JP2006290810A - 糖代謝促進剤並びに肥満及び糖尿病治療薬のスクリーニング方法 - Google Patents

糖代謝促進剤並びに肥満及び糖尿病治療薬のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】新規な糖代謝促進剤の提供。
【解決手段】式(I)で示される化合物を糖代謝促進剤の有効成分とする。
Figure 2006290810

式(I)で、R1は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又はフェニル基で、脂肪族炭化水素基又はフェニル基の任意の水素原子はハロゲンで置換されてもよく、R2は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又はフェニル基で、脂肪族炭化水素基又はフェニル基の任意の水素原子はハロゲンで置換されてもよい。X1はハロゲン、X2は水素又はハロゲン。
【選択図】なし

Description

本発明は、肥満および糖尿病などの疾患の予防薬又は治療薬として有用な糖代謝促進剤に関する。本発明はまた、肥満及び/又は糖尿病治療薬のスクリーニング方法に関する。
糖尿病は、血液中の糖分を調節する機能障害が原因で、血糖値が慢性的に高い状態になることによって、抹消神経や血管傷害、ひいては失明や細胞壊死などが起こる、いわゆる生活習慣病の1つであり、近年その患者数は増加している。治療薬としては、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが用いられるが、その投与は注射によって行われるため、患者への負担は少なくない。また、インスリンが効かないタイプの糖尿病も知られており、いくつかの症状改善薬はあるものの、決定的治療法は確立されておらず、より有効で経口投与可能な治療薬の開発が求められている。
また近年、各種生活習慣病の原因の1つとして、肥満自体が問題になっているが、有効な肥満改善・治療薬の開発も求められている。
DIF−1と呼ばれる下記化合物(A)は細胞性粘菌から単離された化合物であるが、抗腫瘍活性を有することが知られている(非特許文献1)。しかしながら、DIF−1及びその類縁化合物が細胞の糖代謝促進作用を有すること、またそれによる血糖降下作用を有することは知られていなかった。
Figure 2006290810
Biochem Biophys Res Commun. 1997 Jul 18;236(2):418-22.
本発明は、新規な糖代謝促進剤を提供することを課題とする。本発明はまた、肥満及び/又は糖尿病治療薬のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、DIF−1として知られる化合物及びその類縁化合物が、各種細胞に対して顕著な糖代謝促進作用を有すること、それにより、これらの化合物が血糖降下剤として用いることができることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)式(I)で示される化合物を有効成分とする糖代謝促進剤。
Figure 2006290810
式(I)において、R1は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であって、脂肪族炭化水素基又はフェニル基の任意の水素原子はハロゲンで置換されていてもよく、R2は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であって、脂肪族炭化水素基又はフェニル基の任意の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。X1はハロゲンであり、X2は水素又はハロゲンである。
(2)血糖降下剤として用いられる(1)の糖代謝促進剤。
(3)肥満及び/又は糖尿病の予防又は治療用である(1)の糖代謝促進剤。
(4)化合物を添加した培地中で各種細胞を培養し、該培地中の糖濃度を測定することによって、該細胞の糖代謝能を活性化させる物質を選択することを特徴とする、肥満および/又は糖尿病治療薬のスクリーニング方法。
本発明の化合物は、各種細胞に対して顕著な糖代謝促進作用を有するため、糖尿病や肥満などの疾患の治療又は予防に有効な血糖降下剤として用いることができる。また、インスリン非依存的に血糖を降下させる作用を有するため、インスリン抵抗性の糖尿病や肥満症などに対しても有効に用いることができる。さらに、可逆的に血糖を降下させることができるため、血糖値を厳密にコントロールすることができる。
以下に本発明を詳しく説明する。
<1>本発明の糖代謝促進剤
本発明の糖代謝促進剤は以下の化合物を有効成分として含む。
Figure 2006290810
式(I)においてR1は脂肪族炭化水素基又はフェニル基である。該脂肪族炭化水素基又はフェニル基において、任意の水素原子はハロゲンによって置換されていてもよい。該
脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜10であるが、炭素数1〜8が好ましく、炭素数1〜5がより好ましい。該脂肪族炭化水素基は直鎖でもよいし、分岐鎖を有するものでもよく、さらに、環状構造を含むものでもよい。また、1又は複数の2重結合や3重結合を含むものでもよい。R1は炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基がより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基又はフェニル基がさらに好ましく、炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基が特に好ましい。
2は脂肪族炭化水素基又はフェニル基である。該脂肪族炭化水素基又はフェニル基において、任意の水素原子はハロゲンによって置換されていてもよい。該脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜10であるが、炭素数2〜8が好ましく、炭素数3〜7がより好ましい。該脂肪族炭化水素基は直鎖でもよいし、分岐鎖を有するものでもよく、さらに、環状構造を含むものでもよい。また、1又は複数の2重結合や3重結合を含むものでもよい。R2は炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がさらに好ましく、炭素数3〜7のアルキル基が特に好ましい。
1はハロゲンであり、具体的には塩素、臭素、ヨウ素、フッ素であり、より好ましくは塩素である。
2はハロゲン又は水素であり、具体的には塩素、臭素、ヨウ素、フッ素又は水素であり、より好ましくは塩素又は水素である。
式(I)の化合物としては、例えば、以下のような化合物が例示される。ただし、これらには限定されない。
Figure 2006290810
Figure 2006290810
式(I)の化合物は一般的な化学合成法に従って合成することができる。例えば、Biochem. J. 1988 Nov 15:256(1):23-8.に、DIF-1やその類縁化合物の製造法が開示されている。
式(I)の化合物はまた、市販の化合物を入手することもできる。
式(I)の化合物は、各種細胞における糖代謝促進作用を有する。したがって、血糖降下剤として用いることができ、さらには、糖尿病、肥満などの疾患の治療薬又は予防薬として用いることができる。
式(I)の化合物を含有してなる医薬は、医薬製剤の製造法で一般的に用いられている公知の手段に従って、式(I)の化合物をそのままあるいは薬理学的に許容される担体と混合して、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤、(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等の医薬製剤として、経口的または非経口的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。
式(I)の化合物の製剤中の含有量は、製剤全体の約0.01ないし約100重量%である。
式(I)の化合物の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより異なり特に制限されないが、一般的に、患者(体重60kgとして)に対して、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。
薬理学的に許容される担体としては、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤
及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等が挙げられる。更に必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。結合剤としては、例えば結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L−ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。溶剤としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。懸濁化剤としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン、等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。等張化剤としては、例えばブドウ糖、 D−ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられる。緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。無痛化剤としては、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。防腐剤としては、例えばパラヒドロキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロール等が挙げられる。
本発明の糖代謝促進剤はインスリンその他の糖尿病治療薬と併用してもよい。
<2>本発明のスクリーニング方法
本発明はまた、化合物を添加した培地中で各種細胞を培養し、該培地中の糖濃度を測定することによって該細胞の糖代謝能を活性化させる物質を選択することを特徴とする、肥満及び/又は糖尿病治療薬のスクリーニング方法を提供する。
スクリーニングに用いる化合物の種類は特に制限されず、例えば、低分子合成化合物であってもよいし、天然物に含まれる化合物であってもよい。また、ペプチドであってもよい。スクリーニングには個々の被検物質を用いてもよいが、これらの物質を含む化合物ライブラリーを用いてもよい。
細胞の種類は特に制限されず、培養細胞株であっても、生体から単離された細胞であってもよい。好ましくは、CHO細胞、L6細胞、3T3−L1細胞、RGM−1細胞などの培養細胞が挙げられ、特に好ましくは3T3−L1細胞が挙げられる。これらの細胞はATCC(American Type Culture Collection)より入手することが可能である。例えば、3T3−L1細胞はATCCにCL−173で登録されている。
添加する化合物の濃度は評価する化合物の活性の程度にもよるため、適宜変更されるが、一般的に1nM〜1mM、好ましくは10nM〜0.1mMである。これらの濃度範囲において化合物濃度を変化させて添加してもよい。
化合物を添加した状態で0.5〜24時間、好ましくは1〜12時間培養し、培養後の培地中の糖濃度を測定する。糖濃度は通常の方法に従って測定することができ、例えば、市販の測定器グルテストエースとグルテストセンサー(いずれも三和化学研究所)などを用いて安価(1測定は20-30円)で簡単(1測定は30秒)に測定することができる。
評価化合物を添加しない場合と比較し、添加することにより培地中の糖濃度を減少させた化合物を選択することにより、肥満及び/又は糖尿病治療薬(候補薬)を得ることができる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1.DIF-1の3T3L1細胞への糖代謝促進作用
(1)マウス3T3L1繊維芽細胞を適当な培地1ml中(12穴のプラスチック容器中)でコンフルエント状態になるまで数日間培養した。次に、何も加えない栄養培地(None)、DIF-1の溶剤である0.2%エタノールのみを加えた栄養培地(EtOH)、10又は20μMのDIF-1(エタノールに溶解)を加えた栄養培地で、それぞれ10-12時間ほど培養し、培地中のブドウ糖の濃度を測定し、それぞれの細胞の糖代謝の速度を計算し、コントロールに対する比で表した(図1)。その結果、DIF-1存在下では、DIF-1の濃度依存性に細胞の糖代謝速度が上がることが明らかとなった。なお、図1の値は4回の独立実験結果の平均と標準偏差である。
(2)次に、マウス3T3L1繊維芽細胞を適当な培地1ml中(12穴のプラスチック容器中)でコンフルエント状態になるまで培養した。新しい培地に交換後(この時点が、グラフの0時間に対応)、培地中にDIF-1を添加して、培養20時間での培地中のグルコース濃度を測定し(図2A)、その値から消費速度を計算した(図2B)。その後、すべてのサンプルの培地をDIF-1を含まない新しい培地に交換してさらに20時間培養し、培養後のグルコース濃度を測定した(図2A)、さらに、この時点での細胞数を測定した(図2C)。グラフの値は、同様の条件の3サンプルの測定結果の平均と標準偏差である。
この結果から、DIF-1が細胞数には影響せずに(図2C)、濃度依存性に細胞の糖代謝を促進していることが分かる(図2B)。また、DIF-1の作用は可逆的であり、途中でDIF-1を除去すれば、細胞の糖代謝は元の状態に戻ることも分った(図2A)。顕微鏡による観察では、DIF-1存在下においても、細胞形状に変化はなく、目立った傷害はなかった。
実施例2
実施例1と同様の条件下で、DIF-1とその人工的類似体(2-MIDIF1、DMPH、THPH)の糖代謝促進作用を比較した(図3:グラフの値は、3回の独立実験結果の平均と標準偏差である)。
興味深いことに、下記のDIF-1類似体は、ほとんど糖代謝促進作用がなく、DIF-1の糖代謝促進作用がその化学構造に特異的なものであることが分かる。また、DIF-1は、細胞内カルシウム濃度を上昇させる作用と細胞内cyclicAMPを上昇させる作用が知られているが、Tg(タプシガルギン)やA23187(共に細胞内カルシウムを上昇させる薬剤)や8-MIBMX(細胞内cyclicAMPを上昇させる薬剤)といった他の薬剤は、糖代謝を促進しない。したがって、DIF-1による糖代謝促進作用は、細胞内カルシウムやcyclicAMP上昇を介していない、新しい現象であることが示唆された。
Figure 2006290810
実施例3
ラット胃粘膜より単離されたRGM-1細胞という培養細胞を用いて、上記と同様の実験を行い、DIF-1又はその他の化合物存在下での培地中のグルコース濃度の変化を調べた(図3)。
この結果、RGM-1細胞においても、DIF-1が細胞数には影響せずに、DIF-1の濃度依存性に細胞の糖代謝を促進していることが分かる。また、この検定系が薬剤の糖代謝促進効果を測定するのに有効であり、また、各種培養細胞を用いて実行できる簡便法であることが分かる。
実施例4
DIF-1の類縁化合物についても上記と同様の方法によって、3T3-L1細胞における糖代謝促進作用を調べた。その結果、下記に示す化合物についてもDIF-1と同程度の糖代謝促進作用が観察された。
Figure 2006290810
Figure 2006290810
DIF-1を添加して培養したときの3T3-L1細胞の糖代謝速度を示す図〜その1。 DIF-1を添加して培養したときの3T3-L1細胞の糖代謝速度を示す図〜その2。Aは無添加、エタノール添加、DIF-1添加で20時間培養したときの培地中の糖濃度、及び20時間後に培地をDIF-1を含まない培地に変えてさらに20時間(合計40時間)培養した後の培地中の糖濃度を示す。Bは各細胞の20時間培養時における糖代謝速度を示し、Cは40時間培養時における各細胞の細胞数を示す。 DIF-1、その人工的類似体(2-MIDIF1、DMPH、THPH)、Tg、A23187、又は8-MIBMXの3T3-L1細胞の糖代謝速度に対する効果を示す図。 DIF-1を添加して培養したときのRGM-1細胞の糖代謝速度を示す図。Aは無添加、又は各濃度のDIF-1を添加して6,12時間培養したときの培地中の糖濃度を示す。Bは各細胞の糖代謝速度を示し、Cは培養12時間後の各細胞の細胞数を示す。

Claims (4)

  1. 式(I)で示される化合物を有効成分とする糖代謝促進剤。
    Figure 2006290810
    式(I)において、R1は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であって、脂肪族炭化水素基又はフェニル基の任意の水素原子はハロゲンで置換されていてもよく、R2は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であって、脂肪族炭化水素基又はフェニル基の任意の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。X1はハロゲンであり、X2は水素又はハロゲンである。
  2. 血糖降下剤として用いられる請求項1に記載の糖代謝促進剤。
  3. 肥満および/又は糖尿病の予防又は治療用である請求項1に記載の糖代謝促進剤。
  4. 化合物を添加した培地中で細胞を培養し、該培地中の糖濃度を測定することによって、該細胞の糖代謝能を活性化させる物質を選択することを特徴とする、肥満および/又は糖尿病治療薬のスクリーニング方法。

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