以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現する物質として具体的な化合物を例示する場合があるが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
本発明の真空断熱体は、芯材と包装材からなり、該包装材内の空間部が真空状態にある真空断熱体であり、該包装材が特定のガスバリア層、より具体的にはカルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体を含む組成物からなり、前記少なくとも1つの官能基に含まれる−COO−基の少なくとも一部が2価以上の金属イオンで中和されているガスバリア層を有することを特徴とする。以下、本明細書中において、この特定のガスバリア層を本発明のガスバリア層と、また、基材と、基材の少なくとも一方の面に積層された本発明のガスバリア層とを含む積層体を、本発明のガスバリア性積層体と記すことがある。
本発明のガスバリア層および本発明のガスバリア性積層体に関しては別途詳しく説明するが、本発明のガスバリア層は高いガスバリア性を有し、かつ優れた柔軟性を有するため、自身製造中や取扱い中の衝撃などに影響されず安定したガスバリア性能を発揮する。また、金属や金属酸化物の蒸着層と併用した場合にも、蒸着層を保護してピンホール等の欠陥の発生を抑制し、仮にピンホールが発生しても自身の高いガスバリア性によってピンホールの影響を小さくするため、本発明の真空断熱体は安定した高い断熱性能を発揮するものである。
本発明の真空断熱体を構成する包装材の構成は、本発明のガスバリア性積層体を含む限りにおいて制限はなく、真空断熱体の使用目的や製造方法に応じて選択されるが、例えば、本発明のガスバリア性積層体を含むラミネート体を熱融着によって包装材としたものが使用できる。以下、この、本発明のガスバリア性積層体を含むラミネート体を、ラミネート体(I)と略記することがある。
ラミネート体(I)は、少なくともガスバリア性積層体を有していればよいが、好適な例を以下に記載する。ガスバリア性積層体を含むラミネート体(I)の層構成としては、ガスバリア性積層体層/ポリオレフィン層(以下PO層)、ガスバリア性積層体層/ガスバリア樹脂層/PO層、ガスバリア性積層体層/ポリアミド層/PO層、ポリアミド層/ガスバリア性積層体層/PO層、ガスバリア性積層体層/ポリアミド層/ガスバリア性樹脂層/PO層、ポリアミド層/ガスバリア性積層体/ガスバリア性樹脂層/PO層、ガスバリア性積層体層/ポリエステル層/PO層、ポリエステル層/ガスバリア性積層体層/PO層、ガスバリア性積層体層/ポリエステル層/ガスバリア性樹脂層/PO層、ポリエステル層/ガスバリア性積層体/ガスバリア性樹脂層/PO層、PO層/ガスバリア性積層体層/ポリオレフィン層(以下PO層)、PO層/ガスバリア性積層体層/ガスバリア樹脂層/PO層、PO層/ガスバリア性積層体層/ポリアミド層/PO層、PO層/ポリアミド層/ガスバリア性積層体層/PO層、PO層/ガスバリア性積層体層/ポリアミド層/ガスバリア性樹脂層/PO層、PO層/ポリアミド層/ガスバリア性積層体/ガスバリア性樹脂層/PO層、PO層/ガスバリア性積層体層/ポリエステル層/PO層、PO層/ポリエステル層/ガスバリア性積層体層/PO層、PO層/ガスバリア性積層体層/ポリエステル層/ガスバリア性樹脂層/PO層、PO層/ポリエステル層/ガスバリア性積層体/ガスバリア性樹脂層/PO層 などを挙げることができる。層と層の間には適宜接着層を設けることができる。ポリオレフィン層、ポリアミド層、ポリエステル層、ガスバリア性樹脂層、ガスバリア性積層体層について以下詳細に説明する。
上記ポリオレフィン(PO)層としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンーαオレフィン共重合体、アイオノマー、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンープロピレン共重合体等の樹脂の一種ないしそれ以上からなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートを用いることができる。好ましいポリオレフィン層としては低密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンからなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートである。より好ましくは、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。これらのポリオレフィン層は延伸または無延伸のいずれでもよいが、前記ラミネート体(I)の最内層に配置されたPO層は、ヒートシール強度の観点から、無延伸であることが好ましい。したがって、前記積層体の最内層に配置されたPO層は、無延伸低密度ポリエチレン、無延伸直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレンで構成されていることが最も好ましい。
前記ガスバリア性樹脂層としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンからなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートを使用することができる。好ましくは延伸されたエチレン−ビニルアルコール共重合体で構成されていることが好ましい。ガスバリア性樹脂層の少なくとも片面が、アルミニウムなどの金属、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などの金属酸化物からなる蒸着層が設けられていてもよい。金属、金属酸化物の蒸着方法としては、後述する方法と同様の方法を用いることができる。
前記ポリエステル層、ポリアミド層としては、後述するガスバリア性積層体の説明で記載するポリエステル層、ポリアミド層を使用することができる。
また必要に応じて、不飽和脂肪酸などの酸素吸収剤、合成ゼオライト、シリカ粉末、アルミナ粉末、水酸化リチウム粉末、水酸化バリウム粉末などの水分吸着剤を使用しても良い。これらに酸素吸収剤、水分吸収剤は、ラミネート体(I)の各層に含ませても良いし、芯材と併用して使用しても良い。さらに芯材の代替として使用することもできる。
ポリオレフィン(PO)層、ポリエステル層、ポリアミド層の形成の方法としては、予め容易された無延伸ポリオレフィンフィルム、延伸ポリオレフィンフィルム、無延伸ポリエステルフィルム、延伸ポリエステルフィルム、無延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリアミドフィルムと他の層を構成するフィルムと周知のドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、ホットメルトラミネーション法等により貼り合わせる方法、あるいは周知のTダイ押出し法等により、他の層を構成するフィルム上にポリオレフィン層、ポリエステル層、ポリアミド層を形成させる方法等を採用することができる。また、必要に応じて各層の間に、接着層を配置することができる。接着層はアンカーコート剤、接着剤、接着性樹脂などを用いて形成する。
本発明の真空断熱体に使用される芯材としては、断熱性を有する物であれば特に制限はないが、パーライト粉末、シリカ粉末、沈降シリカ粉末、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、ガラスウール、ロックウール、スチレンフォームやウレタンフォームなどの樹脂の連通発泡体などが例示できる。また、芯材として樹脂や無機材料製の中空容器や、ハニカム状構造体などを使用することも差し支えない。
本発明の真空断熱体においては、包装材内の空間部は真空状態にある。ここでいう真空状態とは必ずしも絶対的な真空状態を意味せず、包装材内空間部の圧力が大気圧より十分低いことを示す。内部圧力は、必要な性能と製造の容易さなどから決定されるが、通常、断熱性能を発揮させるためには2kPa(約15Torr)以下である。本発明の真空断熱体の断熱効果を十分に発現させるために、包装材内部圧力は200Pa(約1.5Torr)以下であることが好ましく、20Pa以下であることがより好ましく、2Pa以下であることがさらに好ましい。
本発明の真空断熱体は、通常行なわれている方法により製造することができる。使用目的等に応じ、任意の形状、大きさに形成することができる。製造方法としては、例えば、後ほど詳細に説明するラミネート体(I)2枚を、各々ヒートシール層が包装材の内側となるように重ね合わせ、任意の3辺をヒートシールし、芯材を充填後、包装材内部を真空状態にし、最後の辺をヒートシールして作製することができる。また、ラミネート体(I)1枚をヒートシ−ル層が包装材の内側となるように折り曲げ、任意の2辺をヒートシールし、芯材を充填後、包装材内部を真空状態にし、最後の辺をヒートシールして作製することができ、さらに2枚の積層体(I)で、又は1枚の積層体(I)で折り曲げるように、芯材を挟みその周縁部を真空排気口を残してヒートシールし、真空状態にした後、真空排気口をヒートシールして作製することもできる。
前述の通り、本発明の包装材は特定のガスバリア性積層体(本発明のガスバリア性積層体)を含む。以下、本発明のガスバリア性積層体について詳細に説明する。
(ガスバリア性積層体)
本発明のガスバリア性積層体に含まれるガスバリア層は、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体を含む組成物からなり、前記少なくとも1つの官能基に含まれる−COO−基の少なくとも一部が2価以上の金属イオンで中和されていること、換言すれば、上記少なくとも1つの官能基の少なくとも一部は、2価以上の金属イオンと塩を構成していることを特徴とする。
(カルボン酸含有重合体)
ガスバリア層を構成する組成物は、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体を含む。該組成物における、重合体の中和物の含有率は、特に限定はなく、たとえば25重量%〜95重量%の範囲とすることができる。この重合体の中和物は、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含む重合体(以下、「カルボン酸含有重合体」という場合がある)に対して、上記少なくとも1つの官能基の少なくとも一部を2価以上の金属イオンで中和することによって得られる重合体である。
カルボン酸含有重合体は、重合体1分子中に、2個以上のカルボキシル基または1個以上のカルボン酸無水物基を有する。具体的には、アクリル酸単位、メタクリル酸単位、マレイン酸単位、イタコン酸単位などの、カルボキシル基を1個以上有する構造単位を重合体1分子中に2個以上含有する重合体を用いることができる。また、無水マレイン酸単位や無水フタル酸単位などのカルボン酸無水物の構造を有する構造単位を含有する重合体を用いることもできる。カルボキシル基を1個以上有する構造単位および/またはカルボン酸無水物の構造を有する構造単位(以下、両者をまとめてカルボン酸含有単位(C)と略記する場合がある)は、1種類でもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
また、カルボン酸含有重合体の全構造単位に占めるカルボン酸含有単位(C)の含有率を10モル%以上とすることによって、高湿度下でのガスバリア性が良好なガスバリア性積層体が得られる。この含有率は、20モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましく、70モル%以上であることが特に好ましい。なお、カルボン酸含有重合体が、カルボキシル基を1個以上含有する構造単位と、カルボン酸無水物の構造を有する構造単位の両方を含む場合、両者の合計が上記の範囲であればよい。
カルボン酸含有重合体が含有していてもよい、カルボン酸含有単位(C)以外の他の構造単位は、特に限定されないが、アクリル酸メチル単位、メタクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位、メタクリル酸エチル単位、アクリル酸ブチル単位、メタクリル酸ブチル単位等の(メタ)アクリル酸エステル類から誘導される構造単位;ギ酸ビニル単位、酢酸ビニル単位などのビニルエステル類から誘導される構造単位;スチレン単位、p−スチレンスルホン酸単位;エチレン単位、プロピレン単位、イソブチレン単位などのオレフィン類から誘導される構造単位などから選ばれる1種類以上の構造単位を挙げることができる。カルボン酸含有重合体が、2種以上の構造単位を含有する場合、該カルボン酸含有重合体は、交互共重合体の形態、ランダム共重合体の形態、ブロック共重合体の形態、さらにはテーパー型の共重合体の形態のいずれであってもよい。
カルボン酸含有重合体の好ましい例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(アクリル酸/メタクリル酸)を挙げることができる。カルボン酸含有重合体は、1種類であってもよいし、2種類以上の重合体の混合物であってもよい。たとえば、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種の重合体を用いてもよい。また、上記した他の構造単位を含有する場合の具体例としては、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体のケン化物などが挙げられる。
カルボン酸含有重合体の分子量は特に制限されないが、得られるガスバリ性積層体のガスバリア性が優れる点、および落下衝撃強さなどの力学的物性が優れる点から、数平均分子量が5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることがさらに好ましい。カルボン酸含有重合体の分子量の上限は特に制限がないが、一般的には1,500,000以下である。
また、カルボン酸含有重合体の分子量分布も特に制限されるものではないが、ガスバリア性積層体のヘイズなどの表面外観、および後述する溶液(S)の貯蔵安定性などが良好となる観点から、カルボン酸含有重合体の重量平均分子量/数平均分子量の比で表される分子量分布は1〜6の範囲であることが好ましく、1〜5の範囲であることがより好ましく、1〜4の範囲であることがさらに好ましい。
本発明のガスバリア性積層体のガスバリア層を構成する重合体は、カルボン酸含有重合体のカルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基(以下、官能基(F)という場合がある)の少なくとも一部を2価以上の金属イオンで中和して得られる。換言すれば、この重合体は、2価以上の金属イオンで中和されたカルボキシル基を含む。
ガスバリア層を構成する重合体は、官能基(F)に含まれる−COO−基のたとえば10モル%以上(たとえば15モル%以上)が、2価以上の金属イオンで中和されている。なお、カルボン酸無水物基は、−COO−基を2つ含んでいるとみなす。すなわち、aモルのカルボキシル基とbモルのカルボン酸無水物基とが存在する場合、それに含まれる−COO−基は、全体で(a+2b)モルである。官能基(F)に含まれる−COO−基のうち、2価以上の金属イオンで中和されている割合は、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上であり、さらに好ましくは40モル%以上であり、特に好ましくは50モル%以上(たとえば60モル%以上)である。官能基(F)に含まれる−COO−基のうち、2価以上の金属イオンで中和されている割合の上限は、特に制限はないが、たとえば、95モル%以下とすることができる。カルボン酸含有重合体中のカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基が2価以上の金属イオンで中和されることによって、本発明のガスバリア性積層体は、乾燥条件下および高湿条件下の双方において、良好なガスバリア性を示す。
官能基(F)の中和度(イオン化度)は、ガスバリア性積層体の赤外吸収スペクトルをATR(全反射測定)法で測定するか、または、ガスバリア性積層体からガスバリア層をかきとり、その赤外吸収スペクトルをKBr法で測定することによって求めることができる。中和前(イオン化前)のカルボキシル基またはカルボン酸無水物基のC=O伸縮振動に帰属されるピークは1600cm-1〜1850cm-1の範囲に観察され、中和(イオン化)された後のカルボキシル基のC=O伸縮振動は1500cm-1〜1600cm-1の範囲に観察されるため、赤外吸収スペクトルにおいて両者を分離して評価することができる。具体的には、それぞれの範囲における最大の吸光度からその比を求め、予め作成した検量線を用いてガスバリア性積層体におけるガスバリア層を構成する重合体のイオン化度を算出することができる。なお、検量線は、中和度が異なる複数の標準サンプルについて赤外吸収スペクトルを測定することによって作成できる。
官能基(F)を中和する金属イオンは2価以上であることが重要である。官能基(F)が未中和または後述する1価のイオンのみによって中和されている場合には、良好なガスバリア性を有する積層体が得られない。ただし、2価以上の金属イオンに加えて少量の1価のイオン(陽イオン)で官能基(F)が中和されている場合には、ガスバリア性積層体のヘイズが低減して表面の外観が良好となる。このように、本発明は、カルボン酸含有重合体の官能基(F)が2価以上の金属イオンと1価のイオンとの双方で中和される場合を含む。2価以上の金属イオンとしては、たとえば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、2価の鉄イオン、3価の鉄イオン、亜鉛イオン、2価の銅イオン、鉛イオン、2価の水銀イオン、バリウムイオン、ニッケルイオン、ジルコニウムイオン、アルミニウムイオン、チタンイオンなどを挙げることができる。たとえば、2価以上の金属イオンとして、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1つのイオンを用いてもよい。
本発明においては、カルボン酸含有重合体の官能基(F)(カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物)に含まれる−COO−基の0.1〜10モル%が、1価のイオンで中和されていることが好ましい。ただし、1価のイオンによる中和度が高い場合には、ガスバリア性積層体のガスバリア性が低下する。1価イオンによる官能基(F)の中和度は、0.5〜5モル%の範囲であることがより好ましく、0.7〜3モル%の範囲であることがさらに好ましい。1価のイオンとしては、たとえば、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどが挙げられ、アンモニウムイオンが好ましい。
本発明のガスバリア性積層体におけるガスバリア層を構成する組成物は、上記カルボン酸含有重合体およびその中和物に加え、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの特性基(原子団)が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(L)の加水分解縮合物を含むことが好ましい。化合物(L)の加水分解縮合物を含むことで極めて良好なガスバリア性が達成される。
(加水分解縮合物)
化合物(L)には、以下で説明する化合物(A)および/または化合物(B)の少なくとも1種を適用できる。以下、化合物(A)および化合物(B)について説明する。
化合物(A)は、次に示す化学式(I)で表される少なくとも1種の化合物である。
M1(OR1)nX1 kZ1 m-n-k・・・(I)
化学式(I)中、M1は、Si、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaおよびNdから選択される原子を表す。M1は、好ましくはSi、Al、TiまたはZrであり、特に好ましくはSiである。また、化学式(I)中、R1はメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基であり、好ましくは、メチル基またはエチル基である。また、化学式(I)中、X1はハロゲン原子を表す。X1が表すハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられるが、塩素原子が好ましい。また、化学式(I)中、Z1は、カルボキシル基との反応性を有する官能基で置換されたアルキル基を表す。ここで、カルボキシル基との反応性を有する官能基としては、エポキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基、オキサゾリン基またはカルボジイミド基などが挙げられるが、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基、またはハロゲン原子が好ましい。このような官能基で置換されるアルキル基としては、前出のものを例示することができる。また、化学式(I)中、mは金属元素M1の原子価と等しい。化学式(I)中、nは0〜(m−1)の整数を表す。また、化学式(I)中、kは0〜(m−1)の整数を表し、1≦n+k≦(m−1)である。
化合物(A)の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ブロモプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、等が挙げられ、これらの化合物のメトキシ基の部分を、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基といったアルコキシ基や塩素基とした化合物を用いてもよい。また、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルジメチルメトキシシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン、2−クロロエチルジメチルメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルジメチルメトキシシラン、2−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2−メルカプトエチルジメチルメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、イソシアネートメチルメチルジメトキシシラン、イソシアネートメチルジメチルメトキシシラン、2−イソシアネートエチルメチルジメトキシシラン、2−イソシアネートエチルジメチルメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルメトキシシラン、ウレイドメチルメチルジメトキシシラン、ウレイドメチルジメチルメトキシシラン、2−ウレイドエチルメチルジメトキシシラン、2−ウレイドエチルジメチルメトキシシラン、3−ウレイドプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルジメチルメトキシシラン、ビス(クロロメチル)メチルクロロシランが挙げられ、これらの化合物のメトキシ基の部分を、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基といったアルコキシ基や塩素基とした化合物を用いてもよい。さらに、クロロメチルトリメトキシシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−クロロプロピルトリメトキシシラン、4−クロロブチルトリメトキシシラン、5−クロロペンチルトリメトキシシラン、6−クロロヘキシルトリメトキシシラン、(ジクロロメチル)ジメトキシシシラン、(ジクロロエチル)ジメトキシシラン、(ジクロロプロピル)ジメトキシシラン、(トリクロロメチル)メトキシシシラン、(トリクロロエチル)メトキシシラン、(トリクロロプロピル)メトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、4−メルカプトブチルトリメトキシシラン、5−メルカプトペンチルトリメトキシシラン、6−メルカプトヘキシルトリメトキシシラン、(ジメルカプトメチル)ジメトキシシシラン、(ジメルカプトエチル)ジメトキシシラン、(ジメルカプトプロピル)ジメトキシシラン、(トリメルカプトメチル)メトキシシシラン、(トリメルカプトエチル)メトキシシラン、(トリメルカプトプロピル)メトキシシラン、フルオロメチルトリメトキシシシラン、2−フルオロエチルトリメトキシシラン、3−フルオロプロピルトリメトキシシラン、ブロモメチルトリメトキシシシラン、2−ブロモエチルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、ヨードメチルトリメトキシシシラン、2−ヨードエチルトリメトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、(クロロメチル)フェニルトリメトキシシシラン、(クロロメチル)フェニルエチルトリメトキシシラン、1−クロロエチルトリメトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、(3−クロロシクロヘキシル)トリメトキシシラン、(4−クロロシクロヘキシル)トリメトキシシラン、(メルカプトメチル)フェニルトリメトキシシシラン、(メルカプトメチル)フェニルエチルトリメトキシシラン、1−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−(メルカプトメチル)アリルトリメトキシシラン、(3−メルカプトシクロヘキシル)トリメトキシシラン、(4−メルカプトシクロヘキシル)トリメトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4−ヒドロキシブチルアミド、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、2−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、4−イソシアネートブチルトリメトキシシラン、5−イソシアネートペンチルトリメトキシシラン、6−イソシアネートヘキシルトリメトキシシラン、(ジイソシアネートメチル)ジメトキシシシラン、(ジイソシアネートエチル)ジメトキシシラン、(ジイソシアネートプロピル)ジメトキシシラン、(トリイソシアネートメチル)メトキシシシラン、(トリイソシアネートエチル)メトキシシラン、(トリイソシアネートプロピル)メトキシシラン、ウレイドメチルトリメトキシシラン、2−ウレイドエチルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、2−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、4−ウレイドブチルトリメトキシシラン、5−ウレイドペンチルトリメトキシシラン、6−ウレイドヘキシルトリメトキシシラン、(ジウレイドメチル)ジメトキシシシラン、(ジウレイドエチル)ジメトキシシラン、(ジウレイドプロピル)ジメトキシシラン、(トリウレイドメチル)メトキシシシラン、(トリウレイドエチル)メトキシシラン、(トリウレイドプロピル)メトキシシラン、が挙げられ、これらの化合物のメトキシ基の部分を、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基といったアルコキシ基や塩素基とした化合物を用いてもよい。
好ましい化合物(A)としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
また、化合物(B)は次の化学式(II)で表される少なくとも1種の化合物である。
M2(OR2)qR3 p-q-rX2 r・・・(II)
化学式(II)中、M2は、Si、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaおよびNdから選択される原子を表すが、好ましくはSi、Al、TiまたはZrであり、特に好ましくはSi、AlまたはTiである。また、化学式(II)中、R2は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基を表すが、好ましくは、メチル基またはエチル基である。また、化学式(II)中、X2はハロゲン原子を表す。X2が表すハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられるが塩素原子が好ましい。また、化学式(II)中、R3は、アルキル基、アラルキル基、アリール基またはアルケニル基を表す。R3が表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−オクチル基などが挙げられる。また、R3が表すアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基などが挙げられる。また、R3が表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基などが挙げられる。また、R3が表すアルケニル基としては、ビニル基、アリル基などが挙げられる。さらに、化学式(II)中、pは金属元素M2の原子価と等しい。化学式(II)中、qは0〜pの整数を表す。また、化学式(II)中、rは0〜pの整数を表し、1≦q+r≦pである。
化学式(I)および(II)において、M1とM2とは同じであってもよいし異なっていてもよい。また、R1とR2とは同じであってもよいし異なっていてもよい。
化合物(B)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、クロロトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン等のシリコンアルコキシド;ビニルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン等のハロゲン化シラン;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン等のアルコキシチタン化合物;テトラクロロチタン等のハロゲン化チタン;トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、メチルジイソプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム、ジエトキシアルミニウムクロリド等のアルコキシアルミニウム化合物;テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、メチルトリイソプロポキシジルコニウム等のアルコキシジルコニウム化合物等が挙げられる。
本発明のガスバリア性積層体のガスバリア層を構成する組成物は、化合物(L)の加水分解縮合物を含むことが好ましい。化合物(L)が加水分解されることによって、化合物(L)のハロゲンおよびアルコキシ基の少なくとも一部が水酸基に置換される。さらに、その加水分解物が縮合することによって、金属元素が酸素を介して結合された化合物が形成される。この縮合が繰り返されると、実質的に金属酸化物とみなしうる化合物となる。
ガスバリア性積層体のガスバリア層に含まれる、化合物(L)の加水分解縮合物は、以下で定義される縮合度Pが65〜99%であることが好ましく、70〜99%であることがより好ましく、75〜99%であることがさらに好ましい。化合物(L)の加水分解縮合物における縮合度P(%)は、以下のようにして算出されるものである。
化合物(L)の1分子中のアルコキシ基とハロゲン原子の合計数をaとし、該化合物(L)の加水分解縮合物中、縮合したアルコキシ基とハロゲン原子の合計がi(個)である化合物(L)の割合が、全化合物(L)中のyi(%)である時、iが1〜aの整数(1とaを含む)のそれぞれの値について{(i/a)×yi}を算出し、それらを加算する。すなわち、縮合度P(%)は、以下の数式で定義される。
上記したyiの値は、ガスバリア層中の化合物(L)の加水分解縮合物については固体のNMR(DD/MAS法)等によって測定することができる。
該加水分解縮合物は、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解、縮合したもの、化合物(L)が完全に加水分解しその一部が縮合したもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどを原料として、たとえば公知のゾルゲル法で用いられる手法で製造できる。これらの原料は、公知の方法で製造してもよいし、市販されているものを用いてもよい。特に限定はないが、たとえば2〜10個程度の分子が加水分解、縮合して得られる縮合物を、原料として用いることができる。具体的には、たとえば、テトラメトキシシランを加水分解、縮合させて、2〜10量体の線状縮合物としたものなどを原料として用いることができる。
ガスバリア性積層体のガスバリア層を構成する組成物における化合物(L)の加水分解縮合物において縮合される分子の数は、加水分解、縮合に際して使用する、水の量、触媒の種類や濃度、加水分解縮合を行う温度などによって制御できる。
化合物(L)の加水分解縮合物の製造方法に特に限定はないが、ゾルゲル法の代表的な一例では、上記した原料に水と酸とアルコールとを加えることによって、加水分解および縮合を行う。
以下では、化合物(L)を金属アルコキシド(アルコキシ基が結合した金属を含む化合物)として説明する場合があるが、金属アルコキシドに代えて、ハロゲンが結合した金属を含む化合物を用いてもよい。
化合物(L)は、上述したように、化合物(A)および/または化合物(B)の少なくとも1種とすることができる。化合物(L)が、化合物(A)のみを含むか、または化合物(A)と化合物(B)の両方を含む場合には、ガスバリア性積層体のガスバリア性が良好となるため、好ましい。そして、化合物(L)が、実質的に、化合物(A)と化合物(B)の両方からなり、さらに化合物(A)/化合物(B)のモル比が0.5/99.5〜40/60の範囲にあることがより好ましい。化合物(A)と化合物(B)とをこの比率で併用する場合には、ガスバリア性積層体のガスバリア性、引張り強伸度などの力学的物性、外観、取り扱い性などの性能が優れる。化合物(A)/化合物(B)のモル比は、3/97〜40/60の範囲であることがより好ましく、5/95〜30/70の範囲であることがさらに好ましい。
(無機成分など)
ガスバリア層を構成する組成物中の無機成分の含有率は、5〜50重量%の範囲であることが、ガスバリア性積層体のガスバリア性が良好となる観点から好ましい。この含有率は、より好ましくは10〜45重量%の範囲であり、さらに好ましくは15〜40重量%の範囲である。組成物中の無機成分の含有率は、該組成物を調製する際に使用する原料の重量から算出することができる。すなわち、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解縮合したもの、化合物(L)が完全に加水分解し、その一部が縮合したもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどが完全に加水分解・縮合して金属酸化物になったと仮定し、その金属酸化物の重量を算出する。そして算出された金属酸化物の重量を組成物中の無機成分の重量とみなして、無機成分の含有率を算出する。なお、後述するような金属塩、金属錯体、金属酸化物などの無機添加物を加える場合は、加えた無機添加物の重量を、そのまま無機成分の重量に合算する。金属酸化物の重量の算出をより具体的に説明すると、化学式(I)で示される化合物(A)が完全に加水分解、縮合したときには、組成式が、MO(n+k)/2Z1 m-n-kで表される化合物となる。この化合物のうちMO(n+k)/2の部分が金属酸化物である。Z1については、無機成分に含めず有機成分であるとみなす。また、化学式(II)で示される化合物(B)が完全に加水分解、縮合したときには、組成式が、LO(q+r)/2R3 p-q-rで表される化合物になる。このうち、LO(q+r)/2の部分が金属酸化物である。
また、ガスバリア層を構成する組成物は、所望により、本発明の効果を損なわない範囲内において、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩のような無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩のような有機酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナートのようなアセチルアセトナート金属錯体、チタノセンなどのシクロペンタジエニル金属錯体、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物、架橋剤、ポリアルコール類またはそれ以外の高分子化合物、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を含有していてもよい。また、ガスバリア層を構成する組成物は、上記金属アルコキシドを湿式で加水分解、縮合して製造した金属酸化物の微粉末;金属アルコキシドを乾式で加水分解、縮合又は燃焼して調製した金属酸化物の微粉末;水ガラスから調製したシリカ微粉末などを含有していてもよい。
本発明のガスバリア性積層体におけるガスバリア層を構成する組成物に、ポリアルコール類を含有させることによって、ガスバリア性積層体の表面外観が良好となる。より具体的には、ポリアルコール類を含有させることによって、ガスバリア性積層体の製造時に、ガスバリア層にクラックが発生しにくくなり、表面外観が良好なガスバリア性積層体が得られる。
本発明に用いるそのようなポリアルコール類とは、分子内に少なくとも2個以上の水酸基を有する化合物であって、低分子量の化合物から高分子量の化合物までを包含する。好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、でんぷんなどの多糖類、でんぷんなどの多糖類から誘導される多糖類誘導体などの高分子量化合物である。
上記したポリアルコール類の使用量は、カルボン酸含有重合体/ポリアルコール類の重量比が10/90〜99.5/0.5の範囲であることが好ましい。該重量比は、より好ましくは30/70〜99/1、さらに好ましくは50/50〜99/1、最も好ましくは70/30〜98/2の範囲である。
本発明のガスバリア層は、基材フィルムの少なくとも一方の面に、カルボキシル基含有重合体の中和物と、好ましくは上記した化合物(L)の加水分解縮合物とを含む組成物からなるガスバリア層が形成される。このガスバリア層は、基材の一方の面のみに形成されていてもよいし、両方の面に形成されてもよい。基材の両方の面にガスバリア層を形成した積層体は、他のフィルムを貼り合わせるなどの後加工がしやすいという利点がある。
ガスバリア層の厚さは特に制限されないが、0.1μm〜100μmの範囲にあることが好ましい。0.1μmよりも薄い場合には、ガスバリア性積層体のガスバリア性が不十分となる場合がある。また、100μmよりも厚い場合には、ガスバリア性積層体の加工時、運搬時、使用時にガスバリア層にクラックが入り易くなる場合がある。ガスバリア層の厚さは、0.1μm〜50μmの範囲であることがより好ましく、0.1μm〜20μmの範囲であることがさらに好ましい。
本発明のガスバリア性積層体は、基材とガスバリア層との間に配置された接着層(T)をさらに含んでもよい。この構成によれば、基材とガスバリア層との接着性を高めることができる。接着性樹脂からなる接着層(T)は、基材の表面を公知のアンカーコーティング剤で処理するか、基材の表面に公知の接着剤を塗布することで形成できる。
また、本発明の積層体は、基材とガスバリア層との間に、無機物からなる層(以下、「無機層」という場合がある)を含んでもよい。本発明の真空断熱体が高い断熱性能を得る観点からは、基材とガスバリア層の間に無機層を含むことが好ましい。無機層は、無機酸化物などの無機物で形成できる。無機層は、蒸着法などの気相成膜法で形成できる。
無機層を構成する無機物は、酸素や水蒸気などに対するガスバリア性を有するものであればよく、好ましくは透明性を有するものである。たとえば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸窒化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫、またはそれらの混合物といった無機酸化物で無機層を形成できる。これらの中でも、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムは、酸素や水蒸気などのガスに対するバリア性が優れる観点から好ましく用いることができる。
無機層の好ましい厚さは、無機層を構成する無機酸化物の種類によって異なるが、通常、2nm〜500nmの範囲である。この範囲で、ガスバリア性積層体のガスバリア性や機械的物性が良好となる厚さを選択すればよい。無機層の厚さが2nm未満である場合、酸素や水蒸気などのガスに対するバリア性の発現に再現性がなく、十分なガスバリア性を発現しない場合がある。無機層の厚さが500nmを超える場合は、ガスバリア性積層体を引っ張ったり屈曲させたりした場合にガスバリア性が低下し易くなる。無機層の厚さは、好ましくは5〜200nmの範囲であり、さらに好ましくは10〜100nmの範囲である。
無機層は、基材上に無機酸化物を堆積させることによって形成できる。形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)などを挙げることができる。これらの中でも、真空蒸着法は、生産性の観点から好ましく用いることができる。真空蒸着を行う際の加熱方法としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式および誘導加熱方式のいずれかが好ましい。また、無機層と基材との密着性および無機層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着してもよい。また、無機層の透明性を上げるために、蒸着の際、酸素ガスなどを吹き込んで反応を生じさせる反応蒸着法を採用してもよい。
本発明のガスバリア層を形成させる基材としては、熱可塑性樹脂フィルムや熱硬化性樹脂フィルムを用いることができる。中でも熱可塑性樹脂フィルムは、真空断熱体に用いられるガスバリア性積層体の基材として特に有用である。なお、基材は複数の材料からなる多層構成のものであってもよい。
熱可塑性樹脂フィルムとしては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体などのポリエステル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12などのポリアミド系樹脂;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリアリレート、再生セルロース、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー樹脂等を成形加工したフィルムを挙げることができる。食品包装材料に用いられる積層体の基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド6、またはポリアミド66からなるフィルムが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムは、無延伸のフィルム、延伸されたフィルムのいずれでもよいが、成形加工性の観点から延伸されたフィルムが好ましい。
(ガスバリア性積層体の製造方法)
以下、本発明のガスバリア性積層体を製造するための方法について説明する。この方法によれば、本発明のガスバリア性積層体を容易に製造できる。本発明の製造方法に用いられる材料、および積層体の構成は、上述したものと同様であるので、重複する部分については説明を省略する場合がある。
本発明の製造方法では、まず、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(L)の加水分解縮合物と、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体(カルボン酸含有重合体)とを含む組成物からなる層を基材上に形成する(第1の工程)。第1の工程は、たとえば、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解縮合したもの、および、化合物(L)が完全に加水分解し、その一部が縮合したものから選ばれる少なくとも1つの金属元素含有化合物とカルボン酸含有重合体とを含む溶液(S)を調製する工程と、溶液(S)を基材に塗工して乾燥させて上記した成分を含有する層を形成する工程とによって、実施することができる。溶液(S)の乾燥は、溶液(S)に含まれる溶媒を除去することによって実施することができる。
なお、溶液(S)に含まれるカルボン酸含有重合体においては、上述したように、官能基(F)に含まれる−COO−基の一部(たとえば0.1〜10モル%)が1価のイオンによって中和されていてもよい。
次に、基材上に形成した層を、2価以上の金属イオンを含む溶液に接触させる(第2の工程。以下、この工程をイオン化工程という場合がある)。第2の工程によって、層中のカルボン酸含有重合体に含まれる官能基(F)(カルボン酸および/またはカルボン酸無水物)の少なくとも一部が2価の金属イオンで中和される。このとき、2価の金属イオンで中和される割合(イオン化度)は、金属イオンを含む溶液の温度、金属イオン濃度、および金属イオンを含む溶液への浸漬時間といった条件を変更することによって調整できる。
第2の工程は、たとえば、形成した層に2価以上の金属イオンを含む溶液を吹きつけたり、基材と基材上の層とをともに2価以上の金属イオンを含む溶液に浸漬したりすることによって行うことができる。
なお、以下では、イオン化工程前の積層体を積層体(A)といい、イオン化工程後の積層体を積層体(B)という場合がある。
以下、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解縮合したもの、および、化合物(L)が完全に加水分解し、その一部が縮合したものから選ばれる少なくとも1つの金属元素含有化合物を、「化合物(L)系成分」という場合がある。溶液(S)は、化合物(L)系成分、カルボン酸含有重合体、および溶媒を用いて調製することができる。たとえば、(1)カルボン酸含有重合体を溶解させた溶媒に、化合物(L)系成分を添加して混合する方法を採用できる。また、(2)カルボン酸含有重合体を溶解させた溶媒に、化合物(L)系成分である化合物(A)を加え、その後、化合物(L)系成分を添加して混合する方法も採用できる。また、(3)溶媒存在下または無溶媒下で化合物(L)系成分からオリゴマー(加水分解縮合物の1種)を調製し、このオリゴマーに、カルボン酸含有重合体を溶解させた溶液を混合する方法も採用できる。なお、化合物(L)系成分やそのオリゴマーは、単独で溶媒に加えてもよいし、それらを溶解させた溶液の形態で溶媒に加えてもよい。
溶液(S)の調製方法として上記の調製方法(3)を用いることによって、ガスバリア性が特に高いガスバリア性積層体が得られる。以下、調製方法(3)について、より具体的に説明する。
調製方法(3)は、カルボン酸含有重合体を溶媒に溶解して溶液を調製する工程(St1)と、化合物(L)系成分を特定の条件下で加水分解、縮合させてオリゴマーを調製する工程(St2)と、工程(St1)で得られる溶液と工程(St2)で得られるオリゴマーとを混合する工程(St3)とを含む。
工程(St1)において、カルボン酸含有重合体を溶解させるために使用される溶媒は、カルボン酸含有重合体の種類に応じて選択すればよい。たとえば、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などの水溶性の重合体の場合には、水が好適である。イソブチレン−無水マレイン酸共重合体やスチレン−無水マレイン酸共重合体などの重合体の場合には、アンモニア、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ性物質を含有する水が好適である。また、工程(St1)においては、カルボン酸含有重合体の溶解の妨げにならない限り、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のグリコール誘導体;グリセリン;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタンなどを併用することも可能である。
工程(St2)においては、化合物(L)系成分、酸触媒、水および必要に応じて有機溶媒を含む反応系中において、化合物(L)系成分を加水分解、縮合させてオリゴマーを得ることが好ましい。具体的には、公知のゾルゲル法で用いられている手法を適用できる。化合物(L)系成分として、化合物(L)を用いると、ガスバリア性がより高いガスバリア積層体が得られる。
工程(St2)で用いられる酸触媒としては、公知の酸触媒を用いることができ、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、酪酸、炭酸、シュウ酸、マレイン酸等を用いることができる。その中でも塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、乳酸、酪酸が特に好ましい。酸触媒の好ましい使用量は、使用する触媒の種類によって異なるが、化合物(L)系成分の金属原子1モルに対して、1×10-5〜10モルの範囲であることが好ましく、1×10-4〜5モルの範囲であることがより好ましく、5×10-4〜1モルの範囲であることがさらに好ましい。酸触媒の使用量がこの範囲にある場合、ガスバリア性が高いガスバリア性積層体が得られる。
また、工程(St2)における水の好ましい使用量は、化合物(L)系成分の種類によって異なるが、化合物(L)系成分のアルコキシ基またはハロゲン原子(両者が混在する場合はその合計)1モルに対して、0.05〜10モルの範囲であることが好ましく、0.1〜4モルの範囲であることがより好ましく、0.2〜3モルの範囲であることがさらに好ましい。水の使用量がこの範囲にある場合、得られるガスバリア性積層体のガスバリア性が特に優れる。なお、工程(St2)において、塩酸のように水を含有する成分を使用する場合には、その成分によって導入される水の量も考慮して水の使用量を決定することが好ましい。
さらに、工程(St2)の反応系においては、必要に応じて有機溶媒を使用してもよい。使用される有機溶媒は化合物(L)系成分が溶解する溶媒であれば特に限定されない。たとえば、有機溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール等のアルコール類が好適に用いられ、化合物(L)系成分が含有するアルコキシ基と同種の分子構造(アルコキシ成分)を有するアルコールがより好適に用いられる。具体的には、テトラメトキシシランに対してはメタノールが好ましく、テトラエトキシシランに対してはエタノールが好ましい。有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、化合物(L)系成分の濃度が1〜90重量%、より好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは10〜60重量%となる量であることが好ましい。
工程(St2)において、反応系中において化合物(L)系成分の加水分解、縮合を行う際に、反応系の温度は必ずしも限定されるものではないが、通常2〜100℃の範囲であり、好ましくは4〜60℃の範囲であり、さらに好ましくは6〜50℃の範囲である。反応時間は触媒の量、種類等の反応条件に応じて相違するが、通常0.01〜60時間の範囲であり、好ましくは0.1〜12時間の範囲であり、より好ましくは0.1〜6時間の範囲である。また、反応系の雰囲気は、必ずしも限定されるものではなく、空気雰囲気、二酸化炭素雰囲気、窒素気流下、アルゴン雰囲気といった雰囲気を採用することができる。
工程(St2)において、化合物(L)系成分は、全量を一度に反応系に添加してもよいし、少量ずつ何回かに分けて反応系に添加してもよい。いずれの場合でも、化合物(L)系成分の使用量の合計が、上記の好適な範囲を満たしていることが好ましい。工程(St2)によって調製されるオリゴマーは、前記した縮合度Pで表示すると25〜60%程度の縮合度を有していることが好ましい。
工程(St3)においては、化合物(L)系成分から誘導されるオリゴマーと、カルボン酸含有重合体を含む溶液とを混合することによって溶液(S)を調製する。溶液(S)の保存安定性、および得られるガスバリア性積層体のガスバリア性の観点から、溶液(S)のpHは1.0〜7.0の範囲であることが好ましく、1.0〜6.0の範囲であることがより好ましく、1.5〜4.0の範囲であることがさらに好ましい。
溶液(S)のpHは、公知の方法で調整でき、たとえば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、酪酸、硫酸アンモニウム等の酸性化合物や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、ピリジン、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性化合物を添加することによって調整できる。このとき、溶液中に1価の陽イオンをもたらす塩基性化合物を用いると、カルボン酸含有重合体のカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基の一部を1価のイオンで中和することができるという効果が得られる。
また、溶液(S)は、所望により、本発明の効果を損なわない範囲内において、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩のような無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩のような有機酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナートのようなアセチルアセトナート金属錯体、チタノセンなどのシクロペンタジエニル金属錯体、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物、架橋剤、上述したポリアルコール類、及びそれ以外の高分子化合物、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を含んでいてもよい。また、溶液(S)は、上記金属アルコキシドを湿式で加水分解、重縮合して製造した金属酸化物の微粉末;金属アルコキシドを乾式で加水分解、重縮合又は燃焼して調製した金属酸化物の微粉末;水ガラスから調製したシリカ微粉末などを含んでいてもよい。
なお、溶液(S)に添加するポリアルコールの量は、カルボン酸含有重合体/ポリアルコール類の重量比が10/90〜99.5/0.5の範囲であることが好ましい。該重量比の範囲はより好ましくは30/70〜99/1、さらに好ましくは50/50〜99/1、最も好ましくは70/30〜98/2である。
工程(St3)で調製された溶液(S)は、基材の少なくとも一方の面に塗工される。溶液(S)を塗工する前に、基材の表面を公知のアンカーコーティング剤で処理するか、基材の表面に公知の接着剤を塗布してもよい。溶液(S)を基材に塗工する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。好ましい方法としては、たとえば、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法などが挙げられる。
溶液(S)を基材上に塗工した後、溶液(S)に含まれる溶媒を除去することによって、イオン化工程前の積層体(積層体(A))が得られる。溶媒の除去の方法は特に制限がなく、公知の方法を適用できる。具体的には、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法などの方法を単独で、または組み合わせて適用できる。乾燥温度は、基材の流動開始温度よりも15〜20℃以上低く、かつカルボン酸含有重合体の熱分解開始温度よりも15〜20℃以上低い温度であれば特に制限されない。乾燥温度は、80℃〜200℃の範囲が好ましく、100〜180℃の範囲がより好ましく、110〜180℃の範囲がさらに好ましい。溶媒の除去は、常圧下または減圧下のいずれで実施してもよい。
上記の工程によって得られる積層体(A)を2価以上の金属イオンを含む溶液(以下、溶液(MI)という場合がある)に接触させること(イオン化工程)によって、本発明のガスバリア性積層体が得られる。なお、イオン化工程は、本発明の効果を損なわない限り、どのような段階で行ってもよい。たとえば、イオン化工程は、包装材料の形態に加工する前あるいは加工した後に行ってもよいし、さらに包装材料中に内容物を充填して密封した後に行ってもよい。
溶液(MI)は、溶解によって2価以上の金属イオンを放出する化合物(多価金属化合物)を、溶媒に溶解させることによって調製できる。溶液(MI)を調製する際に使用する溶媒としては、水を使用することが望ましいが、水と混和しうる有機溶媒と水との混合物であってもよい。そのような溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルビニルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のグリコール誘導体;グリセリン;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタン等の有機溶媒を挙げることができる。
多価金属化合物としては、本発明のガスバリア性積層体に関して例示した金属イオン(すなわち2価以上の金属イオン)を放出する化合物を用いることができる。たとえば、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシム、酢酸鉄(II)、塩化鉄(II)、酢酸鉄(III)、塩化鉄(III)、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸銅(II)、酢酸銅(III)、酢酸鉛、酢酸水銀(II)、塩化バリウム、硫酸バリウム、硫酸ニッケル、硫酸鉛、塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン(KAl(SO4)2)、硫酸チタン(IV)などを用いることができる。多価金属化合物は、1種類のみを用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい多価金属化合物としては、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛が挙げられる。
溶液(MI)における多価金属化合物の濃度は、特に制限されないが、好ましくは5×10-4重量%〜50重量%の範囲であり、より好ましくは1×10-2重量%〜30重量%の範囲であり、さらに好ましくは1重量%〜20重量%の範囲である。
溶液(MI)に積層体(A)を接触させる際において、溶液(MI)の温度は、特に制限されないが、温度が高いほどカルボキシル基含有重合体のイオン化速度が速い。好ましい温度は、たとえば30〜140℃の範囲であり、好ましくは40℃〜120℃の範囲であり、さらに好ましくは50℃〜100℃の範囲である。
溶液(MI)に積層体(A)を接触させた後、その積層体に残留した溶媒を除去することが望ましい。溶媒の除去の方法は、特に制限がなく、公知の方法を適用できる。具体的には、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法といった乾燥法を単独で、または2種以上を組み合わせて適用できる。溶媒の除去を行う温度は、基材の流動開始温度よりも15〜20℃以上低く、かつカルボン酸含有重合体の熱分解開始温度よりも15〜20℃以上低い温度であれば特に制限されない。乾燥温度は、好ましくは40〜200℃の範囲であり、より好ましくは40〜150℃の範囲であり、さらに好ましくは40〜100℃の範囲である。溶媒の除去は、常圧下または減圧下のいずれで実施してもよい。
また、ガスバリア性積層体の表面の外観を損なわないためには、溶媒の除去を行う前または後に、積層体の表面に付着した過剰の多価金属化合物を除去することが好ましい。多価金属化合物を除去する方法としては、多価金属化合物が溶解していく溶剤を用いた洗浄が好ましい。多価金属化合物が溶解していく溶剤としては、溶液(MI)に用いることができる溶媒を用いることができ、溶液(MI)の溶媒と同一のものを用いることが好ましい。
本発明の製造方法では、第1の工程ののちであって第2の工程の前および/または後に、第1の工程で形成された層を120〜240℃の温度で熱処理する工程をさらに含んでもよい。すなわち、積層体(A)または(B)に対して熱処理を施してもよい。熱処理は、塗工された溶液(S)の溶媒の除去がほぼ終了した後であれば、どの段階で行ってもよいが、イオン化工程を行う前の積層体(すなわち積層体(A))を熱処理することによって、表面の外観が良好なガスバリア性積層体が得られる。熱処理の温度は、好ましくは120℃〜240℃の範囲であり、より好ましくは130〜230℃の範囲であり、さらに好ましくは150℃〜210℃の範囲である。熱処理は、空気中、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下などで実施することができる。
また、本発明の製造方法では、積層体(A)または(B)に、紫外線を照射してもよい。紫外線照射は、塗工された溶液(S)の溶媒の除去がほぼ終了した後であれば、いつ行ってもよい。その方法は、特に限定されず、公知の方法を適用できる。照射する紫外線の波長は、170〜250nmの範囲であることが好ましく、170〜190nmの範囲及び/又は230〜250nmの範囲であることがより好ましい。また、紫外線照射に代えて、電子線やγ線などの放射線の照射を行ってもよい。
熱処理と紫外線照射は、どちらか一方のみを行ってもよいし、両者を併用してもよい。熱処理及び/又は紫外線照射を行うことによって、積層体のガスバリア性能がより高度に発現する場合がある。
基材とガスバリア層との間に接着層(T)を配置するために、溶液(S)の塗工前に基材の表面に処理(アンカーコーティング剤による処理、または接着剤の塗布)を施す場合、第1の工程(溶液(S)の塗工)の後であって上記熱処理および第2の工程(イオン化工程)の前に、溶液(S)が塗工された基材を、比較的低温下に長時間放置する熟成処理を行うことが好ましい。熟成処理の温度は、30〜200℃が好ましく、より好ましくは30〜150℃、さらに好ましくは30〜120℃である。熟成処理の時間は0.5〜10日の範囲であることが好ましく、1〜7日の範囲であることがより好ましく、1〜5日の範囲であることがさらに好ましい。このような熟成処理を行うことにより、基材とガスバリア層との間の接着力がより強固となる。この熟成処理ののちに、さらに上記熱処理(120℃〜240℃の熱処理)を行うことが好ましい。
本発明の真空断熱体は、保冷、保温が必要な各種用途に使用することができる。より具体的には、保冷、保温等断熱を必要とする冷蔵庫、冷凍庫、車の天井部、バッテリー、冷凍船、冷蔵船、保温コンテナー、冷凍用ショーケース、保冷用ショーケース、携帯クーラー、料理用保温ケース、自動販売機、太陽熱水温水器、建材(壁部、天井部、屋根裏部、床部)、熱水・冷却水・低温流体などの配管・導管、衣料、寝具など各種用途の真空断熱体として使用することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。以下の実施例における測定および評価は、次に示す方法(1)〜(3)によって実施した。
(1)イオンによるカルボキシル基の中和度(イオン化度)
実施例1〜4で得られた輸液バッグを構成する下記積層体(B−1)について、フーリエ変換赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、8200PC)を用いて、ATR(全反射測定)のモードで、ガスバリア層に含まれるC=O伸縮振動のピークを観察した。イオン化前のカルボン酸含有重合体のカルボキシル基のC=O伸縮振動に帰属されるピークは1600cm−1〜1850cm−1の範囲に観察され、イオン化された後のカルボキシル基のC=O伸縮振動は1500cm−1〜1600cm−1の範囲に観察された。そして、それぞれの範囲における最大の吸光度からその比を算出し、その比と予め下記の方法で作成した検量線とを用いてイオン化度を求めた。
[検量線の作成]
数平均分子量150,000のポリアクリル酸を蒸留水に溶解し、所定量の水酸化ナトリウムでカルボキシル基を中和した。得られたポリアクリル酸の中和物の水溶液を、基材上に、イオン化度の測定の対象となる積層体のガスバリア層と同じ厚さになるようにコートし、乾燥させた。基材には、2液型のアンカーコート剤(三井武田ケミカル株式会社製、タケラックA626(商品名)およびタケネートA50(商品名)、以下ACと略記することがある)を表面にコートした延伸PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(商品名)。厚さ12μm。以下、「OPET」と略記することがある)を用いた。このようにして、カルボキシル基の中和度が、0〜100モル%間で10モル%ずつ異なる11種類の標準サンプル[積層体(ポリアクリル酸の中和物からなる層/AC/OPET)]を作製した。これらのサンプルについて、フーリエ変換赤外分光光度計(島津製作所製、8200PC)を用いて、ATR(全反射測定)のモードで、赤外吸収スペクトルを測定した。そして、ポリアクリル酸の中和物からなる層に含まれるC=O伸縮振動に対応する2つのピーク、すなわち、1600cm−1〜1850cm−1の範囲に観察されるピークと1500cm−1〜1600cm−1の範囲に観察されるピークとについて、吸光度の最大値の比を算出した。そして、算出した比と、各標準サンプルのイオン化度とを用いて検量線を作成した。