JP2004358566A - 燃焼式作業工具 - Google Patents

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次郎 小田
Kenichi Miyata
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Abstract

【課題】燃焼式作業工具における混合気の燃焼過程を、徒に機構構造を複雑化することなく、一層合理化することが可能な技術を提供する
【解決手段】可燃性ガスが充填される燃焼室121と、当該燃焼室121に設けられた点火装置131と、この点火装置131を用い燃焼室121内の可燃性ガスを燃焼させることによって生じた燃焼圧力を利用し、所定の加工作業を遂行する駆動部とを有し、燃焼室121の内壁面のうち点火装置131が配設される内壁面129は、駆動部151と対向状に配されるとともに、当該内壁面129の周縁に向かうにつれて駆動部151側へと向かうように凹状部分を有することを特徴とする燃焼式作業工具を構成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可燃性ガスを燃焼させた際の圧力を利用して所定の加工作業を遂行する作業工具、すなわち燃焼式作業工具の合理的な構築技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
いわゆる燃焼式作業工具に関し、釘打機やタッカ等の作業工具の駆動源としてピストン・シリンダ式の内燃機関を用いた具体例が、特開平1−34753号公報(特許文献1)および特開平5−55278号公報(特許文献2)に開示されている。特許文献1では、燃焼ガスを燃焼させるための燃焼室内にファンを配設し、当該ファンによって燃焼室内での燃料とエアの混合を促進し、これによって迅速な燃焼作用を図る構成が開示されている。また特許文献2においては、複数の燃焼室を形成するとともに、各燃焼室毎に燃料噴出口を設け、これにより各燃焼室において燃料とエアとが効率よく混合されるよう工夫した構成が開示されている。
【0003】
上記特許文献1に開示された技術では、燃焼室内に回転式のファンを配設するため、作業工具の機構が複雑なものとなってしまう難がある。また特許文献2に開示された技術では、各燃焼室における混合気の効果的な生成に関する知見が開示されるものの、かかる混合気の燃焼効率向上の見地に立てば、燃焼室の合理的な空間設計等につき更なる合理化の余地がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平1−34753号公報
【特許文献2】
特開平5−55278号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、燃焼式作業工具における混合気の燃焼過程を、徒に機構構造を複雑化することなく、一層合理化することが可能な技術を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。
請求項1に記載の発明では、燃焼室と、点火装置と、駆動部とを有する燃焼式作業工具が構成される。このうち燃焼室には可燃性ガスが充填される。可燃性ガスは、典型的には、燃料と空気とを適宜に噴霧状に混合させた混合気として供給される。点火装置は燃焼室に設けられる。点火装置は典型的には点火プラグによって構成される。また駆動部は、点火装置を用いて燃焼室内の可燃性ガスを燃焼させることによって生じた燃焼圧力を利用して、所定の加工作業を遂行するようい構成される。
【0007】
燃焼室はその内壁面によって可燃性ガスを封止する構造とされるが、かかる内壁面のうち点火装置が配設される内壁面は、駆動部と対向状に配されるとともに、当該内壁面の周縁に向かうにつれて前記駆動部側へと向かう凹状部分を有するよう構成される。換言すれば駆動部と対向する側の内壁面における凹状部分は、その中央領域と駆動部との間の距離に比べ、その周縁領域と駆動部との間の距離が小さくなるように、あるいは周縁領域に向かうにつれて内壁面と駆動部との間の距離が徐々に減少していくように構成されている。これにより点火装置において可燃性ガスへの点火が行なわれると、当該可燃性ガスの燃焼面は、点火装置が配された凹状部分の内壁面の最奥側(駆動部から最も離間した側)から、当該凹状部分の内壁面を伝って駆動部側へと円滑に誘導されるよう構成される。従って、燃焼室に充填された可燃性ガスの燃焼面ないし燃焼圧力を駆動部側へと効率よく送り出すことが可能とされ、燃焼室における燃焼効率を向上するのに資することとなる。しかも本発明では、可燃性ガスの燃焼効率を向上するのに燃焼室の内壁面の構造を変化するだけで対応可能であり、機構の複雑化を回避するとともに、燃焼効率向上用パーツの追加設定などが不要であり、作業工具の製造コスト低減にも資する。
【0008】
なお可燃性ガスの燃焼面ないし燃焼圧力を駆動部側へと円滑に送り出す見地より、点火装置が配設される内壁面の「凹状部分」の態様としては、曲面状に形成してもよく、あるいはテーパ状に形成してもよい。また曲面とテーパ面を適宜に組み合わせて形成してもよい。さらに点火装置が配設された内壁面がそのまま駆動部へと延在する態様、他の内壁面(例えば側面部)に連接されつつ駆動部へ向かう態様等、様々な構成形態を採用することが可能である。また点火装置が配設された内壁面の全箇所を凹状部分として形成してもよく、あるいはその一部のみを凹状部分として形成してもよい。
【0009】
さらに燃焼式作業工具における燃焼室は、点火装置を有するとともに凹状部分を有する燃焼室を有すれば足り、当該燃焼室のみをもって作業工具を構成する形態、更に他の燃焼室を連接させて作業工具を構成する形態のいずれをも好適に包含するものとする。
【0010】
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の燃焼式作業工具において、点火装置が配設される内壁面における凹状部分は、点火装置の点火部と実質的に面一、すなわち実質的な平坦面をなすように構成される。点火装置のうち、実際に可燃性ガスを着火する点火部につき、内壁面の凹状部分に面一状に連接させることにより、点火開始の時点から、可燃性ガスの燃焼面が凹状の内壁面に沿って円滑に駆動部へと向かい、燃焼効率の更なる向上に資することとなる。
【0011】
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の燃焼式作業工具における燃焼室につき、連通孔が形成された隔壁部を介して更に主燃焼室に連接する。そして燃焼室における可燃性ガスの燃焼面が、この隔壁部の連通孔を通じて主燃焼室に伝播され、主燃焼室内の可燃性ガスを燃焼させ、これによって生じた燃焼圧力を利用して所定の加工作業を遂行可能とする。「所定の加工作業」としては、典型的には、釘やステープルといった止め具を被加工材に打込むための作業工具(釘打機等)がこれに該当する。点火装置が設けられた燃焼室(副燃焼室とも称呼される)に更に主燃焼室を連通した本発明の実用的利用形態としては、副燃焼室につき、混合気の点火領域として使用するとともに、主燃焼室につき、作業に必要な大きな燃焼エネルギを得るための領域として使用する態様が好適である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る釘打機101の全体構成が図1に示される。釘打機101は、本発明における「燃焼式作業工具」の一例であり、メインハウジング103、射出部110、ハンドグリップ105、マガジン109により、その外郭が形成されている。メインハウジング103内には、第1燃焼室121、第2燃焼室122、点火装置131、燃料噴射装置141および駆動部151が収容される。またメインハウジング103のうち各燃焼室121,122に近接する箇所には抽気孔104が形成されている。抽気孔104は各燃焼室121,122と外部とを連通可能としている。
【0013】
図1および図2に示すように、第1燃焼室121は、当該第1燃焼室121を第2燃焼室122と区画するための隔壁部123と、第2燃焼室122と反対側に位置する端部壁面129とによって囲まれて形成されている。端部壁面129は、その中央領域に点火装置131の点火部133が配置されるとともに、当該点火部133から端部壁面129の周縁に向かうにつれて、駆動部151側(すなわち図中左側の第2燃焼室122側)へと向かう凹状面として形成されている。換言すれば、当該端部壁面129は図1中右方向に凸部を有する曲面形状に形成されている。この端部壁面129における凹状面は、本発明における「凹状部分」に対応する。すなわち、端部壁面129における凹状面は、点火部133が配置された中央領域よりも、周縁部の方が第2燃焼室122(ないし駆動部151)に近接するように形成される。これにより、点火装置131を介して点火された第1燃焼室121内の混合気の燃焼面は、第2燃焼室122および駆動部151側へと向かって、当該凹状面に沿って滑らかに移行することが可能とされる。この端部壁面129は、その中央領域に点火装置131の点火部133が配置される内壁面として、本発明における「点火装置が配設される内壁面」に対応する。本実施の形態では、第1燃焼室121については後述する混合気の点火領域として使用し、第2燃焼室122については釘打込み作業に必要な大きな燃焼エネルギを得るための領域として使用するよう構成されている。
【0014】
特に図2に詳細に示されるように、隔壁部123は、球面状部分124aと筒状部分124bを主体として構成される。このうち球面状部分124aは、筒状部分124bの先端側(図中左端側)に一体状に連接されるとともに、点火装置131の点火部133を中心として概ね等径の半球状に形成される。また筒状部分124bは、球面状部分124aと反対側の端部において端部壁面129に連接される。筒状部分124bの軸方向断面は第1燃焼室121の軸方向断面を規定する。
【0015】
隔壁部123を構成する球面状部分124aと筒状部分124bには、多数の連通孔125が穿設状に形成されている。この連通孔125を介して第1燃焼室121と第2燃焼室122とが連通状態とされる。このうち球面状部分124aに形成された連通孔125は、隔壁部123を第2燃焼室122側から側面状に見た図3に示すように、複数の同心円状に配列された連通孔グループ125a,125b,125c・・・に区分される。なお球面状部分124aに形成された各連通孔125は、第1および第2燃焼室121,122の周縁領域にも十分な燃焼作用を及ぼすべく、隔壁部123の周縁、すなわち筒状部分124bに向かうもの程に、その開口径(すなわち開口面積)が大きくなるように構成されるとともに、筒状部分124bに形成された連通孔125が最大の開口径となるように構成される。また本実施の形態では、燃焼効率向上の見地より、第1燃焼室121の単位容積に対する各連通孔125の総開口面積の比率につき、概ね3〜6mm/ccの範囲内になるように設定されている。
【0016】
また本実施の形態では、球面状部分124aに形成された連通孔125につき、図2に示すように、第1燃焼室121の長軸LAに対し、第1の連通孔グループ125aに属する各連通孔125がなす開き角度が「A」であるのに対し、第2の連通孔グループ125bに属する各連通孔125がなす開き角度は上記Aよりも大きな角度「B」とされるといったように、連通孔グループ125a,125b,125c・・と順次に開き角度が大きくなるように配列する。かくして本実施の形態では、第1燃焼室121の長軸LAに対してなす開き角度が互いに異なる連通孔グループ125a,125b,125c・・・が隔壁部123に形成されることで、隔壁部123の境界面の中心側から周縁側へと全体に渡って連通孔125が規則的に配列されるとともに、各連通孔125を通じて第1および第2燃焼室121,122が相互に連通状態とされる。なお本実施の形態では、第1燃焼室121の長軸LAは、特に図示しないものの、第2燃焼室122および釘打機101の長軸を兼ねる。
【0017】
また本実施の形態では、球面状部分124aに形成された各連結孔グループ125a,125b,125c・・に属する連通孔125についても、その中心線CLが、いずれも点火装置131の点火部133に概ね向かうように設定されている。
【0018】
第2燃焼室122は、特に図4に示されるように、駆動部を構成するピストン155、スライドスリーブ127および隔壁部123によって囲まれる空間として形成される。なおスライドスリーブ127は、特に図示しないものの、常時にはコンタクトアーム111側へと付勢されている。このためスライドスリーブ127は、図1に示すように、常時には第2燃焼室122および第1燃焼室121を開放状態として、抽気孔104を通じて外部に連通している。一方、釘打機101を被加工材W方向へと押圧する場合(図4参照)、コンタクトアーム111が被加工材Wから離間する方向へと後退動作するのに連動して、スライドスリーブ127は第2燃焼室122を閉鎖状態とする。このとき同時に第1燃焼室121も外部との連通が遮断される。すなわちスライドスリーブ127は、第2燃焼室122の側壁面を構成する部材要素であるとともに、釘打機101の長軸方向への摺動動作を解して第1および第2燃焼室121,122と外部との連通を許容および規制する燃焼室開放・閉鎖調整手段としての機能を奏する。なお釘打ち作業の際のスライドスリーブ127の動作については後述する。
【0019】
第2燃焼室122は、その長軸方向(図2に示す第1燃焼室121の長軸方向LAと一致している)に関して、「樽状」に形成されている。すなわち図4に示すように、第2燃焼室122のピストン155側の端部領域122Lの断面積、および第1燃焼室121側の端部領域122Rの断面積よりも、中央領域122Cにおける断面積の方が大きくなるように形成されている。
【0020】
また第1燃焼室121と第2燃焼室122の実効容積比については、本実施の形態では、第1燃焼室121の容積が、第2燃焼室122の容積の概ね30パーセントとなるように設定されている。第1燃焼室121を混合気の点火用領域として用い、工具作動のための大きなエネルギを第2燃焼室122における燃焼作用で得る場合、上記第1燃焼室121と第2燃焼室122の容積比は、例えば10パーセントから30パーセントといった設計スペックの中から適宜に選択することが好ましい。
【0021】
点火装置131は、図1に示すように点火用プラグによって構成されるとともに、その点火部133が、第1燃焼室121の凹状の端部壁面129の概ね中央部に、当該端部壁面129と概ね面一をなすように配置される。点火装置131は、後述する燃料噴射装置141による燃料の噴射から概ね0.3秒以内に点火動作を行うように設定されている。また一回の点火動作に際して、複数回の放電が行われるように設定されている。
【0022】
燃料噴射装置141は、本発明における「燃料供給手段」に対応し、第1燃焼室121から隔壁部123を通じて第2燃焼室122へと延在するパイプ状部材として構成されるとともに、図2に示すように、各燃焼室121,122に臨む適所に燃料噴射孔143が穿設状に形成されている。なお燃料噴射装置141は特に図示しない燃料貯蔵部に接続されて燃料の供給を受ける。燃料噴射装置141による燃料噴射量は、第1燃焼室121および第2燃焼室122の各実効容積に応じて個別に設定されている。具体的には、第1燃焼室121に臨む燃料噴射孔143aおよび第2燃焼室122に臨む燃料噴射孔143bそれぞれの開口径および開口数につき、各燃焼室121,122それぞれの容量に応じて適宜に設定し、これによって各燃焼室121,122への燃料の供給タイミングの最適化を図っている。
【0023】
本実施の形態では、燃料噴射装置141における各燃料噴射孔143の開口面積は、直径1mmの開口円に相当する面積以下になるように設定されている。また各燃焼室121,122における各燃料噴射孔143a,143bは、第1燃焼室121の長軸LA(すなわち第2燃焼室122および釘打機101の長軸と一致)と直交するように形成される。あるいは第1燃焼室121内の燃料噴射孔143aの全部または一部については、点火装置131に向かって燃料を噴射できるように設定してもよい。具体的には、燃料噴射孔143aの開口中心線が、当該燃料噴射孔143aおよび点火装置131の点火部133とを結ぶ線となす角度が概ね一致、あるいは25度以内となるように設定するのが好ましい。
【0024】
駆動部151は、図1に示すように、メインハウジング103内に収容されたシリンダ153と、このシリンダ153内に摺動可能に配置されたピストン155と、このピストン155に一体状に連接されたピストンロッド157を主体として構成される。なお特に図示しないものの、ピストンロッド157の先端側は、射出部110内に配されて釘Nを前方に打ち出すための射出装置に連接されている。またシリンダ153内部の先端側には、高速駆動されたピストン155の衝撃を吸収緩和してピストン155を受け止めるためのクッションラバー159が適宜配置されている。さらにシリンダ153には、当該シリンダ153内のボアを釘打機101外部に連通するための逆止弁161が設けられている。この逆止弁161は、シリンダ153のボア内の流体が外部に流出することを許容する一方、外部の流体がシリンダ153のボア内に流入することを規制する一方向弁として構成されている。
【0025】
マガジン109は、釘打機101のメインハウジング103前端側に形成された射出部110に取り付けられ、相互に連接された多数の釘Nを収容するとともに、打込み対象となる釘Nを射出部110に臨ませる。なおマガジン109自体の構成は周知ゆえ、その詳細な説明については、便宜上省略する。
【0026】
射出部110の前端にはコンタクトアーム111が配される。コンタクトアーム111は、射出部110の長軸方向(すなわち釘打機101の長軸方向であって、図1では左右方向に相当する)につき、当該射出部110に対し相対的に摺動動作可能とされるとともに、常時には図示しない付勢手段によって先端側(図1において左側)へと付勢されている。一方、図4に示すように、釘Nを被加工材Wに打込み作業するべく、作業者が釘打機101を被加工材W方向へと押圧する場合、コンタクトアーム111は付勢手段の付勢力に抗して被加工材Wから離間する方向(メインハウジング103方向)へと相対的に後退動作する。このコンタクトアーム111の交替動作に連動して、上記したスライドスリーブ127が後退動作し、第1および第2燃焼室121,122を閉鎖状態とする。
【0027】
本実施の形態に係る釘打機101は上記のように構成される。次に当該釘打機101の作用について説明する。図1に示す釘打機101を用いて釘打込み作業を遂行するには、図4に示すようにコンタクトアーム111を被加工材Wに当接させた状態で、作業者が当該被加工材W方向への押圧力を釘打機101に作用させる。するとコンタクトアーム111は付勢手段による付勢力に抗しつつ被加工材Wから離間する側(図中右側)へと後退動作する。コンタクトアーム111の後退動作により、当該コンタクトアーム111と連接されたスライドスリーブ127が後退動作して、第2燃焼室122を閉鎖状に形成するとともに、第1および第2燃焼室121,122の外部への連通を遮断する。このとき第1燃焼室121、第2燃焼室122には、連通遮断前にメインハウジング103に形成された抽気孔104を通じて流入したエアが充溢されている。
【0028】
この状態で作業者はハンドグリップ105に設けられたトリガ107を引き絞り操作する。すると燃料噴射装置141に設けられた燃料噴射孔143a,143b(図2参照)から各燃焼室121,122に燃料が噴射される。第1および第2燃焼室121,122への燃料供給量は、各燃焼室121,122の容量に応じてそれぞれ設定されている。噴射された燃料は各燃焼室121,122内のエアと混合され、これにより各燃焼室121,122内は混合気で満たされる。なお当該混合気は本発明における「可燃性ガス」に相当する。第1燃焼室121内における燃料噴射孔143aのうちの少なくとも一つにつき、点火部133、あるいはその近傍を向くように設定してもよい。「点火部近傍」としては燃料噴射孔143aの開口軸線が点火部133となす角度が概ね25度以内になるように設定するのが好ましい。このように構成すれば、点火部133近傍における可燃性ガスの充填リッチ状態を形成し、後述する第1燃焼室121における燃焼特性を一層向上することが可能となる。
【0029】
本実施の形態では、第1および第2燃焼室121,122に燃料が噴射されてから概ね0.3秒経過後に、第1燃焼室121に設けられた点火装置131による点火動作が遂行されるよう設定されている。また点火装置131は、一回の点火動作において、点火部133から複数回の放電がなされるように設定されている。これらにより第1燃焼室121内における点火・燃焼動作が円滑かつ高効率となるように構成される。
【0030】
点火装置131による点火動作がなされると、第1燃焼室121内に充填された混合気は点火部133近傍領域より着火され、第1燃焼室121内の混合気の燃焼が開始される。混合気の燃焼作用は爆発的であり、当該混合気の燃焼面(火焔面)が非常に短い時間で隔壁部123へ到達する。このとき上述のように、第1燃焼室121の端部壁面129が凹状面として形成されているため、第1燃焼室121内の燃焼ガスは当該凹状の端部壁面129に沿うようにして隔壁部123へと円滑に誘導され、第1燃焼室121において生じた燃焼エネルギを効率よく隔壁部123側へと送ることが可能とされる。
【0031】
しかも本実施の形態では、図2に示すように、隔壁部123のうちの球面状部分124aに形成された連通孔125については、第1燃焼室121の長軸LAに対してなす開き角度が互いに異なる連通孔グループ125a,125b・・・を形成している。換言すれば、第1および第2燃焼室121,122を区画する隔壁部123の境界面において、連通孔125が当該隔壁部123の周方向のみならず径方向に多数形成される構成とされる。さらに隔壁部123のうちの筒状部分124bにも連通孔125が形成されており、点火装置131を介して第1燃焼室121に生じた混合気の燃焼面は、球面状部分124aおよび筒状部分124b上の各連通孔125を通じて隔壁部123の境界面全体に渡りつつ第2燃焼室122側に至ることとなる。
【0032】
さらに本実施の形態では、隔壁部123の球面状部分124aにつき、点火部133を中心とする概ね等径の球面状部分124aとして構成しているため、点火部133から発した混合気の燃焼面は、当該点火部133に対して等半径とされた当該球面状部分124aへと概ね同時に到達する。このため、隔壁部123の球面状部分124a全体に渡って、第2燃焼室122の着火タイミングを各連通孔125で統一化することが可能であり、第2燃焼室122での燃焼開始タイミングを効果的にコントロールすることが可能とされる。
【0033】
また、図2に示すように、隔壁部123の球面状部分124aに形成された各連通孔125の中心軸線CLは、いずれも点火部133に概ね向かうように形成されており、第1燃焼室121内の点火部133から球状に拡散した燃焼面が球面状部分124aの各連通孔125を通過する際の抵抗を最小限のものとすることが可能とされる。換言すれば、第1燃焼室121内で生じた燃焼圧力につき、球面状部分124aにおける損失を最小限としつつ第2燃焼室122側へと伝達することが可能とされる。
【0034】
かくして第1燃焼室121において生じた燃焼面は、凹状の端部壁面129に効率的にガイドされつつ、点火部133から放射状に拡散し、隔壁部123の球面状部分124aおよび筒状部分124bに形成された各連通孔125を通じて第2燃焼室122に至る。さらに球面状部分124aでは、第1燃焼室121の長軸LAに対してなす開き角度が互いに異なる多数の連通孔125に対して概ね同タイミングにて燃焼面が到達し、開口軸CLが点火部133を向いた各連通孔125をスムーズに通過して第2燃焼室122に至る。すると第2燃焼室122内に充填された混合気は、隔壁部123の表面全体領域からバランスよく着火され、第2燃焼室122内の混合気の燃焼が開始される。
【0035】
第2燃焼室122は第1燃焼室121に比べて大容量とされており、第2燃焼室122内の混合気の燃焼により大きな燃焼圧力が発生する。上述のように、第2燃焼室122は、その長軸方向に関して、ピストン155側の端部領域122Lの断面積,および第1燃焼室121側の端部領域122Rの断面積よりも、中央領域122Cにおける断面積の方が大きくなるように形成されている(図4参照)。このため隔壁部123近傍領域において着火された第2燃焼室122内の混合気の燃焼面は、第2燃焼室122内壁(すなわち後退動作したスライドスリーブ127の内壁)を緩やかな弧を描くようにして駆動部151側へと進んでいく。かくして、第2燃焼室122内の混合気の燃焼エネルギ、および連通孔125を通じて第2燃焼室122に送られた第1燃焼室121内の混合気の燃焼エネルギの作用により、図5に示すようにピストン155は、シリンダ153内を被加工材W方向へと摺動状に移動動作されることとなる。
【0036】
なおピストン155がシリンダ153内を摺動動作する際、当該摺動動作に伴ってピストンロッド157側のシリンダ153内部空間が縮小されていくが、かかる空間内のエアは逆止弁161(図1参照)を通じて外部に放出されるため、ピストン155の摺動動作を阻害することはない。
【0037】
ピストン155がシリンダ153内を摺動動作するのに連動してピストンロッド157が被加工材W方向へと直線状に移動し、これによって射出部110にセットされた釘Nが被加工材W側へと高速で射出されて打込まれる。この状態が図5に示される。このときシリンダ153内を被加工材W方向へ高速移動したピストン155は、クッションラバー159に当接し、その運動エネルギが吸収緩和されて停止する。
【0038】
釘Nの打込み作業が終了する段階では、シリンダ155が摺動動作することに起因して膨張した第2燃焼室122内の既燃焼ガスにつき、膨張後の冷却作用によってピストン155は自動的に被加工材Wから離間する側(図5では右側)へと自動的に後退動作を開始する。その後、作業者が被加工材W方向へと作用させていた釘打機に対する押圧加重を解除することにより、メインハウジング103側へ相対的に後退していたコンタクトアーム111が、付勢手段の付勢力を介して先端方向(被加工材W方向)に移動する。コンタクトアーム111の移動動作に伴って、スライドスリーブ127が先端方向(シリンダ153方向)に移動動作する。これにより、第1および第2燃焼室121,122が開放され、メインハウジング103に形成された抽気孔104を通じて、各燃焼室121,122が釘打機101の外部と連通され、各燃焼室121,122内の既燃焼ガスが外部へと排気される。この結果、釘打機101は図1に示す初期状態へと復帰することとなる。
【0039】
本実施の形態によれば、点火装置131によって第1燃焼室121内の混合気への点火が行なわれると、当該混合気の燃焼面は、凹状に形成された端部壁面129を伝って隔壁部123側(すなわち駆動部151側)へと円滑に誘導されるよう構成される。従って、第1燃焼室121に充填された混合気の燃焼面ないし燃焼圧力を第2燃焼室122側へと効率よく送り出すことが可能とされ、各燃焼室121,122における燃焼効率を向上するのに資することとなる。しかも本発明では、可燃性ガスの燃焼効率を向上するのに燃焼室の内壁面の構造を変化するだけで対応可能であり、機構の複雑化を回避するとともに、燃焼効率向上用パーツの追加設定などが不要であり、工具製造コスト低減にも資する。
【0040】
また本発明の実施の形態では、凹状の端部壁面129と、点火装置131の点火部133とが実質的に面一状となるように構成されており、第1燃焼室121における点火開始の時点から、混合気の燃焼面が凹状の端部壁面129に沿って円滑に第2燃焼室122および駆動部151側へと向かい、燃焼効率の更なる向上を図ることが可能とされている。
【0041】
(変更例)
本発明の実施の形態の変更例が図6に示される。この変更例は隔壁部123の構成の変更に関する。従って上記実施の形態と同等の構成要素については詳細な説明を省略する。本変更例に係る釘打機201は、凹状の端部壁面229を有する第1燃焼室221と、スライドスリーブ227が後退動作した際に形成される第2燃焼室222と、第1および第2燃焼室221,222を区画する隔壁部223とを有する。隔壁部223は、点火装置231の点火部233を中心とした等径の半球形状に形成されている。そして、かかる半球状の隔壁部223の球面部には多数の連通孔225が穿設される。
【0042】
このように構成することで、第1燃焼室221に生じた混合気の燃焼面は、当該第1燃焼室221内を隔壁部223側に向かって放射状に拡散しつつ、当該隔壁部223の各連通孔225に概ね同時に到達することとなる。これにより第2燃焼室222に充填された可燃性ガスが、隔壁部223の周面全体から同時的かつ斑なく点火されることとなり、第2燃焼室222(すなわち主燃焼室)内の混合気の燃焼性を向上して、釘打機201の打込み能力を向上することが可能とされる。
【0043】
なお上記実施の形態では、隔壁部123に球面状部分124aを形成し、上記変更例では、隔壁部223自体を半球状に形成する構成を採用したが、これらを球状ではなく円錐状に形成する構成に適宜代替してもよい。
【0044】
さらに上記実施の形態では、第1および第2燃焼室121,122を形成するとともに、第1燃焼室121の端部壁面129を凹状に形成する構成を採用したが、燃焼室を三つ以上連接するとともに、第1の燃焼室における点火装置が配設された端部壁面を凹状にする形態、あるいは一つの燃焼室のみで構成するとともに、当該燃焼室における点火装置が配設された端部壁面を凹状にする形態を採用してもよい。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、燃焼式作業工具における混合気の燃焼過程を、徒に機構構造を複雑化することなく、一層合理化することが可能な技術が提供されることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る釘打機の全体構成を示す正面視一部断面図である。
【図2】本実施の形態における第1燃焼室および第2燃焼室の構造を正面視にて詳細に示す。
【図3】隔壁部および当該隔壁部に形成された連通孔を左側面視にて示す。
【図4】本実施の形態に係る釘打機につき、被加工材に押し付けてトリガを引いた瞬間の状態を示す。
【図5】第1および第2燃焼室内における燃焼作用によって駆動部が作動し、釘が被加工材に打込まれた状態を示す。
【図6】本実施の形態の変更例の構成について示す。
【符号の説明】
101 釘打機
103 メインハウジング
104 抽気孔
105 ハンドグリップ
107 トリガ
109 マガジン
111 コンタクトアーム
121 第1燃焼室
122 第2燃焼室
123 隔壁部
124a 球面状部分
124b 筒状部分
125 連通孔
127 スライドスリーブ
129 端部壁面
131 点火装置
133 点火部
141 燃料噴射装置
143 燃料噴射孔
151 駆動部
153 シリンダ
155 逆止弁
155 ピストン
157 ピストンロッド
159 クッションラバー
N 釘

Claims (3)

  1. 可燃性ガスが充填される燃焼室と、
    当該燃焼室に設けられた点火装置と、
    この点火装置を用い前記燃焼室内の可燃性ガスを燃焼させることによって生じた燃焼圧力を利用し、所定の加工作業を遂行する駆動部とを有し、
    前記燃焼室の内壁面のうち前記点火装置が配設される内壁面は、前記駆動部と対向状に配されるとともに、当該内壁面の周縁に向かうにつれて前記駆動部側へと向かうように凹状部分を有することを特徴とする燃焼式作業工具。
  2. 請求項1に記載の燃焼式作業工具であって、
    前記凹状部分は前記点火装置の点火部と実質的に面一をなすように構成されていることを特徴とする燃焼式作業工具。
  3. 請求項2に記載の燃焼式作業工具であって、
    前記燃焼室は、連通孔が形成された隔壁部を介して更に主燃焼室に連接され、前記燃焼室における可燃性ガスの燃焼面が、前記隔壁部の連通孔を通じて前記主燃焼室に伝播されて当該主燃焼室内の可燃性ガスを燃焼させ、これによって生じた燃焼圧力を利用することで所定の加工作業が遂行されることを特徴とする燃焼式作業工具。
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