており、網目状化物質でないことを考慮すれば、これは全く論理的な帰結である。
上記は、特にテストされた物質の組成物中にある、網目状化試剤の性質と凝縮(コンセントレーション)の影響を明らかにしている。
先ず、第一に、MDI(サンプル2,4)では、完全な網目状化(レティキュレーション)が、7日間で得られることが明らかになった。
一方、t−IPDI(サンプル5)の場合は、3週間以上かかることが解った。
網目状化(レティキュレーテッド)にからむ網状ポリマー母材の量は、不溶解率に比例するが、網目状化試剤の凝縮を増大させ、MDI(サンプル4)の場合、95%以上に達することが明らかになった。
環境温度下で、サンプル1,3,4の機械的特性(破壊応力および伸張力)が測定された。
ショアA硬さは、各物質固有の摩擦係数と同様な方法で、該摩擦係数とともに、ISO8295基準に準じた方法で測定される。
本測定の目的は、2つの網目状化形成された(レティキュレーテド)熱可塑性ポリウレタン(サンプル3,4)と、単純な、非網目状形成(ノンレティキュレーション)熱可塑性ポリウレタン(サンプル1)とを比較することであるが、さらにまた、前記特性に対する、前記網目状化(レティキュレーション)試剤の凝縮の影響(インパクト)を評価するためでもある。
表2
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
サンプル1 サンプル2 サンプル3
破壊応力(MPa) 45.8 44.3 42.6
伸張力 (%) 455 368 341
Shore A硬度 88−89 90−91 89−90
静的摩擦係数 (ks) 1.74 1.13 0.93
動的摩擦係数 (ks) 1.50 1.05 0.84
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記機械特性の比較は、明らかに次のようなことを示している。
破壊応力は、網目状化後もある程度不変であるが、伸張力(ブレーキングエロンゲーション)は、前記シース物質の組成物により異なる。
すなわち、サンプル3(6pcrのMDIが結合されている)では19パーセント減少し、サンプル4(8pcrのMDIが結合されている)では25パーセント減少している。
このことは、網状ポリマーの結合が、網目状化(レティキュレーション)の間に発生することを具体的に示している。
静的および動的摩擦係数は、MDIが含まれている前記物質の組成物の影響で、サンプル3(6pcrのMDIが結合されている)では30%、サンプル4(8pcrのMDIが結合されている)では45%減少した。
最終的に、前記物質の硬度は、網目状化(レティキュレーション)後も不変のまま残ることが明らかになった。
特に、びびり現象の減衰は著しく、本出願人の興味ある分野で、大きな利益をもたらすことが期待できる。
ハンドリングケーブルの巻き上げおよび/又は、巻き戻しにより、保護シースの種々の箇所で、大量の摩擦が発生することが避けられないからである。
機械的拘束力と高温を同時にかけた場合の、サンプル1〜6の熱機械的(サーモメカニカル)特性を評価するために、新しい検査方法が導入された。
この方法は、ハンドリングケーブルが今後いろいろ使用される条件を想定して、行われる。
三種類のテストが実行された。すなわち、機械的拘束力の下でのホットクリープテスト、加速エージングテスト、恒久的な機械的拘束力の下での長期パフォーマンステストである。
「NF EN 60811−2−1スタンダード」が上記試験の測定方法を記述している。
対応するテストは通常、ホット セット テストにより行われる。
基本的に、拘束力0.2mpaに相当するアプリケーションの質量として、ダンベルH2が試験材の端に拘束底荷材として置かれる。前記負荷がかけられた全てのサンプルは、キルン内で15分間、温度差±1度で加熱される。
加熱後、機械的拘束力下での各サンプルの熱伸長率が、%表記で測定された。
懸垂されていた重りは取り除かれ、各サンプルは、キルン内で5分以上放置される。
前記物質の網目状化が増えれば増えるほど、伸張率は低くなり、前記残留値も低くなる。
さらに、機械的拘束力と高温の両方を結合した状況下で行われた試験中に、供試品が破壊した事実があったときは、試験結果が論理的に失敗であったと判断される。
表3
―――――――――――――――――――――――――――――
サンプル 最大ホットセットテスト温度(℃)
―――――――――――――――――――――――――――――
1 160
2 175
3 180
――――――――――――――――――――――――――――――
表3は、サンプル1,3,4の残留伸張力のみについての試験結果を示す。
結局、網目状化無しの熱可塑性ポリウレタンであるサンプル1のみが、最大ホットセット温度が160℃であるという結果を示した。
網目状化されている物質(サンプル3,4)では、著しく、熱機械的(サーモメカニカル)特性が向上している。
MDI型の網目状化試剤が含まれている物質の組成物では、最大ホットセット温度が、サンプル3(6pcrのMDIが結合されている)では175℃、サンプル4(8pcrのMDIが結合されている)では180℃までにも増加した。
このホットクリープテストは、ホットセットテストの原理を取り入れているが、サンプルは、120℃で15時間、加速エージングされる。
本試験の目的は、それぞれ、MDIおよびt−IPDIと呼ばれている2つの異なった網目状化試剤により、網目状に形成された熱可塑性ポリウレタン サンプル4,6の熱機械的特性を比較することにある。
表4
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
サンプル 4 6
------------------------------------------------------------------------
ホットセットテスト175℃ 拘束力下での伸張力(%) 20 10
-------------------------------------------
残留伸張力(%) 20 0
------------------------------------------------------------------------
ホットセットテスト200℃ 拘束力下での伸張力(%) 破壊 400
--------------------------------------------
残留伸張力(%) 破壊 115
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
つまり、先に述べた不溶解率の進展が非常に良く維持されている。
明らかに低い反応性にもかかわらず、t−IPDIはサンプル6が200℃でホットセット試験をパスしていることから、熱により加速エージングされている間、より効果的な網目状化が行われていることがわかる。
これは、ハンドリングケーブルに直接係る特殊な試験である。
一般に英語で「CREEP TEST」と表記される、テストが実行される。
このテストは不変の機械的拘束力下で、長期間に亘り、前記物質の熱クリープ特性を評価しようとするものである。
この試験を実行する上で特別な標準(スタンダード)はないが、その原理は、ホットセットテストと同一であり、試験条件が異なるだけである。
温度は80℃に設定し、考察される供試時間は、24時間とし、機械的拘束力の強度を各々、2、3、4MPaに設定する。
図2および3は、網目状化された熱可塑性ポリウレタンの寸法上の安定性が凝縮により、どれほど改良されたかを示している。
図3の対象である残留伸張力(パーマネントエロンゲーション)に関する特性と、図2に示す拘束力下の伸張力の特性とは、かなり違うということに着目してもらいたい。
Claims (4)
- 移動モバイル機器に付随する電源供給および/又は信号伝送用のハンドリングケーブルであって、
(1)熱可塑性ポリウレタン樹脂と、
(2)少なくとも二つのイソシアネート基を有する網目状化試剤と
から構成される組成物の自動網目状化作用により形成された、少なくとも一層のシースを有することを特徴とする、ハンドリングケーブル。 - 前記網目状化試剤を、メタンジフェニールジイソシアネート(MDI),イソフォロンジイソシアネート(IPDI),トルエンジイソシアネート(TDI),ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI),およびこれらの誘導体、またはこれらの組成物の組み合わせから成るグループの内から選択することを特徴とする、請求項1に記載するハンドリングケーブル。
- シース物質を形成する前記組成物の配合割合が、前記熱可塑性ポリウレタン100重量部に対し、前記網目状化試剤2〜20重量部であることを特徴とする、請求項1または2に記載するハンドリングケーブル。
- シース物質を形成する前記組成物の配合割合が、前記熱可塑性ポリウレタン100重量部に対し、前記網目状化試剤4〜10重量部であることを特徴とする、請求項1または2に記載するハンドリングケーブル。
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