ところで、コネクタが多極化した場合には両コネクタハウジング内に収容された雌雄の端子同士の嵌合時における摩擦抵抗が大きくなり、そのため、上記手法に従って両コネクタハウジングを嵌合しようとすると、他方のコネクタハウジングを押し込む際に過大な操作力が必要とされ、作業負担が大きいという問題がある。
そこで、操作力の軽減を図ることが求められるが、上記の場合には、両コネクタハウジングがその嵌合動作の進むにつれて作業者の手指の届き難い奥まった位置に移行するため、仮に、両コネクタハウジングのいずれか一方に嵌合動作を助勢するレバー等を組み付けたとしても、これを操作することができないという事情がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、押し込みによる操作力を利用して両コネクタハウジングを嵌合させる場合に、その操作力の軽減を図ることを目的とする。
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、ケーシング内に収容された状態で互いに嵌合される第1及び第2のコネクタハウジングと、前記ケーシングに対して前記両コネクタハウジングの嵌合方向と略直交する方向に進退可能に組み付けられるスライド部材と、前記スライド部材と前記ケーシングのいずれか一方に回動可能に装着され、その回動中心から離れた位置に、他方に設けられた操作カム受け部に係合する操作カム部が形成されるとともに、この操作カム部よりも前記回動中心側に近い位置に、前記第1のコネクタハウジングに設けられたカム部に係合されるカム受け部の形成されたレバーとを備え、前記スライド部材を前記ケーシング側へ押し込むことにより、前記操作カム部と前記操作カム受け部との係合位置を力点、前記カム部と前記カム受け部との係合位置を作用点とするてこを構成して前記レバーを回動させ、このレバーの回動動作に伴って前記カム部が前記カム受け部に沿って相対的に移動することで、前記第1のコネクタハウジングを前記ケーシングに対して相対変位させるとともに、この第1のコネクタハウジングと係合状態にある前記第2のコネクタハウジングを、前記ケーシングとの間に形成されたカム機構を利用して前記第1のコネクタハウジング側へ引き寄せる構成としたところに特徴を有する。
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ケーシングには前記第1のコネクタハウジングを受け入れるための第1の開口部が形成され、この第1の開口部の内側縁には前記第1のコネクタハウジングを誘い込むための誘い込み面が形成されているところに特徴を有する。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記ケーシングには前記第2のコネクタハウジングを受け入れるための第2の開口部が形成され、この第2の開口部と対向する位置には、前記第2の開口部を通して前記ケーシング内に進入する前記第2のコネクタハウジングの装着方向の前面を覆うようにして保護壁が形成されているところに特徴を有する。
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記第1のコネクタハウジングと前記ケーシングのいずれか一方にはガイド部が突出して形成され、他方には前記嵌合方向と略直交する方向に延出するガイド溝が形成されており、前記ガイド部が前記ガイド溝に沿って相対的に移動することで、前記第1のコネクタハウジングを前記ケーシングに対して前記嵌合方向と略直交する方向に相対変位させ、その状態で前記両コネクタハウジングを嵌合させるようになっているところに特徴を有する。
請求項5の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記ガイド溝が前記ケーシング側に形成されており、前記レバーには前記ケーシングに対してこのレバーを回動初期位置に留め置くための弾性係止部が形成されており、前記弾性係止部は、常には前記ガイド溝に溝壁に弾性的に係止されており、前記第1のコネクタハウジングが前記ケーシング内に装着されるのに伴って前記ガイド部と干渉してその係止状態を解除することにより、前記レバーの回動動作を許容するようになっているところに特徴を有する。
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のものにおいて、前記第1のコネクタハウジングには、前記ケーシングに対する装着方向の先端面に、検知部が突出して形成されており、前記スライド部材の操作面には、前記両コネクタハウジングが正規嵌合されたときに、前記検知部を突入させる検知窓が形成されているところに特徴を有する。
請求項7の発明は、請求項6に記載のものにおいて、前記検知部の突出端は、前記両コネクタハウジングが正規嵌合されたときに、前記検知窓の開口と略面一で揃えられるか、あるいはその開口から突き出た位置に配されているところに特徴を有する。
請求項8の発明は、請求項7に記載のものにおいて、前記スライド部材の操作面には、前記検知窓の開口から突き出る前記検知部の突出端と隣接して保護リブが立ち上げ形成されているところに特徴を有する。
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のものにおいて、前記スライド部材と前記ケーシングのいずれか一方には撓み変形可能なケースロック部が突出して形成され、他方にはケースロック受け部が形成されており、前記両コネクタハウジングが正規嵌合されたときには、前記ケースロック部が前記ケースロック受け部に弾性的に係止するようになっているところに特徴を有する。
請求項10の発明は、請求項9に記載のものにおいて、前記スライド部材を押し込み操作する過程では、前記ケースロック部が前記ケースロック受け部との係合位置に至る手前に配された突き当て面に突き当たってその押し込み操作が規制され、さらにこの突き当たりに起因する抵抗を上回る操作力を前記スライド部材に付与することにより、前記ケースロック部が前記突き当て面から解離するとともにその慣性力によって前記スライド部材が一気に押し込まれるようになっているところに特徴を有する。
請求項11の発明は、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のものにおいて、前記カム機構は、前記ケーシングと前記第2のコネクタハウジングのいずれか一方に設けられたガイドカム溝と、他方に突出して設けられたガイドカム部とからなり、前記ガイドカム溝の内部には、前記両コネクタハウジングの嵌合前に前記ガイドカム部と干渉することで前記第2のコネクタハウジングが前記第1のコネクタハウジング側へ移動するのを規制する仮保持部が形成されているところに特徴を有する。
請求項12の発明は、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載のものにおいて、前記カム機構は、前記ケーシングと前記第2のコネクタハウジングのいずれか一方に設けられたガイドカム溝と、他方に突出して設けられたガイドカム部とからなり、前記ガイドカム部は、前記ガイドカム溝の両側面に対してそのガイドカム溝の延出する方向に沿って長く当たり合う回転防止面を有しているところに特徴を有する。
請求項13の発明は、請求項11または請求項12に記載のものにおいて、前記ガイドカム溝は、複数の前記ガイドカム部と対応するように、前記第2のコネクタハウジングの移動方向に沿って互いに略平行して複数設けられているところに特徴を有する。
請求項14の発明は、請求項13に記載のものにおいて、前記第2のコネクタハウジングを前記ケーシングに装着する過程では、前記ガイドカム部が、前記ガイドカム溝の溝縁部を弾性的に乗り越えたあと前記ガイドカム溝に嵌合するようになっており、かつ、前記複数のガイドカム部のうち、前記ケーシングに対する前記第2のコネクタハウジングの装着方向の前側に位置するガイドカム部が、後側に位置するガイドカム部よりも、その突出高さが低くなるように設定されているところに特徴を有する。
請求項15の発明は、請求項1ないし請求項14のいずれかに記載のものにおいて、前記第1のコネクタハウジングは前記嵌合方向と略直交する方向に移動して前記第2のコネクタハウジングに係合するようになっており、前記第1のコネクタハウジングには、前記第2のコネクタハウジングの受け入れ側を開放させた枠状の案内壁が形成されており、前記第2のコネクタハウジングが前記案内壁の内側に嵌入されるようになっているところに特徴を有する。
請求項16の発明は、請求項15に記載のものにおいて、前記第1のコネクタハウジングは、雄端子を収容した雄側のコネクタハウジングであって、前記雄端子のタブを突出した状態で配するフード部を備えており、前記フード部内にはムービングプレートが組み付けられ、前記ムービングプレートは、前記タブを位置決めした状態で挿通する挿通孔を有し、前記両コネクタハウジングの嵌合時には前記タブを前記挿通孔から突出させつつ後退するようになっており、かつ、前記案内壁が、前記ムービングプレートに形成されているところに特徴を有する。
請求項17の発明は、請求項1ないし請求項16のいずれかに記載のものにおいて、前記レバーは前記ケーシングの幅方向両側に一対配置されており、前記スライド部材は、操作部とその両側端から突出する一対のスライド装着部とで門型状をなし、前記両スライド装着部と前記ケーシングとの間に前記レバーを挟んだ状態で前記ケーシングに対して跨るように装着されているところに特徴を有する。
請求項18の発明は、請求項17に記載のものにおいて、前記スライド部材は、前記レバーを介して前記ケーシングに対して一体的に連結されているところに特徴を有する。
請求項19の発明は、請求項1ないし請求項18のいずれかに記載のものにおいて、前記第2のコネクタハウジングは、前記ケーシングに対して初期位置と終端位置との間を移動可能に組み付けられ、前記終端位置にて前記第1のコネクタハウジングと正規嵌合可能とされており、前記第1のコネクタハウジングは、前記ケーシングに対して前記第2のコネクタハウジングの前記移動方向と交差する方向に相対変位可能とされ、その変位過程で前記第2のコネクタハウジングと係合状態となるものであり、さらに、前記第1のコネクタハウジングには当て部が設けられ、前記第2のコネクタハウジングには、この第2のコネクタハウジングが前記終端位置から前記初期位置へ戻る移動方向で前記当て部と対向する当て受け部が設けられており、前記両コネクタハウジングの離脱時に、前記第1のコネクタハウジングの変位動作に伴い前記当て受け部が前記当て部によって持ち上げられることにより、前記第2のコネクタハウジングが前記初期位置へ強制的に戻されるところに特徴を有する。
請求項20の発明は、請求項19に記載に記載のものにおいて、前記第1のコネクタハウジングは筒状のフード部を備えており、前記当て部は、前記フード部の開口縁に形成され、前記当て受け部は、前記両コネクタハウジングが係合状態にあるときに、前記フード部内に進入可能なように前記第1のコネクタハウジング側へ突出して形成されているところに特徴を有する。
請求項21の発明は、請求項19または請求項20に記載のものにおいて、前記ケーシングには、前記第2のコネクタハウジングの前記初期位置へ戻る移動方向の前面に当接可能とされたストッパ壁が形成されており、このストッパ壁は、バネ性を有し、前記当て受け部が前記当て部によってオーバーストローク気味に持ち上げられたときに撓み変形しつつ前記第2のコネクタハウジングを受け止めるようになっているところに特徴を有する。
請求項22の発明は、請求項1ないし請求項21のいずれかに記載のものにおいて、前記第1のコネクタハウジングは、雄端子を収容した雄側のコネクタハウジングであって、前記雄端子のタブを突出した状態で配するフード部を備えており、前記フード部内にはムービングプレートが組み付けられ、前記ムービングプレートは、前記タブを位置決めした状態で挿通する挿通孔を有し、前記両コネクタハウジングの嵌合時には前記第2のコネクタハウジングに押されて前記タブを前記挿通孔から突出させつつ後退するようになっており、さらに、前記フード部には、前記ムービングプレートに設けられたプレート係止受け部に係止することで前記ムービングプレートの後退移動を規制するプレート係止部が形成されており、このプレート係止部と前記プレート係止受け部とによる係止構造が、少なくとも前記ムービングプレートの中心を挟んだ対角位置に、対をなして設けられているところに特徴を有する。
請求項23の発明は、請求項1ないし請求項22のいずれかに記載のものにおいて、前記レバーには、このレバーの回動接線方向に延出して板厚方向に撓み変形可能とされた弾性係止部が形成されており、この弾性係止部の自由端側には、前記ケーシングに設けられたレバー受け部に対し前記レバーの回動方向で当たり合うことで前記レバーを回動初期位置に留め置く回動規制面が備えられているところに特徴を有する。
<請求項1の発明>
ケーシング内に両コネクタハウジングを収容させ、両コネクタハウジングを互いに係合させる。このとき、第1のコネクタハウジングのカム部をレバーのカム受け部に臨ませた状態とする。次に、スライド部材をケーシングに対して両コネクタハウジングの嵌合方向と略直交する方向に押し込む。すると、レバーの操作カム部と操作カム受け部との係合位置を力点、カム部とカム受け部との係合位置を作用点とするてこを構成してレバーが回動する。このレバーの回動動作に伴いカム部がカム受け部に沿って相対的に移動することにより、第1のコネクタハウジングをケーシングに対して相対変位させるとともに、この第1のコネクタハウジングと係合状態にある第2のコネクタハウジングを、ケーシングとの間に形成されたカム機構を利用して第1のコネクタハウジング側へ引き寄せ、もって両コネクタハウジングを正規嵌合させる。スライド部材を押し込むことにより、操作カム部と操作カム受け部との係合位置を力点、カム部とカム受け部との係合位置を作用点とするてこを構成することになり、これにより、小さい操作力でもって両コネクタハウジングを嵌合させることができる。
<請求項2の発明>
仮に、第1のコネクタハウジングが作業者の手指の届き難い奥まった位置に固定されている場合には、ケーシング内に第1のコネクタハウジングを収容するときに、両者間の位置合わせが困難となって作業しづらいという事情がある。しかし、本発明によれば、ケーシングにおける第1の開口部の内側縁に誘い込み面が形成されているから、この誘い込み面によってケーシングと第1のコネクタハウジングとの間の位置ずれを矯正でき、もって第1のコネクタハウジングをケーシング内へ迅速かつ確実に誘導することができる。
<請求項3の発明>
第2の開口部を通してケーシング内に第2のコネクタハウジングが進入すると、第2のコネクタハウジングの装着方向の前面が保護壁によって覆われるから、第2のコネクタハウジングが異物と干渉してケーシング内を不用意に動き出す事態を回避できる。
<請求項4の発明>
ケーシングに対して第1のコネクタハウジングをガイド溝に沿って嵌合方向と略直交する方向に相対変位させ、第1のコネクタハウジングをケーシング内に収容させる。その状態で、両コネクタハウジングを嵌合させるから、第1のコネクタハウジングの嵌合位置が嵌合方向に位置ずれするのを防止できる。
<請求項5の発明>
弾性係止部は、常にはケーシングに形成されたガイド溝の溝壁に弾性的に係止されているが、第1のコネクタハウジングがケーシング内に装着されるのに伴ってガイド部と干渉してその係止状態を解除し、これによりレバーの回動動作を許容する。つまり、第1のコネクタハウジングの装着動作を利用して弾性係止部による係止状態を解除するから、レバーの係止解除操作を独立して行う必要がなく、手間が省ける。
<請求項6の発明>
両コネクタハウジングが正規嵌合されると、第1のコネクタハウジングに形成された検知部がスライド部材の操作面に形成された検知窓に突入するようになっているから、作業者の目につき易いスライド部材の操作面を通して、検知部が検知窓に突入したか否かを視認することにより、両コネクタハウジングの嵌合状態を検知することができる。
<請求項7の発明>
両コネクタハウジングが正規嵌合されると、検知部の突出端が検知窓の開口と略面一で揃えられるか、あるいはその開口から突き出た位置に配されるから、視認性がより良好となる。
<請求項8の発明>
検知窓の開口から突き出る検知部の突出端の高さ位置とスライド部材の操作面に立ち上げ形成された保護リブの突出端の高さ位置とを見比べることで、両コネクタハウジングの嵌合状態を容易に検知することができる。また、検知部が、検知窓の開口から突き出ることで露出状態になるという事情があっても、その露出部分が保護リブによって保護される。
<請求項9の発明>
両コネクタハウジングが正規嵌合されたときには、ケースロック部とケースロック受け部とが弾性的に係止することにより、スライド部材とケーシングとが離脱規制された状態に保持される。これにより、両コネクタハウジング側にロック手段を設けなくて済む。
<請求項10の発明>
スライド部材を押し込む過程で、ケースロック部がケースロック受け部に突き当たってその押し込み操作が規制され、さらにこの突き当たりに起因する抵抗を上回る操作力をスライド部材に付与することにより、ケースロック部が突き当て面から解離するとともにその慣性力によってスライド部材が一気に押し込まれるようになっているから、スライド部材とケーシングとを正規のロック位置に確実に至らしめることができ、ひいては両コネクタハウジングが半嵌合状態に置かれるのを防止できる。
<請求項11の発明>
ガイドカム部がガイドカム溝の内側に形成された仮保持部と干渉することにより、両コネクタハウジングの嵌合前に、第2のコネクタハウジングがガイドカム溝に沿って第1のコネクタハウジング側へ不用意に動き出す事態を回避できる。
<請求項12の発明>
ガイドカム部がガイドカム溝の両側面に対してそのガイドカム溝の延出する方向に沿って長く当たり合う回転防止面を有しているから、ガイドカム部がガイドカム溝内で回転して第2のコネクタハウジングが揺動する事態を回避できる。
<請求項13の発明>
ガイドカム溝が複数のガイドカム部に対応するように第2のコネクタハウジングの移動方向に沿って略平行して複数設けられているから、第2のコネクタハウジングの移動姿勢が安定する。
<請求項14の発明>
ケーシングに対する第2のコネクタハウジングの装着方向の前側に位置するガイドカム部が、後側に位置するガイドカム部よりも、その突出高さが低くなるように設定されているから、第2のコネクタハウジングをケーシングに装着する作業の終盤に至るまで、ガイドカム部とガイドカム溝の溝縁部との当接に伴う抵抗を感じさせないようにすることができ、第2のコネクタハウジングを装着する際の作業性が良好となる。
<請求項15の発明>
第1のコネクタハウジングには第2のコネクタハウジングの受け入れ側を開放させた枠状の案内壁が形成され、第2のコネクタハウジングが案内壁の内側に嵌入されるようになっているから、第2のコネクタハウジングを第1のコネクタハウジングとの嵌合開始可能な位置に位置決めすることができる。
<請求項16の発明>
案内壁がムービングプレートに形成されているから、フード部の構造を簡略化することができる。
<請求項17の発明>
レバーがケーシングの幅方向両側に一対配され、スライド部材が操作部とその両側端から突出する一対のスライド装着部とで門型状をなし、両スライド装着部とケーシングとの間にレバーを挟んだ状態でケーシングに対して跨るように装着されるから、コネクタ装置全体として構造的なバランスがとれ、スライド部材を押し込む際の操作性が良好となる。
<請求項18の発明>
スライド部材がレバーを介してケーシングに対して一体的に連結されているから、部品点数の削減を図ることができ、取り扱い性が良好となる。
<請求項19の発明>
嵌合状態にある両コネクタハウジングの離脱時に、第2のコネクタハウジングに設けられた当て受け部が第1のコネクタハウジングの変位動作に伴ってこの第1のコネクタハウジングに設けられた当て部により持ち上げられ、第2のコネクタハウジングが初期位置へ強制的に戻されることにより、第2のコネクタハウジングが初期位置に簡単かつ確実に復帰されるから、繰り返しの連続使用に適する。
<請求項20の発明>
当て部がフード部の開口縁に形成され、当て受け部がフード部内に進入可能なように第1のコネクタハウジング側へ突出して形成されているから、当て受け部の突出量を調整することにより第2のコネクタハウジングの移動ストローク量を設定することができる。
<請求項21の発明>
当て受け部が当て部によってオーバーストローク気味に持ち上げられると、ケーシングに設けられたストッパ壁が撓み変形しつつ第2のコネクタハウジングを受け止めるようになっているから、第2のコネクタハウジングの実際の移動ストローク量が設定値とずれていても、そのずれ量を吸収することができる。また、ストッパ壁の弾性復帰に伴い、第2のコネクタハウジングを初期位置へ至らすことも可能である。
<請求項22の発明>
フード部に設けられたプレート係止部とムービングプレートに設けられたプレート係止受け部とによる係止構造が少なくともムービングプレートの中心を挟んだ対角位置に対をなして設けられているから、かかる係止構造がムービングプレートの中心に一つだけ設定されているものと比べて、ムービングプレートの移動姿勢が軸交差方向に傾いたりせず安定化する。その結果、雄端子のタブの接続姿勢も安定化するから、相手端子との接続信頼性が向上する。
<請求項23の発明>
レバーにはこのレバーの回動接線方向に延出して板厚方向に撓み変形可能とされた弾性係止部が形成されており、この弾性係止部の自由端側には、ケーシングに設けられたレバー受け部に対しレバーの回動方向で当たり合うことで前記レバーを回動初期位置に留め置く回動規制面が備えられているから、レバーが回動初期位置にあるときに、弾性係止部によるロックが不用意に外れることがない。
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図30に基づいて説明する。本実施形態に係るコネクタ装置は、雌ハウジング10(本発明の第2のコネクタハウジングに相当する)と、雌ハウジング10に嵌合可能な雄ハウジング30(本発明の第1のコネクタハウジングに相当する)と、両ハウジング10,30が収容されるケーシング50と、ケーシング50に対して進退可能に装着されるスライド部材80と、スライド部材80の操作力を軽減させるとともに両ハウジング10,30の嵌合動作を助勢するレバー70とから構成される。そして、スライド部材80は、例えば、自動車のダッシュボード側の取付面Fの近傍に配され、雄ハウジング30はこれと対向するエンジンルーム側の取付面Bに固定されており、あらかじめ雌ハウジング10の収容されたケーシング50に対して雄ハウジング30を装着させた状態で、スライド部材80をエンジンルーム側へ押し込むことにより、その押し込み方向と略直交する方向に両ハウジング10,30を接近させ、もって両ハウジング10,30同士を嵌合させるようになっている。
雌ハウジング10は、図21に示すように、合成樹脂材によってブロック状に形成され、その内部に、図示しない電線の端末に接続された雌端子を挿入可能な複数のキャビティ11を有している。雌ハウジング10の前半部10Aは、図17に示すように、後半部10Bとの間に段付面12を介して後半部10Bよりも一段落ちた位置にあり、その両側面には、前後方向に沿って一対の嵌合ガイドリブ13が形成されている。嵌合ガイドリブ13は雄ハウジング30側に形成された嵌合ガイド溝31内に進入して両ハウジング10,30の嵌合動作を案内するようになっている。また、雌ハウジング10の上面前端両側部には、一対の解除突部14が形成されており、この解除突部14が雄ハウジング30側に撓み変形可能に形成された弾性ロック片32と係合することにより、弾性ロック片32を上方へ撓ませて、ムービングプレート40(後述する)に対するロックを解除するようになっている。
雌ハウジング10の後面両側端部には、一対の装着ガイド部15が後方へ突出して形成されており、この装着ガイド部15がケーシング50側に形成された装着ガイド受け部51と摺接してケーシング50に対する雌ハウジング10の装着動作を案内するようになっている。そして、雌ハウジング10の後半部10Bの両側面には、それぞれ、上下方向に間隔をあけて一対のガイドカム部16が突出して形成されている。ガイドカム部16は、ケーシング50側に形成されたガイドカム溝52内に進入し、このガイドカム溝52に沿って相対的に移動することで、雌ハウジング10を雄ハウジング30側へ接近させるようになっている。詳しくはガイドカム部16は、断面多角形状をなし、上方に位置するガイドカム部16Aが下方に位置するガイドカム部16Bよりも、その突出高さが低くなるように設定されている。ガイドカム部16の前後両面は略鉛直に切り立って配され、また、ガイドカム部16の上下両面は、互いに略平行に前方へ向けてテーパ状の下り勾配となっている。このガイドカム部16の上下両面は、ガイドカム溝52の両側面とその延出方向に沿って長い範囲で当たり合うようになっており、これによりガイドカム部16がガイドカム溝52内で回転するのが防止されるようになっている。このようにガイドカム部16の上下両面が回転防止面16Eとして機能することにより、雌ハウジング10がケーシング50内で揺動しないようになっている。
雄ハウジング30は、図7に示すように、端子収容部33とその前面から前方へ突出するフード部34とを備えている。雄ハウジング30の上面両端部には、前後方向に延出する一対のレール部35が形成されている。両レール部35の対向面には装着溝35Aが凹設されており、ここに取付部材20がスライド装着されることで、雄ハウジング30が取付部材20を介して取付面Bに固定されるようになっている。雄ハウジング30の上面中央部には撓み片36が斜め上前方へ向けて片持ち状に突出して形成されており、この撓み片36が取付部材20に形成された取付開口21の開口縁に抜け止め状態で係止するようになっている。この撓み片36の根元は、フード部34と端子収容部33との境界位置に設定されている。
取付部材20は、金属製であって、中間部22が下方へ張り出すように略コの字に曲げ形成されており、その底壁に、取付開口21が形成されている。また、取付部材20の上壁を構成する一対のフランジ部23には、図24に示すように、それぞれ、ボルト通し孔24が貫通して形成されており、このボルト通し孔24を介して取付部材20が取付面Bにボルト締めされるようになっている。なお、両ボルト通し孔24のうちの一つは、前後方向に長径の長孔となっている。
雄ハウジング30の両側面略中央部には、図6に示すように、それぞれ、一対のカム部37が突出して形成されている。カム部37は、略円柱状をなし、ケーシング50に形成されたカム通し溝53を貫通してレバー70に形成されたカム受け部71と係合するようになっている。レバー70の回動操作に伴いカム部37がカム受け部71に沿って相対的に移動するようになっている。
雄ハウジング30の両側面前端縁には、それぞれ、上下方向の全域に亘って延出するガイドリブ38が形成されている。ガイドリブ38は、ケーシング50に形成されたガイド受け溝54に係合してこのガイド受け溝54に沿って移動可能となっている。また、雄ハウジング30の両側面後端寄りの位置には、それぞれ、上下方向に間隔をあけて配された一対のガイド部39が形成されている。ガイド部39は、上記同様、ケーシング50に形成されたガイド溝55に係合してこのガイド溝55に沿って移動可能となっており、これにより雄ハウジング30がケーシング50に対して上下方向に相対変位するようになっている。なお、雄ハウジング30は取付面Bに固定されているので、見かけ上はケーシング50が上下方向に移動するものである(以下に同じ)。
そして、上下に配されたガイド部39のうち下側に位置するガイド部39Aは、ガイド溝55内においてレバー70に形成された弾性係止部72と係合してこの弾性係止部72を係止解除方向に撓み変形させるようになっており、これにより回動初期位置に置かれていたレバー70のロックを解除するようになっている。この下側に位置するガイド部39の下面は、テーパ状に切り欠かれた解除案内面39Aとされ、この解除案内面39Aに沿って弾性係止部72が円滑に撓み変形し得るようになっている。
雄ハウジング30の下面両側端部には、一対の検知部41が突出して形成されている。検知部41は、角ブロック状をなし、雄ハウジング30の下面両側部にその前後長さの全長に亘って一体に接合されるとともに、その突出端側へ向かって長さ寸法及び幅寸法を減退させた形態となっている。詳しくは、検知部41は、図26に示すように、四つの側面のうち互いの対向面41Aを除いた三面がテーパ面41Bとされ、このテーパ面41Bがケーシング50に形成された誘い込み面50Bと係合することで、雄ハウジング30がケーシング50内に誘い込まれるようになっている。
また、端子収容部33は、図22に示すように、雌ハウジング10側のキャビティ11と対応する位置に、図示しない電線の端末に接続された雄端子を挿入可能な複数のキャビティ42を有している。フード部34は、略角筒状をなし、その内側に雄端子のタブを突出した状態で配している。そして、フード部34の上壁は、下壁よりもその前端位置が前方に設定されており、その突き出た部分から両側壁にかけて覆い壁43が形成されている。覆い壁43は、下方を開放させた枠状をなし、その内側に下方から雌ハウジング10を受け入れるようになっている。
フード部34の両側壁前縁には、一対の嵌合ガイド部44が前方へ突出して形成されている。嵌合ガイド部44は、両側壁に形成された覆い壁43とほぼ同じ突出寸法をもってこの覆い壁43の下方に並んで配され、その内側に、ムービングプレート40のプレートガイド突部45と係合可能なプレートガイド凹部46が形成されている。
フード部34の上壁には、上下の板部からなる二重板構造領域が形成されている。このうち下側の板部には、ムービングプレート40を係止可能な一対の弾性ロック片32が撓み変形可能に形成されている。弾性ロック片32は、端子収容部33の前端にその根元を接続させた状態で前方へ向けて片持ち状に延出して形成され、その根元を撓み支点として上下方向に撓み変形可能となっている。この弾性ロック片32の先端部にはロック突起32Aが下方へ向けて突出して形成されている。また、上側の板部は、図22に示すように、弾性ロック片32との間に撓み許容空間を保有して弾性ロック片32の上方を覆う膨出部47として構成されている。横並びで設けられた両膨出部47間の溝底後端には、上記した撓み片36が配置されている。なお、両レール部35は、覆い壁43よりも、その前端位置が後退した位置に設定されている。
ムービングプレート40は、図15及び図22に示すように、略方形板状のプレート本体48と、このプレート本体48の周縁から前方に突出する嵌合筒部49とからなる。プレート本体48は、フード部34の開口を閉止可能な大きさをもって形成され、雄端子のタブを位置決めした状態で挿通可能な複数の挿通孔40Aを有している。
嵌合筒部49の上半部は、下半部よりも、その前端位置がより前方に設定され、その前方へ突出する部分が、上壁から両側壁にかけて門型枠状をなす案内壁61となっている。雌ハウジング10は、下方から案内壁61の内側に嵌入され、これにより雄ハウジング30との嵌合開始可能な位置に位置合わせされるようになっている。
嵌合筒部49の上壁両側前端部には、図16に示すように、一対の被ロック部62が両持ち梁状に架け渡されており、この被ロック部62の後方が透孔63として開放されている。被ロック部62の後面には弾性ロック片32のロック突起32Aが弾性的に係止するようになっており、これによりムービングプレート40がフード部34内に位置決めされた状態で仮係止されるようになっている。一方、下方から雌ハウジング10がフード部34内に挿入されると、雌ハウジング10側の解除突部14がムービングプレート40の透孔63内に進入してロック突起32Aを押し上げ、これによりムービングプレート40の仮係止状態が解除されるようになっている。透孔63の幅方向両側縁には、プレートガイドリブ64が立ち上げ形成されており、これが膨出部47と弾性ロック片32との隙間にプレートガイドリブ64が進入してムービングプレート40の移動動作を案内するようになっている。
嵌合筒部49の両側壁には、一対の嵌合ガイド溝31が前後方向に延出するとともに前端に開口して形成されている。嵌合ガイド溝31には雌ハウジング10側の嵌合ガイドリブ13が前方から進入するようになっている。また、嵌合筒部49の両側壁の外側面には、嵌合ガイド溝31を挟んだ上下位置に、それぞれ、一対のプレートガイド突条65が前後方向に延出して形成されている。プレートガイド突条65は、フード部34の内側面に形成されたプレートガイド溝66に嵌入するようになっており、これによりムービングプレート40の移動動作を案内するようになっている。
また、嵌合ガイド溝31の直下方には、内外に撓み変形可能な一対のプレート撓み片67が形成されている。プレート撓み片67の外側面には、プレートガイド突部45が形成されており、フード部34側のプレートガイド凹部46と係合して、上記同様、ムービングプレート40の移動動作を案内するようになっている。ムービングプレート40は、両ハウジング10,30の嵌合前は、フード部34内に仮係止されているが、雌ハウジング10と係合すると、仮係止状態を解除してその移動が許容され、両ハウジング10,30の嵌合動作に伴ってフード部34の奥方へ後退し、それに伴って挿通孔40Aからタブを突出させるようになっている。
続いて、ケーシング50について説明する。ケーシング50は、合成樹脂製であって、図18及び図29に示すように、前後両面と上面前半部及び下面後半部とを開放させた箱型状をなし、その上面前半部の第1の開口部56を通して上方から雄ハウジング30が挿入されるとともに、その下面後半部の第2の開口部57を通して雌ハウジング10が挿入されるようになっている。ケーシング50の両側面の前後両端には、それぞれ、上下方向の全域に亘って延出する一対のスライドガイド部58が両側方へ突出して形成されている。スライドガイド部58の互いの対向面にはスライドガイド溝58Aが凹設されており、このスライドガイド溝58Aに沿ってスライド部材80が上下方向に移動可能となっている。
また、スライドガイド部58の上下方向略中央部には、それぞれ、一対のケースロック受け部68が両側方へ突出して形成されている。ケースロック受け部68は、スライド部材80を受け入れる側とは反対側となる上面を開放させた浅底箱状をなし、その内側にスライド部材80に撓み変形可能に形成されたケースロック部81を進入させるとともにこのケースロック部81に弾性的に係止され、スライド部材80をケーシング50に対してロックするようになっている。
ケーシング50の後半部の内側には、上壁と両側壁後半部とにより区画された雌ハウジング10の収容空間が保有されている。ケーシング50の上壁は、第2の開口部57を通してケーシング50内に装着される雌ハウジング10の上面を覆うように配された保護壁59として構成されている。雌ハウジング10が装着位置に至ると、雌ハウジング10の上面に保護壁59の下面が当接するようになっている。
ケーシング50の上壁の前端部には、矩形状をなす一対の嵌合片69が前方へ突出して形成されている。この嵌合片69は、雌ハウジング10の後半部10Bに切り込み形成された嵌合受け溝10Eに嵌合可能となっている。
ケーシング50の両側壁後半部の後端内側面には、それぞれ、上下方向に延出するとともに前方へ開口する装着ガイド受け部51が形成されており、雌ハウジング10の装着時には、この装着ガイド受け部51が雌ハウジング10側の装着ガイド部15と係合可能となっている。
そして、ケーシング50の両側壁後半部には、それぞれ、その後端部から前端部にかけて下り勾配のテーパ状をなすように延出する二軸のガイドカム溝52が形成されている。両ガイドカム溝52は、互いに略平行に配されており、このガイドカム溝52に雌ハウジング10側のガイドカム部16が嵌め入れられ、さらにガイドカム部16がガイドカム溝52に沿って相対的に移動することにより、雌ハウジング10がケーシング50に対して斜め下前方へ相対変位するようになっている。
また、上側に位置するガイドカム溝52には、その上端溝縁に根元を接続させた状態で経路上に延出する片持ち状の仮保持部52Aが形成されている。仮保持部52Aは、その根元を撓み支点として内外に撓み変形可能となっており、その延出端の内側に仮保持突起52Bを有している。ガイドカム部16は、ガイドカム溝52内に嵌入されると、仮保持突起52Bの後面と干渉してその移動が規制されるが、レバー70の回動に伴って押し込み力が付与されると、仮保持部52Aが外側に拡開して仮保持突起52Bとの係止状態を解除し、そののち雌ハウジング10がガイドカム溝52に沿って移動すると、ガイドカム部16が仮保持突起52Bを乗り越えるとともに仮保持部52Aが弾性復帰するようになっている。
また、ケーシング50の両側壁後半部の内側面には、それぞれ、両ガイドカム溝52を縦断しつつ上下方向に延出する逃がし溝78が凹設されている。逃がし溝78は、第2の開口部57から進入する雌ハウジング10のガイドカム部16を逃がすために形成されたものである。ガイドカム溝52の溝縁部で逃がし溝78の溝底を構成する部分には、ガイドカム溝52に嵌入されたガイドカム部16を下支えするための支持リブ79が形成されている。ガイドカム部16は逃がし溝78を通過したあと支持リブ79を弾性的に乗り越えてガイドカム溝52に嵌入するようになっている。この場合において、下側に位置する支持リブ79Aは、上側に位置する支持リブ79Bよりも、その突出高さが低くなるように設定されており、雌ハウジング10側の、高さの低い上側に位置するガイドカム部16Aがここを通過するときには、このガイドカム部16Aとは非干渉となるように設定されている。したがって、ガイドカム部16は、自身の対応する支持リブ79を乗り越えるだけでガイドカム溝52に嵌入可能とされ、これにより雌ハウジング10とケーシング50との間の干渉抵抗が減ぜられて、雌ハウジング10を装着する際の作業負担が軽減されるようになっている。
また、ケーシング50の前半部の内側には、下壁と両側壁前半部とにより区画された雄ハウジング30の収容空間が保有されている。ケーシング50の下壁の両側部には、雄ハウジング30側の検知部41が貫通する貫通孔50Eが開口して形成されている。そして、ケーシング50の両側壁前半部の前端縁には、内側へ向かって対向状に突出する一対の付設壁50Fが形成されている。この付設壁50Fの上面と両側壁の上面とは、雄ハウジング30を受け入れるための第1の開口部56として構成され、その全周には内側へ向かってテーパ状の下り勾配となる誘い込み面50Bが形成されている。雄ハウジング30を装着する際には、この誘い込み面50Bと検知部41のテーパ面41Bとが摺接することにより、雄ハウジング30の装着姿勢が矯正されて、雄ハウジング30がケーシング50に対して正規装着されるようになっている。
そして、ケーシング50の両側壁前半部の外側面には、図17に示すように、それぞれ、周囲よりも一段落ちた位置に、レバー70に形成されたレバー本体部70Aを装着可能な略円形のレバー装着部50Gが凹設されている。レバー装着部50Gの底面略中心部には、レバー70を回動可能に支持するための略円柱状の支持ピン77が立てられており、この支持ピン77を回動支点としてレバー70の回動動作が可能となっている。
ケーシング50の両側壁前半部には、それぞれ、支持ピン77の上方において上下方向に延出するとともにその上端面(誘い込み面50B)に開口するカム通し溝53が貫通して形成されている。カム通し溝53には上方から雄ハウジング30側のカム部37が進入するようになっており、雄ハウジング30がケーシング50に対してレバー70のロック解除位置まで装着されると、カム部37がレバー70に形成されたカム受け部71の入り口に臨むようになっている。また、ケーシング50の両側壁前半部の内側面には、それぞれ、カム通し溝53と略平行に上下方向の全域に亘って延出するガイド溝55が凹設されている。ガイド溝55には、上方から雄ハウジング30側のガイド部39が進入するようになっている。また、ガイド溝55のうちレバー装着部50Gを縦断する部分は、貫通して形成されており、その側縁部には外側からレバー70に形成された弾性係止部72が弾性的に係止するようになっている。
続いて、レバー70について説明する。レバー70は、合成樹脂製であって、図17及び図30に示すように、板状のアーム部73を備えて構成される。アーム部73の下部には、厚み寸法を増大させたレバー本体部70Aが形成されており、このレバー本体部70Aの内側面には、所定方向に湾曲して延びるカム受け部71が凹設されているとともに、このカム受け部71の近傍位置に、支持ピン77に嵌合可能な略円形の支持受け部75が凹設されている。また、アーム部73の下端には、片持ち状の弾性係止部72が撓み変形可能に形成されている。アーム部73は、弾性係止部72との間にスリット状の空間を保有している。そして、弾性係止部72の延出端には両側方に張り出すことで略Tの字形をなす弾性係止突起72Aが形成されている。レバー70の回動方向で弾性係止突起72Aとガイド溝55の側縁部とが弾性的に係止し合うことにより、レバー70が回動初期位置で留め置かれるようになっている。一方、雄ハウジング30がロック解除位置まで装着されることにより、弾性係止突起72Aが雄ハウジング30側のガイド部39と干渉して弾性係止部72が外側へ拡開され、これにより弾性係止突起72Aとガイド溝55の側縁部との係止状態が解除されて、レバー70の回動動作が許容されるようになっている。
また、アーム部73の上端外側面には、略円柱状の操作カム部74が突出して形成されている。操作カム部74は、スライド部材80に形成された操作カム受け部82に常時係合されているとともにこの操作カム受け部82の延出方向に沿って相対的に移動するようになっている。レバー70は、雄ハウジング30が装着される前は、弾性係止部72による係止状態を保持してケーシング50に対して回動初期位置に留め置かれるようになっている。この場合に、レバー70は、支持ピン77と支持受け部75との係合位置を支点、カム部37とカム受け部71との係合位置を作用点、操作カム部74と操作カム受け部82との係合位置を力点とするてこを構成し、これに基づいて回動可能となっている。つまり、カム部37をカム受け部71の入り口に臨ませた状態で、スライド部材80をケーシング50側へ押し込むと、操作カム部74が操作カム受け部82に沿って相対的に移動し、これに伴ってレバー70が支持ピン77を回動中心として回動する。そして、レバー70が回動すると、カム部37がカム受け部71に沿って相対的に移動し、もって雄ハウジング30がケーシング50に対して下方へ相対変位してケーシング50内に正規装着されるようになっている。
続いて、スライド部材80について説明する。スライド部材80は、合成樹脂製であって、図21に示すように、操作部83とその両側端から突出する一対のスライド装着部85とにより全体として門型に形成されている。そして、スライド部材80は、スライド装着部85に装着された取付具90に対して移動可能に支持されている。
操作部83の両側部には、図28に示すように、雄ハウジング30側の検知部41がケーシング50側の貫通孔50Eを通して突入する一対の検知窓83Aが開口して形成されている。検知窓83Aは、略矩形状をなし、その開口から検知部41が操作面上に突出するようになっている。また、操作部83の両側端部には、内側へ対向状に延出する片持ち状の弾性アーム部84が撓み変形可能に形成されている。弾性アーム部84の延出端側は、操作部83の操作面上に位置するように持ち上がっており、そこには検知窓83Aの一端外方を覆うように配された階段状の解除操作部84Aが形成されている。そして、弾性アーム部84の基端部には、図19に示すように、操作部83の両側縁から側方へ突出する保持突起84Bが形成され、この保持突起84Bが、取付具90に形成された突起受け部91に弾性的に係止することにより、スライド部材80が仮保持位置に留め置かれるようになっている。そして、スライド部材80を押し込む際に、操作部83の操作面上に配された弾性アーム部84の解除操作部84Aを押圧操作することにより、弾性アーム部84を撓み変形させて、保持突起84Bを突起受け部91から解離させ、もってスライド部材80を仮保持位置から移動させるようになっている。
スライド装着部85の前後両端縁には、その外側面が段付状に切り欠かれることで薄肉となったスライドガイド受け部85Aが形成されている。スライドガイド受け部85Aがスライドガイド溝58Aを上下方向に移動することにより、スライド部材80がケーシング50に対して進退可能となっている。また、スライド装着部85には、図18に示すように、レバー70側の操作カム部74と係合可能な操作カム受け部82が所定方向に湾曲して貫通形成されている。操作カム部74と操作カム受け部82とが係合状態を保つことにより、スライド部材80とケーシング50とがレバー70を介して一体的に連結される。
スライド装着部85の外側面には、操作カム受け部82の外方を覆うようにしてトンネル状の取付箱部86が膨出して形成されている。取付箱部86は、図28に示すように、スライド装着部85の外側面の前後両端部から略直角に立ち上げられた立壁86Aと両立壁86Aの突出端を架け渡す幅広の被覆壁86Bとからなり、その内側に、取付具90を収容可能となっている。取付箱部86の内部空間は、図19に示すように、上端側へ行くに従って窄み形成されており、スライド部材80が仮保持位置にあるときには、その窄み形成された狭小空間部87に、取付具90の先端部が保持されるようになっている。一方、スライド部材80が押し込まれる過程で、取付具90の先端部が狭小空間部87から抜け出ることにより、取付具90とスライド部材80との係合状態が解除されるようになっている。
また、取付箱部86の両立壁86Aには、ケースロック部81が撓み変形可能に形成されている。ケースロック部81は、両取付箱部86のそれぞれに一対ずつ計二対配されており、その一端を立壁86Aの上端に一体に接続させるとともに、その他端を立壁86Aの下端寄りの位置に一体に接続させ、もって両持ち梁状となし、かつ、その外側面に、ケースロック突部81Aを有するとともにこのケースロック突部81Aの下方にロック解除操作部81Bを有して構成される。ケースロック部81の下端部は、図1に示すように、回曲状に形成されており、ケースロック部81の撓み変形動作が円滑となるようにしてある。スライド部材80がケーシング50に対して正規に組み付けられると、ケースロック突部81Aがケースロック受け部68の下壁を弾性的に乗り越えて、その下壁の上面を係止し、これによりスライド部材80がケーシング50に対して抜け止め状態でロックされるようになっている。このロック状態を解除するには、ロック解除操作部81Bを押圧操作して、ケースロック部81を撓み変形させ、その状態でスライド部材80をケーシング50から引く抜くようにする。
ここで、ケースロック突部81Aの上面は切り立つように配された衝突面81Eとされている。ケーシング50に対してスライド部材80を押し込む過程では、ケースロック突部81Aの衝突面81Eがケースロック受け部68の下壁の下面(本発明の突き当て面に相当する)に突き当たってスライド部材80の押し込み操作がいったん規制され、さらにこの突き当たりに起因する抵抗を上回る操作力をスライド部材80に付与することにより、ケースロック部81が下壁の下面を乗り越えるとともにその慣性力によってスライド部材80が一気に押し込まれるようになっている。つまり、ケースロック部81は、いわゆる慣性ロックとして機能しており、これによりスライド部材80を正規のロック位置に確実に至らしめ、ひいては両ハウジング10,30を正規嵌合位置に確実に至らしめることができるようになっている。
取付具90は、金属製であって、図2及び図19に示すように、取付箱部86に進入可能な板状の取付片92と、取付片92の一端から直角曲げして形成された板状の固定片93とからなり、固定片93がダッシュボード側の取付面Fに固定されるようになっている。そして、取付片92には、弾性アーム部84の保持突起84Bと弾性的に係止可能な保持受け部94が切り起こしにより屈曲形成されており、この保持受け部94に開口する突起受け部91に保持突起84Bが嵌入するようになっている。また、取付片92の前後両端部には、保持受け部94の切り起こし方向とは逆方向に、突っ張り部95が切り起こしにより屈曲形成されている。スライド部材80が仮保持位置にあるときには、保持受け部94と突っ張り部95とが取付箱部86の前後内側面に弾性的に押し当てられ、これにより仮保持位置におけるスライド部材80の取付強度が高められている。
次に、本実施形態の作用について説明する。まず、雌雄の両ハウジング10,30を嵌合させるのに先立って、車両側のモジュール(待受側のモジュール)とコックピット側のモジュール(可動側のモジュール)とを組み上げる。待受側となる車両側のモジュールについては、エンジンルーム側の取付面Bに取付部材20をボルト締めして固定し、さらに取付部材20の中間部22に対して前方から雄ハウジング30をスライドさせ、雄ハウジング30の撓み片36を取付部材20の取付開口21の開口縁に弾性的に係止させるこにより、雄ハウジング30を固定するようにする。また、雄ハウジング30のフード部34内にムービングプレート40を仮係止させる。
一方、可動側となるコックピット側のモジュールについては、ケーシング50に対して下方から雌ハウジング10を装着ガイド受け部51に沿って挿入するとともに、ガイドカム部16を対応するガイドカム溝52に嵌入することで雌ハウジング10を仮保持状態となし、かつ、ケーシング50とスライド部材80とをレバー70を介して一体的に連結した上で、ダッシュボード側の取付面Fに固定された取付具90に対してスライド部材80を仮保持位置にて保持させる。このとき、レバー70は、弾性係止部72によって回動初期位置に留め置かれ、カム受け部71の入り口をケーシング50のカム通し溝53に臨ませることにより、雄ハウジング30のカム部37を受け入れ可能な状態となっている。これにより、車両側のモジュールとコックピット側のモジュールとが、図1、図6、及び図7に示すように、両ハウジング10,30の嵌合方向と略直交する方向となる上下方向に間隔をあけて対峙する。
次いで、雌雄の両ハウジング10,30を嵌合させる作業について説明する。まず、図19から図20にかけて示すように、スライド部材80の操作面上に突き出る弾性アーム部84の解除操作部84Aを押圧操作して、スライド部材80の仮保持状態を解除し、その状態でスライド部材80をケーシング50とともに雄ハウジング30側へ移動させる。すると、スライド部材80の押し込み量が増すに従って、取付具90の取付片92の先端部が徐々に後退して行く。しかし、取付具90の取付片92の先端部が取付箱部86の狭小空間部87に挿通係合されている状態では、取付具90に対するスライド部材80の遊動が規制され、ひいてはケーシング50の遊動が規制されるので、ケーシング50と雄ハウジング30との間の位置合わせを、ケーシング50における第1の開口部56の誘い込み面50Bと雄ハウジング30の検知部41のテーパ面41Bとの形成範囲内で確実に実行することができる。
こうして雄ハウジング30を第1の開口部56の誘い込み面50Bに沿ってケーシング50内に誘い込み、雄ハウジング30のガイドリブ38をケーシング50のガイド受け溝54に、雄ハウジング30のカム部37をケーシング50のカム通し溝53に、雄ハウジング30のガイド部39をケーシング50のガイド溝55に、それぞれ進入させることにより、雄ハウジング30をケーシング50内に挿入する。雄ハウジング30がケーシング50内に挿入される途中で、図2ないし図4に示すように、取付具90の取付片92の先端部が取付箱部86の狭小空間部87から完全に抜け出るが、このときには雄ハウジング30とケーシング50との間の位置合わせ作業は終了しているので、その後の作業を円滑に行うことができる。
また、図8に示すように、雄ハウジング30がケーシング50内に挿入される過程で、雌ハウジング10の前半部に対してムービングプレート40の案内壁61を介して雄ハウジング30の覆い壁43が覆い被さる。そして、図9に示すように、両ハウジング10,30が係合状態を保ったまま、雄ハウジング30がケーシング50に対してガイド溝55に沿って下方へ相対変位すると、これに連れ立って雌ハウジング10が仮保持部52Aとの係止状態を解除してガイドカム溝52に沿って移動し、両ハウジング10,30が互いに接近する。この間、図12の(B)に示すように、弾性ロック片32が上方へ押し上げられ、ムービングプレート40に対するロックが解除されて、ムービングプレート40の移動動作が許容される。
雄ハウジング30がロック解除位置まで装着されると、図3及び図4に示すように、ガイド溝55に進入したガイド部39がレバー70の弾性係止部72によるロックを解除し、これによりレバー70の回動動作が許容され、また同時にスライド部材80のケーシング50側への押し込み操作も許容される。このとき、両ハウジング10,30に収容された雌雄の両端子の一部は、その先端部をラップさせて、接続動作を開始した状態にある。
この状態で、スライド部材80をケーシング50側へ押し込むと、レバー70の操作カム部74がスライド部材80の操作カム受け部82に沿って相対的に移動し、レバー70が支持ピン77を回動中心として図示時計回り方向に回動し始める。すると、図10から図11にかけて示すように、雄ハウジング30のカム部37がレバー70のカム受け部71に沿って相対的に移動し、これに伴って雄ハウジング30がガイド溝55に沿ってケーシング50に対して下方へ相対変位する。また、案内壁61及び覆い壁43を介して雄ハウジング30と係合状態にある雌ハウジング10がガイド溝55に沿って相対的に移動する。このとき、実際にはケーシング50が上方へ徐々に引き上げられるので、雌ハウジング10は、図12から図14にかけて示すように、見かけ上は図示右方へ水平移動する。これに対して、雄ハウジング30は、既述したように、常時取付面Bに固定された状態を保っている。
こうして、図5及び図11に示すように、スライド部材80の操作部83がケーシング50の下壁に当て止めされる位置に達すると、レバー70の回動動作が完了して両ハウジング10,30が正規嵌合されることになる。このときには、検知部41がスライド部材80の検知窓83Aから突出した状態となっており、この状態を視認することにより、両ハウジング10,30が正規嵌合されたことを知ることができる。一方、両ハウジング10,30が正規嵌合されていないときには、雄ハウジング30がガイド溝55の下端にまで到達していないので、検知部41が検知窓83Aから突出しないか、あるいは突出してもその突出量が予定した突出量よりも小さくなっており、この状態を視認することにより、両ハウジング10,30が半嵌合状態に置かれていることを知ることができる。そして、こうした視認作業は、作業者にとって手前側に位置するスライド部材80の操作面を見ることにより行われるから、視認性は良好である。
また、操作部83がケーシング50の下壁に当て止めされる位置に達すると、スライド部材80のケースロック部81がケーシング50のケースロック受け部68を弾性的に係止し、これによりスライド部材80がケーシング50から離脱規制された状態にロックされる。
以上のように本実施形態によれば、次のような効果を奏する。すなわち、スライド部材80を押し込むことにより、操作カム部74と操作カム受け部82との係合位置を力点、カム部37とカム受け部71との係合位置を作用点とするてこを構成してレバー70を回動するようになっているから、小さい操作力でもって両ハウジング10,30を嵌合させることができる。その結果、コネクタが多極化された場合にも好適に利用することができる。
また、雄ハウジング30が車両側の奥まった位置に設定された取付面Bに固定されているという事情があっても、ケーシング50における第1の開口部56に形成された誘い込み面50Bによって雄ハウジング30をケーシング50内に誘い込むことにより、雄ハウジング30をケーシング50内に円滑に挿入させることができる。また、第2の開口部57を通してケーシング50内に雌ハウジング10が進入すると、雌ハウジング10の上面が保護壁59によって覆われるから、雌ハウジング10が異物と干渉してケーシング50内を不用意に動き出す事態を回避できる。
また、ケーシング50に対する雄ハウジング30の装着動作を利用して弾性係止部72によるレバー70の係止状態を解除するようになっているから、レバー70の係止解除操作を独立して行わずに済む。さらに、ガイドカム部16が略平行な二軸のガイドカム溝52に沿って相対的に移動するようになっているから、雌ハウジング10の移動姿勢が安定化する。
さらに、両ハウジング10,30が正規嵌合されたときには、ケースロック部81とケースロック受け部68とが弾性的に係止するから、両ハウジング10,30側にロック手段を設けなくて済む。さらにまた、スライド部材80がレバー70を介してケーシング50に対して一体的に連結されているから、部品点数の削減を図ることができる。
<実施形態2>
続いて、本発明の実施形態2を図31ないし図50によって説明する。実施形態2では、雌ハウジング10Q、雄ハウジング30Q、ケーシング50Q、スライド部材80Q、レバー70Qを備え、雌ハウジング10Qが装着されたケーシング50Qに対してスライド部材80Qを押し込むことにより、その押し込み途中でケーシング50Q内に雄ハウジング30Qが挿入されるとともにレバー70Qによるカム機構によってその押し込み方向と略直交する方向に両ハウジング10Q,30Qが接近させられ、さらなる押し込み操作によって両ハウジング10Q,30Qが正規嵌合状態に至るようになっており、その基本的構造及び両ハウジング10Q,30Qの嵌合機構は実施形態1と同様である。よって、以下では、実施形態1と同じ構造部位には同一符号を付して重複する説明はなるべく省略することとし、実施形態1と相違する部分について詳細に説明する。
雌ハウジング10Qの両側面には、図35ないし図37に示すように、左右一対のガイドカム部16が突設されており、実施形態1の場合より左右一対分少なくなっている。両ガイドカム部16は、ケーシング50Qに設けられたガイドカム溝52に嵌入してこのガイドカム溝52の延び方向に移動可能とされ、その上下両面が回転防止面16Eとして平行に配されガイドカム溝52の側縁部に面当り状態で摺動することにより、ガイドカム溝52内における雌ハウジング10Qの揺動回転を規制している。そして、雌ハウジング10Qは、ガイドカム部16がガイドカム溝52の一端側に位置する初期位置と、ガイドカム部16がガイドカム溝52の他端側に位置する終端位置との間を変位可能とされており、終端位置にて雄ハウジング30Qと正規嵌合されるようになっている。雌ハウジング10Qの両側面の前端上部には、左右一対の仮保持突部19が形成されている。両仮保持突部19がケーシング50Qに設けられた仮保持受け部52Qに係合することにより、雌ハウジング10Qが初期位置に仮係止状態で留め置かれるようになっている。
雌ハウジング10Qの前面には、図37に示すように、中心を挟んだ対角二位置に、上下一対のプレート係止解除部18が凹設されている。プレート係止解除部18は、図36に示すように、雌ハウジング10Qの前面と上面とに開口して後述するプレート係止部32R,32Qの進入を許容する逃し凹部18Aと、逃し凹部18Aの内面にあってプレート係止部32R,32Qの係止構造部分と当接することでその係止状態を解除する解除本体18B,18Eとからなる。さらに解除本体18B,18Eは、プレート係止部32R,32Qにさきに接触する先行解除本体18Eとプレート係止部32R,32Qにあとから接触する後行解除本体18Bとからなり、両者が高さ方向で段違いとなっている。
また、雌ハウジング10Qの前面には、両側面寄りの位置に、左右一対の当て受け部17が突出して形成されている。当て受け部17は、図47に示すように、側面から見ると前方へ突き出た多角形状をなし、両ハウジング10Q,30Qが嵌合状態にあるときに、雄ハウジング30Qのフード部34内に進入するようになっている。そして当て受け部17は、両ハウジング10Q,30Qの離脱時にフード部34またはムービングプレート40Qの開口下縁部(以下、当て部34Aという)と摺接し、その摺接状態を保ちつつ雌ハウジング10Qを初期位置へ誘導するようになっている。当て受け部17には前方へ向かって昇り勾配となるテーパ面17Aが備えられており、このテーパ面17Aが当て部34Aと初期位置への移動方向と対向する位置にあってこの当て部34Aと相互に摺動することにより、雌ハウジング10Qがガイドカム溝52に沿って初期位置へ円滑に移動するようになっている。なお、雌ハウジング10Qが初期位置に戻ると、当て部34Aと当て受け部17とは非接触状態となる。
雄ハウジング30Qの両側面の後端には、図38に示すように、左右一対ずつのガイド部39が突設されている。図46に示すように、両ガイド部39がケーシング50Qに設けられたガイド溝55に進入して移動案内されたあとレバー70Qに設けられた弾性係止部72と係合して、この弾性係止部72を係止解除方向へ撓み変形させる。雄ハウジング30Qのフード部34には、図示しない雄端子のタブが突出状態で配されている。フード部34の上壁には下方を開放させた覆い壁43が形成されており、この覆い壁43の内側にムービングプレート40Qが組み付け可能とされる。
ムービングプレート40Qは、板状をなし、図38に示すように、雄端子のタブを挿通可能な複数の挿通孔40Aを有しフード部34内にて略垂直に配されるプレート本体48と、プレート本体48の周縁から前方へ突出してフード部34の内側面に摺動可能に配される嵌合筒部49とからなる。かかるムービングプレート40Qは、プレート本体48がフード部34の奥面から離れて位置する端子位置決め位置と、そこから雌ハウジング10Qにより押されて挿通孔40Aから雄端子のタブを突出させつつ後退しプレート本体48がフード部34の奥面に当接可能に配される端子接続位置(図49に示す状態)とを移動可能とされる。
ムービングプレート40Qの嵌合筒部49の上部には前方へ突出して略門型枠状をなす案内壁61が形成されている。雌ハウジング10Qは下方から案内壁61の内側に嵌入され、これにより雄ハウジング30Qとの嵌合開始可能な位置に位置合わせされる。案内壁61の上壁には、その中央部から前方へ突出する張り出し片61Aが形成されている。張り出し片61Aは、両ハウジング10Q,30Qが係合状態にあるときに、ケーシング50Qの上面後半部59Q(実施形態1における保護壁に相当し、かつ本発明におけるストッパ壁に相当する)に切り欠かれた凹陥部59Rの内側に上方から進入し、雌ハウジング10Qの上面に当接してここを押圧するようになっている。
ムービングプレート40Qの張り出し片61Aには、前後方向に延びる左右一対の切り溝61Bが形成されている。張り出し片61Aが雌ハウジング10Qの上面に当接したときに、両切り溝61Bに、雌ハウジング10Qの上面に設けられた左右一対の係合突起29がそれぞれ進入可能となっている。そして両ハウジング10Q,30Qの離脱時に、両係合突起29が切り溝61Bの溝縁に引っ掛け状態で係合することにより、雌ハウジング10Qの変位動作に伴ってムービングプレート40Qが端子接続位置から端子位置決め位置へと連れ戻されるようになっている。また、ムービングプレート40Qの案内壁61の上壁には、断面鳩尾状をなす左右一対のプレート装着リブ61Eが前後方向に延出して形成されている。フード部34の内側面にはプレート装着リブ61Eと対応して左右一対のプレート装着溝34Rが形成されており、このプレート装着溝34Rとプレート装着リブ61Eとがありつぎ状態で係合しつつムービングプレート40Qが前後方向に移動案内されるようになっている。
ムービングプレート40Qのうち、プレート本体48の中心を挟んだ対角二位置には、上下一対のプレート係止受け部25,26が形成されている。プレート係止受け部25,26は、プレート本体48の前面から嵌合筒部49の内側面にかけて配される扁平な受け台25と、プレート本体48における受け台25の基端周縁部にあって後述するプレート係止部32R,32Qを貫通させるプレート係止部通し孔26とからなる。受け台25は、プレート係止部通し孔26の孔面前方と対向する位置に、プレート係止部32R,32Qの先端面とムービングプレート40Qの移動方向で当接可能な係止受け本体27を有している。
フード部34の内側面には、ムービングプレート40Qを端子位置決め位置にて移動規制状態で保持するための保持手段が設けられている。保持手段は、図38に示すように、フード部34の左右両側面において前方へ向けて片持ち状に突出する左右一対のプレート係止片32Pと、フード部34の上下両面においてプレート係止受け部25,26と対応する位置にあって同じく前方へ向けて片持ち状に突出する上下一対のプレート係止部32R,32Qとからなり、プレート係止片32Pはムービングプレート40Qの嵌合筒部49の左右両側前端と係止することでムービングプレート40Qの前方移動を規制し、プレート係止部32R,32Qはムービングプレート40Qのプレート係止受け部25,26と係止することでムービングプレート40Qの後退移動を規制している。
プレート係止片32Pは、フード部34の外側壁との間に撓み空間を保有して撓み変形可能とされ、その先端爪部32Gがムービングプレート40Qと弾性的に当接可能とされている。また、プレート係止部32R,32Qは、フード部34の奥面から前方へ片持ち状に突出する弾性撓み片32Qと、弾性撓み片32Qとの間に撓み空間を保有しつつ略平行に配されてこの弾性撓み片32Qの過度撓みを防止する略角棒状の過度撓み規制部32Rとからなり、これらがいずれもムービングプレート40Qのプレート係止部通し孔26を貫通し、さらに雌ハウジング10Qの逃し凹部18A内に突入するようになっている。
弾性撓み片32Qの先端部には係止本体32Fが形成されており、この係止本体32Fの係止面32Hがプレート係止受け部25,26の係止受け本体27に対してムービングプレート40Qの移動方向と略直交する方向に面当り状態で当接可能とされている。また、弾性撓み片32Qの先端部にはムービングプレート40Qが後退する方向に沿って傾斜する案内面32Sを備えた解除案内部32Kが形成されている。解除案内部32Kは、係止本体32Fと高さ方向で段違いに配され、その案内面32Sがプレート係止受け部25,26の受け台25とは非接触状態となっている。
ムービングプレート40Qは、図41に示すように、弾性撓み片32Qの係止本体32Fにムービングプレート40Qの係止受け本体27を係止させることでその後方移動を規制された状態で端子位置決め位置に仮保持される。その後、両ハウジング10Q,30Qの嵌合動作が開始されてフード部34内に雌ハウジング10Qが進入すると、弾性撓み片32Qの解除案内部32Kの案内面32Sに対し雌ハウジング10Qにおける先行解除本体18Eの前面が摺動して、弾性撓み片32Qが撓み空間へ撓み変形させられ、係止本体32Fによる係止状態が解除させられる。さらにフード部34内に雌ハウジング10Qが進入すると、プレート係止受け部25,26の受け台25に対し雌ハウジング10Qの後行解除本体18Bが嵌合状態で当接し、この後行解除本体18Bによって押圧されつつムービングプレート40Qが後退移動する。これに伴い、プレート係止部32R,32Qは雌ハウジング10Qの逃し凹部18Aに進入して、雌ハウジング10Qの前面と非干渉に配される。
ケーシング50Qは、図43及び図47に示すように、前後両面、上面前半部、下面後半部を開放させたボックス状をなし、その上面前半部における第1の開口部56を通して上方から雄ハウジング30Qを受け入れ可能とされ、その下面後半部における第2の開口部57を通して下方から雌ハウジング10Qを受け入れ可能とされる。ケーシング50Qの両側壁の外側面には、上下方向の全域に亘って延びる左右一対ずつのスライドガイド部58が突設されており、このスライドガイド部58に沿ってスライド部材80Qの移動操作が案内されるようになっている。ケーシング50Qにおける後面開口部を挟んだ両側位置であってスライドガイド部58と対応する位置には、左右一対のケースロック受け部68が突設されている。そして、ケーシング50Qの両側壁には、雌ハウジング10Q側のガイドカム部16と係合可能なガイドカム溝52が所定方向に延出しかつ板厚方向に貫通して形成されている。ガイドカム溝52は、ケーシング50Qの両側壁の後半部にあって前下がりの直線状をなし、この直線に沿って雌ハウジング10Qが斜め前方へ移動することで雄ハウジング30Q側へ接近するようになっている。
ケーシング50Qの両側壁のうち、ガイドカム溝52よりも上方には、略コの字の切り込みによって内外に撓み変形可能とされた仮保持受け部52Qが形成されている。仮保持受け部52Qの先端部には、ケーシング50Qの内側へ向けて突出することで雌ハウジング10Q側の仮保持突部19と係合可能な仮保持受け突起52Rが形成されている。雌ハウジング10Qは、仮保持突部19と仮保持受け突起52Rとの係合によって初期位置に留め置かれた状態から雄ハウジング30Qとの係合に伴って下方へ押圧され、これによって仮保持受け部52Qが外側へ撓み変形して仮保持受け突起52Rが仮保持突部19との係合状態を解除することで、その移動動作が許容される。
ケーシング50Qの両側壁の外側面には、ガイドカム溝52よりも前方に、レバー装着部50Gが略円形に凹設されている。レバー装着部50Gの中心部には、レバー70Qを回動可能に支持する略円柱状の支持ピン77が同軸で立設されている。ケーシング50Qの両側壁のうち、支持ピン77よりも鉛直上方には、上下方向に延出してケーシング50Qの上端縁に開口するカム通し溝53が形成されている。カム通し溝53には、レバー70Qが回動初期位置にあるときに、レバー70Qのカム受け部71の入り口が臨んでいる。そしてカム通し溝53には上方から雄ハウジング30Qのカム部37が進入し、さらにこのカム部37がカム受け部71の入り口に進入するようになっている。
ケーシング50Qの両側壁の内側面には、カム通し溝53と並んでガイド溝55が凹設されている。ガイド溝55の下端部は、レバー装着部50Gの底面に開口する形態とされ、その下縁部に、図43に示すように、レバー70Qの回動方向と略直交する方向に沿ってテーパ状に配されたレバー受け部55Aが形成されている。レバー70Qは、弾性係止部72がレバー受け部55Aに係止することで回動初期位置に留め置かれる一方、ガイド溝55に進入した雄ハウジング30Qのガイド部39が弾性係止部72と当接してこれを係止解除方向へ撓ませることにより、回動初期位置からの移動操作が許容される。
ケーシング50Qの上面後半部59Qは、図47に示すように、初期位置における雌ハウジング10Qの上面上方を被覆可能に配され、その幅方向中央部に、雄ハウジング30Qの張り出し片61Aと適合する略コの字の凹陥部59Rが切り欠いて形成されている。凹陥部59Rには初期位置における雌ハウジング10Qの係合突起29が臨んでいる。ケーシング50Qの上面後半部59Qのうち、凹陥部59Rを挟んだ両側位置には、左右一対の可撓片59Pが形成されており、この可撓片59Pが雌ハウジング10Qの上面と弾接可能とされている。
レバー70Qは板状のアーム部73を備え、図44に示すように、アーム部73の内側面に、厚み寸法を増大させたレバー本体部70Aが含まれ、このレバー本体部70Aがレバー装着部50Gに摺動可能に嵌め込まれる。そしてアーム部73の内側面には、所定方向に湾曲して延びるカム受け部71が凹設されており、その近傍に、支持ピン77に嵌合可能な略円形の支持受け部75が凹設されている。
アーム部73の周縁部には、同周縁部に沿うようにして弾性係止部72が片持ち状に延出して形成されている。弾性係止部72は、その根元を基端として内外に撓み変形可能とされ、その先端側(自由端側)に、幅寸法及び厚み寸法を増大させた先端係止部72Bを備えている。先端係止部72Bの端面は、レバー70Qの回動方向と略直交する方向に沿って配される回動規制面72Eとされ、レバー70Qが回動初期位置にあるときに、ケーシング50Qに設けられたレバー受け部55Aとレバー70Qの回動方向で当たり合うようになっている。そして、弾性係止部72は、図45に示すように、先端係止部72Bが雄ハウジング30Qのガイド部39により上方から押圧されることで図示矢線方向に拡開変形させられ、これに伴ってレバー受け部55Aとの係止状態を解除するようになっている。
アーム部73のうち、支持受け部75から離れた端部外側面には、操作カム部74が突設されている。操作カム部74は、スライド部材80Qに形成された操作カム受け部82と係合状態にあって、この操作カム受け部82の形成方向に沿って移動可能とされている。
スライド部材80Qは、板状をなし、操作部83とその両端から突出する左右一対のスライド装着部85とにより全体として門型に形成されている。スライド部材80Qは、ケーシング50Qに対して操作部83が隙間をあけて配される後退位置と、ケーシング50Qに対して操作部83が隙間をつめて配される進出位置との間を進退可能とされており、後退位置ではコックピット側の取付面Fに固定された取付具90Qに保持される。
操作部83には、両側に入れられたスリット間にて撓み変形可能とされた弾性アーム部84が露出状態で形成されている。弾性アーム部84は、図34に示すように、操作部83の一端中央部にその根元を接続させつつ他側へ延びる片持ち状をなしている。弾性アーム部84の根元側には、爪状の保持突起84Bが形成され、この保持突起84Bが取付具90Qに設けられた保持受け部94に係止可能とされ、これによりスライド部材80Qが取付具90Qに保持されるようになっている。そして弾性アーム部84の自由端側には解除操作部84Aが形成されており、この解除操作部84Aが解除方向となる上方へ押圧操作されることで保持突起84Bと保持受け部94との係止状態を解除するようになっている。
スライド装着部85は、その前後両縁でスライドガイド部58に摺動可能となっており、かつ、レバー70Qの操作カム部74と係合可能な操作カム受け部82が横一直線上に延出しつつ板厚方向に貫通して形成されている。操作カム部74と操作カム受け部82とが係合状態を保つことでスライド部材80Qとケーシング50Qとがレバー70Qを介して一体に連結される。そして、操作カム部74と操作カム受け部82とが係合状態を保ちつつレバー70Qが弾性係止部72とレバー受け部55Aとの係止によって回動初期位置に回動規制されることにより、スライド部材80Qが後退位置に留め置かれる。
スライド装着部85の外側面には、取付具90Qと対応する位置に、上下に貫通してトンネル状をなす左右一対の取付箱部86が形成されている。取付箱部86の内側空間は下方から取付具90Qを挿入可能な挿入空間として構成されている。取付箱部86の挿入空間は、上方へ行くにつれ先窄まりの狭小空間を有しており、この幅狭となった狭小空間の対向面間に、取付具90Qの先端部が進入して圧接保持されるようになっている。そして、取付箱部86の内底面にはケースロック部81が撓み変形可能に形成されており、スライド部材80Qが進出位置に至ると、ケースロック部81がケーシング50Qのケースロック受け部68と弾性係止してスライド部材80Qがケーシング50Qに対し抜け止め状態で係止されるようになっている。
取付具90Qは、取付片92と固定片93とから全体として略Lの字をなし、取付片92が取付箱部86の挿入空間に進入可能とされ、固定片93がコックピット側の取付面Fにボルト等の固定部材によって固定されるようになっている。取付片92の先端部には、左右一対の突出片92Aが形成されており、両突出片92Aが対応する取付箱部86の挿入空間に進入し、さらに狭小空間に進入して対向面間に圧入される。取付片92の両側縁には、左右一対の弾性片92Bが切り起こしにより形成されている。両弾性片92Bは、スライド部材80Qが後退位置にあるときに、取付箱部86の内面に突っ張り状態で弾接されるようになっている。そして、取付片92の略中央部には、スライド部材80Qの弾性アーム部84と対応する位置に、保持受け部94が形成されている。保持受け部94は、取付片92の基準面から段違いの平面を備え、その略中央部に保持受け孔94Aを有している。スライド部材80Qが後退位置にあるときに、弾性アーム部84の保持突起84Bが保持受け孔94Aに嵌入することで、スライド部材80Qが仮保持状態で留め置かれる。
次に、実施形態2の作用効果を説明する。まず雌雄の両ハウジング10Q,30Qを嵌合させるに先立って、可動側のモジュールを組み上げる。すなわち、ケーシング50Qに対して下方から雌ハウジング10Qを挿入してガイドカム部16をガイドカム溝52に嵌入し、さらに仮保持突部19を仮保持受け部52Qに係止させて、雌ハウジング10Qを初期位置に留め置く。初期位置における雌ハウジング10Qは、図47に示すように、ガイドカム部16をガイドカム溝52の一端に位置させ、その上面をケーシング50Qの上面後半部59Qに当接または近接する位置に引き上げた状態で配される。そして、レバー70Qの弾性係止部72をケーシング50Qのレバー受け部55Aに弾性係止させてレバー70Qを回動初期位置に留め置くとともに、カム受け部71の入り口をケーシング50Qのカム通し溝53の臨ませる。また、スライド部材80Qをケーシング50Qに対して後退位置に仮保持状態で留め置く。
両ハウジング10Q,30Qの嵌合操作を行う作業現場において、エンジンルーム側の取付面Bに固定された取付部材20に対し、雄ハウジング30Qのレール部35をスライド装着して雄ハウジング30Qを取付面Bに固定する。また、雄ハウジング30Qのフード部34にムービングプレート40Qを組み付けて、ムービングプレート40Qを保持手段によって端子位置決め位置に留め置く。また可動側のモジュールについて、取付箱部86の挿入空間に取付具90Qの先端部を挿入するとともに、スライド部材80Qの弾性アーム部84に取付具90Qの保持受け部94を弾性係止させる。これにより、図31及び図47に示すように、ケーシング50Qの第1の開口部56が雄ハウジング30Qの下面との間に所定間隔をあけて対向に配される。
この状態から、スライド部材80Qにおける弾性アーム部84の解除操作部84Aを押圧してスライド部材80Qの係止状態を解除するとともに、操作部83の操作面を押圧して、スライド部材80Qをケーシング50Qとともに雄ハウジング30Q側へ移動させる。するとその移動途中で、雄ハウジング30Qが第1の開口部56からケーシング50Q内に進入し、雄ハウジング30Qのカム部37がケーシング50Qのカム通し溝53の溝面に摺動するとともに、雄ハウジング30Qのガイド部39がケーシング50Qのガイド溝55の溝面に摺動する。
雄ハウジング30Qの覆い壁43がムービングプレート40Qの案内壁61とともに雌ハウジング10Qを押さえ付けると、雌ハウジング10Qの係合突起29がムービングプレート40Qの切り溝61B内に進入するとともに、その押圧力によって雌ハウジング10Qの仮保持突部19による仮保持状態が解除される。
ケーシング50Qに対する雄ハウジング30Qの挿入動作が進むと、図41から図42にかけて示すように、フード部34のプレート係止部32R,32Qに雌ハウジング10Qの先行解除本体18Eが係合して弾性撓み片32Qが係止解除方向へ撓み変形させられ、さらにムービングプレート40Qのプレート係止受け部25,26に雌ハウジング10Qの後行解除本体18Bが係合してその係合状態を保ちつつ、ムービングプレート40Qがプレート装着溝34Rに沿って後退移動する。
ムービングプレート40Qの後退移動が開始されるのと前後して、図46に示すように、カム部37がレバー70Qのカム受け部71の入り口に進入する。すると、ガイド部39が弾性係止部72の先端係止部72Bに当接してこの弾性係止部72を外側へ撓み変形させ、これによって先端係止部72Bがレバー受け部55Aから解離して、レバー70Qが回動開始可能となる。このとき、雌雄の両端子はそれぞれの先端同士を一部ラップさせることで既に接続動作を開始させている。また、雌ハウジング10Qの当て受け部17は、雄ハウジング30Qの移動方向に対して雌ハウジング10Qが斜めに相対変位することにより、フード部34の内側に進入した状態にある。
その後、さらにスライド部材80Qを押し込むと、レバー70Qの操作カム部74がスライド部材80Qの操作カム受け部82に沿って相対変位し、レバー70Qが支持ピン77を中心として図32に示す時計周りに回動する。すると、スライド部材80Qが後退位置から進出位置へと移動するとともに、雄ハウジング30Qのカム部37がレバー70Qのカム受け部71に沿って相対変位し、これに伴って雌雄の両ハウジング10Q,30Qの嵌合動作が進行する。そしてスライド部材80Qの操作部83がケーシング50Qの下壁に当て止めされる位置に至ると、図33に示すように、レバー70Qの回動操作が完了して両ハウジング10Q,30Qが正規嵌合状態となる。こうしてスライド部材80Qが進出位置に至ると、スライド部材80Qのケースロック部81がケーシング50Qのケースロック受け部68に弾性係止し、これによりスライド部材80Qがケーシング50Qから離脱規制状態にロックされる。
かくして正規嵌合された両ハウジング10Q,30Qを離脱させるときには、ケースロック部81とケースロック受け部68との係止状態を解除してスライド部材80Qを進出位置から後退位置へと引き戻すようにする。すると、操作カム部74が操作カム受け部82に沿って上記した両ハウジング10Q,30Qの嵌合時とは逆方向に相対変位し、レバー70Qが支持ピン77を中心として図33に示す反時計周りに回動する。レバー70Qの回動動作に伴い、カム部37がカム受け部71の入り口側へ相対変位するとともに、ガイドカム部16がガイドカム溝52に沿って斜め上方へ移動して、雌ハウジング10Qが雄ハウジング30Q側から離間する。また、雌ハウジング10Qの係合突起29がムービングプレート40Qの切り溝61Bの溝縁に引っ掛け状態で係合することにより、雌ハウジング10Qの動きに連れ立ってムービングプレート40Qが端子位置決め位置側へ移動する。両ハウジング10Q,30Qの離間途上で、ムービングプレート40Qはプレート係止部32R,32Qとプレート係止片32Pとによる係止作用によって端子位置決め位置に留め置かれる。
両ハウジング10Q,30Qの離脱操作が完了する終盤に至ると、図50に示すように、雌ハウジング10Qの当て受け部17と雄ハウジング30Qの当て部34Aが接触状態を保ち、これによって雌ハウジング10Qを初期位置へと引き上げるための推進構造が形成される。すなわち、図50に示す状態から雄ハウジング30Qがケーシング50Qに対して上方へ相対変位すると、当て部34Aが当て受け部17のテーパ面17Aに沿って摺動しつつ雌ハウジング10Qがガイドカム溝52に沿って斜め上方へ押し上げられ、もって雌ハウジング10Qが初期位置へ至るようになっている。このとき、雌ハウジング10Qが当て部34Aによってオーバーストローク気味に持ち上げられると、雌ハウジング10Qの上面がケーシング50Qの上面後半部59Qと当接してこの上面後半部59Qが撓み変形させられるが、さらに上面後半部59Qが弾性復元することにより、雌ハウジング10Qが初期位置へと戻ることが可能となっている。
このように実施形態2によれば、両ハウジング10Q,30Qの離脱時に、ケーシング50Qに対する雄ハウジング30Qの相対変位動作に伴って、雌ハウジング10Qに設けられた当て受け部17が雄ハウジング30Qに設けられた当て部34Aによって持ち上げられることにより、雌ハウジング10Qが初期位置へと強制的に戻されるようになっているから、次なる作業を迅速に開始することができ、繰り返しの連続使用に好適となる。この場合に、当て受け部17は、雌ハウジング10Qの前面から前方へ突出して形成され、両ハウジング10Q,30Qの嵌合時には雄ハウジング30Qのフード部34内に進入するようになっているから、この当て受け部17の突出量を調整するだけで、雌ハウジング10Qの移動ストローク量を所望に設定することができる。
そして、当て受け部17が当て部34Aによってオーバーストローク気味に持ち上げられると、ケーシング50Qの上面後半部59Qが撓み変形しつつ雌ハウジング10Qを受け止めることが可能となっているから、雌ハウジング10Qの移動ストローク量が設定値よりずれていてもそのずれ量を吸収することができる。しかも、上面後半部59Qの弾性復帰に伴い雌ハウジング10Qが初期位置へ確実に至らしめられる。
また、フード部34に設けられたプレート係止部32R,32Qとムービングプレート40Qに設けられたプレート係止受け部25,26とによる係止構造がムービングプレート40Qのプレート本体48の中心部を挟んだ対角位置に対をなして設けられているから、プレート本体48が垂直姿勢の状態を保って移動可能となる。その結果、雌雄の両端子の接続姿勢が安定化して、接続信頼性が向上する。
さらに、レバー70Qの弾性係止部72が、レバー70Qの回動接線方向に延出して板厚方向に撓み変形可能とされ、その自由端部(先端部)に、ケーシング50Qにおけるガイド溝55のレバー受け部55Aに対してレバー70Qの回動方向で当たり合う回動規制面72Eを備えているから、弾性係止部72のロック強度が高まる。これにより、レバー70Qが回動初期位置にあるときに、弾性係止部72によるロックが不用意に解除される事態を回避できる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、操作カム部が操作カム受け部に沿って相対的に移動するようになっていたが、本発明においては、操作カム受け部が溝状に形成された操作カム部に沿って相対的に移動するようになっていてもよい。
(2)上記実施形態では、レバーがケーシングに対して回動可能に装着されていたが、本発明においては、レバーがスライド部材に対して回動可能に装着されていてもよい。この場合には、操作カム受け部をケーシングに対して設けてもよい。
(3)上記実施形態では、検知部がスライド部材の検知窓の開口から突出する形態となっていたが、本発明においては、検知部がスライド部材の検知窓の開口内に収まっていてもよい。要は、検知窓を通して検知部の突出端の位置が視認できればよい。
(4)上記実施形態では、スライド部材の操作面が平坦面となっていたが、本発明においては、スライド部材の操作面における検知窓の開口周辺部に保護リブを立ててもよい。この保護リブの突出端と検知部の突出端とを見比べることにより、嵌合検知の指標として有効であるとともに、検知部を保護する役割を兼用させることができる。
(5)上記実施形態では、フード部内にムービングプレートが組み付けられていたが、本発明においては、ムービングプレートは無くても構わない。この場合には、フード部の覆い壁がムービングプレートの案内壁の役割を果たすことになる。
(6)実施形態1では、ケーシングの一面に略平行な二軸のガイドカム溝が形成されていたが、本発明においては、略平行な三軸以上のガイドカム溝が形成されていてもよい。また、実施形態2のように、一軸のガイドカム溝が形成されるだけでもよい。
(7)上記実施形態では、車両側のモジュールに雄ハウジングを配し、コックピット側のモジュールに雌ハウジングを配していたが、本発明においては、車両側のモジュールに雌ハウジングを配し、コックピット側のモジュールに雄ハウジングを配してもよい。
(8)上記実施形態では、コックピット側のモジュールが可動側のモジュールとされ、車両側のモジュールが待受側のモジュールとされたが、本発明によれば、コックピット側のモジュールが待受側のモジュールとされ、車両側のモジュールが可動側のモジュールとされてもよい。
(9)実施形態2では、当て受け部が当て部側へ突出して形成されていたが、本発明によれば、当て部が当て受け部側へ突出して形成されていてもよい。
(10)本発明によれば、フード部に設けられたプレート係止部とムービングプレートに設けられたプレート係止受け部とによる係止構造は、ムービングプレートの中心を挟んだ対角4隅に一対ずつ設けられていてもよい。