JP2006290652A - 水素生成装置および燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】 高耐久性で運転停止後の再始動性を良好にする。
【解決手段】 改質反応器に燃料電池を冷却する冷却用エアの供給が可能な噴射装置が設けられ、停止時に噴射装置27,24から冷却用エアを供給して触媒12上をパージし、停止された改質反応器内に残留する残留成分が器外に排出されるようになっている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、触媒を用いた燃料改質反応と触媒を加熱再生する再生反応とを切替えて行なう水素生成装置およびこれを備えた燃料電池システムに関する。
従来の電気自動車は、車両駆動用の電源として燃料電池を搭載すると共に、燃料電池を発電運転させるための燃料である水素又は水素生成用の原燃料を搭載している。
水素自体を搭載する場合、水素ガスを圧縮して高圧ボンベに若しくは液化してタンクに充填し、又は水素吸蔵合金や水素吸着材料を用いて搭載する。しかし、高圧充填による場合は、容器壁厚が厚く大きいわりに内容積をかせげないため水素充填量が少なく、また、液体水素とする液化充填による場合は、気化ロスが避けられないほか液化に多大なエネルギーを要する。また、水素吸蔵合金や水素吸着材料では電気自動車等に必要とされる水素貯蔵密度が不充分で、水素の吸蔵/吸着等の制御も困難である。また、原燃料を搭載する場合、燃料を水蒸気改質して水素を得る方法などがあるが、改質反応は吸熱的であるために別途熱源が必要であり、熱源に電気ヒータ等を用いたシステムでは全体のエネルギー効率の向上は図れず、また、あらゆる環境条件下で安定的に水素量を確保できる点も不可避である。
水素の供給方法については、未だ技術的に確立されていないのが実状であるが、将来的に各種装置における水素利用の増加が予測されることを踏まえると、水素の供給方法の確立が期待されている。
上記に関連する技術として、触媒を用いて、吸熱反応である燃料の水蒸気改質反応と、水蒸気改質反応で低下した触媒温度を再生する再生反応とを切替えて繰り返し行なう改質装置を有する燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
これに関連する技術として、上記以外に開示されているものもある(例えば、特許文献2〜5参照)。また、高温域で発電運転を行なう燃料電池の例として、水素透過性材料を用いた燃料電池に関する開示がある(例えば、特許文献6参照)。
米国特許2004−175326号明細書 特開2002−179401号公報 米国特許2004−170558号明細書 米国特許2004−170559号明細書 米国特許2003−235529号明細書 特開2004−146337号公報
しかしながら、上記の燃料電池システムでは、システムを停止する場合に、未燃の燃料や反応生成した一酸化炭素が反応器内に残留してしまい、残留したガソリン等(燃料)の炭化水素から炭素析出を生じたり、一酸化炭素で触媒が被毒し、あるいは水蒸気が結露して管口が閉塞される等の問題がある。したがって、システムを再始動する場合の始動性が低下しやすいばかりか、長期耐久性を堅持することが不可能である。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、高耐久性で運転停止後の再始動性に優れた水素生成装置および、高耐久性で運転停止後の再始動性に優れ、安定した発電性能を発揮し得る燃料電池システムを提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
上記した目的を達成するために、第1の発明である水素生成装置は、触媒を備え、燃料と水蒸気とを含む改質用原料が供給されたときには加熱された前記触媒上で前記改質用原料を改質反応させ、発熱用燃料が供給されたときには該発熱用燃料を発熱反応させて前記触媒を加熱する、少なくとも1基の改質反応器と、前記改質反応器への前記改質用原料の供給流路および前記発熱用燃料の供給流路を切替える切替手段と、前記改質反応器にパージ用流体を供給する供給手段と、前記改質反応器への前記改質用原料および前記発熱用燃料を供給を停止する際、供給が停止された改質反応器内に残留する残留成分が器外に排出されるように、前記供給手段により前記パージ(purge;本明細書中において同様。)用流体の供給を行なうパージ制御手段と、で構成したものである。
なお、本発明における発熱反応には、燃焼反応等が含まれる。
本発明の水素生成装置には、蓄熱を利用した燃料の改質反応と改質反応で低下した蓄熱量(すなわち触媒温度)を回復させる再生反応とを切替えて行なうことができる少なくとも1基の改質反応器(以下、「PSR(Pressure swing reforming)型改質器」ともいう。)が設けられている。そして、2基以上のPSR型改質器が設けられた構成の場合は、少なくとも1基が燃料の改質反応を行なうと共に、他の少なくとも1基において再生反応が行なわれる(以下、PSR型改質器を2基以上設けてなる水素生成装置を「PSR改質装置」ともいう。)。
本発明に係る改質反応には、下記の吸熱反応である水蒸気改質反応と発熱反応である部分酸化反応とが含まれる。本発明における改質反応においては、下記(1)の水蒸気改質反応が主として行なわれる。
n2n+2+nH2O → (2n+1)H2+nCO …(1)
n2n+2+(n/2)O2 → (n+1)H2+nCO …(2)
CO+H2O ⇔ CO2+H2 …(3)
CO+3H2 ⇔ CH4+H2O …(4)
例えば水素生成装置を構成する改質反応器が2基である場合、一方を器内の蓄熱を利用して吸熱反応である水蒸気改質反応(主に前記(1)の反応)をさせると共に、他方では発熱反応である再生反応を行なわせるようにし、前記一方の蓄熱量が水蒸気改質反応により低下したときには前記一方を再生反応に切替えると共に、前記他方を再生反応により蓄熱された熱で燃料改質を行なうように改質反応に切替える。これにより、別途の加熱器等が不要になり、熱エネルギーの利用効率の高い連続的な水素生成が可能である。
第1の発明においては、改質反応させる改質反応器への改質用原料の供給および、再生反応させる改質反応器への発熱用燃料の供給を停止する際、つまり水素生成装置を停止する際に、器内に残存する残留物をパージして器外に排出するようにすることで、改質反応状態から停止された改質側の改質反応器では、未燃の燃料や反応生成した一酸化炭素の反応器内での残留が解消され、残留するガソリン等の炭化水素からの炭素析出や一酸化炭素による触媒の被毒劣化を効果的に防止できると共に、再生反応状態から停止された再生側の改質反応器では、水蒸気が結露して管口が閉塞される等を効果的に防止できるので、運転停止後の再始動性を向上させることができる。
第1の発明には、改質反応器の触媒温度を検出する検出手段と、検出手段により検出された触媒温度が所定の温度以下であるか否かを判定する判定手段とを更に設けることができる。そして、改質反応させている改質反応器への改質用原料の供給を停止する際、前記判定手段によって停止以後の改質反応器の触媒温度が所定温度以下であると判定されたときに、前記パージ制御手段によりパージ用流体の供給を行なうようにすることができる。
停止以後の改質反応器の触媒温度が高いままエア等のパージ用流体を供給すると、改質側の改質反応器に残存する水素や触媒上に堆積した炭素が燃焼して触媒温度が急激に上昇して触媒劣化を来たすことがあるが、上記のように予め触媒温度を検出して触媒が所定温度以下とした後にパージ(purge)を行なうようにすることで、触媒の異常昇温を回避できるので、触媒劣化が助長されるのを効果的に防止することができる。
本発明に係るパージ制御手段は、改質反応させている改質反応器において、燃料の供給停止後に水蒸気の供給を停止し、水蒸気の供給が停止された後にパージ用流体を供給するように構成するのが効果的である。燃料の供給停止前に水蒸気の供給を停止すると、エア等のパージ用流体が供給されたときに燃料との間で反応(例えばエアが供給されたときは燃料の燃焼反応)を起こして触媒温度が異常昇温しやすいが、パージ制御手段を上記のように構成することで、触媒温度の異常昇温を回避できるので、触媒劣化が助長されるのを効果的に防止することができる。
また、パージ制御手段は、改質反応器を休止する場合には、エア等のパージ用流体の供給を禁止するように構成するのが望ましい。休止時にはエア等のパージを行なわないようにすることで、再始動の際に直ぐに水素を生成することが可能であり、例えば燃料電池システムとした場合等において、いつでも出力可能な出力待機のOCV状態等の休止時から任意のタイミングで再始動した際に直ぐに、燃料電池に発電用燃料である水素ガスの供給を行なうことができる。
また、休止時のパージ禁止の際に改質反応器の配管経路を閉鎖する等したときには、水素の改質生成が可能な触媒温度が維持され、休止状態から再始動する際に迅速に発電用の水素を燃料電池に供給できる。
上記の判定手段は、発熱反応させている改質反応器の触媒温度が改質開始温度以上であるか否かが判定されるように構成することができ、この場合には、パージ制御手段は、発熱反応させている改質反応器の触媒温度が改質開始温度以上であると判定されたときに、エア等のパージ用流体の供給が禁止されるように構成することが好適である。
かかる構成により、改質開始温度に到達したところでパージを禁止、つまり触媒温度が改質開始温度に上昇するまでパージの禁止を延期することで、再始動時に再生側の改質反応器の改質開始温度までの昇温を早めることができるので、改質反応と再生反応との切替えを早い周期で行なうことができ、改質側の改質反応器の触媒温度が低下していた場合でも連続的に、安定して水素の供給を行なうことができる。
本発明の水素生成装置において、運転の「停止」は、改質反応器への改質用原料および発熱用燃料の供給を止めた状態であり、運転の「休止」は、改質反応器への改質用原料および発熱用燃料の供給を一時的に止めているが、いつでも供給を開始できる状態である。
第2の発明である燃料電池システムは、前記第1の発明である水素生成装置、即ち、触媒を備え、燃料と水蒸気とを含む改質用原料が供給されたときには加熱された前記触媒上で前記改質用原料を改質反応させ、発熱用燃料が供給されたときには該発熱用燃料を発熱反応させて前記触媒を加熱する、少なくとも1基の改質反応器と、前記改質反応器への前記改質用原料の供給流路および前記発熱用燃料の供給流路を切替える切替手段と、前記改質反応器にパージ用流体を供給する供給手段と、前記改質反応器への前記改質用原料および前記発熱用燃料の供給を停止する際、供給が停止された改質反応器内に残留する残留成分が器外に排出されるように、前記供給手段により前記パージ用流体の供給を行なうパージ制御手段とを備えた水素生成装置と、水素生成装置で改質生成された水素含有ガスの供給により発電する燃料電池と、で構成したものである。
上記したように、第1の発明である水素生成装置は、停止時に器内に残存する残留物をパージして器外に排出するようにし、器内に残留するガソリン等の炭化水素からの炭素析出や一酸化炭素による触媒の被毒劣化を防止すると共に、水蒸気が結露して管口が閉塞される等を防止することができるので、該水素生成装置で改質生成された水素ガスで燃料電池を発電運転する燃料電池システムの、運転停止後の再始動性を効果的に高めることができる。
第2の発明では、水素透過性金属層の少なくとも片側に電解質層が積層された電解質を備えた燃料電池を用いて構成することが効果的である。このような、水素透過性金属層の少なくとも片側に電解質層が積層された電解質を備えた燃料電池は、作動温度域が300〜600℃であるため、改質反応が進行する反応温度域と略同域にあり、改質生成された水素リッチガスを燃料電池の運転温度域で供給することができると共に、燃料電池のアノード側およびカソード側のオフガスはそのままPSR型改質器に戻されて改質や再生等の反応に利用できるので、システム構成上および熱エネルギーの有効利用の点で特に適している。また、供給前の予熱も不要である。
第2の発明には、燃料電池の酸素極(カソード)側から排出された排出ガス(カソードオフガス)を改質反応器に供給する供給流路を更に設けることができ、カソードオフガスの供給流路が切替手段により切替えられるように構成すると共に、燃料の供給停止後にカソードオフガスの供給を停止し、該カソードオフガスの供給が停止された後に例えば別系統から、ドライエア等のパージ用流体を供給して残留成分が器外に排出されるように、水素生成装置のパージ制御手段を構成するのが効果的である。
燃料の供給停止前にカソードオフガスの供給を停止するのではなく、燃料の供給停止後にカソードオフガスの供給を停止することで、触媒温度の異常昇温を回避して触媒劣化を効果的に防止し得ると共に、カソードオフガス以外のパージ用流体を用いてパージを行なうようにするので、比較的低温のエアの利用が可能で、触媒の異常昇温を抑制することができ、また、含水分の少ないドライエアの利用が可能で、触媒上に堆積した炭素、炭化水素の燃焼除去効率の向上や改質側の改質反応器内の結露防止の点で効果的である。
第2の発明に係るパージ制御手段は、燃料電池の酸素極(カソード)側の排出ガス(カソードオフガス)中の酸素量および水分量のいずれか一方が増減制御されるように構成することができ、改質反応させる改質反応器への改質用原料の供給および、再生反応させる改質反応器への発熱用燃料の供給を停止する際、つまり燃料電池システムを停止する際に、改質反応させる改質反応器の雰囲気中の炭素(C)に対する酸素(O)の比率(O/C)を、改質用原料の供給停止時における比率O/C以下に低下させた後に停止するように構成することが望ましい。
特に燃料電池のカソードオフガスを改質反応させる改質反応器に供給して改質反応(水蒸気改質反応および部分酸化反応を含む。)させる水素生成装置の停止時に、燃料電池のカソードガスのストイキ比を下げて酸素濃度を低下させる等して、比率O/Cを改質用原料の供給停止時における比率以下に低下させた後に停止することで、発熱反応である部分酸化反応の割合を低減することができるので、触媒の異常昇温を回避でき、触媒劣化を効果的に防止することができる。
また、第2の発明に係るパージ制御手段は、燃料電池の酸素極(カソード)側の排出ガス(カソードオフガス)中の酸素量および水分量のいずれか一方が増減制御されるように構成することができ、改質反応させる改質反応器への改質用原料の供給および、再生反応させる改質反応器への発熱用燃料の供給を停止する際、つまり燃料電池システムを停止する際に、改質反応させる改質反応器の雰囲気中の炭素(C)に対する水蒸気(Steam)の比率(Steam/C)を、改質用原料の供給停止時における比率Steam/C以上に向上させた後に停止するように構成することも望ましい。
特に燃料電池のカソードオフガスを改質反応させる改質反応器に供給して改質反応(水蒸気改質反応および部分酸化反応を含む)させる水素生成装置の停止時に、燃料電池での水素利用率を高める等して、比率Steam/Cを改質用原料の供給停止時における比率以上に向上させた後に停止することで、カソードオフガス中の水分量が増大するので、比率Steam/Cが上がり、全体のガス量が増える結果、触媒の異常昇温を回避でき、触媒劣化を助長するのを効果的に防止することができる。
本発明の燃料電池システムにおいて、運転の「停止」は、改質反応器への改質用原料および発熱用燃料の供給を止めて燃料電池への水素の供給を止め、発電を直ちに開始できない状態であり、運転の「休止」は、電荷の移動が遮断された開回路の状態であって、出力はないがいつでも出力可能な出力待機の状態(例えば車両搭載時は、イグニッションスイッチがオン状態のまま信号待ちで停車している等の状態)である。
本発明は、改質器に蓄えられた蓄熱量を利用して改質反応させ、改質生成された水素を燃料電池に供給すると共に、燃料の水蒸気改質により低下した改質器の蓄熱量を発熱反応である発熱反応(再生反応)を行なわせて回復するようにする場合に、運転停止前に予め触媒を(燃焼)クリーニングして停止後の再始動姓を確保し、安定した発電運転を連続的に行なうことが可能なシステムに構築することができる。
本発明によれば、高耐久性で運転停止後の再始動性に優れた燃料改質装置および、高耐久性で運転停止後の再始動性に優れ、安定した発電性能を発揮し得る燃料電池システムを提供することができる。
以下、図1〜図8を参照して、本発明の燃料電池システムの実施形態について詳細に説明すると共に、該説明を通じて本発明の水素生成装置の詳細についても具体的に説明する。なお、下記の実施形態では、発熱用燃料として燃焼用燃料を用いた場合を中心に説明する。
本実施形態の燃料電池システムは、水素透過性の金属膜の膜面にプロトン伝導性のセラミックスが積層されたものを電解質膜として用いた水素分離膜型燃料電池(HMFC)が搭載された電気自動車に本発明の水素生成装置を搭載し、この水素生成装置で改質生成された水素を発電用燃料として水素分離膜型燃料電池に供給し発電運転を行なうように構成したものである。
水素生成装置については、改質反応により改質する改質用原料としてガソリンおよび水蒸気の混合ガスを、再生反応時に燃焼させる燃焼用燃料として燃料電池のアノードオフガス(および必要に応じてガソリン等の炭化水素成分や水素ガスなどの燃焼成分)を用いる場合を中心に説明する。但し、本発明においては下記実施形態に制限されるものではない。
図1に示すように、本実施形態は、触媒および噴射装置が設けられ、改質反応と再生反応とを交互に切替えて行なわせることが可能な第1のPSR型改質器(PSR1)10および第2のPSR型改質器(PSR2)20を有するPSR改質装置1と、各PSR型改質器で改質生成された水素で発電運転を行なう水素分離膜型燃料電池(HMFC)30と、を備えている。
PSR型改質器10およびPSR型改質器20での改質反応と再生反応との相互切替は、ガソリンおよび水蒸気の混合ガス(改質用原料)をPSR型改質器へ供給するための流路、アノードオフガスをPSR型改質器へ供給するための流路、並びに改質生成された水素リッチガスをPSR型改質器から排出するための流路等を切替える切替手段、ここでは具体的には複数のバルブを制御装置で制御して行なわれるようになっている。
まず、本実施形態の燃料電池システムの基本的構成について、図1を参照して略説する。図1は、燃料電池システムの構成を説明するための概念図である。
第1のPSR型改質器10の一端、および第2のPSR型改質器20の一端には各々、ガソリンおよび水蒸気の混合ガス(改質用原料)を供給する供給配管101とバルブVaを介して繋がる配管102、配管103の一端が接続されており、バルブVaの切替により各PSR型改質器に改質用原料を供給できるようになっている。
PSR型改質器10の他端、およびPSR型改質器20の他端には、改質反応を行なわせてガソリンを水蒸気改質して生成された水素リッチガスを排出する排出配管104,排出配管105がそれぞれ接続され、バルブVbを介して繋がる水素供給管106を介在させて水素分離膜型燃料電池(以下、単に「燃料電池」ともいう。)30と連通されており、バルブVbの切替により発電用燃料である水素を連続的に供給可能なようになっている。また、水素供給管106には、水素を一時的に貯蔵しておくための水素タンク(例えば水素吸蔵装置、高圧タンクなど)を設けることができ、燃料電池30への水素量調整や、例えば電池起動時などPSR型改質器の蓄熱量が低い場合の発電用の予備燃料の目的で供給を行なうようにすることもできる。
PSR型改質器10およびPSR型改質器20の各々の他端には更に、水素分離膜型燃料電池30からのアノードオフガスを排出する排出配管107とバルブVcを介して繋がり、各PSR型改質器に排出されたアノードオフガスを供給する供給配管108,109の一端がそれぞれ接続されている。バルブVcの切替により燃焼用燃料であるアノードオフガスを、再生反応を行なうPSR型改質器に供給可能なようになっている。
また、水素分離膜型燃料電池30には、水素供給管106および排出配管107が各々一端で接続されると共に、発電運転させるための酸素含有率の高いエア(酸化剤ガス)を供給するエア供給管111と、電池反応で生じたカソードオフガスを排出する排出配管112とが各々一端で接続されており、改質生成された水素とエアとが供給されたときに発電運転し、発電後のオフガス(アノードオフガスおよびカソードオフガス)を電池外部に排出できるようになっている。
排出配管112が他端で接続するバルブVdには、PSR型改質器10,20にカソードオフガスを供給する供給配管113,114の各一端が接続されており、改質反応時に部分酸化反応を起こさせる酸素源として、および改質用原料の一部として、カソードオフガスをバルブVdの切替により改質反応を行なうPSR型改質器に供給できるようになっている。
例えばPSR型改質器10で再生反応を、PSR型改質器20で改質反応を行なわせる場合、排出配管112と供給配管114とが連通するようにバルブVdが切替えられると共に、供給配管101および配管103と、排出配管105および水素供給管106と、排出配管107および供給配管109と、が各々連通するようにバルブVa〜Vcが切替えられ、燃料電池30から排出されたカソードオフガスをガソリンおよび水蒸気の混合ガス(改質用原料)と共に改質反応に供すると共に、燃料電池30のアノードオフガスは再生反応での燃焼用燃料として用いられる。
改質反応を行なうPSR型改質器20の蓄熱量が低下したときには、各バルブを再び切替えることによって、逆にPSR型改質器10で改質反応を、PSR型改質器20で再生反応を行なわせることができる。このとき、再生反応を行なうPSR型改質器10では、改質反応させ得るように蓄熱量が増大した状態にある。この場合は、バルブVdの切替により排出配管112と供給配管113とが連通されると共に、供給配管101および配管102と、排出配管104および水素供給管106と、排出配管107および供給配管108と、が各々連通するようにバルブVa〜Vcが切替えられる。
本実施形態の燃料電池システムについて、図2を参照して、PSR型改質器10において改質反応させると共に、PSR型改質器20において再生反応させる場合を中心に更に詳細に説明することとする。
第1のPSR型改質器(PSR1)10の一端には、改質用原料であるガソリンおよび水蒸気の混合ガスを噴射するための噴射装置13と、水素分離膜型燃料電池(HMFC)30からのカソードオフガスを噴射するための噴射装置14と、停止時に冷却用エア(パージ用流体)を供給してパージを行なうための噴射装置27とが取付けられている。
噴射装置13は、改質用原料を構成する燃料であるガソリン(および必要に応じ水蒸気;この場合はガソリンおよび水蒸気の混合ガス)を供給するバルブV6を備えた供給配管102の一端と接続され、噴射装置14はカソードオフガスを供給する供給配管113の一端と接続されており、供給配管102を挿通して供給されたガソリン(またはガソリンおよび水蒸気の混合ガス)を噴射装置13から広角に噴射すると共に、供給配管113を挿通して供給されたカソードオフガスを噴射装置14から広角に噴射し、PSR型改質器10に内装された触媒上で反応させ得るようになっている。また、噴射装置27は、冷却管115の分岐端の一方と接続されており、バルブV3の切替により冷却用エアを噴射して触媒上をパージできるようになっている。
PSR型改質器10の他端には、水蒸気改質反応により改質生成された水素リッチガスを排出する排出配管104の一端が接続されており、他端はバルブV5を備えた排出配管106と接続されている。PSR型改質器10は、排出配管106を介して水素分離膜型燃料電池30と連通されており、この水素分離膜型燃料電池30に発電用燃料である水素(水素リッチガス)を供給できるようになっている。
水素分離膜型燃料電池30には、排出配管107の一端が接続され、排出配管107の他端はバルブV2を備えた供給配管108の一端と接続されて、排出配管107および供給配管108によって水素分離膜型燃料電池30はPSR型改質器20と連通されるようになっており、水素分離膜型燃料電池30から排出されたアノードオフガスは、排出配管107および供給配管108を挿通してPSR型改質器20に供給されるようになっている。
また、供給配管108の配管途中には、バルブV9を備えた燃料供給管120の一端が接続されており、アノードオフガスに加えて、再生反応に用いる燃焼成分として炭化水素成分や水素ガスを追加的に加給することで、燃焼成分の量の大幅な増減調整が可能である。さらに排出配管104の配管途中には、バルブV4を備えたバイパス管116の一端が接続されており、バルブV4での流量調節によっても燃焼成分の量の増減調整を行なうことができる。すなわち、例えば低負荷から高負荷の発電運転に変化し、燃料電池30での要求水素量が増大する場合等のように、供給配管108から供給される水素量(燃焼用燃料)が少ないときや改質/再生間の切替周期を短周期にするとき等には、外部から、あるいは改質生成された水素の一部を再生反応させるPSR型改質器20に供給し、アノードオフガスの利用率を制御すると共に、再生反応下での燃焼成分の量的な増減調節が広範に行なえるようになっている。これにより、再生反応させるPSR型改質器20の蓄熱を迅速に行なうことができ、改質/再生間の反応の切替周期を短くするのに有効である。
また、供給配管108には、開度によりアノードオフガス量を調節する絞り弁や水素バッファータンク(例えば水素吸蔵装置、高圧タンクなど)を設け、絞り弁の駆動や水素バッファータンクからの水素供給を行なうことにより、PSR型改質器20への供給量を発電運転状態に連動しないように制御するようにしてもよい。
バルブV2には、不図示の燃焼器を備えた排出管109の一端が接続されると共に、排出配管106と連通する戻し配管110の一端が接続されている。再生反応に必要な量以上の余剰水素(アノードオフガス)が供給配管108からPSR型改質器20に供給されている場合、バルブV2により排出管109と連通されたときには燃焼器で浄化して排出管109の他端から外部へ排出し、戻し配管110と連通されたときにはアノードオフガスを再度水素供給管106に戻して発電用燃料として循環利用することで、水素量の増減調整を適宜行なえるようになっている。
また、余剰水素は別に設けた水素貯蔵タンクに水素吸蔵させるようにしてもよく、必要に応じてPSR型改質器20に水素供給することで水素(燃焼用燃料)量の増減調整を適宜行なうことが可能である。
水素分離膜型燃料電池30には更に、発電運転させるための酸素含有率の高いエア(酸化剤ガス)を供給するエア供給管111の一端と、電池反応で生じたカソードオフガスを排出する排出配管112の一端とが各々接続されており、燃料電池30はバルブV1を介して繋がる供給配管113を介してPSR型改質器10と連通されている。
また、バルブV1には更に供給配管119の一端が接続されており、供給配管119および排出配管112により、燃料電池30はPSR型改質器20とも連通されている。PSR型改質器20に供給される、アノードオフガス中の水素等(燃焼用燃料)を燃焼させるためのエア(支燃エア)の量を制御すると共に、酸素量を所望に調整することができ、また、比較的高温のカソードオフガスの加給により温度調節も可能なように構成されている。
水素分離膜型燃料電池30の内部には、一端で大気中から給気された冷却用エア(冷却媒体)を挿通するバルブV3を備えた冷却管115の一部が設けられており、冷却管内の冷却用エアとの間で熱交換することによって電池内部の冷却が行なえるようになっている。
この冷却管115は、バルブV3を介して分岐された分岐端の一方でPSR型改質器10に設けられた噴射装置27と接続されており、PSR型改質器10を停止させる際に、バルブV3の切替によりPSR型改質器10に冷却用エア(パージ用流体)を供給して、PSR型改質器10中に停止時に残存する残留成分、例えばガソリンおよび水蒸気等の改質用原料成分や一酸化炭素等の反応生成物などの被毒成分をパージできるようになっている。停止時にパージされるので、器内がクリーニングされ、停止中に器内に残存する一酸化炭素等の被毒成分で触媒が被毒したり、水蒸気が結露して管接続部が閉塞されるのを効果的に防止することができる。
また、冷却管115の分岐端の他方は、PSR型改質器20と接続されており、冷却に使われて加熱された冷却用エアが直にPSR型改質器20に供給され、器内温度を保持すると共に流量制御が可能であり、再生反応時にアノードオフガス中の水素等の燃焼用燃料を燃焼させる支燃エアとして利用できるようになっている。
さらに上記同様に、PSR型改質器20を停止させる際には、バルブV3の切替によりPSR型改質器20に冷却用エア(パージ用流体)を供給して、PSR型改質器20中に残存する未燃焼ガス成分や水分などの残留成分をパージできるようになっている。停止時にパージされるので、器内がクリーニングされ、器内に残留するの残留成分で触媒が被毒したり、生成水で閉塞されるのを効果的に防止することができる。改質/再生間の反応の切替周期を短くする場合にも有効である。
冷却管115には更に、開度により冷却用エア量を調節する絞り弁やバッファータンク(例えば酸素吸着装置、高圧タンクなど)を設け、絞り弁の駆動やバッファータンクからの供給を行なうことにより、PSR型改質器10への供給量を発電運転状態に連動しないように制御すると共に、酸素量を所望に調整することが可能である。
PSR型改質器20の一端には、噴射装置23,24,25,および26が取り付けられており、広角に噴射してPSR型改質器20に内装された触媒上への供給が可能なようになっている。
噴射装置23は供給配管108の他端と、噴射装置24は冷却管115の他端とそれぞれ接続されている。噴射装置25は、供給配管119の他端と接続されており、カソードオフガスの一部を支燃エアとしてPSR型改質器20に追加的に供給できるようになっている。また、噴射装置26は、バイパス管116の他端と接続されており、改質生成された水素リッチガスの一部を燃焼用燃料としてPSR型改質器20に追加的に供給できるようになっている。
PSR型改質器20の他端には、再生反応後の雰囲気ガスを再利用するためのバルブV8を備えた戻り配管117の一端と、再生反応後の雰囲気ガスを外部に排気するためのバルブV7を備えた排出管118の一端とが接続されている。戻り配管117の他端は、供給配管108の配管途中で接続されて循環系が構築されており、再生反応後の温度の高いガスを再度PSR型改質器20に戻すことで、器内温度を高く保持することができる。
第1のPSR型改質器10は、図3に示すように、両端が閉塞された断面円形の筒状体11と、筒状体11の内壁面に担持された触媒(触媒担持部)12とで構成されており、筒状体11は反応を行なうための空間を形成すると共に、触媒担持体として機能を担っている。
筒状体11は、セラミックスハニカムを用いて直径10cmの断面円形の筒型に成形し、筒の長さ方向の両端を閉塞した中空体である。断面形状やサイズは、目的等に応じて、円形以外の矩形、楕円形などの任意の形状、サイズを選択することができる。
触媒12は、筒状体内壁の曲面のうち、筒状体の長さ方向両端から筒内方向に向かう筒の中央付近、すなわち長さ方向の両端からそれぞれ所定距離Aの領域を触媒を担持しない触媒非担持部12A,12Bとして残し(図2参照)、触媒非担持部を除く全面に担持されている。触媒12には、Pd、Ni、Pt、Rh、Ag、Ce、Cu、La、Mo、Mg、Sn、Ti、Y、Zn等の金属を用いることができる。
触媒12により改質反応させた場合、改質生成された水素リッチガスは該ガスの排出方向下流側の触媒非担持部12Aで冷却され、水素リッチガスを燃料電池の運転温度に近づけて供給できると共に、逆に改質反応から再生反応に切替えられた場合には、触媒非担持部12Aは水素リッチガスとの熱交換により昇温した状態にあり、水素リッチガスとは逆向きに供給された燃焼用燃料を触媒非担持部12Aで予熱させてから触媒12に供給できるようになっている。これにより、触媒12が担持された筒状体11の中央付近ほど、蓄熱量が高くなる温度分布が形成され、反応性の点で有利である。
筒状体11の曲面部には、触媒の温度を計測するための温度センサ15が取り付けられており、触媒温度に基づいた反応制御を行なうことができるようになっている。
第2のPSR型改質器20は、第1のPSR型改質器10と同様に構成されており、第1のPSR型改質器10で行なわせる反応(改質反応であるか再生反応であるか)との関係で、改質反応と再生反応とを切替えて行なえるようになっている。
水素分離膜型燃料電池(HMFC)30は、図4に示すように、水素透過性金属を用いた緻密な水素透過膜を有する電解質膜51と、電解質膜51を狭持する酸素極(O2極)52および水素極(H2極)53とで構成されており、PSR型改質器10で改質生成された水素リッチガスが供給されると水素を選択的に透過させて発電運転が行なえるようになっている。
酸素極52と電解質膜51との間には、酸化剤ガスとして空気(Air)を通過、すなわち給排するためのエア流路59aが形成されており、水素極53と電解質膜51との間には、水素リッチな燃料ガス(ここでは、改質生成された水素リッチガス)を通過、すなわち給排するための燃料流路59bが形成されている。酸素極52および水素極53は、カーボン(例えば、白金または白金と他の金属とからなる合金を担持したカーボン粉)や電解質溶液(例えば、Aldrich Chemical社製のNafion Solution)など種々の材料を用いて形成可能である。
電解質膜51は、バナジウム(V)で形成された緻密な基材(水素透過性金属からなる緻密な水素透過膜)56を含む4層構造となっている。パラジウム(Pd)層(水素透過性材料からなる緻密な水素透過層)55、57は、基材56を両側から挟むようにして設けられており、一方のPd層55の基材56と接する側と逆側の面には、更にBaCeO3(固体酸化物)からなる電解質層54が薄層状に設けられている。
基材56は、バナジウム(V)以外に、ニオブ、タンタル、およびこれらの少なくとも一種を含む合金を用いて好適に形成することができる。これらは、高い水素透過性を有すると共に、比較的安価である。
電解質層(BaCeO3膜)54は、BaCeO3以外にSrCeO3系のセラミックスプロトン伝導体などを用いて構成することができる。
水素透過性金属には、パラジウム以外に、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタルおよびこれらの少なくとも一種を含む合金、並びにパラジウム合金などが挙げられる。これらを用いた緻密層を設けることで電解質層を保護できる。
水素透過性金属からなる緻密層(被膜)については、酸素極側では、一般に水素透過性が高く比較的安価である点で、例えば、バナジウム(バナジウム単体および、バナジウム−ニッケル等の合金を含む。)、ニオブ、タンタルおよびこれらの少なくとも一種を含む合金のいずれかを用いるのが好ましい。これらは水素極側での適用も可能であるが、水素脆化を回避する点で酸素極側が望ましい。また、水素極側では、水素透過性が比較的高く水素脆化しにくい点で、例えば、パラジウムまたはパラジウム合金を用いるのが好ましい。
図4に示すように、Pd層55/基材56/Pd層57の3層からなるサンドウィッチ構造、すなわち異種金属(水素透過性材料からなる緻密層)からなる2層以上の積層構造を有してなる場合、異種金属の接触界面の少なくとも一部に該異種金属同士の拡散を抑制する金属拡散抑制層を設けるようにしてもよい(例えば図7及び図8参照)。金属拡散抑制層については、特開2004−146337号公報の段落[0015]〜[0016]に記載されている。
上記のように、サンドウィッチ構造をパラジウム(Pd)/バナジウム(V)/Pdとする以外に、Pd/タンタル(Ta)/V/Ta/Pd等の5層構造などとして設けることも可能である。既述のように、VはPdよりプロトンまたは水素原子の透過速度が速く安価であるが、水素分子をプロトン等に解離する能力が低いため、水素分子をプロトン化する能力の高いPd層をV層の片側または両側の面に設けることで、透過性能を向上させることができる。この場合に、金属層間に金属拡散抑制層を設けることで、異種金属同士の相互拡散を抑え、水素透過性能の低下、ひいては燃料電池の起電力の低下を抑制することができる。
また、電解質層54は固体酸化物からなり、Pd層55との界面の少なくとも一部には、電解質層中の酸素原子とPdとの反応を抑制する反応抑制層を設けるようにしてもよい(例えば図8の反応抑制層65)。この反応抑制層については、特開2004−146337号公報の段落[0024]〜[0025]に記載されている。
電解質膜51は、緻密な水素透過性材料であるバナジウム基材と燃料電池のカソード側に成膜された無機質の電解質層とで構成されることにより、電解質層の薄層化が可能で、一般に高温型の固体酸化物型燃料電池(SOFC)の作動温度を300〜600℃の温度域に低温化することができる。これにより、燃料電池から排出されたカソードオフガスを直接、改質反応させるPSR型改質器に供給する本発明の燃料電池システムを好適に構成することが可能である。
水素分離膜型燃料電池30は、燃料流路59bに水素(H2)密度の高い水素リッチガスが供給され、エア流路59aに酸素(O2)を含む空気が供給されると、下記式(1)〜(3)で表される電気化学反応(電池反応)を起こして外部に電力を供給する。なお、式(1) 、式(2)は各々アノード側、カソード側での反応を示し、式(3)は燃料電池での全反応である。
2 → 2H++2e- …(1)
(1/2)O2+2H++2e- → H2O …(2)
2+(1/2)O2 → H2O …(3)
PSR型改質器10,20(PSR改質装置)、水素分離膜型燃料電池(HMFC)30、バルブV1〜V9、噴射装置13,14および噴射装置23,24,25,26,27、並びに温度センサ15等は、制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100によって動作タイミングが制御されるようになっている。この制御装置100は、水素分離膜型燃料電池と接続されている不図示の負荷の大きさに応じて水素ガスおよびエアの量を調節することにより出力を制御する該燃料電池の通常の発電運転制御を担うと共に、PSR改質装置における改質反応と再生反応との間の通常の反応制御並びに停止時および休止時における制御をも担うものである。
本実施形態では、PSR型改質器10が再生反応から改質反応に切替えられると共に、PSR型改質器20が改質反応から再生反応に切替えられた場合に、PSR型改質器10では、蓄熱量が増大しており、噴射装置13によりガソリン(またはガソリンおよび水蒸気の混合ガス)が噴射されて触媒上に供給されると共に、噴射装置14により燃料電池30から排出されたカソードオフガスが噴射されると、触媒上でガソリンの水蒸気改質が行なわれて水素リッチな合成ガス(水素リッチガス)が生成される。カソードオフガスには、電池反応に供されなかった残存酸素および電池反応で生成された生成水が主に含まれる。このとき、燃料電池30は通常の発電運転状態、すなわちエアが供給されている状態にあり、バルブV1により排出配管112と供給配管113とは連通されている。改質反応は、300〜1100℃の蓄熱下で行なうのが望ましい。
水蒸気改質反応は吸熱反応であるため、改質反応を連続的に行なわせる場合など、蓄熱量(すなわち触媒温度)が低下傾向にある場合や低下幅が著しい場合が生じ、水素の改質生成性が低下しやすくなるが、比較的高温のカソードオフガスを供給して降温を抑えると共に、触媒上で部分酸化反応を行なわせることもできる。部分酸化反応は発熱反応であり、吸熱性の改質反応と共に再生反応による発熱を得ることで、負荷変動の大小に拘わらず、安定した発電運転を連続的に行なうことができる。
なお、イグニッションスイッチがオンされたときにPSR型改質器10の蓄熱量が低い場合には、例えば水素供給管106に設けた水素タンクに貯蔵された水素を供給することにより燃料電池を起動し、このとき排出されたカソードオフガスがPSR型改質器10に供給されると、その熱で昇温すると共に徐々に改質用原料の部分酸化反応を行なわせることができ、これにより蓄熱量が増大し、その後通常の改質反応を行なうことができる。
上記のように改質生成された水素リッチガスは、PSR型改質器10の排出配管104が接続する側の触媒非担持部12Aで予め冷却された後、排出配管104および水素供給管106を挿通して水素分離膜型燃料電池30のアノード側に供給され、発電運転(電池反応)で消費されると、その後アノードオフガスとして排出配管107から排出され、供給配管108を挿通して噴射装置23から噴射される。アノードオフガスには、主として電池反応に供されなかった残存水素が含まれる。このとき、供給配管108が戻し配管110または排出管109と連通するようにバルブV2を切替えることにより、PSR型改質器20に供給される供給量をコントロールすることができる。
PSR型改質器20には、アノードオフガスが供給されると共に、燃焼させるための酸素源として、燃料電池30の冷却用エア、カソードオフガスの一部がそれぞれ噴射装置24,25から噴射され、触媒上で噴射された水素を燃焼させ、燃焼加熱による蓄熱量、すなわち触媒温度を回復させることができる。このとき、PSR型改質器20のアノードオフガス等が供給される側の触媒非担持部(12A)は、上記同様に再生反応が開始される前の改質反応で昇温しており、再生反応時に供給されたアノードオフガス等との熱交換で熱が再び触媒12に戻されて有効に熱利用可能なようになっている。
また、アノードオフガスのみでは燃焼量が少なく、充分な蓄熱量が得られない、あるいは蓄熱が短時間に行なえない等の場合は、燃焼成分として追加的に、改質生成された水素リッチガスの一部がバイパス管116と繋がる噴射装置26から、また、炭化水素成分(ガソリン等)や水素ガスが燃料供給管120を通じて外部から加給され、燃焼加熱による蓄熱量を充分に、また迅速に回復させることができる。
燃焼後の雰囲気ガスは、排出管118から外部に排出される。燃焼後の雰囲気ガスが戻り配管117を挿通して供給配管108に戻されるときには、支燃エア量が増加され、また、噴射装置23に供給されるアノードオフガスおよび支燃エアの温度が調節される。
次に、本実施形態に係る燃料電池システムの制御装置100による制御ルーチンについて、上記のような通常の運転状態から運転停止または運転休止する場合のパージ制御ルーチンを中心に図5〜図6を参照して説明する。
図5は、運転停止または休止時にパージの実行を判断し、運転停止時にパージを行なうパージ制御ルーチンを示すものである。本ルーチンが実行されると、まずステップ100において、燃料電池システムの運転停止要求であるか、または運転休止要求であるかが判断される。
ステップ100において、運転停止の要求があると判断されたときには、運転を完全に停止する前に器内の残存雰囲気をパージしてクリーニングする必要があるため、ステップ102に移行し、改質反応させている改質側のPSR型改質器10の触媒温度の状態が判断され、運転休止の要求があると判断されたときには、運転休止時に触媒温度をある程度維持する必要があるため、ステップ200に移行し、その後再生反応させている再生側のPSR型改質器20の触媒温度の状態が判断される。
ステップ102において、温度センサ15により、改質反応させている改質側のPSR型改質器10の触媒温度taが所定温度Ta以下であるか否かが判断され、触媒温度taが所定温度Ta以下(ta≦Ta)であると判断されたときには、PSR型改質器10にエアをパージした際に燃焼反応を起こして急激に温度上昇し触媒劣化を来たすおそれがないため、そのままステップ104において、まずバルブV2を閉じ、再生反応させている再生側のPSR型改質器20へのアノードオフガスの供給を停止すると共に、さらにステップ106において、改質側のPSR型改質器10へのガソリンの供給を停止する。その後、ステップ108において、バルブV1を閉じ、改質側のPSR型改質器10へのカソードオフガス(水蒸気)の供給を停止する。
上記のように、触媒温度taが所定温度Ta以下であるか否かの判断後にガソリンおよびカソードオフガスの供給を停止するようにし、更にはその判断後に所定期間、改質反応を継続させてからステップ106に移行するようにすると、改質反応が吸熱性であることを利用して触媒温度を低下させるのに有効である。
また、上記のように、カソードオフガス(水蒸気)の停止前にガソリンの供給を停止するので、パージ時におけるガソリンと酸素との燃焼反応を起き難くし、触媒温度が異常昇温するおそれを有効に回避することができる。また、本実施形態のように、改質用の水蒸気成分としてカソードオフガスを改質側のPSR型改質器に供給する以外に、別途設けた外部系から水蒸気が供給される態様に構成することもでき、かかる場合においても、ガソリン停止後に水蒸気の供給を停止するようにするのが望ましい。
一方、ステップ102において、触媒温度taが所定温度Taを超えていると判断されたときには、PSR型改質器10にエアのみをパージすると器内に残存する水素や触媒12上に堆積した炭素が燃焼し、触媒温度が急激に上昇して触媒が劣化してしまうおそれがあるため、ステップ103において、(必要に応じてバルブV1を絞ると共にあるいは絞らずに)燃料電池30へのエア(カソードガス)の供給量を減らす。改質反応させているPSR型改質器10への酸素供給量を少なくすることで、改質反応下での発熱反応である部分酸化反応の反応割合が減少し、触媒温度を低下させることができる。
また、ステップ103では、上記のようにしてエア(カソードガス)の供給量を減らすと共に、あるいはこれとは別に、燃料電池への水素供給量、すなわち水素利用率を上げるようにすることも有効である。水素利用率を上げることにより、カソードオフガス中の水分量が増大するため、PSR型改質器10の雰囲気中の水蒸気/炭素比(Steam/C比)が上昇すると共に全体のガス量も増えるので、触媒温度を低下させることができる。
更には既述のように、停止前に所定の期間改質反応を継続するようにし、改質反応の吸熱性を利用して更に触媒温度を低下させることも可能である。この場合、改質生成された余剰の水素は燃料電池30での発電に利用し、別途設けられたバッテリーに充電すればよい。なお、触媒温度が下がるために未燃の炭化水素(HC)成分を多く含有することも予想されるが、発電性能に支障を来たすような場合には再生側のPSR型改質器に送って燃焼排気するようにしてもよい。上記以外に、通常の運転状態で供給する改質用原料の量よりも供給量を増やすことにより、改質反応量を高め、触媒温度を低下させるようにすることもできる。
上記のように、触媒温度taが所定温度Ta以下であることを確認し、燃料等の器内供給を停止した後は、次のステップ110において、バルブV3の切替により冷却管115を挿通する冷却用エアをPSR型改質器10に供給してパージする。停止前にパージを行なうことで、改質側のPSR型改質器10内に残存するガソリン等の改質用原料成分による触媒上への炭素析出や、水蒸気の凝縮等による閉塞、反応生成した一酸化炭素による触媒被毒、等に起因して、触媒が被毒したり、再起動に支障を来たすのを効果的に回避することができる。そして、ステップ112において、パージ後にシステムの運転を停止し、本ルーチンを終了する。
また、カソードオフガスのみを用いてパージするような構成も可能であるが、上記のようにカソードオフガス以外に設けられた別系の冷却用エアを用いてパージを行なうことで、カソードオフガスのみでクリーニングする場合に比し、低温の冷却用エアの利用が可能で、触媒温度の異常上昇を抑制しつつクリーニングを行ない得ると共に、低水分のエアを用いたクリーニングが可能で、触媒上の炭素や炭化水素(HC)の温度上昇抑制下での燃焼除去効率の向上、および水蒸気の結露防止の点で効果的である。
なお、上記では、パージ用流体として燃料電池の冷却用エアを用いたが、冷却用エア以外に、燃料電池のカソード側に供給するカソードエアの一部を燃料電池を通過させずに直に改質側のPSR型改質器へ供給したり、あるいは再生側のPSR型改質器の燃焼オフガス、他の電装部材の冷却用エア、またはガソリンエンジン等の内燃機関とのハイブリッド系では排出された浄化後の燃焼ガスなどをパージ用流体として利用することができる。
ステップ100において、運転休止の要求があると判断されたときには、PSR型改質器10,20へのパージを行なわず、図6に示すステップ200に移行する。すなわち、運転休止時にはパージが禁止されるため、任意のタイミングでなされる再起動の際に迅速に水素を燃料電池に供給でき、安定した発電運転が確保される。図6は、運転休止時にパージを禁止するパージ制御ルーチンを示すものである。
そして、ステップ200において、まず燃料電池はOCV出力状態(例えば遮断手段の切替により両電極間の電荷移動が遮断された開回路の状態であって、いつでも出力可能な出力待機の状態;以下同様。)にて待機すると共に、PSR改質装置1では運転休止時の間、触媒温度をある程度高く保持している必要があるため、ステップ202において、全てのバルブ(バルブV1〜V9)を閉じる。したがって、運転休止時には、触媒が流体の移動によって熱を奪われるのを回避し、触媒温度を高く保持するのに有効である。
例えば燃料電池システムが搭載された車両が信号待ち等で一時的に停車する等の場合には、出力はないがいつでも出力可能な出力待機の状態(OCV状態)が頻繁に生じ得、かかる場合の触媒温度の著しい低下を防止し、運転休止後の再始動性が高められる。
ステップ202では、上記のように全てのバルブを閉じる以外に、下記(1)〜(3)のようにしてもよい。すなわち、(1) バルブV4を閉じ、排出配管104のバルブV5の開度を絞って水素リッチガスの排出口を絞ると共に、バルブV6を開いたまま供給配管102からのガソリン(またはガソリンおよび水蒸気の混合ガス)の供給圧を高めることにより、改質生成された水素を流路や器内の容積×圧力の分だけバッファーとして一時的に蓄えることができる。これにより、再起動時に燃料電池30に必要な水素を賄うことができ、起動後の迅速な発電運転の開始に有効である。
また、(2) 燃料電池はOCV出力状態で待機すると共に、バルブV2を絞ってアノードオフガスの排出口を絞り、燃料電池30へのカソードガスの供給圧を高めることにより、排出配管112から供給配管113、PSR型改質器10、排出配管104および106を経て燃料電池30に至る間の内圧が高められ、前記(1)以上の水素量をバッファーとして蓄えることができる。さらに、(3) バルブV1およびバルブV5を閉じることにより(バルブV6は閉)、運転休止の間に改質生成された水素リッチガスや未反応の改質用原料が、燃料電池30のカソード側、アノード側に入り込むのを防止するのに有効である。
その後、ステップ204において、再生させている再生側のPSR型改質器20の触媒温度tbが所定の温度Tb以上(tb≧Tb)であるか否かが判断され、触媒温度tbが所定の温度Tb以上であると判断されたときには、次のステップ210において、再起動要求があると判断されるまで運転休止の状態で待機する。
ステップ204において、触媒温度tbが所定の温度Tb未満であると判断されたときには、ステップ206において、バルブV9を開き、炭化水素成分(ガソリン等)や水素ガスなどの燃焼成分を補給すると共に、ステップ208において、バルブV1および/またはバルブV3を切替え、カソードオフガス、冷却用エアをPSR型改質器20に供給してパージし、燃焼反応を起こさせる。この燃焼反応によって触媒温度を上昇させることができ、その後ステップ204において、再びtb≧Tbを満たすか否かが判断され、tb≧Tbを満たすと判断されたときにステップ210に移行する。これにより、ステップ210において、再起動が要求された場合に、改質反応への切替を迅速に行なうことができ、また、改質反応させるPSR型改質器側の触媒温度が運転休止により低下していた場合にも、連続的に水素を大量に燃料電池に供給することが可能である。
ステップ210において、再起動の要求があるか否かが判断され、再起動の要求があると判断されたときには、改質反応への切替に具えて、再生反応させる再生側のPSR型改質器の蓄熱量を高める必要があるので、ステップ212において、再生側のPSR型改質器20に供給されるアノードオフガスおよびエアの供給量がアップされる。具体的には、バルブV5およびV4を全開すると共に、バルブV1およびV6を絞っていた場合はこれらを全開し(バルブV2は開)、PSR型改質器20への水素供給量を増やし、更にバルブV3の切替によりPSR型改質器20へのエア量も増やす。
すなわち、再起動時の再生側のPSR型改質器20に燃焼用燃料および酸素を多く取込む、あるいはカソードオフガス中の酸素濃度(ストイキ比)を上げることによって、再生反応を担う触媒温度を迅速に上昇させることができるので、運転休止中に徐々に温度低下した改質側のPSR型改質器を、通常の運転状態の場合よりも早期に改質反応から再生反応へ切替えることができる。そして、その後に本ルーチンを終了し、通常の運転状態に移行する。
ステップ210において、再起動の要求がなく、未だ運転休止のままであると判断されたときには、休止中に触媒温度が徐々に低下するおそれがあるので、ステップ214において、PSR型改質器10、20の触媒温度(ta、tb)が所定の温度(Ta、Tb)以上であるか否かが判断され、触媒温度が所定の温度を保持していると判断されたときには、ステップ210で起動要求があるまで運転休止のまま待機する。
一方、ステップ214において、PSR型改質器10、20の触媒温度が所定の温度よりも低いと判断されたときには、ステップ216において、触媒温度が低下したPSR型改質器内で燃焼反応させるように、バルブ切替により、改質側のPSR型改質器10には少なくとも酸素(例えばエア)を供給し、再生側のPSR型改質器20には少なくとも炭化水素成分や水素ガスなどの燃焼成分を供給する。このように、運転休止中に触媒温度を監視するようにし、所定温度に満たないときには燃焼反応を行なわせて昇温することにより、再起動した際に迅速に水素生成可能なように構成されている。
例えば、PSR型改質器10の触媒温度taがta<Taを満たし、PSR型改質器20の触媒温度tbがtb<Tbを満たすときには、バルブV9を開きバルブV3を切替えることにより、再生側のPSR型改質器20側に炭化水素成分や水素ガスなどを加給すると共に冷却用エアを供給し、更にバルブV3を切替えると共に必要に応じバルブV6を開き、改質側のPSR型改質器10に冷却用エアを改質用原料と共に供給して、両改質器内で燃焼反応を行なわせる。
以上のように、通常の運転状態から運転停止するにあたってPSR型改質器内の残留物をパージするようにすることで、改質側のPSR型改質器内に残存するガソリン等の改質用原料成分による触媒上への炭素析出や反応生成した一酸化炭素等による触媒被毒を回避できると共に、水蒸気の凝縮等による閉塞を防止して、再起動を良好に行なうことができる。
また、再始動時には、改質側のPSR型改質器への酸素供給は、燃料電池のカソードオフガスを用いず、別系統のエアを用いて発電を開始するようにし、発熱反応の開始後にカソードオフガスを用いるようにするのが望ましい。このように再始動を行なうと、未だ発電できない状態の燃料電池へのカソードオフガスの供給により冷却されてより発電性能が低下したり、水素脆化を生ずるのを回避することができる。
上記において、燃料電池30が低負荷状態から高負荷状態に移ると共に急激に燃料電池の水素要求量が増大する過渡時には、電気ヒータ等の加熱器を設けて触媒を加熱するようにするのも効果的である。この場合、電気ヒータ等をPSR型改質器の触媒担持部12の近傍に設け、改質反応させるPSR型改質器側の電気ヒータ等をONにすることで直接触媒を加熱することができ、改質反応を速やかに促進させ得ると共に、改質反応と再生反応との切替周期を短周期にする場合にも有効である。
また、電気ヒータ等の加熱器を設ける場合、PSR型改質器の触媒担持部のうち最も高温となる部位に選択的に加熱器を設けることが効果的である。改質反応は、最高温度の部位で最も迅速に進行するので(すなわち、反応速度は温度にリニアに変化せずに、高温になると急激に反応が促進される。)、加熱による反応向上効果が低い領域の加熱を減じ、反応性の低い領域あるいは該領域を含む全領域を中途半端に加熱しない構成とすることにより、熱エネルギー効率を高めることができる。
本発明の燃料電池システムにおいては、燃料電池として、水素透過性金属を用いた緻密な水素透過膜(水素透過性金属層)の少なくとも片側に電解質層が積層された電解質膜を備えた水素分離膜型燃料電池(プロトン伝導性の固体酸化物型、または固体高分子型のいずれであってもよい。)の中から目的等に応じて選択することができる。
例えば、(1) 水素透過性の金属と該金属の少なくとも片側に成膜された無機電解質層(特にプロトン伝導性のセラミックス)とを有する電解質膜と、電解質膜の一方の面に設けられた水素極および該水素極に発電用燃料を供給する燃料供給部と、電解質膜の他方の面に設けられた酸素極および該酸素極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部とで構成された水素分離膜型燃料電池、または(2) プロトン伝導性の電解質層と該電解質層を両側から挟む水素透過性金属とを有する電解質膜と、電解質膜の一方の面に設けられた水素極および該水素極に発電用燃料を供給する燃料供給部と、電解質膜の他方の面に設けられた酸素極および該酸素極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部とで構成された固体高分子型の水素分離膜型燃料電池、等を好適に用いることができる。
図7〜図8に本発明の燃料電池システムを構成する水素分離膜型燃料電池の他の具体例を挙げる。なお、他の具体例についての詳細については特開2004−146337号公報の記載を参照することができる。
図7は、バナジウム(V)で形成された緻密な基材66を含む5層構造の電解質膜61と、電解質膜61を狭持する酸素極(O2極)62および水素極(H2極)63とで構成され、金属拡散抑制層および反応抑制層を備えた水素分離膜型燃料電池60を示したものである。電解質膜61は、基材66の水素極(アノード)63側の面に該面側から順に緻密体の金属拡散抑制層67とパラジウム(Pd)層68とを備え、基材66の酸素極(カソード)62側の面に該面側から順に緻密体の反応抑制層(例えばプロトン伝導体や混合伝導体、絶縁体の層)65と、固体酸化物からなる薄層の電解質層(例えばペロブスカイトの1つである金属酸化物SrCeO3層など)64とを備えている。反応抑制層65は、電解質層64中の酸素原子と基材(V)66との反応を抑制する機能を担うものである。なお、酸素極または水素極と電解質膜との間には上記同様に、各々エア流路59a、燃料流路59bが形成されている。金属拡散抑制層および反応抑制層の詳細については既述の通りである。
図8は、水素透過性金属を用いた緻密な水素透過層を有する電解質膜71と、電解質膜71を狭持する酸素極(O2極)72および水素極(H2極)73とで構成された固体高分子型の水素分離膜型燃料電池70を示したものである。電解質膜71は、例えば、ナフィオン(登録商標)膜などの固体高分子膜からなる電解質層76の両側の面を、水素透過性の緻密な金属層で挟んだ多層構造となっており、電解質層76の水素極(アノード)側の面にパラジウム(Pd)層(緻密層)77を備え、電解質層76の酸素極(カソード)側の面に該面側から順に、基材となるバナジウム−ニッケル合金(V−Ni)層(緻密層)75とPd層(緻密層)74とを備えている。なお、酸素極または水素極と電解質膜71との間には上記同様に、各々エア流路59a、燃料流路59bが形成されている。本燃料電池においてもまた、V−Ni層75とPd層74との間には金属拡散抑制層を設けることができ、V−Ni層75またはPd層77と電解質層76との間には反応抑制層を設けることができる。
図8に示す固体高分子型の燃料電池では、含水電解質層を挟むようにして水素透過性金属を用いた水素透過層が形成された構成とすることにより、高温での電解質層の水分蒸発および膜抵抗増大の抑制が可能で、一般に低温型の固体高分子型燃料電池(PEFC)の作動温度を300〜600℃の温度域に向上させることができる。これにより、燃料電池から排出されたカソードオフガスを直接、改質反応させるPSR型改質器に供給する本発明の燃料電池システムの構成に好適である。
上記の実施形態では、改質用原料としてガソリンおよび水蒸気の混合ガスを使用した場合を説明したが、ガソリン以外の他の炭化水素燃料を使用した場合も同様である。
本発明の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を説明するための概念図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池システムの一部を具体的に示す概略構成図である。 本発明の実施形態に係るPSR型改質器の概略構成を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る水素分離膜型燃料電池(HMFC)を示す概略断面図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池システムの運転停止または休止時にパージの実行を判断し、運転停止時にパージを行なうパージ制御ルーチンを示す流れ図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池システムの運転休止時にパージを禁止するパージ制御ルーチンを示す流れ図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池システムを構成する燃料電池の他の具体例を示す概略断面図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池システムを構成する燃料電池の他の具体例を示す概略断面図である。
符号の説明
1…PSR改質装置
10,20…PSR型改質器
12…触媒(触媒担持部)
13,14,23,24,25,26,27…噴射装置
15…温度センサ
30,60,70…水素分離膜型燃料電池
51,61,71…電解質膜
52…酸素極
53…水素極
54,64,76…電解質層
55,57,68,74,77…パラジウム層(水素透過性金属層)
56,66…バナジウム基材(水素透過性金属層)
75…バナジウム−ニッケル合金層(水素透過性金属層)
100…制御装置

Claims (10)

  1. 触媒を備え、燃料と水蒸気とを含む改質用原料が供給されたときには加熱された前記触媒上で前記改質用原料を改質反応させ、発熱用燃料が供給されたときには該発熱用燃料を発熱反応させて前記触媒を加熱する、少なくとも1基の改質反応器と、
    前記改質反応器への前記改質用原料の供給流路および前記発熱用燃料の供給流路を切替える切替手段と、
    前記改質反応器にパージ用流体を供給する供給手段と、
    前記改質反応器への前記改質用原料および前記発熱用燃料の供給を停止する際、供給が停止された改質反応器内に残留する残留成分が器外に排出されるように、前記供給手段により前記パージ用流体の供給を行なうパージ制御手段と、
    を備えた水素生成装置。
  2. 前記改質反応器の触媒温度を検出する検出手段と、
    前記検出手段により検出された前記触媒温度が所定の温度以下であるか否かを判定する判定手段と、を更に備え、
    前記パージ制御手段は、改質反応させている前記改質反応器への前記改質用原料の供給を停止する際、前記判定手段により前記停止以後の改質反応器の前記触媒温度が所定温度以下であると判定されたときに、前記パージ用流体の供給を行なうようにした請求項1に記載の水素生成装置。
  3. 前記パージ制御手段は、前記燃料の供給停止後に前記水蒸気の供給を停止し、前記水蒸気の供給が停止された後に前記パージ用流体の供給を行なうようにした請求項1又は2に記載の水素生成装置。
  4. 前記パージ制御手段は、前記改質反応器の休止時には前記パージ用流体の供給を禁止するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素生成装置。
  5. 前記判定手段は、発熱反応させている改質反応器の前記触媒温度が改質開始温度以上であるか否かが判定されるように構成されており、
    前記パージ制御手段は、発熱反応させている改質反応器の前記触媒温度が改質開始温度以上であると判定されたときに、前記パージ用流体の供給を禁止するようにした請求項4に記載の水素生成装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の水素生成装置と、前記水素生成装置で改質生成された水素含有ガスの供給により発電する燃料電池とを備えた燃料電池システム。
  7. 前記燃料電池は、水素透過性金属層の少なくとも片側に電解質層が積層された電解質を備えた請求項6に記載の燃料電池システム。
  8. 前記燃料電池の酸素極側の排出ガスを前記改質反応器に供給する供給流路を更に備え、前記切替手段は排出ガスの供給流路を切替えられるように構成されており、
    前記水素生成装置の前記パージ制御手段は、前記燃料の供給停止後に前記排出ガスの供給を停止し、前記排出ガスの供給が停止された後に前記パージ用流体の供給を行なって残留成分が器外に排出されるようにした請求項6又は7に記載の燃料電池システム。
  9. 前記水素生成装置の前記パージ制御手段は、前記燃料電池の酸素極側の排出ガス中の酸素量および水分量のいずれか一方が増減制御されるように構成されており、
    前記改質反応器への前記改質用原料および前記発熱用燃料の供給を停止する際、改質反応させる前記改質反応器の雰囲気中の炭素(C)に対する酸素(O)の比率(O/C)を、前記改質用原料の供給停止時における前記比率以下に低下させた後に停止するようにした請求項6〜8のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  10. 前記水素生成装置の前記パージ制御手段は、前記燃料電池の酸素極側の排出ガス中の酸素量および水分量のいずれか一方が増減制御されるように構成されており、
    前記改質反応器への前記改質用原料および前記発熱用燃料の供給を停止する際、改質反応させる前記改質反応器の雰囲気中の炭素(C)に対する水蒸気(Steam)の比率(Steam/C)を、前記改質用原料の供給停止時における前記比率以上に向上させた後に停止するようにした請求項6〜8のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
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JP2010222209A (ja) * 2009-03-25 2010-10-07 Panasonic Corp 水素生成装置およびそれを用いた燃料電池発電装置
JP2013157134A (ja) * 2012-01-27 2013-08-15 Nissan Motor Co Ltd 固体酸化物型燃料電池システム

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