JP2006290645A - シリコン及びその製造方法 - Google Patents

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【課題】
高純度で極めて大きな表面積を有し、マイクロ電子デバイス用、あるいは高能率ソーラーセル用基板として使用するためのシリコン並びに該シリコンを多量にしかも最小の消費エネルギーで製造する製造方法を提供することを課題とした。
【解決手段】
四塩化珪素と亜鉛の気相合成反応によって気相中で作成されたアスペクト比が100以上を有する針状結晶性シリコン並びにこのようなシリコンを得る為の製造方法で四塩化珪素と亜鉛から気相反応でシリコンを合成するに当たり、反応温度を1100℃から1300℃とし、亜鉛の沸点より高い温度でシリコンを析出させることを特徴とする、針状シリコン結晶の製造方法である。

Description

本発明は極小の電子デバイス基板や大表面積を要するソーラーセル基板、あるいは樹脂などの補強用添加剤として、あるいは他の用途用として有効な高純度シリコンからなる繊維状、あるいは針状シリコン並びに該シリコンの製造方法に関するものである。
シリコンは古くより液状で蒸留により精製が比較的容易な四塩化珪素を使い、蒸留精製後金属亜鉛に依って還元し、高純度化する製造する方法が行われていた。しかしながら昨今の電子デバイス用を主とする超高純度シリコンの要請においてはこのような反応では反応が早く進みすぎるために生成するシリコン粒の成長が十分でなく極めて微小な粒子となること、またそれ故反応副生物である塩化亜鉛との分離が不十分となりやすく、その分離の手間が極めて大きいこと、さらには微少な結晶で生成する故に空気中に取り出した時に表面が酸化物となるために再溶解が困難などの問題点があり、現在の高純度シリコンの製造ではほとんど使われていない。
現在では高純度シリコンの製造方法として、粗製シリコンを塩酸並びに水素で処理していわゆるトリクロロシランを製造し、あるいは時としてはジクロロシランやモノクロシランを製造する。これらシラン化合物を原料として化学的気相成長法により多結晶高純度シリコンを製造することが行われている。この方法では極めて高純度のシリコンが得られるが、中間物質である各シラン化合物を生成する段階で、最終生成物である四塩化珪素になりやすく歩留まりが50%あるいはそれ以下となってしまうと共に、シリコン生成の反応が極めて遅いので、設備が大きくなること、また製造にかかる電力が450kWh/kg-シリコンと極めて大きいという問題があった。この消費電力が大きいということは、今後多量に使用されると考えられるソーラーセル用材料としては最も深刻な問題であるので最近に至り消費エネルギーが少ない四塩化珪素の還元方法が見直され再び検討されるようになってきた。たとえば特開2004-210594では気相反応を高温で行わせることに依って原料、副生物はガス状のままシリコンのみを固体あるいは液体で取り出すことによって高純度シリコンを得ている。その場合の消費エネルギーを従来の高純度シリコン製造の1/10程度まで減らすことが出来るとしている。この方法で製造したシリコンは従来法に比較して純度は若干劣ると言われるものの、多結晶、単結晶ともにソーラーセル用として十分であり、また単結晶の場合は電子デバイスとしても特殊な用途以外には十分に使用できるとされている。
一方最近では電子デバイス用としてより小型化が望まれており、従来の板状のシリコン基板では不十分であり、三次元的な形状を有するシリコンが望まれるようになってきている。またソーラーセル用についても同様であり、セル自体を固定しておいて常に発電が行われるように表面に凹凸を設けた様な基板の検討が行われるようになってきている。また球状に加工する試みも行われている。これらに関連する技術ではほとんどの場合が高純度シリコンを再加工して得るなど大きな製造手間が必要であると共に、高価になるという問題点が残されている。加工方法としてたとえば特開平5-275724ではシリコン基板表面を機械加工して、表面に凹凸を作り、より効率的なソーラーセルを作成することが示されている。
上記に示したようにいくつかの特許技術が知られているが、それらは多結晶/単結晶シリコンの製造、あるいはシリコン基板の加工方法であり、シリコンの製造過程から合目的なものを製造する内容は全く見られていない。
特開2004-210594 公報 特開平5-275724公報
本発明は高純度で極めて大きな表面積を有し、マイクロ電子デバイス用、あるいは高能率ソーラーセル用基板として使用するためのシリコン並びに該シリコンを多量にしかも最小の消費エネルギーで製造する製造方法を提供することを課題とした。
本発明は第一に四塩化珪素と亜鉛の気相合成反応によって気相中で作成されたアスペクト比が100以上を有する針状結晶性シリコンであり、第二にこのようなシリコンを得る為の製造方法である、四塩化珪素と亜鉛から気相反応でシリコンを合成するに当たり、反応温度を1100℃から1300℃とし、亜鉛の沸点より高い温度でシリコンを析出させることを特徴とする、針状シリコン結晶の製造方法であって、四塩化珪素と亜鉛を副生成物である塩化亜鉛を含めて全て気相とし、シリコンのみを固相として得ると共に、その条件を規定することに依って大きなアスペクト比を有する繊維状ないし棒状のシリコンを多量に得ることが可能となった。
以下詳細に説明する。
本発明にかかるシリコンはほとんどが単結晶として生成するのでその機械的強度は極めて大きく、上記目的の他に、樹脂やセラミックスに添加することによってそれらの強化材としても使用できることはもちろんである。この製造に当たっては四塩化珪素と亜鉛をガス状として1000から1300℃で反応させる。シリコンの融点は1410℃であるので反応したシリコンは固体として析出する。なお最初に析出するシリコンは極めて微粒であり、微粒による融点降下の可能性があるが、実験的に、1300℃以下であれば融体ではなく固定で析出すること、またそれが成長することを確認して本発明に至ったものである。反応は反応式SiCl4+ 2Zn a Si + ZnCl2 に示されるように進み、副生成物として塩化亜鉛が生成する。塩化亜鉛の沸点は732℃で亜鉛のそれより低いので本反応温度では気体であるので、融点が高いシリコンだけが析出してくる。しかもシリコンが気相から離脱することにより反応はシリコン生成の方向に加速される。このようにして反応はシリコン生成の方向に継続的に進むこととなる。この反応についての雰囲気ガスは生成したシリコンと反応しなければ特には指定されないが、アルゴンあるいは副反応生成物である塩化亜鉛ガスが望ましい。特に塩化亜鉛ガスを雰囲気ガスとして使用するとその圧力の調整によって反応速度を制御することが出来る。反応の進行と共に、生成した塩化亜鉛は系から取り出してそのまま冷却し、液状にして電解を行い塩素ガスと液状の亜鉛を得ることが出来る。液状の亜鉛は再度気化し、原料として使用し、塩素は四塩化珪素の製造に使用することにより、原材料のリサイクルを行うように出来る。
反応槽部分の形式は四塩化珪素ガスと亜鉛ガスを気相で混合し反応させればよいので特にはとらわれないが、これらのガスが良く混合するようにすること、また生成したシリコンが出来るだけ集中して集まる必要のあることから、これら二種のガスを向流式に流すことによって反応を進めると共に生成シリコンを向流部分近傍に置いた基材上に析出させるようにする。あるいは反応槽として円筒状の反応塔を用い、この円筒の内側に内壁に沿うように四塩化珪素と亜鉛ガスを円筒に沿って回転するように流し、比重の大きな反応析出部物が回転の遠心力差によって円筒の中心に集まり下方に落ちていくといういわゆる旋回溶融方式の反応炉を使用することによって反応部分の下方に目的の製品を集めることが出来る。
このほか種々の方法をとることが出来るが、これらの反応によって生成するシリコンは亜鉛の沸点より高い温度に保持され、シリコンの融点より低い基板上に繊維状として集められる。基板材質は特には指定されないが、なめらかな表面を有する材料が望ましく、それによって 引きはがしが容易になる。 基板の温度は特にとらわれないが、910℃以下では亜鉛が液状となり不純物として入ってくる可能性のあること、また1300℃以上ではシリコンが溶解してしまう可能性のあることからこの温度範囲にとどめておくことが必要である。
また必ずしも基板が必要なわけでは無く、析出した繊維状のシリコンをトラップするように反応槽の排気部分にメッシュなどを設けそれにトラップするようにしても良い。
このようにして繊維状のシリコンが得られる。生成するシリコンはこのような条件では直径10nmから10μm程度であり、長さは1μmから10mm程度である。直径対長さを示すアスペクト比に関しては用途により決定すればよく、たとえば樹脂などの補強充填材として使用する場合はアスペクト比が大きいほど良く、また電子デバイスなどに使用する場合は結晶の完全性が重要であり、また単位体積あたりの大表面積が必要であるのでアスペクト比を比較的小さく押さえながら、完全な結晶をねらうようにする。この達成のためにはアスペクト比は比較的小さい方が良く10から1000程度がよい。更にこれによって生成する繊維状シリコンを単結晶又は多結晶シリコンウエハー上に成長させることも出来、このような場合は表面積が極端に大きくできることから、ソーラーセル用として極めて有効である。
しかもこのような大表面積を有する繊維状のシリコンであっても、ほとんどが単結晶であり、有効に使うことが出来る。
本発明による繊維状のシリコンはその製作が容易であり、しかも副生成物や未反応原料との分離なしに十分に高純度品が得られること、またその収率が非常に高いこと等に加えて、反応速度が極めて早いために設備も小型で良いという特徴を有する。しかもほぼ完全な結晶が容易に出来る等の特徴があり、電子デバイス用の基板として、またソーラーセル用基板として有効に使われると共に、その物理的強度から樹脂などの補強材としての極めて有用に使用できる。最近では大型トラック等自動車排気ガス触媒担持用セラミックハニカムフィルターとして炭化珪素や窒化珪素が優れた特性を示すことがあきらかになっているが、これらの焼結助剤として相当量の微粉状シリコンのニーズがあり、本繊維状シリコンはこの目的にも合致している。更に製造にかかる消費エネルギーは早い反応と単純なプロセスのために従来の代表的な製造方法である、前述のトリクロロシラン法に比較して約1/10が期待できる。電子デバイスやソーラーセルは言うに及ばず通常付加価値が低いとされる補強材としても十分亜経済性を持って使用することが出来る。またその応用はここに述べたばかりでなく、各種の応用の可能性があると言える。
以上に述べたように種々のメリットを有する本発明の樹脂状のシリコンであるが、反応槽として円筒型で中に雰囲気ガスが回転しているいわゆる旋回溶融方式の炉を使い、そこに四塩化珪素と亜鉛を雰囲気ガスに乗せながら供給しガス中で反応を行う。反応生成物はガスに比較して比重が大きいので中心に集まり下方に貯まっていく、あるいは基板状に蓄積させていくことが出来る。この時の温度は1100から1300℃が望ましく、シリコン析出部の温度を1000℃から1300℃として未反応原材料や副反応物質の混入を防ぐことが出来ると共に析出するシリコンは気相反応からの析出であり、最初に析出したシリコン結晶の突起部が種結晶として働き気相反応シリコンが析出するためか繊維状のしかも完全なシリコンが得られるようになる。また旋回溶融方式でなくても、向流的に反応ガスを流すことによっても同様な効果を得ることが出来る。
以下これらに関する実施例を示すがこれは実施の一形態であり、これらに限定されないことはもちろんである。
内径60mmの石英ガラス管を反応槽として使用し、この内部に反応槽の内壁面に沿ってガスが流れるように横方向に穴を開けた原料供給管を四塩化珪素、及び亜鉛用に二本反応塔内部に設置した。上部には排ガス管を設けその下方に目皿を設けた。目皿は石英ガラス粒子の多孔性の焼結体であり、気体の透過はあるが開口が1ミクロン程度であり、生成した固体は通さないようにした。雰囲気ガスはアルゴンとして、二本の原料供給管から原料と共に供給した。これによって雰囲気ガスは反応槽内を横方向にガスが回転しながら流れるようになった。この反応槽の外部に巻いたヒータにより反応槽を加熱し内部の温度が1250℃となるようにした。なおこの時の目皿温度は1000℃であり、底部に置かれたムライト製の坩堝部分の温度は950℃であった。原料亜鉛ガスの供給は亜鉛金属を入れた石英ガラス製の容器を炉中で850から900℃で加熱し、出てきた亜鉛蒸気を雰囲気ガスであるアルゴンガスで反応塔に送るようにした。また他方の原料である四塩化珪素はあらかじめ200℃まで加熱した液だまりを作ったパイレックスガラス管中に滴下する様にし、これも、雰囲気ガスであるアルゴンと共に反応槽に送るようにした。 四塩化珪素の滴下により排ガス管から灰色の未反応亜鉛ガスを含む塩化亜鉛ガスが吹き出してきた。この塩化亜鉛ガスの発生の状態を見ながら四塩化珪素の滴下を継続した。四塩化珪素を滴下しても塩化亜鉛ガスの発生が僅かになったところで亜鉛供給が無くなったと判断し、四塩化珪素の滴下を停止した。その後15分間反応温度を保持したまま雰囲気ガスのみを流し続け、その後ヒータを止めて冷却した。この間もアルゴンガスの供給は続けた。冷却後反応塔をあけたところ反応塔の下部に置いた坩堝、並びに上部の目皿の部分に褐色の繊維状物質が多量に付着していた。このものを採取し、エックス線回折により分析したところ結晶性の優れたシリコン金属であることがわかった。また電子顕微鏡観察によって、これらは直径10nmから100nmの針状晶であり、長いものは1mm以上の長さを有することがわかった。尚これら長いものの一部には長さ方向の途中に節のようなもののあるものもあった。
反応槽下部に置いた坩堝に代わって表面を僅かに荒らしたシリコンウエハーを置いた以外実施例1と同じとしてシリコンを析出させた。尚シリコンウエハー部分の温度は1300℃とした。また雰囲気ガスから混入する酸素によりシリコン表面が酸化しないようにシリコンウエハーの周辺には炭素粉末を敷きつめた。この条件で実施例1と同様にして四塩化珪素ガスと亜鉛ガスを反応させた。これによりシリコンウエハー表面が羽毛状のシリコンに覆われた。反応終了後反応塔の解体を行わずにアルゴンガスのみを流しながらシリコンウエハー部分のみを1350℃で1時間保持した。冷却後取り出したところ、シリコンと羽毛状のシリコンが部分焼結し、表面積の極めて大きなシリコンウエハーを得ることが出来た。尚羽毛状の部分は実施例1と同じく単結晶に近いシリコン結晶であった。
産業上の利用の可能性
本発明により従来は全く得られていなかった、針状で極めて結晶性の良いシリコンを純粋な状態で得ることが出来た。これは結晶の完全性からは今後発達すると考えられる超小型電子デバイス用の基板としての応用が考えられると同時に、基材表面に羽毛状に析出させることによって極めて大きな表面積を有するシリコンが得られることから高効率ソーラーセルなどのエネルギー用途への活用が期待させる。更に極めて安価に、効率よく作れること、しかも比較的アスペクト比が大きな単結晶として得られることから、樹脂などの補強用充填剤などとしても活用でき、幅広い利用の可能性がある。

Claims (7)

  1. 四塩化珪素と亜鉛の気相合成反応によって気相中で作成されたアスペクト比が100以上を有する針状結晶性シリコン。
  2. 針状結晶の直径が10nmから10μmであることを特徴とする請求項1の針状結晶シリコン。
  3. 四塩化珪素と亜鉛から気相反応でシリコンを合成するに当たり、反応温度を1100℃から1300℃とし、亜鉛の沸点より高い温度でシリコンを析出させることを特徴とする、針状シリコン結晶の製造方法。
  4. 気相反応を塩化亜鉛ガス雰囲気中で行うことを特徴とする請求項3の針状シリコンの製造方法。
  5. 気相反応をアルゴンガス雰囲気中で行うことを特徴とする請求項3の針状シリコンの製造方法。
  6. 四塩化珪素ガスと亜鉛ガスを交流的に流して反応させ留ことを特徴とする請求項3の針状シリコンの製造方法。
  7. 四塩化珪素と亜鉛ガスの反応を旋回溶融型の反応炉で行うことを特徴とする請求項3の針状シリコンの製造方法。
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