以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明が適用される画像形成装置の一実施形態であるインクジェット記録装置の全体概略図である。図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(不図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。従って、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。
すなわち、印字部12を構成する各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインクの吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(不図示)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
〔印字ヘッドの構造〕
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K、12M、12C、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
図2(a)は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図2(b)はその一部の拡大図である。記録紙16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図2に示すように、インク滴の吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状(2次元的)に配置させた構造を有し、これにより、印字ヘッド50の長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。
また、図2の構成に代えて、図3のように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドユニット50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するフルラインヘッドを構成してもよい。
図4は、図2中4−4線に沿う断面図である。同図に示すように、圧力室52は、一端においてノズル51と連通すると共に、他端において供給口54を介して共通流路55と連通している。なお、共通流路55はインク供給源たるインクタンク(図4中不図示、図6中符号60として記載)と連通しており、インクタンク60から供給されるインクは図4の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の天面を構成している振動板(共通電極)56には、個別電極57を備えた圧電素子(圧電アクチュエータ)58が接合されている。圧電素子58には、ピエゾ素子などの圧電体が好適に用いられる。個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形して、ノズル51からインク滴が吐出される。インク滴が吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン又は1個の帯状を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)、記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットからなるライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、圧電素子58の変形によってインク滴を飛ばす圧電方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、圧電方式に代えて、ヒータ等の発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式等、各種方式を適用できる。
〔インク供給系の構成〕
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60は印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を代える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図6に示したように、インクタンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下とすることが好ましい。図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
またインクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止する手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aをキャップ64で覆う。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構により印字ヘッド50のノズル面50Aに摺動可能である。ノズル面50Aにインク滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル面50Aに摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル面50Aを清浄する。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ64に向かって予備吐出が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室内)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクの印字ヘッド50への装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。
印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用の圧電素子58が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(圧電素子58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かって圧電素子58を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーによってノズル面50Aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル51や圧力室52に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、圧電素子58を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、印字ヘッド50のノズル面50Aに、キャップ64を当てて圧力室52内の気泡が混入したインク又は増粘インクをポンプ67で吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。
〔制御系の説明〕
次に、インクジェット記録装置10の制御系について説明する。
図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示に従って後乾燥部42その他各部のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色のヘッド50の圧電素子58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80において既知のディザ法、誤差拡散法などの手法によりインク色ごとのドットデータに変換される。
こうして、プリント制御部80で生成されたドットデータに基づき、ヘッド50が駆動制御され、ヘッド50からインクが吐出される。記録紙16の搬送速度に同期してヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録紙16上に画像が形成される。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。なお、ラインセンサの読み取り開始タイミングは、センサとノズル間の距離及び記録紙16の搬送速度から決定される。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいてヘッド50に対する各種補正を行う。また、プリント制御部80は、印字検出部24を通じて得られた検出情報に基づいてノズル51の吐出/不吐出を判断し、不吐出ノズルが検出された場合には所定の回復動作を実施する制御を行う。また、プリント制御部80の打滴制御部は、以下に説明する打滴制御を行う。
〔打滴制御方法〕
次に、本発明の特徴である打滴制御方法について説明する。
図8は、印字ヘッドに対応するドットデータの一例を表した説明図である。ここでは、異なる色のJ個の印字ヘッド50(0)、・・・、50(J−1)がそれぞれ記録紙16の幅方向である主走査方向に1列に配列されたK個のノズル51を備えている場合について説明する。例えば、印字ヘッド50(0)は、K個のノズル51(0、0)、51(1、0)、・・・、51(K−2、0)、51(K−1、0)を備えている。なお、印字ヘッドの符号50の括弧内の数字はインク番号を表し、ノズルの符号51の括弧内の先の数字はノズル番号、後の数字はインク番号を表している。また、説明の便宜上、各印字ヘッドが主走査方向に1列に配列されたノズル列を備えている場合を例示するが、図2に示したように千鳥でマトリクス状にノズル51が多数配列されている場合についても同様に本発明の打滴制御方法を適用することが可能である。
記録紙16上に表示されている複数のドットD0、D1、…、Dnは、プリント制御部80(図7参照)において画像データに基づいて生成されたドットデータ100(0)である。ドットデータ100(0)は印字ヘッド50(0)に対応するものであり、図示はしないが、他の印字ヘッド50(1)、・・・、50(J−1)に対応するドットデータ100(1)、・・・、100(J−1)も作成されているものとする。なお、ドットデータの符号100の括弧内の数字はインク番号を表している。各印字ヘッド50(0)、・・・、50(J−1)の打滴動作は同様であるので、以下、これらを代表して、印字ヘッド50(0)の打滴動作について説明する。
印字ヘッド50(0)の通常の打滴動作においては、記録紙16が副走査方向(紙搬送方向)に搬送され、印字ヘッド50(0)の各ノズル51(0、0)、・・・、51(K−1、0)が副走査方向に配列された各ドット列L(0)〜L(K−1)の各ドットを打滴する。例えば、ノズル51(0、0)は、副走査方向のドット列L(0)の各ドットD0、D1、D2、D3を打滴する。
図9は、図8におけるノズル51(0、0)の打滴タイミングを表した説明図である。図9に示すように、印字ヘッド50(0)の印刷動作が開始されたときの時間を0とした場合のノズル51(0、0)が各ドットD0〜D3を打滴すべき打滴タイミング(打滴時間)をそれぞれT(0)、T(1)、T(2)、T(3)とする。なお、印刷動作が開始されたときをT(−1)(=0)とする。また、ノズル51(0、0)の打滴間隔をそれぞれΔT(0)(=T(0)−T(−1))、ΔT(1)(=T(1)−T(0))、ΔT(2)(=T(2)−T(1))、ΔT(3)(=T(3)−T(2))とする。ここで、ノズルに吐出不良が生じる打滴間隔(以下、吐出不良打滴間隔という)をΔTcとし、ΔT(0)及びΔT(1)はΔTcより小さく、ΔT(2)及びΔT(3)はΔTcより大きいものとする。
このような場合に通常の打滴動作を行うと、図9に示すように、印刷動作が開始されてから吐出不良打滴間隔ΔTcより小さな打滴間隔ΔT(0)で最初のドットD0が打滴されるため、ドットD0は正常に打滴される正常ドット(図中黒丸で表示)となる。また、先のドットD0が打滴タイミングT(0)で打滴されてから吐出不良打滴間隔ΔTcより小さな打滴間隔ΔT(1)をおいた打滴タイミングT(1)でドットD1が打滴されるため、ドットD1は正常に打滴される正常ドットとなる。一方、先のドットD1が打滴タイミングT(1)で打滴されてから吐出不良打滴間隔ΔTc(所定時間)より大きな打滴間隔ΔT(2)をおいた打滴タイミングT(2)でドットD2が打滴されるため、ノズル51(0、0)の吐出不良によってドットD2は正常に打滴されない不良ドット(図中破線白丸で表示)となる。さらに、ドットD2の打滴タイミングT(2)の時点においてノズルN1は吐出不良となっているため、不良ドットD2の打滴タイミングT(2)より後に打滴されるドットD3は、打滴間隔ΔT(3)の大きさには関係なく不良ドットとなる。
このようにノズル51(0、0)が吐出不良になると、前述した予備吐出や吸引等のメンテナンス動作が行わなれない限り、不良ドットが連続して発生するようになってしまう。しかしながら、このような場合にメンテナンス動作を頻繁に行うと、逆に印刷速度の低下を招いてしまうという問題がある。そこで本発明では、印刷速度の低下を招くことなく、ノズルの吐出不良による画像劣化を防止できるように打滴制御を行う。
図10は、本発明の第1の実施形態における打滴制御方法を表したフローチャート図である。同図では、印字ヘッドのノズル番号をk(k=0、1、・・・、K−1)、インク番号(j=0、1、・・・、J−1)で表現している。以下では、図8及び図9の例を用いながら、図10に示したフローチャート図について説明する。
まず最初に印刷動作が開始されると、ドットデータの作成を行う(ステップS310)。本例では、図8に示したように、プリント制御部80(図7参照)において、画像データから各色の印字ヘッド50(0)、・・・、50(J−1)に対応するドットデータ100(0)、・・・、100(J−1)をそれぞれ作成する。
次に、インク番号jに0を設定し(ステップS320)、ノズル番号kに0を設定する(ステップS330)。ここでは打滴制御を行う制御対象ノズルの設定を行っている。本例では、図8に示したノズル51(0、0)が最初に選択される。
次に、制御対象ノズル51(k、j)の打滴タイミングT(0)、T(1)、・・・、T(N−1)を求める。なお、各打滴タイミングは印字ヘッド50(j)の印刷動作が開始された時点(T(−1)=0)を基準としたときの時間を表している。そして、各打滴タイミングから打滴間隔ΔT(0)(=T(0)−T(−1))、ΔT(1)(=T(1)−T(0))、・・・、ΔT(N−1)(=T(N−1)−T(N−2))を求める(ステップS340)。ただし、Nは1以上の任意の自然数とする。T(N−1)は、印刷の1ジョブ(複数枚プリント)又は別要因で発生するメンテナンスを行うまでの全画像データを展開して演算処理したときの最後のドットの打滴タイミングである。図9の例では、制御対象ノズル51(0、0)の打滴ドットD0〜D3の打滴タイミングはT(0)〜T(3)であり、各打滴間隔はΔT(0)〜ΔT(3)であり、Nの値は4である。
次に、変数iに0を代入し(ステップS350)、打滴間隔ΔT(i)と吐出不良打滴間隔ΔTcとの大小を比較する(ステップS360)。ここでは、制御対象ノズルの打滴ドットに不良ドットが発生するか否か判断している。打滴間隔ΔT(i)が吐出不良打滴間隔ΔTcより大きければステップS380に移行し、打滴間隔ΔT(i)が吐出不良打滴間隔ΔTc以下であればステップS370に移行する。本例では、図9に示すように、i=0の場合は打滴間隔ΔT(0)が吐出不良打滴間隔ΔTc以下であるため、変数iの値を1つ増加させ(ステップS370)、そのときの変数iの値(1)はNの値(4)より小さいのでステップS360に戻る(ステップS610)。i=1の場合は、i=0の場合と同様に行われる。そして、i=2の場合は打滴間隔ΔT(2)が吐出不良打滴間隔ΔTcより大きいためステップS380に移行する。
次に、打滴タイミングT(i)、T(i+1)、・・・、T(N−1)でドットが打滴されないときの画像に対する影響度(以下、画像影響度という)を表す画像影響関数fの値f(i),f(i+1),・・・、f(N−1)を計算する(ステップS380)。各打滴タイミングT(i)、T(i+1)、・・・、T(N−1)で打滴されるドットは不良ドットとなり、ここでは、これらの不良ドットが打滴されなかった場合の画像に対する影響度を計算している。本例では、i=2の場合にステップS380が行われるので、打滴タイミングT(2)、T(3)で不良ドットD2、D3が打滴されなかった場合の画像影響度f(2)、f(3)をそれぞれ計算する。
ここで、画像影響関数fについて説明する。画像データから作成された元の(最も望ましい)ドットデータをαとし、不良ドットが発生した(又は、ドットの追加、置換等の行われた)ドットデータをβとする。画像影響関数fは、本来ドットデータαに基づいて画像が形成されるべき場合にドットデータβに基づいて画像が形成された場合の影響を表している。画像影響関数fは、例えば、ドットデータα、β間で各画素のドットの有無が異なる画素の総数xとして表される。また画像影響関数fによる評価領域Tは、要求される画質に応じて変化させることが好ましい。例えば、高画質が要求される場合は評価領域Tは狭い範囲であることが好ましい。さらに、ドットの色や液滴の体積によって上記xの値に重み付けをすることが好ましい。従って、画像影響関数fは、
と表されることが好ましい。ここでjは色、Vはドット体積、Cj,v は(j, V) のドットに対する重み付けパラメータ、xj,vは評価領域T内でドットデータαとドットデータβで入れ替わっている(j,V)のドットの総数を表している。
このような画像影響関数fの許容限界値をfcとする。許容限界値fcは評価領域T内に許容されるxの閾値に相当し、これらは元のドットデータαの濃度や色相によって上記閾値は異なる。従って、許容限界値fcは濃度や色相によって変化させることがより好ましい。なお本例では、図9に示すように、画像影響度f(2)は許容限界値fcより小さく、画像影響度f(3)は許容限界値fcより大きいものとする。
次に、変数i’に変数iの値を代入し(ステップS390)、画像影響度f(i’)と許容限界値fcとの大小を比較する(ステップS400)。画像影響度f(i’)が許容限界値fc以下であれば、変数i’の値を1つ増加させて(ステップS410)、その変数i’の値がNであるか否か判断する(ステップS420)。変数i’の値がNでなければステップS400に戻り、変数i’の値がNであればステップS620に移行する。
本例では、最初にステップS400を処理する時点ではi’=2である。このときの画像影響度f(2)はfcより小さく、ステップS410に移行して変数i’の値を1つ増加させて3とする。変数i’(=3)はN(=4)より小さいため、再びステップS400に戻り、f(3)とfcの大小関係を比較する。f(3)はfcより大きいため、次のステップS430に移行する。
ここまでは、制御対象ノズル51(0、0)の打滴間隔ΔT(1)〜ΔT(3)と吐出不良打滴間隔ΔTcとの比較から不良ドットD2、D3を抽出し、さらに、不良ドットD2、D3が打滴されなかった場合の画像影響度f(2)、f(3)と許容限界値fcとの比較から画像に影響ある不良ドットD3を抽出している。次の処理では、制御対象ノズル51(0、0)が画像に影響ある不良ドットD3を正常に打滴できるように、先に打滴された正常ドットD1の打滴タイミングT(1)から不良ドットD3の打滴タイミングT(3)の打滴補正区間で打滴補正処理を行う。
まず、変数Mに対して[(T(i’)−T(i−1))/ΔTc]の結果を代入する(ステップS430)。なお、[x]はxを超えない最大の整数を表すものとする。(T(i’)−T(i−1))は、正常ドットが打滴されてから画像に影響ある不良ドットまでの打滴補正区間の大きさを表している。これを吐出不良打滴区間ΔTcで割ったときの値を超えない最大の整数Mは、打滴補正区間に設定しなければならないサブ区間の数を表している。そして、打滴補正区間U内にサブ区間S(0)、S(1)、・・・、S(M−1)を設定する(ステップS440)。サブ区間S(m)(ただし、0≦m≦M−1)の開始タイミングSS(m)、終了タイミングSG(m)とすると、これらは、SG(m)−SS(m−1)<ΔTcの関係を満たすものとする。ただし、SS(−1)=T(i−1)、SG(M)=T(i’)とする。
図11は、図9の例にサブ区間を設定した場合の説明図であり、図9のドットD0、D2は図示を省略している。ステップS430が行われる時点では、i’=3、i−1 =1であり、打滴補正区間Uは正常ドットD1の打滴タイミングT(1)から画像に影響ある不良ドットD3の打滴タイミングT(3)の間となっている。制御対象ノズル51(0、0)が不良ドットD3を正常に打滴できるようにするためには、打滴補正区間U内で制御対象ノズル51(0、0)が所定の間隔で補正ドットDS0、DS1、DS2を打滴する必要がある。ここで、打滴補正区間U内で制御対象ノズル51(0、0)が補正ドットDS0〜DS2を打滴しなければならない区間をサブ区間と定義する。図11に示すように、打滴補正区間Uが吐出不良打滴間隔ΔTcの約3.5倍とすると、打滴補正区間U内に設定しなければならないサブ区間数は3となる。このようなサブ区間数Mは、[(T(3)−T(1))/ΔTc]として求められる。また、各サブ区間S0〜S2の開始タイミング、終了タイミングをそれぞれ、SS(0)、SG(0)、SS(1)、SG(1)、SS(2)、SG(2)とすると、各サブ区間S(0)〜S(2)及び打滴補正区間Uの開始及び終了タイミングT(1)、T(3)の各間隔ΔSM(0)(=SG(0)−T(1))、ΔSM(1)(=SG(1)−SS(0))、ΔSM(2)(=SG(2)−SS(1))、ΔSM(3)(=T(3)−SS(2))のそれぞれが吐出不良打滴間隔ΔTcより小さくなるように各サブ区間S(0)、S(1)、S(2)を設定する。このように設定されたサブ区間S(0)、S(1)、S(2)において制御対象ノズル51(0、0)が補正ドットDS0〜DS2を打滴するように打滴補正を行うと、制御対象ノズル51(0、0)は吐出不良を起こすことなく、画像に影響のある不良ドットD3を正常に打滴することができるようになる。
次に、変数mに0を代入し(ステップS450)、サブ区間S(m)内に隣接ノズル51(k+1、j)の打滴ドットが存在するか否か判断する(ステップS460)。本例では、制御対象ノズル51(0、0)の隣接ノズルとしてノズル51(1、0)が対象となる。サブ区間S(m)内に隣接ノズル51(k+1、j)の打滴ドットが存在する場合はステップS470に移行し、存在しない場合はステップS500に移行する。なお、k=K−1の場合は本処理は行わずに、ステップS500に移行する。
次に、隣接ノズル51(k+1、j)の打滴ドットを制御対象ノズル51(k、j)の打滴ドットに置き換えた場合の画像影響度fを計算し(ステップS470)、その画像影響度fと許容限界値fcとの大小を比較する(ステップS480)。そして、その画像影響度fが許容限界値fc以下であれば、隣接ノズル51(k+1、j)の打滴ドットを制御対象ノズル51(k、j)の打滴ドットに置き換える(ステップS490)。
ステップS460でサブ区間S(m)内に隣接ノズル51(k+1、j)の打滴ドットが存在しないと判断した場合、又は、ステップS480で隣接ノズル51(k+1、j)の打滴ドットを制御対象ノズル51(k、j)の打滴ドットに置き換えた場合の画像影響度fが許容限界値fcより大きいと判断した場合には、制御対象ノズル51(k、j)のノズル番号kが同一であり異なる色の同一画素を打滴するノズル(以下、異色ノズルという)51(k、j+1)、・・・、51(k、J−1)の打滴ドットがサブ区間S(m)内に存在するか否か判断する(ステップS500)。サブ区間S(m)内に異色ノズル51(k、j+1)、・・・、51(k、J−1)の打滴ドットが存在する場合はステップS510に移行し、存在しない場合はステップS540に移行する。なお、j=J−1の場合は本処理は行わずに、ステップS540に移行する。
次に、異色ノズル51(k、j+1)、・・・、51(k、J−1)の打滴ドットを制御対象ノズル(k、j)の打滴ドットに置き換えた場合の画像影響度fを計算し(ステップS510)、その画像影響度fと許容限界値fcとの大小を比較する(ステップS520)。そして、その画像影響度fが許容限界値fc以下であれば、異色ノズル51(k、j+1)、・・・、51(k、J−1)の打滴ドットを制御対象ノズル51(k、j)の打滴ドットに置き換える(ステップS530)。
ステップS500でサブ区間S(m)内に異色ノズル51(k、j+1)、・・・、51(k、J−1)の打滴ドットが存在しないと判断した場合、又は、ステップS590において異色ノズル51(k、j+1)、・・・、51(k、J−1)の打滴ドットを制御対象ノズル51(k、j)の打滴ドットに置き換えた場合の画像影響度fが許容限界値fcより大きいと判断した場合には、サブ区間S(m)内に制御対象ノズル51(k、j)の打滴ドットを追加した場合の画像影響度fを計算し(ステップS540)、その画像影響度fと許容限界値fcとの大小を比較する(ステップS550)。そして、その画像影響度fが許容限界値fc以下であれば、制御対象ノズル51(k、j)の打滴ドットを追加する(ステップS560)。
本例では、図11に示すように、打滴補正区間Uの各サブ区間S(0)、S(1)、S(2)で、隣接ノズル又は異色ノズルの打滴ドットを置換するか、制御対象ノズルの打滴ドットを追加することによって、制御対象ノズル51(0、0)が補正ドットDS0、DS1、DS2を打滴するように打滴補正処理を行い、打滴補正区間Uの最後の打滴タイミングT(3)で制御対象ノズル51(0、0)が画像に影響ある不良ドットD3を正常に打滴することができるようになる。
ステップS550でサブ区間S(m)内で制御対象ノズル51(k、j)の打滴ドットを追加した場合の画像影響度fが許容限界値fcより大きいと判断した場合には、サブ区間S(m)内にパージシーケンスを挿入する(ステップS570)。パージシーケンスでは、制御対象ノズル51が予備吐出を行う。
ステップS490、S530、S560のいずれかの処理を実施すると、変数mの値を1つ増加させ(ステップS580)、変数mの値とサブ区間数Mを比較する(ステップS590)。ここでは、全てのサブ区間S(0)〜S(M−1)のそれぞれに対してステップS460からステップ580までの処理が終了したか否かを判断している。m=MでなければステップS460に戻り、m=MであればステップS590に移行する。
ステップS590でm=Mと判断した場合には、変数i’を1つ増加させた値を変数iに代入する(ステップS600)。本例では、ステップS600を実施する時点ではi’=3であるので、i=4となる。
次に、変数iの値がNを比較する(ステップS610)。i=Nでなければステップ360に戻り、i=NであればステップS620に移行する。本例では、i=4、N=4であのでステップS620に移行する。
ステップS610でi=Nと判断した場合、又は、ステップS420でi’=Nと判断した場合には、ノズル番号kの値を1つ増加させる(ステップS620)。そして、ノズル番号kとノズル数Kを比較する(ステップS630)。k=KでなければステップS340に戻り、k=KであればステップS640に移行する。
ステップS630でk=Kと判断した場合には、インク番号jの値を1つ増加させる(ステップS640)。そして、インク番号jがインク数Jと等しいか否か判断する(ステップS650)。j=JでなければステップS330に戻り、j=Jであれば印刷動作を終了する。
第1の実施形態では、画像データから求められるドットデータに基づいて制御対象ノズルの打滴間隔を計算する。そして、制御対象ノズルの打滴間隔が吐出不良打滴間隔(所定時間)より大きく、かつ、その打滴間隔の終わりのタイミング以降に打滴されるべきドットが不良状態となったときの画像に影響がある場合に、制御対象ノズルがそのドットを打滴できるように、制御対象ノズルの打滴補正を行っている。すなわち、画像に影響がないドットに対しては打滴補正を行わないので、印刷速度の低下を招くことなく、ノズルの吐出不良による画像劣化を防止することができる。
また第1の実施形態では、打滴補正処理として、打滴補正区間の各サブ区間において、(1)隣接ノズルの打滴ドットを制御対象ノズルの打滴ドットに置換、(2)異色ノズルの打滴ドットを制御対象ノズルの打滴ドットに置換、(3)制御対象ノズルの打滴ドットを追加、のいずれかを行っている。このとき、打滴補正処理は画像に影響がないように行われており、打滴補正処理の際の画像の劣化が防止されている。また、制御対象ノズルが補正ドットを打滴するサブ区間は吐出不良が発生しないように設定されているので、制御対象ノズルの吐出不良を確実に防止することが可能である。
なお、第1の実施形態では、打滴補正処理を行う順序として、(1)隣接ノズルの打滴ドットを制御対象ノズルの打滴ドットに置換、(2)異色ノズルの打滴ドットを制御対象ノズルの打滴ドットに置換、(3)制御対象ノズルの打滴ドットを追加、を図10に例示したが、本発明の実施に際してはこの順序に限定されるものでない。
図12は、本発明の第2の実施形態における打滴制御方法を表したフローチャート図である。図12中、図10と共通する処理については同一の番号を付している。
第2の実施形態では、ステップS400において画像影響度f(i’)が許容限界値fcより大きいと判断した場合、第1の実施形態のように隣接ノズルや異色ノズルの打滴ドットの置換又は制御対象ノズルの打滴ドットの追加は行わず、打滴補正区間Uの全てのサブ区間S(0)、・・・、S(M−1)内にパージシーケンスを挿入している(ステップS450、S570、S580、S590)。一方、画像影響度f(i’)が許容限界値fc以下と判断した場合は、このようなパージシーケンスの挿入は行わない。すなわち、画像に影響ある不良ドットが存在する場合のみパージシーケンスを挿入しているので、印刷動作に無駄がなく、印刷速度の低下が防止されている。なお、上記以外の処理については第1の実施形態と共通するため、その他の説明は省略する。
なお、第1及び第2の実施形態では、印字ヘッド50として紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドを用いるライン方式が採用されているが、本発明の実施に際して、これに限定されず、短尺ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作させるシャトル方式でもよい。
図13は、スキャン方式の印字ヘッドの場合を表した説明図である。同図に示すように、各色に対応して設けられた印字ヘッド12K、12C、12M、12Yはキャリッジ90に搭載され、それぞれ副走査方向に配列された不図示のノズル列を有している。そして、記録紙16を副走査方向に搬送しながら、印字ヘッド12K、12C、12M、12Yを搭載するキャリッジ90が主走査方向に走査(スキャン)することによって、記録紙16に記録が行われる。パージシーケンスが挿入された場合には、主走査方向の記録紙16が存在しない領域に設けられたパージゾーン92に印字ヘッド12K、12C、12M、12Yを搭載するキャリッジ90を移動し、そこで予備吐出を行えばよい。
このようなスキャン方式の印字ヘッドの場合の打滴制御は、上述したライン方式の場合と同様であり、ドットデータから制御対象ノズルの打滴間隔を計算し、図10や図12に示したフローチャート図に基づいて打滴制御を行えばよい。
以上、本発明の液滴吐出装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。