JP2006315379A - ホウ酸塩ベース木材表面処理剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】ホウ酸塩ベース木材表面処理剤の製造プロセスを短縮し、該表面処理剤を水で希釈する際の加水分解による沈殿の発生を抑制する。
【解決手段】表面処理剤の主原料であるホウ酸塩及びアルキレングリコールにグリセリン及び微量の糖アルコールを加えて加熱・縮合する。
【選択図】なし
【解決手段】表面処理剤の主原料であるホウ酸塩及びアルキレングリコールにグリセリン及び微量の糖アルコールを加えて加熱・縮合する。
【選択図】なし
Description
本発明は地面に直接接触せず、液体の水のかからない環境で使用される木材を、長期間劣化生物から保護するため、木材の表面に塗布あるいは散布する、ホウ酸塩をベースとした木材表面処理剤に関する。
木材は再生可能な優れた建築材料として広く使用されているが、腐朽や虫害などの生物劣化を受けやすい欠点がある。この欠点を克服する手段として、木材の表面にホウ酸塩を含む表面処理剤を塗布あるいは散布する方法が広く実施されている。
ホウ酸塩は、水分を媒体として木材中を移動(拡散)する性質があるため、表層部での濃度は年月とともに減衰し、やがて木材劣化生物の毒性閾値以下まで低下して木材保護機能を失うことになる。
表面処理剤の効果を半永久的に保持するためには、処理剤中のホウ酸塩濃度を高め、表層部に塗布したホウ酸塩が木材中に均一に拡散しても、劣化生物の毒性閾値以上のホウ酸塩濃度が保証されるようにすることである。通常、ホウ酸塩に対し最も高い抵抗を示す木材劣化生物はイエシロアリで、毒性閾値はホウ酸換算で3kg/m3である。
標準的な表面処理条件では、木材の表面1m2あたり300gの処理剤が塗布される。壁を構成する代表的な構造材である柱用の10cm正角材を例にとる。この角材の側面に標準条件で塗布した処理剤中のホウ酸塩が材中に均一に分布し、3kg/m3の濃度となるためには、処理剤はホウ酸換算で25%のホウ酸塩を含む必要がある。しかし、ホウ酸塩中水に最もよく溶ける八ホウ酸二ナトリウム四水和物(DOT)でも、室温では高々10%しか溶解しない。
ホウ酸塩換算25%以上のホウ酸塩を含む液体を調整する手法として、ホウ酸塩とアミンやアルコール類との反応を利用することが知られている。特にアルキレングリコールはホウ酸塩と反応し易く、沸点が高いためVOC問題もなく、木材との親和性に優れているため、ホウ酸塩を有効成分とする表面処理剤用溶媒として商業的に利用されている。
例えば、米国特許4,610,881は、酸化ホウ素(B2O3)換算で25%以上のホウ酸塩をエチレングリコールに溶解した組成物が木材保存剤として優れた性能を有するとしている。
また、米国特許5,104,664では、ポリアルキレングリコール4〜23%、アルキレングリコール20〜50%及びグリコール可溶性ホウ酸塩からなる組成物が木材保存剤として優れているとしている。これらの組成物は、そのまま、あるいは水を加えてホウ素濃度、溶液粘度を調節し、木材表面に塗布または散布される。
USP4,610,881 USP5,104,664
また、米国特許5,104,664では、ポリアルキレングリコール4〜23%、アルキレングリコール20〜50%及びグリコール可溶性ホウ酸塩からなる組成物が木材保存剤として優れているとしている。これらの組成物は、そのまま、あるいは水を加えてホウ素濃度、溶液粘度を調節し、木材表面に塗布または散布される。
ホウ酸塩をアルキレングリコール中に均一に分散させ、表面処理剤として使用する技術には、共通の問題がある。第一に、ホウ酸塩をアルキレングリコール中に均一に分散させ、安定な組成物を得るには、ホウ酸塩とグリコールを加熱下で反応させ、反応物中の水を除去する必要がある。このプロセスは長時間を要し、製造コストに影響する。
また、ホウ酸塩濃度や粘度を調製するために組成物を水で希釈する場合、ホウ酸塩とアルキレングリコールの縮合物は加水分解し分解生成物が沈殿することが多い。このため、一旦水で希釈した溶液は、速やかに消費する必要がある。
本発明では、ホウ酸塩とアルキレングリコールの縮合反応を速やかに進めるため、原料とするホウ酸塩4部に対し、1〜2部のグリセリンを添加する。
また、本発明では、表面処理剤を水で希釈した場合に、加水分解生成物が沈殿するのを抑制するため、微量の糖アルコールを添加する。
本発明によれば、ホウ酸換算濃度50%のホウ酸塩ベース表面処理剤を短時間に製造できる。この表面処理剤を水で1:1に希釈したものは、ホウ酸塩換算濃度25%を満足し、しかも、加水分解による沈殿の生成は長時間阻止される。
本発明でいうホウ酸塩は、ホウ素のオキソ酸とその塩を総称するが、特に八ホウ酸二ナトリウム四水和物(DOT)である。また、ホウ酸とホウ砂をモル比で約4:1に混合した混合物は、水溶液中ではDOTと同一とみなしてよい。
本発明では、まずDOT水溶液にグリセリンを添加する。DOTは化学式Na2B8O13で示され、1分子中に4価のホウ素原子が2個存在する。グリセリンは4価のホウ素原子と瞬間的にキレート結合を形成し、DOTをアルキレングリコールに分散し易くすると考えられる。分散を容易にするためには、DOT1分子あたり1〜2個のグリセリン分子が効果的に作用すると考えれば、添加すべきグリセリンの量は、化学量論的にDOT4部に対して0.90〜1.80部となる。この推論は、観察結果とほぼ一致する。
本発明では、グリセリンと4価のホウ素との反応が迅速であるため、アルキレングリコールとグリセリンは同時に加えても別個に加えてもよい。アルキレングリコールの添加量は、最終製品中のホウ素濃度を規定するものであるが、DOT4部に対して3部以上が好ましい。これ以下の場合は、製品の粘度が高すぎて扱いにくくなる。
DOT、水、グリセリン、アルキレングリコールの混合物を加熱すると、水は沸騰し、反応系外に除去される。この場合、全部の水を追い出す必要はなく、少量の水が残っている方が、粘度が低いだけ扱い易い。ただし、過剰の水は製品中に沈殿や白濁を生ずる危険性がある。
本発明で、微量の糖アルコールの添加が、表面処理剤を水で希釈する際の沈殿の精製を長期にわたり抑制するする理由は明らかではない。添加量は、マニトールやキシリトールの場合、DOTに対し5%以下、好ましくは0.2〜1%である。
本発明を構成する必須要件ではないが、木材に対する濡れ性や浸透性を改良する目的で少量の界面活性剤を添加してもよい。また、処理木材の識別や装飾等のため染料、顔料などの着色剤を添加してもよい。
実施例1−4
1リットルのステンレス製ビーカーに所定量のDOTと水を入れ、スプーンで底部に軽く圧縮した。この上に所定量のエチレングリコール(EG)、グリセリン(GL)、ポリエチレングリコール(PEG:平均分子量200)を加え、電気ヒーターにのせて加熱した。ビーカー内の温度が上昇し、DOTが溶融した時点で、スプーンで攪拌を始め、さらに加熱を続けると内容は激しく沸騰する。攪拌を中止しさらに加熱すると、135℃付近で沸騰は弱まる。内温が137℃に達したら加熱を中止し、所定量の粉末状マニトール(MTL)を加え、よくかき混ぜる。加熱を始めてからここまでの時間を反応時間として記録した。
反応生成物を室温に放置、冷却すると粘調で透明な液体が得られる。この液体150gに等量の水を加え、スプーンでかき混ぜて均一な溶液とし、さらにマグネチックスタラーで30分高速攪拌した。得られた溶液のうち、200gは3角フラスコに入れて保管し、時々目視で沈殿の有無をチェックし、沈殿生成が始まるまでの時間を記録した。
残りの溶液で塗装実験を行った。断面61mm×35mmのプレナー仕上げSPF材を長さ200mmに切断した。この試験体の上部50mmを残して、全面に水で1:1に希釈した上記表面処理剤を刷毛塗りした。刷毛塗りは、試験体を垂直に立て、側面に塗布した溶液が流れ始める寸前まで行った。結果を表にまとめた。表において、塗装性とは塗布した場合の溶液の濡れ性であり、弾かれなければ良好とした。白華は塗布面が乾燥につれて白色化する現象で、白華の有無は同一試験体で塗布面と塗布しない面を目視で比較・決定した。
実施例1−4はDOT含有率40%であるが、いずれの場合も反応は非常に早く、30分ほどで終わる。また、水で1:1に希釈した場合の沈殿発生までの時間は、微量のマニトールの添加により著しく延長される。
比較例1−3は、DOT20%水溶液の塗装性、溶液安定性を検討したものである。微量のマニトールの添加により沈殿の生成は2ヶ月以上阻止される。またPEGの添加は塗装性を向上させ、白華を抑える効果がある。
実施例5では、DOT含有率30%の表面処理剤を調製し、希釈せずに塗装した。塗装性は良好で美しい仕上げとなった。この処方は、水濡れを嫌う、切削した乾燥材の保存処理に使用できる。
Claims (3)
- 八ホウ酸二ナトリウム四水和物4部、グリセリン1〜2部、アルキレングリコール3〜10部からなるホウ酸塩を有効成分とする木材保存剤。
- 八ホウ酸二ナトリウム水溶液とグリセリンとの反応性生物にアルキレングリコールを加えて加熱し、水を反応系外に除去すること特徴とする請求項1の木材保存剤の製造方法。
- 請求項1の木材保存剤に、水溶液安定剤としてDOTに対し1重量パーセント以下の糖アルコールを添加してなる木材保存剤。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005164694A JP2006315379A (ja) | 2005-05-10 | 2005-05-10 | ホウ酸塩ベース木材表面処理剤 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018101221A1 (ja) * | 2016-11-30 | 2018-06-07 | すてきナイスグループ株式会社 | ホウ酸含有のコーティング溶剤、接着溶剤及びホウ酸粉、ホウ酸含有物の付着固定処理方法 |
JP2021017422A (ja) * | 2019-07-23 | 2021-02-15 | 日本ボレイト株式会社 | ホウ素系化合物溶液 |
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2005
- 2005-05-10 JP JP2005164694A patent/JP2006315379A/ja active Pending
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