JP2006321141A - 架橋親水膜、それを用いた平版印刷版原版及び平版印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 支持体上に、(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー、(b)架橋剤、及び、(c)該(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー及び/又は該(b)架橋剤と反応可能な官能基と、二重結合性基とを有する化合物とを含有する組成物を熱又は光により硬化させてなる、親水性基と二重結合性基を含有する架橋親水層を有する架橋親水膜である。該架橋親水膜表面に画像記録層を形成して平版印刷版原版を得ることができる。
【選択図】 なし
Description
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルム等の原画を通した露光を行った後、画像部の画像記録層を残存させ、非画像部の画像記録層をアルカリ性現像液または有機溶剤によって溶解して除去することで親水性の支持体の表面を露出させる方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水、インキ溶剤または湿し水とインキとの乳化物に溶解しまたは分散することが可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を用いる方法、印刷機のローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法、湿し水、インキ溶剤等の浸透によって画像記録層の凝集力または画像記録層と支持体との接着力を弱めた後、ローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法が挙げられる。
なお、本発明においては、特別な説明がない限り、「現像処理工程」とは、印刷機以外の装置(通常は自動現像機)を使用し、液体(通常はアルカリ性現像液)を接触させることにより、平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる工程を指し、「機上現像」とは、印刷機を用いて、液体(通常は印刷インキ及び/又は湿し水)を接触させることにより、平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる方法および工程を指す。
従来の製版方法では、感光性の平版印刷版原版に対して、低照度から中照度で像様露光を行い、画像記録層における光化学反応による像様の物性変化によって画像記録を行う。これに対して、上述した高出力レーザーを用いる方法では、露光領域に極短時間に大量の光エネルギーを照射して、光エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換させ、その熱により、画像記録層において化学変化、相変化、形態または構造の変化等の熱変化を起こさせ、その変化を画像記録に利用する。したがって、画像情報はレーザー光等の光エネルギーによって入力されるが、画像記録は光エネルギーに加えて熱エネルギーによる反応も加味された状態で行われる。通常、このような高パワー密度露光による発熱を利用した記録方式はヒートモード記録と呼ばれ、光エネルギーを熱エネルギーに変えることは光熱変換と呼ばれる。
しかしながら、画像記録層として実用上有用な感光性記録材料の多くは、感光波長が760nm以下の可視光域にあるため、赤外線レーザーでは画像記録をすることができない。このため、赤外線レーザーで画像記録をすることができる材料が望まれている。
これらの平版印刷版原版のように重合反応を用いて疎水性の領域を形成する方法は、重合体微粒子の熱融着により形成される画像部に比べ、画像部の化学結合密度が高いため画像強度が比較的良好であるという特徴を有するが、実用的な観点から見ると、機上現像性、耐刷性および重合効率(感度)のいずれも未だ不十分であり、実用化には至っていない。
さらに、形成された親水層の親水性や耐久性が不充分で、印刷条件によっては地汚れが発生しやすく、また、印刷するにつれて非画像部に徐々に汚れが生じてくる問題点があった。
また、本発明の別の目的は、前記親水性膜を備え、非画像部の親水性と画像部の耐久性に優れた平版印刷版原版、及び、画像部の形成後には、何らの現像処理工程を経ることなく印刷することが可能であって、耐刷性と非画像部のインキ払い性に優れた平版印刷方法を提供することである。
即ち、本発明の親水性膜は、支持体上に、(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー、(b)架橋剤、及び、(c)該(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー及び/又は該(b)架橋剤と反応可能な官能基と、二重結合性基とを有する化合物とを含有する組成物を熱又は光により硬化させてなる、親水性基と二重結合性基を含有する架橋親水層を有することを特徴とする。
ここで、架橋親水層の形成にあたっては、(b)架橋剤として複数の、少なくとも互いに反応性である架橋剤を用い、且つ、複数の(b)架橋剤のうち少なくとも1種は、前記(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー前記及び/又は前記(b)架橋剤と共有結合及び/又はイオン結合を形成しうる官能基を有することが好ましい態様である。
ここで、該画像記録層には、さらに(E)マイクロカプセルを含有することが好ましい。
また、本発明の請求項5に係る平版印刷版原版は、前記本発明の親水性膜上に、(A)赤外線吸収剤と、(B)重合開始剤と、(C)重合性化合物と、(D)バインダーポリマーとを含有し、印刷インキおよび/または湿し水により除去可能な画像記録層を有することを特徴とする。
本態様においても、画像記録層には、さらに(E)マイクロカプセルを含有することが好ましい。
なかでも、本発明の好ましい態様の如く、複数種の互いに反応しうる架橋剤を用いることで、架橋密度の一層の向上を図ることができ、架橋親水層の耐久性が向上するものと考えられる。
また、前記本発明の親水性膜を用いることで、非画像部の親水性と画像部の耐久性に優れた平版印刷版原版、及び、画像部の形成後には、何らの現像処理工程を経ることなく印刷することが可能であって、耐刷性と非画像部のインキ払い性に優れた平版印刷方法を提供することができる。
以下、本発明の親水性膜に含まれる各成分について詳細に説明する。
本発明に使用することができる(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー(以下、適宜、(a)特定親水性ポリマーと称する)は、公知の熱架橋剤と反応可能な官能基を一方の末端に有し、架橋剤と反応して水不溶性になるものであればよい。公知の熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。架橋剤と反応し得る官能基としては、カルボキシル基あるいはその塩、無水カルボン酸、アミノ基、水酸基、エポキシ基、メチロール基、メルカプト基、(ブロック)イソシアネート基、シラノール基(シランカップリング基)、炭素−炭素二重結合基、エステル基、テトラゾール基、またはアクリレート基、メタクリレート基、スチリル基などのラジカル重合性基等が挙げられる。
親水性層を形成する際、(a)親水性ポリマーの片末端のみ架橋させるために、特定親水性ポリマーの側鎖官能基と末端架橋性基は異なっていることが好ましく、さらに、末端架橋性基のほうが側鎖官能基よりも架橋反応性が高いほうが好ましい。
また、片末端の架橋性基は2つ以上有しても良く、さらに2種類以上の異なる架橋性基を有してもよい。
本発明において架橋親水層を形成する組成物中の(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーの含有量は目的に応じて適宜選択できるが、一般的には、10〜95質量%であることが好ましく、45〜90質量%であることがさらに好ましい。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性ポリマーと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、1,2−エタンジカルボン酸、アジピン酸といったα,ω−アルカン若しくはアルケンジカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ブチルアミン、スペルミン、ジアミンシクロヘキサン、ピペラジン、アニリンフェニレンジアミン、1,2−エタンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン、等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、
これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性部材の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
(ただし、R4及びR5は、H又はCH3を示す。)
本発明で用いられる(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーにおける架橋性基と、(b)架橋剤との好適な組合せとしては、以下の組み合わせが挙げられる。
カルボキシル基あるいはその塩を片末端に有する親水性ポリマーは、上記ポリエポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリメチロール化合物、ポリイソシアネート化合物或いはブロックポリイソシアネート化合物、金属架橋剤を用いて三次元架橋を形成することができる。
メチロール基、フェノール性水酸基、グリシジル基を片末端に有する親水性ポリマーは、架橋剤として、上記ポリカルボン酸化合物、ポリアミン化合物、ポリヒドロキシ化合物を用いて三次元架橋を形成しうる。
アミノ基を片末端に有する親水性ポリマーは、架橋剤として、上記ポリイソシアネート化合物或いはブロックポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリメチロール化合物を用いて三次元架橋を形成しうる。
アルコキシシリル基などのシランカップリング基を有する片末端に有する親水性ポリマーは、テトラアルコキシシラン、多価アルコールなどと脱水縮合することにより三次元架橋を形成することが可能である。
炭素−炭素二重結合基を有する片末端に有する親水性ポリマーは、架橋剤として、ジチオエリスリトール、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)などのポリチオール化合物、ブチルアミン、スペルミン、ジアミンシクロヘキサン、ピペラジン、アニリンフェニレンジアミン、1,2−エタンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等のアミン化合物を用いて三次元架橋を形成しうる。
また、多官能ラジカル重合性架橋剤と末端ラジカル重合性親水性ポリマーとの組み合わせも使用することができる。
1種類の架橋剤を用いる場合は、3官能以上が好ましく、架橋剤間でも反応することが好ましい。例えば、多官能エポキシ化合物をあげることができる。
2種類以上の架橋剤、例えば、(b−1)と(b−2)の2種の架橋剤を組み合わせて使用する場合を例に挙げれば、一方の架橋剤(b−1)は2官能以上で、他方の架橋剤(b−2)は3官能以上であることが好ましく、架橋剤(b−1)が2官能以上である場合、(b−1)の官能基のうち少なくとも1つが、(a)特定親水性ポリマー中に存在する架橋性基及び架橋剤(b−2)の双方と反応可能であり、架橋剤(b−1)における他の少なくとも1つの官能基は架橋剤(b−2)と反応可能である官能基であることが好ましい。
架橋剤(b−2)は、(a)特定親水性ポリマーの架橋性基および架橋剤(b−1)の双方と反応可能であるか、または、架橋剤(b−1)とのみ反応可能であることが好ましい。架橋剤(b−2)が、架橋剤(b−1)とのみ反応する例としては、(a)末端架橋性親水性ポリマーの架橋性基と架橋剤(b−2)が同一種類の架橋性基である場合が挙げられる。
この化合物(c)は、二重結合性基を有する重合性化合物であって、分子内にさらに、親水性膜形成の組成物中に共存する(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー及び(b)架橋剤のうち、少なくとも片方と反応可能な官能基を有するものであり、以下、適宜(c)特定重合性化合物と称する。
(c)特定重合性化合物における二重結合性基は、炭素炭素二重結合を有する官能基であれば、使用することが可能であるが、好ましくは、メタクリル基、アクリル基、クロトニル基、α−ヒドロキシメタクリレート基又はその誘導体、スチリル基、アリル基、ビニルスルホニル基、ビニルエステル基などが挙げられる。
親水性と反応性のバランスから、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、エポキシ基が好ましい。
アクリル酸エステルとして、エチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールモノアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールエタンモノアクリレート、ヘキサンジオールモノアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等があり、市販品としては、大阪有機化学社製V#2000,大阪有機化学社製V#2308なども用いることができる。
(メタ)アクリルアミド類としては、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、2−アクリルアミドグリコール酸などが挙げられる。
本発明において、支持体表面に架橋親水層を形成して親水性膜を得る方法としては、必要な上記各成分を溶剤に分散、又は溶かして塗布液を調製し、支持体上に塗布、乾燥する方法が一般的なものとして挙げられる。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明における架橋親水層は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散、又は溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
塗布後の乾燥により、架橋反応が進行し、架橋親水層が形成される。熱で架橋させる場合の温度条件等には特に制限はないが、好ましくは40℃〜300℃で、架橋性と製造安定性の観点から60℃〜250℃の範囲が好ましい。
本発明の架橋親水膜表面上に、ラジカル重合により硬化して画像を形成しうる画像記録層を設けることで、本発明の平版印刷版原版を得ることができる。以下、このような平版印刷版原版の画像記録層に関して記述する。
<画像記録層>
本発明の平版印刷版原版は、前記架橋親水膜、即ち、支持体上に架橋親水層を形成した積層体における架橋親水層表面に、(A)赤外線吸収剤と、(B)重合開始剤と、(C)重合性化合物と、(D)バインダーポリマーと、を含有し、赤外線の照射により記録可能な画像記録層を有する。
この平版印刷版原版においては、赤外線の照射により画像記録層の露光部が硬化して疎水性(親油性)領域を形成し、かつ、印刷工程において、印刷が開始、進行する初期の段階で未露光部が湿し水、インキまたは湿し水とインキとの乳化物によって支持体上から速やかに除去される。即ち、上記画像記録層は、画像露光後、何らの湿式現像処理工程を経ることなく、印刷工程に付され、その過程でインキおよび/または湿し水により除去可能な画像記録層である。以下、画像記録層の各構成成分について説明する。
本発明の平版印刷版原版を、760〜1200nmの赤外線を発するレーザーを光源により画像形成する場合には、通常、赤外線吸収剤を用いることが必須である。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、後述する重合開始剤(ラジカル発生剤)が熱分解し、ラジカルを発生する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料である。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特願平2001−6326、特願平2001−237840記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特願平2001−6326、特願平2001−237840明細書に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
画像記録層の吸光度は、画像記録層に添加する赤外線吸収剤の量と画像記録層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像記録層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
なお、赤外線吸収剤の含有量についていえば、感度と膜の均一性の観点から、画像記録層を構成する全固形分中、0.01〜50質量%が好適であり、より好ましくは、0.1〜15質量%の範囲である。特に、染料の場合、0.5〜15質量%、好ましくは1〜10質量%、顔料の場合0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲である。
本発明に用いられる重合発生剤としては、光、熱或いはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進する化合物を示す。本発明に使用できる重合発生剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができ、本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物は、熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。本発明に係る熱ラジカル発生剤としては、公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号、M.P.Hutt”Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が好ましく挙げられる。
有機過酸化化合物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
オキシムエステル化合物としては、J.C.S.Perkin II (1979)1653−1660)、J.C.S.Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385記載の化合物、特開2000−80068記載の化合物具体的には以下に示す化合物などが挙げられる。
特に反応性、安定性の面から上記オキシムエステル化合物或いはジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、イオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
本発明において好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩である。
以下に、本発明における(B)重合開始剤に好適に使用しうるオニウム塩化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
本発明に用いることができる重合性化合物は、前述の親水性層の(c)二重結合性基と結合可能な少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
(ただし、R4及びR5は、H又はCH3を示す。)
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、画像記録層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述のオーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
本発明に係る画像記録層には、さらに、(D)バインダーポリマーを含有する。本発明に使用可能なバインダーポリマーとしては、従来公知のものを制限なく使用することができるが、中でも、皮膜性を有する線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していることが好ましい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン等が挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたは−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH2CH=CH2(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C6H5、−CH2CH2OCOCH=CH−C6H5、−CH2CH2−NHCOO−CH2CH=CH2および−CH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2CH=CH2、−CH2CH2−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2−OCO−CH=CH2が挙げられる。
インキに対する溶解性又は分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親油的な方が好ましく、湿し水に対する溶解性又は分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親水的な方が好ましい。このため、本発明においては、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することも有効である。
(D)バインダーポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等の公知の化合物を用いることができる。
(D)バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分に対して、5〜90質量%であり、5〜80質量%であるのが好ましく、10〜70質量%であるのがより好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
また、(C)重合性化合物と(D)バインダーポリマーは、質量比で0.5/1〜4/1となる量で用いるのが好ましい。
他の態様は、以下に詳述するように、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、該構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させて画像記録層に含有させるマイクロカプセル型画像記録層である。
本発明に係る画像記録層には、さらに(E)マイクロカプセルを含有することが好ましい。(E)マイクロカプセルが存在することで、露光部においてはカプセル壁材が溶融して支持体に密着したり、表面が軟化して隣接する他のマイクロカプセル同士で、あるいは支持体表面に融着あるいは接着して疎水性領域を形成しやすくなり、未露光部では、親水性のバインダー中に分散されていても、僅かな水分でバインダーとともに容易に除去されるため、画像形成性が向上する。このようなマイクロカプセルはフィラーとして添加されてもよいが、前述の如く、画像記録層構成成分(A)〜(D)及び後述するその他の画像記録層構成成分の全て又は一部を内包したものであってもよい。
さらに、マイクロカプセル型画像記録層において、該構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。
このようなマイクロカプセル型画像記録層においては、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性構成成分をマイクロカプセル外に含有することが、良好な機上現像性を得るという観点から好ましい。
<界面活性剤>
本発明においては、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、および、塗布面状を向上させるために、画像記録層には界面活性剤を添加することが好ましい。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
本発明に係る画像記録層には、更に必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、画像記録層を構成する全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
本発明に係る画像記録層には、焼き出し画像生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
本発明に係る画像記録層には、画像記録層の製造中または保存中において(C)重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
本発明の画像記録層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
本発明の画像記録層は、機上現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
本発明に係る画像記録層には、画像部の硬化皮膜強度向上及び非画像部の機上現像性向上を目的として、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像記録層中に安定に分散して、画像記録層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
本発明に係る画像記録層は、機上現像性向上のため、親水性低分子化合物を含有してもよい。親水性低分子化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩等が挙げられる。
本発明に係る画像記録層は、必要な上記各成分を溶剤に分散、又は溶解して塗布液を調製し、支持体上に塗布されることで形成することができる。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の画像記録層は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散、又は溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
本発明の架橋親水膜の形成、或いは、平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。なかでも、平版印刷版原版の支持体として使用する場合には、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでも良いが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などの一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号や特開2001−322365号に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理、や封孔処理及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろんこれら拡大処理、封孔処理はこれらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。
たとえば封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔でも可能である。
(無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理)
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組み合わせは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。
また、水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
また、水溶液は、pH1以上であるのが好ましく、pH2以上であるのがより好ましく、また、pH11以下であるのが好ましく、pH5以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回または複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、浸せき法が好ましい。浸せき法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧または常圧の水蒸気を連続的にまたは非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、105℃以下であるのが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.008×105〜1.043×105Pa)であるのが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
水蒸気による封孔処理は、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸せきさせる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)または有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
また、熱水に浸せきさせる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
陽極酸化処理及び所望により封孔処理を施した後、必要に応じて、アルミニウム板の表面に親水化処理を施す。親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸せき処理し、または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
支持体に表面処理を施した後または下塗層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
本発明の方法における平版印刷版においては、必要に応じて、架橋親水層と支持体との間に下塗層を設けることができる。下塗層が断熱層として機能することにより、赤外線レーザによる露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。未露光部においては、画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、機上現像性が向上する。
下塗層としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、エチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
下塗層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、3〜30mg/m2であるのがより好ましい。
本発明の平版印刷方法に用いられる本発明の平版印刷版原版においては、画像記録層における傷等の発生防止、酸素遮断、高照度レーザー露光時のアブレーション防止のため、必要に応じて、画像記録層の上に保護層を設けることができる。
本発明においては、通常、露光を大気中で行うが、保護層は、画像記録層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物の画像記録層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する。したがって、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いられる光の透過性が良好で、画像記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の機上現像処理工程で容易に除去することができるものであるのが好ましい。このような特性を有する保護層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3、458、311号明細書および特開昭55−49729号公報に詳細に記載されている。
ポリビニルアルコールの具体例としては、71〜100%加水分解された重合度300〜2400の範囲のものが好適に挙げられる。具体的には、例えば、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8が挙げられる。
保護層の膜厚は、0.05〜4μmが適当であり、特に0.1〜2.5μmが好適である。
更に、保護層には、他の機能を付与することもできる。例えば、露光に用いられる赤外線の透過性に優れ、かつ、それ以外の波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(例えば、水溶性染料)の添加により、感度低下を引き起こすことなく、セーフライト適性を向上させることができる。
次に、前記本発明の平版印刷版原版を用いた平版印刷方法について説明する。本発明の平版印刷方法は、支持体上に、前記の如き画像記録層を有する平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する工程と、露光後の平版印刷版原版に、なんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して、印刷する印刷工程とを有し、該印刷工程の途上において平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分が除去されることを特徴とする。
以下、工程順にこれを説明する。
本発明の平版印刷方法においては、上述した本発明の平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する。
本発明に用いられる赤外線レーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザーおよび半導体レーザーが好適に挙げられる。赤外線レーザーの出力は、100mW以上であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
1画素あたりの露光時間は、20μ秒以内であるのが好ましい。また、照射エネルギー量は、10〜300mJ/cm2であるのが好ましい。
本発明の平版印刷方法においては、上述したように、本発明の平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像様に露光した後、なんらの現像処理工程を経ることなく油性インキと水性成分とを供給して印刷する。
具体的には、平版印刷版原版を赤外線レーザーで露光した後、現像処理工程を経ることなく印刷機に装着して印刷する方法、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上において赤外線レーザーで露光し、現像処理工程を経ることなく印刷する方法等が挙げられる。
その結果、水性成分は露出した架橋親水膜表面に付着し、油性インキは露光領域の画像記録層に着肉し、印刷が開始される。ここで、最初に版面に供給されるのは、水性成分でもよく、油性インキでもよいが、水性成分が未露光部の画像記録層により汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給するのが好ましい。水性成分および油性インキとしては、通常の平版印刷用の、湿し水と印刷インキが用いられる。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
本発明においては、非画像部領域における架橋親水膜が親水性とその持続性に優れるため、本発明の平版印刷版原版により得られた平版印刷版は、インキ払い性が良好で、非画像部に汚れのない高画質の画像が形成され、また、架橋親水膜層に存在する二重結合に起因して、架橋親水膜と画像形成層との密着性に優れるため、高い耐刷性を示すものとなる。
1.片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーの合成例
(合成例1:末端カルボン酸親水性ポリマーCA−1の合成)
メタクリル酸3−スルホプロピルエステルカリウム塩:147.8g、メルカプトプロピオン酸:3.82g、和光純薬社製重合開始剤VA−044:0.582gを水:151.5gに溶解し得られた水溶液を窒素雰囲気下、50℃に保たれた水:151.5g中へ2時間で滴下し、更に滴下後、50℃で2時間、60℃で2時間攪拌し、冷却後、アセトン:4.5Lへ徐々に滴下すると、白色の固体が析出する。
得られた固体をろ過し、乾燥し、ポリマーCA−1が145g得られた。乾燥後の酸価は0.086meq/gであった。
4−スチレンスルホン酸ナトリウム 103g、エタンチオール塩酸塩 3.82g、和光純薬社製重合開始剤VA−044 0.582gを水151.5gに溶解し得られた水溶液を窒素雰囲気下、50℃に保たれた水151.5g中へ2時間で滴下し、更に滴下後、50℃で2時間、60℃で2時間攪拌し、冷却後、アセトン4.5Lへ徐々に滴下すると、白色の固体が析出する。
得られた固体をろ過し、乾燥し、ポリマーCA−2が98g得られた。乾燥後の酸価は0.079meq/gであった。
アクリルアミド:30g、3−メルカプトプロピオン酸:3.8gをエタノール:70gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合開始剤2,2−アゾビスイソブチルニトリル(AIBN):300mgを加えて6時間反応した。反応後白色沈殿を濾過しメタノールで十分洗浄して、末端カルボン酸ポリマーCA−3を30.8g得た(酸価0.787meq/g、分子量1.29×103)。
2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンプロパンスルホン酸:93.3g、メルカプトプロピオン酸:3.82g、和光純薬社製重合開始剤VA−044:0.582gを水:151.5gに溶解し得られた水溶液を窒素雰囲気下、50℃に保たれた水:151.5g中へ2時間で滴下し、更に滴下後、50℃で2時間、60℃で2時間攪拌し、冷却後、アセトン:4.5Lへ徐々に滴下すると、白色の固体が析出する。
得られた固体をろ過し、乾燥し、ポリマーCA−4が88.7g得られた。乾燥後の酸価は0.077meq/gであった。
(1)支持体の作製
<支持体A>
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
上記支持体Aと同様に陽極酸化皮膜まで設けた支持体を、フッ化ジルコン酸ナトリウム0.1%、リン酸2水素ナトリウム1%を含むpH3.7の75℃に加熱した溶液に10秒間浸漬し、封孔処理を行って支持体Bとした。
上記支持体Aと同様に陽極酸化皮膜まで設けた支持体を、水酸化ナトリウムの1質量%水溶液にて60℃で10秒間処理して陽極酸化皮膜のポアの拡大処理を行った。この処理により陽極酸化皮膜のポア径は20nmに拡大した。
上記ポアワイド処理を施した後、フッ化ジルコン酸ナトリウム0.1%、リン酸2水素ナトリウム1%を含むpH3.7の75℃に加熱した溶液に10秒間浸漬し、封孔処理を行って支持体Cとした。
(2)架橋親水層の形成
上記各支持体上に、下記組成の架橋親水層塗布液(1)をバー塗布した後、140℃、10分でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.4g/m2の架橋親水層を形成して実施例1の架橋親水膜1を得た。
・水 100g
・(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー(表1に記載の化合物) 4.0g
・(b−1)架橋剤(表1に記載の化合物) 2.5g
・(b−2)架橋剤(表1に記載の化合物) 1.5g
・(c)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー及び/又は架橋剤と反応可能な
官能基と二重結合性基を有する化合物(表1に記載の化合物) 0.7g
実施例1〜4において用いた架橋親水層塗布液(1)を下記架橋親水層塗布液(2)に変更し、塗布量を1.2g/m2とした以外は、実施例1〜4と同様にして架橋親水膜5〜8を作製した。
<架橋親水層塗布液(2)>
・水 100g
・(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー(表1に記載の化合物) 4.0g
・(b−1)架橋剤(表1に記載の化合物) 1.75g
・(b−2)架橋剤(表1に記載の化合物) 1.0g
・(c)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー及び/又は架橋剤と反応可能な
官能基と二重結合性基を有する化合物(表1に記載の化合物) 0.6g
・界面活性剤(スルホこはく酸ジエチルヘキシルナトリウム塩) 0.2g
ここで用いた(c)特定重合性化合物は以下に示すとおりである。
支持体上に、架橋親水膜を形成せず、下記構造の比較親水性化合物(H−1)を乾燥後の塗布量が20mg/m2となるように塗布して、親水性下塗り層を形成したものを対照例とした。
架橋親水膜1の作製に用いた架橋親水層塗布液(1)における(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーCA−1を比較親水性ポリマー(H−2)〔アクリル酸/アクリルアミド(50/50)Mw=50,000〕に代えた以外は同様にして架橋親水膜C−1を得て、比較例1とした。また、架橋親水層塗布液(1)において、(c)重合性化合物を添加しなかった以外は同様にして架橋親水膜C−2を得て比較例2とした。
・(D)バインダーポリマー(1)〔重量平均分子量:5万〕 0.162g
・(B)重合開始剤(1) 0.100g
・(A)赤外吸収染料(1) 0.020g
・(C)重合性モノマー、アロニックスM−215(東亜合成(株)製) 0.385g
・フッ素系界面活性剤(1) 0.044g
・メチルエチルケトン(MEK) 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール(MFG) 8.609g
・下記の通り合成したマイクロカプセル(1) 2.640g
・水 2.425g
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、下記の赤外線吸収剤(2)0.35g、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本化成製ODB)1g、及びパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.2μmであった。
・(A)赤外線吸収剤(2) 0.05g
・(B)重合開始剤(1) 0.20g
・(D)バインダーポリマー(2)〔重量平均分子量:8万〕 0.50g
・(C)重合性モノマー、アロニックスM−215(東亜合成(株)製) 1.00g
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩 0.02g
・フッ素系界面活性剤(1) 0.10g
・メチルエチルケトン 18.0g
得られた平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザ搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。得られた露光済み原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを用い、湿し水とインクを供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を100枚行った。
3−1.刷り出し払い性(インク払い性)
画像記録層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、印刷用紙にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。結果を「刷り出し払い枚数」として下記表1に示す。枚数が少ないほど、非画像のインキ払い性、非画像部の親水性に優れると評価する。本発明の平版印刷版原版(実施例1〜8)、対照例、比較例2はいずれも、100枚以内で非画像部の汚れのない印刷物が得られた。一方、本発明の範囲外である親水性ポリマーを用いた比較例1では、100枚以上印刷しても、インキ払いができず、画像部、非画像部の差異が不明確で良好な印刷物が得られなかった。
上述したように100枚の印刷を行った後、更に印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、対照例を100として、耐刷性を相対評価した。数値が大きいほど、耐刷性に優れると評価する。結果を表1に示す。なお、100枚以上印刷してもインキ払いができなかった比較例1は、良好な印刷物が得られなかったため、耐刷性の評価を行えなかった。
Claims (6)
- 支持体上に、(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー、(b)架橋剤、及び、(c)該(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー及び/又は該(b)架橋剤と反応可能な官能基と、二重結合性基とを有する化合物とを含有する組成物を熱又は光により硬化させてなる、親水性基と二重結合性基を含有する架橋親水層を有する架橋親水膜。
- 前記架橋親水膜の形成に複数の(b)架橋剤を用い、複数の(b)架橋剤のうち、少なくとも2種の(b)架橋剤は互いに反応しうるものであり、且つ、複数の(b)架橋剤のうち少なくとも1種は、前記(a)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマー及び/又は前記(b)架橋剤と共有結合及び/又はイオン結合を形成しうる官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の架橋親水膜。
- 請求項1又は請求項2に記載の架橋親水膜上に、(A)赤外線吸収剤と、(B)重合開始剤と、(C)重合性化合物と、(D)バインダーポリマーと、を含有し、赤外線の照射により記録可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する工程と、露光後の平版印刷版原版に、なんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して、印刷する印刷工程とを有し、該印刷工程の途上において平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分が除去されることを特徴とする平版印刷方法。
- 前記画像記録層に、さらに(E)マイクロカプセルを含有することを特徴とする請求項3記載の平版印刷方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の架橋親水膜上に、(A)赤外線吸収剤と、(B)重合開始剤と、(C)重合性化合物と、(D)バインダーポリマーとを含有し、印刷インキおよび/または湿し水により除去可能な画像記録層を有する平版印刷版原版。
- 前記画像記録層に、さらに(E)マイクロカプセルを含有することを特徴とする請求項5記載の平版印刷版原版。
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