JP2006300189A - ベルト駆動装置、及びそれに用いるベルト - Google Patents

ベルト駆動装置、及びそれに用いるベルト Download PDF

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Abstract

【課題】 アイドラプーリ6を自動調心プーリとし、プーリ本体60を揺動させてベルト8の蛇行や片寄り走行を防止する場合に、そのプーリ本体60の回動変位が大きくなり過ぎないようにして、ひいてはベルト8の滑落をも防止する。
【解決手段】 アイドラプーリ6を自動調心プーリとしない場合に、ベルト8の1回転中にプーリ1〜5のミスアライメントやベルト8自体の癖などによって自ずと発生する片寄り量を特定する。その自然発生的な片寄りによってベルト8の幅全体がプーリ本体60の外周上で枢軸の位置C*を越えることがなく、ベルト8が常にその幅内に枢軸の位置C*を跨いで走行するように、ベルト8の幅を上記特定した片寄り量の2倍以上に設定する。ベルト8とプーリ本体60の外周面との間の摩擦係数μを、この両者間の摩擦力がプーリ本体60の最大回動時でもベルト8を滑落させる力以上となるように設定する。
【選択図】 図9

Description

本発明は、複数のプーリにベルトを巻き掛けてなるベルト駆動装置と、それに用いるベルトとに関するものである。
従来より、平ベルトを用いたベルト駆動装置においては、ベルトが走行中に蛇行したり、プーリの片側に寄る片寄り走行をしたりする、という問題のあることが知られている。これは、平ベルトが、他のベルトに比べて、プーリ軸の正規位置からのずれや、軸荷重の変化によるプーリ軸のたわみ、プーリの揺れ等のミスアライメントに敏感なためである。このような蛇行・片寄り走行を生じた場合には平ベルトが平プーリのフランジに接触して、該平ベルト側面の毛羽立ちや心線のほつれを生ずる。
この問題に対して、平プーリの外周面にクラウンをつけることは良く知られている(例えば特許文献1等を参照)。すなわち、プーリ外周面が中凸形状となるようにその幅の中央寄りを相対的に大径として、ベルト幅内で張力差が生じるようにすると、張力の高い中央部に向かってベルトが左右両側から引き寄せられ、プーリ幅の中央付近を安定して走行するようになるからである(以下、そのようにして張力が高くなっている側にベルトが寄っていくことをクラウン作用ともいう)。
そのように張力の高い側にベルトが寄っていく理由は未だ十分に解明されていないが、例えば平ベルトがクラウンのついたプーリの外周上で幅方向に片寄り、そのベルト幅内で張力差を生じると、この張力差によってベルトが該クラウンプーリ自体やその進出側のプーリ上で斜めに巻き付くようになり、この結果としてベルトの走行位置が変化するものと考えられている。
また、特許文献2には、平プーリの外周面に多数の溝を周方向に間隔をおいて形成したものが開示されている。その溝は、プーリの幅中央から左右両側へ「く」の字状になるように対称に延びたものであり、ベルトとプーリとの間に該ベルトを中央に寄せるような摩擦力を発生させて、当該ベルトの蛇行ないしは片寄りを防止するようになっている。
さらに、平プーリの両側にガイドプーリを配置し、これによりベルトの走行位置を規制するという技術も知られている(例えば特許文献3等を参照)。
実開昭59−45351号公報 特開平6−307521号公報 実公昭63−6520号公報
しかし、上記従来例のようにプーリ外周にクラウンをつける場合、ベルトの走行安定性(蛇行や片寄りの防止)を重要視してクラウンの曲率半径を小さくすれば、そのベルトの幅の中央付近に応力が集中し、ベルト幅全体を伝動に有効に利用することができず、心線の早期疲労及び伝動能力の低下を招く。
また、平プーリに上述の如き溝加工をすると、該平プーリの製造コストが高くなり、しかも、溝加工だけではベルトの蛇行や片寄りを確実に防止することは難しい。
さらに、平プーリの両側にガイドプーリ等を配置してその走行位置を規制する方式を採用すると、ベルトの両側がそのような規制部材に常時接触することになるため、その側面のほころび、心線のほつれを生じ易くなる。従って、それらを防止するためにベルトに特殊な加工を施すことが必要になり、その製造コスト低減に不利になる。
以上のような理由から、平ベルト伝動装置は、Vベルトなど他のベルトに比べてベルトの曲げによるロスが少なく伝動効率が非常に高いにも拘わらず、十分に活用されていないのが実情である。また、上記の蛇行や片寄り走行は、ベルト伝動装置のみならず、ベルト搬送装置も含めたベルト駆動装置全般に共通の問題である。
これに対し、本願の発明者は、ベルトの片寄りを生じたときに、このベルトの張力によってプーリやプーリの軸にかかる軸荷重の位置が変化することを利用して、この軸荷重によりプーリをベルトの走行方向に対し斜交いになるように傾斜させ、これによりベルトの片寄りを戻すようにした新規な伝動装置を開発して、先に特許出願をしている(例えば特願2004−058632号等)。
上記先願に係るベルト伝動装置の特徴は、上記の如く自動的にベルトの走行位置を調整するプーリ(以下、自動調心プーリともいう)の構造にある。具体的に、このプーリは、ベルトの巻き掛けられる円筒状のプーリ本体と、該プーリ本体を回転自在に支持する筒状の軸部材と、この軸部材の筒孔に挿入された支持ロッドとを備え、該支持ロッド及び軸部材がピン等により係合されて、このピン等の周りにプーリ本体及び軸部材が揺動するようになっている。
そして、上記自動調心プーリは、上記ピン等の軸心、即ち上記プーリ本体及び軸部材の揺動中心となる枢軸が、該プーリ本体の回転中心軸に直交し、且つ軸荷重の方向に対し該プーリ本体の回転方向前側に傾倒するように配置される。こうすることで、ベルトの片寄りに伴い軸荷重の位置がプーリ幅方向にずれて、この軸荷重によりプーリ本体が揺動し、枢軸の周りに回動変位したときに、その軸荷重の方向について高低をみれば、プーリ本体はベルトの片寄ってきた側が低く、反対側が高くなるように傾斜するとともに、そのベルトの片寄ってきた側がベルト走行方向の前側になるように、ベルトの走行方向に対して斜交いになる。
そのように軸荷重の方向に傾斜することで、プーリ本体の外周面は上述のクラウンプーリのように傾斜した状態になり、クラウン作用によってベルトがその張力の高い側、即ちプーリ幅の中央寄りに引き寄せられることになる。また、上記のようにプーリ本体が斜交いになることによって、直接的にベルトの走行方向がプーリ幅の中央寄りに向けられる。こうしてベルトの走行位置がプーリ幅の中央寄りに戻されるものである。
ところが、上記先願に係る平ベルト伝動システムにおいて種々のベルトを用い、様々なレイアウトで走行試験を重ねた結果、本願の発明者は、比較的幅の狭いベルトを使用したときには、このベルトの片寄りによって上述の如く自動調心プーリのプーリ本体が回動変位しても、ベルトの走行位置が戻されることなく片寄ったままになることがあり、さらには脱落することすらあることを見出した。
すなわち、ベルトの幅が狭いときには、その片寄りがあまり大きくなくても、ベルト幅全体がプーリ幅の中央位置(プーリ本体の外周上で枢軸に対応する位置であり、以下、枢軸の位置ともいう)を越えてしまいやすく、こうなると、軸荷重による枢軸周りの回動モーメントが急激に増大することになる。しかも、ベルト幅が狭ければ、その分、このベルトを捻る際の抵抗力は小さくなるから、上記回動モーメントの急増によってプーリ本体の回動量が過度に大きくなりやすい。
そして、そうしてプーリ本体の回動変位が大きくなるほど、その一側に片寄っているベルトを元の位置に戻すための仕事量が相乗的に増大する。これは、プーリ本体においてベルトの片寄ってきた側が軸荷重の方向に回動変位するということは、そのベルトが緩むということであり、このベルトを元の走行位置に戻すためには、単にベルトをプーリ外周に沿ってずらすだけでなく、ベルトを張り直す必要があるからである。
特にオートテンショナを備えたベルト伝動装置の場合、上記のようにベルトが緩めば、これを押圧するようにテンションプーリが移動してベルト張力を維持することになるから、その後、ベルトの位置を元に戻そうとすれば、テンションプーリを押し返しながらベルトを張り直さなくてはならず、そのために必要な力がかなり大きくなってしまう。
さらに、そうしてベルトを戻すのに大きな力が必要になる一方で、ベルトの幅が狭いときには、上記のようにプーリ本体が回動変位してその外周面がクラウンのように傾斜した状態になっても、狭いベルト幅内にて生じる張力差があまり大きくはならないから、上述したクラウン作用による力もあまり大きくはならない。
つまり、ベルトの幅が狭いときほど、その片寄りによってプーリ本体の過大な回動変位が起こりやすく、その片寄ったベルトを元の走行位置に戻すのに必要な仕事量が大きくなる上に、そのベルトを戻すための力は弱くなるので、そうして片寄ったベルトの走行位置をなかなか戻すことができなくなり、場合によってはベルトが片寄ったままになってしまうのである。
さらにまた、そうしてプーリ本体が過大に回動変位したときには、上述の如く軸荷重の方向について高低をみれば、プーリ本体の外周面の傾斜が急になるから、その外周に沿って片寄ってきたベルトの張力がこのベルトをさらに片寄らせるように作用することになり、この力がベルトとプーリ外周面との間の摩擦力を上回るときには、ベルトがプーリ本体から滑落することもあるのである。
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルト駆動装置において平ベルト、その他のベルトの蛇行や片寄りを防止するために上記先願に係る自動調心プーリを用いる場合に、そのプーリ本体の回動変位が大きくなり過ぎないようにし、ひいてはベルトの滑落を防止することにある。
上記の目的を達成するために、本発明は、プーリのミスアライメントやベルト自体の癖などによって自ずと発生するベルトの片寄り量を特定し、この自然発生的な片寄りによってベルトの幅全体がプーリ本体の外周上で枢軸の位置を越えることがないように、そのベルトの幅を上記片寄り量の2倍以上に設定したものである。
すなわち、本発明のベルト駆動装置は、複数のプーリにベルトを巻き掛けてなるものであって、
上記複数のプーリのうちの少なくとも1つが、プーリ本体を、その回転中心軸に沿って見て、軸荷重の方向に対し該プーリ本体の回転方向前側に所定角度傾倒した枢軸の周りに揺動自在に支持してなる自動調心プーリであり、
上記ベルトは、仮に上記自動調心プーリを設けない場合に1回転の間に生じる片寄り量、即ちベルト駆動装置の本来の使用状況において特に外乱のような力が作用しなくても、プーリのミスアライメントやベルト自体の癖によって自然に発生する片寄り量の2倍以上の幅を有するものとされていることを特徴とする。
上記構成のベルト駆動装置における自動調心プーリの作用は、上述した先願(例えば特願2004−058632号等)のものと同じであり、ベルトが走行中にプーリ本体上で幅方向に片寄って、軸荷重が枢軸の位置からプーリ幅方向にずれて作用するようになると、その軸荷重によって枢軸周りの回転モーメントが働いて、プーリ本体が回動変位(揺動)する。
そうして回動変位したプーリ本体は、ベルトの片寄った側が軸荷重の方向に移動していて、その軸荷重の方向について高低をみれば、ベルトの片寄ってきた側が低く、反対側が高くなるように、即ち外周面がクラウンと同様に傾斜した状態になる。これにより、ベルトは、その幅内で張力の高い側、即ちプーリ幅の中央寄り(枢軸寄り)に引き寄せられるようになる(クラウン作用)。
また、上記プーリ本体の回動変位には、上記軸荷重方向の成分だけでなく、その軸荷重方向に直交するベルト走行方向の成分も含まれ、プーリ本体は、ベルトの片寄ってきた側がベルト走行方向の前側に移動して、ベルトの走行方向に対して斜交いの状態になって、ベルトの走行方向をプーリ幅の中央寄り(枢軸寄り)に変えるようになる。
ここで、上記ベルトの幅がベルト駆動装置において自然に発生する片寄り量の2倍以上とされていることから、上記のように自動調心プーリのプーリ本体上でベルトが幅方向に片寄ったときでも、通常、ベルトは、その幅全体が枢軸の位置を越えることはなく、常にそのベルト幅内に枢軸の位置を跨いで走行するようになる。
そのようにベルトがその幅内に枢軸の位置を跨いで走行する状態では、軸荷重の全部が枢軸周りの一方の向きにのみ回動モーメントを生じさせることがないから、そのモーメント力はベルトの片寄りに応じて適切な度合いで漸増する。しかも、ベルト幅が広いほど、その捻りに対する抵抗力が大きくなり、これがプーリ本体の揺動(回動変位)を抑える働きをする。そのため、ベルトの自然な片寄りに対して自動調心プーリのプーリ本体が過度に大きく回動変位することはない。
これに加えて、ベルトの幅が広いほど、上記プーリ本体の軸荷重方向への変位によってその幅内に生じる張力差が大きくなるから、上述したクラウン作用が強くなり、上記自動調心プーリによるベルトの走行位置を戻す力が大きくなる。
従って、上記構成のベルト駆動装置では、通常の運転状態でベルトが自然に幅方向に片寄ると、その片寄りに対して自動調心プーリのプーリ本体が適度に回動変位することによってベルトの走行位置を戻すようになり、大きな外乱などを受けない限りは、ベルトの片寄り量が比較的小さいうちに、これに対応する比較的小さな回動変位によってベルトの走行位置を戻すことができる。
つまり、上記の構成によれば、ベルトの幅を適度に広くしたことにより、通常は自動調心プーリのプーリ本体が過大に回動変位することがなく、従って、その片寄ったベルトが戻り難くなったり、さらには片寄ったまま戻らなくなったりすることを防止でき、ひいてはベルトの滑落も防止することができる。
上記のようなベルト駆動装置において、より好ましいのは、上記ベルトとプーリ本体の外周面との間の摩擦係数μを、該プーリ本体が揺動して枢軸の周りに最大限に回動変位したときでも、そのプーリ本体の回転中心軸が軸荷重の方向に対してなす角度をθとして、 μ ≧ cotθ (0<θ≦π/2) という関係式を満たす値とすることである(請求項2の発明)。
ここで、プーリ本体の回転中心軸が軸荷重の方向に対してなす角度というのは、その回転中心軸線と軸荷重のベクトルとが両方含まれる仮想平面において両者のなす角度のことであり、この角度θは幾何学的に、0≦θ≦π/2の関係にあり、それが小さいということは、軸荷重の方向について高低をみれば、プーリ本体の外周面の傾斜が急である、ということである。
そして、プーリ本体が回動変位したときに上記仮想平面においてベルトに作用する力の釣り合いは、例えば図11のようになり、張力によってベルトをプーリ外周に押し付ける力Fとそのプーリ外周からの反力F0との合力として、そのプーリ外周に沿ってベルトを滑らせてさらに片寄らせるように作用する力F1が加わる一方で、そのベルトとプーリ外周との間に摺動摩擦力Dが作用する。
そのため、仮に外乱などによってベルトがプーリ本体の端部付近まで片寄り、これに応じてプーリ本体が最大限に回動変位して、その外周面の傾斜が急になっても(θが小さくなっても)、上記摩擦力Dがベルトをプーリ外周に沿って滑らせる力F1以上であれば、ベルトがプーリ本体から滑り落ちることはない。すなわち、ベルトとプーリ本体の外周面との間の摩擦係数をμとし、図を参照して、
D = μ×F0 = Fsinθ (0<θ≦π/2)
F1 = Fcosθ (0<θ≦π/2) であるから、
D = μ×Fsinθ ≧ F1 = Fcosθ となり、従って、
μ ≧ cosθ/sinθ =cotθ (0<θ≦π/2) という関係式を満たせば、ベルトがプーリ本体から滑り落ちることはないのである。
そのように万が一のベルトの滑落を防止するという作用からみれば、本発明のベルト駆動装置は、複数のプーリにベルトを巻き掛けてなるものであって、
上記複数のプーリのうちの少なくとも1つが、プーリ本体を、その回転中心軸に沿って見て、軸荷重の方向に対し該プーリ本体の回転方向前側に所定角度傾倒した枢軸の周りに揺動自在に支持してなる自動調心プーリであり、
上記ベルトとプーリ本体の外周面との間の摩擦係数μは、該プーリ本体が揺動して枢軸の周りに最大限に回動変位したときでも、そのプーリ本体の回転中心軸が軸荷重の方向に対してなす角度をθとして、 μ ≧ cotθ (0<θ≦π/2) の関係式を満たす値とされていることを特徴とするものである(請求項3の発明)。
また、別の観点から、本発明は、上述の如く自動調心プーリを備えたベルト駆動装置において用いられるベルトであって、そのベルト駆動装置において仮に自動調心プーリを設けない場合に1回転の間に生じる片寄り量の2倍以上の幅を有することを特徴とするものである(請求項4の発明)。このようなベルトを、上記自動調心プーリを備えたベルト駆動装置において使用することにより、上記請求項1の発明の作用が得られる。
その場合に、上記ベルトとプーリ本体の外周面との間の摩擦係数μを、該プーリ本体が揺動して枢軸の周りに最大限に回動変位したときでも、そのプーリ本体の回転中心軸が軸荷重の方向に対してなす角度をθとして、 μ ≧ cotθ (0<θ≦π/2) の関係式を満たす値とすれば(請求項5の発明)、上記請求項2の発明の作用が得られる。
或いは、本発明は、上述の如く自動調心プーリを備えたベルト駆動装置において用いられるベルトであって、プーリ本体の外周面との間の摩擦係数μを、該プーリ本体が揺動して枢軸の周りに最大限に回動変位したときでも、そのプーリ本体の回転中心軸が軸荷重の方向に対してなす角度をθとして、 μ ≧ cotθ (0<θ≦π/2) の関係式を満たす値としたものである(請求項6の発明)。このベルトを使用することによって、上記請求項4の発明の作用が得られる。
尚、上記ベルトとしては、平ベルト、歯付ベルト(タイミングベルト)等、その種類は問わないが、平ベルトの場合は、その内周面及び外周面のいずれをプーリ本体に接触させるようにしてもよく、歯付ベルトの場合は、その伝動面の背面をプーリ本体に接触させるようにする。
以上のように、本発明に係るベルト駆動装置によると、ベルトの片寄りに伴い軸荷重によって回動変位し、これによりベルトの走行位置を調整する自動調心プーリを備える場合に、プーリのミスアライメントやベルト自体の癖などによって自然に発生するベルトの1回転あたりの片寄り量を特定し、この片寄り量の2倍以上の幅のベルトを用いることによって、上記自動調心プーリの回動変位がベルトの片寄りに対し過度に大きくならないようにして、それが元の走行位置に戻り難くなったり、さらには片寄ったまま戻らなくなったりすることを防止でき、ひいてはベルトの滑落も防止することができる。
また、上記ベルト及びプーリ本体間の摩擦係数を、この両者間の摩擦力がプーリ本体の最大回動時でもベルトを滑落させる力以上となるように設定することで、仮に外乱などによってベルトが大きく片寄り、プーリ本体が最大限に回動変位したときの万が一の滑落も防止することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るベルト駆動装置を自動車用エンジンの補機駆動システムAとした場合のベルト及びプーリのレイアウトを模式的に示す。同図において符号1は、駆動軸であるエンジンEのクランクシャフト(図示せず)に回転一体に取付固定されたクランクプーリである。また、符号2〜6はそれぞれ従動プーリであり、例えば、2は、エンジン補機であるパワーステアリング用ポンプ(図示せず)の回転軸に回転一体に取付固定されたPSポンププーリ、3は、同様にオルタネータ(図示せず)の回転軸に固定されたオルタネータプーリであり、4は、同様に空調機用コンプレッサ(図示せず)の回転軸に固定されたコンプレッサプーリである。さらに、5は、伝動ベルト8の張力を調整するためのオートテンショナ7のテンションプーリであり、6はアイドラプーリである。
上記クランクプーリ1、PSポンププーリ2、オルタネータプーリ3、コンプレッサプーリ4、テンションプーリ5及びアイドラプーリ6はいずれも平プーリからなり、これらのプーリ1〜6間に平ベルトからなる伝動ベルト8が巻き掛けられている。この平ベルト8は、一例として心線を有するコード平ベルトなどとすればよい。
上記オートテンショナ7は、詳細は図示しないが、エンジンE側に固定される固定部70と、この固定部70に回動可能に支持された回動アーム71とを備え、この回動アーム71の先端側にテンションプーリ5が回動自在に支持されている。その固定部内には捩りコイルばねなどのばね部材が収容されており、捩りトルクによって回動アーム71を、テンションプーリ5がベルト8を押圧する方向に回動付勢して、これによりベルト8の張力を略一定に維持するようになっている。
上記平ベルト8は、上記クランクプーリ1及び各補機の駆動プーリ2〜4にあってはそれぞれ伝動面である内周面をプーリ2〜4に接触させた正曲げ状態で、またテンションプーリ5及びアイドラプーリ6にあってはそれぞれ外周面(背面)をプーリ5,6に接触させた逆曲げ状態で巻き付けられて、いわゆるサーペンタインレイアウトで巻き掛けられている。そして、エンジンEの運転に伴うクランク軸(クランクプーリ1)の回転により、ベルト8がクランクプーリ1→テンションプーリ5→PSポンププーリ2→オルタネータプーリ3→アイドラプーリ6→コンプレッサプーリ4→クランクプーリ1の順に図において時計回り方向に走行して、各補機を駆動するようになっている。
尚、図示のベルト駆動装置の構成はあくまで一例に過ぎず、如何なる意味においても本発明の構成を限定するものではない。本発明に係るベルト駆動装置は、上記のようなエンジンの補機駆動システムに限らず、各種の産業機械、その他の機器に利用することが可能であり、その場合に必要に応じて種々のレイアウトを採用することができる。
(自動調心プーリ)
この実施形態では、上記アイドラプーリ6が、ベルト8の片寄りに伴いその片寄りを戻すように揺動して、そのベルト8の走行位置を自動調整する自動調心プーリとされている。その具体的な構造は、例えば図2及び図3に示すように、ベルト8の巻き掛けられる円筒状のプーリ本体60と、このプーリ本体60をベアリング61によって回転中心軸C1の周りに回転自在に支持する筒状の軸部材62と、この軸部材62を上記回転中心軸C1に直交する枢軸C2の周りに揺動自在となるように、該枢軸C2を構成するピン64を介して支持する支持ロッド63と、からなる。
上記支持ロッド63は、その長手方向の基端側に鍔部63aが形成され、この鍔部63aがブラケットB等に締結されてエンジンEのシリンダブロックの側壁に固定される一方、上記軸部材62の筒孔に挿入される先端側の部位は、図3(b)に示すように断面円形ロッドを縦に半割りにカットしたような断面D字状に形成されていて、その外周の平坦面63b(以下、Dカット面という)が上記枢軸C2に略直交するように配置されている。
また、上記支持ロッド63の先端側には、断面D字状に形成された部位の中央付近で上記枢軸C2に沿って支持ロッド63の半径方向に延びる断面円形の貫通孔が形成され、この貫通孔の一端(図の下端)が上記Dカット面63bに開口する一方、該貫通孔の他端は、支持ロッド63先端側の外周の円弧面に開口している。
一方、上記軸部材62の筒孔は、上記支持ロッド63先端側の断面形状に対応して断面D字状に形成されている。すなわち、軸部材62の筒内面には、支持ロッド63のDカット面63bに対し枢軸C2方向に対向する平坦な対向面62aが該枢軸C2に直交するように形成されるとともに、上記支持ロッド63の外周円弧面を囲むように円弧面が形成され、これら対向面62a及び円弧面には、それぞれ、支持ロッド63の貫通孔に対応する部位に開口し、枢軸C2に沿って延びるように断面円形の支持孔が形成されている。
そして、上記支持ロッド63の貫通孔に上記ピン64が挿通され、このピン64の両端部がそれぞれ上記軸部材62の支持孔に嵌入されている(即ち、ピン64は、プーリ本体60の幅の略中央部に配置され、支持ロッド63のDカット面63b及び軸部材62の対向面62aに直交している)。また、上記ピン64の外周面と支持ロッド63の貫通孔内面との間には円筒状の樹脂製摺動材65が配設され、一方、支持ロッド63のDカット面63bと軸部材62の対向面62aとの間には、概略円盤状をなすニードルベアリング66(ボールベアリング等でもよい)が介設されている。
この構成により、上記軸部材62及びプーリ本体60は、上記支持ロッド63に対してピン64(枢軸C2)の周りに揺動自在に支持されており、ベルト8の幅の略中央位置がプーリ本体60の幅の略中央位置、即ち該プーリ本体60の外周面上で枢軸C2に対応する幅方向の位置(以下、単に枢軸C2の位置ともいう)からずれると、このベルト8の張力により軸部材62に作用する軸荷重が上記枢軸C2の周りに発生させる回動モーメントを受けて、上記ピン64の周りに揺動するようになっている。
尚、上記支持ロッド63のDカット面63bに連なるロッド外周の円弧面と、これを取り囲む軸部材62の円弧状筒内面との間には、上記ピン64を軸として軸部材62がプーリ本体60とともに揺動することを許容するための隙間が形成されている。
そうして、上記アイドラプーリ6は、上記図1に示すような補機駆動システムAにおいて、図4に模式的に示すように回転中心軸C1に沿って見て、ベルト8の張力により発生する軸荷重Lの方向を基準として、枢軸C2をプーリ本体60の回転方向前側に、即ち、図に矢印Rで示すベルト走行方向の前側に、所定角度αだけ傾倒させた状態で配設されている。これにより、該プーリ本体60に巻き掛けられて走行するベルト8が幅方向に片寄ったときには、これによる軸荷重位置のずれによってプーリ本体60が軸荷重方向に傾斜するとともに、ベルト8の走行方向に対し斜交いになって、当該ベルト8の片寄りを戻すようになっている。
詳しくは、図5に一例を示すように、ベルト8の幅方向中央位置がプーリ本体60の幅の略中央位置にあるときには、軸荷重のベクトルLが枢軸C2と交差し、その分力Loが枢軸C2に沿って作用するとともに、分力L1が枢軸C2に直交するように作用する。一方、図示しないが、ベルト8が幅方向(プーリ本体60の回転中心軸C1の方向)に片寄ると、その片側に軸荷重Lがずれて作用するようになり、こうなると、軸荷重の分力L1により軸部材62に枢軸C2周りの回転モーメントが働いて、該軸部材62がプーリ本体60とともにピン64(枢軸C2)の周りに揺動(回動変位)するようになる。
すなわち、上記の如くベルト8が片寄って軸荷重Lの位置が枢軸C2の位置からずれたときでも、仮にその軸荷重Lの方向が枢軸C2と平行であれば、このときにはL=Lo、L1=0となり、枢軸C2周りの回転モーメントは発生しないが、この実施形態のように軸荷重Lの方向が枢軸C2の方向から角度αだけ傾いていれば、その軸荷重Lの分力L1によって枢軸C2周りの回転モーメントが発生し、これにより軸部材62及びプーリ本体60が枢軸C2の周りに回動変位することになるのである。ここで、上記角度αが、軸荷重Lの方向を基準とする枢軸C2の傾倒角に相当する。
そして、この実施形態では、上記図4等に示すように枢軸C2が軸荷重Lの方向に対しプーリ本体60の回転方向前側に傾倒しているから、上記の如くプーリ本体60及び軸部材62が軸荷重の分力L1によってピン64(枢軸C2)の周りに揺動するときには、該プーリ本体60は、軸荷重Lに直交する方向に見て図6(図4のVI矢視図)に示すように、その軸荷重Lの方向(図の上下方向)についてベルト8の片寄ってきた側が低く、反対側が高くなるように傾斜し、これと同時に、その軸荷重Lの方向に見て図7(図4のVII矢視図)に示すように、ベルト8の片寄ってきた側がベルト走行方向Rの前側になるように、ベルト8の走行方向に対して斜交いになる。尚、上記図6及び図7においてベルト8は、それが片寄ってプーリ本体60が回動変位した状態のみを仮想線(二点鎖線)で示している。
そのようにプーリ本体60が回動変位し、上記図6のように軸荷重Lの方向へ傾斜することによって、プーリ本体60の外周面は従来周知のクラウンのついたプーリのように傾斜した状態になるから、クラウン作用によってベルト8がその張力の高い側、即ちプーリ本体60の幅の中央寄りに引き寄せられることになる。また、上記図7のようにプーリ本体60がベルト8の走行方向に対して斜交いになることによって、ベルト8の走行方向は直接的にプーリ幅の中央寄りに向けられることになる。こうしてベルト8の走行位置がプーリ幅の中央寄りに戻されるようになり、ベルト8の蛇行や片寄り走行が防止される。
(ベルトの幅と摩擦係数)
ところで、上述の如く自動調心プーリ(アイドラプーリ6)を用いて平ベルト8の蛇行や片寄り走行を防止するようにしたベルト駆動装置において、本願の発明者が種々のベルトを用い、様々なレイアウトで走行試験を行った結果、伝動ベルト8として比較的幅の狭いものを用いた場合には、このベルト8の片寄りによって上述の如くアイドラプーリ6のプーリ本体60が回動変位しても、ベルト8の走行位置が戻されることなく片寄ったままになることがあり、さらには滑落する虞れもあることが分かった。
そのように自動調心プーリの機能が損なわれる理由は以下のように考えられる。すなわち、自動調心プーリでは、ベルト8の片寄りに応じてプーリ本体60を揺動させて、図8に誇張して仮想線で示すように、そのベルト8の片寄ってきた側を軸荷重Lの向きに変位させるようにしており、このプーリ本体60の回動変位に伴い入り側及び出側の両方でベルトスパン長さが短くなるから、ベルト8の張力が低下する(緩む)ことになる。
そうしてベルト8の片寄り及びプーリ本体60の回動変位によって当該ベルト8が緩むということは、このベルト8の片寄りを戻すときには、単にベルト8をプーリ本体60の外周に沿って滑らせるだけでなく、それを張り直さなくてはならないということであり、その分、必要な戻し力や仕事量が大きくなってしまうのである。
そのような片寄りを戻すための仕事量の増大は、プーリ本体60の回動変位量があまり大きくないときには殆ど問題にならず、実質、無視することができる。すなわち、上記図6,7などのように、ベルト8がその幅内にプーリ本体60の幅の中央位置(枢軸の位置)を跨いで走行しているときには、図9に模式的に示すように、張力によってベルト8からプーリ本体60に作用する分布荷重f1,…,f2,…のうち、枢軸の位置C*よりも幅方向一側(図の左側)のものf1,f1,…のみが枢軸C2周りの一方の向き(図の反時計回り)に回動モーメントを生じさせ、残りの分布荷重f2,…は逆向きのモーメントを生じさせる。
言い換えると、上記ベルト8からプーリ本体60に作用する分布荷重f1,…,f2,…の合力F(軸荷重Lに相当する力であり、以下、軸荷重相当力ともいう)の全てがプーリ本体60に回動モーメントを生じさせるわけではないので、そのモーメント力はベルト8の片寄りに応じて漸増することになる。そして、そのモーメント力によって上述の如くプーリ本体60が回動変位することで、ベルト8の走行位置をその片寄りが大きくなる前に戻すことができる。
これに対し、ベルト8の幅が狭いときには図10に模式的に示すようになり、上記図9の場合とベルト8の片寄り量自体は同じであっても、ベルト8の幅全体がプーリ本体60の幅の中央位置(枢軸の位置C*)を越えてしまう。こうなると、上記分布荷重f1,…,f2,…の全て、即ち軸荷重相当力Fの全てが上記一方の向きの回動モーメントを生じさせることになり、回動モーメントの急激な増大によってプーリ本体60の回動変位量が過度に大きくなってしまう。
そうしてプーリ本体60の回動変位が過大なものになると、上記したベルト8の緩みが大きくなって、このベルト8を張り直すための仕事量が無視できないほど大きくなるとともに、図11に示すようにプーリ本体60の傾斜が急になるから、その外周に沿って片寄ってきたベルト8の張力が当該ベルト8をさらに片寄らせるように作用することになり、このベルト8の片寄りを戻すための仕事量が相乗的に増大することになる。
特に、この実施形態のようにオートテンショナ7を備えたものでは、上記のようにベルト8が緩めば、これを押圧するようにテンションプーリ5が移動して、ベルト8の張力を維持しようとするから、その後、ベルト8の片寄りを戻そうとすれば、テンションプーリ5を押し返しながらベルト8を張り直さなくてはならず、そのために必要な力がかなり大きくなってしまう。
また、そうしてベルト8の片寄りを戻すのに大きな力が必要になる一方で、ベルト8の幅が狭いときには、上記のようにプーリ本体60が回動変位してその外周がクラウンのように傾斜した状態になっても、狭いベルト幅内にて生じる張力差があまり大きくはならないから、ベルト8の片寄りを戻すクラウン作用が弱くなってしまう。
以上、要するに、自動調心プーリ(アイドラプーリ6)に巻き掛けるベルト8の幅が狭いときには、その走行位置の片寄りによってプーリ本体60の過大な回動変位が起こりやすく、片寄ったベルト8を元の走行位置に戻すのに必要な仕事量が大きくなる上に、そのベルト8を戻すための力は弱くなるので、ベルト8の片寄りをなかなか戻すことができなくなり、場合によってはベルト8が片寄ったままになってしまうのである。
さらに、そうしてプーリ本体60が大きく回動変位するほど、その外周の傾斜が急になるから、上記したように、その外周に沿ってベルト8をさらに片寄らせるように作用する力F1が大きくなって(図11参照)、この力F1がベルト8とプーリ本体60の外周面との間の摩擦力Dを上回れば、ベルト8がプーリ本体60から滑り落ちることもある。
上述の如き考察に基づいて、本願の発明者は、まず、補機駆動システムAのアイドラプーリ6を自動調心プーリではなく通常の平プーリとした試験機を準備し、プーリ1〜5のミスアライメントを所定の規格内に収めた上で、ベルト8の任意の箇所がアイドラプーリ6を出発して、1回転して戻ってくるまでに生じる幅方向の片寄り量を実際に測定した。この測定は所定回数、繰り返して行い、その結果から、プーリ1〜5のミスアライメントやベルト8の癖などによって補機駆動システムAにおいて自然に発生する通常の片寄り量を特定した。
そうして、この実施形態の補機駆動システムAでは、ベルト8の幅を、上記の如く特定した片寄り量の2倍以上に設定している。こうしたことで、エンジンEの通常の運転状態では、ベルト8が1回転する間にアイドラプーリ6のプーリ本体60上で幅方向に片寄っても、このベルト8の幅全体がプーリ本体60の幅の略中央位置(枢軸の位置)を越えることがなく、その幅内に枢軸C2の位置を跨いだままになる。
そして、上述したように、ベルト8の片寄りに応じて働くモーメント力によってプーリ本体60が揺動して、ベルト8の走行位置がプーリ本体60の幅の中央(枢軸の位置)寄り)に戻されるので、ベルト8は、図6,7や図9に示すように常にその幅内に枢軸の位置C*(図9に示す)を跨いで走行するようになる。このため、通常のベルト8の片寄りによってプーリ本体60が過度に大きく回動変位することはなく、従って、その片寄りがなかなか戻らなくなったり、さらには片寄ったままになることがない。
これに加えて、この実施形態では、上記ベルト8の背面とプーリ本体60の外周面との間の摩擦係数μを、該プーリ本体60が揺動して枢軸C2の周りに最大限に回動変位したときでも、プーリ本体60の回転中心軸C1が軸荷重Lの方向に対してなす角度をθとして、 μ ≧ cotθ (0<θ≦π/2) という関係式を満たすように設定しており、このことで、ベルト8とプーリ本体60の外周面との間の摺動摩擦力を確保して、プーリ本体60が大きく傾斜したときでも、そこからベルト8が滑落することを防止することができる。
すなわち、上記図11に示すように、アイドラプーリ6のプーリ本体60が回動変位したときに、その回転中心軸C1と軸荷重Lのベクトルとが両方含まれている仮想平面において、ベルト8には、その張力によって当該ベルト8をプーリ本体60の外周面に押し付けるように作用する軸荷重相当力Fと、そのプーリ本体60の外周面からの反力F0とが作用し、それらの合力として、ベルト8をプーリ本体60の外周に沿って滑り落とすように作用する力F1が作用する。そして、その力F1とは逆向きに、ベルト8とプーリ本体60の外周面との間には摺動摩擦力Dが作用する。
そして、ベルト8の滑落を防止するためには、上記摺動摩擦力Dが、プーリ本体60の最大回動時においてその外周面の傾斜が最大限に急になったときでも、上記ベルト8を滑落させる力F1以上であればよいから、
摺動摩擦力D = μ×F0 = Fsinθ (0<θ≦π/2)
ベルト8を滑落させる力F1 = Fcosθ (0<θ≦π/2) であれば、
D = μ×Fsinθ ≧ F1 = Fcosθ となり、従って、
μ ≧ cosθ/sinθ =cotθ (0<θ≦π/2) という関係式を満たせばよいのである。
したがって、上述した実施形態の補機駆動システムAによると、ベルト8の幅を適度に広く設定したことで、エンジン1の通常の運転状態であれば、自動調心プーリであるアイドラプーリ6の作用によって、ベルト8の走行位置を片寄りが比較的小さいうちに中央寄りに戻して、その蛇行や片寄り走行を防止することができる。
その際、アイドラプーリ6のプーリ本体60が過度に大きく回動変位することがないから、片寄ったベルト8が戻り難くなったり、片寄ったままになったりすることがなく、ひいてはプーリ本体60からのベルト8の滑落も防止できる。
さらに、上記プーリ本体60の外周面に対するベルト8背面の摩擦係数の設定により、仮に大きな外乱などによってベルト8がプーリ本体60の端部付近まで片寄り、これに応じて該プーリ本体60が最大限に回動変位したとしても、張力によってベルト8がプーリ本体60から引き落とされることはなく、万が一のベルトの滑落も防止できる。
尚、上述した補機駆動システムAでは、図1に示すように、自動調心プーリであるアイドラプーリ6に対してベルト8を比較的大きな角度で巻き付けており(図の例では巻付け角は180°に近い)、こうすることで、巻き付き角度の小さい場合に比べてプーリ本体60に枢軸C2の周りの回動モーメントを作用させやすいが、これに限るものではなく、ベルト8の片寄りに応じてプーリ本体60を自動的に回動変位させるためには、ベルト8の巻付け角を少なくとも10°以上にすればよい。
また、例えば図12に一例を示すように、アイドラプーリ6へのベルト8の巻付け角を180°以上にすれば、プーリ本体60に枢軸C2周りの回動モーメントは十分に作用させながら、ベルト8からプーリ本体60への分布荷重のうち互いに直径方向に対向する成分同士をキャンセルさせて、軸部材62や支持ロッド63、或いはピン64などに加わる軸荷重L自体は小さくすることができ、それらの部材の負荷を減らして、耐久性を向上できる。
また、上記アイドラプーリ6(自動調心プーリ)においてプーリ本体60が軸荷重Lの方向に傾斜してベルト8の片寄りを戻す作用(クラウン作用)と、該プーリ本体60がベルト8の走行方向に対して斜交いになって戻す作用とでは、後者の方がベルト8の片寄りを効果的に防止できることが多いので、その斜交いになって片寄りを戻す作用を有効に利用するために、枢軸C2の傾倒角αは0度を越え45度以下の範囲に設定するのが好ましい。
また、上記アイドラプーリ6においては、支持ロッド63のDカット面63bと軸部材62の対向面62aとの間に介設したニードルベアリング66によって、枢軸C2方向の軸荷重成分を受けるようにしているが、これに限るものではなく、上記Dカット面63bと対向面62aとの間に樹脂製等の摺動材を介設するだけでもよいし、それら両面63b,62aを直接、摺接させるようにすることもできる。
また、上記アイドラプーリ6においては、枢軸C2をピン64によって構成しているが、これに限らず、上記枢軸C2を例えば上記支持ロッド63のDカット面63b上に成形した半球状凸部によって構成してもよいし、或いは、該Dカット面63bに凹設した窪みに球体を嵌めこむことによって構成してもよい。これらの場合には、軸部材62の対向面62a上に上記半球状凸部や球体を嵌めこむための窪みを凹設すればよい。
さらに、上記アイドラプーリ6においては、プーリ本体60及び軸部材62の揺動中心である枢軸C2が、該プーリ本体60の回転中心軸C1と直交しているが、これに限るものではなく、該枢軸C2は、プーリ本体60の回転中心軸C1に沿って見たときに軸荷重Lの方向に対して所定角度α傾倒していれば、回転中心軸C1とは交差しなくてもよい。
また、上述した補機駆動システムAでは、自動調心プーリをアイドラプーリ6として用いているが、これに限らず、例えばテンションプーリ5など、クランクプーリ1以外のいずれのプーリ2〜5として用いてもよい。また、ベルト8としては、平ベルト以外に歯付ベルトを用いることもできる。
さらに、本発明の自動調心プーリは、上記補機駆動システムSに限らず、それ以外にも各種の産業機械、その他の機器に利用することが可能であり、その場合にも駆動プーリ以外の任意のプーリとして用いることができる。例えば、ベルトの長さや接触角の調節、ベルト走行方向の変更等、ベルト駆動装置における種々の用途に自動調心プーリを利用することができる。
以上、説明したように、本発明に係るベルト駆動装置は、例えば平ベルトの耐久性や伝動能力の低下、或いは製造コストの上昇を招くことなく、その蛇行や片寄りを確実に防止することができるから、伝動効率の非常に高い平ベルトを十分に活用できるようになり、例えば自動車、農機、各種産業機械、家電製品、その他のあらゆる装置に適用して、高い省エネ効果が得られる極めて利用可能性の高いものである。
本発明に係るベルト駆動装置をエンジンの補機駆動装置に適用した場合の概略構成例を示す図である。 自動調心プーリの構成例を示す枢軸の方向に見た一部断面図である。 同プーリを枢軸と直交する方向に見た一部断面図である。 同プーリの使用状態を一部断面で示す側面図である。 同使用状態において軸荷重により軸部材に回転モーメントが発生することを説明するための斜視図である。 同使用状態においてベルトが片寄ったときのプーリ本体の回動変位の様子を軸荷重Lに直交する方向(図4の矢印VIの方向)に見て模式的に示す説明図である。 軸荷重Lの方向(図4の矢印VIIの方向)に見た図6相当図である。 同プーリのプーリ本体の回動変位によってベルトが緩む様子を誇張して示す説明図である。 ベルトが枢軸の位置を跨いで走行する場合の分布荷重と、その合力によって発生する回動モーメントとの関係を説明する図である。 ベルト幅が狭い場合の図10相当図である。 プーリ本体が回動変位したときにベルトに作用する力の釣り合いを説明する図である。 アイドラプーリへベルトを180°以上、巻き付けた他の実施形態に係る図1相当図である。
符号の説明
A 補機駆動システム(ベルト駆動装置)
1〜5 プーリ
6 アイドラプーリ(自動調心プーリ)
8 ベルト
60 プーリ本体
C1 回転中心軸
C2 枢軸
L 軸荷重

Claims (6)

  1. 複数のプーリにベルトを巻き掛けてなるベルト駆動装置であって、
    上記複数のプーリのうちの少なくとも1つが、プーリ本体を、その回転中心軸に沿って見て、軸荷重の方向に対し該プーリ本体の回転方向前側に所定角度傾倒した枢軸の周りに揺動自在に支持してなる自動調心プーリであり、
    上記ベルトは、仮に上記自動調心プーリを設けない場合に1回転の間に生じる片寄り量の2倍以上の幅を有するものとされていることを特徴とするベルト駆動装置。
  2. 請求項1に記載のベルト駆動装置において、
    上記ベルトとプーリ本体の外周面との間の摩擦係数μは、該プーリ本体が揺動して枢軸の周りに最大限に回動変位したときでも、そのプーリ本体の回転中心軸が軸荷重の方向に対してなす角度をθとして、 μ ≧ cotθ (0<θ≦π/2) の関係式を満たす値とされていることを特徴とするベルト駆動装置。
  3. 複数のプーリにベルトを巻き掛けてなるベルト駆動装置であって、
    上記複数のプーリのうちの少なくとも1つが、プーリ本体を、その回転中心軸に沿って見て、軸荷重の方向に対し該プーリ本体の回転方向前側に所定角度傾倒した枢軸の周りに揺動自在に支持してなる自動調心プーリであり、
    上記ベルトとプーリ本体の外周面との間の摩擦係数μは、該プーリ本体が揺動して枢軸の周りに最大限に回動変位したときでも、そのプーリ本体の回転中心軸が軸荷重の方向に対してなす角度をθとして、 μ ≧ cotθ (0<θ≦π/2) の関係式を満たす値とされていることを特徴とするベルト駆動装置。
  4. プーリ本体が、その回転中心軸に沿って見て、軸荷重の方向に対し該プーリ本体の回転方向前側に所定角度傾倒した枢軸の周りに揺動自在に支持されている自動調心プーリを備えたベルト駆動装置において、その自動調心プーリを含む複数のプーリに巻き掛けられるベルトであって、
    上記ベルト駆動装置において仮に自動調心プーリを設けない場合に1回転の間に生じる片寄り量の2倍以上の幅を有することを特徴とするベルト。
  5. 請求項4に記載のベルトにおいて、
    上記プーリ本体の外周面との間の摩擦係数μが、該プーリ本体が揺動して枢軸の周りに最大限に回動変位したときでも、そのプーリ本体の回転中心軸が軸荷重の方向に対してなす角度をθとして、 μ ≧ cotθ (0<θ≦π/2) の関係式を満たす値とされていることを特徴とするベルト。
  6. プーリ本体が、その回転中心軸に沿って見て、軸荷重の方向に対し該プーリ本体の回転方向前側に所定角度傾倒した枢軸の周りに揺動自在に支持されている自動調心プーリを備えたベルト駆動装置において、その自動調心プーリを含む複数のプーリに巻き掛けられるベルトであって、
    上記プーリ本体の外周面との間の摩擦係数μが、該プーリ本体が揺動して枢軸の周りに最大限に回動変位したときでも、そのプーリ本体の回転中心軸が軸荷重の方向に対してなす角度をθとして、 μ ≧ cotθ (0<θ≦π/2) の関係式を満たす値とされていることを特徴とするベルト。
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