JP2006297187A - 環境負荷を軽減する家畜糞の処理方法 - Google Patents

環境負荷を軽減する家畜糞の処理方法 Download PDF

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正尋 田所
Toshiharu Aibe
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Abstract

【課題】 本発明の課題は、地球環境への負荷の軽減しつつ家畜糞を処理する方法を提供することである。
【解決手段】 家畜糞を堆肥化過程を経ないで燃焼し過剰に持ち込まれた窒素を系外に放出し、その過程で発生するエネルギーを発電に活用し、さらに生成した家畜糞燃焼灰と鉱酸を反応させた肥料組成物を得、この肥料組成物を耕地に施肥し、収穫された作物を家畜の飼料に供することを特徴とする家畜糞の処理方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、家畜糞排出物の処理に当たって、地球環境を過剰な窒素汚染から開放し、持続可能な農業生産が維持されるシステマティックな環境保全を実現する家畜糞の処理方法に関する。
昨今、農業生産環境の恒常性と健全性さらには省力化が取りざたされる中、施用される肥料自体も無機質肥料主体型から有機主導型へと移行しつつある。しかし、有機質肥料も万能とは言えず、作物に対する肥料成分の可給度すなわち吸収率が60%以下であると言われ、残りの40%は耕地に蓄積していくことになる。一方で畜産業から排出される家畜糞由来の窒素量は、農業の生産現場で作物生産に要する施肥窒素量をはるかに凌駕している。このことは資源の有効活用に逆行するだけでなく、農業の生産環境の窒素収支を著しく乱して窒素過多になり、窒素汚染による人類の生活環境に対する負荷は激しく、不可避な問題として耳目を集めている。
ところがこのように有機質資材・家畜糞廃棄物の肥効率を改善するためには、発酵法によるいわゆる「堆肥化」や「ぼかし化法」あるいは酵素処理法などが提案されている。前者は処理が完遂するまでに長時間を要すと同時に広い処理空間と管理にマンパワーを要し、処理期間中にガス・臭気・衛生害虫の発生等周辺環境に及ぼす悪影響も大きく、運搬経路から重篤な感染性病害が蔓延する危険性が指摘されている。従って家畜糞廃棄物を家畜糞燃焼灰にする事で、エネルギーの利用と過剰な窒素成分を無害な窒素ガスとして系外に排出し、感染性病原菌を撲滅する。また家畜糞排出・需給バランスがインプット過剰に有り、環境破壊無しには処理できていない。後者は酵素材の価格が高く、肥料原料の処理に使えるコストバランスではないので、工業規模での実施化の例はほとんど無い。
一方で畜産廃棄物として多量に発生する家畜糞の一部は焼却処分されているが、そこで発生した家畜糞燃焼灰は、リン・カリウム・カルシウム・マグネシウム・ナトリウム等の成分を含有し強いアルカリ性を呈するため、そのままでは結局産業廃棄物に姿を変え甚大な処理コストの負担を要している。そこで、本発明者らは、先にこれら畜糞燃焼灰をリン酸で処理することにより肥料として提供する発明の出願(特許文献1)(特願2003−360859号)を行った。
特願2003−360859号
本発明の課題は、地球環境への負荷の軽減しつつ家畜糞を処理する方法を提供することである。
本発明は、家畜糞廃棄物を家畜糞燃焼灰にすることで、エネルギーの利用と過剰な窒素成分を無害な窒素ガスとして系外に排出し、加えて感染性病原菌を撲滅し環境衛生上の重要な問題を解決する。牛糞燃焼灰や豚糞燃焼灰・鶏糞焼成灰等に例示されるアルカリ性の資材とリン酸・硫酸・硝酸等に例示される酸性の資材が反応する際の中和熱も反応物の乾燥に有効活用され、さらには家畜糞燃焼灰に含まれる肥料成分を可給化できる肥料とすることができる。引き続いて必要量の肥料成分を適当な時期に作物に施肥することで、地球環境の持続安定性を維持確保し得るものである。
即ち、本発明は家畜糞を堆肥化過程を経ないで燃焼し過剰に持ち込まれた窒素を系外に放出し、その過程で発生するエネルギーを発電に活用し、さらに発生した家畜糞燃焼灰と鉱酸を反応させた肥料組成物を得、この肥料組成物を耕地に施肥し、収穫された作物を飼料に供し収穫された作物を家畜の飼料に供することを特徴とする家畜糞の処理方法である。
上記家畜糞燃焼灰と鉱酸を反応させた肥料組成物は、家畜糞燃焼灰100重量部に、10〜150重量部の鉱酸を反応させて得られるもの、さらには、家畜糞燃焼灰100重量部に、40〜100重量部の鉱酸を反応させて得られるものである。そして、鉱酸としては硫酸、リン酸及び硝酸から選ばれる1種または2種以上が用いられる。
本発明により得られた家畜糞燃焼灰の鉱酸処理物からなる肥料は、pHが中性領域(pH4〜8)にあるため取り扱い上安全であり、顕著な肥効が発揮され作物の良好な生育を確保できる。また原料の家畜糞燃焼灰の利用は産業廃棄物の有効活用と物質循環の健全化に大きく貢献でき、地球環境の保全に資する。
さらに、本発明により家畜糞燃焼灰の鉱酸処理物からなる肥料を得ることは、飼料としてその地域に持ち込まれた過剰の窒素成分を、環境汚染に結び付けることなく無害なものとして大気中に還元できる。
これらのことから、本発明の家畜糞の処理法は、環境に対する環境負荷を著しく軽減しなおかつ環境型社会を維持・実現することができる。
本発明に使用される第一番目の構成原料である家畜糞燃焼灰は、肥育牛や乳用牛が排出した畜糞・ 肥育豚・肥育山羊・肥育羊に例示される哺乳類家畜糞燃焼灰や家禽糞の燃焼灰のうちいずれか単独または複数で原料に供される。
家畜糞燃焼灰の原料となる家畜糞は、舎飼の家畜から集められたものが主であり飼養現場でオガクズやモミガラ・ワラといった敷料が使用されているので含水率は70%以下が殆どである。水の潜熱と畜糞の燃焼排出熱がバランスする時の含水率は80〜85%とされているので、大部分の家畜糞燃焼灰のエネルギー収支は過剰なエネルギーが放出される状態にあることが解る。
家畜糞は、堆肥化過程を経ないで短期間で燃焼するものであり、その燃焼のための燃焼装置としては、連続運転ストーカ方式を初め回転胴方式(ロータリーキルン)・流動床方式・多段円筒方式・回転炉床円筒方式・円形撹拌方式等が挙げられる。実施例には回転胴方式の装置を用いて得られる家畜糞燃焼灰を供した。
乾燥家畜糞の発熱量は、熱量計で測定した結果豚糞では18MJ/Kg、ブロイラー鶏糞16MJ/Kg、肥育牛糞16MJ/Kg、採卵鶏糞10MJ/Kgであった。一方未乾燥牛糞の場合は約1/3の6MJ/Kgであった。含水率が高い家畜糞を燃焼する際には炉の高い自燃性を維持するため、含水率の少ない畜糞を混合燃焼するのが好ましく、助燃剤の使用量が格段に節減できた。
ここで畜糞燃焼排出熱量から発電量を試算すると、10万トンの鶏糞から1万Kw/h発電できると試算された。
本発明に使用される第二番目の構成原料はリン酸液・硫酸液・硝酸液・塩酸液に例示される鉱酸である。これらはその供給源は問わないが各種産業の製造工程において排出される廃鉱酸を使用することもできる。中和反応による熱エネルギーを有効利用して後の乾燥工程の簡略化するために、20%〜飽和濃度にすることが好ましい。また、使用する鉱酸としては、リン酸の他、硝酸、硫酸、塩酸等、酸性を示し植物に害作用がなければいずれでもよく、適宜選択してこれを使用することができる。本発明に使用される原料は、上記の例に限定されるものではない。
以上の原料を用い家畜糞を堆肥化過程を経ないで短期間で燃焼し過剰に持ち込まれた窒素を系外に放出しつつ、その過程で副次的に発生するエネルギーを発電に活用し、さらに発生した家畜糞燃焼灰と鉱酸を反応させた肥料組成物を得る。この肥料組成物を耕地に施肥し、収穫された作物を飼料に供し、環境に対する窒素負荷を著しく軽減しなおかつ循環型社会を維持・実現できる家畜糞の処理方法を確立した。
上記肥料組成物は、家畜糞燃焼灰100重量部に、10〜150重量部の鉱酸を反応させて、さらには、家畜糞燃焼灰100重量部に、40〜100重量部の鉱酸を反応させて得られるものである。
このようにして得られた肥料組成物を耕地に施肥し、その圃場で収穫された作物は飼料として家畜に与えられ循環することになる。結果環境に対する窒素負荷を大きく軽減することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によってその技術的範囲が限定されるものではない。
(実施例1)
鶏糞100kgを回転胴方式装置により6時間燃焼し、鶏糞燃焼灰(pH12.03、リン酸全量27.6%(王水で分解し定量分析)、ク溶性リン酸25.4%、可溶性リン酸13.6%、水溶性リン酸ND)12kgを得た。この燃焼により発生した熱エネルギーは発電用熱水のエネルギー源として利用した。
(実施例2)
それぞれ鶏糞燃焼灰(pH 12.03、リン酸全量27.6%(王水で分解し定量分析)、ク溶性リン酸25.4%、可溶性リン酸13.6%、水溶性リン酸ND)100gを用意し、表1に示す量の希硫酸(硫酸濃度70%)を添加し、充分浸透するまで10分間混合を行った。
Figure 2006297187
熟成1日後、熟成3日後、熟成5日後、熟成7日後のpHを測定し、結果を表2に示した。
Figure 2006297187
得られた熟成5日後の鶏糞燃焼灰−硫酸処理物を熱風乾燥後、これに含まれるク溶性リン酸、可溶性リン酸、水溶性リン酸の量を測定した。結果を表3に示した。
Figure 2006297187
表3の結果から鶏糞燃焼灰を鉱酸で処理することにより、不溶性リン酸の一部がク溶性リン酸に化学変化し、可溶性リン酸の一部が最も可給性の高い水溶性リン酸に変化していた。
(実施例3)
家畜糞燃焼灰(pH 12.3、リン酸全量7.6%、カリ全量6%)100kgに希硫酸(硫酸濃度70%)43kg(家畜糞燃焼灰100gに対し硫酸0.31モル相当)を添加し、10分間混合を行い家畜糞燃焼灰に硫酸を浸透させた。その後、熟成を3日行った。得られた家畜糞燃焼灰の硫酸処理物のpHは6.5で、収量は129kgであった。
(実施例4)
圃場に実施例2で得られた家畜糞燃焼灰の硫酸処理物をP2O5として20kg/10a施用し、不足する肥料成分のNとして硫安を25kg/10a、KOとして硫酸カリを25kg/10aに成るように施用し、1区5.2m2とした(硫酸処理区)。希硫酸の代わりに硫酸と同じ当量のリン酸を用いる以外は、実施例2と同様の方法により、家畜糞燃焼灰のリン酸処理物を製造し、家畜糞燃焼灰の硫酸処理物の代わりにこのリン酸処理物を施用する以外は、上記と同様にして施用した(リン酸処理区)。また希硫酸の代わりに硫酸と同じ当量の硝酸を用いる以外は、実施例2と同様の方法により、家畜糞燃焼灰の硝酸処理物を製造し、家畜糞燃焼灰の硫酸処理物の代わりにこの硝酸処理物を施用する以外は、上記と同様にして施用した(硝酸処理区)。家畜糞燃焼灰の硫酸処理物の代わりに未処理の家畜糞燃焼灰を施用する以外は、上記と同様にして施用し区画した(無処理区)。各区10株ずつ、ブロッコリー(品種:ハイツ)を定植し、50日後収穫を行い、花蕾の重量を測定した。結果を表4に示した。
Figure 2006297187
いずれの処理区も生育が旺盛で、無処理区より花蕾重量は大きくなる結果となった。また、無処理区の作物は、リン酸欠乏の傾向が窺われた。
本発明の家畜糞の鉱酸処理法は、家畜糞燃焼灰中の難溶性リン酸を可給化し、同時に作物生育に必要なカリウム等の無機養分を可給化できる。さらに家畜糞が十分な腐熟・減容化処理なく耕地に投入された結果生ずる生活環境の窒素汚染・温暖化ガスの発生と言った環境破壊要因の問題解決を図りつつ、肥料として有効利用でき甚大なコスト削減と効率化を計るものである。

Claims (4)

  1. 家畜糞を堆肥化過程を経ないで燃焼し過剰に持ち込まれた窒素を系外に放出し、その過程で発生するエネルギーを発電に活用し、さらに生成した家畜糞燃焼灰と鉱酸を反応させた肥料組成物を得、この肥料組成物を耕地に施肥し、収穫された作物を家畜の飼料に供することを特徴とする家畜糞の処理方法。
  2. 肥料組成物が家畜糞燃焼灰100重量部に、10〜150重量部の鉱酸を反応させて得られる請求項1記載の家畜糞の処理方法。
  3. 肥料組成物が家畜糞燃焼灰100重量部に、40〜100重量部の鉱酸を反応させて得られる請求項1記載の家畜糞の処理方法。
  4. 鉱酸が、硫酸、リン酸及び硝酸から選ばれる1種または2種以上である請求項1乃至3のいずれかの項記載の家畜糞の処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012246386A (ja) * 2011-05-27 2012-12-13 Osaka Prefecture 肥効調節機能を有する土壌改質材
JP5967389B1 (ja) * 2015-03-31 2016-08-10 南国興産株式会社 畜糞灰化物を原料とするカリウム化合物の製造方法
CN110972596A (zh) * 2019-12-13 2020-04-10 宣城市祥正生态农业发展有限公司 一种农场资源利用生态循环系统

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