JP2006320261A - セルロースの低分子化法とそれを用いた糖の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 セルロースからグルコース及び/又はセロオリゴ糖を効率良く製造する方法を提供する。
【解決手段】 (a)セルロースを含有する材料を、酸化性物質を含む酸化水と混合して、混合物を得る工程、(b)混合物を、100℃以上200℃以下に加熱する工程を少なくとも含む、セルロースを含有する材料に含まれるセルロースを低分子化する方法およびその方法を用いる糖を製造する方法。
【選択図】なし
【解決手段】 (a)セルロースを含有する材料を、酸化性物質を含む酸化水と混合して、混合物を得る工程、(b)混合物を、100℃以上200℃以下に加熱する工程を少なくとも含む、セルロースを含有する材料に含まれるセルロースを低分子化する方法およびその方法を用いる糖を製造する方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、セルロースを含有する材料に含まれるセルロースを低分子化して、グルコース及び/又はセロオリゴ糖を得る方法に関する。詳しくは、セルロースを含有する材料を、酸化剤で酸化することにより、セルロースを水和しやすくし、水和しやすくしたセルロースを、酸化により生成した酸、もしくは追加した酸の触媒作用によって加水分解することにより、グルコース及び/又はセロオリゴ糖を高収率で得る方法に関する。
セルロースは、地球上に存在する最大の有機物資源であり、木材、わらなどの農林生産物中、あるいは産業・家庭廃棄物中等に見出される。近年、世界人口の急増による食糧問題若しくは化石資源の枯渇によるエネルギー問題等の解決手段の1つとして、又は食品・農畜・化学工業等の分野で使用する素材の原料としてセルロースの有効利用が望まれている。
セルロースは、グルコースをモノマーとする脱水縮合性ポリマーであり、セルロースを加水分解することにより、セロオリゴ糖、更にはグルコースを得ることができる。グルコースは、それ自体、重要な食品素材であり、醗酵によりエタノールが得られる。また、微生物若しくは酵素による処理、又はグルコースの化学変換により、フルクトース等の糖類、クエン酸等の有機酸、ソルビトール等の糖アルコール等の素材を得ることができる。また、セロオリゴ糖は、各種オリゴ糖と同様に、機能性食品素材として期待されている。
このように、セルロースをセロオリゴ糖あるいはグルコースにまで加水分解することによって、食品・エネルギー・飼料・化学工業製品等の分野で多くの素材を提供することができる。
従来、セルロースからセロオリゴ糖やグルコースを得るために、多くの研究がなされてきた。例えば、(1)熱分解法、(2)酸触媒を用いた方法、(3)亜臨界、超臨界水を用いた方法、(4)酵素による方法が知られている。
しかし、(1)の方法では、反応制御が不可能でグルコースの収率が低いという欠点がある。(2)の方法では、濃硫酸と希硫酸を用いる方法が知られているが、高濃度の酸または高温の酸によって処理するために、設備が腐食する、硫酸回収にコストがかかる等の欠点がある(特許文献1参照)。
しかし、(1)の方法では、反応制御が不可能でグルコースの収率が低いという欠点がある。(2)の方法では、濃硫酸と希硫酸を用いる方法が知られているが、高濃度の酸または高温の酸によって処理するために、設備が腐食する、硫酸回収にコストがかかる等の欠点がある(特許文献1参照)。
(3)の方法では、反応速度が早くなるものの、亜臨界以上の高温の条件では、加水分解によりグルコースが生成すると共に、グルコースの熱分解反応も進んでしまい、逆に収率が低下する。
(4)の方法では、温和な条件下で反応が進み、耐酸性・耐圧性の反応容器を必要としないこと、糖の二次分解がないこと、理論値通りの収率が得られること、環境汚染の心配が無いこと等の利点があるが、反応速度が遅く、工業的な生産方法としては利用できない。
(4)の方法では、温和な条件下で反応が進み、耐酸性・耐圧性の反応容器を必要としないこと、糖の二次分解がないこと、理論値通りの収率が得られること、環境汚染の心配が無いこと等の利点があるが、反応速度が遅く、工業的な生産方法としては利用できない。
上記のような問題全てに共通する原因は、セルロースの構成糖であるグルコースが本来親水性であるにも関わらず、セルロース繊維が水に不溶であることである。このような水への不溶性は、セルロース分子同士が強い水素結合により会合し、結晶化しているためであると考えられる。このため、セルロースを加水分解するためには、強酸を用い、高温で長時間、反応を行う必要がある。
以上のことから、効果的にセルロースを加水分解するために、セルロースを水に可溶化するための適切な前処理技術の開発が検討されている。例えば、セルロースを、超臨界水または亜臨界水で一時的に可溶化し、セルロース及びその部分分解物である高重合度セロオリゴ糖が反応液中に溶解している間に、セルラーゼを添加し、それらを加水分解する方法が提案されている(特許文献2参照)。
特表平11−506934号公報
特開2001−95594号公報
しかしながら、特許文献2の方法では、超臨界あるいは亜臨界という高温高圧の反応設備が必要であること、反応速度の早い超臨界や亜臨界状態での反応を高重合度セロオリゴ糖で停止する反応制御が困難であること、高重合度セロオリゴ糖をセルラーゼにより加水分解するのに長い反応時間が必要であることなどの欠点がある。
このため、セルロースから高収率でグルコース及び/又はセロオリゴ糖を得るために、熱分解の起こらない穏和な条件にて、加水分解処理を行うとともに、不溶性沈澱、タールなどの生成のような副反応を抑制する技術の開発が望まれている。
そこで、本発明は、セルロースから、高収率でグルコースおよび/またはセロオリゴ糖を得ることができる方法を提供することを目的とする。
本発明は、セルロースを含有する材料に含まれるセルロースを低分子化する方法に関する。本方法は、
(a)セルロースを含有する材料を、酸化性物質を含む酸化水と混合して、混合物を得る工程、
(b)前記混合物を、少なくともpH1〜3の条件下で、100℃以上200℃以下に加熱する工程を少なくとも含む。
(a)セルロースを含有する材料を、酸化性物質を含む酸化水と混合して、混合物を得る工程、
(b)前記混合物を、少なくともpH1〜3の条件下で、100℃以上200℃以下に加熱する工程を少なくとも含む。
上記セルロースを低分子化する方法は、工程(b)の前に、(c)混合物を、50℃〜150℃に加熱する工程を含むことが好ましい。
上記セルロースを低分子化する方法は、工程(c)の後で、かつ工程(b)の前に、混合物に含まれる酸化性物質の濃度を100ppm以下に調整する工程をさらに含むことが好ましい。
上記セルロースを低分子化する方法は、工程(b)の後に、混合物のpHを5.8〜8.6に調整する工程を含むことが好ましい。
上記セルロースを低分子化する方法において、酸化水に含まれる酸化性物質は、次亜塩素酸および次亜塩素酸ナトリウムの少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記セルロースを低分子化する方法において、酸化水の有効塩素濃度は、500〜2000ppmであることが好ましい。
上記セルロースを低分子化する方法において、酸化水は、ハロゲン塩を含む水を電気分解して生成される電解水であることが好ましい。
上記セルロースを低分子化する方法において、酸化水のpHが5.8以上であることが好ましい。
また、本発明は、セルロースを含有する材料から糖を製造する方法に関し、上記セルロースを低分子化する方法により、低分子化したセルロースを含む混合物を得た後、その混合物から固形分を除去して糖を含む水溶液を得る工程を含む。
本発明のセルロースを低分子化する方法とそれを用いた糖の製造方法においては、セルロースの水酸基を部分的に酸化することにより、その分子間力を低下させ、セルロースの水和性を向上させることができる。このため、セルロースと水との反応機会が飛躍的に増大し、加水分解反応速度を大幅に向上させることができる。よって、セルロースを高収率でセロオリゴ糖及び/又はグルコースに変換することができる。
また、本発明の方法は、熱分解等の起こらない穏和な条件にて行うことができるため、不溶性沈澱、タールなどの生成などの副反応を抑制することができる。
また、本発明の方法は、熱分解等の起こらない穏和な条件にて行うことができるため、不溶性沈澱、タールなどの生成などの副反応を抑制することができる。
本発明のセルロースを含有する材料に含まれるセルロースを低分子化する方法は、セルロースを含有する材料を、酸化性物質を含む酸化水と混合して、混合物を得る工程(a)、混合物を、少なくともpH1〜3の条件下で、100℃以上200℃以下に加熱する工程(b)を少なくとも含む。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
実施の形態1
本発明のセルロースを低分子化する方法は、例えば、
(A)セルロースを含有する材料を、酸化性物質を含む酸化水と混合して、混合物を得る工程、
(B)前記混合物を、50℃〜150℃温度に加熱する工程、
(C)加熱後の前記混合物のpHを1〜3に調整する工程、
(D)pHを調整したのちの前記混合物を、100℃以上200℃以下に加熱する工程、を少なくとも含む。
本発明のセルロースを低分子化する方法は、例えば、
(A)セルロースを含有する材料を、酸化性物質を含む酸化水と混合して、混合物を得る工程、
(B)前記混合物を、50℃〜150℃温度に加熱する工程、
(C)加熱後の前記混合物のpHを1〜3に調整する工程、
(D)pHを調整したのちの前記混合物を、100℃以上200℃以下に加熱する工程、を少なくとも含む。
まず、セルロースを含有する材料を、酸化性物質を含む酸化水と混合して、混合物を得る(工程(A))。
本発明において、セルロースを含有する材料としては、セルロースを含有する天然物等、種々のものを用いることができる。例えば、木材や草本類の植物体及びそれらから調製したチップ、おがくず、バガス、稲藁、パルプ、若しくはそれらの加工品や廃棄物及び植物若しくは動物若しくは微生物由来の精製されたセルロース、新聞古紙若しくはオフィス古紙等の古紙類などを使用することができる。原料は、必要に応じてミル等を用いて粉砕・破砕しておくことが好ましい。また、精製したセルロースを、セルロースを含有する材料として用いてもよい。
本発明において、セルロースを含有する材料としては、セルロースを含有する天然物等、種々のものを用いることができる。例えば、木材や草本類の植物体及びそれらから調製したチップ、おがくず、バガス、稲藁、パルプ、若しくはそれらの加工品や廃棄物及び植物若しくは動物若しくは微生物由来の精製されたセルロース、新聞古紙若しくはオフィス古紙等の古紙類などを使用することができる。原料は、必要に応じてミル等を用いて粉砕・破砕しておくことが好ましい。また、精製したセルロースを、セルロースを含有する材料として用いてもよい。
酸化水とは、酸化性物質を含む水のことである。ここで、酸化性物質としては、OHラジカル、オゾン、ペルオキシ二硫酸イオン、過酸化水素、過マンガン酸イオン、塩素、ニクロン酸イオン、酸素、二酸化塩素、亜ハロゲン酸、次亜ハロゲン酸、次亜ハロゲン酸イオンなどが挙げられる。また、亜ハロゲン酸、次亜ハロゲン酸、次亜ハロゲン酸イオンのうちでも、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、次亜塩素酸イオン、次亜臭素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオンが好ましく、酸化力の強さから、塩素または臭素を含むものが好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて、用いてもよい。特に、酸化性物質は、次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンのうちの少なくとも一方を含むことが好ましい。これらは、試薬としても簡易に入手することができ、また食塩水の電気分解によっても簡易に作製することができるからである。
酸化水は、酸化性物質を水に溶解することにより調製することができる。例えば、別に貯留していた過酸化水素(保存の容易さから希釈したもの)や液体塩素等を水に加えることにより、酸化水を作製することができる。また、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム(高度さらし粉を含む)、過マンガン酸カリウム、ニクロン酸カリウムを水に加えて、イオン化させることにより、前述のイオン種を生成させることができる。さらには、亜塩素酸ナトリウムに塩酸を加えて二酸化塩素を発生させ、その二酸化塩素を水と混合することにより、酸化水を作製することもできる。
また、酸化水を生成する手段により作製してもよい。その酸化水を生成する手段としては、酸化性物質を含んだ水を生成できるものであれば、どのようなものを用いてもよい。例えば、オゾン発生器を備えるものが挙げられる。このような装置では、オゾン発生器により発生させたオゾンが水と混合されて、酸化水が作製される。
次に、得られた混合物を、50℃〜150℃に加熱する(工程(B))。これにより、セルロースを構成するグルコースの水酸基が少なくとも部分的に酸化され、セルロースを水和させることが可能となる。加熱温度が50℃未満では、酸化剤による酸化が十分でなく、水に対する親和性や加水分解性が向上しないことがある。加熱温度が150℃を超えると、酸化による分解が起こりやすくなるが、有機物の副反応が激しくなり、タールなどが生成し糖の収率が低下する。また、この場合、高温設備が必要となり、安全性からも好ましくない。
なお、セルロースにおける水酸基のうち、この加熱によって酸化されるのは、10mol%以下である。
なお、セルロースにおける水酸基のうち、この加熱によって酸化されるのは、10mol%以下である。
次いで、その混合物のpHを1〜3に調節する(工程(C))。次に、pHを1〜3に調節した後の混合物を、100℃以上200℃以下に加熱する(工程(D))。これにより、セルロースを加水分解させる。このように、酸を存在させた状態で加熱することで、セルロースの加水分解を加速させることができる。混合物のpHが1より小さい場合は、反応性が高くなるが、同時に生成する糖などの酸による2次反応機会も高まり、収率が下がることがある。また、反応槽などの腐食が深刻となることもある。混合物のpHが3より大きい場合には、弱酸であり、触媒としての効果が低くなることがある。
また、加熱温度が100℃より低くなると、酸などの触媒があっても加水分解反応が十分に進まないことがある。加熱温度が200℃を超えると、加水分解で生じた糖が更に加水分解され、この分解物や糖などが重合して、タールなどの不溶物が生成し、糖の収率が大きく低下することがある。
また、加熱温度が100℃より低くなると、酸などの触媒があっても加水分解反応が十分に進まないことがある。加熱温度が200℃を超えると、加水分解で生じた糖が更に加水分解され、この分解物や糖などが重合して、タールなどの不溶物が生成し、糖の収率が大きく低下することがある。
上記工程(C)における混合物のpHの調節は、例えば、その混合物に酸を添加することにより行うことができる。用いられる酸としては、当該分野で公知のものを、特に限定することなく用いることができる。また、その酸を水で希釈したものを用いて、混合物のpHを調節してもよい。
なお、工程(B)の後、混合物のpHが1〜3の範囲にある場合には、工程(C)を省略することができる。
工程(B)と工程(D)における加熱時間については、酸化反応による酸化物の収率と加水分解反応における糖の収率を上げながらも、副反応による不溶物の発生を抑えるように、最適な時間が決定される。例えば、反応液が数wt%のセルロースを含む場合では、工程(B)および工程(D)における加熱時間は、10時間未満であることが好ましく、5時間未満であることがさらに好ましい。
セルロースは水に溶解せずかつ高分子量物であるけれども、以上のように、セルロースと酸化水とを接触させ、その酸化水を加熱すると、酸化性物質によりセルロースが酸化されて、セルロースの水への親和性が向上する。この変性によって、セルロース分子が水和しやすくなり、水との反応機会あるいは水中に溶解する成分との接触機会が増大する。更に水和が進むと、セルロース分子同士の分子間力よりもセルロースと水との水和力の方が強くなる。このため、セルロースは水中に沈降物として固形分で存在するよりも、水側に展開されやすくなり、水和ゲルとなる。さらには可溶化して、均一な反応系へと移行する。
このように水和したセルロースを含む混合液に、酸を加えて加熱することにより、セルロースは、従来よりも低温で容易に加水分解されるようになり、単糖(例えば、グルコースなど)、オリゴ糖などの糖が生成される。上記のように、100℃以上200℃以下の低温で加水分解されるために、生成するグルコースなどの糖が2次的に分解されることを低減できる。よって、セルロースが分解して生じた糖の回収率が低下することを回避することが可能となる。
また、特に加水分解時の副反応においては、加水分解により生成したものがさらに加熱分解されて低分子化し、その低分子化したものが不可逆的に再重合してタールなどの不溶物が発生する。このため、上記のように糖の収率が低下する。このような副反応は、加熱温度と加水分解物の濃度に応じて、ある比率で発生すると考えられる。この場合、反応時間が長いほど、副反応による不溶物の発生が多くなり、収率を下げる要因になると考えられる。したがって、混合液に含まれるセルロースは、できるだけ短い時間で加水分解されることが好ましい。水とセルロースとが分離している不均一な系よりも、セルロースが均一に分散した系、更にはセルロースが溶解している均一な系になるほど、加水分解反応が均一に起こる。このため、混合液に含まれる全てのセルロース分子がその混合液内でほぼ同じ反応時間で加水分解され、不均一な系のように状態が異なることによるセルロース分子の加水分解に要する時間のばらつきが低減される。よって、セルロースが溶解している均一な系ほど、セルロースの加水分解に要する時間が短くてすむと考えられる。本発明の方法では、セルロースの水への親和性が酸化により向上しており、均一な系内で加水分解反応が進むために、副反応が抑えられて、糖の収率を向上させることができる。
また、特に加水分解時の副反応においては、加水分解により生成したものがさらに加熱分解されて低分子化し、その低分子化したものが不可逆的に再重合してタールなどの不溶物が発生する。このため、上記のように糖の収率が低下する。このような副反応は、加熱温度と加水分解物の濃度に応じて、ある比率で発生すると考えられる。この場合、反応時間が長いほど、副反応による不溶物の発生が多くなり、収率を下げる要因になると考えられる。したがって、混合液に含まれるセルロースは、できるだけ短い時間で加水分解されることが好ましい。水とセルロースとが分離している不均一な系よりも、セルロースが均一に分散した系、更にはセルロースが溶解している均一な系になるほど、加水分解反応が均一に起こる。このため、混合液に含まれる全てのセルロース分子がその混合液内でほぼ同じ反応時間で加水分解され、不均一な系のように状態が異なることによるセルロース分子の加水分解に要する時間のばらつきが低減される。よって、セルロースが溶解している均一な系ほど、セルロースの加水分解に要する時間が短くてすむと考えられる。本発明の方法では、セルロースの水への親和性が酸化により向上しており、均一な系内で加水分解反応が進むために、副反応が抑えられて、糖の収率を向上させることができる。
上記工程(A)〜(D)は、例えば、加熱手段を備える反応槽などを用いて行うことができる。反応槽としては、種々のものを用いることができる。
加熱手段としては、セルロースと酸化水との混合物を加熱できるものであれば特に限定されない。例えば、ジュール熱を用いた電気加熱手段、ガスや石油などの燃焼熱を用いた燃焼手段、ヒートポンプ、誘導加熱手段などが考えられる。電気加熱などの接触加熱を採用する場合は、反応槽の内壁に設置したり、投げ込みヒータのように配管をコイル状にして反応槽内部の水に直接接触して加熱効率を高めることが好ましい。加熱手段による加熱温度は、工程(B)または工程(D)により、適宜変更される。
加熱手段としては、セルロースと酸化水との混合物を加熱できるものであれば特に限定されない。例えば、ジュール熱を用いた電気加熱手段、ガスや石油などの燃焼熱を用いた燃焼手段、ヒートポンプ、誘導加熱手段などが考えられる。電気加熱などの接触加熱を採用する場合は、反応槽の内壁に設置したり、投げ込みヒータのように配管をコイル状にして反応槽内部の水に直接接触して加熱効率を高めることが好ましい。加熱手段による加熱温度は、工程(B)または工程(D)により、適宜変更される。
さらに、加熱時のエネルギーロスを低下させるために、例えば、加熱手段として、ガラスウールなどの断熱材で外部を覆って断熱性をあげたものが特に推奨される。
また、温度測定手段をさらに設け、その温度測定手段により、加熱手段による加熱温度を制御してもよい。温度測定手段は、加熱時の耐圧性と化学的な耐性のあるものであればよく、例えば、表面がステンレスで覆われた熱電対を用いることができる。また、熱電対として、例えば、クロメル―アルメル合金、白金合金を用いることができる。
また、温度測定手段をさらに設け、その温度測定手段により、加熱手段による加熱温度を制御してもよい。温度測定手段は、加熱時の耐圧性と化学的な耐性のあるものであればよく、例えば、表面がステンレスで覆われた熱電対を用いることができる。また、熱電対として、例えば、クロメル―アルメル合金、白金合金を用いることができる。
本発明のセルロースを含む材料から糖を製造する方法は、上記工程(A)〜(D)に加えて、工程(D)の後に、セルロースが加水分解された混合液から、固形分を除去して、糖を含む水溶液を得る工程(工程(E))を含む。混合物からの固形分の除去は、例えば、ろ過等の当該分野で公知の固液分離法を用いて分離することができる。
このようにして得られた糖を含む水溶液から、例えば、糖を単離等することにより、糖が得られる。
上記セルロースを低分子化する方法においては工程(D)の後に、糖を製造する方法においては工程(E)の後に、前記混合物または糖を含む水溶液のpHを、5.8〜8.6に調節すること、つまり、混合物または糖を含む水溶液を中和することが好ましい。これにより、糖を回収した後の廃液を、下水道等に排水することが可能となる。
上記pHの調整は、例えば、混合物または糖を含む水溶液に、アルカリまたはアルカリを含む溶液を添加することにより行うことができる。アルカリとしては、当該分野で公知のものを用いることができる。例えば、チオ硫酸ナトリウム、苛性ソーダ、アンモニア水、消石灰などが挙げられる。
上記pHの調整は、例えば、混合物または糖を含む水溶液に、アルカリまたはアルカリを含む溶液を添加することにより行うことができる。アルカリとしては、当該分野で公知のものを用いることができる。例えば、チオ硫酸ナトリウム、苛性ソーダ、アンモニア水、消石灰などが挙げられる。
また、上記セルロースを低分子化する方法および糖を製造する方法において、混合物を50℃〜150℃に加熱した後、混合物のpHを1〜3にする前に(つまり工程(B)の後、工程(C)の前に)、混合物に含まれる酸化性物質の濃度を100ppm以下に調整することが好ましい。これは、セルロースの量にもよるが、酸化性物質が多く残っていると、セルロースの加水分解と同時に、加水分解により生成したものが酸化分解されるなどの副反応が大きくなり、糖類の収率が低下するからである。
なお、混合物に含まれる酸化性物質の濃度を100ppm以下に調節することは、例えば、酸化性物質としてオゾンや亜ハロゲン酸などを用いた場合には、その混合物を100℃に加熱することにより行うことができる。
なお、混合物に含まれる酸化性物質の濃度を100ppm以下に調節することは、例えば、酸化性物質としてオゾンや亜ハロゲン酸などを用いた場合には、その混合物を100℃に加熱することにより行うことができる。
また、上記セルロースを低分子化する方法および糖を製造する方法において、セルロースを含有する材料と混合される酸化水のpHは、5.8以上であることが好ましい。pHが5.8未満であれば、酸化反応性が高すぎて、糖が酸化開裂したり、分解したりするなどの副反応が起こりやすくなり、糖の収率が下がる。一方、pHが5.8以上であれば、酸化反応性が適度となると共に、酸化によって生成する酸の溶解性が上がり、酸化反応が進みやすくなり、反応生成物の水和性がより高くなる。
例えば、次亜塩素酸を含む酸化水の場合は、その酸化水中に、次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンが共存している。酸化水のpHが低いと、酸化力の強い次亜塩素酸が支配的になり、pHが高いと比較的酸化力の弱い次亜塩素酸イオンが支配的となる。次亜塩素酸ではセルロースに対する酸化力が強いため、次亜塩素酸イオンが好適である。よって、酸化水のpHは、次亜塩素酸イオンが存在し始めるpH5.8以上にすることが好都合である。
例えば、次亜塩素酸を含む酸化水の場合は、その酸化水中に、次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンが共存している。酸化水のpHが低いと、酸化力の強い次亜塩素酸が支配的になり、pHが高いと比較的酸化力の弱い次亜塩素酸イオンが支配的となる。次亜塩素酸ではセルロースに対する酸化力が強いため、次亜塩素酸イオンが好適である。よって、酸化水のpHは、次亜塩素酸イオンが存在し始めるpH5.8以上にすることが好都合である。
本発明において、上記酸化水として、例えば、ハロゲン塩を含む水を電気分解して生成される電解水であってもよい。この電解水は、酸化水と同様に酸化性物質を含む。
電解水には、電気分解により陽極近傍に生成する陽極水、陰極近傍に生成する陰極水、陽極水と陰極水を合わせた両極水があるが、隔壁や電解液の種類によって、酸性水、微酸性水、電解次亜水、アルカリ水などの電解水を調製できる。例えば、水道水を電気分解することによって、薬剤などを添加することなく、酸化性物質、例えば、次亜塩素酸、過酸化水素を含有する水を作製できる。この場合、pHが、薬剤を添加することなく調整可能であるため、取り扱いが容易となり、特に推奨される。
電解水を調製する場合には、上記のように残留塩素のある水道水のみでもよいが、酸化性物質量を増加させるために、水または水道水にハロゲン塩を投入し、それを電解することが好ましい。ハロゲン塩としては、塩化物、臭化物、フッ化物であればいいが、特に、NaCl、KClは、イオンへの解離も高く、取り扱いも容易であり、特に推奨される。
例えば、塩供給タンクに塩化ナトリウム水溶液を蓄えておき、塩供給ポンプによって、その塩化ナトリウム水溶液を、水または水道水等を含む電解槽に必要量加えることによって、水または水道水等にハロゲン塩を投入することができる。
なお、塩供給ポンプの塩化ナトリウム濃度は高い方が好ましい。その方がポンプによる少量の添加で電解槽に含まれる水における電解質濃度を上げることができる。また、塩供給タンクにおいては、水に溶解しきれない過剰量の塩化ナトリウムと、水とを供給しておき、その上澄みを、電解槽にポンプで供給してもよい。
例えば、塩供給タンクに塩化ナトリウム水溶液を蓄えておき、塩供給ポンプによって、その塩化ナトリウム水溶液を、水または水道水等を含む電解槽に必要量加えることによって、水または水道水等にハロゲン塩を投入することができる。
なお、塩供給ポンプの塩化ナトリウム濃度は高い方が好ましい。その方がポンプによる少量の添加で電解槽に含まれる水における電解質濃度を上げることができる。また、塩供給タンクにおいては、水に溶解しきれない過剰量の塩化ナトリウムと、水とを供給しておき、その上澄みを、電解槽にポンプで供給してもよい。
電解水は、例えば、電解水生成手段を用いて作製することができる。電解水生成手段は、例えば、少なくとも水を保持する電解槽、その保持した水に少なくとも一部が接触するように配置された一対の陽極と陰極、ならびに陽極および陰極への通電手段から構成することができる。また、その電解水生成手段は、陽極水と陰極水の混合手段、その混合水のpH調整手段等を含んでいてもよい。
なお、塩素を含む塩を溶解した水を電解した場合、少なくとも陽極側の電解水には、次亜塩素酸が多く含まれる。
なお、塩素を含む塩を溶解した水を電解した場合、少なくとも陽極側の電解水には、次亜塩素酸が多く含まれる。
上記電解槽としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂で構成したものを用いることができる。配管には、硬質塩ビ管などを用いることができる。
隔膜としては、セラミック、樹脂、ガラス繊維などからなるものを用いることができる。例えば、隔膜として、ポリエステル、ガラス繊維の不織布に0.2〜200μmの孔径の樹脂皮膜をつけて親水性としたものを使用できる。
隔膜としては、セラミック、樹脂、ガラス繊維などからなるものを用いることができる。例えば、隔膜として、ポリエステル、ガラス繊維の不織布に0.2〜200μmの孔径の樹脂皮膜をつけて親水性としたものを使用できる。
電極の材料としては、電気分解反応の用途で通常用いられる材料、例えば、表面に、ルテニウム、イリジウム、白金、パラジウム、ロジウム、錫またはこれらの酸化物あるいはフェライトを有する材料を用いることが好ましい。例えば、電極そのものがこれらの物質で構成されていてもよい。または、電極の基材の表面が、上記材料で被覆されていてもよい。ルテニウム、イリジウム、白金、パラジウム、ロジウム、錫は、単体であってもよいし、酸化物であってもよい。これらの金属の合金も好適に用いられる。合金としては、例えば、白金−イリジウム合金、ルテニウム−錫合金、ルテニウム−チタン合金などが挙げられる。上記材料等は、耐食性に優れており、陽極として用いる場合に優れた不溶性を示す。
塩素発生用の電極としては、更に不溶解性、電解水質の安全性、逆電圧洗浄時の耐久性が要求される。このため、特に、パラジウム、ルテニウム、白金とイリジウムとの合金を主成分とする材料からなる電極が好ましい。
なお、陰極としては、特に厳しい不溶性が要求されないため、例えば、ステンレス、炭素鋼、チタン又はチタン合金、ハステロイ、インコネル等のニッケル合金などの材料からなるものを用いることができる。
なお、陰極としては、特に厳しい不溶性が要求されないため、例えば、ステンレス、炭素鋼、チタン又はチタン合金、ハステロイ、インコネル等のニッケル合金などの材料からなるものを用いることができる。
電気分解は、例えば、電圧は5〜50V、電流は電極表面積あたり0.5〜600A/m2の条件で実施することが好ましい。なお、電流密度が600A/m2より高い場合には、陽極の表面が剥離したり、溶出し易くなる場合がある。電流密度が0.5A/m2より低い場合には、陽極の面積を大きくする必要があり、小型化が困難となる場合がある。
上記のように、酸化水としては、電極の間に隔膜で仕切って、陽極水と陰極水を別個に取り出して陽極水だけを用いた強酸性電解水または若干の陰極水を追加して酸性電解水に調整したものなど、混合のバランスを変化させた電解水を用いることができる。また、電解槽の隔膜をなくして、電気分解を行うことにより生成される弱酸性電解水を酸化水として用いることもできる。
また、陰極近傍で生成されるアルカリ性の電解水を、上記混合物または糖を含む水溶液のpHを5.8〜8.6に調節するために用いてもよい。
酸化水の有効塩素濃度は、500〜2000ppmであることが好ましい。有効塩素濃度が500ppm未満では、酸化力が不十分であり、グルコースの水酸基が酸化される割合が低すぎることがある。この場合、セルロースの分子間力が水和力よりも大きく、セルロースがあまり水和せず、セルロースと水との反応性が向上しない。有効塩素濃度が2000ppmを超えると、酸化力は十分であるが、副反応が盛んになり、糖の収率が低下することがある。さらには、不溶性の不純物が発生し、その不純物が除去しにくいため、糖を含む水溶液を得ることが困難となったり、反応槽などの腐食が大きくなったりすることもある。
なお、このとき、酸化水が電解水の場合には、酸化性物質は、少なくとも、次亜塩素酸、次塩素酸イオン、および塩素を含むことが好ましい。
なお、このとき、酸化水が電解水の場合には、酸化性物質は、少なくとも、次亜塩素酸、次塩素酸イオン、および塩素を含むことが好ましい。
実施の形態2
別の実施形態において、本発明のセルロースを低分子化する方法は、
(a)セルロースを含有する材料を、酸化性物質を含む酸化水と混合して、混合物を得る工程、および
(b)前記混合物を、100℃以上200℃以下に加熱する工程を少なくとも含む。
別の実施形態において、本発明のセルロースを低分子化する方法は、
(a)セルロースを含有する材料を、酸化性物質を含む酸化水と混合して、混合物を得る工程、および
(b)前記混合物を、100℃以上200℃以下に加熱する工程を少なくとも含む。
上記のように、セルロースを含む材料と、酸化性物質を含む酸化水とを混合して、100℃以上200℃以下で加熱することにより、セルロースの水和と加水分解を同時に行うことができる。つまり、セルロースを構成するグルコースの水酸基が、少なくとも部分的に、酸化性物質により酸化され、これにより、セルロースが水和される。さらに、前記酸化により酸が生じ、混合物のpHが低下する。このとき、混合物のpHは、初期のセルロース濃度と酸化水のpHにも依存するが、酸性側になっている。このため、新たに酸を追加することなく、酸化により生じた酸が触媒となり、セルロースが加水分解され、糖が生成される。
ここで、反応槽、加熱手段、酸化性物質等は、上記実施の形態1と同様なものを用いることができる。本実施形態においても、酸化性物質は、次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンのうちの少なくとも一方を含むことが好ましい。
上記のように、混合物の加熱温度は、100℃以上200℃以下である。これは、上記実施の形態1と同様の理由による。
工程(b)における加熱時間については、加水分解反応における糖の収率を上げながらも、副反応による不溶物の発生が抑えられるように、最適な時間が決定される。例えば、数wt%のセルロースを含有する場合には、加熱時間は10時間未満であることが好ましく、5時間未満であることがさらに好ましい。
上記実施の形態1と同様に、本実施形態においても、セルロースを含む材料から糖を製造する方法は、上記工程(a)〜(b)に加えて、上記工程(b)の後に、混合液から、固形分を除去して、糖を含む水溶液を得る工程(工程(c))を含む。
固形分の除去は、上記実施の形態1と同様に、当該分野で公知の固液分離法を用いて行うことができる。
固形分の除去は、上記実施の形態1と同様に、当該分野で公知の固液分離法を用いて行うことができる。
上記実施の形態1と同様に、100℃以上200℃以下で加熱した後の混合物または糖を含む水溶液のpHを5.8〜8.6に調節することが好ましい。
上記実施の形態1と同様に、セルロースを含有する材料と混合される酸化水のpHは5.8以上であることが好ましく、また、酸化水の有効塩素濃度は、500〜2000ppmであることが好ましい。
上記実施の形態1と同様に、セルロースを含有する材料と混合される酸化水のpHは5.8以上であることが好ましく、また、酸化水の有効塩素濃度は、500〜2000ppmであることが好ましい。
また、上記実施の形態1と同様に、酸化性物質を含む電解水を酸化水として用いてもよい。
本発明を、実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は、本発明の一態様を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
α−セルロースを対象に実施した例を示す。
本実施例では、電解水を酸化水として用いた。電解水を以下のようにして作製した。
まず、陽極および陰極を備え、その間に隔膜を有さない所定の電解槽に0.1重量%の食塩水を入れ、その陽極と陰極との間に直流電流を通電して、食塩水を電気分解した。その結果、pH7.0、有効塩素濃度:1000ppmの電解水酸化水を得、この電解水を酸化水として用いた。
本実施例では、電解水を酸化水として用いた。電解水を以下のようにして作製した。
まず、陽極および陰極を備え、その間に隔膜を有さない所定の電解槽に0.1重量%の食塩水を入れ、その陽極と陰極との間に直流電流を通電して、食塩水を電気分解した。その結果、pH7.0、有効塩素濃度:1000ppmの電解水酸化水を得、この電解水を酸化水として用いた。
次に、この酸化水100mlと、α−セルロース1gと混合して、混合物を得た。このとき、α−セルロースは、酸化水に溶解せず沈降した。
得られた混合物を、120mlのSUS製オートクレーブに入れ、加熱した。温度が150℃になったところで、10分間、150℃に保持し、こののち、冷却した。冷却後の混合物のpHは2.5であり、セルロースは、沈降物として多少残っていたが、その殆どが、ゲル状物質として、混合物中に分散している状態であった。
酸化処理により可溶化までされていないものの親水性が向上したと思われる。セルロースを構成する糖の水酸基が酸化され酸が生成したこと、次亜塩素酸イオンが還元され、酸が生成したために液性は酸性となっていた。
酸化処理により可溶化までされていないものの親水性が向上したと思われる。セルロースを構成する糖の水酸基が酸化され酸が生成したこと、次亜塩素酸イオンが還元され、酸が生成したために液性は酸性となっていた。
また、加熱後は、混合物の有効塩素濃度は1.5ppmまで低下していた。従って、pHを調整せず、そのまま100℃まで加熱して、100℃で1時間保持した。
室温まで冷却した後、その混合物を孔径1μmのフィルターでろ過し、得られたろ液の全有機炭素(TOC)を測定した。その結果、全有機炭素量は2800ppmであった。従って、70%のセルロースが可溶化されたことになる。
このろ液に含まれる分子の分子量を、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。その結果、その分子量は、ポリエンチレンオキサイド換算分子量で、300から5000の間で分散しており、平均分子量は550であった。このことから、本発明の処理により、セルロースの70%がオリゴ糖または単糖まで加水分解されていることがわかった。
実施例1と同様に、α−セルロースを対象に実験を行った。
酸化性物質を入れていない水道水(pH7.0、有効塩素濃度:0.1ppm)100mlと、α−セルロース1gと混合して、混合物を得た。この混合物において、α−セルロースは、溶解せず沈降していた。
酸化性物質を入れていない水道水(pH7.0、有効塩素濃度:0.1ppm)100mlと、α−セルロース1gと混合して、混合物を得た。この混合物において、α−セルロースは、溶解せず沈降していた。
得られた混合物を、120mlのSUS製オートクレーブに入れ、加熱した。温度が150℃になったところで、150℃に10分保持したのち、冷却した。冷却後の混合物のpHは7.0であり、セルロースは液中に沈降したままであった。
そこで、その混合物に希硫酸を加え、そのpHを2.5とし、100℃まで加熱し、その温度で1時間保持した。室温まで冷却後、その混合物を孔径1μmのフィルターでろ過し、得られたろ液のTOCを測定した。その結果、全有機炭素量は、35ppmであった。この場合、わずか0.9%のセルロースだけしか可溶化されてはいなかった。
α−セルロースに、酸化水として次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入して加熱処理した。このとき、α−セルロースの重量、酸化水のpH、酸化水の有効塩素濃度、α−セルロースと混合される酸化水の量、加熱温度、加熱時間、加熱時の攪拌の回転数という処理条件を、それぞれ3水準で変化させた。それと共に、市販の薬剤で調製した次亜塩素酸ナトリウムまたは電解で生成した次亜塩素酸ナトリウムの異なる2種類を用いた。
以上の8つを制御因子として、それぞれ2または3水準変動させた。L18(2137)の直交によって、各因子を18種類に交互作用させた18実験を行った。それぞれの実験手順は次の通りである。
以上の8つを制御因子として、それぞれ2または3水準変動させた。L18(2137)の直交によって、各因子を18種類に交互作用させた18実験を行った。それぞれの実験手順は次の通りである。
酸化水とセルロースとを混合して、混合物を得、その混合物を加熱した。その混合物を、冷却したのち、その混合物に可溶化したもののTOCを測定し、可溶化率を算出した。さらに、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により、グルコースを定量して、グルコースの回収率を算出した。
表1に、各実験における制御因子の水準と、可溶化率、グルコース回収率を示す。また、表1から、各制御因子の誤差分散とSN比を算出し、各制御因子のグルコース回収率に対する要因効果を調べた。得られた結果を表2に示す。
誤差分散から計算されるSN比は大きいほど、グルコースの回収率を向上させるのには好ましい。表2の結果から、pHは5.8以上であること、つまり中性から塩基性であることが好ましいことがわかる。また、加熱温度は、100℃以上が好ましく、特に150℃〜200℃が好ましいことがわかる。なお、200℃を超えて加熱すると、タールが多くなり、糖の収率が低下すると共に、糖を含む水溶液とタールとの分離も困難であった。
さらに、有効塩素濃度が大きいほど可溶化率は向上している。このことは、次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンによる酸化反応によって、セルロースの水への親和性が向上し、セルロースが加水分解されやすくなり、可溶化率が高くなることを示している。有効塩素濃度としては500ppm以上であることが好ましい。
また、表2の時間の要因効果を見ると、最も好ましい反応時間は60分であることがわかる。一方、反応時間が120分になると、逆にSN比が悪くなり、糖の収率が低下する傾向にあった。この結果から、反応時間が長すぎると、加水分解は進むものの、可溶化率を低下させる副反応も大きく進んでいると判断できる。
本発明のセルロースを低分子化する方法とそれを用いた糖の製造方法は、セルロースを含むバイオマス原料から、糖やアルコールなどのエネルギー源の製造、または糖を出発原料とする化学品やプラスチックの製造の際の共通工程である糖の製造に適応できる。
Claims (9)
- セルロースを含有する材料に含まれるセルロースを低分子化する方法であって、
(a)セルロースを含有する材料を、酸化性物質を含む酸化水と混合して、混合物を得る工程、
(b)前記混合物を、100℃以上200℃以下に加熱する工程
を少なくとも含む方法。 - 前記工程(b)の前に、(c)前記混合物を50℃〜150℃に加熱した後、前記混合物のpHを1〜3とする工程をさらに含む請求項1に記載のセルロースを低分子化する方法。
- さらに、前記工程(c)の後で、かつ前記工程(b)の前に、前記混合物に含まれる前記酸化性物質の濃度を100ppm以下に調整する工程を含む請求項2に記載のセルロースを低分子化する方法。
- さらに、前記工程(b)の後に、前記混合物のpHを5.8〜8.6に調整する工程を含む請求項1に記載のセルロースを低分子化する方法。
- 前記酸化水に含まれる酸化性物質が、次亜塩素酸および次亜塩素酸ナトリウムの少なくとも1種を含む請求項1に記載のセルロースを低分子化する方法。
- 前記酸化水の有効塩素濃度が、500〜2000ppmである請求項5に記載のセルロースを低分子化する方法。
- 前記酸化水が、ハロゲン塩を含む水を電気分解して生成される電解水である請求項1に記載のセルロースを低分子化する方法。
- 前記酸化水のpHが5.8以上である請求項1に記載のセルロースを低分子化する方法。
- セルロースを含有する材料から糖を製造する方法であって、
請求項1〜8のいずれかに記載の方法により、低分子化したセルロースを含む混合物を得た後、前記混合物から固形分を除去して糖を含む水溶液を得る工程、を含む方法。
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JP2008228583A (ja) * | 2007-03-16 | 2008-10-02 | Seiko Instruments Inc | セルロースの分解方法及びグルコースの生産方法 |
EP2332928A3 (en) * | 2009-12-01 | 2011-08-10 | Honda Motor Co., Ltd. | Method for lysing cellulose |
JP2011206044A (ja) * | 2009-09-30 | 2011-10-20 | Sekisui Chem Co Ltd | セルロース糖化方法 |
JP2012044880A (ja) * | 2010-07-29 | 2012-03-08 | Sekisui Chem Co Ltd | セルロース糖化方法 |
JP2014033667A (ja) * | 2012-08-10 | 2014-02-24 | Equos Research Co Ltd | セルロース系バイオマス原料の糖化方法 |
JP2014524259A (ja) * | 2011-08-24 | 2014-09-22 | バイオケムテック・ソチエタ・ペル・アチオニ | 酸触媒を最小限にしか使用しないリグノセルロースバイオマスの酸加水分解 |
-
2005
- 2005-05-19 JP JP2005146963A patent/JP2006320261A/ja active Pending
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