JP2006301182A - 光学フィルターおよびその製造方法並びに撮像装置 - Google Patents

光学フィルターおよびその製造方法並びに撮像装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 複屈折性重合体フィルムにより構成された複屈折性機能層の表面に樹脂よりなる保護層が設けられてなり、優れた高温耐久性を有する光学フィルター、当該光学フィルターの製造方法、並びに、当該光学フィルターを備える撮像装置を提供すること。
【解決手段】 光学フィルターは、透明基板と、その一面上に硬化接着層を介して一体に設けられた複屈折性重合体フィルムによる複屈折性機能層と、この複屈折性機能層の表面に設けられた、光学的平面とされた表面を有する樹脂よりなる保護層とを有してなり、保護層を構成する樹脂は、35℃〜95℃の温度範囲の全域における線膨張率がすべて正の値またはすべて負の値のものである。光学フィルターの製造方法は、保護層の形成において、光学的平面転写用部材をフィルター前駆体の保護層形成材料層に押圧した状態で紫外線が照射されて硬化される。撮像装置は、当該光学フィルターが備えられてなる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば、CCD素子(電荷結合素子)、MOS素子(金属−酸化物−半導体素子)などよりなる撮像素子を始めとする光像処理装置、その他の光学装置に用いられる光学フィルターに関し、さらに詳しくは、複屈折性重合体フィルムにより構成された複屈折性機能層を有する光学フィルターおよびその製造方法並びに撮像装置に関する。
一般に、CCD素子やMOS素子などよりなる撮像素子の多数を配置してなる撮像光学系においては、被写体光の高空間周波数成分を制限し、擬似信号の発生に伴う被写体による光とは異なる色光成分を除去するために、光学的ローパスフィルターを用いることが必要とされる。
このような光学的ローパスフィルターとしては、複屈折物質中における常光線と異常光線との分離による光学的ローパス特性を利用した、例えば水晶などによる複屈折型のものが多く使用されている。
しかしながら、水晶板による光学的ローパスフィルターを得るためには、水晶の単結晶を合成し、これに切削加工、研磨加工などの後加工を施すことが必要であり、これらの作業にはそれぞれ多大な時間と労力が必要である。しかも、水晶板は、屈折率の異方性がおよそ9×10-3と小さいものであるので、所定の空間遮断周波数を有するものとするためには、水晶板の厚さを1〜2mmと相当に大きくすることが必要となり、結局、光学的ローパスフィルターの小型化および軽量化を図ることは困難である。
また、屈折率の異方性が大きい材料としては、方解石、ルチルなどが知られているが、これらは水晶と同様に無機材料であるため、単結晶の合成、後加工などに多大の時間と労力を要する問題がある。
一方、有機材料、特に高分子材料を用いると、これに延伸処理を行うことによって複屈折性を有するフィルムを得ることができる。しかしながら、光学的に均一なフィルムが得られる延伸条件下では、水晶以上に高い複屈折性を有するものを得ることが困難であり、また、配向角を自由に設定することができず、実際上ほぼ0度に固定される、という問題点がある。
更に、液晶性を有する重合性単量体を用い、当該単量体の液晶分子を配向させた状態で重合させて硬化させることにより、複屈折性を有する重合体フィルムを得る方法が提案されている(例えば特許文献1〜4参照。)。
従来、このような重合体フィルムをフィルター要素として実用に供する場合には、当該重合体フィルムが、厚みが小さく、柔軟で自己保形性を有していないものであるために、通常、重合体フィルムを2枚のガラス板の間に挟んでガラス板挟持型フィルターとすることが行われている。
このような構成のガラス板挟持型フィルターは、ガラス板として表面が光学的平面とされたものを用いることにより、空気との界面が光学的平面である状態を容易に得ることができると共に、ガラス板は剛性であって非変形性を有するために取扱いが容易になる点では有利である。
然るに、実際の光学装置において有用な光学的特性、例えば光学的ローパスフィルターとしての機能を有するフィルター系を構成するためには、通常、複数のフィルターを多重に組合せることが必要である。
しかしながら、ガラス板挟持型フィルターを多重に組合せてフィルター系を構成する場合には、所期の光学的特性を得るために必要とされる重合体フィルムの占める体積に比して、それらを保持するためのガラス板の数が多く、それが占める体積の割合がきわめて大きいために全体が大型のものとなり、その重量も相当に大きいものとなる。従って、そのようなフィルター系を実際の光学装置に組み込むことが困難であり、例えば高い透明性を有する優れた光学的特性を有する重合体フィルムが開発されても、その特長が減殺されてしまう、という問題点がある。
そして、上記のような問題点を解決するために、全体の体積が小さく、各種の光学装置に対して好適に適用することのできる光学フィルターおよびその製造方法が提案されている(例えば特許文献5参照。)。
この光学フィルターは、複屈折性機能層の表面を覆うよう樹脂よりなる保護層が設けられた構成のものであるが、当該光学フィルターにおいては優れた高温耐久性が得られず、例えば80℃以上の高温度環境下に長時間放置する高温保存信頼性テストにおいて、当該保護層に筋状のクラックが発生し、更には当該クラックが下層の複屈折性機能層を形成する光学フィルムにも波及することもある、という問題点があることが判明した。
特開平5−215921号公報 特開平8−122708号公報 特開平8−283718号公報 特開2000−178233公報 国際公開WO 03/062903
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであって、その目的は、複屈折性重合体フィルムにより構成された複屈折性機能層の表面に樹脂よりなる保護層が設けられてなり、しかも優れた高温耐久性を有する光学フィルターを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の光学フィルターを容易に製造することのできる方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、上記の光学フィルターを備える撮像装置を提供することにある。
本発明の光学フィルターは、非変形性を有する透明基板と、この透明基板の少なくとも一面上に硬化接着層を介して一体に設けられた複屈折性重合体フィルムにより構成された複屈折性機能層と、この複屈折性機能層の表面を覆うよう設けられた、光学的平面とされた表面を有する樹脂よりなる保護層とを有してなり、
前記保護層を構成する樹脂は、35℃〜95℃の温度範囲の全域における線膨張率がすべて正の値またはすべて負の値のものであることを特徴とする。
本発明の光学フィルターにおいて、保護層を構成する樹脂は、温度85℃における線膨張率の値aと、温度75℃における線膨張率の値bとの差(a−b)の値、および、温度95℃における線膨張率の値cとの差(a−c)の値がいずれも絶対値で0.5×10-4/K以下のものであることが好ましい。
本発明の光学フィルターにおいて、複屈折性機能層は、単一の複屈折性重合体フィルムにより、または、少なくとも1つの複屈折性重合体フィルムを含む複数の光学フィルムが互いに硬化接着層を介して一体に積層されてなるフィルム積層体により、形成されている構成とすることができる。
本発明において、複屈折性重合体フィルムは、室温において液晶相を示す単量体よりなる液晶性単量体成分と、この液晶性単量体成分の単量体と共重合する多官能性単量体よりなる架橋性単量体成分とを含有してなる重合性液晶組成物を重合して得られる、厚みが20〜500μmでヘイズ値が1.5以下のものであることが好ましい。
本発明において、透明基板が、赤外線非透過性および/または視感度補正機能を有する構成とすることができる。
本発明の光学フィルターの製造方法は、非変形性を有する透明基板の一面上に、複屈折性重合体フィルムを含む複屈折性機能層形成材を、紫外線硬化型接着剤層を介して配置すると共に、この複屈折性機能層形成材の表面上に紫外線硬化型樹脂材料よりなる保護層形成材料層が形成されてなるフィルター前駆体を形成するフィルター前駆体形成工程と、
このフィルター前駆体に対し、光学的平面を有する光学的平面転写用部材を、その光学的平面が保護層形成材料層の表面に対接する状態に配置する光学的平面転写用部材配置工程と、
光学的平面転写用部材をフィルター前駆体の保護層形成材料層に押圧した状態で紫外線を照射することにより、保護層形成材料層を硬化させて光学的平面とされた表面を有する硬化樹脂よりなる保護層を形成すると共に、複屈折性機能層形成材と透明基板との間の接着剤層を硬化させて硬化接着層を形成する硬化処理工程と
が行われる光学フィルターの製造方法において、
前記保護層を構成する硬化樹脂樹脂は、35℃〜95℃の温度範囲の全域における線膨張率がすべて正の値またはすべて負の値のものであることを特徴とする。
また、本発明の光学フィルターの製造方法は、非変形性を有する透明基板の少なくとも一面上に、少なくとも1つの複屈折性重合体フィルムを含む複数の光学フィルムが紫外線硬化型接着剤層を介して積層されてなる複屈折性機能層形成材を、紫外線硬化型接着剤層を介して配置すると共に、この複屈折性機能層形成材の表面上に紫外線硬化型樹脂材料よりなる保護層形成材料層が形成されてなるフィルター前駆体を形成するフィルター前駆体形成工程と、
このフィルター前駆体に対し、光学的平面を有する光学的平面転写用部材を、その光学的平面が保護層形成材料層の表面に対接する状態に配置する光学的平面転写用部材配置工程と、
光学的平面転写用部材をフィルター前駆体の保護層形成材料層に押圧した状態で紫外線を照射することにより、保護層形成材料層を硬化させて光学的平面を有する硬化樹脂よりなる保護層を形成すると共に、複屈折性機能層形成材を構成する光学フィルム相互間の接着剤層、および複屈折性機能層形成材と透明基板との間の接着剤層を硬化させて硬化接着層を形成する硬化処理工程とが行われる光学フィルターの製造方法において、
前記保護層を構成する硬化樹脂は、35℃〜95℃の温度範囲の全域における線膨張率がすべて正の値またはすべて負の値のものであることを特徴とする。
本発明の製造方法において、保護層を構成する硬化樹脂は、温度85℃における線膨張率の値aと、温度75℃における線膨張率の値bとの差(a−b)の値、および、温度95℃における線膨張率の値cとの差(a−c)の値がいずれも絶対値で0.5×10-4/K以下のものであることが好ましい。
以上の製造方法において、複屈折性重合体フィルムは、室温において液晶相を示す単量体よりなる液晶性単量体成分と、この液晶性単量体成分の単量体と共重合する多官能性単量体よりなる架橋性単量体成分とを含有してなる重合性液晶組成物を重合して得られる、厚みが20〜500μmでヘイズ値が1.5以下のものであることが好ましい。
また、透明基板が、赤外線非透過性および/または視感度補正機能を有する構成とすることができる。
また、硬化処理工程は、フィルター前駆体を構成する複屈折性重合体フィルムまたはフィルター前駆体を構成する光学フィルムの各々に張力が作用された状態で行われることが好ましい。
本発明の撮像装置は、上記の光学フィルターが備えられてなることを特徴とする。
本発明の光学フィルターは、複屈折性重合体フィルムにより構成された複屈折性機能層が、非変形性を有する透明基板に一体に設けられているために、例えば光学的ローパスフィルターとしての機能が得られ、また、複屈折性機能層が複数の複屈折性重合体フィルムを有する場合あるいは複屈折性重合体フィルムと共に適宜の光学特性を有する他の光学フィルムを有する場合には、その構成に応じて全体として所望の光学的特性を発揮するものである。
そして、本発明の光学フィルターにおいては、複屈折性機能層の表面に形成された保護層を構成する樹脂が特定の線膨張率特性を有するものであることにより、優れた高温耐久性が得られる。その結果、比較的高い温度条件下に長時間放置された場合にも、当該保護層にクラックが発生することがない。
具体的には、本発明の光学フィルターによれば、例えば温度85℃の条件下における保存時間が1000時間以上となるような場合にも、保護層にクラックが発生することがなくてその優れた光学特性が維持される。
液晶性単量体成分と架橋性単量体成分とを重合する方法によって製造される複屈折性重合体フィルムにおいては、各単量体の種類を選択することにより、厚みが小さくてヘイズ値の小さい特長を有するものとなる。そして、このような複屈折性重合体フィルムを用いて複屈折性機能層を構成することにより、当該複屈折性重合体フィルムの特長を損なうことなしに、目的とする光学的性能を有する光学フィルターを確実に得ることができる。
また、透明基板として赤外線非透過性または視感度補正機能を有するものを用いることにより、複屈折性機能層による光学的作用に加えて、当該複屈折性機能層のみによっては実現が困難な光学的特性を加重的に有する光学フィルターを提供することができる。
本発明の製造方法によれば、複屈折性機能層を構成する複屈折性重合体フィルムおよび他の光学フィルムが、平面に沿って延びる平板状の形態を有し、しわなどの局部的な変形の生じていない好適な状態を達成することができると共に、複屈折性機能層形成材の透明基板に対する一体的な接合、並びに、光学的平面を有する高温耐久性に優れた保護層の形成を同時に達成することができるので、きわめて容易に目的とする光学フィルターを製造することができる。
また、複屈折性機能層を複数の光学フィルムにより構成されたものとする場合には、当該複屈折性機能層の形成を、当該複屈折性機能層の透明基板に対する接合および高温耐久性に優れた保護層の形成と同時に達成することができるので、きわめて容易に目的とする光学フィルターを製造することができる。
従って、本発明の光学フィルターは、種々の撮像装置に適用することにより、当該撮像装置に目的とする光学特性を得ることができる。
以下、図面を参照して本発明について説明する。
図1は、本発明の光学フィルターの一例における構成を模式的に示す説明用断面図である。この例の光学フィルター10は、3枚の光学フィルムが積層されて構成された積層型の複屈折性機能層を有する光学フィルターである。
この光学フィルター10は、透明基板12の表面上に、硬化接着層14を介して、後述する構成のフィルム積層体20により構成された複屈折性機能層が一体に設けられており、このフィルム積層体20の表面上には、その露出面31が光学的平面とされた保護層30が形成されている。
透明基板12は、非変形性あるいは剛性を有する平板状部材であり、その材料としては有機材料または無機材料を用いることができる。
そして有機材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロフルオロエチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、セルロース、ポリエーテルケトンなどの樹脂物質を挙げることができる。
また、無機材料の具体例としては、水晶、ニオブ酸リチウム、ルチルおよび方解石などの透明性複屈折材料、並びにガラス、シリコンなどを挙げることができる。
透明基板12の厚さは、その材料の種類によっても異なるが、十分な非変形性を得るために或る程度以上の厚さを有することが必要であり、例えば0.2〜3.0mmの厚さとされる。
フィルム積層体20は、第1の光学フィルムF1の表面に、第1の層間硬化接着層B1を介して第2の光学フィルムF2が接合されると共に、この第2の光学フィルムF2の表面に、第2の層間硬化接着層B2を介して第3の光学フィルムF3が接合されて構成された、一体のものである。
この図示の例において、第1の光学フィルムF1および第3の光学フィルムF3は、配向角が同一であるが配向方向が異なる複屈折性重合体フィルムであり、第2の光学フィルムF2は1/4波長板である。
ここに、「配向角」とは、フィルム面に対する分子の配向方向のなす角度であり、「配向方向」とは、複屈折性重合体フィルムの基準辺と分子のなす角度である。
複屈折性機能層を構成する各光学フィルムの厚みは、特に制限されるものではなく、また種類によっても異なるが、高い透明性を確保するために小さいことが望ましく、例えば20〜500μmの範囲とされる。
硬化接着層14は、フィルム積層体20を透明基板12に一体に接合するものであり、高い透明性を有することが好ましい。
また、層間硬化接着層は、いずれも、関連する光学フィルムを一体に接合するものである。すなわち、第1の層間硬化接着層B1は、第1の光学フィルムF1と第2の光学フィルムF2を接合し、第2の層間硬化接着層B2は、第2の光学フィルムF2と第3の光学フィルムF3を接合するものである。これらの層間硬化接着層は高い透明性を有するものであることが好ましい。
保護層30は、最上に位置された光学フィルム、すなわち図示の例では第3の光学フィルムF3の表面上に、層状に形成された特定の線膨張率特性を有する樹脂よりなるものであり、高い透明性を有するものであることが好ましい。
本発明において、保護層を形成する樹脂としては、35℃〜95℃の温度範囲の全域における線膨張率がすべて正の値のもの、または、35℃〜95℃の温度範囲の全域における線膨張率がすべて負の値のものが用いられる。換言すれば、温度35℃から温度95℃まで次第に環境温度を上昇させながら線膨張率を求めた場合において線膨張率の値の正負の符号が変化しないもの、すなわち、35℃から95℃までの温度範囲における線膨張率の値がすべて正であって負に逆転することがない正線膨張率樹脂、または、当該温度範囲における線膨張率の値がすべて負であって正に逆転することがない負線膨張率樹脂が用いられる。
保護層形成樹脂が上記の条件を満たさないものである場合、すなわち正線膨張率樹脂でない場合または負線膨張率樹脂でない場合には、優れた高温耐久性が得られず、高温保存信頼性試験のために例えば80℃の温度に長時間保持されたときに当該保護層にクラックが発生するおそれが大きい。
更に、当該保護層形成樹脂は、温度85℃における線膨張率の値aと、温度75℃における線膨張率の値bとの差(a−b)の値、および、温度95℃における線膨張率の値cとの差(a−c)の値がいずれも絶対値で0.5×10-4/K以下のものであることが好ましい。この条件が満たされることにより、当該保護層は確実に優れた高温耐久性を有するものとなり、高温保存信頼性試験に供されたときにも当該保護層にクラックが発生することがなく、所期の光学特性が安定に発揮される。
保護層30は、その露出面31が光学的平面とされている。ここで、「光学的平面」とは、単位面積(1cm2 )当たりに観測されるニュートンリングの数が10本以下であるような高い平坦性を有する表面をいう。
フィルム積層体20を透明基板12に接合する硬化接着層14、フィルム積層体20における各光学フィルム間を接合する硬化接着層(図の例では第1の層間硬化接着層B1および第2の層間硬化接着層B2)、並びに、樹脂よりなる保護層30は、光学接着剤が硬化されて形成されたものとすることができる。
ここに、光学接着剤としては、例えば紫外線硬化型のものであって、その硬化物が優れた光透過性を有するもの、例えば、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤またはアクリル系接着剤などの接着剤を用いることが好ましい。
そのような光学的接着剤の具体例としては、例えば「ハードロックOP」シリーズおよび「ハードロックUV」シリーズのもの(電気化学工業株式会社製)、その他を挙げることができる。
複屈折性機能層は、少なくとも1つの複屈折性重合体フィルムを備えることが必要であり、図示の例におけるように、複数の光学フィルムが用いられる場合には、そのうちの少なくとも1つまたは2つ以上が複屈折性重合体フィルムであることが必要である。この条件が満たされるのであれば、他の光学フィルムの数およびその種類については特に制限されるものではなく、従って、すべての光学フィルムが複屈折性重合体フィルムである構成、並びに、1枚またはそれ以上の複屈折性重合体フィルムと他の光学フィルムとが組合せられた構成のいずれであってもよい。
複屈折性機能層が複数の複屈折性重合体フィルムを有する場合に、それらの複屈折性重合体フィルムは、同一の光学的特性を有するものであっても、また異なる光学的特性を有するものであってもよい。
また、複屈折性重合体フィルム以外の他の光学フィルムの具体例としては、例えば1/4波長板、バンドパスフィルター、色補償板、その他の光学的特性を有する重合体フィルムを挙げることができる。
以上のような構成の光学フィルターによれば、複屈折性機能層は、複屈折性重合体フィルムを含む光学フィルムにより構成されていることにより、単一または複数の複屈折性重合体フィルムの光学異方性または複屈折性による光学的特性、例えば光学的ローパスフィルターとしての機能が得られ、あるいは更に、複屈折性重合体フィルムと他の光学フィルムによる光学的特性が並行して、またはそれらの光学的特性が互いに関連し合うことにより全体として実用的な光学的特性を有する光学フィルターを提供することができる。
図1の例の光学フィルターによれば、第1の光学フィルムF1および第3の光学フィルムF3の2枚の複屈折性重合体フィルムにより、入射光線が各々水平方向および垂直方向に常光線と異常光線とに分離され、これにより光学的ローパスフィルターとしての性能が発現されると共に、第2の光学フィルムF2として1/4波長板が組合せられていることにより、第1の光学フィルムF1を通過して常光線と異常光線とに分離された光線の偏光状態を、それぞれ円偏光とする作用が得られ、従って、この例の光学フィルターによれば、入射光線が水平方向および垂直方向に4点分離することにより、水平方向および垂直方向において光学的ローパスフィルター作用が発揮されることとなる。
また、この例のような構成の光学フィルターにおいては、1/4波長板による円偏光変換機能を有するために、水平方向および垂直方向における光線分離距離を互いに独立に制御することができ、従って光学的ローパスフィルターの遮断空間周波数状態を、水平方向および垂直方向において各々独立して実現することができる。
そして、保護層30が最外層として形成されていることにより、上記複屈折性機能層が損傷されることから保護されると共に、当該保護層30の表面が光学的平面とされていることにより、入射光の散乱や乱反射による光の損失が少なく、また画像歪みが少ないという優れた性能を得ることができると共に、フィルム積層体20が、非変形性を有する透明基板12に一体に設けられているため、全体として1つの部材として取り扱うことができ、従って、当該光学フィルターは、これを各種の光学装置に適用あるいは装着する上できわめて便利である。
本発明の光学フィルターにおいて積層型の複屈折性機能層を構成する光学フィルムの組合せの具体例を挙げると下記のとおりである。
(例1)第1の光学フィルムF1: 配向角が45度、配向方向が0度、厚さ100μmで光線分離距離が3.5μmの複屈折性重合体フィルム
第2の光学フィルムF2: 配向角が45度、配向方向が45度、厚さ70μmで光線分離距離が2.5μmの複屈折性重合体フィルム
(例2)第1の光学フィルムF1: 配向角が45度、配向方向が0度、厚さ100μmで光線分離距離が3.5μmの複屈折性重合体フィルム
第2の光学フィルムF2: 1/4波長板の機能を有する重合体フィルム
第3の光学フィルムF3: 配向角が45度、配向方向が90度、厚さ100μmで光線分離距離が3.5μmの複屈折性重合体フィルム
(例3)上記例2において、第2の光学フィルムF2として、配向角が45度、配向方向が45度、厚さ70μmで光線分離距離が2.5μmの複屈折性重合体フィルムを用いたもの。
以上のような構成の光学フィルターは、例えば次のようにして製造することができる。 先ず、図2に示すように、透明基板12を用意し、これに紫外線硬化型接着剤による下層接着剤層14aを形成し、この下層接着剤層14a上に第1の光学フィルムF1を配置する。
次に図3に示すように、この第1の光学フィルムF1の上に紫外線硬化型接着剤による第1の層間接着剤層B1aを形成し、この第1の層間接着剤層B1a上に第2の光学フィルムF2を配置し、この第2の光学フィルムF2の上に紫外線硬化型接着剤による第2の層間接着剤層B2aを形成し、この第2の層間接着剤層B2a上に第3の光学フィルムF3を配置する。そしてこの第3の光学フィルムF3の上に紫外線硬化型接着剤による保護層形成材料層30aを形成する。
このようにして、透明基板12の表面上に、下層接着剤層14aを介して、3枚の光学フィルム(F1、F2およびF3)と、2つの層間接着剤層(B1aおよびB2a)とが積層されてなるフィルム積層体形成材20aが配置され、更に、当該フィルム積層体形成材20aの表面に保護層形成材料層30aが形成された状態のフィルター前駆体10aを形成する。
このフィルター前駆体10aに対し、光学的平面42を有するガラス板よりなる光学的平面転写用部材40を、当該光学的平面42が保護層形成材料層30aの表面に対接する状態に配置し(光学的平面転写用部材配置工程)、更に、当該光学的平面転写用部材40により、フィルター前駆体10aの保護層形成材料層30aの上面を下方に押圧した状態で、透明基板12および光学的平面転写用部材40の一方または両方を介して、紫外線を照射する(硬化処理工程)。
上記の光学的平面転写用部材40の光学的平面42は、適宜の離型性処理が施されていることが好ましい。
この硬化処理工程により、下層接着剤層14aが硬化して硬化接着層14が形成されると共に、2つの層間接着剤層(B1aおよびB2a)が硬化して2つの層間硬化接着層(B1およびB2)が形成され、また、保護層形成材料層30aが硬化して硬化樹脂よりなる保護層30が形成される。
そして、3枚の光学フィルム(F1、F2およびF3)が2つの層間硬化接着層(B1およびB2)により相互に一体に接合された状態のフィルム積層体20が、硬化接着層14を介して透明基板12に一体に接合されて複屈折性機能層が形成されると共に、同時に、保護層30の表面が、光学的平面転写用部材40の光学的平面42の形状が転写されることにより光学的平面とされ、もって目的とする積層型の複屈折性機能層を有する光学フィルターが製造される。
以上のような方法によれば、下層接着剤層14a、すべての層間接着剤層すなわち第1の層間接着剤層B1aおよび第2の層間接着剤層B2a、並びに、保護層形成材料層30aの全部を同時に紫外線の照射によって硬化させるので、単一の硬化処理工程により、硬化接着層14、すべての層間接着剤層、並びに、保護層30を形成することができ、しかも、これと同時に、保護層30の表面に光学的平面が形成される。従って、簡単な方法により、高い効率で、積層型の複屈折性機能層を有する光学フィルターを製造することができる。
そして、本発明の製造方法では、フィルター前駆体10aにおけるフィルム積層体形成材20aが、光学的平面転写用部材40により透明基板12との間で下方に押圧された状態、すなわちフィルム積層体形成材20aを形成する各光学フィルム(F1、F2およびF3)の局部的な変位が抑制された状態で紫外線の照射による硬化処理工程が行われるため、事実上、各光学フィルム(F1、F2およびF3)に張力が作用された場合と同様の状態で、各光学フィルム(F1、F2およびF3)の両面に接している接着剤層、すなわち下層接着剤層14a、第1の層間接着剤層B1aおよび第2の層間接着剤層B2aの硬化、並びに、保護層形成材料層30aの硬化が行われることとなる。その結果、各光学フィルム(F1、F2およびF3)にしわが生ずるなどの局部的変形が十分有効に抑制され、従って所期の光学的特性を有する光学フィルターを確実に製造することができる。
以上の硬化処理工程は、各光学フィルム(F1、F2およびF3)に適宜の手段によって積極的に張力を作用させた状態で行うこともでき、この場合には、各光学フィルム(F1、F2およびF3)に確実に所望の平坦な状態および平行な状態を保持させることができる。
各接着剤層(下層接着剤層14a、層間接着剤層B1aおよびB2a)並びに保護層形成材料層30aを形成する接着剤または硬化性材料は、硬化処理工程の間、流動性の低い状態が維持されるものであることが好ましい。接着剤または硬化性材料が流動性の高いものである場合には、硬化の進行に伴って局部的な流れが生ずることにより、光学フィルムに局部的な変形が生ずる可能性が大きくなる。従って、十分な接合性が得られるものであれば、いわゆるグリーンシートと称される予備的または一次的硬化処理が施された接着剤シートを、各接着剤または硬化性材料として好ましく用いることもできる。
本発明において、複屈折性機能層は、複屈折性重合体フィルムよりなる光学フィルムにより構成される。この複屈折性重合体フィルムは、高い透明性を有することが好ましく、具体的には、厚みが20〜500μm、好ましくは50〜400μmでヘイズ値が1.5以下のものであることが好ましい。
このような複屈折性重合体フィルムは、例えば、室温において液晶相を示す単量体よりなる液晶性単量体成分と、この液晶性単量体成分の単量体と共重合する多官能性単量体よりなる架橋性単量体成分とを用いて光重合性液晶組成物を調製し、平板状の間隙による成型用空間が形成されたキャスト用ガラスセルの内部にこの光重合性液晶組成物を充填して薄層を形成し、この薄層に対し、室温(例えば25℃)において、例えば3テスラ以上好ましくは5〜10テスラの高い強度の平行磁場を所定の角度方向となるよう作用させて配向処理を行い、これにより液晶性単量体成分の液晶分子が配向された状態を得、この状態で、例えば紫外線を照射することにより、光重合性液晶組成物の薄層を光重合処理して硬化させて製造することができる。
以上において、光重合性液晶組成物の薄層に対する平行磁場の方向は、複屈折性の大きい重合体フィルムを得る場合には、薄層の面に対して例えば45度またはその近傍とされることが好ましい。
光重合性液晶組成物の液晶性単量体成分を構成する単量体としては、例えば単官能アクリレート化合物または単官能メタクリレート化合物であって、室温において液晶相を示すものが好ましく用いられる。
また、架橋性単量体成分を構成する化合物としては、分子中に3つ以上のベンゼン核を有する多官能アクリレート化合物および多官能メタクリレート化合物であることが好ましく用いられる。
以上のような液晶性単量体成分および架橋性単量体成分よりなる光重合性液晶組成物によれば、平行磁場による配向処理において、架橋性単量体成分を構成する多ベンゼン核含有化合物により、液晶性単量体成分の配向状態が擾乱される程度が緩和される作用が発揮されるため、最終的に得られる複屈折性重合体フィルムは、きわめて高い透明性を有するものとなる。
そして、光重合処理が終了した後のセル複合体から成型用基板を取り外すことにより、複屈折性を有すると共に高い透明性を有する複屈折性重合体フィルムが得られる。
複屈折性重合体フィルムは、通常、その複屈折性、すなわち屈折率の異方性が大きいものであることが好ましく、具体的には、屈折率の異方性の下限値は、水晶の屈折率の異方性(0.009)より大きい値、例えば0.01以上、特に、0.02以上であることが好ましい。このような条件を満たすものによれば、例えば目的とする光学フィルターが光学的ローパスフィルターである場合に、その小型化を十分に図ることができ、撮像素子のための光学的ローパスフィルターとして好適なものとなる。
一方、当該屈折率の異方性の上限値は、液晶の安定性などの観点から0.35以下、特に0.3以下であることが好ましい。
また、複屈折性重合体フィルムに対し、適当な補正板を組み合わせることにより、被写体光の常光線と異常光線の強度が同等となる特性の複合光学フィルターを得ることができる。このような補正板としては、一般的な1/4波長板を用いることができるが、非偏光のものとするために偏光解消板を用いることも有効である。これらの波長板としては、例えばポリカーボネート、ポリビニルアルコール、「アートン」(商品名)や「ゼオネックス」(商品名)として市販されているシクロオレフィン系重合体、その他により製造されたものを用いることができる。
本発明において用いる複屈折性重合体フィルムおよび他の光学フィルムは、光線透過率を高いものとするために、当該フィルムの2つの面の一方若しくは両方に、真空蒸着法、デイッピング法などにより無反射コーティング層が形成されたものであってもよい。また、完成した光学フィルターの表面に、必要に応じて、真空蒸着法あるいはディッピング法などにより、無反射コーティングを施すこともできる。
本発明においては、透明基板として、例えば、赤外線非透過性、視感度補正機能などの光学的特性を有するものを用いることができ、この場合には、複屈折性機能層による光学的特性に加えて、当該透明基板による光学的特性が同時に発揮されるため、実用上、一層好適な光学フィルターが得られる。
視感度補正機能を有するものとしては、例えば、リン酸ガラスに銅イオンが導入されたもの、ガラス基板表面に真空蒸着法によって光学多層膜が積層して形成された近赤外線遮断性干渉フィルター、その他が挙げられ、プラスチック製のものとしては、例えば、リン酸基含有アクリル系単量体およびこれと共重合可能な単量体からなる混合単量体を重合して得られる共重合体と、銅塩を主体とする金属塩とからなるもの(特開平6−118228号参照)、その他を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の光学フィルターは、透明基板上に複屈折性機能層が硬化接着層により一体に設けられたものであり、露出表面を形成する保護層の表面が光学的平面とされているので、入射光の散乱や乱反射による光の損失が少ない点、並びに、処理される画像に与える歪みが小さい点で優れた性能を得ることができると共に、複屈折性機能層における複屈折性重合体フィルムの作用、すなわち複屈折性による光学的ローパスフィルターとしての機能を含む実用上有用な光学的特性を発揮するものとなり、しかも厚みが小さくて非常に軽量なものとすることができ、従って、ビデオカメラなどのCCD素子、MOS素子などの撮像素子を利用した機器にきわめて好適に適用することができる。
そして、本発明の光学フィルターにおいては、その表面が硬化された樹脂である保護層によって形成されているために、内部の複屈折性機能層が外部に露出されることがなくて損傷から保護された状態であり、しかも当該保護層は、その保護層形成樹脂が特定の線膨張率特性を有することにより、優れた高温耐久性が得られる。
その結果、例えば高温保存信頼性試験のために例えば80℃または85℃のような比較的高い温度に長時間保持されるときにも、当該保護層にクラックが発生することがなく、安定した光学特性が発揮される。
その結果、当該光学フィルターが装着された撮像装置においては、それが高温雰囲気に放置されて当該光学フィルターが高温となった場合であっても、それによって光学フィルターに異常が発生することがなく、当該撮像装置の有する使用寿命が犠牲とされることがない。
以上においては、積層型の複屈折性機能層を有する本発明の光学フィルターについて具体的に説明したが、本発明において、複屈折性機能層が複数の光学フィルムを有してなる積層型であることは必須のことではない。すなわち、本発明においては、複屈折性機能層を単一の複屈折性重合体フィルムのみによって構成することもできる。この場合には、光学フィルターは、複屈折性重合体フィルムが透明基板の上に硬化接着層を介して一体に接合され、当該複屈折性重合体フィルムの表面上に保護層が形成された構成とされる。
そして、このような構成の光学フィルターは、上記の複屈折性機能層が積層型である光学フィルターの製造方法に準ずる方法によって製造することができ、同様の効果を得ることができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」は「質量部」を意味する。
実施例1
(1)重合体フィルムFAの製造
<光重合性液晶組成物の調製>
下記の重合性単量体の100部に、下記の光重合開始剤の1部および酸化防止剤0.2部を添加して溶解させることにより、光重合性液晶組成物を調製した。
〔重合性単量体〕
下記式(1)で示される化合物(A)の35モル%および下記式(2)で示される化合物(B)の35モル%よりなる液晶性単量体成分と、式(3)で示される化合物(C)の30モル%よりなる架橋性単量体成分との組成物
Figure 2006301182
Figure 2006301182
〔光重合開始剤〕
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキシドと、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンとの質量比で1:3の混合物(商品名「イルガキュア1800」チバスペシャルケミカルズ社製)
〔酸化防止剤〕 1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)トリオン(商品名「アデカスタブAO−20」旭電化社製)
<キャスト用ガラスセルの作製>
図4に示すように、各々、直径40mm、厚さ3mmのガラスよりなる2枚の成型用基板52、52を0.1mmの間隙を介して平行に対向させ、当該2枚の成型用基板52、52の外周面にわたってシール用テープ54を共通に貼り付けることにより、直径40mm、厚さ0.1mmの円形のシールされた成型用空間を有するキャスト用ガラスセル50を作製した。ここに用いられたガラス板は、通常の洗浄後に更にプラズマ洗浄処理されたものである。図4において、Lは光重合性液晶組成物の薄層である。
<光重合処理>
上記の光重合性液晶組成物を、50℃に温めておいた上記キャスト用ガラスセルの成型用空間内に注入して注入口をシール用テープでシールした後、遮光雰囲気中において50℃に加温した。
図5に示すように、この光重合性液晶組成物が封入されたガラスセル50を、強度が5テスラの平行磁場中であって、磁力線に対して45度の角度状態に保持したセル台(図示せず)に載せて支持し、ガラスセル50の温度が25℃に維持されるよう冷却しながら4分間保持して配向処理を行い、その後、紫外線放射ランプにより16mW/cm2 の強度の紫外線を室温で60秒間間照射して光重合性液晶組成物の光重合処理を行った。図5において、Mは液晶分子である。
<光学異方性高分子フィルムの取得>
以上のようにして得られた成型用複合体を温度85℃のオーブン中に15時間放置して後重合処理を行った後、室温にまで冷却し、得られたセル複合体のガラスセルを解体して、厚みが100μmの重合体フィルムFAを得た。
この重合体フィルムFAは、複屈折性を示し、像分離量は3.7μmであり、ヘイズ値は1.2であってきわめて高い透明性を有するものであった。
(2)重合体フィルムFB
上記の重合体フィルムFAの場合と全く同様の方法により製造された、同様の形状および特性を有するものを重合体フィルムFBとして用いた。
(3)光学フィルターの製造
図2および図3によって説明した方法に従い、厚さが0.5mmの透明ガラス板を透明基板として用い、その上面上に、紫外線硬化型接着剤により下層接着剤層14aを形成し、その上に、上記の重合体フィルムFAを第1の光学フィルムとして配置した。
次いで、この重合体フィルムFAの上に、上記と同様の紫外線硬化型接着剤により第1の層間接着剤層B1aを形成し、この第1の層間接着剤層B1a上に、1/4波長板としての機能を有するポリビニルアルコールよりなる厚さ100μmの重合体フィルムを第2の光学フィルムF2として配置し、この第2の光学フィルムF2上に、第1の層間接着剤層B1aと同様にして第2の層間接着剤層B2aを形成し、この第2の層間接着剤層B2a上に、上記の重合体フィルムFBを第3の光学フィルムF3として、その方位角が第1の光学フィルムF1に対して90度異なる状態で配置した。
更に、この重合体フィルムFBの上に、硬化して硬化樹脂Aを与える紫外線硬化型樹脂材料を用いて、厚さ30μmの保護層形成材料層30aを形成し、これにより、フィルター前駆体10aを作製した。
得られたフィルター前駆体10aを傾斜支持面上に支持し、このフィルター前駆体10aに対して、ガラス板よりなる光学的平面転写用部材40を配置してその光学的平面42を保護層形成材料層30aの表面に対接させて光学的平面転写用部材配置工程を行った上、この光学的平面転写用部材40を9.8N(1kgf)の押圧力で下方に押圧し、この状態で、透明基板12および光学的平面転写用部材40を介して、100mW/cm2 のエネルギー強度の紫外線を60秒間照射して硬化処理工程を行い、これにより、図1に示された構成の光学フィルターを製造した。
このようにして得られた光学フィルターは、下層接着剤層14aによる硬化接着層14の厚さが5μm、第1の層間硬化接着層B1および第2の層間硬化接着層B2の厚さが共に10μm、保護層30の厚さが15μm、全体の合計厚さが840μmのものであり、かつ、保護層30の表面は光学的平面であって、縦1cm、横1cmの任意の領域のニュートンリングの最大数を調べたところ5本であった。
また、この光学フィルターの光学的特性は、可視光線透過率が90%、水平方向光線分離距離が3.5μm、垂直方向光線分離距離が3.5μmであった。
上記の紫外線硬化型樹脂材料によって得られる硬化樹脂Aについて、35℃〜95℃の温度範囲における線膨張率の値を10℃毎に測定した。具体的には、当該紫外線硬化型樹脂材料を2枚のガラス板の間に挟み、これに100mW/cm2 のエネルギー強度の紫外線を60秒間照射して硬化処理工程を行い、ガラス板を外して厚さ100μmのフィルムを調製し、これをサンプルとして、線膨張率測定装置「TMA−40」(メトラー社製)により、35℃〜95℃の温度範囲において、昇温速度毎分2℃/分、荷重0.05Nの条件で線膨張率を求めた。結果は下記表1に示すとおりである。
表1から明らかなように、この硬化樹脂Aは、温度35℃〜95℃の範囲で線膨張率がすべて正の値である正線膨張率樹脂であり、温度85℃における線膨張率の値aと温度75℃における線膨張率の値bとの差(a−b)の絶対値が0.23×10-4/K、温度85℃における線膨張率の値aと温度95℃における線膨張率の値cとの差(a−c)の絶対値が0.34×10-4/Kのものであって、いずれも0.5×10-4/K以下の大きさである。
〔高温保存信頼性試験〕
一方、上記のようにして作製された光学フィルターについて、高温保存信頼性試験を行った。すなわち、当該光学フィルターをそのままサンプルとして、85℃の高温度雰囲気に1000時間以上にわたって放置し、保護層の状態を経時的に観察した。結果を表2に示すとおりである。
比較例1〜比較例3
硬化樹脂Aに代えて硬化樹脂B〜Dの各々を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルターを作製し、同様にして高温保存信頼性試験を行った。35℃〜95℃の温度範囲における硬化樹脂B〜Dの線膨張率の値は、表1に示すとおりである。また、各光学フィルターについての高温保存信頼性試験の結果は表2に示すとおりである。
Figure 2006301182
Figure 2006301182
表1および表2の結果から、温度35℃〜95℃の範囲で線膨張率がすべて正の値である正線膨張率樹脂の硬化樹脂Aよりなる保護層を有する光学フィルターでは、高温保存信頼性試験における経過時間が1000時間に達したときにも保護層にクラックの発生が見られず、優れた高温耐久性を有することが明らかである。
これに対し、温度35℃〜95℃の範囲で線膨張率のすべてが正の値でない硬化樹脂Bまたは硬化樹脂Cよりなる保護層を有する光学フィルターでは経過時間が250時間に達するまでに、また、硬化樹脂Dよりなる保護層を有する光学フィルターでは経過時間が500時間に達するまでに、保護層にクラックが発生し、光学フィルターとして無用のものとなった。
本発明の光学フィルターの一例における構成を模式的に示す説明用断面図である。 図1の光学フィルターの製造過程における透明基板に下層接着剤層を設けた状態の説明用断面図である。 図1の光学フィルターの製造における光学的平面転写用部材配置工程および硬化処理工程に関する説明用断面図である。 複屈折性重合体フィルムを製造する好適な方法の一例を示す説明用断面図である。 光重合性液晶組成物における液晶化合物の液晶分子の配向処理についての説明図である。
符号の説明
10 光学フィルター
10a フィルター前駆体
12 透明基板
14 硬化接着層
20 フィルム積層体
20a フィルム積層体形成材
30 保護層
31 露出面
F1 第1の光学フィルム
B1 第1の層間硬化接着層
F2 第2の光学フィルム
B2 第2の層間硬化接着層
F3 第3の光学フィルム
14a 下層接着剤層
B1a 第1の層間接着剤層
B2a 第2の層間接着剤層
30a 保護層形成材料層
42 光学的平面
40 光学的平面転写用部材
50 キャスト用ガラスセル
52 成型用基板
M 液晶分子
54 シール用テープ
L 光重合性液晶組成物の薄層

Claims (12)

  1. 非変形性を有する透明基板と、この透明基板の少なくとも一面上に硬化接着層を介して一体に設けられた複屈折性重合体フィルムにより構成された複屈折性機能層と、この複屈折性機能層の表面を覆うよう設けられた、光学的平面とされた表面を有する樹脂よりなる保護層とを有してなり、
    前記保護層を構成する樹脂は、35℃〜95℃の温度範囲の全域における線膨張率がすべて正の値またはすべて負の値のものであることを特徴とする光学フィルター。
  2. 前記保護層を構成する樹脂は、温度85℃における線膨張率の値aと、温度75℃における線膨張率の値bとの差(a−b)の値、および、温度95℃における線膨張率の値cとの差(a−c)の値がいずれも絶対値で0.5×10-4/K以下のものであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター。
  3. 前記複屈折性機能層は、単一の複屈折性重合体フィルムにより、または、少なくとも1つの複屈折性重合体フィルムを含む複数の光学フィルムが互いに硬化接着層を介して一体に積層されてなるフィルム積層体により、形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学フィルター。
  4. 前記複屈折性重合体フィルムは、室温において液晶相を示す単量体よりなる液晶性単量体成分と、この液晶性単量体成分の単量体と共重合する多官能性単量体よりなる架橋性単量体成分とを含有してなる重合性液晶組成物を重合して得られる、厚みが20〜500μmでヘイズ値が1.5以下のものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光学フィルター。
  5. 前記透明基板が、赤外線非透過性および/または視感度補正機能を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光学フィルター。
  6. 非変形性を有する透明基板の一面上に、複屈折性重合体フィルムを含む複屈折性機能層形成材を、紫外線硬化型接着剤層を介して配置すると共に、この複屈折性機能層形成材の表面上に紫外線硬化型樹脂材料よりなる保護層形成材料層が形成されてなるフィルター前駆体を形成するフィルター前駆体形成工程と、
    このフィルター前駆体に対し、光学的平面を有する光学的平面転写用部材を、その光学的平面が保護層形成材料層の表面に対接する状態に配置する光学的平面転写用部材配置工程と、
    光学的平面転写用部材をフィルター前駆体の保護層形成材料層に押圧した状態で紫外線を照射することにより、保護層形成材料層を硬化させて光学的平面とされた表面を有する硬化樹脂よりなる保護層を形成すると共に、複屈折性機能層形成材と透明基板との間の接着剤層を硬化させて硬化接着層を形成する硬化処理工程と
    が行われる光学フィルターの製造方法において、
    前記保護層を構成する硬化樹脂樹脂は、35℃〜95℃の温度範囲の全域における線膨張率がすべて正の値またはすべて負の値のものであることを特徴とする光学フィルターの製造方法。
  7. 非変形性を有する透明基板の少なくとも一面上に、少なくとも1つの複屈折性重合体フィルムを含む複数の光学フィルムが紫外線硬化型接着剤層を介して積層されてなる複屈折性機能層形成材を、紫外線硬化型接着剤層を介して配置すると共に、この複屈折性機能層形成材の表面上に紫外線硬化型樹脂材料よりなる保護層形成材料層が形成されてなるフィルター前駆体を形成するフィルター前駆体形成工程と、
    このフィルター前駆体に対し、光学的平面を有する光学的平面転写用部材を、その光学的平面が保護層形成材料層の表面に対接する状態に配置する光学的平面転写用部材配置工程と、
    光学的平面転写用部材をフィルター前駆体の保護層形成材料層に押圧した状態で紫外線を照射することにより、保護層形成材料層を硬化させて光学的平面を有する硬化樹脂よりなる保護層を形成すると共に、複屈折性機能層形成材を構成する光学フィルム相互間の接着剤層、および複屈折性機能層形成材と透明基板との間の接着剤層を硬化させて硬化接着層を形成する硬化処理工程とが行われる光学フィルターの製造方法において、
    前記保護層を構成する硬化樹脂は、35℃〜95℃の温度範囲の全域における線膨張率がすべて正の値またはすべて負の値のものであることを特徴とする光学フィルターの製造方法。
  8. 前記保護層を構成する硬化樹脂は、温度85℃における線膨張率の値aと、温度75℃における線膨張率の値bとの差(a−b)の値、および、温度95℃における線膨張率の値cとの差(a−c)の値がいずれも絶対値で0.5×10-4/K以下のものであることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の光学フィルターの製造方法。
  9. 前記複屈折性重合体フィルムは、室温において液晶相を示す単量体よりなる液晶性単量体成分と、この液晶性単量体成分の単量体と共重合する多官能性単量体よりなる架橋性単量体成分とを含有してなる重合性液晶組成物を重合して得られる、厚みが20〜500μmでヘイズ値が1.5以下のものであることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかに記載の光学フィルターの製造方法。
  10. 前記透明基板が、赤外線非透過性および/または視感度補正機能を有することを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれかに記載の光学フィルターの製造方法。
  11. 前記硬化処理工程は、フィルター前駆体を構成する複屈折性重合体フィルムまたはフィルター前駆体を構成する光学フィルムの各々に張力が作用された状態で行われることを特徴とする請求項6〜請求項10のいずれかに記載の光学フィルターの製造方法。
  12. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光学フィルターが備えられてなることを特徴とする撮像装置。
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