JP2006272340A - マンドレルミル圧延方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 一種類の孔型圧延ロールの組合せを用いてもオーバーフィル及びアンダーフィルの双方を効果的に防止することができるマンドレルミル圧延方法を提供する。
【解決手段】 素管のCr含有量が10重量%以上である場合には素管外周長/仕上周長が1.1以上となるように素管の外径を設定する一方、10重量%未満である場合には1.1未満となるように素管の外径を設定する。そして、下記の式(1)〜(3)をそれぞれ満足するように、第1及び第2スタンドに配設された孔型圧延ロールの孔型プロフィールを設定する。
1.06≦第1スタンドの孔型周長/仕上周長≦1.12 ・・・(1)
1.05≦第2スタンドの孔型周長/仕上周長≦1.10 ・・・(2)
第1スタンドの孔型周長>第2スタンドの孔型周長 ・・・(3)
【選択図】 図4

Description

本発明は、マンドレルミルにおける所謂オーバーフィル及びアンダーフィルの双方を効果的に防止することができるマンドレルミル圧延方法に関する。
マンネスマン−マンドレルミル方式による継目無管の製造においては、まず素材としての丸ビレット又は角ビレットを回転炉床式加熱炉で1200〜1260℃に加熱した後、穿孔機でプラグと圧延ロールにより穿孔圧延して中空の素管を製造する。次に、前記素管の内面にマンドレルバーを串状に挿入し、通常5〜8スタンドからなるマンドレルミルで外面を孔型圧延ロールで拘束して延伸圧延することにより、所定の肉厚まで減肉する。その後、マンドレルバーを抽出した後、前記減肉された管材を定径圧延機で所定外径に成形圧延して製品としての継目無管を得る。
マンドレルミルとしては、従来より、各スタンドに対向する一対の孔型圧延ロールが配設され、隣接するスタンド間で孔型圧延ロールの圧下方向を90°ずらして交互に配置した2ロール式マンドレルミルが多く用いられている。また、各スタンドに圧下方向のなす角が90°である4つの孔型圧延ロールが配設された4ロール式マンドレルミルが一部で適用されており、さらに、各スタンドに圧下方向のなす角が120°である3つの孔型圧延ロールが配設され、隣接するスタンド間で孔型圧延ロールの圧下方向を60°ずらして交互に配置した3ロール式マンドレルミルも提案されている。
上記何れのマンドレルミルについても、マンドレルミルの稼働率の低下を防ぐため、一般的には、普通鋼からステンレス材などの合金鋼まで種々の鋼種や肉厚の管材を一種類の孔型圧延ロールの組合せで圧延している。
ここで、マンドレルミルでの圧延条件が適切でない場合には、オーバーフィル(管材が圧延される際に、管材の外周長が十分に小さくならず(又は、逆に外周長が大きくなり)、管材が孔型圧延ロールのフランジ部から噛み出す現象)に起因した噛み出し疵や圧延トラブルが発生したり、アンダーフィル(管材が圧延される際に、管材の外周長が小さくなり過ぎ、管材の内面がマンドレルバーに張り付く現象)に起因したマンドレルバーのストリッピング不良や管材の穴あきが発生することが知られており、これらを防止するために従来より種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、主としてステンレス材などの合金鋼をマンドレルミルで圧延する際に、最もアンダーフィルが発生し易い管端部においてマンドレルバーと管材との間に適当な空隙を形成し、これによりアンダーフィルを防止する方法が提案されている。より具体的に説明すれば、特許文献1には、孔型周長/ミル出側管材の熱間仕上周長を第1スタンドでは1.12以上とし、第2スタンドでは1.06以上とし、第3スタンドでは1.02以上とすることにより、ミル出側での管材の外周長を確保し、アンダーフィルを防止することが提案されている。
また、特許文献2には、主として13%Cr鋼などの合金鋼をマンドレルミルで圧延する際に、管端部におけるアンダーフィルを防止するべく、第1及び第2スタンドに配設された孔型圧延ロールによって決定される各孔型周長と、マンドレルミルで圧延する素管の外周長との比を所定の範囲に設定することが提案されている。
特許第2582705号公報 特開2003−10907号公報
しかしながら、本発明の発明者らが鋭意検討したところ、特許文献1に記載の方法は、特定のサイズを有するステンレス材などの合金鋼に対して特化された適正条件であることが分かった。より具体的に説明すれば、本発明の発明者らが、Cr含有量が1%未満の普通鋼からなる素管を用いて肉厚と外径との比(肉厚外径比)が3%以下の薄肉の管材を得るべく、特許文献1に記載されている条件と同様の条件(孔型周長、素管の外径等)で圧延試験を実施したところ、オーバーフィルが生じることが分かった。なお、このオーバーフィルを抑制するには、一般的には各スタンド間に張力をかけて圧延することが考えられるものの、肉厚外径比が3%以下の薄肉材では張力を過大にすると穴あきが生じ易く、オーバーフィルと穴あきの双方を安定して防止できる適正な圧延条件を見出すことはできなかった。
換言すれば、特許文献1に記載の方法では、合金鋼を圧延する際と肉厚外径比3%以下の普通鋼薄肉材を圧延する際とで孔型圧延ロールを交換せざるを得ず、このため圧延する鋼種やサイズが変わる度に頻繁にマンドレルミルを停止させる必要が生じ、設備の稼働率が大きく低下してしまうという問題がある。より具体的に説明すれば、通常、継目無管の圧延では、各外径段取り毎に定径圧延機の孔型圧延ロールを交換することが必要であるが、特許文献1に記載の方法では、定径圧延機における孔型圧延ロールの交換に加えて、マンドレルミルにおいても孔型圧延ロールの交換が必要になる。従って、マンドレルミルにおける孔型圧延ロールの交換を一度だけにする場合には、同一の外径段取りであっても普通鋼と合金鋼からなる各継目無管を別々に製造することになるため、定径圧延機における孔型圧延ロールの交換時間が2倍になってしまう。一方、定径圧延機における孔型圧延ロールの交換時間を増やさないようにするには、各外径段取り毎にマンドレルミルにおける孔型圧延ロールの交換が必要になってしまう。従って、いずれにしても、通算で長時間の停機が発生することになる。
特許文献2に記載の方法についても、本発明の発明者らが鋭意検討したところによれば、特定のサイズを有する13Cr鋼などの合金鋼に対して特化された適正条件であり、前記特許文献1に記載の方法と同様の問題があることが分かった。
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、普通鋼や合金鋼など種々の鋼種や肉厚の管材について、一種類の孔型圧延ロールの組合せを用いてもオーバーフィル及びアンダーフィルの双方を効果的に防止することができるマンドレルミル圧延方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するべく、本発明の発明者らは鋭意検討し、まず、従来の方法(特許文献1等)で特定の合金鋼についてアンダーフィルを防止できる一方、普通鋼でオーバフィルが生じるメカニズムについて鋭意検討し、図1に示すようなモデルを考えれば、前記メカニズムをうまく説明できることに想到した。ここで、図1(a)は合金鋼からなる素管を圧延した場合の圧延挙動のモデルを示すグラフであり、図1(b)は従来方法に従って孔型圧延ロールの孔型周長を大きく設定した状態で合金鋼からなる素管を圧延した場合の圧延挙動のモデルを示すグラフである。また、図1(c)は普通鋼からなる素管を圧延した場合の圧延挙動のモデルを示すグラフである。なお、図1(a)〜(c)に示すグラフの横軸である軸ひずみは、ln(圧延後の管材の長さ/圧延前の素管の長さ)を意味する。
より具体的に説明すれば、図1(a)に示すグラフは、内径98mm(図中破線で示す)に相当する孔型周長を有する孔型圧延ロールが配設されたスタンドにおいて、外径100mmの素管(合金鋼)を当該スタンド出側での軸ひずみが0.3になるまで圧延した場合における、当該スタンド入側から出側までの管材の外径及び軸ひずみの変動をプロットしたものである。ここで、マンドレルバーの外径とスタンド出側での管材の肉厚の2倍の値との加算値を96mmとすれば、スタンド出側(軸ひずみ0.3)における管材の外径は略96mmになり、上記加算値と略同等になることからアンダーフィルが生じることになる。
そして、図1(b)に示すグラフは、従来方法に従って孔型圧延ロールの孔型周長を大きく設定(図中破線で示す内径99mmに相当する孔型周長に設定)した点を除き、図1(a)と同条件で圧延した場合における、スタンド入側から出側までの管材の外径及び軸ひずみの変動をプロットしたものである。この場合には、図1(a)に示すグラフが図の矢符方向に変動した圧延挙動を示し、スタンド出側(軸ひずみ0.3)における管材の外径は略97mmとなる。従って、前述した加算値(96mm)に対して十分に余裕があることからアンダーフィルを防止することが可能である。
一方、図1(c)に示すグラフは、素管を普通鋼とした点を除き、図1(a)と同条件で圧延した場合における、スタンド入側から出側までの管材の外径及び軸ひずみの変動をプロットしたものである。この場合には、スタンド出側(軸ひずみ0.3)における管材の外径は略97.5mmになり、前述した加算値(96mm)に対して十分に余裕があることからアンダーフィルは生じない。
ここで、図1(c)に示すような圧延挙動を示す素管(普通鋼)についても、図1(b)の場合と同様に孔型圧延ロールの孔型周長を大きく設定(図1(b)に示すように内径99mmに相当する孔型周長に設定)したのでは、図1(b)の場合と同様に圧延挙動を示すグラフが上方に変動する結果、スタンド出側(軸ひずみ0.3)における管材の外径が大きくなり過ぎて、オーバーフィルが生じてしまうおそれがある。換言すれば、内径98mmに相当する孔型周長の孔型圧延ロールを用いて、合金鋼からなる素管及び普通鋼からなる素管をそれぞれ圧延すれば、合金鋼からなる素管についてアンダーフィルが生じる一方、斯かるアンダーフィルを防止するべく、孔型圧延ロールの孔型周長を大きく設定(内径99mmに相当する孔型周長に設定)すれば、普通鋼からなる素管についてオーバーフィルが生じてしまうことになる。
上記のように、本発明の発明者らは、孔型圧延ロールの孔型周長を大きく設定することによって合金鋼のアンダーフィルを防止することができるメカニズムは、図1(a)及び図1(b)を参照して説明した圧延挙動を示すモデルによって説明可能であることを見出し、実際に圧延試験を行うことによりそれが正しいことを確認した。また、上記のように孔型圧延ロールの孔型周長を大きく設定した状態で普通鋼のオーバフィルが生じるメカニズムは、図1(c)を参照して説明した圧延挙動を示すモデルによって説明可能であることを見出し、実際に圧延試験を行うことによりそれが正しいことを確認した。
以上の知見に基づき、本発明の発明者らはさらに鋭意検討した結果、図1(a)に示す合金鋼の圧延挙動モデルにおいて、図1(b)に示すように素管の孔型圧延ロールの孔型周長を大きく設定するのではなく、図2に示すモデルのように素管の外径を大きくすることによってもアンダーフィルを防止可能ではないかと考えた。図2に示すグラフは、素管の外径を大きく設定(外径を102mmに設定)した点を除き、図1(a)と同条件で圧延した場合における、スタンド入側から出側までの管材の外径及び軸ひずみの変動をプロットしたものである。図2に示すように、素管の外径を大きく設定することにより、図1(a)に示すグラフが図の矢符方向に変動した圧延挙動を示し、スタンド出側(軸ひずみ0.3)における管材の外径は略97mmとなる。従って、前述した加算値(96mm)に対して十分に余裕があることからアンダーフィルを防止できると考えられる。
本発明の発明者らは、図2に示すように素管の外径を大きくすることによってもアンダーフィルを防止可能であるはずだという考えに基づき、実際に圧延試験を行った結果、その考えが正しいことを確認した。図2に示すモデルは、孔型圧延ロールの孔型周長を変更することがないため、図1(c)に示すような圧延挙動を示す素管(普通鋼)についても、同じ孔型圧延ロール(内径98mmに相当する孔型周長の孔型圧延ロール)のままでオーバーフィルを防止できることを示唆するものである。換言すれば、マンドレルミルで圧延する素管の外径を鋼種やサイズ毎に適切に調整(素管の外径は、穿孔機の設定変更やシェルサイザを用いることにより調整可能)すれば、合金鋼でアンダーフィルが生じず且つ普通鋼でオーバーフィルが生じない一種類の孔型圧延ロールの組合せを設計できることを示唆するものである。
なお、図1及び図2の圧延挙動のモデルを示すグラフは、以下に説明する考え方に基づいてプロットしたものである。すなわち、管材の変形過程は、管材の外周面が孔型圧延ロールに当接し始めてからマンドレルバーとの間で圧下されるまで(管材の外径が孔型圧延ロールの内径と等しくなるまで)の「外径加工過程」と、孔型圧延ロールとマンドレルバーとの間で圧下される「肉厚加工過程」とに分類することができる。
図1(a)の線分A1B1で表されるグラフは上記「外径加工過程」における圧延挙動に対応し、鋼種によらず単純に孔型圧延ロールの孔型プロフィールで拘束されるがままに管材の外径(外周長)が減じられることになる。同様にして、図1(b)の線分A2B2で表されるグラフ、図1(c)の線分A3B3で表されるグラフ及び図2の線分A4B4で表されるグラフは、それぞれ上記「外径加工過程」における圧延挙動に対応する。上記のように「外径加工過程」における圧延挙動は鋼種に依存しないため、上記何れのグラフも全て同じ勾配でプロットすることができる。
一方、図1(a)の線分B1C1で表されるグラフは上記「肉厚加工過程」における圧延挙動に対応し、孔型圧延ロールの孔型プロフィールによる管材の拘束は生じていないが、孔型圧延ロールとマンドレルバーとの間で直接圧下されない部分では、管材が延びる(延伸量が増える)に従って引っ張り変形が生じるため、外径(外周長)が減じられることになる。同様にして、図1(b)の線分B2C2で表されるグラフ、図1(c)の線分B3C3で表されるグラフ及び図2の線分B4C4で表されるグラフは、それぞれ上記「肉厚加工過程」における圧延挙動に対応する。「肉厚加工過程」における延伸量の変化(軸ひずみの変化)に対する外径の変化量(すなわち、上記各グラフの勾配の絶対値)は、鋼種に依存するものであり、合金鋼の方が変化量が大きくなる傾向にある。従って、図1(a)の線分B1C1で表されるグラフ、図1(b)の線分B2C2で表されるグラフ及び図2の線分B4C4で表されるグラフは、全て同じ勾配でプロットすることができる一方、図1(c)の線分B3C3で表されるグラフは、他のグラフよりも絶対値の小さい勾配でプロットすることになる。
図1及び図2の圧延挙動のモデルを示すグラフは、以上のような考え方に基づいてプロットしたものであり、前述のように、本発明の発明者らが実際に圧延試験を行った結果と合致するものであることが分かった。
本発明の発明者らは、上記知見に基づいて種々の条件で圧延試験を繰り返すことによって圧延条件に関する各種パラメータを同定し、本発明を完成したものである。すなわち、本発明は、各スタンドに複数の孔型圧延ロールが配設されたマンドレルミルによって素管を圧延する方法であって、素管のCr含有量が10重量%以上である場合には素管外周長/仕上周長≧1.1となるように素管の外径を設定する一方、素管のCr含有量が10重量%未満である場合には素管外周長/仕上周長<1.1となるように素管の外径を設定し、第1スタンドに配設された複数の孔型圧延ロールによって決定される第1スタンドの孔型周長が下記の式(1)を、第2スタンドに配設された複数の孔型圧延ロールによって決定される第2スタンドの孔型周長が下記の式(2)を、前記第1及び第2スタンドの孔型周長が下記の式(3)をそれぞれ満足するように、前記第1及び第2スタンドに配設された孔型圧延ロールの孔型プロフィールを設定することを特徴とするマンドレルミル圧延方法を提供するものである。
1.06≦第1スタンドの孔型周長/仕上周長≦1.12 ・・・(1)
1.05≦第2スタンドの孔型周長/仕上周長≦1.10 ・・・(2)
第1スタンドの孔型周長>第2スタンドの孔型周長 ・・・(3)
なお、本発明は、2ロール式マンドレルミルへの適用に限るものではなく、3ロール式や4ロール式のマンドレルミルについても同様に適用可能である。本発明において、「仕上周長」とは、仕上スタンド出側における管材の外周長を意味する。「孔型周長」の意味については、図3を参照して以下に説明する。
図3は、孔型周長の定義を説明するための説明図であり、図3(a)は2ロール式マンドレルミルに配設された孔型圧延ロールの一部を模式的に表す縦断面図を、図3(b)は3ロール式マンドレルミルに配設された孔型圧延ロールの一部を模式的に表す縦断面図を示す。図3(a)に示すように、マンドレルミルに配設された孔型圧延ロール1の孔型プロフィールPは、一般に3つの円弧を組み合わせた形状に設計される。より具体的に説明すれば、孔型プロフィールPは、溝底Bと孔型中心Oとを結ぶ直線を対称軸として左右対称の曲線とされ、一方の側のプロフィールが、半径R1で中心角α1の円弧と、半径R2で中心角α2の円弧(以下、円弧R2という)と、半径R3で中心角α3の円弧(以下、円弧R3という)とを連続的に組み合わせた形状とされる。ここで、円弧R2と円弧R3との接点に接し、且つ、溝底Bと孔型中心Oとを結ぶ直線に対して90°の角度を成す直線Lと垂直に交わる、半径R4で中心角α4の円弧を考えれば、孔型周長は、4(R1α1+R2α2+R4α4)で定義される。
また、図3(b)に示すように、3ロール式マンドレルミルに配設された孔型圧延ロール1の孔型プロフィールPについても、前述した2ロール式マンドレルミルの場合と同様に、一般に3つの円弧R1、R2及びR3を組み合わせた形状に設計される。ここで、円弧R2と円弧R3との接点に接し、且つ、溝底Bと孔型中心Oとを結ぶ直線に対して60°の角度を成す直線Lと垂直に交わる、半径R4で中心角α4の円弧を考えれば、孔型周長は、6(R1α1+R2α2+R4α4)で定義される。
上記孔型周長の定義を各種孔型圧延ロールの個数について一般化すれば、以下のようになる。すなわち、マンドレルミルの各スタンドに配設された孔型圧延ロールの個数をn(2ロール式マンドレルミルの場合はn=2、3ロール式マンドレルミルの場合はn=3、4ロール式マンドレルミルの場合はn=4)とし、円弧R2と円弧R3との接点に接し、且つ、溝底Bと孔型中心Oとを結ぶ直線に対して180/n(°)の角度を成す直線Lと垂直に交わる、半径R4で中心角α4の円弧を考えれば、孔型周長=2n(R1α1+R2α2+R4α4)で定義されることになる。
なお、本実施形態では、孔型圧延ロール1の孔型プロフィールPが、外方に向けて(孔型中心Oと反対方向に向けて)凸状の2つの円弧R1、R2と、内方に向けて(孔型中心Oに向けて)凸状の1つの円弧R3とを連続的に組み合わせた形状である場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、外方に向けて凸状である1つの円弧又は半径の異なる3つ以上の円弧と、内方に向けて凸状の1つの円弧とを連続的に組み合わせた形状とすることも可能である。また、内方に向けて凸状である円弧を半径の異なる複数の円弧を連続的に組み合わせた形状とすることも可能である。さらには、内方に向けて凸状の円弧の代わりに直線形状を用いることも可能である。これら各種孔型圧延ロール1の孔型周長の定義を一般化すれば、以下のようになる。すなわち、外方に向けて凸状の円弧(1つ又は複数)について、溝底Bから内方に向けて凸状の円弧(又は直線)との接点までの周長をL0(外方に向けて凸状の円弧が前述した2つの円弧R1、R2からなる場合には、L0=R1α1+R2α2となる)とし、前記接点に接し、且つ、溝底Bと孔型中心Oとを結ぶ直線に対して180/n(°)の角度を成す直線Lと垂直に交わる、半径R4で中心角α4の円弧を考えれば、孔型周長=2n(L0+R4α4)で定義されることになる。
また、好ましくは、第3スタンドに配設された複数の孔型圧延ロールによって決定される第3スタンドの孔型周長が下記の式(4)を、前記第2及び第3スタンドの孔型周長が下記の式(5)をそれぞれ満足するように、前記第3スタンドに配設された孔型圧延ロールの孔型プロフィールが設定される。
本発明によれば、普通鋼や合金鋼など種々の鋼種や肉厚の管材について、一種類の孔型圧延ロールの組合せを用いても(管材の鋼種等に応じて孔型圧延ロールの組合せを変更しなくても)オーバーフィル及びアンダーフィルの双方を効果的に防止可能である。これにより、オーバーフィルに起因した噛み出し疵の発生や、アンダーフィルに起因したストリッピング不良やこれに起因した疵の発生を効果的に防止することができる。
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明に係るマンドレルミル圧延方法の一実施形態について説明する。
前述したように、本発明の発明者らは、素管の外径を調節することによって、合金鋼でアンダーフィルが生じず且つ普通鋼でオーバーフィルが生じない一種類の孔型圧延ロールの組合せを設計するべく、種々の条件で圧延試験を繰り返した。図4は試験結果の一例を示すグラフである。より具体的に説明すれば、図4は、Cr含有量が10重量%以上の合金鋼としてステンレス材を用いて素管外周長/仕上周長≧1.1となるように設定する一方、Cr含有量が10重量%未満の普通鋼として肉厚外径比が3%以下の薄肉材を用いて素管外周長/仕上周長<1.1となるように設定した条件下で、第1スタンドの孔型周長/仕上周長と、第2スタンドの孔型周長/仕上周長とを種々の値に変更して圧延した結果の一例を示すグラフである。
図4に示すように、ステンレス材については、第1スタンドの孔型周長/仕上周長が1.06未満であれば第2スタンドでアンダーフィルが生じ、第2スタンドの孔型周長/仕上周長が1.05未満であれば第3スタンドでアンダーフィルが生じた。一方、普通鋼薄肉材については、第1スタンドの孔型周長/仕上周長が1.12より大きければ第2スタンドでオーバーフィルが生じ、第2スタンドの孔型周長/仕上周長が1.10より大きければ第3スタンドでオーバーフィルが生じた。また、第1スタンドの孔型周長≦第2スタンドの孔型周長である場合には、第2スタンドにおいて管材の外周長を調整できないため、アンダーフィルやオーバフィルが生じ易くなる。具体的には、第3スタンドでオーバフィルが生じるケースがあった。なお、図4において「×」でプロットしたデータは、アンダーフィル又はオーバーフィルが生じた管材を、「○」でプロットしたデータは、アンダーフィル及びオーバーフィルが生じなかった管材を示す。
以上に説明した図4に示すような試験結果に基づき、素管のCr含有量が10重量%以上である場合には素管外周長/仕上周長≧1.1となるように素管の外径を設定する一方、素管のCr含有量が10重量%未満である場合には素管外周長/仕上周長<1.1となるように素管の外径を設定しさえすれば、所定の条件を満足する限りにおいて一種類の孔型圧延ロールの組合せで圧延可能(Cr含有量に応じて組合せを変更しなくても圧延可能)であることが分かった。
すなわち、本実施形態に係るマンドレルミル圧延方法は、上記のように素管のCr含有量に応じて素管の外径を設定すると共に、第1スタンドに配設された複数の孔型圧延ロールによって決定される第1スタンドの孔型周長が下記の式(1)を、第2スタンドに配設された複数の孔型圧延ロールによって決定される第2スタンドの孔型周長が下記の式(2)を、前記第1及び第2スタンドの孔型周長が下記の式(3)をそれぞれ満足するように、前記第1及び第2スタンドに配設された孔型圧延ロールの孔型プロフィールを設定することを特徴とするものである。
1.06≦第1スタンドの孔型周長/仕上周長≦1.12 ・・・(1)
1.05≦第2スタンドの孔型周長/仕上周長≦1.10 ・・・(2)
第1スタンドの孔型周長>第2スタンドの孔型周長 ・・・(3)
なお、素管の外径は、例えば、特開平8−71615号公報や特開2002−11507号公報等に記載の公知の方法によって適宜調整可能である。
本実施形態に係るマンドレルミル圧延方法によれば、特にアンダーフィルやオーバーフィルが発生し易い第2及び第3スタンドにおいて、一種類の孔型圧延ロールの組合せでアンダーフィルやオーバーフィルを効果的に防止することができるが、さらに好ましい態様として第4スタンドにおけるアンダーフィルやオーバーフィルの発生をも確実に防止するべく、本発明の発明者らは、図4に示す試験結果が得られた各管材について、第3スタンドの孔型周長/仕上周長を種々の値に変更して圧延試験を行った。
図5は、上記試験結果の一例を示すグラフである。図5に示すように、ステンレス材については、第3スタンドの孔型周長/仕上周長が1.02未満であれば第4スタンドで多少アンダーフィルの傾向となり、普通鋼薄肉材については、第3スタンドの孔型周長/仕上周長が1.07より大きければ第4スタンドで多少オーバーフィルの傾向となった。また、第2スタンドの孔型周長≦第3スタンドの孔型周長である場合には、第3スタンドにおいて管材の外周長を調整できないため、アンダーフィルやオーバフィルが生じ易くなる。具体的には、第4スタンドでオーバフィルが生じるケースがあった。なお、図5において「×」でプロットしたデータは、アンダーフィル又はオーバーフィルが生じた管材を、「△」でプロットしたデータは、アンダーフィル又はオーバーフィル傾向となった管材を、「○」でプロットしたデータは、アンダーフィル及びオーバーフィルが生じなかった管材を示す。
図5に示す結果によれば、第3スタンドに配設された複数の孔型圧延ロールによって決定される第3スタンドの孔型周長が下記の式(4)を、前記第2及び第3スタンドの孔型周長が下記の式(5)をそれぞれ満足するように、前記第3スタンドに配設された孔型圧延ロールの孔型プロフィールを設定するのが好ましいことが分かる。
1.02≦第3スタンドの孔型周長/仕上周長≦1.07 ・・・(4)
第2スタンドの孔型周長>第3スタンドの孔型周長 ・・・(5)
斯かる好ましいマンドレルミル圧延方法によれば、第4スタンドにおけるアンダーフィルやオーバーフィルの発生をも確実に防止することが可能である。
以下、実施例及び比較例を示すことにより、本発明の特徴をより一層明らかにする。
<実施例>
図6の表に示すように、外径300mm、厚み20mmで長さ6000mm(表には外径の値のみ表示)の13Cr鋼からなる素管を、5スタンドからなる2ロール式のマンドレルミルで圧延し、ミル出側で外径270(仕上周長270×π)mm、厚み10mmの管材を得る試験を実施した(実施例1−1、2−1、3−1)。また、図6の表に示すように、外径295mm、厚み19mmで長さ6000mm(表には外径の値のみ表示)の炭素鋼、9Cr鋼、5Cr鋼からなる素管を、5スタンドからなる2ロール式のマンドレルミルで圧延し、ミル出側で外径270(仕上周長270×π)mm、厚み7mmの管材を得る試験を実施した(実施例1−2、1−3、1−4、2−2、3−2)。各条件について設定した第1スタンド〜第3スタンドの孔型周長S1〜S3は図6の表に示す通りであり、実施例1−1〜1−4、実施例2−1と2−2、実施例3−1と3−2は、それぞれ同一の孔型周長に設定した(同一の孔型圧延ロールの組合せを用いた)。なお、図6に示す表において「素管/仕上」の列に示す数値は、素管外周長/仕上周長の値を意味する。
<比較例>
素管外周長/仕上周長の値、第1スタンド〜第3スタンドの孔型周長S1〜S3の設定値を種々変更した以外は、実施例と同様の条件で圧延試験を実施した。すなわち、外径300mm、厚み20mmで長さ6000mmの素管については、5スタンドからなる2ロール式のマンドレルミルで圧延し、ミル出側で外径270(仕上周長270×π)mm、厚み10mmの管材を得る試験を実施した(比較例1−1、1−4、2−1、2−4、3−2、3−3、3−4、4−2、5−2)。また、外径295mm、厚み19mmで長さ6000mmの素管については、5スタンドからなる2ロール式のマンドレルミルで圧延し、ミル出側で外径270(仕上周長270×π)mm、厚み7mmの管材を得る試験を実施した(比較例1−2、1−3、2−2、2−3、3−1、4−1、5−1)。各条件について設定した第1スタンド〜第3スタンドの孔型周長S1〜S3は図6の表に示す通りであり、比較例1−1〜1−4、比較例2−1〜2−4、比較例3−1〜3−4、比較例4−1と4−2、比較例5−1と5−2は、それぞれ同一の孔型周長に設定した(同一の孔型圧延ロールの組合せを用いた)。
<試験結果>
比較例に係る圧延方法によって圧延された管材には、Cr含有量が10重量%以上の管材(13Cr鋼)又はCr含有量が10重量%未満の管材(9Cr鋼、5Cr鋼、炭素鋼)の少なくとも何れか一方に4%を超える発生率で疵が発生したのに対し、本発明に係る圧延方法によって圧延された管材には、Cr含有量が10重量%以上の管材(13Cr鋼)及びCr含有量が10重量%未満の管材(9Cr鋼、5Cr鋼、炭素鋼)の双方を同一の孔型圧延ロールの組合せを用いて圧延したにも関わらず殆ど疵が発生しなかった。
図1は、従来のマンドレルミル圧延方法によって、合金鋼のアンダーフィルを防止できる一方、普通鋼でオーバフィルが生じるメカニズムについて説明するための説明図である。 図2は、本発明のマンドレルミル圧延方法によって、合金鋼のアンダーフィルを防止できると共に、普通鋼でオーバフィルを防止できるメカニズムについて説明するための説明図である。 図3は、孔型周長の定義を説明するための説明図である。 図4は、本発明のマンドレルミル圧延方法における各種パラメータを決定するために実施した試験結果の一例を示すグラフである。 図5は、本発明のマンドレルミル圧延方法における各種パラメータを決定するために実施した試験結果の他の例を示すグラフである。 図6は、本発明のマンドレルミル圧延方法の実施例及び比較例を示す表である。

Claims (2)

  1. 各スタンドに複数の孔型圧延ロールが配設されたマンドレルミルによって素管を圧延する方法であって、
    素管のCr含有量が10重量%以上である場合には素管外周長/仕上周長≧1.1となるように素管の外径を設定する一方、素管のCr含有量が10重量%未満である場合には素管外周長/仕上周長<1.1となるように素管の外径を設定し、
    第1スタンドに配設された複数の孔型圧延ロールによって決定される第1スタンドの孔型周長が下記の式(1)を、第2スタンドに配設された複数の孔型圧延ロールによって決定される第2スタンドの孔型周長が下記の式(2)を、前記第1及び第2スタンドの孔型周長が下記の式(3)をそれぞれ満足するように、前記第1及び第2スタンドに配設された孔型圧延ロールの孔型プロフィールを設定することを特徴とするマンドレルミル圧延方法。
    1.06≦第1スタンドの孔型周長/仕上周長≦1.12 ・・・(1)
    1.05≦第2スタンドの孔型周長/仕上周長≦1.10 ・・・(2)
    第1スタンドの孔型周長>第2スタンドの孔型周長 ・・・(3)
  2. 第3スタンドに配設された複数の孔型圧延ロールによって決定される第3スタンドの孔型周長が下記の式(4)を、前記第2及び第3スタンドの孔型周長が下記の式(5)をそれぞれ満足するように、前記第3スタンドに配設された孔型圧延ロールの孔型プロフィールを設定することを特徴とする請求項1に記載のマンドレルミル圧延方法。
    1.02≦第3スタンドの孔型周長/仕上周長≦1.07 ・・・(4)
    第2スタンドの孔型周長>第3スタンドの孔型周長 ・・・(5)
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