JP2006265071A - 圧電材料とその製造方法およびそれを用いた圧電素子 - Google Patents

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Abstract


【課題】 低温での焼結を可能とし、高いキュリー温度と優れた圧電歪定数とを有する圧電材料と、その製造方法、およびそれを用いた圧電素子を提供する。
【解決手段】 PbTiO3−PbZrO3を主成分とするペロブスカイト化合物であって、組成式をPbaSmb(TicZr1-c)Odとすると、0<b≦0.03、0.98≦a+b≦1、0.435≦c≦0.470、d=(2a+3b+4)/2とする。出発原料や製造条件を調整することにより、焼結助剤を使用せずに950℃以下の低温焼結が可能で、高いキュリー温度と優れた圧電歪定数を有する圧電材料を得る。
【選択図】 なし

Description

本発明は、圧電材料に関し、特に圧電アクチュエータ、圧電スピーカー、超音波モーター、マイクロポンプ、マイクロマシン等に好適なチタン酸ジルコン酸鉛組成系の圧電材料とその製造方法およびそれを用いた圧電素子に関する。
圧電アクチュエータ、圧電スピーカー、超音波モーター、マイクロポンプ等は、電気エネルギーを機械エネルギーへ変換する逆圧電効果を利用した素子である。圧電アクチュエータを例にとると、従来の電磁式アクチュエータに比べ、小型化が可能となり、消費電力や発熱量は少なく、さらに応答速度が速いという優れた特徴を有している。また、位置精度が高く、ミクロンレベルでの変位量の制御を可能とすることから、半導体製造のマスフロー装置や精密位置調整装置等に実用化されている。また、近年、新たな分野としてマイクロマシン等への応用が注目されている。
上記デバイスに使用する圧電材料は、特に圧電歪定数の高い値を示すものが好適であり、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛組成系の圧電材料が使用されてきた。さらに、圧電歪定数を高めるための条件として、電気エネルギーと機械エネルギーとの変換効率を示す電気機械結合係数がより大きな材料が求められている。
これら圧電素子では、セラミックスを多層に積層することにより変位効率を高めており、その製造過程において圧電材料からなるグリーンシートに導体ペーストを印刷し内部電極層を形成、積層することで一体構造を成している。さらに、その圧電材料と内部電極層からなる積層構造体は、同時焼結することで素子を製造している。よって、焼結の際に、電極材料の溶融や圧電材料との反応を防ぐ必要がある。一般的に、チタン酸ジルコン酸鉛組成系の圧電材料は、焼結温度が1200〜1300℃と高温であるため、前述のように圧電材料と内部電極層を同時焼結するためには、内部電極層として、例えば高融点のPtやPdなどの高価な貴金属を用いる。しかしながら、この場合は素子のコストが高くなる。
これらの問題の解決には、圧電材料の焼結温度を下げることが有効である。すなわち、焼結時に内部電極層が溶融しない範囲の低温で焼結可能な圧電材料が得られれば、例えば、比較的安価なAg含有率の高いAg−Pd合金、あるいはAg、Cuなどを内部電極層として使用でき、素子の低コスト化が可能となる。
また、焼結に伴う問題として、焼結の際に、鉛成分が蒸発することによって組成が変動するために、理想的な化学量論比を持つ圧電材料は得られないということも挙げられる。このことからも、低温焼結は、組成変動を抑え、その結果、特性の安定した素子を製造するという目的に対して有益といえる。
一方、低温焼結を行うために、低融点の添加物やガラスフリットを使用し、液相焼結法で圧電材料を低温で緻密化させた場合は、強誘電性を持たない液相成分がそのまま粒界に残り、主体の圧電材料に比べ圧電特性が劣化する。さらに、低融点の添加物やガラスフリットを使用し積層体を形成した場合は、添加物等と内部電極が反応し、異相が生成され、同様に圧電特性が劣化する。
チタン酸ジルコン酸組成系の圧電材料に低融点の炭酸塩あるいは酸化物を添加することで、圧電材料の焼結温度を下げることを開示した従来技術として、例えば、特許文献1がある。しかしながら、特許文献1においては、焼結温度が960℃以上であり、Agの融点960℃と同等であるために、安価なAgを内部電極層として使用することは困難である。さらに、有害元素のCdを用いており、環境に対する配慮を欠いているとともに、実用的ではない。
さらに、前述の圧電素子は、さまざまな周囲環境条件下で、安定に動作することが求められている。
例えば、高温環境下で使用される産業機器への応用や、基盤実装工程での熱処理では、圧電素子もまた高温下にさらされる状況が増えている。このようないわゆる熱衝撃に対して、圧電材料自体の耐久性、すなわち、高温環境下においても圧電特性の変化が小さいことが要求され、素子自体が安定して駆動できることが不可欠となる。
また、圧電材料自体からの焦電荷発生が小さいことも必要である。この焦電荷の発生に依存して圧電特性は劣化し、圧電素子の駆動精度に誤差を生じる。この焦電荷の発生を抑制するためには、圧電材料の温度特性、特に相転移温度であるキュリー温度が重要な材料パラメータとなる。
近年、前述の圧電素子はパソコンや携帯電話などといったデジタル電化製品へ搭載されることが増加している。これらのデジタル電化製品は高集積化が進むにつれて、自己発熱量が多くなってきている。これらの製品へ圧電素子を搭載する場合には、圧電素子は100℃近傍の高温化での連続駆動を強いられるが、このような環境下でも、圧電特性を劣化させずに安定駆動させる必要がある。さらに車載対応となれば、150℃以上でも安定性を維持しなければならない。従って、キュリー温度がより高い圧電材料が必要となる。
また、比誘電率があまりに大きすぎると駆動時の消費電流や自己発熱が増大してしまう。そのため、積層デバイスの低消費エネルギー化には、比誘電率がより小さいものが望ましい。
上述のように、低温焼結化を達成するために添加物等を加えるという従来技術では、圧電特性が圧電材料本来の値より劣化する場合が多く、焼結性を優先させると圧電特性を維持できない、設計上の制約が生じるなどの問題があった。
一方、圧電特性のみを追求すると焼結性やキュリー温度が低下するなどの点で妥協しなければならず、コスト面でも不利となるという問題があった。
特開2000−86341号公報
本発明の技術的課題は、素子焼結の際、焼結助剤等を使用せずに、950℃以下の低温焼結を可能とし、実用上要求される圧電特性として、電気機械結合係数Kp>0.6、比誘電率εr<2150、圧電歪定数d33>700pC/N、キュリー温度Tc>320℃の条件を満たす圧電材料とその製造方法、およびそれを用いた圧電素子を提供することにある。
上記目的を達成するために、PbTiO3−PbZrO3を主成分とするペロブスカイト化合物のPbサイトの一部をSmで置換し、またPbおよびSmサイトの総量をTiおよびZrサイトの総量以下に減じる特定組成の圧電材料を選択し、さらにその製造方法において出発原料の純度、比表面積を適切に選択する。
本発明によれば、PbTiO3−PbZrO3(チタン酸ジルコン酸鉛)を主成分とするペロブスカイト化合物であって、組成式をPbaSmb(TicZr1-c)Odとすると、0<b≦0.03、0.98≦a+b≦1、0.435≦c≦0.470、d=(2a+3b+4)/2とする圧電材料が得られる。
本発明によれば、酸化鉛(PbO)、酸化チタン(TiO2)酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化サマリウム(Sm23)の各粉末を出発原料として秤量、混合粉砕、仮焼、粉砕してなる前記圧電材料の製造方法であって、前記出発原料として少なくとも純度が99.9%以上、比表面積が20m2/g以上の酸化ジルコニウム粉末と、純度が99%以上、比表面積が7m2/g以上の酸化チタンを用いることを特徴とする前記圧電材料の製造方法が得られる。
本発明によれば、酸化鉛(PbO)、酸化チタン(TiO2)酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化サマリウム(Sm23)の各粉末を出発原料として秤量、混合粉砕、仮焼、粉砕してなる前記圧電材料の製造方法であって、前記混合粉砕後の粉末の比表面積を15m2/g以上とし、800℃以上900℃以下の温度で前記仮焼を行うことを特徴とする前記圧電材料の製造方法が得られる。
本発明によれば、前記圧電材料からなる粉末を、成形、焼結、電極形成してなることを特徴とする圧電素子が得られる。
本発明により、焼結助剤を使用せずに950℃以下の低温焼結を可能とし、高い圧電歪定数を有し、キュリー温度が320℃以上の圧電材料とその製造方法およびそれを用いた圧電素子の提供が可能となった。
また、本発明の圧電材料組成とすることで、低温焼成が可能となることから、融点が低くかつ安価なAg含有量の高いAg−pd合金、あるいはAg、Cuなどの内部電極層を使用することが可能となり素子全体の低価格化を図ることができるばかりでなく、焼結時の鉛成分の蒸発による組成変動を防ぐこともできるので、製造工程の簡略化や製造コストの削減も可能となった。
さらに、キュリー温度が320℃以上と高いことで、高温環境下での使用にもより安定した特性を維持できるため、デバイス特性変動を抑制することが可能となった。
従来は上記特性項目のいずれかにおいて要求を満足することができず、使用条件が限定される場合があったが、本発明の圧電材料を用いることでデバイス設計の自由度を拡大することが可能となった。
本発明の圧電材料は、PbTiO3−PbZrO3(チタン酸ジルコン酸鉛)を主成分とするペロブスカイト化合物に対してPbサイトの一部をSmで置換し、かつPbおよびSmサイトの総量をTiおよびZrサイトの総量以下に減じる圧電材料とし、具体的には、組成式をPbaSmb(TicZr1-c)Odとすると、0<b≦0.03、0.98≦a+b≦1、0.435≦c≦0.470、d=(2a+3b+4)/2とするものである。
チタン酸ジルコン酸鉛組成系では一般に、陽イオンサイトに価数の低いイオン(アクセプターイオン)が導入されると、全体の価数バランスを取ろうとして酸素O(価数−2)サイトに欠陥が生じ、これが圧電材料の分域壁のピンニング効果を示して電気機械結合係数が低くなる傾向があり、反対に価数の高いイオン(ドナーイオン)が導入されると陽イオンサイトに欠陥が生じて電気機械結合係数を向上させる効果を示す。
上述の材料において、チタン酸ジルコン酸鉛のPb(価数+2)サイトをSm(価数+3)で置換し、さらにPbサイトの一部に欠損を生じさせることで、電気機械結合係数は、大幅に向上し、さらに、その組成を限定することでキュリー温度を320℃以上とすることが可能である。なお、Smの置換量を多くしすぎたり、PbとSmのサイト総量を少なくしすぎたりすると、Pbサイト欠損量が増えすぎて異相の生成や焼結性の劣化がみられたため、Sm置換範囲は0<b≦0.03、PbとSmサイト総量は0.98≦a+b≦1とするのがよい。特に、a+bの値は、d=(2a+3b+4)/2=3をも満たす値近傍で、圧電歪定数等の諸特性が良好となった。従って、dの値は、2.995≦d≦3.005の範囲になるよう調整するのが望ましい。
また、Sm以外の、例えば、Ndなどの希土類元素を用いて前述同様に置換した場合、特性は良好であったが焼結性がSmよりも劣った。チタン酸ジルコン酸鉛組成系においては、TiとZrの比率をモルフォトロピック相境界(MPB)近傍とすることで、一般に電気機械結合係数が大きい値が得られる。さらに、上記組成系のPbTiO3の比率が多いほどキュリー点は高くなる。上記理由より、TiおよびZrの組成範囲は、0.435≦c≦0.470とするのがよい。
また、出発原料に純度が99.9%以上、比表面積が20m2/g以上の酸化ジルコニウム粉末と、純度が99%以上、比表面積が7m2/g以上の酸化チタン粉末を用い、これらの原料の混合粉砕後における比表面積が15m2/g以上となる混合粉末を作製し、800℃以上900℃以下の温度で仮焼することで、950℃以下の低温焼結が可能となる。
酸化ジルコニウム粉末および酸化チタン粉末の比表面積がそれぞれ20m2/g、7m2/gよりも小さい場合は、低温焼結が困難となる。また、これら原料粉末の比表面積は40m2/g以下であることが望ましく、これを越えると混合工程で粉末同士が凝集しやすくなり、均一に分散することが難しくなる。均一な混合ができない場合は、低温焼結も困難になり、異相となるパイロクロア相の生成率が増え、圧電歪定数も劣化する。混合粉末の比表面積が15m2/gより小さい場合は、仮焼工程での原料粉末間の反応性が悪くなり、より高い仮焼温度が必要となり、低温焼結が困難となる。その結果、異相となるパイロクロア相の生成率が増え、圧電歪定数も劣化する。
仮焼温度が800℃よりも低い場合も、異相となるパイロクロア相の生成率が大幅に増え、低温焼結も困難になり、圧電歪定数も低下する。逆に、900℃よりも高い場合は、仮焼粉末が粒成長し、粗大化するので、粉砕時間が増加し、粉砕媒体からのコンタミネーションが増え、粉砕工程での取り扱いが難しくなる。
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。
(実施例1)
表1は、本発明組成による圧電材料と従来組成による圧電材料における、焼結温度および比誘電率、電気機械結合係数、圧電歪定数、キュリー温度の各材料特性を示したものである。
出発原料としてPbO、ZrO2、TiO2、Sm23、Nd23、La23粉末を用い、表1に示す組成となるよう各試料を作製した。ここで試料No.に*印が付されているものは、比較例である。また、置換量(b)欄は、試料No.1〜35はSm量を示し、No.36はLa量、No.37およびNo.38はNd量を示している。
なお、出発原料のZrO2粉末は、純度99.9%、比表面積32m2/gの粉末を用い、TiO2粉末は、純度99%、比表面積7m2/gの粉末を用いた。また、各試料において、出発原料をそれぞれ所定の組成式PbaSmb(TicZr1-c)Od(ただし、0<b≦0.03、0.98≦a+b≦1、0.435≦c≦0.470、dはaおよびbの値により決まりd=(2a+3b+4)/2になるように秤量した。
これらの原料粉末をそれぞれボールミルで湿式混合、回収、乾燥し、混合粉末の比表面積が15m2/g以上であることを確認した後、アルミナコウバチ中で850℃にて仮焼を行い、得られた粉末は、再びボールミルで20時間湿式粉砕を行った。その後、乾燥し、目的とする粉末を得た。回収した粉末にバインダーを添加して、一軸加圧成形よりφ20mm×厚さ5mmの円板形状に成形した。この成形体を試料毎に925〜1200℃の温度範囲で焼結状態を観察しながら6時間焼結し,焼結体を作製した。作製した焼結体を1mmの厚さに加工した後、両面に銀ペーストを塗布して500℃で焼き付けて電極を形成し、試料と成した。このようにして得られた各試料を100℃シリコンオイル中で2kV/mm、10分間の分極処理を行った。
得られた試料は、インピーダンスアナライザHP4194Aを用いて共振周波数fr、反共振周波数fa、電気機械結合係数Kp、比誘電率εrの測定を行った。圧電歪定数d33は、φ20mm×厚さ1mmの円板試料を用い、上下方向から試料中心領域にて支持した状態で、試料に2秒間で等速にて、0V→2kV→0Vの電圧を印加した後、試料厚さ方向の変位を、フリンジカウンタ式レーザ変位計を使用して測定して算出した。さらにキュリー温度Tcはインピーダンスアナライザと恒温槽を使用して、1kHzの容量から算出した。−40℃〜400℃の範囲で5℃〜10℃毎に30分保持したのち、各温度での1kHzの容量を測定し、極大値を示す温度をキュリー温度とした。それらの結果と、焼結温度とを表1に示す。なおここで、焼結体密度が7.8g/cm3以上となるのに必要な最低温度を焼結温度と定義し、電気機械結合係数Kp、比誘電率εr、圧電歪定数d33、キュリー温度Tcは、この焼結温度で焼結した試料を用いて得た値である。
まず、Smの置換効果および置換量について検討する。試料No.16(b=0)は、Pbサイトの一部をSm元素で置換していないものである。この試料は、Sm置換量が0<b≦0.03の範囲にあるもの(No.17〜No.21)と比べ、電気機械結合係数および圧電歪定数が低い。また、試料No.22(b=0.04)やNo.23(b=0.05)のように、Sm置換量bが0.03を超えると再び電気機械結合係数と圧電歪定数が劣化し、かつ焼結温度も950℃を超え、焼結性が悪くなっている。従って、Sm置換量(b)は、0<b≦0.03が好ましい。
次に、Sm以外の希土類元素の添加効果について検討する。No.36、37、38は、それぞれLa、Ndを添加した比較例である。これらのように、Sm以外の希土類元素を用いた場合、圧電歪定数は良好となるが、焼結温度は950℃を超え、950℃以下の低温焼結は困難となる。
また、試料No.2〜5のようにPbおよびSmサイト量(a+b)をTiおよびZrサイト量よりも減じると、電気機械結合係数と圧電歪定数が向上するが、試料No.6のように減じる量が多すぎると焼結温度が950℃を超え、焼結性は劣化する。これは、異相であるパイロクロア相が生成されるためと考えられる。従って、PbおよびSmサイト量(a+b)は、0.98≦a+b≦1が好ましい。
さらに、試料No.7およびNo.15のようにTi量(c)およびZr量(c−1)、つまり、PbTiO3量およびPbZrO3量がそれぞれMPB付近をはずれる場合は、電気機械結合係数と圧電歪定数が低下する。また、試料No.7のようにTi量(c)が少ないと、キュリー温度が低下する傾向があることがわかる。従って、Ti量(c)は、0.435≦c≦0.470が好ましい。
以上の結果より、組成式をPbaSmb(TicZr1-c)Odとすると、0<b≦0.03、0.98≦a+b≦1、0.435≦c≦0.470、d=(2a+3b+4)/2とすることで、実用上有効な諸特性が得られた。
なお、0.02≦b≦0.025、0.98≦a+b≦1、0.45≦c≦0.46の範囲で、電気機械結合係数Kp>0.6、比誘電率εr<2150、圧電歪定数d33>700pC/Nの諸特性を満たし、0.02≦b≦0.025、0.985≦a+b≦0.99、0.45≦c≦0.46の範囲で比誘電率εr<2050、圧電歪定数d33>785pC/Nを満たした。
Figure 2006265071
(実施例2)
次に、本発明に係わる圧電材料の製造方法について説明する。表2は、ZrO2原料粉末およびTiO2原料粉末条件を本発明による原料粉末条件で作製した試料と比較のため従来から用いられている原料粉末条件で作製したものの焼結温度および材料特性(圧電歪定数)の相関を示したものである。ここで、試料No欄に*印を付した試料は、比較例で、上記いずれかの原料粉末の純度または、比表面積は従来から用いられている条件とした。出発原料としてPbO、ZrO2、TiO2、Sm23粉末を用い、ZrO2粉末、TiO2粉末に関しては純度、比表面積の異なる原料粉末をそれぞれ用いて試料を作製した。圧電材料の組成は、実施例1のNo.3と同様とし、ZrO2粉末とTiO2粉末の比表面積の選択を除いて、実施例1と同様の方法で製造した。
ZrO2粉末の純度が99.9%より低純度の試料No.3−5、No.3−6、No.3−7、No.3−16および比表面積が20m2/gよりも小さい試料No.3−1、No.3−5、No.3−16は、いずれも焼結温度が1000℃を超え、950℃以下でのいわゆる低温焼結が困難であった。同様に、TiO2粉末の比表面積が7m2/gよりも小さい試料No.3−8、No.3−12、No.3−16、およびTiO2粉末の純度が99%より低純度の試料No.3−12、No3−13、No.3−14、No.3−16も、同様に焼結温度がいずれも1000℃を超え、950℃以下でのいわゆる低温焼結が困難であった。
Figure 2006265071
(実施例3)
次に、本発明に係わる圧電材料の製造方法について他の実施例を用いて説明する。表3は、出発原料粉末を混合してなる粉末(以下、混合粉末と記述)の比表面積の値を本発明条件で作製した試料および従来条件で作製したものの焼結温度および材料特性(圧電歪定数)の相関を示したものである。ここで、試料No欄に*印を付した試料は、比較例である。
出発原料としてPbO、ZrO2、TiO2、Sm2O3粉末を用いた。また、ZrO2粉末は、純度99.9%、比表面積32m2/gの粉末を用い、TiO2粉末としては、純度99%、比表面積7m2/gの粉末を用いた。圧電材料の組成は、実施例1の試料No.3と同様とし、ZrO2粉末とTiO2粉末からなる混合粉末の比表面積の選択を除いて、実施例1と同様の方法で製造した。
これらの原料粉末をボールミルで湿式混合し、比表面積の異なる混合粉末を作製し、回収乾燥後,アルミナコウバチ中で850℃にて仮焼を行い、得られた各粉末を再びボールミルで20時間湿式粉砕を行った。その後、乾燥し、目的とする各粉末を得た。回収した粉末にバインダーを添加して、一軸加圧成形よりφ20mm×厚さ5mmに成形した。この成形体を試料毎に925〜1200℃の温度範囲で焼結状態を観察しながら6時間焼結し,焼結体を作製した。さらに、作製した焼結体を1mmの厚さの円板形状に加工した後、両面に銀ペーストを塗布して500℃で焼き付けて電極を形成した。このようにして得られた各試料を100℃シリコンオイル中で2kV/mm、10分間の分極処理を行った。
実施例1と同様の方法で、得られた円板試料の圧電歪定数d33を求めた。その結果を表3に示す。混合粉末の比表面積が15m2/gより小さい試料No.3−A、No.3−Bは、950℃以下での低温焼結が困難となり、圧電歪定数も劣化する。それに対して、混合粉末の比表面積が15m2/g以上の試料No.3−C、No.3−D、No.3−Eは、950℃以下での低温焼結が可能で、圧電歪定数の劣化もなかった。
Figure 2006265071
(実施例4)
次に、本発明に係わる圧電材料の製造方法に関する他の実施例について説明する。出発原料としてPbO、ZrO2、TiO2、Sm2O3粉末を用い、さらにZrO2粉末に関しては、純度99.9%、比表面積32m2/gの粉末を用い、TiO2に関しては、純度99%、比表面積7m2/gの粉末を用いた。圧電材料の組成については実施例1の試料No.3と同様とし、ZrO2粉末とTiO2粉末を混合してなる混合粉末の仮焼温度の選択を除いて、実施例1のと同様の方法で製造した。表4は、本発明法と従来法との仮焼温度条件の違いによる焼結温度、パイロクロア量および材料特性(圧電歪定数)の相関を示したものである。
これらの原料粉末をボールミルで湿式混合し、比表面積が15m2/g以上となる混合粉末を回収乾燥後、試料毎に750℃から950℃の範囲で温度を変え、仮焼を行った。また、粉末X線回折により得られた仮焼粉末の生成相について調べた。その後、得られた仮焼粉末を再びボールミルで20時間湿式粉砕を行い、乾燥し、目的とする粉末を得た。回収した粉末にバインダーを添加して、一軸加圧成形よりφ20mm×厚さ5mmに成形した。この成形体を試料毎に925〜1200℃の温度範囲で焼結状態を観察しながら6時間焼結し,焼結体を作製した。
作製した圧電材料についてd33を測定した結果を表4に示す。ZrO2粉末とTiO2粉末を混合した混合粉末の仮焼温度が800℃より低い試料No.3−a、No.3−bは、950℃以下での低温焼結が困難となり、異相となるパイロクロア相の生成率が大幅に増え、圧電歪定数も低い。それに対して、混合粉末の仮焼温度が800℃〜900℃の試料No.3−c、No.3−d、No.3−e、No.3−f、No.3−gは、950℃以下での低温焼結が可能で、圧電歪定数の劣化もない。また、混合粉末の仮焼温度が900℃よりも高い試料No.3−h、No.3−iは、仮焼粉末が粒成長して粗大化し、粉砕時間が増加し、粉砕媒体からのコンタミネーションが増加したために、次工程まで進めることができなかった。
以上より、PbTiO3−PbZrO3を主成分とするペロブスカイト化合物に対して、Pbの一部をSmで置換し、PbとSmのサイト総量がTiとZrのサイト総量以下となる圧電材料とすることで、圧電歪定数が高く、かつキュリー温度が320℃以上である圧電材料が得られる。さらに、出発原料の純度が99.9%以上、比表面積が20m2/g以上の酸化ジルコニウム粉末と、純度が99%以上、比表面積が7m2/g以上の酸化チタン粉末を用い、混合粉砕工程後、比表面積が15m2/g以上の混合粉末を作製し、この混合粉末を800℃以上900℃以下で仮焼することで、焼結助剤を使用せずに950℃以下での低温焼結が可能となる。
Figure 2006265071
本発明の圧電材料を用いることにより、圧電アクチュエータ、圧電スピーカー、超音波モーター、マイクロポンプ、マイクロマシン等の積層デバイスの低コスト化が可能となる。また、キュリー温度が高く、高温環境下での使用であってもより安定した特性を維持でき、デバイス特性変動が抑制できるので、様々な圧電応用デバイスの設計が可能となる。

Claims (4)

  1. PbTiO3−PbZrO3を主成分とするペロブスカイト化合物であって、組成式をPbaSmb(TicZr1-c)Odとすると、0<b≦0.03、0.98≦a+b≦1、0.435≦c≦0.470、d=(2a+3b+4)/2となることを特徴とする圧電材料。
  2. 酸化鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化サマリウムの各粉末を出発原料として秤量、混合粉砕、仮焼、粉砕してなる圧電材料の製造方法であって、前記出発原料として少なくとも純度が99.9%以上、比表面積が20m2/g以上の酸化ジルコニウム粉末と、純度が99%以上、比表面積が7m2/g以上の酸化チタンを用いることを特徴とする請求項1記載の圧電材料の製造方法。
  3. 酸化鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化サマリウムの各粉末を出発原料として秤量、混合粉砕、仮焼、粉砕してなる圧電材料の製造方法であって、前記混合粉砕後の粉末の比表面積を15m2/g以上とし、800℃以上900℃以下の温度で前記仮焼を行うことを特徴とする請求項1記載の圧電材料の製造方法。
  4. 請求項1記載の圧電材料である粉末を、成形、焼結、電極形成してなることを特徴とする圧電素子。
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