ベランダは、集合住宅においては、いわば家屋の顔であり、ここに外観上違和感がある物を吊り下げることは、家事従事者にとっては心理的抵抗の強いことであり、つい害虫防除剤の使用を躊躇しているうちに蚊等の虫に刺されて健康を損うことになりかねない。
そこで、本発明は、家屋のベランダ等において使用しやすい防虫具を提供することを、解決すべき課題とする。
上記課題を解決するための手段である請求項1に記載の発明は、
枠部材及び通気部材からなる本体部と、該本体部を他の部材に係止させる係止部を備え、前記通気部材は前記枠部材に囲まれ、前記通気部材は、害虫防除成分が樹脂成分に保持されてなる害虫防除材であり、該害虫防除成分が式(1)で示されるエステル化合物であることを特徴とする防虫具である。
〔式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、
R2はメチル基又は
CH=CR21R22
(式中、R21及びR22は独立して、水素原子、メチル基又は塩素原子を表す。)
で示される基を表し、
R3は水素原子、メチル基又はメトキシメチル基を表す。〕
かかる防虫具を他の部材(ベランダの物干し具等)に係止すれば、通気部材を風が通ることにより、気化した害虫防除成分が周囲の空気中に放出されるので、簡易な構成によりベランダ等において容易に害虫を駆除でき、家事従事者や家族等の健康保持に役立つ。
ここで、「害虫防除成分が保持されている」とは、基材上に塗布されているものと、基材に含浸または混練されているもののいずれをも含む概念であるが、例えば、樹脂成分と害虫防除成分を混練すれば、任意の形状に成形等の加工が容易であり、害虫防除成分が徐々に放出されるので好ましい。樹脂成分としては、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル及びポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有してなる樹脂組成物であることが好ましい。特に、樹脂成分がポリオレフィン系樹脂を含有してなる樹脂組成物であることが好ましい。
また、請求項2に記載の発明は、前記通気部材は、前記害虫防除成分がポリオレフィン系樹脂に保持されてなる害虫防除材であり、該ポリオレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸エステル又はカルボン酸ビニルエステルとオレフィンとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の防虫具である。
かかる構成によっても、簡易な構成によりベランダ等において害虫を駆除でき、家事従事者や家族等の健康保持に役立つ。
なお、本発明でいう「害虫防除材」とは、形状を有するものであるので、「防除材」と表記している。
請求項3に記載の発明は、害虫防除成分が式(2)で示されるエステル化合物であり、前記通気部材は前記害虫成分と樹脂成分とを混練、成形してなる害虫防除材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防虫具である。
〔式中、R3は水素原子、メチル基又はメトキシメチル基を表し、
R21及びR22は独立して、水素原子、メチル基又は塩素原子を表す。〕
かかる構成によっても、簡易な構成によりベランダ等において害虫を駆除でき、家事従事者や家族等の健康保持に役立つ。
請求項4に記載の発明は、本体部は板状であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の防虫具である。
かかる構成によれば、防虫具はコンパクトであって場所を取らない。
請求項5に記載の発明は、生活用品に擬態した形状を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の防虫具である。
かかる構成によれば、本発明の防虫具を家庭において使用しても目立たないので、防虫具が使用しやすい。
請求項6に記載の発明は、本体部は衣類に擬態した形状を有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の防虫具である。
かかる構成によれば、本発明の防虫具をベランダ等で使用しても目立たないので、防虫具が使用しやすい。
請求項7に記載の発明は、係止部によって吊り下げることができることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の防虫具である。
かかる構成によれば、本発明の防虫具を、例えばベランダの物干竿に吊り下げることにより、容易に使用できる。
請求項8に記載の発明は、係止部は衣類ハンガーのフック部の形状を有することを特徴とする請求項7に記載の防虫具である。
かかる構成によれば、本発明の防虫具をベランダ等に吊り下げたときに目立たないので、防虫具が使用しやすい。
請求項9に記載の発明は、係止部と枠部材は一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の防虫具である。
かかる防虫具は、構成が簡易で製作が容易である。
請求項10に記載の発明は、通気部材は網状であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の防虫具である。
かかる構成によれば、害虫防除成分が揮散しやすい。
請求項11に記載の発明は、通気部材は格子状であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の防虫具である。
かかる構成によっても、害虫防除成分が揮散しやすい。
請求項12に記載の発明は、通気部材は交換可能に枠部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の防虫具である。
かかる構成によれば、害虫防除成分が気化しきったところで通気部材のみを交換することにより、枠部材、係止部はそのまま使用し続けることができ、資源を節約しつつ防虫効果を得ることができる。
通気部材を交換可能に枠部材に取り付ける具体的構成として、種々のものが採用できる。例えば、網状の通気部材を用いる場合、枠部材にピンを突設してそのピンに通気部材を引っ掛ける構成、枠部材を二枚重ね構造にしてその間に通気部材を挟む構成等が採用できる。
格子状の通気部材を用いる場合、例えば、枠部材の上下に溝を設け、格子状の通気部材を幾分弾性変形によりたわませてその上下の縁を当該溝に嵌め込む構成が採用できる。また、上記溝に替えて複数の孔を設け、格子状の通気部材には上下に複数の凸部を設け、同様に弾性変形を利用して孔に凸部を嵌め込む構成も採用できる。或いは、枠部材にレール状部を設けて通気部材をスライドさせて挿入する構成、枠部材を二枚重ね構造にしてその間に通気部材を挟む構成等も採用できる。
取付け・取外しの容易さやコストを考慮して、これらの構成を適宜選択して用いればよい。
請求項13記載の発明は、外気にさらされた時間に応じて外観が変化する表示手段を外部から目視可能な状態で備えたインジケータを有することを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の防虫具である。
かかる構成によって、害虫防除成分が気化しきる時期と上記外観が変化する時期を合わせておけば、使用者は、害虫防除成分が気化しきる時期、すなわち、防虫具または通気部材の交換時期を目視により容易に知ることができる。
本発明の防虫具によれば、簡易な構成により害虫を駆除でき、健康保持に役立つ。
まず、本発明の実施形態である防虫具の形状について説明し、材質については後述する。防虫具の形状としては、例えば生活用品が挙げられ、具体的にはズボン、Tシャツ、タンクトップ、ランニングシャツ、ワイシャツ、ブラウス、パンツ、トレーナー等の衣類、靴、タオル、シーツ、布団等が挙げられる。生活用品以外の本防虫具の形状としては、イヌ、ネコ、ウシ、馬、リス、鶏、鳥、蝙蝠、トンボ、カエル等の生物の形状が挙げられる。本発明の一実施形態である防虫具を図1に符号1で示す。防虫具1は衣類ハンガーに掛けられた半袖シャツに擬態した形状のものである。防虫具1は、本体部2と係止部3からなり、係止部3は、防虫具1を物干し竿等に係止するための部分であるとともに、衣類ハンガーのフック部に擬態した形状のものである。本体部2は、その大部分において半袖シャツに擬態した形状を有するとともに、上部の一部分においては、衣類ハンガーのフック部以外であって半袖シャツに隠されていない部分に擬態した形状を有している。本体部2は、枠部材5と通気部材6からなり、通気部材6は枠部材5に囲まれている。枠部材5にはインジケータ7(後述)が取り付けられている。
防虫具1において、係止部3と枠部材5は一体であり、枠部材5は孔8を有する。通気部材6は図2のごとく枠部材5の孔8に取付け・取外し可能であって、交換できる。
通気部材6を枠部材5に取り付ける具体的構成として、図3に記載したものでは、枠部材5の上下に溝21,22が設けられている。そして、格子状の通気部材6を枠部材5に取り付けるには、通気部材6を幾分弾性変形によりたわませてその上下の縁23,24を溝21,22に嵌め込む。外力を取り去れば、通気部材6は溝21,22により保持される。通気部材6を枠部材5から取り外す際には、また通気部材6を弾性変形によりたわませればよい。
通気部材6を枠部材5に取り付ける具体的構成として、図4に記載したものでは、枠部材5の孔8の上下にレール状部材25,26が設けられており、格子状の通気部材6を、これらのレール状部材25,26をガイドとして横からスライドさせて差し込むことによって取り付け、また、取り外すことができる。
通気部材6を枠部材5に取り付ける具体的構成として、図5に記載したものでは、枠部材5の孔8の上下に、図5のレール状部材25,26と異なり、上下それぞれ複数のツメ状部材27,28が設けられており、格子状の通気部材6を、これらのツメ状部材27,28をガイドとして横からスライドさせて差し込むことによって取り付け、また、取り外すことができる。
本発明の他の実施形態である防虫具は、図6に符号11で示すものである。図6の防虫具11は衣類ハンガーに掛けられたランニングシャツに擬態した形状のものである。防虫具11は、防虫具1と同様、本体部12と係止部13からなり、係止部13は、防虫具11を物干し竿等に係止するための部分であるとともに、衣類ハンガーのフック部に擬態した形状のものである。本体部12は、枠部材15と通気部材16からなり、通気部材16は枠部材15に囲まれている。通気部材16が網状である点は、防虫具1と異なる。防虫具1と同様、枠部材15にはインジケータ17が取り付けられている。
図6に示した実施形態においては、枠部材15の孔18の周囲に複数のピン14が突設されている。網状の通気部材16に幾分張力を加えながら各ピン14に通気部材の網目を引っ掛ければ、通気部材16は張力によって保持され、容易には外れない。
上記実施形態の変形例に用いる網状の通気部材16’を図7に示す。この網状の通気部材16’では、周辺部に複数の輪状部19を設け、これらをピン14に引っ掛けるものであるので、取り付けが容易である。
勿論、上記種々の構成はいずれも例示であり、通気部材6,16を枠部材5,15に取り付ける構成として他のものを採用してもよい。
防虫具1を洗濯物31,32とともに吊り下げたベランダ33の斜視図を図8に示す。この図から判るように、本発明の防虫具は遠方から見れば洗濯物のように見え、外観上目立たないので使用しやすい。
勿論、本発明の防虫具は、他の衣類に擬態しても構わない。防虫具の大きさは、特に限定するものではないが、幼児又は小児用衣類程度の大きさが、外観上違和感がなく、しかも場所を取らないので好適である。
なお、図1,2の通気部材6,16の外観は長方形状であるが、通気部材を三角形、円形、或いは動植物や乗り物の形状等の種々の形状として、それ自体を衣類のデザインのように擬装してもよい。あるいは、枠部材に絵または模様を描き、通気部材の網状部または格子状部をその絵または模様の一部のように擬装してもよい。
枠部材と係止部は、材質は特に限定されないが、樹脂により成形すれば容易に製造できる。枠部材と係止部を一体成形すれば製造が簡易で済むが、別々に製造してもよい。本体部を衣類に擬態した形状とし、係止部を衣類ハンガーに擬態した形状とした防虫具をベランダに吊り下げれば、もっとも目立たないので使用しやすい。本体部を衣類に擬態した形状とする場合、枠部材に布帛を貼付する等の擬装をおこなってもよい。
通気部材を枠部材に取り付けるには、枠部材に孔を設け、その孔に、網状または格子状の通気部材を取り付ければよい。防虫具をベランダ等の外気に触れる場所に設置すれば、自然の風が通気部材を通過することによって害虫防除成分が防虫具近傍の空気中へ揮散し、害虫を駆除する。自然界において完全な無風状態ということはほとんどあり得ず、たとえ微風状態であっても気化した害虫防除成分は風によって通気部材から周囲へ送られるので、送風機を設置する必要はない。なお、たとえ無風状態であっても、気化した害虫防除成分は濃度差により徐々に周囲へ拡散する。
なお、上述の実施形態ではいずれも枠部材と通気部材は別体であるが、通気部材を交換しない実施形態においては、枠部材と通気部材を一体にして製造してもよい。
以下、通気部材(害虫防除材)の材質について説明する。本発明に用いられる式(1)で示されるエステル化合物、又はその下位概念である式(2)で示されるエステル化合物は、特開2000−63329号公報、特開2001−11022号公報、特開昭63−203649号公報等に記載された化合物であり、例えば該公報に記載された方法で製造することができる。
式(1)及び(2)で示されるエステル化合物には不斉炭素に基づく異性体が存在し、また炭素−炭素二重結合に基づく異性体が存在する場合があるが、本発明には活性な異性体のいずれをも使用することができる。
式(1)及び/又は(2)で示されるエステル化合物としては、例えば2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 2,2,3−トリメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 1R−トランス−2,2,3−トリメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 1R−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、及び2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレートが挙げられる。
ここに明示した化合物は例示であり、明示しなかった化合物も、請求項記載の一般式を満たす限り本発明に含まれることは言うまでもない。
上記化合物のうちで、好適なものは、例えば2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 1R−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、及び2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレートである。
本発明の防虫具において配置して用いられる、式(1)で示されるエステル化合物を常温揮散性の害虫防除成分として含有する害虫防除材(以下、本防除材と記す。)において用いられる樹脂成分としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。)、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリアミド(例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のナイロンが挙げられる。)、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、メタクリル酸樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系等の熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂成分は、これらのうちから適宜選択すればよいが、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル及びポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有してなる樹脂組成物であることが好ましい。特にポリオレフィン系樹脂を含有してなる樹脂組成物であることが好ましい。
なお、ポリオレフィン系樹脂とはオレフィン単量体を主なモノマー成分とする樹脂を意味する。本発明におけるポリオレフィン系樹脂としては、例えば低密度および高密度ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂及びポリスチレン系樹脂等が挙げられる。これらのうちから適宜選択すればよいが、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
本発明において樹脂成分は、1種類の樹脂を単独で用いてもよいし、2種類以上の樹脂を適宜混合した樹脂組成物として用いてもよい。
本発明において2種以上の樹脂を混合した樹脂組成物としては、例えばポリエチレンテレフタレートとポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートとポリプロピレン、ポリエチレンとエチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とポリアミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とポリブチレンテレフタレート等のブレンドが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明においてポリオレフィン系樹脂は、カルボン酸エステル単量体単位を含有してもよい。カルボン酸エステル単量体単位の含有量は本防除材全量に対して通常1〜50重量%程度であり、好ましくは1〜10重量%程度である。
本発明においてカルボン酸エステル単量体とは、不飽和カルボン酸エステル又はカルボン酸ビニルエステルを意味する。
不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸の低級アルキルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸の低級アルキルエステルが挙げられ、カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル等の低級脂肪酸のビニルエステルが挙げられる。これらのうちから適宜選択すればよいが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、又は酢酸ビニルが好ましく、特にメタクリル酸メチルが好ましい。
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂は、単独の重合体からなるものであっても、2種以上の重合体を混合したポリマーブレンドからなるものであってもよい。即ち、本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、カルボン酸エステル単量体単位の適切な量を含有するポリオレフィン系共重合体そのものを用いることもでき、また、カルボン酸エステル単量体単位を多く含有するポリオレフィン系共重合体(ポリオレフィン系共重合体に対するカルボン酸エステル単量体単位の量が例えば10〜40重量%のもの)とオレフィンの単独重合体とを混合して適切なカルボン酸エステル単量体単位を含有するように調整したポリマーブレンドを用いることもできる。なお、本発明において、ポリオレフィン系共重合体とは、オレフィン単量体を主なモノマー成分とし、他にカルボン酸エステル単量体をモノマー単位として含有する重合体である。
このようなカルボン酸エステル単量体単位を含有するポリオレフィン系共重合体としては、例えばカルボン酸エステル単量体単位を含有するポリエチレン系共重合体、及びカルボン酸エステル単量体単位を含有するポリプロピレン系共重合体が挙げられる。
カルボン酸エステル単量体単位を含有するポリエチレン系共重合体としては、例えばエチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、及びエチレン−メタクリル酸エチル共重合体が挙げられる。これらのうちでは、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体が好適である。エチレン−メタクリル酸メチル共重合体の実例としては、いずれも住友化学株式会社製造に係る商品名「アクリフトWK307」(共重合体中のメタクリル酸メチルの割合:25重量%)、同「アクリフトWH303」(共重合体中のメタクリル酸メチルの割合:18重量%)、同「アクリフトWD301」(共重合体中のメタクリル酸メチルの割合:10重量%)等が挙げられる。
カルボン酸エステル単量体単位を含有するポリプロピレン系共重合体としては、例えばプロピレン−アクリル酸メチル共重合体、プロピレン−アクリル酸エチル共重合体、プロピレン−アクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、及びプロピレン−メタクリル酸エチル共重合体が挙げられる。
これらの重合体は、モノマーを公知のラジカル重合触媒やイオン重合触媒を用いて、公知の重合方法によって重合させることにより製造することができる。公知の触媒としては、例えば、過酸化物触媒、チグラー−ナッタ系触媒、メタロセン系触媒等が挙げられ、公知の重合方法としては、例えば、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、高圧ラジカル重合法、及び気相重合法が挙げられる。
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂がカルボン酸エステル単量体単位を多く含有するポリオレフィン系重合体とオレフィンの単独重合体とを混合して適切なカルボン酸エステル単量体単位を含有するように調製したポリマーブレンドである場合のポリマーブレンドとしては、例えばエチレン−アクリル酸メチル共重合体とポリエチレンとのポリマーブレンド、エチレン−アクリル酸エチル共重合体とポリエチレンとのポリマーブレンド、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体とポリエチレンとのポリマーブレンド、及びエチレン−メタクリル酸エチル共重合体とポリエチレンとのポリマーブレンドが挙げられる。これらのうちでは、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体とポリエチレンとのポリマーブレンドが好適である。
本発明において、樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、本防除材には、式(1)で示されるエステル化合物が、式(1)で示されるエステル化合物とポリオレフィン系樹脂中のカルボン酸エステル単量体単位とが、重量比で通常3:1〜1:3、好ましくは2:1〜1:2の割合で含有される。
本発明において、本防除材には必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料等が含有されている。
かかる酸化防止剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ステアリル β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(TBMTBP)、及びトリフェニルホスファイトが挙げられ、紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸フェニル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
本発明において、本防除材は樹脂成分と常温揮散性の害虫防除成分とを、密閉式加圧ニーダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、スーパーミキサー、ミキシングロール、単軸ないし多軸スクリュウ押出機等の混練機を用いて混練し、得られる混練物を熱可塑性樹脂に通常用いられる成形方法(例えば、射出成形、押出成形、カレンダー成形、ブロー成形、真空成形)により賦形することにより製造される。
また本防除材は前記により賦形された成形体をスリット加工、スライス加工、ペレット加工等の二次加工により形状を変更されたものであってもよい。
前記の方法により製造される本防除材は、比表面積の大きな網状や格子状の形態とした上で常温揮散性の害虫防除成分を空気中へ効率的に拡散させることが可能である。本発明における網状の形態を有する本防除材は、網状の一体成形体のほか、繊維状若しくはフィラメント状に成形し、紡績、編成及び切断等の加工により製造される網状の加工物が挙げられるが、製造効率の点からは、網状の一体成形体であることが好ましい。網状の害虫防除材は、網成形用異形ダイス等を用いた押出成形によって容易に製造できる。本防除材には常温揮散性の害虫防除成分が通常0.1〜20重量%の割合、好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜7.0重量%の割合で含有される。
網状の害虫防除材におけるフィラメントの幅は、使用目的に応じて定めるべきであるが、通常0.05〜3mmであり、0.1〜2mmが好適である。これより太くなると害虫防除成分の揮散が不十分となるおそれがあり、これより細くなると、強度不足になるおそれや、害虫防除成分の揮散が早すぎて寿命が短くなるおそれがある。
網状の害虫防除材の具体的製法としては、例えば、害虫防除成分であるエステル化合物と、樹脂成分とを密閉式加圧ニーダー(例えば森山製作所製)を用いて溶融混練し、得られた混練物を押出機から押し出しながらホットカットして、ペレットを得、このペレットと直鎖状低密度ポリエチレン(エチレンの単独重合体)のペレットとを混合・混練して混練物を得、次いで、この混練物を押出成形機から網成形用異形ダイスを介して押出すことにより、網が円筒状となった成形体を得、この成形体から必要な大きさと形状を有する網を切り取って、害虫防除材を得る製法が挙げられる。
格子状の害虫防除材における孔の辺長は、通常0.1〜20mmであり、1〜10mmが好適である。これより大きくなると、害虫防除成分の揮散に寄与しないで孔を通過する空気の割合が大きくなりすぎる。また、格子の孔と孔を仕切る部位(格子の桟)の厚みは、通常0.1〜50mmであり、0.3〜20mmが好適である。これより厚くなると害虫防除成分の揮散が不十分となるおそれがあり、これより薄くなると、強度不足になるおそれや、害虫防除成分の揮散が早すぎて寿命が短くなるおそれがある。なお、格子状の害虫防除材は、射出成形によれば容易に製造できる。
格子状の害虫防除材の具体的製法としては、例えば、害虫防除成分であるエステル化合物と、樹脂成分とを密閉式加圧ニーダー(例えば森山製作所製)を用いて溶融混練し、得られた混練物を押出機から押し出しながらホットカットして、ペレットを得、このペレットと直鎖状低密度ポリエチレン(エチレンの単独重合体)のペレットとを混合・混練して混練物を得、次いで、この混練物を射出成形機により成形することにより、格子状の成形体を得、この成形体から必要な大きさと形状を有する格子を切り取って、害虫防除材を得る製法が挙げられる。
本発明において、外気にさらされた時間に応じて外観が変化する表示手段を外部から目視可能な状態で備えたインジケータを設け、害虫防除成分が気化しきる時期と上記外観が変化する時期を合わせておけば、使用者は、害虫防除成分が気化しきる時期、すなわち、防虫具または通気部材の交換時期を目視により容易に知ることができる。
本発明において表示手段は、外気にさらされることで状態が変化するものであればよく、その形態は特に限定されない。例えば、外気にさらされることによって体積が縮小していく昇華性物質を用いることができるほか、経時的に縮小するようなゲル等も採用できる。また、減感剤の蒸散により顕色剤と色素が反応して担体が発色するような、外気曝露を開始してから所定時間経過後に変色するもの(着色インジケータ)や、外気曝露を開始してから所定時間経過後に担体に文字等が浮き出るものも採用できる。更に、気化性物質(香料、フィトンチッド、防錆剤、防カビ剤、防菌剤の中から適当なもの、たとえば色のあるもの、匂いのあるもの)などを選択使用できる。
昇華性物質としては、トリシクロ[3,3,1,13,7]デカン(商品名アダマンタン:出光石油化学株式会社製)、シクロドデカン(商品名アイサワ−D:出光石油化学株式会社製)、イソプロピルトリオキサン(商品名サンサブリ:小川香料株式会社製)、テトラヒドロジシクロペンタジエン(商品名TMN:出光石油化学株式会社製)等を例示できる。また、防虫剤であるパラジクロルベンゼン、ショウノウ、ナフタリン等も昇華性物質として使用できる。
通気部材(害虫防除材)を交換可能とする場合には、インジケータも交換可能とすべきである。インジケータを防虫具に取り付ける構成としては、枠部材にポケット状の差込部を設けて挿入する、インジケータに係止部を設けて通気部材の網状部または格子状部に吊り下げる、枠部材に貼付する、等の種々のものを適宜採用すればよい。インジケータは、外気と接触しないように樹脂フィルム等で包装して販売し、その包装を開いたときから外気への曝露が開始されるようにすればよい。もっとも、通気部材(害虫防除材)を交換可能としない場合ならば、防虫具そのものの包装を開いたときからインジケータの外気への曝露が開始されるようにしてよい。
本発明の防虫具は、広く種々の害虫の防除に用いることができ、防除対象の虫は限定されるものではないが、有害飛翔性害虫である蚊(アカイエカ、ネッタイイエカ、チカイエカ、コダカアカイエカ等のイエカ類、ヒトスジシマカ、ネッタイシマカ、オオクロヤブカ等のヤブカ類、シナハマダラカ、コガタハマダラカ、ガンビアハマダラカ等のハマダラカ類)、ハエ(サシバエ類、ヌカカ類、ユスリカ類、イエバエ、オオイエバエ類のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、タネバエ、ヒメイバエ、タマネギバエ等のハナバエ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類)、ブユ類、アブ類等の双翅目害虫、スズメバチ類、アリガタバチ類、カブラハバチ等の膜翅目害虫が挙げられ、特に蚊の防除に有用である。