JP2006277918A - 光情報記録媒体、並びにそれを用いた再生方法及び光情報処理装置 - Google Patents

光情報記録媒体、並びにそれを用いた再生方法及び光情報処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高密度に情報が記録されていても精度よく確実安定な再生が可能な、光情報記録媒体、ならびにそれを用いた再生方法及び光情報処理装置を提供する。
【解決手段】記録情報に対応した凹凸形状のピット及び/または溝が形成された基板12を備え、光ビームの照射によって上記情報を光学的に再生するための光情報記録媒体1、2あるいは記録層を備える光情報記録媒体3において、光ビーム照射による温度上昇に応じて光学特性が変化する超解像再生膜13を設ける。この光学特性は、超解像再生膜の温度変化に依存して可逆的に変化する。
【選択図】図3

Description

本発明は、光情報記録媒体、並びにそれを用いた再生方法及び光情報処理装置に関するものである。より詳細には、本発明は、例えば、レーザービーム等の光ビームにより、光学的に情報を再生あるいは記録・再生する光ディスク等の光情報記録媒体において、温度に対応して光学特性が変化する層を設けることによって記録密度を向上させた光情報記録媒体並びにそれを用いた再生方法及び光情報処理装置に関するものである。
情報化社会のデジタル化の発展に伴い、書き込み可能な媒体において、高密度での記録再生が望まれている。
そこで、記録容量を向上させるために、いわゆる書き込み可能な光情報記録媒体として、種々の媒体構成が試みられているとともに、高密度での記録再生を実現するために、例えば、
i)記録再生用のレーザ光の波長を短くすること、
ii)光情報記録媒体に集光する対物レンズNA(開口度)を大きくすること、
iii) 光情報記録媒体の記録層を多層にすること、
iv)光情報記録媒体に、本来のスポットサイズの光の一部を遮断するマスク層(光シャッタ層とも呼ばれる)を形成してレーザ光の光スポット径を実質的に小さくすること、
等の方法が試みられている。
媒体側での従来の提案のうち、iv)のように光の一部を遮断して開口を小さくして解像度を上げるという発想では、微小化した記録ビットからの信号強度が小さくなり、ノイズの影響が大きくなってくる。
そのため、近年、iv)から派生したものとして、
v)非線形光学特性を利用して超解像再生効果を得る超解像膜、
vi)光照射で局所プラズモン散乱を起こし、伝播光よりも短い波長の近接場光を発生させて解像度を上げるマスク層、
などの提案がなされている。これらは、上述した単に光を遮る開口では説明できず、むしろ光を利用しながら、光そのものの性質や膜特性を変化させて新たな作用を図るものである。それゆえ、上記iv)、v)、及び、vi)を換言すれば、iv)は「開口型」と表現できるのに対して、v)及びvi)は「非開口型」と表現できる。
従来、iv)の「開口型」が提案されてきたが、昨今は、より高い効果を得るために、v)及びvi)の「非開口型」の提案が活発である。上記iv)、v)、及びvi)それぞれの例としては、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に、それぞれ記載されている。
特許文献1には、ピットが形成された透明基板上に、溶融後結晶化しうる相変化材料層が形成され、この相変化材料層が読み出し光のスポット内で部分的に溶融液相化し、読み出し光の反射率が変化することで超解像再生を行い、読み出し後には相変化材料層が結晶状態に戻る超解像再生方式が開示されている。
また、特許文献2には、記録材料の反射率変化を用いて情報の記録再生を行う光ディスク装置において、信号が記録されている記録層の下(ディスク面における対物レンズからレーザ光が出射される側)に、保護層を介して超解像膜が設けられている光ディスク装置が開示されている。そして、この超解像膜は微結晶の化合物半導体からなり、再生光学系の再生波長に近い吸収端を持っている。さらに、超解像膜が特殊な結晶配向をすることで、再生光に対する非線形光学特性を生じ超解像効果を得ることが開示されている。また、記録情報に対応した凹凸形状を持つ基板に、同様の超解像膜が設けられ、同様に再生光に対する非線形光学特性を生じ超解像効果を得ることが開示されている。
また、特許文献3には、近接場効果を有する酸化亜鉛ナノ薄膜を用いた再生専用型光ディスクが開示されている。
特開平5−89511号公報(平成5年4月9日公開) WO2002/058060号パンフレット(平成14年7月25日国際公開) 特開2004−14093号公報(平成16年1月15日公開)
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示されている技術では、以下の問題が生じる。
すなわち、特許文献1に記載の、マスク層(光シャッタ層)を形成する相変化材料等の物質は、ある一定以上の温度に昇温したときに融解することでマスク効果を発揮するものである。融解した状態の物質は、流動性が高くなり、初期状態の組成や形状が変化しやすい。このため、ある一定以上の温度に昇温したときにマスク効果を発揮するマスク層を持つ光情報記録媒体では、繰り返し記録や再生を行うと、マスク層の組成や形状のずれによりマスク効果が徐々に小さくなり、数千回程度の繰り返しによりマスク効果がほとんどなくなるという問題がある。したがって、上記特許文献1に記載の光情報記録媒体は、耐久性や安定性、信頼性の点で不充分である。
また、従来、特許文献1に記載の相変化材料に特性が類似した材料として、サーモクロミズム物質が提案されている。サーモクロミズム物質とは、熱を吸収することにより、化学的に構造変化を起こし、透過率が変化する物質である。温度変化により透過率が変化するサーモクロミズム物質として、具体的には、ラクトンやフルオラン等にアルカリを加えたもの、ロイコ(leuco)色素等に有機酸を加えたもの等の有機サーモクロミズム物質が挙げられる。例えば特開平5−12715号公報には、サーモクロミズム物質として有機材料のみの材料例が挙げられている。
しかしながら、これら有機材料においても、熱吸収による化学的構造変化を伴うため、熱的安定性に欠ける。繰り返し記録や再生によって、マスク層の劣化によりマスク効果が徐々に小さくなり、数千回程度の繰り返しによりマスク効果がほとんどなくなるという問題がある。繰返し再生の耐久性が実用の域に達しているものはない。したがって、特許文献1と同様に耐久性や安定性、信頼性の点で不充分である。
すなわち、これらの材料例は、全て熱的安定性に欠けるものであり、繰返し再生の耐久性が実用の域に達しているものはない。
特許文献2に記載の超解像膜では、超解像再生の原理として、II−VI族化合物半導体(II族:Zn,Cd VI族:S,Se,Te)の非線形光学特性を用いている。これらの材料を非線形光学材料として実用化する際に、一般的に指摘される問題点としては、高純度で大きな結晶が必要であること、成膜時の結晶均一性制御が困難であること、結晶方位角などの許容性が狭いこと、非線形光学特性発現のために大きな光強度が必要であること、耐光損傷性に劣ることなどが挙げられている。
特許文献2では、大きな非線形光学特性を得るために、成膜時に粒界相としてSiOなどからなるガラスマトリックス中に、これら非線形光学材料を分散させる形で成膜する必要がある。また、さらに良好な特性を得るためには、粒径を制御する必要がある。
しかしながら、このような他材料との混合物としての超解像膜を成膜するためには、混合物ターゲットをスパッタするか、または、何個かのターゲットを同時スパッタする必要がある。
このような成膜法では、上述のような問題点を解決するのが実際には困難である。なぜなら、成膜材料が混在するため、非線形光学材料の高純度かつ大きな結晶を得ること、あるいは、結晶の均一性の確保が困難になる。また、多種類の材料が混在した下地の上に非線形光学材料を堆積するため、非線形光学材料が下地の影響を受けて結晶の安定成長や結晶方位の優先配向が難しくなる。これらに加え、さらに粒径制御を行うことが困難になる。
また、特許文献2に記載の光情報記録媒体に対して光による記録再生を行う場合においても、実際に非線形光学特性を得るには、現時点での光記録再生で用いられているよりも大きな光強度が必要である。さらに、この光情報記録媒体は、耐光損傷性にも劣るので、再生安定性や耐久性の点で問題を有している。
以上のように、特許文献2に記載の光情報記録媒体では、材料物性の制御が困難であり、材料も限定されるので、媒体設計の自由度が低くなり、実用的ではない。
特許文献3に開示されている光ディスクは、近接場光を利用するために、通常の光記録再生で用いる光強度よりも大きな光強度が必要である。このため、そのような光を照射して記録再生を続けた場合には、基板や薄膜を含めた媒体全体も劣化しやすく、再生安定性や耐久性の点で問題を有している。酸化亜鉛ナノ薄膜はその両端面が透光誘電体薄膜で挟まれる必要があり、さらに近接場光発生のために透光誘電体の膜厚を数nmオーダーの精度で非常に注意深く制御する必要がある。このため、特許文献3に示された物性制御や媒体設計、実用化が困難である。
本発明は、高密度での記録再生が望まれているという課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、再生光学系の解像限界よりも高密度に情報が記録されていても精度よく確実な再生が可能な光情報記録媒体及びその再生方法を提供することにある。
本発明の光情報記録媒体は、上記の課題を解決するために、記録情報に対応した凹凸形状のピット及び/または溝が形成された基板を備え、少なくとも情報再生時の光ビーム照射によって上記情報を光学的に再生するための光情報記録媒体であって、結晶構造を有する金属酸化物からなり、光ビームの照射による温度上昇に応じて光学特性が変化する超解像再生膜を少なくとも1層有し、上記光学特性は、超解像再生膜の温度変化に依存して可逆的に変化することを特徴としている。
上記の構成によれば、基板に形成された凹凸形状のピット及び/または溝に光ビームが照射されると、超解像再生膜は、この光ビームの照射により温度上昇する。そして、この温度上昇にともなって光学特性が変化する。このため、光ビームのスポット内の一部分でのみ光学特性が変化する。すなわち、上記基板に、光ビームを照射すると、超解像再生膜で、光ビーム照射により温度上昇した部分で光学特性が変化し、すなわち低下または上昇し、その他の温度上昇がなく温度の低い部分では光学特性が保持される。これにより、ピット及び/または溝が形成された基板における再生領域のサイズを、超解像再生膜上の光ビームスポットよりも小さくすることができる。その結果、光ビームのスポットサイズよりも小さいサイズの領域で選択的に再生を行うことができる。したがって、高密度に情報が記録されていても精度よく確実な再生が可能な光情報記録媒体を提供できる。
また、上記の構成によれば、上記光学特性は、超解像再生膜の温度変化に応じて可逆的に変化するので、超解像再生膜において、光ビームの照射による温度上昇に応じて光学特性が変化した部分が、光ビームが照射されなくなり温度が低い部分になったとき、光ビームの照射前の光学特性に戻る。このため、超解像再生膜において、温度が低い部分における光学特性をより均一に保持することが可能になる。このため、上記の構成によれば、再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できる。
また、上記の構成によれば、上記超解像再生膜は、結晶構造を有する金属酸化物からなるため、結晶構造を有していない場合に比べて、バンドギャップエネルギーが超解像再生膜中で均一であり、その温度変化も大きい。すなわち、光学特性の温度変化も比較的大きくなるため、超解像再生効果が大きくなる。また、金属酸化物は、安価であり、安全であるので、コストが小さく、かつ環境負荷の小さい光情報記録媒体を実現できる。さらに、金属酸化物は、安定であるので、耐久性がより向上する。
なお、超解像再生膜の材料として、光ビームの照射による温度上昇で溶融しない非溶融性の材料を選択することが好ましい。これにより、光ビームの照射による温度上昇に応じて光学特性が変化した部分が溶融しないので、光ビーム照射後の光学特性をより均一に保持することができ、その結果、再度再生を行う時に、温度が低い再生部分における光学特性をより均一に保持するのに有効である。このことにより耐久性、信頼性が向上する。
本発明の光情報記録媒体は、上記の課題を解決するために、基板と情報を光学的に記録するための記録層とを備え、光ビームの照射によって上記情報を光学的に再生するための光情報記録媒体であって、結晶構造を有する金属酸化物からなり、光ビームの照射による温度上昇に応じて光学特性が変化する超解像再生膜を少なくとも1層有し、上記光学特性は、超解像再生膜の温度変化に依存して可逆的に変化することを特徴としている。
上記の構成によれば、記録層に情報が記録されている場合、上記構成と同様に、照射された再生用光ビームのスポットサイズよりも小さいサイズの領域で選択的に再生を行うことができる。その結果、再生光学系の解像限界よりも高密度に情報が記録されていても精度よく確実な再生が可能な光情報記録媒体を提供できる。
なお、光情報記録媒体が記録層を備えている場合、「基板」としては、記録情報に対応した凹凸形状のピット及び/または溝が形成された基板であっても、凹凸形状のピット及び/または溝が形成されていない平坦な基板であってもよい。
また、上記の構成によれば、上記光学特性は、超解像再生膜の温度変化に応じて可逆的に変化するので、超解像再生膜において、光ビームの照射による温度上昇に応じて光学特性が変化した部分が、光ビームが照射されなくなり温度が低い部分になったとき、光ビームの照射前の光学特性に戻る。このため、超解像再生膜において、温度が低い部分における光学特性をより均一に保持することが可能になる。このため、上記の構成によれば、再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できる。
本発明の光情報記録媒体は、上記の課題を解決するために、記録情報に対応した凹凸形状のピット及び/または溝が形成された基板を備え、光ビームの照射によって上記情報を光学的に再生するための光情報記録媒体であって、少なくとも情報再生時の光ビーム照射による温度上昇に応じて光学特性が変化し、金属酸化物からなる超解像再生膜を少なくとも1層有するとともに、上記金属酸化物は、Cu−Kα1 線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折スペクトルにおいて、少なくとも一つの回折ピークを有し、上記光学特性は、超解像再生膜の温度変化に依存して可逆的に変化することを特徴としている。
さらに、本発明の光情報記録媒体は、上記の課題を解決するために、基板と情報を光学的に記録するための記録層とを備え、光ビームの照射によって上記情報を光学的に再生するための光情報記録媒体であって、光ビームの照射による温度上昇に応じて光学特性が変化し、金属酸化物からなる超解像再生膜を少なくとも1層有するとともに、上記金属酸化物は、Cu−Kα1 線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折スペクトルにおいて、少なくとも一つの回折ピークを有し、上記光学特性は、超解像再生膜の温度変化に依存して可逆的に変化することを特徴としている。
上記金属酸化物は、Cu−Kα1 線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折スペクトルにおいて、少なくとも一つの回折ピークを有するものである。すなわち、上記金属酸化物は、Cu−Kα1 線による2θ/θスキャンX線回折法により得られるX線回折スペクトルにおいて、少なくとも1つの回折ピークを有するものである。
固有の結晶構造を有する金属酸化物に対し、X線(Cu−Kα1 線)を照射すると、結晶内の原子の種類及び配列により、特定の方向にX線が回折される。X線が回折される方向は、以下のBraggの式で与えられる。
2d sinθ=λ
ここでdは格子定数、2θは回折角度、λはX線の波長を示している。2θ/θスキャンX線回折法は、X線のサンプルへの入射方向(サンプル角度)とX線の回折方向(検出器角度)とを変化させながら、それに応じて変化するX線の入射方向と回折方向の角度差(これが回折角度2θを示す)におけるX線の線強度を検出器で走査して測定する方法である。X線回折スペクトルは、回折角度2θに応じたX線の線強度をプロットしたものである。固有の結晶構造を有する金属酸化物であれば、特定の回折角度2θで回折ピークとしてプロットされる。
すなわち、上記X線回折スペクトルにおいて、固有の「結晶構造を有する金属酸化物」は、必ずその物質に固有の回折ピークを有する。一方、「結晶構造を有さない金属酸化物」、例えばアモルファスのような原子の配列に規則性がない材料であれば、回折ピークを有さない。
このように2θ/θスキャンX線回折法により回折ピークを検出した場合、上記金属酸化物は、上記X線回折スペクトルにおいて最も強い回折線強度を示した回折ピークにおける半値幅が、0.8°以下であることが好ましい。
上記の構成によれば、上記超解像再生膜は結晶構造を有するので、超解像効果を発現する、すなわち光ビームスポットよりも小さいサイズの領域で選択的に再生を行うことができる。また、回折ピークのうち最も強い回折線強度を示した回折ピークにおける半値幅が、0.8°以下であることから、超解像再生膜は、酸素欠損による結晶構造の歪が少ないと考えてよい。このことから、超解像再生膜のバンドギャップがより均一になり、光吸収端が急峻になる(吸収端における透過率変化が急峻になる)。これにより、再生光ビームでの温度変化による透過率変化(あるいは反射率変化)がより大きくなり、より超解像特性が向上する。その結果、再生光学系の解像限界よりも高密度に情報が記録されていても精度よく確実な再生が可能な光情報記録媒体を提供できる。さらには、上記超解像再生膜の結晶構造がより安定になることから、超解像再生膜自体の耐久性が向上し、光情報記録媒体としては、再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できる。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記光ビームの照射後の室温における超解像再生膜の光学特性が、上記光ビームの照射前の室温における超解像再生膜の光学特性と同一であることが好ましい。
なお、ここでいう「同一」のものとは、「同一そのもの」のものと「実質的に同一とみなせる(略同一)」ものとを含む。さらに、「実質的に同一とみなせる」ものとは、光学特性の検出限界内で同一とみなせるもののことをいう。
上記の構成によれば、光ビームの照射による温度上昇に応じて光学特性が変化した部分が、光ビームが照射されなくなり温度が低下し室温になったとき、光ビームの照射前の室温における光学特性に戻る。このため、超解像再生膜において、温度が低下し室温になった部分における光学特性をより均一に保持することが可能になり、再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できる。
なお、本発明の光情報記録媒体は、記録された情報の再生のみを行う再生専用型光情報記録媒体であっても、情報を記録し再生する記録再生型光情報記録媒体であってもよい。さらには、記録された情報が書換え可能になっている記録再生消去型光情報記録媒体であってもよい。
また、本発明の光情報記録媒体として、超解像再生膜単独の光学特性に基づいた構成だけでなく、超解像再生膜を含めた光情報記録媒体全体の光学特性に基づいた構成であってもよい。すなわち、本発明の光情報記録媒体は、上記超解像再生膜の光学特性変化により上記光情報記録媒体の光学特性が変化し、かつ光ビームの照射後の室温における上記光情報記録媒体の光学特性が光ビームの照射前の室温における上記光情報記録媒体の光学特性と同一になるようになっていてもよい。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記超解像再生膜の光学特性が透過率であることが好ましい。また、上記光情報記録媒体の光学特性が透過率であることが好ましい。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記超解像再生膜の光学特性が反射率であることが好ましい。また、上記光情報記録媒体の光学特性が反射率であることが好ましい。
上記のように、超解像再生膜あるいは光情報記録媒体の光学特性を透過率または反射率とすることで、光学特性の確認が容易であり、さらに光情報記録媒体の設計も容易となる。
さらに、超解像再生膜では、反射率の数値が小さいので、光学特性の指標として反射率を評価するよりも透過率を評価する方がより容易である。このため、上記光学特性が超解像再生膜の光学特性である場合、その光学特性は透過率である方がより望ましい。また、光情報記録媒体全体では、透過率の数値が小さいので、光学特性の指標として透過率を評価するよりも反射率を評価する方がより容易である。このため、上記光学特性が光情報記録媒体の光学特性である場合、その光学特性は反射率である方がより望ましい。
したがって、このような場合、本発明の光情報記録媒体は、上記超解像再生膜の透過率変化により上記光情報記録媒体の反射率が変化し、かつ光ビームの照射後の室温における上記光情報記録媒体の反射率が光ビームの照射前の室温における上記光情報記録媒体の反射率と同一であることが好ましい。
さらに、本発明の光情報記録媒体では、上記超解像再生膜の光学特性は透過率であって、上記透過率の温度変化は、上記超解像再生膜の一方の端面における反射光と他方の端面における反射光との間の光干渉効果により調整されていることが好ましい。
上記の構成によれば、一方の面における反射光と他方の面における反射光との間で光干渉が起こるようにすることで、超解像再生膜の透過率、またその結果光情報記録媒体全体の反射率特性を設計することが可能になる。そして、この光干渉効果を利用して、光学特性としての透過率の温度変化を調整することで、光情報記録媒体の温度上昇による反射率変化(変調度)を大きくすることができる。したがって、上記の構成によれば、高い再生信号強度をより確実に得ることが可能になる。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記透過率は、再生波長において50%以上100%以下であることが好ましい。
上記の構成によれば、上記超解像再生膜単独での再生波長における透過率が50%以上である。この構成によれば、従来の超解像再生用の再生膜に比較して透過率が高いので、媒体の多層化に有利となり、より高密度の光情報記録媒体を実現することができる。また、同様の理由により光干渉を有効利用できて超解像再生効果を有効に得られる。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記超解像再生膜は、バンドギャップエネルギーを有し、光ビームの照射前から光ビームの照射後までの温度変化により、上記超解像再生膜のバンドギャップエネルギーが変化するとともに、上記光学特性が変化することが好ましい。
上記の構成によれば、情報再生時の超解像再生膜の光学特性の変化が、バンドギャップエネルギーの温度変化すなわち電子状態の変化によって生じるので、超解像再生膜材料の結晶構造の変化を伴わずに超解像再生が行われる。このため、超解像再生薄膜中の原子移動が少なく、初期状態の組成や形状が保持され、繰り返し再生によっても劣化がほとんどない。したがって、再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できる。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記超解像再生膜の光学特性変化により上記光情報記録媒体の透過率が変化し、かつ光ビームの照射後の室温における上記光情報記録媒体の透過率が光ビームの照射前の室温における上記光情報記録媒体の透過率と同一であることが好ましい。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記超解像再生膜の光学特性変化により上記光情報記録媒体の反射率が変化し、かつ光ビームの照射後の室温における上記光情報記録媒体の反射率が光ビームの照射前の室温における上記光情報記録媒体の反射率と同一であることが好ましい。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記超解像再生膜の光ビーム入射側の反対側に接して反射膜がさらに設けられていることが好ましい。
また、本発明の光情報記録媒体では、光ビーム照射後の室温における上記超解像再生膜の結晶構造が、上記光ビーム照射前の室温における上記超解像再生膜の結晶構造と同一であることが好ましい。
上記の構成によれば、結晶構造の温度変化は可逆的であり、情報再生の前と後で比較すると結晶構造が同一であるので、再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できる。
また、このような特性を有する超解像再生膜に対しCu−Kα1 線による2θ/θスキャンX線回折法を行った場合、上記光ビーム照射後の室温における上記超解像再生膜のX線回折スペクトルに現れた回折ピークが、上記光ビーム照射前の室温における上記超解像再生膜のX線回折スペクトルに現れた回折ピークと同じ回折角度2θの位置に現れるようになる。なお「同じ回折角度2θの位置」とは、実質的に同じ回折角度2θの位置のことをいう。すなわち、上記超解像再生膜のX線回折スペクトル測定における検出限界内で、「同じ回折角度2θの位置」に回折ピークが現れていればよい。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記金属酸化物は、上記光情報記録媒体が上記温度上昇により到達する最高温度よりも高い融点を有することが好ましい。
上記の構成によれば、上記金属酸化物が光ビームの照射時に融解しない。このため、超解像再生膜は、光ビームの照射前の初期状態の組成や形状が保持され、繰り返し再生によっても劣化がほとんどない。したがって、再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できる。
前述したように、特許文献1に記載のマスク層では、繰り返し記録や再生を行うと、マスク効果が低下するという問題がある。これに対して、上記の構成では、光ビームの照射により温度が上昇した部分で光学特性が変化する超解像再生膜を用いている。そして、超解像再生膜は、光ビームの照射による温度上昇で融解しない金属酸化物で形成することができるため、繰り返し記録や再生を行ってもマスク効果が低下しない。したがって、上記の構成によれば、耐久性に優れた光情報記録媒体を提供できる。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記光ビームの照射による温度上昇により到達する最高温度における上記超解像再生膜の結晶構造が、光ビームの照射前の室温における上記超解像再生膜の結晶構造と同一であることが好ましい。
上記の構成によれば、上記温度上昇に伴って、上記超解像再生膜が上記結晶構造を保持したまま光学特性が変化することになる。このため、再生時に上記超解像再生膜が上記結晶構造の変化を伴わずに超解像再生が行われるので、超解像再生薄膜中の原子移動が少なく、初期状態の組成や形状が保持され、繰り返し再生によっても劣化がほとんどない。したがって、再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できる。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記結晶構造が、膜面の法線方向に対して、結晶性あるいはさらに優先配向性を有することが好ましい。
上記の構成のように、上記結晶構造が、膜面の法線方向に対して、結晶性あるいはさらに優先配向性を有する超解像再生膜であれば、材料によっては通常のスパッタ法などによる堆積成膜法で結晶構造を持つ膜を作製できる。すなわち、従来の一般的な手法によって超解像再生膜を容易に作製することができる。それゆえ、材料を選べば一般的な成膜手法にて、よりよい超解像再生を実現できる媒体を作製することができる。さらに、再生光の入射方向に結晶が優先配向しているので本来材料が持つ性質を比較的良好に示すことができ有利である。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記金属酸化物は、1種の金属元素だけを含む単一相からなることが好ましい。
上記の構成によれば、単純な構成にて超解像再生が実現できるため、製造コストを低減できる。また、単元素金属からなる酸化物、その中でも化学量論比酸化物からなる超解像再生膜は非常に安定であり、融点も高く、初期状態の組成や形状が保持され、繰り返し再生によっても劣化がほとんどない。したがって、再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できる。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記超解像再生膜は、酸化亜鉛からなる、あるいは酸化亜鉛を含むことが好ましい。また、上記超解像再生膜が酸化セリウムからなる、あるいは酸化セリウムを含むことが好ましい。
上記の構成によれば、酸化亜鉛、酸化セリウムともに、よりよい超解像再生効果を得ることができる材料である。
また、酸化亜鉛、酸化セリウムともに、光触媒などの分野で用いられている一般的な材料であり、容易に入手でき、廃棄時の環境負荷も小さい。また、一般的なスパッタ法などによる成膜で基板温度を室温から上げなくても容易に結晶性、膜面の法線方向に対する配向性の高い膜が得られるため、製造プロセスやコストが低減できる。
また、上記の構成では、初期状態で超解像再生膜の酸化亜鉛、酸化セリウムがほぼ透明であり、光干渉を有効利用できて超解像再生効果を有効に得られる。
また、このように超解像再生膜が金属酸化物からなるため、上記と同様に耐久性が確保できる。また、光学吸収端が光ビーム波長に近く、光ビーム波長における透過率スペクトルが急峻である。従って、温度上昇に伴って光学吸収端がシフトすることによる光学特性の変化は大きなものとなり、すでに説明した超解像再生の効果を促進する。すなわち、容易な作製法でよりよい超解像再生効果を得ることができる。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記超解像再生膜は、酸化セリウムからなる、あるいは酸化セリウムを含むことが好ましい。
上記の構成によれば、酸化チタンは超解像再生効果を得ることができる材料である。また、光触媒などの分野で用いられている一般的な材料であり、容易に入手でき、廃棄時の環境負荷も小さいので、製造コストが低減できる。すなわち容易な作製法でよりよい超解像再生効果を得ることができる。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記超解像再生膜の厚さが、100nm〜300nmであることが好ましい。
上記の構成によれば、多重干渉を、より利用できるので温度上昇による光学特性変化を大きくできる。一方、堆積により膜表面が基板の凹凸形状に比べて鈍らず、プロセスやコスト的にも有利になる。
また、本発明の光情報記録媒体では、さらに、上記超解像再生膜に隣接してまたは他の薄膜を介して、情報を再生する光を一部吸収して熱を発生する光吸収膜が設けられているが好ましい。
上記の構成によれば、情報再生時の光ビーム照射によって媒体を効率よく温度上昇させることができ、より低い再生光パワーで超解像再生を実現することができる。すなわち再生感度が高くなる。また、そのことにより、余分な部分を熱することによる媒体劣化が少なく、再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できる。
また、本発明の光情報記録媒体では、上記光吸収膜が相変化記録材料からなる、あるいは相変化記録材料を含むことが好ましい。また、本発明の光情報記録媒体は上記光吸収膜が半導体からなる、あるいは半導体を含むことが好ましい。さらに、本発明の光情報記録媒体では、上記光吸収膜がシリコン、ゲルマニウムのうちいずれかからなる、あるいはいずれかを含むことが好ましい。
これらの構成によれば、一般的な反射膜である金属に比べると光吸収膜の熱伝導率が低いので、光を吸収して発生した熱が熱伝導によって放出されにくく、媒体及び超解像再生膜の温度上昇を補助し再生感度が高くなる。それと同時に、反射率もある程度示すので、十分に信号を読み取ることができる。また、シリコン、ゲルマニウムは半導体産業で一般的に用いられる半導体でもあり、入手が容易であると同時に、廃棄時の環境負荷も小さい。
本発明の光情報記録媒体では、上記超解像再生膜には、上記光ビームの照射によって形成される温度分布により、上記光ビームの照射スポットの範囲内に、光学特性が変化する変化状態の第1部位と、光ビームの照射前の光学特性の状態に保持された初期状態の第2部位とが形成されていることが好ましい。
上記の構成では、光学特性が変化する変化状態の第1部位と光ビームの照射前の光学特性の状態に保持された状態の第2部位との何れかで生じた反射光に基づき再生信号を得ることができるので、再生光学系の光ビームのスポットサイズ(解像限界)よりも小さいサイズの領域で選択的に再生を行うことができる。したがって、簡単な構成にて記録密度の向上が可能になる。
また、本発明の光情報記録媒体の再生方法は、上記の課題を解決するために、上述の光情報記録媒体の再生方法であって、再生用光ビームの解像限界以下の微小記録マークを再生することを特徴としている。
より具体的には、本発明の光情報記録媒体の再生方法は、光ビームを上記光情報記録媒体に照射し、照射された光ビームの照射スポットにおける上記超解像再生膜の温度変化に対応して、上記光ビームの照射スポットの範囲内に、光学特性が変化する変化状態の第1部位と、光ビームの照射前の光学特性の状態に保持された初期状態の第2部位とを形成することである。
上記の構成によれば、通常の方法では再生することができない微小記録マークを再生可能であるため、簡単な方法にて記録密度の向上が可能である。
また、本発明の光情報処理装置は、上記の課題を解決するために、上述の光情報記録媒体に対して、少なくとも再生を行う光情報処理装置であって、再生用光ビームの解像限界以下の微小記録マークを再生することを特徴としている。
より具体的には、本発明の光情報処理装置は、上記光情報記録媒体に光ビームを照射し、上記超解像再生膜の温度変化に対応して、上記光ビームの照射スポットの範囲内に、光学特性が変化する変化状態の第1部位と、光ビームの照射前の光学特性の状態で保持された初期状態の第2部位とを形成する光照射手段を備えることを特徴としている。
上記の構成によれば、上記光照射手段は、上記光情報記録媒体に光ビームを照射し、上記超解像再生膜の温度変化に対応して、上記光ビームの照射スポットの範囲内に、光学特性が変化する変化状態の第1部位と、光ビームの照射前の光学特性の状態で保持された初期状態の第2部位とを形成するので、通常の方法では再生することができない微小記録マークを再生することが可能になる。また、従来の装置とほぼ同じ構成でコストアップを伴わずに高密度の光情報記録媒体の再生または記録を行うことができる。
したがって、これらの再生方法、光情報処理装置によれば、従来の再生方法や装置に大幅な変更を加えることなく、ほぼ同じ構成で、再生光学系の解像限界よりも高密度に情報が記録されていても精度よく確実な再生が可能となる。同時に再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体の情報処理が実現できる。
本発明の光情報記録媒体は、以上のように、結晶構造を有する金属酸化物からなり、光ビームの照射による温度上昇に応じて光学特性が変化する超解像再生膜を少なくとも1層有し、上記光学特性は、超解像再生膜の温度変化に依存して可逆的に変化するものである。
それゆえ、記録及び/または再生時の超解像再生膜の温度上昇にともなって光学特性が変化するため、光ビームのスポット内の一部分でのみ光学特性が変化する。その結果、高密度に情報が記録されていても精度よく確実な再生が可能な光情報記録媒体を提供できるという効果を奏する。
また、上記光学特性は、超解像再生膜の温度変化に応じて可逆的に変化するため、超解像再生膜において、温度が低い部分における光学特性をより均一に保持することが可能になる。このため、再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できるという効果を奏する。
また、本発明の光情報記録媒体の再生方法、及び光情報処理装置では、従来の再生方法や装置に大幅な変更を加えることなく、ほぼ同じ構成で、再生光学系の解像限界よりも高密度に情報が記録されていても精度よく確実な再生が可能となる。同時に再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体の情報処理が実現できる。
〔実施の形態1〕
以下に、本発明の光情報記録媒体の実施の一形態を図1〜17に基づいて説明すれば、以下の通りである。
はじめに、本発明の光情報記録媒体に対して情報の記録再生を行い得る、記録再生装置(光情報処理装置)について、その主な構成を説明する。
記録再生装置は、レーザ光源と、集光光学手段と、相対運動手段と、光電変換手段と、サーボ手段と、アドレス情報検出手段と、再生信号復調回路等を有する。
レーザ光源としては、例えば波長405nmの光を発する半導体レーザ等を用いることができる。
集光光学手段は、レーザ装置から発生されたレーザ光をビーム状にして光情報記録媒体上に集光するもので、集光レンズや、ビームスプリッタ等の光学部品を含んでいる。
相対運動手段は、集光光学手段と光情報記録媒体とを相対運動させるものであり、リニアアクチュエータやスイングアームなどからなる。その運動は、光情報記録媒体が回転あるいは平行移動する運動と、上記集光光学手段に含まれる集光レンズが、その光軸に直角方向に移動する運動との少なくとも一方を含む。
光電変換手段は、光情報記録媒体からの反射光レベルの高低を電気信号に変換するものである。また、サーボ手段は、レーザ光のオートフォーカス及びトラッキングを行うものである。また、アドレス情報検出手段は、光情報記録媒体上に設けられたアドレス情報マークを再生することにより得られる電気信号から、アドレス情報を検出するもので、再生信号復調回路は、光情報記録媒体の反射光より記録情報を再生するものである。
これら構成部材のうち、レーザ光源、集光光学手段、光電変換手段、及びサーボ手段は、上記した相対運動手段によって光情報記録媒体と相対運動を行う光学ヘッド内に収納されている。また、レーザ光源と光電変換手段とを、集光光学手段とは別のケースに収めることも可能である。
また、本実施形態の記録再生装置においては、集光されるレーザ光と光情報記録媒体とのなす角度を調節するための手段をさらに備えておくことが好ましい。これにより、収差の発生による光スポットの劣化をも防止することができる。
図1に、このような記録再生装置に光学ヘッドとして搭載される、光情報記録媒体が円盤状の光ディスクである場合の一般的な光学系の構成図を示す。光学系は、半導体レーザ121、コリメートレンズ122、ビーム整形プリズム123、ビームスプリッタ124、対物レンズ125、及び検出光学系127を備えている。
光源である半導体レーザ121から出射したレーザ光は、コリメートレンズ122によってほぼ平行光に変換され、ビーム整形プリズム123によって光強度の分布をほぼ円形に整形される。このほぼ円形の平行光はビームスプリッタ124を透過した後、対物レンズ125によって光情報記録媒体126に集光される。そして、この反射光はビームスプリッタ124で分岐され、検出光学系127に導かれる。
スピンドルモータ128は、光情報記録媒体126を回転させることにより、光スポットを光情報記録媒体126上で走査させる。検出光学系127は、反射光の偏光方向の変化や反射光強度の変化などから信号を識別し、光情報記録媒体126上に記録された記録マークを読み取る。これと同時に、検出光学系127は、光スポットの光情報記録媒体126に対しての焦点ずれ信号とトラック位置ずれ信号とを検出し、対物レンズ125の駆動系にフィードバックすることにより光スポットの位置ずれを補正する。なお、この光学系において、対物レンズ125の開口度(NA)は、例えば0.65に設定されている。
このような光情報記録再生装置においては、光情報記録媒体126として、超解像媒体技術を採用した本発明の光情報記録媒体と、超解像媒体技術を用いない通常の光情報記録媒体との両方を記録再生できることが望ましい。そこで、上記光情報記録再生装置では、本発明の光情報記録媒体の場合と、通常の光情報記録媒体の場合とで、検出器のゲイン、再生光強度、記録光強度、記録波形、光情報記録媒体の回転数などをそれぞれ切り換え得るように構成されている。但し、これらは電気的に制御できる範囲であるため、通常の光情報記録媒体のみを記録再生する装置と比べて、光学系に大きな変更を施す必要はない。
なお、「光照射手段」は、上記レーザ光源と、上記集光光学手段と、上記相対運動手段とを備えたものであり、図1に示す光情報記録再生装置では、半導体レーザ121、コリメートレンズ122、ビーム整形プリズム123、ビームスプリッタ124、及び対物レンズ125を備えたものに相当する。
次に、本実施形態の光情報記録媒体の構成について説明する。
本実施形態の光情報記録媒体は、図2及び図3に示すように、再生専用の光情報記録媒体1であり、再生用の光ビームである再生ビーム30が入射する側から、透明樹脂層11、超解像再生膜13、反射膜14、及び基板12がこの順に形成されてなる。すなわち、光情報記録媒体1は、基板12上に反射膜14、超解像再生膜13が形成され、その上に透明樹脂層11が形成されているものであり、透明樹脂層11から超解像再生膜13、反射膜14を通して基板12の内側の面(反射膜14側の面)へ再生ビーム30が入射するようになっている。
透明樹脂層11は、少なくとも再生ビーム30の波長においてほぼ透明であり、再生ビーム30の入射を妨げないものであることが必要である。これにより、再生ビーム30が透明樹脂層11側から入射する型の光情報記録媒体1を構成することができる。透明樹脂層11を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、熱可塑型ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエーテルニトリル)、PES(ポリエーテルサルホン)等の熱可塑性透明樹脂(プラスチック)、熱硬化型ポリイミド、紫外線硬化型アクリル樹脂等の熱硬化性透明樹脂、及びそれらの組合せが挙げられる。
透明樹脂層11は、通常、1μm〜100μm程度の厚みを有することが適当である。また、透明樹脂層11は、0.1mm〜1.2mm程度の厚みを有していてもよく、その場合、光情報記録媒体1に適当な強度を付与することができる。なお、透明樹脂層11に代えて、他の透明材料、例えばガラスや、ガラスと透明樹脂とを組み合わせた材料からなる層等を用いてもよい。その場合、厚みは、0.1mm〜1.2mm程度が適当である。
基板12は、光情報記録媒体1に適当な強度を付与し得るものであることが必要である。基板12を構成する材料の光学的特性は、特に限定されるものではなく、透明でも不透明であってもよい。基板12を構成する材料としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、熱可塑型ポリイミド、PET、PEN、PES等の熱可塑性透明樹脂、熱硬化型ポリイミド、紫外線硬化型アクリル樹脂等の熱硬化性透明樹脂、金属等、及びそれらの組合せが挙げられる。
基板12における内側の面(反射膜14側の面)上には、記録情報に対応した凹凸形状のピットや案内用の溝が形成されている。ピット及び溝は、双方とも形成されていてもよいし、いずれか一方のみが形成されていてもよい。
基板12の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、0.1mm〜1.2mm程度が適当である。また、上記ピットのピッチは0.1μm〜1.6μm程度、ピットの高低差は、30nm〜200nm程度が挙げられる。また、上記案内用の溝は、0.3μm〜1.6μm程度のピッチ、30nm〜200nm程度の深さが適当である。
基板12上には、反射膜14、超解像再生膜13が形成されており、この超解像再生膜13は、再生ビーム30の照射による温度上昇に応じて再生ビーム30の波長における光学特性が変化する機能を有する。図2に示すように、光が入射する側から、すなわち透明樹脂層11側から、超解像再生膜13及び反射膜14がこの順に積層されて構成されている。
超解像再生膜13は、温度変化により光学特性が可逆的に変化する半透明材料であって、温度上昇に応じて再生ビーム波長における光学特性が変化する材料を含んで構成されている。上記材料としては、温度が上昇したときに特定波長領域で超解像再生膜13の光学特性が変化する材料、具体的には、20℃から200℃まで温度が上昇したときに、超解像再生膜13の光の透過率が10%〜90%の範囲内で変化する材料が適当である。
上記材料として従来種々の物質が提案されてきたが、本発明の実施の形態では、禁制帯幅(バンドギャップエネルギー)が温度により変化して光学吸収端波長がシフトし、結果として再生波長での光学特性が変化する金属酸化物を用いる。また、本発明の効果を発揮するために、金属酸化物はアモルファス状態ではなく、結晶構造を有していることが望ましい。なぜなら、バンドギャップエネルギーがブロードな分布を持たず一定値に近づき、再生波長での光学特性の変化を大きくできるからである。このような金属酸化物としては、具体的には、例えば、ZnO、SnO、CeO、NiO、NiO、In、TiO、Ta、VO、SrTiO等の透光性の半導体あるいは誘電体が挙げられ、これらのうちでも、ZnO(酸化亜鉛)が特に好ましい。
超解像再生膜13は、使用する材料に応じて、作製条件によりその膜厚を調整することができ、例えば、5nm〜800nm程度が適当である。超解像再生膜13の膜厚がと充分に厚い(100nm以上)と、多重干渉をより利用できるので温度上昇による光学特性変化を大きくできる。一方、超解像再生膜13の膜厚があまり厚すぎると、堆積により膜表面が基板の凹凸形状に比べて鈍ってしまうし、プロセスやコスト的にも不利になる。上記観点から、超解像再生膜13は、300nm以下であることが好ましい。したがって、超解像再生膜13は、100nm以上300nm以下の厚みを持つZnO(酸化亜鉛)膜であることが特に好ましい。
なお、特許文献3には、近接場を利用する酸化亜鉛ナノ薄膜を用いた再生専用型光ディスクが開示されているが、この酸化亜鉛ナノ膜は、本願とは再生原理が異なる。特許文献3に開示されている再生専用型光ディスクは、酸化亜鉛ナノ薄膜における近接場効果を利用しているため、酸化亜鉛ナノ薄膜は、その両端面が透光誘電体薄膜で挟まれる必要がある。さらに、近接場光発生のために透光誘電体の膜厚を数nmオーダーの精度で非常に注意深く制御する必要がある。また近接場光を発生させるためには、通常の光記録再生で用いるよりも大きな光強度が必要であり、そのような光を照射して記録再生を続けた場合には基板や薄膜を含めた媒体全体も劣化しやすく、再生安定性や耐久性の点で問題を有している。また、酸化亜鉛ナノ膜は、膜厚も100nm以下で比較的薄い膜である。一方、本願の光情報記録媒体は、後述のように光の多重干渉及び半導体のバンドギャップを利用するため、酸化亜鉛膜は比較的厚い(100nm以上)ことが望ましい。すなわち、本願発明と特許文献3に記載の発明とは、どちらも酸化亜鉛膜を用いる光ディスクであるが、原理及び構成が異なるものである。
反射膜14は、高反射率を有する金属膜により形成されていることが好ましい。高反射率を有する金属膜としては、具体的には、Al膜、Au膜、Ag膜、Cu膜など、及びそれらのいずれかを含む合金、あるいは他の元素を一部含む合金からなる膜が挙げられる。
反射膜14の層厚は、特に限定されるものではなく、所望の反射率を実現できる層厚に調整することができる。例えば、5nm〜100nm程度が挙げられる。反射膜14を形成することにより、再生ビーム30が反射膜14で反射し、超解像再生膜13と反射膜14との間で多重干渉が発生することになり、超解像再生膜13の光学特性変化が効率よく行うことができる。
以上のように超解像再生膜13と反射膜14とを説明してきたが、超解像再生膜13は、上記二膜によって温度変化による光学特性変化と光反射との2種類の役割を果たすことができればそれでよく、反射膜14が必ずしも必要とは限らない。具体的には超解像再生膜13の屈折率が大きく、それに隣接する他の膜や樹脂との屈折率差によって再生に充分な反射率が得られる場合には、反射膜14が存在しなくても構わない。
このような構成により、いわゆるCD(Compact Disc)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等の書き込み可能な記録膜を有しない再生専用の光情報記録媒体1を実現することができる。
次に、上記光情報記録媒体1の再生方法について説明する。
図3に示すように、上記光情報記録媒体1は、図1に示す半導体レーザ121のようなレーザ光源と図1に示す対物レンズ125に対応する集光レンズ31等の光学系とを用いて再生ビーム30を透明樹脂層11側から基板12の内側の面(ピット及び溝の少なくとも一方が形成された面)上に入射させ、その面での反射光を光ヘッド(図示しない)で検出することにより再生することができる。なお、本実施の形態ではレーザ光源の波長は408nm、対物レンズの開口度NAは0.65の装置を用いた。
このとき、光情報記録媒体1に対する再生ビーム30の照射は、超解像再生膜13における光ビームスポット内に高温部分と低温部分とが発生するように行う。
例えば、再生専用の光情報記録媒体1に対し、透明樹脂層11側から再生ビーム30を入射させ、再生ビーム30で光情報記録媒体1表面を所定の方向へ走査すると、図4に示すように、超解像再生膜13表面の再生ビームスポット33内において、再生ビームスポット33の進行方向に向かって温度勾配が発生する。したがって、超解像再生膜13表面の再生ビームスポット33内には、再生ビームスポット33の進行方向に向かって後方側に高温部33a(変化状態の第1部位)が、前方側に低温部33b(初期状態の第2部位)が発生する。これらの温度は、例えば、高温部33aの温度が80℃以上、低温部33bの温度が室温以上80℃未満となる。
低温部33bでは、再生ビーム30の波長での超解像再生膜13の光学特性が初期状態を維持している。一方、再生ビーム30の入射によって温度が上昇した高温部33aでは、再生ビーム30の波長での超解像再生膜13の光学特性が変化した状態となる。具体的には、例えば、室温以上80℃未満で初期状態、80℃以上で光学特性変化状態となるようにすることができる。この結果、超解像再生膜13では、再生ビームスポット33の高温部33aである前半部分と低温部33bである後半部分において光学特性の異なる領域が生じる。なお、「室温」とは、例えば、30℃である。
通常の再生専用の光情報記録媒体の再生では、ビームスポット33内において、ピット及び/または溝によって光の回折が生じ、反射光強度が変調されることで、ピット及び/または溝の形状に対応した信号を検出する。このとき再生ビームスポット33では通常の反射膜しか設けられていないので、ビーム照射によって高温部33aと低温部33bが生じても、光学特性はビームスポット33内全域において一様であり、光学系の解像限界以下の大きさのピット及び/または溝は再生できない。しかしながら、光情報記録媒体1では、上記超解像再生膜13を用いることで、すでに記述したようにビームスポット33内において光学特性の異なる領域が生じる。
このことが実際にビームスポット33でのピット及び/または溝の検出にどのように寄与しているかは、証明の手段が無く不明であるが、本実施の形態の光情報記録媒体1の超解像再生動作は、以上のようなビームスポット33内の光学特性の分布が寄与していると考えられる。
これにより、ピット及び/または溝が刻設された基板12表面(記録情報面)における再生領域のサイズを超解像再生膜13、反射膜14上の再生ビームスポット33より小さくすることができる。その結果、再生領域のサイズをより小さくすることができ、再生分解能を向上させることができる。したがって、基板12表面(記録情報面)に刻設された微小なピット及び/または溝、特に再生ビームの解像限界以下のピット及び/または溝に対応する情報を、より大きな再生信号強度で確実に再生することができる。
以上のようにして、本実施形態の光情報記録媒体では、超解像再生膜13を用いて、基板12表面(記録情報面)にピット及び/または溝として刻設された再生ビームの解像限界以下の微小記録マークを再生可能としている。
次に、バンドギャップエネルギーと光学吸収端とについて説明する。
一般的に、透明誘電体などの絶縁体や半導体である場合、伝導電子の持つエネルギー準位が不連続であり、エネルギーの禁制帯すなわちバンドギャップが存在する。絶縁体や半導体である場合、フェルミレベルがこのバンドギャップ中に存在するため、電気伝導はエネルギー的には価電子帯から伝導電子帯へのバンドギャップ越しの遷移で説明される。同様に光吸収もバンドギャップで説明される。
バンドギャップ以上のエネルギーを持つ光は、光吸収という形で価電子帯から伝導電子帯へ電子を光学遷移させることができる。このため、バンドギャップ以上の高エネルギーを持つ光は吸収され、それ以下のエネルギーを持つ光は吸収されず透過する。その光子エネルギーを光学吸収端、または、光学的バンドギャップという。また、光学吸収端の光子エネルギーに対応する波長を光学吸収端波長と呼ぶ。
薄膜などでは、歪や欠陥、欠損、アモルファス状態などのように、理想的な結晶状態との差が存在する。このため、実際には光学吸収端よりも若干低エネルギーの光から一部吸収され始め、光学吸収端波長の光は吸収される。また、結晶性が悪くなればなるほど、すなわちアモルファス状態に近づくと、周期性秩序がなくなる。このため、禁制帯すなわちバンドギャップもまた、理論値からずれて分布を持つようになる。そして、この分布は、ブロードになり、ついには理論値での光吸収もなくなってゆく。これに対し、薄膜中の材料固有の結晶性がよいほど、バンドギャップは一定の値を持ち、光学吸収端も理論値やバルクの値に近づく。このため、薄膜中の材料固有の結晶性がよい場合、固有の波長にて光吸収が行われることになるので、透過率の波長依存性が急峻となる。
図5に、低温(30℃)及び高温(200℃)における膜厚140nmのZnO膜からなる超解像再生膜13の光学吸収端付近での分光透過率特性を示す。このZnOの透過率の波長依存性を例に挙げると(光干渉が存在するがこの説明の本質ではないのでここでは無視する)、光学吸収端(375nm)よりも低エネルギー、すなわち長波長の光(430nm付近)から一部吸収され始める。そして、高エネルギーすなわち短波長側の光学吸収端に近づくにつれ吸収は大きくなり、光学吸収端(375nm)ではほとんど吸収されている。なお、ZnOのバンドギャップは3.3eV(波長に換算すると375nm)程度と言われており、この実験結果とよく一致している。厳密には完全に吸収されてはいないが、これは、ZnOの膜厚が後で示す実施例と同じ140nmであり、測定波長(300〜500nm)に比べて半分以下に薄いためであると考えられる。これより厚い膜では吸収されることを確認している。
次に、光学吸収端とその温度変化について説明する。
半導体や絶縁体である場合、温度上昇に伴って、バンドギャップが減少するのが一般的である。たとえば半導体レーザの分野では、温度環境や駆動による発熱などによりバンドギャップエネルギーが温度変化し、それに対応して発振波長も温度変化してしまうという課題がある。広い温度範囲にわたって安定した発振波長を得るために、バンドギャップエネルギーの温度依存性を低減するための材料開発が行われている。
上記の説明通り、バンドギャップと光学吸収端とは本質的に同じものなので、光学吸収端は温度上昇に伴い低エネルギー側、すなわち長波長側にシフトする。超解像再生膜13の透過率の波長依存性グラフ形状(以下透過率スペクトルと記す)が、特に光学吸収端波長付近から再生ビーム波長において長波長側にシフトする。
図5を参照すると、再生波長408nmより長波長側の430nm付近から、再生波長408nmをはさんで短波長側の光学吸収端波長の付近にかけての波長領域において、透過率スペクトルが温度上昇により長波長側にシフトしている。この時、再生波長408nmに着目すると、光学特性(具体的には透過率)が変化していることがわかる。
このため、図5に示すように、超解像再生膜13は、常温(室温)での光学吸収端波長と再生ビームの波長が近いと再生波長408nmでの光学特性変化が顕著である。
結局のところ、超解像再生膜13は、常温での短波長側の光学吸収端波長(紫外・可視領域に存在する吸収バンドの下限)が再生ビーム30の波長より短く、温度の上昇に応じて、短波長側の光学吸収端波長が長波長側にシフトし、再生ビーム30の波長における光学特性が変化するものが好ましい。例えば、再生ビーム30の波長が379nm〜415nmの範囲内(例えば408nm)である場合、超解像再生膜13としては、常温での短波長側の光学吸収端波長が375nm付近であるZnO膜が好ましい。
ZnO膜の分光透過率特性は、図5に示すように、温度が上昇することにより、短波長側の光学吸収端波長が長波長側にシフトする。これにより、光の入射により昇温した高温部33aのZnO膜は、再生ビーム30の波長における分光透過率が変化した状態となる。なお、相対的に温度の低い低温部33bのZnO膜は、光の透過率が初期状態のままである。また、ZnO膜の昇温した部分は、その後、ビームスポット33から外れて温度が低下すると、分光透過率特性の短波長側の光学吸収端波長が短波長側に戻り、光学特性は元に戻る。
また、上記超解像再生膜13は、一方の面における反射光と他方の面における反射光との間の光干渉効果を用いて透過率特性の温度変化が調整されていることが好ましい。また、光干渉を含めて設計作製した場合、超解像再生膜の透過率を評価するよりも、光情報記録媒体全体の反射率の変化を評価することが好ましい。すなわち、光情報記録媒体全体の反射率の温度変化が調整されていることが好ましい。なぜなら、光情報記録媒体全体の中から超解像再生膜だけを抜き出して透過率を評価することが困難であるためである。
超解像再生膜13の膜厚を100nm以上と厚くした場合、一方の面における反射光と他方の面における反射光との間で光干渉が起こり、超解像再生膜13、反射膜14からなる光情報記録媒体の分光反射率特性を設計することができる。すなわち、超解像再生膜13の光学吸収端付近における光情報記録媒体の反射率の傾きを大きくすることが可能となり、その結果、光学特性の変化(高温部33aと低温部33bとの間での、再生ビーム30の波長における光学特性の変化)を大きくすることができる。したがって高い再生信号強度をより確実に得ることができる。一方、超解像再生膜13の膜厚が300nm以下であると、堆積した膜表面が基板の凹凸形状を反映しており、また、プロセスやコスト的にも有利である。
以上のように、上記超解像再生膜13の単独での透過率特性とその機能について説明してきたが、実際の光情報記録媒体1としてはすべての膜を含めた実際の構成で設計することが必要である。具体的には、本実施の形態では上記超解像再生膜13単独だけではなく、反射膜14との界面、及び透明樹脂層11との界面の両界面間で発生する光学多重干渉を考慮することが必要となる。
図6に低温(30℃)及び高温(200℃)における膜厚140nmのZnO膜からなる超解像再生膜13、及び膜厚50nmのAlNi合金膜からなる反射膜14における超解像再生膜13光学吸収端付近での分光反射率特性を示す。なお、基板12上に反射膜14と超解像再生膜13が積層されており、透明樹脂層11を除けば光情報記録媒体1と同様の構成である。実際の光情報記録媒体1の場合と同様に、光は超解像再生膜13側から入射させて測定した。このような光情報記録媒体1、後に示す実施例1と同様の構成の反射率について説明する。
図6のZnO膜厚140nmの場合、再生波長408nmにおいて、光学特性(具体的には反射率)が温度変化に応じて変化している。
以上のように、上記超解像再生膜13単独の場合においてすでに説明したのと同様に、本実施の形態のような実際の光情報記録媒体1、後に示す実施例1と同様の構成であっても、ビームスポット内での温度分布を利用して一部分だけ光学特性を変化させることができる。
これらの超解像再生膜13の光学吸収端波長変化は、金属酸化物半導体の禁制帯幅(バンドギャップ)の温度変化によるものであり、超解像再生膜13が、ZnO以外にも、SnO、CeO、NiO、NiO、In、TiO、Ta、VO、SrTiO等の金属酸化物、及びこれらの組合せからなる混合物や固溶体からなっていても、同様の効果を奏する。また、超解像再生膜13としては、本発明の技術思想を具現化し、本願の効果を得ることができる材料であれば、特に限定されるものではなく、例えば、元素ドーピングや元素置換であっても構わない。
次に、結晶性について説明する。薄膜の結晶性について考える場合には、バルク材料で一般的な単結晶、多結晶、アモルファスだけでなく、結晶の配向性が重要である。配向性とは、通常であればそれぞれランダムな方向を向いている多結晶が特定の方向に優先的に揃う、あるいは成長する傾向のことを言う。
通常のスパッタなどの堆積法で得られる結晶性の薄膜では、膜面の法線方向(膜面に垂直方向)に最も結晶が配向しやすい、すなわち特定の結晶方位や結晶面がそろいやすいことが知られている。その例としては、例えば、特許文献2の7ページ26行目、または、特開平5−238887号公報の〔0004〕段落、特開平6−145977号公報の〔0007〕段落,〔0008〕段落に開示されている。
さらに加えて、本願のような光情報記録媒体として薄膜を応用するためには、媒体平面上で薄膜の膜厚や性質をできる限り均一にする必要がある。このため、成膜時に基板を回転させることが一般的である。この場合、膜面の法線方向については基板回転軸方向と一致するので配向性が損なわれにくい。しかしながら、膜面内方向の配向性は基板回転によりさらにランダムなものになりやすい。したがって、結晶性を有する薄膜の場合、膜面の法線方向については優先的な配向性を持ちながら、膜面内方向についてはランダムな多結晶であるといった特殊な配向性を持つ結晶構造をとることが多い。また、成膜材料、成膜条件、または基板材料の結晶構造によっては、異なる配向性を持たせることも可能であり、さらには単結晶や、全方向にランダムな多結晶を作製することも場合によっては可能である。
以降、本明細書においては、結晶構造及び結晶性とは、無秩序構造であるアモルファスに対して材料固有の周期的秩序性構造を持つ意味として使用し、配向性の有無については限定しないものとする。また、膜面方位、主に法線方向に対する配向性を持つ場合については配向性と表記することとする。
すでに説明したように、本実施形態で用いる超解像再生膜13は、バンドギャップの温度変化に対応した光学特性の変化が寄与していると考えられる。また、バンドギャップは結晶性が悪くなればなるほど、すなわちアモルファス状態に近づくと、原子配列の周期的秩序がなくなるため、禁制帯すなわちバンドギャップも理論値からずれて分布を持つようになってブロードになる。そして、ついには理論値での光吸収もなくなってゆく。一方、薄膜中の材料固有の結晶性がよいほど、バンドギャップが一定の値を持ち、光学吸収端も理論値やバルクの値に近づき、固有の波長にて光吸収が行われることになる。このため、薄膜中の材料固有の結晶性がよい場合、光学吸収端付近での透過率の波長依存性が急峻となる。これにより、温度変化スペクトルシフトや再生波長における光学特性の変化も大きくなると考えられる。
また、情報再生に伴う温度変化後の結晶性が変化前と実質的に同じ(略同一)であれば、繰り返し再生に有利である。なぜなら、光学特性の温度変化が可逆的で、相状態の変化がなく原子の移動が少ないほど、再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できるからである。
また、金属酸化物は一般的に高融点であり、安定な物質である。たとえばZn(金属亜鉛)の融点は420℃、沸点は907℃と金属としては比較的低いが、ZnOの融点は1975℃とされ非常に高い。通常、光情報記録媒体のレーザ照射によって、このような融点に匹敵する温度には上昇しない。たとえばDVD−RAMなどで実用化されている相変化記録材料の場合、記録温度は融点600℃を超える程度と言われている。従って、レーザ照射による通常の情報再生においては、金属酸化物が溶融することもなく、結晶構造の変化を伴わない。すなわち、結晶構造を保持したまま、光学特性が変化していると考えられる。例えば透過率スペクトルの温度変化を見ても、スペクトル形状を保持したままシフトが見られる。このことは、温度変化によって結晶構造を保持したまま構造的にはほとんど変わらず、言い換えれば結晶相の変化を伴う構造変化ではなく電子状態の変化で説明できる程度の状態変化であることを裏付けている。
以上のように、本発明は、透明半導体のバンドギャップの温度変化を利用するため、結晶構造が変わらず構造変化を伴わない。それゆえ、組成や形状が変化しにくく、耐久性に優れた光情報記録媒体を提供することができる。
本実施形態の光情報記録媒体は、例えば、以下の方法により製造することができる。
まず、記録情報に対応するピット及び/または溝が刻設された面(記録情報面)を有する基板12に、反射膜14としての金属膜、超解像再生膜13を順次マグネトロンスパッタ法により成膜する。なお、超解像再生膜13の材料によっては、成膜時に基板12を数百℃に加熱した状態でスパッタを行い、結晶性を高めても構わない。また、超解像再生膜13の金属酸化物は、金属ターゲットを、酸素を含むArガス流中でスパッタして成膜してもよいし、あるいは焼結体などの金属酸化物そのもののターゲットをスパッタして成膜しても構わない。さらに、成膜条件によって超解像特性が変わる場合もあるが、上記のいずれの方法によっても、所望の特性が得られれば構わない。
最後に、これらの情報記録面、反射膜14、及び超解像再生膜13を外部環境から保護するために、紫外線硬化型アクリル樹脂等を超解像再生膜13上にスピンコートし、紫外線照射により硬化させて透明樹脂層11を形成する。
なお、ここでは、光情報記録媒体1に対して記録再生ビームの入射が透明樹脂層11側から行われる場合について説明したが、本発明の光情報記録媒体は、光情報記録媒体1と同様の層構造(ただし、超解像再生膜13と反射膜14との位置は逆転させる)を備え、再生ビームの入射が基板12側から行われる光情報記録媒体であってもよい。この構成では、反射膜14における超解像再生膜13と反対側に、保護層が形成されていることが好ましい。
この構成では、基板12としては、再生ビームの入射を妨げず、かつ、光情報記録媒体に適当な強度を付与し得るものが望ましく、例えば、ガラス;ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、熱可塑型ポリイミド、PEN、PES等の熱可塑性透明樹脂;熱硬化型ポリイミド、紫外線硬化型アクリル樹脂等の熱硬化性透明樹脂等、及びそれらの組合せが挙げられる。基板12の厚みとしては、通常、0.3mm〜1.2mm程度の厚みを有していることが適当である。
この構成では、保護層としては、超解像再生膜13、反射膜14を保護できるものであればどのような材料によって形成されていてもよい。具体的には、基板12と同様の材料が挙げられる。なお、保護層は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。保護層は、通常、1μm〜100μm程度の厚みを有することが適当である。
さらに、本発明の光情報記録媒体では、光情報記録媒体1のように基板12の片面のみにピット及び溝の双方または一方が形成されていることが好ましいが、基板12の両面にピット及び溝の双方または一方が形成されていてもよい。
さて、上記の様に光学吸収端の波長変化が存在すると言っても、材料によって各々光学吸収端やシフト量の値は異なるものであり、光学吸収端波長と再生ビーム波長との大小関係、位置関係により、透過率変化の量は当然異なってくることになる。そこで、どの範囲が望ましいかについて、以下に具体的な光情報記録媒体を用いて、検証を行った。
検証に用いた光情報記録媒体は、以下の実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2及び比較例3の6種類である。
〔実施例1〕 光ビーム入射側から順に、膜厚0.1mm程度の透明樹脂層11、膜厚140nm程度のZnO膜からなる超解像再生膜13、膜厚50nm程度のAlNi合金膜からなる反射膜14、基板12からなり、基板12の内側の面(反射膜14側の面)に、情報に応じた凹凸パターンのピットが形成されている構成の光情報記録媒体。
〔実施例2〕 上記実施例1と同様の構成で、超解像再生膜13としてZnO膜の替わりにCeO膜を用いた光情報記録媒体。
〔実施例3〕 上記実施例1と同様の構成で、超解像再生膜13としてZnO膜の替わりにTiO膜を用いた光情報記録媒体。(ただし、基板12を500℃に加熱した状態でTiOを成膜した。また、この時、基板12には500℃においても凹凸形状や溝形状の変化しないガラスを用いた。)
〔比較例1〕 上記実施例1において、超解像再生膜13を設けない光情報記録媒体。すなわち光ビーム入射側から順に、膜厚0.1mm程度の透明樹脂層11、膜厚30nm程度のAl膜からなる反射膜14、基板12が積層された光情報記録媒体。
〔比較例2〕 上記実施例1と同様の構成で、超解像再生膜13としてZnOの替わりにSiを用いた光情報記録媒体。
〔比較例3〕 上記実施例3と同様の構成で、超解像再生膜13としてTiOを用いた光情報記録媒体。(ただし、基板加熱しない状態で、それ以外の条件は実施例3と同様にTiOを成膜した。)
上記6種類の光情報記録媒体における超解像再生膜13の材料の物性について、以下に説明する。まず、X線結晶回折による構造解析により結晶性を確認した。尚、X線結晶回折による構造解析には、上記6種類の光情報記録媒体において、透明樹脂層を設けない構成のサンプルを用意し測定を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2006277918
なお、上記6種類の光情報記録媒体について、測定装置の都合上、膜面の法線方向(膜面に垂直方向)の結晶性しか解析していない。しかしながら、すでに説明したように、最も結晶性及び配向性を持ちやすい膜面の法線方向に結晶性が確認できない場合には、薄膜に結晶性、周期的秩序性構造は見られないと考えられる。このため、表1では、超解像再生膜13の結晶性が確認できた場合には、どの結晶構造を持つか、また、膜面の法線方向にどの結晶面が優先的に配向しているかを示した。なお、実施例3について、TiOは、室温ではルチル型あるいはアナターゼ型の二種類の結晶構造をとりうることが一般的に知られている。しかしながら、本測定によると、実施例3の作成条件ではアナターゼ型の結晶構造を示すことが分かった。
また、光学吸収端波長は、各試料の透過率スペクトルから吸収係数を求め、直接遷移型半導体の理論計算から求めた。
また、表1において、超解像再生効果を示す場合は○、示さないものは×とした。比較例1は超解像再生膜13が存在しないので、この結果のみ記載している。
図5に、実施例1の超解像再生膜13であるZnO膜(膜厚140nm程度)単独での透過率の波長依存性を示す。分光特性評価用に、実施例1と同じ膜厚140nm程度になるようにガラス基板(コーニング社7059)上に成膜したZnO膜の(ガラス基板を含めた)透過率スペクトルを示す。
図7に、同様に実施例2のCeO膜(膜厚140nm程度)単独での透過率の波長依存性を示す。また、図8は、同様に比較例2のSi膜(膜厚140nm程度)単独での透過率スペクトルを示す。
図5、及び図7では、30℃と200℃とでの透過率スペクトルを示したが、これによると、温度上昇に伴い、光学特性が変化しているのがわかる。さらに、30℃に温度が下がった時には昇温前の30℃のスペクトルと一致することを確認している。すなわち温度変化に対して可逆性が確認できている。
一方、図8のSi膜に関しては、波長300nm付近で透過率が減少しているが、この減少はガラス基板だけを測定したときにも見られたため、これはガラス基板による吸収であると考えられる。この吸収を無視すると、Si膜は誘電体(絶縁体)であり、300nmに近づくにつれて透過率が減少していく。しかしながら、上記のZnO膜やCeO膜で見られたような光学吸収端は確認できなかった。また、図8の透過率スペクトルから、このSi膜の光学吸収端波長は、300nm以下であると見積もられる。このことは、バンドギャップが4eVを超えると言うことを意味し、Si膜が誘電体であることを裏付ける。
また、比較例2のSi膜では、上記のように光学吸収端波長が300nm以下の短波長であるのに、400nm強の辺りから短波長側にかけて吸収が見られている。このなだらかな吸収の波長依存性は、本実施の形態の前半ですでに説明した理由により、このSi膜がアモルファス状態であることによるものと推測される。また、表1でも示したように、X線回折の結果では、比較例2のSi膜がアモルファスであることが確認されている。図8には、温度依存性を示していないが、ガラス基板による吸収が無視できない波長領域を除いた場合にSi膜に温度依存性が見られなかったからである。すなわち、Si膜では、透過率スペクトルの温度シフトが見られなかった。
次に、図5、図7、及び図8で示した光学特性を持つ試料のX線回折結果を、それぞれ図9、図10、及び図11に示す。すなわち、図9は上記したZnO膜の、図10はCeO膜の、図11はSi膜のX線回折ピークを示す図である。測定はCu−Kα1線による2θ/θスキャンX線回折法で行った。
図9によると、ZnO膜の(002)面回折ピークが選択的に見られ、膜面の法線方向に(002)面が配向していることが分かる。一般に、ZnO(ウルツ鉱型)は、六方晶のc軸配向しやすいことが知られており、この試料においても同じ結果が得られた。同様に、図10によると、CeO膜では、(200)面が優先的に配向していることが分かった。さらに、図11によると、Si膜では、回折ピークが見られず、結晶性を持たないアモルファス状態であることが確認できた。なお、上記ZnO膜、及びCeO膜とも、実施例1、2と同様に基板加熱をせずに成膜している。この測定結果から、上記ZnO膜、及びCeO膜は、基板加熱しなくても、結晶性がよいことが分かった。すなわち、これらの材料は、結晶化のための基板加熱プロセスが省略できるので、本発明の光情報記録媒体を作製するのに有利である。
また、図には記載しないが同様にTiOについての結果は表1に示した通りである。具体的には、比較例3のように基板加熱をせずにTiO膜を成膜した場合、TiO膜は、結晶構造を持たずアモルファスであり、光吸収端波長が約348nmであると見積もられる。また、透過率スペクトルの下がり方は、ブロードであった。しかもSi膜と同じく、透過率スペクトルの温度シフトは見られなかった。
これに対して、実施例3のように基板を500℃に加熱して(ただし基板12がガラス基板)TiO膜を成膜した場合、TiO膜は、膜面法線にアナターゼ(004)面の配向をする結晶性を持ち、光吸収端波長は379nm程度であり、かつ透過率スペクトルの温度シフトと光学特性変化が見られた。
なお、これらの試料ZnO膜、CeO膜、TiO膜(結晶性、またはアモルファス)、及びSi膜を、酸化を防ぐためにそれぞれ窒素雰囲気中で200℃に昇温して再度X線回折測定を行い、測定後室温に戻った状態で再度X線回折測定を行ったところそれぞれ初期状態とほとんど変わらなかった。すなわち、結晶構造を持つものはほぼ同じ角度に回折ピークが見られ、アモルファスのものは同じくアモルファスであった。これらの材料はいずれも融点が高いが、30℃から200℃への温度変化の範囲内にてほとんど結晶構造あるいはアモルファス状態が変化していないことを示している。もちろん、ここでは30℃と200℃とでしか測定は行っていない。しかしながら、材料特有の特別な相転移点がない限り、30℃と200℃との間の温度で結晶構造が変化して、また元に戻ったとは考えにくい。また、透過率スペクトルも、バンドギャップの変化で説明できる部分以外ではほとんど温度変化していないことから、結晶構造を保持したままであり、結晶構造の変化を伴う現象は生じていないと考えられる。
上述した構造、及び光学特性を持つ材料を超解像再生膜13として用いた、実施例1〜3、及び比較例1〜3の光情報記録媒体について信号評価を行った。その結果について、以下に説明する。
評価装置は、すでに示した評価系で行った。なお、再生波長は408nm、NAは0.65である。そして、線速を3m/sとして、信号評価を行った。
評価方法は、ピットとスペースが同じ長さで交互に並んでいる連続ピット列(例えばピット長0.14μmであれば、0.28μm周期でピットが連続して配列している)の搬送波雑音比C/Nを評価した。光学系のカットオフ周波数はλ/2NAで表されるので、連続ピットのピット長で表すと解像限界はその半分λ/4NAとなる。従って、光学系の解像限界はピット長0.16μmである。評価装置に対して解像限界よりも小さなピット、すなわち上記ピット長よりも小さな連続ピットのC/Nを得ることができれば超解像再生が実現していることになる。
図12に、実施例1の光情報記録媒体と比較例1の光情報記録媒体とにおける、評価装置光学系での搬送波雑音比C/Nの評価結果を示した。横軸が上記ピット長、縦軸がC/Nである。また、実施例1の光情報記録媒体については再生レーザパワーPを1mW、または4mWとした場合、比較例1の光情報記録媒体についてはPを1mWとした場合での評価結果を示している。また、光学系の解像限界0.16μmのピット長で、実施例1の光情報記録媒体のC/Nの値が最大値を示すP=4mWを最適パワーとした。なお図12では、比較例1の光情報記録媒体において、Pを4mWとした場合の結果は図示しないが、1mWの時と変化が無かった。
この結果によると、比較例1の光情報記録媒体においては、ピット長0.16μm付近でC/Nが0になっており、光学系の解像限界であることを示している。上記の通り比較例1の光情報記録媒体においてP=4mWとした場合も同様である。また、実施例1の光情報記録媒体でも、P=1mWの時には、若干短ピットにおいてもC/N値を示してはいるが、解像限界付近でC/Nが0に近づいている。
これに対し、実施例1の光情報記録媒体において、P=4mWとした場合には、光学系の解像限界である0.16μm長の連続(繰り返し)ピットについて、40dB以上のC/Nが得られていた。さらに、小さいピット長0.14、0.12μm長の連続ピットについても、30dB程度またはそれ以上のC/N値が得られている。すなわち、光学系の解像限界を超える超解像効果が得られ、0.16μmの半分程度まで解像限界を小さくできている。このことは、すでに説明したようにレーザ照射により超解像再生膜13の温度が上昇し、ビームスポットの一部が高温領域となり、その領域において光学特性が変化することによると考えられる。
また、P=1mWの低パワーでは、ビームスポット内の到達温度も低く、ほぼ室温の低温領域と高温領域との温度差が小さいので、ビームスポット内の光学特性の変化が小さい。一方、P=4mWの高パワーでは、高温領域の到達温度が高くなる。これにともない、ビームスポット内において、ほぼ室温の低温領域と高温領域との温度差が大きくなり、ビームスポット内での光学特性の差が大きくなることによって、超解像再生効果が現れるものと考えられる。
次に、図13に、実施例1、実施例2、及び比較例2における光情報記録媒体の搬送波雑音比C/Nの評価結果を示す。光学系の解像限界を示すために比較例1の光情報記録媒体の結果も併せて示す。また、実施例2及び比較例2の光情報記録媒体においても、P=4mWで評価を行った。
図13によると、超解像再生膜がCeO膜である実施例2では、超解像再生効果を示すのに対し、Si膜である比較例2では、超解像再生効果は見られない。この結果から、ZnO膜、またはCeO膜のように、光学吸収端波長が比較的再生波長に近く、かつ膜面の法線方向に優先的に結晶配向性を持ち、そのことによりバンドギャップエネルギーの温度変化に対応して光学特性が変化する超解像再生膜を持つ構成、すなわち実施例1及び2の光情報記録媒体では、超解像再生効果を示すことがわかった。その一方で、光学吸収端波長が再生波長から遠く、アモルファスであり、温度変化によって光学特性が変化しない比較例2では超解像再生効果は見られない。
さらに、図14に実施例2、実施例3、及び比較例3における光情報記録媒体の搬送波雑音比C/Nの評価結果を示す。光学系の解像限界を示すために比較例1光情報記録媒体の結果も併せて示す。なお、実施例3及び比較例3の光情報記録媒体においても、P=4mWで評価を行った。図13と同様に、比較例1のP=1mW、実施例2のP=4mWである。光学吸収端波長も併せて示した。
図14をもとに、実施例3と比較例3との光情報記録媒体について説明する。実施例3と比較例3との光情報記録媒体は、共に超解像再生膜として、TiOを用いている。しかしながら、実施例3の光情報記録媒体では、TiO成膜時に500℃の基板加熱を行ったのに対し、比較例3の光情報記録媒体では、成膜時に基板加熱を行わなかった。それ以外の成膜条件は同じである。
評価結果では、TiOが結晶性を持つ実施例3の光情報記録媒体では、超解像再生効果を示すのに対し、TiOがアモルファス状態である比較例2の光情報記録媒体では、超解像再生効果は見られない。この結果から、同じ材料であっても、膜面の法線方向に優先的に結晶配向性を持ち、そのことによりバンドギャップエネルギーの温度変化に対応して光学特性が変化する超解像再生膜を持つ構成、すなわち実施例3の光情報記録媒体では超解像再生効果を示すことが分かった。これに対し、アモルファスであり、温度変化によって光学特性が変化しない比較例3の光情報記録媒体では、超解像再生効果は見られないと言える。また、この結果を製造の見地から見れば、この実施例3の光情報記録媒体において超解像再生効果を得るためには、超解像再生膜TiO成膜時に基板加熱を行って結晶性をよくすることが、有利であり望ましいと言える。
なお、比較例3の光情報記録媒体における光学吸収端波長は、透過率スペクトルがブロードながらほぼ348nmであると見積もられ、実施例2の光情報記録媒体における光吸収端波長(344nm)とほぼ同じである。しかしながら、実施例2の光情報記録媒体では超解像再生効果が見られた。光学吸収端波長がほぼ同じであっても、結晶性がよく、バンドギャップエネルギーが膜中で均一であり、温度変化による光学特性の変化が大きければ、超解像再生効果が得られると考えられる。逆に言えば、今まで説明してきたように、光学吸収端波長が再生波長に近ければ有利ではあるものの、それ以上に結晶性がよく、バンドギャップエネルギーが膜中で均一であり、温度変化に対応する光学特性の変化の大きいことがより重要であると考えられる。
また、以上の結果を製造の見地から見れば、実施例1及び2の光情報記録媒体では、超解像再生膜ZnO及びCeOとも、成膜時に基板加熱しなくても結晶性のよい膜が得られるので、基板加熱プロセスを省略することができ、有利であり望ましいと言える。一方、基板加熱をすることによって上記材料の良好な結晶性を得ることもできるので、本願の効果を奏する超解像再生膜を得るために、基板加熱して成膜しても構わない。
以上のように、実施例1、実施例2、及び実施例3の光情報記録媒体について、結晶性と超解像再生効果とについて説明してきた。次に、膜面に対する配向性について次に説明する。
実施例3と比較例3とを比べてみると、超解像再生膜がアモルファスである比較例3の光情報記録媒体では超解像再生効果を示さなかったのに対し、超解像再生膜が膜面の法線方向にTiO(アナターゼ型)の(004)面が優先配向する実施例3の光情報記録媒体では、超解像再生効果を示した。同じく、膜面の法線方向にZnO(ウルツ鉱型)の(002)面が優先配向する実施例1の光情報記録媒体、あるいはCeO(蛍石型)の(200)面が優先配向する実施例2の光情報記録媒体では、超解像再生効果を示すことが分かった。
すでに説明したように、超解像再生膜が結晶性を示す薄膜である場合、一般的に膜面の法線方向に優先的に配向しやすい。従って、少なくとも膜面の法線方向に優先的な配向、あるいは結晶構造を有する薄膜であれば、その薄膜は結晶構造を有すると判断でき、超解像再生効果が期待できる。また、再生光は、レンズで集光されているとはいえ、実際に信号を読み取るビームウェストでは最も集光されており、ほぼ平行光とみなすことができる。このため、再生光の入射方向は、上記膜面の法線方向と一致する。この方向に優先配向を示す結晶構造を持つ超解像再生膜であれば、配向がランダムである多結晶よりも規則的で単結晶に近いので、本来材料が持つ性質を比較的良好に示すことができる。
本願の場合、バンドギャップ特性すなわち光学吸収端の均一性が重要である。しかしながら、超解像再生膜がこの方向に優先配向を示す結晶構造であれば、バンドギャップエネルギーがよりこの方向に均一で、温度変化による光学特性の変化が大きく、超解像再生効果が得られると考えられる。
さて、以上のように超解像再生効果を実施例1、2、及び3の光情報記録媒体について説明してきた。次に、再生安定性、耐久性について説明する。
これまでの図5、図6、及び図7では、分光装置の性能上30℃から200℃への温度変化しか測定してこなかった。しかしながら、実際の光情報再生においては、ビームスポットの高温領域はそれ以上に熱せられていると考えられる。したがって、図5〜図7に示した以上に光学特性が変化していると考えられる。ただし、実施例1及び2に用いたZnO、CeOの融点は、それぞれ1,975℃、1,950℃であり、レーザ照射による到達温度(現在実用化されている光ディスクのうちで到達温度が最も高いとされるのは相変化記録媒体であり、記録温度は600℃程度と言われている)とは比較にならないほど高い。このため、ZnO、CeOが構造変化したりすることはないと考えられる。すなわち、この超解像再生を行っても超解像再生膜が劣化の原因にはならないと考えられる。
そこで、実際に実施例1及び実施例2の光情報記録媒体を、P=4mWで解像限界以下の0.14μmピットを連続して超解像再生した。その結果、実施例1及び実施例2の光情報記録媒体ともに、10万回再生してもC/N値は、初期値と同じ値を示し続け、劣化することはなかった。すなわち、実用可能な再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できた。
なお、実施例3の光情報記録媒体についても、実施例1及び2と同様の再生安定性の評価を行ったところ、10万回再生してもC/N値は初期値と同じ値を示し続け、劣化することはなかった。すなわち、実用可能な再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できた。TiOは、融点が1,800℃程度と高いが、それ以下の温度でアナターゼ型からルチル型へ結晶転移することが知られている。そして、その転移温度は、不純物によって敏感であり500〜800℃の幅を持つことが知られている。今回、実施例3の光情報記録媒体についても充分な再生安定性が確認されたことから、初期状態のアナターゼ型から構造変化がなかったと考えられ、今回の再生条件では、実際の媒体温度が500℃以上には昇温していないと考えられる。
これらの実施例の光情報記録媒体における超解像再生膜は、再生に伴う温度変化によって劣化することなく可逆性を持つ。そして、透過率スペクトルなどの光学特性は、再生前後の室温において実質的に同じ(略同一)であることがわかる。したがって、超解像再生膜は、上記で説明したように、再生に際して構造変化することなく、結晶構造を保持したままバンドギャップの変化によって光学特性を変化させていると考えられる。
超解像再生膜13として用いた実施例1のZnO膜、実施例2のCeO膜、及び実施例3のTiO膜はいずれも、波長400nm〜800nmの範囲付近で屈折率n=2.0程度あるいはそれ以上と高く、単独では透過率が50%以上とほぼ透明である。これにより光干渉を利用して超解像再生効果を制御、設計することができるので望ましい。また、透過率が高いため光利用効率が高く、光情報記録媒体を多層化した場合にも有利である。
また、本実施の形態、各実施例のように超解像再生膜が一種類の金属元素と酸素からなる単一相からなる金属酸化物によって構成されれば、不純物ドーピングや共晶、混晶の場合に比べて、結晶性が高くなるので望ましい。また組成制御も単純であり成膜が容易となり製造にも有利である。
なお、以上の説明では超解像再生膜13の光学特性として、主に透過率について説明したが、温度変化によって光学特性が変化すれば、その指標は透過率に限るものではない。
その変化の指標としては、例えば、光情報記録媒体1の反射率であっても構わないし、超解像再生膜13の透過率であっても構わない。さらに他に、超解像再生膜13の反射率、透過率を始め、屈折率、複素屈折率、またその虚数部である消衰係数、吸収係数、誘電率、複素誘電率、またその虚数部である損失誘電率、ほか、いずれの値を指標としても構わない。本願の目的は、温度変化によって超解像再生膜13の光学的な特性が変化し、光情報記録媒体1のビームスポット内の一部分の反射率を変化させて超解像再生を実現するものであり、その目的を果たすことができれば、いずれの光学パラメータを指標として変化を確認しても構わない。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、上記実施の形態1にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
最初に、本実施形態の光情報記録媒体の構成について説明する。本実施の形態の構成を図示すれば図15の通りである。
図15に示すように、光情報記録媒体2は、上記実施の形態1の光情報記録媒体1に比べて、反射膜14の代わりに光吸収膜15を設けた構成である。なお、再生方法、製造方法、評価装置、評価方法などは上記実施の形態1と同様である。
光吸収膜15は、反射膜14のように反射率の高い金属ではなく、情報を再生する光を一部吸収して熱を発生することが目的である。図15のように、超解像再生膜13に隣接していても構わないし、または実際には他の薄膜を介していても構わない。光吸収膜15の位置は、再生ビームを一部吸収し熱を発生することができれば、いずれの位置でも構わない。
この光吸収膜15は、すでに上記実施の形態1で説明した超解像再生膜13の温度上昇を補助する役割を担う。図15の構成では、再生ビームは超解像再生膜13と光吸収膜15とで多重干渉を起こしながら、ある程度の光を反射する。そして、光吸収膜15では、ある程度の光が吸収されて熱となり、超解像再生膜13に伝わる。このため、上記実施の形態1の場合に比べて、少ない再生レーザパワーにて効率よく超解像再生膜13を昇温させることができ、超解像再生効果を得ることが期待される。すなわち、再生光パワー感度が良好となることが期待される。
光吸収膜15の材料としては、再生ビームの波長で反射率がある程度あり、かつある程度の光吸収を示す材料であれば、特に限定されるものではない。例えば、Si、Geなどの半導体、相変化記録材料として利用されているGeSbTeまたはAgInSbTe、あるいは、ある程度の光吸収を示す金属Ni、Cuなどが挙げられる。なお、光吸収膜15の成膜は、上記実施の形態1で説明した反射膜14の成膜と同様にして成膜される。
ただし、光吸収膜15は、超解像再生膜13の温度上昇を補助する役割を担うために設けられるのであって、所望の効果を得ることができれば、いずれの材料であってもかまわない。
次に、本実施形態の光情報記録媒体について、以下の実施例4を挙げて、より具体的に説明する。実施例4に用いた光情報記録媒体は、以下の通りである。
〔実施例4〕 上記実施例1と同様の構成で、反射膜14の替わりに光吸収膜15として膜厚50nm程度のSi膜を用いた光情報記録媒体。
図16に、図6と同様に低温(30℃)及び高温(200℃)における膜厚140nmのZnO膜と膜厚50nmのSi膜とからなる超解像再生膜13、光吸収膜15の分光反射率特性を示す。このような光情報記録媒体2、実施例4と同様の構成の反射率について説明する。
図16のZnO膜厚140nmの場合、再生波長408nmにおいて、光学特性(具体的には反射率)が温度変化に応じて変化している。以上のように、実施の形態1ですでに説明したのと同様に、本実施の形態の光情報記録媒体2、実施例4と同様の構成であっても、ビームスポット内での温度分布を利用して一部分だけ光学特性を変化させることができる。また、実施例1に比較すると再生波長における反射率が小さくなっており、反射膜14の替わりに設けられた光吸収膜15によって吸収されていると考えられる。
以上の構造を有する実施例4の光情報記録媒体について、実施の形態1と同様に信号特性の評価を行った。その結果について説明する。
図17に、実施例4と実施例1とについて、評価装置光学系での解像限界以下の0.14μmピットの搬送波雑音比C/Nの評価結果を示した。再生レーザパワー感度を比較するため、横軸に再生レーザパワー、縦軸をC/Nとし、C/Nの再生レーザパワー依存性を示した。
この結果によると、実施例1では、すでに説明したように、P=4mWの高パワーでC/Nの最適値をとっていたが、実施例4ではより低いP=3mWで最適値をとっていることが分かる。すなわち、光吸収膜15が再生ビーム光を一部吸収して熱を発生することによって、効率よく超解像再生膜13が昇温するので、より低パワーでも超解像再生効果が得られると考えられる。さらに最高到達C/N値も実施例1に比べて40dB超と高くなっている。この効果も温度上昇の効率化によるものと考えられる。これにより再生レーザパワー感度及びC/Nが良好な光情報記録媒体が実現できる。
なお、実施例4についても実施例1、2と同様の再生安定性の評価を行ったところ、10万回再生してもC/N値は初期値と同じ値を示し続け、劣化することはなかった。すなわち実用可能な再生安定性、耐久性、信頼性の高い光情報記録媒体が実現できた。
光吸収膜15の材料については他にGe、AgInSbTeについても検討を行い、同様の結果を得た。つまり光吸収膜15は超解像再生膜13の温度上昇を補助する役割を担うために設けられるのであって、所望の効果を得ることができればいずれの材料であってもかまわない。
また、この光吸収膜15の効果を確認できたことで、本発明の超解像再生膜13の超解像再生効果の起源が熱にあるという説明が妥当であると考えられる。つまり、より低い再生レーザパワーによって同等の効果を得られるということは、この効果が光強度そのものによるのではなく、光が吸収されて発生した熱によって起こっているいわゆる熱モードであることを示唆している。
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について図18及び図19に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、上記実施の形態1にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
本実施形態に係る光情報記録媒体は、図18及び図19に示すように、記録・再生用(追記型または書換型)の光情報記録媒体3であり、記録・再生用の光ビームである記録再生ビーム32が入射する側から、透明樹脂層11、超解像再生膜13、記録層16及び基板12がこの順に形成されてなる。超解像再生膜13は、実施の形態1と同様である。
記録層16は、当該分野で通常使用される記録材料によって形成することができる。例えば、光情報記録媒体3を追記型媒体とする場合には、シアニンやフタロシアニン等の有機色素材料を用いることができる。
また、光情報記録媒体3を書換型(記録再生消去型)媒体とする場合には、記録層16として、TbFeCo等の光磁気記録材料や、AgInSbTe、GeSbTe、AgInSb等の相変化記録材料を用いることができる。TbFeCo等の光磁気記録材料を用いる場合には、記録層16を、例えば、SiN(窒化ケイ素)等の誘電体材料からなる誘電体層、光磁気記録材料からなる記録層、及びSiN等の保護材料からなる保護層の3層からなる積層構造とするとよい。また、AgInSbTe、GeSbTe、AgInSb等の相変化記録材料を用いる場合には、記録層16を、例えば、ZnS・SiO2膜等の誘電体層、AgInSbTe、GeSbTe、AgInSb等の相変化記録材料からなる記録層、及びZnS・SiO2膜等の保護層の3層からなる積層構造とするとよい。また、記録層16の層厚は、特に限定されるものではなく、例えば、5nm〜500nm程度が適当である。
追記型、または書換型のいずれにおいても、場合によっては記録層16にさらに光を有効に反射させるための反射層を有していてもよい。
基板12は、実施の形態1と同様、光情報記録媒体1に適当な強度を付与し得るものであればよく、透明でも不透明であってもよい。基板12を構成する材料としては、前述した基板12を構成する材料が挙げられる。基板12の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、0.1mm〜1.2mm程度が適当である。なお、本実施形態では、ピットや溝が形成されている基板12に代えて、平坦な基板を用いてもよい。
透明樹脂層11及び超解像再生膜13は、上記実施の形態1と同様である。
また、本実施形態に係る光情報記録媒体3は、超解像再生膜13が記録層16に対して光ビームを照射する側に位置しているが、本願の技術思想は、この位置関係に限定されるものではない。具体的にはビーム照射側から、記録層16、超解像再生膜13、場合によっては反射膜14の順番とすることなども本願の技術思想に含まれる。
このような構成により、いわゆるCD−R(Compact Disc Recordable)、CD−RW(Compact Disc ReWritable)、DVD−R(Digital Vesatile Disc Recordable)、DVD−RW(Digital Vesatile Disc ReWritable)、DVD−RAM(Digital Vesatile Disc Random Access Memory)、MO(Magneto-Optical disc)等の書き込み可能な記録層を有する光情報記録媒体を実現することができる。
また、上記光情報記録媒体3は、上記実施の形態1の光情報記録媒体1と同様の再生方法により再生することができる。すなわち、図19に示すように、上記光情報記録媒体3は、図1に示す半導体レーザ121のようなレーザ光源と、図1に示す対物レンズ125に対応する集光レンズ31等の光学系とを用いて記録再生ビーム32を透明樹脂層11側から超解像再生膜13を介して記録層16に入射させる。このとき、超解像再生膜13における光ビームスポット内に高温部分と低温部分とが発生するように光ビームを照射し、超解像再生膜13の高温部分での光学特性を変化させる。そして、記録層16での反射光を光ヘッド(図示しない)で検出することで情報を再生する。
上記光情報記録媒体3では、入射する光から見て超解像再生膜13の背面(記録再生ビーム32が照射される面の背面)上に記録層16が設けられているため、再生時、透明基板の案内溝に、記録再生ビーム32が導かれると、記録再生ビーム32が超解像再生膜13を通して、記録層16に入射する。この記録再生ビーム32の入射によって、上述したように、超解像再生膜13の温度が上昇し、図4に示すように、再生ビームスポット33の進行方向に向かって後方側に高温部33aが、前方側に低温部33bが発生する。
本実施形態では、超解像再生膜13は、温度上昇に応じて光学特性が変化する性質を持つため、記録層16に記録されている情報を光学的空間分解能(再生用光ビームの解像限界)以下で再生することができる。このため、高密度に記録された情報を高品質で再生することが可能となる。以上のようにして、本実施形態の光情報記録媒体では、超解像再生膜13を用いて、記録層16に記録された再生ビームの解像限界以下の微小記録マークを再生可能としている。
また、各層の膜厚や屈折率を設計することで光学干渉を利用して超解像再生膜13の温度上昇をさせやすくすることができる。特に、ほぼ透明である超解像再生膜13の膜厚や屈折率調整して光学干渉状態を設計することが有効である。その結果、より低いレーザパワーで再生することができ、再生感度の高い光情報記録媒体を実現することができる。
さらに、本実施形態に係る光情報記録媒体3は、上記実施の形態1と同様に、高温部33aの光学特性を変化させる超解像再生膜13を用いているため、記録や再生時の温度上昇により融解しない金属酸化物で超解像再生膜13を形成することができる。それゆえ、繰り返し記録や再生を行っても、マスク効果が低下せず、耐久性に優れているという利点もある。
また、記録方法については、特に限定されるものではなく、記録層16に用いた媒体に対応した記録を行うことができる。超解像再生膜13は、記録温度と比較して充分に高い融点を持つ金属酸化物からなるため、記録時にも劣化することはない。また、現在実用化されている一般的な記録媒体は、光強度そのものによって直接記録される光モード記録ではなく、実際にはビーム照射によって媒体の一部を昇温し、記録媒体固有の臨界温度以上にして記録を行う熱モード記録である。したがって、記録層16の記録時に超解像再生膜13の光学特性が変化しても記録には無関係であるので、記録層16に用いた媒体に対応した従来通りの記録方法で記録することができる。すなわち、記録過程に関して超解像再生膜13は何ら悪影響を与えない。
〔実施の形態4〕
本発明の他の実施の形態について説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、上記各実施の形態にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
なお、本実施の形態は、結晶構造を有する金属酸化物を超解像再生膜として用いた光情報記録媒体において、上記超解像再生膜の結晶性がどの程度再生特性に影響するのかについて検証したものである。ここでいう結晶性とは、法線方向を向いている結晶面の間隔のばらつきを示すものとする。そして、結晶性の良し悪しの判断は、X線回折スペクトルに現れる回折ピークの中でも、最も強度の強いピークにおける半値幅により行うものとする。すなわち、回折ピークの半値幅が狭いものは結晶性が良い(ばらつきが小さい)こと表すものとし、一方、回折ピークの半値幅が広いものは、結晶性が悪い(ばらつきが大きい)ことを表すものとする。
まず、本実施の形態における光情報記録媒体の構成について説明する。本実施の形態における光情報記録媒体の構成は、基本的に、上記実施の形態2に示した光吸収膜を用いた構成(図15)と同様のものである。より具体的には、本実施形態の光情報記録媒体は、再生ビーム入射方向からみて、透明樹脂層11、超解像再生膜13、光吸収膜15が、この順で、基板12上に形成された構成である。また、本実施形態では、超解像再生膜13の材料としてZnOを、光吸収膜15の材料としてGeを用いた。透明樹脂層11および基板12に関しては、上記実施の形態2に示したものと同様のものを用いた。
次に、本実施の形態における光情報記録媒体の製造方法について説明する。
はじめに、基板12上に、光吸収膜15としてのGe膜を50nm程度成膜した。Ge膜の成膜には、マグネトロンスパッタ装置を用いた。ターゲットとしては、Geターゲット(純度99.99%)を用いた。そして、投入電力200W、Ar流量16sccm、ガス圧6.5×10−1Paの条件下で膜形成を行った。
次いで、光吸収膜15上に、超解像再生膜13としてのZnO膜を130nm程度成膜した。ZnO膜の成膜には、薄膜形成手法の一つであるレーザーアブレーション法(Pulsed Laser Deposition、以下PLD法と称す。)を用いた。本実施形態においてPLD法を用いた理由は、スパッタ装置を用いた場合よりも、PLD法を用いた場合の方が、超解像再生膜13であるZnO膜の結晶性を大きく変化させることが可能であったからである。
使用したPLD装置の詳細を以下に示す。レーザ波長としては、YAGレーザの四倍高調波(266nm)を使用し、ターゲットとしては、ZnO焼結ターゲット(純度99.99%)を使用した。さらに、レーザをターゲットに集光させる集光レンズとして、焦点距離400mmの平凸レンズを用いた。
また、ZnO膜形成時の条件は、レーザービームエネルギーが40mJ/パルス、レーザービーム繰り返し周波数が10Hzである。また、成膜形成は酸素雰囲気中で行った。その際、酸素ガス圧、及び集光レンズ−ターゲット間距離を変化させることで、結晶性を変化させることにした。尚、酸素ガス圧は、10Paまたは1Paの2条件で行った。酸素ガス圧の調整は、酸素流量と排気バルブの開閉度とを調整することにより行った。また、集光レンズ−ターゲット間距離は、450mmと435mmとの2条件で行った。
次いで、PLD装置から基板を取り出した後、超解像再生膜13上に透明樹脂層11を形成した。透明樹脂層11の形成は、上記実施の形態2と同様である。
以上の工程を経て、超解像再生膜形成において、酸素ガス圧及び集光レンズ−ターゲット間距離の条件を変化させて、3種の光記録情報記録媒体を製造した。
上記超解像再生膜13の結晶性の違いがどの程度再生特性に影響するのかについて、上記の製造方法により製造された、具体的な光情報記録媒体を用いて、検証を行った。
なお、検証に用いた光情報記録媒体は、以下の実施例5、実施例6、及び実施例7の3種類である。
〔実施例5〕 超解像再生膜13及び光吸収膜15の材料をそれぞれ、ZnO及びGeでとした構成(以下、ZnO/Ge構成とする)であり、超解像再生膜であるZnO膜をPLD法で形成した光情報記録媒体(条件:酸素ガス圧10Pa,集光レンズ−ターゲット間距離435mm)。
〔実施例6〕 ZnO/Ge構成であり、超解像再生膜であるZnO膜をPLD法で形成した光情報記録媒体(条件:酸素ガス圧1Pa,集光レンズ−ターゲット間距離450mm)。
〔実施例7〕 ZnO/Ge構成であり、超解像再生膜であるZnO膜をPLD法で形成した光情報記録媒体(条件:酸素ガス圧1Pa,集光レンズ−ターゲット間距離435mm)。
上記実施例5〜7のように、ZnO膜成膜時の条件(酸素ガス圧及び集光レンズ−ターゲット間距離)を変えた3種の光情報記録媒体について、超解像再生膜の結晶性及び信号を比較した結果を以下に説明する。

まず、上記実施例5、実施例6、実施例7の光情報記録媒体における超解像再生膜であるZnO膜の結晶性の違いを確認するため、各情報記録媒体における超解像再生膜について、X線回折測定を行った。尚、X線回折測定には、それぞれの実施例の光情報記録媒体において透明樹脂層を設けない構成のサンプルを用意し測定を行った。具体的には、基板上に光吸収膜であるGe膜50nm程度、超解像再生膜であるZnO膜130nm程度が順に形成されている構成である。またX線回折測定は、Cu−Kα線による2θ/θスキャンX線回折法で行った。その結果を図20に示す。
図20に示すように、実施例5〜7の3種の光情報記録媒体いずれに関しても、ZnO膜の(002)面回折ピークが選択的に見られ、膜面の法線方向に(002)面が配向していることが分かった。このことから、実施例5〜7の光情報記録媒体はいずれも、結晶構造を有する金属酸化物からなる超解像再生膜を有していることが分かる。
図21に、図20で示したX線回折スペクトルの2θ角度30°〜40°の部分を拡大した図を示す。結晶性を示すために、最も強い強度を示した角度位置を基準値として、ピークの広がりがどの程度か、つまりX線回折ピークの半値幅を調べた。その結果、実施例5の光情報記録媒体では0.3°であり、実施例6の光情報記録媒体では0.8°であり、実施例7の光情報記録媒体では1.3°であった。すなわち、実施例5の光情報記録媒体が最も半値幅が狭く、すなわち結晶性が最も良かった。一方、実施例7の光情報記録媒体は、非常に半値幅が広く、結晶が最も悪かった。以上の結果より、上記実施例5〜7の3種類の光情報記録媒体では、超解像再生膜の結晶性が異なっていることが確認できた。
次に、実施例5〜7の3種の光情報記録媒体に対し信号特性の評価を行った。その結果について、以下に説明する。
信号特性の評価は、すでに上記実施の形態1で示した評価系を用いた。尚、再生波長404nm、NA0.85、線速3m/sとして、信号評価を行った。
図22に、実施例5〜7の各光情報記録媒体について、0.1μmピットの搬送波雑音比C/N値の再生レーザパワー(Pr)依存性を評価した結果を示す。尚、図22において、横軸は再生レーザパワーを、縦軸はC/N値を示している。
図22によると、再生レーザパワーPr=0.5mW〜2.5mWにおいて、実施例5〜7の間で、光情報記録媒体のC/N値に差が見られた。同図に示すように、実施例5の光情報記録媒体が、最も高いC/N値(例えば、Pr=2.0mWで38dB)を示した。次いで、実施例6の光情報記録媒体が高いC/N値を示し、(例えば、Pr=2.0mWで32dB)、実施例7の光情報記録媒体が最も低いC/N値(例えば、Pr=2.0mWで29dB)を示した。
この結果から、X線回折ピークの半値幅が狭く、結晶性が良好な超解像再生膜を備えた光情報記録媒体が、高いC/N値を得られることが分かった。すなわち、本実施形態の光情報記録媒体のC/N値は、超解像再生膜のX線回折ピークの半値幅(結晶性)に依存しており、X線回折ピークの半値幅が狭いほど高いC/N値を示すということがわかった。
さらに、この結果から、実使用レベルに達する要求の一つである30dB以上のC/N値を得るには、結晶性を示すX線回折ピークの半値幅が0.8°以下の超解像再生膜を用いればより好ましいことが分かった。
以下、実施例5〜7の各光情報記録媒体の間で、信号特性の差が出た理由について説明する。
上記信号特性の比較において差が出た理由の一つとしては、結晶性が相対的に良い、すなわちX線回折ピークの半値幅が相対的に狭い超解像再生膜の方が、超解像再生膜のバンドギャップのばらつきが少ないからであると考えられる。すなわち、実施例5及び実施例6の光情報記録媒体の超解像再生膜は、バンドギャップのばらつきが少ないために、より固有の波長にて光吸収が行われ、光学吸収端付近での透過率変化が急峻になる。それゆえ、媒体再生時の再生波長付近における光学特性(透過率または反射率)の変化が大きくなり、より良好な超解像再生効果が得られたからであると考えられる。
〔実施の形態5〕
本発明の他の実施の形態について説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、上記各実施の形態にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
本実施の形態は、結晶構造を有する金属酸化物を超解像再生膜として用いた光情報記録媒体において、上記超解像再生膜の配向性がどの程度再生特性に影響するのかを検証したものである。ここでいう配向性とは、法線方向に向いている結晶面の数の多少を示すものとする。そして、配向性の良し悪しの判断は、X線回折スペクトルに現れる回折ピークの中でも、最も強度の強いピークにおける強度で行うものとする。すなわち、回折ピークの強度が強いものは配向性が良い(結晶面数が多い)ことを表すものとし、一方、回折ピークの強度が弱いものは、配向性が悪い(結晶面数が少ない)ことを表すものとする。
まず、本実施の形態における光情報記録媒体の構成について説明する。本実施の形態における光情報記録媒体の構成は、基本的に、実施の形態2に示した光吸収膜を用いた構成(図15)と同様のものである。より具体的には、本実施形態の光情報記録媒体は、再生ビーム入射方向からみて、透明樹脂層11、超解像再生膜13、光吸収膜15が、この順で、基板12上に形成された構成である。また、本実施形態では、超解像再生膜13の材料としてZnOを、光吸収膜15としてはSi・Geからなる混合膜(以下、Si/Ge混合膜と称す)を用いた。透明樹脂層11及び基板12に関しては、実施の形態2に示したものと同様のものを用いた。
次に、本実施の形態における光情報記録媒体の製造方法について説明する。
はじめに、基板12上に、光吸収膜15としてのSi/Ge混合膜を50nm成膜した。Si/Ge混合膜の成膜には、マグネトロンスパッタ装置を用いた。ターゲットとしては、Si/Ge(組成比3:1)焼結ターゲットを用いた。そして、投入電力200W、Ar流量16sccm、ガス圧6.5×10−1Paの条件下で膜形成を行った。

次いで、光吸収膜15上に、超解像再生膜13であるZnO膜を170nm成膜した。ZnO膜の成膜には、マグネトロンスパッタ装置を用いた。ターゲットには、ZnO焼結ターゲット(純度99.99%)を用いた。そして、投入電力200Wの条件下で膜形成を行った。さらに、ZnO膜を形成する際、到達真空度とスパッタガス(ガスの種類及びガス量)とを変化させることで、膜の配向性を変化させることにした。
次いで、スパッタ装置から基板を取り出した後、超解像再生膜13上に透明樹脂層11を形成した。透明樹脂層11の形成は、上記実施の形態2と同様とした。
以上の工程を経て、超解像再生膜形成において、到達真空度とスパッタガス(ガスの種類及びガス量)の条件を変えて、2種の光記録情報記録媒体を製造した。
上記超解像再生膜13の配向性の違いがどの程度再生特性に影響するのかについて、上記の製造方法により製造された、具体的な光情報記録媒体を用いて、検証を行った。
なお、検証に用いた光情報記録媒体は、以下の実施例8及び実施例9の2種類である。
〔実施例8〕 超解像再生膜13及び光吸収膜15の材料をそれぞれ、ZnO及びSi・Ge混合膜とした構成(以下、ZnO/Si−Ge構成とする)であって、超解像再生膜であるZnO膜の形成を、到達真空度5.0×10−4Pa、使用ガス及びガス量をAr:16sccm、O:1ccm、ガス圧7.0×10−1Paの条件下で行い、製造した光情報記録媒体。
〔実施例9〕 ZnO/Si−Ge構成であって、超解像再生膜であるZnO膜の形成を、到達真空度1.6×10−4Pa、使用ガス及び量をAr:16sccm、ガス圧6.5×10−1Paの条件下で行い、製造した光情報記録媒体。
上記実施例8及び実施例9のように、ZnO膜成膜時の条件(到達真空度とスパッタガス)を変えた2種の光情報記録媒体について、超解像再生膜の配向性及び信号を比較した結果を以下に説明をする。
まず、上記実施例8及び実施例9の光情報記録媒体における超解像再生膜であるZnO膜の配向性の違いを確認するため、各情報記録媒体における超解像再生膜について、X線回折測定を行った。尚、X線回折測定には、それぞれの実施例の光情報記録媒体において透明樹脂層を設けない構成のサンプルを用意し測定を行った。具体的には、基板上に光吸収膜であるSi/Ge混合膜50nm程度、超解像再生膜であるZnO膜170nm程度が順に形成されている構成である。X線回折測定は、Cu−Kα線による2θ/θスキャンX線回折法で行った。その結果を図23に示す。
図23に示すように、実施例8及び実施例9の光情報記録媒体いずれに関しても、ZnO膜の(002)面回折ピークが選択的に見られ、膜面の法線方向に(002)面が配向していることが分かった。このことから、実施例8及び実施例9の光情報記録媒体はいずれも、結晶構造を有する金属酸化物からなる超解像再生膜を有していることが分かる。
図24に、図23で示したX線回折スペクトルの2θ角度30°〜40°の部分を拡大した図を示す。なお、縦軸は強度を示し、実施例8及び実施例9ともに同一スケールになっている。図24にからわかるように、実施例8及び実施例9の光情報記録媒体のZnO膜はともに、ほぼ同程度の半値幅(0.3°程度)を有している。一方、配向性を示すピーク強度については、実施例8の光情報記録媒体のZnO膜のピーク強度が、実施例9の光情報記録媒体のZnO膜のピーク強度よりも、遥かに大きいことがわかる。このことから、実施例8の光情報記録媒体は、実施例9の光情報記録媒体と比較して、ZnO膜が膜面の法線方向により優先的に配向していることが明らかである。以上の結果より、上記実施例8及び実施例9の2種類の光情報記録媒体では、超解像再生膜の配向性が異なっていることが確認できた。
このように超解像再生膜の配向性に差が現れた理由としては、ZnO膜形成時におけるチャンバー内の酸素量差が考えられる。実施例8の光情報記録媒体のZnO膜は、到達真空度が比較的悪く、さらに酸素ガスを導入した条件下で形成されたものである。それゆえ、膜形成時に膜に取り込まれる酸素量が多くなり酸素欠損が少なくなるため、より配向性が良い膜ができたものと考えられる。一方、実施例9の光情報記録媒体のZnO膜は、到達真空度が比較的良好であり、さらに酸素ガスを導入しない条件下で形成されたものである。それゆえ、膜形成時に膜に取り込まれる酸素量が少なくなり、一部酸素欠損が発生する。このため、実施例9の光情報記録媒体のZnO膜は、膜面に対し法線方向の配向を示すが、その程度が比較的悪くなったものと考えられる。
実施例8及び実施例9の2種の光情報記録媒体に対し信号特性の評価を行った。その結果について、以下に説明する。
信号特性の評価は、すでに上記実施の形態1で示した評価系を用いた。尚、再生波長は404nm、NAは0.85、線速は3m/sとして、信号評価を行った。
図25に、実施例8及び実施例9の各光情報記録媒体について、0.1μmピットの搬送波雑音比C/N値の再生レーザパワー(Pr)依存性を評価した結果を示す。尚、図25において、横軸は再生レーザパワー、縦軸はC/N値を示している。
図25によると、再生レーザパワーPr=1.0mW〜1.7mWにおいて、実施例8及び実施例9の間で、光情報記録媒体のC/N値に差が見られた。同図に示すように、実施例8の光情報記録媒体は、実施例9の光情報記録媒体に比べ、より高いC/N値を示している。
例えば、Prが1.7mWにおいて、実施例8の光情報記録媒体はC/N値が37dBである一方、実施例9の光情報記録媒体はC/N値が31dBであった。さらに、比較的低パワーにおいても、実施例8と実施例9との間で、光情報記録媒体のC/N値の差が見られた。図25に示すように、実施例9の光情報記録媒体よりも、実施例8の光情報記録媒体のほうが、再生感度が良好であることがわかる。
以上の結果から、X線回折ピークの強度が大きい、すなわち配向性が良好な超解像再生膜を備えた光情報記録媒体では、高いC/N値及び良好な再生感度が得られることが分かった。すなわち、本実施形態の光情報記録媒体のC/N値は、超解像再生膜のX線回折ピークの強度(配向性)に依存しており、X線回折ピークの強度が大きいほど高いC/N値を示し、再生感度が良好になるということがわかった。
以下、実施例8及び実施例9の各光情報記録媒体の間で、信号特性の差が出た理由について説明する。
上記信号特性の比較において差が出た理由の一つとしては、配向性が相対的に良い、すなわちX線回折ピークのピーク強度が相対的に高い超解像再生膜の方が、再生光の入射方向である膜面の法線方向により優先的に配向を示す結晶構造であるため、超解像再生膜の材料が本来持つ性質を比較的良好に引き出すことができるためであると考えられる。すなわち、配向性が相対的に良い超解像再生膜では、バンドギャップエネルギーがより膜面の法線方向により均一になっているために、より固有の波長にて光吸収が行われ、光学吸収端付近での透過率変化が急峻になる。それゆえ、媒体再生時の再生波長付近における光学特性(透過率または反射率)の変化が大きくなり、より良好な超解像再生効果が得られたからであると考えられる。
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、本発明の光情報記録媒体は、ディスク状、いわゆる円盤状の光ディスクのみならず、カード状又はシート状等の形状のものであってもよい。また、本発明の光情報記録媒体において、光情報記録の方式は光学的な方式であれば特に限定されるものではなく、本発明の光情報記録媒体は、光磁気ディスク、相変化型光ディスク等の種々の光情報記録媒体を含み得る。
また、本発明の光情報記録媒体は、上記実施の形態1〜3の光情報記録媒体における層構造を繰り返して積層したものであってもよい。例えば、2枚の基板上に超解像再生膜13、反射膜14または超解像再生膜13及び記録層16を形成し、これら基板をその超解像再生膜13、反射膜14又は記録層16が対向するように接合して、両基板側から光照射を行うことができるようにした構成とすることもできる。
さらに、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の光情報記録媒体は、実施の形態1あるいは2と同様の層構造を持つ再生専用面と、実施の形態3と同様の層構造を持つ記録再生可能な面とが混在する、ハイブリッド媒体としてもよい。
以上に説明してきたように、上述した本発明の実施の形態は、すでに挙げた各特許文献とは異なるものである。
本発明の光情報記録媒体は、記録情報に対応した凹凸形状のピットが形成された基板を備え、光ビームの照射によって上記情報を光学的に再生するための光情報記録媒体において、結晶構造を有する金属酸化物からなる超解像再生膜を少なくとも一層有し、情報再生時の光ビーム照射による上記光情報記録媒体の温度上昇に伴って上記超解像再生膜の光学特性が変化し、かつ上記光ビーム照射後の室温における上記超解像再生膜の上記光学特性が上記光ビーム照射前の室温における上記光学特性と実質的に同じであることを特徴とする光情報記録媒体とも言える。
また、本発明の光情報記録媒体は、基板を備え、情報を光学的に記録及び再生するための記録層を備え、光ビームの照射によって上記情報を光学的に記録及び再生するための光情報記録媒体において、結晶構造を有する金属酸化物からなる超解像再生膜を少なくとも一層有し、情報再生時の光ビーム照射による上記光情報記録媒体の温度上昇に伴って上記超解像再生膜の光学特性が変化し、かつ上記光ビーム照射後の室温における上記超解像再生膜の上記光学特性が上記光ビーム照射前の室温における上記光学特性が実質的に同じであることを特徴とする光情報記録媒体とも言える。
本発明の光情報記録媒体は、記録情報に対応した凹凸形状のピットが形成された基板を備え、光ビームの照射によって上記情報を光学的に再生するための光情報記録媒体において、結晶構造を有する金属酸化物からなる超解像再生膜を少なくとも一層有し、情報再生時の光ビーム照射による上記光情報記録媒体の温度上昇に伴って、上記超解像再生膜により上記光情報記録媒体の光学特性が変化し、かつ上記光ビーム照射後の室温における上記光情報記録媒体の上記光学特性が上記光ビーム照射前の室温における上記光情報記録媒体の上記光学特性と実質的に同じであることを特徴とする光情報記録媒体とも言える。
本発明の光情報記録媒体は、基板を備え、情報を光学的に記録及び再生するための記録層を備え、光ビームの照射によって上記情報を光学的に記録及び再生するための光情報記録媒体において、結晶構造を有する金属酸化物からなる超解像再生膜を少なくとも一層有し、情報再生時の光ビーム照射による上記光情報記録媒体の温度上昇に伴って、上記超解像再生膜により上記光情報記録媒体の光学特性が変化し、かつ上記光ビーム照射後の室温における上記光情報記録媒体の上記光学特性が上記光ビーム照射前の室温における上記光情報記録媒体の上記光学特性と実質的に同じであることを特徴とする光情報記録媒体とも言える。
本発明によれば、再生光学系の解像限界よりも高密度に情報が記録されていても精度よく確実な再生が可能になるため、CD、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVR、DVR−ROM、DVD−Blue、およびいわゆるBlu−ray Disc等の光情報記録媒体一般に適用することができる。
本発明の光情報記録媒体を用いて情報の記録再生可能な記録再生装置の光学系の一例を示す模式図である。 本発明の実施の一形態に係る光情報記録媒体の要部を示す部分断面図である。 本発明の実施の一形態に係る光情報記録媒体を示す概略断面図である。 超解像再生膜による光学特性変化を説明するための図であり、超解像再生膜における再生ビームスポット内での温度分布及び反射率分布を示している。 本発明の実施の一形態に係る光情報記録媒体(実施例1)の超解像再生膜の分光透過率特性の温度変化の一例を示すグラフである。 本発明の実施の一形態に係る光情報記録媒体(実施例1)の分光反射率特性の温度変化の一例を示すグラフである。 本発明の実施の一形態に係る光情報記録媒体(実施例2)の超解像再生膜の分光透過率特性の温度変化の一例を示すグラフである。 比較例2の再生膜の分光透過率特性の温度変化の一例を示すグラフである。 本発明の実施の一形態に係る光情報記録媒体(実施例1)の超解像再生膜のX線回折測定の一例を示すグラフである。 本発明の実施の一形態に係る光情報記録媒体(実施例2)の超解像再生膜のX線回折測定の一例を示すグラフである。 比較例2の再生膜のX線回折測定の一例を示すグラフである。 本発明の実施の一形態に係る光情報記録媒体(実施例1)及び比較例1の信号評価結果のCNRのピット長依存性を示すグラフである。 本発明の実施の一形態に係る光情報記録媒体(実施例1、実施例2)及び比較例1、2の信号評価結果のCNRのピット長依存性を示すグラフである。 本発明の実施の一形態に係る光情報記録媒体(実施例2、実施例3)及び比較例1、3の信号評価結果のCNRのピット長依存性を示すグラフである。 本発明の実施の他の形態に係る光情報記録媒体の要部を示す部分断面図である。 本発明の実施の他の形態に係る光情報記録媒体(実施例4)の分光反射率特性の温度変化の一例を示すグラフである。 本発明の実施の形態に係る光情報記録媒体(実施例1、実施例4)の信号評価結果のCNRの再生レーザパワー依存性を示すグラフである。 本発明のさらに他の実施の形態に係る光情報記録媒体の要部を示す部分断面図である。 図18に示す光情報記録媒体を示す概略断面図である。 本発明の実施の形態4に係る光情報記録媒体(実施例5、実施例6、実施例7)のX線回折測定を示すグラフである。 図20で示したX線回折スペクトルの2θ角度を30°〜40°に拡大したグラフである。 本発明の実施の形態4に係る3種類の光情報記録媒体(実施例5、実施例6、実施例7)における搬送波雑音比C/Nの再生レーザパワー(Pr)依存性を示したグラフである。 本発明の実施の形態5に係る光情報記録媒体(実施例8、実施例9)のX線回折測定を示すグラフである。 図23で示したX線回折スペクトルの2θ角度を30°〜40°に拡大したグラフである。 本発明の実施の形態5に係る2種類の光情報記録媒体(実施例8、実施例9)における搬送波雑音比C/Nの再生レーザパワー(Pr)依存性を示したグラフである。
符号の説明
1、2、3 光情報記録媒体
11 透明樹脂層
12 基板
13 超解像再生膜
14 反射膜
15 光吸収膜
16 記録層
30 再生ビーム
31 集光レンズ
32 記録再生ビーム
33 再生ビームスポット
33a 高温部(第1部位)
33b 低温部(第2部位)
121 半導体レーザ
122 コリメートレンズ
123 ビーム整形プリズム
124 ビームスプリッタ
125 対物レンズ
126 光情報記録媒体
127 検出光学系
128 スピンドルモータ

Claims (30)

  1. 記録情報に対応した凹凸形状のピット及び/または溝が形成された基板を備え、光ビームの照射によって上記情報を光学的に再生するための光情報記録媒体であって、
    結晶構造を有する金属酸化物からなり、少なくとも情報再生時の光ビーム照射による温度上昇に応じて光学特性が変化する超解像再生膜を少なくとも1層有し、上記光学特性は、超解像再生膜の温度変化に依存して可逆的に変化することを特徴とする光情報記録媒体。
  2. 基板と情報を光学的に記録するための記録層とを備え、光ビームの照射によって上記情報を光学的に再生するための光情報記録媒体であって、
    結晶構造を有する金属酸化物からなり、光ビームの照射による温度上昇に応じて光学特性が変化する超解像再生膜を少なくとも1層有し、上記光学特性は、超解像再生膜の温度変化に依存して可逆的に変化することを特徴とする光情報記録媒体。
  3. 記録情報に対応した凹凸形状のピット及び/または溝が形成された基板を備え、光ビームの照射によって上記情報を光学的に再生するための光情報記録媒体であって、
    少なくとも情報再生時の光ビーム照射による温度上昇に応じて光学特性が変化し、金属酸化物からなる超解像再生膜を少なくとも1層有するとともに、
    上記金属酸化物は、Cu−Kα1 線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折スペクトルにおいて、少なくとも一つの回折ピークを有し、
    上記光学特性は、超解像再生膜の温度変化に依存して可逆的に変化することを特徴とする光情報記録媒体。
  4. 基板と情報を光学的に記録するための記録層とを備え、光ビームの照射によって上記情報を光学的に再生するための光情報記録媒体であって、
    光ビームの照射による温度上昇に応じて光学特性が変化し、金属酸化物からなる超解像再生膜を少なくとも1層有するとともに、
    上記金属酸化物は、Cu−Kα1 線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折スペクトルにおいて、少なくとも一つの回折ピークを有し、
    上記光学特性は、超解像再生膜の温度変化に依存して可逆的に変化することを特徴とする光情報記録媒体。
  5. 上記金属酸化物は、上記X線回折スペクトルにおいて最も強い回折線強度を示した回折ピークにおける半値幅が、0.8°以下であることを特徴とする請求項3また4に記載の光情報記録媒体。
  6. 上記光ビームの照射後の室温における超解像再生膜の光学特性が、上記光ビームの照射前の室温における超解像再生膜の光学特性と同一であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
  7. 上記超解像再生膜の光学特性は透過率であって、上記透過率の温度変化は、上記超解像再生膜の一方の端面における反射光と他方の端面における反射光との間の光干渉効果により調整されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光情報記録媒体。
  8. 上記透過率は、再生波長において50%以上100%以下であることを特徴とする請求項7に記載の光情報記録媒体。
  9. 上記超解像再生膜は、バンドギャップエネルギーを有し、光ビームの照射前から光ビームの照射後までの温度変化により、上記超解像再生膜のバンドギャップエネルギーが変化するとともに、上記光学特性が変化することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
  10. 上記超解像再生膜の光学特性変化により上記光情報記録媒体の透過率が変化し、かつ光ビームの照射後の室温における上記光情報記録媒体の透過率が光ビームの照射前の室温における上記光情報記録媒体の透過率と同一であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光情報記録媒体。
  11. 上記超解像再生膜の光学特性変化により上記光情報記録媒体の反射率が変化し、かつ光ビームの照射後の室温における上記光情報記録媒体の反射率が光ビームの照射前の室温における上記光情報記録媒体の反射率と同一であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光情報記録媒体。
  12. 上記超解像再生膜の光ビーム入射側の反対側に接して反射膜がさらに設けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
  13. 光ビーム照射後の室温における上記超解像再生膜の結晶構造が、上記光ビーム照射前の室温における上記超解像再生膜の結晶構造と同一であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の光情報記録媒体。
  14. 上記金属酸化物は、上記光情報記録媒体が上記温度上昇により到達する最高温度よりも高い融点を有することを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の光情報記録媒体。
  15. 上記光ビームの照射による温度上昇により到達する最高温度における上記超解像再生膜の結晶構造が、光ビームの照射前の室温における上記超解像再生膜の結晶構造と同一であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
  16. 上記超解像再生膜の結晶構造が、膜面の法線方向に対して、結晶性及び/または優先配向性を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
  17. 上記金属酸化物は、1種の金属元素だけを含む単一相からなることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
  18. 上記超解像再生膜は、酸化亜鉛からなる、あるいは酸化亜鉛を含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
  19. 上記超解像再生膜は、酸化セリウムからなる、あるいは酸化セリウムを含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
  20. 上記超解像再生膜は、酸化チタンからなる、あるいは酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
  21. 上記超解像再生膜の厚さが、100nm〜300nmであることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
  22. 上記超解像再生膜に隣接してまたは他の薄膜を介して、情報を再生する光を一部吸収して熱を発生する光吸収膜が設けられていることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
  23. 上記光吸収膜が相変化記録材料からなる、あるいは相変化記録材料を含むことを特徴とする請求項22に記載の光情報記録媒体。
  24. 上記光吸収膜が半導体からなる、あるいは半導体を含むことを特徴とする請求項22に記載の光情報記録媒体。
  25. 上記光吸収膜がシリコン、ゲルマニウムのうちいずれかからなる、あるいはいずれかを含むことを特徴とする請求項24に記載の光情報記録媒体。
  26. 上記超解像再生膜には、上記光ビームの照射によって形成される温度分布により、上記光ビームの照射スポットの範囲内に、光学特性が変化する変化状態の第1部位と、光ビームの照射前の光学特性の状態に保持された初期状態の第2部位とが形成されるようになっていることを特徴とする請求項1〜25のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
  27. 請求項1〜26のいずれか1項に記載の光情報記録媒体の再生方法であって、再生用光ビームの解像限界以下の微小記録マークを再生することを特徴とする光情報記録媒体の再生方法。
  28. 光ビームを上記光情報記録媒体に照射し、照射された光ビームの照射スポットにおける上記超解像再生膜の温度変化に対応して、上記光ビームの照射スポットの範囲内に、光学特性が変化する変化状態の第1部位と、光ビームの照射前の光学特性の状態に保持された初期状態の第2部位とを形成することを特徴とする請求項27に記載の光情報記録媒体の再生方法。
  29. 請求項1〜26のいずれか1項に記載の光情報記録媒体に対して、少なくとも再生を行う光情報処理装置であって、再生用光ビームの解像限界以下の微小記録マークを再生することを特徴とする光情報処理装置。
  30. 上記光情報記録媒体に光ビームを照射し、上記超解像再生膜の温度変化に対応して、上記光ビームの照射スポットの範囲内に、光学特性が変化する変化状態の第1部位と、光ビームの照射前の光学特性の状態で保持された初期状態の第2部位とを形成する光照射手段を備えることを特徴とする請求項29に記載の光情報処理装置。
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