JP2006269235A - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】 安定した高品質の有機EL素子の製造方法及び有機EL素子を提供する。
【解決手段】 凹凸面を有する透明基板の上にスパッタリング装置を用いて透明電極として機能する透明導電膜を形成する工程を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、スパッタリング装置は透明基板を支持する基板電極とターゲットを支持するターゲット電極とを備えるものであって、透明導電膜を形成する工程は、基板電極とターゲット電極のそれぞれに高周波電力を供給する。
【選択図】 図3
【解決手段】 凹凸面を有する透明基板の上にスパッタリング装置を用いて透明電極として機能する透明導電膜を形成する工程を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、スパッタリング装置は透明基板を支持する基板電極とターゲットを支持するターゲット電極とを備えるものであって、透明導電膜を形成する工程は、基板電極とターゲット電極のそれぞれに高周波電力を供給する。
【選択図】 図3
Description
本発明は、品質のよい有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機EL素子と呼ぶ。)は、自発発光素子であるため、高コントラストなディスプレイ用光源として期待されており、より発光輝度が高く、輝度ムラが少なく、さらに破壊し難い等のより高性能、高品質な有機EL素子が求められている。
図1に典型的な有機EL素子の一例の断面を示す。101は透明基板、102は第1電極、103は有機発光層、104は第2電極である。一般に有機発光層103には単層、多層構造のいずれも用いられている。例えば、正孔輸送層と電子輸送層とからなる二層構造の場合には、両電極間に電圧が印加されると、陽極から正孔輸送層に注入された正孔と、陰極から電子輸送層に注入された電子とが再結合し、発光を生じる。
有機発光層103からの光の取り出しを透明基板101側の面からとする場合、第1電極102は透明導電膜である必要がある。この透明導電膜の多くは、ITO(インジウム−ティン−オキサイド)やIZO(インジウム−ジンク−オキサイド)と呼ばれる材料で、非晶質、結晶質ともにスパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム法等で形成される。なかでも、蒸着が困難な高融点材料でも比較的容易に膜形成ができ、付着力が大きく、大面積化が容易であり、かつ比較的低温のプロセスが可能などの理由からスパッタリング法が広く用いられている。
上記のような有機EL素子の一般的な製造方法としては、例えば、まず透明基板101上にスパッタリング法によってITO膜又はIZO膜を成膜後、パターニングして第1電極102を形成する。その後、真空蒸着法等によって有機発光層103として機能する有機物質を単層、若しくは多層構造で成膜して、最後に、真空蒸着法などによって金属を蒸着して第2電極104を形成する。
ところで、有機EL素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率が1.7〜2.1程度)層の内部で発光し、この発光層で発生した光のうち15%から20%程度の光しか取り出せないことが一般的に知られている。これは、臨界角以上の角度で界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし有機EL素子外部に取り出すことができないことや、透明基板ないし発光層と透明電極との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、その結果として、光が有機EL素子の側面方向に逃げるためである。
このため、有機EL素子では、有機EL素子の外部に光を取り出す、いわゆる光取り出し効率の改善が不可欠となっている。光取り出し効率を改善する方法として、以下に列挙する方法が知られている。
(1)基板に集光性を持たせる方法(例えば、特許文献1参照。)。
この方法は、比較的大面積の基板には有効であるが、微小な画素面積で構成される高精細ディスプレイでは、集光性を持たせるレンズの作製や、有機EL素子の側面の反射面の形成等が困難であるといった問題がある。
(2)有機EL素子の側面に反射面を形成する方法(例えば、特許文献2参照。)。
この方法は、発光層の厚さが数ミクロン以下である有機EL素子では、有機EL素子の側面に反射鏡を形成することが、超微細加工技術を用いても非常に難しい。また、反射鏡を形成することができたとしても、製造コストが大幅に増加してしまい実用化に大きな障害となる。
(3)ガラス基板と発光体との間に、ガラス基板と発光体における各々の屈折率の中間値を持つ平坦層を導入し、この平坦層を反射防止膜として利用する方法(例えば、特許文献3参照。)。
この方法は、有機EL素子の前方への光取り出し効率を改善することは可能であるが、全反射を防止することができない。すなわち、この反射防止膜の原理からして、無機EL素子のような屈折率が大きな発光体には有効である。しかし、無機EL素子に比べて屈折率が小さい発光体である有機EL素子では、光取り出し効率を大きく改善することができない。
(4)ガラス基板と発光体との間に、ガラス基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(例えば、特許文献4参照)。
この方法は、ガラス基板から空気への光取り出し効率を改善しているもので、平坦層と接する有機発光層や透明導電膜の厚みが十分に薄くないとその効果は限定的である。
(5)回折格子等の光学要素を基板上に形成する方法(例えば、特許文献5参照。)。
この方法は、凹凸構造を持つ回折格子の1次の回折や2次の回折といった所謂ブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用する方法である。この方法を用いると、発光層から発生した光のうち、層間での全反射等により有機EL素子の外部に取り出すことができない光を、層間若しくは媒質中(透明基板内や透明電極内)に設けた回折格子による光の回折現象により、外部に取り出すことができる。この方法は、有機EL素子の光取り出し効率を改善させるのに有効であるとされている。
上記の様に光取り出し効率の改善が必要とされる一方で、電極のうねり、また、表面粗さを出来るだけよくすることが必要とされている。この理由を以下に述べる。
有機EL素子の発光強度は有機発光層に印加される電界の強度に依存する。このため、電極にうねりや表面粗さなどが存在すると、場所によって両電極間の間隔の違いによる明暗が生じて、有機EL素子の品質が落ちることになる。有機発光層の表面粗さの臨界点の一例としては、50nmRmaxがある(例えば、特許文献6参照。)。
従って、数十nm程度の電極のうねり、表面粗さなどが有機EL素子の発光品質の観点から無視できないレベルとなっている。
これまで述べてきた内容から、例えば、光り取り出し効率を改善するためにガラス基板に凹凸構造を持つ回折格子を設けることを必要とし、その凹凸面上に透明電極、有機発光層、電極を順次形成する有機EL素子を作製する。従って、透明電極層は、高品質の有機EL素子とするためには、ガラス基板面上の凹凸を平坦化して形成することが必要である。
上記の対応方法として、例えば、回折格子により形成された凹凸を有するガラス基板面上に液体を充填する型部材を設け、ゾルゲル法塗布液又は有機金属法塗布液を充填することにより、回折格子としての機能を維持させたまま凹凸を埋め込む方法がある(例えば、特許文献7参照。)。
この方法では、さらに充填を確実に行うため、塗布液を加圧した状態で焼成成膜を行うことが必要である。
特開昭63−314795号公報
特開平1−220394号公報
特開昭62−172691号公報
特開2001−202827号公報
特開平11−283751号公報
特開平7−130469号公報
特開2004−335299号公報
しかしながら、通常、上記に述べた回折格子が持つ様な凹凸を埋め込む場合、公知のスパッタリング法等の成膜技術が用いられている。この成膜技術では、膜を凹部に十分に埋め込むことが出来ないことや、埋め込み膜が基板の表面の形状に沿って成膜されてしまうといった問題がある。
また、特許文献7に記載の有機EL素子の製造方法では、ガラス基板を覆うような型部材を形成する必要がある。また、充填材が液体であるので、充填を確実にするために、塗布液を加圧した状態で焼成成膜する等といったように製造工程が複雑である。
さらに、この塗布液を充填する工程の後に有機発光層を積層することから、この型部材で形成された充填層もうねりや表面粗さを発生させないように処理する必要がある。
これらのことから、安定した高品質の有機EL素子を製造するのは困難が伴うことが十分予想される。
本発明はこれらを鑑みてなされたものであり、本発明の目的は安定した高品質の有機EL素子の製造方法及び有機EL素子を提供することにある。
上記目的は、以下の手段の何れかにより達成できる。
請求項1に係わる有機EL素子の製造方法は、凹凸面を有する透明基板の上にスパッタリング装置を用いて透明電極として機能する透明導電膜を形成する工程を含む有機EL素子の製造方法において、前記スパッタリング装置は前記透明基板を支持する基板電極とターゲットを支持するターゲット電極とを備えるものであって、前記透明導電膜を形成する工程は、前記基板電極と前記ターゲット電極のそれぞれに高周波電力を供給することを特徴とするものである。
請求項2に係わる有機EL素子の製造方法は、凹凸面を有する透明基板の上にスパッタリング装置を用いて透明電極として機能する透明導電膜を形成する工程を含む有機EL素子の製造方法において、前記スパッタリング装置は前記透明基板を支持する基板電極とターゲットを支持するターゲット電極とを備えるものであって、前記透明導電膜を形成する工程は、前記ターゲット電極に高周波電力を供給する工程、次いで、前記基板電極と前記ターゲット電極のそれぞれに高周波電力を供給することを特徴とするものである。
請求項3に係わる有機EL素子の製造方法は、凹凸面を有する透明基板の上にスパッタリング装置を用いて透明電極として機能する透明導電膜を形成する工程を含む有機EL素子の製造方法において、前記スパッタリング装置は前記透明基板を支持する基板電極とターゲットを支持するターゲット電極とを備えるものであって、前記透明導電膜を形成する工程は、前記基板電極と前記ターゲット電極のそれぞれに特定量の高周波電力を供給する工程、及び前記基板電極と前記ターゲット電極の少なくとも一方に前記特定量とは異なる量の高周波電力を供給することを特徴とするものである。
請求項4に係わる有機EL素子は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の有機EL素子の製造方法により製造されたことを特徴とするものである。
請求項1に記載の発明によれば、例えば光取り出し効率を向上させるために基板上に設けられた回折格子の構造の様な凹凸を有する面上に、スパッタリング装置を用いて基板電極とターゲット電極のそれぞれに高周波電力を供給することにより透明電極として機能する透明導電膜が形成される。こうすると、透明導電材料が上記の凹凸面の凹部を埋め、形成される面が平坦な透明導電膜が形成される。
よって、この後に形成する有機発光層は、うねりや面粗さの影響を受けない平坦性の良い透明導電膜面上に形成することができる。従って、安定した高品質の有機EL素子の製造方法を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、例えば光取り出し効率を向上させるために基板上に設けられた回折格子の構造の様な凹凸を有する面上に、スパッタリング装置を用いて、まず、ターゲット電極に高周波電力を供給し、次に基板電極とターゲット電極のそれぞれに高周波電力を供給することにより透明電極として機能する透明電極膜が形成される。こうすると、透明導電材料が上記の凹凸面の凹部の上部にこれを覆う様なドーム状の空洞を形成し、その後形成される面が平坦な透明導電膜が出来る。
よって、この後に形成する有機発光層はうねりや面粗さの影響を受けない平坦性の良い透明導電膜面上に形成することができる。従って、安定した高品質の有機EL素子の製造方法を提供することができる。
請求項3に記載の発明によれば、例えば光取り出し効率を向上させるために基板上に設けられた回折格子の構造の様な凹凸を有する面上に、スパッタリング装置を用いてまず、基板電極とターゲット電極のそれぞれに特定量の高周波電力を供給し、次に基板電極とターゲット電極の少なくとも一方に先の特定量とは異なる量の高周波電力を供給することにより透明電極として機能する透明導電膜が形成される。こうすると、透明導電材料が上記の凹凸面の凹部の上部にこれに蓋をする様な空洞を形成し、その後形成される面が平坦な透明電極層が出来る。
よって、この後に形成する有機発光層はうねりや面粗さの影響を受けない平坦性の良い透明導電膜面上に形成することができる。従って、安定した高品質の有機EL素子の製造方法を提供することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れか1項に記載の製造方法を用いて、上記の様な効果を有する高品質な有機EL素子を提供することができる。
本発明の具体的な実施の形態について、以下に述べる。
有機EL発光素子の構成は、陽極上に有機高分子薄膜を積層する、代表的な積層構造をとり、例えば、
(1)陽極(透明電極)/有機発光層/陰極(電極)
(2)陽極(透明電極)/正孔注入層/有機発光層/陰極(電極)
(3)陽極(透明電極)/有機発光層/電子注入層/陰極(電極)
(4)陽極(透明電極)/正孔注入層/有機発光層/電子注入層/陰極(電極)
等が、開示されている。これらは、例えばガラス基板上に形成されている。
(1)陽極(透明電極)/有機発光層/陰極(電極)
(2)陽極(透明電極)/正孔注入層/有機発光層/陰極(電極)
(3)陽極(透明電極)/有機発光層/電子注入層/陰極(電極)
(4)陽極(透明電極)/正孔注入層/有機発光層/電子注入層/陰極(電極)
等が、開示されている。これらは、例えばガラス基板上に形成されている。
ここで、正孔注入層、電子注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のため、必要に応じて電極と有機発光層との間に設けられる。
有機発光層は、一層構造であっても良いし、複数層の構成であっても良い。例えば、陽極から正孔が注入される正孔輸送層、及び、陰極から電子が注入される電子輸送層からなり正孔輸送層と電子輸送層のいずれかが発光層となる。また、蛍光体を含有する蛍光体層を正孔輸送層と電子輸送層との間に設けてもよい。また、混合一層構成で正孔輸送層、電子輸送層、蛍光層を兼ねた構成等がある。
本実施の形態で製作した有機EL素子の一例の構成の断面を図2に示す。上記の有機EL素子の構成例の中で(4)に該当するものである。201は例えば回折格子構造である凹凸を有する透明基板、202は基板上の凹凸面を平坦化して形成された陽極である透明導電膜、203は正孔注入層、204は有機発光層、205は電子注入層、206は陰極である。有機発光層204は、正孔輸送層204aと電子輸送層204bとで構成されており、この場合、電子輸送層204bが発光層となる。
透明基板201の材料は、例えば回折格子構造のような凹凸を表面に形成出来るものであれば良く、ガラス基板、樹脂フィルム等がある。
ここで、形成する凹凸は、前述した通り、有機発光層204からの光の進行方向を、その回折効果又は散乱効果等で屈折の法則に従わない方向に変えることで、全反射で有機EL素子内に閉じこめられていた光を効率よく透明基板201の外である空気中に取り出すものである。
回折効果を生じさせる方法として、例えばレリーフ型回折格子がある。
この回折格子の構造は、凹凸に周期性を有しており、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、有機発光層204で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率が期待するほど上がらないからである。
従って、二次元的な屈折率分布を持つ回折格子にすると、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率を一次元回折格子に比較して上げることが出来る。
回折格子の具体的な配列としては、二次元的に配列が繰り返される正方形の格子状、三角形の格子状、ハニカム(六角)格子状などがある。
散乱効果を生じさせる方法として、例えば任意の大きさの凹凸をランダムに配置しランダム凹凸を形成するものがある。
この場合、光の進行方向を屈折の法則に従わない方向に変えることは前述の回折格子によるものと変わらないが、前述のレリーフ型回折格子による光の進行方向の変化は規則性を持つのに対して、このランダム凹凸の場合は、光の進行方向の変化に規則性を持たない。
上記の凹凸における、例えば凹の最深部から隣の凹の最深部まで又は凸の最頂部から隣の凸の最頂部までの距離で表せる様な周期、凹及び凸の大きさ(大きさとは、例えば円形状のくぼみであれば凹凸形成面内での直径を示す。)、凹の最深部から凸の最頂部までの深さは光取り出し効率の対象とする光の波長、光路となる媒質の屈折率、回折であれば回折次数等を参考にして決定すれば良い。
次に、凹凸の形成方法を述べる。ガラス基板上に直接凹凸を形成する場合は、例えば、インプリント法又はフォトリソグラフィ法にてパターニングした後、ドライエッチング法を用いて表面レリーフ型の回折格子を形成することが出来る。また、散乱効果を生じさせるランダムパターンの場合は、露光方法としてスペックル干渉露光を用いたフォトリソグラフィ法とドライエッチング法を用いる方法やサンドブラストにより直接ガラス基板を処理する方法等によりランダム凹凸を形成することが出来る。
樹脂フィルムの場合は、例えば、上記の方法により得たガラス基板上の凹凸を例えば、ニッケルによる電鋳法を用いて金型に転写した後、一般的な成形方法を用いて凹凸を形成する方法がある。また、基板の上に直接凹凸を設けるのではなく、例えば、ガラス基板、又は樹脂フィルム上に透明な樹脂層を設けて、この層に先ほどの金型を用いて凹凸を一般的な樹脂成形方法で形成してもよい。
次に、本発明に係わる透明導電膜202の形成について述べる。
透明導電膜202の材料は、高仕事関数の電極素材を用いるのが好ましく、具体例としてはCuI、ITO、SnO2、IZO等の透明導電材料が挙げられる。また、IDIXO(出光興産株式会社製、商品名)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
これらの透明導電材料を用いて薄膜を形成(成膜とも呼ぶ。)するには、一般的には、従来の蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させていた。本発明では、スパッタリング装置を用いて基板電極とターゲット電極とにそれぞれ供給する高周波電力を工夫して透明導電膜を形成するものである。
図3に本実施の形態で使用するスパッタリング装置の概念図を示す。201は有機EL素子を形成するためのベースとなる凹凸を有する例えば回折格子を有する透明基板、1はターゲット、3はスパッタガスを導入するガス導入口、4は真空ポンプ、6はターゲット電極、5は基板電極、10はターゲット電極6に高周波(RF)電力を供給する順バイアス用RF電源、20は基板電極5にRF電力を供給する逆バイアス用RF電源、7はシャッター、8は整合器、2はチャンバーである。また、このチャンバー2は大地にアースされている。
上記のスパッタリング装置を用いた成膜方法を以下に述べる。
透明導電膜を形成する透明基板201を基板電極5に取り付ける。また、透明導電材料であるターゲット1をターゲット電極6に取り付ける。この後、真空ポンプ4にて、チャンバー2内を真空にする。到達する真空度は、空気中の酸素濃度が透明導電膜の特性に影響することから5×10-4Pa以上が好ましい。
この後、減圧状態にあるチャンバー2内にスパッタするためのガスをガス導入口3から導入し、チャンバー2内のガス圧が成膜するための所望のガス圧となる様に図示してないコンダクタンスバルブにて調整する。ここでガス圧は、プラズマが発生し易い0.5〜2Paの範囲が好ましい。
スパッタガスとしては、本実施の形態では、O2を添加した代表的な不活性ガスであるAr(アルゴン)を使用した。O2の添加量は、透明導電膜を形成する上で透明度と導電度との観点から分圧比で0.1%から0.2%の範囲が好ましい。導入したガス圧が安定した後、スパッタを開始する。
まず、順バイアス用RF電源10のみ使用して行う膜形成の概略を以下に述べる。
チャンバー2がアースされ、ターゲット電極6に順バイアス用RF電源10にてRF電力を供給する。スパッタガスとして例えばAr(アルゴン)ガスを使用した場合、電離した放電ガスイオンであるAr+(アルゴンイオン)の加速方向が供給されるRF電力により変化する。
ここで、電子とイオンとの質量では、電子の質量の方が軽いため、電子のほうが移動しやすく、導電性のチャンバー2に近い電子はチャンバー2に到達してアースへ流れる。一方、チャンバー2より遠いターゲット1付近の電子は行き場がないため停滞し、周囲と比較してその密度が高くなりことから、マイナスの電位を持つことになる。従って、Ar+が引き寄せられターゲット1に衝突したAr+は、ターゲット1の粒子を弾き飛ばす現象(スパッタリング現象)を引き起こす。
こうして弾き飛ばされた粒子が基板201に衝突・付着することにより透明基板201上に薄膜が形成される。従って、成膜される基板の表面に凹凸があると、ターゲット材の粒子がその凹凸表面に付着して膜が形成される(スパッタ成膜と呼ぶ。)ため、得られる膜は、表面凹凸を反映した表面形状を成すことになる。また、上述した凹凸の周期が狭い場合、凸部への堆積が凹部に比較して多い傾向がある。
本実施に形態における周期の範囲としては概ね100nmから2000nmが好ましい。
この傾向を積極的に用いると、凸の頂部に堆積される成膜物質が膨らんで、ついには同様に隣にできた膨らみと一体となる。このとき、凹部にはほとんど成膜物質の堆積がなく、空洞が形成される。
次に、上記の順バイアスRF電力を供給した状態で、図3で示した基板電極5にも逆バイアスRF電力を供給する。こうすると、上述した順バイアスRF電力を供給した場合のスパッタリング現象がターゲット1側だけでなく透明基板201側にも引き起こされる。すなわち、透明基板201付近がマイナスの電位を持ち、Ar+が引き寄せられ透明基板201に衝突し、付着した成膜粒子が弾き飛ばされる(スパッタエッチング、バイアススパッタと呼ぶ。)ことになる。
ここで、膜形成には、通常の成膜時、又はスパッタエッチング時には、膜の材料物質の一部が、成膜時の分子の跳ね返り、又はスパッタエッチングによる膜からの跳びだしで再付着する効果が存在する。その効果は凹凸部の凸部におけるよりも凹部で顕著である。従って、逆バイアスRF電力を基板電極5に供給することで、この効果を積極的に用いることができる。
ここで、上記の効果を積極的に用いると、スパッタ成膜により凸部の頂部に堆積されつつ、一方ではこれがスパッタエッチングにより削られ凹部に堆積され、その結果凹部を埋めることになる。
本実施の形態では、上記に述べたスパッタ成膜及びスパッタエッチングの性質に基づいて、ターゲット電極6及び基板電極5に対して、それぞれに順バイアスRF電力及び逆バイアスRF電力の供給状態を適切に設定することにより、透明基板201上にある凹凸の形状を反映しない平坦化された透明導電膜を形成することが出来る。
ターゲット電極6及び基板電極5に対して、それぞれに順バイアスRF電力及び逆バイアスRF電力を供給する状態としては、例えば次のような場合がある。
(1)ターゲット電極6及び基板電極5に対して順バイアスRF電力及び逆バイアスRF電力をそれぞれ適切な量に設定して供給する。
(2)ターゲット電極6に順バイアスRF電力のみを適切な量に設定して供給し、次にターゲット電極6及び基板電極5に対して順バイアスRF電力及び逆バイアスRF電力をそれぞれ適切な量に設定して供給する。このとき順バイアスRF電力を当初設定量と異なる設定量としても良い。
(3)ターゲット電極6及び基板電極5に対して順バイアスRF電力及び逆バイアスRF電力をそれぞれ適切な量に設定して供給し、次いで順バイアスRF電力及び逆バイアスRF電力の少なくともどちらか一方の電力を先と異なる適切な量として供給する。この場合、当初の順バイアスRF電力量及び逆バイアスRF電力量に対して、順バイアスRF電力量のみ、逆バイアスRF電力量のみ、或いは順バイアスRF電力量及び逆バイアスRF電力量の両方を変えても良い。また各電力量は当初の各電力量に対して増加させる又は減少させるのいずれとしても良い。
基板電極5及びターゲット電極6に供給する高周波電源の電力や周波数とスパッタ成膜される膜或いはスパッタエッチングにより成形される膜の形状との関係は、チャンバー2内に導入されるガス圧や膜の材質によっても変化するので一律に定めることは難しいが、それぞれの条件において予め実験等により求めておけば当業者は容易に実施することが出来る。
また、スパッタ成膜とスパッタエッチングを同時に進行させる成膜手法は、バイアススパッタ法と呼ばれ、一般に膜面がイオン衝撃によって活性化することから、膜の緻密性や密着性が向上する。
実際の成膜においては、ガス圧が安定した後に、本成膜を行う前に、まず順バイアス用RF電力をターゲット電極6に供給し、ターゲット1表面の不純物を取り除く作業を行う。
次に、逆バイアス用RF電力を基板電極5に供給して、透明基板201表面の洗浄及び活性化を行う。これらは、実際の膜形成の前に一般的に行うものである。
また、供給するRF電圧の周波数は、本実施に形態では、13.56MHzとしている。
透明導電膜の厚み(膜厚とも呼ぶ。)は材料にもよるが、例えば、ITO膜の場合、ITO膜の下地となる凹凸面の凸部の先端から30〜1000nmの範囲で、好ましくは80〜250nmの範囲が選ばれる。
上述した透明導電膜202の形成後は、図2に示したように、正孔注入層203、有機発光層204における正孔輸送層204a及び電子輸送層204b、電子注入層205、陰極206を順次に形成する。
正孔注入層203(注入層をバッファー層とも呼ぶ。)の材料としては、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されている。具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
電子注入層205の材料としては、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
上記の正孔注入層及び電子注入層は、いずれもごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
正孔輸送層204aは、正孔を輸送する機能を有する材料(以下、正孔輸送材料という。)からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。
正孔輸送材料としては、特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。
具体的には、たとえばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、または導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどが挙げられる。
これらのうちでは、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物が好ましく、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
上記芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)ビフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、たとえば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
また、p型−Si、p型−SiCなどの無機半導体も正孔輸送材料として使用することができる。
正孔輸送層204aは、上記正孔輸送材料を、たとえば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により成膜して形成することができる。
正孔輸送層204aの膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この正孔輸送層204aは、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
電子輸送層204bは、電子を輸送する機能を有する材料(以下、電子輸送材料という。)からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。
従来、発光層204に対して陰極206側に隣接する電子輸送層204bに用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる。)として、下記の材料が知られている。また、電子輸送層204bは、陰極206より注入された電子を発光層204に伝達する機能を有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して電子輸送材料として用いることもできる。
電子輸送材料としては、例えばニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。また、このオキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
さらに、8−キノリノール誘導体の金属錯体、たとえばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(以下、Alq3と略す。)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛など、およびこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも電子輸送材料として好ましく用いることができる。
また、従来、発光層204の材料として用いられているジスチリルピラジン誘導体も電子輸送材料として用いることができるし、正孔輸送層204aと同様にn型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層204bは、上記化合物を、たとえば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により成膜して形成することができる。
電子輸送層204bの膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この電子輸送層204bは、これらの電子輸送材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
陰極206の材料としては、一般に低仕事関数の金属又は合金が望ましく、例えばMg/Ag(マグネシウム/銀混合物)、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、In(インジウム)、Li(リチウム)等が用いることが出来る。
陰極の膜厚は、10nm〜1000nm、好ましくは50nm〜200nmの範囲になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成する。
この陰極206を設けることで所望の有機EL素子が得られる。作製した有機EL素子は、公知の保護膜(パッシべーション膜)で封止する。
(実施例1)
実施例1は、ターゲット電極6に対して順バイアスRF電力及び基板電極5に対して逆バイアスRF電力を同時に供給することにより透明導電膜202を形成した例である。具体的方法を以下に述べる。
実施例1は、ターゲット電極6に対して順バイアスRF電力及び基板電極5に対して逆バイアスRF電力を同時に供給することにより透明導電膜202を形成した例である。具体的方法を以下に述べる。
基板としては、ガラス基板(石英ガラス、大きさ:30mm×30mm、厚み:1.0mm)を使用した。
このガラス基板面上に、次の様にしてレリーフ型回折格子を形成することで凹凸面を設けた。ガラス基板上にレジストを塗布した後、電子ビームリソグラフィーとドライエッチングを用いて、正方格子状に300nmの周期を持つ直径220nmで、基板の上面から穴の底面までの深さ200nmの円筒状の穴をガラス基板面に対して垂直に形成した。
上記の通り用意したガラス基板をその凹凸面を有する面をターゲット1に対向する様に図3で示したスパッタリング装置の透明基板201と示す位置に設定した。
順バイアス用RF電源(パール工業(株)製RP−1000−13M)10及び逆バイアス用RF電源(パール工業(株)製RP−500C2)20は、ともに13.56MHzにてそれぞれ順バイアスRF電力及び逆バイアスRF電力が出力出来る。
ターゲット1は、透明導電膜202としてITO膜を形成するため、直径152.4mm(6inch)のITO(SnO2 10質量%)を使用した。また、ターゲット1−透明基板201間の距離は、45mmとした。
また、基板電極5の大きさは、直径400mm、またターゲット電極6の大きさは、ターゲット1と同じ直径152.4mmである。
チャンバー2内を5×10-4Paに減圧した後、スパッタガスとしてアルゴン(Ar)ガスと酸素(O2)ガスの混合ガス(O2分圧比:0.15%)を流量30sccm(cm3/min)として導入して、コンダクタンスバルブを調整して成膜ガス圧が1Paになるようにした。
そしてガス圧が安定した後、順バイアス用RF電力をターゲット電極6に100W20分間供給し、ターゲット1表面の不純物を取り除く作業を行った。次に、逆バイアス用RF電力を基板電極5に100W、5分間供給して、透明基板201表面の洗浄及び活性化を行った。
その後、シャッター7を開けて、透明導電膜の形成工程として、順バイアスRF電力を100W、逆バイアスRF電力を90Wとして15分間バイアススパッタリングを行い、透明基板201面上に透明導電膜202であるITO膜を厚さが凸部上面から約120nm形成した。ここで、バイアススパッタリング時間は、予め形成される膜厚との関係を実験にて求めてから決定した。
上記の透明導電膜202の上に、以下に述べるように、正孔注入層203、正孔輸送層204a、電子輸送層204b、電子注入層205、陰極層206を順次に公知の真空蒸着法を用いて成膜した。
具体的には、正孔注入層203として、CuPc(銅フタロシアニン)を10nm、正孔輸送層204aとして、NPD(4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)を40nm、電子輸送層204bとして、Alq3(トリス(8−キノリノール)アルミニウム)を60nm、電子注入層205としてLiF(フッ化リチウム)を1nmを順次成膜した。
最後に陰極206として、Al(アルミニウム)を110nm成膜することで、所望の有機EL素子を完成させた。作製した有機EL素子は、公知の保護膜(パッシべーション膜)で封止した。
実施例1にて作製した有機EL素子の断面を電子顕微鏡を用いて観察した。その時の透明導電膜202を形成した状態を模式的に図4に示す。この図4が示す様に、透明基板201上にある円柱状の凹部は透明導電材料であるITOにて完全に埋め込まれ、その後は、平坦なITO膜が形成されている。
また、図4が示す状態は、屈折率が約1.5の透明基板201であるガラス基板と屈折率が約2の透明導電膜202(ITO膜)とで構成された回折格子として機能する。
(実施例2)
実施例2は、実施例1の透明導電膜の形成工程のみを変更し、まずターゲット電極6のみに順バイアスRF電力を供給し、その後ターゲット電極6に順バイアスRF電力、及び、基板電極5に逆バイアスRF電力を同時に供給することにより透明導電膜202を形成した例である。
実施例2は、実施例1の透明導電膜の形成工程のみを変更し、まずターゲット電極6のみに順バイアスRF電力を供給し、その後ターゲット電極6に順バイアスRF電力、及び、基板電極5に逆バイアスRF電力を同時に供給することにより透明導電膜202を形成した例である。
透明導電膜の形成工程は、最初に順バイアスRF電力を100Wのみで5分間スパッタリングを行い、その後、順バイアスRF電力を100W及び逆バイアスRF電力を70Wで10分間バイアススパッタリングを行い、透明基板201面上に透明導電膜202であるITO膜を厚さが凸部上面から約150nm形成した。
実施例2にて作製した有機EL素子の断面を電子顕微鏡を用いて観察した。その時の透明導電膜202を形成した状態を模式的に図5に示す。この図5が示す様に、円柱形状の凹部の上部にこれを覆う様にドーム状の空洞が形成され、その上部には、平坦なITO膜が形成されている。
また、図5が示す状態は、屈折率が約1.5の透明基板201であるガラス基板と屈折率が約1の空洞207aとで構成された回折格子と、屈折率が約1のドーム状空洞207bと屈折率が約2の透明導電膜202(ITO膜)とで構成される回折格子とが複合された回折格子として機能する。
(実施例3)
実施例3は、実施例1の透明導電膜の形成工程のみを変更し、ターゲット電極6に順バイアスRF電力、及び、基板電極5に逆バイアスRF電力を同時に供給し、その後逆バイアスRF電力量を変更することにより透明導電膜202を形成した例である。
実施例3は、実施例1の透明導電膜の形成工程のみを変更し、ターゲット電極6に順バイアスRF電力、及び、基板電極5に逆バイアスRF電力を同時に供給し、その後逆バイアスRF電力量を変更することにより透明導電膜202を形成した例である。
透明導電膜の形成工程は、最初に順バイアスRF電力を100W及び逆バイアスRF電力を10Wで5分間、その後、順バイアスRF電力を100W及び逆バイアスRF電力を70Wで10分間バイアススパッタリングを行い、透明基板201面上に透明導電膜202であるITO膜を厚さが凸部上面から約150nm形成した。
実施例3にて作製した有機EL素子の断面を電子顕微鏡を用いて観察した。その時の透明導電膜202を形成した状態を模式的に図6に示す。この図6が示す様に、円柱形状の凹部の上部が平坦な蓋で覆われた様な空洞208が形成され、その上部には、平坦なITO膜が形成されている。
また、図6が示す状態は、屈折率が約1.5の透明基板201であるガラス基板と屈折率が約1の空洞208とで構成された回折格子として機能する。
(参照例)
参照例は、凹凸を持たないガラス基板面上に従来のスパッタリング法を用いてITO膜を約120nm形成して、正孔注入層以降は、上記実施例と全く同じ構成、膜厚とし、実施例との参照用として製作した有機EL素子である。
参照例は、凹凸を持たないガラス基板面上に従来のスパッタリング法を用いてITO膜を約120nm形成して、正孔注入層以降は、上記実施例と全く同じ構成、膜厚とし、実施例との参照用として製作した有機EL素子である。
参照例と実施例1〜3で製作した有機EL素子とで特性の比較をした結果、参照例に対して実施例1〜3の有機EL素子のいずれも、注入電流特性に差異が認められず、また輝度が1.8倍程度あり、さらに輝度むらも認められなかった。これらのことから、本発明の効果が十分であることが確認できた。
また、上記の実施例では、凹凸に周期性を持つレリーフ型回折格子としたが、散乱効果を持つ周期性を持たないランダムな凹凸に対しても、レリーフ型回折格子と同様に順バイアス及び逆バイアスRF電力をそれぞれ適切に設定を行うことで平坦な透明導電膜を形成することができる。この場合、実施例1の様な透明導電材料により凹部が埋め込まれた場合、また実施例2及び3の様な空洞が存在する場合、いずれの場合もこの凹凸は散乱の機能を持つ。
尚、本発明は、上記の実施例に限定されるものではない。
1 ターゲット
2 真空チャンバー
3 ガス導入口
4 真空ポンプ
5 基板電極
6 ターゲット電極
7 シャッター
8 整合器
10 順バイアス用RF電源
20 逆バイアス用RF電源
101 透明基板
102 第1電極
103 有機発光層
104 第2電極
201 回折格子構造を有する透明基板
202 透明導電膜
203 正孔注入層
204 有機発光層
204a 正孔輸送層
204b 電子輸送層
205 電子注入層
206 陰極
207 空洞
207a 円筒状の空洞
207b ドーム状の空洞
208 空洞
2 真空チャンバー
3 ガス導入口
4 真空ポンプ
5 基板電極
6 ターゲット電極
7 シャッター
8 整合器
10 順バイアス用RF電源
20 逆バイアス用RF電源
101 透明基板
102 第1電極
103 有機発光層
104 第2電極
201 回折格子構造を有する透明基板
202 透明導電膜
203 正孔注入層
204 有機発光層
204a 正孔輸送層
204b 電子輸送層
205 電子注入層
206 陰極
207 空洞
207a 円筒状の空洞
207b ドーム状の空洞
208 空洞
Claims (4)
- 凹凸面を有する透明基板の上にスパッタリング装置を用いて透明電極として機能する透明導電膜を形成する工程を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記スパッタリング装置は前記透明基板を支持する基板電極とターゲットを支持するターゲット電極とを備えるものであって、
前記透明導電膜を形成する工程は、前記基板電極と前記ターゲット電極のそれぞれに高周波電力を供給することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。 - 凹凸面を有する透明基板の上にスパッタリング装置を用いて透明電極として機能する透明導電膜を形成する工程を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記スパッタリング装置は前記透明基板を支持する基板電極とターゲットを支持するターゲット電極とを備えるものであって、
前記透明導電膜を形成する工程は、前記ターゲット電極に高周波電力を供給する工程、次いで、前記基板電極と前記ターゲット電極のそれぞれに高周波電力を供給することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。 - 凹凸面を有する透明基板の上にスパッタリング装置を用いて透明電極として機能する透明導電膜を形成する工程を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記スパッタリング装置は前記透明基板を支持する基板電極とターゲットを支持するターゲット電極とを備えるものであって、
前記透明導電膜を形成する工程は、前記基板電極と前記ターゲット電極のそれぞれに特定量の高周波電力を供給する工程、及び前記基板電極と前記ターゲット電極の少なくとも一方に前記特定量とは異なる量の高周波電力を供給することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。 - 請求項1乃至3の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法により製造されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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JP2008218191A (ja) * | 2007-03-05 | 2008-09-18 | Kaneka Corp | 透明導電膜付き基板および透明導電膜付き基板の製造方法 |
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JP2010512458A (ja) * | 2006-12-12 | 2010-04-22 | オーツェー・エリコン・バルザース・アーゲー | 高出力インパルス・マグネトロン・スパッタリング(hipims)を用いたrf基板バイアス |
WO2012176692A1 (ja) * | 2011-06-22 | 2012-12-27 | パナソニック株式会社 | 有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 |
WO2014069573A1 (ja) * | 2012-10-31 | 2014-05-08 | 昭和電工株式会社 | 有機el素子並びにそれを備えた画像表示装置及び照明装置 |
-
2005
- 2005-03-24 JP JP2005085097A patent/JP2006269235A/ja active Pending
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