ところで、吸引装置によってノズルや該ノズルに接続された処理液供給用バルブ(供給手段)に残留付着する処理液の液滴を吸引する場合には、該液滴の吸引速度によっては次のようなトラブルが発生する場合がある。すなわち、処理液の液滴の吸引速度が速すぎるとノズルや処理液供給用バルブの内部に液滴が多く残ってしまうこととなる。特に、吸引開始直後は、ノズルや処理液供給用バルブに処理液が付着したままの状態から吸引を行うために、処理液の液滴の吸引量が多くなり、ノズルや処理液供給用バルブの内部に液滴が残り易くなる傾向にある。このようにノズルや処理液供給用バルブの内部に処理液(リンス液)の液滴が残留してしまうと、該リンス液の液滴が薬液処理開始時に薬液とともに吐出されてしまう。その結果、薬液のみを回収してランニングコストを低下させたいという要望があるにもかかわらず、薬液のみを回収することができなくなり、薬液回収率を低下させてしまう。また、ノズル付近に付着している残留液滴がウエハへのウォータマークやパーティクル付着の原因となってしまう。
その一方で、処理液の液滴の吸引速度が遅すぎると吸引に要する時間が長くなり装置のスループットを著しく低下させてしまうこととなる。特に、従来装置においては、液滴の吸引が完了するまでミストの発生の問題からウエハの乾燥処理を行うことができず、液滴の吸引速度が遅いと装置のスループットに重大な影響を与えることとなる。しかしながら、従来装置では、吸引装置による処理液の液滴の吸引速度については何ら考慮されていなかった。
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ノズルや該ノズルに接続された供給手段に残留付着している処理液を確実に除去しながらも、装置のスループットを向上させることができる基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
この発明にかかる基板処理方法および基板処理装置は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。この発明にかかる基板処理方法の一態様は、ノズルに接続された供給手段を介して第1処理液をノズルに供給することで該ノズルから基板に向けて第1処理液を吐出させて基板に対して第1処理液によるリンス処理を施すリンス工程と、その一方端が供給手段に接続された吸引経路に沿って、ノズルと供給手段とに残留付着する第1処理液の液滴を吸引してノズルと供給手段とから第1処理液の液滴を除去する吸引工程とを備え、吸引工程は、第1処理液の液滴の吸引速度を第1速度から該第1速度よりも高速の第2速度に少なくとも2段階に加速させながら第1処理液の液滴を吸引している。
また、この発明にかかる基板処理装置の一態様は、ノズルから基板に向けて第1処理液を吐出することで基板に対して第1処理液によるリンス処理を施す基板処理装置であって、ノズルに接続され第1処理液をノズルに導くことでノズルから第1処理液を吐出させる供給手段と、その一方端が供給手段に接続された吸引経路に沿ってリンス処理後にノズルと供給手段とに残留付着する第1処理液の液滴を吸引してノズルと供給手段とから除去する吸引手段と、吸引経路上に配設され第1処理液の液滴の吸引速度を設定する吸引速度設定手段と、吸引速度設定手段を制御することで第1処理液の液滴の吸引速度を第1速度から該第1速度よりも高速の第2速度に少なくとも2段階に切替える制御手段とを備えている。
このように構成された発明では、ノズルと該ノズルに第1処理液を導く供給手段とに残留付着している第1処理液の液滴は、第1速度から該第1速度よりも高速の第2速度に少なくとも2段階に吸引速度が加速させながら吸引経路に沿って吸引されることでノズルと供給手段とから除去される。すなわち、吸引速度が比較的低速に設定された第1速度で液滴が吸引された後に、吸引速度が第1速度から比較的高速に設定された第2速度に少なくとも2段階に加速されて液滴が吸引される。このため、第1処理液の液滴の吸引量が多い吸引初期段階は比較的ゆっくりと液滴が吸引されることでノズルと供給手段とに液滴が吸引されずに残ってしまうのを防止することができる一方で、吸引途中段階から吸引速度を高めて液滴を吸引することで液滴の除去に要する時間を短縮して装置のスループットを向上させることができる。
なお、液滴の吸引速度は、第1速度から該第1速度よりも高速の第2速度へ2段階に加速させるほか、例えば第1速度から第2速度を含む多段階に吸引速度を段階的に加速させたり、第1速度から第2速度を含むかたちで連続的に吸引速度を加速させるようにしてもよい。
ここで、液滴の吸引速度を2段階に加速させるために以下のように構成してもよい。すなわち、吸引経路を主経路と該主経路から2つに分岐した分岐経路とで構成し、主経路に介装され主経路内を流れる流体の流量を第1の流量に調整する第1流量調整弁と、2つの分岐経路の一方に介装され該分岐経路内を流れる流体の流量を第1の流量に比べて小さな第2の流量に調整する第2流量調整弁と、2つの分岐経路の他方に介装され該分岐経路の流路を開閉する開閉弁とを設けて、開閉弁を閉として第1処理液の液滴の吸引速度を第1速度に設定した後に、開閉弁を開として第1処理液の液滴の吸引速度を第1速度よりも高速の第2速度に吸引速度を切替えるようにしてもよい。
この構成によれば、開閉弁が閉とされることで液滴は第1流量調整弁と第2流量調整弁とを介して吸引される。ここで、第2流量調整弁は第1の流量に比べて小さな第2の流量に調整されているので、液滴の吸引速度は第2流量調整弁によって律速された第1速度に設定される。続いて、開閉弁が開とされることで液滴は第1流量調整弁とオープン状態とされた開閉弁が介装された分岐経路とを介して吸引される。つまり、液滴の吸引速度は第1流量調整弁によって律速された第1速度よりも高速の第2速度に設定される。そのため、開閉弁の切り替え操作により、容易に液滴の吸引速度を2段階に加速させることができる。しかも、第1流量調整弁および第2流量調整弁をそれぞれ調整することにより、2段階の各吸引速度を任意に設定することができる。
ここで、リンス工程の間に第1処理液を供給手段を介して吸引経路に供給することで吸引経路を第1処理液で満たすようにするのが望ましい。というのも、吸引開始前は前回の吸引動作によって吸引経路内は気体(空気)の状態となっているが、このような状態で吸引動作を開始すると、吸引経路内の気体が圧縮され体積変化を起こしてノズルや供給手段の内部に残留付着する液滴が急激な速度で吸引されてしまうこととなるからである。しかしながら、リンス処理が実行されている間に吸引経路に第1処理液を供給することで、吸引開始時には既に吸引経路内は液体(第1処理液)が充填された状態となっている。液体は気体と比較してほとんど圧縮によって体積変化を起こすことがないため、吸引開始段階においてノズルに残留付着する液滴が急激な速度で吸引されてしまうことがない。その結果、吸引開始段階において液滴の吸引速度を安定させることができ、つまり吸引開始直後から比較的低速に設定された第1速度に吸引速度を安定させた状態で液滴の吸引を実行することができ、基板の下面やノズル先端部に液滴が残留するのを確実に防止することができる。
この発明にかかる基板処理方法の他の態様は、基板を回転させながら基板の下面から離間して配置されたノズルに接続された供給手段を介してノズルに第1処理液を供給することでノズルの先端部より基板の下面に向けて第1処理液を吐出させて基板の下面全体に第1処理液を供給する第1工程と、第1工程後に供給手段を介してノズルに第2処理液を供給することでノズル先端部より基板の下面に向けて第2処理液を吐出させて基板の下面中央部とノズル先端部との間に液溜りを形成する第2工程と、その一方端が供給手段に接続された吸引経路に沿って、液溜りをノズル先端部より吸引して基板の下面中央部とノズル先端部との間から前記液溜りを除去する第3工程とを備え、第3工程は、液溜りの吸引速度を第1速度から該第1速度よりも高速の第2速度に少なくとも2段階に加速させながら液溜りを吸引している。
このように構成された発明では、第1処理液による処理(第1工程)が実行されると、基板の下面中央部に比較的大きな液滴が残留することとなる。すなわち、ウエハの下面中央部と下面周縁部とでは基板回転に伴う遠心力の作用が相違しており、ウエハの下面中央部に付着する液滴は比較的大きいサイズを有し、これらの液滴に対しては比較的小さな遠心力しか作用しないため、ウエハの下面中央部に残留することとなる。そこで、第1工程に続いてノズル先端部より基板の下面に向けて第2処理液が吐出されて基板の下面中央部とノズル先端部との間に液溜りが形成される(第2工程)。このとき、第1工程後に基板の下面中央部およびノズル先端部に残留する液滴は該液溜りに取り込まれる。そして、こうして残留液滴を含有する液溜りが吸引経路に沿って吸引されて基板の下面中央部とノズル先端部との間から除去される(第3工程)。
ここで、第3工程では、吸引初期段階は吸引速度が比較的低速に設定された第1速度で液溜りが吸引された後に、吸引速度が第1速度から比較的高速に設定された第2速度に少なくとも2段階に加速されて液溜りが吸引される。このため、吸引初期段階において基板の下面中央部とノズル先端部との間に形成された液溜りを静止状態から比較的ゆっくりと吸引して液溜りが分離するのを防止しながら、吸引途中段階から吸引速度を高めて液溜りを吸引することで装置のスループットを向上させることができる。
液溜りの吸引速度の切り替えタイミングとしては、第1速度でノズル先端部より液溜りを吸引して基板の下面中央部とノズル先端部との間から除去した後、吸引速度を加速させて少なくとも第1速度よりも高速の第2速度でノズル内部に取り込まれた液溜りを吸引するのが望ましい。このように液溜りの吸引速度を切り替えることによって、液溜りが基板の下面中央部とノズル先端部との間から除去されるまではゆっくりと吸引することで液溜りの分離による基板の下面あるいはノズル先端部への液滴の残留を確実に防止する一方で、ノズル内部に液溜りが取り込まれた後は液溜りの分離が問題とならない範囲で吸引速度を高めることで、液溜りの除去に要する時間を短縮してスループットを向上させることができる。
また、この発明にかかる基板処理装置の他の態様は、基板を回転させながら基板の下面から離間して配置されたノズルの先端部より基板の下面中央部に向けて第1処理液を吐出させて基板の下面全体に対して第1処理液によるリンス処理を施す基板処理装置であって、 第2処理液をノズルに導くことでリンス処理を受けた基板の下面に向けてノズル先端部より第2処理液を吐出させて基板の下面中央部とノズル先端部との間に液溜りを形成する供給手段と、その一方端が供給手段に接続された吸引経路に沿って液溜りをノズル先端部より吸引して基板の下面中央部とノズル先端部との間から液溜りを除去する吸引手段と、吸引経路上に配設され液溜りの吸引速度を設定する吸引速度設定手段と、吸引速度設定手段を制御することで液溜りの吸引速度を第1速度から該第1速度よりも高速の第2速度に少なくとも2段階に切替える制御手段とを備えている。
このように構成された発明では、供給手段がノズルに第2処理液を導くことで、既に所定の処理を受けた基板の下面中央部とノズル先端部との間に液溜りが形成される。こうして液溜りを形成する前、つまりリンス処理を受けた直後の基板では、その下面中央部に比較的大きな液滴が残留しているが、液溜り形成によって残留液滴が該液溜りに取り込まれる。また、吸引手段が該液溜りを第1速度から該第1速度よりも高速に第2速度に少なくとも吸引速度を2段階に加速させながら吸引して基板の下面中央部とノズル先端部との間から液溜りを除去する。このため、吸引初期段階において基板の下面中央部とノズル先端部との間に形成された液溜りを静止状態から比較的ゆっくりと吸引して液溜りが分離するのを防止しながら、吸引途中段階から吸引速度を高めて液溜りを吸引することで装置のスループットを向上させることができる。
ここで、液溜りの吸引速度を2段階に加速させるために以下のように構成してもよい。すなわち、吸引経路を主経路と該主経路から2つに分岐した分岐経路とで構成し、主経路に介装され主経路内を流れる流体の流量を第1の流量に調整する第1流量調整弁と、2つの分岐経路の一方に介装され該分岐経路内を流れる流体の流量を第1の流量に比べて小さな第2の流量に調整する第2流量調整弁と、2つの分岐経路の他方に介装され該分岐経路の流路を開閉する開閉弁とを設けて、開閉弁を閉として液溜りの吸引速度を第1速度に設定した状態で液溜りをノズル先端部より吸引して基板の下面中央部とノズル先端部との間から除去した後、開閉弁を開として液溜りの吸引速度を第1速度よりも高速の第2速度に設定した状態でノズル内部に取り込まれた液溜りを吸引するようにしてもよい。
この構成によれば、開閉弁の切り替え操作により、液溜りの吸引速度を第2流量調整弁によって律速された第1速度から第2流量調整弁によって律速された、第1速度よりも高速の第2速度へと容易に切り替えることができる。しかも、基板の下面中央部とノズル先端部との間から液溜りを除去するまでは開閉弁を閉状態として第1速度で比較的ゆっくりと吸引して液溜りの分離を防止する一方で、ノズル内部に吸引された後は開閉弁を開状態として液溜りの分離が問題とならない範囲で第1速度よりも高速の第2速度で吸引することで装置のスループットを向上させることができる。
ここでは、液溜りを形成するために用いる第2処理液の種類については任意であるが、第1処理液と同一成分の液体を第2処理液として用いたり、ノズルや配管等を洗浄する洗浄液を用いてもよい。特に前者の場合には、同一成分の液体により液溜りが形成されることとなるため、液溜りを良好に形成することができる。また、第1工程から第2工程に移行する際に液体の種類を切り換える必要がないため、上記移行をスムーズに行うことができ、吸引速度の加速と併せてさらにスループットを向上させることができるとともに、制御も容易なものとなる。また、後者の場合には、液溜り形成(第2工程)と液溜り除去(第3工程)とを実行することで残留液滴の除去作用以外に、ノズルや配管等の洗浄作用も同時に得られる。したがって、この洗浄作用によりノズルや配管等を清浄な状態に保つことができる。
また、第1工程の間に供給手段を介して第1処理液を吸引経路に供給することで吸引経路を第1処理液で満たすか、あるいは第2工程の間に供給手段を介して第2処理液を吸引経路に供給することで吸引経路を第2処理液で満たすようにすると、液溜りの吸引動作前に吸引経路が液体(処理液)によって満たされる。そのため、吸引開始段階においてノズルに残留付着する液滴が急激な速度で吸引されるということがない。その結果、吸引開始段階において液溜りの吸引速度を安定させることができ、基板の下面中央部およびノズル先端部での残留液滴が確実に除去される。
この発明によれば、ノズルと供給手段とに残留付着している処理液の液滴は、第1速度から該第1速度よりも高速の第2速度に少なくとも2段階に吸引速度が加速させながら吸引されることでノズルと供給手段とから除去される。このため、液滴の吸引量が多い吸引初期段階は比較的ゆっくりと液滴が吸引されることでノズルと供給手段とに液滴が残ってしまうのを防止することができる一方で、吸引途中段階から吸引速度を高めて液滴を吸引することで液滴の除去に要する時間を短縮して装置のスループットを向上させることができる。
図1は本発明にかかる基板処理装置の一実施形態を示す図である。この基板処理装置は、本発明の「基板」の一種である半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)Wの上面および下面に対して薬液を供給してエッチングなどの薬液処理を行い、また薬液処理後に純水やDIW(=deionized water)などのリンス液によるリンス処理を施した後にスピン乾燥する装置である。この基板処理装置では、中空の回転軸1が、モータ3の回転軸に連結されており、このモータ3の駆動により鉛直軸周りに回転可能となっている。この回転軸1の上端部には、円板状のスピンベース5が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。また、スピンベース5の周縁部付近には、ウエハWの外周端部に当接しつつウエハWを支持する支持ピン7が複数本設けられている。そして、複数本の支持ピン7によってウエハWの下面と対向するスピンベース5から所定の間隔離した状態でウエハWが水平に支持されている。このように、この実施形態ではスピンベース5と複数本の支持ピン7とでウエハ(基板)Wを支持する基板支持手段が構成されている。
スピンベース5の上方には、中心部に開口を有する雰囲気遮断部材9が配置されている。この雰囲気遮断部材9はウエハWの径より若干大きく、中空を有する筒状の支持軸11の下端部に一体回転可能に取り付けられている。この支持軸11には、図示を省略する遮断駆動機構が連結されており、遮断駆動機構のモータを駆動することにより支持軸11とともに雰囲気遮断部材9が鉛直軸J周りに回転されるように構成されている。また、遮断駆動機構の昇降駆動用アクチュエータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで雰囲気遮断部材9をスピンベース5に近接させたり、逆に離間させることが可能となっている。
また、支持軸11の中空部には、上部洗浄ノズル12が同軸に設けられ、その下端部のノズル口12aから支持ピン7によって支持されたウエハWの上面の回転中心付近に薬液、純水等の処理液(薬液やリンス液)を供給できるように構成されている。すなわち、この上部洗浄ノズル12は、開閉弁13を介して処理液供給源15に連通接続されており、装置全体を制御する制御部17による開閉弁13の開閉制御によって上部洗浄ノズル12からウエハWの上面に薬液やリンス液(純水やDIWなど)が供給される。
また、支持軸11の中空部の内壁面と、上部洗浄ノズル12の外壁面との間の隙間は、気体供給路18となっている。この気体供給路18は、開閉弁19を介して気体供給源21に連続接続されている。そして、上部洗浄ノズル12による薬液処理およびリンス処理を行った後、制御部17による開閉弁19の開閉制御によって気体供給路18を介してウエハWの上面に窒素ガス等の気体を供給することによって、ウエハWの乾燥処理を行うことが可能となっている。
また、スピンベース5の側方には、雰囲気遮断部材9とウエハWの上面との間やスピンベース5の上面とウエハWの下面との間にDIWを供給する側部洗浄ノズル23が備えられている。この側部洗浄ノズル23は、開閉弁25を介してDIW供給源27に連通接続されている。また、側部洗浄ノズル23には、上下昇降機構(図示省略)が連結されており、制御部17からの制御指令に応じて該ノズル23を鉛直方向に位置決め可能となっている。そして、制御部17により側部洗浄ノズル23の高さ位置を制御しつつ開閉弁25の開閉タイミングを調整することで、側部洗浄ノズル23からDIWが、雰囲気遮断部材9とウエハWの上面との間の空間を通過して雰囲気遮断部材9の下面へ供給されたり、スピンベース5の対向面とウエハWの下面との間の空間を通過してスピンベース5の対向面へ供給される。
回転軸1の中空部には、本発明の「ノズル」に相当する下部洗浄ノズル29が同軸に設けられている。この下部洗浄ノズル29には、供給・吸引機構33が接続されている。また、回転軸1の内壁面と下部洗浄ノズル29の外壁面との間の隙間には、円筒状の気体供給路59が形成されており、この気体供給路59の先端部は気体噴出口61として機能し、気体噴出口61からウエハWの下面とスピンベース5の対向面との間の空間に窒素ガス等の気体が供給される。なお、気体噴出口61は、制御部17により開閉制御される開閉弁63と流量調節弁65とを介して気体供給源67に連通接続されている。
図2は下部洗浄ノズルの上端部を示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は断面図である。下部洗浄ノズル29の先端部には、ノズル本体29aの先端に平板状の遮断部材30が取り付けられており、その上面30aが支持ピン7によって支持されたウエハWの下面に平行して対向している。また、この遮断部材30では、その略中央部に吐出口30bが設けられて該吐出口30bを介してウエハWの下面に向けて薬液やリンス液などの処理液を吐出可能となっている。一方、吐出口30bを取り囲む円環部位が気体噴出口61の上方を覆っている。このため、気体噴出口61から噴出された気体は遮断部材30の下面とスピンベース5の対向面との隙間から、ウエハWの下面とスピンベース5の対向面との間の空間に供給される。なお、遮断部材30の平面サイズDについては任意であるが、上記したように気体噴出口61を塞ぐ程度に設定したり、また該平面サイズDをさらに広げて回転軸1とスピンベース5とを連結するために両者の連結部に締結された締結部品を覆うように構成してもよい。このように締結部品を覆うためには、平面サイズDを例えば50mm以上設定すればよく、これによって締結部品の部位、例えばネジ溝などに薬液やリンス液が入り込むのを効果的に防止することができる。また、この平面サイズDが大きくなるにしたがって液溜りが大型化し、後述するようにしてウエハWの下面中央部および下部洗浄ノズル29からの液滴を除去するのに要する時間が長くなる。また、ウエハWの搬送の際に、ウエハ搬送機構と干渉するという問題が生じる。したがって、これらの点を考慮すると、平面サイズDを例えば120mm以下に設定するのが望ましい。
次に、供給・吸引機構33について図3を参照して説明する。図3は供給・吸引機構の概略構成を示すブロック図である。この供給・吸引機構33は大きく2つの機能、つまり(1)下部洗浄ノズル29に対して薬液やリンス液を供給する機能と、(2)下部洗浄ノズル29を介して後述するようにしてウエハWの下面中央部と遮断部材30との間に形成される液溜りを吸引除去する機能とを兼ね備えている。
まず、供給機能について説明する。この供給・吸引機構33では、薬液供給源からの薬液およびDIW供給源からのDIWを下部洗浄ノズル29に導くための処理液供給部43が本発明の「供給手段」として設けられている。この処理液供給部43の一端側は下部洗浄ノズル29の後端部に接続される一方、処理液供給部43の他端側は開閉弁81を介して吸引配管82に接続されている。また、処理液供給部43の他端側であって開閉弁81に対してノズル側には、開閉弁51を介装した配管31の一端が接続されるとともに、この配管31の他方端側は第1のDIW供給源35と連通接続されている。
この配管31には、第1のDIW供給源35からのDIWの流量を調整するために圧力調節器37が設けられている。また、この圧力調節器37の下流側の配管31には、第1のDIW供給源35からのDIWの供給量を計測する流量計39が設けられている。この流量計39で計測された供給量と予め設定されている供給量(第1の供給量SV1)との差分を制御部17が求め、この差分に基づく指令電圧に基づいて電空変換器41が圧力調節器37への空気圧を調整する。
また、処理液供給部43は、下部洗浄ノズル29に接続された一端側(ノズル側)から他方端側にかけて、処理液供給部43への各流体の導入量を各々独立に調整することができるようにするために開閉弁と流量調節弁との機能を備え3つの導入弁45,47,49と接続されている。第1の導入弁45は、第1の薬液供給源53に連通されており、処理液供給部43に対する第1の薬液の導入量を調整し、第2の導入弁47は、第2の薬液供給源55に連通されており、処理液供給部43に対する第2の薬液の導入量を調整する。また、第3の導入弁49は、第2のDIW供給源57に連通されており、処理液供給部43に対するDIWの導入量を調整する。第1の薬液と第2の薬液は、例えばエッチング液であってもよく、互いに種類が異なるものとすることができる。なお、開閉弁51,81と導入弁45,47,49の開閉制御は、すべて制御部17によって統括的に制御される。
このような構成により、ウエハWの下面を薬液処理する際には、制御部17は導入弁45,47を調整して所要量の第1または第2の薬液を処理液供給部43へ導入する。すなわち、導入弁47,49と開閉弁51とを閉じて導入弁45を開くことにより、第1の薬液を処理液供給部43に導入することができる。また、導入弁45,49と開閉弁51とを閉じて導入弁47を開くことにより、第2の薬液を処理液供給部43に導入することができる。一方で、ウエハWの下面をリンス処理する際には、制御部17は開閉弁51を開放し、電空変換器41を介して圧力調節器37により第1の供給量SV1になるように調整されて第1のDIW供給源35からのDIWを処理液供給部43へ導入するとともに、導入弁49により第1の供給量SV1よりも少ない第2の供給量SV2になるように調整されて第2のDIW供給源57からのDIWを処理液供給部43へ導入する。したがって、第1の供給量SV1と第2の供給量SV2とを合わせた大流量のDIWがウエハWの下面へ供給される。
次に、吸引機能について説明する。上記したように処理液供給部43の他端側は開閉弁81を介して吸引配管82(本発明の「吸引経路」に相当)の一端と接続されている。この吸引配管82の他端には、本発明の「吸引手段」として機能するディフューザ式のコンバム83が接続されている。コンバム83は、図示省略する圧縮空気供給源(工場内の加圧エア配管やコンプレッサ)に接続され、圧縮空気供給源からコンバム83に圧縮空気を供給することで、吸引配管82内を負圧にして吸引を実行可能としている。このため、コンバム83を作動させるとともに、薬液およびDIWの供給を停止した状態で開閉弁81を開くことによって下部洗浄ノズル29や処理液供給部43の内部の液体成分のみならず、後述するように形成される液溜りについても吸引して除去することが可能となっている。また、コンバム83によって吸引された液はコンバム83の下流側のドレインに排液される。なお、「吸引手段」はコンバムに限らず、アスピレータや真空ポンプ等を用いてもよい。
吸引配管82は主配管82a(本発明の「主経路」に相当)と該主配管82aから2つに分岐した分岐配管82b,82c(本発明の「分岐経路」に相当)とから構成されている。液溜りの吸引速度を設定するために、主配管82aにニードル弁84が介装される一方で、一方の分岐配管82bにニードル弁85が介装されている。これらニードル弁84,85は吸引配管82内を流れる流体の流量を調整するための弁であり、ニードル弁84が主配管82a内を流れる流量を第1の流量FV1に調整するように設定される一方で、ニードル弁85が分岐配管82b内を流れる流量を第1の流量FV1よりも小さな第2の流量FV2に調整するように設定されている。また、他方の分岐配管82cには制御部17によって開閉制御される開閉弁(エア弁)86が介装されている。このように、この実施形態では、ニードル弁84,85がそれぞれ、本発明の「第1流量調整弁」、「第2流量調整弁」として機能している。
このような構成により、開閉弁86を開閉制御することで液溜りの吸引速度を2段階に設定することが可能となっている。つまり、開閉弁86を閉止した状態で、コンバム83を作動させると、液溜りはニードル弁84とニードル弁85とを介して吸引される。ニードル弁85は第1の流量FV1に比べて小さな第2の流量FV2に調整されているので、液溜りの吸引速度はニードル弁85によって律速された比較的低速の第1速度V1に設定される。一方、コンバム83を作動させながら開閉弁86を開放すると、液溜りはニードル弁84とオープン状態とされた開閉弁86が介装された分岐経路82cとを介して吸引される。つまり、液溜りの吸引速度はニードル弁84によって律速された第1速度よりも高速の第2速度V2に設定される。
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図4および図7を参照しつつ詳述する。図4は図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。また、図5ないし図7は図1の基板処理装置の動作を模式的に示す図である。詳しくは、図5ないし図7はウエハWの下面側に対する処理動作を示している。この基板処理装置では、図示を省略する基板搬送ロボットにより未処理のウエハWが基板処理装置に搬送され、支持ピン7上に載置されると、制御部17が装置各部を以下のように制御して薬液処理、リンス処理、液溜り形成処理、液溜り除去処理および乾燥処理を実行する。なお、基板搬送ロボットによるウエハWの搬送を行う際には、雰囲気遮断部材9、支持軸11および上部洗浄ノズル12は一体的にスピンベース5の上方に離間退避している。また、すべての導入弁45,47,49および開閉弁51,81,86は閉じた状態とされている。
上記のようにしてウエハWが支持ピン7にセットされると、雰囲気遮断部材9、支持軸11および上部洗浄ノズル12が一体的に降下して雰囲気遮断部材9がウエハWに近接配置される。それに続いて、モータ3が回転してウエハWを第1の回転数で回転させる。このとき、図示を省略する遮断駆動機構のモータを駆動することにより支持軸11とともに雰囲気遮断部材9を鉛直軸J周りに回転する。そして、ウエハWの第1の回転数での回転開始とともに、図5(a)に示すように、制御部17は導入弁45を開いて所定量の薬液を第1の薬液供給源53から処理液供給部43へ導入し、第1の薬液が下部洗浄ノズル29の吐出口30bからウエハWの下面へ供給され、ウエハWの下面が薬液により薬液処理される(ステップS1)。第1の薬液がエッチング液であるときは、ウエハWの上面周縁部に第1の薬液を回り込ませてエッチングするベベルエッチングを行うようにしてもよい。
このとき、ウエハWの外周部に達した第1の薬液は、回転しているウエハWの遠心力により側方に振り切りられ、図示省略する回収ポートにより回収される。一定時間、第1の薬液によるウエハWの処理が継続された後、制御部17の制御により導入弁45が閉じられ、第1の薬液の吐出が停止される。なお、処理対象となるウエハWの種類によっては、第1の薬液の代わりに、第2の薬液によりウエハWの下面が処理される。その場合は、第1の薬液を回収する回収ポートとは別の回収ポートにより第2の薬液が回収される。
続いて、制御部17は以下のようにしてDIWをリンス液として用いてリンス処理を実行する(ステップS2−1;第1工程)。すなわち、制御部17はウエハWを回転させたまま開閉弁51を開放し、電空変換器41を介して圧力調節器37により第1の供給量SV1となるように調整されたDIWを第1のDIW供給源35から処理液供給部43へ導入するとともに、導入弁49により第2の供給量SV2となるように調整されたDIWを第2のDIW供給源57から処理液供給部43へ導入する(図5(b))。これにより、第1の供給量SV1と第2の供給量SV2とを合わせた大流量のDIWが下部洗浄ノズル29からウエハWの下面に供給され、薬液に触れていたウエハWの下面へのDIWによる洗浄、つまり前リンス処理が行われる。なお、この時点では、下部洗浄ノズル29の遮断部材30やスピンベース5の対向面には、薬液の液滴が一部付着した状態のままである。
また、DIWによるウエハ下面の前リンス処理と並行して、雰囲気遮断部材9を洗浄するために、制御部17は開閉弁13を開放し、処理液供給源15から上部洗浄ノズル12を介して、ウエハWの上面にDIWの供給を開始してウエハWの上面にDIW保護膜を形成する。さらに、この保護膜を形成したまま、制御部17は開閉弁25を開放してDIW供給源27から側部洗浄ノズル23を介して雰囲気遮断部材9とウエハWの上面との間の空間にDIWの供給を開始する。これにより、ウエハWの上面を保護しながら雰囲気遮断部材9を洗浄することができる。
これに続いて、制御部17は、側部洗浄ノズル23をウエハWとスピンベース5との間まで降下させる。これにより、雰囲気遮断部材9へのDIW供給が停止されて雰囲気遮断部材9の乾燥が実行される一方、側部洗浄ノズル23からのDIW供給先がウエハWの下面とスピンベース5の対向面との間の空間となり、同空間に位置する支持ピン7およびスピンベース5の対向面が洗浄される。
また、制御部17は、ウエハWを再び第1の回転数で回転させるとともに、導入弁49と開閉弁51とを開放し、高速回転されているウエハWの下面には下部洗浄ノズル29からDIWがリンス液として大流量で供給される。そのため、上述した前リンス処理と同様に、再びウエハWの下面がDIWで洗浄される。また、制御部17は開閉弁13を開放し、処理液供給源15から上部洗浄ノズル12を介して、ウエハWの上面にDIWを供給する。こうして、ウエハW全体にDIWを供給してラストリンス処理を実行する。
また、図5(c)に示すように、上記したリンス処理の実行中、制御部17はコンバム83を作動させて吸引配管31内を負圧にするとともに、開閉弁81を開放して吸引配管82内に処理液供給部43に供給されているDIWの一部を吸引配管82内に導く(ステップS2−2)。これにより、気体(空気)によって満たされていた吸引配管82内が液体(DIW)によって置き換えられる。すなわち、1つ前のウエハWの処理において、後述する液溜りの吸引動作により、下部洗浄ノズル29や処理液供給部43に液滴が残らないだけの十分な時間をかけて吸引されることで吸引配管82内は気体となっているが、処理液供給部43に供給されているDIWの一部が導かれることで吸引配管82内は気体に代えてDIWで充填される。そして、吸引配管82の内部、詳しくは主配管82a、分岐配管82bおよび82cの内部がDIWによって満たされると、制御部17は開閉弁81を閉じる。なお、吸引配管82内をDIWで満たすことの作用効果については後述する。
ここではウエハWを回転させながらリンス処理を行っているため、リンス液の多くはウエハWから振り切られるのだが、リンス液の一部がウエハWの下面や下部洗浄ノズル29の先端部に液滴状に残留してしまう。しかも、ウエハの下面中央部と下面周縁部とでは基板回転に伴う遠心力の作用が相違しており、ウエハの下面中央部に付着する液滴は比較的大きいサイズを有し、これらの液滴に対しては比較的小さな遠心力しか作用しないため、残留液滴のうちウエハWの下面中央部やノズル先端部に比較的大きな液滴が残留し、これらの残留液滴Lがウォータマークやパーティクルの発生要因のひとつとなってしまう。
また、下部洗浄ノズル29や処理液供給部43の内部にも液滴Lが残留している。このようにノズル29や処理液供給部43の内部にリンス液の液滴Lが残留していると、次のウエハWを薬液処理する際に処理液供給部43を介して薬液を下部洗浄ノズル29から吐出させる際に、薬液とともにリンス液の液滴が吐出されてしまい、これを回収すると薬液濃度が変化してエッチングレートの変動を起こしてしまう。そのため、薬液のみを回収してランニングコストを低下させたいという要望があるにもかかわらず、薬液を当初から回収することができず、薬液回収率を低下させることとなる(図6(a)参照)。
そこで、液溜り形成処理(第2工程)および液溜り除去処理(第3工程)を実行することで上記液滴Lを除去している。より具体的には、ステップS3で制御部17は本発明の「第2処理液」および「ノズル洗浄液」としてのDIWの流量およびウエハ回転数を液溜りの形成に適した条件に設定する。ここで、DIWの流量と回転数とを例えば以下のように設定することができる、
DIWの流量:1000cm3/min以下
ウエハ回転数:200rpm以下
また、
DIWの流量:400cm3/min以下
ウエハ回転数:0〜50rpm
に設定するのがより好ましい。
このような条件下で、導入弁49により流量調整されたDIWが第2のDIW供給源57から処理液供給部43へ注入され、下部洗浄ノズル29の吐出口30bからウエハWの下面に向けて吐出される。また、モータ3を回転制御してウエハWを液溜り形成に適したウエハ回転数に設定することで、ウエハWの下面と遮断部材30の上面30aの全面との間でノズル洗浄液(DIW)の液溜りPを形成する(ステップS3)。
このようなノズル洗浄液の流量およびウエハ回転数を設定することで液溜りP(図6(b))が形成されてリンス処理(第1工程)直後にウエハWの下面中央部およびノズル29の先端部に残留する液滴Lが該液溜りPに取り込まれる。また、遮断部材30の上面30aの全面にノズル洗浄液としてDIWが供給されてノズル洗浄が確実に行われる。なお、液溜りPが形成された後も所定時間だけ上記設定条件を維持してノズル洗浄を確実に行うようにしてもよいし、液溜りPが形成された直後に次の液溜り除去を行うようにしてもよい。
次のステップS4では、制御部17は導入弁49を閉止して下部洗浄ノズル29へのDIWの供給を停止するとともに、その停止状態で開閉弁86を閉止した状態で開閉弁81を開く(図6(c))。これによって下部洗浄ノズル29や処理液供給部43の内部の液体成分および液溜りPが吐出口30bより、ニードル弁84を介装した主配管82aとニードル弁85を介装した分岐配管82bとを介して吸引され、ウエハWの下面中央部と遮断部材30の上面30aの全面との間に存在していた液溜りPが除去される。ここで、ニードル弁85は第1の流量FV1に比べて小さな第2の流量FV2に調整されているので液溜りPの吸引速度はニードル弁85によって律速され、液溜りPは比較的低速に設定された第1速度V1で吸引される。
このとき、吸引速度が高速に設定されると、吸引処理中に液溜りPの一部が分離し、部分的に残存する可能性があるため、液溜りPの液体成分を考慮して第1速度V1を設定するのが望ましい。すなわち、液溜りPの吸引速度が速すぎると、液の表面張力(液体の凝集力)で液滴の塊として液を吸引していくという動作をさせているために、液の表面張力よりも大きな吸引圧となるような吸引速度で動作させると、液滴の塊としての液溜りPが崩れ、ウエハWの下面や下部洗浄ノズル29に液滴が残ってしまう。したがって、吸引処理の前半における液溜りPの吸引速度、つまり第1速度は液の表面張力以下の吸引圧となるような吸引速度とする必要がある。なお、このような液の表面張力と吸引圧とがほぼ同一となる吸引速度については、ウエハWの膜種ならびに遮断部材30の材質、遮断部材30の平面サイズDおよびリンス液(第1処理液)やノズル洗浄液(第2処理液)の種類などの要因により相互に異なるものであるが、実験あるいはこれらの要因に基づく数値解析によって求めることができる。
また、この実施形態では、吸引配管82内は先のリンス処理の間にDIWによって満たされているので、吸引初期段階において次のような理由から低速に安定した速度で吸引させることができる。すなわち、吸引配管82内が気体であると、開閉弁81を開放した途端に吸引配管82内の気体が圧縮され体積変化を起こして液溜りPが急激な速度で吸引されてしまう。その結果、吸引開始時の液溜りPの吸引速度が速くなりすぎて、ウエハWの下面や遮断部材30の上面30aに液滴が残留することとなる。しかしながら、この実施形態では、吸引開始時に吸引配管82内は液体(DIW)によって満たされており、気体と違って吸引配管82内の液体は圧縮によってほとんど体積変化を起こすことがない。そのため、吸引初期段階において液溜りPが急激な速度で吸引されることがなく、吸引速度を低速に安定した状態で液溜りPを吸引することができる。その結果、液溜りPが分離してウエハWの下面や遮断部材30の上面30aに液滴が残留するのが防止される。
また、この実施形態では、ニードル弁84,85で吸引配管82内を流れる流体の流量を調整することにより液溜りPの吸引速度を設定している。ここで、ニードル弁84,85のニードル部分、つまり流体の流路を狭めることによって流量を調整する部分に液体と気体とが混在して流れると、液溜りの吸引速度が乱れ安定させることができなくなる。しかしながら、この実施形態では、図8に示すように、リンス処理中に吸引配管82内をDIWで満たすことで、吸引開始時にはニードル弁84,85のニードル部分NP(流体通過部分)は液体(DIW)で満たされている。そのため、吸引初期段階においてニードル弁84,85を通過する流体が液体のみになるために、当該ニードル部分NPに気体と液体(液滴)が混在して通過することがなく、液溜りPの吸引速度が乱れるようなことがない。その結果、吸引初期段階において液溜りPの吸引速度を安定させることができる。
このように吸引除去の初期段階においては、低速度(第1速度V1)で安定した吸引速度で液溜りPを吸引することにより液溜りPの一部が分離してウエハWの下面や遮断部材30の上面30aに残存するのを確実に防止することができる。
続いて、ウエハWの下面と遮断部材30の上面30aとから液溜りPが吸引されノズル本体29a内部に取り込まれると、図1に示す開閉弁19により適宜の流量に調整した不活性ガスを気体供給源21から気体供給路18を通ってウエハWの上面へ向けて供給するとともに、開閉弁63を開放し、さらに流量調節弁65により適宜の流量に調整した不活性ガスを気体供給源67から気体供給路59を通って、気体噴出口61からウエハWの下面へ向けて供給する。そして、モータ3の回転を第1の回転数からさらに高速の回転数に設定する。これにより、ウエハWは第1の回転数よりも高速で回転されながら、不活性ガスがウエハWの上下面へ供給され、ウエハWの乾燥処理が行われる(ステップS5−1)。
また、ウエハWの下面と遮断部材30の上面30aとから液溜りPが吸引されノズル本体29a内部に取り込まれると、制御部17は開閉弁86を開放する。これにより、ノズル本体29a内部に取り込まれた液溜りは、ニードル弁84とオープン状態とされた開閉弁86が介装された分岐配管82cとを介して吸引される(ステップS5−2)。つまり、液溜りPの吸引速度はニードル弁84によって律速された第1速度V1よりも高速の第2速度V2に切り換えられる(図7(a))。ノズル配管内を吸引する際には、液溜りPの分離を考慮する必要がないため、このように処理の途中より吸引速度を高めることで吸引処理にかかる時間を短縮してスループットの向上を図っている。そして、それ以降、高速度(第2速度V2)で吸引処理が実行される(図7(b))。なお、制御部17は、所定時間経過後、開閉弁81を閉止して吐出口30bからの吸引を停止させる。
このように、吸引処理の後半において吸引速度を高めているのでウエハWの乾燥処理中に吸引処理を完了させることができる。そして、ステップS5−1の乾燥処理が終了した後、制御部17はモータ3の駆動停止をモータ3に出力してウエハWの回転も停止する(図7(c))。これにより、一連の洗浄処理、リンス処理、液溜り形成処理、液溜り除去処理及び乾燥処理の動作が完了する。
以上のように、この実施形態によれば、液溜りPは、その吸引速度が第1速度V1から第1速度よりも高速の第2速度V2に2段階に加速されながら吸引除去される。このため、吸引初期段階においてウエハWの下面と遮断部材30の上面30aとの間に形成された液溜りを静止状態から比較的ゆっくりと吸引して液溜りが分離するのを防止しながら、吸引途中段階から吸引速度を高めて液溜りを吸引することで装置のスループットを向上させることができる。
特に、この実施形態によれば、第1速度V1で吐出口30bを介してウエハWの下面と遮断部材30の上面30aとの間から液溜りPを除去した後に、第1速度V1から第2速度V2に加速させてノズル本体29a内部に取り込まれた液溜りを吸引しているので、ウエハWの下面や遮断部材30の上面30aに液滴が残留するのを確実に防止しながら液溜りの除去に要する時間を短縮してスループットを向上させることができる。すなわち、液溜りPがウエハWの下面と遮断部材30の上面30aとの間から除去されるまではゆっくりと吸引することで液溜りの分離によるウエハWの下面あるいは遮断部材30の上面30aへの液滴の残留を確実に防止する一方で、ノズル内部に液溜りが取り込まれた後は液溜りの分離が問題とならない範囲で吸引速度を高めることで、スピン乾燥中に吸引処理を完了させることができ、装置のスループットを向上させている。
このように、スピン乾燥中に吸引処理を完了させつつ、吸引初期段階における液溜りPの吸引速度を低速にすることができるので、下部洗浄ノズル29や処理液供給部43にリンス液の液滴が残るのを防止することができる。その結果、薬液吐出の際にリンス液の液滴が吐出されるのが防止され、薬液回収率を向上させて薬液消費量を低減することができる。また、下部洗浄ノズル29付近に液滴が残るのが防止されることで、スピン乾燥時にウォータマークの発生やパーティクルの付着などを効果的に抑制することができる。
また、この実施形態によれば、開閉弁86を閉じることで液溜りはニードル弁84と、85を介して吸引される一方、開閉弁86を開くことで液溜りはニードル弁84のみを介して吸引される。ニードル弁85はニードル弁84に比較して通過可能な流体の流量が小さく調整されているので、開閉弁86の切り替え操作により、容易に液溜りの吸引速度を2段階に加速させることができる。つまり、ニードル弁単体では初期設定値としてコンバム83などの吸引手段による吸引速度を一種類しか設定できなかったが、本発明による構成によれば、開閉弁86の切り替え操作を行うことのみで、吸引速度を2段階に容易に、しかも迅速に加速させることが可能となっている。しかも、2つのニードル弁84,85のそれぞれの通過可能な流体の流量を調整することにより、2段階の各吸引速度を任意に設定することができる。
また、この実施形態によれば、リンス処理が行われている間に吸引配管82にDIWを供給することで、液溜りPの吸引開始時には吸引配管82内を液体(DIW)で満たした状態としている。液体は気体と比較して圧縮によってほとんど体積変化を起こすことがないため、吸引初期段階において液溜りPが急激な速度で吸引されるということがない。これにより、吸引初期段階において液溜りPの吸引速度を安定させることができる。その結果、吸引開始直後から比較的低速に設定された第1速度V1に吸引速度を安定させた状態で液溜りPの吸引を実行することができ、ウエハWの下面や遮断部材30の上面30aに液滴が残留するのを確実に防止することができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、液溜りの吸引速度を第1速度V1から該第1速度よりも高速の第2速度V2へ2段階に加速させているが、吸引速度の加速の態様はこれに限定されない。例えば、第1速度V1から第2速度V2を含む多段階に吸引速度を段階的に加速させたり、第1速度V1から第2速度V2を含むかたちで連続的に吸引速度を加速させるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、開閉弁86を開くことで通過可能な流量が第1の流量FV1に調整されたニードル弁84と、通過可能な流量が第1の流量FV1よりも少ない第2の流量FV2に調整されたニードル弁85との双方を介して液溜りを吸引する一方、開閉弁86を閉じることでニードル弁84のみを介して液溜りを吸引している。つまり、通過可能な流体の流量が互いに異なる2つのニードル弁84,85を用いて開閉弁86の切り替え操作を行うことにより、液溜りの吸引速度を2段階に加速させているが、吸引速度の加速方法はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、通過可能な流体の流量が所定の流量に調整されたニードル弁87を1つだけ、処理液供給部43とコンバム83とを連通する1本の吸引配管88に介装して、コンバム83の吸引圧を可変させることで液溜りの吸引速度を加速させるようにしてもよい。コンバム83の吸引圧を可変させるには、例えばコンバム83と圧縮空気供給源89(工場内の加圧エア配管やコンプレッサ)との間にMFC(マスフローコントローラ)91等の流量調整手段を介装してコンバム83に供給される圧縮空気の流量をMFC91によって制御すればよい。これにより、コンバム83の吸引圧を可変して、液溜りの吸引速度を任意の態様で、すなわち段階的にあるいは連続的に加速させることができる。
また、上記実施形態では、第1処理液によるリンス処理(第1工程)の間に吸引配管82に第1処理液を供給することで該吸引配管82内を液体(第1処理液)で満たしているが、第2処理液による液溜りの形成(第2工程)の際に、吸引配管82に第2処理液を供給することで該吸引配管82内を液体(第2処理液)で満たすようにしてもよい。要は、吸引開始時点において吸引配管82内が液体で満たされるようにすればよい。
また、上記実施形態では、第1処理液および第2処理液としてDIWを用いて、DIWを吸引配管82に供給して該吸引配管82内をDIWにより満たしているが、第1処理液および第2処理液の種類については任意である。したがって、液溜りを形成するために用いる第2処理液は第1処理液と同一成分である必要はないが、残留液滴Lを液溜りPに確実に取り込むためには、リンス処理によりウエハWの下面やノズル先端部に付着しているリンス液(第1処理液)と相溶性を有する液体を用いるのが望ましく、上記実施形態では同一のリンス液を第2処理液として用いている。このため、残留液滴Lを取り込んで液溜りPを良好に形成することができる。また、リンス処理に用いる液体、液溜りを形成する液体および吸引配管82を満たす液体の種類を切り換える必要がないため、液体の導入をスムーズに行うことができ、スループットを向上させることができるとともに、制御も容易なものとなる。なお、リンス液はノズルや配管等の洗浄作用も有するため、上記実施形態では残留液滴Lの除去と同時にノズルや配管等の洗浄が実行されている。したがって、ノズルや配管等を清浄な状態に保ちながらも、スループットの低減を防止することなく、洗浄処理から乾燥処理までの一連の基板処理を良好に行うことができる。
また、上記実施形態では、ノズル先端部においてウエハWの下面と対向する対向面(遮断部材30の上面30a)を有するノズル、いわゆる傘型ノズルからウエハWの下面中央部にウエハ洗浄液、リンス液やノズル洗浄液などを吐出する基板処理装置に対して本発明を適用している。しかしながら、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、任意のノズル形態の基板処理装置に対して本発明を適用できる。例えば上記実施形態では、遮断部材の上面がウエハの下面に平行して対向しているが、略中央部の吐出口に向かってすり鉢状に下方に向かって傾斜していてもよい。こうすることで液溜りの吸引除去がよりスムーズとなる。
また、上記実施形態では、リンス処理後に液溜りPを形成して該液溜りPを吸引除去するようにしているが、液溜りPの形成は必須でなく、リンス処理後にノズルや該ノズルに接続された処理液供給部(供給手段)に残留付着するリンス液の液滴を吸引するようにしてもよい。この場合においても、吸引速度が比較的低速に設定された第1速度V1でノズルや処理液供給部に残留付着する液滴が吸引された後に、吸引速度が第1速度から比較的高速に設定された第2速度V2に少なくとも2段階に加速されて液滴が吸引される。このため、液滴の吸引量が多い吸引初期段階は比較的ゆっくりと液滴が吸引されることでノズルと処理液供給部とに液滴が吸引されずに残ってしまうのを防止することができる一方で、吸引途中段階から吸引速度を高めて液滴を吸引することで液滴の除去に要する時間を短縮して装置のスループットを向上させることができる。