特許文献1に示されるような、回転子に対して一対の固定子がその回転軸における両側から対向する構造(本願においては「アキシャルギャップ−ダブルステータ型」と称す)では、回転子と一方の固定子との間で回転軸方向に沿って働くスラスト力が、回転子と他方の固定子との間で回転軸方向に沿って働くスラスト力とキャンセルするという点で望ましい。
ところで、アキシャルギャップ型のモータにおいて、回転子に含まれる永久磁石は直接に固定子と対峙せず、磁極毎に固定子側から磁性板で覆われることが望ましい。当該永久磁石において渦電流が発生するのを抑制して損失の増加や発熱を防止する他、永久磁石の減磁も防止するからである。特に電気抵抗が低いネオジウム系磁石の場合、永久磁石内部に渦電流が発生し易いので、上記磁性板による被覆は効果的である。
しかしながらこのような磁性板をアキシャルギャップ−ダブルステータ型のモータに採用した場合、磁性板を回転子に保持する機構が必要である。さもないと、上記のスラスト力がいずれも吸引力であった場合、固定子側へと磁性板が引き寄せられるからである。
かかる吸引力に対向して磁性板を保持するためには磁性板をシャフトと共に樹脂等でモールドすることも一法である。しかしこの方法を採用すれば、磁性板を樹脂が覆うことになり、回転子と固定子との間の機械的なギャップを確保すると、固定子と磁極面との間の磁気的なギャップが拡大されるという問題を招来する。またモータを圧縮機など、冷媒や油との関係で樹脂の使用を避けたい状況もある。
また、シャフトに対して磁性板を単純に結合すると、相互に異なる磁極面を覆う磁性板同士が同じシャフトに結合することになる。これは、シャフトが磁性体の場合にはシャフトを介して界磁磁束が短絡的に流れてしまい、以て当該モータのトルクが低減するという問題を招来する。
この発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、アキシャルギャップ−ダブルステータ型のモータにおいて、回転子の磁極面を覆う磁性板を採用し、かつ当該磁性体を介して界磁磁束が短絡的に流れることを防止しつつ、当該磁性体を固定子からの吸引力に抗して保持する技術を提供することを目的としている。
この発明にかかる回転電機は、回転子(1A〜1I)と、前記回転子に対して、前記回転子の回転軸(Q)における第1側及び前記第1側とは反対の第2側からそれぞれ対向する一対の固定子(8A,8B)とを備える。
そしてその第1の態様では、前記回転子は、前記第1側で前記回転軸周りに交互に複数配置されて相互に極性が異なる第1磁極面(301N)及び第2磁極面(301S)と、前記第1磁極面と同極性であって前記第2側で前記第2磁極面と対向する第3磁極面(302N)と、前記第2磁極面と同極性であって前記第2側で前記第1磁極面と対向する第4磁極面(302S)とを有する永久磁石集合体(30)と、前記第2磁極面及び前記第4磁極面とは磁気的に分離されつつ前記第1磁極面を前記第1側で覆う第1磁性板(101;1N)と、前記第2磁極面を前記第1側で覆う第2磁性板(102;1S)と、前記第2磁極面及び前記第4磁極面とは磁気的に分離されつつ前記第3磁極面を前記第2側で覆う第3磁性板(201;2N)と、前記第4磁極面を前記第2側で覆う第4磁性板(202;2S)と、前記第1磁性板及び前記第3磁性板を前記第2磁極面及び前記第4磁極面と磁気的に分離しつつ連結する磁性体の連結部(200;40;43;444;303;501)とを有する。
この発明にかかる回転電機の第2の態様は、その第1の態様であって、前記連結部は前記回転軸(Q)に沿って延在するピン(44;44a;123,223;4T)を有する。前記第1磁性板(101)及び前記第3磁性板(201)は前記ピンと嵌合する凹部(107;107;121,221;4R)を有する。
この発明にかかる回転電機の第3の態様は、その第1の態様であって、前記第1磁性板(101)は前記第1磁極面(301N)よりも前記回転軸(Q)側へと延在し、前記第3磁性板(201)は前記第3磁極面(302N)よりも前記回転軸側へと延在し、前記連結部(200;40;43;444;40;501)は前記第2磁性板(102)及び前記第4磁性板(202)よりも前記回転軸側で前記回転軸に沿って延在し、前記第1磁性板及び前記第3磁性板を全て連結する。
この発明にかかる回転電機の第4の態様は、その第3の態様であって、前記第1磁性板(101)と前記第3磁性板(201)とによって前記回転子(1A;1D)に保持される磁性体の回転シャフト(501)を更に備え、前記回転シャフトが前記連結部を兼ねる。
この発明にかかる回転電機の第5の態様は、その第4の態様であって、前記第1磁性板(101)は前記第1側へと突出する第1ボス(110)を有する。前記第3磁性板(201)は前記第2側へと突出する第2ボス(210)を有する。前記回転シャフト(501)は前記第1ボス及び前記第2ボスによって前記回転子に保持される。
この発明にかかる回転電機の第6の態様は、その第3態様であって、前記連結部は、円筒形のボス(200;40;43;444)を有する。
この発明にかかる回転電機の第7の態様は、その第3の態様であって、前記連結部は前記第3磁性板(201)から前記第1側へと突出する突起(200)として形成され、前記第1磁性板(101)は、前記第2側へと開口して前記突起と嵌合する凹部(100)を有する。
この発明にかかる回転電機の第8の態様は、その第3乃至第7の態様のいずれかであって、前記回転子に設けられる回転シャフト(501)と、前記回転シャフトを回転自在に支持する軸受け(502)と、前記軸受けを固定するハウジング(503)とを更に備え、前記回転シャフト、前記軸受け及び前記ハウジングの少なくとも一つが非磁性である。
この発明にかかる回転電機の第9の態様は、その第1の態様であって、前記第1磁性板(1N)は前記第1磁極面(301N)よりも前記回転軸(Q)とは反対側へと延在し、前記第2磁性板(1S)は前記第2磁極面(301S)よりも前記回転軸側へと延在し、前記第3磁性板(2N)は前記第3磁極面(302N)よりも前記回転軸とは反対側へと延在し、前記第4磁性板(2S)は前記第4磁極面(302S)よりも前記回転軸側へと延在し、前記連結部(303)は前記第2磁性板及び前記第4磁性板よりも前記回転軸とは反対側で前記回転軸に沿って延在して前記第1磁性板及び前記第3磁性板を全て連結し、磁性体の他の前記連結部(40)は前記第1磁性板及び前記第3磁性板よりも前記回転軸側で前記回転軸に沿って延在して前記第2磁性板及び前記第4磁性板を全て連結する。
この発明にかかる回転電機の第10の態様は、その第1の態様であって、前記永久磁石集合体(30)は、前記第1磁極面(301N)を有する第1永久磁石(301)と、前記第2磁極面(301S)を有する第2永久磁石(301)とが間隔を開けて前記周方向に交互に配列されて成り、前記第1磁性板乃至前記第4磁性板はいずれも前記間隔の途中まで前記周方向に延在し、前記連結部(4N)は前記間隔において前記第1磁性板及び前記第3磁性板を全て連結し、磁性体の他の連結部(4S)が前記間隔において前記連結部と離れて前記回転軸(Q)と反対側で前記第2磁性板及び前記第4磁性板を全て連結する。
この発明にかかる回転電機の第11の態様は、その第1の態様であって、前記第2磁性板を前記第1磁性体に連結する第1磁気障壁(103,105;104,105)と、前記第4磁性板を前記第3磁性体に連結する第2磁気障壁(203,205;204,205)とを更に備える。
この発明にかかる回転電機の第12の態様は、その第11の態様であって、前記第1磁性板(101)と前記第2磁性板(102)とは、前記回転軸(Q)についての径方向に沿って延びる第1空隙(105)を介して前記周方向に交互に配置され、前記第1空隙の前記径方向の端部を規定する第1薄肉部(103;104)で連結され、前記第1薄肉部が前記第1磁気障壁として機能し、前記第3磁性板(201)と前記第4磁性板(202)とは、前記径方向に沿って延びる第2空隙(205)を介して前記周方向に交互に配置され、前記第2空隙の前記径方向の端部を規定する第2薄肉部(203;204)で連結され、前記第2薄肉部が前記第2磁気障壁として機能する。
この発明にかかる回転電機の第13の態様は、その第1の態様であって、前記第1磁性板(101)は、相互に係合する部位(110;111)を有する複数の部品(101c)の結合で構成される。
この発明にかかる回転電機の第14の態様は、その第1の態様であって、前記第2磁性板(102)は、相互に係合する部位(110;111)を有する複数の部品(102c)の結合で構成される。
この発明にかかる回転電機の第15の態様は、その第1の態様であって、前記永久磁石集合体(30)は、前記第1磁極面(301N)を有する第1永久磁石(301)と、前記第2磁極面(301S)を有する第2永久磁石(301)とが間隔を開けて前記周方向に交互に配列されて成り、前記回転子(1E,1F)は、前記第1永久磁石と前記第2永久磁石の間に設けられ、前記第1乃至第4磁極面とは磁気的に分離された磁性体(306,102b)を更に有する。
この発明にかかる回転電機の第16の態様は、その第15の態様であって、前記第2磁性板は、前記第2磁極面を前記第1側で覆う第1主部(102a)と、前記磁性体と前記第1側で連結された第1副部(102b)と、前記第1主部と前記第1副部とを連結する第1薄肉部(115;116)とを有する。前記第4磁性板は、前記第4磁極面を前記第2側で覆う第2主部(202a)と、前記磁性体を前記第2側で連結された第2副部(102b)と、前記第2主部と前記第2副部とを連結する第2薄肉部(215;216)とを有する。前記第1薄肉部は前記回転軸(Q)についての径方向に沿って延びる第1空隙(108)の前記径方向の端部を規定する。前記第2薄肉部は前記径方向に沿って延びる第2空隙(208)の前記径方向の端部を規定する。
この発明にかかる回転電機の第17の態様は、その第16の態様であって、前記磁性体は、前記第1側へ突出する第1突起(306a)と、前記第2側へ突出する第2突起(306b)とを有する。前記第1副部(102b)は前記第1突起が嵌合する凹部(109)を有する。前記第2副部(202b)は前記第2突起が嵌合する凹部(209)を有する。
この発明にかかる回転電機の第18の態様は、その第1乃至第17の態様のいずれかであって、前記永久磁石集合体(30)は、前記第1磁極面(301N)を有する永久磁石(301)と、前記第2磁極面(301S)を有する永久磁石(301)とが間隔を開けて前記周方向に交互に配列されて成る。前記第1磁性板(101)乃至前記第4磁性板(202)の少なくともいずれか一つには、前記永久磁石と係合する、前記回転軸(Q)方向に垂直な平面に対する段差(106,206)を有する。
この発明にかかる回転電機の第19の態様は、その第1乃至第18の態様のいずれかであって、前記永久磁石集合体(30)は、前記回転軸(Q)から見て前記第1磁性板及び前記第3磁性板の少なくともいずれか一方に対し、内周側もしくは外周側へ部分的にはみ出す。
この発明にかかる回転電機の第20の態様は、その第1の態様であって、前記第1磁性板(101)は前記第1磁極面(301N)よりも前記回転軸(Q)とは反対側へと延在する。前記第3磁性板(201)は前記第3磁極面(302N)よりも前記回転軸とは反対側へと延在する。前記連結部(303)は前記第2磁性板(102)及び前記第4磁性板(202)よりも前記回転軸とは反対側で前記回転軸に沿って延在する。前記第1磁性板及び前記第3磁性板を全て連結する。
この発明にかかる回転電機の第21の態様は、その第1乃至第20の態様のいずれかであって、前記第1磁性板乃至第4磁性板は圧粉磁心からなる。
この発明にかかる回転電機の第22の態様は、その第1乃至第21の態様のいずれかの態様であって、前記第1側から前記回転子に対向する前記固定子(8A)の磁極が、前記第1磁性板及び第2磁性板の全てについて最も小さい外径と、最も大きい内径の範囲内で、前記回転子に対向して配置される。
この発明にかかる回転電機の第23の態様は、その第22の態様であって、前記第2側から前記回転子に対向する前記固定子(8B)の磁極が、前記第3磁性板及び第4磁性板の全てについて最も小さい外径と、最も大きい内径の範囲内で、前記回転子に対向して配置される。
この発明にかかる回転電機の第1の態様によれば、第1磁性板と第3磁性板とは、第2磁極面及び第4磁極面と磁気的に分離されつつ、連結部によって相互に連結される。よって第1磁極面を呈する永久磁石及び第3磁極面を呈する永久磁石との内部における渦電流の発生や減磁を抑制し、相互に極性が異なる磁極面間で界磁磁束が短絡的に流れることを回避しつつ、第1磁性板と第3磁性板は一対の固定子からの吸引力に抗することができる。
この発明にかかる回転電機の第2の態様によれば、第1磁性板及び第3磁性板の回転軸に沿った厚さを均一にすることができ、あるいは更に両者を同型状とすることもできる。従って第1磁性板及び第3磁性板の製造が容易である。
この発明にかかる回転電機の第3の態様によれば、第1磁性板の内周の全周に亘って第1磁性板と第3磁性板とを連結するので、これらと永久磁石集合体とを固持することができる。
この発明にかかる回転電機の第4の態様によれば、連結部を別途の部品として必要とせずに、第1磁性板と第3磁性板とを磁気的に連結することができる。
この発明にかかる回転電機の第5の態様によれば、回転シャフトに基づいて第1磁性板及び第3磁性板を固定できるので、回転子の偏芯が低減される。
この発明にかかる回転電機の第6の態様によれば、回転シャフトに基づいて第1磁性板及び第3磁性板を固定できるので、回転子の偏芯が低減される。
この発明にかかる回転電機の第7の態様によれば、連結部のための部品を別途に追加することなく、第1磁性板と第3磁性板との連結を行う。
この発明にかかる回転電機の第8の態様によれば、固定子内を通るべき界磁磁束が回転シャフトを介して近回りして流れることを防ぐので、軸受けに吸引力が働いて機械損が増大することを防止できる。
この発明にかかる回転電機の第9の態様によれば、第1磁性板及び第3磁性板の外周の全周と、第2磁性板及び第4磁性板の内周の全周とに亘って 連結するので、これらと永久磁石集合体とを固持することができる。しかも第1磁性板と第4磁性板の対、及び第2磁性板と第3磁性板の対のそれぞれにおいて、回転軸に沿って両者は対向する。従って、対を成す固定子が発生する回転磁界によって第1磁性板と第4磁性板に対して吸引力が働いても、当該吸引力は二種の連結部を介して第3磁性板及び第2磁性板が永久磁石集合体を相互に押し合う働きもし、当該吸引力に対して第1磁性板と第4磁性板とが強固に抗することができる。
この発明にかかる回転電機の第10の態様によれば、第1磁性板と第3磁性板と連結部とはいずれも同極に帯磁するので、回転シャフトを介して界磁磁束が短絡的に流れることを防止できる。しかも第1永久磁石と第2永久磁石との間で、第1磁性板と第3磁性板と連結部が縫う方向と、第2磁性板と第4磁性板と他の連結部とが縫う方向とは異なる。従って、対を成す固定子が発生する回転磁界によって第1磁性板と第4磁性板に対して吸引力が働いても、当該吸引力は二種の連結部を介して第2磁性板及び第3磁性板が永久磁石集合体を相互に押し合う働きもし、当該吸引力に対して第1磁性板と第4磁性板とが強固に抗することができる。
この発明にかかる回転電機の第11の態様によれば、第1磁極面及び第3磁極面を第2磁極面及び第4磁極面から磁気的に分離しつつ、第2磁性板と第4磁性板を第1磁気障壁及び第2磁気障壁を介して保持できる。
この発明にかかる回転電機の第12の態様によれば、第1磁性板と第2磁性板とを一体として形成し、第3磁性板と第4磁性板とを一体として形成することができる。よってこれらを個別に形成し、別途に用意された磁気障壁を用いて連結するときの誤差を回避できる。
この発明にかかる回転電機の第13の態様によれば、圧粉磁芯を用いて第1磁性板を形成し易い。
この発明にかかる回転電機の第14の態様によれば、圧粉磁芯を用いて第2磁性板を形成し易い。
この発明にかかる回転電機の第15の態様によれば、磁性体はいわゆるq軸磁路となるのでq軸インダクタンスが増加し、逆突極性が得られる。これによりリラクタンストルクを利用することができる。
この発明にかかる回転電機の第16の態様によれば、第1主部は第1薄肉部を介して第1副部と、第1副部は磁性体を介して第2副部と、第2副部は第2薄肉部を介して第2主部と、それぞれ連結するので、第2磁性板と第4磁性板は一対の固定子からの吸引力に抗することができる。しかも第1薄肉部及び第2薄肉部は磁気飽和し易いので実質的に磁気障壁として機能し、磁性体と第1磁極面乃至第4磁極面とを磁気的に分離することができ、磁性体がq軸コアとして機能することを妨げない。
この発明にかかる回転電機の第17の態様によれば、第2磁性板及び第4磁性板の回転軸に沿った厚さを均一にすることができ、あるいは更に両者を同型状とすることもできる。従って第2磁性板及び第4磁性板の製造が容易である。
この発明にかかる回転電機の第18の態様によれば、永久磁石は、回転軸方向においては第1磁性板及び第4磁性板もしくは第2磁性板及び第3磁性板で位置決めされ、段差によって周方向もしくは径方向にも位置決めされる。
この発明にかかる回転電機の第19の態様によれば、第1磁性板と第4磁性板との間、第2磁性板と第3磁性板との間の磁路を長くし、磁束が短絡的に流れることを防止する。
この発明にかかる回転電機の第20の態様によれば、第1磁性板の外周の全周に亘って第1磁性板と第3磁性板とを連結するので、これらと永久磁石集合体とを固持することができる。特に永久磁石よりも外周において第1磁性板と第3磁性板とが連結されることにより、周方向に長い距離に亘って連結部が延在することとなるので、永久磁石集合体を固持する効果が高い。
この発明にかかる回転電機の第21の態様によれば、積層鋼板に比べて渦電流損を低減でき、形状の自由度が増す。
この発明にかかる回転電機の第22の態様によれば、第1磁性板及び第2磁性板が径方向にズレをもって配置されていても、それらが全て存在する内径と外径との間に固定子の磁極が配置されるので、当該ズレによって固定子が受ける影響を低減し、以て回転電機の振動・騒音を低減する。
この発明にかかる回転電機の第23の態様によれば、第3磁性板及び第4磁性板が径方向にズレをもって配置されていても、それらが全て存在する内径と外径との間に固定子の磁極が配置されるので、当該ズレによって固定子が受ける影響を低減し、以て回転電機の振動・騒音を低減する。
発明の基本的思想.
実施の形態の詳細な説明に入る前に、この発明の基本的思想について説明する。もちろん、この基本的思想もこの発明に含まれる。
アキシャルギャップ−ダブルステータ型のモータにおいて、永久磁石の各々は、一方の固定子に対向する磁極面と、他方の固定子に対向する磁極面とを備えることが望ましい。これによりアキシャルギャップ−ダブルステータ型のモータであっても、永久磁石の個数を、固定子が一方のみに設けられる構成と同じにすることができる。これはコストを低減する観点から望ましい。
そして当該永久磁石の磁極面を磁性体で覆うことが望ましい。上述のように、渦電流が永久磁石内で発生するのを抑制して損失の増加や発熱を防止する他、永久磁石の減磁も防止するからである。特に、磁束密度が高く界磁用磁石として望ましいネオジウム系の焼結磁石は、発熱によって保持力が低下するため、上記磁性体を設けることは重要である。
ラジアルギャップ型のモータでは、永久磁石がコアに埋設されたタイプがある。この場合、電磁鋼板を積層してコアを形成できる。即ち、永久磁石用の孔を持った形状に打ち抜いた電磁鋼板を回転軸の方向に沿って積層してコアを得ることができる。
ラジアルギャップ型のモータでは、磁界によって固定子と界磁子との間に働く力が回転軸に垂直な平面において作用するが、一周の回転でキャンセルされる。これに対してアキシャルギャップ型のモータでは、固定子と界磁子との間に働く力は回転軸方向に平行であり、回転によってキャンセルされることはない。よってアキシャルギャップ特有の問題として、永久磁石と固定子との間で回転軸方向に平行に働く力に抗する機構を有することが望ましい。
この発明では、一方の固定子に対向する磁極面のうちの第1極性(例えばN極)のものを覆う磁性板と、他方の固定子に対向する磁極面のうちの第1極性のものを覆う磁性板とを、第2極性(例えばS極)の磁極面とは磁気的に分離しつつ、磁性体の連結部で連結する。
このような連結により、一方の固定子に対向する磁極面を覆う磁性板と、他方の固定子に対向する磁極面を覆う磁性板とは、一対の固定子からの吸引力に抗することができる。このような連結を行う連結部は当該磁性板同士の間の空間に設けることができるので、回転子と固定子との間のギャップを広げてしまうことがない。
しかもかかる連結は同極性の磁極面を覆う磁性板同士の間で為されるので、磁性体の連結部を用いて連結しても、磁束が短絡的に流れることがない。
連結部の配置としては、永久磁石の内周側及び/又は外周側、永久磁石の周方向境界を例示できる。下記の説明においては回転電機の例として電動機を採用している。また主として回転子の改良であるので、固定子の構成の詳細は示していないが、電機子巻線の巻回態様は問わない。
第1の実施の形態.
図1はこの発明の第1の実施の形態にかかる電動機に採用される回転子1Aの構成を例示する斜視図である。但し構造の詳細を明確にするため、回転軸Qに沿った方向(本願では単に「回転軸方向」ともいう)に分解して示している。回転軸Qに沿って磁性板10,20の間には、複数の永久磁石301の集合(本願では単に「永久磁石集合体」ともいう)30が挟まれる。ここでは永久磁石301が6個備えられ、間隔を開けて周方向に極性を変えて交互に配列されている場合が例示されている。永久磁石301は、例えばネオジウム系の焼結磁石である。これは強い磁束を発生するので、回転子1Aを採用した電動機は小型で高出力を実現できる。
図2は回転子1Aの構成を分解することなく例示する断面図である。当該断面は回転軸Qに平行であって、回転軸Qと永久磁石301を含む。固定子8Aは磁性板101,102側から、固定子8Bは磁性板201,202側から、それぞれ回転子1Aに対向するが、煩雑を避けるため、その位置のみを鎖線で描いている。
図1及び図2において磁性板10は磁性板20よりも上方に描かれているため、便宜的に磁性板20から見た磁性板10の側を上側と呼び、磁性板10から見た磁性板20の側を下側と呼ぶ。但し、この上側/下側という把握の仕方は便宜的なものであり、実際の回転子の上下とは無関係である。この呼び方は後の実施の形態についても適用する。
永久磁石集合体30は、上側ではN極の磁極面301NとS極の磁極面301Sとを交互に呈する。また下側ではN極の磁極面302NとS極の磁極面302Sとを交互に呈する。但し着磁は回転軸Q方向に平行に行われるので、上側の磁極面301Nと磁極面301Sには、それぞれ下側の磁極面302Sと磁極面302Nとが対向する。
磁性板10は、磁極面301N,301SNをそれぞれ上側で覆う磁性板101,102を有し、これらは相互に磁気的に分離される。同様に磁性板20は、磁極面302N,302Sをそれぞれ下側で覆う磁性板201,202を有し、これらは相互に磁気的に分離される。
具体的には磁性板101,102は薄肉部103によって周方向に連結される。薄肉部103及び周方向連結部104は径方向に延びる空隙105のそれぞれ外周端及び内周端を規定する。また空隙105は径方向に延びる他、磁性板102よりも内周側にも周方向に延びて設けられる。一つ置きに配置された磁性板101同士は空隙105よりも内周側で、周方向連結部104によって周方向に連結されている。
薄肉部103は磁気飽和し易いので、実質的には、空隙105と同様に、磁気障壁として機能し、磁性板101,102は相互に磁気的に分離される。しかも磁性板101,102は磁性板10として一体に形成できるので、これらを個別に形成し、別途に用意された磁気障壁を用いて連結するときの誤差を回避できる。
磁性板201,202も同様に、薄肉部203及び周方向連結部204によって周方向に連結され、これらは径方向に延びる空隙205のそれぞれ外周端及び内周端を規定する。そして空隙205は径方向に延びる他、磁性板202よりも内周側にも周方向に延びて設けられる。一つ置きに配置された磁性板201同士が空隙205よりも内周側で、周方向連結部204によって周方向に連結されている。よって磁性板201,202は磁性板20として一体に形成でき、磁性板10と同様の効果を得ることができる。
ある永久磁石は磁極面301N,302Sを有しており、これらを覆う一対の磁性板101,202は回転軸方向において対向する。同様にして磁性板102,201も回転軸方向において対向する。よって磁性板10,20は同じ形状を採用することができ、周方向において相互にずれて配置することとなる。このズレは回転子1Aの極数で360度を除した角度として表され、ここでは極数が6なので当該ズレは60度となる。
空隙105,205の幅は磁性板10,20の間の間隔より大きいことが望ましい。空隙105,205を渡って磁束が短絡しないようにするためである。
さて、本実施の形態では磁性板101,201が、磁性板102,202よりも内周側で磁気的に連結される。具体的には磁性板201から上側へと突出する突起200が設けられ、磁性板101には、下側へと開口して突起200と嵌合する凹部100が設けられる。よって突起200は磁性板101,201を機械的にも磁気的にも連結する。かかる突起200は磁気的な連結部として把握することはできるものの、そのための部品を別途に追加する必要がない。凹部100は必ずしも必要ではないが、これを設けることによって磁性板101,201の結合を堅固にできる。突起200の厚さから凹部100の深さを差し引いた厚みで磁性板10,20同士の間隔が規定される。
また磁性板101は上側へと突出するボス120を、磁性板201は下側へと突出するボス210を、それぞれ有している。そして回転シャフト501(図2では煩雑を避けるため、二点鎖線でその位置を示す)はボス120,210によって前記回転子1Aに保持される。このように回転シャフト501に基づいて磁性板101,201を固定できるので、これらに固定子8A,8Bから吸引力が働いても当該吸引力に抗して保持することができる。しかも回転子1Aの偏芯も低減される。
更に、回転シャフト501は磁性体を採用することができる。磁性板101,201はボス120,210及び回転シャフト501を介して磁気的に相互に連結されるが、これらは全てN極に帯磁しているので、界磁磁束が回転子1A内で短絡的に流れることを回避できる。また、上述のように磁性板102,202と磁性板101,201とは、空隙105,205や薄肉部103,203によって磁気的に分離されているので、これらの間でも界磁磁束が短絡的に流れることを回避できる。
磁性板101,201が同極性に帯磁していることは、ボス120,210が非磁性体であっても金属であってしかも回転シャフト501が磁性体である場合にも有意義である。もし磁性板101,201が帯磁する極性が異なれば、回転シャフト501を介して磁性板101,201の間に磁束が流れ、その経路に介在する金属性のボス120,210には渦電流が発生するからである。
周方向連結部104,204は設けなくてもよい。ボス120,210によって磁性板101,201がそれぞれ保持され、両者がいずれも回転シャフト501に保持されるからである。同様に突起200及び凹部100を省略することもできる。
磁性板10,20は、圧粉磁心で構成するとよい。磁性板10,20において磁束が回転軸方向のみならず、軸に直交する平面上にも流れるので、積層鋼板を用いた場合には渦電流が増大するからである。特に、永久磁石301の電気抵抗(固有抵抗)よりも電気抵抗が大である圧粉磁心を用いれば、渦電流が低減できる。また圧粉磁心で構成することにより、ボス120,210を磁性板10,20と一体に作成し易い。
図2において永久磁石301の外周端が磁性板101の外周側へ部分的にはみ出して延長された変形が鎖線で例示されている。また永久磁石301の外周端が磁性板201の外周側へ部分的にはみ出して延長された変形が鎖線で例示されている。
このように連結部が設けられていない側の径方向において、永久磁石301が磁性板101,201からはみ出すと、永久磁石301自身が磁気障壁となり、磁性板101,202間の磁路や磁性板201,102間の磁路を長くできる。これは磁束が短絡的に流れることを防止する観点で望ましい。
このように永久磁石集合体30が磁性板101,201からはみ出すことは、連結部の配置を妨げない限り、他の実施の形態においても好適である。
回転子1Aに対向する固定子8A,8Bは、その磁極が鉄心のティースを有するのが望ましい。そして当該磁極の径方向の位置には望ましい範囲がある。即ち固定子8Aについていえば、その磁極(特にティース)の内径が周方向連結部104にまで達すると、固定子8AにとってのN極の対向面積が、S極の対向面積より大きくなる。これでは磁極のアンバランスを生じ、従って、回転むらを発生したりする可能性がある。
そこで、固定子8Aの磁極は、磁性板101,102の全てについて最も小さい外径と、最も大きい内径の範囲内で、回転子1Aに対向して配置されることが望ましい。磁性板101,102は径方向にズレをもって配置されているが、上記の固定子8Aの磁極は磁性板101,102が全て存在する内径と外径との間に配置されるので、当該ズレによって固定子8Aが受ける影響を低減し、以て回転電機の振動・騒音を低減する。
固定子8Bについても同様に、その磁極は磁性板201,202の全てについて最も小さい外径と、最も大きい内径の範囲内で、回転子1Aに対向して配置されることが望ましい。もちろん、固定子8A,8Bのいずれか一方のみについて、その磁極の配置が上述の位置にあったとしてもそれ相応の効果はあるが、両方の配置が上述の位置にある方が、回転電機の振動・騒音を低減する効果は高い。このような固定子8A,8Bの望ましい配置は、他の実施の形態においても同様に好適である。
回転子1Aにおいて永久磁石集合体30は、必ずしも複数の永久磁石301の集合である必要はなく、例えばリング状に着磁されたリング磁石であってもよい。通常は着磁されていない部分のリング磁石は磁気的には空気と同視でき、本実施の形態においてリング磁石は複数の永久磁石301の集合と等価であると把握することができる。
但し、永久磁石集合体30が複数の永久磁石301の集合である場合、下記のようにその位置決めに磁性板101,201,102,202を利用することができる。
図3はこの実施の形態の好ましい変形を例示する斜視図であり、回転軸方向に分解して示している。永久磁石301は周方向に間隔を開けて配列されている。ここでは煩雑を避けるため、磁性板10を省略し、また永久磁石301は二個のみ図示している。図4は当該変形にかかる回転子を分解することなく例示する断面図である。当該断面は、回転軸Qに平行であって、回転軸Qと永久磁石301を含む。
磁性板20には、回転軸方向に垂直な平面(磁性板20が延在する平面)に対する段差があり、これに永久磁石301が係合する。具体的には凹部206が形成され、その周方向及び径方向で当該段差が形成される。同様にして磁性板10には凹部106が形成される。
永久磁石301は、回転軸Q方向においては磁性板101,102,201,202で位置決めされ、凹部106,206によって周方向と径方向とに位置決めされる。
但し、段差は浅いことが望ましい。あまり深いと、対向する磁性板101,202同士の間や磁性板202,201同士の間が小さくなり、永久磁石301から発生する界磁磁束は固定子8A,8Bに鎖交するよりも、短絡的に流れ易くなるからである。具体的には、対向する磁性板同士の間隔は、固定子8Aと磁性板10との間の間隔の2倍及び固定子8Bと磁性板20との間の間隔の2倍のいずれよりも大きいことが望まれる。このような段差を設けることは、他の実施の形態においても好適である。
もちろん、磁性板10,20の必ず両方に凹部を設ける必要はなく、また凹部である必要もない。例えば段差として堤を永久磁石301の外周側に設ければ、回転子の回転による遠心力に抗しつつ径方向の位置決めに好適である。そしてこのような堤を設ける場合には、永久磁石集合体30としてリング磁石を採用することができる。
図5はこの実施の形態の他の好ましい変形である回転子1Bを例示する斜視図であり、回転軸方向に分解して示している。図6は当該変形の構成を分解することなく例示する断面図である。当該断面は回転軸Qに平行であって、回転軸Qと永久磁石301を含む。
この変形では、磁性板20には突起200が設けられておらず、従って磁性板10にも凹部100は設けられていない。またボス120,210も磁性板10,20には設けられていない。しかし磁性板101は周方向連結部104を介して周方向に相互に連結され、周方向連結部104と共に内周端141を規定している。同様に磁性板201は周方向連結部204を介して周方向に相互に連結され、周方向連結部204と共に内周端242を規定している。また磁性体からなるリング状の連結筒43と、これにそれぞれ上側及び下側から同軸で連結する磁性体のボス41,42が設けられている。
ボス41は磁性板10の内周端141に、ボス42は磁性板20の内周端242に、それぞれ嵌合し、いずれの内周側においても回転シャフト501を保持する。連結筒43の外周端はボス41,42の外周端よりも大径であり、その内周端はボス41,42の内周端と同径か又は大径である。ここではボス41,42及び連結筒43の内周端は全て同径として例示している。
磁性板10の内周端141に対する嵌合が行われるためには、必ずしも周方向連結部104は必要ではない。つまり磁性板101のみで内周端141が三方から形成されていても、これにボス41が嵌合できればよい。周方向連結部204についても同様である。
連結筒43の厚さで磁性板10,20の間の間隔が規定されるので、上述の変形における凹部106,206を設けない場合には、これは永久磁石301の厚さと等しく設定される。凹部106,206を設ける場合には、連結筒43の厚さは永久磁石301の厚さから凹部106,206の深さの合計を差し引いた厚さに設定される。
磁性板101は、ボス41、連結筒43、ボス42をこの順に介して、磁性板201と連結される。これらは全てN極に帯磁しているので磁束が流れず、渦電流の発生についても考慮しなくてもよい。よってボス41,42及び連結筒43の材料は、必ずしも圧粉磁心でなくてもよい。但し、固定子とギャップを介して対向する場合には磁極として機能するので、鉄損低減の観点からは圧粉磁心で有ることが望ましい。
かかる変形によれば、磁性板10,20の厚さが均一となるので、これらの製造は容易となる。
磁性板10,20は、これと嵌合するボス41,42を介して連結筒43に保持されるが、連結筒43と接着されてもよい。あるいは磁性板10,20と連結筒43とが相互に嵌合する凹凸を設けてもよい。これにより、永久磁石301の回転軸方向に沿った固持が効果的となる。
図7は、図5及び図6に示された変形の更に好ましい変形である回転子1Cを例示する斜視図である。キー49がボス41に設けられ、磁性板10に設けられる溝(図では現れない)に勘合している。当該溝とキー49との嵌合により、磁性板10の周方向の位置決めを行うことができる。磁性板20についても同様である。
図8はこの実施の形態の更に他の好ましい変形である回転子1Dを例示する斜視図であり、回転軸方向に分解して示している。この変形においては周方向連結部104,204は必須となり、それらにはそれぞれ周方向に貫通孔(凹部でもよい)107,207がそれぞれ配置されている。
本実施の形態ではボス120,210,41,42は採用せず、内周端141,242が回転シャフト501と勘合し、これを保持する。そして磁性板101と磁性板201との連結は、連結ピン444によって行われる。
図9は連結ピン444の構成を例示する斜視図である。大径部443と、これを挟む小径部441,442との両方が磁性体で構成されている。大径部443の厚さは連結筒43と同様に設定される。
図10は磁性板10,20、永久磁石301、連結ピン444を組み合わせた状態を例示する斜視図である。また図11は当該変形の構成を分解することなく例示する断面図である。当該断面は回転軸Qに平行であって、回転軸Qと永久磁石301を含む。
小径部441,442は、それぞれ貫通孔107,207と嵌合する。これによって、磁性板10,20が固定され、ひいてはこれらが挟む永久磁石301も固定される。小径部441,442が貫通孔107,207と嵌合した状態で、小径部441,442の頂面は、それぞれ磁性板10の上側面、磁性板20の下側面と回転軸方向において同位置になってもよい。
他方、連結ピン444をリベットとしてもよい。そして図11に例示されるように磁性板10,20から突出した部分をつぶすことにより、ぬけ防止を施してもよい。この場合、固定子8A,8Bの位置は、空隙105,205よりも外周側となるため、リベットの頭が磁性板10,20から突出しても問題ない。
図12は回転子1Dにおいて採用可能な環状の連結部44を例示する斜視図である。小径部441と同様にして貫通孔107と嵌合する突起44aが連結部44に設けられている。この変形では連結部44の内径が、内周端141,142の内径以下であれば、回転シャフト501は連結部44によって保持される。またこれら三者の内径が等しく、三者で回転シャフト501を保持すれば、磁性板101,202の保持はより堅固となる。
第2の実施の形態.
図13はこの発明の第2の実施の形態にかかる電動機に採用される回転子1Eの構成を例示する斜視図である。但し構造の詳細を明確にするため、回転軸方向に分解して示している。回転軸Qに沿って磁性板10,20の間には、永久磁石集合体30と磁性体306とが設けられている。
より詳細には、永久磁石集合体30は4個の永久磁石301で構成され、相互に隣接する永久磁石301は、第1側において(従って第2側においても)極性が異なる磁極面を呈している。そして相互に隣接する永久磁石301の間には、いずれの永久磁石301とも間隔を開けて磁性体306が4個備えられている。
本実施の形態では回転子1Eの極数は4であり、一つの永久磁石301によって上側と下側には極性の異なる磁極面が現れるので、磁性板10,20の周方向のズレは90度となる。
図14は回転子1Eの構成を分解することなく例示する斜視図である。また図15乃至図17は回転子1Eの断面図である。これらの断面はいずれも回転軸Qに平行であって、回転軸Qを含む。但し図15は磁極面301N,302Sを、図16は磁極面301S,302Nを、図17は磁性体306を、それぞれ含む断面図である。
本実施の形態では第1の実施の形態と同様に、磁性板10は磁性板101及び周方向連結部104を備えるが、磁性板102の代わりに主部102a及びその周方向の両側に副部102bを備えている。磁性板20も同様に、磁性板20は磁性板201及び周方向連結部204を備えるが、磁性板202の代わりに主部202a及び副部202bを備えている。
磁性板101と磁気的に分離されると言う観点からは主部102a及びその両側の副部102bを纏めて磁性板102と同様に把握できる。即ち主部102a及びその両側の副部102bの纏まりは空隙105及び薄肉部103を磁気障壁として磁性板101と連結されている。空隙105は周方向にも延び、その内周側には周方向連結部104が設けられ、一対の磁性板101同士を連結している。同様にして、主部202a及びその両側の副部202bを纏めて磁性板202と同様に把握できる。
主部102a及びその両側の副部102bの間には空隙108が設けられており、空隙108の外周端及び内周端をそれぞれ規定する薄肉部115,116によって、主部102a及びその両側の副部102bが連結されている。同様にして、磁性板20においても、主部202a及びその両側の副部202bの間には空隙208及び薄肉部215,216が設けられている。空隙108,208も、空隙105,108と同様に、その幅は磁性板10,20の間の間隔よりも大きいことが望ましい。
主部102a,202aはそれぞれ磁極面301S,302Sを覆い、副部102b,202bは磁性体306をそれぞれ上側及び下側から覆う。薄肉部115,116,215,216は容易に磁気飽和するので、空隙108,208と同様に磁気障壁として機能する。
当該機能の他、薄肉部115,116は主部102aと副部102bとを、薄肉部215,216は主部202aと副部202bとを、それぞれ機械的に連結する。また第1の実施の形態と同様にして薄肉部103は磁性板101と副部102bとを、薄肉部203は磁性板201と副部202bとを、それぞれ磁気障壁となりながらも機械的に連結する。よって磁性板101、主部102a、副部102bは相互に磁気的に分離しながらも機械的には連結している。同様に磁性板201、主部202a、副部202bは相互に磁気的に分離しながらも機械的には連結している。従って磁性板10,20は一体として形成することが容易となる。
なお、薄肉部115が主部102aと副部102bとを連結するので、薄肉部116を省略して空隙105と空隙108が相互に連通してもよい。薄肉部216も同様にして省略することもできる。
本実施の形態では第1の実施の形態と比較して磁性体306が追加されている。磁性体306は周方向において永久磁石301と交互に配置されるので、アキシャルギャップ型の回転子における、いわゆるq軸インダクタンスを大きくするための磁路となるq軸コアとして機能する。
そして回転軸方向に沿った磁束の流れについては、永久磁石301自身はエアギャップと等価であり、磁性体306よりもリラクタンスは低くなる。よって固定子8A,8B(図2参照)の間において、副部102b,202b及び磁性体306を経由するq軸磁路のリラクタンスLqを、磁性板101,201及び永久磁石301を経由するd軸磁路のリラクタンスLdよりも大きくできる。即ち磁性体306によってq軸インダクタンスが高まるので、逆突極性が得られる。よって固定子に流す電機子電流の位相を進めることにより、Lq−Ldに比例するリラクタンストルクを利用でき、最適な電流位相では、マグネットトルクとリラクタンストルクの和を最大にして運転することができる。
本実施の形態における磁性板101,201の保持は、第1の実施の形態で示した回転子1Bと同様に、ボス41,42及び連結筒43によって行われる。
なお、磁性板10,20の結合を、ひいてはこれらと永久磁石301を含めた回転子1E全体の結合を堅固にすべく、磁性体306の上側及び下側には突起306a,306bが設けられている。そして副部102b,202bは、それぞれ突起306a,306bが嵌合する凹部109,209を有する。ここでは凹部109,209は貫通孔である場合が例示されているが、貫通しなくてもよい。
凹部109,209が貫通孔である場合、突起306a,306bはそれぞれ凹部109,209に嵌合した状態で、それぞれ磁性板10,20から突出しないことが望ましい。突起306a,306bが配置される径方向の位置には、固定子8A,8Bが対向するからである。
以上のようにして、主部102aと副部102bとは回転軸に沿った厚さを均一にすることができ、ひいては磁性板10の厚さを均一にできる。磁性板20についても同様である。更に磁性板10,20を同型状とすることもできる。従ってこれらの製造が容易である。
当該実施の形態の変形として、副部102b,202bに突起を設け、磁性体306に当該突起と嵌合する凹部を設けてもよい。また磁性体306が副部102b,202bのいずれかと一体に形成されてもよい。
本実施の形態では磁性体306が4個配置されるので、突起306aの周方向の間隔は原則として90°で等間隔としてもよい。但し周方向の間隔はこれからわずかにずらせてもよい。突起306aをこのように配置することは、磁性板10,20同士の周方向の位置関係を間違えないようにする点で好適である。
図18及び図19は本実施の形態の変形にかかる回転子1Fの構成を例示する斜視図であり、図18は回転軸方向に沿って分解して示し、図19は分解せず示している。また図20乃至図22は回転子1Fの断面図である。これらの断面はいずれも回転軸Qに平行であって、回転軸Qを含む。但し図20は磁極面301N,302Sを、図21は磁極面301S,302Nを、図22は磁性体306を、それぞれ含む断面図である。
回転子1Fは回転子1D(図8、図10、図11参照)と同様に、周方向連結部104,204において貫通孔107,207がそれぞれ配置されている。そして図12に示された構成と類似した環状の連結部44が採用され、その突起44a,44bがそれぞれ貫通孔107,108に嵌合する。
ここで採用された構成では突起44a,44bはそれぞれ8個設けられているが、図12で示された構成と同様に6個ずつ設けられてもよい。またここでは連結部44の内径と内周端141,242の内径とが一致し、三者で回転シャフト501を保持している場合を例示したが、連結部44のみ、あるいは内周端141,242のみで回転シャフト501を保持してもよい。但し三者で回転シャフト501を保持すれば、磁性板101,202の保持はより堅固となる。
図23は連結部44の変形を例示する斜視図である。ここで図示されるように、連結部44はボス44c,44dをそれぞれ上側及び下側に設けてもよい。
磁性板10,20は複数の部品から構成してもよい。図24は回転子1Eに採用された磁性板10を構成する4つの部品を例示する平面図である。磁性板10において、磁性板101(図13、図14)は、相互に係合する部位110,111を有する部品101cの結合で構成される。同様に主部102a(図13、図14)は、部位110,111を有する部品102cの結合で構成される。
部位110,111を設けることにより、部品101c,102cの磁気的結合を良好にし、以て磁性板101、主部102aの磁気特性の劣化を防ぐ。ここでは部位110は突起で、部位111は当該突起と嵌合する凹部で、それぞれ例示されている。
このように磁性板101、主部102aを複数の部品を結合して構成することは、これらを、ひいては磁性板10を、圧粉磁芯を用いて形成する観点で有利である。圧粉磁芯を用いて形成する際のプレス加工に要求される大きさを低減できるからである。
なお、凹部109はこれらの部品において複数設けられることが望ましい。磁性体306(図13)と組み合わせるとき、磁性体306の位置決めが容易となるからである。
図25は回転子1Fに採用された磁性板10を構成する4つの部品を例示する平面図である。これらの部品も図24に示された部品と同様にして、相互に係合する部位110,111を有する複数の部品である。回転子1Fは突起44aと貫通孔107とが嵌合するので、これらの部品の結合がより堅固となる。
以上は磁性板10を分割した部品を説明したが、磁性板20についても同様である。
第3の実施の形態.
図26はこの発明の第3の実施の形態にかかる電動機に採用される回転子1Gの構成を例示する斜視図である。但し構造の詳細を明確にするため、回転軸方向に分解して示している。回転軸Qに沿って磁性板10,20の間には、回転軸Qの周囲で環状に配置された永久磁石301と、磁性体の連結筒303とが設けられている。
より詳細には、永久磁石301は6個設けられており、相互に隣接する永久磁石301は、第1側において(従って第2側においても)極性が異なる磁極面を呈している。本実施の形態では回転子1Gの極数は6であり、一つの永久磁石301によって上側と下側には極性の異なる磁極面が現れるので、磁性板10,20の周方向のズレは60度となる。但し本実施の形態において永久磁石集合体30はリング磁石であってもよい。
図27は分解することなく回転子1Gを例示する断面図である。当該断面は、回転軸Qに平行であって、回転軸Qと永久磁石301を含む。
磁性板10において磁性板101,102はそれぞれ磁極面301N,301Sを覆い、磁性板20において磁性板201,202はそれぞれ磁極面302N,302Sを覆う。
周方向連結部104は周方向に一つ置きに配置された磁性板101を相互に連結するのみならず、隣接する磁性板101,102同士も連結している。よって磁極面301N,301Sの間で磁束が短絡的に流れることを回避するために、周方向連結部104は磁気障壁となるように、薄肉部として形成し、磁束飽和し易くする。周方向連結部104は磁性板10の内周端141を規定している。
磁性板101は磁性板10の外周縁においても、周方向連結部113及び薄肉部103によって連結される。薄肉部103及び周方向連結部104は径方向に延びる空隙112のそれぞれ外周端及び内周端を規定する。また空隙112は径方向に延びる他、磁性板102よりも外周側にも周方向に延びて設けられる。周方向連結部113は空隙112よりも外周側に配置され、薄肉部103と連結される。空隙112が磁気障壁として機能すべく、その幅は磁性板10,20の間の間隔より大きいことが望ましい。
上述のように周方向連結部104は、実質的には磁気障壁として機能し、磁性板101,102は相互に磁気的に分離される。しかも磁性板101,102は磁性板10として一体に形成できるので、これらを個別に形成し、別途に用意された磁気障壁を用いて連結するときの誤差を回避できる。
磁性板20においても、磁性板101,102、周方向連結部104,113、空隙112、薄肉部103にそれぞれ対応して磁性板201,202、周方向連結部204,213、空隙212、薄肉部203が設けられ、周方向連結部204は磁性板20の内周端242を規定している。よって磁性板201,202は磁性板20として一体に形成でき、磁性板10と同様の効果を得ることができる。
本実施の形態においては、磁性板101は磁極面301Nよりも、また磁性板201は磁極面302Nよりも、いずれも外周側(回転軸Qとは反対側)へと延在する。そして連結筒303は磁性板102,104よりも外周側で回転軸Qに沿って延在し、磁性板101,201を全て連結する。これにより、磁性板10,20の外周の全周に亘って磁性板101,201を連結するので、これらと永久磁石301とを固持することができる。
特に永久磁石301よりも外周において磁性板101,201が連結されることにより、周方向に長い距離に亘って連結筒303が延在することとなるので、永久磁石301を固持する効果が高い。
なお、連結筒303の内径は磁性板101の外径よりも小さくして両者の連結を確実とすることが望ましい。他方、連結筒303の内径は、磁性板102の外径に対して磁性板10,20の間の間隔を加えた値よりも大きいことが望ましい。空隙112の磁気障壁としての効果を損なわないためである。
また、本実施の形態では周方向連結部113や薄肉部103は必ずしも必要でなく、空隙112が径方向にのみ延在して外周側に解放されていてもよい。磁性板102は周方向連結部104によって磁性板101と機械的に連結されていて磁性体10としての一体化を損なわないし、周方向に60度ずれた磁性板101,201同士は連結筒303によって連結されるからである。
連結筒303と磁性板101,201との連結は、接着によって実現できるし、あるいは相互に係合する部位(例えば相互に嵌合する凹部と突起など)を設けてもよい。
本実施の形態においてもボス41は磁性板10の内周端141に、ボス42は磁性板20の内周端242に、それぞれ嵌合し、いずれの内周側においても回転シャフト501を保持する。またリング状の連結筒43がボス41,42によってそれぞれ上側及び下側から同軸で連結されている。
但し第1の実施の形態のボス41,42及び連結筒43とは異なり、本実施の形態でのこれらは非磁性体であることが望ましい。ボス41,42がそれぞれ内周端141,242に嵌合するため、周方向連結部104が磁性板101,102の間の磁気障壁として機能しても、ボス41,42及び連結筒43が磁性体であればこれらを介して短絡的に磁束が流れるからである。
もし、ボス41,42及び連結筒43を用いることなく、内周端141,242が直接に回転シャフト501を保持するのであれば、回転シャフト501が非磁性体であることが望ましい。
第4の実施の形態.
図28及び図29はいずれも、この発明の第4の実施の形態にかかる電動機に採用される回転子1Hの構成を例示する斜視図である。但し図28では構造の詳細を明確にするため、回転軸方向に分解し、かつ後述する連結ピン123,124,223,224を省略して示している。
図30及び図31はいずれも、回転子1Hの一部を例示する斜視図である。図30及び図31はそれぞれ上側及び下側から見た斜視図である。
回転子1Hは、回転軸Q周りに配置される4個の永久磁石301で構成される永久磁石集合体30を備えており、相互に隣接する永久磁石301は、第1側において(従って第2側においても)極性が異なる磁極面を呈している。但し本実施の形態において永久磁石集合体30はリング磁石であってもよい。
磁性板10は複数の磁性板1N,1Sで構成されており、これらはそれぞれ磁極面301N,301Sを上側から覆う。磁性板20は複数の磁性板2N,2Sで構成されており、これらはそれぞれ磁極面302N,302Sを下側から覆う。
磁性板1N,1Sは周方向において間隔を開けて配置され、その間隔は空隙105,108と同様に、磁性板1N,2S(あるいは磁性板1S,2N)同士の間隔よりも広いことが望ましい。磁性板2N,2Sも周方向において間隔を開けて配置され、その間隔は磁性板1N,2S(あるいは磁性板1S,2N)同士の間隔よりも広いことが望ましい。
磁性板1Nは磁極面301Nよりも外周側へと延在し、磁性板1Sは磁極面301Sよりも内周側へと延在し、磁性板2Nは磁極面302Nよりも外周側へと延在し、磁性板2Sは磁極面302Sよりも内周側へと延在する。
回転子1G(図26,図27)と同様に、永久磁石集合体30の外周側には磁性体の連結筒303が設けられる。連結筒303は磁性板1S,2Sよりも外周側で回転軸Qに沿って延在し、磁性板1N,2Nを全て連結する。当該連結のため、磁性板1Nは貫通孔121を、磁性板1Sは貫通孔221を、連結筒303は貫通孔37を、それぞれ備えている。そして貫通孔121,37には連結ピン123が、貫通孔221,37には連結ピン223が、それぞれ嵌合される。連結筒303と磁性板1S,2Sとの間は、磁束が短絡的に流れるのを防ぐため、回転子1Gと回転軸方向で対向する固定子8A,8B(図2,図11等)との間のギャップの2倍よりも広いことが望ましい。
永久磁石集合体30の内周側には磁性体の連結筒40が設けられる。連結筒40は磁性板1N,2Nよりも内周側で回転軸Qに沿って延在し、磁性板1S,2Sを全て連結する。当該連結のため、磁性板1Sは貫通孔122を、磁性板2Sは貫通孔222を、連結筒40は貫通孔47を、それぞれ備えている。そして貫通孔122,47には連結ピン124が、貫通孔222,47には連結ピン224が、それぞれ嵌合される。連結筒40と磁性板1N,2Nとの間は、磁束が短絡的に流れるのを防ぐため、上記ギャップの2倍よりも広いことが望ましい。
回転シャフト(図示せず)は連結筒40によって保持される。連結筒40及び磁性板1S,2SはS極に帯磁しているので、回転シャフトは磁性体であってもよい。もちろん、非磁性体であってもよい。
回転子1Hでは磁性板1N,2Nの外周の全周と、磁性板1S,2Sの内周の全周とに亘って連結が行われるので、これらと永久磁石集合体30とを固持することができる。
しかも磁性板1N,2Sの対、磁性板1S,2Nの対のそれぞれにおいて、回転軸Qに沿って両者は対向する。従って、対を成す固定子が発生する回転磁界によって磁性板1N,2Sに対して吸引力が働いても、当該吸引力は連結筒40,303を介して磁性板1S,2Nが永久磁石集合体30を相互に押し合う働きもし、当該吸引力に対して磁性板1N,2Sは強固に抗することができる。
図3及び図4で例示された凹部106が磁性板1N,1Sに、凹部206が磁性板2N,2Sに、それぞれ設けられた場合が例示されている。これらは永久磁石集合体30が永久磁石301の複数で構成されている場合には、その周方向及び径方向の位置決めの観点から好適である。但し永久磁石集合体30がリング磁石の場合、上述のように、凹部ではなく、外周側から永久磁石集合体30を径方向に位置決めする堤を設ける方が望ましい。
磁性板1Nの下側や磁性板2Nの上側に連結筒303が嵌合する溝を設けてもよい。磁性板1Sの下側や磁性板2Sの上側に連結筒40が嵌合する溝を設けてもよい。また図29では連結ピン223,224が上側に突出している場合が例示されているが、連結ピン123,124,223,224が突出する必要はなく、また貫通孔121,122,221,222は凹部であってもよい。
第5の実施の形態.
図32はこの発明の第5の実施の形態にかかる電動機に採用される回転子1Iの構成を例示する平面図である。図33乃至図35は回転子1Iの構成を例示する断面図であり、それぞれ図32における位置aa,bb,ccにおける断面を示している。
回転子1Iは、回転軸Q周りに間隔を開けて配置される4個の永久磁石301を備えており、相互に隣接する永久磁石301は、第1側において(従って第2側においても)極性が異なる磁極面を呈している。但し本実施の形態においては複数の永久磁石301をリング磁石で代替することはできない。
本実施の形態においても回転子1Hと類似して、磁性板1N,1Sが設けられ、これらはそれぞれ磁極面301N,301Sを覆う。また磁性板2N,2Sが設けられ、これらはそれぞれ磁極面302N,302Sを覆う。
磁性板1N,1Sは周方向において間隔を開けて配置され、その間隔は空隙105,108と同様に、磁性板1N,2S(あるいは磁性板1S,2N)同士の間隔よりも広いことが望ましい。磁性板2N,2Sも周方向において間隔を開けて配置され、その間隔は磁性板1N,2S(あるいは磁性板1S,2N)同士の間隔よりも広いことが望ましい。
磁性板1N,2Nはそれぞれ磁性体で環状の周方向連結部104,204によって連結される。周方向連結部104,204はそれぞれ内周端141,242を有しており、これらが回転シャフト501を保持する。
磁性板1N,1S,2N,2Sはいずれも平面視上、永久磁石301同士の間隔の途中まで周方向に延在する。磁性体の連結部4Nは径方向及び回転軸方向に延び、永久磁石301同士の間隔において磁性板1N,2Nを全て連結する。磁性体の連結部4Sは径方向及び回転軸方向に延び、永久磁石301同士の間隔において磁性板1S,2Sを全て連結する。連結部4Sは連結部4Nと離れ、外周側に存在する。
径方向において磁性板1N及び連結部4Nと、磁性板1Sと連結部4Sとの間の間隔は、回転子と固定子との間のギャップの2倍よりも大きいことが望ましい。永久磁石301からの磁束が、固定子に鎖交することなく短絡的に流れる事態を防ぐためである。同様に、径方向において磁性板2N及び連結部4Nと、磁性板2Sと連結部4Sとの間の間隔は、回転子と固定子との間のギャップの2倍よりも大きいことが望ましい。
また磁性板1N,1Sと固定子との間のギャップは、永久磁石301上の位置よりも連結部4N,4S上の位置の方が、当該固定子から回転軸方向に沿って退いていることが望ましい。磁性板1N,1S及び当該固定子を介して連結部4N,4Sの間に径方向に磁束が流れることを防ぐためである。固定子の磁極も回転子の磁極も回転軸の周方向に配置されるので、このように径方向に流れる磁束は、たとえ固定子に流れてもトルク発生への寄与が小さく、実質的には漏れ磁束となるからである。
同様にして、磁性板2N,2Sと他の固定子との間のギャップは、永久磁石301上の位置よりも連結部4N,4S上の位置の方が、当該固定子から回転軸方向に沿って退いていることが望ましい。具体的には永久磁石301の方が連結部4N,4Sよりも厚く、磁性板1N,1S,2N,2Sは回転軸方向に垂直な平面に対して段差を有していることが望ましい。
連結部4N,4S、磁性板1N,2N,1S,2Sには貫通孔4Rが設けられ、貫通孔4Rには連結ピン4Tが嵌合し、上記の連結を実現している。もちろん、貫通孔4R及び連結ピン4Tを採用することなく、上記連結を接着によって実現してもよい。
磁性板1N,2Nは周方向連結部104,204を介して回転シャフト501に保持されるので、固定子からの吸引力に抗することができる。しかもこれらはいずれもN極に帯磁するので、界磁磁束が短絡的に流れることを防止できる。
隣接する永久磁石同士の間で、磁性板1N,2N及び連結部4Nが縫う方向と、磁性板1S,2Sと連結部4Sが縫う方向とは異なる。従って、対を成す固定子が発生する回転磁界によって磁性板1N,2Sに対して吸引力が働いても、当該吸引力は連結部4N,4Sを介して磁性板1S,2Nが永久磁石301を相互に押し合う働きもし、当該吸引力に対して磁性板1N,2Sは強固に抗することができる。
第6の実施の形態.
図36はこの発明の第6の実施の形態にかかる電動機5の構成を例示する断面図である。以下では回転子1を例にとって説明するが、上記第1乃至第5の実施の形態のいずれについてもこの実施の形態を適用することができる。但し、ボス120,210及び突起200を纏めて連結筒4として図示している。
電動機5は回転子1A及びこれに対して両側から対向する固定子8A,8B、並びに回転シャフト501、軸受け502、軸受けハウジング503を備えている。
回転シャフト501は連結筒4によって回転子1Aに保持されている。回転シャフト501は軸受け502によっても保持され、軸受け502は軸受けハウジング503で固定されている。
もし、回転シャフト501、軸受け502及び軸受けハウジング503が全て磁性体であった場合、永久磁石301によって磁極面101から発生した界磁磁束はその直上の固定子8Aを経由せず、連結筒4、回転シャフト501、軸受け502、軸受けハウジング503、磁極面102直上の固定子8Aを経由して磁性板102に至る(破線矢印参照)。つまり回転子1Aの界磁磁束は固定子8Aに対して十分には鎖交していない。これは軸受け502に吸引力が働いて機械損が増大するという問題を招来する。
これに対して、回転シャフト501、軸受け502及び軸受けハウジング503の少なくともいずれかが非磁性であれば、固定子8A内を通るべき界磁磁束が回転シャフト501を介して近回りして流れることを防ぐので、上記機械損の増大を防止できる。