JP2006310423A - 磁気メモリ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】MRAMのディスターブ耐性の向上。
【解決手段】磁気メモリは、磁気抵抗素子を有するメモリセル10と、そのメモリセル10に情報を書き込む際の書き込み磁場を生成する書き込み電流が流れる書き込み配線100と、その書き込み配線100のメモリセル10に対向する対向面FSを除く面の少なくとも一部を覆う強磁性体膜120と、バイアス磁場印加部130とを備える。バイアス磁場印加部130は、書き込み配線100の長手方向(X)に沿った第1成分を含むバイアス磁場を、強磁性体膜120に印加する。その第1成分の正負符号は、強磁性体膜120のうち少なくともメモリセル10とオーバーラップするオーバーラップ領域ROにおいて、一様である。
【選択図】 図7

Description

本発明は磁気メモリ及びその製造方法に関する。特に、本発明は、磁気抵抗素子を有するメモリセルが集積された磁気メモリ及びその製造方法に関する。
磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)は、高集積・高速動作の観点から有望な不揮発性メモリである。MRAMにおいては、TMR(Tunnel MagnetoResistance)効果などの「磁気抵抗効果」を示す磁気抵抗素子が利用される。例えば、この磁気抵抗素子には、トンネル絶縁層が少なくとも2枚の磁性体層で挟まれた「磁気トンネル接合(MTJ; Magnetic Tunnel Junction)」が形成される。
図1は、MTJを有するMTJセル(メモリセル)を模式的に示している。このMTJセル10は、表面被覆層11、自由強磁性体層12、トンネルバリア層13、固定強磁性体層14、反強磁性体層15、及び下地層16を有している。トンネルバリア層13は、絶縁膜を含む非磁性層であり、自由強磁性体層12と固定強磁性体層14に挟まれている。これら自由強磁性体層12、トンネルバリア層13、及び固定強磁性体層14が、磁気トンネル接合(MTJ)を構成している。自由強磁性体層12と固定強磁性体層14は、自発磁化を有しており、その自発磁化の向き(orientation)は図中の矢印で示されている。固定強磁性体層(ピン層)14の自発磁化の向きは、反強磁性体層15によって、所定の方向に固定されている。一方、自由強磁性体層(フリー層)12の自発磁化の向きは反転可能であり、固定強磁性体層14の自発磁化の向きと平行、又は、反平行になることが許されている。
自由強磁性体層12と固定強磁性体層14の自発磁化の向きが“反平行”である場合のMTJの抵抗値(R+ΔR)は、磁気抵抗効果により、それらが“平行”である場合の抵抗値(R)よりも大きくなることが知られている。MRAMは、このMTJセル10をメモリセルとして用い、この抵抗値の変化を利用することによってデータを不揮発的に記憶する。MTJセル10のデータの書き換えは、自由強磁性体層12の自発磁化の向きを反転させることによって行われる。具体的には、MTJセル10を挟むように設けられた互いに交差する書き込みワード線及び書き込みビット線に、それぞれ書き込み電流Iw及びIbが供給される。これら書き込み電流Iw及びIbにより、MTJセル10の自由強磁性体層12には、それぞれ書き込み磁場Hw及びHbが印加される。これら書き込み磁場Hw及びHbが所定の条件を満たす場合、自由強磁性体層12の自発磁化の向きが反転する。
図2Aは、その所定の条件(閾値)を示すグラフ図である。図2Aに示される曲線は、アステロイドカーブと呼ばれており、自由強磁性体層12の自発磁化の反転に必要な最低限の書き込み磁場Hw、Hb(書き込み電流Iw、Ib)を示している。つまり、このアステロイドカーブの外側に対応する書き込み磁場Hw、Hbが印加された場合、データの書き換えが行われる。一方、印加される書き込み磁場Hw、Hbが、アステロイドカーブの内側に対応する場合、データの書き換えは行われない。
図2Bは、複数のメモリセルに対するアステロイドカーブの分布を示す。各メモリセルの特性にはバラツキが存在する。そのため、複数のメモリセルに対するアステロイドカーブ群(曲線群)は、図2Bに示されるように、曲線Cmaxと曲線Cminの間に分布することになる。書き込みが行われるためには、書き込み磁場Hw、Hbは、少なくとも、曲線Cmaxの外側に存在する必要がある。ここで、その書き込み磁場Hw、Hbは、対象となるメモリセル以外のメモリセルにも影響を与える(以下、「ディスターブ」と参照される)。書き込み対象のメモリセルに選択的にデータを書き込むためには、書き込み磁場HwとHbのいずれか一方によって、対象ではないメモリセルに書き込みが行われないようにする必要がある。そのため、書き込み磁場Hbは、Hx(min)より小さく、書き込み磁場Hwは、Hy(min)より小さい必要がある。よって、書き込み磁場Hw及びHbは、図2B中のハッチング領域(書き込みマージン、選択書き込み領域)に対応していなければならない。メモリセルの特性のバラツキが大きくなるにつれ、この書き込みマージンは小さくなる。書き込みマージンを確保するためには、多数のメモリセルの磁化反転特性を精度良く揃えることが必要である。
また、MRAMにおいて、書き込み電流Iw、Ibが大きくなると、その書き込み電流の制御に必要な周辺回路の占有面積が大きくなってしまう。また、書き込み配線(書き込みワード線、書き込みビット線)に許容される電流密度には制限があるため、書き込み電流Iw、Ibが大きくなるにつれて、書き込み配線を太くする必要がでてくる。これらのことは、メモリセルの大規模集積化の妨げとなり、また、MRAM全体の消費電力の増大を招く。従って、書き込み電流Iw、Ibを低減することができる技術が望まれている。
書き込み電流Iw、Ibを低減するための直接的な方法として、自由強磁性体層12の自発磁化の反転に必要な磁場(反転磁場:図2Aにおける原点からアステロイドカーブまでの距離)を小さくすることが考えられる。しかしながら、反転磁場がより小さくなるように設計されると、書き込み磁場が印加されていないにも関わらず、熱エネルギーによって自発磁化が反転してしまう現象(熱擾乱)が発生しやすくなる。つまり、メモリセルに書き込まれた情報の保持特性が悪化する。
ある程度の大きさの反転磁場を確保しながら、書き込み電流Iw、Ibを低減することが望まれる。そのためには、同じ配線電流でもより大きな磁場を自由強磁性体層12に印加することができる配線技術が重要である。そのような配線技術の一つとして、書き込み配線の一部を透磁率の高い磁性薄膜で被覆するという技術が提案されている。そのような技術は、例えば下記特許文献1〜15に記載されている。
図3は、上記配線技術に係る基本的な配線構造の断面を模式的に示している。具体的には、図3には、書き込み配線20とその書き込み配線20に対向するように配置された1つのMTJセル10が示されている。ここで、書き込み配線20の長手方向が「X方向」として定義される。書き込み配線20の断面は、「YZ面」として定義される。また、書き込み配線20とMTJセル10が整列する方向が「Z方向」として定義される。つまり、MTJセル10は、書き込み配線20から見て+Z方向あるいは−Z方向に位置している。書き込み配線20が有する表面のうち、MTJセル10に対向する面は、「対向面FS」と参照される。
図3に示されるように、書き込み配線20は、非磁性材料から形成される非磁性導体21を有している。この非磁性導体21の表面の一部は、強磁性体材料から形成される強磁性体被膜22によって被覆されている。特に、図3に示されるように、非磁性導体21の表面のうち対向面FSを除く三面が強磁性体被膜22によって覆われている。このような構成により、非磁性導体21を流れる配線電流により生成される磁場(磁束)は、強磁性体被膜22の内部に収束される。その収束された磁場は、対向面FSと一致する強磁性体被膜22の端面から、空間に放出される。これにより、強磁性体被膜22が無い場合よりも強い磁場がMTJセル10に印加される。つまり、同じ配線電流でも、より大きな磁場を自由強磁性体層12に印加することが可能となる。
特許文献7には、高透磁率材料として「鉄(Fe)」、「鉄アルミニウム(Fe-Al)」、「鉄シリコン(Fe-Si)」、「鉄シリコンアルミニウム(Fe-Si-Al)合金」、「ニッケル鉄(NiFe)」、「酸化鉄(Fe2O3)を含むソフトフェライト材料」、「鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)とボロン(B)、シリコン(Si)、リン(P)のアモルファス合金」など各種材料が示されている。また、飽和磁束密度は0.05T以上、好ましくは0.1T以上と言及されている。特許文献6において、強磁性体被膜22の厚さは0.05μm以下が好ましいと言及されている。特許文献4においては、強磁性体被膜22の厚さは0.01μm以上が好ましいと言及されている。特許文献2においては、強磁性体被膜22の厚さは、0.01〜0.05μmの範囲が好ましいと言及されている。
米国特許No.5659499 米国特許No.5940319 特開2002−110938号公報 特開2002−246566号公報 特開2003−197875号公報 特開2003−209226号公報 特開2003−209227号公報 特開2003−249630号公報 特開2003−282836号公報 特開2004−128011号公報 特開2004−128430号公報 特開2004−235510号公報 特開2004−235512号公報 特開平9−204770号公報 特開平11−238377号公報
高集積度・大記録容量のMRAMを製造するためには、MTJセル10をより微小化し、書き込み配線20の幅をより狭くする必要がある。図3に示された従来のMRAMの配線構造によれば、強磁性体被膜22の厚みの分だけ、書き込み配線20が占める領域が大きくなる。よって、強磁性体被膜22を可能な限り薄くすることが必要である。ここで、本願発明者は、強磁性体被膜22の薄膜化に伴う以下の問題点を発見した。
図4は、配線を流れる配線電流と、MTJセル10に印加される磁場との関係を示すグラフである。この関係は、本願発明者によって行われたシミュレーションを通して得られた。具体的には、図3に示された従来の強磁性体被膜22で覆われた書き込み配線20に電流を流した場合に印加される磁場が計算された。また、比較例として、強磁性体被膜22を有しない通常配線の場合の磁場が計算された。このシミュレーションにおいて、非磁性導体21の幅は0.5μmに設定され、その厚さ0.25μmに設定された。また、強磁性体被膜22の透磁率は2500に、その飽和磁束密度は1Tに、その厚さは0.05μmにそれぞれ設定された。図3に示されたように、この強磁性体被膜22は、非磁性導体21の対向面FSを除く三面を覆うように形成されている。磁場の測定点は、自由強磁性体層12に対応する点であり、配線中心線上で配線上面から0.1μm離れた点に設定された。
図4から、強磁性体被膜22を有する配線の場合、通常配線の場合と比較して、より強い磁場が自由強磁性体層12に印加されることが分かる。また、印加磁場は、配線電流に比例して増加している。ただし、強磁性体被膜22を有する配線の場合、印加磁場の増加の割合(線の傾き)は、配線電流が約60mAの点で変化している。つまり、配線電流がその点に達するまでは、印加磁場の増加の割合は通常配線の場合よりも大きい。しかしながら、配線電流がその点を超えると、増加割合は通常配線の場合と同じになる。これは、強磁性体被膜22の自発磁化が、配線電流により生成される磁場の方向(配線の長手方向に直交する方向)に完全に向いてしまい、磁場増強効果が飽和したためである。
強磁性体被膜22の自発磁化の配線電流による方向変化を、図5を参照しながら説明する。電流が流れていない第1状態(初期状態)において、強磁性体被膜22の自発磁化30は、形状異方性により、書き込み配線20の長手方向(−X方向)を向いている。書き込み配線20に電流Iaが流れると、強磁性体被膜22において、X方向に直交する方向(Y方向、Z方向:以下「直交方向」と参照される)に沿った磁場が発生する。その発生磁場により、強磁性体被膜22の自発磁化30は直交方向に傾く(第2状態)。配線電流の増加に伴い、自発磁化30は更に直交方向に傾いていく。そして、書き込み配線20に電流Ibが流れた場合、強磁性体被膜22の自発磁化30の向きは、X方向と完全に直交する(第3状態)。この第3状態が「飽和状態」である。飽和状態において、自発磁化30は直交方向に飽和しており、直交方向の自発磁化はそれ以上大きくならない。強磁性体被膜22が飽和状態になると、それによる磁場の増強効果は飽和する。
強磁性体被膜22が薄くなればなるほど、その強磁性体被膜22の磁化は飽和しやすくなる。すなわち、強磁性体被膜22の膜厚が小さくなるほど、その強磁性体被膜22は図5に示された第3状態になりやすくなる。例えば、強磁性体被膜22の厚さが5nm程度の場合、数mAの配線電流で飽和状態が発生する。この飽和状態の発生により、以下に示される状況が引き起こされる。
書き込み動作の後書き込み電流の供給が停止すると、強磁性体被膜22の自発磁化30は、形状異方性により、書き込み配線20の長手方向に沿った方向に戻る。ここで、その長手方向に沿った方向として、+X方向と−X方向の2通りがある。飽和状態の後、自発磁化30が+X方向と−X方向のいずれを向くかは、一概には定まらない。また、場所によって自発磁化30が戻る方向が異なる。そのため、飽和状態の後に書き込み電流の供給が停止すると、自発磁化は、例えば図6に示されるように分布する可能性がある。図6において、強磁性体被膜22には、複数のドメイン40a〜40cが形成されている。各ドメインにおいて自発磁化30の方向は一様であるが、隣接するドメイン間ではその方向が逆である。例えば、ドメイン40a、40cにおいて、自発磁化30の方向は−X方向であり、ドメイン40b、40dにおいて、その方向は+X方向である。隣接するドメイン間には、磁壁41が形成されている。
強磁性体被膜22が図6に示される状態になると、磁壁41から磁場が漏洩する。この漏洩磁場は、バイアス磁場として付近のMTJセル10に影響を与える。このバイアス磁場の分布は磁壁41の分布状況に依存し、それぞれのMTJセル10に影響するバイアス磁場の大きさは位置によって異なる。よって、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきが発生する。MTJセル10の磁化反転特性がばらつくと、図2Bに示された書き込みマージン(選択書き込み領域)が小さくなる。また、バイアス磁場は、MTJセル10の熱擾乱に対する耐性を低下させ、情報の保持特性を劣化させる。
以上に説明されたように、書き込み電流Iw、Ibを低減するためには強磁性体被膜22が必要である。また、メモリセルの集積度を向上させるためには、その強磁性体被膜22を可能な限り薄くすることが望まれる。しかしながら、強磁性体被膜22が薄くなればなるほど、その強磁性体被膜22の磁化は飽和しやすくなる、すなわち、図5に示された第3状態になりやすくなる。強磁性体被膜22の直交方向の磁化が飽和した場合、書き込み電流が停止した後に、図6に示された状況が発生する。これにより、書き込みマージンが小さくなり、ディスターブに対する耐性が劣化する。また、情報の保持特性が劣化する。このような問題点は、本願発明者によって初めて認識された。
従って、本発明の目的は、MRAMにおいて、強磁性体被膜を有する配線からの不要なバイアス磁場の発生を防止することができる技術を提供することにある。
本発明の他の目的は、書き込みマージンの縮小を防止し、MRAMのディスターブ耐性を向上させることができる技術を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、MRAMにおけるメモリセルの集積度を向上させることができる技術を提供することにある。
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号・符号を用いて、[課題を解決するための手段]を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
本発明の第1の観点において、磁気メモリは、磁気抵抗素子を有するメモリセル(10)と、そのメモリセル(10)に情報を書き込む際の書き込み磁場を生成する書き込み電流が流れる書き込み配線(100,200)と、その書き込み配線(100,200)のメモリセル(10)に対向する対向面(FS)を除く面の少なくとも一部を覆う強磁性体膜(120,220)と、バイアス磁場印加部(130,230)とを備える。バイアス磁場印加部(130,230)は、少なくとも書き込み電流が停止する際に、書き込み配線(100,200)の長手方向(X)に沿った第1成分を含むバイアス磁場を、強磁性体膜(120,220)に印加する。ここで、その第1成分の正負符号は、強磁性体膜(120,220)のうち少なくともメモリセル(10)とオーバーラップするオーバーラップ領域(RO)において、一様である。
このような構成によれば、強磁性体膜(120,220)の自発磁化は、書き込み電流の供給が停止した後、一方向に戻る。それは、バイアス磁場印加部(130,230)により生成される一様な第1成分を有するバイアス磁場が、自発磁化の戻る方向を一方向に規定するからである。従って、図6に示されたような磁壁から漏洩する不要な漏洩磁場の発生が防止され、メモリセル(10)の磁化反転特性のばらつきが抑えられる。その結果、書き込みマージンの縮小が防止され、MRAMのディスターブ耐性が向上する。また、バイアス磁場印加部(130,230)によるバイアス磁場が、ドメインや磁壁の発生を抑止するため、強磁性体膜(120,220)の厚さを薄くすることが可能となる。つまり、書き込み配線(100,200)を微細化することが可能となる。その結果、メモリセル(10)の集積度が向上する。また、書き込み配線(100,200)を流れる電流量が減少するので、消費電力が低減される。
バイアス磁場印加部は、自発磁化(140)の向きが長手方向(X)と平行な第1の強磁性体(130)を有してもよい。その第1の強磁性体(130)は、オーバーラップ領域(RO)以外の領域に設けられると好ましい。例えば、第1の強磁性体(130)は、書き込み配線(100)の長手方向(X)の端部に設けられる。また、バイアス磁場印加部(130)は、自発磁化(140)の向きが第1の強磁性体(130)の自発磁化の向きと同じである第2の強磁性体(130)を更に有してもよい。この時、第1の強磁性体(130)と第2の強磁性体(130)は、オーバーラップ領域(RO)を挟むように設けられる。例えば、第1の強磁性体(130)は、書き込み配線(100)の長手方向の一端に設けられ、第2の強磁性体(130)は、書き込み配線(100)の長手方向の他端に設けられる。
また、バイアス磁場印加部は、バイアス磁場(240)を生成する電流が流れる磁場発生用配線(230)を有してもよい。この磁場発生用配線(230)は、書き込み配線(200)と交差するように設けられる。好適には、磁場発生用配線(230)は、長手方向(X)と直交する方向(Y,Z)に沿って設けられる。
本発明の第2の観点において、磁気メモリは、磁気抵抗素子を有するメモリセル(10)と、そのメモリセル(10)に情報を書き込む際の書き込み磁場を生成する書き込み電流が流れる書き込み配線(300,400,500)と、その書き込み配線(300,400,500)のメモリセル(10)に対向する対向面(FS)を除く面の少なくとも一部を覆う強磁性体膜(320,420,520)とを備える。強磁性体膜(320,420,520)は、第1部分(320a,420a,520a)と第2部分(320b,420b,520b)とを有する。書き込み電流が流れる際、第1部分(320a,420a,520a)における自発磁化の方向と、書き込み配線(300,400,500)の長手方向(X)との間の角度は90度未満である。言い換えれば、第1部分(320a,420a,520a)は、書き込み配線(300,400,500)の長手方向(X)に直交する直交方向(Y,Z)の自発磁化が、書き込み電流により印加される磁場により飽和しないように形成される。
このような構成によれば、強磁性体膜(320,420,520)の自発磁化は、書き込み電流の供給が停止した後、一方向に戻る。それは、第1部分(320a,420a,520a)の自発磁化が直交方向(Y,Z)に飽和せず、長手方向(X)に沿った成分を有しているからである。その長手方向(X)に沿った成分が、強磁性体膜(320,420,520)の自発磁化の戻る方向を一方向に規定している。従って、図6に示されたような磁壁から漏洩する不要な漏洩磁場の発生が防止され、メモリセル(10)の磁化反転特性のばらつきが抑えられる。その結果、書き込みマージンの縮小が防止され、MRAMのディスターブ耐性が向上する。また、不要な漏洩磁場の発生が防止されるため、強磁性体膜(320,420,520)の厚さを薄くすることが可能となる。つまり、書き込み配線(300,400,500)を微細化することが可能となる。その結果、メモリセル(10)の集積度が向上する。また、書き込み配線(300,400,500)を流れる電流量が減少するので、消費電力が低減される。
第1部分(320a,420a,520a)は、書き込み配線(300,400,500)の表面のうち対向面(FS)に対向する面(RS)の少なくとも一部を覆うように形成されると好ましい。また、第1部分(320a,420a,520a)は、強磁性体膜(320,420,520)のうちメモリセル(10)とオーバーラップする領域(RO)以外の領域に設けられると好ましい。
第1部分(320a)の膜厚(T1)は、第2部分(320b)の膜厚(T2)より大きくてもよい。
第1部分(420a)は、第1飽和磁束密度(Ms1)を有する第1材料により形成され、第2部分(420b)は、第2飽和磁束密度(Ms2)を有する第2材料により形成されてもよい。その場合、第1飽和磁束密度(Ms1)は、第2飽和磁束密度(Ms2)より大きい。例えば、第1材料はCoFeであり、第2材料はNiFeである。
長手方向(X)と直交する面(YZ)において、書き込み配線(500)の周囲に沿った第1部分(520a)の長さ(TL1)は、書き込み配線(500)の周囲に沿った第2部分(520b)の長さ(TL2)より短くてもよい。
本発明の第3の観点において、磁気メモリの製造方法は、(A)磁気抵抗素子を有するメモリセル(10)を形成する工程と、(B)メモリセル(10)にオーバーラップする非磁性導体(310)を、メモリセル(10)の上方に形成する工程と、(C)非磁性導体(310)の上面の上に第1の強磁性体膜(332)を形成する工程と、(D)第1の強磁性体膜(332)より薄い第2の強磁性体膜(334)を全面に形成する工程とを有する。
本発明の第4の観点において、磁気メモリの製造方法は、(A)磁気抵抗素子を有するメモリセル(10)を形成する工程と、(B)メモリセル(10)を覆う絶縁膜を形成する工程と、(C)絶縁膜に、メモリセル(10)に対向する溝を形成する工程と、(D)全面に第1強磁性体膜(342)を形成する工程と、(E)溝の底面の第1の強磁性体膜(342)を除去する工程と、(F)溝に非磁性導体(310)を埋め込む工程と、(G)非磁性導体(310)上に、第1の強磁性体膜(342)より厚い第2の強磁性体膜(346)を形成する工程とを有する。
本発明に係るMRAM及びその製造方法によれば、強磁性体被膜を有する配線からの不要なバイアス磁場の発生を防止することが可能となる。
また、本発明に係るMRAM及びその製造方法によれば、書き込みマージンの縮小を防止し、MRAMのディスターブ耐性を向上させることが可能となる。
また、本発明に係るMRAM及びその製造方法によれば、メモリセルの集積度が向上し、また、消費電力が低減される。
添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る磁気メモリ(MRAM)及びその製造方法が説明される。以下に示される実施の形態においては、簡単のため、二軸の書き込み配線(書き込みワード線、書き込みビット線)を用いた二軸書き込みではなく、1本の書き込み配線を用いた書き込みが検討される。その際の書き込み電流は、図2Bに示された書き込みマージンに対応する電流よりも大きく設定されている。後述されるように、本発明による効果は、その1本の書き込み配線を用いた書き込みにおいて確認されている。つまり、二軸書き込み時よりも大きい電流で書き込みが行われても、不要なバイアス磁場の発生が防止されることが確認されている。従って、二軸書き込みが行われても本発明による効果が得られることは明らかである。
1.第1の実施の形態
(構造)
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る磁気メモリ(MRAM)の構造を示す模式図である。磁気メモリは、少なくともMTJセル(メモリセル)10と、書き込み配線100を備えている。MTJセル10は、図1に示された構造と同様の構造を有しており、磁気トンネル接合(MTJ)を含んでいる。また、MTJセル10は、絶縁膜を介して、書き込み配線100に対向するように配置されている。尚、図7において1つのMTJセル10のみが示されているが、実際のMRAMでは、1本の書き込み配線100に対して複数のMTJセル10が配置されている。後の実施の形態に関しても同様である。MTJセル10に情報を書き込む際、この書き込み配線100には書き込み電流が流れ、その書き込み電流により生成される書き込み磁場が、MTJセル10に印加される。その書き込み磁場の方向は、書き込み配線100の長手方向に直交する。
本明細書において、書き込み配線の長手方向に平行な方向が「X方向(+X,−X)」として定義される。上述の書き込み電流はX方向に沿って流れる。また、書き込み配線の断面は、「YZ面」として定義される。上述の書き込み磁場は、YZ面上に生成され、Y成分及びZ成分を有する。また、書き込み配線とMTJセルが整列する方向が「Z方向(+Z,−Z)」として定義される。つまり、MTJセルは、書き込み配線から見て+Z方向あるいは−Z方向に位置している。このZ方向は、鉛直方向に対応している。Z方向及びX方向と右手系をなす方向が、Y方向である。書き込み配線が有する表面のうち、MTJセルに対向する面は、「対向面FS」と参照される。また、書き込み配線が有する表面のうち、Y方向に直角な面は「側面」と参照される場合がある。
書き込み配線100は、非磁性材料から形成される非磁性導体110を有している。この非磁性導体110の表面のうち対向面FSを除く面の少なくとも一部は、強磁性体材料から形成される強磁性体被膜120によって被覆されている。特に、図7に示されるように、非磁性導体110の表面のうち対向面FSを除く三面が強磁性体被膜120によって覆われていると好ましい。このような構成により、非磁性導体110を流れる配線電流により生成される磁場(磁束)は、強磁性体被膜120の内部に収束される。その収束された磁場は、対向面FSと一致する強磁性体被膜120の端面から、空間に放出される。このような構成により、MTJセル10の自由強磁性体層12に印加される磁場が増強され、書き込み電流を低減することが可能となる。
また、図7に示されるように、本実施の形態に係る磁気メモリは2つの強磁性体130を更に備えている。各々の強磁性体130は、書き込み配線100の長手方向(X方向)に平行な向きの自発磁化140を有している。2つの強磁性体130の自発磁化140の向きは同じであり、例えば−X方向である。ここで、強磁性体被膜120のうちMTJセル10とオーバーラップする領域ROが、「オーバーラップ領域RO」と参照されるとする。このとき、図7に示されるように、2つの強磁性体130は、少なくともそのオーバーラップ領域ROを挟むように配置されている。それら強磁性体130は、書き込み配線100に接触していても、書き込み配線100から離れていてもよい。
強磁性体130の自発磁化140により、強磁性体被膜120には「バイアス磁場」が印加される。自発磁化140の向きが−X方向であるため、そのバイアス磁場は、少なくともX方向に沿った成分(X成分)を含んでいる。また、そのバイアス磁場のX成分の値は、少なくともオーバーラップ領域ROにおいて、一様に“負”である。言い換えれば、バイアス磁場のX成分の正負符号(+、−)は、少なくともオーバーラップ領域において一様であり、マイナスである。
上述の通り、書き込み電流の供給が停止すると、強磁性体被膜120の自発磁化は、形状異方性により、書き込み配線100の長手方向に沿った方向に戻る。本実施の形態によれば、バイアス磁場のX成分の極性が一様にマイナスであるため、書き込み電流の供給が停止した後、強磁性体被膜120の自発磁化は、同じ方向(−X方向)に戻る。従って、図6に示されたようなドメイン40や磁壁41の発生が防止される。よって、磁壁41から漏洩する不要な漏洩磁場の発生が防止され、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきが抑えられる。強磁性体130によるバイアス磁場がドメイン40や磁壁41の発生を抑止するため、強磁性体被膜120の厚さを薄くすることが可能となる。つまり、書き込み配線100を微細化することが可能となる。その結果、MTJセル10の集積度が向上する。また、書き込み配線100を流れる電流量が減少するので、消費電力が低減される。
図7において、2つの強磁性体130は、MTJセル10の特性に影響を与えない範囲で、書き込み配線100の途中に設けられている。しかしながら、強磁性体130の配置は、図7に示された配置に限られない。上記効果を得るためには、バイアス磁場のX成分の極性が少なくともオーバーラップ領域ROにおいて一様になるように、強磁性体130が配置されればよい。つまり、所望のバイアス磁場が得られる範囲内で、強磁性体130の数や配置位置を変更することが可能である。例えば、強磁性体130は、1つだけ設けられても構わない。その場合、その1つの強磁性体130は、オーバーラップ領域RO以外の領域に設けられる。
また、図8Aに示されるように、強磁性体130は、書き込み配線100のX方向の端部に接触するように設けられてもよい。2つの強磁性体130がある場合、一方の強磁性体130は書き込み配線100の一端に設けられ、他方の強磁性体130は書き込み配線100の他端に設けられる。また、図8Bに示されるように、強磁性体130のZ方向の位置が変更されてもよい。強磁性体130は、書き込み配線100に直接接触していなくてもよい。また、強磁性体130は、オーバーラップ領域ROからY方向に離れた位置に配置されてもよい。
(製造方法)
本実施の形態に係る構造は、以下の手順により形成することができる。まず、絶縁膜に配線形状の溝が形成され、第1のバリアメタル膜、被覆用の強磁性体膜、第二のバリアメタル膜、銅薄膜が順に成膜される。次に、溝に銅メッキが埋め込まれ、表面が化学機械研磨(CMP: Chemical Mechanical Polishing)により平面化される。これにより、溝内部に強磁性体膜で被覆された銅配線(書き込み配線100)が形成される。銅配線部分は、メッキ法の代わりに真空成膜プロセスで形成することも可能である。次に、バイアス磁場を生成するための強磁性体膜が形成される。その強磁性体膜を所望の形状に加工することによって、本実施の形態に係る強磁性体130が得られる。
(検証)
本実施の形態の効果を実証するために、次に示される実験及びシミュレーションが行われた。まず、比較例として、強磁性体130を有さない従来のMRAMが用意された。書き込み配線100を形成するための溝の深さ及び幅は、それぞれ400nm及び500nmである。また、被膜用の強磁性体膜は、厚さ5nmのNiFe合金膜である。ここで、NiFe合金の飽和磁束密度は1Tである。
その書き込み配線100の上に、厚さ200nmのシリコン酸化膜を介して、MTJセル10が配置される。このMTJセル10は、図1に示された基本構造を有する。具体的には、下地層16は、TaとNiFeの積層膜である。反強磁性体層15は、厚さ25nmのPtMn合金膜である。固定強磁性体層14は、厚さ5nmのCoFe合金膜である。トンネルバリア層13は、厚さ1nmのAl膜をプラズマ酸化することにより形成される。自由強磁性体層12は、厚さ5nmのNiFe膜である。また、自由強磁性体層12は、短辺長250nm、長辺長500nmの長方形に加工される。このようなMTJセル10が、その長手方向がX方向と直交するように配置される。また、このMTJセル10には、表面被覆層11と下地層16を介して、接合抵抗測定用の配線が接続される。
この比較例に係るMRAMの特性は、実際の実験を通して調べられた。その実験結果に基づいて、本実施の形態に係るMRAMの特性がシミュレータによって調べられた。本実施の形態に係るMRAMは、図7に示された基本構造を有する。具体的には、強磁性体130は、X方向に着磁されたCoFe膜であり、書き込み配線100のX方向の端部に配置される。このCoFe膜の厚さ(Z方向)は50nmであり、その幅(Y方向)は1μmであり、その長さ(X方向)は5μmである。このような構造を有するMRAMは、以下、実施例1と参照される。
検証の手順は、次の通りである。まず、上述の実施例1と比較例の両方に、8000A/mの外部磁場が印加される。この外部磁場の方向は、自由強磁性体層12の長辺と平行であり、且つ、固定強磁性体層14の磁化方向と同じである。これにより、自由強磁性体層12の自発磁化の向きは、固定強磁性体層14の自発磁化の向きと平行になる。この時、MTJの接合抵抗は最小であり、実施例1及び比較例の両方において“45kΩ”となる。この状態は、以下「初期状態」と参照される。
次に、自由強磁性体層12の自発磁化の向きが、初期状態の向きと逆になるように、書き込み配線100に書き込み電流が流される。具体的には、12mAの書き込み電流を書き込み配線100に一定時間流し、その後、電流の供給を停止する。この書き込み電流により発生する書き込み磁場によって、自由強磁性体層12の自発磁化は反転する。その結果、MTJの接合抵抗は、初期状態と比較して増加する。電流の供給が停止した後の接合抵抗は、比較例において58kΩ、実施例1において61kΩである。すなわち、比較例においては、接合抵抗が実施例1よりも小さくなる。この状態は、以下「反転状態」と参照される。
次に、8000A/mの外部磁場であって、その方向が固定強磁性体層14の自発磁化の向きと逆である外部磁場を印加しながら、接合抵抗が測定される。その場合、比較例1における接合抵抗は、実施例1と同じ61kΩとなる。この状態は、以下「矯正状態」と参照される。
以上に示された実験・シミュレーション結果の考察は次の通りである。反転状態における接合抵抗が実施例1よりも比較例において小さくなるのは、自由強磁性体層12と固定強磁性体層14の自発磁化の向きが、完全な反平行状態からずれているためである。反平行状態からのずれは、書き込み動作後にMTJセル10の短辺方向に加わる不要なバイアス磁場(図6参照)のせいである。矯正状態における接合抵抗が実施例1と比較例とで等しくなるのは、自由強磁性体層12の自発磁化の傾きが外部磁場によって矯正され、完全な反平行状態が実現されるためである。一方、実施例1によれば、不要なバイアス磁場がMTJセル10に加わらないため、矯正しなくても完全な反平行状態が実現される。
また、上記例における自由強磁性体層12の自発磁化の反転に必要な電流は、9mAである。磁化反転が起こらない8mAの書き込み電流が流された場合、比較例では接合抵抗の増加が見られるが、実施例1では見られない。これは、比較例では、電流を流した後に残留バイアス磁場が存在することを示している。
(効果)
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、強磁性体被膜120の自発磁化は、書き込み電流の供給が停止した後、一方向に戻る。それは、本実施の形態に係る強磁性体130が、強磁性体被膜120の自発磁化の戻る方向を一方向(例えば−X方向)に規定しているからである。従って、図6に示されたようなドメイン40や磁壁41の発生が防止される。よって、磁壁41から漏洩する不要な漏洩磁場(バイアス磁場)の発生が防止され、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきが抑えられる。その結果、書き込みマージンの縮小が防止され、MRAMのディスターブ耐性が向上する。また、強磁性体130によるバイアス磁場がドメイン40や磁壁41の発生を抑止するため、強磁性体被膜120の厚さを薄くすることが可能となる。つまり、書き込み配線100を微細化することが可能となる。その結果、MTJセル10の集積度が向上する。また、書き込み配線100を流れる電流量が減少するので、消費電力が低減される。
2.第2の実施の形態
(構造)
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリ(MRAM)の構造を示す模式図である。磁気メモリは、少なくともMTJセル(メモリセル)10と、書き込み配線200を備えている。MTJセル10は、図1に示された構造と同様の構造を有しており、磁気トンネル接合(MTJ)を含んでいる。また、MTJセル10は、絶縁膜を介して、書き込み配線200に対向するように配置されている。MTJセル10に情報を書き込む際、この書き込み配線200には書き込み電流が流れ、その書き込み電流により生成される書き込み磁場が、MTJセル10に印加される。その書き込み磁場の方向は、書き込み配線200の長手方向に直交する。
書き込み配線200は、非磁性材料から形成される非磁性導体210を有している。この非磁性導体210の表面のうち対向面FSを除く面の少なくとも一部は、強磁性体材料から形成される強磁性体被膜220によって被覆されている。特に、図9に示されるように、非磁性導体210の表面のうち対向面FSを除く三面が強磁性体被膜220によって覆われていると好ましい。このような構成により、非磁性導体210を流れる配線電流により生成される磁場(磁束)は、強磁性体被膜220の内部に収束される。その収束された磁場は、対向面FSと一致する強磁性体被膜220の端面から、空間に放出される。このような構成により、MTJセル10の自由強磁性体層12に印加される磁場が増強され、書き込み電流を低減することが可能となる。尚、書き込み配線200の製造方法は、第1の実施の形態と同様である。
また、本実施の形態に係る磁気メモリは磁場発生用配線230を更に備えている。この磁場発生用配線230は、書き込み配線200と交差するように設けられている。好適には、磁場発生用配線230は、書き込み配線200の長手方向(X方向)と直交する方向に沿って設けられる。例えば、図9において、磁場発生用配線230は、Y方向に沿って設けられている。また、図10において、磁場発生用配線230は、Z方向に沿って設けられている。
この磁場発生用配線230に電流が流れると、図9及び図10に示されるようにバイアス磁場240が発生する。このバイアス磁場240は、強磁性体被膜220において、少なくともX方向に沿った成分(X成分)を含んでいる。また、そのバイアス磁場240のX成分の値は、強磁性体被膜220において、一様に“正”又は“負”である。言い換えれば、バイアス磁場240のX成分の正負符号(+、−)は、強磁性体被膜220において一様である。
上述の通り、書き込み電流の供給が停止すると、強磁性体被膜220の自発磁化は、形状異方性により、書き込み配線200の長手方向に沿った方向に戻る。本実施の形態によれば、バイアス磁場のX成分の極性が一様であるため、書き込み電流の供給が停止した後、強磁性体被膜220の自発磁化は、同じ方向に戻る。従って、図6に示されたようなドメイン40や磁壁41の発生が防止される。よって、磁壁41から漏洩する不要な漏洩磁場の発生が防止され、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきが抑えられる。磁場発生用配線230によるバイアス磁場がドメイン40や磁壁41の発生を抑止するため、強磁性体被膜220の厚さを薄くすることが可能となる。つまり、書き込み配線200を微細化することが可能となる。その結果、MTJセル10の集積度が向上する。また、書き込み配線200を流れる電流量が減少するので、消費電力が低減される。
尚、強磁性体被膜220の自発磁化の方向を揃えるためには、磁場発生用配線230をX方向と直交するように設けることが最も効率的である。また、強磁性体被膜220の自発磁化の方向を揃えるためには、少なくとも書き込み電流が停止する瞬間に、電流が磁場発生用配線230に流されればよい。その他の期間、磁場発生用配線230への電流の供給は停止する。これにより、消費電力が低減される。また、磁場発生用配線230は、MTJセル10と書き込み配線200がオーバーラップする領域以外に設けられると好ましい。
(検証)
本実施の形態の効果を実証するために、第1の実施の形態と同様の実験及びシミュレーションが行われた。本実施の形態に係るMRAMは、図9に示された基本構造を有する。書き込み配線200及びMTJセル10は、上述の比較例と同様であり、書き込み配線200の上方に、Y方向に沿った磁場発生用配線230が配置される。このような構造を有するMRAMは、以下、実施例2と参照される。
その実施例2に、自由強磁性体層12の自発磁化の向きが固定強磁性体層14の自発磁化の向きと平行になるように、8000A/mの外部磁場が印加される。この時、接合抵抗は“45kΩ”となる(初期状態)。次に、自由強磁性体層12の自発磁化の向きが反転するように、書き込み配線200に12mAの書き込み電流が流される。また、磁場発生用配線230に2mAの電流が流される。磁場発生用配線230に電流が流れている間に、書き込み電流の供給を停止し、その後、磁場発生用配線230に対する電流の供給を停止する。これにより、接合抵抗は“61kΩ”となる(反転状態)。
次に、8000A/mの外部磁場であって、その方向が固定強磁性体層14の自発磁化の向きと逆である外部磁場を印加しながら、接合抵抗が測定される(矯正状態)。この場合においても、接合抵抗は“61kΩ”のままであり、外部磁場による抵抗の変化は生じない。このことは、自由強磁性体層12と固定強磁性体層14の自発磁化は、矯正されなくても完全に反平行になっていることを意味する。すなわち、本実施の形態によれば、不要なバイアス磁場がMTJセル10に加わることが防止されている。
尚、磁場発生用電流の供給が書き込み電流の供給よりも先に停止する場合、矯正状態における接合抵抗は、反転状態における接合抵抗よりも大きくなる。これは、不要なバイアス磁場が存在するためである。従って、本実施の形態においては、書き込み電流の供給が終わった後に、磁場発生用電流の供給を停止することが必要である。
(効果)
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、強磁性体被膜120の自発磁化は、書き込み電流の供給が停止した後、一方向に戻る。それは、本実施の形態に係る磁場発生用配線230が生成するバイアス磁場が、強磁性体被膜120の自発磁化の戻る方向を一方向に規定しているからである。従って、図6に示されたようなドメイン40や磁壁41の発生が防止される。よって、磁壁41から漏洩する不要な漏洩磁場(バイアス磁場)の発生が防止され、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきが抑えられる。その結果、書き込みマージンの縮小が防止され、MRAMのディスターブ耐性が向上する。また、磁場発生用配線230によるバイアス磁場がドメイン40や磁壁41の発生を抑止するため、強磁性体被膜120の厚さを薄くすることが可能となる。つまり、書き込み配線200を微細化することが可能となる。その結果、MTJセル10の集積度が向上する。また、書き込み配線200を流れる電流量が減少するので、消費電力が低減される。
3.第3の実施の形態
(構造)
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る磁気メモリ(MRAM)の構造を示す模式図である。磁気メモリは、少なくともMTJセル(メモリセル)10と、書き込み配線300を備えている。MTJセル10は、図1に示された構造と同様の構造を有しており、磁気トンネル接合(MTJ)を含んでいる。また、MTJセル10は、絶縁膜を介して、書き込み配線300に対向するように配置されている。MTJセル10に情報を書き込む際、この書き込み配線300には書き込み電流が流れ、その書き込み電流により生成される書き込み磁場が、MTJセル10に印加される。その書き込み磁場の方向は、書き込み配線300の長手方向に直交する。
書き込み配線300は、非磁性材料から形成される非磁性導体310を有している。この非磁性導体310の表面のうち対向面FSを除く面の少なくとも一部は、強磁性体材料から形成される強磁性体被膜320によって被覆されている。特に、図11に示されるように、非磁性導体310の表面のうち対向面FSを除く三面が強磁性体被膜320によって覆われていると好ましい。このような構成により、非磁性導体310を流れる配線電流により生成される磁場(磁束)は、強磁性体被膜320の内部に収束される。その収束された磁場は、対向面FSと一致する強磁性体被膜320の端面から、空間に放出される。このような構成により、MTJセル10の自由強磁性体層12に印加される磁場が増強され、書き込み電流を低減することが可能となる。尚、図11に示されるように、強磁性体被膜320は、バリアメタル321によって覆われていてもよく、また、非磁性導体310と強磁性体被膜320の間には、バリアメタル322が介在していてもよい。
本実施の形態に係る強磁性体被膜320は、第1部分320aと第2部分320bを有している。この第1部分320aは、第2部分320bよりも厚くなるように形成されている。すなわち、第1部分320aの膜厚T1は、第2部分320bの膜厚T2よりも大きい。また、図11に示されるように、その第1部分320aは、非磁性導体310の表面のうち対向面FSに対向する面RSを覆うように形成されている。第2部分320bは、非磁性導体310の側面を覆うように形成されている。
強磁性体膜の磁化の飽和に必要な磁場の大きさは、膜厚に比例することが知られている。よって、第1部分320aにおける磁化の飽和に必要な磁場は、第2部分320bにおけるそれよりも大きい。本実施の形態によれば、書き込み電流が生成する書き込み磁場によって第1部分320aにおける磁化が飽和しない程度に、第1部分320aの膜厚T1が設計される。
例えば、書き込み電流が流れていない時、強磁性体被膜320の自発磁化の向きは、形状異方性により−X方向であるとする。書き込み配線300(非磁性導体310)に、+X方向の書き込み電流が流れる場合、図11に示された第1部分320aには+Y方向の書き込み磁場が印加される。この時、第1部分320aのY方向の自発磁化は飽和しないので、その自発磁化の向きは−X方向と+Y方向の間の方向となる。言い換えれば、書き込み電流が流れる際、第1部分320aにおける自発磁化の方向と−X方向との間の角度は、90度未満である。このことは、書き込み電流が流れていても、第1部分320aにおける自発磁化は、書き込み配線300の長手方向に沿った成分を有することを意味する。この長手方向に沿った成分は、書き込み電流の供給が停止した後、強磁性体被膜320の自発磁化の方向を再び一方向(−X方向)に戻す役割を果たす。従って、図6に示されたようなドメイン40や磁壁41の発生が防止される。よって、磁壁41から漏洩する不要な漏洩磁場の発生が防止され、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきが抑えられる。
尚、二軸書き込み方式のMRAMの場合、書き込み磁場の上限は、図2Bに示された書き込みマージンの右上角に対応している。二軸書き込み方式の場合、その書き込み磁場の上限値によって自発磁化が飽和しないように、第1部分320aの膜厚T1が設計されればよい。これにより、書き込みマージン内のいかなる書き込み磁場が印加されても、本実施の形態による効果が得られる。第1部分320aの膜厚及び幅が、それぞれT1及びW1で表され、第2部分320bの膜厚がT2で表されるとする。また、強磁性体被膜320の総幅(YZ面における非磁性導体310の周囲に沿った長さ)が、Wで表されるとする。また、書き込み電流がIwで与えられ、上限の書き込み磁場に対応する電流がIuで与えられるとする。この時、発明者によるシミュレーションによれば、第1部分320aの膜厚T1は、次の式を満たすように設定されればよいことが判明した。
T1 > [(Iu・W1)/(Iw・W)]×T2
幅W1及びWの比に依存して、膜厚T1及びT2の比は変わる。
また、他の部分より膜厚の大きい第1部分320aは、強磁性体被膜320のどの部分であってもよい。例えば、第1部分320aは、非磁性導体310の二側面のいずれか、あるいは両方を覆うように形成されてもよい。この場合でも、同様の効果が期待される。書き込み配線300の幅(Y方向)が増大することを防ぐためには、第1部分320aは、非磁性導体310の下方に形成されることが好ましい。つまり、第1部分320aが、非磁性導体310の面のうち対向面FSに対向する面RSを覆うように形成されると好適である。これにより、書き込み配線300の配線面積の増加が防止される。また、第1部分320aが面RS側に設けられることは、製造プロセスが容易である点において好ましい。
(製造方法)
図11に示された構造を得るためには、例えば次のような製造方法が考えられる。まず、絶縁膜に溝が形成され、その溝の内部にバリアメタル321が形成される。次に、粒子の直進性が高い成膜方法により、その溝の底部に強磁性体層が形成される。この段階では、溝の側壁部に強磁性体はほとんど形成されない。次に、等方的な成膜手法により、溝の内部に強磁性体層が追加的に形成される。これにより、底部が側壁部よりも厚い強磁性体被膜320が得られる。例えば、スパッタ成膜プロセスが用いられる。具体的には、初期段階においては、再スパッタが生じないバイアスを基板に加えながら、溝の底部に強磁性体膜を成膜する。次に、基板バイアスを強めて、底部における再スパッタ効果を併用することにより、底部と側壁部に同時に膜を形成する。このような方法により、本実施の形態に係る強磁性体被膜320を形成することが可能である。その後、強磁性体被膜320表面に、バリアメタル322が形成される。続いて、溝内部に非磁性導体310としての銅が埋め込まれ、CMPが実施される。これにより、図11に示された構造が得られる。
また、MTJセル10が、書き込み配線300の下方(−Z方向)に位置する場合、以下のような製造方法が例として考えられる。まず、図12Aに示されるように、MTJセル10にオーバーラップする非磁性導体310が、絶縁膜を介してMTJセル10の上方に形成される。その非磁性導体310の上面RSの上に、バリアメタル331を介して第1の強磁性体332が形成される。次に、図12Bに示されるように、全面にバリアメタル333が形成された後、全面に第2の強磁性体334が形成される。ここで、バリアメタル333の側面に位置する第2の強磁性体334の厚さは、第1の強磁性体の厚さより小さくなるように制御される。その後、全面にバリアメタル335が形成され、エッチバックが実施される。これにより、図12Cに示されるように、上部が側部よりも厚い強磁性体被膜320が得られる。尚、強磁性体被膜320がバリアメタルによって分断されているが、磁気的な結合が維持される限り問題はない。実験によれば、バリアメタルが20nmよりも薄ければ、分離した強磁性体間の磁気的結合が維持される。
また、図13A〜図13Dに、他の製造方法が示されている。まず、MTJセル10を覆うように絶縁膜が形成され、その絶縁膜に、MTJセル10に対向する溝が形成される。次に、図13Aに示されるように、全面にバリアメタル341が形成され、その上に第1の強磁性体342が形成され、更にバリアメタル343が形成される。次に、エッチバックが行われ、溝の底面におけるバリアメタル343、第1の強磁性体342、及び張り雨たる341が除去される。これにより、図13Bに示されるように、第1の強磁性体342は、溝の側壁部にのみ残る。次に、図13Cに示されるように、溝の底部にバリアメタル344が形成された後、非磁性導体310が溝に埋め込まれ、CMPが行われる。次に、図13Dに示されるように、第2の強磁性体346が、バリアメタル345を介して非磁性導体310上に形成され、バリアメタル347が第2の強磁性体346上に形成される。この第2の強磁性体346は、第1の強磁性体342よりも厚くなるように形成される。これにより、上部が側部よりも厚い強磁性体被膜320が得られる。
(検証)
本実施の形態の効果を実証するために、第1の実施の形態と同様の実験及びシミュレーションが行われた。本実施の形態に係るMRAMは、図11に示された基本構造を有する。MTJセル10は上述の比較例と同様であり、そのMTJセル10の上方に、厚さ200nmのシリコン酸化膜を介して書き込み配線300が配置される。書き込み配線300の非磁性導体310は、厚さ400nm、幅500nmのAl膜である。また、強磁性体被膜320の第1部分320aは、厚さ20nmのNiFe膜であり、その第2部分320bは、厚さ5nmのNiFe膜である。このような構造を有するMRAMは、以下、実施例3と参照される。
その実施例3に、自由強磁性体層12の自発磁化の向きが固定強磁性体層14の自発磁化の向きと平行になるように、8000A/mの外部磁場が印加される。この時、接合抵抗は“45kΩ”となる(初期状態)。次に、自由強磁性体層12の自発磁化の向きが反転するように、書き込み配線300に12mAの書き込み電流が流される。書き込み電流の供給が停止した後の接合抵抗は“61kΩ”となる(反転状態)。
次に、8000A/mの外部磁場であって、その方向が固定強磁性体層14の自発磁化の向きと逆である外部磁場を印加しながら、接合抵抗が測定される(矯正状態)。この場合においても、接合抵抗は“61kΩ”のままであり、外部磁場による抵抗の変化は生じない。このことは、自由強磁性体層12と固定強磁性体層14の自発磁化は、矯正されなくても完全に反平行になっていたことを意味する。すなわち、本実施の形態によれば、不要なバイアス磁場がMTJセル10に加わることが防止されている。
(変形例)
図14Aは、本実施の形態に係る書き込み配線の構造の他の例を示す側面図である。図14Aにおいて、周期的に配置されたMTJセル10が示されている。それらMTJセル10に対向するように、書き込み配線300’がX方向に沿って配置されている。この書き込み配線300’は、強磁性体被膜350を有している。この強磁性体被膜350は、第1領域350a及び第2領域350bに区分けされる。第2領域350bは、MTJセル10に対向する領域に対応している。すなわち、第2領域350bは、強磁性体被膜350のうち、MTJセル10とオーバーラップするオーバーラップ領域ROに対応している。一方、第1領域350aは、隣接するMTJセル10間の領域、すなわち、オーバーラップ領域RO以外の領域に対応している。
図14Bは、図14Aにおける線B−B’に沿った断面構造を示し、図14Cは、図14Aにおける線C−C’に沿った断面構造を示している。図14Bに示されるように、第2領域350bに関しては、強磁性体被膜350の上部の膜厚は、その側部(350c)の膜厚と同程度である。また、図14Bに示されたYZ面には、MTJセル10が存在している。一方、第1領域350aに関しては、図14Cに示されるように、強磁性体被膜350の上部の膜厚が、その側部(350c)の膜厚より大きい。また、図14Cに示されたYZ面には、MTJセル10が存在していない。すなわち、強磁性体被膜350のうち膜厚が他の部分よりも大きい部分は、オーバーラップ領域RO以外の領域に設けられている。
この変形例による効果は、次の通りである。強磁性体被膜350による書き込み磁場の増強効果は、膜厚が大きい部分において減少する可能性がある。上記変形例によれば、MTJセル10に対する書き込み磁場の増強効果を維持するため、オーバーラップ領域ROは、図14Bに示されたように形成される。一方、ドメイン40や磁壁41の発生を防止するための構造(図14C参照)は、オーバーラップ領域RO以外の領域に設けられる。これにより、書き込み磁場の増強効果を維持しながら、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきを抑えることが可能となる。
(効果)
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、強磁性体被膜320の自発磁化は、書き込み電流の供給が停止した後、一方向に戻る。それは、膜厚の大きい第1部分320aの自発磁化は、X方向に直交する方向に飽和せず、書き込み動作時においても、X方向に沿った成分を有しているからである。そのX方向に沿った成分が、強磁性体被膜320の自発磁化の戻る方向を一方向に規定している。従って、図6に示されたようなドメイン40や磁壁41の発生が防止される。よって、磁壁41から漏洩する不要な漏洩磁場(バイアス磁場)の発生が防止され、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきが抑えられる。その結果、書き込みマージンの縮小が防止され、MRAMのディスターブ耐性が向上する。また、不要な漏洩磁場の発生が防止されるため、強磁性体被膜320の第2部分320bの厚さを薄くすることが可能となる。膜厚の大きい第1部分320aは、強磁性体被膜320の上部あるいは底部として形成されると好適である。これにより、書き込み配線300を微細化することが可能となる。その結果、MTJセル10の集積度が向上する。また、書き込み配線300を流れる電流量が減少するので、消費電力が低減される。
4.第4の実施の形態
(構造)
図15は、本発明の第4の実施の形態に係る磁気メモリ(MRAM)の構造を示す模式図である。磁気メモリは、少なくともMTJセル(メモリセル)10と、書き込み配線400を備えている。MTJセル10は、図1に示された構造と同様の構造を有しており、磁気トンネル接合(MTJ)を含んでいる。また、MTJセル10は、絶縁膜を介して、書き込み配線400に対向するように配置されている。MTJセル10に情報を書き込む際、この書き込み配線400には書き込み電流が流れ、その書き込み電流により生成される書き込み磁場が、MTJセル10に印加される。その書き込み磁場の方向は、書き込み配線400の長手方向に直交する。
書き込み配線400は、非磁性材料から形成される非磁性導体410を有している。この非磁性導体410の表面のうち対向面FSを除く面の少なくとも一部は、強磁性体材料から形成される強磁性体被膜420によって被覆されている。特に、図15に示されるように、非磁性導体410の表面のうち対向面FSを除く三面が強磁性体被膜420によって覆われていると好ましい。このような構成により、非磁性導体410を流れる配線電流により生成される磁場(磁束)は、強磁性体被膜420の内部に収束される。その収束された磁場は、対向面FSと一致する強磁性体被膜420の端面から、空間に放出される。このような構成により、MTJセル10の自由強磁性体層12に印加される磁場が増強され、書き込み電流を低減することが可能となる。
本実施の形態に係る強磁性体被膜420は、第1強磁性体被膜420aと第2強磁性体被膜420bを有しており、第1強磁性体被膜420aの飽和磁束密度Ms1は、第2強磁性体被膜420bの飽和磁束密度Ms2より大きい。例えば、第1強磁性被膜420aの材料としてCoFeが用いられ、第2強磁性体被膜420bの材料としてNiFeが用いられる。CoFeの飽和磁束密度は、NiFeの飽和磁束密度の約2倍である。強磁性体膜の磁化の飽和に必要な磁場の大きさは、材料の飽和磁束密度に比例する。よって、第1強磁性体被膜420aにおける磁化の飽和に必要な磁場は、第2強磁性体被膜420bにおけるそれよりも大きい。本実施の形態によれば、第1強磁性体被膜420aは、その自発磁化が書き込み磁場によって飽和しないように設計される。
例えば、書き込み電流が流れていない時、強磁性体被膜420の自発磁化の向きは、形状異方性により−X方向であるとする。書き込み配線400(非磁性導体410)に、−X方向の書き込み電流が流れる場合、図15に示された第1強磁性体被膜420aには+Y方向の書き込み磁場が印加される。この時、第1強磁性体被膜420aのY方向の自発磁化は飽和しないので、その自発磁化の向きは−X方向と+Y方向の間の方向となる。言い換えれば、書き込み電流が流れる際、第1強磁性体被膜420aにおける自発磁化の方向と−X方向との間の角度は、90度未満である。このことは、書き込み電流が流れていても、第1強磁性体被膜420aにおける自発磁化は、書き込み配線400の長手方向に沿った成分を有することを意味する。この長手方向に沿った成分は、書き込み電流の供給が停止した後、強磁性体被膜420の自発磁化の方向を再び一方向(−X方向)に戻す役割を果たす。従って、図6に示されたようなドメイン40や磁壁41の発生が防止される。よって、磁壁41から漏洩する不要な漏洩磁場の発生が防止され、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきが抑えられる。
第1強磁性体被膜420aは、強磁性体被膜420のどの部分であってもよい。例えば、第1強磁性体被膜420aは、非磁性導体410の表面のうち対向面FSに対向する面RSを覆うように形成される。その場合、第2強磁性体被膜420bは、非磁性導体410の側面を覆うように形成される。また、第1強磁性体被膜420aは、非磁性導体410の二側面のいずれか、あるいは両方を覆うように形成されてもよい。いずれの場合であっても、第1強磁性体被膜420aの膜厚を大きくする必要がないので、本実施の形態に係る工夫が書き込み配線400のサイズに影響を与えることはない。よって、本実施の形態は、書き込み配線400の幅や厚さの規定が重視される場合に有効である。
また、第3の実施の形態における変形例と同様に、第2強磁性体被膜420bが、MTJセル10とオーバーラップする領域に形成され、第1強磁性体被膜420aが、その領域以外の領域に形成されてもよい。これにより、書き込み磁場の増強効果を維持しながら、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきを抑えることが可能となる。
尚、二軸書き込み方式のMRAMの場合、書き込み磁場の上限は、図2Bに示された書き込みマージンの右上角に対応している。二軸書き込み方式の場合、その書き込み磁場の上限値によって自発磁化が飽和しないように、第1強磁性体被膜420aが形成される。これにより、書き込みマージン内のいかなる書き込み磁場が印加されても、本実施の形態による効果が得られる。第1強磁性体被膜420aの幅及び飽和磁束密度(飽和磁化と等価)が、それぞれH1及びMs1で表され、第2強磁性体被膜420bの飽和磁束密度がMs2で表されるとする。また、強磁性体被膜420の総幅(YZ面における非磁性導体410の周囲に沿った長さ)が、Hで表されるとする。また、書き込み電流がIwで与えられ、上限の書き込み磁場に対応する電流がIuで与えられるとする。この時、発明者によるシミュレーションによれば、第1強磁性体被膜420aの飽和磁束密度Ms1は、次の式を満たすように設定されればよいことが判明した。
Ms1 > [(Iu・H1)/(Iw・H)]×Ms2
幅H1及びHの比に依存して、飽和磁束密度Ms1及びMs2の比は変わる。
強磁性体被膜420全体が飽和磁束密度の高い材料で形成されても、自発磁化の飽和を避けることができる。しかしながらその場合、磁性体の保磁力に起因する書き込み後の残留磁場が大きくなり、その残留磁場がMTJ素子10の書き込み特性にばらつきを生じさせる恐れがある。よって、本実施の形態で示されたように、第1強磁性体被膜420aと第2強磁性体被膜420bが設けられることが好適である。
(製造方法)
図15に示された構造は、第1強磁性体被膜420aと第2強磁性体被膜420bを別工程で形成する方法により得ることができる。そのような製造方法は、既出の図12A〜図12C、あるいは図13A〜図13Dに示された方法と同様である。
(検証)
本実施の形態の効果を実証するために、第1の実施の形態と同様の実験及びシミュレーションが行われた。本実施の形態に係るMRAMは、図15に示された基本構造を有する。MTJセル10は上述の比較例と同様であり、そのMTJセル10の上方に、厚さ200nmのシリコン酸化膜を介して書き込み配線400が配置される。書き込み配線400の非磁性導体410は、厚さ400nm、幅500nmのAl膜である。また、第1強磁性体被膜420aは、厚さ5nmのCoFe膜であり、第2強磁性体被膜420bは、厚さ5nmのNiFe膜である。このような構造を有するMRAMは、以下、実施例4と参照される。
その実施例4に、自由強磁性体層12の自発磁化の向きが固定強磁性体層14の自発磁化の向きと平行になるように、8000A/mの外部磁場が印加される。この時、接合抵抗は“45kΩ”となる(初期状態)。次に、自由強磁性体層12の自発磁化の向きが反転するように、書き込み配線400に12mAの書き込み電流が流される。書き込み電流の供給が停止した後の接合抵抗は“61kΩ”となる(反転状態)。
次に、8000A/mの外部磁場であって、その方向が固定強磁性体層14の自発磁化の向きと逆である外部磁場を印加しながら、接合抵抗が測定される(矯正状態)。この場合においても、接合抵抗は“61kΩ”のままであり、外部磁場による抵抗の変化は生じない。このことは、自由強磁性体層12と固定強磁性体層14の自発磁化は、矯正されなくても完全に反平行になっていたことを意味する。すなわち、本実施の形態によれば、不要なバイアス磁場がMTJセル10に加わることが防止されている。
(効果)
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、強磁性体被膜420の自発磁化は、書き込み電流の供給が停止した後、一方向に戻る。それは、飽和磁束密度の大きい第1強磁性体被膜420aの自発磁化は、X方向に直交する方向に飽和せず、書き込み動作時においても、X方向に沿った成分を有しているからである。そのX方向に沿った成分が、強磁性体被膜420の自発磁化の戻る方向を一方向に規定している。従って、図6に示されたようなドメイン40や磁壁41の発生が防止される。よって、磁壁41から漏洩する不要な漏洩磁場(バイアス磁場)の発生が防止され、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきが抑えられる。その結果、書き込みマージンの縮小が防止され、MRAMのディスターブ耐性が向上する。また、不要な漏洩磁場の発生が防止されるため、強磁性体被膜420の厚さを薄くすることが可能となる。つまり、書き込み配線400を微細化することが可能となる。その結果、MTJセル10の集積度が向上する。また、書き込み配線400を流れる電流量が減少するので、消費電力が低減される。
5.第5の実施の形態
(構造)
図16A及び図16Bのそれぞれは、本発明の第5の実施の形態に係る磁気メモリ(MRAM)の構造を示す上面図及び側面図である。磁気メモリは、少なくともMTJセル(メモリセル)10と、書き込み配線500を備えている。MTJセル10は、図1に示された構造と同様の構造を有しており、磁気トンネル接合(MTJ)を含んでいる。また、MTJセル10は、絶縁膜を介して、書き込み配線500に対向するように配置されている。MTJセル10に情報を書き込む際、この書き込み配線500には書き込み電流が流れ、その書き込み電流により生成される書き込み磁場が、MTJセル10に印加される。その書き込み磁場の方向は、書き込み配線500の長手方向に直交する。
書き込み配線500は、非磁性材料から形成される非磁性導体を有している。この非磁性導体の表面のうち対向面FSを除く面の少なくとも一部は、強磁性体材料から形成される強磁性体被膜520によって被覆されている。特に、非磁性導体の表面のうち対向面FSを除く三面が強磁性体被膜520によって覆われていると好ましい。このような構成により、非磁性導体を流れる配線電流により生成される磁場(磁束)は、強磁性体被膜520の内部に収束される。その収束された磁場は、対向面FSと一致する強磁性体被膜520の端面から、空間に放出される。このような構成により、MTJセル10の自由強磁性体層12に印加される磁場が増強され、書き込み電流を低減することが可能となる。
本実施の形態に係る強磁性体被膜520には、切り欠き530が設けられている。例えば、図16A及び図16Bにおいて、切り欠き530は、強磁性体被膜520のうち非磁性導体の上に形成された部分(上部強磁性体被膜)に設けられている。つまり、上部強磁性体被膜は、切り欠き530が設けられた第1領域520aと、切り欠き530が設けられていない第2領域520bとに区分けされ得る。強磁性体被膜520のうち非磁性導体の側面を覆う部分520cには、切り欠き530は設けられていない。
図16Aに示されるように、第1領域520aのY方向に沿った幅L1は、第2領域520bのY方向に沿った幅L2より小さい。強磁性体膜の磁化の飽和に必要な磁場の大きさは、その幅に反比例することが知られている。よって、第1領域520aにおける磁化の飽和に必要な磁場は、第1領域520bにおけるそれよりも大きい。本実施の形態によれば、第1領域520aは、その自発磁化が書き込み磁場によって飽和しないように設計される。
例えば、書き込み電流が流れていない時、強磁性体被膜520の自発磁化の向きは、形状異方性により−X方向であるとする。書き込み配線500(非磁性導体)に、−X方向の書き込み電流が流れる場合、図16A及び図16Bに示された第1領域520aには+Y方向の書き込み磁場が印加される。この時、第1領域520aのY方向の自発磁化は飽和しないので、その自発磁化の向きは−X方向と+Y方向の間の方向となる。言い換えれば、書き込み電流が流れる際、第1領域520aにおける自発磁化の方向と−X方向との間の角度は、90度未満である。このことは、書き込み電流が流れていても、第1領域520aにおける自発磁化は、書き込み配線500の長手方向に沿った成分を有することを意味する。この長手方向に沿った成分は、書き込み電流の供給が停止した後、強磁性体被膜520の自発磁化の方向を再び一方向(−X方向)に戻す役割を果たす。従って、図6に示されたようなドメイン40や磁壁41の発生が防止される。よって、磁壁41から漏洩する不要な漏洩磁場の発生が防止され、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきが抑えられる。
切り欠き530(第1領域520a)は、強磁性体被膜520のどの部分に設けられていてもよい。例えば、図17に示される書き込み配線500’の場合、切り欠き530は、強磁性体被膜520のうち非磁性導体の側面を覆う部分(側部強磁性体被膜)に設けられている。つまり、側部強磁性体被膜は、切り欠き530が設けられた第1領域520aと、切り欠き530が設けられていない第2領域520bとに区分けされ得る。強磁性体被膜520のうち非磁性導体の上に形成された部分520cには、切り欠き530は設けられていない。より一般化すると、本実施の形態に係る強磁性体被膜520は、第1領域520aを含む第1部分と、第2領域520bを含む第2部分とに分けられる。YZ面において、書き込み配線500の周囲に沿った第1部分の長さは、書き込み配線500の周囲に沿った第2部分の長さより短い。
また、図16B及び図17に示されるように、第2領域520bは、MTJセル10に対向する領域に対応している。すなわち、第2領域520bは、強磁性体被膜520のうち、MTJセル10とオーバーラップするオーバーラップ領域ROに設けられている。一方、第1領域520a及び切り欠き530は、隣接するMTJセル10間の領域、すなわち、オーバーラップ領域RO以外の領域に設けられている。これにより、書き込み磁場の増強効果を維持しながら、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきを抑えることが可能となる。
尚、二軸書き込み方式のMRAMの場合、書き込み磁場の上限は、図2Bに示された書き込みマージンの右上角に対応している。二軸書き込み方式の場合、その書き込み磁場の上限値によって自発磁化が飽和しないように、第1領域520aが形成される。これにより、書き込みマージン内のいかなる書き込み磁場が印加されても、本実施の形態による効果が得られる。強磁性体被膜520のうち第1領域520aを含む第1部分の総幅(YZ面における非磁性導体の周囲に沿った長さ)が、TL1で表されるとする。強磁性体被膜520のうち第2領域520bを含む第2部分の総幅(YZ面における非磁性導体の周囲に沿った長さ)が、TL2で表されるとする。また、書き込み電流がIwで与えられ、上限の書き込み磁場に対応する電流がIuで与えられるとする。この時、発明者によるシミュレーションによれば、第1部分の総幅TL1は、次の式を満たすように設定されればよいことが判明した。
TL1 < (Iw/Iu)×TL2
図16A及び図16Bに示されたように、YZ面における強磁性体被膜520が不連続を有する場合、分断された各領域の幅のうち最も短いものがTL1とされる。
(検証)
本実施の形態の効果を実証するために、第1の実施の形態と同様の実験及びシミュレーションが行われた。本実施の形態に係るMRAMは、図16A及び図16Bに示された基本構造を有する。MTJセル10は上述の比較例と同様であり、そのMTJセル10の上方に、厚さ200nmのシリコン酸化膜を介して書き込み配線500が配置される。書き込み配線500の非磁性導体は、厚さ400nm、幅500nmのAl膜である。上部強磁性体被膜は、厚さ5nmのNiFe膜であり、切り欠き530を有している。側部強磁性体被膜は、厚さ5nmのNiFe膜である。第1領域520aの幅L1は、非磁性導体部分の半分である250nmである。このような構造を有するMRAMは、以下、実施例5と参照される。
その実施例5に、自由強磁性体層12の自発磁化の向きが固定強磁性体層14の自発磁化の向きと平行になるように、8000A/mの外部磁場が印加される。この時、接合抵抗は“45kΩ”となる(初期状態)。次に、自由強磁性体層12の自発磁化の向きが反転するように、書き込み配線500に12mAの書き込み電流が流される。書き込み電流の供給が停止した後の接合抵抗は“61kΩ”となる(反転状態)。
次に、8000A/mの外部磁場であって、その方向が固定強磁性体層14の自発磁化の向きと逆である外部磁場を印加しながら、接合抵抗が測定される(矯正状態)。この場合においても、接合抵抗は“61kΩ”のままであり、外部磁場による抵抗の変化は生じない。このことは、自由強磁性体層12と固定強磁性体層14の自発磁化は、矯正されなくても完全に反平行になっていたことを意味する。すなわち、本実施の形態によれば、不要なバイアス磁場がMTJセル10に加わることが防止されている。
(効果)
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、強磁性体被膜520の自発磁化は、書き込み電流の供給が停止した後、一方向に戻る。それは、総幅の小さい第1領域520aの自発磁化は、X方向に直交する方向に飽和せず、書き込み動作時においても、X方向に沿った成分を有しているからである。そのX方向に沿った成分が、強磁性体被膜520の自発磁化の戻る方向を一方向に規定している。従って、図6に示されたようなドメイン40や磁壁41の発生が防止される。よって、磁壁41から漏洩する不要な漏洩磁場(バイアス磁場)の発生が防止され、MTJセル10の磁化反転特性のばらつきが抑えられる。その結果、書き込みマージンの縮小が防止され、MRAMのディスターブ耐性が向上する。また、不要な漏洩磁場の発生が防止されるため、強磁性体被膜520の厚さを薄くすることが可能となる。つまり、書き込み配線500を微細化することが可能となる。その結果、MTJセル10の集積度が向上する。また、書き込み配線500を流れる電流量が減少するので、消費電力が低減される。
上述の実施の形態のうち、ある実施の形態と他の実施の形態が組み合わされてもよい。
1つのMTJセル10へのデータの書き込みに、互いに交差する書き込みワード線と書き込みビット線の2本が用いられる場合、その2本の書き込み配線の両方に本発明に係る構成・機構が適用されることが好ましい。その一方にのみ本発明にかかる構成・機構が適用される場合には、2本の書き込み配線のうち、書き込み電流の供給が後に停止する方に本発明が適用されることが好ましい。それは、先に書き込み電流が切られる配線を被覆する強磁性体に対しては、後に切られる書き込み電流により生成される磁場の効果が期待できるためである。
また、米国特許No.6545906等の文献には、いわゆる「トグル書き込み方式」のMRAMが提案されている。トグル書き込み方式のMRAMにおいても、不要なバイアス磁場の存在は、トグル動作に必要な書き込み電流のばらつきの原因となる。本発明に係る構成・機構は、このようなトグル書き込み方式のMRAMに対しても効果を発揮する。
図1は、MTJセル(メモリセル)の構造を示す模式図である。 図2Aは、あるメモリセルに対する閾値特性(アステロイドカーブ)を示すグラフである。 図2Bは、複数のメモリセルに対する閾値特性の分布を示すグラフである。 図3は、従来の磁気メモリの構造を示す模式図である。 図4は、配線電流とメモリセルに印加される磁場との関係を示すグラフである。 図5は、本願発明者らによって発見された課題を説明するための図である。 図6は、本願発明者らによって発見された課題を説明するための図である。 図7は、本発明の第1の実施の形態に係る磁気メモリの構造の一例を示す模式図である。 図8Aは、第1の実施の形態に係る磁気メモリの構造の他の例を示す模式図である。 図8Bは、第1の実施の形態に係る磁気メモリの構造の更に他の例を示す模式図である。 図9は、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの構造の一例を示す模式図である。 図10は、第2の実施の形態に係る磁気メモリの構造の他の例を示す模式図である。 図11は、本発明の第3の実施の形態に係る磁気メモリの構造の一例を示す模式図である。 図12Aは、第3の実施の形態に係る書き込み配線の製造方法を示す断面図である。 図12Bは、第3の実施の形態に係る書き込み配線の製造方法を示す断面図である。 図12Cは、第3の実施の形態に係る書き込み配線の製造方法を示す断面図である。 図13Aは、第3の実施の形態に係る書き込み配線の他の製造方法を示す断面図である。 図13Bは、第3の実施の形態に係る書き込み配線の他の製造方法を示す断面図である。 図13Cは、第3の実施の形態に係る書き込み配線の他の製造方法を示す断面図である。 図13Dは、第3の実施の形態に係る書き込み配線の他の製造方法を示す断面図である。 図14Aは、第3の実施の形態に係る磁気メモリの構造の他の例を示す側面図である。 図14Bは、図14Aにおける線B−B’に沿った構造を示す断面図である。 図14Cは、図14Aにおける線C−C’に沿った構造を示す断面図である。 図15は、本発明の第4の実施の形態に係る磁気メモリの構造の一例を示す模式図である。 図16Aは、本発明の第5の実施の形態に係る磁気メモリの構造の一例を示す上面図である。 図16Bは、図16Aにおける磁気メモリの側面図である。 図17は、第5の実施の形態に係る磁気メモリの構造の他の例を示す側面図である。
符号の説明
10 MTJセル
11 表面被覆層
12 自由強磁性体層
13 トンネルバリア層
14 固定強磁性体層
15 反強磁性体層
16 下地層
20 書き込み配線
21 非磁性導体
22 強磁性体被膜
30 自発磁化
40 ドメイン
41 磁壁
100、200、300、400、500 書き込み配線
110、210、310、410 非磁性導体
120 強磁性体被膜
130 強磁性体
140 自発磁化
220 強磁性体被膜
230 磁場発生用配線
240 バイアス磁場
320a 第1強磁性体被膜
320b 第2強磁性体被膜
321、322 バリアメタル
350a〜350c 強磁性体被膜
420a 第1強磁性体被膜
420b 第2強磁性体被膜
520a 第1強磁性体被膜
520b 第2強磁性体被膜
520c 第3強磁性体被膜
530 切り欠き

Claims (20)

  1. 磁気抵抗素子を有するメモリセルと、
    前記メモリセルに情報を書き込む際の書き込み磁場を生成する書き込み電流が流れる書き込み配線と、
    前記書き込み配線の前記メモリセルに対向する対向面を除く面の少なくとも一部を覆う強磁性体膜と、
    前記書き込み配線の長手方向に沿った第1成分を含むバイアス磁場を、前記強磁性体膜に印加するバイアス磁場印加部と
    を具備し、
    前記第1成分の正負符号は、前記強磁性体膜のうち少なくとも前記メモリセルとオーバーラップするオーバーラップ領域において、一様である
    磁気メモリ。
  2. 請求項1に記載の磁気メモリであって、
    前記バイアス磁場印加部は、少なくとも前記書き込み電流が停止する際に、前記バイアス磁場を印加する
    磁気メモリ。
  3. 請求項1又は2に記載の磁気メモリであって、
    前記バイアス磁場印加部は、自発磁化の向きが前記長手方向と平行な第1の強磁性体を有する
    磁気メモリ。
  4. 請求項3に記載の磁気メモリであって、
    前記第1の強磁性体は、前記オーバーラップ領域以外の領域に設けられた
    磁気メモリ。
  5. 請求項4に記載の磁気メモリであって、
    前記第1の強磁性体は、前記書き込み配線の前記長手方向の端部に設けられた
    磁気メモリ。
  6. 請求項4又は5に記載の磁気メモリであって、
    前記バイアス磁場印加部は、自発磁化の向きが前記第1の強磁性体の自発磁化の向きと同じである第2の強磁性体を更に有し、
    前記第1の強磁性体と前記第2の強磁性体は、前記オーバーラップ領域を挟むように設けられた
    磁気メモリ。
  7. 請求項6に記載の磁気メモリであって、
    前記第1の強磁性体は、前記書き込み配線の前記長手方向の一端に設けられ、
    前記第2の強磁性体は、前記書き込み配線の前記長手方向の他端に設けられた
    磁気メモリ。
  8. 請求項1又は2に記載の磁気メモリであって、
    前記バイアス磁場印加部は、前記バイアス磁場を生成する電流が流れる磁場発生用配線を有する
    磁気メモリ。
  9. 請求項8に記載の磁気メモリであって、
    前記磁場発生用配線は、前記書き込み配線と交差するように設けられた
    磁気メモリ。
  10. 請求項9に記載の磁気メモリであって、
    前記磁場発生用配線は、前記長手方向と直交する方向に沿って設けられた
    磁気メモリ。
  11. 磁気抵抗素子を有するメモリセルと、
    前記メモリセルに情報を書き込む際の書き込み磁場を生成する書き込み電流が流れる書き込み配線と、
    前記書き込み配線の前記メモリセルに対向する対向面を除く面の少なくとも一部を覆う強磁性体膜と
    を具備し、
    前記強磁性体膜は、第1部分と第2部分とを有し、
    前記書き込み電流が流れる際、前記第1部分における自発磁化の方向と前記書き込み配線の長手方向との間の角度は90度未満である
    磁気メモリ。
  12. 磁気抵抗素子を有するメモリセルと、
    前記メモリセルに情報を書き込む際の書き込み磁場を生成する書き込み電流が流れる書き込み配線と、
    前記書き込み配線の前記メモリセルに対向する対向面を除く面の少なくとも一部を覆う強磁性体膜と
    を具備し、
    前記強磁性体膜は、第1部分と第2部分とを有し、
    前記第1部分は、前記書き込み配線の前記長手方向に直交する直交方向の自発磁化が、前記書き込み電流により印加される磁場により飽和しないように形成された
    磁気メモリ。
  13. 請求項11又は12に記載の磁気メモリであって、
    前記第1部分は、前記書き込み配線の表面のうち前記対向面に対向する面の少なくとも一部を覆うように形成された
    磁気メモリ。
  14. 請求項11乃至13のいずれかに記載の磁気メモリであって、
    前記第1部分は、前記強磁性体膜のうち前記メモリセルとオーバーラップする領域以外の領域に設けられた
    磁気メモリ。
  15. 請求項11乃至14のいずれかに記載の磁気メモリであって、
    前記第1部分の膜厚は、前記第2部分の膜厚よりも大きい
    磁気メモリ。
  16. 請求項11乃至14のいずれかに記載の磁気メモリであって、
    前記第1部分は、第1飽和磁束密度を有する第1材料により形成され、
    前記第2部分は、第2飽和磁束密度を有する第2材料により形成され、
    前記第1飽和磁束密度は、前記第2飽和磁束密度より大きい
    磁気メモリ。
  17. 請求項16に記載の磁気メモリであって、
    前記第1材料はCoFeであり、前記第2材料はNiFeである
    磁気メモリ。
  18. 請求項11乃至14のいずれかに記載の磁気メモリであって、
    前記長手方向と直交する面において、前記書き込み配線の周囲に沿った前記第1部分の長さは、前記書き込み配線の周囲に沿った前記第2部分の長さより短い
    磁気メモリ。
  19. (A)磁気抵抗素子を有するメモリセルを形成する工程と、
    (B)前記メモリセルにオーバーラップする非磁性導体を、前記メモリセルの上方に形成する工程と、
    (C)前記非磁性導体の上面の上に第1の強磁性体膜を形成する工程と、
    (D)前記第1の強磁性体膜より薄い第2の強磁性体膜を全面に形成する工程と
    を有する
    磁気メモリの製造方法。
  20. (A)磁気抵抗素子を有するメモリセルを形成する工程と、
    (B)前記メモリセルを覆う絶縁膜を形成する工程と、
    (C)前記絶縁膜に、前記メモリセルに対向する溝を形成する工程と、
    (D)全面に第1強磁性体膜を形成する工程と、
    (E)前記溝の底面の前記第1の強磁性体膜を除去する工程と、
    (F)前記溝に非磁性導体を埋め込む工程と、
    (G)前記非磁性導体上に、前記第1の強磁性体膜より厚い第2の強磁性体膜を形成する工程と
    を有する
    磁気メモリの製造方法。
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