JP2006283063A - 酸化物磁性薄膜及びその製造方法,電磁干渉抑制体 - Google Patents

酸化物磁性薄膜及びその製造方法,電磁干渉抑制体 Download PDF

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Abstract

【課題】
酸化物磁性薄膜中の粒子の径をナノレベルで制御する。
【解決手段】
スパッタリングによって基板上に酸化物磁性薄膜を形成する際に、基板温度を所定の範囲内で制御することにより、酸化物磁性粒子の径をナノレベルで制御し、所望の粒径のナノ粒子が存在する酸化物磁性薄膜を得る。特に、スピネル系フェライト焼結体ターゲットを用い、基板温度を200℃〜700℃の間で制御することにより、数nm〜数十nmの間での粒径制御が可能となる。粒径制御されたフェライト薄膜は、高周波帯域用の電磁干渉抑制体などの用途に適用できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化物磁性薄膜及びその製造方法,電磁干渉抑制体に関し、更に具体的には、酸化物磁性薄膜中の粒子径(粒子の平均粒径)の制御に関するものである。
従来より、酸化物磁性薄膜の膜厚制御に関する様々な試みがなされている。酸化物磁性薄膜中の粒子の大きさが薄膜の性質に影響を与える可能性も考えられてはいるものの、粒径制御は困難とされており、粒径制御が可能な製造方法は確立されていない。強いて挙げると、スピンスプレー・フェライトめっき法によるフェライト膜の作成手法がある。この手法は、室温〜90℃の水溶液中で、直接フェライト膜を作製できる技術であり、(1)吸着→(2)酸化→(3)フェライト生成というプロセスを繰り返すことにより、フェライト層を成長させるものである。また、磁性膜の膜厚ないし粒子径の制御に関する技術としては、例えば、以下の特許文献1〜3に示すものがある。
特開昭62−158306号公報 特開昭63−311613号公報 特開昭59−75610号公報
一方、上記薄膜を利用した電磁干渉抑制体の先行技術として、スピンスプレー・フェライトめっき法によるフェライト膜の電磁干渉抑制体がある(例えば、以下の特許文献4)。この手法は、室温〜90℃の水溶液中で、(1)吸着→(2)酸化→(3)フェライト生成のプロセスを繰り返すことによって直接フェライト膜を成長させ、これを電磁干渉抑制体とするものである。また、これとは別の技術として、エアロゾルデポジション法によって作成されるフェライト膜の電磁干渉抑制体も知られている(例えば、以下の特許文献5及び非特許文献1)。これはエアロゾル化したフェライトパウダーを基板に噴霧することによって、フェライト膜を作成する技術であり、このようにして作成したフェライト膜を電磁干渉抑制体とするものである。
特開2005−5641公報 特開2003−297629公報 J. Jpn. Soc. Powder Powder Metallurgy vol.51, No.9 pp691
ところで、フェライト系の酸化物磁性薄膜では、フェライトの粒径をナノサイズで制御することにより、形状因子等に起因する新規な材料特性を発現させ得ることが十分に期待される。例えば、ナノレベルで粒径制御された酸化物磁性薄膜は、その磁気特性が高周波領域まで改善することが期待できることから、高周波領域でのデバイス(電波吸収体,高周波インダクタ等)に利用できる可能性がある。特に、スピネル系フェライトの場合、粒径が適用周波数領域を変化させることが知られており、粒径制御により種々の周波数領域に適用できる製品の開発に有効に寄与すると考えられる。
しかしながら、一般的には、粒径をナノレベルで系統的に制御することは困難であった。例えば、上述したスピンスプレー・フェライトめっき法を採用した場合であっても、フェライト粒のサイズ制御までは困難視され、所望の粒径のフェライト粒を有する薄膜を得ることは極めて困難である。また、上述した特許文献1〜3は、いずれも金属合金に関する技術であり、酸素の含有量が金属合金と比較して非常に多いフェライトの磁性薄膜を形成する際に適用できる手法ではない。従って、酸化物磁性薄膜,特に、フェライトなどを利用した酸化物磁性薄膜の粒径制御に関する技術は提供されていないのが現状である。
また、今後の高周波化に伴い、電子機器内で生じる電磁波ノイズ自体も高周波化していくものと思われることから、高周波帯域のノイズを抑制する電磁干渉抑制体が求められている。電磁干渉抑制体として磁性体が用いられているが、これは磁性体の透磁率のうち、虚数成分を用いて、電磁波を熱に変換するものである。これまでに様々な磁性体が用いられているが、絶縁性に優れたフェライト材料も電磁干渉抑制体には適した材料である。しかしながら、従来のスピネル系フェライト材料では、透磁率の周波数特性にスヌークの限界と言われる限界が存在している。このため、数GHzというスヌーク限界を越える高い周波数帯域では、透磁率を有することができず、電磁干渉抑制体としては使用できないという課題があった。そこで、スピネル系フェライトの粒径を微細化することによって、スヌーク限界を越えるような透磁率特性を達成し、高周波領域でも使用可能な電磁干渉抑制体へ応用することができれば好都合である。
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、酸化物磁性薄膜を構成する粒子の径(粒子の平均粒径)をナノレベルで制御することである。他の目的は、粒子径が制御された酸化物磁性薄膜を利用することにより、高周波帯域のノイズを抑制することである。
前記目的を達成するため、本発明は、スパッタリングを利用した酸化物磁性薄膜の製造方法であって、基板上に付着する酸化物磁性粒子の粒子径を、成膜時の基板温度により制御することを特徴とする。主要な形態の一つは、スパッタリングのターゲットとして、スピネル系フェライト焼結体を用いたことを特徴とする。他の形態は、前記成膜時の基板温度を、25〜1000℃としたことを特徴とする。より好ましくは、200〜700℃としたことを特徴とする。
本発明の酸化物磁性薄膜は、上記いずれかに記載の製造方法によって形成したことを特徴とする。本発明の電磁干渉抑制体は、前記酸化物磁性薄膜を用いたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
本発明は、スパッタリング時の基板温度を制御することで、酸化物磁性薄膜中の粒子径をナノレベルで調製し、所望の粒径のナノ粒子が存在する酸化物磁性薄膜が得られるという効果がある。本発明のナノレベルで粒径制御された酸化物磁性薄膜は、その磁気特性が高周波領域まで改善することが期待できることから、高周波向けインダクタ等の高周波領域でのデバイスや、電磁干渉抑制体に利用できる可能性がある。特に、スピネル系フェライトの場合、粒径が適用周波数領域を変化させることが知られており、粒径制御により種々の周波数領域に適用できる製品の開発に有効に寄与すると考えられる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
最初に、図1〜4を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。まず、図1を参照して、本発明の酸化物磁性薄膜の製造方法について説明する。図1は、基板温度と粒子径の関係を示す図である。本発明の酸化物磁性薄膜の製造方法は、スパッタリングを利用し、基板上で成長する粒子の径を調製する方法であり、特に、所望の粒径のナノ粒子が存在する酸化物磁性薄膜を得るのに適した方法である。本実施例1では、スパッタリング時に用いる基板の温度に着目し、粒径制御が可能な薄膜作成手法の検討を行った。
酸化物磁性薄膜は、公知のRFスパッタリング装置を用いて作成するが、スパッタリングの条件は、例えば、次の通りである。
ターゲット:Fe,Ni,Zn,Cu,Mn,Mg,Oのいずれかの元素を含んだスピネル系フェライト焼結体
基板:ガラス系基板(石英ガラス等)
基板−ターゲット間距離:1〜100mm(特に、20〜60mmが好ましい)
出力:5kW以下
スパッタ時間:0〜数時間
雰囲気:アルゴンおよびアルゴンと酸素の混合ガス
基板温度:0〜1400℃
ここで、更に、前記条件の範囲内で、以下の通りに詳細条件を設定し、前記基板の温度を200〜700℃まで変化させて、酸化物磁性粒子(フェライト粒子)の粒径の基板温度依存性を検討した。
ターゲット:Ni0.5Zn0.5Feの組成式で表されるスピネル系フェライト焼結体
基板:石英ガラス
基板−ターゲット間距離:40mm
出力:300W
スパッタ時間:1時間
雰囲気:アルゴンと酸素の混合ガス
基板温度:200〜700℃
図1は、粒径の基板温度依存性を示す図であり、横軸は、基板温度(℃),縦軸はフェライト粒子の粒径(nm)である。図1に示すように、基板温度を200℃〜700℃までの間で、基板温度と粒径の相関関係が見られる。この結果から、基板温度を200〜700℃の間で制御することにより、数nm〜数十nmの範囲内で粒径を制御できることがわかる。
このように、本実施例の製造方法によれば、スパッタリング時の基板温度を制御することで、酸化物磁性薄膜中の粒子径をナノレベルで制御し、所望の粒径のナノ粒子が存在する酸化物磁性薄膜が得られるという効果がある。特に、基板温度を200〜700℃の間で制御することにより、数nm〜数十nmの間での粒径制御が可能となる。
次に、図2〜図4を参照しながら、上述した手法によって得られた酸化物磁性薄膜の応用について検討する。まず、図2を参照して、酸化物磁性薄膜の磁化曲線の基板温度依存性について検討する。図2は、磁性薄膜の試料が、直流磁界によってどのように磁化するか、その過程を示したものであり。横軸は外部から印加した磁束密度Bex[Gauss]を示し、縦軸は、磁化M[emu]を表している。なお、使用した磁性薄膜(スピネル系フェライト薄膜)は、公知のRFスパッタリング装置を用いて作成する。スパッタリングの条件は、例えば、次の通りであり、基板温度を、200℃,400℃,700℃とした場合の3種類のサンプルを作成した。なお、これらの試料の膜厚は、約800nmである。
ターゲット:Ni0.5Zn0.5Feの組成式で表されるスピネル系フェライト焼結体
基板:石英ガラス
基板−ターゲット間距離:40mm
出力:300W
スパッタ時間:3時間
雰囲気:アルゴンと酸素の混合ガス
基板温度:200℃,400℃,700℃
図2に示すように、基板温度の増加とともに飽和磁化の値が大きくなることが確認された。一般に、透磁率は、飽和磁化が大きいほど大きな値を示すことから、次に、飽和磁化が最も大きい基板温度700℃で作成したフェライト薄膜試料の透磁率の測定を行った。図3は、透磁率の周波数依存性を示す図であり、基板温度700℃で作成したフェライト薄膜試料の透磁率の測定結果が、同じ組成のバルク体の測定結果とともに示されている。図3において、横軸は、周波数[Hz],縦軸は透磁率を表しており、横軸・縦軸ともに対数目盛となっている。
図3に示すように、粒径を制御したフェライト薄膜(基板温度700℃)では、透磁率の値自体は、バルク体よりも小さくなるが、1GHz(10Hz)以上の高周波帯域まで透磁率が得られている。また、電磁干渉抑制体として重要な虚数透磁率(μ'')は、約3GHzでピークを示している。これらの結果から、透磁率の周波数特性が、フェライト粒径の微細化によって改善することが明らかである。バルク体の実数透磁率の線(図中の黒四角)がスヌーク限界線に相当することから、フェライト薄膜の透磁率がスヌーク限界を突破していることも確認される。
以上のような優れた周波数特性を利用し、フェライト薄膜を高周波領域で使用可能な電磁干渉抑制体として用いることを検討する。磁気損失を利用した電磁干渉抑制体においては、単位体積あたりの電磁波吸収エネルギーPは、以下の数式1で記述できる。
Figure 2006283063
上記数式1からも分かるように、電磁波吸収エネルギーPは、周波数fと虚数透磁率μ''の積に比例する。従って、周波数fと虚数透磁率μ''の積である、f×μ''が大きな値を取る周波数帯域のノイズを、効率的に吸収できることになる。図4に、基板温度700℃で作成したフェライト薄膜試料の、f×μ''の周波数依存性を示す。図4において、横軸は周波数[Hz],縦軸は、f×μ''(周波数と虚数透磁率の積)[Hz]を表しており、横軸は対数目盛となっている。同図からは、f×μ''が、約3GHzでピークを取り、この周波数帯域の電磁波ノイズを吸収する性能を有していることが確認できる。
従来、スピネル系フェライト材料では、透磁率はスヌーク限界によって制限され、スヌーク限界を越えるような高周波帯域での電磁干渉抑制体には使用できなかった。しかしながら、本実施例の磁性薄膜形成方法によって、フェライト粒径を微細化することにより、スヌーク限界を突破できることが明らかになり、粒径制御したフェライト薄膜が、数GHz帯域での電磁干渉抑制体として使用できることが確認された。また、フェライト材料は絶縁性にも優れていることから、絶縁性にも優れた高周波帯域用電磁干渉抑制体としても適している。
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)スパッタリング時の基板温度を制御することで、酸化物磁性薄膜中の粒子径をナノレベルで制御し、所望の粒径のナノ粒子が存在する酸化物磁性薄膜が得られるという効果がある。特に、基板温度を200〜700℃の間で制御することにより、数nm〜数十nmの間での粒径制御が可能となる。
(2)フェライト磁性薄膜(酸化物磁性薄膜)の粒径制御をすることにより、絶縁性に優れた高周波帯域用の電磁干渉抑制体として使用できるとともに、小型化にも対応可能である。
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した基板や焼結体ターゲットは一例であり、酸化物磁性薄膜を形成できるものであれば、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)前記実施例に示すスパッタリングの条件も一例であり、同様の効果を奏するように適宜変更してよい。特に、基板温度の制御範囲は、酸化物磁性粒子の粒径をナノレベルで制御できる範囲内であれば、焼結体ターゲットの種類に応じて適宜変更してよい。
(3)本発明の酸化物磁性薄膜の具体的な用途としては、高周波領域でのデバイス(電波吸収体,高周波インダクタ等)が好適な適用例であるが、スピネル系フェライトの場合は、粒径が適用周波数領域を変化させることが知られていることから、種々の周波数領域で利用されるデバイスへの適用も検討可能である。
(4)前記実施例では、RFスパッタリングを例に挙げて説明したが、他の公知の各種のスパッタリング法にも本発明は適用可能である。
本発明の実施例1のフェライト粒径の基板温度依存性を示す図である。 前記実施例のフェライト薄膜の磁化曲線の基板温度依存性を示す図である。 基板温度700℃で作成したフェライト薄膜と、該フェライト薄膜と同組成のバルク体の透磁率の周波数特性を示す図である。 基板温度700℃で作成したフェライト薄膜の周波数fと虚数透磁率μ''の積の周波数特性を示す図である。

Claims (6)

  1. スパッタリングを利用した酸化物磁性薄膜の製造方法であって、
    基板上に付着する酸化物磁性粒子の粒子径を、成膜時の基板温度により制御することを特徴とする酸化物磁性薄膜の製造方法。
  2. スパッタリングのターゲットとして、スピネル系フェライト焼結体を用いたことを特徴とする請求項1記載の酸化物磁性薄膜の製造方法。
  3. 前記成膜時の基板温度を、25〜1000℃としたことを特徴とする請求項1又は2記載の酸化物磁性薄膜の製造方法。
  4. 前記成膜時の基板温度を、好ましくは、200〜700℃としたことを特徴とする請求項3記載の酸化物磁性薄膜の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって形成したことを特徴とする酸化物磁性薄膜。
  6. 請求項5記載の酸化物磁性薄膜を用いたことを特徴とする電磁干渉抑制体。

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