固定子は被固定部材に固定される。例えば、コアを巻線の間から突出させて、突出した部分を被固定部材に固定する。しかし、被固定部材に磁性材を採用した場合には、固定子で発生した磁束が、突出した部分同士で短絡するおそれがある。
特許文献1では、固定子が、非磁性材からなる固定部材を介して、被固定部材に固定されている。この場合、固定子で発生した磁束は被固定部材へと漏れにくい。しかし、コアを、固定部材を含めて同一部材で構成することができず、製造工程が増え、コストの増加を招くおそれがある。
特許文献2では、固定子について、コアを所定の位置で巻線の間から外周側に突出させて、突出した部分を被固定部材に固定している。そして、周方向について隣接する当該部分の間には、巻線が三つだけ設けられている。当該固定子で回転磁界を発生させた場合、所定の位置における磁位が異なり、突出した部分同士での磁束の短絡が生じるおそれがある。
このような場合にも、例えば、当該部分の厚みを小さくすることで磁気抵抗を高め、磁束漏れを低減することができるが、保持強度が低下する点であまり望ましくない。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、コアの突出した部分を被固定部材に固定する際に被固定部材に磁性材を採用しても、当該部分同士での磁束の短絡を低減し、しかも保持強度を高めることが目的とされる。
この発明の請求項1に係る電機子は、所定の方向(91)の周りで周方向(92)に沿って環状を呈するコア(11;21;31)と、前記コアを芯として巻回された複数の巻線(A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136;A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246;A311〜A316,A311a〜A316a,A321〜A326,A321a〜A326a)とを備える。前記コアは複数の所定の位置(1011a〜1013a;2011a〜2014a;3011a,3012a)において前記巻線から突出し、いずれの前記所定の位置においても、その前記周方向側に隣接する前記巻線(A111,A121,A131;A211,A221,A231,A241;A311a,A321a)に流れる電流(+U;+U;+U)は相互に向きと大きさが等しく、その前記周方向とは反対側に隣接する前記巻線(A136,A116,A126;A246,A216,A226,A236;A311,A321)に流れる電流(−W;−W;+U)は相互に向きと大きさが等しい。
この発明の請求項2に係る電機子は、所定の方向(91)の周りで周方向(92)に沿って環状を呈するコア(11;21;31)と、前記コアを芯として巻回された複数の巻線(A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136;A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246;A311〜A316,A311a〜A316a,A321〜A326,A321a〜A326a)とを備える。前記コアは複数の所定の位置(1011a〜1013a;2011a〜2014a;3011a,3012a)において前記巻線から突出し、いずれの前記所定の位置から開始しても、前記巻線に流れる電流(+U,−V,+W,−U,+V,−W;+U,−V,+W,−U,+V,−W;+U,−V,−V,+W,+W,−U,−U,+V,+V,−W,−W,+U)の向きと大きさが、前記周方向に沿った順に等しい。
この発明の請求項3に係る電機子は、請求項2記載の電機子であって、前記所定の位置は前記周方向(92)においてN回対称に配置される。
この発明の請求項4に係る電機子は、請求項2または請求項3記載の電機子であって、向きと大きさの等しい電流(+U,−V,+W,−U,+V,−W;+U,−V,+W,−U,+V,−W;+U,−V,−V,+W,+W,−U,−U,+V,+V,−W,−W,+U)が流れる前記巻線(A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136;A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246;A311〜A316,A311a〜A316a,A321〜A326,A321a〜A326a)が、前記周方向(92)においてN回対称に配置される。
この発明の請求項5に係る電機子は、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の電機子であって、前記コア(11;21;31)は前記所定の位置(1011a〜1013a;2011a〜2014a;3011a,3012a)で、前記所定の方向(91;91;91)及びそれとは反対の方向並びに前記コアの内周側から外周側へと向かう方向(931〜933;941〜944;951,952)及びそれとは反対の方向の四方向のうち、一、二もしくは三方向へと突出する。
この発明の請求項6に係るモータは、請求項5記載の電機子(1;2;3)と、前記電機子を固定子として、前記四方向のうち、前記コア(11;21;31)がいずれの前記所定の位置(1011a〜1013a;2011a〜2014a;3011a,3012a)においても突出しない前記方向のいずれか少なくとも一方向から前記固定子に対向して配置される回転子(71,72;73;74)とを備える。
この発明の請求項7に係るコアは、磁性体(101;201;301)と、磁性材からなる第1乃至第2m(m;3以上の自然数)の突出部の少なくとも二組(111〜116,121〜126,131〜136;211〜216,221〜226,231〜236,241〜246;311〜316,321〜326)とを備える。前記第1乃至前記第2mの前記突出部は、所定の方向(91)の周りで周方向(92)に環状に、この順に繰り返し配置され、前記周方向に沿って隣接する前記突出部は前記磁性体で連結され、前記突出部のいずれもが前記磁性体に対して前記周方向に垂直な少なくとも一の方向である第1方向へと突出し、前記第1の前記突出部(111,121,131;211,221,231,241;311,321)はいずれも、他の前記突出部(112〜116,122〜126,132〜136;212〜216,222〜226,232〜236,242〜246;312〜316,322〜326)に対して前記周方向に垂直な少なくとも一の方向である第2方向(931〜933;91;91)へと突出する。
この発明の請求項8に係るコアは、請求項7記載のコアであって、前記第2方向は、前記所定の方向(91)及びそれとは反対の方向並びに前記磁性体の内周側から外周側へと向かう方向(931〜933;941〜944;951,952)及びそれとは反対の方向の四方向のうち、一、二もしくは三方向である。
この発明の請求項9に係る電機子は、請求項7または請求項8に記載のコア(11;21;31)と、前記磁性体(101;201;301)を芯として巻回されてm相電流が流される巻線であって、m相電流の各々について前記周方向に対して右巻きに巻回された巻線と左巻きに巻回された巻線(A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136;A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246;A311〜A316,A321〜A326)とを備える。前記巻線は所定の配置で配され、前記巻線の前記所定の配置では、いずれの第1の突出部から開始しても、巻線に流れる電流(+U,−V,+W,−U,+V,−W)の向きと大きさが前記周方向に沿った順に等しくなる。
この発明の請求項10に係る電機子は、請求項9記載の電機子であって、いずれの一の前記突出部(311〜315,316,321〜325,326)においても、その前記周方向(92)側に隣接する前記巻線(A312〜A316,A321,A322〜A326,A311)との間に、当該突出部に前記周方向側から前記磁性体を介して連結される第7の突出部(311a〜315a,316a,321a〜325a,326a)と、当該磁性体を芯として巻回される第2の巻線(A311a〜A315a,A316a,A321a〜A325a,A326a)とを更に備える。前記第7の前記突出部は、前記磁性体に対して前記第1方向へと突出し、前記第2の前記巻線は、前記一の前記突出部に前記周方向とは反対側から隣接する前記巻線(A311〜A315,A316,A321〜A325,A326)に流れる電流(+U,−V,+W,−U,+V,−W,+U,−V,+W,−U,+V,−W)と同じ向き及び大きさの電流が流れる。
この発明の請求項11に係る電機子は、請求項10記載の電機子であって、前記第7の前記突出部が突出する前記第1方向が前記第2方向に揃う場合には、前記第1の前記突出部は前記第2方向へと前記第7の突出部に対しても突出する。
この発明の請求項12に係るモータは、請求項9乃至請求項11のいずれか一つに記載の電機子(1;2;3)と、前記電機子を固定子として、前記第2方向と異なる方向から前記固定子に対向して配置される回転子(71,72;73;74)とを備える。
この発明の請求項13に係るコアは、請求項7または請求項8記載のコアであって、前記第1方向は、前記所定の方向(91)及びそれとは反対の方向並びに前記磁性体の内周側から外周側へと向かう方向(931〜933;941〜944;951,952)及びそれとは反対の方向のうち、前記第2方向と異なるいずれか少なくとも一つである。
この発明の請求項14に係る電機子は、請求項13に記載のコア(11;21;31)と、前記磁性体(101;201;301)を芯として巻回されてm相電流が流される巻線であって、m相電流の各々について前記周方向に対して右巻きに巻回された巻線と左巻きに巻回された巻線(A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136;A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246;A312〜A316,A322〜A326)とを備える。前記巻線は所定の配置で配され、前記巻線の前記所定の配置では、いずれの第1の突出部から開始しても、巻線に流れる電流(+U,−V,+W,−U,+V,−W)の向きと大きさが周方向に沿った順に等しくなる。
この発明の請求項15に係る電機子は、請求項14記載の電機子であって、いずれの一の前記突出部(311〜315,316,321〜325,326)においても、その前記周方向(92)側に隣接する前記巻線(A312〜A316,A321,A322〜A326,A311)との間に、当該突出部に前記周方向側から前記磁性体を介して連結される第7の突出部(311a〜315a,316a,321a〜325a,326a)と、当該磁性体を芯として巻回される第2の巻線(A311a〜A315a,A316a,A321a〜A325a,A326a)とを更に備える。前記第7の前記突出部は、前記磁性体に対して前記第1方向へと突出し、前記第2の前記巻線は、前記一の前記突出部に前記周方向とは反対側から隣接する前記巻線(A311〜A315,A316,A321〜A325,A326)に流れる電流(+U,−V,+W,−U,+V,−W,+U,−V,+W,−U,+V,−W)と同じ向き及び大きさの電流が流れる。
この発明の請求項16に係る電機子は、請求項15記載の電機子であって、前記第7の前記突出部が突出する前記第1方向が前記第2方向に揃う場合には、前記第1の前記突出部は前記第2方向へと前記第7の突出部に対しても突出する。
この発明の請求項17に係るモータは、請求項14乃至請求項16のいずれか一つに記載の電機子(1;2;3)と、前記電機子を固定子として、前記固定子に対向して前記第1方向から配置される回転子(71,72;73;74)とを備える。
この発明の請求項18に係るモータは、請求項6、請求項12及び請求項17のいずれか一つに記載のモータであって、前記回転子(71,72;73;74)は、前記固定子(1;2;3)に対向して設けられる複数の磁石(711〜716,721〜726;731〜738;741〜744)を有する。
この発明の請求項19に係る圧縮機は、請求項6、請求項12、請求項17及び請求項18のいずれか一つに記載のモータを搭載することを特徴とする。
この発明の請求項1に係る電機子によれば、コアの突出した部分を例えば被固定部材に固着することで、当該電機子を被固定部材に固定することができる。そして、いずれの突出した部分同士においても、それぞれの両側に流れる電流の向きと大きさが共通するので、当該被固定部材に磁性材を採用しても、コアから突出した部分同士での磁束の短絡が生じにくい。しかも、突出した部分の周方向に沿った厚みを大きくすることができ、以って当該電機子を被固定部材に固定した際の保持強度を高めることができる。
この発明の請求項2に係る電機子によれば、コアの突出した部分を例えば被固定部材に固着することで、当該電機子を被固定部材に固定することができる。そして、いずれの所定の位置から開始しても、巻線に流れる電流の向きと大きさが周方向に沿った順に等しいので、所定の位置における磁位がほぼ等しくなる。よって、被固定部材に磁性材を採用しても、コアから突出した部分同士での磁束の短絡が生じにくい。しかも、突出した部分の周方向に対する厚みを大きくすることができ、以って当該電機子を被固定部材に固定した際の保持強度を高めることができる。
この発明の請求項3に係る電機子によれば、コアの突出した部分が周方向において対称となるため、当該電機子を被固定部材に固定した際に、突出した部分のそれぞれに均等な力がかかり、以って保持強度が高まる。
この発明の請求項4に係る電機子によれば、巻線に流れる電流の向きと大きさの等しい位置が、周方向においてN回対称に配置されるので、磁位もN回対称となる。よって、所定の位置における磁位を等しくできる。
この発明の請求項5に係る電機子によれば、当該電機子を固定子として、四方向のうち、コアがいずれの所定の位置においても突出しない方向のいずれか少なくとも一つから固定子に対向して回転子を配置して得られるモータにおいて、固定子で発生した磁束の多くが被固定部材に至らず回転子へと流れる。これは、コアの突出した部分同士で磁束が短絡しにくいからである。よって、モータの駆動効率及び駆動出力が高まる。
この発明の請求項6に係るモータによれば、コアの突出した部分同士での磁束の短絡が生じにくいので、固定子で発生した磁束の多くが回転子へと流れ、以ってモータの駆動効率及び駆動出力が高まる。
この発明の請求項7に係るコアによれば、磁性体を芯として巻回されてm相電流が流される巻線であって、m相電流の各々について周方向に対して右巻きに巻回された巻線と左巻きに巻回された巻線を設けて得られる電機子において、いずれの第1の突出部から開始しても、巻線に流れる電流の向きと大きさが周方向に沿った順に等しくなるように、巻線を配置することができる。当該配置によれば、いずれの第1の突出部同士においても、それぞれの両側に流れる電流の向きと大きさが共通するので、第1の突出部を被固定部材に固定する場合に被固定部材に磁性材を採用しても、第1の突出部同士での磁束の短絡が生じない。
しかも、突出した部分の周方向に対する厚みを大きくすることができ、以って当該電機子を固定部材に固定した際の保持強度を高くすることができる。
この発明の請求項8に係るコアによれば、磁性体を芯として巻線を巻回して得られる電機子を固定子として、四方向のうち、当該第2方向とは異なるいずれか少なくとも一つから固定子に対向して回転子を配置することができる。これにより得られたモータにおいて、固定子で発生した磁束の多くが被固定部材に至らず回転子へと流れる。これは、第1の突出部同士での磁束の短絡が生じないからである。よって、当該モータの駆動効率及び駆動出力が高まる。
この発明の請求項9に係る電機子によれば、所定の配置によれば、いずれの第1の突出部から開始しても、巻線に流れる電流の向きと大きさが周方向に沿った順に等しいので、第1の突出部における磁位がほぼ等しくなる。よって、第1の突出部を被固定部材に固定する場合に被固定部材に磁性材を採用しても、第1の突出部同士での磁束の短絡が生じない。
しかも、当該電機子を固定子として、四方向のうち、当該第2方向とは異なるいずれか少なくとも一つから固定子に対向して回転子を配置して得られるモータにおいて、固定子で発生した磁束の多くが被固定部材に至らず回転子へと流れる。よって、当該モータの駆動効率及び駆動出力が高まる。
この発明の請求項10または請求項15に係る電機子によれば、第1の突出部においては、その両側に流れる電流の向き及び大きさが同じであるので、磁束の多くが周方向またはそれとは反対の方向へと流れ、以って磁束が漏れにくい。よって、被固定部材に磁性材を採用しても、第1の突出部を介して被固定部材へと磁束が流れにくい。
この発明の請求項11または請求項16に係る電機子によれば、第7の突出部が前記第2方向へと突出する場合であっても、第1の突出部のみを被固定部材に固定できる。
この発明の請求項12に係るモータによれば、第1の突出部同士で被固定部材を介して磁束が短絡しにくいので、固定子で発生した磁束の多くが被固定部材に至らず回転子へと流れ、以ってモータの駆動効率及び駆動出力が高まる。
この発明の請求項13に係るコアによれば、磁性体を芯として巻線を巻回して得られる電機子を固定子として、固定子に対向して第1方向から回転子を配置することができる。これにより得られたモータにおいて、固定子で発生した磁束の多くが被固定部材に至らず回転子へと流れる。これは、第1の突出部同士での磁束の短絡が生じず、また突出部が回転子へと突出しているので回転子からの磁束を導きやすいからである。よって、当該モータの駆動効率及び駆動出力が高まる。
この発明の請求項14に係る電機子によれば、所定の配置によれば、いずれの第1の突出部から開始しても、巻線に流れる電流の向きと大きさが周方向に沿った順に等しいので、第1の突出部における磁位がほぼ等しくなる。よって、第1の突出部を被固定部材に固定する場合に被固定部材に磁性材を採用しても、第1の突出部同士での磁束の短絡が生じない。
しかも、当該電機子を固定子として、当該固定子に対向して第1方向から回転子を配置して得られたモータにおいて、固定子で発生した磁束の多くが被固定部材に至らず回転子へと流れる。これは、第1の突出部同士での磁束の短絡が生じず、また突出部が回転子へと突出しているので回転子からの磁束を導きやすいからである。よって、当該モータの駆動効率及び駆動出力が高まる。
この発明の請求項17に係るモータによれば、第1の突出部同士での磁束の短絡が生じず、また突出部が回転子へと突出しているので回転子からの磁束を導きやすく、以ってモータの駆動効率及び駆動出力が高まる。
この発明の請求項18に係るモータによれば、磁石から流れる磁束が、固定子の巻線に効率良く鎖交する。
この発明の請求項19に係る圧縮機によれば、例えば冷媒等を効率良く圧縮することができる。
第1の実施の形態.
図1は、本実施の形態に係るモータを概念的に示す斜視図である。当該モータは、固定子1及び回転子71,72を備える。図1では見やすくするために、固定子1及び回転子71,72を所定の方向91に沿った間隔を拡げて示している。
図2は、固定子1を概念的に示す上面図である。固定子1は、所定の方向91の周りで周方向92に沿って環状を呈するコア11と、巻線A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136とを備える。
巻線A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136は、この順にコア11を芯として巻回されている。具体的には、巻線A111,A113,A115,A121,A123,A125,A131,A133,A135はそれぞれ周方向92から見て右巻き及び左巻きのいずれか一の方向に巻回され、巻線A112,A114,A116,A122,A124,A126,A132,A134,A136は、他の方向に巻回されている。
コア11は、巻線A136と巻線A111との間の位置1011aにおいて巻線A136,A111に対して外周側へと向かう方向931に突出し、巻線A116と巻線A121との間の位置1012aにおいて巻線A116,A121に対して外周側へと向かう方向932に突出し、巻線A126と巻線A131との間の位置1013aにおいて巻線A126,A131に対して外周側へと向かう方向933に突出している。図2では、突出した部分が符号1011〜1013で示されている。
この内容は、位置1011a〜1013aをコア11の複数の所定の位置と把握することで次のように把握できる。つまり、コア11が、複数の所定の位置1011a,1012a,1013aにおいて、巻線A136,A111、巻線A116,A121及び巻線A126,A131から外周側にそれぞれ突出している。
図1及び図2で示されるように、突出した部分1011〜1013を、所定の方向91を中心とする円筒である被固定部材81に固着することで、固定子1が被固定部材81に固定される。
巻線A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136には、次の態様で電流が流される。すなわち、巻線A111,A114,A121,A124,A131,A134にはそれぞれU相電流が流され、巻線A112,A115,A122,A125,A132,A135にはそれぞれV相電流が流され、巻線A113,A116,A123,A126,A133,A136にはそれぞれW相電流が流される。
図2では、周方向92から見て右巻き及び左巻きのいずれか一の方向に沿って流れる3相電流が符号+U,+V,+Wで、他の方向に沿って流れる3相電流が符号−U,−V,−Wで、それぞれ表されている。以下においても同様である。
図2で示される電流に関する態様は、いずれの所定の位置1011a〜1013aから開始しても、巻線A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136に流れる電流の向きと大きさが、周方向92に沿った順に等しいと把握できる。すなわち、いずれの所定の位置1011a〜1013aから開始しても、電流+U,−V,+W,−U,+V,−Wがこの順に周方向92に沿って繰り返される。
このような態様によれば、所定の位置1011a〜1013aにおける磁位がほぼ等しくなる。よって、被固定部材81に磁性材を採用しても、突出した部分1011〜1013同士での磁束の短絡が生じにくい。
この場合、突出した部分1011〜1013の周方向92に沿った厚みが大きくても、同様に磁束の短絡が生じにくい。よって、突出した部分1011〜1013の周方向92に沿った厚みを大きくすることで、固定子1を被固定部材81に固定した際の保持強度を高めることができる。
上述した態様に限らず、例えば少なくとも突出した部分1011〜1013同士で、その両側に流れる電流の向きと大きさが共通する態様であってもよい。
この態様は、いずれの所定の位置1011a〜1013aにおいても、その周方向92側に隣接する巻線A111,A121,A131には相互に向きと大きさが等しい電流+Uが流れ、その周方向92とは反対側に隣接する巻線A136,A116,A126には相互に向きと大きさが等しい電流−Wが流れると把握できる。
このような態様によっても、上述したと同様に、突出した部分1011〜1013同士での磁束の短絡を防止でき、しかも保持強度を高めることができる。
所定の位置1011a〜1013aは、周方向92において3回対称であることが、次の点で望ましい。すなわち、突出した部分1011〜1013が周方向92において対称となるため、固定子1を被固定部材81に固定した際に、突出した部分1011〜1013のそれぞれに均等な力がかかり、以って保持強度が高まる。図2では、所定の位置1011a〜1013aがほぼ3回対称である場合が示されている。
この技術は、所定の位置がN個ある場合(Nは2以上の自然数である)に拡張することができる。すなわち、当該所定の位置を周方向92においてN回対称に配置することで、保持強度を高めることができる。
電流+Uが流れる巻線A111,A121,A131、電流−Vが流れる巻線A112,A122,A132、電流+Wが流れる巻線A113,A123,A133、電流−Uが流れる巻線A114,A124,A134、電流+Vが流れる巻線A115,A125,A135、電流−Wが流れる巻線A116,A126,A136は、それぞれ周方向92において3回対称であることが望ましく、この場合が図2に示されている。
この内容は、向きと大きさの等しい電流が流れる巻線A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136が、周方向92において3回対称に配置されると把握できる。
このような態様によれば、コア11において磁位が周方向92に3回対称となる。よって、いずれの所定の位置1011a〜1013aにおいても、そこでの磁位を等しくすることができる。
この技術は、向きと大きさの等しい電流が流れる巻線が、周方向92においてN回対称に配置される場合に拡張することができる。
図1に戻って、回転子71は、基体710と磁石711〜716とを有し、所定の方向91に沿う回転軸を中心として回転可能である。基体710は、所定の方向91から固定子1に対向して配置される。磁石711〜716は、基体710の固定子1側の表面に固定子1に対し設けられ、隣接するもの同士は、互いに極性が異なる磁極面を固定子1に向けている。
回転子72は、基体720と磁石721〜726とを有し、回転子71と同じ回転軸を中心として回転可能である。基体720は、所定の方向91と反対の方向から固定子1に対向して配置される。磁石721〜726は、基体720の固定子1側の表面に固定子1に対し設けられ、隣接するもの同士は、互いに極性が異なる磁極面を固定子1に向けている。
図1で示されるように、磁石711〜716はそれぞれ、固定子1を介して磁石721〜726と対向し、互いに極性が同じ磁極面を固定子1に対して向けることが望ましい。これは、巻線A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136に電流を流した場合に、コア11のいずれの位置においても、その位置での所定の方向91についての端が同じ極性で磁化されるからである。
巻線A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136に上述した態様で電流が流れると、固定子1には回転軸を中心とする回転磁界が発生する。当該回転磁界の多くは被固定部材81に至らず回転子71,72へと流れる。これは、突出した部分1011〜1013同士での磁束の短絡が生じにくいからである。よって、モータの駆動効率及び駆動出力が高まる。
例えば、回転子71,72は、その基体710,720の内周側にシャフトやクランク軸などの回転軸が嵌合され、当該回転軸の少なくともいずれか一方に負荷が設けられる。そして、固定子1で発生した回転磁界によって回転子71,72が回転することで、負荷が駆動される。後述する回転子73,74についても同様のことが言える。
例えば、回転子71,72のいずれか一方のみを設けたモータであってもよいが、固定子1で発生した回転磁界を効率良く利用できる点で、上述したように回転子71,72の両方を設ける方が望ましい。
また、回転子71,72のいずれか少なくとも一方とともに、あるいはこれに代えて、固定子1の内周側に回転子を設けても良い。特に、回転子71,72とともに固定子1の内周側にも回転子を設けたモータは、固定子1で発生した回転磁界を効率良く利用できる点で望ましい。
固定子1は、コア11が所定の位置1011a〜1013aで、所定の方向91及びそれとは反対の方向並びにコア11の内周側から外周側へと向かう方向931〜933及びそれとは反対の方向の四方向のうち、一、二もしくは三方向へと突出しても良い。
この場合、回転子は、当該四方向のうち、コア11がいずれの所定の位置1011a〜1013aにおいても突出しない方向のいずれか少なくとも一方向から、固定子1に対向して配置される。
コア11の所定の位置1011a〜1013a以外の位置における被固定部材81とコア11との距離は、回転子71,72と固定子1とのギャップ長よりも大きいことが、次の点で望ましい。すなわち、固定子1から被固定部材81への磁束の漏れが回避され、磁束の多くが回転子71,72へと流れる。
第2の実施の形態.
第1の実施の形態で説明したコア11には、例えば図3で示されるコアを採用することができる。コア11は、磁性体101と、磁性材からなる第1乃至第6の突出部の3組111〜116,121〜126,131〜136とを備える。
第1乃至第6の突出部111〜116,121〜126,131〜136は、所定の方向91の周りで周方向92に環状に、この順に配置され、周方向92に沿って隣接するもの同士が磁性体101で連結されている。
第1乃至第6の突出部111〜116,121〜126,131〜136はいずれも、磁性体101に対して所定の方向91及びそれとは反対の方向へと突出している。よって、第1の実施の形態で説明したように回転子71,72を配して得られるモータでは、磁束の多くが回転子71,72へと流れる。
また、回転子71,72とともに、またはこれに代えて、固定子1の内周側に回転子が設けられたモータでは、第1乃至第6の突出部111〜116,121〜126,131〜136を内周側にも突出させることが、磁束の多くを回転子へと流すことができる点で望ましい。
突出部111〜116,121〜126,131〜136を回転子に近接させることが、磁束をより効率良く回転子へと流すことができる点で望ましい。
さらに、第1の突出部111,121,131はそれぞれ、磁性体101に対して外周側へと向かう方向931,932,933に突出している。
このようなコア11によれば、巻線A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136を、第1の実施の形態で説明したと同様の態様(図2)で、第1乃至第6の突出部111〜116,121〜126,131〜136の間に磁性体101を芯として配置することができる。
しかも、巻線A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136を巻回して得られる固定子1において、第1の突出部111,121,131が被固定部材81に固定される場合に、被固定部材81に磁性材を採用しても第1の突出部111,121,131同士での磁束の短絡が生じにくい。これは、第1の実施の形態で説明したと同様の態様(図2)で、巻線A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136に電流を流すことができるからである。
例えば、第2乃至第6の突出部112〜116,122〜126,132〜136が磁性体101に対して外周側に突出している場合には、第1の突出部111,121,131は、他の突出部112〜116,122〜126,132〜136のいずれに対しても、さらに外周側に突出していることが望ましい。第1の突出部111,121,131のみを被固定部材81に固定できるからである。
コア11に巻回される巻線A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136に流される3相電流をm相電流(m=3)と把握すれば、コア11は、第1乃至第2mの突出部の三組を備えると把握できる。そして、コア11の特徴を、mが3以上の自然数であって、第1乃至第2mの突出部の少なくも二組を備えるものに拡張することができる。
拡張されたコアによれば、磁性体101を芯として巻回されてm相電流が流される巻線であって、m相電流の各々について周方向92に対して右巻きに巻回された巻線と左巻きに巻回された巻線を設ける際に、いずれの第1の突出部から開始しても、巻線に流れる電流の向きと大きさが周方向に沿った順に等しくなるように、巻線を配置することができる。当該配置によれば、いずれの第1の突出部同士においても、それぞれの両側に流れる電流の向きと大きさが共通するので磁位が相互に等しく、第1の突出部を被固定部材81に固定する場合に被固定部材81に磁性材を採用しても、第1の突出部同士での磁束の短絡が生じない。
図4及び図5は、コア11を被固定部材81に固定する前と固定した後とをそれぞれ示す。コア11は、第1の突出部111,121,131の外周側が被固定部材81の内周側の側面に、例えば焼き嵌めや溶接によって、固着される。
例えば、巻線A111〜A116,A121〜A126,A131〜A136の各々をコア11に巻回した後に、当該コア11を被固定部材81に固定しても良い。
第1の突出部111,121,131は、他の突出部112〜116,122〜126,132〜136に対して外周側に突出する場合に限らず、所定の方向91及びそれとは反対の方向並びにコア11の内周側から外周側へと向かう方向931〜933及びそれとは反対の方向の四方向のうち、一、二もしくは三方向へと突出しても良い。
第3の実施の形態.
図6は、本実施の形態に係るモータを概念的に示す斜視図である。また図7は、当該モータの上面図である。当該モータは、固定子2及び回転子73を備える。図6及び図7では、当該モータをハウジング8内に設けた場合が示されている。図8は、固定子2を概念的に示す斜視図である。また図9は、固定子2の上面図である。
固定子2は、所定の方向91の周りで周方向92に沿って環状を呈するコア21と、巻線A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246とを備える。
巻線A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246は、この順にコア21を芯として巻回されている。具体的には、巻線A211,A213,A215,A221,A223,A225,A231,A233,A235,A241,A243,A245はそれぞれ周方向92から見て右巻き及び左巻きのいずれか一の方向に巻回され、巻線A212,A214,A216,A222,A224,A226,A232,A234,A236,A242,A244,A246はそれぞれ他の方向に巻回されている。
コア21は、巻線A246と巻線211との間の位置2011aにおいて巻線A246,A211に対して所定の方向91に突出し、巻線A216と巻線A221との間の位置2012aにおいて巻線A216,A221に対して所定の方向91に突出し、巻線A226と巻線A231との間の位置2013aにおいて巻線A226,A231に対して所定の方向91に突出し、巻線A236と巻線A241との間の位置2014aにおいて巻線A236,A241に対して所定の方向91に突出している。図8では、突出した部分が符号2011〜2014で示されている。
この内容は、位置2011a〜2104aをコア21の複数の所定の位置と把握することで次のように把握できる。つまり、コア21が、複数の所定の位置2011a,2012a,2013a,2104aにおいて、巻線A246,A211、巻線A216,A221、巻線A226,A231及び巻線A236,A241から所定の方向91にそれぞれ突出している。
図10は、固定子2を被固定部材82に固定する態様を概念的に示す。突出した部分2011〜2014が被固定部材82に接触する態様で、固定子2を被固定部材82に固定する。具体的には、所定の方向92に沿って所定の方向91と反対側からボルト83で、突出した部分2011〜2014を介して固定子2及び被固定部材82を貫通し、被固定部材82の固定子2とは反対側からナット84で締結する。被固定部材82は、例えばハウジング8に固定される。
所定の位置2011a〜2014aにおいて、コア21が外周側にも突出し、外周側に突出した部分をボルト83が所定の方向91に貫通することが、所定の位置2011a〜2014aでの磁束の流れを妨げない点で望ましい。図10では、この態様が示されている。
例えば、突出した部分2011〜2014を被固定部材82に固着することで、固定子2を被固定部材82に固定しても良い。
巻線A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246には、次の態様で電流が流される。すなわち、巻線A211,A214,A221,A224,A231,A234,A241,A244にはそれぞれU相電流が流され、巻線A212,A215,A222,A225,A232,A235,A242,A245にはそれぞれV相電流が流され、巻線A213,A216,A223,A226,A233,A236,A243,A246にはそれぞれW相電流が流される。
図9で示される電流に関する態様は、第1の実施の形態で説明したと同様に、いずれの所定の位置2011a〜2014aから開始しても、巻線A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246に流れる電流の向きと大きさが、周方向92に沿った順に等しいと把握できる。
このような態様によれば、所定の位置2011a〜2014aにおける磁位がほぼ等しくなる。よって、被固定部材82に磁性材が採用しても、突出した部分2011〜2014同士での磁束の短絡が生じにくい。
この場合、突出した部分2011〜2014の周方向92に沿った厚みが大きくても、同様に磁束の短絡が生じにくい。よって、突出した部分2011〜2014の周方向92に沿った厚みを大きくすることで、固定子2を被固定部材82に固定した際の保持強度を高めることができる。
上述した態様に限らず、第1の実施の形態で説明したと同様に、例えば少なくとも突出した部分2011〜2014同士で、それぞれの両側に流れる電流の向きと大きさが共通する態様であってもよい。
所定の位置2011a〜2014aは、周方向92において4回対称であることが望ましい。第1の実施の形態で説明した同様、突出した部分2011〜2014の保持強度が高まるからである。図9では、所定の位置2011a〜2014aがほぼ4回対称である場合が示されている。
この技術は、第1の実施の形態で説明したと同様に、所定の位置がN個ある場合(Nは2以上の自然数である)に拡張することができる。
向きと大きさの等しい電流が流れる巻線A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246が、周方向92において4回対称であることが望ましく、この場合が図9に示されている。これは、コア21において磁位が周方向92に4回対称となり、以っていずれの所定の位置2011a〜2014aにおいても、そこでの磁位を等しくすることができるからである。
この技術は、第1の実施の形態で説明したと同様にして、向きと大きさの等しい電流が流れる巻線が、周方向92においてN回対称に配置される場合に拡張できる。
図7に戻って、回転子73は、基体730と磁石731〜738とを有し、所定の方向91に沿う回転軸を中心として回転可能である。基体730は、内周側から固定子2に対向して配置される。磁石731〜738は、回転軸の周りで環状に、この順に基体730に埋め込まれ、隣接するもの同士は、互いに極性が異なる磁極面を固定子2に向けている。
巻線A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246に上述した態様で電流が流れると、固定子2には回転軸を中心とする回転磁界が発生する。当該回転磁界の多くは被固定部材82に至らず回転子73へと流れる。これは、突出した部分2011〜2014同士での磁束の短絡が生じにくいからである。よって、モータの駆動効率及び駆動出力が高まる。
例えば、回転子73とともに、あるいはこれに代えて、固定子2の外周側かつハウジング8の内側、及び所定の方向91とは反対側の少なくとも一方に回転子を設けても良い。特に、回転子73とともに固定子2の外周側かつハウジング8の内側、及び所定の方向91とは反対側にも回転子を設けたモータは、固定子2で発生した回転磁界を効率良く利用できる点で望ましい。
固定子2は、コア21が所定の位置2011a〜2014aで、所定の方向91及びそれとは反対の方向並びにコア21の内周側から外周側へと向かう方向941〜944及びそれとは反対の方向の四方向のうち、一、二もしくは三方向へと突出しても良い。
この場合、回転子は、当該四方向のうち、コア21がいずれの所定の位置2011a〜2014aにおいても突出しない方向のいずれか少なくとも一方向から、固定子2に対向して配置される。
コア21の所定の位置2011a〜2014a以外の位置における被固定部材82とコア21との距離は、回転子73と固定子2とのギャップ長よりも大きいことが、次の点で望ましい。すなわち、固定子2から被固定部材82への磁束の漏れが回避され、磁束の多くが回転子73へと流れる。
第4の実施の形態.
第3の実施の形態で説明したコア21には、例えば図11で示されるコアを採用することができる。コア21は、磁性体201と、磁性材からなる第1乃至第6の突出部の4組211〜216,221〜226,231〜236,241〜246とを備える。
第1乃至第6の突出部211〜216,221〜226,231〜236,241〜246は、所定の方向91の周りで周方向92に環状に、この順に配置され、周方向92に沿って隣接するもの同士が磁性体201で連結されている。第1乃至第6の突出部211〜216,221〜226,231〜236,241〜246はいずれも、磁性体201に対して内周側へと突出している。
よって、第3の実施の形態で説明したように回転子73を配して得られるモータでは、磁束の多くが回転子73へと流れる。
また、回転子73とともに、あるいはこれに代えて、固定子2の外周側かつハウジング8の内側、及び所定の方向91とは反対側の少なくとも一方に回転子が設けられたモータでは、第1乃至第6の突出部211〜216,221〜226,231〜236,241〜246を当該回転子に向かって突出させることが、磁束の多くを当該回転子へと流すことができる点で望ましい。
突出部211〜216,221〜226,231〜236,241〜246を回転子に近接させることが、磁束をより効率良く回転子へと流すことができる点で望ましい。
さらに、第1の突出部211,221,231,241はそれぞれ、磁性体201に対して所定の方向91に突出している。
このようなコア21によれば、巻線A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246を、第3の実施の形態で説明したと同様の態様(図9)で、第1乃至第6の突出部211〜216,221〜226,231〜236,241〜246の間に磁性体201を芯として配置することができる。
しかも、巻線A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246を巻回して得られる固定子2において、第1の突出部211,221,231,241が被固定部材82(図10)に固定される場合に、被固定部材82に磁性材を採用しても第1の突出部211,221,231,241同士で磁束の短絡が生じにくい。これは、第3の実施の形態で説明したと同様の態様(図9)で、巻線A211〜A216,A221〜A226,A231〜A236,A241〜A246に電流を流すことができるからである。
例えば、第2乃至第6の突出部212〜216,222〜226,232〜236,242〜246が磁性体201に対して所定の方向91に突出する場合には、第1の突出部211,221,231,241は、他の突出部212〜216,222〜226,232〜236,242〜246のいずれに対しても、さらに所定の方向91に突出していることが望ましい。第1の突出部211,221,231,241のみを被固定部材82に固定できるからである。
第2の実施の形態で説明したコア11と同様に、コア21は、第1乃至第2m(m=3)の突出部の4組を備えると把握できる。また、コア21の特徴を、mが3以上の自然数であって、第1乃至第2mの突出部の少なくとも二組を備えるものに拡張することができる。
第1の突出部211,221,231,241は、他の突出部212〜216,222〜226,232〜236,242〜246に対して所定の方向91に突出する場合に限らず、所定の方向91及びそれとは反対の方向並びにコア21の内周側から外周側へと向かう方向941〜944及びそれとは反対の方向の四方向のうち、一、二もしくは三方向へと突出しても良い。
第5の実施の形態.
図12は、本実施の形態に係るモータを概念的に示す斜視図である。また図13は、当該モータの上面図である。当該モータは、固定子3及び回転子74を備える。図12及び図13では、当該モータをハウジング8内に設けた場合が示されている。図14は、固定子3を概念的に示す斜視図である。また図15は、固定子3の上面図である。
固定子3は、所定の方向91の周りで周方向92に沿って環状を呈するコア31と、巻線A311〜A316,A311a〜A316a,A321〜A326,A321a〜A326aとを備える。
コア31は、磁性体301と、磁性材からなる突出部311〜316,311a〜316a,321〜326,321a〜326aとを備える。
突出部311〜316,311a〜316a,321〜326,321a〜326aは、所定の方向91の周りで周方向92に環状に、突出部311,311a,312,312a,313,313a,314,314a,315,315a,316,316a,321,321a,322,322a,323,323a,324,324a,325,325a,326,326aの順に配置され、周方向92に沿って隣接するもの同士が磁性体301で連結されている。突出部311〜316,311a〜316a,321〜326,321a〜326aはいずれも、磁性体301に対して内周側へと突出している。
さらに、突出部311,321はそれぞれ、磁性体301に対して所定の方向91に突出している。
巻線A311〜A316,A311a〜A316a,A321〜A326,A321a〜A326aは、周方向92に沿って隣接する突出部311〜316,311a〜316a,321〜326,321a〜326aの間で磁性体301を芯として、巻線A311,A311a,A312,A312a,A313,A313a,A314,A314a,A315,A315a,A316,A316a,A321,A321a,A322,A322a,A323,A323a,A324,A324a,A325,A325a,A326,A326aの順にそれぞれ巻回されている。
具体的には、巻線A311,A311a,A313,A313a,A315,A315a,A321,A321a,A323,A323a,A325,A325aはそれぞれ周方向92から見て右巻き及び左巻きのいずれか一の方向に巻回され、巻線A312,A312a,A314,A314a,A316,A316a,A322,A322a,A324,A324a,A326,A326aはそれぞれ他の方向に巻回されている。
第3の実施の形態で説明したと同様にして、突出した部分3011,3012を例えば被固定部材82(図10)に固定することで、固定子3が被固定部材82に固定される。
例えば、突出部311〜316,311a〜316a,321〜326,321a〜326aが磁性体301に対して所定の方向91に突出している場合には、突出部311,321は、他の突出部312〜316,311a〜316a,321〜326,321a〜326aのいずれに対しても所定の方向91に突出していることが望ましい。突出部311,321のみを被固定部材に固定できるからである。
巻線A311〜A316,A311a〜A316a,A321〜A326,A321a〜A326aには、次の態様で電流が流される。すなわち、巻線A311,A311a,A314,A314a,A321,A321a,A324,A324aにはそれぞれU相電流が流され、巻線A312,A312a,A315,A315a,A322,A322a,A325,A325aにはそれぞれV相電流が流され、巻線A313,A313a,A316,A316a,A323,A323a,A326,A326aにはそれぞれW相電流が流される。
上述した固定子3においてコア31は、巻線A311と巻線A311aとの間の位置3011aにおいて巻線A311,A311aに対して所定の方向91に突出し、巻線A321と巻線A321aとの間の位置3012aにおいて巻線A321,A321aに対して所定の方向91に突出していると把握することができる。図14では、突出した部分が符号3011,3012で示されている。
また図15で示される電流に関する態様は、第1の実施の形態で説明したと同様に、いずれの所定の位置3011a,3012aから開始しても、巻線A311〜A316,A311a〜A316a,A321〜A326,A321a〜A326aに流れる電流の向きと大きさが、周方向92に沿った順に等しいと把握できる。
このような固定子3によれば、所定の位置3011a,3012aにおける磁位がほぼ等しくなる。よって、固定子3が固定される例えば被固定部材82に磁性材を採用しても、突出した部分3011,3012同士、すなわち突出部311,321同士での磁束の短絡が生じにくい。
しかも、所定の位置3011a,3012aのいずれの両側にも、向き及び大きさが同じ電流+Uが流れるので、磁束の多くが周方向92またはそれとは反対の方向へと流れ、以って磁束が漏れにくい。
また、突出した部分3011,3012、すなわち突出部311,321の周方向92に沿った厚みが大きくても、同様に磁束の短絡が生じにくい。よって、当該厚みを大きくすることで、固定子3を被固定部材に固定した際の保持強度を高めることができる。
所定の位置3011a,3012a、すなわち突出部311,321の位置は、周方向92において2回対称であることが望ましい。第3の実施の形態で説明したと同様、突出した部分3011,3012の保持強度が高まるからである。図15では、所定の位置3011a,3012aがほぼ2回対称である場合が示されている。
この技術は、第1の実施の形態で説明した同様に、所定の位置がN個ある場合(Nは2以上の自然数である)に拡張することができる。
向きと大きさの等しい電流が流れる巻線A311〜A316,A311a〜A316a,A321〜A326,A321a〜A326aが、周方向92において2回対称であることが望ましく、この場合が図15に示されている。これは、コア31に流れる磁束の向き及び大きさが周方向92において2回対称となり、以っていずれの所定の位置3011a,3012aにおいても、そこでの磁位を等しくすることができるからである。
この技術は、第1の実施の形態で説明したと同様にして、向きと大きさの等しい電流が流れる巻線が、周方向92においてN回対称に配置される場合に拡張できる。
図13に戻って、回転子74は、基体740と、磁石741〜744とを有し、所定の方向91に沿う回転軸を中心として回転可能である。基体740は、内周側から固定子3に対向して配置される。磁石741〜744は、回転軸の周りで環状に、この順に基体740に埋め込まれ、隣接するもの同士は、互いに極性が異なる磁極面を固定子3に向けている。
巻線A311〜A316,A311a〜A316a,A321〜A326,A321a〜A326aに上述した態様で電流が流れると、固定子3には回転軸を中心とする回転磁界が発生する。当該回転磁界の多くは被固定部材に至らず回転子74へと流れる。これは、突出した部分3011,1012同士、すなわち突出部311,321同士での磁束の短絡が生じにくいからである。よって、モータの駆動効率及び駆動出力が高まる。
例えば、回転子74とともに、あるいはこれに代えて、固定子3の外周側かつハウジング8の内側、及び所定の方向91とは反対側の少なくとも一方から回転子を設けても良い。特に、回転子74とともに固定子3の外周側かつハウジング8の内側、及び所定の方向91とは反対側にも回転子を設けたモータは、固定子3で発生した回転磁界を効率良く利用できる点で望ましい。
上述したように突出部311〜316,311a〜316a,321〜326,321a〜326aはいずれも磁性体301に対して内周側に突出しているので、磁束の多くが回転子74へと流れる。
また、回転子74とともに、あるいはこれに代えて、固定子3の外周側かつハウジング8の内側、及び所定の方向91とは反対側の少なくとも一方に回転子が設けられたモータでは、突出部311〜316,311a〜316a,321〜326,321a〜326aを当該回転子に向かって突出させることが、磁束の多くを当該回転子へと流すことができる点で望ましい。
突出部311〜316,311a〜316a,321〜326,321a〜326aを回転子に近接させることが、磁束をより効率良く回転子へと流すことができる点で望ましい。
固定子3は、コア31が所定の位置3011a,3012aで、すなわち突出部311,321が、所定の方向91及びそれとは反対の方向並びにコア31の内周側から外周側へと向かう方向951,952及びそれとは反対の方向の四方向のうち、一、二もしくは三方向へと突出しても良い。
この場合、回転子は、当該四方向のうち、コア31がいずれの所定の位置3011a,3012aにおいても突出しない方向のいずれか少なくとも一方向から、固定子3に対向して配置される。
コア31の所定の位置3011a,3012a以外の位置における被固定部材82とコア31との距離は、回転子74と固定子3とのギャップ長よりも大きいことが、次の点で望ましい。すなわち、固定子3から被固定部材82への磁束を漏れが回避され、磁束の多くが回転子74へと流れる。
突出部311〜316,321〜326を第1乃至第6の突出部の二組、突出部311a〜316a,321a〜326aを第7の突出部、巻線A311a〜A316a,A321a〜A326aを第2の巻線と把握して、固定子3は次のように把握することができる。
つまり、第7の突出部311a,321aは、第1の突出部311,321と、その周方向92側に隣接する巻線A312,A322との間で、周方向92側から磁性体301を介して第1の突出部311,321に、それぞれ連結される。第2の巻線A311a,321aは、第1の突出部311,321と第7の磁性体311a,321aとの間で磁性体301を芯として、それぞれ巻回される。第2の巻線A311a,A321aには、第1の突出部311,321に周方向92とは反対側から隣接する巻線A311,A321に流れる電流+Uと同じ向き及び大きさの電流+Uが流れる。
第2乃至第6の突出部312〜316,322〜326と、第7の突出部312a〜316a,322a〜326a及び第2の巻線A312a〜A316a,A322a〜A326aとの関係についても同様である。
また、第1乃至第6の突出部について見れば、第2の実施の形態で説明したコア11と同様に、コア31は、第1乃至第2m(m=3)の突出部の2組を備えると把握できる。また、コア31の特徴を、mが3以上の自然数であって、第1乃至第2mの突出部の少なくとも二組を備えるものに拡張することができる。
上述したいずれのコア11,21,31についても、これらに電磁鋼板等の鋼板が積層されたものを採用しても良いし、一体成形されたものを採用しても良い。
上述したいずれのモータについても、例えば圧縮機に搭載することができる。特に密閉型圧縮機では、強度や加工性を向上させるために磁性材が用いられることが多いが、当該モータによれば磁束の短絡が生じにくいので、モータの駆動効率及び駆動出力が低減することなく、例えば冷媒等を効率良く圧縮することができる。
また、冷媒を圧縮する場合、モータが冷媒に晒されるため、固定のための樹脂等の使用も制限される場合がある。従って、磁性体である被固定部材に、余計な部材を追加することなく、またモータ効率を低下させることなく、モータを被固定部材に固定することができる。