そこで、本発明者等が出願した未公開の特願2004−350736号においては、下面側に直線状に設けられたボール溝を備えた上案内部と、上面側に直線状に設けられたボール溝を備えた下案内部と、上案内部のボール溝と下案内部のボール溝に嵌合し、両ボール溝間を滑り又は転がり移動可能に設けられたボールと、を設け、両ボール溝の水平方向軸を垂直面から見た交差角が0度を超え90度未満の所定角度に固定された免震部品を提供することにより、ボール又は直線状のボール溝を用いて、摩擦係数一定型とし、載荷重量に比例した摩擦力を得られる一方、摩擦係数を容易に変化させることができ、汎用性が高く、さらに、構造が簡単で取り扱いの容易な減衰機能付きの免震部品を提供した。なお、このもは免震部品や装置のみでなく水平移動部品、装置としても適用できる。
このものは、ボールを介して上下に直線状のボール溝を備えた案内部の交差角度が0度の時は、前述した特許文献1や3のように純転がりとなり、上下溝は平行に対向し、ボールは上下案内のボール溝間を容易に転動する。このときの摩擦係数は0.001〜0.002程度の極めて低摩擦の転がり抵抗である。一方、交差角を90度とすると、特許文献3に似たものとなり、一方のボール溝に沿ってボールが転がり、他方のボール溝内ではボール溝と直角方向に滑り自転することとなる。この場合のボールと上下ボール溝との摩擦係数はボールが一方の溝に沿って転がるときはすべり自転する側の摩擦係数となるので、案内部又はボール材料が鋼材の場合は例えば0.10〜0.20程度となる。この摩擦係数の値は、ボールやボール溝の材質、表面硬さ、表面処理、潤滑油(これは特許文献3の場合等)、形状等により決まる。
この交差角を90度から0度の間で変化させ、ボールを介して上下のボール溝を相対的に移動させると、交差角が小さくなるに従って、ボールとボール溝の滑りは少なくなり、転がりが多くなるので、摩擦係数が漸減していく。交差角に対する摩擦係数は前述した交差角0度で純転がりとなり摩擦係数が最も低く、交差角が90度で最も大きくなる。これにより、交差角を0度から90度まで変化させることにより、ボールとボール溝との摩擦係数を変化させることができる。従って、交差角を適宜に決定することにより任意の摩擦係数を得ることができる。また、載荷荷重を直接受けるボール又はボール溝に対するころがりすべり面の複合摩擦となるので、摩擦係数一定タイプの減衰機構となる。
詳述すると、図1に示すように、免震部品(水平移動部品)1は、下面側に直線状に設けられたボール溝4を備えた上案内部2が設けられている(点線で示す)。また、上面3b側に直線状に設けられたボール溝5を備えた下案内部3が基台13に固定されている。図示しないガイドを設け、上案内部2と下案内部3が常に交差角θとなるように規制されている。上下ボール溝4,5間には、両ボール溝に嵌合し、両ボール溝間を滑り又は転がり移動可能に設けられたボール6が設けられている。図示しないボール溝の縦断面は底部が中央2c,3cで最も深くなるのようにされ、ボールはそれぞれのボール溝の中央位置2c,3cになる位置で安定している。
かかる構成において、下案内部3に対して上案内部2を移動させると、常に交差角θは一定に規制されているので、図2に示すように下ボール溝5の中央3cにボール6がある場合は、上案内部は上ボール溝4方向にしか移動できないので矢印Aで示す範囲しか動けない。また、下ボール溝5の図で見て右上端5rにボール6がある場合は、同様に矢印Bで示す範囲、下ボール溝の図で見て左下端5sにボールがある場合は、同様に矢印Cで示す範囲しか動けないので、結局上案内部2は二点鎖線10で囲んだ範囲内を動くことになる。即ち、下案内部3と上案内部2は二点鎖線10で囲んだ範囲で相対水平移動可能とされる。最も移動距離が長いのは交差角の二等分線方向で最大移動距離Lとなり、その直角方向で最小移動距離Sとなる。
かかる対向する直線状ボール溝からなる免震部品(水平移動部品)1の摩擦係数について述べる。例えば矢印Aで示す上案内部2の移動時の摩擦係数はボール6と上ボール溝4との転がり又は滑り摩擦、ボールと下ボール溝5の滑り摩擦となる。滑りはボール6がボール溝4,5に沿って動く場合は0、ボール溝に直角にボールが回る場合に最大となり、ボール溝の交差角θが小さくなるに従って滑りは少なくなる。そこで、各交差角θに対する摩擦係数を測定した。その結果を図3に示す。なお、ボール材質はSUJ2(軸受鋼)、上下案内部は同じものとし、その材質はS45Cの調質材でボール溝はボール直径の52%の半径を公差角50°にしたゴシックアーチ形状の断面とし、溝深さはボール直径の約40%のものである。また、安定化のため4組の免震部品を4隅に等分に配置して測定したものである。
図3に示すように交差角θ=90度では、従来と同様の滑りによる摩擦係数である0.15を示し、交差角θ=0では、従来のボール溝を平行に配置した純転がりとなり、摩擦係数は0.001〜0.002程度となっている。そして、交差角0度を超え90度未満おいては、交差角θ=30度で摩擦係数が0.05、θ=45度で0.07、θ=60度で0.1、θ=75度で0.12となっており、交差角90度と交差角0度との間を直線Fで結んだ値にほぼ等しい摩擦係数を示している。このように、直線状ボール溝の交差角に応じて摩擦係数が変化、即ち、交差角を変更することにより、所望の摩擦係数をいとも簡単に得ることができるとがわかる。なお、より高い摩擦係数を必要とする場合は、前述した表面処理や材質等を選択することにより交差角90度での摩擦係数を高くすればよい。なお、免震部品や免震装置として使用する場合においては、摩擦係数は0.03〜0.08が好ましい(交差角にして、およそθ=10〜60度、より好ましくはθ=15〜45度)といわれており、直線状ボール溝を交差角を適宜選択することにより容易に適切な摩擦係数が得られる。
さらに、中間部材の上側に下案内部が位置するように第一の免震部品(水平移動部品)を設け、中間部材の下側に上案内部が位置するように第二の免震部品(水平移動部品)を設け、第一の免震部品の取付角度と、第二の免震部品との取付角度の位相を90度ずらせて組み立てることにより免震装置(水平移動装置)としている。
即ち、ボールと、ボールを滑り転がり移動可能に狭持する直線状のボール溝を備えた上下案内部を有する前述の免震部品(水平移動部品)は、交差角が0度越え、90度未満であるので、上下案内部の相対移動方向は、交差角の二等分線方向で最大となり、その直角方向で最小となる。即ち、90度では、交差角の二等分線方向も、直角方向も同一距離であるが、0度では、ボール溝方向の移動しかできない。従って、免震部品(水平移動部品)1個では、運動方向が制限される。そこで、中間部材を介して、免震部品(水平移動部品)を上下に配置し、免震部品(水平移動部品)の取付角度の位相を90度ずらすようにして、上側の免震部品(水平移動部品)の移動可能範囲と、下側免震部品(水平移動部品)の移動可能範囲とが互いに補完しあって、直交するX軸、Y軸の二方向への相対移動が可能とさせた。これにより水平方向の2次元揺動を可能にさせた。従って、例えば、中間部材の上側の免震部品(水平移動部品)の上案内部を載荷側とし、中間部材の下側の免震部品(水平移動部品)の下案内部を固定側として、固定側と載荷側とを水平方向に所定の摩擦係数で揺動可能に支持する免震装置としている。
このように、直線ボール溝を交差角をもってボールを介して対向させる免震部品(水平移動部品)では、ボールが直線状のボール溝のどの位置にあっても一定摩擦係数を得られ、載荷依存性のない性能が得られる。かかる免震部品を用いた場合、免震部品を摩擦をゼロ又は微少とすると地震の水平方向の揺れに対して載荷物品の倒れや、振動を少なくできるが、上下案内の相対移動距離が大きくなり、免震部品、免震装置が大きくなる。逆に摩擦を大きくすると相対移動距離は小さくなるが、地震の水平方向の揺れに対して載荷物品が倒れやすくなる。また、予想される地震の揺れの大きさは、地域で異なる他、地域内でも活断層に近い場所や離れた場所等、地盤の状況、置かれる建家の構造等の種々の条件によっても異なる。そこで、載荷する物品の重さ、形状、重心位置等の安定度や、予想される地震の揺れに対して、適当な摩擦力を与え相対移動範囲を制限することにより、小型化を図ることができる。
しかしながら、予想される地震の揺れより過大な揺れを生じた場合は、地震の揺れによる変位が大きくなり、免震台の応答変位が大きくなる。このため全ての地震に対応できるようにするとスペースが過大になって設置できないという問題がある。一方、スペースをある程度狭めた場合は、予想内であればよいが、予想されるより過大な揺れの地震に対して、直線状のボール溝のストロークエンドにボールが衝突して、載荷物品に衝撃を与え破損したり、さらには物品が移動したり転倒したりするという問題があった。また、小さな地震やその他の振動等の免震の他、搬送等においても、摩擦力を変化させて移動させたい場合等がある。
本発明の課題は、かかる問題点に鑑みて、予定より過大な揺れが生じても、ボールがボール溝のストロークエンドにそのまま衝突しないように、ボール溝端付近での摩擦力を増大して、できる限り急激な衝突を防止し、加速度は次第に増加はするが、衝撃による転倒防止をより改善することである。さらには、ボール溝に沿って値の異なる種々の摩擦力を与えるようにして、スムースな減衰や免震を与えるとともに、小型化を図れる水平移動部品を提供することである。さらには、かかる水平移動部品を使用した水平移動装置又は免震装置を提供することである。
本発明においては、下面側に中心部より両長手方向に延びる線状に設けられたボール溝を備えた上案内部と、上面側に中心部より両長手方向に延びる線状に設けられたボール溝を備えた下案内部と、前記上案内部のボール溝と前記下案内部のボール溝に嵌合し、前記両ボール溝間を滑り又は転がり移動可能に設けられたボールと、を備え、前記上下案内部が水平方向の定められた一軸に沿って相対移動可能にされた水平移動部品であって、前記上下面の垂直方向から見て、前記一軸に沿った移動に従って前記対向するボール溝は互いに交差する交差部を有し、前記交差部の交差角が二以上に変化されている水平移動部品を提供することにより前述した課題を解決した。
即ち、ボール溝を直線ではなく、一軸方向の移動(水平移動)に伴い互いのボール溝同士が交差角を有するようにし、中心部側より長手方向(外)側の交差角が大きくなるようにしているので、ボール位置によって摩擦係数を変化させることができる。従って、直線状ボール溝の場合は一定摩擦係数であるのに対し、本発明においては、二以上の摩擦係数を得られる。
さらに、請求項2に記載の発明においては、前記中心側の交差部の交差角よりも前記長手方向の端部側の交差部の交差角が大きくされている水平移動部品とした。即ち、中心部から離れる(相対水平移動が大きくなる)に従って、摩擦係数を上げることができ、さらに終端になるに従って摩擦係数を上げることもできる。
より具体的な構造として、請求項3に記載の発明においては、前記線状のボール溝は、長手方向に少なくとも一以上の方向に変化しながら延び、前記線状のボール溝の変化方向は水平面に直交するボール溝中心軸回りに同じ回転方向に変化するような形状とされ、かつ前記上下面のボール溝は、それぞれのボール溝面側からみて同形状にされた水平移動部品とした。
即ち、ボール溝を直線ではなく、長手方向に少なくとも一以上の方向に変化しながら延び、前記線状のボール溝の変化方向は水平面に直交するボール溝中心軸回りに同じ回転方向に変化するような形状とすることにより、上下案内部のボール溝軸の互いの角度を変化させ、ボール位置によって摩擦係数を変化させることができる。また、線状ボール溝は同形状なので、上下案内部はボールを介して所定の摩擦力で制御されながら一軸方向に移動できる。
さらに、好ましくは、前記線状のボール溝は、線状のボール溝の中心部を中心点として点対称に少なくとも一回以上方向を変化させて前記中心側に戻ることなく外方に向かって延びている水平移動部品とした(請求項4)。
即ち、線状のボール溝をボール溝の中心部を中心点として点対称にしたので、移動方向に対して対称に摩擦係数を設定できるので、方向性がなく、安定した水平移動部品とすることができる。
なお、特許文献3の場合は、ボール位置固定側をすべりとして、皿側を転がり側とするために、固定側より転がり側のすべり摩擦係数を大きくして、皿側でボールがころがり運動するようにしている。しかし、本発明のように同形状のボール溝である場合は、互いに同材質とすれば、ボールの接触曲率半径がほぼ同じであるので、ボール溝に沿うすべり摩擦係数は、ボール溝の直角方向回りのすべり摩擦係数より大きくなるので、すべりと回転の両方が誘起され、安定した摩擦係数を得られるものと考える。
移動は所定の一軸方向に定めればよいが、ボール溝の設計上、加工上等の面から、対称的に配置するのが好ましい。そこで、請求項5に記載の発明においては、前記水平方向の定められた一軸は前記上下ボール溝の垂直方向視で前記上下ボール溝が対称の関係となる軸とした水平移動部品とした。
最も簡単な例としては、線状ボール溝は中心側が直線とされ、ボール溝のストロークエンド近傍で折れ曲がる直線とするのが簡単である。そこで、請求項6に記載の発明においては、前記上下面のボール溝は、前記中心を通る直線部と、前記直線部の両端部に点対称に折れ曲がる第二の直線部が形成されている水平移動部品とした。
例えば、ボール溝の中心を通る直線部が互いに重なるように配置し、直線部と同方向の一軸に沿って移動可能にすれば、前述した直線状ボール溝の交差角をゼロとしたのと同様であり、摩擦力は低い。一方、ボール溝のストロークエンド近傍では、互いにボール溝が交差する関係になるので、ボール溝のストロークエンド近傍では一定摩擦力を得られるようになる。また、ボール溝の中心を通る直線部が互いに所定の交差角となるように配置し、交差角の中心軸(対称の関係となる軸)に沿って移動可能にすれば、直線部では交差角に応じた摩擦力を得られ、ボール溝のストロークエンド近傍では、折れ曲がる直線が中心軸(一軸)方向より離れる方向に折れ曲がっている場合は、直線部より大きな摩擦力となり、中心軸方向に折れ曲がっている場合は、直線部より小さな摩擦力となる。また、免震においては、ボール溝の中心側に対してストロークエンド側の方の摩擦力を大きくするのが好ましい。
なお、前述した特許文献2には直線状のボール溝の両端部分に曲がり部が記載されているが、このものは曲がり部でバランスを崩して、対向するボール溝を回転し易くさせ、振幅をできる限り大きくとろうとしているものであり、また、減衰性能も有しないので、本発明のように一軸方向に固定して、交差角を変化させて所定の摩擦係数を得て、減衰性能を得るものとは異なる。
直線を折り曲げる場合は、折れ曲がり点で摩擦係数が不連続に変わるので、衝撃が発生する。そこで、折れ曲がり部を円弧等にするのが好ましい。さらに、請求項7に記載の発明においては、前記上下面のボール溝は、前記中心部を通る直線部と、前記直線部の両端部に点対称に接続された円弧部が形成されている水平移動部品とした。これにより、ボール溝のストロークエンドに向かうに従って徐々に摩擦力が増大する。
円弧部は直線部とスムースにつながるようにするのが好い。また、円弧部の円弧は円、楕円、サイクロイド曲線、双曲線、緩和曲線等の種々の曲線の一部を用いればよい。また、前述した直線の場合と同様、直線部で重なるようにしたり、交差角を与えるようにしてもよい。同様に、円弧部の円弧の延び方向は、中心軸(一軸)方向より離れる方向に延びる場合は、直線部より大きな摩擦力となり、中心軸方向に延びる場合は、直線部より小さな摩擦力となる。なお、免震においては、ボール溝の中心側に対してストロークエンド側の方の摩擦力を大きくするのが好ましい。
また、ボール溝は必ずしも直線でなくてもよい。そこで、請求項8に記載の発明においては、前記上下面のボール溝は、曲線とされ、前記曲線は中心部を通る点対称に形成されている水平移動部品とした。これにより任意の摩擦係数をボール溝中心からの位置に連続的に与えることができる。
より、好ましくは、ボール溝中心から遠ざかるにつれて、摩擦係数が漸次大きくなるように移動すべき一軸方向の一軸より漸次遠ざかるように形成するのがよい。なお、前述した他、ボール溝は中心に戻ることなく中心より外方に延びる点対称の溝とすれば種々の形状が可能であることはいうまでもない。
また、請求項9に記載の発明においては、少なくとも一方の前記ボール溝の底部の深さは両端部から徐々に深くなり、中心部の底部の深さが最も大きくされている水平移動部品とした。これにより地震等の揺動の後、自然復帰が従来と同様に可能である。なお、ボール溝の底部のボール溝に沿う縦断面は、従来と同様に、V字等の直線、U字等の曲線、楕円、円等を用いる。なお、最深部を中心部以外にすれば、その位置を自動復帰する位置として設定できるので、水平移動装置への利用範囲が広まる。
さらに、請求項10に記載の発明においては、前記ボール溝の断面はボールが二点以上で接触するようにされている水平移動部品とした。いわゆるボール溝をゴシックアーチ状、V溝状にして、ボールが側面の二点で接触するようにしたので、ボールがすべりと転がりの両運動を確実に、安定して行えるので、摩擦係数の値が安定する。なお、ボール溝は前述の他、U溝、凹溝等であっても良く、ボールがボール溝方向以外は転がり回転しないような断面、幅、深さにされていればよい。また、上下溝は同断面形状であるのが好ましい。
また、請求項11に記載の発明においては、中間部材と、請求項1乃至10のいずれか一に記載の前記水平移動部品であって、前記中間部材の上側に前記下案内部が位置するように設けられた第一の水平移動部品と、請求項1乃至10のいずれか一に記載の前記水平移動部品であって、前記中間部材の下側に前記上案内部が位置するように設けられた第二の水平移動部品と、を有し、前記第一の水平移動部品の前記定められた一軸と、前記第二の水平移動部品の前記定められた一軸とが直交するように配置されている水平移動装置又は免震装置を提供する。
即ち、ボールと、ボールを滑り転がり移動可能に狭持する線状のボール溝を備えた上下案内部を有する前述の水平移動部品は、上下案内部が水平方向の定められた一軸に沿って相対移動可能にされている。従って、水平移動部品1個では、運動方向が制限される。しかし、本発明の水平移動装置又は免震装置によれば、中間部材を介して、水平移動部品を上下に配置し、上下の水平移動部品の一軸を互いに直交するように配置したので、上側の水平移動部品の移動可能範囲と、下側水平移動部品の移動可能範囲とが互いに補完しあって、直交するX軸、Y軸の二方向への相対移動が可能となる。これにより水平方向の2次元揺動が可能になる。従って、例えば、中間部材の上側の水平移動部品の上案内部を載荷側とし、中間部材の下側の水平移動部品の下案内部を固定側とすれば、固定側と載荷側とを水平方向に所定の摩擦係数で揺動可能に支持する水平移動装置又は免震装置とすることができる。
なお、本発明の水平移動部品のみを使用する場合は、安定して使用するために、全体として上下各3個以上配置するのが好ましい。また、他の水平移動装置又は免震装置や減衰装置を適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。また、一軸方向のみの移動でよければ上側又は下側のみでもよい。
また、請求項12に記載の発明においては、前記第一の水平移動部品の下案内部、又は、前記第二の水平移動部品の上案内部の少なくともいずれが一方が前記中間部材に設けられている水平移動装置又は免震装置とした。これによれば、中間部材の上下に線状のボール溝を設けるので、部品点数を減らせる。また、上下方向高さを低くできる。なお、線状のボール溝は中間部材、案内部材に直接加工したり、部品として取り付けたりすればよい。
本発明の水平移動部品によれば、ボール溝の交差角を変化させボール溝のボール位置により任意の摩擦係数を容易に得られるので設計や、調整も容易なものとなった。また、ボール及び線状のボール溝を用いて、載荷重量に適した摩擦力を得られる一方、摩擦係数を容易に変化させることができ、汎用性が高い水平移動部品となった。さらに、ボールと線状のボール溝という簡単な構成でかかる減衰機能を得られるので、構造が簡単で取り扱いの容易な減衰機能付きの水平移動部品となった。
また、請求項2に記載の発明においては、中心部側より外側の交差角が大きくなるようにし、摩擦係数を中心部から離れるに従って上げ、終端になるに従って摩擦係数を上げ、摩擦係数をボール溝のストロークエンド近傍で大きくできるので、ボール溝のストロークエンドでの衝突を和らげ、載置物品の衝撃による破損や、載置物品の転倒を防止できるものとなった。また、中心に対し、ストロークエンド近傍で摩擦係数を高くできるので、種々の地震の揺れに応じて設計でき、過大な揺れに対しても衝撃等を和らげることができるので、小型化をはかれ、さらに、小型のものから大型のもの、重心の低いものから高いもの等種々の載置物品に適した水平移動部品を提供できるものとなった。
さらに、請求項3に記載の発明においては、ボール溝を長手方向に少なくとも一以上の方向に変化しながら延び、前記線状のボール溝の変化方向は水平面に直交するボール溝中心軸回りに同じ回転方向に変化するような形状とし公差角度を変化させ、ボール位置によって摩擦係数を変化させ、線状ボール溝は同形状としたので、二以上の安定した摩擦係数を容易に設計、製作することができ、また、線状のボール溝のボール位置によって摩擦係数を任意に変化させた減衰機構を得られる。
また、請求項4に記載の発明においては、線状のボール溝を点対称の形状としたので、安定した摩擦係数を得られ、方向性のない安定して水平移動部品とできる。また、請求項5に記載の発明においては、水平方向の定められた一軸を上下ボール溝の垂直方向視で上下ボール溝が対称の関係となる軸となる水平移動部品としたので、設計・加工・組立が容易なものとなった。
より具体的には、請求項6に記載の発明においては、線状のボール溝を中心を通る直線部と、直線部の両端部に点対称に折れ曲がる第二の直線部からなる水平移動部品としたので、ストロークエンド近傍での摩擦力の増大を容易に行えるものとなった。また、請求項7に記載の発明においては、ストロークエンド近傍を円弧部としたので、摩擦力がスムースに増大し、より大きな過大揺れに対応できるものとなった。さらに、請求項8に記載の発明においては、線状のボール溝を中心を通る曲線とし、中心に対して点対称に形成し、任意の摩擦係数をボール溝中心からの位置に連続的に与えることができるので、より多くの載荷物品、地震に適合した水平移動部品を提供できるものとなった。
また、請求項9に記載の発明では、ボール溝の中央の底部の深さを両端部より深くし、地震等の揺動の後、自然復帰を可能としたので、従来と同様な水平移動部品とすることができる。さらに、請求項10に記載の発明においては、ボール溝の断面をボールを二点以上で接触させ、ボールのすべりと転がりの両運動を確実に、安定して行えるので、安定した摩擦係数を得られるものとなった。
さらに、請求項11に記載の発明においては、中間部材を挟んで、前述した本発明の水平移動部品を上下に配置し、第一の水平移動部品の一軸と、第二の水平移動部品の一軸とを直交するように配置し、上側の水平移動部品の移動可能範囲と、下側水平移動部品の移動可能範囲とを補完し、水平方向の2次元揺動を可能としたので、従来と同様の水平方向に揺動可能な水平移動装置又は免震装置とできる。その上、線状のボール溝のボール位置により摩擦係数を変化させることができ、構造が簡単で、設計や、調整も容易で、取り扱いの容易な減衰機能付きの水平移動装置又は免震装置となった。また、中心に対し、ストロークエンド近傍で摩擦係数を高くできるので、種々の地震の揺れに応じて設計でき、過大な揺れに対しても衝撃等を和らげることができるので、小型化をはかれ、さらに、小型のものから大型のもの、重心の低いものから高いもの等種々の載置物品に適した水平移動装置又は免震装置を提供できるものとなった。また、上下案内部を同部品とすることもできるので部品の種類が少なく管理、設計、組み立て、調整等も容易になる。
また、請求項12に記載の発明においては、第一の水平移動部品の下案内部や第二の水平移動部品の上案内部を中間部材に設け、部品点数を減らし、上下方向高さを低くしたので、小型で取り扱いの容易な水平移動装置又は免震装置とすることができる。
本発明の水平移動部品の第一の実施の形態について図を参照して説明する。図4は本発明の第一の実施の形態を示す水平移動部品の模式図であり、(a)は下案内部の平面図、(b)は上案内部の底面図、(c)は上下案内部の中立位置での水平移動部品の平面図、(d)は上案内部が横(上)方に移動したときの平面図、(e)は上案内部がさらに横方向に移動しボール溝端にボールが位置したときの平面図である。図4(a)に示すように第一の実施の形態に示す水平移動部品21の下案内部22の上面22aには、線状のボール溝23が中心Cを通る直線部24と直線部のストロークエンド24a近傍で折れ曲がった第二の直線部25が両側に形成されている。直線部24又は第二の直線部25はボール溝23の中心Cを中心点として点対称にされ、第二の直線部は中心側に戻ることなく外方に向かって延びている。同様に図4(b)に示すように水平移動部品21の上案内部32の下面32aには、線状のボール溝33が中心Cを通る直線部34と直線部のストロークエンド34a近傍で折れ曲がった第二の直線部35が両側に形成されており、下案内部23の上面23aの線状のボール溝23と同形状にされている。また、図示しない上下ボール溝23,33の底部の深さは両端部から徐々に深くなり、中央部の底部の深さが最も大きくされている。また、ボール溝の断面はゴシックアーチ状とされボールが二点以上で接触できるようにされている。
図4(c)に示すように、かかる下案内部22を固定し、上案内部32をガイド30に沿って移動可能にボール40を介して、上下案内部22,32の線状のボール溝23,33の直線部24,34が重なるように組立てられている。直線部とガイド30とは同方向とされ、また、ガイド30により上案内部32の移動方向は水平方向の一定の一軸方向に沿って移動可能となるように規制、即ち図で見て左右方向に移動可能に規制されている。なお、図4(c)乃至(e)において、説明の為、下案内部22側を実線で、上案内部33側を点線で示している。また、上下案内部の相対移動にあたっては、水平移動部品一組では、傾いてしまうため、少なくとも3組の水平移動部品を傾かないように、同移動方向になるように配置するが、以下説明のため一組のみを取り上げて説明する(以下図5乃至図7についても同様とする)。また、左方向への移動移動の場合について説明するが右方向の場合も同様である。
かかる水平移動部品においては、ボール40がボール溝23,33間を左右に転がることにより、上案内部32が左右に移動する。直線部24,34は互いに重なる、即ち一致しているので、純転がり状態の低摩擦係数となり、スムースに移動できる。従って、上下案内部は左右方向に相対移動が可能にされ、振動や地震等により下案内部22が左右方向に移動しても慣性により上案内部の移動を少なくすることができる。地震の揺れが小さい場合は直線部24,34間でボール40が転動し揺れを吸収する。また、地震の揺れが収まった後は中央部に自然復帰させる。地震の揺れが大きくなると、図4(d)に示すように、ボール40は第二の直線部25,35に達する。このとき、ボール溝23,33の向きは互いに交差するようになる。すなわち、前述した図1と同じ状態となり交差角θで交差することとなる。また、直線部24,34では交差角は0であり、第二の直線部25,35では交差角θとなり交差角は中心部より端部の方が大きくなる。このため、ボール40は、転がり又はすべりの複合摩擦となり、交差角に応じた摩擦力を持って移動することとなり、大きな摩擦による減衰作用を生ずることとなる。従って、予想より大きな揺れが生じても、図4(e)に示すような、ボール溝端25a,35aにボール40の衝突を減じ、ある程度の加速度で揺れからの上案内部への影響を小さくでき、揺れからのダメージも少なくできる。
また、水平移動装置用として使用する場合には、左右端で摩擦が大きくなるのでブレーキ動作をさせることができ、例えば搬送停止時の衝撃の吸収が可能である。
第一の実施の形態においては、図4に示すように、ボール溝の直線部が互いに重なるように配置しているので、純転がりの低摩擦となり、ボールとボール溝のみでは、載荷物品の重量による影響を受ける。また、摩擦機構を別途設ける必要がある。そこで、ボール又はボール溝だけでボール溝中心でも所定の摩擦力を得たい。そこで、次に本発明の水平移動部品の第二の実施の形態について図を参照して説明する。図5は本発明の第二の実施の形態を示す水平移動部品の模式図であり、(a)は下案内部の平面図、(b)は上案内部の底面図、(c)は上下案内部の中立位置での水平移動部品の平面図、(d)は上案内部が横(左)方に移動したときの平面図、(e)は上案内部がさらに横方向に移動しボール溝端にボールが位置したときの平面図である。図5(a)に示すように第二の実施の形態においては、第一の実施の形態のボール溝23,33の直線部24,34を傾けた点、即ち、ガイド30に対し、直線部を傾けたものである。
かかる水平移動部品においては、図5(a)に示すように、第一の実施例と同様に下案内部42の上面42aには、線状のボール溝43が中心Cを通る直線部44と直線部のストロークエンド44a近傍で折れ曲がった第二の直線部45が両側に形成されている。直線部44又は第二の直線部45はボール溝43の中心Cを中心点として点対称にされ、第二の直線部は中心側に戻ることなく外方に向かって延びている。ここで、直線部44はガイド方向に対してθ/2の角度となるように右上がりにされている。また、図5(b)に示すように水平移動部品41の上案内部52の下面52aには、線状のボール溝53の直線部54、第二の直線部55が下案内部の線状のボール溝43と同形状にされている。なお、その他については、第一の実施例と同様であるので説明を省略する。
図5(c)に示すように、第一の実施例と同様に、下案内部42を固定し、上案内部52をガイド30に沿って移動可能にボール40を介して、上下案内部42,52の線状のボール溝の中心Cで対向させるように組立てられている。ガイド30により上案内部52の移動方向は水平方向の一定の一軸方向に沿って移動可能となるように規制さら、即ち図で見て左右方向に移動可能に規制されている。従って、直線部44,54は互いにθの交差角で交差することとなり、その移動方向が二等分線方向に一致する。すなわち、前述した図1と同じ状態になる。このため、ボール40は、転がり又はすべりの複合摩擦となり、交差角θに応じた摩擦係数を持って移動することとなり、直線部44,54で大きな摩擦による減衰作用を得ることができる。
さらに、地震の揺れが大きくなると、図5(d)に示すように、ボール40は第二の直線部45,55に達する。このとき、ボール溝43,53の交差角θ2とさらに大きくなり、さらに、大きな摩擦による減衰作用を生ずる。このように第二の実施の形態の水平移動部品においては、直線部(中心側)で、載荷荷重依存の少ない適切な摩擦力を得られ、免震性能を向上させるとともに、さらにボール溝端側では、より大きな摩擦力を与えて、過大揺れに関する影響を少なくできる。上下案内部の相対移動は図5(e)の位置まで可能である。
さらに、本発明の水平移動部品の第三の実施の形態について図を参照して説明する。図6は本発明の第三の実施の形態を示す水平移動部品の模式図であり、(a)は下案内部の平面図、(b)は上案内部の底面図、(c)は上下案内部の中立位置での水平移動部品の平面図、(d)は上案内部が横(左)方に移動したときの平面図、(e)は上案内部がさらに横方向に移動しボール溝端にボールが位置したときの平面図である。図6(a)に示すように第三の実施の形態においては、第二の実施の形態のボール溝43,53の第二の直線部45,55を円弧としたものである。
かかる水平移動部品においては、図6(a)に示すように、第二の実施例と同様に下案内部62の上面62aには、線状のボール溝63が中心Cを通る直線部64と直線部のストロークエンド64a近傍で中心から離隔する方向に曲がった円弧部65が両側に形成されている。直線部64又は円弧部65はボール溝63の中心Cを中心点として点対称にされ、円弧部は中心側に戻ることなく外方に向かって延びている。また、図6(b)に示すように水平移動部品61の上案内部72の下面72aには、線状のボール溝73の直線部74、円弧部75が下案内部の線状のボール溝63と同形状にされている。なお、その他については、第一又は二の実施例と同様であるので説明を省略する。
図6(c)に示すように、第二の実施例と同様に、下案内部62を固定し、上案内部72をガイド30に沿って移動可能にボール40を介して、上下案内部62,72の線状のボール溝の中心Cで対向させるように組立てられ、直線部64,74は互いにθの交差角で交差している。直線部の構造、挙動については前述した第二の実施例と同様である。
さらに、地震の揺れが大きくなると、図5(d)に示すように、ボール40は円弧部65,75に達する。このとき、ボール溝63,73の向きは徐々に交差角θxが大きくなる方向になるので、ボールの外方への移動に従って、摩擦が徐々に大きくなる減衰作用を生ずる。このように第三の実施の形態の水平移動部品においては、直線部(中心側)で、載荷荷重依存の少ない適切な摩擦力を得られ、免震性能を向上させるとともに、さらにボール溝端側では、漸次摩擦力が大きくなるようにして、過大揺れに関する影響を効率よく少なくできる。なお、上下案内部の相対移動は図6(e)の位置まで可能である。
さらに、本発明の水平移動部品の第四の実施の形態について図を参照して説明する。図7は本発明の第四の実施の形態を示す水平移動部品の模式図であり、(a)は下案内部の平面図、(b)は上案内部の底面図、(c)は上下案内部の中立位置での水平移動部品の平面図、(d)は上案内部が横(左)方に移動したときの平面図、(e)は上案内部がさらに横方向に移動しボール溝端にボールが位置したときの平面図である。図7(a)に示すように第四の実施の形態においては、第三の実施の形態のボール溝63,73の直線部65,75までも円弧として、ボール溝全体を曲線としたものである。
かかる水平移動部品においては、図7(a)に示すように、第三の実施例と同様に下案内部82の上面82aには、線状のボール溝83は中心Cを通り外方に向かって中心から離隔する方向に曲がる曲線部85が両側に形成されている。曲線部85はボール溝83の中心Cを中心点として点対称にされ、中心側に戻ることなく外方に向かって延びている。また、図7(b)に示すように水平移動部品81の上案内部92の下面92aには、線状のボール溝93が下案内部の線状のボール溝83と同形状に形成されている。なお、その他については、第一、二、三の実施例と同様であるので説明を省略する。
図7(c)に示すように、第一、二、三の実施例と同様に、下案内部82を固定し、上案内部92をガイド30に沿って移動可能にボール40を介して、上下案内部82,92の線状のボール溝の中心Cで対向させるように組立てられる。曲線部85,95はボール位置が中心では図1で述べた交差角θがゼロに相当し、ボールの移動と共に互いに漸増する交差角θyで交差することとなる。従って、地震の揺れに応じてボール40が外方へ移動すると、ボールの移動に従って、摩擦が徐々に大きくなる減衰作用を生ずる。このように第四の実施の形態の水平移動部品においては、載荷荷重依存の少ない適切な摩擦力を漸次摩擦力が大きくなるようにすることができるので、過大揺れに関する影響をさらに効率よく少なくでき、より小型の水平移動部品とすることができる。なお、上下案内部の相対移動は図7(e)の位置まで可能である。
ボール溝は必ずしも点対称でなくても、ボール溝の両側が互いに水平面に直交するボール溝中心軸回りに同じ回転方向に変化するような形状であればよい。例えば、図8は本発明の第五の実施の形態を示す水平移動部品の模式図であり、(a)は下案内部の平面図、(b)は上案内部の底面図、(c)は上下案内部の中立位置での水平移動部品の平面図、(d)は上案内部が右横方向に移動したときの平面図、(e)は上案内部が左横方向に移動しボール溝端にボールが位置したときの平面図である。図8(a)、(b)に示すように第五の実施の形態においては、第二の実施の形態のボール溝44,45と第四の実施の形態のボール溝85を半分づつ中心Cより互いに接続したものである。前述したと同様なものについては同符号を付している。
図8(a)に示すように、下案内部96の上面96aには、線状のボール溝98は、図でみて左より、第二の直線部45、直線部44、溝中心C、曲線部85が順に形成されている。また、図8(b)に示すように水平移動部品91の上案内部97の下面97aには、線状のボール溝99が下案内部の線状のボール溝98と同形状に形成されている。このような形状であれば、図8(c)の中央位置状態、(d)の右移動時、(e)の左移動時の状態に示す如く、一軸方向に移動可能に交差角を変えながら水平移動できる。しかし、免震用としては、左右方向で摩擦力は同じである方がよいので、本発明の水平移動部品の実施の形態においては、ボール溝中心に対して点対称となるようにした(言い換えれば、線状のボール溝形状が点対称となるような中心位置を有するようにした)水平移動部品について説明した。
なお、簡単のために、上下案内部のボール溝が同形状の場合について説明したが、ボールの移動範囲内でボール溝が同形状であればよく、例えば図8の符号90の点線で示すように、一方側のボール溝をさらに延長するなどしてもよい。また、設計、解析、製造等の簡単のため、線状のボール溝形状を点対称、同形状としたが、移動方向を一軸となるようにさせて線状のボール溝が互いに交差角をもつようにすれば、水平移動部品として成立することはいうまでもない。
次に、例えば、第二の実施の形態で示した水平移動部品41を用いた免震装置について図を参照して説明する。図9の(a)は下プレートの平(上)面図、(b)は側面図、(c)は底面図、図10の(a)は中間プレートの平(上)面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は背面図、図11の(a)は上プレートの平(上)面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。また、図12の(a)はボールが中立位置時の本発明の免震装置の実施の形態を示す免震装置の斜視図、(b)は平面図、図13の(a)は中間(又は上)プレートが図でみて横(右)方向に移動したときの免震装置の斜視図、(b)は平面図、図14の(a)は上プレートが図でみて縦(上)方向に移動したときの斜視図、(b)は平面図、図15の(a)は図でみて下プレートが横(右)方向に移動し、上プレートが縦(上)方向に移動したときの免震装置の斜視図、(b)は平面図である。なお、図13においては、上プレート下面と中間プレート上面については記載していない。また、図14においては、下プレートと中間プレートの下面については記載していない。
図12乃至15に示すように本発明の免震装置121は前述した水平移動部品41を中間プレート124の上側に4組、下側に4組、計8組を配置したものである。本実施例免震装置121は免震されるサーバーや美術品が載置される上プレート122と、固定床等の基台に取付固定される下プレート123と、上プレートと下プレート間にそれぞれ水平移動部品41を構成する線状のボール溝が上下面に設けられた中間プレート(部材)124と8個のボール40とから構成されている。
図9に示すように、四角形の下プレート123の上面123a(前述した図5に示す下プレート42の上面42aに相当)の四隅に線状のボール溝43、43′が左右対称となるように彫られている。また、中央部には取付、取外し可能なT字断面のガイド101が図でみて横方向に複数のボルト200で取り付けられている。線状のボール溝43、43′は中心Cを通る直線部44、44′と直線部のストロークエンド44a近傍で折れ曲がった第二の直線部45、45′が両側に形成されている。直線部44、44′又は第二の直線部45、45′はそれぞれボール溝43、43′の中心Cを中心点として点対称にされ、第二の直線部は中心側に戻ることなく外方に向かって延びている。ここで、直線部44、44′はガイド101又はガイド垂直軸に対して対称に4カ所、ガイドに沿った方向(縦方向)に対してそれぞれ±θ/2の角度となるように斜めに配置されている。
図10(c)に示すように、四角形の中間プレート124の下面124b(前述した図5に示す上プレート52の下面52aに相当)の四隅に線状のボール溝53、53′が彫られている。また、中央部には逆T字断面のガイド溝103が図でみて横方向に設けられ、線状のボール溝53、53′は直線部54、54′がガイド溝103又はガイド溝に直角方向に対して対称に4カ所、ガイド溝に沿った方向(縦方向)に対して±θ/2の角度となるように斜めに配置されている。即ち、中間プレートの下面124bの線状のボール溝53、53′は図9(a)に対しては左右を逆にしたものとなっている。これは、下プレートの上面と中間プレートの下面とを互いに向き合わせた時に、同じ形状同士(43と53、43′と53′)が向き合うようにするためである。
図10(a)に示すように、四角形の中間プレート124の上面124a(前述した図5に示す下プレート52の上面52aに相当)の四隅に線状のボール溝153、153′が彫られている。また、中央部には逆T字断面のガイド溝102が図でみて縦方向に設けられている。上面124aの形状は、下面124bを上面になるように180°ひっくり返し、そのまま90°回転させたものであり、上下とも各面からみて同形状とされている。
さらに、図11(c)に示すように、四角形の上プレート122の下面122b(前述した図5に示す下プレート42の上面42aに相当)の四隅に線状のボール溝143、143′が彫られている。また、中央部には取付、取外し可能なT字断面のガイド104が図でみて縦方向に設けられている。上プレート122は前述した下プレートと全く同じものであるが、下プレートと対向するように配置されると共に下プレートとは互いに90°回転させている。即ち、上プレートは下プレートを180°ひっくり返して90°回転させたものである。また、線状のボール溝43と143、43′と143′、53と153、53′と153′は同形状であり、かつ143と143′、153と153′は互いに線対称である。従って、下プレートと中間プレート、中間プレートと上プレートとは一方を90°回転させれば上下対称となる。
図9乃至11に示すように、ガイド101、104のT字断面の先端の幅105は、ガイド溝102、103の底部の溝幅106より若干小さく、開口幅107より広い幅にされ、互いに嵌合させることにより摺動可能にされている。また、上下方向に対しては隙間が設けられある程度上下方向に移動できるが、上下方向には互いに外れないようにされている。また、図示しない上下ボール溝43、43′、53、53′、143、143′、153、153′の底部の深さは両端部から徐々に深くなり、中央部の底部の深さが最も大きくされ、自然復帰するようにされており、ボールの動きに対してプレート間が広がるようにされている。このため、ボール40が中央位置Cでは、ガイドの先端108と、ガイド溝の底109とが触れない程度に接近するように寸法にされており、ボール40がボール溝端45a,55aに達したときは、ガイド又はガイド溝によりプレートが互いに離れる側には広がらないような寸法にされている。
かかる形状の水平移動部品を、図12(a)の上半分のように、まず中間プレートを床上において、ガイド101を未取付状態で、それぞれの線状のボール溝43と53、43′と53′を互いに対向させて、ボール溝のほぼ中心にボール40が位置するようにして、中間プレート124、ボール40、上下逆さにした下プレート123を積み上げる。この状態で、ガイド101を下プレート123又はガイド溝102に差し込み、ガイドを下プレート123にボルト200で固定する。この状態で上下ひっくり返し、図12(a)の下半分に示すように配置する。次に、ガイド104を未取付状態で、それぞれの線状のボール溝143と153、143′と153′を互いに対向させて、ボール溝のほぼ中心にボール40が位置するようにして、中間プレート124、ボール40、上プレート122を積み上げる。この状態で、ガイド104を上プレート122又はガイド溝103に差し込み、ガイドを上プレート123にボルト200で固定する。
これにより、図12に示すように、容易に免震装置121として組み立てられ、線状のボール溝43と53、43′と53′、143と153、143′と153′間にボール40がそれぞれ滑り回転可能に狭持され、4個の水平移動部品がそれぞれ上プレート122と中間プレートの上側124a間、下プレート123と中間プレートの下側124b間に形成され、ガイド101,104又はガイド溝102,103に沿って各プレート122,123,124が水平方向へ相対運動可能になる。
かかる構成の免震装置121において、図12でみて横(右)方向に上プレート123を移動させた場合について述べる。上プレート122が右に力を受けると、図13に示すように、上側のガイド104又はガイド溝103により、上プレートと中間プレート124とは移動できない。そこで、下側のガイド101又はガイド溝102に沿って上プレート122と中間プレート124とが一体になって右方に動く。また、左方向にも同様に移動できる。このとき線状のボール溝43と53、43′と53′143と153、143′と153′の直線部44と54、44′と54′では互いに交差角θで交差しているので、ボール40は転がり、滑り運動をし、あらかじめ想定した地震の揺れに対して有効な所定の摩擦係数、摩擦力を得ることができ載荷物を地震から守る。
さらに、大きな力を受けると、ボール40は直線部44,54、44′,54′を越え、第二の直線部45,55、45′,55′に達する。このとき、第二の直線部も交差しており、その交差角θ2はθより大きな値となり、直線部での摩擦係数、摩擦力より大きな摩擦係数、摩擦力を得られるので、予想よりも過大な地震の揺れに対応することができる。さらに、大きな揺れの場合はボール40はボール溝端45a,55a、45a′,55a′に達する。さらに大きな揺れの場合は、ガイド溝102,103に嵌合するガイド101,104の働きにより、ボール40をプレート間に挟み込むので、ボール溝43,53、43′,53′、143と153、143′と153′からボール40が飛び出したりすることを防ぐ。
次に、図12でみて縦(上)方向に上プレート122を移動させた場合について述べる。上プレート122が上に力を受けると、同様に、図14に示すように、縦方向のガイド104又はガイド溝103に沿って、上プレート122は中間プレート124に対して上方に動くことになる。従って、上プレート122が上方に移動することとなる。また、同様に下方向にも移動できる。中間プレート124と下プレート123は横方向ガイド101又はガイド溝102により縦方向には互いに相対移動できない。線状のボール溝43,53,143,153、43′,53′,143′,153′の直線部44,54、44′,54′では互いに交差角θで交差し、所定の摩擦係数、摩擦力を得られる。なお、作用については前述した横方向と同様であるので説明を省略する。
このように、上プレート122と下プレート123とは、中間プレート124を挟んで互いに90度方向に揺動することができるので、図15に示すように、上プレート122と下プレート123とは水平方向に揺動可能とされ、地震等の揺れに対する免震装置として有効に働くものとなる。特に本実施例ではボール溝の交差角θを適宜選択でき、さらに交差角を変化できるので、所望の摩擦係数を容易に得られるばかりでなく、予想より過大な地震にも対処でき種々の載荷物、地域、場所に幅広く活用できるものとなった。
なお、実施の形態においては、ボール溝を直接プレートに加工したが、ボール溝を別部材としてプレートに取り付けるようにしてもよい。また、本実施の形態では、水平移動部品が第二の実施の形態である場合について述べたが、他の実施の形態の水平移動部品を用いても同様である。また、一つの免震装置に用いる水平移動部品は同じ形状のものでなく、異なる形態のものを組み合わせてもよい。ガイドは実施の形態に限らず、水平方向の一軸に動かすものであればよい。また、ボールの飛び出し防止を別の機構で設けてもよい。また、ボール、ボール溝、プレート等の材質は、用途、荷重、振動、作動条件等により、鉄、鋼等の他、アルミ合金等の非鉄合金、樹脂、セラミックス等を適宜選択組合せればよい。
また、本実施の形態では二軸方向移動する場合について述べたが、上又は下プレートと中間プレートを一組とすれば一軸の水平移動装置又は免震装置となる。例えば引き出しテーブルや壁際のタンス、什器等の水平移動装置又は免震装置に利用できる。さらに、本実施の形態では、免震装置に使用した場合について述べたが、搬送装置、一軸テーブル、二軸テーブル、ディスプレー用テーブル、引き出しテーブル等の水平移動装置として適用できることはいうまでもない。また、水平移動装置として用いる場合は、例えば、中心部、両端部で交差角θの交差部を与え、中心部と端部との間の交差角を0°あるいはθより小さくして、両端、中央ではある程度抵抗を加え自走しないようにして、その間は摩擦を低くして移動をし易くするような位置決め装置用の水平移動部品とする等種々の形態が可能である。