JP2006280848A - 磁性体鉗子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 患者への負担を抑えつつ、管腔器官を確実に保持することができ、各種処置を容易に行うことができる磁性体鉗子を提供すること。
【解決手段】 磁力を利用して体腔内の管腔器官を保持する磁性体鉗子1において、体腔内に挿入される磁性体31と、前記管腔器官の内側にあらかじめ留置された留置具2を、前記管腔器官の外側から前記磁性体31によって引き寄せて支持する支持力を補強する補強手段17,37,40と、を備えることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、磁力を利用して体腔内の管腔器官を保持する磁性体鉗子に関するものである。
腹腔鏡下もしくは開腹による外科手術において、胃や大腸等の管腔器官の内側に生じた病変部を把握するための処置として、点墨法がある。点墨法とは、手術の数日から数週間前に、管腔器官の内側から、病変部を生じた生体組織に目印となる墨汁を注入し、管腔器官の外側から病変部の位置を直接的または間接的に肉眼で特定し易くする処置である。具体的には、内視鏡を口から挿入し、管腔器官の内側から病変部近傍に位置する器官壁部に針を刺して墨汁を注入する。注入された墨汁は壁部に沿って広がり、切除の際に病変部を肉眼で確認する際の補助となる。
このとき、針の先端が壁部を突き抜けず、かつ管腔器官を外側から見て入れ墨の位置が視認できるぎりぎりの深さに注入するように心がける必要がある。もし、針が壁部を貫いた場合、病変部位が不明になるだけでなく、他の多くの臓器が墨汁によって覆われ、手術が続行できない状態となる場合がある。また、胃や大腸外側に見えるように墨汁を注入できなければ、病変部位が判別できず、病変の取り残しの原因となり得る。要するに、この点墨法の問題点は、確実に点墨を実施するべく、針を刺す深度を調整するための高い技術を要することである。
そこで、腹腔鏡下もしくは開腹による外科手術において、高い技量を要する点墨を行わなくても、管腔器官の所望の箇所を正確に把握することを可能にする方法が提案されている。その方法とは、体腔内に挿入される鉗子挿入部と、この鉗子挿入部に設けられた磁性体とを備える磁性体鉗子を使用するものである。すなわち、管腔器官の内側の所定の位置に、磁性を有する留置具をあらかじめ留置しておき、手術にあたって管腔器官の外側に磁束密度可変式の磁性体鉗子を近づけ、管腔器官の内側に留置した留置具を管腔器官の生体組織ごと磁性体鉗子に引き寄せるというものである(下記の非特許文献1を参照)。この方法に従って、内側に留置具を留置した管腔器官の外側に磁性体鉗子を近づけると、留置具が磁性体鉗子に引き寄せられ、留置具を留置した管腔器官の壁部が外側に盛り上がるように変形する。そこで、管腔器官の外側からその変形を視認することにより、留置具を留置した位置を簡単かつ短時間のうちに正確に把握することができる。
さらに、管腔器官の内側に留置した留置具を管腔器官の生体組織ごと磁性体鉗子に引き寄せて吸着させることにより、留置具が支持されて、管腔器官の所望の箇所が正確に、かつ生体組織を傷付けることなく保持される。そして、このように管腔器官が保持された状態で、切除などの各種処置が行われる。
日本外科学会雑誌第105巻臨時増刊号2004年3月15日発行「第104階日本外科学会的学術集会抄録集」、第307頁「鏡視下手術における病変捕捉および腸管切除における磁束密度可変式磁力操作鉗子の有用性:大平 猛、昌子 正實、永井秀雄」
しかしながら、上記のような磁性体鉗子では、留置具が磁性体鉗子に適正に吸着されなかったり、管腔器官の壁部が厚いために、留置具に作用する磁力が弱まったりして、磁性体鉗子による留置具の支持力が弱くなる場合がある。そのため、処置中に、留置具が磁性体鉗子から外れてしまうという問題がある。
また、磁性体鉗子と留置具との間に、より強い磁力を作用させるために、磁性体鉗子の磁性体を大きくすることが考えられるが、磁性体を大きくすると、鉗子挿入部も大きくなってしまうため、磁性体鉗子を体腔内に配置する際、患者に負担を与えてしまうという問題がある。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、患者への負担を抑えつつ、管腔器官を確実に保持することができ、各種処置を容易に行うことができる磁性体鉗子を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、磁力を利用して体腔内の管腔器官を保持する磁性体鉗子において、体腔内に挿入される磁性体と、前記管腔器官の内側にあらかじめ留置された留置具を、前記管腔器官の外側から前記磁性体によって引き寄せて支持する支持力を補強する補強手段と、を備えることを特徴とする。
この発明に係る磁性体鉗子においては、管腔器官の内側にあらかじめ留置された留置具に磁性体を近づけることによって、留置具が磁性体に引き寄せられて支持される。そして、補強手段によって、磁性体によって留置具が支持されたときの支持力が補強される。
これにより、磁性体を大きくすることなく、留置具を確実に支持することができ、処置中に、留置具が磁性体から外れるのを防止することができる。
本発明によれば、留置具を確実に支持することができることから、管腔器官を強固に保持することができ、各種処置を容易に行うことができる。また、磁性体のサイズを大きくする必要がないため、体腔内に磁性体を容易に配することができ、患者の負担を抑えることができる。
(実施例1)
以下、本発明の第1実施例における磁性体鉗子について、図面を参照して説明する。
本実施例における磁性体鉗子1は、留置具2を支持することによって、例えば、胃などの管腔器官を保持するものである。
最初に、留置具2について説明する。
留置具2は、胃などの内側の粘膜を把持して固定されるクリップ20と、円板状の留置側磁石21とを備えており、これらクリップ20と留置側磁石21とは、連結紐22を介して連結されている。留置側磁石21は、チタンやシリコン等、身体に害のない材質でコーティングされている。
次に、本発明に係る磁性体鉗子1について説明する。
磁性体鉗子1は、図1及び図2に示すように、非磁性材料からなり体腔内に挿入される鉗子挿入部10を備えている。鉗子挿入部10は円筒状に形成されており、その側壁には、鉗子挿入部10の長さ方向に延びる長孔29が形成されている。鉗子挿入部10の先端には円形状の底面部11が設けられ、基端は開放端となっている。
底面部11の中央部には、先端開口部12が形成されている。底面部11の表面(外面)側には、先端開口部12の縁部の全周にわたって、弾性部材からなる吸着用ゴム(吸引補助部材)23が設けられている。
底面部11の裏面(内面)側には、先端開口部12の縁部を起点として鉗子挿入部10の基端側に向けて延びる円筒壁部15が設けられている。円筒壁部15の長さ寸法は、鉗子挿入部10の長さ寸法よりも大きく設定され、円筒壁部15の基端側は、鉗子挿入部10の基端から突出している。円筒壁部15の基端部には、ノズル開口部(補強手段、吸引手段)17を有するノズル16が設けられており、ノズル開口部17と先端開口部12とが、円筒壁部15の筒孔(補強手段、吸引手段)37を介して連通している。ノズル16は、連結チューブ38を介して、送気・吸引装置(補強手段、吸引手段)40に連結されている。
また、鉗子挿入部10の内壁と、円筒壁部15の外壁との間は、空洞部24が設けられており、この空洞部24内に筒状のスライド部25が設けられている。すなわち、円筒壁部15の基端側からスライド部25の先端が通されて、さらに鉗子挿入部10内に送り込まれて、所定の位置まで送り込まれたところで、長孔29を介してスライド部25の側壁にネジ28が螺合されている。スライド部25の先端には、このスライド部25と同心状に配された円板状の鉗子側磁石(磁性体)31が設けられている。鉗子側磁石31の中央には、磁石開口部32が形成されており、この磁石開口部32には、円筒壁部15が挿通されている。スライド部25の後端には、ツマミ部33が設けられている。
このような構成のもと、ツマミ部33を把持して、このツマミ部33を鉗子挿入部10に対して進退させると、ネジ28が長孔29内を移動することにより、スライド部25が鉗子挿入部10に対して進退するようになっている。これにより、鉗子側磁石31は底面部11に対して接近・離間する方向に移動することができるようになっている。
次に、このように構成された本実施例における磁性体鉗子1の使用方法について説明する。本実施例においては、図3に示すように、胃Sの内壁に生じた病変部Lを、その周辺部ごと切除する場合を例に挙げて説明する。
まず、手術の数日から数週間前に、病変部Lの近傍の胃壁に、留置具2を留置する。具体的には、内視鏡を口から挿入し、内視鏡の挿入部を通じて胃Sの内側に留置具2を入れ、クリップ20に病変部Lの近傍の胃壁を掴ませて固定する。これにより、留置具2が胃Sの内部の所定の位置で固定される。
それから、所定の期間経過後、実際の手術が行われる。病変部Lを切除する実際の手術の手順は、以下の通りである。
ツマミ部33を介して、鉗子側磁石31を底面部11に対して離間させておく。これにより、底面部11から外方に作用する磁力が弱められる。そして、図3に示すように、鉗子挿入部10を体腔内に挿入していき、底面部11を胃Sの外側に近づける。すると、図4に示すように、底面部11の表面側に留置側磁石21が引き寄せられ、その近傍の胃壁が外側に盛り上がるように変形する。術者は、この胃壁の変形をテレビモニタに映し出された映像から視認し、留置具2を留置した箇所及び病変部Lの位置を正確に把握する。病変部Lの位置を把握したら、ツマミ部33を鉗子挿入部10に対して進行させて、鉗子側磁石31を底面部11の裏面側に接近させる。これにより、底面部11から外方に作用する磁力を強め、図5に示すように、留置側磁石21を、病変部Lが生じた胃壁を介して底面部11の裏面に吸着させる。これにより、留置側磁石21が鉗子側磁石31の磁力によって支持された状態になる。このとき留置側磁石21を支持する力を支持力という。
このように留置側磁石21が支持された状態で、後述するように、送気・吸引装置40を駆動して鉗子挿入部10内を吸引する。そして、把持鉗子4を使って、胃壁の別の部分を把持する。これにより、胃Sが保持される。そして、図6に示すように、磁性体鉗子1と把持鉗子4とを使って胃Sを2箇所で把持しながら、自動縫合器5を使って胃Sを切離、縫合する。切離する箇所は、磁性体鉗子1および把持鉗子4で把持した部分、すなわち病変部Lを含む部分よりも噴門側であり、切離した胃Sには病変部Lが含まれる。
それから、把持鉗子4を胃Sから離し、この切離した胃を磁性体鉗子1とともに腹腔内から引き出す。そして、磁性体鉗子1に替えて通常の把持鉗子を腹腔内に挿入し、2本の把持鉗子を使用して十二指腸と残った胃とを把持する。そして、図7に示すように、残った胃Sの縫合部を一部分だけ切除し、切除した部分と十二指腸Duとを自動吻合器を使って吻合する。なお、自動吻合器等の処置具を使用せず、術者自らが縫合を行ってもよい。吻合を終えたら、腹腔鏡や把持鉗子その他の器具を抜き取り、把持鉗子を通していた穿孔にドレンチューブを通し、その他の穿孔を縫合して手術を終了する。
ここで、鉗子側磁石31によって留置側磁石21が支持されたとき、その支持力が弱いと術中に留置側磁石21が底面部11から外れてしまうが、本実施例における磁性体鉗子1では、以下のようにして、支持力が補強される。
すなわち、留置側磁石21が支持された状態で、送気・吸引装置40を駆動すると、図8に示すように、円筒壁部15の筒孔37内の空気がノズル開口部17および連結チューブ38を介して、送気・吸引装置40に吸引される。そして、先端開口部12に一致する位置に配された胃壁とともに、留置側磁石21が吸引される。そのため、鉗子側磁石31の磁力による引力と、送気・吸引装置40からの吸引力とが足し合されて、留置側磁石21が引っ張られ、その引っ張られた状態で支持される。これにより、留置側磁石21を支持する支持力が補強され、留置側磁石21が最大限支持される限界支持力が強められる。
さらに、底面部11の表面側には、吸着用ゴム23が設けられていることから、留置側磁石21が底面部11に吸着すると、留置側磁石21と底面部11との間において、底面部11と胃壁とに密着する。これによって、先端開口部12の周囲から先端開口部12へと向かう空気の流通が止められ、留置側磁石21の吸引が補助される。
なお、体外に取り出した胃片を磁性体鉗子1から外すときには、送気・吸引装置40によって、筒孔37に空気を送り込む。これにより、留置側磁石21を外方に押圧して、留置側磁石21とともに、胃片を外れ易くすることができる。また、術中であっても、留置側磁石21が底面部11にズレて吸着してしまったような場合、留置側磁石21を取り外して再度吸着させることが行われる。このとき、送気・吸引装置40によって、筒孔37に空気を送り込むことにより、術中に一旦吸着した留置側磁石21を容易に取り外すことができる。
以上より、本実施例における磁性体鉗子1によれば、留置側磁石21を支持する支持力を補強することができるため、鉗子側磁石31を大きくすることなく、留置側磁石21を確実に支持することができる。そのため、処置中に、留置側磁石21が底面部11から外れるのを防止することができる。これにより、胃Sを強固に保持することができ、切除などの各種処置を容易に行うことができる。さらに、鉗子側磁石31のサイズを大きくする必要がないため、鉗子挿入部10の径を太くすることなく、体腔内に鉗子側磁石31を容易に配することができ、患者の負担を抑えることができる。
また、ノズル開口部17および筒孔37を介して送気・吸引装置40により、留置側磁石21を確実に吸引することができる。
さらに、吸着用ゴム23によって、先端開口部12の周囲から先端開口部12へと向かう空気の流通が止められることから、留置側磁石21を効率よく確実に吸引することができる。
なお、本実施例においては、鉗子側磁石31を底面部11に対して接近・離間する方向に移動可能に構成したが、これに限ることはなく、鉗子挿入部10内で固定させてもよい。これにより、スライド部25などが不要となるため、構成を簡易にすることができる。また、電磁石を用い、電源ON/OFFにより磁力の有無を切り替えてもよい。
また、本実施例においては、鉗子挿入部10を直接体内に挿入しているが、これに限ることはなく、内視鏡挿入部のチャンネル内を通して、内視鏡挿入部とともに磁性体鉗子1を送り込んでもよい。
(実施例2)
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図9から図14は、本発明の第2の実施例を示したものである。
図9から図14において、図1から図8に記載の構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
この実施例と上記第1の実施例とは基本的構成は同一であり、ここでは異なる点についてのみ説明する。
本実施例においては、上記第1実施例のノズル16、連結チューブ38および送気・吸引装置40は設けられておらず、円筒壁部15の基端側は開放端となっている。そして、本実施例における磁性体鉗子1は、図9および図10に示すように、先端に針部(穿刺針)43が設けられた穿刺具42と、先端に棒状部材(補強手段、係止部材)44が連結された係止具47とを備えている。
穿刺具42は、管状に延びる穿刺本体部48を備えており、穿刺本体部48の基端部には、穿刺本体部48よりも大径のキャップ部49が設けられている。キャップ部49には、穿刺本体部48の軸線方向に延びる貫通孔52が形成されている。穿刺本体部48の先端部には、上述の針部43が設けられている。針部43は、鋭角に傾斜された鋭利な尖部とされており、これにより生体組織への穿通が容易になるように構成されている。針部43には、針開口部53が形成されている。
そして、針開口部53と貫通孔52とは、穿刺本体部48の筒孔を介して連通している。
また、係止具47は柱状に延びる係止本体部54を備えている。係止本体部54の先端には、係止連結糸57を介して、上述の棒状部材44が連結されている。すなわち、係止本体部54の先端面から係止連結糸57が延ばされ、この係止連結糸57の先端が、棒状部材44の長さ方向の中央部に取り付けられている。
さらに、棒状部材44をキャップ部49の貫通孔52に挿入し、続いて係止本体部54の先端を貫通孔52に挿入して、針部43側に向けて送り込むことにより、図11に示すように、棒状部材44および係止本体部54は、穿刺具42内において、進退可能に支持されるようになっている。
また、留置側磁石21は、その中央に図12に示す開口孔58が形成されたドーナツ状をなしている。
このような構成のもと、上記のように、棒状部材44および係止本体部54を穿刺具42内に挿通した状態で、図12に示すように、胃Sの外側から磁性体鉗子1を留置具2に近づけていく。すると、上記と同様にして、留置側磁石21が胃壁を介して底面部11に吸着し、支持される。この状態で、穿刺具42を進行させると、針部43が、磁石開口部32および開口孔58を通って、胃壁を穿通する。それから、係止本体部54を穿刺具42に対して進行させる。すると、棒状部材44が針部43側に向けて押圧されて、そのため棒状部材44が移動し、図13に示すように、針開口部53から外方に押し出される。これにより、胃Sの外側に配されている鉗子挿入部10aに対して、棒状部材44が胃Sの内側に配される。この状態で、穿刺具42とともに係止本体部54を退行させる。
このとき、棒状部材44は、その長さ方向の中央部に係止連結糸57が取り付けられていることから、係止本体部54の退行方向に対して、交差する方向に向けられる。そのため、係止本体部54をさらに退行させると、棒状部材44の長さ方向に延在する面が、留置側磁石21を介して胃壁に接触する。そして、図14に示すように、この棒状部材44が胃壁に引っかかることによって、留置側磁石21が胃壁ごと外側に引っ張られ、この引っ張られた状態が維持される。このとき、留置側磁石21は、鉗子側磁石31の磁力による引力だけでなく、係止具47の引っ張り力によって支持される。すなわち、鉗子側磁石31の引力による支持力が、係止具47の引っ張り力によって補強される。そして、このように胃Sが保持された状態で、病変部Lの周辺が自動縫合器5によって切除・縫合される。
以上より、本実施例における磁性体鉗子1によれば、留置側磁石21を、簡易な構成で確実に支持することができる。
なお、本実施例においては、鉗子挿入部10aを体腔内に直接挿入しているが、これに限ることはなく、例えば、図15に示すように、管状に延びる外シース60内を通すようにしてもよい。外シース60を用いると、鉗子挿入部10aを体腔内に挿入し易くなるだけでなく、一旦吸着した留置側磁石21を術中に取り外し易くすることができる。すなわち、留置側磁石21が吸着した状態で、鉗子挿入部10aを退行させるか、または外シース60を進行させると、外シース60によって留置側磁石21を外方に押圧することができる。
また、外シース60および留置側磁石21の形状や寸法は適宜変更可能である。例えば、外シース60の外径φdが、留置側磁石21の外径φDよりも小さくなるように設定してもよい。これにより、外シース60に対して鉗子挿入部10aを相対的に退行させたとき、留置側磁石21が外シース60内に食い込むことを防止することができ、そのため食い込みによって生じる胃壁への損傷を防止することができる。また、外シース60の先端面によって胃壁に面接触させることができるため、胃壁の損傷を一層効果的に防止することができる。
(実施例3)
次に、本発明の第3の実施例について説明する。
図16および図17は、本発明の第3の実施例を示したものである。
この実施例と上記第1の実施例とは基本的構成は同一であり、ここでは異なる点についてのみ説明する。
本実施例においては、円筒壁部15の筒孔37に、穿刺具42aが進退可能に挿通され、この穿刺具42aの先端の針部(穿刺針)43aが、銛状に形成されて構成されている。すなわち、穿刺本体部48aには、その軸線M方向に直交する方向に延びるスペーサ部材61が、軸線M方向に均等間隔を空けて複数設けられている。そして、穿刺具42aは、長孔63を介して挿入されたネジ64が取り付けられることにより、鉗子挿入部10b内において進退可能に支持されている。これにより、針部43aが、先端開口部12から出没するようになっている。針部43aには、軸線Mに直交する方向に延びる係止突起(補強手段)66が、周方向に均等間隔を空けて複数設けられている。
なお、留置側磁石21は開口孔58が形成されたドーナツ形状のものが用いられる。
このような構成のもと、上記第1の実施例と同様に、留置側磁石21を吸着した状態で、穿刺具42aを進行させると、針部43aが、磁石開口部32および留置側磁石21の開口孔58を通って、係止突起66とともに胃壁を穿通する。それから、穿刺具42aを退行させると、係止突起66が胃壁の内側に引っ掛かり、その胃壁が外側に引っ張られる。そして、この引っ張られた状態が維持される。このとき、係止突起66を、留置側磁石21の開口孔58の縁部に引っ掛けるようにすると、より一層支持力を増大させることができる。
以上より、留置側磁石21を支持する支持力が補強されて、留置側磁石21を確実に支持することができる。
なお、本実施例における針部43aを利用する場合、切離されて体外に取り出される部位に針部43aを穿通するのが好ましい。これにより、係止突起66によって胃壁を傷付けてしまうことに対して過度に注意することなく、種々の処置を容易に行うことができる。
なお、各部品の形状、サイズなどは適宜変更可能である。例えば、図18に示すように、軸線Mからずらした位置に、すなわち鉗子挿入部10cに偏心させて鉗子用チャンネル70を設けてもよい。
(実施例4)
次に、本発明の第4の実施例について説明する。
図19および図20は、本発明の第4の実施例を示したものである。
本実施例においては、図19および図20に示すように、鉗子挿入部10d内に磁石用チャンネル69と鉗子用チャンネル70とが設けられている。
磁石用チャンネル69には、先端に鉗子側磁石31aが設けられた磁石鉗子73が挿通されている。磁石鉗子73は、磁石用チャンネル69内において進退可能に支持されている。鉗子側磁石31aは、円柱状に形成されており、鉗子挿入部10dの先端から出没するようになっている。
また、鉗子用チャンネル70には、先端に把持部(補強手段、把持手段)75が設けられた把持鉗子74が挿通・固定されている。把持部75は、互いに開閉可能に連結された把持片78を備えている。これら把持片78は、それぞれ基端部から把持鉗子74の軸線上を延ばされて、その先端を起点として軸線と交差する方向に滑らかに屈曲させることによって、略L字状に形成されている。これら把持片78は、操作部79を操作することにより、開閉動作するようになっている。
そして、把持片78が互いに開いた状態で、それら把持片78の間を、鉗子側磁石31aが進退するようになっている。
このような構成のもと、鉗子側磁石31aを突出させて、留置側磁石21を吸着した状態で、把持片78を互いに開かせたまま把持部75を送り込む。すると、両把持片78の間に、留置側磁石21によって外側に引っ張られた胃壁が配される。そして、操作部79を操作して、把持片78を互いに閉じる。これによって、胃壁が把持される。そして、胃壁を把持した状態で、把持鉗子74を引っ張ることにより、留置側磁石21を支持する支持力が補強される。
以上より、留置側磁石21を確実に支持することができる。
(実施例5)
次に、本発明の第5の実施例について説明する。
図21および図22は、本発明の第5の実施例を示したものである。
本実施例においては、図21に示すように、底面部11aの表面側に、その径方向に延びる長溝81が形成されている。そして、鉗子挿入部10eの筒孔に、把持鉗子74aが挿通されている。把持鉗子74aは鉗子挿入部10e内において身体可能に支持されている。把持鉗子74aの先端には、把持部(補強手段、把持手段)75aが設けられている。把持部75aは、互いに開閉可能に連結された板状に延びる把持片78aを備えている。
このような構成のもと、把持部75aを鉗子挿入部10eの先端の所定の位置に配する。そして、不図示の操作部を操作して、把持片78aを相互に開いて、それぞれの把持片78aを、長溝81内に収容する。この状態で、上記実施例と同様にして、留置側磁石21を吸着させる。そして、図22に示すように、把持鉗子74aを退行させながら、把持片78aを相互に閉じる。これによって、胃壁が把持される。この状態で、把持鉗子74aを引っ張ることにより、留置側磁石21を支持する支持力が補強される。
以上より、留置側磁石21を確実に支持することができる。
なお、上記第1から第5の実施例においては、鉗子挿入部10内にチャンネルを設けて、このチャンネルに穿刺具42や把持鉗子74を挿通しているが、このチャンネルの利用はそれらに限定されることはない。すなわち、多目的チャンネルとして利用することもできる。
また、上記第1から第5の実施例においては、胃Sの一部を切除する場合を例に挙げたが、これに限ることはなく、様々な部位において、種々の処置に適用することができる。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
(付記項1)
請求項1に記載の磁性体鉗子において、前記補強手段が、前記留置具を吸引する吸引手段を備えることを特徴とする。
この発明に係る磁性体鉗子においては、補強手段により、留置具が吸引される。
これにより、留置具を確実に支持することができる。
(付記項2)
付記項1に記載の磁性体鉗子において、前記前記吸引手段が、前記鉗子挿入部に設けられて、前記留置具の吸引を補助する吸引補助部材を備えることを特徴とする。
この発明に係る磁性体鉗子においては、吸引手段により、留置具が吸引され、このとき、吸引補助部材により、留置具の吸引が補助される。
これにより、留置具を効率よく確実に吸引することができる。
(付記項3)
請求項1に記載の磁性体鉗子において、前記補強手段が、前記管腔器官に穿刺される穿刺針を備え、この穿刺針が、その軸方向と交差する方向に延びる係止突起を備えることを特徴とする。
この発明に係る磁性体鉗子においては、管腔器官に穿刺針を穿刺して、この穿刺針を引っ張ると、係止突起が管腔器官の内壁に係止され、管腔器官が外側に引っ張られる。
これにより、磁性体の磁力と係止突起とによって、留置具を確実に支持することができる。
(付記項4)
請求項1に記載の磁性体鉗子において、前記補強手段が、前記管腔器官に穿刺される管状の穿刺針と、この穿刺針の中を挿通可能な長尺状の係止部材と、を備えることを特徴とする。
この発明に係る磁性体鉗子においては、管腔器官に穿刺針を穿刺して、この穿刺針を挿通させて、係止部材を管腔器官の内側に送り込む。そして、外側から係止部材を引っ張ると、係止部材が管腔器官の内壁に引っ掛かり、管腔器官が外側に引っ張られる。
これにより、磁性体の磁力と係止部材とによって、留置具を確実に支持することができる。
(付記項5)
請求項1に記載の磁性体鉗子において、前記補強手段が、前記管腔器官のうち、前記磁性体によって引き寄せられた前記留置具の近傍の部位を把持する把持手段を備えることを特徴とする。
この発明に係る磁性体鉗子においては、把持手段によって、磁性体によって引き寄せられた留置具の近傍の部位が把持される。
これにより、留置具を確実に支持することができる。
本発明に係る磁性体鉗子の第1の実施例を示す斜視図である。 図1の磁性体鉗子を拡大して示す側断面図である。 図1の磁性体鉗子を利用して胃の部分切除を行う過程を示す図であって、図1の磁性体鉗子を留置具に近づけた様子を示す説明図である。 図1の磁性体鉗子を利用して胃の部分切除を行う過程を示す図であって、図1の磁性体鉗子によって、留置側磁石を引き寄せる様子を示す説明図である。 図1の磁性体鉗子を利用して胃の部分切除を行う過程を示す図であって、図1の磁性体鉗子によって、留置側磁石を引き寄せて吸着した様子を示す説明図である。 図1の磁性体鉗子を利用して胃の部分切除を行う過程を示す図であって、図1の磁性体鉗子によって、留置側磁石を支持して、胃を保持した状態で、胃の一部を切除する様子を示す説明図である。 図1の磁性体鉗子を利用して胃の部分切除を行う過程を示す図であって、胃に十二指腸を縫合した様子を示す説明図である。 図1の磁性体鉗子によって、留置側磁石を吸引した様子を示す説明図である。 本発明に係る磁性体鉗子の第2の実施例の要部を示す説明図である。 図9の穿刺具および係止具を示す側面図である。 図9の穿刺具内に係止具が挿通された様子を示す説明図である。 図9の磁性体鉗子を利用して胃の部分切除を行う過程を示す図であって、図9の磁性体鉗子を留置具に近づけた様子を示す説明図である。 図9の磁性体鉗子を利用して胃の部分切除を行う過程を示す図であって、図9の磁性体鉗子に留置具を吸着させた状態において、棒状部材を胃の内側に配した様子を示す説明図である。 図9の磁性体鉗子を利用して胃の部分切除を行う過程を示す図であって、図9の磁性体鉗子に留置具を吸着させた状態において、係止具を引っ張って胃を保持した様子を示す説明図である。 図9の磁性体鉗子の変形例を示す説明図である。 本発明に係る磁性体鉗子の第3の実施例を示す斜視図である。 図16の磁性体鉗子を拡大して示す側断面図である。 図16の磁性体鉗子の変形例を示す斜視図である。 本発明に係る磁性体鉗子の第4の実施例の要部を示す説明図である。 図19の磁性体鉗子によって留置側磁石を支持した状態で、胃壁を把持する様子を示す説明図である。 本発明に係る磁性体鉗子の第5の実施例の要部を示す説明図である。 図21の磁性体鉗子によって留置側磁石を支持した状態で、胃壁を把持する様子を示す説明図である。
符号の説明
1 磁性体鉗子
2 留置具
17 ノズル開口部(補強手段)
31 鉗子側磁石(磁性体)
37 筒孔(補強手段)
40 送気・吸引手段(補強手段)
S 胃(管腔器官)

Claims (1)

  1. 磁力を利用して体腔内の管腔器官を保持する磁性体鉗子において、
    体腔内に挿入される磁性体と、
    前記管腔器官の内側にあらかじめ留置された留置具を、前記管腔器官の外側から前記磁性体によって引き寄せて支持する支持力を補強する補強手段と、を備えることを特徴とする磁性体鉗子。
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