JP2006294605A - ポリマー電池用積層体、その製造方法およびポリマー電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】リチウムイオン伝導度および輸率が高く、層間密着性の大きな正極−電解質−負極積層体、および、該積層体を有する高出力のポリマー電池を提供すること。
【解決手段】活物質およびカーボン粒子を含有する正極層(A)と、ポリエーテル系重合体、電解質塩化合物、および、アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物を含有してなる電解質層(B)と、負極層(C)とをこの順に積層してなり、かつ、前記正極層(A)と前記電解質層(B)の間、および、前記電解質層(B)と前記負極層(C)の間の少なくとも一方にアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物の層を有するポリマー電池用積層体。
【選択図】 なし

Description

本発明はポリマー電池のための正極層、電解質層および負極層からなる積層体および該積層体を有するポリマー電池に関し、詳しくは、リチウムイオン伝導度および輸率の高い上記積層体および該積層体を有するポリマー電池に関する。
リチウム電池に代表される二次電池は、携帯電話、ノート型パソコンなどモバイル機器を始め、小型の電気機器の電源としてなくてはならない存在になっている。近年、二次電池が有する電解質溶液の液漏れ、蒸発などの欠点を、高分子固体電解質を使用することによって解決せんとしてポリマー電池の開発が進められている。特に、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリエーテル系重合体からなるフィルムは、リチウム塩化合物のような電解質塩化合物が可溶なので二次電池用のイオン伝導性を有する固体電解質として期待されている。しかしながらこの電解質層のイオン伝導性はまだ不十分で、充放電の電流密度が不足して大きな電流が得られない難点がある。また、電解質層の表裏面にそれぞれ積層される正極層および負極層との密着性に欠けるため、初期容量の低下等の電池特性が劣るという問題がある。
この問題に対して、特許文献1は、アルキレンオキサイド繰り返し単位を有するホウ酸エステル化合物をイオン性化合物および重合性有機化合物と共に低沸点有機溶剤に溶解してキャスティングした後、溶剤を除去しつつ重合性有機化合物を重合することにより電解質フィルムを得ることを提案した。しかし、このフィルムは依然として正極層および負極層との密着性が不十分で、電池の初期容量のバラツキが大きく、しかもフィルムが0.5mmと厚いため電気化学的に不均質で、電池の出力が低いという問題を有する。特許文献2は、(メタ)アクリロイル基を有するアルキレンオキサイド繰り返し単位含有ホウ素化合物をラジカル重合開始剤および電解質塩化合物の共存下でフッ素樹脂製ボートに流し込んで重合し、イオン伝導性の高い電解質フィルムが得られることを報じた。しかし、このフィルムも上記と同様の理由で電気化学的に不均質であり、電池の出力が改善されたとは言えない。また、特許文献3は架橋性基含有ポリエーテルオリゴマー、分子構造中にホウ素原子を有するポリエーテルおよび電解質塩化合物の混合液をステンレス箔上に広げて電子線照射して得られる輸率の高い、厚み95μmの高分子固体電解質を開示した。しかしながら、このフィルムも不均質性に起因する電池出力の問題は上記二者と全く同様で未解決である。また、上記3特許文献に記載のいずれの電解質フィルムにおいても、正極フィルムや負極フィルムとの積層時の密着性は不十分である。
特開2001−155771号公報 特開2004−182982号公報 特開2003−92138号公報
本発明の目的は、リチウムイオン伝導度および輸率が高く、層間密着性に優れる正極‐電解質‐負極積層体、および、該積層体を有する高出力のポリマー電池を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、電解質層に特定化学構造を有する液状化合物を含有させ、かつ、正極層と電解質層の間または電解質層と負極層の間の少なくとも一方に特定化学構造を有する液状化合物を介在させることにより上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば下記1〜9が提供される。
1. 活物質およびカーボン粒子を含有する正極層(A)と、ポリエーテル系重合体、電解質塩化合物、および、アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物を含有してなる電解質層(B)と、負極層(C)とをこの順に積層してなり、かつ、
前記正極層(A)と前記電解質層(B)の間、および、前記電解質層(B)と前記負極層(C)の間の少なくとも一方にアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物の層を有するポリマー電池用積層体。
2. 前記アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物の25℃における粘度が100〜2,000mPa・sである上記1記載のポリマー電池用積層体。
3. 前記アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物が、下記一般式(1)または(2)で表わされる化学式を有する化合物である上記1または2記載のポリマー電池用積層体。
(R−)(R−)C(−CHOX) (1)
B(OX) (2)
ここで、RはH、CHまたはCHCHを、RはH、CH、CHCH、CHOXまたはOXを、RはOX、フェニル基、ビニルフェニル基またはメトキシフェニル基を、Xは(AO)Yを、AOはアルキレンオキサイド繰り返し単位を、YはH、C2m+1またはC2m−1を表し、nおよびmは1〜50の整数である。
4. 前記アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物として、さらに下記一般式(3)または(4)で表される化学式を有する化合物を含有する上記3記載のポリマー電池用積層体。
−C(R)(R)−Z−(AO)−Y (3)
−C(R)(R)−Z−(AO)−Z−R (4)
ここでRおよびRはC2k+1またはC2k−1を、RおよびRはH、CH、CまたはOCHを、ZはCH、CO、COOまたはOを表し、kは3〜60の整数である。
5. 前記正極層(A)と前記電解質層(B)の間、および、前記電解質層(B)と前記負極層(C)の間の少なくとも一方に存在するアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物の層が、ポリエーテル系重合体を10重量%以下溶解している上記1〜4のいずれかに記載のポリマー電池用積層体。
6. 前記正極層(A)が、さらに、ポリエーテル系重合体およびアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物を含有してなるものである上記1〜5のいずれかに記載のポリマー電池用積層体。
7. 活物質およびカーボン粒子を含有する正極層(A)と、ポリエーテル系重合体、電解質塩化合物、および、アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物を含有してなる電解質層(B)と、負極層(C)とをこの順に積層してポリマー電池用積層体を製造するに際し、
前記正極層(A)と前記電解質層(B)の間、および、前記電解質層(B)と前記負極層(C)の間の少なくとも一方にアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物の層を介在させることを特徴とするポリマー電池用積層体の製造方法。
8. 予めその片面および/または両面を、アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物でコーティングした電解質層(B)を、正極層(A)および負極層(C)の間に挟んで積層することを特徴とする、上記7記載のポリマー電池用積層体の製造方法。
9. 上記1〜6のいずれかに記載のポリマー電池用積層体を有するポリマー電池。
本発明により、リチウムイオン伝導度および輸率が高く、層間密着性に優れる正極−電解質−負極積層体、および、該積層体を有する高出力のポリマー電池が提供される。
本発明のポリマー電池用積層体は、活物質およびカーボン粒子を含有する正極層(A)と、ポリエーテル系重合体、電解質塩化合物、および、アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物を含有してなる電解質層(B)と、負極層(C)とをこの順に積層してなり、かつ、前記正極層(A)と前記電解質層(B)の間、および、前記電解質層(B)と前記負極層(C)の間の少なくとも一方にアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物の層を有することを特徴とする。
正極層(A)の構成材料として用いる活物質としては、通常、電池の正極用に使用される活物質であれば限定なく用いることができる。かかる活物質の例としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム、リチウムマンガン複合酸化物、LiNiO、リチウムバナジウム複合酸化物、LiFePO等のリチウム含有複合金属酸化物;硫化チタン、硫化モリブテン、V、V13、酸化モリブテン等の遷移金属酸化物;が挙げられ、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウムおよびコバルト酸リチウムが好ましい。
活物質の平均粒径は、通常、0.1〜30μm、好ましくは0.5〜20μmである。活物質の平均粒径が大きすぎても小さすぎてもポリマーに均一に混合しなかったり、混合液(塗布液)が製造しにくくなったりするおそれがある。
正極層(A)の構成材料として用いるカーボン粒子は、活物質の導電特性を補助する物質で、通常、電池の正極用に使用されるカーボン粒子であれば限定なく用いることができる。かかるカーボン粒子の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト等が挙げられる。
正極用に使用されるカーボン粒子の平均粒径は、通常、10〜80nm、好ましくは20〜50nmである。カーボン粒子の平均粒径が小さすぎると活物質に均一に分散しないおそれがあり、逆に、大き過ぎると正極層(A)の表面に凹凸が生じて電解質層(B)や正極集電体との密着性が低下して電池出力が下がったり、破断しやすくなったりする可能性がある。
また、カーボン粒子は吸油量が適度に大きいことが配合量と導電性の観点から好ましく、ジブチルフタレート(以下、DBPと記すことがある。)吸収量は、通常、100〜500ml/g、好ましくは150〜400ml/gである。
正極層(A)におけるカーボン粒子の含有量は、活物質100重量部に対し、通常、1〜30重量部、好ましくは2〜15重量部、より好ましくは2.5〜12重量部である。カーボン粒子の含有量が少なすぎると活物質の電池反応が有効に利用できずに電池容量が低くなるおそれがあり、多すぎると正極層の厚みが均一になりにくく、単位重量あたりの電池容量も低下する可能性がある。
正極層(A)を作製する方法は必ずしも限定されない。第一の方法としては、活物質およびカーボン粒子を、バインダとなるポリマー成分の有機溶媒または水分散液に混合してスラリー組成物とし、これを金属箔などの集電体にドクターブレード等で均一に塗布し、乾燥して形成する。バインダとしては、アクリレート系ポリマー、ポリフッ化ビニリデンのようなフッ素含有ポリマー;スチレン−ブタジエン系、アクリロニトリル−ブタジエン系のポリマーなどが挙げられる。正極層(A)が塗布法で作製される場合、正極層(A)のバインダの含有量は、活物質100重量部に対し、通常、0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、より好ましくは1.5〜12重量部である。
正極層(A)の第二の作製方法としては、上記の活物質およびカーボン粒子、および、電解質層(B)の構成材料として後述するポリエーテル系重合体、また必要に応じて、これも電解質層(B)の構成材料として後述するアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物(L)などをブラベンダー、バンバリーミキサーやロールなどで混合してから、塊状の混練物をはさみ等で切断し、加熱プレスにてシート状に成形する。プレス法での条件としては、例えば8MPaの圧力で120℃にて5分間、程度の条件である。
正極層(A)の第三の作製方法としては、電解質層(B)の構成材料として後述するポリエーテル系重合体を押出機にてフィルム状に成形する際に、活物質およびカーボン粒子を予め重合体に混合させるか、又はバレル途中にある第2フィード口から供給して混練部で混合させ、押出されたフィルムをポリエステルフィルムなどの支持フィルムに重ねて収容する方法が挙げられる。押出法によると、正極層として薄いフィルム形状を形成しやすくなる。正極層(A)が押出法で作製される場合は、正極層(A)はアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物(L)を含有することが好ましい。
正極層(A)がポリエーテル系重合体を含有する場合、正極層(A)における活物質の含有量は、ポリエーテル系重合体100重量部に対して、通常、10〜5000重量部、好ましくは30〜2000重量部、より好ましくは50〜1000重量部となる量である。
正極層(A)が押出法で作製される場合は、ポリエーテル系重合体、活物質、カーボン粒子、および、好ましくは液状化合物(L)、さらに必要に応じて老化防止剤、光安定剤、滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤、補強材、充填剤などを加えた諸成分を混合し、押出機によりフィルム成形することが好ましい。
正極層(A)を押出機で安定して製造するための押出機混練部の温度は、通常、40〜200℃、好ましくは60〜190℃、より好ましくは70〜180℃である。混練部の温度が低すぎると配合物の分散不良が起きて電池特性が低下するおそれがあり、逆に、混練部の温度が高すぎると配合物が熱分解を起こして電池特性が低下する可能性がある。
正極層(A)がいずれの方法で作製されるにしても、上記のように諸成分が十分に混合されて形成されるので、電気化学的に均質なものとなる。
正極層(A)を塗布法で作製する場合は、その厚みは、通常、10〜200μm、好ましくは20〜150μm、より好ましくは30〜120μmである。集電体は、厚みが5〜300μm程度のフィルムまたはシート状のものが好ましく用いられる。
正極層(A)をプレス法で作製する場合、その厚みは、通常、10〜200μm、好ましくは20〜120μm、より好ましくは30〜100μmである。
また、正極層(A)を押出法で作製する場合、正極層(A)の厚みは、通常、10〜200μm、好ましくは20〜120μm、より好ましくは30〜100μmである。
正極層(A)の厚みが薄すぎるとフィルム取扱い性(ハンドリング性)に劣るおそれがあり、逆に、厚すぎると当該フィルムと接触する層との密着性および折りたたみ性が低下したり、電池の出力が向上しなかったりする可能性がある。
電解質層(B)の構成材料として用いるポリエーテル系重合体は、オキシラン単量体を開環重合して得られるアルキレンオキサイド繰り返し単位を主構造単位とするものであれば特に限定されない。前記オキシラン単量体は特に限定されないが、重合に用いるオキシラン単量体の少なくとも一成分としてエチレンオキサイド単量体(a)を用いると、これを成形して得られる電解質層(B)が機械的強度に優れるので好ましい。本発明に用いるポリエーテル系重合体(A)は、エチレンオキサイド単量体(a)単位と、エチレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体(b)単位の含有量のモル比が、〔単量体(a)単位のモル数/単量体(b)単位のモル数〕で、通常、85/15〜99/1、好ましくは90/10〜99/1、より好ましくは92/8〜99/1である。エチレンオキサイド単量体(a)単位含有量が少なすぎると、フィルムが冷却ロールなどに粘着し易くなるおそれがある。逆に、エチレンオキサイド単量体(a)単位含有量が多すぎると、平滑なフィルムを得るのが困難となる可能性がある。
エチレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体(b)としては、炭素数3〜20のアルキレンオキサイド、炭素数4〜10のグリシジルエーテル、芳香族ビニル化合物のオキシド、これらのオキシラン単量体にビニル基、水酸基又は酸無水物基などの架橋性の官能基を導入した架橋性オキシラン単量体などが挙げられる。
エチレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体(b)は、1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、本発明においては、上記の炭素数3〜20のアルキレンオキサイド、炭素数4〜10のグリシジルエーテルなどを少なくともその一成分に用いることが好ましく、炭素数3〜20のアルキレンオキサイドを少なくともその一成分に用いることがより好ましい。炭素数3〜20のアルキレンオキサイドとしてはプロピレンオキサイドが好ましい。
架橋性オキシラン単量体としては、上記の、炭素数3〜20のアルキレンオキサイド、炭素数4〜10のグリシジルエーテルなどのオキシラン単量体に、ビニル基、水酸基及び酸無水物基などの、光又はパーオキシドで架橋し得る架橋性基を有する架橋性オキシラン単量体を用いることが好ましく、その中でも、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のビニル基を有する架橋性オキシラン単量体を用いることがより好ましい。
上記オキシラン単量体を開環重合するための重合触媒としては、特に限定されず、例えば、有機アルミニウムに水とアセチルアセトンとを反応させた触媒(特公昭35−15797号公報)、トリイソブチルアルミニウムにリン酸とトリエチルアミンとを反応させた触媒(特公昭46−27534号公報)、トリイソブチルアルミニウムにジアザビアシクロウンデセンの有機酸塩とリン酸とを反応させた触媒(特公昭56−51171号公報)、アルミニウムアルコキサイドの部分加水分解物と有機亜鉛化合物とからなる触媒(特公昭43−2945号公報)、有機亜鉛化合物と多価アルコールとからなる触媒(特公昭45−7751号公報)、ジアルキル亜鉛と水とからなる触媒(特公昭36−3394号公報)などの、オキシラン化合物の開環重合触媒として従来公知の重合触媒を用いることがで
きる。
ポリエーテル系重合体を得るための重合方法としては、生成重合体が溶解する有機溶媒を用いる溶液重合法、又は、生成重合体が不溶な有機溶媒を用いる溶媒スラリー重合法などの重合法を用いることができるが、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロペンタンなどの溶媒を用いる溶媒スラリー重合法が好ましい。
また、溶媒スラリー重合法の中でも、予め種子(シード)の重合をした後に該シードの粒子を肥大化する重合を行う二段階重合法が、反応器の内壁へのスケール付着量が少ないので好ましい。
ポリエーテル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、ジメチルホルムアミドを溶媒とするゲルパーミエーション法によるポリスチレン換算値で、通常、10万〜150万、好ましくは15万〜100万、より好ましくは20万〜60万であり、かつ、分子量分布指標Mw/Mn(ここでMnは数平均分子量)は、通常、1.5〜13、好ましくは1.6〜12、より好ましくは1.7〜11である。
Mwが上記範囲であると、これを用いたポリエーテル系重合体組成物を押出成形してフィルムを製造する時の流動性及び形状保持性に優れる。また、得られる電解質層(B)は柔軟性及び機械的強度に優れる。Mwが大きすぎると、押出成形機のトルクやダイ圧が上昇するため成形加工が困難となるおそれがある。Mwが小さすぎると、得られる電解質層(B)の機械的強度が不足してフィルムが破れ易くなり、また、フィルムが粘着し易くなるため、薄いフィルムを安定的に生産することが困難になる可能性がある。
Mw/Mnの値が大きすぎると、フィルム成形時の溶融粘度が高くなり、押出成形時にダイ圧力が上昇して加工困難になったり、押出成形されたフィルムの表面平滑性や厚さの均一性が損なわれたりする。
ポリエーテル系重合体は、還元粘度が好ましくは0.6〜25dl/g、より好ましくは0.7〜20dl/g、特に好ましくは0.8〜15dl/gであることが望ましい。ここで、還元粘度は、JIS K6300に準拠して測定した値である。還元粘度は、ポリエーテル系重合体0.25gを、トルエン100gに溶解した溶液の粘度と、トルエンの粘度とを、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定して求めることができる。
電解質層(B)の構成材料として用いる電解質塩化合物は、上記ポリエーテル系重合体に可溶のものであれば特に限定されない。このような電解質塩化合物の例としては、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン〔CFSO 〕、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン〔N(CFSO 〕、ビス(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミドイオン〔N(CSO 〕、トリフルオロスルホンイミドイオン、テトラフルオロホウ素酸イオン〔BF 〕、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルフォニドイミド酸イオン、硝酸イオン、AsF 、PF 、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオンなどの陰イオンドデシルベンゼンスルホン酸イオンなどから選ばれた陰イオンと、金属陽イオンとからなる塩が挙げられる。
前記金属陽イオンを形成する金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム。マグネシウム、カルシウムおよびバリウムが挙げられる。これらの金属陽イオンの中でもリチウムイオンが好ましい。
前記陰イオンとリチウムイオンとで形成されるリチウム塩の中では、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiN(CFSOおよびLiN(CSOが好ましい。これら電解質塩化合物は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
電解質層(B)における電解質塩化合物の含有量は、ポリエーテル系重合体100重量部に対して、通常、5〜70重量部、好ましくは8〜60重量部、より好ましくは10〜55重量部である。電解質層(B)の電解質塩化合物の含有量が少なすぎると電解質層(B)のイオン伝導性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると機械的強度が低下する可能性がある。
電解質層(B)の構成材料として用いる、アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物(L)は、ポリエーテル系重合体に溶解して可塑剤の作用を発現し、電解質層(B)の表面に積層される正極層(A)との密着性を向上し、また、裏面に負極層(C)を積層するときも密着性を改善する。さらに、液状化合物(L)は電解質層(B)内のイオン易動度を向上する作用を有する。
液状化合物(L)の25℃での粘度は、通常、100〜2,000mPa・s、好ましくは120〜1700mPa・s、より好ましくは150〜1500mPa・sである。液状化合物(L)の粘度が低すぎると電解質層(B)の機械的強度が低下し、また粘着性が増大して作製しにくくなるおそれがあり、逆に、高すぎると正負電極層との密着性が不十分になる可能性がある。
好適な液状化合物(L)は、下記一般式(1)または(2)で表わされる化学式を有する化合物である。
(R−)(R−)C(−CHOX) (1)
B(−OX) (2)
ここで、RはH、CHまたはCHCHを、RはH、CH、CHCH、CHOXまたはOXを、RはOX、フェニル基、ビニルフェニル基またはメトキシフェニル基を、Xは(AO)Yを、AOはアルキレンオキサイド繰り返し単位を、YはH、C2m+1またはC2m−1を表し、nおよびmは1〜50の整数である。
かかる液状化合物(L)の例としては、トリ(メトキシポリエチエングリコール)ボロン酸エステル、ジ(メトキシポリエチエングリコール)−p−ビニルフェニルボロン酸エステル、ジ(メトキシポリエチエングリコール)−p−メトキシフェニルボロン酸エステル、メトキシポリエチエングリコール−p−ビニルフェニルボロン酸エステル;トリメチロールプロパンポリオキシエチレンエーテル、トリメトキシトリメチロールプロパンポリオキシエチレンエーテル、トリメトキシグリセリンポリオキシエチレンエーテルなどが挙げられる。
また、液状化合物(L)として、上記一般式(1)または(2)で表される化学式を有する化合物に加えて、さらに下記一般式(3)または(4)で表される化学式を有する化合物を含有させることが好ましい。
−C(R)(R)−Z−(AO)−Y (3)
−C(R)(R)−Z−(AO)−Z−R (4)
ここでRおよびRはC2k+1またはC2k−1を、RおよびRはH、CH、CまたはOCHを、ZはCH、CO、COOまたはOを表し、kは3〜60の整数である。
このような化合物としては、メトキシミリスチンポリオキシエチレンエーテル、メトキシオレイルポリオキシエチレンエーテル、エトキシラウリル酸ポリオキシエチレンエステル、メトキシポリエチレングルコールモノメタクリレート、エトキシポリエチレングルコールモノアクリレート、ポリエチレングルコールジメタクリレートなどが挙げられる。
電解質層(B)における液状化合物(L)の含有量は、ポリエーテル系重合体100重量部に対して、通常、10〜500重量部、好ましくは20〜300重量部、より好ましくは30〜200重量部である。電解質層(B)の液状化合物(L)含有量が少なすぎると電解質層(B)の室温以下でのイオン伝導性が低下し、また正負電極層との密着性が不十分になるおそれがあり、逆に、多すぎると機械的強度が低下したり、粘着性が増大して、ハンドリング性が悪化したりする可能性がある。
電解質層(B)を作製するには、上記のポリエーテル系重合体、電解質塩化合物および液状化合物(L)に、さらに必要に応じて老化防止剤、光安定剤、滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤、補強材、充填剤などを加えた諸成分を混合し、フィルムダイを備えた押出機によりフィルム成形するのが好ましい。
混合は、押出成形に先立って予めブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール、ペレット作製用押出機などで行ってもよいし、フィルム成形する押出機の原料ホッパーにポリエーテル系重合体を、また、電解質塩化合物を始めとする各成分を原料ホッパー又はバレル途中の第2フィード口等に投入して押出機の混練ゾーンで混合させてもよい。この混合により、固体配合剤もポリエーテル系重合体に均一に分散させられるので、均質な電解質層(B)を得ることができる。
電解質層(B)を安定して作製するための押出機混練部の温度は、通常、40〜200℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは55〜130℃である。混練部の温度が低すぎると配合物の分散不良が起きて電池特性が低下するおそれがあり、逆に、混練部の温度が高すぎると配合物が熱分解を起こして電池特性が低下する可能性がある。
押出機のダイから押し出された電解質層(B)は、通常、冷却ロールを経て引取りロールに巻き取られる。引取りロールの前にキャストロールを置き、フィルムの厚みや張力をそれぞれの検知手段で検知してその結果を押出機及び冷却ロールにフィードバックさせることが好ましい。キャストロールで制御される電解質層(B)の厚みは、好ましくは10〜50μm、より好ましくは15〜45μm、特に好ましくは18〜40μmである。電解質層(B)の厚みが薄すぎると破断したり、粘着したりするおそれがあり、逆に、厚すぎると電池特性が低下する可能性がある。
負極層(C)としては、負極活物質およびバインダを含有する層、または、金属箔からなる層が挙げられる。
負極活物質としては、リチウムを放出、吸蔵する有機または無機材料を用いることができる。例えば炭素系材料の他にチタンやバナジウムなどの遷移金属酸化物およびシリコン化合物等を用いることができる。このうち特に炭素材料が好ましく、球状グラファイトであるメソカーボンマイクロビーズ、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、難黒鉛化性炭素、低結晶性炭素、低温焼成炭素などを用いることができる。また、これらの炭素材料に、Al、Si、Pb、Sn、Zn等とのリチウム合金、LiFe等の遷移金属複合酸化物、MnO等の遷移金属酸化物、SiO等のケイ素酸化物、LiN等のチッ化リチウム、金属リチウム等を混合してもよい。
負極層(C)用の好ましいバインダはアクリル系ポリマー(例えば2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸およびアクリロニトリルの共重合体)、フッ素含有ポリマー、ポリエーテル系重合体、ポリアクリロニトリル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロースや水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などであり、アクリル系ポリマーやフッ素含有ポリマーがより好ましい。バインダの使用量は、負極活物質100重量部に対し、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部、特に好ましくは0.5〜6重量部である。バインダの使用量が少なすぎると塗膜の機械的強度が不十分で、負極活物質が集電体より脱落するおそれがあり、逆に、多すぎると内部抵抗が増大し、電池のサイクル性が低下する可能性がある。
負極活物質およびバインダを含有する負極層(C)は、以下に示すスラリー組成物を集電体にドクターブレード等で均一に塗布し、乾燥することにより作製される。該スラリー組成物は、バインダを分散させた有機溶剤に負極活物質等の固体粒子、粘度調整剤等を混合して調製される。この場合の負極層(C)の厚みは、通常、5〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜160μmである。集電体の厚みは、5〜300μm程度のフィルムまたはシート状のものが好ましく用いられる。
負極層(C)が金属箔からなる場合、好ましい金属はリチウム、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−インジウム合金などで、リチウムが特に好ましい。金属箔の場合の負極層(C)の厚みは、通常、1〜500μm、好ましくは3〜300μm、より好ましくは5〜250μmである。
正極層(A)と電解質層(B)と負極層(C)とをこの順に積層して電池用積層体を製造する。積層する手段に制限はないが、三層を重ねて、通常、2軸ロール、カレンダーロール、2軸ロールプレスなどを通して圧着するが、本発明においては積層に際し、正極層(A)と電解質層(B)の間、および、電解質層(B)と負極層(C)の間の少なくとも一方にアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物の層を介在させる。該アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物として、電解質層(B)の必須の構成材料である前記液状化合物(L)が好適である。
該液状化合物の層を(A)、(B)間および(B)、(C)間の少なくとも一方へ介在させる方法に限定はなく、例えば、それぞれの層間の向かい合う面の片方にスピンコーティング、ディップ、テープキャスティングや押出コータ、リーバースローラ、ドクターブレード、ワイヤーバー、バーコーター、アプリケータなどの各種塗布方法を採用できる。また、それぞれの層間の向かい合う面の片方に噴射、インクジェット、ドットプリント、スクリーン印刷などによって液状化合物を供給し、必要に応じてスキーザ、ローラ、刷毛などで塗り広げてもよい。
また、電解質層(B)および好ましくは正極層(A)に添加される該液状化合物(L)の、分子量、粘度およびポリエーテル系重合体との相溶性などを調節することにより、正極層(A)または電解質層(B)から、正極層(A)と電解質層(B)の間へ、および、電解質層(B)と負極層(C)の間に、それぞれ該液状化合物(L)をブリードさせる方法をとることもできる。
前記電池用積層体の製造法として、予め電解質層(B)の片面および/または両面を上記液状化合物でコーティングし、これを、正極層(A)および負極層(C)の間に挟んで積層する手順を採ると、容易に液状化合物の層を介在させることができるので好ましい。
また、前記正極層(A)と前記電解質層(B)の間、および、前記電解質層(B)と前記負極層(C)の間の少なくとも一方に存在するアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物に、10重量%以下の濃度でポリエーテル系重合体を溶解したものを用いると、コーティングしやすく、また界面が密着しやすいので好ましい。
(A)、(B)間および(B)、(C)間の少なくとも一方の層間に介在する液状化合物の層の厚みは、通常、0.005〜100μm、好ましくは0.01〜80μm、より好ましくは0.1〜60μmである。
圧着時のローラの表面温度は、好ましくは30〜120℃、より好ましくは35〜100℃、特に好ましくは40〜90℃である。ローラの表面温度が低すぎると積層体が剥がれやすくなり、また密着性が不十分になるおそれがあり、逆に、高すぎると積層体の厚みの変動が大きくなり、また厚みが薄くなりすぎて強度が低下する可能性がある。
正極層(A)、電解質層(B)および負極層(C)を、(A)、(B)間および(C)、(D)間の少なくとも一方の層間に介在させてローラで圧着する際、ローラ間隙を次のように設定することが望ましい。すなわち、負極層(C)が負極活物質およびバインダを含有する層の場合、ローラ間隙は集電体層または支持フィルムを除いた正極層(A)、電解質層(B)および集電体層を除いた負極層(C)の厚みの合計に対して、好ましくは1/1.4〜1/1.02、より好ましくは1/1.35〜1/1.05、特に好ましくは1/1.3〜1/1.08である。
負極層(C)が金属箔の場合は、ローラ間隙は集電体層または支持フィルムを除いた正極層(A)、電解質層(B)および集電体層を除いた負極層(C)の厚みの合計に対して、好ましくは1/1.35〜1/1.02、より好ましくは1/1.3〜1/1.05、特に好ましくは1/1.28〜1/1.08である。
ローラ間隙が上記の範囲であれば積層が剥がれにくく、また界面の均一性が損なわれることが防止される。
上記積層手続きの別法として、(A)、(B)、(C)三層および液状化合物層を積層するに先立ち、正極層(A)の、電解質層(B)に接しない側に予め正極集電体をローラ、プレスなどにより積層しておき、または/および負極層(C)の電解質層(B)に接しない側に予め負極集電体をローラ、プレスなどにより積層しておき、次いで上記の圧着を行ってもよい。正極集電体としては、アルミニウム箔が好ましく使用される。正極集電体の形状は特に制限されないが、通常、5〜300μm程度のフィルム状のものが好ましく用いられる。また、負極集電体としては、銅箔が好ましく使用される。負極集電体は、通常、3〜300μm程度のフィルム状のものが好ましく用いられる。
正極層(A)が正極集電体との積層体である場合、または/および負極層(C)が負極集電体との積層体である場合、正味の正極層(A)および正味の負極層(C)の厚みならびに電解質層(B)の厚みの合計とローラ間隙との比が上記範囲になるように操作すべきである。
本発明方法によって得られるポリマー電池用積層体は、各層間の密着性が良好で、積層体の厚みバラツキが少ない特徴を有する。
本発明方法で得られるポリマー電池用積層体の正極層(A)に正極集電体を、負極層(C)に負極集電体をそれぞれ積層することによりコイン電池型のポリマー電池が形成される。
本発明方法により得られるポリマー電池用積層体はリチウムイオン伝導度および輸率が高いので、これを有するポリマー電池は、初期容量が高く、そのバラツキも少なく、かつ、充放電サイクル特性に優れる特徴を有する。
以下に製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、「部」は、特記ない限り重量基準である。試験及び評価は以下の方法によった。
(1)圧着前のフィルム厚み
長さ50mm、幅30mmの構成フィルム試料の中心および角(計5点)をデジタル膜厚計にて測定し、それらの平均値をフィルム厚みとした。単位は(μm)。
(2)圧着後の積層体の幅方向の厚みバラツキ
積層体の長さ方向の中央部を幅方向に約5mm毎にデジタル膜厚計にて5点測定し、この5点の測定値の最大値と最小値の差を平均値で除して厚みバラツキとした。単位は(%)。
(3)支持フィルムの官能検査
積層体の正極面に積層している支持フィルムの外観に異常がないか、また、剥離性が良好かを官能検査で判断した。判断基準は以下の通り。
◎:正極層との界面にシワや膨れが見られず密着性が良好で、また、スムーズに剥離できる。
○:正極層との界面にシワや膨れが見られず密着性は良好だが、スムーズに剥離できない。
△:正極層との界面に若干シワや膨れが見られる。
×:ほぼ全面にシワや膨れが見られる
(4)電池容量(初期容量および初期容量のばらつき)
ステンレス鋼製容器(直径20mm、高さ3mm)のキャップとの接合面にポリプロピレン製ガスケット(外径20mm、内径16mm、高さ3mm)を設置し、次いでこれに正極フィルムが接するようにして電解質フィルム−正極フィルム積層体の試験片を入れ、ステンレス鋼製円板及びバネを順次重ね、ステンレス鋼製キャップをかぶせて閉めて厚さ約3.2mmのコイン型電池を作成した。電池容量の測定は、60℃で充放電レートを0.2Cとし、定電流法にて、所定の充放電電圧(充放電の電圧差1.5V)を2回印加した後の初期電池容量を測定した。1試験対象あたり10試験片を用いて作製したコイン型電池10個について測定した。初期電池容量は、これらのうち容量のより大きい5個の値の平均値を用いた。単位は〔mAh/g−活物質〕。また、バラツキは、これら5個の最大値と最小値の差を初期電池容量で除した値を用いた。単位は〔%〕。
(5)充放電サイクル特性
上記(4)の条件で初期容量を測定した試料に、さらに同一の条件で充放電電圧を20回印加した後の電池容量を測定した。充放電サイクル特性は、20回後の電池容量のより大きい5個の値の平均値を用いた。単位は〔mAh/g-活物質〕。
(製造例1)ポリエーテル系重合体の製造
ジャケット及び攪拌機付きオートクレーブを乾燥して窒素置換し、トリイソブチルアルミニウム65.1部、トルエン217.9部及びジエチルエーテル121.6部を仕込んだ。内温を30℃に設定して攪拌しながらリン酸11.26部を10分間かけて一定速度で添加した。これにトリエチルアミン5部を添加し、60℃で2時間熟成反応し、触媒溶液を得た。
オートクレーブを窒素置換し、n−ヘキサン1514部と上記触媒溶液63.3部を仕込んだ。内温を30℃に設定して、攪拌しながらエチレンオキシドを7.4部加えて反応させ、次いで、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの等重量混合単量体を14.7部加えて反応させ、シードを形成した。
内温を60℃に設定して、シードを形成した重合反応液に、エチレンオキサイド439.6部(92モル%)、プロピレンオキサイド25.2部(4モル%)、アリルグリシジルエーテル49.5部(4モル%)、n−ヘキサン427.4部からなる混合溶液を5時間かけて連続的に等速度で添加した。添加終了後、反応を2時間継続した。重合反応率は98%であった。得られたスラリーに、老化防止剤として4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)の5%のトルエン溶液42.4部を添加攪拌した。ポリマークラムをろ過後、40℃で真空乾燥して粉体状のポリエーテル系重合体Pを得た。
ポリエーテル系重合体Pの組成は、エチレンオキサイド(EO)単位91.6モル%、プロピレンオキサイド(PO)単位4.7モル%およびアリルグリシジルエーテル3.7モル%であった。また、この重合体のMwは310,000、Mw/Mnは6.2、還元粘度1.1dl/gであった。
(製造例2)アクリレート系重合体の製造
攪拌機付き反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート300部、アクリル酸7部、アクリロニトリル35部、テトラエチレングリコールジメタクリレート80部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム15部、イオン交換水1000部および過硫酸カリウム12部を入れ、十分攪拌した後、80℃に加温して重合した。重合転化率が98.5%になった時点で冷却して反応を止め、ポリマー粒子qのラテックスQを得た。
(製造例3)塗布法による正極の製造
100部のラテクッスQにN−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」と記す。)300部を加え、混合液を攪拌しながら真空ポンプでの減圧下で80℃に加熱して水分を除去し、ポリマー粒子qのNMP分散液を得た。NMP分散液25部に、92部のLi0.33MnO、ケッチェンブラック5部、エチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含量40重量%)1部およびリチウムビスペンタフルオロエタンスルホンイミド(フロラードL−13858、住友3M社製)3部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が75%となるようにNMPを加えて十分に混合して正極用スラリーを得た。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔にドクターブレードで均一に塗布し、常圧にて120℃で15分間乾燥し、さらに真空乾燥機にて120℃で2時間減圧乾燥して厚み100μmの正極層(集電体を合わせると120μm)を得た。その後、厚みを80μm(集電体を合わせると100μm)となるまで2軸のロールプレスで圧縮した。
(実施例1)
25mm径二軸押出機(スクリュー回転数150rpm、L/D=30)の第1フィード口に100部のポリエーテル重合体Pを、第2フィード口に活物質(Li0.33MnO、中央電気工業社製、平均粒径0.5μm)300部とケッチェンブラック(製品名ケッチェンブラックEC、ライオン社製、平均粒径35nm、DBP吸収量350ml/g)15部のヘンシェルミキサー混合物および電解質塩化合物のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム30部を供給してコートハンガーダイでフィルム状に押し出した。温度条件は入り口バレル温度30℃、中央部バレル160℃、ヘッド140℃、ダイ温度140℃であった。押し出されたフィルムをPET製支持フィルム(製品名ダイヤホイル、三菱化学社製、厚み25μm)にて両面を挟みながら、キャストロールを経て巻取りロールに巻き取って正極フィルムを得た。正極フィルムの厚みは80μmであった。
25mm径二軸押出機(スクリュー回転数150rpm、L/D=30)の第1フィード口に100部のポリエーテル重合体Pを、第2フィード口に電解質塩化合物のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(キシダ化学社製)50部および紫外線架橋剤の2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(製品名イルガキュアー651、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1部を、さらに第3フィード口にプランジャーポンプを介して液状化合物aのトリメチロールプロパントリメトキシトリポリオキシエチレンエーテル(製品名TMP−30Uのトリメトキシ化反応品、日本乳化剤社製、25℃の粘度420mPa・s)60部を供給して混練し、コートハンガーダイでフィルム状に押し出した。温度条件は入り口バレル温度30℃、中央部バレル100℃、ヘッド140℃、ダイ温度140℃であった。押し出されたフィルムをPET製支持フィルム(上記同様)にて両面を挟みながら、キャストロールを経て巻取りロールに巻き取ることにより未架橋のフィルムを得た。このフィルムに紫外線を30mJ/cm照射して架橋し、電解質フィルムを得た。電解質フィルムの厚みは30μmであった。
上記の正極フィルムおよび電解質フィルムをそれぞれ長さ50mm、幅30mmの短冊状に切断した。電解質フィルムの片面にある支持フィルムを剥がして、その剥がした面にバーコーター(テスター産業社製ロッド番号5)で液状化合物aのトリメチロールプロパントリメトキシトリポリオキシエチレンエーテルを塗布してから、支持フィルムを剥がした側の正極フィルム面と重ねた。次いで電解質フィルムの他の片面の支持フィルムを剥がしてからこれに厚み200μmのリチウム箔の負極を重ね、熱ロールプレス装置(COSMO社製)に通過させ、正極フィルム−電解質フィルム−負極積層体を得た。
ローラの温度は60℃とし、間隙は正極フィルム、電解質フィルムおよび負極の厚みの合計(310μm)の1/1.20となるよう、隙間ゲージおよび装置のダイヤルで調整した。得られた正極フィルム−電解質フィルム−負極積層体の厚みは298μmであった。該積層体の幅方向の厚みバラツキ及び支持フィルムの官能検査並びに該積層体を用いて作製したコイン型電池の初期電池容量、そのバラツキ及び充放電サイクル特性について試験、評価した結果を表1に示す。
(実施例2〜6、比較例1〜3)
実施例1において、正極フィルムにつき、作製方法、配合することのある液状化合物およびその量、並びに厚みを、また、電解質フィルムにつき、液状化合物およびその量、並びに厚みを、さらに、正極フィルム−電解質フィルム間および正極フィルム−負極間の液状フィルムおよびその厚みをそれぞれ表1に示す通りとし、表1に示すローラ条件(間隙比および温度)で圧着した他は実施例1と同様に行って正極フィルム−電解質フィルム−負極積層体を得た。該積層体および該積層体を用いて作製したコイン電池について実施例1と同様の試験、評価を行った結果を表1に記す。
ただし、実施例2において、正極フィルム作製時に、押出機の第3フィード口に液状化合物aのトリメチロールプロパントリメトキシトリポリオキシエチレンエーテル40部をさらに供給した。また、実施例3および比較例2では、正極フィルムを押出法に代えて塗布法により作製(製造例3参照)した。
実施例4および5では、表1に示す2種の液状化合物を予め混合し、押出機の第3フィード口より供給して正極フィルムを得た。また、予め混合した2種の液状化合物を実施例1と同様の方法で正極フィルム−電解質フィルム間に介在させた。実施例6は、電解質フィルム−負極間にも貼り合わせる前に表記の液状化合物を、電解質フィルムにバーコーターで塗布することにより、介在させた。
Figure 2006294605
(注)
*液状化合物b:ジトリデシルフタレート(製品名ビニサイザー、花王社製、25℃の粘度300mPa・s)
*液状化合物c:トリ(メトキシポリエチエングリコール)ボレート〔アルキレンオキサイド繰返し単位数12、25℃の粘度280mPa・s;公知の方法で合成、例えばY.Kato,et.al.、Solid State Ionic,150、p.355
(2002)参照。〕
*液状化合物d:メトキシミリスチンポリオキシエチレンエーテル(製品名リケマールB−205のメトキシ化反応品、理研ビタミン社製、25℃の粘度40mPa・s)
*t:負極のリチウム箔の厚み(200μm)を指す。
表1が示すように、本発明の要件を備えた正極層−電解質層−負極層積層体はいずれも厚みがバラツキ少なく均一で、かつ支持フィルムの官能検査が良好であり、またそれらを用いて作製したリチウム電池はいずれもバラツキの小さな高い初期電池容量を有し、かつ充放電サイクル後の電池特性が優れて(電池容量が高い)いた(実施例1〜6)。特に、アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物を正極フィルムにも含有させた実施例2、および、電解質フィルムを前記化学式(1)の構造を持つ液状化合物aと前記化学式(3)の構造を持つ液状化合物dとを併用して作製した実施例5では充放電サイクル後の電池特性が非常に良好であった。液状化合物aを正極層−電解質層間に加えて電解質層−負極層間にも介在させた実施例6では支持フィルムの官能検査が非常に良好であり、初期電池容量およびそのバラツキに加えて、充放電サイクル後の電池特性が非常に良好であった。正極層の作製法を押出法から塗布法に変更した実施例3でも積層体の厚みのバラツキが小さくて均一で、かつ初期電池容量およびそのバラツキに加えて、充放電サイクル後の電池特性が良好であった(比較例2との対比)。
一方、液状化合物を正極層−電解質層間および電解質層−負極層間に介在させない比較例1では、充放電サイクル後の電池特性が不充分であった。液状化合物bとしてアルキレンオキサイド繰り返し単位を持たない化合物を用いた比較例3では初期電池容量およびそのバラツキに加えて、充放電サイクル後の電池特性が不十分であった。




















Claims (9)

  1. 活物質およびカーボン粒子を含有する正極層(A)と、ポリエーテル系重合体、電解質塩化合物、および、アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物を含有してなる電解質層(B)と、負極層(C)とをこの順に積層してなり、かつ、
    前記正極層(A)と前記電解質層(B)の間、および、前記電解質層(B)と前記負極層(C)の間の少なくとも一方にアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物の層を有するポリマー電池用積層体。
  2. 前記アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物の25℃における粘度が100〜2,000mPa・sである請求項1記載のポリマー電池用積層体。
  3. 前記アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物が、下記一般式(1)または(2)で表わされる化学式を有する化合物である請求項1または2記載のポリマー電池用積層体。
    (R−)(R−)C(−CHOX) (1)
    B(−OX) (2)
    ここで、RはH、CHまたはCHCHを、RはH、CH、CHCH、CHOXまたはOXを、RはOX、フェニル基、ビニルフェニル基またはメトキシフェニル基を、Xは(AO)Yを、AOはアルキレンオキサイド繰り返し単位を、YはH、C2m+1またはC2m−1を表し、nおよびmは1〜50の整数である。
  4. 前記アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物として、さらに下記一般式(3)または(4)で表される化学式を有する化合物を含有する請求項3記載のポリマー電池用積層体。
    −C(R)(R)−Z−(AO)−Y (3)
    −C(R)(R)−Z−(AO)−Z−R (4)
    ここでRおよびRはC2k+1またはC2k−1を、RおよびRはH、CH、CまたはOCHを、ZはCH、CO、COOまたはOを表し、kは3〜60の整数である。
  5. 前記正極層(A)と前記電解質層(B)の間、および、前記電解質層(B)と前記負極層(C)の間の少なくとも一方に存在するアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物の層が、ポリエーテル系重合体を10重量%以下溶解している請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー電池用積層体。
  6. 前記正極層(A)が、さらに、ポリエーテル系重合体およびアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物を含有してなるものである請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー電池用積層体。
  7. 活物質およびカーボン粒子を含有する正極層(A)と、ポリエーテル系重合体、電解質塩化合物、および、アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物を含有してなる電解質層(B)と、負極層(C)とをこの順に積層してポリマー電池用積層体を製造するに際し、
    前記正極層(A)と前記電解質層(B)の間、および、前記電解質層(B)と前記負極層(C)の間の少なくとも一方にアルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物の層を介在させることを特徴とするポリマー電池用積層体の製造方法。
  8. 予めその片面および/または両面を、アルキレンオキサイド繰り返し単位を有する液状化合物でコーティングした電解質層(B)を、正極層(A)および負極層(C)の間に挟んで積層することを特徴とする、請求項7記載のポリマー電池用積層体の製造方法。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー電池用積層体を有するポリマー電池。


















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