JP2006316573A - ソフトファーストストーリー建築物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 風荷重に対して建築物の振動を有効に抑制し、同時に地震時にも有効に振動エネルギーの吸収を行う。
【解決手段】 複数の階を有する建築物において、低層階の水平剛性を当該低層階に支持される上層階の水平剛性よりも小さくし、かつ、当該低層階にハードニング型粘性ダンパーを設けて振動エネルギーを吸収させるようにした建築物。および、複数の階を有する建築物において、1次の固有振動モードにおける低層階の水平変形が当該低層階に支持される上層階の水平変形よりも大きくなるようにし、かつ、当該低層階にハードニング型粘性ダンパーを設けて振動エネルギーを吸収させるようにした建築物。
【選択図】 図4A

Description

本発明は、低層階の水平剛性が当該低層階に支持される上層階の水平剛性よりも小さい、いわゆるソフトファーストストーリー形式の建築物に関し、特に、当該低層階に設けたダンパーをハードニング型粘性ダンパーとして風荷重に対して有効に振動を抑制し、同時に地震時にも有効に振動エネルギーの吸収を行うことができる建築物に関するものである。
建物の低層階の水平剛性を上層階の水平剛性よりも小さくすることによって地震時の水平変形を低層階に集中させ、上層階の地震応答加速度を低減する耐震設計手法がある。特開2002−4628号公報には、低層階は上層階に比較して剛性が低くエネルギー吸収手段を有しており、上層階は低層階に比較して剛性が高くエネルギー吸収手段を有していない骨組み構造が開示されている。該公報によれば、地震発生時には主として低層階が大きく変形し上層階に作用する地震力は小さくなる。
特開2002−4628号公報
このように、低層階の剛性を上層階の剛性よりも低くする、いわゆるソフトファーストストーリー形式の建築物は、上層階に加えられる地震時の荷重を低減する効果があるため、上層階の構造部材断面を低減し、設計自由度を増大させる等の効果がある。
ところが、現実の建築物にソフトファーストストーリー形式を適用しようとすると、以下に述べるような種々の問題がある。
1)減衰定数設定の困難さ
地震や風のような動的外乱によって建築物に生じる振動を抑制するためには、建築物に適切な減衰特性を持たせることが有効である。ところが、地震荷重に対して有効に作用する減衰定数と風荷重に対して有効に作用する減衰定数は同じではない。
すなわち、地震時は建築物が大変形することが前提となるので大変形時に極めて大きなエネルギー吸収を行う減衰機構が必要とされるのに対し、地震荷重に比較すればはるかに小さい風荷重に対しては、小変形時に有効にエネルギー吸収を行う減衰機構が必要である。地震時のエネルギー吸収に対して最適化された減衰機構は、風荷重に対しては硬すぎ(つまり減衰係数が大きすぎ)て変形を拘束する結果ほとんどエネルギー吸収を行わない。逆に、風荷重に対して最適化された減衰機構は、地震時には柔らかすぎ(つまり減衰係数が小さすぎ)てエネルギー吸収が極めて不十分である。
換言すれば、地震と風の両方に対して適合した減衰機構は存在しないのが現状である。
2)アスペクト比の大きな建築物の問題
ソフトファーストストーリー形式は、横幅に対して高さが低い(アスペクト比が小さい)建築物に適用した場合にはその効果が明瞭で顕著であるが(図1)、横幅に対して高さが高い(アスペクト比が大きい)建築物に適用した場合には転倒モーメントの問題を生じるため(図2)に実際の設計は困難になる場合が多い。
図1は、アスペクト比が小さい建築物にソフトファーストストーリーを適用した場合の地震応答の様子を模式的に示したものである。地震時の変形は1階部分10に集中しており、2階以上の階12の変形は非常に小さく押えられる。これに対して、図2に示すようにアスペクトが大きいた建築物にソフトファーストストーリーを適用した場合には、1階の柱20には、大きな水平変形と同時に大きな軸力(圧縮又は引張)22が加わっており、1階の柱は水平方向の大変形を許容すると同時に大きな軸力を負担しなければならない。
ソフトファーストストーリーは低層階の水平剛性を小さくすることが前提なので、低い水平剛性を実現するために低層階の柱の断面積は小さくなる。一方、大きな軸力を保持するには大きな断面積が必要である。
したがって、あるペクト比が大きな建築物の場合にはソフトファーストストーリー形式は適用することができないと考えられていた。
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決することを目的とするものである。
本出願の第1の請求項に記載された発明によれば、複数の階を有する建築物において、低層階の水平剛性を上層階の水平剛性よりも小さくするとともに、当該低層階にハードニング型粘性ダンパーを設けた建築物によって上記の課題を解決する。
低層階とは上層階との対比においてより下の階を意味し、上層階とは低層階より上の階を意味する。低層階は、1階であってもよいが、1階を含む複数の階であっても良い。また、途中階であっても、その上の階に対しては低層階であると解することができるので1階を含むことは必須ではない。低層階の水平剛性が当該低層階に支持される上層階の水平剛性よりも小さいとは、例えば、1階の水平剛性が2階の水平剛性よりも小さいことを意味し、1階の水平剛性が2階以上のどの階の水平剛性よりも小さいことを必ずしも意味しない。
ハードニング型粘性ダンパーは、変形速度が大きい範囲では変形速度が小さい範囲におけるよりも減衰係数(例えばN/kine単位の物理定数)が大きくなる性質を有する粘性ダンパーである。変形速度と減衰係数の関係は、図3Aに示すように特定の変形速度を境に明瞭に変化するようなものであっても良いし、図3Bに示すように明瞭な限界なしに変形速度と共に次第に変化するものであっても良い。粘性ダンパーは、オイルダンパーが代表的なものであるが、オイルダンパーに限定されず、反力が変形速度の関数として表されるダンパーを総称する。したがって、ハードニング型粘性ダンパーは、変形速度が大きい時の減衰係数が変形速度が小さいときの減衰係数よりも大きい、つまり、図3に示す変形速度−反力図において勾配が右上がりの関係を有する減衰機構を全て含むものとする。
本発明に係る建築物においては、前記低層階の鉛直荷重支持部材を密実断面形状の鋼材によって構成するのが好ましい。
本明細書において密実断面とは、水平断面に実質的に空隙を有しないこと、つまりボックス型や管状の断面でないことを意味する。さらに、断面形状において凹部を有しないこと、つまり、I型、H型あるいはC型断面等でないことが望ましい。さらに好ましくは、中空部の無い長方形、正方形あるいは円形断面である。
前記密実断面を有する鋼材は、高弾性鋼であるのが望ましい。
さらに、本発明にかかる建築物においては、1次の固有振動モードにおける低層階の水平変形が上層階の水平変形よりも大きいことが好ましい。
ここで、1次の固有振動モードとは、構造物の剛性と質量を数値化した振動方程式あるいは固有方程式の解として得られる固有値と固有ベクトルの組のうち、最も小さい固有値に対応する固有ベクトルをいう。低層階および上層階は相対的な位置関係を表しており、低層階は1階でもよいが1階には限定されない。上層階は低層階よりも上の階である。階の水平変形は、いわゆる層間変形、つまり、上層の水平変位と当該層の水平変位との差を意味する。
前記ハードニング型粘性ダンパーは、その減衰特性を表す初期勾配と第2勾配の折点に相当する速度vが、前記建築物が、前記低層階の層間変形角が1/200で、該建築物の一次固有周期で振動する際の低層階の層間変形速度以下であることが好ましい。建築物が一次固有モードφに相当する変形性状で、一次固有円振動数ωで振動しており、低層階の層間変形角が1/200、低層階の階高がhであると想定すると、低層階の層間変形速度vは以下の式で表すことができる。

v=hω/200
建築物は前記低層階から自立した構造体を有し、前記ハードニング型粘性ダンパーは、当該構造体と前記上層階とを連結するものであってもよい。低層階から自立した構造体は、下端部を当該低層階の床または支持梁に剛に支持され、上端部が上層階の床又は梁に剛結されていない構造体である。形状は、特に限定されないが、例えば、下端部が低層階の床又は支持梁に支持され、上端部が相互に結合された一対の構造部材からなる概略二等辺三角形状等である。
あるいは、前記建築物は前記上層階から垂下された構造体を有し、前記ハードニング型粘性ダンパーは、当該構造体と前記低層階とを実質的に水平方向に連結するものであってもよい。上層階から垂下された構造体は、前出の低層階から自立した構造体を倒立させた形状であり、上端部を上層階の床または支持梁に剛に結合され、下端部が低層階の床又は梁に剛結されていない構造体である。形状は、特に限定されないが、例えば、下端部が低層階の床又は支持梁に支持され、上端部が相互に結合された一対の構造部材からなる概略倒立二等辺三角形状等である。
前記低層階から自立した構造体または上層階から垂下された構造体は、建築物の低層階より上階の自重を支持可能な強度を有することが好ましい。本出願の1つの実施例によれば、低層階は1階である。
本発明の請求項1に記載された建築物によれば、低層階の水平剛性が上層階の水平剛性よりも小さいために、風や地震荷重を受けた際の変形が低層階に集中する。その結果、当該低層階に設けたハードニング型粘性ダンパーは風荷重に対して有効に振動を抑制し、かつ、地震時にも有効に振動エネルギーの吸収を行うことができる。
つまり、ハードニング型粘性ダンパーは風荷重による振動に相当する比較的小さな変形速度に対しては減衰定数が小さい緩やかなダンパーとして作用し、地震時(特に大地震時)の大変形速度に対しては減衰定数が大きい強力なダンパーとして作用する。したがって、本発明にかかる建築物は風荷重に対する振動を有効に抑制してゆれの無い快適な空間を提供すると共に、地震時(特に大地震時)の大変形に際しては振動のエネルギーを有効に吸収して安全性を確保する。
前記低層階の鉛直荷重支持部材が密実断面を有する鋼材であれば、低層階の水平剛性の低減と鉛直荷重に対する剛性および強度の確保を両立させるのに有利である。
本発明にかかる建築物のは風荷重や地震力を受けた際には、低層階が水平変形し上層階はほぼ水平移動することが好ましい。そのためには低層階の荷重支持部材は、水平方向剛性が小さいと同時に鉛直方向剛性が大きいことが望ましい。鉛直方向剛性が小さいと、荷重支持部材の軸方向変形に起因して建築物全体のロッキング変形が大きくなるからである。
ところで、鉛直方向の剛性と強度は、基本的には部材の水平断面積に比例する。
一方、柱の剛性は、水平方向の支配的な変形である曲げ変形に対する剛性(曲げ剛性)については、断面二次モーメントと称する断面形状によって規定される値に比例しており、同一断面積であれば、ボックス等の中空断面、あるいは、I型、H型、C型等の凹部を有する断面形状は断面二次モーメントが大きい。一般に、柱、梁等の構造部材は、少ない材料によって最大の断面二次モーメントを得ることが要求されており、ボックス、I型等の断面形状はその目的に適合する形状である。
本発明では、上記一般の設計とは逆に、同一断面積で断面二次モーメントを小さくする必要があるが、そのためには、中空部を有さない円形、ひし形、正方形、長方形の断面が有利である。円形、ひし形等の断面を有する鉛直荷重支持部材は、単一の部材であっても良いが、複数の部材を溶接等によって張り合わせた合成部材であっても良い。
前記密実断面形状の鋼材が高弾性鋼であれば、低層階の水平剛性の低減と鉛直荷重に対する剛性および強度の確保に有利である。
また、1次の固有振動モードにおける低層階の水平変形が当該低層階に支持される上層階の水平変形よりも大きければ、1次の固有モードの刺激係数が他のモードに比較して顕著に大きくなり、風や地震荷重を受けた際の応答は1次の固有振動モードが支配的となるので、上述のような、低層階が水平変形し上層階はほぼ水平移動する変形性状を実現するのに好適である。
また、前記1次の固有振動モードにおいて変形の集中する低層階にハードニング型粘性ダンパーが設けられているので当該ダンパーの振動エネルギー吸収が建築物全体の振動抑制に有効に作用する。ハードニング型粘性ダンパーが風荷重による振動に相当する比較的小さな変形速度に対しては減衰定数が小さい緩やかなダンパーとして作用し、地震時(特に大地震時)の大変形速度に対しては減衰定数が大きい強力なダンパーとして作用するので、本発明にかかる建築物は風荷重に対する振動を有効に抑制してゆれの無い快適な空間を提供すると共に、地震時(特に大地震時)の大変形に際しては振動のエネルギーを有効に吸収して大変形を抑制する。
前記ハードニング型粘性ダンパーの減衰特性を表す初期勾配と第2勾配の折点に相当する速度vを、前記建築物が、前記低層階の層間変形角が1/200で、該建築物の一次固有周期で振動する際の低層階の層間変形速度以下とすることによって、風荷重に対する振動抑制効果と、地震時の振動抑制効果をバランスよく両立させることができる。
低層階から自立した構造体を設け、ハードニング型粘性ダンパーによって構造体と上層階とを実質的に水平方向に連結することによって、筋交い等の斜め材にダンパーを設けた場合に比較して、低層階と上層階との間の層間変位を完全にダンパーに伝達することができるので、エネルギー吸収の点から有利である。斜め材にダンパーを設けた場合、層間変位Δに対してダンパーの変位はΔsinθ(θは筋交いと鉛直方向が作る角)となり、実質的に水平方向に連結した場合よりも小さく、層間変位が有効にダンパーに伝えられない。
前記自立した構造体が、前記建築物の前記低層階より上階の自重を支持可能な強度を有すれば、想定外の大地震入力によって低層階の荷重支持部材が降伏した場合にも、自立した構造体が建築物の自重を支えることができるので倒壊に対するフェイルセーフ機構として作用する効果がある。
上層階から垂下された構造体を設け、前記ハードニング型粘性ダンパーは、当該構造体と前記低層階とを実質的に水平方向に連結するものであれば、垂下した構造体に前記自立した構造体と同様の効果を期待することができる。垂下した構造体の場合は、さらに、大変形時のフェイルセーフ機構としては一層信頼性が高いと考えられる。
また、低層階が1階であれば、建築物の全体に対して本発明の効果を期待することができる。
以下に、添付の図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図4Aは、1スパン×1スパンの平面形状を有し、10層からなる建築物図4Bの1階部分の骨組みを示すものである。高さ48m、1スパン7mなのでアスペクト比は約7である。図示しない2階以上の骨組みは、ソフトファーストストーリーによって地震時の荷重が低減されている点以外は通常どおりのラーメン構造であり、例えば柱はH型鋼、梁にはI型鋼が使用される。通常の構造と特に違いは無いので、ここでは図示を省略する。ブレースは有っても良いが必須ではない。
図4に示されているように、1階部分はI型鋼による基礎梁40と梁41、柱42、43によって囲まれたラーメン構造である。基礎梁40からは、下端部を基礎梁40に固定され、上端部は相互に固定されて、基礎梁とともにほぼ正三角形の構造体44を構成する2つの斜め部材45が設けられている。図面からは明瞭ではないが、構造体44の頂部は梁41と接しておらず、構造体44は自立している。したがって、構造体44は、建築物の自重を負担しない。
構造体44の頂部には、ハードニング型粘性ダンパー46の一端が回転自在にピン接合されており、ハードニング型粘性ダンパー46の他端は梁41下部に固定された取り付け部47にやはり回転自在にピン接合されている。したがって、基礎梁40と梁41との間の水平層間変位がハードニング型粘性ダンパー46の変位として与えられる。
図5は、ハードニング型粘性ダンパー46の変形速度と反力との関係を概念的に示したものである。変形速度が10kine以下の範囲では、勾配Cは30(kN/kine)であり、変形速度が10kineを越えた領域では勾配Cは105(kN/kine)である。一般的な粘性ダンパーについては勾配は一定値を取る(反力は変形速度に比例する)と考えられているのに対して、ハードニング型粘性ダンパー46は、2つの勾配を有し、変形速度が大きいときの勾配が変形速度が小さいときの勾配よりも大きい(その比率は3.5)点が特徴である。
図6は、このハードニング型粘性ダンパー46に強制変形を加えた際の、変形と反力(減衰力)との関係を表わしたグラフである。強制変形は、想定される建築物の1次固有周期である1.5秒周期の正弦波とし、その振幅は0.55cm〜5.5cmまでの5段階を採用した。図6に示された5つの閉曲線がこれに対応する。振幅が0.55cmと1.1cmの2つの場合は、変形と減衰力との関係を表す曲線は楕円形なので、完全な粘性ダンパーとして作用していることが分かる。しかし、振幅が2.75cm以上の場合は、特に変形がゼロ近傍で減衰力の大きさは楕円よりも大きくなり、結果的に変形−減衰力曲線は上下に引き伸ばされた独特の形状になる。これは、振幅が2.75cm以上の場合には変位がゼロ近傍では速度が10kineを超えて速度−反力曲線の勾配が変化することに対応したものである。
このようなハードニング型粘性ダンパーは、例えば図7に模式的に示す構造によって実現することができる。図7において70はダンパー本体、71はピストン、72はピストンに設けられた流通孔、73は流体、74はボール、75はボールを弾性支持するばね、76は支持面、77は凸部である。図7に示すハードニング型粘性ダンパーは、ボール74、ボールを弾性支持するばね75、支持面76および凸部77を有する点において通常の粘性ダンパーと異なっている。ピストンの移動速度が一定値以下であれば、ボール74はばね75の弾性力によって支持面76に押圧されるので、粘性体の流路面積は一定であり、減衰係数は一定値を取る(図7Aの状態)。しかし、ダンパーの変形速度が一定値を超えると、流体の動的圧力によってボール74はばね75の弾性力に抗して引き出され凸部77に当接し、流路を狭める。従って、減衰係数が大きくなる(図7Bの状態)。
上記の構造はハードニング型粘性ダンパーの1つの実施例を示すものであるが、ハードニング型粘性ダンパーの構造はこれに限定されず、種々の構造をとり得ることは自明である。
図8は、1階の柱の断面図である。断面は中空の無い正方形である。当該正方形断面は、単一の部材で実現することもできるし、複数の部材を溶接して実現することもできる。図8は、3つの部材80a〜80cを溶接して正方形断面を実現した場合を示している。部材80a〜80cは、開先81を形成して溶接されている。
図9は、稀に生じる程度の強さの地震動に対して地震応答解析を行って、本発明に係る建築物と通常の設計を行った(ソフトファーストストーリーでない)建築物の地震応答を比較したものである。丸、三角等の印は地震入力の違いを表す。
図9の左側に示した応答変位を見ると、4階の床レベル以下については本発明に係る建築物の変位が通常の設計を行った建築物の変位よりも大きいが、4階より上については変位が顕著に減少している。層間変位についてみると、本発明にかかる建築物は層間変位が1階に集中しており、2階以上の層間変位は非常に小さい。また、右側の加速度を見ると、本発明にかかる建築物の加速度は、2階以上のレベルで顕著に減少していることがわかる。
この結果は、通常の設計を行った建築物に比較して本発明にかかる建築物の地震応答が顕著に低減され、2階以上について耐震設計尤度が増大し、構造部材の断面を小さくすることができることを意味している。
図10は、本発明による建築物と従来の粘性ダンパーを用いたソフトファーストストーリー建築物(つまり、本発明のハードニング型粘性ダンパーを従来の粘性ダンパーと交換したもの)との地震応答を比較したものである。2階以上の最大加速度分布を見ると、本発明の建築物において最大加速度が顕著に低減されていることが分かる。
この結果は、地震応答加速度の低減に関して、本発明が従来の粘性ダンパーを用いたソフトファーストストーリー建築物よりも優位であることを示している。
ここでは地震応答に関する本発明の優位性を示したが、従来の建築物の場合には、地震時の応答加速度を低減するように最適化された粘性ダンパーを用いると、風荷重に対して有効にエネルギー吸収を行わないという問題があるが、本発明の建築物についてはそのような問題が軽減されていることは既に述べた通りである。
図4に示されているように、自立構造体の頂部にはユニバーサルジョイントを介してハードニング型粘性ダンパー46の一端が回転自在にピン支持されており、ハードニング型粘性ダンパー46の他端は梁41下部に固定された取り付け部にやはりユニバーサルジョイントでピン支持されている。頂部と2階の梁41との間には数ミリ程度の空隙が設けられている。
当該構造体44の1つの機能はハードニング型粘性ダンパー46に層間変位を与えることである。しかし、2階の水平変形が非常に大きく構造部材が降伏したような場合には、構造体44は2階の梁41に接触して建物の自重を支持するフェイルセーフ機構として作用する。
したがって、想定外の巨大な地震力が入力されたような場合にも建築物の倒壊を阻止することができる。
アスペクト比の小さい建物にソフトファーストストーリーを適用した場合の概念図 アスペクト比の大きい建物にソフトファーストストーリーを適用した場合の概念図 本発明において使用するハードニング型粘性ダンパーの変形速度−反力特性を示す概念図 本発明の実施例の第1層(低層階)の骨組みを示す図面 本発明の実施例の第1層(低層階)の骨組みを示す図面 ハードニング型粘性ダンパーの変形速度−反力関係を示すグラフ ハードニング型粘性ダンパーの変形−減衰力(反力)関係を示すグラフ ハードニング型粘性ダンパーの構造を模式的に示す図面 1階の柱の断面図 本発明による建築物と通常の設計による建築物の地震応答比較 本発明による建築物と従来の粘性ダンパーを用いたソフトファーストストーリー建築物の地震応答比較

Claims (6)

  1. 複数の階を有する建築物において、低層階の水平剛性を上層階の水平剛性よりも小さくするとともに、当該低層階にハードニング型粘性ダンパーを設けたことを特徴とする建築物。
  2. 前記低層階の鉛直荷重支持部材を密実断面形状の鋼材によって構成したことを特徴とする請求項1に記載の建築物。
  3. 1次の固有振動モードにおける低層階の水平変形が上層階の水平変形よりも大きくなるように設定したことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の建築物。
  4. 前記密実断面形状の鋼材は高弾性鋼であることを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の建築物。
  5. 前記ハードニング型粘性ダンパーの減衰特性を表す初期勾配と第2勾配の折点に相当する速度Vは、前記建築物が、前記低層階の層間変形角が1/200で、該建築物の一次固有周期で振動する際の低層階の層間変形速度以下である請求項1に記載の建築物。
  6. 前記建築物は前記低層階から自立した構造体を有し、前記ハードニング型粘性ダンパーは、当該構造体と前記上層階とを水平方向に連結することを特徴とする請求項1に記載の建築物。
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