JP2006305660A - 燃焼式作業工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 燃焼式作業工具における燃焼ガスの冷却効率を高め、ピストンを初期位置に確実に戻すことができる技術を提供する。
【解決手段】 本発明の燃焼式作業工具101は、燃焼室121,122と、燃焼室121,122に連接されたシリンダ153と、シリンダ153内に摺動可能に収容されたピストン155と、を有し、燃焼室121,122で燃料が燃焼することによって生じた燃焼圧力によりピストン155を前進移動させて所定の加工作業を遂行する。燃料の燃焼後において、燃焼室内の燃焼ガスの冷却に伴い発生する当該燃焼室121,122内の負圧により当該燃焼室121,122内に外部の空気を導入するとともに、当該導入された空気によって燃焼ガスを冷却する構成とした。
【選択図】 図4

Description

本発明は、可燃性ガスを燃焼させた際に生ずる高圧力(衝撃力)を利用して所定の加工作業を遂行する作業工具、すなわち燃焼式作業工具におけるピストンの引き戻し技術に関する。
いわゆる燃焼式作業工具に関し、釘打機やタッカ等の作業工具の駆動源としてピストン・シリンダ式の内燃機関を用いた具体例が、特開2003−136424号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1では、燃焼室とシリンダの間に流れ絞り部材を設け、燃焼室内で燃焼した可燃性ガスが膨張し、シリンダ内に流れ込む際に攪拌流れを発生させ、当該攪拌流れによる強制対流でシリンダを効率良く冷却できるようにしてピストンの戻り時間を短縮する構成としている。
上記の特許文献1に開示された技術は、シリンダ内に発生させた強制対流により、当該シリンダ内の燃焼ガスとシリンダ内壁との間での熱伝達率を向上させ、これによりシリンダ内の燃焼ガスを冷却する構成としたものであるが、冷却効率の点で、なお改良の余地がある。
特開2003−136424号公報
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、燃焼式作業工具における燃焼ガスの冷却効率を高め、ピストンを初期位置に確実に戻すことができる技術を提供することを目的とする。
上記課題を達成するため、特許請求の範囲の各請求項に記載の発明が構成される。
請求項1に記載の発明によれば、燃焼室と、燃焼室に連接されたシリンダと、シリンダ内に摺動可能に収容されたピストンと、を有し、燃焼室で燃料が燃焼することによって生じた燃焼圧力によりピストンを前進移動させて所定の加工作業を遂行する燃焼式作業工具が構成される。燃焼室には、燃料が噴霧状に供給されて空気と混合され、いわゆる可燃性ガス燃料が生成される。可燃性ガス燃料を点火装置によって燃焼させると、燃焼室内の可燃性ガス燃料の燃焼作用によって生じた燃焼圧力でピストンが先端側へと移動し、これにより所定の加工作業を遂行する。「所定の加工作業」としては、典型的には、釘やステープル等を被加工材に打込むための作業がこれに該当する。
本発明における燃焼式作業工具は、特徴的構成として、燃料の燃焼後において、燃焼室内の燃焼ガスの冷却に伴い発生する当該燃焼室内の負圧により当該燃焼室内に外部の空気を導入するとともに、当該導入された空気によって燃焼ガスを冷却する構成としている。なお本発明における「負圧」とは、大気圧よりも低い圧力をいう。また「外部の空気を導入する」態様としては、燃焼式作業工具の内部空間から空気を導入する態様、燃焼式作業工具の外側の大気中から空気を導入する態様のいずれも好適に包含する。燃焼式作業工具による加工作業時において、燃焼室内における可燃性ガス燃料の燃焼作用でピストンが前進移動されると、その後、燃焼室内の燃焼ガスが冷却することに伴い当該燃焼室内に負圧が発生し、この負圧によりピストンが初期位置に後退動作される。本発明によれば、燃焼室内に燃焼ガスの冷却による負圧が生じたとき、当該負圧を利用して外部の空気を燃焼室内に導入し、この導入された空気によって燃焼ガスを冷却する構成である。燃焼室内に導入された空気は、当該燃焼室内の燃焼ガスに直接触れることで冷却する。この場合、例えば燃焼室の壁面に近い周辺領域と壁面から離れている中央領域とでは燃焼ガスに温度差が存在することから、当該温度差を解消するような態様で空気を導入することが好ましい。本発明によれば、燃焼室内の燃焼ガスが効率良く冷却されることになり、この燃焼ガスの冷却により生ずる負圧によってピストンの初期位置への後退動作を確実に、あるいは素早く行うことが可能となる。
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の燃焼式作業工具において、外部の空気が、燃焼室の中央領域に導入される構成としている。燃焼室内における燃焼ガスは、燃焼室の壁面に近い周辺領域では当該壁面との間での熱伝達によって効率的に冷却されるが、壁面から離れた中央領域では冷却され難い。本発明によれば、燃焼室内の中央領域に空気を導入する構成としたことによって、主として壁面との熱伝達による冷却作用が及び難い中央領域における燃焼ガスを冷却できる結果、当該燃焼ガスをより効率的に冷却し、ピストンを初期位置に確実に戻すことが可能となる。
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の燃焼式作業工具において、燃焼室に燃料を供給する燃料供給装置を有し、燃焼室への空気の導入は、燃料供給装置の燃料供給経路を通して行う構成としている。本発明によれば、燃焼室に燃料を供給する燃料供給装置を利用して燃焼室に対する空気の導入を行うことができるため、合理的な空気の導入方式が構築される。また燃料供給と空気の導入を1つの装置で兼用できるため、燃料供給と空気の導入を個別的に行う構成に比べて、燃焼式作業工具の構造の簡素化、小型化、コストの低減化等を図る上で有利となる。
本発明によれば、燃焼式作業工具における燃焼ガスの冷却効率を高め、ピストンを初期位置に確実に戻すことができる技術が提供されることとなった。
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態につき、図面を参照しつつ、詳細に説明する。本発明の第1の実施形態に係る釘打機101の全体構成が図1〜図3に示され、また燃焼室周辺部が図4に拡大図として示されている。釘打機101は、本発明における「燃焼式作業工具」の一例であり、図1〜図3に示すように、ハウジング103、射出部110、ハンドグリップ105、便宜上図示しないマガジンにより、その外郭が形成されている。ハウジング103内には、第1燃焼室121、第2燃焼室122、点火装置131、燃料噴射装置141、および駆動部151が収容される。すなわち、本実施の形態に係る釘打機101は、第1燃焼室121と第2燃焼室とからなる複数の燃焼室を有する構成とされる。なお以下においては、射出部110側を前側(図1〜図3における左側)、その反対側(図1〜図3における右側)を後側として説明する。
本実施の形態では、第1燃焼室121につき、後述する混合気の点火領域として使用するとともに、第2燃焼室122につき、釘打込み作業に必要な大きな燃焼エネルギを得るための領域として使用するよう構成されている。
第1燃焼室121は、当該第1燃焼室121を第2燃焼室122と区画するための外形が円形の隔壁部123と、第2燃焼室122と反対側に位置する概ね平坦状の端部壁面を有する円形のスライドエンドプレート129とによって囲まれて形成されている。すなわち、隔壁部123は、外周側には平坦面部123aを備え、中央部側には第2燃焼室122側に膨出する球面状部分123bを備えた構成とされており、平坦面部123aがスライドエンドプレート129の端部壁面に密接状に接触されて固定されている。隔壁部123の球面状部分123bは、点火装置131の点火部を中心として概ね等径かつ半球状に形成されている。隔壁部123の球面状部分123bには多数の連通孔125が穿設状に形成されている。この連通孔125を介して第1燃焼室121と第2燃焼室122とが連通状態とされる。すなわち、点火部から各連通孔125までの距離がそれぞれ等距離となるように設定され、第1燃焼室121内の混合気が点火装置131の点火部によって点火されて燃焼される際、当該第1燃焼室121内の燃焼面(火焔面)が各連通孔125に概ね同時に到達するよう構成されている。なお点火部は、互いに所定の間隙を隔てて対向状に配置される2つの電極133a,133bによって構成されるが,このことについては後述する。
第2燃焼室122は、駆動部を構成するピストン155、円筒形のスライドスリーブ127およびピストン155と対向状に配置される隔壁部123によって囲まれる空間として形成される。なおピストン155の頂面(隔壁部123との対向面)は、隔壁部123の球面状部分123bに対応する相似形状に形成された球面状凹部155aとされている。隔壁部123とスライドエンドプレート129は、周方向に配置される複数のネジ124によって相互に締結固定され、スライドスリーブ127とスライドエンドプレート129は、周方向に配置される複数のネジ128によって相互に締結固定されており、これら3つの部材によって前端が開放された筒状の燃焼室壁126が構成されている。すなわち、スライドスリーブ127によって第2燃焼室122の周壁面を構成し、隔壁部123によって第2燃焼室121の端部壁面および第1燃焼室121の球面状壁面をそれぞれ構成し、スライドエンドプレート129によって第1燃焼室121の端部壁面を構成している。
燃焼室壁126は、釘打機101の長軸方向(前後方向)への移動が可能とされ、コンタクトアーム111と連結されている。そしてコンタクトアーム111は、付勢手段としてのスプリング(図示省略)によって常時には先端側(前方)へと付勢されており、燃焼室壁126も前方へと移動されている。この状態が図1に示す釘打機101の初期状態であり、第2燃焼室122の容積が零または零に近い状態まで減少されている。
一方、釘打機101を被加工材W(図2参照)に向かって移動させるとともにコンタクトアーム111を被加工材Wに押し付けると、当該被加工材Wにて押されたコンタクトアーム111は、スプリングの付勢力に抗して反対方向(後側)へと移動される。このコンタクトアーム111の後退動作は、スライドスリーブ127に伝達される。このため、燃焼室壁126が後述する大気室171の端部壁面を構成する固定エンドプレート175側へと移動され、スライドエンドプレート129の端部が当該固定エンドプレート175に接触する。この状態が図2に示されている。
燃焼室壁126が前後方向に移動することに伴い第2燃焼室122の容積は、減少あるいは増加する。このように、第2燃焼室122は、燃焼室壁126の移動に伴い容積が変化する構成とされるが、相互に固定されて一体に移動する隔壁部123とスライドエンドプレート129によって形成される第1燃焼室121は、容積が変化しない定常的な容積を有する構成とされる。すなわち、燃焼室は燃焼室壁126が前後に移動しても容積が変化しない第1燃焼室121と、容積が変化する第2燃焼室122とから構成されている。
燃焼室壁126におけるスライドスリーブ127の前端部(開口端側)には、内周径が小径とされた小径部127aが形成されている。この小径部127aは、燃焼室壁126が後端部に位置しているときには、その内周面が後述するシリンダ153の端部外周に形成された円形のフランジ部153aと外周面にOリング154を介してシールすることで第2燃焼室122を密封する構成とされる。そして燃焼室壁126が前方へと移動されたときには、小径部127aは、移動開始後、間もなくフランジ部153a(Oリング154)から離れ、Oリング154の外周と、スライドスリーブ127の内周面との間に間隙127bが生じ、この間隙127bを介して第2燃焼室122がハウジング103の内部空間104(ハウジング103とシリンダ153外周面間の間隙であり、釘打機101の外部に連通される)に連通される構成とされる。
スライドエンドプレート129を挟んで第1および第2燃焼室121,122の反対側(後側)には、大気室171が形成されている。大気室171は、円筒状の固定スリーブ177、当該固定スリーブ177内に摺動自在に嵌入されるスライドエンドプレート129および当該スライドエンドプレート129に対向状に配置される固定エンドプレート175によって囲まれる空間として形成される。なお固定エンドプレート175と固定スリーブ177は一体に形成されている。固定エンドプレート175によって大気室171の端部壁面が構成され、固定スリーブ177によって大気室171の周壁面が構成され、これら両部材によって前端部が開放された筒状の大気室壁173が構成されている。固定スリーブ177とスライドエンドプレート129の摺動面は、Oリング179を介してシールされている。
固定エンドプレート175は、外周縁部がハウジング103の後端部に配置される多数の通気孔106bを有するハウジングキャップ106とともに、当該ハウジング103に図示省略のネジによって共締めによって締結されている。このように、大気室171は、第1および第2燃焼室121,122から分離されかつ固定された空間であって、燃焼室壁126の移動、直接的にはスライドエンドプレート129の移動に伴い容積が変化する空間として設定される。すなわち、スライドエンドプレート129が、第2燃焼室122の容積を減少させる方向へ移動(前進)するときには、大気室171の容積が増大し、第2燃焼室122の容積を増大させる方向へ移動(後退)するときには、大気室171の容積が減少する構成とされる。そして大気室171の最大容積は、第2燃焼室121の容積が最大とされたときの第1および第2燃焼室121,122の総容積よりも大きく設定されている。
大気室壁173における固定エンドプレート175には、当該固定エンドプレート175とハウジングキャップ106によって囲まれる空間106a(実質的には大気であり、以下、この空間106aについては、単に大気という)と大気室171とを連通する吸気口(図示省略)が設けられ、この吸気口には、吸入弁(図示省略)が設けられている。吸入弁は、大気の空気を大気室171に吸入するべく吸気口を開閉する逆止弁として構成され、大気室171側に配置されている。吸入弁は、大気室171の室内と室外との圧力差に基づき大気室171側に弾性変形することで大気から大気室171への空気の流れを許容し、その逆の流れを規制する構成とされる。
スライドエンドプレート129には、大気室171と第1燃焼室121とを連通する吸気口(図示省略)が形成され、この吸気口には、吸入弁(図示省略)が設けられている。吸入弁は、大気室171内の空気を第1燃焼室121に吸入するべく吸気口を開閉する逆止弁として構成され、第1燃焼室121側に配置されている。そして吸入弁は、第1燃焼室121と大気室171との圧力差に基づき当該第1燃焼室121側に弾性変形することで大気室171から第1燃焼室121への空気の流れを許容し、その逆の流れを規制する構成とされる。
また大気室壁173における固定エンドプレート175には、便宜上図示を省略するが、当該大気室171内に釘打機101の長軸方向に所定長さで突出する棒状のシール部材が設けられている。このシール部材は、燃焼室用の吸気口と対向するように配置されており、燃焼室壁126が後退端部(後端側ストロークエンド)に位置したときに、燃焼室用の吸気口内に嵌まり込むことで、当該吸気口を密封するとともに、嵌り込んだ状態では、前端面が吸入弁の背面(後面)に当接する構成とされる。
点火装置131は、点火用プラグ133および高圧電流を発生させる圧電素子(図示省略)を主体として構成される。点火用プラグ133の点火部を構成する一方の電極(陽極)133aは、第1燃焼室121の端部壁面を構成するスライドエンドプレート129の中央部に配置されている。点火用プラグ133の点火部を構成する他方の電極(陰極)133bは、スライドエンドプレート129の中央部から外れた位置に配置されるとともに、第1燃焼室121の中央部側へと延出され、一方の電極133aの先端(前端)に対し所定の隙間を置いて対向されている。
一方の電極133aは、固定エンドプレート175に設けた導電材料製(金属製)の導電部材135および電気配線136を介して圧電素子と電気的に接続される。一方の電極133aは、釘打機101の長軸方向に延びる棒状に形成されるとともに、その後端部がスライドエンドプレート129の後端面から所定の長さで突出されている。導電部材135は2枚の板が互いに対向するように形成されたU型金具として構成されるとともに、一方の電極133aの後端部に対して対向するように配置される。そして燃焼室壁126が前方または後方へ移動することに伴い一方の電極133aが導電部材135の板と板との間に挿入あるいは引き抜かれる構成とされる。すなわち、一方の電極133aは、燃焼室壁126が第2燃焼室122の容積を最大付近とする位置へ移動されたときには、導電部材135に接触することで電気的に接続されて点火を許容され、燃焼室壁126が第2燃焼室122の容積を減少する方向へ移動したときには、導電部材135から離間することで電気的接続が断たれて点火を規制される構成とされる。
導電部材135は、固定エンドプレート175に設けられた電気絶縁材料からなる保持部材137の保持孔137a内に配置されている。導電部材135の2枚の板は、前端側においてその対向間隔が一方の電極133aの外径よりもやや狭い間隔に設定され、これによって当該一方の電極133aと接触する導電部135aを構成している。そして接触部135aに一方の電極133aが挿入された状態では、当該電極133aを挿入方向と交差する方向から挟み込むように弾発力を作用する。これにより燃焼室壁126が後方へ移動されるとき、導電部材135の導電部135aは、燃焼室壁126が後退端(ストロークエンド)に接近した時点で電極133aの後端に接触し、その後、後退端に達するまで接触状態を維持する。なお、点火装置131の点火動作は、ハンドグリップ105に配置されたトリガ107の引き絞り操作によって圧電素子を変形させ、これにより発生した高圧電流を電極133a,133b間に放電させることで遂行される。また他方の電極133bはスライドエンドプレート129にボディアースされている。
燃料噴射装置141は、第1燃焼室121から隔壁部123を貫通して第2燃焼室122へと延在するパイプ状部材145を主体として構成され、当該パイプ状部材145には、各燃焼室121,122に臨む適所に燃料噴射孔143が穿設状に形成されている。なお燃料噴射装置141は燃料容器(燃料ボンベ)149に接続されて燃料の供給を受ける。燃料噴射装置141による燃料噴射量は、第1燃焼室121および第2燃焼室122の各実効容積に応じて個別に設定されている。燃料噴射装置141は、本発明における「燃料供給装置」に対応する。
燃料噴射装置141を構成するパイプ状部材145は、スライドエンドプレート129に固定されるとともに、一端(先端)側が第1燃焼室121を構成する隔壁部123の球面状部分123bの内周面に沿って延在するとともに、当該球面状部分123bの中心部を貫通して第2燃焼室122へと突出されている。そして球面状部分123bを貫通して第2燃焼室122内に突出されたパイプ状部材145の突出先端部145aには、第2燃焼室122内に燃料を斑なく噴射させるべく径方向(放射状)に貫通する複数の燃料噴射孔143が設けられている。燃焼室壁126が第2燃焼室122の容積を減少する方向へ移動するとき、パイプ状部材145の突出先端部145aは、ピストン155の頂面中央部に形成された格納空間155bに収容される構成とされ、これにより第2燃焼室122の容積が零または零に近い状態まで減少することが可能とされる。
なおパイプ状部材145の他端(基端)側は、スライドスリーブ127の外周面と固定スリーブ177の内周面との間を通って延在するとともに、燃料容器149から供給された燃料を導く燃料通路構成部材146の燃料供給通路147内に挿入されており、燃焼室壁126の移動に伴い燃料供給通路147内を摺動する構成とされる。なお燃料容器149からの燃料の供給は、コンタクトアーム111を被加工材Wに押し付けける動作に連動して遂行される構成とされる。上記の燃料通路構成部材146およびパイプ状部材145は、本発明における「燃料供給経路」に対応する。
燃料噴射装置141における燃料通路構成部材146には、第1および第2燃焼室121,122内に冷却用の空気を取り込むための空気供給部181が設けられている。空気供給部181は、大気中(ハウジング103の内部空間104)の空気を燃料供給通路147に導入する空気取入口183と、当該空気取入口183を開閉する逆止弁185とを主体に構成されている。逆止弁185は、大気の空気を燃料供給通路147に導入するべく空気取入口183を開閉する一方向弁として構成され、燃料通路構成部材146の内側に配置されている。逆止弁185は、燃料供給通路147の圧力、すなわち第1および第2燃焼室121,122の圧力と大気との圧力差に基づき燃料供給通路147側に弾性変形することでハウジング103の内部空間104から燃料供給通路147への空気の流れを許容し、その逆の流れを規制する構成とされる。
駆動部151は、ハウジング103内に収容されたシリンダ153と、このシリンダ153内に摺動可能に配置されたピストン155と、このピストン155に一体状に連接されたピストンロッド157を主体として構成される。ピストンロッド157の先端側は、射出部110内に配されて釘(図示省略)を前方に打ち出すための射出装置に連接されている。またシリンダ153内部の先端側には、高速駆動されたピストン155の衝撃を吸収緩和してピストン155を受け止めるためのクッションラバー159が適宜配置されている。さらにシリンダ153には、当該シリンダ153のボア153b内をハウジング103の内部空間104に連通する通気口114が設けられ、この通気口114は、図示省略の逆止弁で開閉される。なお逆止弁は、シリンダ153のボア153b内の気体が内部空間104に流出することを許容する一方、内部空間104の気体がシリンダ153のボア153b内に流入することを規制する一方向弁として構成されている。
マガジンは、釘打機101のハウジング103先端側に形成された射出部110に取り付けられ、相互に連接された多数の釘を収容するとともに、打込み対象となる釘を射出部110に臨ませる。そして射出部110の先端に前述したコンタクトアーム111が配される。コンタクトアーム111は、射出部110の長軸方向(すなわち釘打機101の長軸方向であって、図1〜図3では左右方向に相当する)につき、当該射出部110に対し相対的に摺動動作可能とされ、常時にはスプリングによって先端側(図1〜図3において左側)へと付勢されている。なお上記のスプリングは、前述したスライドスリーブ127の付勢手段を兼用する。
本実施の形態に係る釘打機101は上記のように構成される。次に当該釘打機101の作用について説明する。釘打機101は常には図1図に示す状態を初期状態としている。この初期状態では、スプリングの付勢力によって燃焼室壁126が前方へ移動されており、第2燃焼室122の容積が最小(零または零に近い状態)まで減少され、大気室171の容積が最大に増大されている。またピストン155が上死点に位置している。また点火用プラグ133の一方の電極133aが導電部材135から離間されており、当該電極133aに対する電気的接続が断たれてプラグの点火が規制されている。
かかる状態で、釘打機101を用いて釘の打込み作業を遂行するには、図2に示すように、まずコンタクトアーム111を被加工材Wに当接後、作業者が当該被加工材方向への押圧力を釘打機101に作用させる。するとコンタクトアーム111はスプリングによる付勢力に抗しつつ被加工材Wから離間する側へと後退動作する。コンタクトアーム111の後退動作により、当該コンタクトアーム111と連接された燃焼室壁126が後退動作する。この燃焼室壁126の後退動作により、第2燃焼室122の容積が増大されるとともに、大気室171の容積が減少される。そして、スライドエンドプレート129の外周後端部が大気室壁173の固定エンドプレート175の外周前端面に当接することで燃焼室壁126の移動が規制される。このとき、第2燃焼室122の容積が最大状態とされ、大気室171の容積が最小状態とされる。また第1燃焼室121の容積と第2燃焼室122の容積が所定の容積比に設定されることになる。
また燃焼室壁126が後退動作し、後退端に接近した時点で一方の電極133aが導電部材135に接触し、当該導電部材135および電気配線126を介して圧電素子と電気的に接続された状態となる。さらにまた、シール部材が燃焼室用の吸気口に嵌まり込んで封止(シール)するとともに、シール部材の先端が吸気弁の背面に当接する。
また燃焼室壁126の後退動作時において、当該燃焼室壁126が後退端に接近した時点で燃料容器149から燃料が供給され、当該燃料が燃料供給通路147、パイプ状部材145を経て給送され、当該パイプ状部材145に設けられた燃料噴射孔143から各燃焼室121,122に噴射される。この場合、本実施の形態においては、第1燃焼室121では、その後に遂行される点火時の着火効果を高めるべく、燃料が点火プラグの中心、すなわち点火部に向かって噴射される構成とされる。一方、第2燃焼室122では、燃料が燃料噴射孔143から第2燃焼室122の径方向に放射状に噴射される。第1および第2燃焼室121,122への燃料供給量は、各燃焼室121,122の容積に応じてそれぞれ設定されている。また噴射された燃料は、各燃焼室121,122内の空気と混合され、これにより各燃焼室121,122内は混合気で満たされる。なお燃料容器149から燃料が供給されたとき、燃料供給通路147内の圧力は、ハウジング103の内部空間104の圧力(大気圧)よりも高い。このため、逆止弁185による空気取入口183の閉止状態が保持され、燃料供給通路147内の燃料が空気取入口183から漏出することを防止する。
コンタクトアーム111の後退動作後、作業者がハンドグリップ105に設けられたトリガ107を引き絞り操作すると、第1燃焼室121に設けられた点火装置131による点火動作が遂行される。これらにより第1燃焼室121内における点火・燃焼動作が円滑かつ高効率で実現される。
点火装置131による点火動作がなされると、第1燃焼室121内に充填された混合気は点火部近傍領域より着火され、第1燃焼室121内の混合気の燃焼が開始される。混合気の燃焼作用は爆発的であり、当該混合気の燃焼面(火焔面)が非常に短い時間で隔壁部123へ到達する。このとき、本実施の形態では、隔壁部123につき、点火部を中心とする概ね等径の球面状部分123bとして構成しているため、点火部から発した混合気の燃焼面は、当該点火部に対して等半径とされた球面状部分123bへと概ね同時に到達する。このため、隔壁部123の境界面全体に渡って、第2燃焼室122の着火タイミングを各連通孔125で統一化することが可能であり、第2燃焼室122での燃焼開始タイミングを効果的にコントロールすることが可能とされる。
第2燃焼室122内に充填された混合気は、隔壁部123の表面全体領域より各連通孔125を経て同時的に着火され、第2燃焼室122内の混合気の燃焼が開始される。第2燃焼室122の容積は、第1燃焼室121の容積よりも大きく設定されており、第2燃焼室122内の混合気の燃焼により大きな燃焼圧力が発生する。これにより、ピストン155は、シリンダ153内を被加工材方向へと摺動状に移動動作(前進)されることとなる。
なおピストン155がシリンダ153内を摺動動作する際、当該摺動動作に伴ってピストンロッド157側のシリンダ153内部空間が縮小されていくが、かかる空間内の空気は、シリンダ153の先端側に設けた空気の放出口115を通じて外部(ハウジング103の内部空間104)に放出されるため、ピストン155の摺動動作を阻害することはない。また第1燃焼室121の燃焼時に当該第1燃焼室121内は、相当の高圧状態となるが、本実施の形態では、燃焼室用の吸気口内に差し込まれたシール部材によって吸入弁の背面を支持し、これにより吸入弁が燃焼時の高圧により変形あるいは破損することから保護し、当該吸入弁の耐久性を向上し、また第1燃焼室121内のガスが吸気口から大気室171に流出することを未然に防止することができる。
ピストン155がシリンダ153内を摺動動作するのに連動してピストンロッド157が被加工材方向へと直線状に移動し、これによって射出部110にセットされた釘が被加工材側へと高速で射出されて打込まれる。このときシリンダ153内を被加工材方向へ高速移動したピストン155は、クッションラバー159に当接し、その運動エネルギが吸収緩和されて停止する。すなわち、ピストン155は下死点に到達して停止する。なおピストン155の下死点への移動時において、当該ピストン155が通気口114を通過すると、第1および第2燃焼室121,122内に必要以上の圧力が発生している場合、すなわち余剰燃焼圧が発生しているときには、当該通気口114を通じて燃焼ガスが室外(ハウジング103の内部空間104)へと排出される。
釘の打込み作業が終了する段階では、第1および第2燃焼室121,122内に収縮冷却作用が生じる。これによって当該第1および第2燃焼室121,122内に負圧が発生し吸引作用が生じる。このため、ピストン155は被加工材Wから離間する側へと自動的に後退動作を開始する。この状態が図3に示される。
このとき、図3に示すように、第1および第2燃焼室121,122内の負圧と、ハウジング103の内部空間104の圧力(大気圧)との差によって、当該内部空間104の空気が空気供給部181の空気取入口183から逆止弁185を押し退けて燃料供給通路147内に流入する。当該燃料供給通路147に流入した空気は、パイプ状部材145を経て当該パイプ状部材145に設けられた燃料噴射孔143から第1および第2燃焼室121,122内に流出(噴出)される。このようにして第1および第2燃焼室121,122に流出された空気は、当該第1および第2燃焼室121,122内の燃焼ガスを冷却する。すなわち、第1および第2燃焼室121,122内に流出された空気によって燃焼ガスの冷却を促進するため、当該燃焼ガスの冷却に伴い生ずる負圧によりピストン155の初期位置への後退動作が確実に、かつ素早く行われることになる。なお第1および第2燃焼室121,122への空気の導入(取り込み)は、当該第1および第2燃焼室121,122内の圧力が内部空間104の圧力(大気圧)に近づいた時点あるいは等圧に達した時点で終わる。
また作業者が被加工材方向へと作用させていた釘打機101に対する押圧加重を解除することにより、ハウジング103側へ相対的に後退していたコンタクトアーム111が、スプリングの付勢力を介して前方(被加工材方向)へ移動する。コンタクトアーム111の前進動作に伴って、燃焼室壁126が前方(ピストン155側)へ移動する。これにより、燃焼室壁126のスライドスリーブ127の小径部127aがシリンダ153のフランジ部153aから離れ、当該スライドスリーブ127の内周面とフランジ部153aの外周面との間に間隙127bが生じ、第2燃焼室122が当該間隙127bを経て室外(ハウジング103の内部空間104)に連通される。
燃焼室壁126の前進動作により、図4に示すように、第2の燃焼室122の容積が減少されるとともに、スライドスリーブ127の内周面とフランジ部153aの外周面間の間隙127bを経て第2燃焼室122が室外と連通される。すると、第2燃焼室122内の排気ガスは、当該第2燃焼室122の容積が減少されることに伴い間隙127bを経て室外へと排出される。一方、燃焼室壁126の前進動作により、スライドエンドプレート129が固定エンドプレート175から離れ、それに伴い大気室171の容積が増大されるとともに、シール部材が燃焼室用の吸気口から抜け出し、当該吸気口を開放する。また一方の電極133aが導電部材135から離れ、電気的接続が遮断される。
大気室171内の容積が増大されると、それに伴い当該大気室171内の圧力が低下する。その結果、大気室171内の圧力と、ハウジングキャップ106内の大気圧との圧力差によって当該ハウジングキャップ106内の空気が大気室用の吸気口から吸入弁を押し退けて吸入される。このとき、燃焼室用の吸入弁は、燃焼室用の吸気口の周縁部に密着され、第1燃焼室121内の排気ガスが大気室171内に流出(漏出)することを防止する。そして燃焼室壁126が前進端(ストロークエンド)に達した時点で、第2燃焼室122の容積が最小(零)となり、当該第2燃焼室122内の排気ガスが室外へと排出され、一方大気室171の容積が最大となり、当該大気室171内には新鮮な空気が貯留される。すなわち、図1に示す初期状態に復帰する。
引き続いて釘打ち作業を遂行するべくコンタクトアーム111を被加工材Wに押し付けると、前述したように、燃焼室壁126が後退動作される。この燃焼室壁126の後退動作により、第2燃焼室122の容積が増大されるとともに、大気室171の容積が減少されるため、当該大気室171内の空気が圧縮されて燃焼室用の吸気口から吸入弁を押し退けて第1燃焼室121へと強制的に押し込まれる。この空気の第1燃焼室121への強制押し込みによって、当該第1燃焼室121内に残留する排気ガスは、連通孔125を通って第2燃焼室122へと押し出され、さらには間隙127bを経て室外へと排出される。すなわち、第1燃焼室121内に残留する排気ガスは、大気室171から流入する空気によって第2燃焼室122へと押し出された後、室外へと放出され、第1および第2燃焼室121,122の、いわゆる掃気が遂行されることとなる。この場合、隔壁部123の球面状部分123bには多数の連通孔125が配置されているため、第2燃焼室122内の全体にわたって空気が概ね均等に流れ込む。かくして、第1および第2燃焼室121,122内において、排気ガスから空気への入れ替えが円滑になされ、排気ガスの残留量が減少される。その結果、特に釘打ち込み作業を連続的に行うような場合においては、次回の第1および第2燃焼室121,122に噴射される燃料と空気との混合比の適正化を図る上で有効となる。
燃焼室壁126が後退端に達したとき(図2に示す状態)には、第1および第2燃焼室121,122内は、新鮮な空気によって満たされる。この場合、本実施の形態では、大気室171の最大容積を、第1および第2燃焼室121,122の最大総容積よりも大きく設定してある。このため、第1および第2燃焼室121,122内には、それらの容積を上回る容量の空気が送り込まれることとなり、第1および第2燃焼室121,122内の排気ガスを確実に室外に排出し、新鮮な空気と入れ替えることができる。
また燃焼室壁126が後退端に達したときは、電極(陽極)133aが導電部材135に挿入し、当該導電部材135および電気配線126を介して圧電素子と電気的に接続され、点火動作が許容される。またシール部材が燃焼室用の吸気口に差し込まれて当該吸気口をシールするとともに、吸入弁の背面に当接することで当該吸入弁に対する高圧の作用に備える。またスライドスリーブ127の小径部127aの内周面がシリンダ153のフランジ部153aの外周面にOリング154を介して摺接し、間隙127bを閉鎖する。これにより第2燃焼室122が密閉空間とされる。かかる状態で、トリガ107を引き絞り操作すると、その後は上述した動作が繰り返され、釘打ち作業が遂行されることになる。
上記のように、本実施の形態によれば、容積が変化しない第1燃焼室121と、容積が変化する第2燃焼室122とを有する燃焼室構造において、燃焼室壁126を前後に移動することによって、大気室171の容積を変化させ、第2燃焼室122内の排気ガスを室外へ排出した後、大気室171内に取り込んだ空気を第1燃焼室121内に強制的に送り込み、これによって第1燃焼室121内に残留する排気ガスを当該第1燃焼室121から第2燃焼室122を経て室外へ排出する構成としている。その結果、第1燃焼室121の容積を変化させることなく、第1および第2燃焼室121,122内の排気ガスを効率的に室外へ排出し、当該第1および第2燃焼室121,122内を新鮮な空気で満たすことが可能となる。
すなわち、本実施の形態では、燃焼室が第1および第2燃焼室121,122から構成される釘打機101において、混合気の燃焼効率を高めるべく、第1燃焼室121に点火用プラグ133を設けるとともに、当該第1燃焼室121内で点火部によって点火された混合気の燃焼面が隔壁部123の連通孔125に概ね同時に到達するように、隔壁部123が点火部を中心とする等半径の球面状部分123bを有する構成としている。このような構成では、第1燃焼室121の容積を変化(減少)させて排気ガスを排出することが困難となるが、本実施の形態によれば、第1燃焼室121から第2燃焼室122への火炎噴射を効率良く行うことで混合気の燃焼効率を高めるべく、第1燃焼室121を構成する隔壁部123の形状を半球面状に形成するという構成を維持しつつ排気ガスの排出作用を効果的に遂行することができる。
この場合、大気室171の最大容積を第1および第2燃焼室121,122の総容積よりも大きく設定してあるため、第1および第2燃焼室121,122にそれらの容積を上回る容量の空気を送り込むことによって、排気ガスと空気との入れ替えを確実に行うことができる。釘打ち作業を連続して遂行するような場合、すなわち短時間のうちに第2燃焼室122の容積の減少、増大が繰り返されるような場合、当該第2燃焼室122から排出された排気ガスがその出口周辺部に存在している可能性がある。そしてこの排気ガスが第2燃焼室122の容積が増大されるときに当該燃焼室に再び吸入される、すなわち逆流する可能性がある。本実施の形態では、第1および第2燃焼室121,122にそれらの容積を上回る容量の空気を送り込む構成とすることによって、いわゆる逆流防止手段を構成しているため、排気ガスの当該燃焼室への逆流を確実に防止することができる。また本実施の形態では、第1燃焼室121を容積が変化しない定常的な構成としたことにより、当該第1燃焼室121内の中央部に点火装置131あるいは燃料供給用のパイプ状部材145を配置設定することができる。これにより、第1燃焼室121に発生した火炎(可燃性ガスの燃焼面)が第2燃焼室122へ均等かつ効率良く噴射させることが可能となる。
ところで、燃焼室壁126の先端方向への前進動作は、作業者の、釘打機101に対する被加工材方向への押圧加重の解除時期に支配されるものであり、そして燃焼室壁126の前進動作が開始される前の段階で、ピストン155が後退動作を終了して前進動作開始前の初期位置に復帰されていることが必要である。
本実施の形態においては、釘の打込み作業が終了した段階で、第1および第2燃焼室121,122内の燃焼ガスが冷却することに伴い発生する当該第1および第2燃焼室121,122内の負圧を利用して空気供給部181から第1および第2燃焼室121,122内に空気を導入する(取り込む)構成としている。このことによって第1および第2燃焼室121,122内の燃焼ガスを効率良く冷却することができる。第1および第2燃焼室121,122内の燃焼ガスは、燃焼室121,122の壁面に近い領域では当該壁面との間での熱伝達によって効率的に冷却されるが、壁面から離れた中央領域では冷却され難い。本実施の形態によれば、燃焼室121,122の中央領域に空気を導入する構成であり、このことによって、壁面との熱伝達による冷却作用が及び難い中央領域の燃焼ガスを効率良く冷却することができる。
また本実施の形態では、第1燃焼室121については、当該第1燃焼室121の壁面に沿って配置されたパイプ状部材145の燃料噴射孔143から第1燃焼室121の中央に向って空気を勢いよく流出させる構成としている。また第2燃焼室122については、パイプ状部材145を当該燃焼室122の中心を通って長軸方向に延びる中心線上に位置するように配置し、その突出先端部145aに設けた燃料噴射孔143から第2燃焼室122の半径方向へと勢いよく流出させる構成としている。このようにして燃料噴射孔143から勢いよく流出する空気によって第1および第2燃焼室121,122内の燃焼ガスが攪拌され、中央領域と壁面に近い周辺領域との間で燃焼ガスが入れ替わることになり、壁面との間での熱伝達率が増大する。すなわち、本実施の形態によれば、第1および第2燃焼室121,122内に導入された空気による燃焼ガスの直接の冷却と、燃焼ガスを攪拌して第1および第2燃焼室121,122の壁面との間での熱伝達率を増大させることによる冷却とが行われることで、燃焼ガスを効率良く冷却することができる。その結果、当該燃焼ガスの迅速な冷却に伴い生ずる負圧によりピストン155が初期位置へ確実かつ素早く後退動作し、作業者による連続した釘打ち作業に対応することができる。
また本実施の形態では、第1および第2燃焼室121,122への冷却用空気の導入手段として燃料噴射装置141を利用したことによって、合理的な空気の導入方式を構築できる。また燃料供給と冷却用空気の導入を1つの装置で兼用できるため、燃料供給と空気の導入を個別的に行う構成に比べて、釘打機101の構造の簡素化、小型化、コストの低減化を図る上で有利となる。
なお燃焼室121,122内に空気が過剰に取り込まれたような場合には、燃焼室121,122内に発生する負圧が所定の値まで達せず、むしろピストン155の後退速度を低下させてしまう可能性がある。よって、空気の導入量については、この点を考慮して設定する必要がある。
(本発明の第2の実施形態)
次に第2の実施形態につき図5を参照して説明する。この第2の実施形態では、ピストン155の前進動作による釘打ち終了段階において、第1および第2燃焼室121,122内に生ずる負圧を利用して行う第1および第2燃焼室121,122内への冷却用空気の導入を、ピストン155に設けた小孔191によって行う構成としたものであり、この点を除く釘打機101の各部の構成については、前述した第1の実施形態と同様である。したがって、図5において、主要な構成部材につき第1の実施形態と同一符号を付してその説明を省略する。本実施の形態では、ピストン155の球面状凹部155aに適数個の小孔191を設け、当該ピストン155の前後の圧力差によって、冷却用の空気がピストン155の後側のボア153b中央部、すなわち第2燃焼室122の中央領域に向って流出(噴射)する構成としている。
ピストン155の前進動作による釘の打込み作業が終了した段階において、第2燃焼室122内の燃焼ガスの冷却により当該第2燃焼室122内に負圧が生ずると、ピストン155を挟んでその前後に圧力差が生じ、この圧力差によって小孔191から第2燃焼室122内の中央領域に向って空気が流出する。このようにして第2燃焼室122内に導入された空気は、当該第2燃焼室122内の燃焼ガスを冷却する。また第2燃焼室122に流出した空気は、隔壁部123の連通孔125を通って第1燃焼室121へと流入することで当該第1燃焼室121内の燃焼ガスを冷却する。また第2燃焼室122内に流出した空気は、当該第2燃焼室122内の燃焼ガスを攪拌し、中央領域と壁面に近い周辺領域との間で燃焼ガスを流動させ、壁面との間での熱伝達率を増大させる。
このように本実施の形態の場合によれば、前述した第1の実施形態と同様、第1および第2燃焼室121,122内の燃焼ガスを効率良く冷却することができ、その結果、当該燃焼ガスの迅速な冷却に伴い生ずる負圧によりピストン155を初期位置へ確実にかつ素早く後退動作させ、作業者による連続した釘打ち作業に対応することができる。
なお第1の実施形態では、第1および第2燃焼室121,122に燃焼ガスを冷却するべく空気を導入する手段として、燃料噴射装置141を利用したが、燃料噴射装置141を利用しない形態であっても差し支えない。また冷却用の空気を第1および第2燃焼室121,122の中央領域に導入する構成としたが、空気の導入領域については、特に限定されるものではなく、例えば燃焼室の側壁あるいはシリンダの側壁等、任意に設定することが可能である。また本実施の形態は、燃焼室が第1および第2燃焼室121,122から構成される場合で説明しているが、燃焼室の数については特に問題にするものではない。また本実施の形態は、釘打機の場合で説明しているが、いわゆるステーブルの打ち込み作業に用いられるタッカに適用可能である。
上記発明の趣旨に鑑み、以下の態様を構成することが可能とされる。
(態様1)
「請求項1または2に記載の燃焼式作業工具であって、
前記外部の空気は、前記燃焼室の中央領域から周辺領域に向かって流出するように取り込むことを特徴とする燃焼式作業工具。」
態様1に記載の発明によれば、外部の空気を燃焼室の中央領域から周辺領域に向かって流出する態様で取り込むことによって、当該取り込まれた空気によって燃焼室内の燃焼ガスを攪拌し、熱伝達率の悪い中央領域の燃焼ガスを熱伝達率のよい壁面近くの周辺領域へと流動させることができる。その結果、壁面との間での熱伝達率が増大する。このように、本発明によれば、取り込まれた空気による燃焼ガスの直接の冷却と、燃焼ガスの攪拌による壁面との間での熱伝達率が増大することによる冷却とによって、燃焼ガスを効率良く冷却することができる。
本実施の形態に係る釘打機の全体構成を示す正面視一部断面図であり、ピストンが上死点に位置する初期状態を示している。 同じく釘打機の全体構成を示す正面視一部断面図であり、燃焼室壁が後退動作されて第2燃焼室の容積が最大に増大された状態(被加工材にコンタクトアームが押付けられた状態)を示している。 同じく釘打機の全体構成を示す正面視一部断面図であり、ピストンが下死点に移動した後、所定量だけ後退動作した状態を示している。 燃焼室周辺部の拡大断面図である。 第2の実施形態に係る釘打機の全体構成を示す正面視一部断面図である。
符号の説明
101 釘打機(燃焼式作業工具)
103 ハウジング
104 内部空間
105 ハンドグリップ
106 ハウジングキャップ
106a 空間
106b 通気孔
107 トリガ
110 射出部
111 コンタクトアーム
114 通気口
121 第1燃焼室(燃焼室)
122 第2燃焼室(燃焼室)
123 隔壁部
123a 平坦面部
123b 球面状部分
124 ネジ
125 連通孔
126 燃焼室壁
127 スライドスリーブ
127a 小径部
127b 間隙
128 ネジ
129 スライドエンドプレート
131 点火装置
133 点火用プラグ
133a 一方の電極
133b 他方の電極
135 導電部材
135a 導電部
136 電気配線
137 保持部材
141 燃料噴射装置(燃料供給装置)
143 燃料噴射孔(燃料供給経路)
145 パイプ状部材(燃料供給経路)
145a 突出先端部
146 燃料通路構成部材(燃料供給経路)
147 燃料供給通路
149 燃料容器
151 駆動部
153 シリンダ
153a フランジ部
153b ボア
154 Oリング
155 ピストン
155a 球面状凹部
155b 格納空間
157 ピストンロッド
159 クッションラバー
171 大気室
173 大気室壁
175 固定エンドプレート
177 固定スリーブ
179 Oリング
181 空気供給部
183 空気取入口
185 逆止弁
191 小孔

Claims (3)

  1. 燃焼室と、
    燃焼室に連接されたシリンダと、
    シリンダ内に摺動可能に収容されたピストンと、を有し、
    前記燃焼室で燃料が燃焼することによって生じた燃焼圧力により前記ピストンを前進移動させて所定の加工作業を遂行する燃焼式作業工具であって、
    前記燃料の燃焼後において、前記燃焼室内の燃焼ガスの冷却に伴い発生する当該燃焼室内の負圧により当該燃焼室内に外部の空気を導入するとともに、当該導入された空気によって前記燃焼ガスを冷却する構成としたことを特徴とする燃焼式作業工具。
  2. 請求項1に記載の燃焼式作業工具であって、
    前記外部の空気が前記燃焼室の中央領域へ導入されることを特徴とする燃焼式作業工具。
  3. 請求項1または2に記載の燃焼式作業工具であって、
    前記燃焼室に燃料を供給する燃料供給装置を有し、前記燃焼室への空気の導入は、前記燃料供給装置の燃料供給経路を通して行うことを特徴とする燃焼式作業工具。
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