JP2006269160A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池を氷点下で発電開始しようとする場合、発電効率、または電解質膜の劣化を抑制する燃料電池を提供する。
【解決手段】膜電極複合体MEAを挟持するアノードセパレータ8とカソードセパレータのディフューザー22に保水材として多孔質カーボン14を備える。
【選択図】図2

Description

本発明は燃料電池に関するものである。
燃料電池は電解質膜を燃料極と酸化剤極によって挟み、燃料極に燃料ガス、酸化剤極に酸化剤ガスを供給することによって発電を行う。例えば自動車用途においては電解質膜として、一般的には水素イオン導電性を有する高分子固体電解質膜を利用する場合が多い。また、燃料ガスとして水素、酸化剤ガスとして空気を燃料電池に供給すると、以下のような反応が起こる。
燃料極:2H2 → 4H+ + 4e- ・・・式(1)
酸化剤極:O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O ・・・式(2)
したがって燃料電池は副生成物として水しか排出しないため、内燃機関のような二酸化炭素など地球環境に対するダメージを与える物質を放出しないといった利点がある。
しかし、プロトンの移動媒体として高分子固体電解質膜を利用する場合、高分子固体電解質膜の含水量が少ないと電解質膜での抵抗が大きくなり、発電性能が大きく低下する。
そのため、一般的には燃料電池外部に燃料ガスや酸化剤ガスの反応ガスを加湿する加湿器を設け、加湿した反応ガスを燃料電池に供給している。
また、ガス供給用マニホールド内部に吸水体を設け、加湿ガスの配管系やガス供給用マニホールドで結露した水分を補足することで、燃料極、または酸化剤極の加湿状態を安定に保ち、燃料電池の発電性能の低下を防止するものが特許文献1に開示されている。
特開2001−155759号公報
しかしながら、上記発明では、燃料電池を氷点下で発電開始しようとする場合、ガス供給用マニホールドで吸水体が凍結し、凍結した吸水体が解凍するまで時間が掛かり、その間ガスの加湿が不足する恐れがある。反応ガスを加湿できない状態で発電を続けると、高分子固体電解質膜の加湿が不足し発電特性が大きく低下する問題があった。
本発明ではこのような問題点を解決するために発明されたもので、燃料電池の起動時、特に氷点下起動時において素早く反応ガスの加湿を行い、燃料電池の発電効率を向上することを目的とする。
本発明では、電解質膜を有する膜電極複合体と、膜電極複合体を挟持し、燃料ガスまたは酸化剤ガスが流れるガス流路を有するセパレータと、ガス流路に燃料ガスまたは酸化剤ガスを導入するガス導入マニホールドと、を備えた燃料電池において、セパレータは、電気化学反応が生じる膜電極複合体の面に向かい合うガス流路とガス導入マニホールドとの間に燃料ガスまたは酸化剤ガスの湿度を調整する湿度調整手段を備える。
本発明によると、ガス導入マニホールドと発電反応が生じる膜電極複合体に向かい合うガス流路との間に例えば保水材などの湿度調整手段を設けることで、燃料ガスまたは酸化剤ガス中に含まれる水蒸気を吸水し、保水し、燃料ガスまたは酸化剤ガス中に含まれる水蒸気が少ない場合に、保水する水によって燃料ガスまたは酸化剤ガスを加湿することができる。これにより例えば氷点下起動時に燃料ガスまたは酸化剤ガスを加湿する加湿器などの暖機が完了していない場合でも、保水材が素早く暖まり、保水材に吸収している水分によって燃料ガスまたは酸化剤ガスを素早く加湿することができる。
本発明の第1実施形態の構成を図1を用いて説明する。図1は単位セル1の概略構成図である。燃料電池は単位セル1を例えば100から200枚積層して構成する。
単位セル1は、固体高分子電解質膜(以下、電解質膜とする)2と、電解質膜2を挟持するアノード触媒層3とカソード触媒層4と、アノード触媒層3の外側に設けたアノードガス拡散層5と、カソード触媒層4の外側に設けたカソードガス拡散層6と、を備える。また、アノードガス拡散層5の外側に設けられ、水素流路(ガス流路)7を有するアノードセパレータ8と、カソードガス拡散層6の外側に設けられ、空気流路(ガス流路)9を有するカソードセパレータ10を備える。さらに水素または空気がリークしないようにエッジシール11を備える。以下において、電解質膜2とアノード触媒層3とカソード触媒層4とアノードガス拡散層5とカソードガス拡散層6を膜電極複合体(以下、MEA:Membrane Electrode Assembly)13とする。また、単位セル1を冷却するための冷却水が流れる冷却水流路(図示せず)を備える。
アノード触媒層3、カソード触媒層4は、例えば白金などの触媒を例えばカーボンブラックなどに担持体して構成する。アノードガス拡散層5、カソードガス拡散層6は、例えばカーボンペーパーなどから構成する。
アノードセパレータ8について図2を用いて説明する。図2は単位セル1を構成する電解質膜2側から見たアノードセパレータ8の正面図である。図2においてアノード触媒層3、アノードガス拡散層5を配置し、発電を行う領域(反応面)を斜線部28で示す。
アノードセパレータ8は、例えばステンレスなどを基板として、基板上にめっき処理を施した金属セパレータである。なお、金属セパレータに限られず、例えば黒鉛などを用いたカーボンセパレータを用いても良い。
アノードセパレータ8は、MEA13と対峙する面に水素(燃料ガス)が流れる水素流路7を備え、水素流路7に例えば図示しない水素ボンベから水素を供給する水素導入マニホールド(ガス導入マニホールド)20と、単位セル1における発電反応に使用されなかった水素を水素流路7から排出する水素排出マニホールド21を備える。水素流路7と水素導入マニホールド20はディフューザー(第1の連結部)22によって連結し、水素流路7と水素排出マニホールド21はディフューザー23によって連結する。
また、アノードセパレータ8は、カソードセパレータ10に設けた空気流路9に空気(酸化剤ガス)を導入する空気導入マニホールド(ガス導入マニホールド)24と、単位セル1における発電反応に使用されなかった空気を空気流路9から排出する空気排出マニホールド25と、を備える。さらに、冷却水流路に冷却水を導入するための冷却水導入マニホールド26と、冷却水流路から冷却水を排出するための冷却水排出マニホールド27と、を備える。
ディフューザー22は、図示しない加湿器などによって加湿された水素中に含まれる水蒸気の一部を吸水し、保水する保水材として多孔質カーボン(湿度調整手段)14を備える。多孔質カーボン14は水素中の水蒸気が多い場合、つまり水素の湿度が高い場合には水素中の水蒸気の一部を吸水し、水素中の水蒸気が少ない場合、つまり水素の湿度が低い場合には、多孔質カーボン14に含んでいる水が水蒸気となり、水素を加湿する。ディフューザー22に設ける保水材としては多孔質カーボンに限られることはなく、例えばポリメチルメタアクリレート(PMMA)などの高分子吸収層を用いてもよい。
多孔質カーボン14は、水素が流れるディフューザー22を形成する底面または側面の一部に凹部を設け、その凹部内に配設する。また、多孔質カーボン14によってディフューザー22の流路断面積を狭めないように、つまり多孔質カーボン14によるディフューザー22の流路抵抗が大きくならないように配設することが望ましい。
カソードセパレータ10について図3を用いて説明する。図3は単位セル1を構成する電解質膜2側から見たカソードセパレータ10の正面図である。図3においてカソード触媒層4、カソードガス拡散層6を配置し、発電を行う領域(反応面)を斜線部29で示す。
カソードセパレータ10は、MEA13と向かい合う面に空気が流れる空気流路9を備え、空気流路9と空気導入マニホールド24はディフューザー(第1の連結部)30によって連結し、空気流路9と空気排出マニホールド25はディフューザー31によって連結する。なお、カソードセパレータ10はアノードセパレータ8と同様に、水素導入マニホールド20と水素排出マニホールド21と冷却水導入マニホールド26と冷却水排出マニホールド27と、を備える。
ディフューザー30は、空気中に含まれる水蒸気の一部を吸水する多孔質カーボン15(湿度調整手段)を備える。多孔質カーボン15は、ディフューザー22に設けた多孔質カーボン14と同様に設ける。
なお、多孔質カーボン14、15は氷点下起動時に加湿器などの暖機が完了するまでの間に水素または空気を加湿することができる水量を含水可能となるように設けることが望ましい。
以上の構成によって、多孔質カーボン14、15によって、水素または空気中に含まれる水蒸気量を調整することができる。
燃料電池では電解質膜2の乾燥による抵抗の増加を抑制するため、特に水素または空気の流れ方向上流側での乾燥を抑制するために水素または空気を図示しない加湿器などによって加湿して単位セル1に供給する。
しかし、燃料電池の運転を停止し、長時間経過後に再び燃料電池を起動すると、加湿器などの暖機が完了していないために水素または空気を十分に加湿することができず、乾燥した水素または空気を燃料電池に供給することになる。そのため電解質膜2が乾燥した状態で発電反応を行い、燃料電池の発電効率の低下を招く恐れがあり、また電解質膜2の劣化を招く恐れがある。
この実施形態では、水素流路7または空気流路9の水素または空気の流れ方向の上流側となるディフューザー22、30に多孔質カーボン14、15を設け、通常の燃料電池の運転中に水素または空気中に含まれる水蒸気の一部を多孔質カーボン14、15に吸水、保水させる。
そして、燃料電池の長時間停止後の起動時に加湿器などが十分に暖機されておらず、水素または空気を十分に加湿することができない場合に、乾燥した水素または空気が多孔質カーボン14、15を上を通る時に多孔質カーボン14、15に吸収された水の一部が水蒸気となり、この水蒸気よって水素または空気を加湿する。
また、氷点下起動時などに多孔質カーボン14、15に吸収された水が凍結する可能性があるが、多孔質カーボン14、15は発電反応が生じる反応面(図2中、斜線部28または図3中、斜線部29)と近いために、燃料電池の発電反応に伴う発熱によって多孔質カーボン14、15で凍結した水を素早く解凍し、解凍した水によって水素または空気を素早く加湿する。
この実施形態では、多孔質カーボン14を、水素流路7と水素導入マニホールド20とを連結するディフューザー22に設けたが、例えば図4に示すように、発電反応が生じる反応面よりも上流側の水素流路7に設けてもよい。なお、多孔質カーボン15も同様に発電反応が生じる反応面よりも上流側の空気流路9に設けても良い。
また、この実施形態ではアノードセパレータ8、カソードセパレータ10に多孔質カーボン14、15を設けたが、アノードセパレータ8、カソードセパレータ10のどちらか一方にだけ多孔質カーボンを設けても良い。
本発明の第1実施形態の効果について説明する。
水素流路7と水素導入マニホールド20とを連結するディフューザー22、または空気流路9と空気導入マニホールド24とを連結するディフューザー30に保水材として多孔質カーボン14、15をそれぞれ設ける。これにより燃料電池の通常の運転時に例えば加湿器などによって加湿された水素または空気中の水蒸気の一部を多孔質カーボン14、15に吸水し、保水する。燃料電池の長時間停止後の起動時に加湿器などの暖機が完了しない場合でも、多孔質カーボン14、15が保水する水によって水素または空気を加湿することができる。そのため燃料電池の長時間停止後の起動時に加湿器などの暖機が完了していない場合でも、多孔質カーボン14、15が保水する水によって水素または空気を素早く加湿し、電解質膜2の乾燥を抑制することができ、燃料電池の発電効率の低下を防止することができる。また電解質膜2の劣化を抑制することができる。
また、単位セル1において発電が生じる反応面に近い箇所に多孔質カーボン14、15を設けることで、氷点下起動時の多孔質カーボン14、15が保水する水が凍結した場合でも燃料電池の発電による発熱によって多孔質カーボン14、15で凍結した水を素早く解凍することができ、解凍した水によって水素または空気を素早く加湿することができ、燃料電池の発電効率の低下を防止することができる。また電解質膜2の劣化を抑制することができる。
次に本発明の第2実形態について図5を用いて説明する。図5はアノードセパレータ40の水素導入マニホールド20近傍の拡大図である。ここでは第1実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
この実施形態では、アノードセパレータ40のディフューザー45と水素流路46との間に、貯留部41と、ディフューザー45と貯留部41とを連結する連結部42と、貯留部41と水素流路46とを連結する連結部(第2の連結部)43と、を備える。また、貯留部41などの周囲には図示しないがシール材などを備える。その他の構成については第1実施形態と同じ構成なので、ここでの説明は省略する。
この実施形態では、重力方向下向きに貯留部41が位置するように、燃料電池を配置する。
連結部43は、貯留部41と水素流路46とを連結し、その途中に屈曲部43aを備える。
図示しない加湿器などによって加湿された水素は、連結部42、貯留部41、連結部43を通り水素流路46に供給されるが、水素は屈曲部43aにおいてその流れが屈曲部43aに沿って変更される。
水素流路46に供給される水素中の水蒸気を多い場合には屈曲部43aにおいて水素の流れ方向が変化し、この時の圧力の変化により水蒸気の一部が凝縮し、凝縮した水は貯留部41に貯留する。また水素中の水蒸気が少ない場合には、貯留部41を水素が通る際に貯留した水が水蒸気となり、その水蒸気によって水素を加湿する。
以上のようにこの実施形態でも第1実施形態と同様に、水素流路46に供給する水素の湿度を調整することができ、燃料電池の起動時に加湿器などの暖機が完了していない場合でも水素を加湿することができる。
なお、図示しないがカソードセパレータにアノードセパレータ40と同様に貯留部41などを設けても良い。
本発明の第2実施形態の効果について説明する。
ディフューザー45と水素流路46との間に、水素中の水蒸気の一部を凝縮させる屈曲部43aを有する連結部43と、貯留部41と、を設ける。これにより、水素中の水蒸気が多い場合には水蒸気の一部を屈曲部43aによって凝縮させ、その凝縮水を貯留部41に貯留し、水素中の水蒸気が少ない場合には貯留部41の水によって水素を加湿することができる。そのため燃料電池の起動時に、例えば加湿器などの暖機が完了していない場合でも水素を加湿することができ、燃料電池の発電効率の低下を防止し、電解質膜2の劣化を抑制することができる。
連結部43に屈曲部43aを設け、この屈曲部43aによって水蒸気の一部を凝縮させ、貯留部41に凝縮水を貯留することで、他の部材を用いずに水素を加湿することができる。
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
燃料電池の起動、停止が多く行われる燃料電池車両に利用することができる。
本発明の第1実施形態の単位セルの概略構成図である。 本発明の第1実施形態のアノードセパレータの概略構成図である。 本発明の第1実施形態のカソードセパレータの概略構成図である。 本発明の第1実施形態の変更例を示す図である。 本発明の第2実施形態のアノードセパレータの概略構成図である。
符号の説明
1 単位セル
2 電解質膜
7 水素流路
8、40 アノードセパレータ
9 空気流路
10 カソードセパレータ
13 膜電極複合体(MEA)
14、15 多孔質カーボン
22、30 ディフューザー(第1の連結部)
20 水素導入マニホールド(ガス導入マニホールド)
24 空気導入マニホールド(ガス導入マニホールド)
41 貯留部
43 連結部(第2の連結部)
43a 屈曲部

Claims (5)

  1. 電解質膜を有する膜電極複合体と、
    前記膜電極複合体を挟持し、燃料ガスまたは酸化剤ガスが流れるガス流路を有するセパレータと、
    前記ガス流路に前記燃料ガスまたは前記酸化剤ガスを導入するガス導入マニホールドと、を備えた燃料電池において、
    前記セパレータは、電気化学反応が生じる前記膜電極複合体に向かい合う前記ガス流路と前記ガス導入マニホールドとの間に、前記燃料ガスまたは前記酸化剤ガスの湿度を調整する湿度調整手段を備えたことを特徴とする燃料電池。
  2. 前記ガス流路と前記ガス導入マニホールドとを連結する第1の連結部を備え、
    前記湿度調整手段を前記第1の連結部に配設することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  3. 前記湿度調整手段は、前記電気化学反応が生じる前記膜電極複合体に向かい合う前記ガス流路よりも前記燃料ガスまたは前記酸化剤ガスの上流側の前記ガス流路に配設することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池。
  4. 前記湿度調整手段は、前記燃料ガスまたは前記酸化剤ガス中の水蒸気を吸収保水し、かつ吸収保水した水によって前記燃料ガスまたは前記酸化剤ガスを加湿可能な保水材であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の燃料電池。
  5. 前記セパレータは、
    前記ガス導入マニホールドと前記ガス流路との間に水を貯留する貯留部と、
    前記貯留部と前記ガス流路とを連結し、屈曲部を有する第2の連結部と、を備え、
    前記湿度調整手段は前記貯留部であり、
    前記貯留部は、前記燃料ガスまたは前記酸化剤ガス中に含まれる水蒸気が前記屈曲部によって凝縮した凝縮水を貯留することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
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