JP2006272363A - ろう付け用クラッド材及びそれを用いたろう付け製品 - Google Patents

ろう付け用クラッド材及びそれを用いたろう付け製品 Download PDF

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Abstract

【課題】 ろう付け接合部の耐食性及び接合強度が良好なろう付け用クラッド材及びそれを用いたろう付け製品を提供するものである。
【解決手段】 本発明に係るろう付け用クラッド材10は、被ろう付け部材とろう付けされるものであり、基材11の表面に基材11側から第1ニッケル層12、銅層13、第2ニッケル層14の順に積層されたろう材層15を一体的に設けてなる複合材で構成され、そのろう材層15が全体で4〜20.5重量%の割合のCr成分を含むものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、熱交換器や燃料電池用部材などの被ろう付け部材をろう付けするろう付け用クラッド材及びそれを用いたろう付け製品に関するものである。
自動車用オイルクーラの接合材としてステンレス基クラッド材が使用されている。これは、基材であるステンレス鋼板の片面又は両面に、ろう材としての機能を有する銅がクラッドされている。
また、高い耐食性及び耐熱性を有したろう接用複合材及びろう材がある。例えば、耐食性鋼材からなる基板の表面に、Fe原子拡散抑制層としてCrを1〜30mass%含有するNi-Cr合金層を設け、その上にCuろう層を設けたろう接用複合材が挙げられる(特許文献1参照)。
特開2003−145290号公報
前述したステンレス基クラッド材を自動車用オイルクーラの接合材として使用する場合、耐熱性及び耐食性については全く問題がない。しかしながら、このステンレス基クラッド材を、燃料電池用熱交換器や、排ガス再循環装置(以下、EGR(Exhaust Gas Recirculation)という)用クーラなどの高温で、腐食性の高いガス又は液体に晒される熱交換器製品に適用した場合、耐食性に問題が生じる。具体的には、燃料電池用熱交換器やEGR用クーラ内には、高温で、かつ、腐食性の高い溶液や排気ガスなどが循環されることから、ステンレス基クラッド材のろう材(Cuろう材)では、耐食性が十分でないという問題があった。
また、特許文献1記載のろう接用複合材においては、Cuろう層の下層に配置されたNi-Cr合金層のNi成分及びCr成分がろう材中へ拡散することで、ろう材部の耐食性及び耐酸化性が向上する。しかしながら、このろう接用複合材の特徴として、Cuろう層の融点以上の温度でろう付けを行うと、Ni成分及びCr成分が下地層であるNi-Cr合金層からろう材中へ拡散するよりも先に、Cuろう層が溶融して流れ出てしまい、ろう付け接合部に溜まってしまう(集中してしまう)。よって、Cuろう層の溶融後は、ろう付け接合部とNi-Cr合金層の接触部を介して、Ni-Cr合金層からろう付け接合部へNi成分及びCr成分を供給することになる。しかし、ろう付け接合部とNi-Cr合金層の接触面積はNi-Cr合金層の全面積と比べて小さく、また、ろう付け接合部の厚さはCuろう層と比べて厚い。このため、Ni-Cr合金層からろう付け接合部へNi成分及びCr成分を供給すると、Ni-Cr合金層の局部的な板厚減少、Ni成分及びCr成分の拡散(供給)不足、又はろう付け接合部における組成(Ni成分及びCr成分)の不均一が生じるおそれがあった。特に、ろう付け接合部におけるNi成分及びCr成分の不均一は、ろう付け接合部の局部的な強度低下や耐食性の低下を招くおそれがあった。
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、ろう付け接合部の耐食性及び接合強度が良好なろう付け用クラッド材及びそれを用いたろう付け製品を提供することにある。
上記目的を達成すべく本発明に係るろう付け用クラッド材は、基材の表面にろう材層を一体的に設けてなる複合材で構成され、被ろう付け部材とろう付けされるろう付け用クラッド材において、上記複合材が、基材の表面に基材側から第1ニッケル層、銅層、第2ニッケル層の順に積層されたろう材層を一体的に設けてなり、そのろう材層が全体で4〜20.5重量%の割合のCr成分を含むものである。
また、本発明に係るろう付け用クラッド材は、基材の表面にろう材層を一体的に設けてなる複合材で構成され、被ろう付け部材とろう付けされるろう付け用クラッド材において、上記複合材が、基材の表面に基材側から第1ニッケル層、銅層、第2ニッケル層の順に積層されたろう材層を一体的に設けてなり、ろう材層を構成する各層の内、少なくとも第2ニッケル層がCr成分を含むと共に、ろう材層が全体で4〜20.5重量%の割合のCr成分を含むものである。
ここで、銅層はCu-P合金で構成されていることが好ましい。また、基材はステンレス鋼で構成されていることが好ましい。
一方、本発明に係るろう付け製品は、前述したろう付け用クラッド材と被ろう付け部材をろう付け接合したものである。
本発明によれば、ろう付け接合部の耐食性及び接合強度が良好なろう付け用クラッド材を得ることができるという優れた効果を発揮する。
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
本発明の好適一実施の形態に係るろう付け用クラッド材の断面図を図1に示す。
図1に示すように、本実施の形態に係るろう付け用クラッド材10は、被ろう付け部材とろう付けされるものであって、基材11の表面(図1中では上面のみ)にろう材層15を一体的に設けてなる複合材で構成されるものである。この複合材に適宜、圧延加工を施すことで、所望の厚さのろう付け用クラッド材(最終製品)10が得られる。ここで言う基材11の表面は、外部に露出する全ての面を示している。
ろう材層15は、基材11側から第1ニッケル層12、銅層13、第2ニッケル層14の順に積層し、クラッドしたものである。ろう材層15は、全体で4〜20.5重量%の割合のCr成分を含んでいる。言い換えると、ろう付け用クラッド材10は、ろう材層15全体の組成がCu-Ni-4〜20.5重量%Crとなるように調整されたものである。例えば、ろう材層15を構成する各層の内、少なくとも第2ニッケル層14がCr成分を含むように、ろう材層15の第2ニッケル層14をNi-Cr合金で構成する。Cr成分の調整は、層12,13,14の各層厚の調整、層12,13,14の各合金組成の調整などによってなされる。ろう材層15全体で、4〜20.5重量%の割合のCr成分を含ませることで、ろう付け処理後におけるろう付け接合部の表層に耐食性の高い皮膜が形成される。もちろん、銅層13のみ、第1ニッケル層12のみ、第2ニッケル層14と第1ニッケル層12の2層、銅層13と第2ニッケル層14の2層、銅層13と第1ニッケル層12の2層、又はろう材層15を構成する3層全てが、Cr成分を含んでいてもよい。好ましくは、第2ニッケル層14と第1ニッケル層12の両層をNi-Cr合金で構成する。
ここで、Cr成分の含有量(濃度)を4〜20.5重量%と限定したのは、Cr成分の含有量が4重量%未満だと、Cr成分を含有させる効果(耐食性の向上)が不十分となり、ろう付け接合部に腐食が生じるためである。一方、Cr成分の含有量が20.5重量%を超えると、ろう材の融点が上昇し、湯流れ性が低下するためである。
第1ニッケル層12の構成材は、Ni単体又はNi合金のいずれであってもよいが、Ni合金、特にNi-Cr合金が好ましい。また、銅層13の構成材は、Cu単体又はCu合金(例えば、Cu-Cr合金)のいずれであってもよい。
本実施の形態に係るろう付け用クラッド材10のろう材層15の構成材として、Ni又はNi合金、Cu又はCu合金を選定した理由は、板状材又は箔状材を比較的容易に入手でき、かつ、圧延、プレス、絞りといった加工性に優れているためである。また、これらの材料で構成されるろう材層15を溶融、混合させてなるろう付け接合部が、耐食性に優れるためである。
一方、基材11は、後述するろう付け製品を構成する構成部材(被ろう付け部材)と同一又はほぼ同一の材料で構成されることが好ましい。例えば、基材11の構成材としては、ステンレス鋼、好ましくはオーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS304(JIS規格))が挙げられる。ここで、ステンレス鋼が好ましいのは、耐食性に優れたろう材が使用されるのと同じ環境下において十分な耐食性を有し、比較的低コストで入手可能な汎用品であり、かつ、圧延、プレス、絞りといった加工性に優れているためである。
ろう材層15、好ましくは銅層13は、0.02〜10.0wt%、好ましくは0.02〜5.0wt%の割合でPを含有していてもよい。これによって、ろう材の湯流れ性、耐酸化性を著しく改善することができる。ここで、Pの含有量を0.02〜10wt%と限定したのは、0.02wt%未満だと、湯流れ性の向上が期待できないためであり、逆に10.0wt%を超えると、ろう付けを行う被ろう付け部材の種類によっては強度低下が生じるためである。
また、ろう材層15を構成する各層の少なくとも1層に、1〜7重量%の割合でAl成分を含有させてもよい。Al成分の含有によって、ろう付け接合部の耐食性をさらに向上させることができる。
このような構造を有するろう付け用クラッド材10に適宜圧延、プレス、絞り加工を施して所望の形状の半製品に形成した後、その半製品と接合を行う被ろう付け部材(図示せず)とを組み合わせ、ろう付け接合を行う部分(ろう付け接合部)を接触させる。その後、これらの組み合わせ部材に加熱によるろう付け処理を施すことで、ろう付け製品が得られる。あるいは、被ろう付け部材として、ろう付け用クラッド材10を用いてもよい。例えば、本実施の形態に係るろう付け用クラッド材10を複数個用意し、各複合材10に適宜プレス加工を施してそれぞれ所望の形状の半製品に形成した後、それらの半製品を組み合わせ、ろう付け接合部を接触させる。その後、これらの組み合わせ部材に加熱によるろう付け処理を施すことで、ろう付け製品を得るようにしてもよい。
本実施の形態においては、基材11の片面(図1中では上面)のみにろう材層15を設けたろう付け用クラッド材10について説明を行ったが、特にこれに限定するものではない。例えば、ろう材層15が基材11の両面(図1中では上・下面)に設けられたろう付け用クラッド材であってもよい。
また、本実施の形態においては、箔状を呈したろう付け用クラッド材10を用いて説明を行ったが、複合材の形状は箔状に特に限定するものではない。例えば、図1の変形例を図2に示すように、棒状又はワイヤ状の基材21の表面に、基材21側から第1ニッケル層12、銅層13、第2ニッケル層14の順に積層してなるろう材層15を一体的に設け、ろう付け用クラッド材20としてもよい。この場合、基材21としては、基材11と同じ材料が適用される。また、各層12,13,14の形成は、メッキ法、押出法、造管法などによってなされる。
本実施の形態に係るろう付け用クラッド材10を用いたろう付け製品としては、燃料電池の改質器用クーラなどの高温で、腐食性の高い溶液或いはガスが循環される熱交換器、EGR用クーラ、燃料電池部材、オイルクーラ、ラジエータ、二次電池部材などが挙げられる。本実施の形態に係るろう付け用クラッド材、特に、棒状又はワイヤ状のろう付け用クラッド材20(図2参照)は、径サイズが小さく、取扱性が良好であることから、燃料電池の改質器用クーラの熱交換器、EGR用クーラ、燃料電池部材などの他にも、オイルクーラ、ラジエータ、二次電池部材などにも適用可能である。
次に、本実施の形態に係るろう付け用クラッド材を用いたろう付け方法を説明する。
本実施の形態に係るろう付け用クラッド材10に、適宜、圧延、プレス、絞り加工を施して所望の形状の半製品を作製する。この半製品(ろう付け用クラッド材10)と被ろう付け部材(図示せず)とを組み合わせ、ろう付け接合部を接触させる。その後、これらの組み合わせ部材に、加熱によるろう付け処理が施される。ここで、ろう付け処理に先立って、半製品(又は半製品と被ろう付け部材の両方)に850〜950℃、好ましくは880〜920℃の温度で予熱処理が施される。この予熱処理により、所望の形状に加工された半製品に残留している応力を開放することができる。また、この予熱処理により、ろう付け温度(1150〜1300℃)での熱変形の緩和を図ると共に、ろう材全体の均熱性を高めることでろう付け接合部の信頼性の向上を図ることができる。
その後、予熱した半製品と被ろう付け部材に、真空雰囲気下(又はほぼ真空雰囲気下)、1150〜1300℃、好ましくは1170〜1280℃の温度でろう付け処理が施される。このろう付け処理により、ろう材層15(ろう材)の溶融反応が生じ、ろう材が流れ出てろう付け接合部に集まる。このろう付け接合部に集まったろう材が冷却されて凝固することで、半製品と被ろう付け部材がろう付け接合部を介して接合されたろう付け製品が得られる。
本実施の形態に係るろう付け用クラッド材10(図1参照)は、ろう材層15全体に占めるCr成分の濃度を、ろう材の湯流れ性を阻害しないように4〜20.5重量%に調整していることから、ろう材の湯流れ性は良好である。
また、本実施の形態に係るろう付け用クラッド材10は、銅層13の外層側(図1中では上側)及び内層側(図1中では下側)に、銅層13よりも融点の高い第2ニッケル層14及び第1ニッケル層12を配置している。このため、銅層13の融点以上の温度でろう付け処理を行うと、銅層13が溶融するが、この溶融Cuは未溶融のニッケル層12,14で挟まれているため、溶融Cuが流れ出てしまうおそれはない。また、銅層13がニッケル層12,14で挟まれているため、銅層とニッケル層の反応界面の数が特許文献1記載の発明と比べて2倍の2つとなり、かつ、未溶融のニッケル層12,14の全面から銅層13中にNi成分及びCr成分が供給されるようになる。
よって、Ni成分及びCr成分を銅層13中へ十分に拡散させ、Cu成分と混合させることができ、Ni成分及びCr成分の拡散(供給)不足が生じるおそれはない。また、ニッケル層12,14の局部的な板厚減少、ろう付け接合部における組成(Cu成分、Ni成分、及びCr成分)の不均一(ばらつき)が生じるおそれはない。ろう付け接合部の表層には耐食性の高いCr酸化物を主成分とする緻密な保護皮膜が形成され、かつ、ろう付け接合部におけるNi成分及びCr成分は均一であることから、ろう付け接合部において局部的な強度低下や耐食性の低下が生じるおそれはなく、ろう付け接合部の信頼性が高い。
さらに、本実施の形態に係るろう付け用クラッド材10は、基材11及びろう材層15の各構成層を、圧延、プレス、絞りなどの加工性に優れた汎用品で構成しているため、加工が簡易で、製造コストが安価である。
また、本実施の形態に係るろう付け用クラッド材10は、ろう材と基材11を一体的に設けたものであるので、基材11と被ろう付け部材のろう付け接合部に、従来の粉末ろう材のようにろう材を配置するという作業は不要となる。このため、ろう付け製品を製造する際、生産性(ろう付け用クラッド材10の加工性、組立性、及び取扱性など)に優れたものとなる。
本実施の形態に係るろう付け用クラッド材10は、燃料電池用熱交換器やEGR用クーラなどの熱交換器製品の他にも、ろう付け接合部に高い耐食性が要求されるろう付け製品全てに適用可能である。
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
基材であるステンレス鋼条材(SUS304条材)の表面に、順に、厚さ0.17mmのNi-20wt%Cr条材、厚さ1.0mmのCu条材、厚さ0.17mmのNi-20wt%Cr条材を積層し、圧延法によりクラッドして複合材を作製した。さらに圧延を繰り返し、三層構造のろう材層の合計厚さが40μmのろう付け用クラッド材(Ni-Cr/Cu/Ni-Cr/SUS304)を作製した。ろう材層全体に占めるCr成分の濃度は5wt%とした。
このクラッド材を、真空雰囲気の管状炉で、先ず、900℃に予熱し、予熱後のクラッド材に1200℃で加熱処理(ろう付け処理)を施してろう材層を溶融させ、ろう付け特性の評価を行った。
(実施例2)
基材であるステンレス鋼条材(SUS304条材)の表面に、順に、厚さ0.35mmのNi-30wt%Cr条材、厚さ1.0mmのCu条材、厚さ0.35mmのNi-30wt%Cr条材を積層し、圧延法によりクラッドして複合材を作製した。この複合材を用い、実施例1と同様にして、ろう付け用クラッド材を作製した。ろう材層全体に占めるCr成分の濃度は12wt%とした。このクラッド材を用い、実施例1と同様にして、ろう付け特性の評価を行った。
(実施例3)
基材であるステンレス鋼条材(SUS304条材)の表面に、順に、厚さ0.26mmのNi-40wt%Cr条材、厚さ0.5mmのCu条材、厚さ0.26mmのNi-40wt%Cr条材を積層し、圧延法によりクラッドして複合材を作製した。この複合材を用い、実施例1と同様にして、ろう付け用クラッド材を作製した。ろう材層全体に占めるCr成分の濃度は20wt%とした。このクラッド材を用い、ろう付け処理温度を1250℃とする以外は実施例1と同様にして、ろう付け特性の評価を行った。
(比較例1)
基材であるステンレス鋼条材(SUS304条材)の表面に、順に、厚さ0.09mmのNi-20wt%Cr条材、厚さ1.0mmのCu条材、厚さ0.09mmのNi-20wt%Cr条材を積層し、圧延法によりクラッドして複合材を作製した。この複合材を用い、実施例1と同様にして、ろう付け用クラッド材を作製した。ろう材層全体に占めるCr成分の濃度は3wt%とした。このクラッド材を用い、実施例1と同様にして、ろう付け特性の評価を行った。
(比較例2)
基材であるステンレス鋼条材(SUS304条材)の表面に、順に、厚さ0.29mmのNi-40wt%Cr条材、厚さ0.5mmのCu条材、厚さ0.29mmのNi-40wt%Cr条材を積層し、圧延法によりクラッドして複合材を作製した。この複合材を用い、実施例1と同様にして、ろう付け用クラッド材を作製した。ろう材層全体に占めるCr成分の濃度は21wt%とした。このクラッド材を用い、実施例3と同様にして、ろう付け特性の評価を行った。
(比較例3)
基材であるステンレス鋼条材(SUS304条材)の表面に、順に、厚さ0.34mmのNi-20wt%Cr条材、厚さ1.0mmのCu条材を積層し、圧延法によりクラッドして複合材を作製した。この複合材を用い、実施例1と同様にして、ろう付け用クラッド材を作製した。ろう材層全体に占めるCr成分の濃度は5wt%とした。このクラッド材を用い、実施例1と同様にして、ろう付け特性の評価を行った。
(比較例4)
基材であるステンレス鋼条材(SUS304条材)の表面に、順に、厚さ0.70mmのNi-30wt%Cr条材、厚さ1.0mmのCu条材を積層し、圧延法によりクラッドして複合材を作製した。この複合材を用い、実施例1と同様にして、ろう付け用クラッド材を作製した。ろう材層全体に占めるCr成分の濃度は12wt%とした。このクラッド材を用い、実施例1と同様にして、ろう付け特性の評価を行った。
(従来例1)
基材であるステンレス鋼条材(SUS304条材)の表面に、Cu条材を積層し、圧延法によりクラッドして複合材を作製した。さらに圧延を繰り返し、Cu層の厚さが40μmのろう付け用クラッド材(Cu/SUS304)を作製した。このクラッド材に、管状炉で1120℃の加熱処理を施してろう材層を溶融させ、ろう付け特性の評価を行った。
実施例1〜3、比較例1〜4、及び従来例1の各試料について、それらの積層構造、ろう材層全体に占めるCr成分の濃度(wt%)を表1に示す。また、各試料のろう付け特性の評価も併せて表1に示す。ろう付け特性の評価は、ろう付け接合部におけるろう材組成のばらつき、腐食発生の有無、フィレット形成状態(湯流れ性)、及びそれらの総合評価について行った。
組成のばらつきについては、先ず、図3に示すように、実施例1〜3、比較例1〜4、及び従来例1の各試料31とステンレス鋼パイプ32をそれぞれろう付け接合させ、サンプル30を作製した。各サンプル30のろう付け接合部35の断面部において、図4に示すように、5点のエリア41をそれぞれ抽出し、各エリア41についてEDX分析を行った。各エリア41のEDX分析値をそれぞれ比較し、Ni成分及びCr成分の濃度のばらつきが3wt%以上ある試料について“ばらつき有り”と評価した。
腐食試験は、先ず、ろう付け処理後の各試料を、塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンを含む腐食性溶液中に1000h浸漬した。その後、これらの各試料を溶液中から取出してろう付け接合部(ろう溶融部)の組織観察を行い、腐食発生の有無を調べることによって耐食性の評価を行った。また、併せて、腐食試験後の溶液を分析し、ろう材から溶液中に溶出した溶出物の定量比較を行い、腐食の程度を判断した。
湯流れ性は、各試料のろう材層の表面にSUS304からなるステンレス鋼パイプを載せた後、加熱してろう付け処理を行い、ろう付け接合部のフィレットの断面積を測定すると共に、その断面積の大きさによって評価を行った。
Figure 2006272363
表1に示すように、実施例1〜3の各試料は、Ni-Cr合金層がろう材層の内層及び外層の両方に配置されていると共に、ろう材層全体に占めるCr成分の濃度が4〜20.5wt%に調整されている。このため、実施例1〜3の各試料は、ろう付け接合部の組成にばらつきがなかった。また、実施例1〜3の各試料は、いずれも耐食性が良好であり(腐食の発生がなく)、また、湯流れ性も良好であった。よって、実施例1〜3の各試料のろう付け特性の総合評価は、いずれも良好であった。特に、Cr成分の濃度が20wt%と高い実施例3の試料は、耐食性が非常に良好であった。
これに対して、比較例1,2の各試料は、それぞれNi-Cr合金層がろう材層の内層及び外層の両方に配置されているため、ろう付け接合部の組成にばらつきはなかった。しかし、ろう材層全体に占めるCr成分の濃度がそれぞれ規定範囲外(3wt%,21wt%)であった。このため、Cr成分の濃度が低すぎる比較例1の試料は、耐食性が十分ではなかった。また、Cr成分の濃度が高すぎる比較例2の試料は、湯流れ性が悪化し、不十分となった。
また、比較例3,4の各試料は、ろう材層全体に占めるCr成分の濃度はそれぞれ規定範囲内(5wt%,12wt%)であった。しかし、Ni-Cr合金層がろう材層の内層のみに配置され、外層に配置されていないため、ろう付け接合部の組成にばらつきが生じ、耐食性が不十分(不良)となった(腐食が発生した)。
一方、従来例1の試料は、ろう材が単一金属(Cu)からなるため、ろう付け接合部の組成にばらつきはなく、また、湯流れ性は良好であった。しかし、ろう材がCu単体からなるため、耐食性が十分でなく、高腐食環境での使用に耐えられない結果となった。
以上の結果より、基材と、基材表面から順にNi-Cr合金層、Cu層、Ni-Cr合金層という層構造を有するろう材層を一体化したろう付け用クラッド材で、かつ、そのクラッド材のろう材層全体に占めるCr成分濃度を4〜20.5wt%と規定することで、優れた耐食性及び湯流れ性を両立できることが確認できた。
本発明の好適一実施の形態に係るろう付け用クラッド材の断面図である。 図1におけるろう付け用クラッド材の一変形例を示す横断面図である。 ろう付け接合部におけるろう材組成のばらつきを評価するためのサンプルの横断面図である。 図3の要部拡大図である。
符号の説明
10 ろう付け用クラッド材
11 基材
12 第1ニッケル層
13 銅層
14 第2ニッケル層
15 ろう材層

Claims (5)

  1. 基材の表面にろう材層を一体的に設けてなる複合材で構成され、被ろう付け部材とろう付けされるろう付け用クラッド材において、
    上記複合材が、基材の表面に基材側から第1ニッケル層、銅層、第2ニッケル層の順に積層されたろう材層を一体的に設けてなり、
    そのろう材層が全体で4〜20.5重量%の割合のCr成分を含むことを特徴とするろう付け用クラッド材。
  2. 基材の表面にろう材層を一体的に設けてなる複合材で構成され、被ろう付け部材とろう付けされるろう付け用クラッド材において、
    上記複合材が、基材の表面に基材側から第1ニッケル層、銅層、第2ニッケル層の順に積層されたろう材層を一体的に設けてなり、
    ろう材層を構成する各層の内、少なくとも第2ニッケル層がCr成分を含むと共に、ろう材層が全体で4〜20.5重量%の割合のCr成分を含むことを特徴とするろう付け用クラッド材。
  3. 上記銅層がCu-P合金で構成された請求項1又は2に記載のろう付け用クラッド材。
  4. 上記基材がステンレス鋼で構成された請求項1から3いずれかに記載のろう付け用クラッド材。
  5. 請求項1から4いずれかに記載のろう付け用クラッド材と被ろう付け部材をろう付け接合したことを特徴とするろう付け製品。
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